本会議 第4号
- 発言数
- 11 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1951/01/26
会議録
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。 —————・—————
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。 この際お諮りいたします。北村一男君、岡田宗司君、楠見義男君、三好始君から、米国の農業事情視察のためそれぞれ七十五日間、海外旅行のため常岡一郎君から三十四日間、山下義信君から三十日間、川上嘉市君からは病気のため四十四日間請暇の申出がございました。いずれも許可をすることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。 —————・—————
○議長(佐藤尚武君) 日程第一、国務大臣の演説に関する件。 吉田内閣総理大臣、周東国務大臣及び池田大蔵大臣から発言を求められております。これより順次発言を許します。吉田内閣総理大臣。 〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
○国務大臣(吉田茂君) ここに私は第十回国会の開会に際し、施政方針を述べることを欣快といたします。 最近、我が国復興再建の機運とみに横溢し、昨年末には辺隅の地に至るまで稀に見るまでの景況を呈しましたことは、誠に御同慶の至りであります。目を海外に転ずれば、朝鮮動乱は中共軍の参加と共に一層の紛糾を生じ、これを中心として冷たい戰争の様相を世界の至るところに現わし来たつております。この間、我が国における共産主義者の跳梁は漸次影をおさめ、治安上何ら憂うべきものなきは御承知の通りであります。否、我が国を民主主義の基盤として、極東共産主義制圧の一勢力たるの期待をかけられつつある国際的環境にあるのであります。この内外の情勢は自然対日講和の機運を促進して参りまして、我が国が米英その他の多数の民主自由主義国家の間に伍する日の遠からざるを思わしめることは、我が全国民の共に共に満足するところと信ずるのであります。そのことに至らしめましたのは、終戦以来我が国民の独立を思うの熱誠、愛国の至情であるのであります。又この熱誠なる至情は、つとに連合国、わけて連合国総司令官たるマツカーサー元帥の了解せらるるところとなり、久しきに亘つて終始変らざる好意ある努力の結果であることを記憶すべきことは申すまでもないことであります。そもそも講和條約の問題は、自然我が国安全保障の問題に想到いたしまして、すでに種々の論議の焦点となつておりますことはもとより当然のことであります。我が国の安全は国民みずからの力によつて保障され、擁護せらるべきは勿論であります。併しながら、右を直ちに再軍備に結び付け、これを軽々に論断するは私のとらざるところであります。我が再軍備論はすでに不必要な疑惑を中外に招いており、又事実上強大なる軍備は敗戰後の我が国力の耐えるところでないことは明白であります。一国の安全独立は單に軍備軍力のみの問題ではないのであります。頼むべきは国民の独立自由に対する熱情であります。独立自由、愛国的精神の正しき認識とその観念であります。この熱情及び正しき観念に欠くる軍備は外に対しては侵略主義となり、内においては軍国主義政治となるは、我が国最近の事実の経過において明らかなるところであります。再軍備に対して私は国民諸君が最も愼重を期せられんことを希望してやまないものであります。 朝鮮動乱は国際連合の努力にもかかわらず、今なお解決を見ないことは誠に遺憾に堪えないところであります。もとより世界に亘る民主、共産両陣営の間には根本的の対立が存在するのであり、又従つていわゆる冷たい戰争は容易に解消しがたいのであります。第三次戰争の勃発必至なるがごとき思いをせしむる神経戰は、今後ますます世界至るところに激化することを覚悟いたさなければならないのであります。この間に処して、我が国民は一時的な戰局の推移に一喜一憂することなく、冷靜毅然たる態度を持することを私は切望いたしてやまないのであります。 世界の自由と平和と正義とを確立せんとする民主主義国家の目的は、必ずや究極の勝利を收むるものであることを私は確信いたします。故に我が国民は右顧左眄することなく、世界政治に民主自由主義の確立を目指して他を顧みざるの気概を有したいものであると私は考えるものであります。 講和條約後我が国が真の独立国家として立ち上るためには、経済の自立を図るは勿論でありますが、強く国民の道義を高揚し、国民の自立精神を振興することが根本であります。このために政府は文教の振興に一段の力を致す考えであります。 政府の財政金融政策の基調とするところは、すでに克ち得た安定の基盤の上に、経済の自立を目指して積極的に努力を積み重ねて行くということであります。近時我が国産業界もますます活況を呈しておりますが、久しきに亘る戰中、戰後、わけて敗戰日本の復興回復は決して容易なことではないのであります。国民一致協力、我が国経済の着実な復興発展を図るべきものであるのであります。 今回提出いたしました昭和二十六年度予算案は、この構想によつて編成いたしたものでありまして、真の財政の均衡を堅持しつつ、産業経済の回復を図ると共に、本年度に引続いて更に大幅の減税を行わんとするものであります。前年以来歳出の節減による減税に努め来たつたのでありまするが、なお国民は重税に苦しみつつあるのであります。政府は行政の簡素化、歳出の節約と共に、税制及び徴税方法の改善に一段の努力を致したい決心であります。 産業金融政策においては、資本蓄積と輸出入の振興に重点を置く考えでありまするが、殊に輸入の促進については、国際的軍備拡充の気構えに伴い、諸原材料はその価格が高騰するのみならず、各種の重要物資の入手が甚だ困難なる現状に鑑みまして、国内資源の開発活用は勿論のことでありまするが、輸入の促進を図ると共に、必要なる船腹の増強に力を注ぐ所存であります。なお又、電力、鉄道、交通及び通信事業の公共性及びこれが産業開発の根幹をなす事実に鑑みまして、これら事業の充実振興に更に一層の努力を傾注いたす考えであります。 政府は、我が国の農林水産業の現状に鑑みまして、これが発達奨励に必要なる公共事業費等を計上する外、長期資金の確保につき、近くこれに関する特別措置を講ずる考えでございます。 最近台風等による被害が甚だしく、政府は重要施策の一つとして災害対策を重視し、更に積極的に治山治水、利水事業の総合計画をし、強力にこれを実行したい考えでございます。 我が国経済の自立振興のためには、労働秩序の安定が大切なことでありまするが、幸いに昨年来特需産業その他各種部門において雇用量は増加しつつあるのでございます。政府は産業の振興により更に失業者の吸収を図ると共に、失業対策事業費を増額計上し、失業者の就労の確保並びに生活の保護に努力を致したい考えでございます。 近来国民生活は漸次改善せられ、生活水準も向上しつつあるのでございますが、社会保障制度の整備及び結核予防撲滅に注意し、政府は明年度よりその対策強化のため必要なる予算を計上いたしております。又政府は一層地方自治の確立を図るため、地方税及び財政制度等を更に整備する目的を以て関係法律案を提案いたします。又政府は現下内外の諸情勢に鑑みまして、警察制度の改正、海上警備の一層の充実につき目下検討中でございます。 引揚問題に関しましては、今なお多数の未帰還者があることは誠に遺憾に存じます。本件は先般国連総会にも上程され、我が国よりも代表者が出席いたしましたことは、御承知の通りであります。幸い国際連合に捕虜に関する特別委員会が設置せられることとなりました。この委員会の今後の活動に多大の期待を持つものでありまするが、政府は目的達成のために、今後ともあらゆる努力を重ねる考えでございます。 以上の外重要なる政務につきましては、順次所管大臣から説明いたします。(拍手)
○議長(佐藤尚武君) 周東国務大臣。 〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(周東英雄君) 本日、第十回国会の再開に当りまして、日本経済に関する最近の諸情勢と政府の経済施策の大綱につきまして、所信を明らかにする機会を與えられましたことは、私の最も喜びとするところであります。 我が国経済が昭和二十四年以来の経済安定諸施策の実施によりまして、経済の安定と正常化に多大の成果を收め、更に安定から自立に向つて堅実な歩みを辿つて参りましたことは、国民諸君と共に誠に喜びに堪えないところであります。然るところ、昨年六月の朝鮮動乱の勃発を契機といたしまして、世界各国は本格的に軍備拡充の方向に乗り出し、世界経済も又大きく転換を見つつあるのでありますが、これらの最近の国際情勢等から見て、日本経済に関する諸情勢について、先ず以て所見を申し述べたいと存じます。 先ず貿易でありますが、輸出は海外需要の増加等を反映いたしまして、順調に伸張し、昭和二十五年度中には八億ドルを超え、昭和二十四年度に比べますると六割程度増加する見込であり、このほか朝鮮動乱に伴う特需契約高も年度内には恐らく二億ドルを超える見込であります。これに対し、輸入については、昨年七月以降外貨資金の効率的活用等を図ることによりまして、極力重要物資の輸入確保に努力して参つたのでありまして、昭和二十五年度は援助輸入を含めて十一億ドル程度に達する見込であります。 生産について見ますれば、右の輸出の伸張と特需の増加等有効需要の増大に伴いまして、従来の滞貨が一掃されたばかりでなく、生産活動は活撥となり、企業経営は著しく好転を見たのであります。即ち鉱工業生産は昨年十月戰前の生産水準を超えまして、その後ずつと毎月増加の傾向にありまして、昭和二十五年度は昨年度に比べまして鉱工業生産は約二割五分程度増加するものと考えられるのであります。かように貿易及び生産は上昇し、経済界は活況を呈しているのでありますが、他面、物価は動乱以来国際物価の騰貴、輸出及び特需の増大等に基き、生産財を中心に上昇の傾向を示しておるのであります。又消費者実効価格も若干の上昇を見ておりますが、実質賃金及び国民消費水準はおおむね横ばいの状況にあります。併し一部物資につきましては、輸出、特需等の増大に伴いまして、需給の不均衡と価格の高騰を来たす虞れもありますので、急速に重要物資の輸入確保と生産規模の拡大を図ることが緊急の要務となつておるのであります。朝鮮動乱後の我が国経済情勢にはかような幾つかの注目すべき現象が見られるのでありますが、顧みて我が国経済の基盤に思いをいたしますならば、我が国経済は終戰後今日まで御承知のように巨額に上る米国の援助によつて賄われておるのであります。又、企業の蓄積資本は不足し、国土の復旧は思うに任せず、我が国経済の発展の基礎は未だ必ずしも十分ではないと言わなければならんのであります。而も今後長期に亘つて米国の経済援助に頼ることの許されないことは申すまでもないのであります。 以上のような経済諸情勢の中にあつて、我々が不退転の決意を以て努力を傾注すべき最大の課題は日本経済の自立を達成することであります。即ち朝鮮動乱及びこれに伴う国際情勢の推移による惡條件を克服し、好影響を十分に活かしつつ、輸出及び輸入貿易の振興、生産規模の拡大等によりまして、経済規模を拡大して、急速に日本経済の自立を達成することに今後の経済施策の基調を置くことであります。殊に本年こそは、我々国民の最も念願しておりました講和の成立が期待される年であります。この講和の成立により、初めて我が国が政治的に独立国家として更正し、新たに民正主義国家の一員として、世界の平和と福祉の増進に積極的に寄與することができるのでありまするが、その裏付けをなすためにも我が国経済の自立は絶対に成し遂げなければならん事柄であります。日本経済をめぐる諸情勢を顧みますときに、自立経済の達成はもとより容易な業ではありません。併しながら政府といたしましては、経済自立に対する一応の計画目標を決定いたしまして、激動する国際情勢の推移に即応しつつ機動的に運営いたしまして、全力を盡してこれが達成に努めたい所存であります。我々は米国を初め民主主義諸国が我が国のこの努力と決意とを十分酌みとられて、我が国が経済の自立を達成し、国連に協力して、世界の福祉に貢献し得るように全幅の援助と協力とを與えられんことを期待してやみません。 政府は日本経済の自立達成の目標を一応昭和二十八年度に置いておるのでありまするが、これを達成する一応の計画といたしましては、輸出額はこれを年間十四億ドル乃至十五億ドル程度に拡大することが必要でありまするし、鉱工業生産は昭和二十五年度の三〇%以上を増加することが必要であります。又国民の生活水準は昭和九—一一年の約九〇%の水準に向上せしめることといたしております。もとより今後達成すべき自立経済の構造といたしましては、單に国際收支を均衡せしめるだけでなく、国際收支を均衡せしめつつ、できるだけ国民生活水準の向上が確保され、合理的な経済循環を可能ならしめるものでなくてはならないのであります。同時に今後の国際諸情勢の変転に対処する観点からいたしまして、国内自給度の向上に努める必要があると存ずるのであります。 次に、右に申述べました日本経済の自立態勢を近い将来に確保する基本方策の一環として、昭和二十六年度において実施すべき重要経済施策につき、以下所見を申述べたいと存じます。 第一は、重要物資の輸入促進であります。最近における国際情勢に対処し、今後インフレを防止して日本経済の安定を図り、更に進んで経済の自立を達成するため、輸出の増進と併行して、特に食糧及び鉄鉱石、強粘結炭、原綿、塩等主要原材料の輸入の促進を図ることが現下の急務であります。貿易の飛躍的増大を期し、特に緊要物資の輸入確保を図るためには、各般の施策が張力に推進されることが必要であります。先ず昨年七月以降、政府は、外貨資金の効率的活用に努めて参つたのでありますが、最近輸出が著しく伸びまして、国際收支が改善されて参りましたので、この機会を捉えまして保有外貨を積極的且つ機動的に活用して、我が国が必要とする物資を早期且つ大量に輸入するよう、外貨面につまましても一層積極的に措置を講ずる考えであります。又必需物資を早期に、大量に輸入するに当りましては、国際情勢の変転を織り込んだ適切な貿易計画を立てて、情勢の推移に即応して、機動的且つ効果的にその運用を図ることが必要であります。特に、需要の旺盛な物資につきましては漸次国際的に割当が行われる傾向も予想されますので、我が国向けの食糧、主要原材料然の輸入を確保することに万全の措置をとる所存であります。又、最近、中共地区に対する輸出制限の措置がとられましたことに伴いまして、同地域からの鉄鉱石、強粘結炭、塩、大豆等の重要物資の輸入につきましては、米国その他の地域への転換を急速に進めて参つておるのであります。 輸入を確保促進する上から見まして、現下最も重要な課題は船腹の増強であります。国際情勢の推移によりまして、今後、米国その他遠隔な地域からの買付を行わなければならないため、船腹の需要はますます増大し、他国船舶の輸送に依存することが次第に困難を加えることと考えられますので、自国船腹の増強拡充を図ることは焦眉の急務であります。これがため、今後、外航船の建造、傭船、船腹の購入等を促進し、これに関する所要資金の確保等に適切な措置を講ずる考えであります。 更に、今回、必需物資の輸入を確保する一環といたしまして、緊要物資蔵入確保のため一般会計から二十五億円を繰り入れまして、緊要物資輸入基金特別会計を設置することにいたし、今後、その基金の彈力的且つ積極的な運営によりまして、当面の緊急需要を充足いたして参りたいと考えております。又、輸入金融につきましては、先に実施を見ました日本銀行の外貨資金貸付制度を支柱といたしまして、資金の円滑な融通を図るほか、輸入物資の引取に必要な資金につきましても、極力これが疏通に努める考えであります。右の諸施策を強力に推進することによつて、今後重要必需物資の輸入を促進し得るものと考えております。他面、輸出につきましても、最近の輸出貿易の好調を持続することが必要でありまするし、これがため輸出産業の合理化、輸出金融の円滑化に一層努める所存であります。先般発足を見ました日本輸出銀行によりまして、輸出の振興に必要な長期資金の疏通が図られることとなつたのでありまして、これによりまして、歳入及び輸出の両面を通じて、我が国経済の自立と発展のため必要な貿易の振興が図り得るものと信ずるものであります。第二に、生産規模の拡大と産業合理化について申述べます。 世界的な軍備拡充の趨勢に伴いまして、特別需要はいよいよ増大し、かかる情勢は相当期間持続するものと予想されるのであります。このような国際情勢の下において、国内需要を確保しつつ、国連に協力する態勢の下に、増加する輸出、特需等の需要を充足するためには、出産規模の拡大を急速に実現守ることが緊要であります。 終戰後我が国の鉱工業生産は、国民各位の努力と政府の施策によりまして、逐年増加の一路を辿り、昨年十月には戰前の水準を超えるに至りました。又、企業合理化への努力も昨年以来経済正常化の進捗に伴いまして相当推進せられてはおりますが、今後生産力を拡充するためには、先に述べました通り、先ず主要原材料の搬入を確保することはもとよりのことでありまするが、同時に我が国の生産設備能力は、鉄鋼、綿糸等一部の重要物資につきましては、すでに操業度が相当高度になつておりまして、今後増産を期するためには、生産設備の拡充を図ることが必要であり、又、その他の物資についても、今後の需要の増大、これに応ずるためには、現有設備の補修改良等、操業度の向上を図ることが必要であります。 生産力の拡充と同時に、この際、緊要な課題は、生産設備の質的改善、特にその近代化であります。一般に我が国の機械設備は著しく陳腐化しておりますので、新式機械設備の輸入、外国技術の導入、老朽機械等の更新等によりまして、生産設備の近代化を実施し、産業合理化を促進して、国際競争力の充実育成を図ることが必要であると考えております。政府といたしますても、工業技術の振興、技術の導入等を促進して、産業合理化のための資金の確保に支援を惜しまない方針でありますが、各企業自体においても更に一層合理化への努力を拂われるよう要望してやみません。 生産水準の向上を図るにつきまして、その決定的な要因をなすものは電力であります。一昨年以来我が国の電力は幸い豊水に恵まれて来たのでありますが、現在の生産を確保し更にこれを拡充するためには、電力の供給力を急速に増加する必要があるのでありまして、電源開発を促進すると共に、送配電設備を整備して送配電損失の軽減を図るべきであります。而も、電源開発の事業は相当時日を要するため、これが早期完成を促進する所存であります。 第三に、国土の総合的開発保全を通じて経済基盤の育成充実を図ることが必要であります。 今後における我が国の人口増加の趨勢と、これに応ずる国民経済の規模、産業の構造等に深く思いをいたしますならば、我が国経済の自立の基盤は、なお脆弱たるを免れないのであります。特に食糧を中心とする農業生産につきましては、農民諸君の久しきに亘る努力と政府の施策とによりまして相当の効果を収め、輸入食糧の確保と相待つて最近の食糧事情は著しく緩和されて参つたのでありまするが、農業経営の零細化、農業生産基盤の脆弱等の現状に鑑みまして、土地改良、治山治水等によりまして、積極的に国土利用の高度化を図ると共に、畜産の増強を困り、農業協同組合を積極的に育成する等、農業諸施策を能う限り推進して、農業経営の安定に資したい所存であります。 又、水産につきましても、水産資源の重要性に鑑み、今後とも水産資源の維持育成とその利用の高度化を推進して参りたいと考えておるのであります。 終戰以来毎年おおむね千億円程度の災害が発生し、河川、耕地等の荒廃が甚だしい現状にありますので、極力災害の復旧を図ることは勿論、更に進んで治山治水、道路、港湾の整備等一般公共事業を推進することにより、国土の総合的開発保全の根本を確立する所存であります。第四に長期資金の確保について申述べたいと思います。今後の金融施策の基調は、言うまでもなく貿易の振興、生産規模の拡大、経済基盤の育成等、現下緊要な経済施策に必要な資金の円滑適正な供給を確保することに置くべきであります。特に貿易の振興、生産設備の拡張及び産業合理化等に必要な長期資金の確保が急務でありまして、この点につき重要な役割を果すべきものは、見返資金及び預金部資金等、政府資金の活用であります。政府はもとよりこれらの資金の早期有効な運用に一層の工夫と改善をこらして行く所存でありまして、これにより効果的且つ迅速な投融資目的を達成し得ると考えるのであります。即ち昭和二十六年度の見返資金の運用に当りましては、現下緊要の電源の開発、船舶の建造その他の需要産業部門並びに我が国において重要な地位を占める中小企業及び農林漁業部門に対して相当額を活用し、投資の円滑を期する所存であります。又預金部資金の産業資金への活用の途を新たに開くこととし、昭和二十五年度二百億円、昭和二十六年度四百億円を金融債に運用する考えでありまして、長期資金の供給に寄與するところ、けだし大なるものがあると信じます。なお政府は今後長期資金を確保し、特に造船その他の基幹産業に対する資金の円滑な供給に資するため、長期金融機構の整備を実現いたしたい考えであります。次に、今日の日本経済にとつて最大且つ緊要な課題は資本の蓄積であります。特に米国の対日援助によりまして、従来我が国の資本の不足が補われて来たのでありますが、将来その援助が漸減することを考慮いたしますと、以上の政府資金の活用を図ると共に、むしろこれに先立つて民間資本の蓄積こそは最大の急務であり、日本経済の自立は一にかかつて資本の蓄積力の涵養によると言うも過言ではないのであります。これがため今後預貯金の増強、企業の自己蓄積の増加等につきまして、積極的に税制上及び金融上の措置を講ずると共に、証券取引制度の整備改善を行う等により、証券投資の助長、証券市場の育成に努めたいと考えておるのであります。 なお、この際、外資の導入について一言申述べたいと存じます。国土資源に恵まれない我が国経済といたしましては、経済の自立を早期に達成するため国内における資本形成を以上述べた通り促進すると共に、適切な外資の導入が一層促進されることが最も望ましいのであります。政府といたしましては、今後とも米国その他の協力を得て、これが促進に努めて参りたい所存であります。 第五に、国民生活の安定について申述べたいと存じます。最近の国際情勢の推移に対応して行くには、貿易、生産等の面から日本経済の円滑な運営を確保すると共に、特に国民生活の安定乃至向上を図ることが最も緊要であります。申すまでもなく、国民生活の安定は、基本的には貿易の振興、生産の増強等による国民所得の増加と物価の安定に待つものであります。従いまして、先に述べましたように、経済規模を拡大して国民所得の増大を図りますと共に、今後とも物資需給の確保を困ること等によりまして、物価安定への一層の努力をいたし、国民生活の安定を期する所存であります。先ず、これがため昭和二十六年度におきましては、価格補給金の大幅削減等により、財政規模を縮減し、その余裕財源を以て所得税を中心とする租税負担の軽減合理化の措置を講じ、これによりまして、国民生活水準の確保と実質賃金の充実に努めることといたしたのであります。国民生活の安定を図りますためには、衣食住に亘る生活の安定が必要であります。(「いい考えだ」と呼ぶ者あり)政府は食糧の確保が国民生活安定の基礎的條件である点に鑑みまして、一面、土地改良、農林漁業金融の促進等により、食糧の増産対策を推進し、食糧を中心とする農業生産力を増大し、食糧自給度の向上を図るための施策に努めますと共に、他面、引続き小麦、米等、三百万トン程度の輸入食糧の確保に万全を期する所存であります。即ち食糧需給の明確な見通しの下に、如何なる困難がありましても、食糧、特に主食の確保を期する考えであります。 次に衣料につきましては、綿花、羊毛等の原料輸入の増加により、国民の衣料事情も又相当改善されつつあるのでありまして、政府といたしましては、今後食糧及び衣料の確保については、十分の確信を持つておるのであります。更に、国民生活上重要な住宅問題につきましては、公共事業費による住宅の建設、住宅金融公庫の運営等の諸施策により、住宅建設を促進し、住宅不足の緩和を図つて行く所存であります。 以上申述べました経済施策を今後強力に推進することによりまして、日本経済の安定と自立とは大いに促進されるものと信ずるものであります。一般に経済の運営については、企業みずからの創意と工夫によつてその発展を期すべきものであり、政府といたしましても、かかる方針を堅持するものでありますが、将来我が国が必要とする重要物資の輸入の状況、一部物資の生産状況等によつて、物資の需給に不均衡を来すがごとき場合には、インフレの再発を防止し、国民経済の健全な循環を確保する目的から、事態の推移に即応しで、物資需給の調整、物価の安定について適当な方式による調整措置を講ずる必要が生ずるものと考えるのであります。(「統制経済に帰るか」と呼ぶ者あり)政府は併しながらかような場合におきましても、太平洋戰争中におけるがごとき孤立無援の時代と、現在のごとく米国を初め世界の民主主義国家の好意ある支援の下に(「奴隷根性だ」と呼ぶ者あり)積極的に貿易の許されている現状との相違を強く認識し、その認識の上に立つて国際情勢の推移に即応しつつ、効率的且つ彈力性のある調整措置を講じ、漸く軌道に乗りつつある日本経済の正常化を後退せしめるがごときことは絶対に避ける所存であります。(拍手) 右の経済諸施策を適時適切に実施いたしました場合の昭和二十六年度の貿易の見通し及び生産の見込につき最後に一言いたしますならば、おおむね次の通りであります。輸出はおおむね十一億ドル程度となり、輸入は援助輸入を含めまして十五億ドル近くになるものと予想せられるのであります。このほかに相当額の特需、貿易外收支等を併せ考えますときには、輸出輸入を含めて国際収支の規模は昭和二十五年度に比較いたしましても相当増大する見込であります。鉱工業生産は全体として見て昭和二十五年度に比して一割以上の上昇が期待できるのであります。今、重要物資について生産見込を推計いたしますならば、例えば石炭は約四千二百万トン、普通鋼鋼材は約三百八十万トン、セメントは約四百八十万トン、硫安は約百七十五万トン、綿糸は約七億ボンド等の生産が予想せられるのであります。これを戰前昭和七—十一年の水準と比較いたしますと約一一五%程度に当り、終戰直後の極度に疲弊した姿から回復して格段の上昇と復興とが認められるのであります。 さて諸君、先にも申述べました通り、日本経済の自立こそは、我々が今日最も努力を傾けなければならない最大の課題であります。昭和二十六年度の日本経済は、経済自立の達成を最高目標として、国際情勢の推移に対処しつつ、貿易規模の拡大と生産水準の向上とにより、経済規模の拡大を実現すべき好機に際会しているのであります。全国民の自立達成への熱意と努力とが傾けられ、又政府の経済施策が適切に推進されるならば、昭和二十六年度の経済情勢は昭和二十五年度に比べまして一段の前進を期待し得るものと信ずるのであります。併しながら、今や世界情勢は刻々変動を続けており、日本経済をめぐる諸情勢は変転予断を許さないのであります。政府は国民諸君と共に、かような事態に対処する認識と決意とを新たにし、貿易及び生産を促進して、経済規模の拡大を実現し、国民生活の安定を期するため、万全の努力をいたす所存であります。この際最も必要なことは我々みずからの努力であります。我々はあらゆる困難を克服して自立経済の彼岸への到達に努めなければならないのであります。このことは、国民と企業をみずからの手で護り抜くためにも、又明るい希望を持つて国際経済に参加する基礎を確立する上からも、絶対に必要なことであります。この点について私は国民諸君の絶大去り御協力を深く期待してやまないものであります。(拍手)
○議長(佐藤尚武君) 池田大蔵大臣。 〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
○国務大臣(池田勇人君) 昭和二十六年度予算案の提出に当りまして、政府の財政金融政策につき重ねて所信を明らかにする機会を與えられましたことは、私の最も欣快とするところであります。 顧みまするに、一昨昭和二十四年二月、現内閣成立の当時、インフレーシヨンの高進によつて危殆に瀕しておりました我が国の経済を、一挙にして安定へ回転させるため、政府は、財政金融に関するあらゆる努力を結集すると共に、單にインフレーシヨンの收束のみを以つて事足れりとせず、更に進んで経済の復興自立のために邁進して参つたのであります。その結果、僅か一年有余の間に、物価と賃金の惡循環は完全にあとを絶ち、生産の復興は目党ましく、又貿易もおおむね順調な伸張を示しております。たまたま昨年六月、朝鮮動乱の勃発に伴い、世界的な需要増大の影響を受けまして、我が国の産業界はとみに活況を呈し、七月には援助輸入を含めましてもなお且つ輸出超過を記録するに至つたのであります。更に十月に入りましては、鉱工業生産は遂に戰前の水準を突破し、その後も上昇の一途を辿つているのであります。この間、政府の施策に対しまして寄せられました国民諸君の心からなる御協力に対しましては衷心感謝に堪えません。 併しながら、我が国経済の基盤は、何と申しましても脆弱な部分が相当残つており、如何なる内外諸情勢の変動にも堪え得る程度には未だ達していないのでありまして、現に朝鮮動乱勃発後の物価の騰貴が海外物価の上昇率を超えておりますことは注意を要するところであります。又経済の復興も着々その歩を進めてはおりますが、米国の対日援助に依存している部面もなお相当多いのでありまして、完全な自立達成までには幾多の困難を市服したければなりません。政府といたしましては、目前の一時的な好況に心をゆるめることなく、飽くまでも堅実な経済施策の基調を保持しつつ、内外諸情勢の今後の推移に対しましては適時適切な措置を講じ、経済の自立達成という目標に向つて着実に衆力を続けて行く所存であります。 昭和二十六年度予等はこのような基本構想の下に編成致したものでありまして、その主なる内容は、先ず第一に、一般会計はもとより、各特別会計及び政府関係機関を通ずる收支の均衡について特に留意したことであります。かくのごとき均衡財政が我が国経済の現段階において有しまする意義につきましては、今更多言を要しないところでありまして、外国為替資金特別会計におきまする円資金の不足を補うため、特に一般会計から五百億円を繰り入れることといたしましたのも、この趣旨にほかならないのであります。巷間ややもすれば、すでにこのようないわゆるインベントリー・フアイナンスの方式を転換すべき時期なりとの声も聞くのでありますが、目前の功を急ぐの余り、堅実を忘れて九仭の功を一簣に欠くがごときは、私のとらざるところであります(拍手)政府は、一方においては積極的に施策の推進を図ると共に、他面、インフレーシヨン要因の胚胎に対しましては万全の警戒を怠ることなく、均衡予算の基調を保持する方針であります。 第二に、政府は、更に財政規模を縮小し、財政と国民経済との調和を図ることといたしておるのであります。昭和二十五年度一般会計予算におきましては、三十四年度予算に比べまして、実に十数年振りに約七百七十億円に達する財政規模の縮小を実現したのでありますが、(拍手)昭和二十六年度一般会計予算総額は、六千五百七十四億円余でありまして、本年度に比し更に七十一億円の減少と相成つております。国民所得の増大を考慮に入れますならば、実質的には相当大幅な縮減と言い得るのであります。歳用を減少いたしました主なるものは価格調整補給金でありまして、昭和二十四年度当初予算において二千二十億円の巨額に上つておりましたものが、第三年目の明年度には約一割程度の二百二十五億円にまで減少いたしております。我が党年来の主張である煩瑣な経済統制の整理縮小も着々その歩を進め、公団はすべて清算の段階に入り、各種の経済統制も、主食、輸入原料等を中心とする必要最小限度に限定せられ、経済は逐次正常な姿に立ち返つて参つたのであります。又その他の経費についても、極力縮減を図り、財政規模の縮小に寄與することといたしております。第三に、政府は再び大幅な減税を行う所存であります。(「税法上の減税か」と呼ぶ者あり)その詳細は近く提出を予定いたしております各税法案について御審議を願うはずでありますが、所得税における基礎控除、扶養控除等の引上げ、その他の各種控除制度の創設、税率の引下げ、資産所得合算制度の廃止等の広汎な改正を中心といたしまして、法人税、印紙税等の各税につきましても負担の軽減を図ることといたしております。来年度一般会計歳入中、租税及び印紙收入の総額は四千四百四十五億円余でありまして、これは改正前の税法を適用した場合に比較いたしまして七百四十三億円余の減税となつておるのであります。昭和二十四年度並びに二十五年度を通ずる画期的な減税に引続き、先般の本年度補正予算における六十四億円の減税を先駆といたしまして、更に今回の減税を行おうとするものであります。又專売品につきましても、すでに昨年末から食料塩の販売価格の引下げを行い、「たばこ」は本年四月から重ねて値下げを実施することを予定しております。かくして国民の負担は合理的に調整されると共に、相当軽減されることとなるのでありまして、国民生活の安定と資本の蓄積に資するところが少くないことを確信いたすものであります。(拍手) 世界各国においてはむしろ増税の傾向が著しい際にもかかわらず、我が国においてはかくのごとき減税が行われるのであります。(拍手)この際、納税者の各位は、この間の事情を諒察せられまして、進んで誠実な申告をし、納税の完遂、滞納の一掃に特段の御協力を願いたいと存じます。政府といたしましても、従来の実績に鑑み、この際、税務行政の執行につき思い切つた転換を図ることとし、納税者の誠意に信頼して、その申告を尊重し、止むを得ない場合のほかは更正決定を極力避けますと共に、特別の事情がある場合には分納制度等を設けることといたしたいと考えております。(拍手)又租税のいわゆる調査査察事務につきましても、従来とかく行き過ぎの非難がありますので、これらも速かに是正いたす所存であります。 第四に、民生の安定、文教及び科学の振興等のため、積極的な施策を行うことといたしました。政府が民生の安定並びに国民生活の向上のため積極的な努力を継続して参りましたことは、各位のすでに御承知の遮りでありますが、昭和二十六年度におきましても、引続きこれらの経費は思い切つて多額を計上いたしております。即ち生活困窮者の保護、健康保險その他の社会保險、結核対策を初めとする保健及び衛生、失業対策、同胞引揚援護等の社会政策的事業につきましては、本年度に比較し、約三割の百二十億円を増額して、五百六億可を計上いたしました。又住宅金融公庫に対しても更に五十億円の出資を行い、資金運用部からも同額を融資し、合せて百億円の資金を以て庶民住宅の不足緩和に資することといたしたのであります。文教及び科学の振興につきましても、特に留意したところでありまして、六三制建物の整備のため四十三億円を計上いたしましたほか、育英資金を本年度の五割以上の増加に当る二十三億円とし、又学校その他の研究費は、一般会計だけでも約七十九億円に達し、前年度の約五十四億円に比較いたしまして、約五割の増加となつております。なお公共事業費につきましても、国土資源の開発保全を図り、経済基盤の一層の充実に資するため、災実復旧、治山治水事業等を中心といたしまして、一千百四億円余を計上いたしました。 第五に、政府資金の産業金融面に対する積極的活用を図つておることであります。即ち一般会計においては日本輸出銀行及び国民金融公庫の増資を図り、中小企業信用保險基金を増額するほか、農林漁業金融及び緊要物資等の輸入のためにそれぞれ新設される特別会計に対する繰入を計上いたしました。又見返資金特別会計からは、只今述べました日本輸出銀行及び農林漁業金融特別会計に対する出資又は繰入のほか、電力、海運等、基幹産業及び中小企業に対して融資を行い、資金運用部資金による巨額の金融債引受等と相待つて、現在最も緊要とされている長期資金供給の円滑化を期することとしております。これらの政府資金が民間に蓄積される資本の活用とも相待つて、国土資源の開発保全、産業の育成合理化等のため、大いにその成果を收めることが期待されるのであります。特に農林水産業方面への金融については、今回の措置によつて画期的な改善が行われることと確信いたします。 次に、地方財政平衡交付金及び地方債の発行限度を増額し、地方財政の充実に資すると共に、別途地方税法を改正して、国税地方税を通ずる税負担の合理化を図ることといたしております。なお地方財政につきましても、国の財政におけると同様、行政の能率化、経費の節減に一層の努力をいたすべきであると考えます。各地方公共団体の十分な御協力を切望するものであります。次に金融につきまして、特に資本蓄積を中心として政府の施策を申述べたいと存じます。日本経済が国際経済の変転極まりない情勢に対処いたしまして自立を達成するためには、先ず産業資本を充実し、企業経営の合理化を図らなければなりません。現在我が国の産業は、押しなべて資本の欠乏に悩んでおり、従来その不足の相当部分は米国の対日援助によつて補われて来たのであります。この援助の打切後におきましても、これに代る民間外資の導入が切に期待されるのでありますが、この際、何よりも先ず日本経済自体における資本蓄積が緊要であります。勿論、我が国の必要とする資本を一挙に蓄積することは甚だ困難でありまして、その障害となる要因に対しては随時これを排除することを怠らぬと共に、総合的な施策を以つて、着実にその蓄積を促進することが肝要であります。(「政府資金を出せ」と呼ぶ者あり)政府は、従来、財政面においても、長期資金を中心とする資金の供給について各般の措置を講じて参つたのでありますが、明年度におきましては特にこの点を重視いたしております。即ち先に申述べました見返資金、資金運用部、農林漁業金融各特別会計等を主とする政府資金による産業資金の供給は九百七十七億円の巨額に達し、本年度六百五十六億円に対し、実に三百二十一億円の増加となる見込でありまして、これらの資金の適時適切な活用こそは今後の金融施策において特に重要な位置を占めるものと考えます。(拍手)なお財政資金による長期融金につき一層その効果を挙げるため、全額政府出資により、日本開発銀行とも称すべき特殊金融機関を設置すべく目下考慮中であります。これが発足の暁には、市中金融機関による金融と相補つて多大の効果を発揮するものと確信いたしております。 中小企業金融及び一般大衆の生業資金の融通につきましても、政府は特に意を用いているのでありまして、明年度においては、見返資金からの中小企業融資を四十億円とし、中小企業信用保險基金を十億円増額すると共に、国民金融公庫に対し時に二十億円の出資を行い、一層その円滑化に資することとしたのであります。併しながら、財政による資金供給にもおのずから限度があるばかりでなく、本来、資本の蓄積は民間資本自体の充実に待つべきであります。政府は直接間接に民間資本の蓄積を促進するため、所得税、法人税の減税のほか、先に証券取引を再開して以来、証券市場の育成を図り、資産再評価の実施等の措置を講じ、又本年一月から定期預金等の金利の引上げを実施して参つたのでありますが、今後も能う限り財政規模を縮小して一層の減税を図り、法人個人を通ずる資本蓄積余力の涵養に資する方針であります。(拍手)特にこの際、徒らに租税の公平理論にのみとらわれることなく、産業の復興、経済の再建のため、当面の施策として次の諸点につき早急に実現を図るべく準備をとり進めております。即ち法人企業の資本充実につきましては、通常の積立金課税を廃止し、再評価積立金の資本繰入を本年中に実施し、又先に再評価を行わず又は再評価が不十分であつた企業については、更に再評価を行う途を開くほか、固定資産の償却年限を一般的に短縮するのみならず、更に重要産業については特定の新規設備につき特別償却を認める等の特段の措置を講ずる考えであります。(「資本家だけの減税だ」と呼ぶ者あり)又貯蓄の増強方策といたしましては、預貯金利子の源泉選択課税を認め、生命保險の保險料及び保險金に関する課税上の優遇措置を講じ、税務行政の運営におきましても、貯蓄の増強に障害とならないように特に留意いたしたいと存じます。更に長期資金の調達に重要な使命を担います証券市場の健全な発達を促進いたしますため、取引方法の改善、証券金融の疏通に一層力をいたす所存でありますが、なお投資信託の復活をも準備をいたしておるのであります。 私は、この際、国民諸君が以上のような政府の施策に相呼応して、消費を節し、資本の蓄積に力を傾注されんことを切望してやみません。殊に、金融機関に対しましては、資金吸収の面における重要な役割に顧み、今後一層経営の健全化に努め、預貯金の利子につきましても更に合理的な調整を行うことを期待いたしております。 資本の蓄積と並んで特に重要なことは、蓄積された貴重な資本を如何にして最も有効に活用するかという点であります。政府は、つとにこの点に留意し、積極的な指導を怠らなかつたのでありますが、各金融機関がその公共的使命を自覚し、必要な資金を緊要産業に対して適切に供給し、又貸出金利につきましても合理的な再検討を行うよう、特に要望するものであります。同時に、産業界においても、單に冗費の節約にとどまらず、進んで資金の最も効率的な使用につき、格段の努力を願うものであります。 最後に、政府は貿易の伸張について積極的な努力を継続する所存であります。貧弱な国土資源の下に厖大な人口を抱えている我が国経済の自立と発展のためには、輸出貿易の振興は欠くべからざる要件であります。先般の臨時国会において決定された日本輸出銀行の設立もその趣旨によるものでありまして、同行は近く業務を開始する運びに至つておりますが、明年度におきましては、更に一般会計及び見返資金から合計百億円の増加出資を行い、その業務の拡張によつて輸出貿易の振興に多大の貢献をいたすことを期待しておるのであります。(拍手)併しながら特に緊要なことは輸入の促進であります。国民生活を確保し、輸出原材料を獲得して一層の輸出の振興を図るためにも、はた又輸出の増大に伴うインフレーシヨン要因を未然に防止するためにも、この際、積極的に輸入を促進することが急務でありまして、政府は保有外貨の活用を図り、又貿易協定による輸入及び船腹の増強についても機動的な処置を構じ、万遺憾なきを期する考えであります。昨年九月実施いたしました日本銀行によるユーザンス制度は、輸入促進のため相当の効果を収め得たのでありまするが、その効果を一層拡大するため、ユーザンスの期間の延長又は期限経過後の金融措置等、その改善を行う所存であります。更に市中銀行が金融債発行によつて得た資金も、その相当部分が、長期、中期の輸入資金又は原材料保有資金に活用せられるよう指導する等、国内金融においても特に輸入資金確保に重点を置きたいと存じます。 なお、政府は、みずからその財政を以て緊要物資の輸入を確保するため、新たに特別会計を設けて一般会計から二十五億円を繰り入れることとし、その彈力的な運営によつて当面の需要を充す予定であります。 以上、昭和二十六年度予算案に関連いたしまして、政府の財政金融政策の大綱につきまして申述べた次第でありますが、本年は国民待望の講和の年であると信じます。我が国が政治的に独立国家として列国に伍して行くためには、経済的にも信を世界に博するだけの実力を備えなければならぬことは当然であります。これがためには、すでにかち得た安定の基盤の上に経済の復興自立を着実に積み上げて行くほかはありません。前途は光明に満ちておりますが、又多事多難であります。私はこの際、国民諸君と共に、過去数年に亘る努力の跡を顧みると同時に、現在の国際情勢の下に、我々の置かれている立場を改めて認識し、ここに決意を新たにして、我が国経済の復興自立に邁進いたしたいと存ずるのであります。(拍手)
○議長(佐藤尚武君) 只今の国務大臣の演説に対しまして質疑の通告がございますが、この質疑は明日に讓りまして、本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。 午後四時二十六分散会 —————・————— ○本日の会議に付した事件 一、議員の請暇 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第一日)