法務委員会 第5号
- 発言数
- 89 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1951/02/21
会議録
○安部委員長 これより会議を開きます。 検察行政及びこれと関連する国内治安に関する件を議題といたします。本件に関し質疑の通告がありますので、これを通告順によつて許します。猪俣浩三君。
○猪俣委員 国内治安あるいは検察行政のことについての質問ということになつておりますが、そういう方面の質問と、なおそれに関連いたしました質問をしたいと思います。 まず検察行政または治安問題についての質問を先にしたいと思いますが、警察予備隊の現状につきましてお尋ねしたいと思うのであります。私どもの聞知いたしたところによりますれば、警察予備隊員として入隊した者のうちに、やめる人間が非常に多い。私の知つております警察予備隊の下士級にあたる人物も、先般私に就職を依頼して来て、その事情を聞きましたところが、自分は警察予備隊をやめることになつた、自分の同志七十六名が連判をしてやめることを決定した、かようなことを申して参りました。他にもやめる人間が多いというふうに聞いておりますが、この実情がはたしてどうなつておるか、入隊後やめた者の数、及びその原因がどこにあるのであるかということについてお尋ねいたします。
○大橋国務大臣 猪俣君の御質問の通り、警察予備隊におきまして、ただいままでにやめました者が相当の数に上つております。それは二月五日現在といたしまして四千二十八名、原因によりまして分類いたしますと、辞職をいたした者が三千五十六名、それから解職をいたしました者のうち、身体的、医学的理由による者が四百八十三名、本人の非行等によります免職が四百八十九名、こういうようなことになつております。
○猪俣委員 そういたしますと、四千二十八名のうち三千五十六名というものは、みずから辞職しておるのでありますが、私がお尋ねしたい根本は、一旦決心をいたして入隊した者が、幾ばくもなくして三千五十六人も辞職をしたという、その原因であります。どういう事情でさようなことに相なつたのであるかということが、私のお尋ねしたい中心でありまして、いろいろの動機からやめたろうと思いますが、大体どういう事情からそういうふうにやめるようになつたのであるか、お尋ねしたいと思うのであります。
○大橋国務大臣 辞職いたしました理由につきましては、定数的な分類をいたしました調査をただいま手元に持つておりませんが、この予備隊創設の当時以来今日までの実情を振り返つてみますと、まず給与が、最初初任給五千円程度ということで出発いたしましたが、いろいろな事情によりまして、当初の予定通りの給与が最終的に決定いたす間、約三箇月ばかり経過いたしたのであります。この間におきまして、給与について最初の話と違うではないかという理由でやめました者が相当ございます。それから警察予備隊の創設に際しまして、一般隊員の募集を先にいたし、幹部の募集を遅れていたしました結果、昨年暮れごろまでの間は、部隊に幹部が十分に配属されておらなかつた。これがため、隊内の管理の上から申しまして、いろいろ好ましくない事情も起りまして、これらの結果、前途に望みを失つて辞職を決意いたしたというような人も相当あることと考えております。
○猪俣委員 私の聞きました中には、今法務総裁のお答えになりましたような事情も確かにあると思うのでありますが、なお警察だと思つて入つたところが、まつたくの軍隊である。それから朝鮮へやらせられるような形勢である。そこで多く妻子を持つておるような者がやめたというように聞いておるのでありますが、さような実情が一体あるのであるかどうかということについてもお話願いたいと思うのであります。
○大橋国務大臣 朝鮮事変が勃発いたしまして、その後朝鮮におきます国連側の態勢がおもしろくないというような時期におきまして、国内の一部の人人から、予備隊が朝鮮に派遣されるであろうというようなデマを流しておつたという事実もあると存じております。これらに惑わされまして、予備隊の本質というものを誤解いたしました結果、予備隊をやめたい、こういう決心をした者も事実ごく少数はあろうと思います。
○猪俣委員 国内の治安が大切なことは申すまでもないのでありますが、そういう趣旨のもとに発走いたしましたこの警察予備に対しまして、かように出入りが非常に多いというようなことは、私どもこれは非常な責任者の失敗じやないかと考える。さようなことにつきまして、たとえば給与の面につきましても、国家のやり方としては実に無責任なことだと思う。それがために動揺を来すというようなことも、最高責任のある者の非常に反省しなければならぬ問題だと思うのであります。なおまた、まつたく軍隊的訓練をやつておるということにつきましては、当法務委員会におきましても、法務総裁並びに増原長官に対しまして、再三私は警告を発しておいたはずでありますが、なお現在におきましてもさような実情であるといたしますと、はなはだ遺憾だと思うのであります。総裁はこの警察予備隊がそういうデマ宣伝におどるようなことはなく、もうすでに安定しておるというように現状を認識でありますか。なおはなはだまだ不安定で、まだ多数やめる者が出て来るような形勢であると御認定でありますか。そのお見込みをお聞かせ願いたい。
○大橋国務大臣 まこと応当初いろいろな手違いがありまして、これがために隊員諸君に動揺を与えたということは事実でございまして、この点につきましては、責任当局といたしまして深く反省を加えておるところでございます。幸いにいたしまして、昨年暮に各キヤンプに日本人の幹部が、隊員のうちより、あるいは一般から募集せられまして、おおむね配属を終つた状態でございます。これがために、最近におきましては、中央の考えも地方にスームースに伝達され、また部隊内におきます一般の管理も円滑に進行いたしておるような状況でございまして、今後におきましては、訓練の精到と相まちまして、面目を一新し得るものと期待をいたしております。
○猪俣委員 私どもは、この警察予備隊が警察精神を失わずに、りつぱな警察隊となることをこいねがう意味におきましてお尋ねするのでありますが、所は遠慮したいと思うのでありますが、警察予備隊員の生活が相当自由である。これは私は昔の軍隊のような形じやない方がいいと思うので、反対するものではありませんが、宿舎に帰ります時間も十二時、一時のような状態になつておつて——私の耳に入りましたことは、幸いにしてこれがデマであればよろしいのでありますけれども、どうもさような状態ではない二、三のことが耳に入るのでありまして、酔つぱらつて、町で予備隊員同士で大げんかをやる、のみならず通行人にそばづえを食らわす、無銭飲食をやる、そうして場合によつては町の人にけんかを売る。ちようど東條内閣はなやかなりし時分の一部の乱暴な軍人のような態度、言語、そうして自分たちは特殊の階級であるような威勢を示しまして、ある町では非常な顰蹙を買つておる。かような事実が二、三耳に入るのであります。そこでこの警察予備隊が、像としてよりも、隊員自身が個々に町でいろいろな乱暴や、警察の問題になるようなことをやつておりました時分に、これを検挙するとかあるいは取調べるとかいう機関は、一体普通の町の自治体警察あるいは国家警察なりがやれるもの皆あるか、昔の憲兵のような形であつて、特殊の予備隊の警察がやることに相なるのでありますか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
○大橋国務大臣 予備隊の隊員につきましては、これは通常の警察権に当然服することに相なつております。従いまして予備隊がいかなる場所において、いかなる犯罪をいたしました場合におきましても、これを逮捕し、検挙するということは、すべての警察機関に与えられた当然の権限でございます。但し予備隊自身といたしましては、かような事件につきまして、特にそれが部隊内において行われるというような場合におきましては、でき得る限り部隊自身の手によつて起訴すべきものは起訴するところまで処置することが適当である。かような考えのもとに、予備隊の隊員のうち特に司法警察権を行使することを職務といたしたものを任命いたしております。このものは当然さような場合におきまして司法警察職員としての勤めをいたすわけであります。しかしこれは何ら一般の普通警察職員が隊員に対して警察権を行うことを妨げるものではございません。
○猪俣委員 私も法務総裁のお考えのようだと思つておるのでありますが、実際問題として、自治体警察あたりでは、予備隊員だというと、見て見ぬふりをしておる。たとえばカフエー、その他喫茶店へ行つて乱暴して、電話をかけても、予備隊員であると言うと、そのまま帰るというようなことも耳にするのであります。これは警察において一体考え違いをしておるんじやないかと思うのでありまして、予備隊それ自身が町の人たちの信頼を博さぬことに相なりましたならば、治安維持なんということはとうてい全うできないことは申すまでもない。その意味におきましても、さような醉余のあげく乱暴するような者に対しましては、ただちに自治体警察が相当の取締りをやるというふうにしていただかなければならないと思うのでありますが、この一般の普通警察官に対しまして、そういう趣旨の徹底をするようしかるべき御処置を願いたいということを要望いたしておきます。何か昔の兵隊さんのような頭で、これは憲兵がやることであつて、自分たちのなわ張りではないというような頭で行動しているやに聞くのでありまして、これははなはだ遺憾なことでありますから、さようなこともあることを御想定の上適当なる処置をとつていただきたいと思います。 それから警察予備隊の将来のことに対しましては、法務総裁がいろいろな委員会におきまして発言なさつておりますので、ここに私が繰返してお尋ねする要もないかと存じますけれども、先般新聞の伝うるところによりますと、全国の市長会議におきまして、国家警察の廃止または縮小をしようということが多数の要望である。それを政府に要請したように聞いておるのでありますが、かような全国の市長会議の決議というようなことに対しまして、政府はいかなる方針をお持ちでありますか、お尋ねいたします。
○大橋国務大臣 全国市長会の意見として国警を廃止するとか、あるいは縮小するというような意見がまとまつたということを私も新聞において見たことがございます。しかしながら事実これは市長会において正式にきめられた意見ではなく、市長会の事務局の人たちが市長会という名前で行動されたものであるということもその当時伺つたような次第でございます。この意見は私どもといたしましては、正式に受取つたことはございません。
○猪俣委員 なおこれはちよつと飛躍した問題でありまするけれども、一体警察予備隊が軍隊なりというような説が巷間伝わつている。そこでこれがそのまま軍隊に相なるならば、憲法との関連も出て来るのでありますが、しからば一体警察と軍隊というものの違いがどこにあるか、軽機関銃を持ち、あるいは大砲を持ち、だんだん裝備が完備して参りました際に、この警察という観念と軍隊というものの違いをどこに政府は限界を置いておられるのであるか。それが軍隊ということに相なりますならば憲法の問題になる。そこで政府の警察と軍隊との区別の標準をどこに置くのかということをお尋ねいたします。
○大橋国務大臣 警察は国内におきまする治安の維持また秩序の維持ということをその責務といたしましたる組織でありまするし、軍隊は戰争をするということを目的にした組織でございまするから、両者の間におきましては、その目的が根本的に異なつておると考えるのであります。かように目的が根本的に異なつておるという本質的な性格の相違からいたしまして、この両者の間におきましては、その規模において、あるいは裝備において、おのずからなる差異があるということは当然であろうと考えております。
○猪俣委員 そういたしますると、警察と軍隊との目的が違う、しかしながらその裝備におきましても、日常の訓練におきましても、いろいろ違つて来なければならぬし、これは私いつぞや当委員会におきまして、増原長官にも質問した。優秀な軍隊は必ずしも優秀な警察じやない。軍隊というものは、国内の治安維持のためには不適当な場合が間々あるという、アメリカの国警長官の言を引いてお尋ねしたことがありますが、そうすると、今のような軍隊と警察の区別を頭に置きまして、警察としての訓練をしておられると思うのでありますが、巷間伝うるところによりますと、それが非常に違つておる。まつたく軍隊としての訓練であるというふうに聞いておるのでありますが、実情はどうなつておるのでありますか、お聞かせを願いたい。
○大橋国務大臣 普通の警察は、個々の警察官として行動することが建前になつておりまするので、多くの場合におきまして、さような趣旨の訓練をいたしておるのであります。しかしながら警察予備隊が出動いたしまする場合におきましては、国内治安の維持のために、これが一つの部隊として出動することが多いのでございます。従つて部隊行動ということが訓練の主眼に相なつておる。この点におきまして、普通警察の訓練と、警察予備隊の訓練とは大いに実際上越を異にいたしておるのであります。
○猪俣委員 そうすると、部隊行動というものを中心にして訓練しているということになりますと、ほとんど軍隊の訓練と同じことじやないかと思われるのでありますが、その部隊訓練をする際に、それが軍隊にあらず警察であるというその目的からいかなる差異をもつて訓練されておりまするかをお聞きしたいと思います。
○大橋国務大臣 かつての軍隊におきましては、絶えず戰争ということを眼中に置いて訓練をいたしておつたのでありまするが、ただいまの警察予備隊は、その使命に照しまして、国内秩序の維持ということを常に眼中に置いて、各種の訓練をいたしておるのでございます。
○猪俣委員 どうも御答弁が抽象的で、はつきりいたしませんが、これはまた後日に譲りまして、私どもの方でも訓練の模様につきまして、もう少し具体的に調査いたしまして、またお尋ねしたいと思います。 それから講和も間近かに迫つておるのでありますが、講和ができました際におきまして、いわゆるポツダム政令なるものが非常にたくさん出ておりまするが、このポツダム政令の処理というのは、どういうふうにするかということに対しまして、法務府は構想をお持ちでございましたらお聞かせ願いたい。
○大橋国務大臣 法務府といたしまして、今日までに研究いたしておりまするところによりますと、ポツダム宣言に基きまして発せられましたる政令というものは、これが原則論といたしましては、講和條約の締結によりまして、日本が完全に自主権を回復したあかつきにおきましては、その将来におきまする効力というような点につきまして、何らかの立法的措置をとることが適当である、こういうふうに考えております。
○猪俣委員 そうすると、まだ具体的な構想はおつくりになつておらぬように見えるのでありますが、何らかの法律的処置をとるということだけでは漠としてわからぬ。結局まだあまり構想を練つておられないというような御答弁なのでありますが、そういたしますと、どうもこの先の質問がなおだめになると思うのでありますけれども、ポツダム政令の有効なうちに政令違反の行動をやつて、これがもし講和後ポツダム政令のあるものが廃止になるような場合におきまして、その有効時分に犯しました行動を、廃止後もなおこれを問題にするのであるかどうかというようなことをお尋ねしたいと思いましたが、まだ全然構想をお持ちになつておらぬような御答弁に伺われるのでありますが、そういうことについても御考慮なさつておりますかどうか。これはまあ経済法令における限時法と同じような問題になるのでありますが、これは非常に影響がありますのでお尋ねするのであります。
○大橋国務大臣 ただいま御質問になりましたる点につきましては、いわゆる限時法の問題と同じような問題でございまするので、これは法務府といたしましては、ぜひともポツダム政令が将来効力を失うということになりました際におきましては、これを限時法と同じように裁判所の裁判例によつて解決するというようなことでなく、でき得る限りは立法的措置によつてその点の取扱いを明確にいたすことが適当ではないかという考えを抱いております。
○猪俣委員 なお具体的な問題につきまして、一つお尋ねいたしまして先へ進みたいと思いますが、先般新聞の伝うるところによりますると、追放されておりまする鳩山一郎その他の方々がダレス氏に面会をして、講和のあり方とか、あるいは日本の政治上、経済上、外交上の諸問題について具申されたというふうに承つておるのでありますが、これは一体追放者の政治活動とならぬのであるかどうか、その点の御見解を承りたい。
○大橋国務大臣 鳩山一郎氏ほかただいま公職追放令の該当者となつておられる方々が、ダレス特使に会見せられ意見を述べ、あるいはまた書面によつて意見を上申されたということは、私も新聞によつて承知をいたしております。しかしながらこれはダレス特使の側からかような意見を求められ、それによつて意見を述べられたものでございまして、これは正当なる、理由あるものとして、追放令違反の問題を生ずる余地はない、かように解釈いたしております。
○猪俣委員 そうすると、その違反にあらざる根拠は、正当なる理由というところにあるわけですか。
○大橋国務大臣 これは追放令の問題ではない、追放令適用のらち外の問題である、こういうふうに考えております。
○猪俣委員 追放令も国内法だと思うのであります。それで人によつて違反にすることはできないと思うのでありますが、これは追放令の問題じやないという御解釈は私ども受取れないのですが、何かもつとしつかりした法的根拠がありましようか。
○大橋国務大臣 これは元来ダレス特使が日本に見えたということは、日本との講和條約問題に関しまして連合国の一つでありまする米国のトルーマン大統領の公式の代表として渡米せられたのでありまして、その目的は朝野を問わず、また追放者であるとないとを問わず、広くわが国の各界の人士に対してその意見を聞こうという趣旨で見えたのであります。従いまして鳩山一郎氏その他の追放者の方々とダレス氏とが会見せられ、追放者の側から意見を述べ、または意見書を提出いたしましても、そのこと自体が当初から追放令適用のらち外にあるものでありまして、従つて追放令違反の問題を生ずる余地がない、かように解釈いたしております。
○猪俣委員 そうすると、トルーマン大統領の意思を受け、その代理として日本の朝野の意見を聞きに来たのであるから、そのダレス氏が呼んだことであるから、それは法律問題じやない、追放令を超越した問題である、こういうふうに聞きとつてよろしゆうございますか。
○大橋国務大臣 さような趣旨でございます。
○梨木委員 ちよつとそれに関連して……。公職追放、これはポツダム宣言に基いて、その後の占領政策の一環としてなされておるということは明白な事実であります。従つて連合国側はこのポツダム宣言に拘束されておるということは明白であります。自分の方で命令を出して、そして公職追放ということを日本の政府に指令しておきながら、これらの追放該当者との間に政治的な会談をするということは、これは連合国全体がこれについて同意をしたというのならば、それならばまだ連合国側がみずからの権利を放棄することができるのでありますから了解できますが、連合国側の一国だけがポツダム宣言という国際協家に基いてなされた事項に反するような行動をするのは許されないはずだと私は法理論的に考えます。従いまして今の法務総裁の御答弁の、連合国側の一国の正式なら正式の代表者が、みずから進んで追放覚書の該当者と会談したのだから、それは追放令違反には該当しないのだということを納得するためには、連合国側の全部の同意がなければならぬと私は考えるのでありますが、その点については法務総裁はどう考えておられますか。
○大橋国務大臣 連合国の立場につきましては、私はここで申し上げる地位にないわけであります。私は日本政府の取扱いについて御答弁申し上げた次第でございます。
○安部委員長 なおこの際申し上げますが、大橋法務総裁は三時に他の会議に出席せなければならぬのでありますからして、ほかに政府委員の方が御出席になつておりますから、大橋法務総裁に対する質疑はきわめて簡單に、三時五分前ぐらいまでに済むようにお願いします。
○猪俣委員 法務総裁は内閣全体の法律顧問でありますから、一、二お尋ねいたしたいのですが、間近に迫りました講和條約、この講和條約の内容が、これはただちに国内法というような効力を発生するものとお考えであるかどうか。あるいは講和條約の内容を立法手続によつて法律化するというような手続をしなければ効力は発生しないのであるかどうか、政府の御見解を承りたい。
○大橋国務大臣 一般に條約の国内法上の取扱いにつきましては、その條約の趣旨を実施いたしまするために、あらためて国内法を制定するということもないわけではありませんが、現在の日本国憲法におきまして、條約の誠実なる遵守義務を規定いたし、また法律と同様に、條約を国内において公布するという手続を定めておる点から見まして、條約は公布されることによつて当然国内法としての効力をも持つものと考えておるわけであります。この点は講和條約につきましてもかわりはないことと存じます。
○猪俣委員 なお一点、これは当然のことかも存じませんが、法律屋として念を押したいと思いますが、今度の講和條約というものは日本国憲法にうたつております。たとえば九十八條にうたつておりまする條約と解してよろしいものであるかどうか。
○大橋国務大臣 講和條約もまた憲法の條約でございまして、その締結並びに承認の手続は、いずれも憲法所定の手続によつてなされる必要があることは、申すまでもないことと考えております。
○猪俣委員 條約と申せば、やはり国と国との一つの契約である。そうすると、この日本国がみずから認めた意思投合しました條約は、これはもちろんわれわれが遵守すべき一つの根拠があると思うのでありますが、今度の講和條約は何か天下り的に連合国がかつてにきめるので、日本国としては希望を述べても、かれこれに容喙することができないのだというふうに聞かせられておるのでありますが、そういう立場での條約でも、やはりこの憲法上の條約ということに相なりましようかどうか。これは意思の合致という契約理念から見ますと、少し変則だと思うのであります。そこで今度の講和條約も、やはり日本が相当対等の立場で締結できるのであるか。あるいは一方的にきめられたものをわれわれがただ受諾するにすぎぬのであるか。ただわれわれが受諾するにすぎぬものであるとしますならば、これを憲法九十八條の條約とみなしてよいかどうかという疑問が出るのでありますが、法務総裁の御意見を承りたい。
○大橋国務大臣 講和條約もやはり一つの條約でございまして、国家間におきまする双方の意思の合致ということを基礎にいたして、これが取結ばれるものであると考えておるのであります。従いましで講和條約の締結ということにつきましても、やはりその形式におきましては、あくまでも対等的なものであると考えております。しかし実質的にこれを見ますと、講和條約は勝者と敗者の間に結ばれるものでありますから、勝者の優越的な力によつて内容が左右されるということは、これは免れがたいところであると存ずるのであります。しかしこのことは、條約は本来形式上対等のものであるという、その対等の理論を越えましたところの、戰勝国対戰敗国間の事実上の問題でございまして、これによつて形式上対等であるところの條約とは、まつたく異なるものであるということを申すわけに参らぬものと考えるのであります。
○猪俣委員 わかりました。そこでなお進んで、しからば憲法九十八條の條約であるということになりまして、この條約自身の内容におきまして、日本国憲法の趣旨と反するような事項が盛られた場合におきまして、この條約の効力と憲法とはどういう関係に相なると政府はお考えでありますか、お尋ねいたします。
○大橋国務大臣 講和條約によつて、憲法と矛盾いたとりきめが結ばれるというようなことは、あり得ないと考えております。
○安部委員長 猪俣君、お諮りいたしますが、法務総裁は他に出席しなければならぬのでありますからして、総裁に対する質疑は次の機会まで保留していただいて、ほかの政府委員に御質問を願います。
○猪俣委員 この質問をいたしまするゆえんのものは、日本国憲法の第九條におきまして、一切の軍備及び戰争を放棄した。しかるに講和條約の中に再軍備をするようなことが含まれ、時の政府なり国会なりがこれを承認したということになりますると、憲法九條におきます戰争放棄と矛盾するものが出るおそれが十分あるのであります。その條約がどこまでも、あなたの言つた実質的に対等の立場で取引をしたものであるならば、ある程度がまんをするところもあるのでありますが、形式は対等であつても、実質的には勝者、敗者の形で一方的にきめられる場合には、日本の憲法の戰争放棄などと違つたところの内容を持つものがとりきめられたということになりますると、これは私どもは非常に大問題だと思うのであります。その際には憲法を改正すればよいという議論が出るかもしれませんが、私どもの見解からすれば、ての日本国憲法の戰争放棄の條項というものは、憲法を改正してもできないことである、そういう観念を持つておる。そこで法務総裁にお尋ねいたしますことは、一体憲法第九條の戰争放棄の規定を、憲法改正の手続において廃止するなり、あるいは変更することが可能なりとお考えであるかどうか。これを承りたい。
○大橋国務大臣 政府といたしましては、第九條の改正というような問題は、ただいま全然考えておりません。ただしいて法理上の解釈としてはどうであるかという御質問でありますならば、この條項も憲法改正の手続によりますれば改正することはできるであろう、こうお答え申し上げる次第であります。
○猪俣委員 なお今のことを確認しておきますが、そうすると政府の見解は、日本国憲法の九條を改正し、また軍備を整え、あるいは戰争をすることを容認するような態勢も、改正手続でできるという御答弁でありましたが、なお一点確めておきます。しからば日本国憲法のこの民主主義を揚棄いたしまして、主権が国民にあるという規定を改正いたしまして、主権は皇室にある、天皇にあるのだという改正は、やはりこの改正手続でできるとお考えであるかどうか。
○大橋国務大臣 さような改正につきましては、全然考えたことはございません。
○古島委員 どうも総裁を猪俣君に独占されてしまつて、ほかの者は質問するに質問のしようがない。今度はいつ、どういう時間に来てくれるか、それを確めて、それから解放してやつてほしい。
○安部委員長 古島委員の御発言は了承いたしました。委員長において善処します。
○古島委員 さらにこの際質疑を申し上げます。この前の調査書を報告いただきまして、あれを承認するこの委員会が開かれた際、私は日本共産党の方の御演説がいかにも不穏当である、その部分の取消しを願わねばならぬということを委員長にお願いしておきました。委員長は速記録を見てから善処するということでありましたが、速記をごらんになつてどういうふうな処置をとりましたか。
○安部委員長 そのことは委員会にお諮りいたしまして、もしも梨木委員の御発言中に不穏当な箇所がありまするならば、委員長においてこれを取消すということを御承認いただきまして、委員長が速記録を検討いたしました結果、その中に、すべて共産党の委員を調査団より除外したというような御発言があり、かつまた、安部委員長は調査以前におきまして、大阪においてあたかも共産党を彈圧するような委員長談があつたという御発言がありましたが、これははなはだ不穏当であつて、事実と相違する点があると認めましたので、これを削除いたしました。
○古島委員 委員長がかつてに議員の演説を削除するということはできぬはずであります。少くともその発言をした人に、これを削除するかどうかということの同意を得ておりますれば別ですが、同意のないのを委員長がかつてに削除することはできぬことだと思います。
○安部委員長 それは前もつて御承認を得ておつたわけであります。しかも委員長の大阪における発言は何も梨木君に関係したことではない。
○古島委員 梨木君の演説の中にそういう不穏当な言があつたならばあつたで梨木君に……。
○安部委員長 それは御了承を得ておつたから削除することにした。先例があるから先例に従つてやつたのです。
○古島委員 委員長が梨木君に取消しを命じていただきたいと私は思う。どうか命じていただきたいということを発言したらば、ほかの者に賛成があつた……。
○安部委員長 衆議院規則の第二節第六十六條に、委員長の権限という條項があります。「委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持し、委員会を代表する。」こういうようなことがありますからして、古島委員の御発言によつて不穏当なことがあるということを委員長が認めれば、委員長が不穏当な箇所を取消すのに何らのこれが……。
○古島委員 不穏当の箇所があれば、その発言した人にこれを取消させなければならない。その部分を前もつてそういう場合に削除すると同意を得ておく……。
○安部委員長 それは先例によりまして取消しを命ずる場合もあり、また取消しすることをお諮りする場合もありますが、また委員長において取消すことの先例もあることを了承しております。
○古島委員 私の方は取消しを命じていただきたいということの発言をいたしました。
○安部委員長 あなたの御発言はいずれ速記録を調査いたしまして、それからにいたしましよう。
○梨木委員 大体その問題については、私は古島さんからそういう発言がありましたので、私はこういうふうに言つた。ことさらに共産党員を除外した、こういう言葉を使つた。私はそういうぐあいに受取つて、そういうぐあいに判断をした、その判断を述べておるのでありますから、その点について事実私が不穏当であるかどうかということは、実際あの事実的な経過を見れば、私はそういう判断をするのも決して牽強附会ではない。だからそういう点を不穏当であるかどうかということは、事実的経過を述べて、その結論として私がそういう表現をしたことが不穏当かどうかということの判断の基準になると思います。そこで私にそういう弁明の機会を与えていただきたいということを発言しておるにかかわらず、委員長はそういうことを言つて、今自分のことに関してまで、明らかに新聞に出たのでありますから、そういう事実についてまで委員長は自分のことに関して、それを不穏当のことに籍口して、そこまで削るなどということは実に横暴です。
○安部委員長 梨木君にお答えいたします。あの問題は、すべて共産党を調査団より除いたということは不穏当だ、そういう事実はありません。それは運営委員会において、理事会において、梨木君を調査団に選任するという約束があつた、こういうお話をされたのであります。それは事実に相違しておつた。あなたはそういう希望はあつたけれども、理事会においては申合せがなかつたのでありまして、また二十八人の議員がある共産党が、他の自由党とか、民主党とか、社会党から選考して五人の調査団に入る余裕がなかつた。やむを得ず人数の上から選考して、共産党の方は調査団に加わることができなかつた。それは特にある意図によつて共産党員を調査団より除いたということは実はないのであります。 それから大阪における委員長の談話というものは、共産党を断圧するとか、あるいは共産党に対して何か最初から共産党を排撃するとかいう意図をもつて調査団が来たというようなことはないのであつて、それがもしも調査の結果、何か暴力をもつて治安を害するようなことがあつたならば、その法律によつて適当な処置をとる考えをわれわれは持つておるということを発言した、その新聞記事もあるのでありまして、それをあたかも私が最初から共産党を断圧する意図を持つて行つたということは、事実に相違しておる。それで不穏当と認めたから、これを抹殺したのであります。
○梨木委員 委員長、事実と違う。
○安部委員長 これは本日の議題に入りませんから、別の機会に……。
○猪俣委員 この問題はあとでまたよく論議することにいたされまして、今政府委員も出ていることでありますから、質問を続行したいと思うのであります。さようおとりはからい願いたい。
○安部委員長 ただいまの猪俣君の御提案に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安部委員長 それならば、政府委員も出席されておりますからして、ただちに議事を進めます。
○猪俣委員 朝鮮人送還問題について鈴木さんにお尋ねしたいと思います。この不逞なる朝鮮人を朝鮮へ送還するというようなことが新聞に発表せられまして、政府の意思がそこにあるような先般発表がありましてから、私どものところへ、朝鮮人の団体または個人がたびたび要請に参りました。さような朝鮮人をみな朝鮮へ返すのであるかどうかというような心配をして来ているのがあるのであります。そこでこの朝鮮人送還問題につきましての政府の態度を、今少しく具体的にお聞かせ願いたい、こう思うのであります。どういう場合におきまして朝鮮人を送還するのか、その一定の標準あらばその標準いかん、それから現在どういう程度の送還の人間があるのか、その送還の手続、方法というようなことにつきましてお聞かせ願いたい。
○鈴木(一)政府委員 ただいまお尋ねがございました朝鮮人の送還につきましてお答えを申し上げます。 第一点は犯罪を行い、その他あまりおもしろくない人達を強制送還するという問題と存じますが、この点につきましては、昨年の暮に官房長官談として、政府から発表がありましたが、現在のところはあの程度でございまして、目下研究中というところと存じます。実はこの問題は、むしろ出入国管理庁の所管の問題ではないのでございまして、法務府関係の方から御答弁なさるべき問題かと思います。 それから現段階におきまして、どういうような送還手続をしておるかという第二のお尋ねでございますが、現在われわれの方で取扱つております送還は、主といたしまして、日本の国へ——大部分が朝鮮半島からでありますが、成規の手続を経ずして不法に入つて来る人たち、これを調べまして、そしてその事実あれば送還をいたす、それがおもなる仕事になつております。
○猪俣委員 今までそういう処分をしたものはどのくらい統計に出ておりますか。それからそれはどういう法的根拠をもつてやられておるのであるか。
○鈴木(一)政府委員 法的根拠の方から先にお答え申し上げますが、外国人登録令というポツダム政令によりました政令が出ておりましてその一番の眼目に日本国に入つたり出たりすることに関して、全部総司令官の許可がなければできないという規定がありまして、それに違反しはものを送り返すということになつておるわけであります。 それから送還の実情を申し上げますと、大体朝鮮動乱が起きる前は相当数に上つておりましたが、むしろ動乱になりましてから減つております。二十四年度におきましては、これは暦年でございますが、大体八千名、それから二十五年度は十二月末におきまして二千三百名という程度でございます。
○猪俣委員 これはあるいは法務府の御答弁になるかと思いまするが、外国人登録令に違反したものは処罰をされる。送還は刑罰とするのじやなくて、行政処分だと思うのでありますが、それはどうなつておりますか。
○鈴木(一)政府委員 その通りでございます。
○猪俣委員 そこでお尋ねいたしたいことは、この外国人登録令違反によつて起訴されまして、懲役に処せられたが、三年間の執行猶予を受けた。そこで執行猶予の恩典にあずかつたために、彼は非常に喜んで、その妻が日本人であります関係上、日本に踏みとどまつて今度は更生をしようという誓いを立てたとたんに朝鮮送還の手続をとられて、今長崎に送られておる人間があるのでありますが、今のような刑罰と行政処分と違うということに相なりますならば、さようなことになるかと思うのでありますけれども、せつかく裁判で執行猶予までをつけてやつた人間に対しても、やはりこれは送還するのであるかどうか、執行猶予というのは情状大いに酌量すべきであるとして執行猶予されたのでありますが、さような立場の人間もやはり送還することに相なつておるのでありますかどうか。
○鈴木(一)政府委員 外国人登録令第十六條にその点が書いてございます。外国人登録令に違反をいたしまして、禁錮以上の刑に処せられたる者に対して、やはり退去を強制することができるという條文がございまして、これによりまして、それに該当いたしますれば送還をいたすごとになつております。
○猪俣委員 これは将来の問題になりまするが、この刑罰に触れる、すなわち外国人登録令によつて密入国したというような関係でなしに、非常に不穏な人物である、日本の国内の治安を乱すような人物であるという認定を政府がした場合に、これを朝鮮送還するというような道を今お考えになつておるのであるか、おらぬのであるか、それをお伺いいたします。外国人登録令の範囲外に、つまり送還の範囲を広げるようなことを考えておられるかどうか。
○鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねの点は、一番先に申し上げました、昨年の十二月に官房長官談をもつて発表いたしました程度にしか、ただいまお答えができないのでございます。
○猪俣委員 終りました。 —————————————
○安部委員長 この際お諮りいたすことがございます。 司法書士法改正に関する小委員長田嶋好文君より、小委員長辞任の申出があります。これを許すに御異議ありませんか。 (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○安部委員長 御異議なければさよう決します。 なお小委員長の補欠選任につきましては、先例によりまして委員長において御指名いたすことに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安部委員長 御異議なければ、北川定務君を小委員長に御指名いたします。 なお罫災都市借地借家臨時処理法改正に関する小委員を一名追加選任いたしたいと思いますが、追加選任は委員長において御指名いたすに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安部委員長 御異議なければ牧野寛索君を御指名いたします。 また罫災都市借地借家臨時処理法改正に関する小委員長北川定務君より、小委員長辞任の申出があります。これを許すに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安部委員長 御異議なければさよう決します。つきましては小委員長を補欠選任せねばなりませんが、委員長において御指名するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安部委員長 御異議なければ、牧野寛索君を御指名いたします。 なお辯護士法改正に関する小委員長鍛冶良作君より、小委員長辞任の申出があります。これを許すに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安部委員長 御異議なければさよう決します。 なお小委員長の補欠選任につきましては、委員長において御指名いたすに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安部委員長 御異議なければ、山口好一君を小委員長に御指名いたします。 なおこの際小委員会の設置についてお諮りいたします。商法の一部を改正する法律改正に関する小委員会を設置し、その改正に当りたいと思います。が、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安部委員長 御異議なければさよう決します。 なおその小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長において御指名することにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安部委員長 御異議がなければ小委員といたしまして、 押谷 富三君 北川 定務君 佐瀬 昌三君 田嶋好文君 花村 四郎君 武藤 嘉一君 大西 正男君 猪俣浩三君 田万 廣文君 梨木作次郎君それに私を加えまして、以上十一名を御指名いたします。またその小委員長といたしましては、押谷富三君を御指名いたします。 なお明日午後一時より戸籍法改正に関する小委員会を開会いたしますから、御了承願います。次会は公報をもつてお知らせいたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時二十五分散会