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7回国会衆議院1950/02/10

通商産業委員会公聴会 第2号

発言数
17
登壇者
10
会派数
1
開催日
1950/02/10

会議録

神田博民主自由党

○神田委員長代理 これより昨日に引続きまして、通商産業委員会の公聽会を開会いたします。  本日は学識経験者及び一般の公述人八名の方々より、御意見を承ることといたします。なお議事の進め方は前回の通りといたしますが、本日は公述人全部の御意見の発表の終りました後、委員諸君の公述人に対する質疑をお許しいたします。それではまず採鉱地質関係の学識経験者、東京大学名誉教授佐野秀之助君より御発言を願います。

佐野秀之助東京大学名譽教授

○佐野公述人 私東京大学名誉教授佐野秀之助でございます。私は採鉱地質関係者として、公述人の一人に指名されておるのでありますから、特別鉱害復旧臨時措置法案について、採掘技術に関係のある点だけについて意見を申し述べます。本法案において問題になりまする採掘技術上の主要な点は、特別鉱害の認定という事項であると考えます。地下の石炭層を採掘いたしますれば、その影響が地表に及びます。採掘する炭層が非常に深い場合には、何ら地表に影響を及ぼさないということを昔は考えたのでありますが、今日までの経験によりますると地表に何ら影響を及ぼさないという深さは発見されておりませず、たとい深くとも採掘の区域が十分に広くなりますれば、地表に影響が及ぶのであります。地表への影響は、單に地表が沈下するというだけでなく、一部にはある時期にかえつて地表が隆起する、上に持ち上るという現象も現われまするし、また部分によつては水平の移動も起るのであります。この地表への影響は、早い場合は採掘後一、二箇月で現われて参りますし、遅い場合は数年にわたつて影響が現われて参ります。地表の影響を受ける範囲は、採掘区域よりも広いのが常であります。この地表への影響を防止いたしますために、従来いろいろの方法が講ぜられております。すなわち炭層の一部を採掘しないで、いわゆる炭柱として永久に残して、掘跡の天井を支えしめるとか、掘跡の全部ないし一部を土砂廃石をもつて充愼いたしますとか、数枚の炭層が重なつておる場合には、炭層の採掘順序を調整するというような方法によつて、採掘の影響が地表に及ぶのを防ぐということに、手段を盡すのでありますが、影響を完全に防止するということは、遺憾ながらほとんど成功しないのでありまして、ようやく地表に及ぶ影響の程度をできるだけ減少する、またその影響ができるだけ静かに来るようにして、地上の損害をなるべく軽減するに努めるという次第であります。わが国の炭鉱におきましては外国とはかわりまして、水田が発達いたしておりまして、地表の変動に非常に敏感であります。そうして坑内は比較的に浅く、採掘上十分の手段を講じましても、地表の被害を免れがたいのに、この戰時中の強行出炭によりまして、地表被害防止の手段が盡されなかつたために、はなはだしい鉱害が起つておる次第で、どうしても捨て置けない程度の被害であります。  本法案においては、この鉱害の中で戰時強行出炭によるものだけを、特別鉱害として復旧しようというのでありますが、はたして特別鉱害を平常の採掘によるもの、いわゆる一般鉱害と分離して認定することができるかどうかということが、問題となつて参ります。 まず一つの区域の炭層採掘が地表へどの範囲にわたつて、どの程度の影響を及ぼすかという地表沈下理論の研究は、海外では古くから行われておりまして、すでに五十年以前に一応の基礎理論が定まり、爾来研究が重ねられ、実例についての調査資料も豊富になつて、今日一般に認められる沈下理論が編み上げられたのであります。もちろん学術理論の常として日進月歩で、いろいろの修正が出ておりますが、ともかく現階段において一般に認められる地表沈下理論が編み上げられております。  さてこの理論の応用によつて、はたして相当複雑になつておる特別鉱害と、一般鉱害とを区別して認定することができるかどうかということになりますと、これは決して容易であるとは申されません。技術者のなかにも困難だとして心配しておる人もあるようであります。しかしながらこれを分析して考えてみますと、採炭事情が簡單であつて、かつ採掘を行つた時期、及び鉱害の程度についての経過がよく判明しております結果、沈下理論によつて明瞭に特別鉱害たることを、認め得る場合がある程度あるでありましよう。残りのものは、程度はいろいろでありますが、採炭事情も複雑であり、また採掘及び鉱害の経過資料も不十分であつて、不明瞭なものであります。その前者すなわち明瞭なものについては問題はありません。その後者すなわち不明瞭なものとしては、たとえば平常に採掘された炭層と、強行採掘された炭層とが、相重なつて累層をなす場合、相隣れる数鉱区からの影響を受けます鉱害、採掘に関係のない地域に地下水面の変化による乾燥の結果によつて起る地表沈下等、採掘情事が複雑な場合に、多く不明瞭になるのでありますが、これらの場合といえども、普通には原則的の解釈はつくのでありますから、特別鉱害の範囲はプロバビリティーによる査定の、近似的数値をとることにすれば、決定も可能であります。そして普通の場合はこれで不合理なく、一通り科学性を與え得ると考えます。しかしこれらの中には採炭事情が複雑しており、採掘及び鉱害の資料も著しく不足しておつて、何としても合理的な数値を定めかねるという場合もあるかも知れません。しかしたといこういう場合があつても、その数はごくわずかなものであると考えられます。こういうものを何とか即決しなければならぬとすれば、科学性は乏しいが、公正な便宜的方法をとることで解決するということになるかと考えます。これらの判断は、個人的では困難であるが、権威ある專門家を集めた審議会で、十分に検討して決定することにすれば、特別鉱害の認定において、本法案の実行にさしつかえない程度の公正な結果は得られると考えます。従つて申すまでもないことでありますが、審議会の構成には十分の意を用いられることを、希望いたします。その他には技術上特に問題になる点はないかと思われます。  以上、要するに本法案が実施されると仮定した場合、その技術面においては、別にさしつかえは起さないでやつて行けるという意見を、申し述べた次第であります。

神田博民主自由党

○神田委員長代理 次は同じく九州大学工学部教授山田穰君。

山田穰九州大学工学部教授

○山田公述人 私は九州大学にありまして採鉱学を講じておるものでございます。この公聽会に同じ專門で、佐野先生と私とが選ばれておるのでありますけれども、佐野先生は私と比べますと、はるかに御研究が深くて、私の師事しておる先生でございまして、その佐野先生が先にお立ちになりまして、いろいろ御研究のことをお話になりますと、もはや私といたしましても採鉱技術という点から申し上げる点は、さほどないかと思いますけれども、少しでも御参考になればと思いまして、ごく短時間御説明申し上げます。  土地の底の炭層を掘りますと、そこにがらん洞ができます。がらん洞ができますと、重力の関係もありまして、その上の岩石が砕けて、がらん洞の上に詰まつて来ます。その上にさらにすき間ができますから、だんだん上の岩石がくずれて、最後には地表まで届く。そこで初めてわれわれが肉眼で、陷没現象——われわれの学問の方では、鉱害と言わないで、陷没現象と申しております。地表陷落、マイニング・サブシデンス、その岩石が割れるのが、だんだん上に進んで参りまして、さうして陷没現象が始まりまして、陷没現象が一応終つたと思われるときに、採掘跡の上の岩石の割れ目の行つた所と、割れ目の行かない所の境の面ができるわけです。これを破断面と言つておるのでありますが、これが採掘面の直角の上の方に進むのではなく、上の方に開いて参りますから、地表陷落の区域は採掘面よりは、はるかに広いものになります。ドイツのルール炭田のドルトムント鉱山局というようなところになりますと、ちやんと研究ができておりまして、この地方では下を掘ると何度の角度で、先ほど申した破断面が地表に達するから、それで竪抗を掘つたならばこれだけの区域は採掘をしてはいかぬ、竪抗を保護しろ、レールの下はこれだけの区域は残せという規則がはつきりとできておりますけれども、わが国では地質構造の複雑であるという点もありまして、研究も進んでおりませんために、簡單な法則というものはできておりませんけれども、大体破断面がこの地方ならば、たとえば六十五度にとれば大丈夫であるとか、あるいは六十度にとれば大丈夫であるということが、経験によつてわかつておりますので、この特別鉱害の区域判定にも大体の見当はつき得るのであります。それならば地表陷落つまり鉱害の程度でありますけれども、これはいろいろのファクターが入つて参りまして、これももちろん一概には申せませんけれども、炭層は深ければ深いほど陷没地域は広がりますけれども、陷落程度は少いわけであります。しかも浅いところですと陷没の現象が急激に起りまして、家が急にひつくりかえつたりなどいたしますけれども、深くなつて来ますと、その陷没現象つまり地表の移動というものが、非常にゆるやかに行われますので、地表の建物などに及ぼす影響というものが、非常にゆるやかになつて参ります。わが国で一体今どれくらい深いところを掘つておるかと申しますと、まず深いところで二千三、四百尺というところが深いのであります。もう二、三年しますと二千五、六百尺というところができます。この深さになつて来ますと、先ほど佐野先生のおつしやいましたように地表陷落は必ず起きるのでありますけれども、その程度は非常に少くなります。それから範囲はうんと広がつて来ます。先般ある事情によりまして、一体どの程度に地表が陷落するものであるかということを、ひとつ正確に測量してみようというので、五万分の一の地図に書いてあります。ベンチ・マークというものがありますが、高さ、距離の基準点であります。これは御影石を埋めてあるのでありますが、炭鉱の上にあるベンチ・マークと炭鉱とは全然無関係であつて、絶対に移動はないと思われるベンチ・マークとの相対的の位置関係を測定してみたのであります。非常に精密な機械で精密な方法でやりました結果、動いてはならない炭鉱の上のベンチ・マークが八十センチ下つておるのであります。そのところは深さが八百尺、厚さ十二尺掘つておりますが、これは三十年ほど前に掘つたのでありますから、おそらく残柱式という方法で掘りまして、石炭が相当残つておつた関係もありましようが、十二尺を掘つて八十センチ下つておる。これは下り方がわれわれの常識から言いますと少いのでありますけれども、そういうデーターが出ております。これは昨年の十一月のことであります。それで一番地表に近いところを掘れば、ほとんど百パーセント地表が下ることになりますけれども、だんだん深くなつて行くに従いまして、範囲はふえるけれども、陷没の度合いというものはだんだん減つて来る、こういうことがはつきりわかつたわけであります。私は九州におります関係上、九州は北海道、常盤と違いまして、おかしい言いまわしになりますけれども、鉱害現象が起きるのに都合のいい條件を備えておるのであります。上には河もありますし、密集の家屋も多いし、水田がまた非常に、たくさんあります。鉱害問題が起きまして、訴訟問題が起きるたびに私は証人、鑑定人にひつぱり出されまして、今まで二十件くらい関係いたして、実にこれに悩まされておるのでありますが、これは私の勉強にもなりますので、できるだけはお手伝いをいたしておりますが、大体において現代の陷没理論なり、これまでに提出されている事実の記録から判断しますと、おおむね正当な判断がつくのであります。先ほど陷没面積の広さということを申し上げましたけれども、地表に第四紀層と申しまして、非常に水を含んだ泥土層がありますと、採掘したあとから二里も三里も離れたところにいわゆる脱水陷没というものが起ります。それは石炭を掘りましたあとへ泥土層の水が流れて行つて、そこがかわいて水田が下つてしまうという事実が、調査の結果二、三出ております。  さて先ほど佐野先生も御公述になりましたが、特別鉱害区域と一般鉱害区域の認定は、もう私がさらに言葉を加える必要はないのでありますが、私が考えまするに、特別鉱害の区域と一般鉱害の区域認定が問題になるのは、つまり特別鉱害に便乗して、一般鉱害の復旧をやろうというおそれがあるからであろうと考えるのであります。しかしこの点につきましては、昭和二十三年でございましたが、十月ごろ各省から調査員が九州にお見えになりまして、復旧費として約百億円近い金額を計上されまして、それが現在では一箇年十億の五箇年継続で五十億ということになつておりますから、約半分に圧縮されておりますので、嚴密に言いますと特別鉱害の、ある部分を復旧する経費であるとも見られるわけでありまして、いわんや一般鉱害にこれが食い込むというようなことは、とうてい考えられないのでありまして、この点は心配することはいらないかと存じます。  最後にこの法案の成否の問題でありますが、これは私の担当部門を逸脱するおそれがありますけれども、特別鉱害を一日もほつておいてはならぬということに対しましては、どの公述人の方も御異存はないようです。日本国民としてあの鉱害をほつておくことに、賛成なさる方はないと思います。そうしますと、残る問題はこれかいかにしてやるかという手だての問題だけが残つておるのでありまして、これは委員の方々におかれまして、愼重に御審議くだされば、必ず解決すべき性質のものであると考えております。私といたしましても九州のあのひどい鉱害を見ております関係上、一日も早く本法案が成立することを衷心から期待しておるのであります。私の公述はこれで終ります。

神田博民主自由党

○神田委員長代理 次は法理関係の東京大学法学部教授田中一郎君にお願いいたします。

田中二郎東京大学法学部教授

○田中公述人 昨日から参りまして皆さんの御意見も伺いたいと存じておりましたが、いろいろな都合で出られませんで、きようもたいへん遅くなつて出て参りましたので、皆さんの御意見をまつたく伺いませんで、私一個の考えを述べることになりましたことを、あらかじめ御了解願つておきたいと思います。  鉱害賠償の問題につきましては、すでにいろいろと御異論があつたことと存じますが、一般に賠償の必要のあることについては異論がないだろうと思います。特別鉱害の場合であると一般鉱害の場合であるとによつて違いはないのです。ここで問題になりますのは、だれがどういう形で賠償するのが、最も妥当かという問題だろうと思います。そういう問題につきまして昨年の暮れにごく一部分ではありましたが、鉱害地の視察をいたしまして、私個人として一応の結論と申しますか、意見を得たのでありますが、従来の鉱業法の建前は、御承知の通り大体鉱業者と被害者との間において解決させよう、言いかえれば加害鉱業者にのみ、その賠償の責任を負わせようということになつておるのでありますが、そういう考え方では問題の全面的な解決は、ほとんど期し得ないのではないかということであります。鉱業者の側に、その責任だけで問題を解決しろということは、鉱業をやめろということになるのではないか。といつて鉱業者が現在の鉱業をやつて行くその計算の中に、完全な鉱害賠償をやれないとき、その計算上可能な範囲の賠償をしただけでは、農民に対する救済、その他鉱害に対する救済はどうしても十分には期待できない。それで問題を解決するためには、どうしても加害鉱業者と農民との間の関係としてではなくて、もつと広く国家的な見地から、この問題を解決するようにはかつて行くべきではないかということを、一般的な問題として考えるのであります。  そういう意味から、私の一般的な鉱害の解決方法としては一種の鉱害地の復旧事業団というようなものを設けて、その事業団には国家も相当の協力をする。また地方団体は地方団体でそれ相当の協力をする。鉱業者も被害者もそれぞれの力を出し合つて、問題の解決に乘り出すべきではないか。鉱業者はできるだけ少く負担をしようとし、農民は拱手して、ただその鉱害賠償だけを主張するということでは、問題の解決を期することはできない。鉱害地の復旧事業というようなものは、とうてい実現することはできないのではないか、こういうことを考えたのであります。  そこで特別鉱害地の復興の問題について考えてみますと、これは政府の強行炭採実施の結果生じた鉱害でありますから、一般鉱害の場合と違つて、主として政府がその責任において解決すべき問題であるというのが、一応のりくつであろうと思います。しかし反面一般に戰争中の損害については、戰時補償特別措置法の精神などから、これについてはある程度の補償はしても、全部政府として取上げる、言いかえればそういう戰時損害の切捨てというような考え方も、とられておる状態にあるわけであります。ことに現在の財政事情からいたしますと、政府が全面的にその責任を負つて、この問題の解決を期することは、不可能あるいはきわめて困難だろうと思います。としますれば、鉱業者がそれについての相当程度の負担に任じなければならない。その負担において問題の解決をはかるほかはない、こういうことになるかと思います。その場合に一部には加害鉱業者だけがその責に任ずべきであつて、鉱害に直接関係のない鉱業者に、その負担を負わせることは違憲ではないかというような意見が出ておると聞いております。しかし結論的に申しますと、私はその考え方には従わないのであります。それは違憲だとは考えない。戰時中におそらくすべての炭鉱は強行採炭を実施したものと思います。そうしてそのうちたまたまあるものは鉱害を生じ、またそのあるものは鉱害を生じなかつたというのが実情だろうと思います。そのある所に鉱害を生じたというのは、一部にはその鉱業者が十分にその手当をしなかつたということもあるかもしれませんが、多くはその地質その他の自然的な條件資材その他の戰時中の経済的條件等、その鉱業者の責に帰することのできない事由に基いたものであろうと考えます。もし鉱業者が自己の自由な判断とその責任とにおいて、問題を処理することができる事情にあつたとすれば、おのずから問題の考え方は違つて参りますが、いずれも強行採炭の根本方針に基いて、その実施としてその点をやつていたということを考えてみますと、その生じた損害、それがたまたま地盤その他の自然的な條件、あるいは資材の配給その他の経済的條件に基いて生じたということであれば、それを偶然鉱害の生じた鉱業者だけに、責任を負わせなければならないというりくつは成立たないのではないかと考えるのであります。ただ一面鉱害に直接関係のない鉱業者の側からいたしますと、自分に直接関係のない鉱害の復旧工事のために、費用の負担をしなければならないということは、いかにも理由のない、妥当でないもののように考えられやすいのでありますが、今申しましたように、すべての炭鉱が一律に強行採炭をやつたということ、その各炭鉱というのは戰争中を通して、すべてがいわば危險協同体的な性質を持つていた。それは反面から言えば利益協同体的な性質を、持つていたということ、炭価その他についてもプール計算その他を実施して来たという現実の事実からいたしまして、もし一部の鉱業者の主観的な事情によつて生じた損害であるならば、そのもののみに責任を負わせるということはりくつはありましても、それが客観的な自然的な事情によつて生じた損害であるといたしますならば、危険協同体としての石炭鉱業者全体の問題として、その問題を解決して行くということは、決して妥当でないとは言えない。そういつた措置を講ずることが憲法に違反するということは、どうしても言えないだろうと思うのであります。そういつた関係は、いわば社会保険的な面にも現われておりますし、現在の農業共済団体等の関係についても、同じような措置が講ぜられます。もつともこれは将来における損害についての共済団体ということで、過去に生じたそれについての措置ではありませんが、考え方そのものの根本には共通したものがあるだろうと思います。そういう危険協同体的な地位を持つていたものが、たまたま一部に、その特殊の自然的な條件のもとに生じた損害があるいう場合には、全部がそれぞれ共通した責任を負つてその問題の処理に当るということは、むしろ公平の見地から言つても妥当ではないか、こういうふうに考えるのであります。そういう意味で、一つの強行採炭の実施という方針に基いて生じた特別鉱害であるということ、そうしてその際には、個々の業者の主観的な事情によつて、その鉱害が生じたというのではなくて、自然的、客観的な状態において生じたものであるということを考慮に入れ、従来の鉱業権者が、実質的に危險協同体的な性質を持ち、そういう法律的な扱いをされていたという点を考慮いたしますと、加害鉱業者だけに責任を負わせることが、かえつて公平の見地からいつて妥当でない、むしろ全体がそれぞれの能力に応じてその責任をわかつというのが、憲法の基礎になる公平の精神に合する考え方ではないか、こういうふうに私は考えております。しかし、さらに具体的に、どういう方法でその賠償問題、あるいは復旧団に対する納付金の額等の決定をすべきかという点につきましては、この法案に現われておりますやり方には、もう少し考慮すべき余地があるのではないかということを考えるのであります。これには具体的な事情についての考慮が確かになされております。しかし一般的な原則としては、一応その出炭の量に応じて、二十円以内の納付金を納付させるという考え方によつておるようでありますが、私の考えといたしましては、今日その炭価が、あるものは五、六千円に及び、あるものは千円よりならないという場合——そういつた点についての考慮も、法案の二十二條には若干なされておりますが、一般的な原則としてトン当り幾らという考え方の上に、さらにその炭価を考慮に入れて、その炭価トン当りの双方に応じて、それに何パーセントの率をかけて行く。かりに五千円の炭を出すという場合には、五千円にそのトン数をかけ、それに対する一%あるいは○・五%というような額を一応の基準として、それに若干の具体的な事情によつて考慮をめぐらして行くという考え方の方が、より公正な負担を課する道ではないか、こういうふうに私としては考えたいのであります。それがかえつて加害鉱業者以外の非該当鉱業者の負担において重くなるという場合も出て来るかもしれません。そういう具体的な事情はよく存じませんが、考え方としては、一トン二十円を越えない範囲内においてという、トン数だけの基準ではなくして、現在炭価に開きのある場合には、その炭価に応じた納付金というものを考慮すべきではないか、こういうことを考えるのであります。  なお、根本の問題としまして、現在農村その他で、鉱害賠償の問題を切実に考えて、この機会に完全な復旧事業をやつてもらいたいという熱列な希望のあることはよくわかります。しかし、すべてが戦争損害を共通に受けている現在、その鉱害賠償の問題に関しましても、それにたより切つて、国の手で、あるいは復旧団の手で完全に補償をしてもらおう、復旧事業をやつてもらおう、あるいはこの機会に、それと直接関係のないものまで便乗して、復旧をしてもらおうというような傾向があるといたしますと、それは一般的問題として、十分に反省を要する問題であろうと思うのであります。従つてこの法律に基いて復旧すべき範囲というものは、これをはつきりと、その限界をつけまして、一般の鉱害の復旧の問題は、これから切り離して、別個にその方針を立てて行くべきだろうと考えます。その点も一応ここに復旧の対象になる場合を明記してございますが、その点がとかく一方の希望に押されて、非常に広汎にとられ、それが業者の負担に非常に重くかかつて来るという可能性がないとは言えないように思います。そういう意味で、特別鉱害の補償というのは、はつきりと限界をつけて、他の一般鉱害の問題は、鉱業法並びにそれに伴う法律によつて別途に考慮されるべき問題ではないか。問題は、その鉱業法による一般の鉱害の賠償、あるいはその鉱害地の復旧事業をどうするかという問題にかかつて来る。その点については、現在の鉱業法の規定だけでは解決しきれない問題が、多分に残つていると思いますので、鉱業法の改正と同時に、鉱害地の復旧の問題について各省が、すなわち通産省のみならず農林省その他も協同して、その復旧工事を一般的に問題として取上げ、その根本的な解決の方針を立てられることを切望したいのであります。  私の方から申し上げるのは、これだけにとどめます。

神田博民主自由党

○神田委員長代理 次は、復旧工事関係といたしまして、建設省河川局長目黒清雄君。

目黒清雄建設省河川局長

○目黒公述人 私は、建設省の河川局長として、現在鉱害復旧の一部を担当しておりまするが、そういう立場とは関係なしに、かつて福岡県に奉職しておりまして、直接鉱害復旧の経験を持つたという立場で、お話申し上げたいと思うのであります。  まず第一番目に、この法案が早急に成立を見なければならぬという理由を申し上げたいと思うのであります。それは、第一番目に、この災害は非常に大きな災害でありまして、非常に緊急を要するものであるのであります。特に御承知の通りに、鉱害の及んでおる範囲は八千五百町歩の農地の陷沒、二万四千戸の家屋の被害、さらに地盤沈下のために飲料水が枯渇し、道路、橋梁あるいは河川の堤防が陷沒しておるというような大きな被害を考えますと、このまま放置できない、国家的に重要な仕事であるのであります。さらに現在八千五百町歩の農地の被害、これによつて起つて来ます農作物の損害を考え合せますと、これは相当重大な問題と考えます。また河川、堤防の沈下によりまして、将来もし一朝洪水にでも見舞われますれば、それによつて起る損害あるいは被害を考え合せますと、なかなかこれはゆるがせにできぬ重大な問題と思うのであります。  次に鉱害を特別鉱害措置法によつて、特別措置をしなければならぬというのは、すでに御承知の通りに戰時中の強制出炭による地盤の陷落ということにある。でありますので、どうしてもこれに対しては特別措置を講じない限りは、国家においても、あるいは地方公共団体においても、これらの被害を復旧できないという立場にあるのであります。戰時中その問題が起きまして、一応は鉱害復旧として公共事業費から助成をし、河川、道路その他に対して公共事業費から補助をし、あるいは戰時中、戰後の炭価の統制時代にはプール資金によつてそれをまかなつて参つたのでありますが、炭価の統制がとれました現在におきましては、この財源に苦しんでおるというのが実情であります。こういうわけでありますから、強制出炭の命令は国が発したのであるから、国において全部責任をとれという議論もありましようが、なかなか国といたしましても、これを全額持つて復旧するということは、あるいはまた地方公共団体といたしましても、なかなか困難であるという実情は御想像願えると思います。従つてこれが財源の獲得のために、かかる手段で特別措置を講じなければならぬということは、われわれもその通りだと信じております。  さて次にこの法の中でわれわれが最も関心を持たなければならぬ諸点を申し上げますると、まず第一に特別鉱害の範囲の認定の問題であります。鉱害は御承知の通りに、すでに九州方面におきましては、鉱業権者がいろいろの措置を講じまして、あるいは坑内の補強あるいは穴のあと埋めなどを行いまして、鉱害の未然防止の策を講じて参つたのでありまするが、戰前におきましても鉱害はあつたのであります。戰後におきましてこれが急激に膨大したのは、先ほど申し上げました戰時中の特別な強制出炭によると思われるのでありますが、過去においてもこういう事実はあつたのであります。戰後にまたその事実が拡大されたということでありまして、この鉱害の原因が、はたして戰時中の強制出炭によるか、あるいは戰前からの自然的な鉱害によるものか、この線の引き方がなかなか困難と思われるのであります。と申し上げますのは、炭坑を掘りましたあと、その被害が現われて来る時間というものの推定は、なかなか困難であります。場合によりますと、ただちに現われる場合もありましようし、あるいは一年、二年あとにこの鉱害が表われる場合もあります。これは坑道の地表からの深さによるものとわれわれは考えておりますが、いずれにいたしましても時間的ずれというものが現われるのであります。そういたしますると戰時中の強制出炭による被害がいつ現われるか、いかなるところに現われるかというようなことの認定の問題は、なかなか困難と思われる。それでわれわれの心配いたしまするのは、この特別鉱害法によりまして、強制出炭による被害以外の被害が、この法律の陰に隠れていわゆる便乗的な被害復旧が行われるということはありはしないかという心配があるのであります。この点はこの審議会ができるようでありまするが、審議会の運営には相当愼重を期さなければならないと考えられる問題であります。この点におきましては鉱害法の臨時措置の参考資料の中にも現われておりまする通りに、鉱業権者——加害者が不明であるというようなものも二、三あるのであります。加害者不明であるということは、戰時中に被害者であつて戰後に不明であるのか、あるいはもうすでに鉱業権者がどこかに行方不明になつているのか、その辺のところが現われておりません。従つて戰時中の出炭による被害という線の引き方は、愼重を期せられなければならぬと、われわれ思うのであります。  次に負担の問題でありますが、これは議論の中心だと思います。今のように国家が強制出炭をさせ、しかも国家のみでは復旧が不可能であるという現状におきまして、しかもその財源をどこかに求めなければならぬという段階におきましては、やはり加害者あるいはその関係の炭鉱が応分の負担をするということは、当然であると思うのでありますが、関係炭鉱の、あるいは全然関係のない炭鉱の負担の一律というような問題につきましては、相当考慮を要すべきことと考えられます。もちろんこの負担の賦課の技術的な問題もありましようし、なかなかトン二十円の範囲というような簡單な方法が、あるいは技術的には非常にやりやすいような問題もありましようが、しかしながらその加害者あるいは加害者以外の炭鉱の間においては、おのずからそこに差違のあることが考えられるのじやないかとわれわれは考えております。  私の申し上げたいのは以上でありまするが、ただここで私の意見をちよつと言わせていただけば、現在九州の鉱害復旧というものは、九州地方におきまする石炭の重要さから考えましても、これは復旧のすみやかに行われることは当然でありまするが、ここで鉱害特別措置法によりこれのみに頼つて、この鉱害復旧をやろうとすることは、私は不可能ではないかと考えるものであります。と申しまするのは、今のように被害者の側からは相当厖大な要求があり、加害者の立場からはできるだけその費用を少くしたいというのは当然のことであります。しかしながら、九州の現状を申し上げますと、どうしてもある程度積極的な復旧工作を行わない場合は、将来の出炭量にも影響すると考えられるのであります。たとえば公共的な道路なり、河川改修なりがもう少し積極的に行われなければ、将来災害とかあるいは交通上の変動から起つて来る、いろいろの被害が想定されますので、どうしてもこの特別鉱害臨時措置法以外に、さらに相当な計画のもとに、鉱害復旧あるいは積極的な発展策を講じなければならぬと考えるのであります。従つてこの特別鉱害復旧臨時措置法のみでは、完全にこれは実施し得ないものと思う。しかもこの特別鉱害復旧臨時措置法の範囲は、できるだけ原形の復旧を主体にして、将来それにさらにプラスをするものがありますれば、ほかの方法でこれを考慮して行かなければならなぬというふうに考えられるのであります。

神田博民主自由党

○神田委員長代理 次は一般の公述人としまして、山口県小野田市小野田炭鉱総務部長吉田章一郎君。

吉田章一郎小野田炭鉱総務部長

○吉田公述人 ただいま御指名いただきました吉田章一郎でございます。  山口県の宇部炭田の一偶に工員わずか六、七百名をもちまして、月産戰時中は一万トンないし一万五千トン、現在五千トンぐらいの出炭をしておるいわゆる小山の小野田炭鉱、そこで八十町歩ほどの鉱害を持つておりまして、この鉱害について日々被害地の皆さんと協議をし、交渉をし、鉱害地を確認し、あるいは損害補償を協議し、復旧工事を指揮監督し、その他鉱害事務を直接担当しておるものでございます。  最初に、この公聽会開催にあたりまして、一般公述人として申込みをさせていただきましたところ、御選定の上御許可を得、本日意見を述べさせていただく機会を得ましたことを御礼申し上げます。  結論といたしまして、私はこの法案に絶対賛成、無修正で即時成立を切望するものでございます。従来宇部地区はこの種鉱害問題について非常に声が小さい、熱意が足りないじやないか、あるいは九州の鉱害に比べて宇部の鉱害はさしみのつまみのような存在じやないかとまで言われておつたようでございまして、私実に遺憾千万に考えておつたのでございます。御承知と思いますが、宇部炭田におきましては、その出炭の過半数以上は海底炭鉱、いわゆる鉱害のない炭鉱で占めておりまして、結集された大きな資本を有する一、二の会社がこれらの海底炭鉱を所有し、大きな経済力と政治力、支配力をもつてこの宇部炭田に君臨し、鉱害のあるわれわれ中小炭鉱は、その下に隷属しておるのでありまして、われわれの声は常に少数意見というか、局部的な問題として中央にまで響かなかつたといううらみがあるのでございます。石炭協会といたしましても、やはりかかる鉱害のない大会社に遠慮いたしまして、われわれの問題を局部的問題として、一ぺんとして取上げるということがなかつたことを最初に申し上げます。しかしながら被害の範囲こそわずかでございますが、その程度におきまして、深刻さにおきまして、切実さにおきまして、決して九州に負けるものでないことは私断言いたします。また先般来の調査団の皆様の御視察の結果によりましても、十分御認識を賜つたことと存じておるのであります。その調査団の御調査の際に、皆様から被害者の立場になつて、この法案を一日も早く通そうというお言葉を賜つたのであります。この被害者の立場、これがこの法案の精神であり、性格であると私ども考えております。現実の被害を被害者の立場になつて一日も早く復旧する、これがこの法案の骨子でありまして、戰時の補償とか炭鉱の救済とかいうようなことは、観念のそとでございます。一部論者より、戰時強行採炭の結果、炭鉱自体がいろいろな施設を損壞したとか、あるいは坑内のいろいろな條件が惡化し、坑内水が非常にふえて運搬系統が複雑になつたとか、通気系統が惡くなつたとか、天盤に圧力が加わつたというふうなことを並べたてられ、その上鉱害を補償するのはおかしいというふうなお話もあつたかのように聞いておりますが、これは誤解で、被加害炭鉱だけでなく、われわれの炭鉱もやはり同じように坑内條件が惡化し、炭鉱自体の所有するいろいろな施設の損壞を来しております。しかしそれは炭鉱自体がその損害を甘んじて受けているのであります。さらに鉱害のない炭鉱に加えて、われわれ炭害のある炭鉱は、年々農作物の不毛または減收による損害補償を被害者に出しておる。これなどは海底炭鉱よりもなおさらわれわれに負担が加つておるのですが、これも甘んじて受けている。ただ問題は、そういう炭鉱自体の受ける被害でなくて、一般耕地あるいは集団家屋、河川、鉄道、そういうふうな公共施設の被害を復旧しよう、これがこの法案の骨子でありまして、あくまでその事実から出発しておるのでございます。前国会におきましても、事実問題と法理論というふうな関係において、いろいろな御意見が出たように承つております。法理論につきましては、ただいま田中博士よりまことに懇切にして明快なる御発表がございまして、私さすがにと心から敬意と感激をもつて拜聽し、この結論をはつきとりお示しくださいましたので、今さら法理論などについて申し上げることはございませんが、前国会の御審議中に、いろいろな法理論が出ましたときに、こういう例を民主主義法治国家である現在、あてはめるのはおかしいかもしれませんが、あの当時つらつら大岡裁判という点を私は連想したのでございます。事実問題、法理論、いろいろな複雑な関係がございますが、大岡裁判こそ法理論というものを第二義にして、事実問題をすべて解決して行つたので、一例をあげますと、三両の金を落した者と拾つた者と、その二人間に係争が起つた場合に、大岡越前守は、自分のふところからもう一両出して四両にして双方に二両ずつ渡した。そして三方が一両ずつ損したのだという裁判をやつた。こういうことを私ども本などで読んだのであります。これは法理論から行けば全然解釈のしようはございませんが、事実問題として確かに名裁判である、こういうふうに言われております。この問題をこの法案に適用いたしましても、現実にさんたんたる被害を復旧しよう、公共福祉をはかろう、民生の安定をはかろう、石炭鉱業の健全なる発達を期そうという目的のためには、前にも申しました通り、だれも責任はない、加害炭鉱もない非加害炭鉱もない、国も戰時補償の打切りはないというような、みんなが三方一両ずつ損をしようではないか、皆二十円ずつ出そうではないか。そうしてこの現実の被害を復旧しようではないかという法案。これは法理論を第二義として真に生きた政治であると考えておるものであります。鉱害は石炭鉱業全体に対して投げられた不信であると私は考えております。むしろ被害者は石炭鉱業全体であると私は考えるのでございます。この石炭鉱業の被害を排除し、不信を一掃するために、石炭鉱業全体が一致協力して努力しなければならないと考えるのであります。一時的に需給のアン・バランスがありましても、石炭鉱業はあくまで国の基礎産業でございまして、国の再建のためにはやはり重要な基幹産業の一つである。私は今後ともそう考えておるものであります。そのためには石炭鉱業へ課せられた不信を排除し、この被害を復旧するということは、石炭鉱業全体としての義務のあるものではないか。一部にこの法案は相互扶助を強制するものだというお話がございます。あるいは相互扶助ではない、一方的扶助だ、こういうお話もございましたが、私どもこれは相互扶助といつても、むしろ協力一致して自分の被害を排除するものだと考えております。かりに相互扶助を強制するものだという意見を一応とる、それに対して考察を試みるといたしましても、相互扶助を強制することはいけないという御意見に対して、これを突き詰めて参りますると、全加害炭鉱だけが持て、国庫負担もいけないということになるのではないかと私は考えます。国庫負担、国庫の財源というものは、やはり税金で成つております。この税金は広く解釈すれば相互扶助ではないかと考えるのであります。それでありますから、相互扶助がいけないということになれば、国庫負担はいけない、全部加害炭鉱だけで持て、こういうふうに受取れるのではないかと思います。われわれとしてはそういうできない相談をおつしやる方の心理状態を疑うわけであります。また相互扶助の強制がいけない、こうおつしやいますが、民主国家におきまして、個人々々が自由意思によつて選んだ議員の皆様の審議の結果によつてできた法、むかしの独裁時代、封建時代にかつてにつくつた法律によつて強制するのはいけませんが、皆様議員の方方によつて愼重に御審議を練つていただいて、でき上つたこの法による強制というものは、断じて独裁主義による強圧的な強制ではないと考えております。多数の意見によつてでき上つた法律による強制でありまして、例をとりましても、少し違うかもしれませんが、主食の供出、あるいは米麥等主食の価格の算定というものは、一人々々に対してどうだこうだというわけはございません。やはりこの国会におきまして皆様の多数の意見によつて決定し、強制したものであります。法による相互扶助の強制はいけないということは、私はとれないと思うのであります。同一賦課命を全部の出炭にかける、二十円を全部の出炭にかけるということは、同一の條件を全部の石炭に加算するということであつて、これは決して不平等ではないと思つております。私は一トンの石炭を売るたびに二十円の收入印紙を張るのだというふうに解釈しておるのでございます。一部非関係炭鉱の負担を免除しろという意見に対しまして、私は他の炭鉱よりも有利な販売條件を獲得しようという商取引的な打算的な要求である。こう考えてもおります。また修正論も出ております。先ほど申しました全額国庫負担にしろ、これは結局従来前国会から政府委員の皆様から、るる御説明がありましたように、全額国庫負担ということは困難である、不可能である。その不可能であるということを知りつつ、なお修正論を固持するということは、結局において口では被害地は一日も早く復旧しなければならぬといつておりますが、腹の中で不可能な修正論をいつまでもつつ張るということは、この法案をつぶしてしまおうというような結果になるように、われわれは推察するものであります。この法案をつぶそうということは、とりもなおさず被害地の復旧はしなくてもいい。口と腹と違うのではないかと推察するよりしかたがないのでございます。一部非加害炭鉱だけを除いてもらいたいという、修正論もございますが、これとて非加害炭鉱を除けば、加害炭鉱の中にはピンからきりまでございます。五円で済む炭鉱もございましようし、五十円で済むところもあります。それを二十円ならしにとるということは——非加害炭鉱を免除するということになれば、その五円の炭鉱も、五十円の炭鉱も、復旧工事ができる炭鉱もやはり差をつけなければならない。そうなれば結局加害炭鉱自体でやるということで、この法制が根本的に崩れてしまう。やはりこれも反対論になると考えております。  最後に私どもだけの立場から申し上げることを許させていただければ、それは最近九月十六日公団の廃止によりまして、名実ともに自由経済の波の中へ放り出されたのであります。国の自立再建のためには、これもやむを得ぬことでございましようが、私どもには特に過去からの大きな特別鉱害という荷物を背中へくくりつけられて、ほうり出されたのであります。われわれはこの大きな鉱害を持つていかに能率を向上し、合理化をはかつても、この荷物の下敷きとなつて、未だに身動きができない状態でございます。何とぞこの法案によりまして、この大きな荷物をともかく取除いていただく。そういうことによつて私どもは腕をさすり、足をさすつて勇躍して、この両足をもつてしつかり大地を踏みつけ、堂々と濶歩して、自立体制へ進んで行こうと思つておるものでございます。  なお簡單に最後に二点ほどお願いしたいのでありますが、昨日も労働組合の方から申されましたように被害状況を放任しておく、あるいは五年間でやるということはいけない。もつと工事期間を短縮しろ。私どもはこれはまことにありがたいお話でございます。どうぞ予算関係その他ででき得ることでございますれば、工事期間を短縮していただきたい。結局は国庫負担が増額するわけではございましようが、五年のものなら三年でやつていただきたい。これをお願いするわけでございます。私がこういう政治的な処理方を申し上げるのははなはだ僣越ではございましようが、五年を三年に短縮することによつて、いわゆる非加害炭鉱の負担分も五分の三になる点において、これは何とかできますことならば、国庫予算を増額してお願いしたい。それがまたもちろん工事の切実さの上において、——当然とは申しません。切実の意味において、三年間にお願いしたいのはもちろんでございます。  なお二十四年度中に年間計画を許可されまして、実行しておりました工事は、公団の廃止によつて中止されております。なお工事の継続にあたりまして、いろいろなつなぎ資金を借りるとか、未拂金を残して中止しているのであります。この法案がかりにできましても、復旧団の組成その他に相当の期間がかかります。何とか予算措置、行政措置によつて、少くとも二十四年度の中止された工事は、せめて最初の年間計画通り実行させていただければ、これに越した仕合せはないと思うのであります。この二点蛇足と申しますか、こまかい話でありますが、これをもちまして、私の公述を終ります。

神田博民主自由党

○神田委員長代理 次は同じく宇部市神原炭鉱副頭取上田十一君。

上田十一神原炭鉱副頭取

○上田公述人 神原炭鉱の上田であります。ちよつと誤解を生ずると困りますので、弁解をしておきますが、参議院においても宇部興産株式会社の役員として発言をいたしますし、本日もそのつもりであつたのでありますが私の手落ちで——もちろんこの通りでよろしゆうございますが、同時に興産としての主張をいたします。  宇部地区の七十鉱のうち四十七鉱、石炭の出炭量その他につきまして、約七五%を占めているものの代表といたして発言をいたします。すでに公述人の皆様がお話になりまして、私が十九人目か二十人目になりまして、私が申し上げる種がなくなつたのでありますが、私も代表して参りまして、皆さんのお説と同じだというわけに行かないので、それと昨日来賛成派とその次に不賛成派と交互になつていまして、石炭の内部において、何かまつたく正反対の意見が出まして、私はなるべくそういうふうに当らないつもりでありますが、多少当りましてお聞きずらい点がありましたら、お許しを願いたいと思います。  私はこの法案を適正に修正していただきたいと考えるものであります。その根拠は、種々論じられましたが、あくまでも関係のないものから税金と同じような形で納付金をとる、これがまつたく間違つていると思うのであります。統制された時代でなく、また戰時中でないわけで、民主議会政治の今日におきまして、関係のないものから税金と同じような形において納付金をとる、これは全然間違つていると考えるのでございます。これについて関係があるかないかという問題であります。先ほど来も田中先生のお話もありました。但し関係があるのだという先生の論旨にもわれわれしろうとからいたしまして、こういう発言をいたしますのは、まことに失礼でありますが、私は納得が行かなかつたのであります。と申しますのは、全部ではありせんが、とにかく戰時中、価格や何かも同じようにプールしてやつたではないか、そういう関連性もあるではないかというお話もありました。あるいは公正を期するためにはやむを得ないではないか、こういうお話もあつたのであります。炭価をプールしたことも、もちろんあります。配炭公団も最後まで、その通りであつたのであります。当時は要するに統制されておつたから、そうせざるを得なかつたわけであります。それが関係のあるなしには私は関係しないと思うのであります。同時に公正を期せないという点でありますが、ほんとうに戰時中の統制採算による全部の被害が救われるものならば、そういうことが言われるわけでありますが、戰時の被害は一部ただ鉱害の表面に現われた、他人に及ぼした鉱害のみをもちまして、これを公平に分けたところが、はなはだ公正には行かないものだと、私は考えるわけであります。なお昨日高島の町長さんの御発言で、一応まず関係炭鉱は責任があるし、同時にそういう命令をした政府にも関係があるのだ。さらに非加害炭鉱にもやはり責任があるのだ、こういうお話があつたのであります。この町長さんの論旨は、戰時中あるいは配炭公団までは、石炭鉱業の援助のためには、国民の犠牲において、特にあらゆる産業の中で一番援助したじやないか、お前ら一番かわいがられておつたじやないか、その意味において同様に責任があるのだ、こういう御説明であつたのであります。なるほど日本の戰後再建のために、あるいは戰時中は戰力増強のために、石炭は確かにかわいがられたと申すのが妥当であります。援助を受けたということになるのでありますが、それは特に特別な責任を課せられているために、多くの犠牲が出て来る。その犠牲をカバーしてもらうために、特別な援助がなされたのだと思うのであります。また特に従業員その他につきましては、この食糧不足のために増配を受ける。それは確かにかわいがられたわけであります。援助は受けております。但し企業体そのものとしては、それがために得をした、もうかつたのだという結論は、私は出て来ないと思うのであります。また九州の大権威である小西さんのお話は、戰争中にも両者手を握り合つて来たじやないか、今日まで戰後といえども手を組んで来たじやないか、だから伝統を生かせ、こういうお話であるのでありますが、これは今日の自由経済になりますれば、私は今までの伝統はまつたく別問題で、それだから今後そうしなければならぬとは考えられぬと思うのであります。但し石炭業界としまして、将来分裂していい、あるいは意見を異にすべきものであるとは決して考えません。将来こそほんとうに今度は裸で抱き合つて、行かなければならぬと考えるものであります。その意味におきまして、あくまでもこれは関係がない。要するに責任があるとは考えられぬ。かように私は考えるわけであります。あくまでも関係がなく、責任のないものから税金を取立てるということは間違いである。かように考えます。また立案者当局もそのむりだというお気持は、十分あつたと思うのであります。この法案を見ましても、とにかく一様にかけるのはむりだ、だから何とかしなければならぬだろうということで、要するに相互扶助論も出、あるいは炭価に織り込んで消費者にかけ得られるじやないか、だからがまんせよ、こうおつしやつておられると思うのであります。特に二十二條に減免規定があることは、今全部にかけることはむりだというお気持であると思うのであります。この相互扶助というようなことは、自由経済の原則のもとにおいては、われわれはまつたく納得できぬものであります。これこそ先ほど吉田さんが申されましたように、助けるものはあくまでも助けなければならぬ、助けられるものは今日も助けられ、明日も助けられるという結論になります。だから相互扶助でなしに、われわれは一方的な扶助だと考えるものであります。事実また私は宇部地区の関係炭鉱の代表としまして、この法律で関係のないものにかけられるということは困る、間違つておる、と同時に事実は負担し得ない状態になつておるのであります。配炭公団の廃止以来、今日なお配炭公団の貯炭は五百万トンを抱いておりますし、今日の出炭は事実需要以上に供給が余つておるのであります。ために猛烈な競争が行われておるのであります。この競争のために、宇部地区におきまする無煙炭といい、あるいは下級炭といい、まさに二千円が千円に下つておる状態であります。あるいは上級炭になりますと、四千円が五千円になつたものもあるでありましよう。もちろんそういう石炭は宇部地区にはないのであります。事実が示しますように、宇部地区におきましてはどの炭鉱も、おそらく二割以上の賃下げを行つております。事実二割を賃下げしているところもあるのであります。さらに従業員を整理いたしまて、約二千人の従業員を整理しておると思います。また出炭を非常に人為的に下げております。従いまして、今日、配炭公団が廃止せられまして、わずかの日月におきまして、数鉱は休業しておりますし、数鉱は廃止の状態になつておるわけであります。  かくも悲惨な状態であるのでありまして、なお先に希望は今日持てないような情勢にあるるときに、たとい二十円——二十円ということは非常に少く考えられて、何だ二十円というふうにお考えかもしれませんが、宇部炭にとりましては、二十円は非常に貴重なものであるのであります。その意味におきまして、事実は負担する責任がないと同時に、負担する能力がないと申し上げても過言ではないのであります。  その極端な関係、非関係を申し上げますと、海底炭鉱や何かは、当然宇部の実情から見まして、まつたく鉱害には関係はないのでありますが、さらに全部にこれを課するといたしますと、戰後生まれました炭鉱をいかにするか、あるいは今後生まれる炭鉱までその中に入れるか、そういう炭鉱は各地におきまして相当今日までできておりますし、今後もできるわけであります。その他いろいろ戰時補償の打切りの問題とか、あるいは第三條、特に第三條は、この法案ができますとともに、昨日は中西先輩は大丈夫だというお説でありましたが、その運用いかんによりましては、この法律がいい法律になるか、あるいは最も惡法になるかの境目であると考えるわけであります。いろいろ皆さんも御研究でありまして、申し上げる必要はないのでありますが、昨日私は、最もすぐれたいい法律というものは、最上の常識の蓄積であるというお説を聞きまして、なるほどなあと感心しましたわけであります。その意味におきまして、どうぞ十分御検討を願いまして、われわれの希望も入れていただきますようにお願い申し上げます。  それと一言私弁明をいたしますが、昨日この席におきまして、福岡の知事さんのお話があつたのでありますが、一昨年の沖ノ山炭鉱が大水害を起したその時に、業者の協力によつて救護したんだ、だから自分で救われるときには救つてもらつておいて、こういう意味のお話であつたのであります。と申しますのは、参議院でも同様のお説が出ました。参議院においては、業者の犠牲において、一億八千三百万円をもらつているじやないか、こういうお説が出まして、私はただちにその事実でないことを、御説明申し上げたわけでありますが、再び昨日あたりこの席におきまして、知事さんの方から御発言がありました。上田君、あの問題は今日お互いに論争すまいじやないか、よろしゆうございますと申し上げておつたのでありますが、再びお説が出ましたので、私は弁解せざるを得ないのであります。この一億八千三百万円は、何も業者の援助を受けているわけではありません。また業者の犠牲でもありません。この復旧に一億八千百万円、つまり二百万円の相違があるのでありますが、これは復金から借入れしております。現に順次これを返金しております。さらに三千五百万円を赤字加算でいただいておりますが、この点を明らかにしたいと思うのであります。なおそのほかに多額の経費を今日まで要しております。今後も要するわけでありますが、一億八千万円は事実復金から貸してもらつている。その復金の借入れにつきまして、あるいは他の業者の借り受くべきわくをとつているのじやないか、こういうお考えがあるかもしれませんが、その一億八千万円の大部分は、沖ノ山炭鉱がいろんな施設のために、わくをもらつておつた。そのわくを、事故が起つたためにいらなくなつたので、復旧のために振りかえていただいた金であります。  それと、赤字加算の説明は必要でないかもしれませんが、これは炭価が決定する前の赤字加算であるならば、ある程度までの業者の共助、相互扶助だということになるのでありますが、炭価が決定いたしまして、沖ノ山炭鉱は赤字でないわけであります。炭価を決定するときには、全然そういうものはもらつていない。事故が起つたために、いい石炭が出ない、数量は減る、復旧はしない、これを復旧しなければならぬということで、赤字が出たのであります。これは沖ノ山炭鉱がかりに三千五百万円をもらつていなければその余剰金は当然国庫に返還されるべき性質のものでありまして、何ら業者の共助によつた性質のものでもなければ、他の業者の犠牲によつたものではないということを、はつきり申し上げて、以上をもつて終ることにいたします。

小金義照民主自由党

○小金委員長代理 次は佐賀県大町町長、岸川清次君。

岸川清次佐賀県大町町長

○岸川公述人 ただいま御紹介にあずかりました佐賀県大町町長の岸川でございます。実は被害者側としての立場において、御説明を申上げたいと思うのでございまして、一般公述者として推薦されましたので、そのお含みでお聞きとり願いたいと思います。  今回の法案は、これに対してわれら被害者側といたしましては、双手を上げて賛意を表するものでございます。  従来佐賀県は鉱害は非常に少かつたのであります。しかるに戰時中に濫掘した結果、急に鉱害が起つたので、これに対してわれわれは炭鉱側とも折衝いたしまして、逐次処置はいたしておりますけれども、何分あまりに大きな被害でありますので、この法案が提案されたので、これによりまして、何とかこの窮状を突破して行きたいという考えのもとに、本日ここに立つたのであります。  わが大町町は、隣接北方あるいは江北あるいは東の小城郡砥川というものは、非常な佐賀県の穀倉地帶で、いわゆる米所の一角をなしており、三箇町村において、約四千町歩を抱擁しておるのであります。しかるに戰時中に掘鑿された結果鉱害を受け、しかも陷沒その他の状況は三百町歩以上に達しております。ちようどわれわれの住むところは、北に三百メートル以上の山岳を背負い、平坦部におきましては、六角川を境として二十五号線の新国道あるいは佐世保線が相並行して、その間を東西に走つておるのでありますが、大町町を中心として炭鉱が、杵島炭鉱は大町に三坑、四坑、江北村に五坑、六坑、北方町には北方炭鉱あるいは明治鉱業の西杵炭鉱、そういうふうなものがあつたのでありますが、従来はほとんど山岳部に向つて採掘しておつたのが、戰時中のいわゆる至上命令によつて、平坦部にそのほこ先を伸ばしたために、水田の四千町歩のうち、すでに三百町歩以上の陷沒地帶が突発したのであります。山岳部におきましては、現在幅二尺深さ一間半以上の亀裂を生じまして、それが四百メートル以上のところもあるのでございます。その他山林あるいは林野、畑地等において、地すべり、あるいは亀裂、そういうふうなものが随所にあるのでございます。従いましてこの陷沒地帶、あるいは山岳地帶におきましては、墓地、家屋その他の傾斜はもちろんのことでありますが、水利の関係上、従来溜池その他雨水をもつて生計を営んでおつたのでございますが、溪流の亀裂あるいは溜池の底の亀裂その他によつて、天然水の貯溜が減退したために、灌漑用水にも事足らないような結果になつておるのであります。  かようようなことをいろいろ述べますと、時間も許さないのでございますから、差控えておきますが、採炭に伴う地下の誘導排水は、雨水の枯渇を来したために、飲料水の不足は、町民の日常生活を脅かしているのでございます。そのために、一キロあるいはそれ以上のところに飲料水を求めんがために、時間と労力を空費しているような状態であるので、ちようど二十三年の七月に、関係監督庁に懇願した結果、二日間にわたり来町調査されたのであります。その結果当局の認めるところと相なりまして、二十三年厚生省の鉱害地として認められ、上水道の認可を得ているのでございます。これによつて国庫補助プール資金をいただいて、今日まで約三〇%の工事を施行しておりますが、ちようど昨年の九月に、従来の法案を打切られました結果、いわゆる今度の法案が提案されることになつたのでございますが、この法案を、ぜひとも今回の国会において愼重審議くださいまして、わが町民二万七千の飲料水に困り切つているのを、救つていただきたいと考えます。どうぞ委員諸公におきましても御賢察くださいまして、この法案の一日も早く、無修正によつて通過するようお願いする次第でございます。  以上をもつて本案に対する賛成の意を表する次第であります。

小金義照民主自由党

○小金委員長代理 次は飛松英助君。

飛松英助大蔵財務協会嘱託

○飛松公述人 ただいま御紹介にあずかりました、飛松英助であります。一番しんがりを勤めますが、しばらく御清聽願います。  私は本法案について反対するものであります。戰時補償の打切りがありました今日、その裏をかいたような形で、こういうものが今日現われたということに、いろいろ問題があると思います。さらにこの問題が現われまして、同じ炭鉱業者の方が利害相反する問題で一致点がない、きのうから非常に反対、賛成の諭が闘わされておりますが、それを聞いておりましても、そこにこの法案自体に、非常にむりがあるのじやないかということを、感ぜざるを得ないのであります。そこで私はこの法案に反対である理由を二、三申し述べさせていただきます。たまたま戰時中の石炭増産という至上命令の一事につながりを持つたがゆえに、鉱害という特典を受けるということは、そこに非常にむりがあるのではないかと思われます。私は満洲からの引揚者であります。終戰と同時に職を奪われ次に家を奪われ、最後に衣類を奪われ、ほんとうに着のみ着のままで引揚げて参りました。そうして上陸当時一人二百円の現金と、軍衣の中古品を少々いただきました。そういうことから考えましても私どもは、そうしたわれわれ引揚者が要求しておるいろいろなものがいれられないで、戰時補償打切りをされたのじやないかということから考えますれば、この法案がこのまま通過するということになりますれば、われわれも元のからだにもどしていただきたいということを言いたくなるのであります。引揚げの場合と、この鉱害の場合とは違うと言われるかもしれませんが、それは單なる観念論であります。人権が平等である今日、そうしたことを言うことすら、われわれはそこのところに権力があればそれをあきらめてしまう、これは非常に恐しいことであります。民主主義下個人の自由というものが平等である以上、私どもはこうした主張をしたくなるのであります。  次に復旧上の問題でありますが、本法案によりますれば、一応は国家の予算でまかない、残余のものを全体の炭鉱業者に負担させるということになつております。そこに私は非常にむりがあり、理論的に飛躍し過ぎておるのではないかと思われます。もともと関係炭鉱すらも、理論的には鉱業法によりまして、通常の賠償の責任以上に、復旧の責に任する必要はないというのでありまして、それを関係炭鉱に費用の負担を押しつける上に、さらに飛躍して無関係炭鉱にまで、これを押しつけるということは、ほとんどむりと言わねばなりません。また関係炭鉱の中でも、その鉱害の程度にいろいろ差がありましよう。これをどうような形で調整して行くか、そこに本法案の第二十二條に、いわゆる納付金の減免の規定がありますが、そのこと自身が負担の公平ということについて、立案者自身が非常に苦慮しておられるのであります。二十二條の規定を読みまして、つくづくこの規定が不完全なものであるということを、特に私は強調いたしたいのであります。  また次に政府の説明によりますと、一応は石炭生産者の負担とするが、実質的には生産者より消費者に転嫁することによつて、一種の石炭消費税的なものにすれば、よいじやないかという説明があるようでありますが、こういうことは今日の自由経済下、また経済政策上からも当を得ていないことではないかと思われます。特別鉱害なるものは、過去のものであり、戰時中のものであります。この鉱害の復旧のための費用を、本法案成立後五年間にわたり、今日より消費者が負担しなければならぬというあたりに、まことに不可解なものがあり、時間的な隔たりが感ぜられるのであります。さらに終戰後、新しい企業で採掘を始めたところの炭鉱であつても、原則としては費用の負担を免れ得ないということにおいて、まことに空間的ずれと時間的ずれを感ぜざるを得ません。理論的な面をひた隠しに押し隠して、納付金を強要するところに、私は民主憲法下まことに不都合なことと言わざるを得ません。いまだに統制経済の夢を追うておるのかと言いたくなるのであります。 次に私は特別鉱害の限界を少し見きわめてみたいと思います。立案者の説明によりますといわゆる戰争鉱害が、耕地の陥没、堤防の決壤または捨石の堆積、家の崩壤等、幾多の深刻な社会問題を引起し公共保安の上からゆゆしい問題が起りつつある。これを解決しなければ現地炭鉱の操業にも、支障を来すということです。すなわち立案者の考えでは、換言すれば石炭の生産業者、従つて間接的には消費者も特別鉱害の復旧工事の受益者の一人であるということです。しかしながら特別鉱害というものを、本法第三條に掲げてある各項目、ことに三項だつたと思いますが——に該当するものに真に限定するならば、復旧をすることによつて利益をこうむる者が、はたして石炭業者か、あるいはその消費者であるかどうか、すこぶる疑問とするところであります。業界共通の問題として、直接間接の受益者として、石炭の生産者及び消費者を考えているところに、この立案者の行き過ぎがあるのではないかと思います。第三條第一項第三号にうたつてある「復旧工事を施行するのに適し、且つ、危害の防止、交通の確保、民生の安定その他公共の福祉を確保するために急速に復旧工事を施行する必要があるもの。」という條件を嚴密に当てはめるならば、ほとんど全部が公共事業の対象となるものばかりであります。すなわち具体的に言うならば、河川道路関係は建設省、農地関係は農林省、上下水道関係は厚生省、鉄道関係は運輸省ということになります。ただこの條文の中に家屋、墓地の陥落というものが含まれておりますが、私ははたしてこのものまで公共事業の対象となるのであるかどうか、はなはだ疑問を感ずるものであります。それは中には学校とか、あるいは公共の建物、あるいは寺院、教会、そういつたものが含まれておりますが、個人的なものまでそうしたものに含まれているところに、はなはだ疑問を感ずるものであります。きのうも実はある福岡の方が、自分の祖先の墓場が水の中に浸つてしまつて、それを橋の上から拜んでいるような状態であるというような、まことにお気の毒な話もありました。しかしまた一面、私ども満洲において経験したことでありますが、おつかけられて逃げなくちやならない。私の見ている前で、生まれて七、八箇月になる子供が息を引取りました。それを母親はそこの所に手早く埋めて逃げ去つた、そういう状況があるのであります。自分の肉親、幾多のそうしたものを満洲に置いて来た人たちは、どういう気持でそうしたことを考えているのでありましようか。そうしたことから考えますと、そういうことまで今日さらにこの中に織り込んで、そうして高い復旧費を予算に計上しなければならないということから考えましても、これははなはだ疑問とするところであります。真に公共性のあるもの、しかもその程度の高いもの、しかも緊急性のあるもののみに限定すべきだと思います。このように特別鉱害を嚴密に甄別し、狭義にこれを限定して運用するならば、このような大げさな法案は、私は必要ないと思います。さらに進んで、復旧団のごとき、統制経済の遺物的なものも必要ありません。これは先ほども言われましたように、鉱害復旧対策委員会、そうしたものをつくりまして、あらゆる関係の方を網羅して、もちろん学識経験者の方にも入つていただきまして、それを即急にきめてやるという方が、むしろ私は得策でないかと考える次第であります。ただ最低にこの鉱害を見積りましても、年に大体十億程度の費用が必要だと聞いております。敗戰国の貧乏経済として、これを政府にのみ負えということは、あるいはむりかもしれません。そこで私は残額をその受益者が負担すればよいのではないかと言いたいのであります。受益者負担という原則を強く貫いて行くなら、復旧しないことによつて被害を現実に受ける人たちは一体だれであるか、はつきりさせてみることであります。たとえば道路であれば、その被害者はだれであるか、また復旧した場合に利益をこうむる者はだれであるか、それは明瞭であります。すなわちこういうふうに見て来るならば、大部分は当然国または地方公共団体において負担すべきものであり、一部特定の受益者があれば、その者が一部の費用を分担すればよいことになるのではないかと思います。  次に、私はこの法案を眺めまして痛感するのでありますが、石炭鉱業というものが、非常に優遇されているということであります。それはもちろん石炭鉱業という歴史性からして、戰時中といえども、また終戰後といえども、石炭産業は至上産業として取上げられて来ましたから、むりからぬことと思いますが、しかし二十四年の下半期あたりから、石炭の供給量がふえまして、結局配炭公団廃止というようなことまで至つたのであります。ところが二十三年に配炭公団時代、トン当り十六円何がしを石炭原価に織り込んで、鉱害復旧を行おうとしたころは、まだ石炭増産は戰時中と同様、超重点産業として、他のあらゆる産業よりも優位に取扱われておりました。従つて鉱害復旧の問題も何らかの形で片づけなければ、この鉱害自体の増産の計画にも、支障を来すというようなことがありましたから、そうした十六円何がしも別にふしぎでもなかつたのであります。ところが二十四年度に至るや事情はまつたく一変し、需要をはるかに上まわつて供給量がふえた結果、配炭公団が廃止され、今日要求されているものは、もう量ではありません。質の向上なり、コストの切り下げであります。そうしたことから、業界は完全に独立して自由競争の域に入つたわけであります。石炭の消費者をもつて受益者と見る考え方は、全然成立しなくなりました。石炭の価格を切り下げても、輸出の振興をはからねばならないというような時代になつて来たのであります。徹底的な自由競争による企業の合理化を強行するということになつて来たのであります。従来あまりに甘い考え方で皆さんが来られたが、もう覚められてよい時期ではないかということを私はここで強調したのであります。  それから二十円の負担金の問題でありますが、ただいまもお話したように、自由競争の時代に入つて、炭価の変動は非常に著しいのであります。ことに石炭そのものの炭質にしても、配炭公団時代と違つて価格の差が非常にひどくなつたのであります。これに対してどういう基準のもとに二十円を付加するかということをよく考えてみましたときに、この調整点をどういうふうにやつて行くかということが、あの條文では私は不完全ではないかと思うのであります。私はこのような点からも、負担する者は受益者のみに限定してよいのではないかと思います。すなわち鉱害の復旧がなされないために、直接支障を受ける炭鉱のみが分担すれば足りるわけであります。本法案に対して賛否両論多々ありまして、いろいろ言うことはたくさんありましようが、ここで再び私の叫びたいことは、同じ石炭生産業者の中で賛否両論にわかれて、今日なおこれが論議されているところに、この法案の不備が多々あると思われます。ぜひとも再考慮をお願いしたいと思います。  私は最後に三つの点を強調いたします。第一は第三條の修正であります。期間的に時期を十二月八日からとするのは、どうかと思います。大東亜戰争が十二月八日に始つたから、十二月八日以後の鉱害を特別鉱害とするのだということに、私は不賛成であります。真に命令があつて、ほんとうにやらなければいけなかつたというのは、大体二十年の三月あたりであつたのではないかということを聞いております。  なお條文の中に「増産の要請」という言葉を使つてありますが、もつとつき詰めた「増産の命令」というふうに嚴密に限定すべきだと思います。しかもそうした命令があつたら、そうしたものによつて限定さるべきではないかと思います。  次に公共の福祉を確保する上においてその要求度が高く、かつ特に緊急を要するものに限定することであります。  第二はこの認定の権限が通産大臣にまかしてあるようであります。これは先ほども申しましたように、どうしてもこの問題は別に審議会のようなものをつくりまして、そちらで決定された方がいいのではないかと思います。  最後に二十二條の減免規定でありますが、これは私が今まで申し述べましたことからしまして、無関係炭鉱は除外するということを明記してほしいと思います。さらに関係団体といえども、その利益の程度に応じて一応の費用を分担することに、修正していただきたいと思います。  以上で私の公述を終ります。

小金義照民主自由党

○小金委員長代理 この席から一言申し上げますが、公述人の一人である福岡県知事杉本勝次氏から、委員長に申入れがありました。すなわち上田十一君の発言中、杉本君の陳述に関して云云がありましたから、これについて釈明をしてもらいたいということでありましたが、これは別の機会におきまして、委員長においてしかるべくその説明及び釈明を聞くことにいたします。以上御参考までにこの席から申し上げておきます。  これにて昨日に引続きまして二十二名の公述人各位の御意見の発表は、全部終りました。この際委員諸君の公述人に対する質疑をお許しする予定でありましたが、公述人各位も二日間、長時間にわたり御出席のこととて、お疲れのこととも拜察されまするし、また貴重なお時間をさいて、御多用のところを御出席いただいておることでありまするから、いろいろ御都合もおありの方が多数ある模様でございます。そこで各派の理事諸君の申合せによりまして、これにて公聴会に終了いたしたいと存じます。  ここに公聴会をとじるにあたりまして、公述人各位に対して私から委員会を代表いたしまして、一言ごあいさつを申し上げます。各位におかれましては、御多忙中の貴重なお時間をおさきの上、二日間にわたりまして御出席くだされ、本委員会の公聽会開会の趣旨を御賢察の上、それぞれのお立場から活発に、かつ熱心に貴重な御意見を発表してくださいまして、本委員会の本法律案審査の上に、多大の参考と相なつたことと信じます。ここに厚くお礼を申し上げます。委員各位におかれましても、時刻が遅くなるまで、熱心にこの公述をお聞きくださいましたことに対して、これまた厚くお礼を申し上げます。  これにて本日は散会いたします。     午後零時五十八分散会

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