本会議 第14号
- 発言数
- 11 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1951/02/14
会議録
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。 —————・—————
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。 日程第一、国務大臣の演説に関する件。(第二日) 昨日の内閣総理大臣の発言に対し順次質疑を許します。和田博雄君。 〔和田博雄君登壇、拍手〕 〔「和田共産党」「共産党しつかり」と呼ぶ者あり〕
○和田博雄君 私は日本社会党を代表いたしまして、昨日、本議場で行われました総理大臣の外交問題に関する発言に対しまして、若干の質問をいたします。 吉田首相の言葉によりますれば、今回のダレス氏との話合いは、平和條約の交渉や又は下相談ではなくして、講和とこれに関係しまする諸般の問題につきまして、お互いが隔意のない意見を交換するものであるとのことであります。このことは、ダレス氏が日本に来ましたその第一声におきまして、自分は日本を相談すべき相手であり、戰勝国によつて支配されるべき被征服国ではないと考えて、東京で事態を更に討議するために日本に来たのだと声明しているところからも又明らかであります。併し日本の国民の将来の世界における地位を決定し、又運命を方向付けるものといたしまして、同氏と吉田首相との会談や政府当局との話合いは、全国民が全身をこれ耳にし、全身をこれ目として注目いたしておつたことは言うまでもございませんが、それだけに、政府はその対談の内容につきましては、詳細これを国会を通じて国民にその都度これを知らせ、国民をして、自己及びその子孫の運命についてみずから判断し、会談の日程に上る諸問題について理解を深めると共に、誤まりのない態度をとり得る措置に出ずべきであると私は考えるのでありまするが、(拍手)政府はそういう措置に出でずして、軍国主義時代における秘密外交を思わすような経過を示し、何ら国民的な支持の上に会談を続行するのではなくして、昨日極めて簡單な報告を総理がこの議場においてなされました。この政府の態度につきましては私は、問題が問題であるだけに、ここに極めて深い遺憾の意を国民と共に表して置きたいと思います。(「同感」と呼ぶ者あり、拍手)私の質問の第一点は講和の形式に関することであります。私たちは、主権の完全な回復、完全な独立を心から求めています。そのためには、我々はどうしても極東委員会十三ヵ国との全面講和を必要とします。それ故に日本社会党はそれを従来から主張しております。首相は、アメリカの対日講和の構想は昨年十一月二十四日アメリカ政府の発表した対日講和七原則に盡されておると言われておるのでありますが、その七原則の第一においては、全面講和の立場はまだ捨てられてはいないようでありますし、又ダレス氏のスポークスマンも、アメリカへ帰つたあとではソ連の代表と再び会見する約束をした、ソ連との交渉の途は閉されていないと語つているのでありまするが、併し今度のダレス氏と吉田首相との会談の経過を見、又声明を見まするというと、日本とアメリカとの間に軍事基地やその他の便益を供與するような軍事協定を結んだり、或いは日本の再軍備についての了解に達したような、ソ連や中共の参加を困難にするような事柄を見るのであります。(「嘘を言え」と呼ぶ者あり)一体、吉田総理は、本議場その他において、全面講和は望ましいものではあるが、できないものは仕方がないということを、しばしば言われておるのでありまするが、今度の会談において、ダレス氏との間に講和の形式についてどういう程度の話合いをいたされたのであるか、又了解に達せられたのであるかを先ずお伺いしたい。(「昨日話した通りだ」と呼ぶ者あり) 單独講和を先ずアメリカと結んで漸次ほかに及ぼして行くのであるか。それとも多数講和の場合には、一体どこどこの国と先ずこれを締結して行こうとするのであるか。若し單独講和や多数講和のごとき不完全な講和を締結しました場合に、これから起つて来るいろいろな危險について、政府は一体どういう手段を講ずるつもりであり、又ダレス氏との間にどの程度話合いになつておるのであるか。それもお聞きしたい。不完全講和が発効しますならば、恐らくアメリカを中心としまする日本の管理方式は廃止されるでありましよう。併しソ連とは依然として戰争状態にありまするが故に、ソ連がアメリカに代つて日本の管理を要求したり駐兵を行なつたりする場合に、果してこれを拒否し得る正当な法的根拠が日本にあるのであるか、ないのであるか。若しないとすれば、それはどうしてソ連のかかる外交攻勢から日本を防衛することができるのであるか。その保障はどうなのであろうか。吉田首相はこれらの点について恐らくダレス氏との間において話合いをされたと思う。どういう満足すべき相互の了解に達せられたのであるかをお聞きしたいと思うのであります。 なお、ついでにこの際お聞きして置きたいことは、單独講和や多数講和の場合に、日本の主権の国際的制約として現に存在しておるポツダム宣言、降伏文書の効力は、一体どうなるのであるか。主権の完全回復の障害となるようなことをきめたり、日本の独立、自立のために重要なアジアとの結合を弱めたり、又まさに風雲急を告げておるところのアジアの危機を増大せしめたりするようなことがあつては、私はならないと思います。 私の質問の第二点は我が国の安全保障に関してであります。ダレス氏は去る二日の日米協会における演説の中で、間接的侵略から自国を守るためには、日本は治安に万全を期さなければならない。併しこれだけでは直接的侵略に対しては対抗することができない。直接的侵略に対抗するためには国連憲章の認める地域的集団安全保障が必要であり、日本は自由意思でこれに参加するように招かれておる。又、若し日本が希望するならば、米国政府は日本の国内及び周辺に米国の軍隊を維持して置くことを同情を以て考慮すると述べられております。そうして去る十一日、日本を離れるに当りまして出したダレス氏の声明で、日本政府はこの提案を歓迎し、日本が軍事的真空の中に放置されることにならないようにこの提案を受諾しようというのが日本国民の圧倒的な希望であると確信し、その結果、我々は日米両国間の暫定的安全保障協定について討議した。又これと関連して、一定の性格を持つ地域的又は集団的安全保障協定をすべて考察したと述べておられます。吉田総理もこれを受けて、去る十一日の声明、又昨日の本議場における発言において、同様のことを述べられておるのであります。私たちは相互の理解の上に立つ米国との友好関係を心より希望するものであります。併し、この内容の全く不明な軍事協定や地域的又は集団的安全保障を受入れることが日本国民の圧倒的な希望であつたり、国民大多数はこれを心から喜んで迎えるものとは私は思いません。(「その通りだ」と呼ぶ者あり、拍手)それは全く政府の独断であると私は思います。(「ノーノー」「その通り」と呼ぶ者あり)政府はどういう根拠を以てかく言うのであるか。それを私は吉田首相にお伺いしたい。又吉田首相の言う国内治安に対しましては、我々は單に警察力や警察予備隊等によるのではなしに、完全雇用を目標とした社会主義的な経済自立計画を実行して、これによつて勤労大衆の生活の向上を図り、共産主義がうん釀する温床である貧乏や窮乏や抑圧をなくなすことこそが、根本的な自衛策であると我々は考える。(拍手)我々は、日本がアジアの一つであり、戦争の前と違つて、アジアとの……アジアの行く方向に日本が行くのであり、日本の行く方向にアジアが行くのではない、併しアジアとの提携なくしては日本の経済的繁栄は困難である、(「ノーノー」「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)こういうことを考えるときに、我々は、講和後における外交方針は憲法の精神に即した中立的な立場でなければならず、特定国や又は特定国家群との間に軍事協定を結んで、みずから好んで戰争に巻き込まれる危險を侵したり、(「そんなことはない」「嘘を言うな」と呼ぶ者あり)対立した二つの世界の溝を深めたり、危機を拡大してはならないと私は思う。(拍手)そこで私は吉田総理にお尋ねしたいと思います。第一に、ダレス声明や首相の報告にあるアメリカとの軍事基地の提供や便益の供與に関する協定は、一体どんなものであるのであるか。その内容は又どういうものであるのであるか。その話合いの程度はどの程度に進んだのであるか。これをお聞きしたいと思います。かかる軍事協定を結びました場合に、中ソ友好同盟條約の存在する現在、それらの国との関係はどうなるのでありましようか。軍事的な真空を埋めようとして却つて戰争に巻き込まれる危險を導入することにはならないのでしようか。(拍手)これらの点についてどれだけの保証を得られたのでございましようが。総理はこの点については明確にお答えを願いたいと思います。 第二に、ダレス氏は、これと関連して、我々は一定の性格を持つ地域的又は集団的安全保障協定をすべて考察したと述べておられます。地域的安全保障、即ち今世間で言われている太平洋條約のごときものが結ばれるとしまして、一体相手国はどんな国々なのでありますか。噂によれば、濠洲やニユージーランド、フイリピン、日本、アメリカというものがその当事国だというような噂さえあります。アジアの国々の参加はこの場合はどうなのでありますか。又この條約におきまする日本の地位は、又分担すべき責任は如何なるものなのでございますか。アイスランドのように非武装のままで日本が国連に加入して、この太平洋條約の当事国となるのでありますか。どういう了解に総理はダレス氏と到達されたのであるか。国民はすべてその構想と了解の程度とを知りたがつていると思います。この点についてお尋ねしたいと思います。又集団的安全保障の機構は如何なるものと考えておられるのであるか。この点についてもお答えを願いたいと存じます。 次に再軍備の問題についてお聞きいたしたいと存じます。この再軍備の問題に関しましては、吉田首相の態度はだんだんとあいまいなつて来たように私は思われます。日本の経済自立を困難ならしめるのみならず、日本軍国主義の復活について外国に対する悪影響の点から、敢然として再軍備に反対しておられた吉田首相が、十一日の声明におきましては、我々は、みずから守り、みずからの国土防衛のためにできる限りのことをするという責務のあることは十分に認識している。日本の果すべき役割の内容と範囲は、日本が独立を回復し、自由諸国の社会に対等の一員として仲間入りをした曉において、我が経済及び産業の回復に応じて決定されるであろうと、極めて巧妙なる表現を用いられまして、昨日、本議場において発言をせられております。そこで私は端的に首相にお尋ねしたいと思います。首相は日本の再軍備についてダレス氏に、はつきりと公約を與えられたのであるか。若し再軍備について、はつきりと公約を與えられたとしたならば、その規模や編成はどういうものであるのか。(「心配するな」「頭が禿げる」と呼ぶ者あり)芦田均君は日本の再軍備について積極的な態度をとり、地上軍二十万を要求されております。この点については、総理は国民の前に明確に私は答弁をして頂きたいと思います。(「共産党」「野次でごまかすな」と呼ぶ者あり)日本社会党は再軍備に反対をしております。ソ連、中国、フイリピン、インド、オーストラリア、多数の国々が日本の侵略主義、軍国主義の復活を恐れて、日本の再軍備に反対したり制限しようとしている国際情勢にあることは、総理も御承知のことと私は思います。又第二次大戰の痛手が、遺家族、負傷者、戰死者、行方不明者等余りにも痛々しい。精神的にも物質的にもまだ日本は癒えておりません。戰争嫌悪の感情は、何といつても圧倒的大多数の婦人や青年には見受けられるのであります。(拍手)上からの再軍備を強制しても、真の自衛力が湧かない限りは軍備は何の役にも立たないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)いわんや財政的な負担の過重や経済的な自立の断念による国民生活水準の低下は、其産主義やフアツシヨの発生し彌漫する温床となるだけであります。(拍手)又私は今ここで憲法第九條の自衛権と武力行使の解釈論をしようとは思いませんが、恒久の平和を念願し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して我々の安全と生存とを保持しようとして戰争を放棄し、武力を放棄した我々が、この崇高な憲法の精神をまさに守らねばならぬ時において、仮にこれを改正して再軍備をするようなことがあつたならば、恐らく日本の国民は世界の信頼を失つて、軽侮の的となると私は思う。(「そうだ」「ノー」と呼ぶ者あり、拍手)又吉田首相の報告の場合のごとく、講和が全面的に締結されずに、二三の国との関係では引続き降伏文書やポツダム宣言が有効だとしますれば、日本の再軍備はその点からいつて不可能なのではないでしようか。ポツダム宣言の非武装化、非軍事化條項を無効にする、無視することは、私はできないと思います。もとより私たちも国際社会の一員として当然負うべき義務を拒否するものではございません。むしろ世界の平和機構、統一的な平和機構である国連の統一強化をすることによつて、世界の平和に貢献したいと考えておる。併しそれ故にこそ、我々社会党は、日本憲法に即した国連加入による安全保障を主張しておるのであります。(拍手) 質問の第三点は日本の経済自立に関するものでございます。この点に関する総理の昨日の発言は余りにも簡潔でございます。日本の政治的な独立と自由とが確保されるためには、その裏付けとして経済的な自主自立を要することは言うまでもございません。政府は先に昭和二十六年度から二十八年度に至る三ヵ年に亘る経済自立計画を発表いたしました。それによりますれば、二十八年度には生活水準は戰前の八九%に上り、輸入が十七億ドルの規模で国際收支のバランスがとれることになつております。併しこの計画の実行の前提といたしまして、一九五二年——五三年米国会計年度まで、年々アメリカから一億八千万ドル乃至一億ドルの援助資金をもらうことになつております。而も驚くべきことには、二十八年度においてなお完全失業者の数は四十三万人になつております。失業者を依然として吸收できないような計画が果して自立計画の名に値いするものでおるかどうかを私は疑います。(「社会党の内閣はどうした、何をやつた」と呼ぶ者あり、拍手)これこそ全く資本主義の政策とその欠点とを暴露しておるものであろうと思います。日本の失業問題の核心は完全失業者にあるのではなくして不完全就業者にあることを思うとき、なお更この政府の自立計画が資本主義の弱点を暴露したものであることを私は考えます。(拍手)日本社会党は第七回大会で完全雇用を目標とした四ヵ年計画を決定いたしました。それは先ず五十万人の完全失業者と四百万人の不完全就業者に完全な職業を與え、年々増大する二〇%の労働人口を吸收し、而も日本国民を昭和九年——十一年の平均の戰前水準に引上げる。国民の生活水準を引上げる。この最小限度の要求を四ヵ年に実行するものでございます。このため鉱工業水準を戰前の一六四%、農業を一二〇%に、貿易は二十億ドルのバランスに引上げるものでございます。この社会主義的な再建政策を労働者の積極的な協力の下に行うことが、民主的な経済再建の第一條件でございます。私は戰争に痛め付けられて経済の自主性のない日本経済の再建が如何に困難であるかを知るのであります。それ故に、我々は経済自主権の回復を強く主張しておるものでございます。然るに最近、朝鮮動乱以来、世界は又もや軍拡時代に入つて来、そうしてアメリカは、はつきりと統制経済の時期に入りました。遂に最近政府手持ちの食糧農産物の輸出を禁止するの状態になり、世界の食糧や原料の買付競争は非常に激烈になつて来ております。最近における日本の実情を見ましても、輸入にからむ運賃の値上り、それに関連して、殊に鉄鉱石や強粘結炭、塩などは大きな影響を受けております。政府の発表した資料を見ましても、米や、大麦や、小麦や、大豆や、砂糖や、塩のような生活必需品はいずれも計画通りには入つておりません。(「宣伝か質問か」と呼ぶ者あり)国内における物価騰貴から来る労働者の生活水準の低下も考えられます。 そこで私は総理にお尋ねしたいのであります。総理は日本経済の自立に関してどの程度のことを話し合われ、了解し合つたのであるか。日本が原料の七割と食糧の二割を輸入せねば日本の経済の循環は円滑に行かぬことを考えるとき、輸入原料や食糧について政府の経済自立計画実行に必要な量は、すでに確保され得るだけの了解を得ているのであろうか。それとも、その経済自立計画自体が、その前提と一緒にすでに了承さしれておるのであるかどうか。日本の産業水準や消費水準についての制限はどうなんであるのか。いわゆる「講和によつて、ひどい経済的又は財政的負担をこうむつたり、主要な商取引を無力化されなければ」と、ダレス氏が言つておりますが、それは一体具体的にはどの程度のことを言つておるのであるか。この点について総理はもつと詳しく私は発言さるべきであつたと思うし、この際、答弁をお願いしたいと思う。 諸君、私は今までダレス氏と吉田総理との間の話合いについて若干の質問を試みて来ました。講和に関する問題は、私たち国民の将来の運命に関する問題だけに、その内容は極めて深く、その振幅は極めて広い。それだけに私はこの問題については、国民の一人一人が十分に正確なる事実の上に立つて誤まりない判断をするように、政府は仕向けて行くべきだと思う。若しもそうでなくして、もう一遍、いつの間にか我々の運命が知らぬ間に妙な所できめられておつたとしたならば、私は悔を千載に残すであろうと思うし、そうしてできた講和は本当の講和で私はないと思う。(拍手)政府の責任はその意味において重大であります。吉田総理はしばしば本議場において、この前の選挙のときにすでに講和の問題が問題になつておつたが故に、今更衆議院を解散して民意を問う必要はないと言われております。(「必要がない」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)併し諸君、靜かに聞き給え。今度の会談ぐらい具体的に各内容に亘つて私は話合われたことはないと思う。これだけ明確に内容が出たこともないと思う。それ故に、私は総理が常日頃言わるる本当に国を愛する心を持つておらるると思うが、愛国心に燃えるならば、国民の総意に早く問うて、そして日本の国を誤まりのない方向に持つて行かれることを強く希望いたすと同時に、この点に関する総理の所見をお伺いして、私の質問はこれで終ります。(拍手、「いい質問だ」「共産党と全く同じだ」「認識不足」と呼ぶ者あり) 〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。 私の昨日の説明が甚だ簡に過ぎたというお叱りでありますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)これは簡に過ぐべきものであると思うのであります。如何なる場合においても、例えば外国で総理大臣会議とか何とか外相会議とかありますが、その場合に発表せらるるコミユニケというものは甚だ短かいものであります。私の昨日の説明はコミユニケではなくて議会に対してダレス氏と話合つた内容の極く簡明な記述をいたしたのであります。併しながら先ほどの御質問の通り、ダレス氏は講和談判に参られたわけでもなければ、私と交渉に参られたわけではないので、互いに、両国と申すか、或いは私の気持、或いはダレス氏の気持、卒直な意見の交換をいたしたのであつて、そのために、講和條約の内容をなす下相談若しくは交渉をいたしたわけではないのであります。誤解のないように、双方の立場をよく了解してそうして講和條約の内容をきめるために特派せられた大統領の使節であります。(拍手)故に、その結果は、こういう約束をした、こういう交渉をいたしたということはないのでありますから、この点は御了承を願いたいと思います。 先ほどのお話に、全面講和、再軍備等のお話がございましたが、これはダレス氏の言われておる通り、又私もしばしば申しておる通り、單独講和と申すか、多数講和のみについて話合つたのではないのみならず、ダレス氏とい、えども、又米国政府といえども、できれば全面講和がいいと考えて、その方向に進めようとしていることは明瞭であります。できなかつた場合にはというだけの話であつて、全面講和をいたさないという前提の下に話を進め、又互いに意見の開陳をいたしたのではないのであります。この点は御了承願いたい。再軍備につきましては、私の所見は毫も変つておりませんのみならず、昨日の私の申した説明即ち私の開陳いたした所見を極く卒直に述べたものであります。即ち、今日において日本は再軍備したくもできないのである。経済力から申して見ても、今日、日本の回復と申しても、僅かに昨年の下半期ぐらいから多少回復若しくは繁栄の様相を呈しただけの話であつてその以前における日本の回復状態は甚だ見るに足るべきものはないのであります。かかる状態において再軍備、殊に今日のような非常な経費を要する完全なる再軍備をなすということは日本の独力を以てしてよくするところではないことは、申すまでもないことであります。又先ほどお示しの通り、敗戰の創痍未だ癒えず、国内において孤児、寡婦、又その他戰災の不幸をこうむつた人はたくさんあるので、この時において再軍備を申すということは、国内において安定を欠く最も大なる原因の一つであると思う。(拍手)故に再軍備は今日において私は軽々しく口にすべきものでないと考えるのであります。(拍手)故にダレス氏との間において、私は、はつきり今日我々は再軍備はできないということを申しております。従つて安全保障をどうするかという問題になるのでありますが、昨日の説明に申した通り、国内の安全については国家みずから維持する。保障する。又保障するだけの自信がある。然らば外敵に対しては如何。これは今日の情勢において如何なる国といえども集団攻撃に対して集団防禦をいたすよりほか方法はないのであります。米国としても、或いはイギリスとしても、その他の国も、ことごとく大西洋條約とかその他で集団的安全保障を考えておるのであります。ひとり日本が自力のみで以て外敵に当ることのできない現状においては集団的安全保障を考えざるを得ないのであります。(拍手)この際、アメリカが日本に対して、防禦のない日本が若し万一危險にさらされたときには、アメリカはうつちやつては置かないと言つてくれるのは、日本に対する非常な好意であります。この好意は私は受くべきものであり、国民も又喜んで受けると考えまするから、歓迎するところなりと申したのであります。(拍手)然らば地域的協定をしたかというお話でありますが、これはいたしません。話合つておりません。又今日、日本は話合うべき地位にないと思います。何となれば独立も回復をいたしておりませんから。(「ごまかしておる」「黙れ共産党」と呼ぶ者あり) 経済自立のお話でありますが、お話の通りの現状であると思います。故に日本は食糧原料その他の確保に十分盡さなければならない事情は、私も十分に述べたつもりであります。併しながら米国その他の事情は又御指摘の通りであります。外国の原料或いは食糧・軍需物資の輸出は非常に制限せられておる状態でありまするから、現在日本の物資の輸入は甚だ困難な状況にあります。併しながら若し日本が経済的に崩壊するというような場合があれば、これ又今日まで日本に対して援助政策をとつて来た米国政府としては見捨てることはできない事態にあり、又全体の民主国家の集団安全保障と言いますか、その政策の上から言つて見ても、放つて置くことができない事情にあると考えます。(「それが独立国か」と呼ぶ者あり)今日若し食糧その他が不足をした場合には(「妾だ」と呼ぶ者あり)あらゆる方法を以て援助してくれるであろうし、又我が国みずからが自力によつてその諸対策を講ずべきであると思います。(「奴隷のごときものだ」どなるなよ」と呼ぶ者あり) 又單独講和をいたすことによつて或いは多数講和をいたすことによつて、却つて日本の安全が侵されやしないか、或いは共産主義国に日本攻撃のいい口実を與えやしないかというお話でありますが、そういう場合もあるかも知れず、ないかも知れず、これは私はお答えはいたしません。(笑声)又中立論についても同じことであります。中立を保持することができれば結構であります。併しながら現に共産主義国のごとき危險な分子があり、民主主義国に対して攻撃を公然朝鮮その他においてなしておる今日においては、中立を守ることはむずかしいと思います。仮に日本が申立を希望しても、中立を維持することのできない事態にあると考えます。以上お答え申上げます。(拍手、「解散はどうした」「再軍備はどうした」と呼ぶ者あり)
○議長(佐藤尚武君) 鬼丸義齊君。 〔鬼丸義齊君登壇、拍手〕
○鬼丸義齊君 私は国民民主党を代表いたしまして、吉田内閣総理大臣に対し、講和の問題につきまして、ダレス特使との会談に関しまして、以下数項目に分つて、最も重要であると思いまする点についてお伺いをいたしたいと思います。 第一に、講和の問題は日本将来の運命を決すべき超重要なる事項であつて、而もその内容の決定はすべて国民の意思に基礎を置かなければならないことは、民主国家として当然なことであります。吉田総理大臣は去る一月二十七日の衆議院本会議において、我が党の三木武夫君に対し、この問題については謙虚な気持で世論の赴くところに従う心境であるとお答えになつております。然るに講和條約の問題については、昨年の九月十四日、トルーマン大統領が対日講和について関係諸国との非公式討議を開始する権限を国務省に與えた旨の言明がありまして以来、着々とその実現の歩みを進めて参りまして、今回ダレス特使の来朝によつていよいよ講和の曙光を見るに至つたのであります。この間、総理は如何なる方法によつて国民の輿論を把握せられたりや、甚だ懸念に堪えないものがあります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)我が党は夙に、外交問題は超党派的に十二分に研究を重ね、これを処理しなければならないことを、最も強く主張して参つたのでありますが、(拍手)これまで吉田総理より特にこの点に関しまして御相談を受けましたことは全然ありません。又他党に対しても何ら意見を求められたような形跡は見受けられないのであります。(「怪しからんぞ」と呼ぶ者あり)昨日の総理の報告によりますれば、今回のダレス特使との会談は、講和條約の交渉又は下相談というのでなく、講和及びこれに関連する諸般の問題について相互に隔意なく意見を交換したのであるとのことでありまするが、その性質の如何にかかわりませず、ダレス特使に対する総理の意見が講和条約の上に対し如何なる影響を與えるものであるか。その比重の点につきましては、今更多くの説明を要するまでもなく、(「そうだ」と呼ぶ者あり)まさに重要中の重要事であろうかと確信をいたすものであります。(拍手)果して然りといたしますならば、ダレス特使との会見前に、何らかの方法を以て、少くとも各党の意見を聞き質し、総理の賢明によつてこれを取捨するの用意を必要としたのではなかろうか。この点に対しまする総理大臣の御所見を承わりたいと思います。(拍手) 第二に、昨日吉田総理大臣は、ダレス特使との会談について、衆参両院の本会議において、約十五分間に亘つて御報告があつたのであります。然るに総理の報告は極めて抽象的であつて、講和の内容について総理から如何なる申出をなしたのであるか、又これに対するダレス特使の意見はどんなものであつたか、その談話の是非に対しまする総理の見解がどんなものであるか、全く言及せられていないのであります。この点は私どもの甚だ失望したところでありまするが、勿論、事、外交の問題でございまするから、これを公にすることを憚らなければならない点もあろうとは思いますけれども、講和の内容如何が日本将来の運命をトする重要なことでありまするだけに、私どもは勿論、国民といたしましても、一刻も早くこれを知らんと欲しますることは、当然なことではありますまいか。総理はこのたびのダレス特使との会談状況を更に詳細なる報告をなされるお考えがあるかどうか。又これ以上詳細に公表することができないのであるかどうか。例えば対日講和問題に対する米国政府の示されたる七原則についても、その内容は極めて広汎なものでありまして、具体的には如何なる事項を指すのであるか。願わくば各項目において総理よりこれを解明し、国民に知らしめることが、親切であり、又民主的であると同時に、それは当然政府の責務ではなかろうかと存ずるのであります。この点に対しまする総理の御見解を伺います。 第三、ダレス特使の発表されるところによりますれば、講和方式は多数講和であつて、実質的には日本と米国との間で了解のできた基本線が中心となつて、これを原本とし、これに講和に参加する国々の意向をも織り込んで一つの條約とし、これを各国が同時に調印する順序となるように言われております。この点について、連合国全部が一団となつて條約当事国となるのであるか。若し全部が一団となつて集約当事国であるといたしまするならば何らの問題は起りませんが、連合国中の若干国だけにおいてのみ締約をいたしまする場合は、その條約は、日本と締約多数国が一団となつて一つの当事国となり、一つの條約を締結することになるのかどうか。又個別的に締結をするのであるかどうか。このいずれかによりましては、條約の内容は勿論、手続上大なる相違があると思われるのであります。この点に対しまする総理の見解を示されたいと思います。又ダレス特使は、連合国全体に対し、日本と米国間において了解のできた基本線を中心としてその参加を求めんとして異常な努力を拂われておりますることは、我我として深くこれを感謝すると同時に、いわゆる全面講和を希望するものでありまするけれども、不幸にしてダレス特使の御盡力が遂に報いられるところなく、連合国中若干国が脱落いたしまするような場合は、その脱落国に対して総理は改めて我が国から講和参加の要請をするお考えがあるかどうか。この点については一切ダレス特使にお任せして、日本としては何らの手続をもなすことなく、同意せられたる若干国だけの間においてのみ講和條約を締結するものであるかどうか。総理の御所見を承わりたいと思います。更に多数国講和の場合において、これに参加せざる国家と日本との関係は依然として戰争状態が継続し、日本はその非参加国に対し、ポツダム宣言受諾に基くあらゆる従来の義務が依然として継続し、これを忠実に履行しなければならないものといた、しまするならば、まさに講和條約を締結せんとする若干国との契約の内容に正面衝突をするような場合があり得ると想像せられるのであります。この間における調整について総理は如何にお考えになつておりまするかをお伺いいたしたいと思います。 第四、ダレス特使の発表によりますれば、講和條約について、その條約の前文において、日本戰後の立法及び発展を活気付けて来た国内的及び国際的行為の立派な原則を守るという決意を明らかにすることができるかも知れぬ云々とあります。この点は又極めて重要なることでありまして、終戰後の立法につきつましては、日本民主化のため適切妥当のものの甚だ多かつたことは勿論でありますが、中には実施して我が国情に副わないものがあつて、これを改めなければならないものも若干あるように思われるのであります。よつて、しかく不動の締結をいたして置きますることは大いに考慮を要することのように思われまするが、この点に対する総理とダレス特使とのお話合いは如何なる事情であつたか、又これに対しまする総理のお考えはどんなものであるかをお尋ねいたしたいと思います。 第五、戰犯者に対してはすでに判決確定して、それぞれこれが刑の執行を継続してい者も未だ不幸にして多数あると思われます。而してその執行は、日本国内において現に執行を委託されておりまする者は勿論、連合国内においても現に拘禁執行の者も少くないと思われるのであります。これら戰犯者に対しまする執行は、恐らく講和條約の締結に当り、その執行を日本に移讓せられるものと思われまするが、この点について総理は如何にお考えになつておられまするか。又従来これらの戰犯者に対し、判決の確定いたしました後、マツカーサー元帥の命によつて情状によりその罪を全免若しくは減刑しておられまするようでありまするが、講和後においてかかる恩惠付與の審議並びに権限を行使する特別機関を設けるものであるか。或いは又その権限のすべてを日本に移讓せられるものであるかどうか。又は講和條約によつて戰犯者全部の罪を全面的に許さるるの途はありますまいか。戰犯者の処刑の先例は従来甚だ少く、ただ政治犯等については講和條約成立によつて殆ど全免されておりまするように思いまするが、この点について総理は如何にお考えになつておられまするか。なお被追放者の解除についてのお見通しに対し、総理の御所見を併せ伺いたいと思います。 最後に安全保障について。総理は離日、国内治安の問題は現状にて毫も懸念するところがないとの御信念を明らかにせられたのであります。これは講和後、米兵の日本駐在を前提としての御観察と思われまするけれども、この点は駐兵の程度並びにその方法において相違のありますることは勿論、講和を契機として国内治安の悪化を予想せられまする今日、しかく安易に坐することは甚だ危險であると思うのであります。総理は警察保安の機関の充実によつて万全を期する旨の御意見でありましたが、その程度方法を如何心なされまするか。又外部からの侵略に対し、アメリカは日本が希望するなれば兵力を以て援助を與えるの用意ある旨のダレス特使の表明がありました。総理はこの点に対し、他国のみに依存して置くことは、勿論、国民としての自尊心が許さないのみならず、平和愛好国の義務としてこれに協力をなすの責務があるとの御意見でありましたが、この協力とはどんな方法を以てなさんとせられるのでありまするか。即ち警察予備隊のみを以てその責務を果さんとするか。或いは新たに軍備を整えて侵略を排撃せんとするものであるか。総理は昨日の自由党総会において、講和條約により日本が独立して後に考慮すべきものであるとの御意見を述べられておるようでありまするが、この考慮すべきこととは即ち再軍備を意味するのではありますまいか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)この点について、最近、自衛のための再軍備は憲法を改正するの要なしとの意見を持つ者がありまするが、私の見解としては、この説に、にわかに左袒することはできないのであります。この問題は極めて重要なる事項でありまするから、この際、総理の御見解を承わりたいと想います。 更にこの問題と重大なる関連を持ちまする、而もこれを忽緒に付することのできないことがあります。それは最近日本の婦人及び青年層において、戰争の脅威未だ醒むるに至らず、再軍備反対の声をなす者が相当あるやに聞き及んでおります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり、拍手)而もこれらの人々においても、国家危しと聞くならば必ずしも絶対的に反対するものではないと思います。(笑声、拍手)この意味よりいたしましても、講和の内容、経過等は能う限りこれを発表し、国民全体に知らしめて後、依らしむることが必要であると思われるのであります。総理の御所見を伺いたいと思います。 以上簡單でありまするが、私のお尋ねする事項は以上でとどめます。(拍手) 〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。 先ほど申す通り、ダレス氏のこのたびの来朝は、互いに率直な意見の交換ということを目的といたしておるのであります。従つてお話のように、具体的の場合、具体的の問題について、例えば單独……多数講和をいたした場合には、その他の国との関係はどうするかという、これは先ず私の想像でありまするが、米国政府としては、ダレス氏と我々と申すか、日本に来朝されて看取せられた日本側の意見を土台として、米国政府に講和條約の内容をなすものを進言せられるものであろうと思います。これを以て各国に交渉を更に開くと、その場合、その講和條約の内容を直ちに受諾せざるものもありましようし、又受諾する国もありましよう。併し多数の国が……、受諾するしないにかかわらず、一応連合国全体に対する交渉を開くことと思います。交渉に当られると思います。その場合に、不参加であつたら、不参加の国に対してはどうするかというようなことは、これは米国政府としておのずから考えておるところがあるでありましようが、占領下にある日本としては、その場合に対して、こうしろ、ああしろというような要求はできがたい今日の立場にあることを御了承願いたいと思います。 又超党派外交についてというお話でありますが、これは幣原議長から社会党に交渉をして、そうして再三拒絶会つた事実は、御承知の通りであろうと思います。我が党といたして全然超党派外父に触れなかつたわけではなく、その主義においては賛成いたしまするから、各党と申すか、民主党、社会党の諸君には一応お話をいたしたが、民主党はとにかくとして、社会党は承諾せられなかつたのであります。全然手を触れずにこの問題を無視しておつたわけではないのであります。 又会談の内容をもつと話せというお話でありますが、これは責任の地位にある私として、ダレス氏との話はこうである、ダレス氏の意見はこうである、我々はこう申したというようなことの、会談の内容を発表する今日時期に至つていないのであります。故に私の昨日の説明においては、重要な部分、最も国民に知らして置きたい、国民において考慮してもらいたいという問題を、ことごとく挙げて、一応の説明をいたしたのであります。(「あれで」と呼ぶ者あり)併しこれが只今申す通り、講和條約の交渉のために見えたのではないのでありますから、互いに意見を交渉した程度でありますから、それによつて、こういう結論に達したなんということは、発表をいたすものは何もないのであります。(「変だね」と呼ぶ者あり) 占領下の立法は云々というお話がありましたが、占領中の諸制度についての処置はどうかというお話でありますが、これは日本に対して完全なる独立自主を與えようという米国政府の今日は主義とするところでありますから、自然、占領下における日本の立法、従来占領中にできた立法等の改変は、一に日本政府或いは日本国の自由であつて、米国政府或いは連合国政府からして請求を受け、若しくは立法の上において制限をされることは万々ないと私は思います。又ダレス氏の意見もそのように私は承知いたします。 戰犯者の刑の執行等についてのお話でありますが、これは私も御同感であります。どうかそういうふうに減刑もいたしたい。或いは刑の執行も日本でやりたい。多分そうなるだろうと思いますが、これは将来、條約の内容をなすものでありますから、お答えをいたしません。追放についても同じくその通りであります。追放は許してはいかんということは主権に対する制限でありますから、かくのごときことは万々ないと思います。即ち追放問題は講和條約と共に自然解決せられる問題と思います。 国内の治安の問題についてのお話でありますが、現状を以てして、私は日本の治安機関の力を以て言うならば、治安の維持は差当りのところできると思います。併し今後形勢が悪化した場合には、これに対して、自然、警察機関その他を充実いたしまして、これに当る考えであります。ただ併し外国からの侵入については、共産主義国からしての、朝鮮のごとき突然侵入を受けた場合にどうするか、これは先ほどもしばしば申した通り、今日は共同と申すか、(「集団」と呼ぶ者あり)集団攻撃をなす事態において、これに対して集団防衛をするのが当然であります。これはただに日本のみならず、すべての国がそうであります。故に、日本もでき得べくんば自力を以てこれに対して対抗いたしたいと思いまするが、併しながら現状においてはこれが不可能でありますから、自然、集団防衛ということを考えなければならないのであります(「アジア人のアジアじやないのか」「黙れ」と呼ぶ者あり)又当然であると思います。(拍手) —————————————
○議長(佐藤尚武君) 堀眞琴君。 〔堀眞琴君登壇、拍手〕
○堀眞琴君 私は小会派を代表いたしまして昨日首相が(「共産党は何だ」と呼ぶ者あり)この壇上から発言せられました講和問題に関する見解に対しまして、二三の質問を申上げたいと思うのであります。(「見解じやないぞ、昨日のは」と呼ぶ者あり)講和問題は国民のひとしく関心を持つておる問題でありまして、日本の国が将来どうなるか、どういう運命を迫るかということは、全く講和の内容に関する問題であると申上げなければなりません。従つて我々としては、この講和の内容方式について、是非とも首相にこの際はつきりお答えを願いたいと思うのであります。 先ず第一に、首相の講和問題に対する基本的な態度であります。先ほど和田君からは吉田首相の態度は秘密外交の態度ではないかという発言があり、又只今鬼丸君からは、世論を無視しているものではないかという質問があつたのでありまするが、これに対しては何ら首相は答えられていない。少くとも民主国家の外交であるからには、世論を反映し、世論の土に立つてこそ外交ということが進められなければならぬ。(「そうだ」と呼ぶ者あり)勿論、外交には秘密の事項もある。首相は先ほどコミユニケは極めて簡單ではないか——その通りコミユニケは極めて簡單であります。併し例えばアメリカの外交委員会において、或いはイギリスの国会の外務委員会において、問題は詳細に審議されるのであります。従つて秘密外交乃至は世論を無視したということに対しまして、首相としては懇切丁寧なる回答を與えるべきでありまするが、これを殆んど與えておらぬ。ダレス特使は先月二十五日に来朝されまして、今月十一日に日本を去られるまでの間、限られた範囲ではありましたが、ともかく各層各界の意見を徴せられております。吉田首相が日本を代表してダレス特使と講和問題をいろいろ話合いされるとするならば、やはり日本の各界各層の意見はこうである、勤労大衆はこういう考えを持つておる、青年、婦人はこういう考えを持つておるということを、率直に取次がれるということが、民主政治家としての責務ではないか。(「そうだ」「同感」と呼ぶ者あり)こういう工合に考えるのであります。而も單に世論を無視しているばかりではない。むしろ講和に関する世論の起ることを抑圧さえしようとしているのであります。(「その通り」「とんでもない」と呼ぶ者あり、拍手)例えば全面講和、全面講和と言うと、特定の政党が主張するものであるという工合な印象を與えようとし、講和問題に関する演説会をやろうとすれば、これに対して彈圧を加える。全面講和か、多数講和か、どれが日本の将来にとつて最も正しい講和の方式であるか、或いはその内容はどうかということについて、国民は十分にこれを国民の側においてやはり討議しなければならぬ。ところが全面講和を主張する者を特定政党なりとして烙印を捺してしまうということは、言論の自由を封殺するものであります。(「そうだ違うよ」と呼ぶ者あり)首相は、一体、この世論を無視し、世論を封殺しようとするところのこの態度を、果して民主政治家として認められようとするのか。その点について先ず第一にお尋ねしたいのであります。(「答弁無用」「質問になつていないよ」と呼ぶ者あり) それから第二には、首相は先ほどの言葉の中で、アメリカが敗戰国としての日本を、もはや敗戰国としては見ておらん、旧怨を捨てて、日本に友好の手を差伸べておる、こういうことを申されております。我々もアメリカが友好の手を差伸べられていることに対しましては感謝の限りでありまするが、併しアメリカとだけ友好関係を結ぶことが果して日本の完全な独立と平和を守ることになるのでありまりしようか。(「労農党はソヴイエトと言え」と呼ぶ者あり)先ほど和田君も、鬼丸君も、アジア諸国との関係ということを、特に経済に関連して述べておられました。アジア諸国との最も緊密な友好関係が回復されなければ日本の経済の自立はできない。我々として、アメリカとも、イギリスとも、フランスとも、ソ連とも、中国とも、すべての国国と友好関係を結ばなければならぬ。アメリカとだけ友好関係が回復すれば、それで日本の独立平和が守られるというようなことを考えることは、私は今日の日本の、武装を放棄した日本の立場としてとるべき考えではないと、私は思うのであります。(「頭が悪いぞ、何遍聞くんだ」と呼ぶ者あり)而もこのアメリカとだけの友好、勿論アメリカとの友好は我々も感謝に堪えないが、併しアメリカとだけの友好は、友好を主張することは、(「何回言うのだ」と呼ぶ者あり)それは同時に、いわゆる多数講和、今日まで言われて来た單独講和、この講和の線に繋がるものであります。私はここに、全面講和の法的な根拠である……、單独講和が如何に国際法上無理があるかということについて繰返す必要はない。一九四二年一月一日の国際宣言、この連合国宣言、或いはポツダム宣言、或いは又降伏文書、或いは極東委員会の決定した四七年七月の対日政策の基本を見まするならば、我々としては全面講和以外に途がないということは、はつきりしておるわけです。(「それは共産党と労農党だ」と呼ぶ者あり)木村君は詰らぬ野次を飛ばしておりますけれども、要するに我々としては、アジアの諸国、特にお隣りの中国とは緊密な友好関係を結んでこそ、日本の独立も保たれるし、平和を保つことができるのだと、こういう工合に考えるのであります。これに対しまして(「みつともない」と呼ぶ者あり)首相は、果してアジア諸国との友好関係、その他のすべての国国との友好関係についてどういう話合いをダレス特使との間に行われたか。その点についてお尋ねをいたしたいのであります。 それから第三でありまするが、これはポツダム宣言と講和七原則との間に食い違いがあるということであります。ポツダム宣言は、日本が終戰当時、無條件的に受講いたしたものでありまして、これを嚴格に守るということは我々日本人の義務であります。そうして、このポツダム宣言は日本の憲法以上の拘束力を持つておる。又このポツダム宣言は、日本人が厳格に守らなければならぬと同時に、(「そんなことを言うな、質問をせよ」と呼ぶ者あり)各連合国も日本に対してこれを守らせる義務がある。(「そうだ」と呼ぶ者あり)ところが、ポツダム宣言と(「何と言つているのだ」と呼ぶ者あり)講和七原則を内容的に調べて見まするというと、そこに格段の相違がある。食い違いがある。例えば領土問題であります。ポツダム宣言によつて、カイロ宣言はポツダム宣言の中に吸收され、日本の領土の大綱は決定しておるわけです。(「簡單に」と呼ぶ者あり)ところが七原則では、講和條約後、一年以内にこれが決定しない場合においては、(「堀君、簡單にし給え」と呼ぶ者あり)国連総会にこれを移してきめるということが、七原則の一項となつておる。或いは又、安全保障の問題であります。国連が(「そんなことは聞かなくても知つておるよ」と呼ぶ者あり)実際的な責任をとるような、満足すべきところの安全保障ができるまでは、日本の安全のために、日本とアメリカその他の国との間の責任分担を継続する、こういう工合に七原則は述べておる。ところが、ポツダム宣言の十二項では、御承知のように、講和條約が結ばれれば直ちに連合軍は撤退するということになつておる。講和七原則によるというと、アメリカ、その他の連合国の兵隊が依然として講和後においても駐屯するという結果になるだろうと思う。で、我々としては、このポツダム宣言こそが、むしろ我々の最高の国際法的な講和の基準だと考えなければならんのだが、(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)果してこの講和七原則というものをどのように考えたらいいか。講和七原則とポツダム宣言を、いずれを我々は遵守すべきか。いずれに我我は従うべきか。(「頭が悪い」と呼ぶ者あり)こういうことの点につきまして首相の御意見を承わりたいのです。日本は無條件的に降伏した、こう申します。併し單に無條件的に降伏したのではない。ポツダム宣言を受諾する、その受諾をして無條件に降伏した。この点は我々は十分考慮しなければならないと思う。(「余計なことを言うな」と呼ぶ者あり) それから第四番目に安全保障の問題であります。私はすでに和田君や鬼丸君が述べられたことと重複しないように質問いたしますが、(「簡單」と呼ぶ者あり)先ず第一に、首相は国内治安の問題について述べられておる。現在の警察力を以て十分に国内治安を維持することができる。これが、従つてこの点については、もはや問題はない(「簡單々々」と呼ぶ者あり)ということを述べられておるのです。併しながら、警察予備隊を昨年夏設置いたしまして、海上保安隊の増強を同時に行なつておる。而もこの警察予隊備はすでに武装化しておる。軍隊に代るべきところの存在となつておる。このことは、もはや国民の何人も知つておるところでありまして、若し、そうとするならば、これは明らかに憲法第九條に牴触するものだと言わなければならぬ。憲法第九條によりますというと、陸軍、海軍、空軍一切の戰力というものを持たないということになつておる。一切の戰力というもりには、積極的な顯在的な戰力もありましよう。併し潜在的な戰力もあります。戰争となつた場合にこれに転用せらるるところのものは潜在的な戰力であります。武装化された警察予備隊が果して潜在的な或いは顯在的な戰力の中には入らぬだろうか。若しそうとするならば、單に国内的に憲法第九條に牴触するばかりでなく、更に降伏文書並びに四十七年七月の極東委員会の決定によりまするところの、降伏後におけるところの対日基本政策に違反する結果となるものと言わなければならぬ。(「君の勝手な解釈だ」と呼ぶ者あり)この点について首相はどのように考えられるか。 次に対外安全の問題であります。和田君、鬼丸君の質問に対しまして、(「又同じか」と呼ぶ者あり)首相は、地域的な安全保障を考えておる、集団的な侵略に対抗して集団的な防衛をしなければならぬ、こういうことを述べておられる。(「その、通り」と呼ぶ者あり)併しながら今日のような国際対立の激化した中において地域的な安全保障体制を作るということは、言い換えるならば日本が一方の陣営に就くということであり、それによつて日本が国際的対立をますます激化するという結果になつて来る。(「一同じことを何回言うのか」と呼ぶ者あり)そういうような情勢の下において、(「頭が悪いな」と呼ぶ者あり)一体、地域的な安全保障というものが日本の防衛に役立つだろうか。我々は自衛ということを認めます。我々が侵略される場合、我々は立ち上つて日本を守らなければならぬ。(「その通り」と呼ぶ者あり)併し自衛の名前において曾つてどのようなことがなされたか。帝国主義的な侵略がこれまで行われて来たのであります。我我は今や非武装を宣言しておる。(「それは共産党だ」と呼ぶ者あり)全く無刀のままで日本を守ろうとしておる。武器を持たずに日本を守ろうとしておる。若し我々が本当に正しい立場に立つて、どこの国にも加担せず、国際的な対立の中に巻き込まれずに毅然として立つならば、どこの国が日本を侵略するでありましよう。(「嘘はやめろ」と呼ぶ者あり)私どもはそういう意味におきまして地域的な安全集団保障の考え方には反対せざるを得ない。この点について、もう一度首相の答弁をお願いしたいと思う。(「答弁無用」「時間が来ました」と呼ぶ者あり) 最後に、講和は日本が完全な独立と平和を得るためのものであります。延いてはそれは世界平和に貢献するものでなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)若しそれが日本の独立と平和とを脅威し、そして更には世界の平和を侵すというようなものであつたならば、我々としてはそういう講和に対しましては絶対反対しなければならぬ。講和こそは日本の将来を決定する最も重大な問題であります。何人も昨日の首相演説に対しましては国民は非常な関心を持つております。この際、我々としては、日本の講和が世界の平和のために、日本の平和のために、日本の完全な独立のために、正しい完全な講和であることを私は望みたいと思う。この点を要望いたしまして、首相の答弁を求める次第であります。(「答弁無用」と呼ぶ者あり、拍手) 〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。 私の声明、私の態度が輿論を無視した、これに対する返事がないじやないかというお話でありますが、無視をいたす考えもなし、又無視しないと申して、ここで以て争うのは、余りに馬鹿げておりますから、お答えをしなかつた。(拍手)又輿論を無視した、或いは又輿論を抑圧した、講和に関する演説会を彈圧したというような事実は毛頭ないのであります。のみならず私は常に申しております通りに、輿論の帰趨に従つて講和條約に対処するつもりであるということは、しばしば口を酸つぱくして申しております。故に輿論を無視したという考えは毛頭ない。のみならず無視した事案もないと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手) 又講和條約、全面講和問題について重ねてお尋ねでありますが、これに対する私の答えは同じような答えであります。結構であるが、できなければいたし方がない。又ポツダム宣言と講和條約如何。講和條約に関する七原則との間に食い違いがあるではないかというお尋ねでありますが、食い違いがあるのは当然であると思います。ポツダム宣言なるものは戰敗国と戰勝国との間の関係を規定いたしたものであります。将来の講和條約は、完全な独立国として対等の地位において日本を取扱われたいと考えるのでありますが、その基本原則において違うのであるから、食い違いは当然である。(「とんでもない」と呼ぶ者あり、拍手) 又警察予備隊はその名のごとく予備隊であります。国内の治安維持のためであります。その持つ武装がこれが軍備と言えば、巡査の持つ武器も、ピストルも、これも武装と言つて、憲法第九條に矛盾するということになりますが、こういう馬鹿げた問題に対してはお答えをいたしません。集団保障についての話は、先ほどまで口を酸くして申しておりますから、従来申したところについてお考えを願いたい。(拍手)
○議長(佐藤尚武君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。内閣総理大臣の発言に対する質疑は終局したものと認めます。 次会の議事日程は決定次第公報を以つて御通知いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時三十八分散会 —————・————— ○本日の会議に付した事件 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)