懲罰委員会 第6号
- 発言数
- 8 件
- 登壇者
- 2 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1950/05/01
会議録
○委員長(太田敏兄君) これより懲罰委員会を開会いたします。 かねて本委員会において調査中でございました「懲罰制度及びその慣行等に関する調査」につきましては、今期国会も余すところ二日となりましたので、本日調査報告書提出のため委員各位にお集り願つた次第であります。本調査は第四回及び第五回国会における「懲罰権の適用範囲に関する調査」を継続いたしまして、直接的には第五回国会の会期末における懲罰事犯の継続審査問題に端を発し、懲罰に関する憲法、国会法及び参議院規則中の抽象的であり且つ不明確な規定によつて起る諸種の疑義を解明するため、主として諸外国における懲罰制度及びその運用上の慣行等を調査する目的を以ちまして、先に第六回国会中昨年十一月十六日議長の承認を得て調査に着手し、更に引続き今期国会におきましても承認を得て調査を継続いたして参つたものであります。 その調査の方法といたしましては、委員会庁舎の中に一室を設けまして、すでに調査着手当時御了承頂きましたように、法制局及び国会図書館等の御協力を得まして外国文献の蒐集並びに飜訳に從事して頂いたのであります。特に本年一月渡米されました国会議員団に対しましては、米国におけるその実情につきまして調査方を依頼いたしまして、先般その報告を承わりますと同時に継続審査問題等の種々の疑義に関連する詳細なる質問書を各議会宛送つたのでございますが、米国におきましては、懲罰事犯が殆んどなく回答困難であるとのことで遂に答弁書は得られなかつたのであります。資料につきましては、事務総長の報告によりますと、追つて米国国会及び各州議会の規程集並びに議事録等が送付されるものと期待いたしておりまするし、又国会図書館の国際業務部を通じて要求いたしました米国議会関係の資料は、米国プロセスイング・デパートメント・エクスチエンジ・アンド・ギフト・デヴイジヨンよりの通知によりますれば、その一部を近々受納することができると存じております。かくしてその間委員長理事打合会二回、数回の委員長及び事務担当者の連絡会議を開会いたしまして着々と調査を進めて参つたのでございますが、何分にも資料の蒐集の困難なことと、その調査目的の遠大なるに比し、このために與えられた時間が数ヶ月という短期間でありましたために、ここには一応結了報告をいたすことにはなつておりますが、満足すべき十分なる調査を盡すことができなかつたことは誠に残念に存ずる次第であります。 只今ここにありまする調査報告書の草案は、特に同方面の研究家であられる明治大学政治経済学部長弓家七郎氏に委嘱いたしまして、昨年十二月以降蒐集いたしました資料に基き、これに検討を加え総合して作成して頂いたものでございまして、本文及び添付資料よりなつております。先ず本文につきましては、お手許にお配りいたしましたように各項に分類いたしてございます。朗読いたしますと、 調査報告書 懲罰制度及びその慣行等に関する調査 右の件に関し調査を終えた。よつて多数意見書の署名を附しその経過並びに結果を報告する。 昭和二十五年五月一日 懲罰委員長 太田 敏兄 参議院議長 佐藤 尚武殿 一、調査経過 二、懲罰権の意義 1 懲罰権と自律権 2 懲罰権と本質 3 懲罰権と議員の特権 三、懲罰権の適用範囲 1 懲罰の事由 (一) 院内の秩序を乱す行為 (二) 議員としての職責を重んぜざる行為 (三) 議員の品位又は体面を傷ける行為 (四) 議員としての信任を裏切る行為 2 懲罰の対象 3 時間の問題 4 場所の問題 四 結論 となつておりまして、各項目ごとにそれぞれ諸外国における実例を述べて論旨を展開しておるのであります。百項に及ぶ報告書でございますので、ここにその論旨の概要を御説明申上げたいと存じますが、只今この調査の取りまとめを願つた弓家先生がお見えになつておりますので、便宜弓家先生から御説明を願つてはと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(太田敏兄君) それでは弓家先生の御説明をお願いいたします。
○説明員(弓家七郎君) お許しを得まして調査報告の大要を御説明申上げます。 懲罰権は議院の自律権にその基礎を置くものであります。成分的には憲法第五十八條第二項の「両議院は、……院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。」という規定に基くものであります。言うまでもなく、国会は国権の最高機関でありまして、他の如何なる権力にも服從することがないものであります。その当然の結論としまして、いずれの国にありましても、議院は、その役員を選任したり、会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定めたり、又は院内の秩序をみだしたる議員を懲罰したりする権限を有しているのであります。 懲罰の目的は第一には、議院の規律を維持して、議事の秩序ある進行を図るためであり、第二には、国権の最高機関たる品位を保持して、議院の権威を維持することであります。又懲罰権の対象となりまする懲罰事由は、第一には、院内の秩序をみだすごとき行為であり、第二には、議員としての任務を疎かにするごとき行為であり、第三には、議院の品位を傷けるごとき行為であり、第四には、議員としての信任に背反するごとき行為であります。尤も同じような行為にいたしましても、それが行われたときの状況により、又はその人により、例えば、それが初めての行為であるか、又は何回も重ねている行為であるか等によつても異なりますので、一概には申しかねるのでありまあす。 懲罰権の主体は議院であります。我が国におきましては、各議院に常任の懲罰委員会が設けられておりまして、懲罰事犯が生じましたときは、議長がこれを懲罰委員会に付して審査させ、議院の議を経て懲罰を宣言する仕組みになつており、更にいわゆる懲罰事犯にまで至らない軽度の秩序紊乱行為等につきましては、議長の職権を以て、これを警戒したり、或いは発言を取消させたりすることができ、尚命令に從わないときには、当日の会議を終るまで発言を禁止したり、又は議場の外に退去せしめたりすることができるようになつていることは、御存じの通りであります。委員会においては、委員長がこれに準じた権限を持つておりますこともこれ又申上げるまでもありません。議長や委員長は、かくのごとき職権を持つてはおりますが、これは議院の機関としての地位に基き、法律を以て職務上このような権限を與えられておるからでありまして、議長なり、委員長が懲罰権そのものを有しているわけではありません。懲罰権の所在が議院にありますことは、憲法第五十八條第二項の明記するところであります。 懲罰の対象となりますもの、即ち議院が懲罰することのできまする者は、我が国の法制におきましては、一応その院の議員だけであります。併しこれは議員にあらざる者は、たとえ議員の秩序をみだしても、又議院に対してどのような屈辱を加えても、議院から罰せられることは絶対にないというのではないと考えます。若しそのような行為をなした者がありました際には、各議院は、その自律権を以てその議員であろうとなかろうと、これを処罰することができるものであると存じます。イギリスの国会のごときは、議員にあらざる者に対しても懲罰権を有して、而してしばしばこれを行使しているのであります。例えば議員の特権侵害行為又は議会に対する屈辱行為、議員の議会における行動に対しての惡質の讒謗、賄賂の提供等に対しましては、それが議員にあらざる者によりてなされたるときと雖も、議院はこれを処罰することができるとせられております。懲罰の方法としましては、議場における訓戒、譴責又は拘禁、罰金を挙げることができます。訓戒及び譴責は、議員に対しましては、その席においてこれをなすのでありますが、議員以外の者に対しましては、議場の人口に設けられてありまする欄(バー)のところにおいて跪座脱帽せしめ、議長から嚴かに訓戒又は譴責せられるのであります。又拘禁は、宣告の後、議員の場合におきましては、議事堂の時計塔に拘禁せられ、議員にあらざる者の場合には、司法行政官庁に引渡されるものであります。尤も罰金は、一六六六年以來課せられた例はないということであります。これらの国会の処置に対しましては、行政官庁も、司法裁判所も干渉することができんことになつているのであります。我が国におきましては、憲法も又国会法も、議院がその議員を懲罰することができると明記してありますが、議員以外の者を懲罰することができるとは明記してありません。勿論懲罰することができないとも定めてはありませんが、法律の解釈としては、一応議院はその議員以外の者を懲罰することはできないと解釈せらるべきであると考えます。併しこの点は将來大いに考慮を要する問題であろうと存じます。 次に議院がその懲罰権を行使するには、時間的に如何なる制約があるかという問題があります。その第一は、懲罰事犯たり得る行為は、会議中においての行為だけに限られるか、又はもつと広くして、会議中ではなくても、議会開会中の行為であるならば懲罰事犯とすることができるか、又は更に広くして議会開会中の行為でも懲罰事犯として取上げることができるかという問題であり、その第二は、懲罰事犯として取上げられた問題は、その会期中に処置しなければならんものであるか、又は前の会期中に発生した問題を後の会期において取上げることができるか、若しくは前の会期において未解決となつている事犯を後の会期まで持越すことができるかという問題であります。 第一の問題につきましては、それは事犯の性質によるのもでありまして、行為によりましては、議会開会中の行為でも懲罰事犯たり得るものであると考えます。例えば議員の辞表に無礼の言辞があると認めたとき、議長は、その辞表を懲罰委員会に付託して審査せしめることができる(参議院規則第百九十二條、衆議院規則第百八十八條)のでありますが、かくのごとき行為は議会開会中でなくてもできることなのであります。 第二に、懲罰事犯は成るべく早くこれを取上ぐべきものであり、且つ取上げたならば、成るべく速かにこれを決定すべきものであると考えますが、併しながら議院に継続委員会の制度があります以上、懲罰事犯が特に継続審査を付託せられました場合には、前の会期において未解決となつている問題を後の会期まで持越すことも差支ないことであると、かように考えます。ただ如何なる問題でも、国会期を異にする場合には、これを持越すことができないものであると信じます。 次には場所に関する問題であります。議院としまして、是非とも、その規律を維持せねばならんところは議場であります。この故に議事の行われまする本会議の議場や委員会等においてなされました行為が、先ず第一に懲罰の対象となりますことは、言うまでもありませんが、それは議場や委員会以外で行われた行為は、懲罰の対象とはならんということを意味するものではもとよりありません。殊に議員の不応召や秘密漏洩のごとく、議場の秩序とは殆んど関係のない行為でも、懲罰の対象となつているのであります。この故に懲罰事犯は、議場内において行われた行為のみに限定せらるべきものではなく、凡そ、議員して、 1 国会法又は議院の議事規則に違いたる場合 2 議場の秩序をみだしたる場合 3 議院の品位を傷けたる場合 には、その行為がいづこにおいて行われたるかを問わず、問題となり得るものであると考えられるのであります。 これを要するに、議院の有する懲罰権なるものは、憲法上、国会が国家権力の最高機関たる地位を有することの事実に基く固有の権利でありまして、他の機関から議院に対して與えられたものではありません。從つて如何なる権力と雖も議院からこの権限を奪うことはできないものであります。議院からこの権限を奪うことは、即ち議院に対して最高の国家機関の構成者たる地位を奪うことになるのであります。もとよりこの権限は無制限なものでありません。それはその適用せらるべき範囲についても、又その限度についてもおのずから一定の限界はあります。その限界は、その国の議院の占むる憲法上の地位により、若しくはその沿革により、或は上下両院の関係により、又は各院の構成方法等によりまして異なるものではありまするが、懲罰権そのものは議院の有する固有の権限であつて、奪われることのないものであると信じます。 以上極めて簡單にその要領を御報告申上げた次第であります。
○委員長(太田敏兄君) 只今の御説に対して御質疑がございましたらお願いいたします。尚別冊の添付資料は報告書本文の一貫性を保つために一応除外されましたものについてこれを一括して集録したものであります。速記を止めて下さい。 午後零時二分速記中止 —————・————— 午後零時十七分速記開始
○委員長(太田敏兄君) 速記を始めて下さい。他に御発言もございませんようですから、本報告書は、委員各位に随時御閲読願うことといたしまして、これを提出することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(太田敏兄君) 御異議ないと認めます。尚本会議における本調査の経過並びに結果に関する委員長の口頭報告の内容につきましては、先程御説明いたしました趣旨によることとして予め御承認を願うことに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(太田敏兄君) 御異議ないと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書に多数意見書の署名を附することになつておりますから、本報告書を提出することに賛成された方は順次御署名を願います。 多数意見者署名 松井 道夫 門田 定藏 鈴木 順一 小杉 イ子
○委員長(太田敏兄君) それではこれを以て散会いたします。 午後零時十九分散会 出席者は左の通り。 委員長 太田 敏兄君 理事 松井 道夫君 委員 門田 定藏君 鈴木 順一君 小杉 イ子君 説明員 明治大学政治経 済学部長 弓家 七郎君