法務委員会 第32号
- 発言数
- 36 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1950/04/19
会議録
○花村委員長 これより会議を開きます。 本日は民事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたし、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますからこれを許します。眞鍋勝君。
○眞鍋委員 ただいま議題となつておりまする民事訴訟法の一部を改正する法律でありますが、その提案の理由とするところは、最高裁判所の使命の重要性にかんがみ、上告事件の取扱いに関し所要の改正を加え、その負担を調整する必要上、本法律案を提出したとのことでありますが、結局最高裁判所の方は負担の軽減で都合がいいが、これがために国民の方がはなはだ不満足となるのであります。法は国民大衆を忘れては困る。最高裁判所は事件の少い方がいいのでありますが、事件の少きを欲するならば、下級裁判所で当事者を満足せしむる名判決がほしい。名判決は名判事を要する、ここにおいてお伺いをするのでありますが、裁判所の方は、下級裁判所に練達堪能の士を配し、判断流るるがごとく当事者をして十分満足をして引下る模範裁判所ともいうべき、その優秀を誇る特別なる裁判所ようのお試みを企てたことがありや、あるいは企てずとも、期せずしてそういうような結果を生み出すというような裁判所でもあつた御経験がありやいなやということを、まず第一にお伺いしたい。
○花村委員長 この際お諮りをいたしたいことがあります。最高裁判所より発言を求められておりますから、国会法第七十二條により、これを許すに御異議ありませんか。
○花村委員長 ではこれを許します。關根最高裁判所民事局長。
○關根最高裁判所民事局長 ただいま眞鍋議員の仰せ、まことにごもつともでございまして、実はこの法案を提出になります前に、最高裁判所といたしましても、できる限り国民の権利保護をはからなければならない。最高裁判所の使命は、すなわち国民の権利保護のみにあると言つていいのでありまして、ただいまお読み上げになりました最高裁判所の使命の重要性にかんがみということは、裏から言えば国民の権利保護の重要性にかんがみと全然同じと言つてもいいわけなのでございます。従つて最高裁判所の負担を調整するということは、国民の権利保護を調整する。国民の権利保護のうち、保護すべき権利を保護し、保護するに値しない権利を保護しないという趣旨に負担を調整するという言葉の裏がそこへ出て来るわけでございます。しかしながら、ただいま眞鍋議員がおつしやいましたように、要するに裁判所を信用するような裁判官が出なければいかぬ。これもまた仰せの通りでございまして、できる限り下級裁判所を充実し、下級裁判所の裁判官が国民の信頼をほんとうに得るような裁判をするならば、上の裁判所へ持つて来るまでもないわけなのであります。ニユーヨークの裁判所におきましても、たとえて申しますと、名前からいたしましてシユプリーム・コート、最高裁判所という名前を使つておりますのは最下の裁判所でございます。日本でもやはり同じような考え方をもつて下級裁判所、第一線の裁判官を充実しなくてはならないことは、最高裁判所の人事行政上一番肝要なことでございまして、ただいま眞鍋議員がおつしやつた通りでございまして、この方向にできる限り全力を尽すということでございまして、たとえて申しますと、新刑事訴訟法の運用上、高等裁判所の判事の負担量が今後はあるいは減少するのではないかという見通しがございまして、高等裁判所の有用な判事を地方裁判所の部長級、あるいは監督判事のところにまわすといつたことは、着々として実現しつつあるわけでございます。なおこの法案のもとになります最高裁判所の現状を簡単に申しますと、最高裁判所の判事は、大審院の判事の三分の一になつておりまして、事件は大体元通り、そういたしますと、結局負担が三倍になり、事件が延びてしまうということも三倍になつておる現状でございまして、最高裁判所へ記録が移ると、長途の旅行に出かけてしまつたというような感じを与え、極端な例を申しますと、高等裁判所の判事が最高へ上告になると、記録はいつもどつて来るのかわからぬ。それからまたさらに身近なことを申し上げますと、調査官が記録を精査いたしまして、報告書を最高裁判所の裁判官に提出いたしますと、これもまたいつ自分のところへ戻つて来るのかわからぬ、そういつた現状でございます。従つてそれでは国民の権利保護、上告事件の適正なる処理、迅速な処理ということが考えられない。そこでやはり権利保護を必要とする事件を重点的に取扱うといつた考えでございます。従つて今後この法案がもしお通しいただければ、できる限り下級裁判所の充実をはかると同時に、国民の権利保護を全うするように、あらゆる方途を講ずるという最高裁判所のでき得る範囲において、またあるいは立法を要しなければならないということになりますれば、法務府あるいは国会の方にお願いいたしまして、その実現に進みたい。こういう考えであります。
○眞鍋委員 今御答弁のありましたのを事実に御実行あるようにお願いをするのであります。 次に実は私どもは国民の権利を縮小する法案に賛意を表することは良心の許さないところである。いずれ予想する臨時議会までにあらためて名案を提出すべしという主張にはかわりはないのでありますが、二箇年ぐらいの期限つきで一応通してはという意見もあり、当の最高裁判所におかれても、これに応ずる意向のようであります。思うに、最高裁判所にありましては、判事の公選あるいは裁判所の修築等、大いに外形は整い、裁判所の威容は嚴然として形式は整備したのであります。しかるに国民は旧態依然として国民性の改造がこれに伴わない。依然として一審、二審で満足ができず、ここに最高裁判所を煩わす傾向に変化はありません。しかしてまた民主主義の今日、あながちこれをしりぞけがたいものもあるように存ずるのでありますが、新法によりますと、憲法の解釈を誤りたること、あるいは憲法に違反したることとか、要するに憲法問題を主として取上げられておるようでありますが、憲法問題のごときは、あるいは国会において、あるいはまた学界において、それぞれ研究論議されまして、最高裁判所を煩わすことも漸次減少するものと思うのであります。憲法問題の判決になれば、あえて現在のごとき大殿堂の威容を整える必要もなきかとも思われるのでありまして、ただ憲法問題ばかりを主として取上げるというようなことは、今申し上げました理由からして、私は期待薄であるのであります。いわゆる民主政治は御承知のごとく金がかかる。金がかかつて国民の権利が逆に縮小されては、これを代表するわれわれはただちに賛成ができないので、ここにいかにして国民を満足せしむべきか、名案の案出を要求するゆえんもここにあるのであります。現在日本におきまして最も優秀なる判官諸公のお集まりであり、いわゆる斯界の長老ことごとく集まり、俊髦逸足皆至れる最高裁判所の諸公に頭をしぼつていただいたならば、国民を満足せしむるだけの智惠を出していただけることと思うので、二年と言わず半年以内において出していただきたいのであります。これはひつきよう私どものためならずして、実は最高裁判所の国民の信用を増すゆえんであるかと存ずるのでありまして、これはせつかく国民の期待しておるところの最高裁判所としては、深甚の考慮をお願いしたいのであります。しこうしてこれはひつきよう人である。初級審においで人間の琴線に触るる名判断を下されるならば、上級審において事件は減少いたします。判官その人に人間味がゆたかで、学識経験に富み、すなわち学東西を兼ね識古今に通ずる練達堪能の名判官が下級裁判所に多くなり、従つて名判決となるのである。いかに法律を整備いたしましても、天下泰平は望みがたいのであつてその根底は道徳であると私は思う。法は道徳の最下限、道義は法の最高峰である。私どもは道徳第一主義を提唱する前最高裁判所の長官三渕氏に敬意を表するのはこの点よりするのでありますが、およそ道徳が行われずして法律行われず、道徳的、哲学的、宗教的試練を受け、確たる宇宙観、人生観に徹せる哲人にして初めて人間味ゆたかな名判決となり、国民もこの域に達すれば裁判所はほとんど用がないようになると信ずる。御承知のごとくわが国は東洋精神文明の君子国であり、形而上においては世界に冠たるものであつた。しかるに近時敗戦の結果、これを忘れてますます卑屈になりつつある現状でありますが、立法の府にあらせられる練達堪能の士は、深くわが国民性の欠点に意をいたされ、東洋の君子国たるわが国民性の善所、美点を生かし、その完成に効果あるよう、立法的見地より御発案を願いたいのであります。私らをして再び失望せしむるがごときことがあつてはなりませんから、この点において深く発憤を願うのでありますが、この点に関しまして民事局長の御意見を伺いたいと思います。
○關根最高裁判所民事局長 今眞鍋委員の仰せられた通り、まことに全部その通りと私ども感じておる次第でございます。ただ司法制度全般の問題につきましては、結局のところ私どもの方でできる限り案を検討いたしまして、それは結局政府側といたしましては法制審議会、それから国会の方におきましてはまた国会の方で十分検討いただくわけでございましようが、法律の改正あるいは憲法の改正にまで行く問題もあろうかと存じます。それで実はこの案ができますまでに幾多の案を考えたのでありますが、そのうちに最高裁判所の事件数が非常にふえて参りましたのに、国民の権利保護が全うされないという事態に立ち至りまして、結局この案になつたわけでございますが、今後なおできる限りよりいい法律制度、司法制度をつくるという方向に行きたいと存じております。もつと具体的に言えというお気持があろうかと存じますので、その点をやや詳しく申し上げますと、実は最高裁判所の事件の審理判断を調整いたしました結果、重要でないものについてはどうするかという点につきまして、下級裁判所を現実に充実するというほかに、特別の法律審を設けたらどうかということも考えました。あるいは最高裁判所自体に法律審を設けたらどうか、これも考えました。ところが最高裁判所自体に下級の法律審を設けるということは、憲法の問題にふれることになりますので、これも早急に間に合いません。これらを考え合せまして、今後下級裁判所の充実をはかるとともに、法律制度、司法制度の改善には十分努力をいたすつもりでございます。なお国会側、政府側におきましても、これに御援助を賜わらんことを切にお願いする次第であります。
○眞鍋委員 今御言明の通り、再び吾人をして失望せしむることのないような御発案を、この期限付より早く御実現願いたい。私の質問はこれで終ります。
○梨木委員 最高裁判所の方に伺いたいのでありますが、保護すべき権利と保護すべからざる権利、保護に値しないような権利は保護する必要がないのだ、こういうような御答弁が今あつたように聞いたのでありますが、一体保護すべからざる権利、保護に値しないような権利、そんな権利というものがあるのですか。これをどういうぐあいにして区別するのかまず伺いたい。
○關根最高裁判所民事局長 今梨木委員の仰せられた通り、あるいは私の申し上げようが惡くて誤解をあそばされたのではないかと思いますけれども、保護をする必要のない権利というのは、権利じやないという趣旨でございます。ただいまお言葉がございましたので、さらに詳しく申し上げますと、たとえて申しますと、病院に入院する申込みがあつた場合に、病院の医者の数が少い。その病院に入院する必要があるかどうかということの診断と、入院が必要の者についてさらに手術をした方がいいか、どういうことを加えたらいいかという診断をする階段を設けたらいいのではないか。両方とも門の中に入れて診断するが、入院の必要のない者については診断を簡単にするという——これは少し比喩的に申し上げて恐縮でございますけれども、そういう趣旨で、この訴訟事件につきましても、結局中に入つて十分の審理をしなくても、主張自体が怪しいもの、そういうものについては簡単な判断でいいのではないか、そういう趣旨で申し上げた次第でございます。
○梨木委員 そうしますと簡単に判断する、それから慎重に判断する、そういう区別は一体客観的にどういうものさしで決定するのですか。
○關根最高裁判所民事局長 実はそのものさしが問題なのでございまして、これについては、各国の最上級の裁判所についてはいずれも上告の調整をやつております。そのものさしをどうするかということは、いろいろの場合がございまして、たとえば金額で切るとか、または下級裁判所が二つあつた場合に、下級裁判所が同じ意見の場合には、もう最高へは来ない。その他事件の種類、あるいは事件の上告状が出たときに許可するかどうか、そういう許可制度でものさしにかえるといつた制度がございます。いろいろございますけれども、結局のところは、先ほどの例で申し上げますと、病院の博士が見て、これは入院する必要がないかどうか、それと同じように法規裁量と申しましようか、結局重要なりやいなやは最高裁判所の裁判官が判定する、これでもつてするほかはないのじやないか。もし金額で切つたりいたしますと、金額の少いものについては最高裁判所で取り上げようと思つても取り上げられない。ところが裁量でいたしますと、あるいはこれを取上げていいという場合に取上げることができる。かなりゆとりがあることになります。これはそれじやものさしにならぬじやないかというような御疑問もあろうかと存じますけれども、これは結局法令の解釈上、重要という客観的な標準によつて最高裁判所の裁判官がきめて行く。このものさしは現在刑事訴訟法で用いられておるのでありまして、現実の動きを見ておりますと、結局重要でないというものは、どなたがごらんになつても、ほぼ上告論争としてとるに足らぬ、問題にならないといつたものだけについて重要でないという判断で、これを受理しないことにいたしております。今度の民事訴訟法の改正案は、それは受理せずということでなく、中に入つて重要できないという判断を加える。さらに一歩丁寧にするという案でございます。
○梨木委員 そうすると、もう少し碎いて、詳細に具体的に伺いたいのでありますが、この改正案によると、一応は全部何でも受付けるのですか。今まで通り受付けて、そのあとで、これが重要であるか重要でないかということを判断するということになるのですか。そのところを伺いたい。
○關根最高裁判所民事局長 梨木委員のお説の通りでございます。
○梨木委員 一応全部受付ける。どういう事件についても一応上告できる。そうしておいて、あとでその中身を見て、どういうぐあいに処理するのですか。そこが私にはわからないのですが……
○關根最高裁判所民事局長 たとえて申しますと、原審の裁判に対して文句が五つ、六つある。そのうち甲、乙、丙とございますと、そのうちの甲の点は重要だ。乙の点については重要じやないといたしますと、乙の点については、これは重要でないという判断を加えて、それ以上中に入らぬということです。結局たつた一つの論点がありまして、それが重要でないという場合には、上告を棄却するということになるわけです。
○梨木委員 なかなか説明が上手なんで、ごまかされるのでありますが、そうしますと、この提案理由を見ますと、非常に最高裁判所に事件が多い。だから事件があまり多過ぎるから、そこを調整しなければならぬということで、この改正案が出ておる。しかし今あなたの説明によりますと、重要であるかどうかということは、やつぱり一応記録を見なければならぬことになつて来ると、どれだけその忙しさが省略できるかということについて、私は疑いを持つのでありますが、これは実際上どういうぐあいになりますか。
○關根最高裁判所民事局長 梨木委員の御疑問はその通りでございます。重要がどうかということについて判断をするためには、上告理由をよく見て、しかも記録を全部見なくちやならぬということは御説の通りなんです。しかしこれは実は内輪話ですけれども、一体簡単な道理ほど、それを判決文に書くとなるとむずかしいわけです。これは私ども裁判官の経験がございますけれども、理の当然だということが案外めんどうです。それで記録を見て、これは重要でないという判定を下すについては一応記録を全部見ます。しかしそれを判決文にして書くとなると、数倍の手数がかかるわけです。これはこの案が法務府で立案されまして、さつそく裁判官の方、調査官の方に、一体こういつた趣旨でほんとうに手が省けるだろうか。それで重要な権利の保護に邁進できるだろうかということを聞きました。ところが異口同音に、それは君、何といつてもこれだけやつていただけば、大分重点的に仕事ができると言つております。先ほど数字はどうかと思いまして申し上げませんでしたが、実はこの案をつくります元の研究を始めたころが、昨年の三月ごろでございますが、その当時未済の事件が百件内外であつたものが、ただいまは四百件を越えておる始末でございまして、先ほどの例で申しますと、入院申込み者が廊下にごろごろしているのが四百人ばかりある。譬喩的に申し上げればそういつたぐあいです。そうなりますと、医者の方も忙しくて、ほとんどからだにさしつかえができて来る。病人の方は廊下でごろごろさせられて、これも危殆に瀕する。共倒れしてしまうといつた状態なのでございます。どうしても調整の線を引かなければ、結局全部が倒れてしまう。やむを得ないところでこういう法案が政府から提出された。私どもの方ももつといい案があるのじやないかと思いますけれども、今となつては、この案以上に別案は考えられない。そういつた次第でございます。
○梨木委員 そうするともう少し伺いたいのですが、上告理由を見て、この案件は重要じやないという判断だけをして、上告を棄却することになるのでありますか。
○關根最高裁判所民事局長 今のお話の点は、実際の取扱いを申し上げますと、重要でないというものについて段階がございまして、見て重要でないものについては、そのままおつしやつたように重要でないからといつて棄却するのであります。ところが、その点少し当事者が納得できないのじやないかという点があれば、それを説明しているのが現状でございます。この法案が通りますれば、りくつだけを申し上げれば、結局重要でないということが理由になるわけでございます。
○梨木委員 そうすると大体憲法違反でないようなものは、重要でないというくだりで大体おつぱらわれることになりそうでありますが、そこのところはどうですか。
○關根最高裁判所民事局長 憲法違反の点は別の方に上つておりまして、法令の解釈に関する重要な主張と認められるものは、憲法以外のことでございます。従つて今お話の疑問は、條文をごらんいただけばわかるんじやないかと思います。
○梨木委員 次に伺いたいのは、今最高裁判所に非常に事件がたくさんあつて、そのために裁判が遅れておる。これは大体われわれも漏れ聞いておるのでありますが、ここで私の納得できないことは、この提案理由の説明にも書いてありますが、元の大審院では三十数人の裁判官がやつておつた、それを現在十五人の裁判官でやつておるのだから忙しい。これで悲鳴をあげて改正案を出して来ておるのでありますが、しかしこれは最初からわかつておることなのです。でこの点については、今のような最高裁判所の制度、大体今まで三十数人でやつていたものを十五人でやろうという、こういう制度をつくるときに、そもそも問題があつたはずなのである。ところが当時は十五人でやりましようということでこの制度を設けて、しかもその十五人というのはなぜ限定したかといえば、最高裁判所の地位の向上といいますか、これは何か国務大臣待遇というようなことで、あまり数をふやすとその地位にふさわしくなるというようなことで十五人に限定せられたらしいのでありますが、十五人にしたときに、すでに忙しいことは承知の上なのである。それをなぜ最高裁判所の機構そのものの根本的な検討をやらないで、今ごろになつてこういう暫定的なものを出して来るのか。私きよう初めて出まして今までもこの点は十分質疑されていることと思いますが、こういう最高裁判所のやり方の中に、結局最高裁判所というものを、これは憲法違反だけの憲法裁判所にしてしまう、そうして別に旧大審院的なものをまたこしらえろというような考え方が、この中に流れている。だからこの点について、先ほどあなたの説明の中にも、最高裁判所の中にさらに憲法の問題でなくて、法律審的なものをつくるような構想も話題になつているということを言われましたが、この中に私は非常に危険なものを感じているのでありまして、私は以上申し述べたところによつて、まず最初に伺いたいのですが、私の漏れ聞いているところによれば、最高裁判所をつくるときに、これは普通の上告の事件を全部扱うという前提の上にできたということを聞いているのでありますが、これはたしかそういう法制審議会の討論の過程において、これがちやんと出ているはずなのであります。そういう記録もどこかに保存されていると思いますが、その辺のことを伺いたいのです。
○野木政府委員 ただいまの御質問に対して、便宜政府側から一応御説明申し上げます。新憲法になりまして、新しい裁判所法ができました際、最高裁判所裁判官の人数をどのくらいにするかという点は、新憲法が最高裁判所に附与して性格等にかんがみて、非常に議論になつたところでありますが、結局違憲立法審査権を有する。違憲立法の審査のためには、やはりあまり大勢の人数ではまとまりにくい。アメリカなどの例を参酌いたしまして、結局十五人くらいが適当であろうということに落ちついたわけであります。また一面新憲法下の最高裁判所は、純然たる憲法裁判所でなく、普通の事件を取扱う終審裁判所ということになつております。普通事件ももちろん取扱わなければ、むしろ憲法違反になるのではないかということで、普通事件とあわせて取扱うことになつているわけであります。御承知のように、旧大審院当時三十数名ないし四十数名でやつておつたのと、まつたく同じ幅の事件を取扱つておりましては、事実上不可能になりますので、その間調整を施す必要があるわけでありまして、最高裁判所発足当時、あるいはこういう調整が必要だつたという見方もありますが、当時は民事の事件も比較的少かつたし、そういう事件が現実的なものにならなかつたわけであります。このたび民事事件の激増等にかんがみまして、政府側としてこういう案を立案するに至つたわけであります。
○梨木委員 私はそこを聞いているのです、十五人でやるということは、最初から別にこの最高裁判所をつくる当時、日本は客観的情勢の変化があつたのではないので、その当時からすでに忙しくなることは当然わかり切つている。そのためにまた調査官制度というものを設けて、それを補助しようということの構想から出て来ているのだろうと思うのでありまして、今ごろになつて、忙しいからこの上告事件を制限しようというようなことは、これはわれわれには何といつても受取りがたい。明らかにこれはやはり最高裁判所というものを憲法裁判所にしてしまつて、そうして別に上告事件專門の全国的な、統一的な裁判所をつくろう、こういう構想が出て来ていると思います。 そこで私は、この点についてもう一点伺いたいのでありますが、この最高裁判所の裁判官を選ぶ際においても、これは上告事件を扱うということで、裁判官の選考の範囲を、判決を書けるような、つまり裁判に習熟して、裁判所の経験のある人々の間から最高裁判所の裁判官を選ぶということが、当時そういうぐあいにきまつているはずです。もしこういう上告事件を制限し、これがだんだん憲法裁判所的な方向に行くということになりますならば、今の最高裁判所の裁判官自身もみんな入れかえなければならぬということになるわけです。こういう法律を出して来るところに、今の最高裁判所の人たちが一体何を考えているかということについて、私は非常な疑問を持つ。初めのうちは、普通の上告事件も扱うのだということで、大体裁判官とか弁護士とか、法律畑のこういう人たちを選考しておいて、だんだん憲法裁判所にして行く。憲法專門の裁判所にするならば、もつと最高裁判所の裁判官の選考範囲を広汎にしなければならぬ。これは当然です。そこに私は一つのペテンがあると思う。そういう重要な問題を含んでいるのでありまして、この点についても最高裁判所の裁判官を選考する場合にも、そういういきさつがあつたと私は承知しているのでありますが、その点はどうですか、これを伺います。
○野木政府委員 政府といたしましては、最高裁判所をおつしやるような憲法裁判所にまでしてしまうという考えは、毛頭持つておりません。またそうすることは、憲法の精神に反するものだと思つている次第であります。
○梨木委員 私の質問に答えておられない。つまり今の最高裁判所の裁判官を選考する場合に、判決を書ける、上告事件を扱う、そういうことを前提にして、そのような範囲で選考したはずなんです。これは当時そういう選考基準がちやんとできています。ですからできればその資料を提出して欲しい。そこへ持つて来て、今度は上告事件を扱わないということになつて来ると、これは明らかに国民を欺瞞するものである。その点についての明確な答弁を願いたい。
○關根最高裁判所民事局長 梨木委員の御疑問ごもつともな点もございますが、実は今最高裁判所の裁判官の選考方針は、私の聞いているところでは、おつしやる通りだと思います。ただいま上告事件を取扱わないで、憲法裁判所にする思想が現われているのじやないか。これは私ども考えているところとまつたく反対の御疑問でありまして、実は打明けて申し上げますと、法制審議会においてもその意見が出ましたけれどもも、その意見はたつた一人の意見でありまして、結局全部の委員が反対いたしまして、採用されなかつたのであります。アメリカにおきましては、連邦政府で、各州ごとに憲法ができている。そしてその各州ごとの憲法違反の問題が多いために、憲法違反の事件が連邦の最高裁判所には非常に多いわけでございます。ところが日本のような単一国家では、結局憲法問題は少いじやないか。これも仰せの通りであります。しかし憲法問題もありますけれども、そのほかに、それでは上告事件はどんなのがあるかと申しますと、むしろ憲法以外に、はるかに上告事件の重要なものが多いわけでありまして、この今度の案などにおきましても、決して最高裁判所が上告裁判所でないといつた思想は全然ないわけであります。 それから先ほど御意見の中に、今ごろになつてどうして最高裁判所及び政府からこんな問題が出たかというお話でありましたけれども、これは憲法が施行になりますときに、裁判所法が施行になり、同時に民事訴訟法、刑事訴訟法の改正が論議されたのでありますけれども、いろいろな案が固まつてたくさん出ましたために、結局応急措置にまかされて、そうしてでき得る限り早い機会にというので、まず新刑事訴訟法が施行になり、これは国会で御論議になつたので繰返すまでもございませんけれども、そうして新刑事訴訟法でも上告事件を調整しております。それにならつて民事訴訟法の上告事件に限つて今度問題となつたわけでございます。それからなお事件数から申しましても、戦前は大体民事は全国の事件が一年八十万件ございました。それで戦時中は三十万件に減つておりまして、この二、三年になりましてこれが六十万件にまた上昇して参りました。それで今度の法案が政府から提出されることになつたわけであります。決して上告裁判所がなくなるということは、私ども毛頭考えておりません。
○梨木委員 この点を私ちよつと正確なことは不案内なんで伺いたいのですが、十五名の裁判官で今五人で小法廷というものをつくつておりますが、裁判するという場合に、一人々々やつたらどうなんです。部でやらないので一人一人でやるならば、もつと事件をさばけませんか、どうです。
○關根最高裁判所民事局長 最高裁判所の裁判官が神様に近くなつて来れば、一人でいいということになつて来るだろうと思います。これは下級裁判所の裁判は、御承知のごとく裁判所の判事が単独でありまして、地方裁判所も原則として単独になつております。高等裁判所は三人、あるいは特別の事件になりますと五人、それが単独になつてしまうことは、最高裁判所の機構の問題から考えましてもどうか、いくらすぐれた裁判官でありましても、やはり御承知のように人間でございますから、どうしても数がそろわないといい案が出ない、その数がそろうというのも限度がございますから、やはり五人ぐらいがいいのではないか、高等裁判所の合議制が三人でございますので、最高裁判所も小法廷は最少五人というところが一番穏当じやないか、私どもはそういうふうに考える次第でございます。
○梨木委員 今最高裁判所の裁判官は一人々々みなりつぱな部屋を持つておるのでありますが、もし合議制ならば、五人なら五人一部屋におればよさそうでありますが、部屋は一人々々持つております。部屋を一人々々持つておるということは、やはり最高裁判所の裁判官の一人々々が独自の識見と手腕と能力によつてやつて行くという——外国でも最高裁判所では一人で判決をやつて行くというように私は聞いておるのでありますが、これはまた聞きでありますからあまり正確ではありませんが、この点は意見にわたりますから…… もう一つお伺いしたいのでありますが、もう少し調査官をふやしまして、非常に忙しいのを何とか調節する、これはできませんか。
○關根最高裁判所民事局長 ただいまの調査官をふやすということは、お考えの通り一応考えられることでございますけれども、調査官は下調べをするにすぎないのでありまして、現実のお話を申し上げますと、記録が参りまして、その記録について報告書をつくりまして、裁判官のところに提出するわけでございます。そうしてその報告書が積み重なれば積み重なるほど裁判官の仕事がふえるわけです。調査官をふやしましても、その積み重なる数がふえるという結果結局渋滞してしまう。調査官は先ほど申し上げましたように、報告書を出してもいつもどつて来るかわからぬ、また汽車旅行だといつて嘆いておる状態であります。調査官をふやしましても嘆く調査官がふえるという結果になつてしまうというので、これもやはり一人の裁判官に相当する調査官ということに限度があるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。 —————————————
○花村委員長 ほかに御質疑はありませんか——御質疑がなければこの際角田委員より発言を求められておりますのでこれを許します。角田幸吉君。
○角田委員 ただいま上程になつております民事訴訟法の一部を改正する法律案に対しまして、修正の意見をこの際申し上げておきます。こういう修正の意見を申し上げます。 民事訴訟法の一部を改正する法律案修正案 民事訴訟法の一部を改正する法律案を次の通り修正する。 最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に閲する法律 民事訴訟につき最高裁判所が上告裁判所である場合には、裁判所は、民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第四百二條の規定にかかわらず、上告理由で左の各号に該当するもののほか、法令の解釈に関する重要な主張を含むと認めるものに基いて調査すれば足りる。 一 原判決が憲法の解釈を誤つたこと、その他憲法に違反したこと。 二 原判決が最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。 三 最高裁判所の判例がない場合に、原判決が大審院又は上告裁判所である高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。 附 則 1 この法律は、昭和二十五年六月一日から施行する。 2 この法律は、昭和二十七年六月一日から、その効力を失う。 3 この法律施行前、高等裁判所の第二審又は第一審の口頭弁論が終結した事件及び地方裁判所の第一審判決に対して上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をした事件については、なお従前の例による。 こういう修正案の意見を申し上げまして、委員各位の御賛成を願いたいと思うのであります。先刻眞鍋さんからも、りつぱな名判官があつて、その裁判にはどうしても上訴ができない、当事者が承服するというようなりつぱな裁判ができ上ることは、理想としてはまことにいいのであります。最高裁判所の方でもそういう裁判官を求めて、りつぱな裁判所をつくりたいという念願があつたようであります。しかしそれを明日からただちにそういうことにはできないのであります。やはりそういうりつぱな備えをするまでには若干の日数がかかると思うのであります。と申しまして、今たくさんたまつておりますところの事件をいずれかの方法において整理をする必要があると思うのでありまして、暫定的にはやはりここ二箇年くらいは、私がただいま修正の意見を申しましたような機構においてやつて行かなければ、実際問題としては実施するに困難であると考えますので、ただいま私は政府提案の法律案に対しまして修正の意見を申し述べるものであります。これは皆様の御賛同を得て、関係方面に御折衝あらんことを望む次第であります。
○花村委員長 ただいまの角田君の修正意見を委員会の修正意見といたし、所要の手続をとりたいと存じますが、賛成の諸君の御起立を願います。
○花村委員長 起立多数。よつてさようとりはからいます。 本日はこれをもつて散会いたします。 午後三時三十一分散会、