労働委員会 第10号
- 発言数
- 93 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1950/03/24
会議録
○倉石委員長 ただいまより会議を開きます。 まず労働組合法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を許します。前田種男君。
○前田(種)委員 今提案されております改正案の内容は、簡單なものでございますから、ごく簡潔に二、三の点を御質問したいと思います。 われわれは基本的には、現在適用されておりますところの労働組合法に対しましては、根本的な改正の意見を持つておりますし、前議会において改正されましたときにも、徹頭徹尾反対したのでありますが、今日施行されております組合法の基本的な問題には、ただいま触れようとは思いません。ただ二、三点お尋ねしたいと思いますことは、すでに現行法が施行されて相当日数もたつておりますので、事務的に政府自身から見ても、現行法をもつと改正したらどうかという点も、相当お気づきになつているところがあろうと考えます。またわれわれ労働組合に直接関係を持つている面から見ましても、政府の考えどそうギヤツプのない範囲内で、もつと合理的に改正すべき点があるのではないかというように考えます。二、三の例をあげますと、会計検査の場合において、計理士に依頼して、会計の内容を公開しなければならぬということも、労働組合自体に相当莫大な費用がかかる。そうした手数をかけなくても、公正に内容が公開できるようなことになりますならば、もうその目的は達せられると考えます。また組合規約の改正の問題、あるいは本会の持ち方等につきましても、あまりに法で拘束されているという点等もございます。あるいはその他にもあろうと思いますが、そうした点に対する労働省の見解を二、三承つておきたいと考えます。
○賀來政府委員 組合法の改正が施行されましてから、今日までの経験から申しまして、御指摘にもありましたように、今後もう少し様子を見た上で、改正を要するのじやないかという点はございます。ただいま御指摘の組合規約の問題にいたしましても、これは五條の問題でございますが、二條と五條と関連いたしまして、もう少し適当な、実際に合うような状況に持つて行つた方がいいのではないかということも、感じて来ている点はあるのでございます。 この際現在の状況を申しますと、二條の一号と申しますか、利益を代表する者があつてはならないという線に沿いまして、すでに排除を終りましたものは九一・六%であります。この利益代表をあくまで排除する意思がないといいますのは、〇・二%、組合数からいたしますと、約二万数千あります組合の中で、三十四組合という程度になつております。それから二條の二号でございますが、すなわち経費の援助を受けてはならないという規定に沿いまして、すでにその援助を打切つたものは、全国で九三・五%に達しておりまして、あくまで経費援助を受けて行くという組合は〇・一%にすぎないという状況になつております。一番おくれておりますのは、ただいま御指摘の組合規約の整備でありまして、これはまだ全国の組合数のうち、四五・二%しか整備を終つておりません。しかしながらもう全然改正の意思がないというものは〇・五%にすぎない。こういう状況になつているのであります。従いましてこれらの事情をなおしばらく見まして、あの法の予期しております通りに、あくまでやはり組合は自主的に、民主的に、自発的に、組合規約その他の整備を逐くべきものだという考え方で、様子を見て行きたいと考えております。 それから次に考えられます点は、第二十七條の不当労働行為についての労働委員会の処分の状況であります。最近は裁判所の方が処分が早くなるというふうな傾向も出て来ているのでありまして、これは二十七條によつて労働委員会が処分する権限が、二十七條の現状をもつていたしますと、不足ではないかというふうな点もありますし、あるいはそれに対して労働裁判所制ということを考うべきじやないかというふうな議論も出つつある状況であります。この点についても研究の余地があるものと考えております。 御指摘の会計監査の点であります。これは今日までの状況におきまして、一時、非常に料金が高い、また公認会計士法の関係等から実際に合わないのではないかということが指摘されておつたのでありますが、各府県の努力と計理士協会の協力によりまして料金も非常に安くなつて参つております。それからなお、今度の国会にかかつておりますところの公認会計士法の一部を改正する法律案が通りますならば、将来は職業的に資格ある会計監査人というものは、必ずしも公認会計士あるいは計理士である必要がなくなるのでありまして、組合が職業的に資格ある会計監査人であると認めるものでありますれば、だれでもいいというふうなことになりまして、この公認会計士法から来ますところの、会計監査制度のむずかしい点は相当緩和せられると考えておるのであります。各組合におきましても、こういう料金の点あるいは公認会計士法の非常にむずかしい点が解決いたしますならば、この監査制度自体については、監査をやつて非常にいい結果を得たというふうな傾向もあるのであります。なお不備の点あるいは改むべき点につきましては、研究を続けて行きたいと考えておる次第であります。
○前田(種)委員 それから今提案されております。ところの北海道、大阪府、福岡県の三地区を、東京都並の各七名ずつの委員に増員することには異存はございませんが、わが国の労働組合の主たる地区をなしておりますところの、また言いかえますならば、日本の産業の中心をなしますところの愛知県、兵庫県、神奈川県という三県は、北海道、大阪府、福岡県に次ぐ重要な産業地区でもあるし、労働組合の非常に発達した地区でもあり、また事件が非常に多いところでありますので、この三県には労働委員を増員して、委員会の活動をもつと敏速になさしめたいという要望があるわけです。私たちもぜひ三県だけは、改正案を修正いたしまして、七名ずつにしてもらいたいという要望を持つておりますが、この点に対する労働省の見解を承つておきたいと考えます。特にこの三県につきましては、今日改正案が修正できないという事情がありますれば、近い将来にぜひそうした方向に向うように努力願いたいという要望を含めまして、一応当局の見解を承つておきたいと考えます。
○賀來政府委員 この点につきましては、ただいま前田委員より御指摘がありましたように、神奈川県、愛知県、兵庫県の労働委員会の当局も非常に希望が強いのであります。のみならず、全国の地労委の協議会におきましても、こういう特定府県の増員をすみやかにはかるようにという希望があつたことは、了承いたしておるのでありまして、また実際の取扱い状況を見ますと、ごもつともな点もあるわけであります。しかしながら今度の改正を出しました理由は、提案理由に御説明申し上げましたように、取扱い件数、特に労資紛争の調整件数、不当労働行為の処分件数及び労働組合規約の審査件数の多寡並びに組合員数、組合数、事業所数等いろいろな条件を考えまして、頭から三位までをとりましたのと、もう一つの理由は、北海道は非常に地区が広いために、現地に委員が出て調整をされることがあるのであります。その際にはどうしても札幌におります委員の数が定数を欠くというようなこともありますので、ここは地区が広いという意味において特別に考えなければならない。大阪と福岡にありましては、單に大阪府及び福岡県の取扱い件数だけでないのでございまして、福岡県におきましては、石炭等の関係から、長崎、佐賀県等にわたりましても取扱います。あるいは電産等の関係で、九州一円のものを福岡が管轄する場合があつたのでありまするし、またこれからもあるわけであります。大阪もまた同様でありまして、私設鉄道等は大阪を中心として数府県にまたがつておる、これを処理して行く場合が今日まで非常に多くあつたのであります。さような特別な事情もありますので、この三府県を選んだような次第であります。神奈川県、愛知県及び兵庫県につきましては、先ほど申しました後者の理由はあまりありませんのと、取扱い件数等を比較いたしますと、神奈川県は特に不当労働行為等で委員は非常にお忙しいのでありますが、その他調整事件、あるいは組合数、争議件数等をいろいろ比較いたしますと、今度の改正に入つております三道府県等と比較いたしまして、やや下位にあるのであります。そこでこれはいましばらくその実績を見て行きたいというのが一つであります。もう一つは関係筋の主張するところを聞いてみますと、日本の労働委員会の制度は特徴もあるが、しかしながら大体人数が多過ぎる、五、五、五の比率でも多過ぎるというようなことを言つておるのでありまして、将来に向いましては、これはやはり増員すべきではない、しかし北海道、大阪、福岡については、ただいま申しましたような理由で特に認めるべきだろう、こういうふうな意向もあつたのであります。これはとにかくといたしまして、われわれといたしましては、先般改正法が国会を通ります場合に修正がありましたときに、東京都はとりあえず加えよう、また情勢によつて次々に加えて行こうという御意向もありましたので、今度は漸進的と申しますか、とりあえず北海道と大阪と福岡を入れたのであります。今後愛知、神奈川、兵庫につきましては実績を見つつ、その状況によりまして、これを加えるかどうかということを決定いたしたいと考えております。従いまして今回におきましては北海道、大阪、福岡に限りたい、かように考えておる次第であります。
○倉石委員長 春日君。
○春日委員 いろいろありますけれども、さしあたつて出ている問題ですが、労働委員会が人が足らぬからふやしてくれという意味合いでなく、いろいろと説明があつたのでありますけれども、二十三年度と四年度で、大体各労働委員会が扱つておる件数、解決した件数、それから二十三年度と四年度で不当労働行為その他について裁判所に訴えた件数、これをひとつ聞かしてもらいたいと思います。
○賀來政府委員 全国の件数でございましようか。
○春日委員 全国、それから各県別があればなおけつこうだと思います。それが出ませんと、ふやす理由がわからないのであります。、
○賀來政府委員 はなはだ申訳ないのでありますが、全国のはただいま資料を持つておりませんので、調べまして至急差上げたいと思つております。
○春日委員 それが出て来なければ、ふやしてくれといつても、りくつが通らぬのです。ただ大阪が大きいから、北海道が広いからとか、一応りくつは通りますけれども、しかしそれだけでなく書面で、この通り忙しくてこうだから、ひとつふやしてくれという数字が出て来なければ、話にならぬ。国会らしくない。
○賀來政府委員 ごもつともな御質問でございますが、私どもの方で今度改正をして増員をいたそうといたしました理由は、先ほど申しましたようにいろいろな條件を入れておるのであります。御承知のように労働組合数、事業所数、争議発生件数、これは大体二十四年で見ております。それから争議の調整件数は二十三年、四年で見ておるのでありまして、資格審査件数は二十四年、不当労働行為の取扱い件数は二十四年、こういうふうに見て参つたのであります。大阪におきましては争議の調整件数が二十三年は八十一件、二十四年は二百五十九件、資格審査数は二百十四件、不当労働行為取扱件数が改正後八十八件、それに対しまして福岡は、不当労働行為の取扱い件数が二百十三件、資格審査数は三十七件、争議調整件数は二十三年が百十四件で、二十四年が七十九件、北海道はやや落ちますが、争議調整件数が二十三年が四十七件、二十四年が五十八件、資格審査数は三十四年四十一件、不当労働行為三十九件、こういうふうになつておるのであります。北海道は先ほど申しましたように、取扱い件数はあまり多くはありませんが、距離が遠くて、現地でやる場合が非常に多いのでありまして、どうしても五人では足りないという事情がよくわかるのであります。福岡、大阪等で——、たとえば不当労働行為は福岡において二十四年二百十三件ありますが、これは一件の取扱い時間が相当長くかかるのでありまして、ほとんど公益委員は月のうち三分の二程度労働委員会に出ていただいておる。こういう状況でありますので、この際この三箇所は増員をいたしたいというのであります。
○春日委員 政府の態度というものは、非常に人をばかにした態度だと思うのです。とにかくちやんと数字をそろえて、こういうふうになつておるからこう、と言つて来なければ、ただ今言われたように二十四年度がどうというのではわからない。二十三年度との比較がはつきり出なければ、どのくらい忙しくなつておるかということも出て来ないわけです。それからもう一つ私の言つておる裁判所に提訴しておる数というもの、これがはつきりして来なければいけない。これは今重大な問題になつておる。労働委員会のかなえの軽重を問われるような問題になつておる。それがはつきりして来なければ、それだけの人をふやしてやる必要があるかないかということは決定できぬわけだ。ただ言われた通りうのみにしろという態度ではなく、そういう材料をそろえて持つて来て、こういう次第でありますからと言わなければ、あなた方の責任は済まぬはずだ、それが出なければ話が始まらぬと思う。
○賀來政府委員 裁判所の取扱い件数につきましては、はなはだ申訳ない次第でございますが、ただいま手元にございません。調べたものはございますので、至急調べたものを差上げたいと考えております。
○春日委員 それでは手元にないなら出してもらう。しかし出してもらわなければ、これは始まりませんよ。 それからその次にお聞きしたいのですが、最近神奈川県で地労委の不信任の糾彈大会が開かれた。それでなぜこういうことになつて来るかと言えば、あそこでは大体去年中に、大ざつぱに言つて三十八件だと思つておりますが、不当労働行為の提訴がある。ところがそれに対して一件しか片がついていないというような状態になつておる。そういうことで地労委が非常に怠慢でもあるし、同時にへんぱでもあるということで、糾彈がなされておるわけですが、そういうことは、神奈川の場合はそういう形で爆発して来ておるのだけれども、私ら全国を歩いてみて、全国の地方労働委員会というものは、まず労働者の側から見れば、非常に信用がなくなつておるということが言えると思うのです。この点についてあなたは一体どう考えておるか。
○賀來政府委員 神奈川県の不当労働行為の取扱い状況は非常に時間がかかつておる。従つて何とか早く処置してもらわなければならないという希望が各方面にあるということは、承知をいたしておるのであります。これは神奈川県の地労委にいろいろ連絡はいたしておりますが、神奈川県は三十八件今御指摘のように取扱つております。これをほかの府県の大阪あるいは福岡等と比較をいたしますと、たとえば福岡は二百十三件扱つておるのでありますが、まださような非難まで行つていない。ただ先ほどちよつと前田委員に申し上げましたように、裁判所の方が最近は処分が早くなつたという非難はあるようであります。従いまして神奈川県の今一番強い希望は、労資の委員の増員よりも、公益委員だけでも増員してくれないかという希望が強いことは承知いたしておるのでありますが、しかし組合法の建前から言いまして、労、資、公益は同数でなければならないという意味合いからいたしまして、それよりも、まず委員会の運営の状況をもう少しみずから検討してみてもらいたいということを、申しておるような状況であります。全国的に見まして、労働委員会が全然信用がなくなつたというふうな状況はまだ出ていないようでありますが、不当労働行為の取扱いにつきまして時間がかかる、もう少し早く処理すべきではないかという批判のありますことは、承知をいたしておるのであります。この点は先ほど前田委員にお答え申し上げましたように、われわれとしましてももう少し真劍に研究をいたしまして、これはこういう点を改正すべきであるというようになりますれば、やはり改正のことも考えなければならないのではないか、かように考えておる次第でございます。
○春日委員 今神奈川の場合は特別だというふうに言われており、またそれほど信用が失われておらないと言うけれども、実際方々歩いてみて、労働委員会というものが信用がなくなつておることは事実なんで、裁判所に訴えるということを、あなたはその方が解決が早いからと、こういうふうに言つておるけれども、そうじやなくて、労働委員会というものが職権委嘱でやられてしまつて、労働者のほんとうにたよりになる代表者が出なくなつた。だから、ああいうものは出てもしようがないというような空気が、非常に労働者の間に強くなつて来て、ああいうものに頼んだつてどうにもならぬ、裁判所の方がいくらか増しだろうということで、裁判所に訴えて来るのであつて、決してあなたの言うように、早いからどうのこうのというようなことにはなつていない。もしそれがうそだというならば、私は証人をいくらでもあげてみせる。そういう点で問題は、労働委員会が動かなくなつたのは、これは職権委嘱があるからだ。それでも今度の労働委員会の選挙に、あなたの方ではやはりこの職権委嘱でやつて行こうとなさるのか。
○賀來政府委員 私の説明が足りなかつたと思いますが、早いから裁判所に行くと申し上げたのではないのでありまして、どうも処分の結果が、労働委員会よりも裁判所の方が早い場合が非常に多くなつておる、こう申し上げたので、御了解願いたいと思います。 職権委嘱であるという関係から信用をなくした、さような御意見なり、御批判のあることも存じております。しかし昨年の改正によりまして、いわゆる従来のような職権委嘱はできないことになつておるのであります。労働組合からの推薦に基いて、その推薦された者のうちから知事あるいは大臣が委嘱する、かようなことになつておるのでありまして、以前いわれましたような職権委嘱、すなわち組合の推薦もないのに、かつてに知事あるいは大臣が選任するということはできないのであります。さようなことはありませんということを申し上げておきます。
○春日委員 それはあなたの言われるりくつ通りだけれども、たとえば神奈川県の場合でも、組合が推薦するといつて、非常に多数の組合員が推薦した者を——これは全国的にそういう傾向があるけれども、多数の組合員が推薦した者を不適当だということで、少数の組合員が推薦した者を委嘱するということになれば、結局権威のないものになつてしまうと思う。だからやはりこれは選挙の原則、国会がやつているけれども、多数の推薦したものが権威がよけいあるということになれば、多数の組合が推薦した者をその順で委嘱して行くということにしなければ、労働者側代表としての意味がない。政府の考え、知事の考え、こういうもので委嘱したのでは、結局労働者側代表でなくて、労働者の中から選び出された知事の代表ということになつてしまう。そこに今日労働委員会の信用がなくなつて来た、そうして仕事がうまく行かなくなつて来た一番大きな原因があると私は思う。その点で、今あなたが言つたように組合員の推薦した者を委嘱するのだと言うけれども、そういう多数決の順位できめて行くかどうか、この点をはつきりさせてもらいたい。
○賀來政府委員 選挙の方法といいますか、選び方についてはいろいろな方法が考えられるのでありまして、各府県の選び方について、かような選び方をせよというような基準は示してございません。ただわれわれが労働委員の選出について、どういう考え方を持つておるかということを申し上げて、御了解願いたいと思うのであります。 これには大体三つの基準を考えております。一つは、何と申しても、やはりその人の能力という点でありますが、この能力には三つの要素を考えておるのであります。第一は聽取力でありまして、組合なり使用者がいろいろ陳述いたしますが、それをよく聞きわける力。第二は判断力で、それらの聞いたことをいかに判断するか。第三は説得力、その判断の結果を労資双方に対して、かように考えるのだから、ここらでこういうふうにしたらどうかというふうに説得する力。この三つの力が労働委員として最も必要な能力だと考えるのであります。第二は、その府県あるいは全国的に見て、なるべく多数の、しかもいろいろ問題を多く持つております業種から、その事情に通じた人を選ぶ。すなわち業種別の選択の仕方を考えなければならない。第三は、御指摘の多数というふうなものに関連するかと思いますが、組合の系統別と申しますか、この府県では産別系が何割、あるいは総同盟系が何割、その他が何割、それを五人なら五人に割当てまして、産別系から何人、総同盟系から何人というように、この三つの要素をかみ合せて選任をするということを、大体の基準にいたしておるのであります。従いまして多数というだけでは、はたして適任者が得られるかどうか。御指摘のように多数が選んだものでありますならば、その人に対する信頼性というか、労働大衆の信頼性が強いということを否定するわけではございませんけれども、ただいま申したような関係はやはり考慮すべきだと考えまして、この線で選んでおるのが、選任の大体の基準になつております。
○春日委員 そういう基準は、常識的に考えて、その方が都合がいいということになれば、それはいいのでありますが、そのあなた方の認めておるような基準に適するからどうこうということを、知事や労働大臣がやる必要はない。そういうことは労働組合でも、自分たちのいろいろの問題を片づけるとなれば、相談してやつておる。現に神奈川県のごときは、去年のときも今年のときも、総同盟も産別も中立も一緒になつて協議会を開いて、それではこういう比率で出すとか、こういうところから出すとかいうことで、労働組合が自分でやつておる。労働組合のやるのにまかせればよいので、何もあなた方の方でそれをきめて——こうだああだと言うが、あなた方が万全の人間かと言えば、そうではない。だからそういうへんぱな者が出て来る。そういう点で、あなた方は労働委員会というものを非常に軽く見ており、ばかにしておるという印象を非常に受ける。それについてあなたはどう考えておるか。
○賀來政府委員 どうも恐縮でありますが、私は実は労働委員会の事務局を経験して参つたのでありまして、労働委員会の重大さというか、つらさということは、事務局職員として身をもつて体験したつもりであります。今日労働組合が、ストライキでもつて解決するということは、もう最後的なものであつて、それよりも何とか合法的、合理的な方法で解決したいという状況が非常に出ております際に、労働委員会の使命は非常に重要だと考えておるのであります。さような意味合いから、先ほど申したような大体の考え方で選任をすべきだ。これは各府県とも、組合の方々にも、そういうことを話をしながら、円満に出るようにやつておると承知をしておるわけであります。
○春日委員 労働委員会をあなたもやつて来た。だから尊重していると言うけれども、最近でもあなたのやつて来たことを見ていると、日鉄のストライキがあつた。なぜこれを労働委員会にやらせない。労政局長というものは、そういうふうにストライキの調停をやるものか。この点では労働委員会の内部でも異議がありて、吉田君などから抗議が出ているはずだけれども、なぜやつたか、だれに頼まれてやつたか。軽視している証拠じやないか。その点をひとつお伺いしたいと思う。
○賀來政府委員 これはもう御指摘のように、労働委員会にやつてもらう考えでございますが、労働委員会に労使双方ともあつせんを依頼する意思がないといつて、これをそのまま放置しておきましては、解決の目途もない。しかし解決は急ぐというような場合におきまして、労働省の使命、あるいは労政当局の使命といたしましても、すみやかに労使の紛争の解決をはかる。そうして労使関係の安定をはかるようにという使命もございます。特に日鉄の場合におきましては、まだ組合は資格の審査を受けておらなかつたのであります。従いましてあの際に労働委員会に参りましても、労働委員会としては、これに仲裁を與えるということは至難な状況である。しかも組合も会社も、労働委員会にあつせんを依頼しようという意図はなかつた。私の方といたしましては、労使双方の実情がどういうことになつておるかということを調査をいたしまして、調査の結果、こういうふうな点を気をつけて行けば、団体交渉も開始せられるでありましようし、解決がつきましようというので、団体交渉再開にきつかけを與えた、また両方に対して勧告をしたという程度であります。ただ新聞に出ましたところでは、労政局あつせんということになつておりますが、労調法の規定によりまするあつせんというところまでは、行つていなかつたのであります。自然これは双方の妥協によつて解決がついたような状況でございます。
○春日委員 そういうことを言うけれども、そういう非公式なあつせんなら、何も労働委員が非公式にあつせんしたつてできることで、従つてやることはないと思う。こういう時代に労政局長などが動き出したというところに、非常に大きな問題があるので、たとえば労政局など非常に予算をたくさんとつておるけれども、そういうことで労働組合の問題に労政局が出て行つて、かれこれやり出せば、労働組合はますます御用組合にされて来る。またするというふうに見られてもしようがない。だからそういうことは、やはり労働委員にやらせるというようにしなければ、労働委員会の権威もなくなつてしまう。なくなれば、よそから出て行つてあつせんするということになる。そういうことは十分考えてやつてもらわないと困ると思います。 大体との問題についての質問はこれで打切つて、またあとで質問をいたします。
○柄澤委員 ただいま春日さんの質問のお答えに対しまして、賀來労政局長が、産別とか、あるいは総同盟というような組合から、公平に代表を出すというようなお話がありましたけれども、たとえば現在電産はストライキをやつておるのでございますが、この間千葉へ参りましたときに、電産の大会で——関東配電組合というものが別箇に今つくられつつあるのでございますが、その組合の代表が席上において、労働省の指導によつて自分らが組合をつくつて、自分らの組合は成立するのに確固たる根拠があるのだということを、大会の大衆に対しての支持を得る一つの根拠として、強力に主張をしておつたのを、私承つたのでございます。関東配電組合の人数というものは、全体の電産の労働者の数から比べますと、まことに微々たるものでございまして、その大会の席上では大した問題にはならなかつたのでございますけれども、賀來労政局長が、ただいま労働委員会の労働委員の選出の場合におきまして、産別系であるとか、あるいは総同盟系であるとかいうような、組合の系統別によつて代表を出すと言われますので、今の関東配電のことを思い起したのであります。こういうような電産の全体の組合から見ますと、実に微々たるものでございますが、この微々たる関東配電のごときは、組合の系統が違うということで、労働委員の選出の場合に代表を考慮するのかどうか、どうしても系統別ということではなく、数を根拠にしたところのものでなければならないとわれわれは考えるのでございますが、労政局長の御意見を承りたいと思います。
○賀來政府委員 先ほど申し上げましたように、労働委員の選出の仕方につきまして、多数決主義といいますか、多数なものから順次にとるべきだという御意見のあることも承知いたしております。しかし目下とつておりまする方針は、先ほど春日委員に御説明申し上げましたようなことが最も適当と考えてやつているようなわけでございますが、御指摘の産別系あるいは総同盟系と、こういうふうにわけて、大体その傾向は見て参りますけれども、そのうち、また何年がどちらであるからどうという、こまかい点に触れての割当はやつておりませんのでありまして、大まかに今の各府県の現状あるいは全国の現状から申しますと、三つの系統に大体わけて扱つているようでありまして、産別系、総同盟系、その他、こういうふうになつているようであります。関東配電の場合は、ある少数のものがどつちに移つたからこれをどつちというふうなこまかい計算はすべきでないのでありまして、やはり県の産別の連合会と申しますか、あるいは総同盟でありますと県連というものがございますが、その方と打合せをしまして、大体大数で処理いたしておる。こういうことでございます。
○柄澤委員 関連してお伺いしておきたいのでございますが、労働省として、電産の中からわかれた関東配電組合の労働組合の結成について、労働省か確認したということを労働組合結成の大きな根拠として、労働組合の代表が宣伝しておつたのでございますが、このような事実があるかどうか、承りたいと思います。
○賀來政府委員 関東配電の組合員は、御承知のように従来は約二万七千人でございまして、そのうち二つにわかれたような形になりつつある。あるいはなつているということは承知いたしておりますが、労働省が確認をしたからというふうなことについては、知つてもおりませんし、またそういうことを言つたからといつて、組合がどうなるものでもないと考えております。
○柄澤委員 先ほど春日委員も質問されたのでございますけれども、また賀來労政局長の御答弁にもあつたのでありますが、不当労働行為その他二十七條関係の紛争が、労働委員会で解決されぬ先に裁判所で処分されている。しかもその結果は、裁判所の処分がある場合には、早いということだけではございませんで、労働委員会で決定したものが、むしろ裁判所の判決によりまして、労働者側に有利になつているという例があるのでございます。御希望であれば数多くそれをあげることができると思うのでございますけれども、それはもう数限りないくらいございます。北海道の北見の電産でございますとか、あるいは三千五百人からの犠牲者を出しました狩勝のトンネルの国鉄のあの事件でございますとか、あげますと数限りないほどあるのでございますけれども、このことは單に労働委員の数をふやすという問題ではなくて、もつと本質的な問題があるのではないかと思います。ですから、ただ單に北海道がどうであるとか、大阪がどうであるというような問題ではなくて、裁判所へ持ち込むということは、春日委員も言われておりましたけれども、裁判所の判決の方が労働者側の方に有利だということもあつて、今度の改正におきまして、單に数をふやすというようなことにとどまつてはおられない事態に立ち至つている。これは労働委員会の本質というものが、職権やその他にからみまして、労働者に不利になつて来ていることを物語つているのでありまして、それに対しては、單に今度の改正では済まないのではないか、賀來労政局長はそういう御意思がおありになるかならないか、御意見を承りたいと思います。
○賀來政府委員 労働委員会の決定と、裁判所の決定が違うということは、あり得てもよいとわれわれは考えているのでありまして、民主的に構成されました三者委員の決定、それと裁判所の決定とが違う場合がある。あるいは裁判所の方が労働者に有利な場合がありますけれども、また場合によりましては、使用者側の方に有利な決定のものもある。こういうことに私どもは承知をいたしておるのであります。従つて二つの機関があつて、かれこれどちらか違うような決定をなさろうとも、これは法律に従つて動くことでありますから、われわれとしまして、その点についてかれこれ考えてはおりません。ただ先ほど前田委員及び春日委員にもお答え申しましたように、二十七條の手続関係並びに労働委員会の権限の関係におきまして、裁判所よりも労働委員会が先議すべきではないかというふうな議論、あるいはもしもそうでなければ、労働委員会からいわゆる裁判的な不当労働行為の処分というふうなものはとりまして、これを労働裁判所というふうなものに持つて行つた方がよいのじやないかというふうな議論とか、いろいろな議論が最近は出て参つているのでありまして、いましばらくこの実情を見まして、必要とありますれば、適当な改正をはからなければならない時期が来るのではないかという意味におきまして、いろいろな観点から目下研究はいたしておりますということを申し上げた次第でございます。
○柄澤委員 三者の決定ということを言われたようでございますが、不当労働行為の場合には、これは公益委員できめるものと思いますが、思い違つておいでになるのではございませんか。
○賀來政府委員 労働委員会の三者構成ということを申し上げたのでありまして、不当労働行為の審査につきましては、これは公益委員のみがやります。しかしながら公益委員のみでは十分に判断をすることができない、特に労使の立場にあります者が、弁護士的な立場、あるいは検事的な立場で、公益委員の判断を正確ならしめる必要があるという意味において、労使が公益委員の審査に参画するような制度になつているという点を申し上げた次第でございます。
○柄澤委員 問題が裁判ざたになつて行くようになりましたのは、賀來労政局長が、立法当時の解釈と異なりまして、新たに解釈例規をお出しになつて以後、特に顯著にそれが現われていると思うのでございます。その点について労政局長はどうお考えになつておりますか。
○賀來政府委員 そういう見方をされる方もあるようでありますが、私はさように考えていないのでありまして、この改正法自体に——二十七條に、実施をいたしてみますと、やはり不備な点があるということを考えております。
○柄澤委員 あなたの主観は別にいたしまして、客観的な事実は、あげようと思えばいくらでもあげることができると思いますし、お手元にも資料があり、それを示していると思いますが、あの解釈例規をお取消しになりまして、労働組合法の立法の精神——われわれはもちろんこの労働組合法にはいろいろ意見がございまして、別個な見解を持つておりますが、あの解釈例規というものをお取消しになるようなお考えはありませんでしようか。
○賀來政府委員 どの解釈例規という御指摘がないので、全般的に御議論だと考えるのでありますが、解釈例規を出すにつきましては、労働大臣が責任を持つて出しております。それまでに至りますには、中労委、労働省及び法務府との三者の連絡協議会でよく打合せて出しておるのであります。特に実情に沿わないとか、はなはだしいあやまちがありますれば、これを改めるのに何も固執するわけではありませんが、目下のところは大体あれでいい、こういうふうな考え方で進んでおります。
○柄澤委員 労政局長としてのお立場から言えば、いろいろそうおつしやるのもむりがないと思うのでございますが、どの解釈例規かとおつしやるならば——あの賀來労政局長が解釈例規を出されました当時は、末弘労働委員長などもこれは労働組合法の立法の精神に反している、その精神を蹂躙するものであるとして非常に怒られて、攻撃をされたということも私どもは承知しております。でありますから、もし改正なさるといたしますれば、労働委員をどこそこに一、二名ふやすというものではなしに、もつと根本的な体制が今日急務ではなかろうかと思うのでございます。近くにというようなことでございますけれども、その御意思を現在持つておられるかどうかということを、最後にもう一つ伺つておきたいと思います。
○賀來政府委員 先ほど前田委員にもお答え申しましたように、改正をすべき点があれば、これはいつでも改正をしなければならないと考えておるのでありますが、まだ結論に達しておりません。目下ずつと研究を続けておるという状況でございます。この点を申し上げたいと思うのでございます。従つて来国会に出すかどうかという問題になりますと、これははつきり来国会に出すということを申し上げるわけには参らないのでありまして、いろいろ研究をしてみたいと考えておるのであります。ただ従来のように朝令暮改をやるとか、あるいは一ぺん出したものであるから、いつまでもそれを固執するというような態度ではなくして、やはり実情に印した合理的なもの——法律というものはその実情に応じてかえて行かなければならぬ、特に労働組合法のごときは、生きた労働組合運動と非常に深い関係があるわけでありますから、そういう考え方を持つておるということを申し上げた次第でございます。
○柄澤委員 ただいま実情に即した改正をということでございましたが、それは今度の改正法の労働委員の数をふやすことによつて、今までの労働委員会に持ち込まれたいろいろの紛争をスムースに解決して行きたいという御意思の現われだろうと思うのでございますけれども、その根拠になつておりますことは、労働委員会が反労働者的なことを決定いたしましたことに対して、裁判所がより労働者に有利な判決をするというふうに、立法府、それから行政府において、人民の権利を、働く者の権利を守られていない、そのことを司法府が守つてやる、そういう労働組合法であるという事実を承認なさつて、もつと働く者の権利を守る労働組合法に改正なさる、現在守られていない働く者の権利というものが、司法府によつてかすかに逆に守れて来ている。そういう事実を御承認になつて、その実情に即して労働者の権利というものを守る建前から、改正をなさるおつもりでいらつしやるのでございますか。非常に抽象的な、実情に即した改正を近き将来においてするというようなことでは、どうも安心が行かないのであります。問題はもつと急迫しておりまして、失業者の問題にいたしましても、ストライキの問題にいたしましても、急迫した日常の生活というものは、即時にこの労働組合法を根本的に改正しなければならないというところまで押し詰められておると思いますから、その点抽象的な御答弁でなく、もつと具体的な御答弁をいただきたいと思います。
○賀來政府委員 まず第一に、近き将来ということを申し上げたのではございません。われわれは改正の必要がありますれば、これはやはりいつでも改正はいたしますが、近き将来とか、遠い将来ということを申し上げたわけではございません。第二点は、御意見のような意味から、改正の必要があるということを考えておるのではないのでありまして、先ほど例にも申しましたように、第五條におきましては、組合規約に書くべき事項を羅列をいたしてあります。しかしながら、これは組合自体が自主的に、民主的に発達をして参りますならば、法律でこういうことを書けということも、必要がなくなるのではないかという点とか、あるいは二條と五條との関連につきまして、どうも実際上の動きから見ますと、何となくこの運用が非常に困難な点もありはしないかというような点も研究の対象になつておるということ、あるいは第二十七條につきましては、労働委員会が持つておりまする現在の規定の権限の範囲におきましては、なお不足の点がありはしないか、というような点を考えようというのでありまして、改正をやろうと申しまする考え方の根本におきましては、現在の労働組合法の持つておりまする趣旨を離れまして、あるいはこれをどうしようという意図ではないということを、申し上げておきたいと思います。
○柄澤委員 私の質問の意思が十分におわかりになつていらつしやらないと思いますけれども、労働組合法の精神というものは、先ほど申し上げましたように、労働者の利益を守る、働く者の利益を守る点にあると思うのでありますが、その点についての改正をおやりになる意思がないということに承つてよろしゆうございますか。
○倉石委員長 柄澤君に私から御相談いたすのでありますが、本日の議題に関連はしておるようでありますけれども、なお本案の解決のあとで、引続いて一般労働事情の質疑を当局にいたしたいと思いますので、ただいまのような一般労働組合法にわたるような問題は、そのときに讓つていただけませんか。
○柄澤委員 労働組合法の改正ということは、一般労働組合法の改正なのでありまして、離れた問題ではないと思うのであります。ことに労働組合法で守ることができないで、裁判所が労働者の権利を守つておるというような、こういう重大なる問題に対して質問しておるのでございます。それを今度の改正に関係がないというふうに委員長がお考えになりますのは、少し資本家側の立場に立つておるのではないかと思うのであります。非常にこれは重要な問題なのでございまして、もう長い質問でもないのでありますから……。
○倉石委員長 重要なる問題でありますが、ただいまあなたの御質疑を承つておりますと、本日議題になつております地方労働委員の増員のことからずつと大きくなりまして、一般労働組合法の改正に対して、政府側の意見を徴しておられるようでありますから、そういう重大な問題は、引続いて行う一般労働事情の質疑のときにやつていただく方が、議事の進行上好都合だと思うので、御相談しておるわけであります。
○柄澤委員 労働委員として、やはりそういう点の発言をはばまれる理由はないと思うのでございます。離れた問題ではないと思うのでございますが、ひとつ賀來労政局長の御答弁をいただきたい。委員長からおとりはからい願いたいと思います。
○賀來政府委員 先ほども申したことを、また重ねて申し上げるようなことになりますが、私どもは現在の労働組合法自体が、労働者の権利を守るのに不十分であるというふうな考え方は持つていないのであります。ただ運営の結果によりまして、実情と照ら合せまして、よりよき方に改正をする必要があれば、いつでもやらなければならない、こういうことを申し上げておるのでございまして、裁判所のみが労働者の権利を守つておるというふうな考え方で、裁判所と労働委員会の関係を申し上げたのではございません。たまたま労働委員会の、今日までの二十七條に基きまする運用の状況から見まして、非常に熱心にやつてはおられますけれども、ときには裁判所の方の処分が早いようなときがある、この点は研究しなければならないということを申し上げた次第であります。
○柄澤委員 非常に熱心にやつておられるという見解でもつて、労働委員会をお考えになつていらつしやるとすれば、これはやはり重要な問題だと思います。神奈川においても、三十八件のうち一件しか解決しておらない。また東京都におきましても、七十三件が提訴されておりますにもかかわらず、先ほど言われました公益委員会などは、月にわずか一回しか開かれておらず、四件しかやつておらない。一箇月平均二十件ずつ提訴されておりますものが、こういう状態では解決の見通しがないということがいわれておるのでございます。ですから東京都の労組は、都労委のこの怠慢に対しまして、非常に糾彈しておるのであります。また神奈川におきましても、糾彈のための大会を、総同盟といわず、すべての組合が開いておる実情でございます。そういう実情を無視しまして、労働委員会が熱心にやつておる、ただ今をふやせばいいのだ、大阪と北海道とどこだけふやせばいいというようなお考えで、この改正法案を政府側が説明なさるとすれば、これはやはり見のがすことのできない態度だと思うのでございます。その点について労政局長はどう思つておいでになるか、都労委の怠慢を突かれて糾彈大会が開かれておる事実を、どうお考えになるかということでございます。
○賀來政府委員 先ほど申しましたように、東京都におきましても、あるいは神奈川県におきましても、処分の決定が遅れておるのが相当あるという点は、御指摘のようにわれわれもさように考えております。しかしながら熱心にやられておられますことは、これは事実でございまして、私どもは東京都並びに神奈川県、その他各府県の労働委員会の委員の名誉のためにも、われわれはあくまで熱心におやりになつておるということを、申し上げたいと存ずるのでございます。
○倉石委員長 この際委員長から政府側に要望いたしたいことがございます。先ほど春日委員の御要求になりました資料の一部は提出されたようでありますが、残余の部分はなるべく早くこれを提出願いたいと存じます。 ただいま議題になつております。労働組合法の一部を改正する法律案に対する、質疑を打切りたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉石委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。引続いて、労働組合法の一部を改正する法律案について討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。島田末信君。
○島田委員 私はただいま議題となりました、労働組合法の一部を改正する法律案につきまして、自由党を代表して賛成の意見を簡單に述べんとするものであります。 これは提案理由によつて、すでに明らかなように、労働組合法第十九條第二十項の規定によりまして、使用者委員、労働者委員及び公益委員は、普通ならば各五人でありますが、それは東京都のみは例外として七人になつているところを、今回は北海道、大阪府及び福岡県について、おのおの各七名に増員したいという提案であります。 御承知のように、北海道、大阪府及び福岡県は、労働組合数、労働組合員数、事業場数及び事業場労働者数等が、他府県に比較して格段の相違があるのであります。すなわち、その数が非常に多いのみならず、また最近の労働争議発生件数、労働委員会の争議関與件数、労働組合の資格審査件数、及び不当労働行為の審査件数等に見ましても、大体東京都と相前後する状況にあるのであります。さらに大阪府及び福岡県は、これが近畿及び九州地方の中心地であるという、この立地條件から、常に発生する種々の労働争議が、二府県以上にまたがつておつて、労働委員会の活躍しなければならぬ場面が、地域的にも非常に広く、また複雑性を帶びておるのであります。さらに北海道は、地域的に見まして非常に広汎なために、これまた従来の員数をもつてしては、なかなかその操作がしにくいという状況にあることは、すでに提案理由の中に説明してある通りであります。私はこういう現実からながめまして、本来ならば、われわれは業界が安定し、労使の間に利害関係が一致して、少くとも労働委員会が活躍する場面が狭まつて、委員の方がだんだんと減つて参るという状況に、日本が立ち至ることを心から願つておるのでありますが、現実はそれを許しません。現在のままにおきましては、やはりここに提案となつておりますように、増員を実現して、労働委員会が関與しなければならぬすべての事案を一日もすみやかに解決して、労使のいわゆる一致協力のもとに、生産部面を発展しなければならぬというような、この必要に追られていることを、私どもは痛感するのであります。愛知、神奈川、兵庫等も、これに次いで、あるいは現状においては、将来増員しなければならぬというような必要も愛ぜられますが、私はこの段階におきましては、ただいま提案にありますこの三地区に対する増員につき、賛成したいのであります。 はなはだ簡單でありますが、右理由によつて、わが党の賛成理由を申し述べた次第であります。
○倉石委員長 前田種男君。
○前田(種)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されております改正案に賛意を表します。 二、三の意見を申し上げますと、労働組合法全体につきましては、根本的な改正の問題と、ごだわらずに、事務的に改正すべき問題と、二様にわけることができると考えます。もちろん、昨年労働組合法の改正をされたときの情勢と、だんだん日本が民主化の発展の過程におけるところの労働組合運動の推移と、にらみ合せて、私は現行の労働組合法を根本的に改正する時期が近く来ると考えます。またその時期を早めまして、まつたく自主的に日本の労働組合運動が、日本の経済の上におきましても、日本の民主化の発展の上におきましても、労働組合運動の使命を完全に果し得るところの態勢を整え得るような、労働組合運動に指導し、育成しなくてはならぬと考えます。そうした根本的な問題は、今日は意見を述べることを差控えますが、まつたく事務的に現行法を改正する面も、労使双方から見ましても、あるいは公益委員の立場から見ましても、あるいは行政官庁の立場から見ましても、あの組合法の中には幾多あろうと考えます。私はこうした点につきましては、まつたくこだわらずに、できるだけすみやかに実情に沿うような態勢に、労働省自身が積極的にその内容を検討されるように要望したいと思います。 その次には、労働委員会の公正なる積極的な活動の問題でございます。ただいまの質問の中に、いろいろ要望されておりましたし、また地方の労働委員会を含めまして、一部には不信の声も高くございます。これは一つには、労使双方ばかりではありません、公益委員の人選にいい人物を得るということが、第一條件ではございますが、それとともに見のがしてはならない問題は、労働委員会に対するところの予算的措置がもつと講ぜられなくてはならぬということが、大きな問題としてあると考えます。大阪の例を見まするならば、大阪の公益委員の五人の人は、自分の職業をなげうつて、一箇月夜も寝ずに、公益委員の職務を遂行するためにやつているというような実情がございます。こうした点等は、今のような予算的処置では何人も忌避して、喜んで引受ける人はないと私は考えます。私はその点から行きましても、労働委員会がもつと信用を得、積極的に活動するためには、予算的処置を講じて人材を集めて、日本の労働組合運動、あるいは労使間のあり方を、実力行使でなくて、平和的に処理し、そうして労働委員会の処置に信頼を持つて従うというような傾向に向けなくてはなちぬと考えます。その点につきまして、人選の上におきましても、あるいは予算的処置におきましても、一段と当局の積極的な処置を要望したいと考えます。 その次に、今は北海道、大阪、福岡県の三つが増員になる案件でございます。先ほど私が御質問申し上げましたように、それに次ぐ日本の代表的な工場地区として、また労働組合運動の中心地区としての愛知県、神奈川県、兵庫県の三県は、ぜひとも近く東京都並びにこの三地方と同様に、委員を増員する措置をとつていただくように強く要望いたしまして、賛成の意を表します。
○倉石委員長 春日正一君。
○春日委員 労働委員の人数をふやすというこの案に対して、共産党は反対します。というのは、まあ七人にふやしたら仕事ができるじやないか、それをあえて反対することもあるまいじやないかという考えもあると思いますけれども、問題は、そういう人間の数の問題では私はないと思う。これは労働組合法自体の中にある非常なあいまいさ、そうしてそういうところにつけ込む政府あるいは資本家の悪辣な攻撃、こういうものが、今日の労働紛争を一番大きくしておるのだ。たとえば不当労働行為というようなものについても、去年の七月に、政府が卒先して模範を示して、国鉄中闘の首を切つた。今まで組合幹部というものの首を切つ、ちやいかぬということは、大体概念になつておつたけれども、政府が模範を示し、その後は至るところで、そういう組合の幹部あるいは活動的の分子という者が、くだらぬ名前で首を切られている。島津製作のごときは、私ども七月に行つたときに聞いてみると、五十八の組合の委員長が、暗愚無能にして云々というような理由で首を切られておるということが、ひんぴんと起つておる。これは政府の政策によるものだといわざるを得ない。たとえば長崎なんかの市従組の首切りの場合には、この不当だということが地方裁判所で判決されておるにもかかわらず、吉田総理大臣がこれに対して異議を申し立てておる。というようにしてみると、こういうことは一貫した政府の政策であると考えざるを得ない。しかも日経連あたりの政策としてやられ、組合幹部に対するところの攻撃というものがどんどん出て来る点に、今日不当労働行為というようなうるさい問題を、たくさん出して来る根本がある。この点が改められずして、ただ七人ふやすというようなことだけならば、これはどうにもならぬ。むしろやるなら、そういう不当労働行為をはつきり禁止をするように、その條文をつくるべきだと私は思う。 それからもう一つの点は、労働委員会自体の問題でありますけれども、先ほど来質問をしましたように、職権委嘱ということが始まつてから、労働委員会の信頼が非常になくなつて来た。地方に行くと、あんな労働委員会に頼んでもだめだ、買收されておるといううわさすら、出て来るというような状態になつておる。だから、そんなような状態の労働委員会が、たとい七人にふやされ、十人にふやされてみたところで、これでは決してその権威を高め、任務をやつて行くというようなふうにはならないと私は思う。やはり労働委員というものは——少くとも労働者側の委員というものには、労働者の多数の信頼のある者が出されるという原則が確立されざる限り、これは單に労働者の中から出した政府委員ということになつてしまう。現実にそういう傾向を非常に濃くしておることが、今日労働委員会のいろいろな問題の解決が遅れ、あるいは信頼がなくなるという根本になりておると思う。それから特に公益委員の専断権の問題は、この前の労組法改正のときにも、私らいろいろ質問もしたのですけれども、公益委員だけにまかせるということのために、事の処理がだんだん遅れて行く。どうしたつて労働者の問題について解決を急ぐのは労働者なんだ。ところがこれが決定に参加できないというために、解決が遅れて行く。東京都労働委員が現に七人になつておるけれども、先ほど柄澤君が言われたように、月に四件ぐらいしか片づかないという状態になつておる。現実にこういう状態で、ほかの三地域を七人にふやしてみたところで、それで問題の解決にはならないと私は思う。そういう意味で、私は労働委員会というものがもつと権威のあるものになるために、職権委嘱をやること、それから不当労働行為の原因になつておるところの、政府や資本家のやる組合幹部に対する首切りを禁ずるという、ことの改正が先であつて、この七人をいじる、どうこうというようなことは、労働組合にとつて大した問題ではない。そういう意味で反対いたします。
○倉石委員長 これにて討論は終局いたしました。 労働組合法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を願います。 〔賛成者起立〕
○倉石委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。 なお議長に提出いたします報告書の作成については、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉石委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。 —————————————
○倉石委員長 次に労働事情に関する件を議題といたします。この際ちよつと申し上げますが、出席要求をいたしております鈴木労働大臣、齋藤職業安定局長は、ただいまその筋に参つておりますので、用の済み次第出席するように要求いたしてあります。なお賀來労政局長は、ただいまの両君と打合せのために暫時退席いたしますが、海老塚失業対策課長、金子統計調査部長、寺本労働基準局長が出席しておられますので、それらの当局からまず事情を聽取いたしたいと存じます。質疑を許します。前田種男君。
○前田(種)委員 寺本局長にお尋ねいたします一昨年から数回いろいろ問題になつておりますが、賃金の遅欠配が最近非常に悪質になつて来ておるのでございます。特に本年度の経済状態から見ますると、その事情が相当顯著なものがあろうと私は考えます。そうした賃金の遅欠配の問題等に対する労働省の全体的な対策等を、あらかじめただしておきたいと考えます。
○寺本政府委員 賃金遅欠配に対する労働省の全般的な政策はどうかというお尋ねでございます。労働省としては直接産業政策、金融政策等から起こつて来るこの賃金遅欠配を、具体的にどう処理して行くかということが、行政面において担当しているところでございます。根本的に賃金遅欠配が起らぬようにすることは、労働省本来の仕事と申しますよりも、大蔵省ないしは通産省等の担当している仕事でありまして、労働省としては賃金遅欠配の起つている実情を行政面においてどう処理し、それが労働者の生活にどう響いて来るかという実情を、これらの省に連絡いたしまして、そうして金融政策、産業政策の立案を促進するという建前に立つているわけでございます。
○前田(種)委員 最近は金まわりが悪く、事業不振だということで、事業の責任者の中においては、相当深刻な点もたくさんありますが、中にはまたそうした事情に便乗して、当然拂える賃金すらどんどん遅らして、今日では二箇月、三箇月、四箇月、あるいは半年というように、だんだん賃金が遅れて来ているという事情が相当顯著になつて来ております。そうした悪質者に対しては、労働者の立場を保護する行政官庁としての労働省の立場というものがあるはずです。また一方では、正式に解雇いたしますと、解雇手当を出さなければならぬ。ところが賃金をだんだん遅らして行つて、もう耐え忍べないということで、労働者みずからがやめて行くということになると、退職手当も十分に出さなくてもよいというような点から、必要以上に賃金を遅らして、そうして解雇するということではなくて、真綿で首を締めるというようなやり方で、労働者みずからがやめて行かなければならぬような境遇に追い詰めるという悪質なものが相当あるわけです。こうした問題について、労働省としては、出先地方官庁に対していかなる善後処置を講じておられるか、その点をもう一度承つておきたいと考えます。
○寺本政府委員 賃金遅欠配が現実に起つている、それを労働省としてどうさばいて行くかという行政面の仕事があるではないか、それをどうしているかというお尋ねだと思いますが、この問題につきましては、昨年三月検事総長、労働大臣双方の声明を出し、賃金遅欠配は基準法第二十四條違反として、嚴重にこれを取締つて行くという方針を出しまして以来、その方針をゆるめることなく、嚴重に励行して参つております。従いましてただいま御指摘のような、金詰まりに藉口して賃金を支拂わない、そうして本来ならば、解雇手当その他を出すべきものを、賃金遅欠配をやりながら、間接だ退職するの余儀なきに至らしめるというような悪質なものに対しては、嚴重に取締つております。現在までに現われた統計、ここに正確な数字は持ち合せておりませんが、十二月末においては、前回の労働委員会で申し上げた数字よりも、この賃金遅欠配の総額はふえておりまして、たしか八十五億になつたと思つております。そのうち七十三億余りの金額が支拂いになつておりまして、その差額は前回申し上げた差額の十六億というのが、十二億程度に縮まつているはずであります。但しこれは十二月末の統計でございますので、本年一月以降の情勢については、あるいはその差額が広がつておりはせぬかと懸念される節もございます。現在までのところではそういう数字になつておりまして、従来立てた方針を堅持しました結果が、現われて参つているような状況でございます。この方針は現在でもますます嚴重に励行いたしておりまして、そうした悪質な事犯については、断乎たる取締りをもつてやつて行くということを申し上げておきます。
○前田(種)委員 川崎市の溝ノ口にあります日本時計の例を一つ申し上げますと、従業員は二百人余りでございますが、昨年の十一月から遅配がだんだん続いているわけです。そうして百名ほど解雇するということになつておりますが、当然基準法に基くところの予告手当三十日分を支拂わなければならぬはずにもかかわらず、これを拂わない。そうして基準監督局からいろいろ注意され、あるいは法規の履行を迫られて、それに対して社長は、やらないとは言わないが、結局実行しない。そうして賃金の遅欠配と三十日分の退職手当を含めまして、これからの五月から十一月までの間に、なしくずしで拂うという問題にならないような條件を出して来て、話にもならないような状態であります。こうした問題については、もちろん地方の官庁としては、法を守つてやる、労働者の立場を保護してやるという努力はしておられるようでありますが、なかなか言うことを聞かないというように、今日ではもうけたはずれの悪質な状態になつて来ているわけです。こうした点については、本省からやはり直接指示をするとか、あるいは昨年三月に検事総長名で出した通牒は、もう一年経過しておりますので、今日の事態に即した新しい観点に立つたところの政府の処置を、通牒なり、その他の指示で地方官庁に流す。そうして法を守らないそうした人人に対して、いかにして労働立法を保護して行くかという建前を、明確にとる必要があろうと考えます。今申し上げた一例については、労働省に善処を願いたいのですが、全体の問題についても、新しい処置を講じてもらいたいということを要望いたしたいのです。そういう意思があるかどうかということを、承つておきたいと考えます。
○寺本政府委員 御指摘になりました川崎市の溝ノ口の日本時計の事件は、私は報告を受けておりませんので、調べまして、またいずれ御要求があれば御答弁申し上げ、また善処したいと思つております。 なお昨年三月の通牒は、もう一年たつていて感じが大分鈍くなつたので、更新するつもりはないかというお話でありますが、方針につきましては、別に改める必要はないと思つております。ただその後事態がこういうふうに非常に悪くなつて来ておりますので、賃金遅欠配の一般状況を部内によく徹底させまして、先日も全国の基準局長会議を開きまして、この問題については取締りをゆるめることなく、十分やるようにという指示は與えております。
○柄澤委員 関連して質問いたします。賃金遅欠配の取締りをさらに嚴重にしたいというお話でございましたが、前田委員からお話がありましたように、中小企業の遅拂い、不拂いというものが非常に多くなつております。従つて電力料金とか税金というようなものも拂いかねるような状態になつて、差押えなども最近では非常に多くなつている。ところによつては国税庁といろいろ連絡して、不在な企業の取潰しが行われているようなことも承つております。私どもとしては、ただ單に取締りをするというような抽象的なお言葉ではなしに、具体的にはどういうふうにされているか、賃金の支拂いということが、あらゆるものに優先してやられなければならないという点をぜひ監督していただきたいと思いますが、そういう点についての御意見を承りたいと思います。
○寺本政府委員 現在の取締りの方針を申し上げたいと思います。あらゆるものに優先して賃金遅拂いを解消するようにという御意見でございますが、これは現在の法制上はそこまでは解釈できないと思います。しかし賃金遅拂いのないよう極力保護いたしまして、普通の民法上の債権よりも優先させるという取締りの方針を立てまして、民事上の債務を弁済したために、支拂い期に来ている賃金が拂えなくなつたというのは違反として取締つておりますが、税金についてもさらに優先するかということになると、税金についても罰則がかけられている場合が非常に多いのでありまして、税金について賃金が優先するという建前は、現在の法制のもとではとり得ないと思つております。従いまして御指摘のように、税金をとられたために、賃金が支拂い困難になるという現実の事態が起つておるのでありますが、現在の法律では、この問題は解消しにくい問題であると思つております。ことに中小企業で非常に賃金遅拂いが起つておるという御指摘でございますが、事実はその通りであると思います。ただ現在の法制からいたしますならば、中小企業については税金の支拂い能力もないという事例が相当ありはせぬか、そういう場合に賃金の遅拂いが起つておるという問題は、現在の法律のもとでは解決し得ない問題ではないかと考えております。
○柄澤委員 現在の法律のもとではやむを得ないというふうなお考えでございますけれども、いろいろな地方その他の税金につきましても、悪税の声も相当高いときに、賃金の遅拂いで、生活できないというところまで追い込まれて、一家心中があつたり、子供を殺しておるという実情にかんがみまして、生存権を特に侵されておるような今日、働く者の生存権を保障するのは賃金以外にはないのでございますから、特に現在のような危險にさらされているときに、賃金の支拂い、生存権を保護するために、当局としてどういう処置をおとりになるお考えですか。
○寺本政府委員 賃金遅拂いから起るいろいろな生活問題につきましては、基準法の運用と申しますよりも、むしろ生活保護法その他で解決すべき問題が相当に起りつつあるというふうに考えます。この点は現実に賃金遅拂いの申告を受けました労働基準監督署では、事業上の調査をいたしまして、支拂い能力が皆無だと思われる場合には、民生委員その他と連絡をとつておるはずでございます。
○春日委員 今遅欠配の問題があつたので、ちよつとお聞きしますが、先ほど前田君も言われましたけれども、こういうことをやつて——たとえば神奈川県の精機鍛工というところに行つてみると、そこでは従業員に給料を二月も三月も拂わない、そういう状態になつておつて、首を切るとも言わぬ。給料も拂わない、本人がやめると、自分でかつてにやめたのだから退職手当は出さぬ、こういうのですが、そういう措置をあなたの方ではどういうふうにしておられますか。
○寺本政府委員 解雇の問題は、現在の法制のもとでは組合法関係に保護規定が若干あるほかは、基準法では業務上の疾病並びに産前産後で休んでいる者、これを解雇してはいけないという規定だけで、強力な解雇の保護規定がないのであります。従いまして、賃金遅拂いが原因になつて退職するという、場合には、法律上これを保護するという問題は、賃金支拂いを促進して、間接に職場を離れて行く者を防ぐというふうに、賃金遅拂いの面で盡力するというよりほか、直接解雇そのものを防ぐという法制的な措置はないように思います。
○春日委員 この問題は根本的の問題になると、基準局長ではちよつと私は話がむりじやないかと思う。だから労働大臣が来たら、遅拙いになつて、労働者が食つて行く問題をどうするかという点はお聞きするとして、次に労働災害の問題ですけれども、最近非常に労働災害が多くなつていますが、大体去年、一昨年と比べてひとつ説明願いたいと思います。
○寺本政府委員 労働災害が昨年、一昨年に比較して増加しつつあるではないかという御質問でございますが、これも業種によつて異なるのであります。一般の工場災害につきましては、そう顯著な変化はないと思います。鉱山の災害については若干増加しつつある傾向にあると申し上げられると思います。なお手元にこまかい災害統計を持ち合わせておりませんので、ごく大ざつぱでございますが、そういう状態になつております。
○春日委員 それではあとからその統計を見せてもらえますか。
○寺本政府委員 差上げます。
○春日委員 統計の問題はそれとして、労働組合機関紙に出た災害の例を見ますと、基準法違反が非常にたくさんある。たとえば保護施設をすべきところを、していないという点が非常にある。たとえば三月十三日の労働戰線などに出ておる日新化学の新居浜工場などを見ますと、ここには総同盟の労働組合があるのですが、ガスが非常に漏洩して、そのために手足がしびれるとか、あるいは精力が衰えるというようなことが書かれてある。そのために従業員の一割までは病人になつておるというような報道も出ておる。こういうものが非常に多いわけです。一々読み上げれば時間が長くなるから、読み上げないけれども、こういうところは非常に多いわけです。そういうものに対しては実際に監督がほとんどやられていない。工場の従業員に言わせると、基準監督官が来たつてだめだ。事務所に入つて一ぱい飲んで帰つてしまうだけだというような、非難が非常に多いわけです。こういうものの監督について、あなた方は現在どういうふうにやつておるか。またこういうふうな具体的な事例がどんどんあげられて来て、あなたの方に出された場合に、あなた方の方でどういう処置をされるか、その点をお聞きしておきたい。
○寺本政府委員 安全関係、衛生関係の行政につきましては、御指摘の通り終戰後、基準法施行以来いろいろやつて参つておりますが、現在までのところ目立つような成果があがつていないと思つております。一つには施設の改善が非常に困難であるという点もあろうかと思いますが、全体として従来賃金関係が労働関係では非常に重く見られて、安全衛生の問題の取上げ方が、第二次的になつておつたためではなかろうかと考えております。現在では安全衛生の問題は、生産力増強にも非常に関係の深い問題でありますので、監督官には十分この点に留意して監督を行うように指示いたしております。なお監督官がやつて来てもだめだというお話がございます。多数の監督官の中には、さような者もあろうかと考えますが、現在各府県に設けられております労働基準審議会——中央にも労働基準審議会がありますが、基準法制定当時この察議会は基準法の運営が適正に行われるように、いわばお目付役とでもいう考え方から設けられたのでありまして、そこらの委員会の運用その他で、監督官のそうした非違がないよう、情報を提供していただくようにお願いしておるのであります。なお労働組合その他でそういう点をお気づきの場合には、情報をいただくように、私としてはお願いしておく次第であります。
○春日委員 それで、基準法が実施されてから、あまり効果をあげていないということは、あなたも認めておいでのようだけれども、今言つたように、監督官が出て行つても、大して改善されないというような状態になつている。これを直すには、監督官をいくらふやしてみたところで、とてもふやしきれるものではないし、やはり労働組合の協力ということが一番必要になつて来るのじやないかと思うのです。その点は今のお話でも、大体労働組合が賃金その他の方を一生懸命やつておつて、安全衛生の方はあまり関心がなかつた。しかし最近ではこの安全衛生の問題に対しては、労働者が非常に関心を持つております。けが人とかそういうものが出るために、関心持つておるけれども、一番問題なのは、この基準法自体が、労働者に一般に周知徹底されていないということだと思う。だからこの基準法を労働者に周知徹底さす。そうして基準法の違反をどんどん摘発するようにということを、政府から工場、事業場に大きくポスターでも張り出して、こういう條文があるからこういう点は注意しろというふうに張り出させることが、基準法をやつて行く上には、監督官をふやすとか何とかということよりももつとよい。こういうことをおやりになるお考えがあるか——というよりも、私はぜひやつてもらわなければならぬと思いますが、その点ひとつ……。
○寺本政府委員 基準法の施行を段階的に申し上げますと、二十二年の九月に施行されましてからおおよそ六箇月の間は、この法律に基く取締りよりも、普及宣伝に全力をあげて参つたのであります。その後試験的に監督を行つた時代がやはり数箇月あつたのでありますが、その間は違反事件があつても、全部中央で統制するという扱いをやつて参りまして、その後全面的に地方でこの基準法の取締りをやらせるという取扱い、いわば三つの段階を通つて今日まで参つております。そういう意味で初年度、当初の年は、相当普及徹底の予算その他をとりまして行いましたのでありますが、法律施行後すでに三年となつておりますので、今日ではこの基準法の普及徹底のための特別の予算というのが、とりにくいような状況になつておりまして、現在は何か機会がありましたら、その機会に基準法の普及をするという程度でとどめております。なお労使双方からの御協力があつて、民間で基準法の普及を相当にやつておるといつたようなものも、あるように承知しております。
○前田(種)委員 今の基準法の普及徹底は非常にけつこうですが、どうも最近の情勢は、事業不振から来て、生きるか死ぬかという境目だから、法律なんか守つておれないという悪質なものも出て来ているのです。まして基準法を完全に施行するというようなことは、たいへんなことだ。だからそうしたことはなかなか容易にやれぬということで、むしろ積極的に、業者の中には基準法に違反する、そういうなまやさしい経済状態じやないのだということになつて来ている実例が相当あるのです。これは昨年より今年、特に今年の夏を目標に置きますと、相当悪くなる傾向が予知できるわけです。私はこの経済状態、金詰まり、いろいろな点の事情はわかりますが、しかし半面またこの法を守つて行く。特に労働者の保護立法としてのただ一つの基準法を守つて行く。基準法を守らないことが、経済的に得になるというような資本家のものの考え方は、戰争前のものの考え方であつて、むしろ今日は基準法を守つて、そうして短かい時間でフルに仕事をさす、りつぱな仕事をさす、いい能率を上げさす、より以上高級品をつくり出すことに全力を注がなければならぬというように、根本的にかわつて来ておりますが、そうした悪い傾向にありますさ中でございますから、やつぱり基準法を徹底せしめて、そうした悪質な業者に対しましては、強く反省を求めて、そうして正しき労使関係に、あるいは生産能率が上るという傾向に持つて行かなければならぬと考えますので、この点についてはひとつ労働省は躊躇することなく、使命の遂行に邁進していただきたいと私は考えますが、この際局長の見解を承つておきたいと思います。
○寺本政府委員 基準法に積極的に違反する、基準法を守らぬ方が得だから積極的に違反する空気があるというお話でございますが、先ほど申し上げました通り、基準法施行については三つの段階を経て今日に至つているのであります。その二番目の段階に入りました昭和二十三年の中ごろ以降、一時基準法を積極的に守らぬための運動を起そうではないかという動きがあつたことを、情報で一部承つたのでありますが、その後経営者の大勢としても、この法律を守つて行こうという空気が、漸次強くなつておるのではなかろうかと承知いたしております。この関係は昨年以来、国際労働会議などにひんぴんと使用者代表の方も出ておられまして、日本の労働條件の外国からの批判を、直接身をもつて体験しておられますし、今日では経営者の方の大勢はやはり基準法を守つて、その上に事業経営をやつて行こうという動きになつて来ていると思います。そういう点で大勢から申しますれば、やはり基準法を守つて行こうという空気が強いのではなかろうかと考えます。ただ中小企業が非常に追い込まれた状況にある最近、中小企業の一部にそういう動きがあるのではないかと思いますが、大勢から申しますれば基準法を守つて、その上に事業経営をやつて行こうという空気が漸次強くなつて参つているのではなかろうかと考えております。
○前田(種)委員 今の局長の言われましたような情勢でありますならば、非常にけつこうです。しかし昨年末から今年夏あるいは今年秋にかけての見通しは、私が質問しましたような憂慮すべき事態が一現実に起きて来ていると私は考えております。もちろん日経連あるいは大資本家あるいは商工会議所等の役員の中には、そうした局長の言われましたような大勢に順応する。特に世界の各労働関係機関等に代表として選ばれた人々等は、つとめてそうした態度をとつておられますが、現実の日本の経済事情、深刻な場面というものは、そうしたなまやさしいものではないように私は見ております。これは一部ではありません。相当広範囲に深刻な場面がありますので、この点は押問答をするよりも、当局がそうした情勢は相当深刻なものがあるということをよく認識されて、基準法の施行徹底に最善の努力をいたされるように私は要望しておきます。
○柄澤委員 先ほど賃金の遅欠配、未拂いの場合に、民法上の債権より優先しておるけれども、税金の場合はやむを得ぬという御見解が出されまして、生活保護法によつて保障されるように努力するようになつている。こういうようなふうに承つておりますが、それは聞き違いでございましようか。私どもこういうことも承つたことがあるのでございます。賃金の遅欠配、未拂いの場合は、生活保護法によつてこれが保護されてよろしいというようなことが、厚生省から出ておると聞いておるのでございますけれども、基準局長は先ほど生活保護法で保護するということをおつしやられたので、その点の御見解をはつきり伺いたいと思います。
○寺本政府委員 言葉が若干足りませんでしたために、申し加えておきたいと存じます。賃金遅欠配があつた場合に、生活保護法で保護するというふうには申し上げなかつたと思うのであります。賃金遅欠配が起つておる場合に、ほかの民法上の債務を拂う余力はあつた。銀行に金を返すとか、資材の未拂いは拂つたが、賃金をあとまわしにしたという場合には、基準法違反として取締る。しかし税金を拂つてあと一文もなくなつたという場合には、現在の制度上では取締れないということを申し上げたのであります。中小企業の中には、賃金遅配欠配の申告がありました結果、調査いたしますと、支拂い能力がまつたくないと認められる場合があります。そういう場合には、現行法上基準法違反として取締るわけには参りませんので、監督官が民生委員に連絡するようにしておるというふうに申し上げたのであります。
○柄澤委員 銀行の負債を拂うよりも賃金の方が優先的だというお話でございますが、もし賃金を拂わないでおいて、銀行の方に拂つていたような事実がございましたら、基準局がこれをお取締りになりまして、賃金を支拂わせるようになさるわけでございますか。
○寺本政府委員 賃金債務も弁済期に来ており、銀行債務も弁済期に来ておるという場合に、賃金債務をあとまわしにしたというときには、基準法違反として取締つております。
○柄澤委員 失業対策課長がお見えになつておりますので、一言だけお聞きしておきたいと思います。年末の労働委員会であつたと思いますけれども、失業対策課長は、十一月末現在で東京都内では完全就労しておるという御報告がございまして、当時の政府の方針は完全就労であるのだということで、失業労働者は非常に明るい希望を持つたのでございます。ところが、その後全国各地の私ども労働委員に対する陳情、あるいは実情視察によつて得ましたところで見ますると、輪番制あるいは輪番制もおぼつかないということを承つております。それでいつ方針をおかえになつたのか。またそういうような指令をお出しになつたことがおありになるかどうか、その点御答弁願いたいと思います。
○海老塚説明員 昨年の暮れの労働委員会で、これは速記録を調べていただけばわかりますが、私は完全就労が政府の方針であるというふうに言つた覚えはございません。ただ求人開拓あるいは失業対策事業等の実施によりまして、なるべく就労日数を多くするように政府は努力しておる、ということは申し上げたと思います。そういうように記憶いたしております。
○柄澤委員 当時失業対策課長が、二時間も三時間も失業者につかまりました根拠はそこにあつたと思うのであります。当時確かに七、八月は非常にあぶれがあつたけれども、十一月末には東京都内は完全就労だという御報告がありましたので、労働者の陳情とは食い違つておるから、もしそれが政府の方針とすれば、職業安定所のやつていることは間違つておる。だから職業安定所は、当然政府の方針通り完全就労さすべきだというのが、私どもの見解であつたのでございます。それから予算がないから輪番制にしろというような達しを、各地方の職業安定所にお出しなすつた覚えがあるかどうか伺いたい。
○海老塚説明員 暮れの労働委員会におきまして、東京都にあぶれがあるということは申しました。しかし当時の状況におきましては、大した数のあぶれではない、若干と申し上げたと思うのであります。それから輪番制の通牒を出したかという御質問でありますが、年度末が迫りまして、失業対策事業費の予算の関係もございまして、地方によりましては求職者を全部就労させることのできない安定所がありますので、そういう安定所は輪番制を実施して、できるだけ就労の均霑をはかつてもらいたいというような通牒を出しております。
○柄澤委員 最近地方で、失業者が仕事をよこしてもらいたい、働かしてもらいたいという真劍な要求に対しまして、いろいろな形で彈圧が行われているようでございます。予算のわくがなければ輪番制にしてもよい、あるいは完全就労できなくてもよいというようなお達しがあつたということで、地方の職業安定所は、予算がないのだからなるべく予算を繰り延ばすようにして、仕事をよこしてもらいたい、仕事をさしてもらいたいという労働者の要求に対して、こたえることができなかつた。そういうことがああいう事態を惹起さしたのであるが、失業対策課長としては、ああいう指令を出すことは当を得た方針であると思うかどうか。これは完全に政府の責任だと思いますので、その点について課長はどういうふうにお考えになつておるか、伺いたいと思います。
○倉石委員長 柄澤君に申し上げます。海老塚君は説明員でございますので、ただいまのような労働省としての御方針については、やはり労働大臣及び局長のおられるときに、あらためてご聽取願うようにいたします。 本日はこの程度で散会をいたします。 午後三時五十分散会