外務委員会 第14号
- 発言数
- 53 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1951/06/01
会議録
○理事(曾祢益君) それではこれから委員会を開催いたします。委員長が御出席できませんので、更に又徳川理事も御出席できませんので、私が代つて委員長席に参りました。 本日は講和に関連する諸問題、並びに国際情勢等に関する調査でございまするが、特に講和に関連する諸問題の研究の意味合を以ちまして政府委員にも来てもらつておりまするから、どうぞ御質問がございましたら各委員から御質問願います。
○伊達源一郎君 これはよくわかりきつたことしと思いますけれども、私にははつきわしておりませんから、政府委員にお尋ねするのでございますが、その問題は第一が批准の問題でございます。これは憲法を見てみますと、七十三條の第三項に條約締結の前又は後に国会の承認を求めることを要するというようなことを規定してありますほか、どこで批准するというようなこと院外務委が見当らないのでございますが、どういう順序によつて、どこ批准をされるものか、はつきりしたことをお尋ねして置きたいと思います。先ずそれをお尋ねいたします。
○政府委員(草葉隆圓君) 国会の承認、批准、署名というのは、従来からいろいろ御質疑があつておる点でございますが、殊に憲法七十三條の事前、事後の問題、政府は批准條項のついております條約につきましては署名後、批准の間において国会の承認を経、承認を経た條約につきまして批准をする。こういう順序で進むことが妥当であると考えております。従つて批准は国会の承認後内閣において批准をするという順序になつて来ると存じます。
○伊達源一郎君 そうしますと條約を締結するのも政府であるし、署名するのも政府が命じたる代表者であるし、批准するのも政府であるということになるのですか。
○政府委員(草葉隆圓君) 御質問の通りだと存じます。
○伊達源一郎君 政府が批准するということは、どこのどういう規定によつてそれは行われるのでありますか。
○政府委員(草葉隆圓君) 條約を締結するという権限が政府に與えられているその立場において批准を行うのであります。
○伊達源一郎君 そうしますと條約締結ということには、條約に関する国際的の交渉もその締結に含まれている。署名ということも締結に含まれている。批准ということも締結に含まれていると解釈してよろしうございますか。
○政府委員(草葉隆圓君) 御質問の通りに交渉、署名、批准一切が含まれていると存じております。
○伊達源一郎君 その点はそれでよく了解いいたしました。 次に対日講和條約の草案でございますが、あれははつきりしたことを覚えていないけれども、四月六日でしたか、アメリカのUPが探し出したという草案が世界的に拡がつて、日本でも新聞にあれが出ますし、あれによつて先ず講和の内容はこういうものであるというふうに解せられているのでありますが、私どもダレス氏に会つて話をするときにも、あれを基礎にして話をして、大体ああいうものであるように思われました。あれであるとはつきりは言われなかつたけれども、あれであるように思われましたが、政府は別に本当の草案を入手しておられるはずであります。又入手しているということは、総理もたびたび言つておられるところでありますが、あれは大体本当のものと、あのUPの出したものと余り違わないのでありますか。非常に違つているのであるか、或いは政府でお差支えなければその一部でも発表することはできないのであるか。まだ全部秘密にしておらねばならん段階であるかどうか。そういう点を一つお話を願いたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) 御質問の四録第十四号月上旬にUP特電によるヘンスレー記者の打ちました條約草案の内容というもうが広く伝わつて参りましたが、これはUPヘンスレー記者の特電として打たれたことでありまして、この内容につきまして日本政府が責任を持つ立場にはないと思つております。又條約草案の内容を実は、殊に現在当分の間はまだこれを公表しないという約束の下に進んでおりますることは前々から総理もお答え申上げた通りであります。従つて今日本政府の立場といたしましてこれを御発表申上げることは妥当ではないと実は存じております。従いましていずれは勿論国会の承認によつて條約は締結して参るのでございまするから、その時期まで一つ政府の発表というものは、そういう意味において御了承賜りたいと思つております。
○團伊能君 只今伊達君の質問の中にある條約取きめは、條約草案の、條約の條件の取きめから批准まで全部政府がやるという御説明を承わりましたが、その條約取きめの中に国会承認も條約取きめの一つの條件として入つておると思いますが、その点如何ですか。
○政府委員(草葉隆圓君) 條約を締結して参りまする順序は先に申上げました通りでございますが、その場合に国会の承認を経るということはこれはまあ当然な一つの前提となつておると思います。憲法の定めるところによりまして、国会の承認を経て批准をするという順序をとつて行くべきものと考えております。
○團伊能君 只今次官の御説明でとつて行くべきものというお話がありましたが、又憲法にもそうございますが、併し七十三條によりますると、時宜に、そのときの事情によつてに取きめ後の承認を、取きめ後に、場合によつては取きめたのちに承認を経ることもあると書いてあります。そういたしますと、取きめ前、締結前又は締結後に国会の承認を経ることはいずれにしてもその必要條件と考えられまするが、ここに実際問題として締結せられてのちの国会の承認というものは、先日来いろいろ議論も承わりましたけれども、これは一つの事後承諾であり、而してこの国会が承認しない場合はどういうことになりますか承わりたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) 御質問のように憲法七十三條によりますると「條約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」という明文がありまするように、時宜によりましては、條約の締結というものが国会の承認を経るいとまがない場合或いはさような順序に運び得ない情勢にある場合におきまして、只今御質問のように事後において国会の承認を経るという場合が起る場合もあると存じます。殊に署名によつて條約の成立しまするような場合にはさような場合が多く予想されることが多いと存じます。その場合に若しや国会が承認を與えない場合、與えない場合におきましても、国と国との條約はすでに成立をいたしておりますから、政府が政治的にこの問題に対しまする責任をとつて行つてその事後処置をいたすべきものであると、従つて国会の承認を與えないことを相手国等に通報してその條約の廃棄等ということにいたすか、或いは他の政治的な責任をとるかというようないろいろの問題がおのずから起つて来ると存じまするが、一応締結しました條約は、その條約そのものは有効として取扱われるべきものではないか、かように存じております。
○團伊能君 ちよつとその場合に、この国際條約は国内の法規に優先するという法律は何條でしたか、その條項についての御説明を承わりたいと思います。
○政府委員(西村熊雄君) 御質問の点は、憲法の第十章の最高法規、この章の中で憲法は明文を以て日本国は條約というものを遵守しなければならないということを明らかにしております。が、こういう規定がなかつた明治憲法の下におきましても、條約が成立いたしますれば、それによつて当然国内法としての効力も持ち、而もその効力は法律に優先するという解釈がなされておりました。この明治憲法下における有権的解釈のほかに新憲法の下におきましては、第十章の最高法規という規定において明文を以て明らかにされた、こういう関係がございまして、従来より以上に條約の効力は国内法規としての効力を持つと同時にその効力は法律に優先する、こういう結果になるというふうに考えております。
○團伊能君 そこで今日の日本の新らしい国際間における地位と申しますか、特殊な形としてこれから国際間に存在するであろうと想像される日本の国の形、例えば武力を持たないというような形の国として存在して行く将来におきまして、従来といささか異つて国際條約を結ぶ場合、又或る場合において結ばせられる状態ということも予想されるのでございまして、そういう場合この国際條約は政府によつて締結せられ、これが或る場合締結後において国会にただ承認を形式的に求められて来る。又それは国際條約は法律に優先するということになつて参りますと、若しもそれが国民の欲せざる條約であつた場合、勿論国会が承認をいたさず、これを破棄を通告するという形はあるかも知れませんが、この点は非常に国民意思というものが薄弱なものになるかと思います。そこで若しも国民の欲せざる條約を政府が締結したる場合、国会がこれに対する発言権は国会即ち国民の意思をこれに盛るということは非常に困難のように考えますが、その点は憲法の條文の解釈でなく、いささかもう少し大きな政治問題であり、又憲法それ自身の問題に触れて来ると思いますが、その点別に御説明を承わる筋でもないと思いますが、外務省としてはそういう場合が起つたときの処置について何かお考えがありますならば承わりたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) 今後のいろいろ條約の締結というものは、殊にこの対日講和前後におきまして、独立後におきましてはなお更いろいろな種類のものが多く締結されて来る情勢にあると思います。従つてそのうちには極く事務的な技術的な問題等も條約として多く結ばれで来る情勢になると思います。かような場合におきましては極く署名によつて條約が成立するというような形がなされた場合におきましても、いわゆる政治的な意味におきましては、大きな問題を起すというような場合も少いかと存じますが、いわゆる大きい意味におきまする條約、日本の浮沈にかかりまするような條約におきましては、只今お話になりましたようなことがいろいろと今後におきましても起つて参ると存じます。併しこれは先般来総理もよくお答え申上げましたように、できるだけ国会に時間的にも、内容を努めて御相談申上げて、そうして国民の総意を反映した形における條約の締結というものに政府はできるだけの力を注ぎながら全力を講じて行きたい、こういう考え方で進んでおりまするから、対日講和の問題等につきましても、先般御答弁申上げましたような考え方で進んでおるような次第でございます。従いまして政治的にも国内全体の考え方ともなるべく一致したる情勢が現われて参りまするような方向に最大の努力を進めて来るという点を、現在の政府は政治的に考えております点を御了承願いたいと思います。
○政府委員(西村熊雄君) 只今の政務次官の御答弁ではございませんが、先刻の私の答弁に関連して誤解を避けるために一言附加えさして頂きたいと思います。先刻の團委員の御質問に対して、私が條約は法律に優先するとはつきわ申上げておりました点を誤解ないように願います。私が申上げたのは、條約が国内法に優先すると申上げたのでなくて、国内法の一つである法律に優先すると申しました。私は憲法と條約との関係は、全然問題にしておらないという点を明らかにして置きたいと思います。なお御質問の中には、戦争放棄だとか再軍備というような日本の憲法の規定と異り、又は日本国民の気持と異るような内容を含む條約を内閣が締結をして、それに事後承認の手続をとる、こういうふうなことがあつた場合にどうなるのだというような御懸念があつたように思うのであります。その点につきましては、総理もたびたび御答弁になつておりますように、現在政府としては、これは日本だけでなくしてどの国も一様であると思いますが、政府の存立、その国家の存立の根本規範となつております憲法に正面から違反するようような條約を結ぶということに同意する政府があるとは、実際上考えられないところでございます。我が国のみならず、どの国といえども、條約の締結というものは、憲法の下においてなすべきものでありますので、その憲法によつて締結さるべき條約によつて、その根本となる憲法それ自身に反する條項を含む條約を締結する、それによつて憲法に影響を與えるというような非立憲的な措置をとろうとする政府は、どこもございますまいし、又そういうことをやらせようとする国も今日の世界にはどこにもないと断言できると思います。又、現実問題といたしましても、日本の憲法の條項に悖るような内容の平和條約は全然考えられておらないということを総理もたびたび御答弁になつております。その点については何ら御懸念の必要はなかろうかと思うわけであります。それからもう一つお考え願いたい点は、日本のような議会制度、議院内閣制度を明定されておる国におきましては、内閣は即ち国会の信任にかかつておるし、国会は即ち国民の輿論を代表しておるもの、こういう法的関係にございますので、内閣が憲法によつて與えられた條約締結権を行使する際に、日本国民の要望というものを考慮に入れないで、條約の内容を固めるというようなことをすることは考えられないことでございます。私ども事務当局としても、條約の内容を固めるについては、啻に憲法の関係のみならず、既存の国内法制との関係も緻密に当つて見まして、ある條約を締結する、その結果国内法制にどういうふうな影響を及ぼすか、いわゆる国内法制の変革、修正というものが必要になるかどうか。若し必要になるという結論に達するならば、條約を批准する前に法制を改正して然る後、批准の措置をとるべきか、それとも條約を成立させることによつて、直ちに国内の法律を修正させる方式をとるべきかというような点を十分検討いたした上で決定するものでございます。で、團委員の御懸念になりましたような点は、何といいましようか。実際問題としては十分当局において考慮に入れて措置されるという点を御理解願いたいと思います。
○團伊能君 只今條約局長のお話、又御趣旨はよくわかりました。ただここに国際條約の締結に関する條項を法的に、又あらゆる場合を想像いたしまして、考える場合に起り得ると想像されるすべてのケースはここに一応考えて、これに当るべきだと思いますが、それで只今條約局長のおつしやつた中で、大体におきまして、それは、その気持は我々も違いありませんけれども、今日の時代におきまして、憲法を無視するような国際條約が起り得ないことは勿論でございましようけれども、又ほかの国が日本に或る條約を承認を強要するというようなこともないとは存じますが、併しそういうことは今日の場合にあり得ない、という御説明では、いささか独断的の上うたも考えますので、その点を、なおそういう場合もあり得たらぱどうするかという、ここにおける当局の御考慮もまあお願いして置きたいと考える次第であります。従来そういう場合が起り得ないというものが全部起つておりますし、又今日の国際情勢の中におきましても、いつでも起り得る状態にあるということの認識を一つお持ちになることをお願いするような次第であります。私の質問はこれで打切ります。
○伊達源一郎君 今までの團さんの質問及び條約局長の御答弁に関連してお尋ねしたいと思いますことは、この日本の憲法に、批准に関するところをはつきり書かなかつたのはどういうわけであるかという点と、それから批准というものは、條約締結ということの中に含まれておるものであるかどうかということと、それからアメリカのごときはどういう工合にして上院で條約を批准するものであるか、イギリスはどういう工合になつておるか、日本で国権最高の機関という国会が批准権を與えられていないということは、あの承認ということにその意味を持つておるのか、そういう点を御説明願いたいと思います。
○政府委員(西村熊雄君) 新憲法に條約を締結することといつて、條約を批准することについて何ら規定を設けなかつた理由はどうであろうか、どこにあるもであろうかという点であります。これは、こういうふうに説明すればよかろうかと思うのであります。もともと條約は十九世紀の終りぐらいまでは殆んど例外なく批准條項をつけたものでございます。二十世紀に入りましてからは、批准條項が入る條約は、内容の重要なものだけに限られまして、署名だけで最終的に成立する形式をとられる場合が多くなつて参りました。そうなりました原因は交通、通信機関が非常に発達いたしましたがために、国内にいる條約締結権者と、国外にいる條約締結の交渉に当る使臣との間に殆んど同じ場所にいると同様、通信の自由がございますので、時々刻々本国政府の訓令に従つて條約案を作成することが可能になりましたので、署名のあと更に本国に持ち帰りまして、果して全権委員が本国政府の意向通りに、與えられた権限の範囲内で、條約を作つて来たかどうかということを再検討する必要がなくなつて来た、薄くなつて来たのが原因であります。そうして、今日批准條項が重要な條約だけに置かれるようになつているのは、どういう理由かといいますと、二十世紀に入りましてからは、各国の憲法が大体例外なく條約締結権者が條約を締結するについて或る種の重要な條約の批准につきましては、議会の承認を必要としておりますので、こういう憲法を持つている国の條約締結権者に、国会に対して承認手続をとる時間的余裕を與える必要があります。そういう関係から批准條項は、今日なお比較的内容の重要な條約につきましては例外なく存置されているのでございます。そういたしますと、問題は結局憲法問題になりまするが、各国の憲法を見ますと、大体條約の締結権とは行政権の首長に與えております。憲法制度をとる国では国権は大体立法、司法、行政三権に分立されておりますが、行政権の首長に條約締結権を與えておりまして、ただその内容の重要なものにつきましては、立法権の機関である国会の承認を必要とするという條件を附している国もございますし、アメリカや日本のように、條約については国会の承認が必要であるといつている国もあるのであります。この点から見まして、新憲法はアメリカ憲法と同様、條約締結に関する限り国会の権限を非常に広く認めている憲法でございます。この点は国会の皆さんのほうで是非御理解頂きたい点でございます。この日本、アメリカのように條約締結権を行政府たる内閣に與え、同時に議会の承認を必要とする條約について制限がないという点であります。こういうふうな制度をとりますと、実際問題としては極めて困難な事態が起こるわけでございます。それは国会が終始開会していないという一つの事実がございます。それから冒頭に申上げましたように、條約というものが非常に数多く結ばれるようになりました。殊に電信、郵便その他技術的の分野、それから通商とか貿易とか、いう分野で短期間の、内容の軽微な国際約束が極めて多数結ばれるようになわました。そうしますと、若しあらゆる場合に、事前に国会の承認を必要とするということになつているとするならば、條約を締結する政府は、国会が開会していないが故に非常に事実上困つた立場になる。その辺の事情を考慮に入れて、新憲法では時宜によつては事後の承認でもよろしい、という規定が入つたものと理解いたしております。事実問題といたしましても、日本の憲法と同じような制度をとつておりますアメリカでは、大統領は上院の三分の二の承認を得て條約を批准することができるという規定になつております。そうしてその條約には何ら制限がないわけでございます。ところが事実上それでは殆んど動きがつかないような事態が起りまして、アメリカでは、国会それ自身が法律を制定いたしまして、或る種の事項に関して国際條約を締結するときは、上院の三分の二の承認を必要としないで締結してもよろしいという権限を大統領に與えておるし、又は行政府の持つ本来の権限に属する事項については、行政府限りにおいて国際約束をしてもよろしいという憲法上の慣行というものが長年の間に徐々に形成されて、いわゆる行政協定、工クスキューテイヴ・アグリーメントいう一つの観念も生まれておるくらいであります。無論政府といたしましては、事前に国会の承認を求めるというのが憲法の精神でございますので、でき得る限りあらゆる條約につきまして、それが日本に対して確定的に成立する前に国会の承認手続をとる、即ち事前手続をとるという方針で進むということは勿論でございます。又非常に重要な條約が国会閉会中に締結されるというようなことになれば、無論政府としてはそれがために臨時国会を開かれるというようなこともお考えになることもあろうかと存じます。事務当局としては事前承認を原則とする憲法の精神を体して行きたいと存じます。 御質問の順序と逆になりましたが、そういうふうなわけで、批准という行為は、結局批准條項のついておる條約につきまして、これを確定的に成立せる行為であります、そう国際法上理解されているのであります。従つてこの憲法にありますように、「條約を締結すること。」とある場合には、突き詰めて申しますれば、批准條項のついておる條約について申上げますれば、即ち批准をすることということになります。これが最終的に條約を日本に対して確定させる行為であるからであります。それまでは通俗的にいえば一種の予備的行為、初期の協議乃至は商議も、通俗的にいえば一種の締結の予備的行為とでも申しましようか、締結とは、批准條項のある條約については、日本が批准をすることによつて、その條約を日本に対して確定的に成立させることであると思います。 なおイギリスの制度について御説明申上げたいと思います。英国では條約は国会に提出する必要がないことになつております。だから国会の関與なくしてイギリスは條約を締結することができるわけでございます。英国王と政府の権限になつておるわけでございます。イギリスの憲法の用語でいえば、キング・イン・カウンシルと申しましようか、それが批准権を持つことになつております。併し実際上の問題といたしましては、国内法的に立法が必要となる性質の條約は、批准前に政府が国会に提出してその可決を経る慣例になつておるのであります。
○伊達源一郎君 今の御説明で批准のような非常に重大なことを書かなくても、近頃の條約締結にはそうなつておるということですが、條約締結ということのなかには、書かなくても必然的に批准ということも一緒になつておると考えていいのでありますか、批准ということは別に昔のように、樞密院を経て天皇の御承諾を得るというようなことは、重大なことで規定して置かなければならんと思うのですけれども、條約締結の中には、必然的に批准ということを含んでおるものであるかどうか。それから国会の承認を求めるということ、事前に承認を求める場合もあるのですけれども、事前に承認するということは極めて少いだろうと思います。それは條約局長がお話になつたように、急ぐ場合、その間際まで秘密にしておらなければならん場合などがありますために、事前に承認を得る場合は少い例であつて、むしろ事後に承認を得るようなことが多いのじやないか。事後に承認を求めるということは、実際上それはラテイフイケーシヨンと同じことじやないか。形式や名前は違うでしようけれども、事後に国会の承認を求めるということであつたら、それは即ちその條約を成立させる一つの行為だ、最終的行為であるから、それは批准というものでない別な言葉で現わしてあつても、それは批准と解していいようなことじやないかというようなことの疑問が起るのですが、どういうふうに考えたらいいものですか。
○政府委員(西村熊雄君) 明治憲法でも第十三條に「天皇ハ戰ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ條約ヲ締結ス」とあります。明治憲法でも天皇は「諸般ノ條約ヲ締結ス」とあるだけで、どこにも批准をするということは特に謳つてなかつたのであります。が「條約ヲ締結ス」ということは、当然批准條項のある條約については、批准するということを含むわけであります。批准條項がなくて署名だけで最終的に成立する條約につきましては、署名することがいわゆる條約を締結するということに該当するわけであります。そうお考え下されば、新憲法の下におきましても、批准について規定がなく、僅かに第七條でございましたか、天皇の行う行為の中に、批准書を認証すること、とあつて、批准書という文字が出て来るだけである、ということも御理解頂けるかと思うわけであります。
○理事(曾祢益君) 今度は私から一つ二つ御質問したいのですが、先ほど来のお話で、署名に上つて効力を発生する條約についても、原則としてはやはり事前に国会の承認を経るというのが精神だと思うわけであります。そういたしますると、署名をする前にはまだ案文が必ずしも公に確定していないということが予想されるわけですね。そういう場合に、国会に署名の前に承認を求めた、ところがあとでそれが内容が変つたというようなことが起る心配はないか。例えばそういう場合には仮調印といいますか、イニシアルでもして、大体これで案文が確定した、併し正式の暑名はしないというような頃を見計らつて国会に事前に承認を求めるために出されることになるのか。ややもすればそういうテクニカリテイーから、批准條項付きでない署名によつて効力を発生する、或いは成立するといいますか、條約については、実際上事前の承認というものは空文に終るようなことになる虞れなきや否や、この点はどういうふうにお考えですか。
○政府委員(西村熊雄君) その点につきましてはこういうふうに考えております。署名で確定的に成立する條約について交渉をいたす場合には、従来の慣例もそうでありますが、大体交渉がまとまりまして、案文について確定案を得ましたときは、交渉に当りました当事者が仮調印をいたすのであります。頭文字調印をいたしまして、これで案文は確定したぞ、もうこれ以上は何とも言いませんという意思表示になります。仮調印をしましたあとで、おのおの自国の憲法によつて要請されております国内手続を完了した上で署名をすることになります。これは大体国際的慣行であります。ですから、曾祢委員の御懸念になるような事態は極めて、何といいましようか、稀であろうと考えるのでありまして、署名で成立する條約につきましてもやはり事前承認を原則として行くべきものであると、事務当局としては、考えております。
○理事(曾祢益君) それに関連して更にお伺いしますが、批准條項付きの條約でも署名の前にイニシアルしてしまう、そうしてそれを国会にかけるというようなことは慣例があることですか。
○政府委員(西村熊雄君) 私どもの承知している限りでは、そういう先例はございません。批准條項を設ける場合は、それ自体の目的が、各締約政府に、国会との関係において憲法上所要の手続をとる時間的余裕を與えるのが大眼目でありますので、御指摘のような先例はなかつたように理解しております。
○理事(曾祢益君) それから大体原則として批准條項付きの條約は、内容が重要な場合ですから、例えば北大西洋同盟條約みたいな重大な條約については、勿論これは批准條項付きになつておりますね。一方アメリカとフィリピンの軍事基地協定といいますか、あれは署名で効力が発生するようになつたと思うのですが、ただその場合アメリカとしては議会における決議によりまして政府がそういつたような軍事基地を獲得する権限を議会の議決によつて與えられておつた。さような授権行為があつた結果、かなり重大なことであろうけれども、いわゆる批准條項付きでなくて、事前の授権行為に基いて、署名によつて効力を発生する協定にしたのではないかとまあ想像するのですが、さような関係からいいまして、やはり條約の原則論からいいますると、日本の講和條約に関連する暫定的な日本と外国との間の防衞に関する協定というようなものは、その性質上批准條項付きの條約になるべきであるということが原則論としては正しいとお考えですか。
○政府委員(西村熊雄君) 日米間の安全保障の問題につきましては、今日までのところ大体相互の間の考え方について話合が行われて、その結果将来国際約束の文書にとりまとめらるべきその構想について、大体意見の一致を見た程度でございます。従つてどういうふうな文書になりましようかという点については、今のところ臆測いたすにつきましても、その基礎となるべき材料が余りに不安定なものでございますので、将来における日米間の安全保障に関するとりきめは、まあ性質上日本から見れば批准條項があつて然るべきものじやなかろうかという点についての御質問に対しまして、正面から御答弁いたしかねる次第でございます。
○理事(曾祢益君) それは方針に関連するから確定もしていないから答えられないと、こういうことだろうと思いますから、それ以上伺いませんが、要するにかような重要な問題については、事前に国会の承認を経べしという原則に照らして善処されるというのが政府の方針であるかどうか、この点御答弁が願いたいと思います。
○政府委員(西村熊雄君) その点は私から答弁するのは少し適当でないと考えまするが、事務当局としては、勿論憲法の精神に則つて十二分に国会の御納得を経た上で締結さるべきものであろうと、こう考えております。併しこれは私だけの考えでございます。
○理事(曾祢益君) もう一つ伺いますが、時期的に講和條約の締結と防衛協定の締結とが一緒にならない場合が想像されるかどうか、その点は如何ですか。お答えになるほどあれしてなかつたら、お答え下さらなくても……。
○政府委員(西村熊雄君) その点も、今日の段階ではまだ確定的な見通しを立てるまでに固まつていないのであります。
○理事(曾祢益君) 四月六日のUP電の伝えましたいわゆる講和條約の草案に関連しまして、これは政府委員特にやはり條約局長にいろいろな点で伺いたい法律的な問題があるのですが、それで私から伺いたいのでありますが、先ずこの條約の恰好から見まして大体これはいわゆる二国間の條約という恰好でなくて、バイラテラルなものでなく、連合国対連合国は勿論複数でありますが、日本とのいわゆる一本の條約の体形をとつておるというふうに考えるのですが、若し万一そういつたようなものができなくていろいろな国際情勢からいつてバイラテラルな協定になるような場合には、條約の恰好も変るのでしようか。このままでもバイラテラルな協定というものが自然の姿なんでしようか、その点はどうなんですか。條約の恰好からいつて……。第一点はどうなんですか。これはやはり……。
○政府委員(西村熊雄君) いわゆるヘンスレー電で伝えられました條約草案なるものについての技術的な御質問について御答弁いたさなければならないわけでございまするが、あの草案につきましては、先刻政務次官から政府としてはあれが日本政府が受取つておる條約草案に比べてどうであるかについてはなんとも申上げられない立場にありますとの御答弁がありました。その通りでございまするので、委員長の御質問に対して御答弁することそれ自身が極めて不謹慎であります。速記をとめて頂きたいと思います。従つて新聞などにも書かないで置いて頂きたいと思います。そういう條件の下で御答弁いたしたいと思いますが、よろしうございますか。
○理事(曾祢益君) では速記をとめて……。 午前十一時二十四分 〔速記中止〕 —————・————— 午前十一時四十一分速記開始
○理事(曾祢益君) 速記を起して下さい。
○團伊能君 これは條約問題を離れますが、最近この間から総理からもちよつとお話がありましたが、委任統治になつている琉球の境界線につきまして三十度線が現在の日本統治から離れている線でありますが、最近二十九度線まで下がるという話を聞きますが、それはどういう根拠から出て来たのでありますか。はつきりわかりませんので明瞭にして頂きたいと思います。
○政府委員(西村熊雄君) これは新聞報道でございます。委員長がしばしば先刻来御引用になりましたヘンスレーの條約草案なるものを御覧になりますと、それに二十九度とあるのであります。
○團伊能君 只今のなにと同じになりますが、たびたび委員長からも言われたことでありますが、その情報の持つている確実性というものは、新聞報道の範囲を過ぎないものでございましようか。
○政府委員(西村熊雄君) 先刻も政務次官から御答弁がありましたが、日本政府といたしましては合衆国の條約草案の交付を受けております関係上、新聞報道の確実性について御答弁申上げられない立場にあります。御了承願いたいと思います。
○團伊能君 次にもう一つこれも要するに国際情勢に関する一般的なことでございますが、只今国民的に考えますと、フィリピンが要求しておる賠償につきましては、相当フィリピンの国内において強硬な態度があることを承わつております。若しもそれが或る程度認められるという場合には、他の交戰国もことごとくこれを主張される虞れがありますので、この点につきましても情報の正確なものを聞かして頂きたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) 実はこれは他の機会にもいろいろ御質問を受けまして、私どもも成るべく確実な情報を調べておりますが、現在は新聞報道以外には伝わつておりません。従いましてあの新聞報道もどれだけ確実性があるのかということは申上げかねるのでございます。
○團伊能君 更に又問題は別の問題になりますが、殊に政務次官の御意見を承わりたいと思いますが、従来の日本政府が持つておりました国際情勢に関する情報は、外務省はその一部を外務省の情報局が持つておりましたけれども、それは一部的なものであつて、それ以外に参謀本部なりその他の機関が相当の在外駐在員も持つており、いろいろな機関を通して非常に多角的な情報を日本政府自身が握つていたわけであります。殊に今日追い追い在外事務所もできまして、この在外事務所は諸般の情報の伝達にも協力されることと思いますが、殊に我々国民といたしまして不安を感じておりまするのは、軍事情報でありまして、日本が戦争をしないというのは自分だけの心がまえでありまして、世界の情勢は決してこれと一致しているものではありません。殊に日本が戦争をしない立場に立つだけに、海外の軍事情報の正確なものを入手して、その刻々動いて行くものによつて、国策をきめて行かなければならない点が将来多いと思いますが、これらを十分ならしめるために、現在におきましては、僅かに司令部その他の報道の余りをもらうという形でございましようが、これは外務省の一つの大きな機構の問題ですが、外務省情報部が軍事情報までこれを取つて、軍事情報も扱つて行かれるお考えで行かなければならないかと考えます。その点における欠陷は、現在におきましては外務省の情報局以外はないのでございますが、これらの点においての欠陷なきように、情報局の中で行われておりますものですか、或いはそういう立場に立てば外務省情報局は、現在の設置法或いはその他に上る條件から到底できないものであり、これらは一つ平和会議ができて自立権を回復すると共に、大きく考え直さなければならない問題であるか、その辺外務省のお考えを承わりたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) お話のように現在は、外務省は外務省としていろいろの仕事はいたしておりますが、殊に報情収集という点につきましても、在外に公式の機構を、在外事務所以外には持たないのであります。在外事務所は御承知のように仕事の範囲を、制限と申しますか、一定の範囲に限られていると申上げるほうがいいと存じます。従つて在外事務所が、その国におけるすべての情報を、日本のほうへ流すという機構にはなつておらないことも御承知の通りであります。ただ情報部といたしましては、現在日本に許されておりまする範囲の立場において、世界の情勢を最も正しく把握するために、あらゆる苦労をしながら努力をして行く、従つてその収集いたしまするような情勢は、従来戦争以前のような在外の公式機関による情報を集めることはできませんから、ただ現在の立場におけるあらゆる努力によつて、世界情勢を正しく把握するために、最大の努力をして来ているという点でございます。恐らく現在の機構を幾ら変えましても、現在の情報局が努力しておりまする以外にはやり得ないのじやないか、勿論独立いたしました後におきまする機構の改革等は、これは当然いろいろな点から考えて参らねばならないと思いまするが、現在では外務省はそういう意味におきまして、現在の立場における最大の努力をして行く。そうして世界の動きに誤りなきを期するという努力をしているという点を御了承願いたいと思います。
○團伊能君 只今の次官の御説明において、現在の段階における最大の努力をしている中に、軍事情報はお取扱いになつておりますか、伺いたい。
○政府委員(草葉隆圓君) 軍事情報と申しますると、いろいろこれは引つかかりがあると存じます。ただ情報部は世界の動きを正しく見るための努力をいろいろいたしておると申し上げるほうが最も適当であると存じます。
○理事(曾祢益君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○理事(曾祢益君) 速記を始めて。それでは政府委員に対する質問を終つたと思いまするので、お諮りいたしまするが、次に議員派遣の件についてお諮りいたします。 閉会中の本委員会の継続調査の一つとして、不法出入国と辺境における哨戒問題、並びに島嶼の帰属問題に関する現地の動向調査のため、北海道、及び鹿児島県地方、種ガ島にそれぞれ一班、日米経済協力に関する実情調査のため、関西地方に一班、計三班の議員の派遣を議院に要求いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。ちよつと速記をとめて。 〔速記中止〕
○理事(曾祢益君) 速記を始めて。それでは派遣班の問題につきましては、御希望がございますれば、御希望の班派遣の時期等を委員長までお申出でを願いたいと思います。委員長に御一任を頂きまして、議院運営委員会庶務小委員会で決定されました諸項目と勘案して、決定いたしたいとし存じますから、手続については委員長に御一任願いたいと思います。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○理事(曾祢益君) それではこれを以ちまして閉会いたします。 午後零時五分散会 出席者は左の通り。 委員長 櫻内 辰郎君 理事 曾祢 益君 委員 團 伊能君 伊達源一郎君 野田 俊作君 政府委員 外務政務次官 草葉 隆圓君 外務省政務官長 島津 久大君 外務省條約局長 西村 熊雄君 事務局側 常任委員会專門 員 坂西 志保君 常任委員会專門 員 久保田貫一郎君 —————・—————