水産委員会 第3号
- 発言数
- 14 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1950/12/15
会議録
○委員長(木下辰雄君) 只今から委員会を開会いたします。 全日本海員組合から陳情いたしたいという御希望の下にここに參つておられます。その陳情者は三人でありまして、漁船の拿捕事件については大村長治君、それから歩合金の課税問題については江又貞次君、漁区拡張問題については柳瀬宇佐君、この三人から陳情の要求が委員長に參つております。許可することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(木下辰雄君) 御異議ないと認めます。それではこの陳情を許可いたします。拿捕事件について大村長治君。はつきり一つ言葉を言つて下さい。
○参考人(大村長治君) 私大村長治であります。本日この委員会の貴重なる時間を拜措いたしまして、先ほど委員長から申されましたような事件につきまして、お願いに參つた次第であります。実は十二月七日午前零時三十分、農林漁区二百九十六区におきまして操業いたしておりました長崎本拠の川南水産第十雲仙丸が中国船らしき怪船に包囲拿捕され、上海の方向に向けて連行された事実が生じたのであります。私たちは機船底曳漁船船員として当局の示されたライン内で日夜操業いたしておりますが、そのうちにもラインの嚴守ということに相当の気を配りまして、決してラインを侵してはならないということに皆誠心その指示を遂行いたしておるのであります。然るときにこの朝鮮動乱が生じ、海域で操業いたします我々はラインということは勿論、そういつた事態を起さない、問題を起さないということについて專心努力しておるのでありますが、それを逆に不法にもそうして我々の操業にますます不安な気持を抱かせるような事態か生じましたことは、私たち誠に心外に堪えないものであります。乗組員は先ほど申しましたように、一意ラインの嚴守ということに重点を置いて操業いたしておりますときに、そういつた船員が怪しい船に拉去され、我々の漁場をそうして撹乱されますことは、こういつたことについて当局がもつともつと保護的な措置を講ぜられまして、狭い操業区域であつても安心して働ける方法を講じて頂きたい、又不法拉去された船については一日も早く返還の方法を講じて頂きたい、かように存じまして今日陳情に參つた次第であります。何分皆さんの御盡力と御考慮を御配意頂きまして、この事件を解決さして頂くよう御努力をお願いいたします。これを以て私終ります。
○委員長(木下辰雄君) これに関連した陳情でありますので、漁区拡張問題を先にお願いいたします。柳瀬宇佐君。
○参考人(柳瀬宇佐君) 委員長の御指名によりましてお許しを得まして、漁区問題について御説明申上げ御配意をお願いいたしたいと思います。 戰後我が国に許容されました漁船の操業範囲は非常に狹小なものであります。これが我が国の蛋白食料資源の確保と睨み合して考えますときに、十分なる操業活動がなし得ない現状であります。特に支那海並びに黄海方面におきまするいわゆる以西底曳漁場におきましては、許容されましたる範囲が世にいうマツカーサー・ラインというものが支那海のほぼ中央を通つております。そのために支那海におきまする魚族の効果的な採捕ということができない現状であります。なお且つこれを魚族の保護という面から考えましても、或る海域の一部分だけの操業であつては、その許容されましたる範囲内の魚族がどうしても枯渇する虞れが多分にあるのであります。かかる観点から今春水産資源枯渇防止法というものが制定せられまして、それによつて東支那海の漁船の数を限定せられ、私たち漁船乗組員の少からぬものがこれによつて失業したのであります。併し私たちはいわゆる漁場維持のために敢えてこの法に従いまして、漁船は減船され、乗組員の離職も又止むを得ないとしてこれを容認したのであります。その後の漁場は船の数が制限されましたけれども、許可されている漁場そのものが価値ある漁場でないということ、そのために漁獲されました漁獲高がそれに要した生産費用とマツチせないのが現状であります。現在殆んどの船がその漁獲高をして生産費を賄い得るという船がございません。御承知のように漁船乗組員はその労働に対する報酬というものは、利益に対する業者側との一定比例によつて按分されましたいわゆる歩合金によつて支拂われております。然るに現在の漁場において水揚げされました金額が生産に要した費用を上廻ることのないいわゆる赤字経営をやつている段階において、業者の手許は勿論赤字で苦しくもあり、従つて船見の收入も最低の保障額を出ない、そり保障額は私たちの生活を維持するに足る保障額ではない現状であります。これを一面国民の蛋白食料の面から見ましても、現在の狹隘なる漁場で水揚げされましたものは、十分に大衆の安価に求められる蛋白食料を満たし得ない現状であります。この状態を今後も持続されることになりますれば、恐らく業者の倒潰は勿論、それによつてそれに従事している我々船員もその生活を脅やかさるることは明白なのであります。現在においてすらその生活が脅やかされつつあります。 かかる観点から私たち船員は、今まで各方面に向つてこの漁区の拡張について懇請したのでありますが、私たちの要望がいろいろな面から実現されていないのでございます。本年七月開催されましたI・T・F大会におきましても、本組合の組合長が代表として出席いたしまして、参加数十カ国の代表に対して我が国の許容されている漁撈区域の拡張を懇請いたしまして、多数出席諸外国の代表からの好意ある賛成を得ているのであります。ただアメリカ及びカナダの太平洋岸において組織されております北米国際海員組合の代表者から、日本の「かつお」「まぐろ」の罐詰がアメリカに向つてダンピングされているという発言がありまして、日本の国の漁業者がかかる行為を犯すのであるならば、漁区拡張は賛成いたしかねるというような発言がありました。そのとき本組合の組合長は、そのようなタンピングをなして罐詰を輸出するような事実はないものと思う、若しその事実があるならば、その真否を帰国の上早急に調べて、改めてI・T・Fにそれを報告することによつてこの問題を解決されたい。さように申しまして先月終り頃に、これらの事実の有無を調査しまして、それに報告すると同時に、早急に漁区の拡張についての極東委員会並びにマツカーサー総司令部に対しての勧告をなして頂きたいということを航空便で以て申送りました。私たちはいろいろな機会にいろいろな方面に向つて、私たちの死活問題であるこの漁区拡張を懇請したのでありますが、この水産委員会におかれまして、私たちの心から希つている漁区の拡張の問題につきまして、十分に御討議下されまして、一日も早く漁区が拡張され、十分に私たちが活躍することによつて、日本の蛋白資源が安価に大衆に十分に賄い得るように処置を講じて頂きたい、かようにお願いいたしたいのでございます。
○委員長(木下辰雄君) 次に、歩合金の課税問題について、江又貞次君。
○参考人(江又貞次君) 私只今御紹介にあずかりました江又でございます。歩合金の課税問題につきまして、陳情さして頂きます。 この歩合金の課税の減免ということにつきましては、過去数回に亘つて全日本海員組合を通じまして、我々漁船船員の実情をつぶさに報告すると共に、政府当局にお願いして参りましたのでありますが、未だに実現をせず、我々は只今柳瀬氏が陳情いたしました漁区拡張の問題に関連しまして、漁獲のいよいよ減少すると共にその生活が逼迫するに及びまして、この課税の減免ということはいよいよ痛烈に感じて参つたのであります。然らばどういう実情であるか。現在の段階をよく説明いたしますならば、以西底曳の漁船船員の労働の実態というものは水産委員のかたがたは御承知のことでありますが、とにかく陸上一般の者とは比較にならん長時間の労働、その労働の重さにおいても恐らく他の産業よりもより以上の過重な負担があるものでありますが、こうした労働によつて得ます收入が固定給と歩合給というものに分けられておりまして、その歩合金は、更に固定給も歩合給も同様に陸上一般の人々と同様の勤労所得税の率を以て税金を取られるのでありまして、全く我我の従事している労働の実態に即しないのであります。而も約二、三年前の、或いは昨年までの以西の漁獲の状況はかなり上廻つておりまして、歩合金もありまして、そうして課税はされるものの、生活に対してはまあ不安を感ぜずにやることができましたが、いよいよ漁区は拡張にならず、魚は幾何級数的に減つて行くという段階におきまして、その税金の賦課の状況は卑近の例を以て言いますならば、市民税のごときは昨年一カ年の漁獲に対する收入の率以て、いよいよ歩合金も殆んどないといつたようなときにその課税が今年の收入にかけられているのであります。そうしてその固定給というものは他区によつて大小の差はありますが、陸上一般の人とは遙かに下廻つて、歩合給を或る程度加味しなければ陸上の人の收入には匹敵できないといつたような状況になつているのに、その歩合給がかなり入つたときのその收入の面からして今年の收入のないときに課税されるといつたようなことで、非常にもはや税金はもう納められんといつたような窮迫した、申すも憐れな状態に追込まれているという段階に来ております。そういつたような面からも、又我々が今後海上労働によつて貯蓄をしまして労務の安泰を図る。そういつた激甚な労働に就いておるために、要するに労働力の壽命というものが減ることは疑いのないところでありまして、必ずやそこにもう船には乗れないという段階に至るまでには或る程度の蓄積はして置かなければならないというのに対して、そういつたような陸上一般人同様に課税をされるということは全く不当であるということを我我は強く主張するのであります。今までの陳情書におきましてもそういつたようなことは述べられておりますが、特にこの度の市民税の件につきまして、いよいよ窮迫の段階に追込まれておるということを強く改めて主張して、この際水産委員会の方々に特に骨を折つて頂いて、今後の漁船船員の歩合金に対する課税というものは御再考をお願いしまして、当局に我々の立場を強く主張して頂きたいと思うのであります。然らば我々漁船員一同といたしまして、どういう案を持つているかと言いますならば、第一に歩合金に対しては勤労控除のほかに作業費等の名目による一定の基礎控除を認めて頂いて、漁船船員の労働生活上欠くべからざる負担を十分に考慮してもらう。第二の案といたしましては、歩合金は漁獲の高によつて決定されるため、極めて変動が多いのであるという実態からして、これを変動所得といたしまして、五カ年程度の平均の額を課税の対象として労働生活に要する支出を十分に基礎控除されるように措置して頂く。そういつたような二つの案を持つているのでありますが、この辺のところをよく御勘考下さいまして、我々の生活の安定ということを、又今後漁場の発展して行くであろう以西底引の漁船船員の温存ということにつきまして、特に委員の方々の御援助をお願いしたいと思うのであります。陳情を終ります。
○委員長(木下辰雄君) 只今御三方の陳情がありましたが、これに対して何か御質問なり御意見がありましたらお述べ願いたいと思います。
○青山正一君 只今各地の海員組合、乗組員、船員を代表いたしましていろいろな陳情があつたわけでありますが、この陳情の内容の漁区の拡張の問題、或いは拿捕の問題、或いはダンヒングの問題、或いは歩合金の課税対策の問題、これらは非常に重要な問題のみでありますからして、一つ是非とも委員会で取上げてもらいたいとこういうふうに考えております。例えば拿捕の問題に関しまして、先ほど川南の第十雲仙丸が拿捕されたというふうなお話でありましたが、先般の拿捕の問題はいわゆる韓国の拿捕の問題でありまして、非常にこれが処し易い立場にあつたわけでありますが、今度の場合は中共の拿捕でありまして、時節柄なかなか大変なことだと私は考えているのであります。少くとも委員長から……本日政府委員がおいでになつていませんが、一つ委員長から特にこういつた問題を取上げて頂いて、例えば政府から対日現事会のシーボルトさんに話してもらつて、その力によつて何とか解決して頂くというふうな途を講じて頂くように、委員長から是非委員会の或る意味の決議といたしまして特に一つ取上げて頂いて、政府の方へ申入れて頂きたいというふうに考えております。 又江又君の話があつた税金の問題、この税金の問題は、これもよほど奧深く考えて頂かなければ僕はいけない、こういうふうに考えております。例えば沿岸漁業者は割合にこの点に関しましては多少の余得を受けておるのでありますが、海洋漁船の乗組員、これも一つ沿岸漁業者同様にその恩惠にあずからして頂きたい。こういう面におきましても一つ委員長から力強く、休会中でも結構でございますが、委員会の或る意味の決議といたしまして、一つ特に政府のほうに申入れをして頂きたい、こういうふうに考えておるものであります。 又柳瀬君のお話の漁区拡張という問題も、これも昨日ですか、一昨日の委員会におきましてもいろいろ問題になつておるわけでありますが、つまり広川朗報が朗報どころか却つて悲報に流れまして、減船によつて漁区拡張という問題も今日の立場では恐らくお流れになつておるのじやなかろうか、こういうふうに信じております。只今この柳瀬君の陳情にあるように、船主よりも一つ船員のほうの被害が大きいのだと、いわゆる昨日委員長のお話もあつたように、船主よりも船員の建前を非常に考慮して頂いて、この点もできるだけ一つこの意味合から漁区拡張の問題を特に取上げて頂きたい。或いは減船によつてのいろいろな関係の問題を措置して頂くように、特に私から委員長にお願いするものであります。
○委員長(木下辰雄君) 御三方の陳情を詳細に承わりまして、誠に同情いたします。拿捕事件並びに漁区拡張問題に関しては参議院はこの前から非常な関心を以て問題に取上げて、或る一部は参議院の力によつて解決をみたというような次第であります。今回の拿捕事件につきましては、一昨日水産庁長官が下関、博多、長崎のほうに出張しまして、その真相を十分調べて来るというお話でありました。なおこの拿捕事件以外にも拿捕事件があるやに聞いておりますので、そういうようなものがはつきりわかつたときに十分対策を講じたいと思つております。 ちよつと大村さんにお伺いいたしますが、先にあなたの御陳情ではマツカーサー・ライン内において操業中拿捕されたというお話でありましたが、それは事実ですね。
○参考人(大村長治君) そうであります。その件につきましては、帰還いたしました第十雲仙丸から長崎の海上保安本部におきましての取調べにもさようはつきり申上げております。又海上保安庁におきましてもはつきり言われております。東経百二十五度十五分、北緯三十二度十八分の位置であります。
○委員長(木下辰雄君) それから歩合金に対する課税問題、これも殆んど生活固定給を上廻らんというような場合において前年度の課税をするということはこれは非常に不合理でありますので、只今の陳情の御趣旨、それからこれに対する対策をお述べになりましたが、それを十分検討いたしまして、委員会に提案いたしたいと思います。 外に御意見はありませんか。……それでは陳情の諸君の御退場を求めます。 —————————————
○委員長(木下辰雄君) こういう問題はよく真相を掴まえなければはつきりわかりませんが、家坂長官からも、検察庁からも参つておりますし、重ねて両三日中広川農林大臣も現地のほうに出張されるそうです。帰りましたら十分真相がわかりますから、その場合に私といたしましても十分聞き合わして、そうして委員会の閉会中でも在京しておられる委員と御相談いたしまして、善処いたしたいと思います。 外に御意見なければ本日はこれを以て散会いたしたいと思います。御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(木下辰雄君) 御異議ないと認めて散会いたします。 午後二時三十一分散会 出席者は左の通り。 委員長 木下 辰雄君 理事 青山 正一君 千田 正君 委員 秋山俊一郎君 松浦 清一君 参考人 全日本海員組合 員 大村 長治君 全日本海員組合 員 柳瀬 宇佐君 全日本海員組合 員 江又 貞次君