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7回国会衆議院1950/04/22

文部委員会 第19号

発言数
28
登壇者
5
会派数
2
開催日
1950/04/22

会議録

長野長廣自由党

○長野委員長 これより会議を開きます。  国宝保存に対する件を議題といたします。本件に関連する文化財保護法案について、前回参考人を招致することに協議決定いたしましたが、この際藤島亥治郎君、長瀧武君、及び渡邊光枝君を、参考人に指名いたすに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

長野長廣自由党

○長野委員長 御異議なしと認めます。それではさよう決定いたしました。  これより参考人の御意見を承ることにいたします。藤島亥治郎君。

藤島亥治郎東京大学教授

○藤島参考人 私藤島でございます。私参考人として呼ばれましたが、本議案につきましレはあらかじめ詳しく調べてあればいいのでありますけれども、実は議案をいただいたのがただいまでございまして、内容を十分検討するひまがないのであります。実は前から、参考人としてここに立つて、さつそく話をしろということは困るじやないか、と申し上げておいたのでありますが、私として感ずるところを簡單に述べさせていただくということごよろしうございますか。

長野長廣自由党

○長野委員長 よろしうございます。

藤島亥治郎東京大学教授

○藤島参考人 それでは私は文化財保護法案につきまして、自分の考えていることだけをかつてに申し上げます。  この保護法案が上程せられるにつきましては、私は満腔の賛意を表するのでありますが、前にずつと一応拜見したところか見て、いろいろと感ずることも多いのであります。国宝保存法その他に関しての、今までのいろいろな欠点を全然払拭して、ここに大きな文化的な事業を興すということは、それ自体非常によろしいし、また第二條にあります通り、文化財と称するうちに有形文化財並びに無形――今までやつておつた有形のほかに無形を入れたということは、私としても年来希望しておりましたことが実現されまして、非常に欣快にたえない次第であります。なお史跡、名勝、天然記念物もこの中に入れることは、非常にけつこうなんですが、ただ――これはまあどうでもいいようでありますけれども、文化財といつた以上、嚴格に言うならば、天然記念物は文化財ではないのでありまして、文化と言えば、人工人為の加わつたものでありますので、これをこの中に入れるのはふしぎなように思いますが、在来の行政上の取扱いからお入れになつたに違いない。そうすればもつと広い範囲において、私は保存事業に関する限りのものをもつと広くあらゆるものをつつ込んだ方が、むしろ徹底してよろしいのじやないかというような気がするのであります。つまり天然記念物までを入れるならば、もう一つ国立公園のような事業も入れた方がよい。そうして大きな保存のスタッフをつくつて、それこそ強力な行政を行つた方がよろしいようにも思います。聞きますと、アメリカにおいては国立公園から、こういう文化財から、すべてを含めた一局をなしているそうでありますが、そういうようなことを私は感ずる次第であります。しかしこれは現状としては行いがいことで、こういうようなことになつたものかと思うのであります。  この委員会組織につきましては、要するに委員の数の問題並びに性格の問題が相当重要かと思うのであります。これについては、昨年最初につくられました参議院案におきましては、あまり詳しい限定がなかつたように思いまして、私も非常に疑問を感じたことが多かつたのですが、今度の案におきましては、相当政党的な考慮も施されておるそうであります。二人以上が同一政党に属した場合には、両院の同意を経て文部大臣が委員を罷免することができるというように、相当政党的に一方に片寄ることを避けるように考慮しておる用意は、非常によろしいと思います。ただ私として考えますのに、それにしても結局はこの委員会の委員の方々は、行政家、政治家の方々に大部分よられることと思うのでありますが、これは相当学術的な資料の面をもたくさん含んでいることでありますので、政治的な面と同時に、学術的な面も相当考慮に入れるような方針をとられて、委員会の性格を定められることを希望するのであります。もとより、委員にもなられる方は、これをもつて一つの政治的な材料とされるようなことは絶対ないと思いますが、万が一にもそういうことになれば、この保存事業に対して非常に暗い面をつくつてしまうというように考えます。  それからまた、その組織のうちにいろいろな組織がございますが、そうして保存対象も今までより非常に厖大にわたるのでありますが、一体それだけの大きな網を張つて実際に仕事をしようとするならば、それに関する予算がどのくらいとれるのであるか、実質的にそれだけのことをなし得る予算がとれるのかどうかということに、私は疑問を持つております。現在の国宝保存法による保存事業でさえ、辛うじて大蔵省の認定を経て仕事をやつているようなわけで、今年度においては二億円ということでありますが、そんなようなことでは、とうてい現在ある国宝の全体は保存し切れない。御承知の通り特に戰争以来ひどくなつておりますのを、いかに修理保存の遂に出るかということだけでも、大きな仕事である。しかも有形文化財の修理保存ということだけが、保存の実体ではありません、もつと恒久的な管理機構というものを徹底させなければならない。それに対して、たとえば今年度においては、防火対策を講じて、特別の予算をとつたようでありますが、それはわずかに先日の決定では奈良県及び京都府だけに渡すというようなことになつております。まだ全国的になつていない。そんなことではとうてい将来の防災に対して心配が絶えないと思う。そういうようなものに対しても、もつともつと大きな予算を現状としても要求している次第であります。それは防災上の問題だけでは足りない。すなわち大きな保存管理の機構を各文化財のある場所に施さなくちやいけない、それさえもうまく行かない。たとえば法隆寺においては、今あれだけの予算をもつて大きな修理をやつていても、これから先、あの修理が終つて、寺自体が保存管理に向うのならば、一切寺がなし得るかどうか。それだけの番人を、それだけの設備をなし得るかどうか、そういうことに対して一体どうするか、私は非常に疑問を持つております。まして今度のような大きな機構になりますと、今度はその中の重要なものが、国家管理にひとしいような国宝規定をもつてやられるようでありますけれども、しかしそれにしても、そればかりではないので、やはり一般の重要文化財も、それに準じたところのそれ相当の方法を講じて行かなければならないから、それに対する予算は非常に大きなものである。  それにまた無形文化財が加わつて参ります。無形文化財はまつたく新たであります。それに対して一体どういうことをやるかというと、これを拜見すると、わずかにたとえば芸能関係のようなものを公開させるとか、多少そういうものの保存の方法を講じて行くという程度のものと思うのでありますが、しかしそんなものではとても国家に非常に意味のある世界的な文化として推漿さるべき日本の芸能が、どこまで完全に保存されるか疑問にたえない。これは要するに、そういつた芸能人をまつたく国家の方でもつてほんとうに養つてやるというくらいまで行かなければならないことだと思う。それには非常に大きな予算がいる。芸能人ばかりではありません。古文化財の美術の保存ということがうたわれておりますが、その技術に対して、たとえば私は建築家でありますから、大工の仕事なんかに非常な関心を持つのでありますが、この大工の仕事はこの戰争以来非常に手があいている。このまつたくなくなつてしまつたと思うくらいな日本古来の生粋の特殊な技能を、いかにしてこれから先保存して行くか。これは今のような方法ではいけない。昔彫刻の方に対して美術院というものがありまして、そこでもつて技術者を養成していた。そうしてフリー・ランサーのように、あつらこつち動かして行つたというような方法を、現にとつていただかなければならないように私は思うのです。そういうことを立てていただくとなれば、どうしても芸能文化並びにこういう特殊技能者に対する相当な予算を考慮せられなければならない。そういうことやら何やらいろいろなものをひつくるめて、予算は非常に厖大になりますが、はたして国家は出してくださるのかどうか。そうでなければ、結局は縮まつてしまうのであります。国宝に指定されたものの保存さえできなくなるとはまさか申しませんが、有形文化財を辛うじて保持することができて、無形文化財は単に形をうたつているだけであつて、実質的には何もできないということをおそれるのですから、その点の保証が相当必要であろう。もとより現在の国内保存法によるような、あの予算では行けないことは万々承知の上で、これから先の大きな発展を期待せられて、こういうよな案ができたと思いますが、それならそれで、今に数倍するところの、あるいは十数倍もするような予算がほしいように私は思う。  なおまた、この保存の局としては事業部があるようでありますが、それらはただ保存の事業だけでなしに、こういう文化財を活用する事業にも向つていただきたいと思うのですが、そういう点があまり広く規定してないようであります。たとえば博物館の設備があつて、出品させ公開する、あるいは芸能文化は一つの舞台で公開させるというようなことがありますが、それ以上にもつと大きな宣伝工作あるいは利用工作をせず、純粋の民間の手によらず、この委員会の手による方法もたとえばそういうものに対する写真、記録、模型、その他いろいろなものをどんどんつくる。そうしてもつと日本中に呼びかけるというくらいの大きなことを、博物館の手だけにまかせず、こつちの方で工作するという道に向う。そういう事業をこの中に加えていただきたいと思うのです。  それからあつちこつち話が飛びますが、多少疑問に思うのは、たとえば埋臓物ということが書いてあります。その埋蔵物で価値のあるものに対する線を、いかに限定するかということであります。地下から出て来た考古学的な資料というものは、もちろん史的な価値は十分ありますが、ほんのちよつとしたもの、どうにも一般の比較にならないものはどうか、こういうものに対しては相当線のはつきりしないものがあると思うのですが、そういうことも少しはつきりさせていただきたいと思います。  一番問題になりますのは、何と言いましても、課税と補助金並びに罰則の問題であろうと思うのであります。私はその点よく研究しておりませんが、課税についてはほとんど免税にひとしいような様子のようでありまして、これは昨年の案よりか、はるかによくなつておるように思います。この点欣快にたえないのでありますが、実際を言うならば、何もかも免税してもらいたいくらいに私は思います。今度新たに富裕税というものができて、その点からまたこういうものに関する課税が査定されて行くようでありますが、これも私は非常に遺憾に思つておる次第であります。そういうふうなことがあるならば、どうしてもその所有者はこういうものに指定されることを避けるほかない。指定されてかえつて負担が重くなる。そのために万一その価値の算定が加わつたということになれば、所有者は苦痛でありますから、それを辞退することにならないとも限らない、あるいは隠匿するということも起るのであります。もう少しこういつたことに対して御考慮を願いたい。イタリヤやフランスあたりでは、もつとこういうものに対しての優遇がされておるようであります。課税を軽減するという程度では、まだ将来に対して問題を残すのではないかと思います。補助金と課税の問題が、今日相当問題となるようにお話を伺いましたが、この点については今お話を伺つただけではいかぬと考えておる次第であります。  それから特に罰則については最初の原案では相当ひどい罰則があるようであります。これではとうてい所有者のみならず、管理者、ありとあらゆる関係者が、毎日びくびくしていなければならないということで非常に困ると思う。それが今日は相当軽減せられた形で出ておるようでありますが、それにしてもなお相当きついものがあるのではないかと私は思います。所有者がふだんびくびくしなけれならぬ、それを出陳された博物館の人々が毎日心配しなければならぬ。これは心配するのが当然で、そういうものを扱うには相当な注意を払つて行かなければならないことは当然でありますけれども、それにしてもそれがちよつとしくじつたために大きな罪を背負つてしまう。その罪が、しかも責任の所在がどこにどういうふうに存在するか、はつきりしないところもありますが、一人のみならずいろいろな方面にわたつて行く、法人のみならず、その直接管理者ないしはそれに関係した人にまで及ぶということになりそうに思うのです、そういうようなことがありますと非常に困る。昨年の法隆寺の火災の問題に対しても、いろいろ責任の所在が問われたのでありますが、そういうことについて、ここでさつそく規定しないでもよい、もつと大きな刑法上の問題かもしれませんが、はつきりさせておきませんと、あらゆる人が日常を非常にびくついて暮さなければならぬことになる。わけて所有者はあまりよいこともないので、毎日罪のふるえを抱くということではいけない。結局こういうものを保存させていただくということを、あまり進んでやらないということになつてしまうおそれがあるかと思います。  最後にお願いしておきたいことは、国によるところの保存法で、最初に限定したところの価値の認定によつて保存するということ以外、それに準ずるものをいかにして保存するかということに対して、新しいはつきりとした道を開いておいていただきたい。今度の保存法によりますと、その価値の認定は相当高いものがある、つまり今日国宝重要美術品とかいうことで呼ばれておりますものも、一応ははつきりした計量器にかけますと、落ちてしまうものもないとも限らない。また今までまだ指定せられないものでも、価値のあるものが相当ないとも限らない。そういうものが一体どういう方法で将来保存されて行くか。そういうものはこの法律では関係ないのだ、かつてにしたらいいのだということかもしれませんが、これはいけないことだと思うのであります。国によつて保存するのは第一級のもの、第二級のものはそれぞれの地方の団体、あるいは個人によつて必ずこれと同じような方法をもつて保存して行くように指示を与える。それでなければ、非常に大事なものが滅失してしまうおそれが非常にあるんじやないかと思うのであります。たとえば国家的な重要な文化的性格を持つてはおらない、しかしながら地方的な意味合いにおいては、非常に一つの地方文化を象徴するところの大事なものであるというようなものがたくさんあるのであります。それらをいかに指定するべくその保存会は指導して行くか。そういうものの、指導も、一つの保存事業として大事であると思います。現在としては、府県の指定にまかせるとか、あるいは団体がかつてに保存会をつくつてやらせるというようなことになつているが、そんなことでなしに、そういう地方的な末々に至るところの文化財さえも、一貫したところの目的をもつて保存させるというような方針を、保存会が与えることを一つの事業とするようにやうていただきたいと思うのであります。  なおまた保存するところの対象物の認定でありますが、国宝は重要文化財とする。それからただいまの重要美術品は、一応は重要文化財としてしばらくおくという形になつておるようでありますが、しばらくしておいて、そのうちから一つ一つ恒久的な重要文化財にあげられるかもしれませんが、それではたしてこれから先の重要文化財としての価値がきまるのかどうかということであります。今日国宝並びに重美に指定されたものを見ますと、その価値においては相当いかがわしいものも実はあるのであります。それは明治三十年国宝保有法ができて以来今日に至つておかますが、その当時の価値の認定というものが、やはりまちまちでありまして、古い指定のものは、今日の目で見ると、国宝としては少し危い、重美ぐらいだろうと思われるようなものが、堂々と国宝として通つておるというようなことが実はあると思つております。近年では相当嚴格な査定のもとに国宝の指定がされて来ておりますから、そういう憂いはないと思いますが、過去のものにおいてはそういうようなものが相当ありますので、一応もう一ぺん価値の判断をし直す必要があるのではないかというようなことが考えられて来ておる今日であります。ここにすつかり制度が改まりまして、新しい法律によつてやられるとするならば、いい機会でありますから、これを一応白紙に返しては、今度は保存にさつそくその日から困りますから、まず全般を仮指定でもしておきまして、そのうちからあらためて根本的価値の判断をしながら指定を行うというようにされた方がいいように思うのであります。現在の法案におきましては、あまりにこれが便宜的でありすぎる。もう少し本質に返つて、今のような指定をしておいて、それから落ちたからといつて、別に価値が減退したのではなく、それ以外の価値を持つのでありますから、さつき申しましたような方法をもつて、地方団体なり個人なりに保存させる方法を十分講じさせるというようにやつていただきたいと私は思うのであります。  なおいろいろこまかい、もつと重要な事実がたくさん意見として述べらるべく期待されておるようでありますが御質問があれば、またそれに応じまして御意見を申し上げます。一応私の気づきましたことを申し上げました。

長野長廣自由党

○長野委員長 御質疑がありますれば、この際お願いします。

水谷昇自由党

○水谷(昇)委員 ただいまの御意見について質問をしたいと思います。先生は天然記念物は文化財ではないということを言われたのでありますが、その文化財でないということを、もう少しはつきり御説明を願いたいと思います。  それから埋蔵物に対する件でありますが、埋蔵物の価値あるものをいかに限定するか、こういう問題について御意見をお述べになつたのでありますが、先生のお考えはどういうふうに具体的に限定をされるか、その点を御説明願いたい。

藤島亥治郎東京大学教授

○藤島参考人 最初の文化財の問題ですが、私は文化財というものは、人間が一つの理想を持つておつて、その理想の過程において天然の品物を扱つて行く、それによつて起るところの事柄が文化であり、それに伴つて産出されたものが文化財というふうに考えます。すなわち芸術とか、あるいは宗教とか、哲学とか、経済とか、そういうものはすべて一種の文化である。そうして絵画、彫刻というようなものは文化財であると私は思うのであります。天然記念物は、人為的なものでありませんで、本来存しておるものであります。天然のものであつて、それには何ら八の手が加わらなくてもそれはそれとしての形を備えております。ゆえにこれは嚴格な意味では文化財ではないと思うのであります。  それから埋蔵物につきましては、古代の、たとえば石器時代の古墳が発掘されたというようなものは、すべて埋蔵物として非常に大事なものでありますが、中にはどこかからちよつと掘り出された埋蔵物であつて、一体どこにあつたかわからない、ほんのちよつとした土器の破片であるというようなものまで一種の埋蔵物でありまして、それでも見方によつては価値のあるものもあり、また価値のないものもあるわけであります。その点をどこまでで切るかという問題であります。そのほか、どこか土管の工事かなんかやつて、何か穴蔵が出て来た。これは一応調査を要するのでありますが、それが明治時代の工作物であつたかどうか、あるいは江戸時代のある城郭築造のために関係したものであつたかという、いろいろな問題が起つて来まして、その価値の認定は相当むずかしいと思うのであります。私は考古学の專門でありませんけれども、一体それはどの程度まで価値の線を限定するのであるか、それには非常に限定しにくいものもあると思いまして申し上げる次第であります。もつともこれにつきましては、ほかの有形文化財についても、同じことが言えるかと思いますが、埋蔵物は、特にいろいろなものが地下に埋蔵されておりまして、相当問題が起りはしないかと思いまして、ちよつと申し上げた次第であります。

水谷昇自由党

○水谷(昇)委員 埋蔵物はどんなものが出て来るかわからないのでありますから、これを前もつて法文で規定をしておくということは、至難なように、私には考えられるのですが、先生のお考えはこれをやはり法文で前もつて規定をするというお考えですか、その点ひとつ御説明願いたいと思います。

藤島亥治郎東京大学教授

○藤島参考人 私は法文で規定することではないと思いますが、ただ細則のようなものができますれば、その中にある程度の規定をしていただけば便利ではないかと思います。

今野武雄日本共産党

○今野委員 今天然記念物と埋蔵物について伺つたのでありますが、その関係について、天然記念物は文化財であるかどうか、これはスケールの問題ではないかと思うのです。一つの民族の生活全体がやはりそういうものに影響して、純粋の自然といつたようなものではないのがずいぶん多いのではないかと思う。そういう点でむりに入れれば入れられないこともないと思います。こういうふうな問題について、とにかく法文の上で規定することはむずかしいかもしれませんが、私は專門的な調査のための委員会で、こういう狭い員数でこういうことができるかどうか、場合によつては学界を総動員してその価値の決定かいろいろなものがなされなければならないことが多いのではないか、こういうふうに思われるわけですが、その点いかがですか。つまり今のいろいろなすべての価値の決定というものは、これは学界総動員してやらなければできぬ。しかもそれが技術の方面とかなんとかいうものではなくて、もつと広い範囲の学界を総動員して、古代産物の範囲についてやらなければいけないというような問題があるのではないかと思われるのですが、その点はどんなふうにお考えでしようか。こういうふうに何人かの固定された委員会でできるかどうか、その点……

藤島亥治郎東京大学教授

○藤島参考人 それは私も同感でありまして、その点を実は申し述べたかつたのです。これほどまでに広く文化財の対象ができますと、これを審議する機関というものは、相当大きく広い範囲にわたらなければならない。今のお話の通り、たとえば天然記念物のうちの古代生物というようなものに対して、これは相当特殊なものになりますから常任せられた審議委員ないし委員だけでは、どうにもならないことが多いと思います。ですからそのときには、そうかと言つて審議委員をたくさん数をふやして、しよつちゆう置くわけにも行きませんでしようから、広くその認定というものを各学者の団体というようなところまで行かなければ、どうにもならないことが多いと思いますから、なるべくそういうふうな機関にやつていただきたい。しかしあまりそういうふうに融通性を持たせること以外に、やはり專門審議委員は專門審議委員としてしよつちゆうある程度のものはすべて審議し終せるだけの権威を持つていなければなりませんから、それに応ずるだけのりつぱな審議委員の組織はつくつておいていただきたいと思います。実際において仕事の運営は相当專門審議委員にあるように思うのです。委員の方はそれを大きくまとめられる役割がある。專門審議委員の活動は相当大きいのですから、その点それだけに十分な人を選ぶということ、また数をふやしておくことが要望せられるように思います。特に天然記念物のようなものが、こういうふうに入つておりますと、天然記念物の委員はやはりほかの委員とは相当学問的な分野が違うだけありまして、全然別個の建前から審議せられるということになりましよう。それでこれを全体あわせて総会において審議する以外に、全然別に審議せられることでありましようから、あまり專門が違い過ぎるために、ときにはお互いに意見の相違を来す――お互いの專門のものを保存するがための意見の相違ということがあるいは起るかもしれない。そういうことがないように、おのおのが他の專門の文化財というものを重要視されまして、大きな国家的見地から広い判断を講ぜられるだけの素質のある審議委員が要望せられるわけであります。それに先ほどの天然記念物に対する問題であります。大分皆さんを御刺戟申し上げたようで申しわけないのでありますか、私としては、実はこういうふうな保存機関をつくるくらいならば、むしろもつと広くして国立公園のようなものまで及ぼした方がよいのじやないかというのがほんとうの腹であります。專門審議委員として、天然記念物の保存委員ができますと、そういう人は結局国立公園の方の委員を相当兼ねることになる。技能の点において、行政上も便利な点が多い。むしろそういう方面にまで広く及ぼすなら及ぼす、文化財云々の問題は、学問的に嚴格に限定するならば、さつき申し上げたようなふうに思います。しかし政治的な運用機関として、広い意味において天然記念物を文化財として坂上げられないこともないじやないかとおつしやれば、それも一つのことであります。たどえば、鳥類や植物の分布というものは、人為的なものが加わつて今日の分布状態を来しておる。それに応じて繁殖地あるいは群棲地の決定をするというようなことになればやはり文化財ではないか、そういうことになればそれは言えなくもない。あえて私は固執するわけではない、一応意見として申し上げたわけであります。

長野長廣自由党

○長野委員長 別にありませんか――それでは申し添えますが、すでに皆さは御承知と思いますが、ただいまの藤島亥治郎君は東大の教授で、建築の学問の專門家であります。このたびは国宝建造物関係について御意見の御開陳を願つた次第であります。実は辻善之助君がお約束になつておりましたところ、急に昨日になつて御用務のために藤島君におかわり願つたわけでありまして、十分なる連絡がその間に欠けたことを、私の側からごあいさつ申し上げます。

今野武雄日本共産党

○今野委員 もう一つ、先ほど法隆寺の修理ができても、その後の管理の措置がむずかしいであろうというお話でありました。鎌倉あたりもそうですし、日光の神橋などもそうですか、せつかくやつてもすぐだめになつてしまう。たびたび繰返さなければならない。こういうことが従来あるわけであります。こういう昔のいろいろな様式を保存するのに、一体どういう方式が一番よいか。ものによつては、現地に置かなければならないものもあるでしよう。しかし、ものによつてはその方式をこまかく記録し、あるいは相当大きな模型をつくつてどこかの博物館なり何なりに保存する。ことに木造ということを考えた場合そういうことが望ましいものもあるのじやないか。こういうふうに考えるのでありますが、その点いかがでしようか。

藤島亥治郎東京大学教授

○藤島参考人 これは建造物の将来の保存に関する大きな問題で、私も非常にこれに対しては関心を持つております。ただいまの今野さんの御意見、私も非常に心配しておることでありますから、同感なのでありますが、ただいまのお話のように、たとえば日光の東照宮のようなもののりつぱな模型をつくるようにとか、図面をつくるようにとかいうお話でありますが、それはもちろんやらなければいけない、当然のことです。現在、今までの保存事業として文部省がいろいろやつておられましたが、そこまでなかなか行きわたつていなかつたということは遺憾に思つております。過去においては、明治、大正のころまでは、ほとんど修理保存をすれば、保存しただけであつて、あとは保存の報告書さえはつきりできなかつた。それはもうそこに残つておるといつた程度で、公開も何もされておりませんから、非常に遺憾に思つておつた。その後報告書を印刷して出すようになりました。これは非常な進歩でありまして、保存修理をするならば、必ず報告書を出すべきである。これから先もそうすべきであります。同時に模型のようなものもつくるべきである。法隆寺その他奈良、京都あたりの特殊の工事に関しては、模型をつくることも実際やつております。それから台帳の作成ですが、実測図並びに諸記録、ありとあらゆるものの文献の完備です。そういうような台帳の作成も、これは指定と同時に必ずやるべきものだと思いますが、手がないせいでしようか、あまり十分やられておりませんのは遺憾に思う次第であります。ですから、ただ保存しろということでなしに、そういつた方面に十分の力を注いでおきますれば、図面なり形に相当木造建造物の姿が残つて行くことは確かですけれども、それで保存されたということは言えないと思うのです。やはりそれはほんの模型にすぎませんで、物の実体ではありません。だから、本物がなくなつたからといつて、本物にかわつて国宝になるわけのものではない。やはり実体を完全に保存することこそ大事であります。これに対しては相当な管理機構と費用とを要するのであります。それらに対しては国家は多忙でもつて何ら措置が講ぜられておりませんようで、実際法隆寺などは御承知と思いますが、年々三千円の予算が支出せられておつても、それが補助費でなく、全体が三千万円で、寺の負担はわずか一万円であります。そういうような状態でいるのですから、将来が非常に心配されるのです。片つぱしからこわれて行くか、あるいは宝物が盗まれるようなことがあるのじやないかということは、十分心配しておかなければならぬと私は思う。それを、そうかといつて、ほうつておくわけに行かないのだから、国家でもつて相当その具体的な措置を講じてやることが必要である。また具体的な措置のためには、どうしても相当予算も必要である。つまりそれに常時の補助費が必要であるように考えられるのです。それからそれと税金の問題とがからまつて来ると思います。それは法隆寺のみならず、いろいろなものに対して、あるいは所有者に対してそういうことが言えると思います。非常に心配のことでありますから、それに関して十分法律などにもそれこそはつきりと考えておいていただきたいと思うのであります。

今野武雄日本共産党

○今野委員 今のところ、やはり法隆寺にせよ、東大寺にせよ、中尊寺にせよ、それぞれ相当、範囲の広い狹いはありますけれども、その当時の国力を傾けると言つては何ですけれども、それぞれの地方の力を最大限に使つてやつたものだと思うのです。そういうもので今日相当年代も経て、みなぶつこわれてどうにもならなくなつて来ているものがたくさんある。こういうものを今修理し保存措置を講ずることになると、これはいわば幾時代にもわたり非常に費用をかけてやつたものをやるということになるのですから、これはたいへんな仕事になると思うのです。そこで事実上不可能というふうなものもたくさんあるじやないか。現にもうこわれて、修理するというよりは、新しくつくるといつたくらいのものもあるじやないかと思われるのでありますが、そういうものを一々ちやんと直してやることになると、言うべくして実際は行われないことになるじやないかと私ども心配いたしているわけでありますけれども、その点、そういうものをいかにして後に伝えるか、建築様式やいろいろ保存している芸術をいかにして伝えるか。この点事実できないとすればいかがお考えでじようか。

藤島亥治郎東京大学教授

○藤島参考人 事実できないなりにほうつてしまうほかはないようなところまでに至らしめないように、やはり努力しなければならないと思います。現にそれほどにひどくほうつてしまうまでに、国家はくたびれ切つてはいないと思う。実際今日は、国家としては一番惡いときですが、御承知でしようが、ただいま日本の国宝の中の三大破損と言われております京都、賀茂の燈明守本堂、岡山県長福寺の三重塔、それから山口市の一仏殿と三つあるのでありますが、まつたく風雨にさらされまして、破れがさ同様であります。もうこわれてしまうだろうと盛んに新聞に宣伝されたものが、今日三つのうち二つは保存修理の途中にあります。十分にりつぱなものができるのです。新しくなつてしまうものでございませんし、やはり昔の形を保存し得るのであります。木造建築だからといつても、焼けてしまつたら別でありますけれども、雨風にさらされている程度のものは案外に形を残しておりまして、指定解除をしてしまうというほどひどいものはないのです。だから、なるべくそこまでに行かないうらに、保存すべき修理の方法を講ずべきでしようけれども、相当ひどくなつても、その際やつてもそう遅くない。何もかもなくなつてしまつたものを、どう保面するかということを今おつしやるけれども、そこまで考える必要はないように思います。日光のものでも、ずいぶんこわれているでしようけれども、どうにもしようがないというものは一つもありません。神橋が少しぐらい腐つても、それは将来りつぱに神橋として保存できるのですから、その点は御心配いらないのです。そこまでさせるのでは、国宝保存の責を負う国家じやないのです。そしてまたそんなにまでさせられることはない。また将来の管理機構に対して、国家はかなりくたびれ切つているし、最大限を発揮しているのですから、これ以上させろといつてもむりだろうとおつしやいますけれども、何もすべてを国家がやる必要はありません。そこで地方団体なり、公共団体なりが民主的に、それこそ文化国家の認識をもつて活動されたならば、そんなことは、わけなくできてしまう。そういうふうに奨励する、一般の人々を動かすという仕事は、やはり保存会はやつていただきたいということを、最初事業部の仕事として、申し上げたわけであります。もつと官民共同でやるように向けさせたいというのが、私の本旨であります。

長野長廣自由党

○長野委員長 次に参考人長瀧武者にお願いします。長瀧武君は、一般有識者の中から特にお願いを申した次第でありまして、国宝、宝物関係の御意見を開陳していただきたいと存じます。なお同君は毎日新聞の論説記者、顧問、あるいは徳富蘇峰先生の最高祕書等を勤められた方でありまして、特に文化全般及びただいま申し上げた問題について、造詣の深い方であります。どうか長瀧君にお願いいたします。

長瀧武

○長瀧参考人 私は参考人として呼ばれました長瀧武であります。貴重な時間も大分切迫いたしておりますから、簡潔要領よく、十分内外で申し上げてみたいと存じます。  実は昨日文化財保護法案をちようだいいたしまして、全文百三十條を三回ほど通読いたしまして、私の頭の中には全文暗記程度にこれが入りましたから、大体これに対する忌憚ない批判を申し上げてみたいと存じます。  この百三十條の結論といたしまして、理由を拜見いたしますと、文化財の保存に関する現下の憂うべき状況にかんがみ、政府及び国民一致の努力により、その保護を確実にし、もつて国民文化の保持に遺憾なきを期するため、文化財の保存に関する行政機構の強化並びに法規の整備をはかる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。こうお述べになつております。  そこで申し上げますが、いやしくも文化財を保存するにあたつて、政府の力のみをもつて完璧を期することは、とうてい不可能であります。従つて国民の皆様におかれましても、この点にかんがみるところありまして、国民一致という点にお考えをいたされたものと拜見いたします。そこで私は忌憚なく申し上げておしかりを受けるかもしれませんけれども、国宝の保存法は古社寺保存法というのが明治三十年六月五日に交付に相なつております。正直に申し上げますならば、明治二十八年の秋のごろでありましたか、京都智恩院の管長を勧めました、山下現有老師が松方正義公にお目にかかつて、どうしても日本のいわゆる古代文化を国家の力によつて保存しなければならないという進言がありまして、次いで村上專情氏あるいは姉崎止治氏、穗積陳重氏、これに奈良法隆寺の管長の佐伯定胤師、これらが参加されましてどうしてもこれは法律化しなければならぬということで漸次これが具体化しまして国宝保存法となつておるのでありますが、爾来中開は三十一回も更迭いたして今日になりまして、そのまま法規は保存されておる。私は時代は進歩いたしておるのに、この保存法が今日まで改正されずにおるということは、文部関係の官僚がこの保存に対し、非常に御熱心だということを一面には物語りますれども、一面から申しますと、この法律に対する忠実性を欠いたものと断ぜざるを得ないと思います。  そこで私は思いまするに、まず第一條に、文化財を保存し、これを活用する、そしてもつて国民文化の向上に資し、さらに進んでは世界の文化に貢献する、これかこの法案の目的であろうかと思います。次に第二條においてこの特徴を表わしておりますが、いわゆる有形の文化財としては、建造物、彫刻、絵画、工芸品あるいは書跡、典籍、筆跡あるいは民俗資料、古文書などをあげております。また無形の方におきましては、その第二号におきまして、いわゆる演劇、音楽、工芸技術その他と、こうなつておりますが、私はここで一言申し上げたいのは、音楽ということをお考えになられる以上は、声楽――声楽というものは非常に貴重なものであります。人間が何十年となく口にして洗練されたいわゆる声楽的芸術、これはどこの国にもあまり多くいにしえから残つておりませんけれども、今後のいわゆる文化国家といたしては、やはり人間の洗練された声楽というものを残さなければ相ならぬと思います。必ずしも声楽のみに限りません、正直に申しまするならば、あるいは日本の文化の発達の過程におきましても、明治大帝は非常にお偉い方といつても、その人の声を今日知つておるものはありません。やはりこういうものも、あの当時蓄音器があつたのでありますから、たとい蓄音器といえども、その声を残しておきさえすれば、われわれがある意味においてこの無形のいわる文化財と言つては少し広過ぎるかもしれませんが、その点まで考えを及ぼす必要があろうかと思います。  そこで一体満五十三年の間に、日本の指定された国宝は六千九百三十七点になつております。また一方重要美術品の方におきましては、私の記憶するところでは、つい昨今、あるいは昨日までと申してもよいと思いますが、いわゆる建造物が三百八十三点、それから絵画が千三百九十四点彫刻が五百七十三点、工芸が千九百五点、古文書が二千八百九十六点、その他千二百十八点、合計八千三百六十九点、従つて国宝の六千九百三十七点と合せまして一万五千三百六点だけが今日いわゆる国宝と重要美術品として日本にあるごとになつております。しかしなから大震災あり、次いで戰災があつて、これらの国宝が今日はたして一万五千三百六点、現実に保存されているやいなやは、文部省におきましても相当御心配なされて、多分昨年の秋ごろから熱心なる御調査をされておるようでありますが、いまだもつてその調査は完了していないように私は拜察いたしております。  そこで私は思いまするに、この法案に対しまして、予算の裏づけはどうなつておるか。ある方面の意見を聞きますと、官庁が法律案を出しさえすれば、必ず予算の裏づけがある、議員提出の法律案には、その点が欠けておるという点がないでもありません。おそらく賢明なる議員さんのことでありまするから、あえてわれわれが心配する必要はないと思います。従来、この国宝保存と重要美術品と史跡名勝、この三つのいわゆる委員会を包含したところの有力な委員会ができるように拜見いたしておりまするから、やはり予算の点については心配はなかろうと思いますけれども、せつかく法案は通過したけれども、予算がないということでは、あるいはまたこの法案の実施の上に影響を来さぬとも限りませんからその点も老婆心ながら一言申し添えた次第であります。  なお百三十條と百三十一條に非課税の問題がありますが、これはあちらさんにおきましても、御意見があるように漏れ承つておりますが、私はこういう問題は大した大きな問題ではない。考えようによつてはすこぶる大きい問題ですけれども、こういう世の中におきましては、まずこの法案を通過させ、通過させておいて別途のことを考える。別途を考えるといたしまするならばいわゆる文化財基金法案というようなものを別に考えまして、そうしてこの非課税問題が解決できるのじやないかと思つております。いろいろつかえるところがあると、どうしてもこの法案の審議進行の上に、あるいはぐあいが惡いのではないかと思いまするによつて、なるべく、つかえるところはすみやかにその方を避けて、そして第二段の方策によるということがよいのではないかと、私は率直に考える次第であります。  なお、第三十條から第五十三條までは、文化財の所有者に対する権限が少し強すぎるような感じがいたすのであります。しかしあえてこれに対してどうこうと申すわけではありません。  それから第百六條から百十二條まで罰則がありますが、先ほど藤島先生は、こんな重い罰則ではというお話がありましたが、私の見るところでは、こんな軽い罰則では問題にならぬと思う。今日五年以上の禁錮もしくは懲役、十万円以下の罰金では国宝的もしくは重要美術品的のものを国外に流すということを、四十四條において禁止はいたしておりますけれども、今日保存に対する観念よりも、おのれのふところを暖めようという方が決して世の中に少くありません。従つてこんな罰則などは問題にしておらぬ。何も十万円くらいはお茶の子さいさい、こんなことなら国外に巧みに流そうじやないかということであります。いやしくも法律によつて押えようとする場合には、この程度の罰則ではとうていいかぬと私は思う。しかしながら日本の法律の習慣がありまして、この辺ならたいへん重かろうというのが、法務庁あたりの見解ではなかろうかと思いますけれども、およそ法律の力によつて海外流出を防止する、あるいはその他の遵法精神を遂行させようということは、なかなか困難ではなかろうかと思う。むしろこういう文化財をお互いが喜んで探し出す、お互いがこれを国家に押し出すという、いわゆる国民一致の協力、こういう点がこの法文の中には現われておりません。国民として、この裏面を考えれば、その点は納得ができるのでありますけれども、ここに第四條に特にこういうことが規定してあります。一般国民は、政府及び地方公共団体がこの法律の目的を達成するために行う措置に対しては協力しなければならない。こういう文章がうたつてありますが、この文章くらいではなかなか国民の協力を仰げるものではありません。これは少し国民を甘く見ておる傾きがある。これをうたわなければ、なお惡いのでありますけれども、ほんとうに国宝とか重要美術品は、日本の文化を高めるゆえんだということを、国民全体にわたつて啓蒙宣伝するにあらずんば、第四條の規定くらいで、なかなか協力を仰げるとは、私は考えられないのであります。この点については各官庁においての国民の協力態勢を確立するための啓蒙宣伝というものは、きわめて貧弱である。この点についても民主国家としての今後のあり方においては、強くすべて国民の協力態勢を確立するということでおいでにならなければ、こうしたりつぱな法案ができましても、お互いが隠して、これを金にしようと考えるのは、自然の人情といいますか、こういうことに流れやすいのでありますから、どうかこの点については、この法文には記載してないけれども、立案者のお気持、あるいは委員会が組織されました場合には委員の選考にあたつても、その点に力をいたしていただきたいと思う。これはよけいなことを申し上げるようで、はなはだ申訳ありませんけれども、実は昨年七月一日に中央更生保護委員会というのが法務府で通過いたしまして、これと同じような組織のものが前にできております。はたして三人の委員ができまして、一年の間に、どれだけの成績をあげたかということは、私が申し上げぬでもおわかりになつていると思いますが、下の事務局長に使われて、委員長が浮き上つてしまう。要するに委員そのものの選考を誤つておるといわなければならぬ。従つてこういう委員の選考には、單にこの人はどういう研究をしたとか、あるいはこういう権威者である、そういうことに幻惑されず、ほんとうに実力のある委員の御選考を国会においてお願いいたしたい。  たとえば同じ文化財の中でも、私はここで露骨に申し上げて失礼かもしれませんけれども、明治五年以来文部大臣が今日まで七十余代かわつておる。七十余代の文部大臣が今日まで文部行政のかわるたびごとに、いろいろな訓辞をいたしております。その訓辞というものは、文部省には一つもありません。私はこれなどは一つの価値の高い文献ではなかろうかと思います。この保存が全然ない。これは自慢ではありません、二十七年間かかつて收集した。西園寺、長谷場純孝、奥田義人、濱尾新、ああいう方々が生きておる間に拜見いたしたり、写したりしておる。そうして私がこれを整えまして、明治五年からの文部大臣の訓辞、通牒一切というものは、私の手元にあつて、遺憾ながら文部省にはそういう文書がない。明治十三年以来学校騷動が皆様御承知の通りあつた。これは恥になるから学校でみな焼却してしまつておる。これに対しても明治、大正、昭和にわたる全国の学校騷動、これに対して文献というものが全然ない。私がやはり二十七、八年かかつてこの文献を蒐集したから今日ある。  それからもう一つ、国民道徳を作興するということを申しますけれども、親子関係――親が子を育て、子が親に孝を尽す、こういうこともやはり文献ではなかろうかと思う。親孝行の文献は今から約七十年前明治維新前後から約六百五十册の文献がある。失礼だがどこの図書館に行つても親孝行の本、親の子に対する文献というものはない。文部省の明治維新前後のいわゆる国民教科書、こういうものも、戦前には文部省にあつたそうだが、これもない。これは古文書として取扱つてよいのじやないかと思う。これも私自身が親孝行の本、あるいはそういうものを全部牧集いたしまして、自分が持つております。国家が希望するならば、これを提示するくらいの考えを持つておりますけれども、とにかく美術に対してもギリシヤ、インド、あるいはトルコ、イタリヤ、フランスにおけるこういつた国宝的あるいは重要美術品についても、私も三十何年間いろいろ研究をいたしまして、今日に至つております。これに対してもいろいろと材料を持つておるのでありますが、何分にも時間がございません。いろいろ申し上げてお耳を汚すこともどうかと思いますので、差控えておきますけれども、この法案に対して、私は満腔の賛成を表するものであります。どうかして今国会において通過するように――通過しさえすれば、あとでこの法案はいかようにでも修正ができます。まずもつて文化国家建設の途上における日本のただいまの現状においては、文化財保護法案だけは、ぜひとも通過せられんこをと衷心より念願する次第であります。  たいへん長いことを申し上げました。

水谷昇自由党

○水谷(昇)委員 いろいろ御高見を拜聴いたしましたが、第百三十條と第百三十一條、課税の問題でありますが、ただいま長瀧さんのおつしやつたように、この免税の問題が、非常に現在の状況では、むずかしい状況にあるのでありますが、ただいま免税のかわりに、別に文化財基金法案といつたようなものを第二段につくつたらどうか。こういう御意見でありましたが、私は非常に関心を深くしておるのであります。長瀧さんの文化財基金法案という構想はどんなものでありますか。御説明を願いたいと思います。

長瀧武

○長瀧参考人 條文的には考えておりませんけれども、富裕税法案において百万円までは免税することになつております。これが一部は緩和されることと存じますけれども、個人的所有の国宝あるいは重要美術品につきましては、その価値というものは実際問題としてなかなか定めにくい。愛好者の気分ごとにかわる場合が、ものによつてはありますから、どの点まで免税にしろとか、どの点まではどういうようにしろというようなことを言わずに、国宝もしくは重要美術品に対しては、すべて免税という考えのもとに、国家がこれに助成する。補助さえすれば、結局免税という形になるのでありますから、補助の面における法律をつくつたらいかがと思います。

水谷昇自由党

○水谷(昇)委員 私ども、免税の問題は、シヤウプ勧告等によつて非常にむずかしい状況でありますので、補助金の問題について考えておるのでありますが、ただいま長瀧さんは文化財基金法案とかおつしやつたので、ちよつとおもしろいと思うのですが、その御構想はどういうものでありますか、それを御説明願いたいのであります。

長瀧武

○長瀧参考人 具体的にはまだ構想は練つておりませんが、これは国家ばかりでなしに地方公共団体においても、国宝もしくは重要美術品を保存する意味の寄付行為をする。あるいはまた国家が特にその団体に対して助成金をやるという考え方であります。それはなぜかというと、たとえば国宝になつたよろいが、年とともにだんだんいたんでしまう。国宝ですから、保存しなければならぬけれども、よろいを修理する職工がいない。そこでその職工までも養成しなければならぬということになると、これはなかなか深みのある問題で、容易でない。あるいは演劇の職工の学校をつくれとか、声楽なら声楽を保存するための職工を養成するということになると、相当金がいりますので、寄付行為の内容を持つた考え方になるのであります。

今野武雄日本共産党

○今野委員 お二人方とも、予算がなければ、どうもぐあいが惡いというお話であつたのでありますが、実際私どももそうだと思つております。そこで長瀧さんから、たいへん御造詣の深いお話を伺つたのですが、大体今までの予算では足りないということだろうと思います。けれども、一体どのくらいの金額をこの方面に向けたらいいかという、およその基準がおわかりでしようか。もしありましたら、お伺いいたします。

長瀧武

○長瀧参考人 たいへんかつてがましいことを申し上げますが、昨年は国宝の助成が一億円、今年は四億円要求して、多分二億円程度おとりになつたと思いますが、大体文部省の構想が小さい。敗戦日本の文化国家建設の途上における予算としてはほんとに小さい。私の大体の構想は少くとも十八億ばかりの金がいる建前になつている。それをわずか四億出して二億だけ通つて喜んでいる。喜んでいると言うては失礼ですが、まあそんなような状態じやないかと思います。こまかい問題は、時間がありませんから、あとで申し上げます。

今野武雄日本共産党

○今野委員 もう一つ伺いたいのであります。海外流出という問題は、考えようによつては非常に重大な問題であろうと思うのですが、過去及び現状で、どの程度の海外流出があるものか、骨董屋さんなんかに聞くと、相当ありそうなことを言うのですが、実際問題としては、どういうことかわからないでしようが、およそはつきりしているものがおわかりであれば、伺いたいと思います。

長瀧武

○長瀧参考人 あまり正直に申し上げにくいのでありますが、英国の香港の戦略参謀長であつた某氏は、私と親しいのでありますが、この人は日本にないような刀のつばを三百以上集めて持つておられた。そのほかイギリスの博物館、フランスのルーヴル博物館、あるいはアメリカのある図書館の参考館に陳列してあるのでありますが、この点だけでも、日本の重要美術品と言われる程度のものの流出が、ほとんど一千点以上越えているということを、ある人から聞かされております。今日文部省でも、先ほど申し上げた一万五千三百六点の重要美術品のうちのどれだけがあるか、二箇年かかつてまだ調査がつかない。これは調査の仕方が下手だから調査がつかない。私をして言わしむれば、調査のしようによつては半年でも調査ができる。文部省を攻撃するわけではないのでありますが、調査の仕方がわるければだめなのであります。これは別の問題でありますが、ややともすれば流出する憂いがないとは言えないのであります。四十三條でいろいろ言うただけではむずかしいと思います。

長野長廣自由党

○長野委員長 参考人の御両氏は、公務並びに御用務多端の際にかかわりませず、曲げて御出席をいただきまして、まことに有益なる御意見開陳されましたことは感謝にたえません。つつしんで御礼を申し上げます。なおせつかくのこの機会ではありましたが、何分議会の関係上、急速にお願い申し上げまして、十分なる準備の時間も差し上げ申しませず、かえつて失礼をいたしました段は、委員長といたしまして、衷心おわび申し上げる次第であります。  なおいま一人渡邊光枝君がありますが、同君は、ごく最近に文化財視察のため洋行することになりまして、許可を受けております。もし出発までに適当の時間がありましたならば、わが国の国内における美術工芸品その他各般の関係の具体的な問題について、意見を開陳していただきたいと存じております。  本日は、これをもつて散会いたします。     午後零時二十九分散会

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