通商産業委員会公聴会 第1号
- 発言数
- 31 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1950/02/09
会議録
○神田委員長代理 これより通商産業委員会の公聽会を開会いたします。 この際公述人各位に対して一言御挨拶を申し上げます。本委員会が、特別鉱害復旧臨時措置法案の審査にあたりまして、特に公聽会を開いて利害関係者及び学識経験者その他一般の方々より、広く意見を聞くことといたしましたのは、御承知の通り本法律案は、戰時中の強行出炭に基因して発生した特別の鉱害を、急速かつ計画的に復旧することによりまして、公共の福祉を確保し、あわせて石炭鉱業の健全なる発達に資するための制度を設ける必要のもとに、前第六回臨時国会に政府より提出せられたのでありますが、これが国会提出に至る過程におきましても、特別鉱害復旧費の調達方式、すなわち従来の配炭公団のプール資金制度にかわるべき新しい財源措置をめぐりまして、特別鉱害の被害者を初めといたしまして、関係者間の懸念と焦慮は、きわめて深刻なるものがあり、これが法的措置として国会に提出されまするや、院の内部におきましても幾多の論議が展開され、また国民の各層におきましても、賛否の意見が活撥に繰り返されておつたのであります。 かかる情況下におきまして、本委員会は本法律案の取扱いに愼重を期し、前国会におきましては、会期の短日時の関係もあり、審議を終了するに至らなかつた次第であります。政府におきましては、可及的に従来の線を踏襲し、すみやかに法的措置を講ずることといたしまして、事の緊急性にかんがみ、今次第七回国会に再び提出せられたのであります。本委員会といたしましては、以上の経緯と、本案の重要性にかんがみまして、審査方針を愼重に協議いたしました結果、各党派を通じまして意見の一致を見、まず本年一月初旬、七日間にわたりまして各派の代表委員をもつて編成いたしました調査団を派遣し、山口及び福岡両県下における鉱害状況を、実地に調査いたしたのでありますが、今回は本案の審査に広く国民の輿論を反映せしめるとともに、本案に切実な利害関係を有せられる方々、並びに本案に対して意見を有せられる学識経験者、その他一般の方方の御意見を拝聽することによりまして、本委員会の本案審査に万全を期するため、本日及び明日二日間にわたりまして二十二名の、それぞれの代表の方々の御出席を煩わしまして、公聽会を開会いたすことと相なつた次第であります。 公述人各位におかれましては、御多忙中の貴重な時間をさいて御出席くだされ、委員長といたしまして厚くお礼を申し上げまするとともに、以上申し上げました公聽会開会の趣旨を御了察の上、特別鉱害復旧臨時措置法案につきまして、それぞれのお立場より、またあらゆる角度から、十分に忌憚なき御意見を御開陳くださるようお願いたしておきます。 次に、議事の進め方について、念のため申し上げておきます。公述人の発言順序は、原則としてお手元に差上げてあります名簿の順位によること、但し、必要ある場合には、委員長において随時変更し得ること、本日は被害者代表、特別鉱害関係炭鉱代表、一般炭鉱代表計十四名の方々より御意見を聽くこと、但し、特別の必要あるときは、その他の公述人よりも御発言を願うこと、なお、本日発言予定以外の公述人各位も、御多用中のところ恐縮ではありますが、御意見の重複を避ける意味におきまして、他の公述人の方の御意見をお聞きになることも、御参考になろうかとも思いますので、万障お繰り合せの上、御着席のほどをお願いいたします。公述人各位の発言時間は、おおむね二十分以内とすること、御発言はその都度委員長より御指名申し上げること、御発言は発言台で御願いすること、御発言の際には必ず御職業と、お名前をお述べいただくこと、なお、衆議院規則によりまして、公述人の発言は、その意見を聞こうとする事件の範囲を越えてはならないこと、また公述人は委員に対して質疑をすることはできないことと相なつております。以上、お含み置きを願つておきます。 それでは、まず被害農民代表、栗田數雄君より御発言をお願いいたします。
○栗田公述人 私は、福岡県下の鉱害被害関係六十二市町村をもつて結成いたしております被害者代表の栗田でございます。 炭鉱の強行採炭が原因となつた地上の悲惨な状態につきましては、先ごろ国会より特別委員の方が現地においでくださいまして、被害地の一部を親しく御踏査願いましたので、被害の実情は大体御承知のことと存じますが、被害者の苦しい現状をもう一度お聞き願いまして、皆様の御参考に供したいと存じます。 福岡県におきましては、炭鉱の強行採炭により、耕地が陷落し、水没または傾斜のために、甚大な損害をこうむつておる面積が、約一万三千町歩に及んで、二十三年九月の閣議に報告せられた関係炭鉱の明瞭なるものは、そのうち一万一千三百町歩であります。これらの耕地は、主として田面でありますが、一部落、一村のすべてにわたつている場合が多く、すなわちこれら炭鉱が国の至上命令により、強行採炭を行つた特殊地域であつたために、そこの被害農民は、一般の人々の想像も及ばない苦境に立たせられておるのであります。一例を私の村にとつてみますと、祖先伝来の美田が、三百六十二町歩のうち三百三十二町歩、九割が被害を受け、そのうち水没田が二百二町歩、不安定耕地が百三十町歩でありまして、残りの耕地は、すなわち被害を受けない面積は、地味の惡い三十町歩にすぎません。またこの村では、專業の農家が三百三十戸で、一戸当り平均耕作面積は一町二反歩であつたものが、現在ではその四分の一、すなわち二反七畝平均となつた結果は、日常の生活において、ようやく一年中の食糧を確保し得るものが百三十七戸、一部保有農家が百九十三戸であり、田植え、田の草取り等をいたしまして粒々辛苦してつくりながら、一粒の米もできずして、前年に引続いて配給を受けねばならぬ農家が十三戸もあるというがごとき事態で、そのさんたんたる状況は、おそらく全国の農民においては想像もつきかねる事実であろうと思います。かかる事態に陷らぬためには、私どもは炭鉱業者とも連絡して、過去における被害地については、これまで被害の安定した地域三十町歩を復旧する等、努力を盡しましたが、このたびの強行採炭によつて再び水没するがごとき個所も出まして、以上のような惨害を呈する至つたのであります。かくのごとき村や部落などは、県下至るところに散在しておる実情であります。 さらに家屋の被害は二万千二百十三戸でありまして、これらの住宅は、常時浸水しておるか、または傾斜のために、わずかの雨で浸水し、雨天の際は傾斜した屋根のどこからでも雨漏りがする惨状で、その家の主婦は長ぐつをはいて炊事をするというような状態も珍しくないのでございます。かくのごとき窮状に被害者は陷つておるのでありますが、ことに寒い冬の日のごときは、戸、障子がたたず、寒風が屋内に吹きすさみまして、その寒さにふるえる次第であります。農家は秋になりまして、もみほし場がなくなる、商家は日々の営業ができず、安んじて生活ができない。また最も寒心にたえないのは、小学校の校舎が受けた被害で、柱は傾き、壁は落ち、まどは満足にたたず、床はがたがたの状態で危險はなはだしく、多数の児童を收容しておるところに万一事故が発生すれば、まことにたいへんなこととなるのであります。幸いに今日までこの地方に地震などの起らなかつたことがまだしもでありましたが、もし地震なり、暴風などの天災があれば、恐るべき悲惨事が起るでありましよう。 次に、日常の飲料水についても、また想像以上の事態が発生いたしております。すなわち水道は土地の陷落に伴い、給水管の損傷、水圧の低下等にて、給水不能の地域が続出しまするし、また井戸も、地下水の異変により、まつたく枯渇する等、至るところ水餞饉を呈したり、または濁り水のためにその用をなさず、主婦は終日水汲みにかからざるを得ないというがごとき、労力と衞生上まことに遺憾とすべきのみならず、もし一旦火災等があれば、ただちに防火用水に事欠くの状態で、被害地住民は常に戰々競々としておる次第であります。 また道路河川についても至るところに被害が発生しておりまして特に梅雨時の大雨には非常に苦心をいたしております。相当の被害を受けておる炭鉱の中心筑豊の遠賀川の堤防が決壊することがあれば、沿岸の耕地数千町歩は壊滅し、さらに鉄道の幹線は杜絶するであろうし、人畜にも多大の損害があるばかりでなく、炭鉱自体も浸水によつて廃坑となることは必定であります。目下道路の復旧が中途で停止されておるため、交通上非常な苦労をいたしております。極端な事例でありますが、遠賀郡中間町の七十戸ほどの一部落の、ごときは三本の県道、幹線道路の全部が陷落して、車馬の交通まつたく杜絶えたため、目下供出米の出荷指令を受けながら供出も出来ずにおり、家計にはなはだしい苦痛を與えている現状であります。 このように物質的な困苦に悩まされるとともに、精神的な打撃をこうむつている具体的な問題には、墓地の被害があります。すなわち祖先伝来の墓石が水中に沒しまして、お墓参りもできない状態で、そのため折々の法要や盆祭りの際には、道路より板橋をかけて水浸しのお墓に橋の上からお参りしたり、あるいはまた墓地まで船を出して墓参するといつた悲壯な事実もあり、物質上、精神上こうむる被害の苦難は、一度この地に足を踏み入れていただけば、十分お察しがつくのでございます。 このような状態とならないよう、現地にあつては炭鉱に対し従来より陥落防止につき厳重交渉を重ねていたのでありますが、戰争に負けるか、負けないかの重大危機に立つた際のことであり、当時の情勢としては国家に協力しなければならないと考えて、炭鉱が行つた強行採炭に協力して来たのであります。もちろんこれが一炭鉱、一会社のためとられた行為であるならば、決してわれわれは協力しなかつたのでありまして、国のため炭鉱がむりをしてでも石炭を増産するというので、協力を惜しまなかつたのであります。つまりわれわれが今までの鉱害に対しがまんにがまんを重ねて来たのは、炭鉱のためでなく、まつたく国家のためでありまして従つてこの鉱害は国家全体のためわれわれ被害者が背負つた犠牲でありますゆえに、これが復旧にあたつては当然国と全国の炭鉱において負担して、復旧してもらうべきものなのであります。もしもこれを国と加害炭鉱のみにて負担し復旧することとなれば、経済再建の途上、企業合理化の進められている今日、加害炭鉱の負担はあまりにも大き過ぎてむりであろうし、またわれわれとしても確実に復旧して損害の補償を行つてもらえるかどうかという不安を持たざるを得ないのであります。このゆえに政府におかれましては一昨二十三年行政措置をもつて、全国炭鉱より炭価の一部をプールし、その資金を公共事業費予算に見込み、被害地及び被害物件の一部復旧に着手せられましたので、われわれ被害者としては一応愁眉を開いたところが、昨年九月半ばにして、配炭公団の廃止に伴い、右のプールに資金は消滅し、ために復旧事業はまつたく中止のやむなきに至りました。過去においては被害地の炭鉱経営者のほとんどが、全国屈指の大資本家でありましたため、被害者もある程度の信用を置き安心しておりましたが、戰後における財閥の解体等にて、まつたく信用がおけなくなるに至りました。その結果として被害地住民のわれわれ被害者は非常に動揺して、ついには過激な言動や行動が各地方に起り、破壊的な思想がようやく広まらんとしており、まことに寒心にたえないのであります。これらの運動なり行動は、被害民としてもまた炭鉱業者としても、決して利益となることなく、かえつて損失の多いことは十分わかつておりますが、被害地の復旧対策が確立しない限り、これを阻止する道がないのであります。このような状況は直接、間接に炭鉱の操業にも影響を與えておりまして、一般には炭鉱は地下作業を主とするものでありますから、地上権者とは何らのかかわりもないように思われますが、実際には地上権者の理解と協力がなくしては、事業の成績はあがらないものであることは、業者の十分御承知のことであります。 以上の観点よりいたしまして、われわれ被害者は、ここに政府の提案せられている特別鉱害復旧臨時措置法案、すなわち被害者を犠牲とすることなく、公共の福祉を確保し、あわせて石炭鉱業の健全なる発達を目的とする点において、種々の論議はありましようが、占領下に場おけるわが国の現状としては、最も事宜を得たる適切な法案であると信ずるものであります。願わくば急速に御審議を願い、一日も早く国会を通過せしめられ、福岡県下百万人の被害者がこうむつている苦悩、不安、その他あらゆる物質的、精神的困難を一日も早く取除き、われわれを救済していただきたく、ここに懇願申し上げる次第であります。 聞くところによれば、一部の炭鉱業者においては、本法案に反対して審議を阻止せられている由でありますが、不幸にしてそれらの業者が、過去における多くの事例に見るごとく、我利我利の資本家的観念に徹し、困苦に悩む被害者を踏みつけ、人は倒れても自分の利益を得ればよいというようなことであるならば、まことに遺憾この上もなく、今全国の炭鉱関係の農民または地上権者は、この法律案の成行きを十分に注目しておるのでありまして、私は全国各地のこれら関係者より激励を受けておる次第でありますことを申し添えまして、私の公述を終りたいと存じます。
○神田委員長代理 次は被害者代表の都市民代表福岡県会議員井上馨君。
○井上公述人 御紹介にあずかりました福岡県議会代表、県会議員の井上馨であります。 この鉱害問題は福岡県政上きわめて重大なものであります。あの悲惨な状況を表示するためには、とうてい私ごときでは十分を盡し得ないのではないかと、公述人の通知を受けまして以来、日夜心痛していたのであります。けれども幸いにいたしまして、福岡県の鉱害については、過般来その一部ではありますけれども、衆参両院の方々が御視察くださいましたので、大体御識認得たものと承知しておるものであります。特別鉱害は戰時中、国の要請に基いて強行採炭をしたため発生した鉱害であるということは、いまさら申し述べる必要はないかと思いますけれども、うわさによりますと、国が発令した命令は、昭和二十年六月ごろからであつたがために、それ以降の分についてのみ考慮すれば足りるのではないかという意見が、一部にあるそうであります。それはまつたくの間違いだと私は信ずるのであります。私は当時ある炭鉱の勤労部長をいたしておりました関係から、当時の事情をよく存じておるものであります。国が強行採炭を命令したのは、さきに通産委員会から逸つていただきました法案関係資料中にも明記してありますごとく、昭和十六年十二月戦時非常石炭増産運動に始まりまして、挙国石炭確保運動、石炭減産防止運動、航空機献納増産運動、決戦必勝石炭増産運動、あるいは石炭緊急対策要綱等々、次から次へと全国民的の運動が展開いたされまして、石炭の増産を強く要請されて来たのであります。御承知のように、九州炭田は石灰鉱業の歴史といたしましては、最も古いものであります。すでに老齢に達している関係からいたしまして、よほどむりをしない限り、急激の増産は困難な状態にあつたのであります。従つてこれまで鉱害を恐れて採掘していなかつたところ、あるいは坑内の保安上絶対に残さなければならなくして、とつておいたところなどを採掘しなければ、急場の間にはとうてい合わなかつたのであります。これをむりやりに採堀せしめたので、かつて業者が非常に憂慮していたあの悲惨な、しかも広範にわたる鉱害が発生したのであります。当時業者といたしましても、なるべく鉱害を軽減しようといろいろ努力したのでありますけれども、それに必要な手だてを講ずる余裕などはほとんどなかつたのであります。この無謀な増産要請によつて、はたして予期通りの出炭ができたであろうか。大体全国における出炭量は戦前三千五百万トン程度であつたと思うのであります。昭和十八年五千五百万トン台に一応上昇したのでありますが、その後は逐次低減し、昭和二十年に至りましては、わずかに二千二百万トンという程度に激減したのであります。他面炭価は抑制せられておりますので、ただちに業者の経営面に影響し、全国の炭鉱はひとしく赤字の累積を見るに至つたのであります。昭和二十一年、ころの欠損額は実に八十一億余円に及んでおると聞いておるのであります。この窮状を挽回するために業者は、ひとしく格段の努力を続けておるものと考えるのであります。 特別鉱害の復旧が、きわめて重要かついかに速急を要するかは、業者もひとしく痛感するところであるとはいえども、かくのごとき状態においていかんとも手の下しようがないというのは、当然のことであろうと思うのであります。ここにおいて政府は特別鉱害発生の因果関係を考慮せられ、一昨年来一応行政措置として、これが救済策を講ぜられたものと思うのであります。その後石炭事情の変化によりまして、わずかに一年有余にして、この制度もなくなつたのであります。昨年六月ごろ配炭公団廃止のうわさが、世上流布せられるようになつて以来、私どもはいたくこれを心配いたしまして、何とかして復旧工事の継続ができるように、常に関係方面へ陳情を続けていたのであります。政府もまたその必要を認め、ここに本法案が国会へ提出されることになつたと考えるものであります。過ぐる臨時国会におきましては、不幸にいたしまして、法案の成立を見なかつたのでありますけれども、今回は是が非でもすみやかに審議を了していただきまして、一日も早くこの法律が公布せられんことを切に待望してやまないものであります。 私はここに特に一言申し上げたいと思いますることは、鉱害による物質的な損害が莫大であるということは、もちろんでありますけれども、福岡県におきましては、この鉱害によりすでに人命の危機にさらされているという事実があるのであります。私の郡内二瀬町におきましては、河川、堤防が著しく陥落しておりましたため、昨年八月の暴風雨により瞬時にして、この堤防が決壊して、沿岸の住宅は千四百七十余戸が流失あるいは倒壊、浸水し、一名の死者をも出し、七千百三十余名の罹災者を出したのであります。当時町長より県知事にあてた惨害の報告書の内容には、日没前のできごとであつたがために、一名の犠牲者にとどまつたことは、まことに不幸中の幸いであるというこの一文を見ました。いかに悲惨な状況であつたか、いかに二万数千の町民が、恐怖の底に巻き込まれていたかを、余すところなくこの一文が物語つていると、私は信ずるのであります。報告書のごとく、もし日没後であつたといたしますならば、数百、数千の死傷者が出ておつたろうと想像いたしまするときに、私どもは冷水三斗の思いをするものであります。またこの悲惨な鉱害を何とか解決したいと念じ、公述人に指定を受けました山口県の被害者代表のごときは、病床にあるにもかかわらず、昨日参議院に公述人として出席し、ために公述後喀血して入院したというこの事実、直接沈下の鉱害でこそないけれども、これが鉱害と無関係であると考えられましようか。この類似の状況は筑豊全体、いな九州全体に広がつておるのであります。かくのごとき鉱害を、このまま放置しておいてよいでありましようか。被害者百余万人が、この法案の成立を切望しているゆえんをどうぞ御推察をお願い申し上げたいのであります。 この席における私の立場は、被害者である県議会を代表しておるのでありますけれども、実は私も炭鉱を佐賀県と福岡県に各一鉱ずつ、経営しておるものであります。開鉱は昭和二十年の九月でありまして、期間的にも特別鉱害とは全然関係を有しておるものではありません。しかも地理的に見まして、決して将来とも鉱害の発生するところではないのであります。従つてこの法案が成立いたしますならば、私としては当然納付金を負担し、言わば損をこうむる立場にあるものでありますけれども、この法案の二十二條を修正するがごとき、勇気の持合せはないのであります。特別鉱害の復旧は、その因果関係から見ましても、まさしく業者の協力によつて、また同胞愛の見地からいたしまして、相互扶助の精神をもつてやるべきであるということを、固く信じて疑わないのであります。九州におきましても、現業の炭鉱は二百八十七鉱を数えております。しかもそのうち関係炭鉱は、九十六鉱でありまして、無関係炭鉱は実に百九十一鉱もあるのであります。けれどもたれ一人反対している者はいないのであります。また一部に次のような意見があるやに聞きまするが、九州炭田の業者は、今まで残してあつた手近かなところを採掘したがために、莫大な利益を得ているという人があるそうであります。これこそまつたく何かのためにせんとする考え方にすぎないと、私は断言したいのであります。当時熟練した工員は、各炭山とも次々に戦争に召集されまして、これを補うのに国民徴用令、あるいは勤労動員令等を発令いたしまして、石炭採掘には全然未経験の農村人、あるいは都市のか弱い青年、これを徴用し、また朝鮮人までも動員して工員としたのであります。これがため不なれな炭鉱労務者は非常に増加し、死傷者はまた急激に上昇、あまつさえしろうと工員の作業は、その能率において極端に低下したのであります。これは掘れば掘るほど損をするという実情であつたのであります。このことはひとり九州の石炭業者だけでなく、全国の業者がひとしく体験した事実と思うのであります。これを立証するには、当時政府のとつた石炭に関する価格調整補給金の制度を見ましても、明らかであると存ずるものであります。 以上のような理由をもちまして、私は本法案に絶対賛成を申し上げるものであります。早急に特別鉱害を復旧いたしまして、民生の安定をはかり、もつて経済の再建に臨むことは、今こそ私どもに課せられた重大な任務だと存ずるのであります。何とぞすみやかに本法案の審議を了せられんことを、切にお願い申し上げまして、私の公述を終わるものであります。
○神田委員長代理 次は同じく地方公共団体代表、福岡県知事杉本勝次君。
○杉本公述人 私は福岡県知事杉本であります。 県下に百五十の炭鉱を持つておる福岡県といたしましては、この鉱害の問題は、県政上きわて重要な問題でありまして、これがため県の機構の中にも、特に鉱害事務局という部局を持つております。また官民をまつたく一丸としたる福岡県鉱害対策協議会があるのでありますが、この法案につきまして、前の臨時国会以来、この通産委員会におかれまして慎重に御審議をいただき、またさきには鉱害問題のための特別の調査団の御派遣をいただきまして、つぶさに現地の実状をお調べいただきましたことに対し、私はまずもつて衷心感謝の意を表したいと存ずる次第であります。 いかにこの鉱害が深刻かつ悲惨なものであり、また広範囲にわたつているものであるかということにつきましては、すでに調査団の方々において、一応の御認識を得ていることと存じます。またさきに栗田氏の公述においてもお聞きの通りであります。またこの部屋に掲出してありますところの二十数葉の写真が、如実にこの悲惨を物語つていると存ずるのであります。本委員会におきまして、これまでいろいろと論議せられた点につきましてもいささか承知しておりますが、私はこの特別鉱害の復旧についての法的措置として、この法案は最低限の線であるとしてこれを支持し、この法案に賛成いたすものであります。公団プール資金制度をもちまして、特別鉱害に対する復旧事業が取上げられまして、わずかに一年と三箇月、ようやく被害の一割程度を復旧しただけで、昨年の九月配炭公団の廃止とともに、これが今日においてまつたく工事をストツプしている。もしこのブランクの状態をもつてこの事態を放任するならば、これは実に容易ならざる社会問題であるということを、私はここに切言いたしたいのであります。鉱害の現状のいかにさんたんたるものであるかということを耕地、河川、堤防、橋梁、道路、鉄道、上下水道、井水、宅地、建物、墓地等にわたりまして、詳細に説くことは時間の関係もありますから、私はここに省略いたします。先ほど栗田氏の公述は主として耕地あるいは墓地にわたつての説明でありまして、この全般に及ぼすことは、なかなか長時間を要することであります。従つてこの特別鉱害をいかに処置するか、これをいかに救済するかということは、これはきわめて重要な深刻な問題でありまして、一たび現地を視察された方においては、ひとしくこのことを痛感されるところであると私は確信いたします。この法案に反対せられる人といえども、この点についての異議は毛頭ないことと確信するのであります。 この法案の対象とするところの特別鉱害と、通常の鉱害との区分につきましては、あとで少しくこれに触れたいと存じておりますけれども、そもそもこの特別鉱害の救済をいかなる方法でやるかということは、いろいろなる條件あるいは戦後の事情、その他複雑なる関係におきまして、簡單には論定し得ないものがあるということを、私も考えさせられております。第一その責任論ということを考えてみましても、国の責任はどうであるか、鉱業権者の責任はいかん、あるいは地元公共団体に責任があるかというような問題につきましては、まず国が戰力増強の必要からして、当時至上命令的に強行した採炭の跡始末であるから、全面的に国の責任である。これが復旧は国が全責任を負うべきであるという論は、一応世論であると私は思うのでありますけれども、戰時補償一切打切りの線から下るならば、この国の責任も解除されて、国の責任は残らないという論も成立つのであります。また一般鉱業権者について申せば、鉱業法上の賠償責任はもちろんありますけれども、これは原則として金銭賠償に限定せられております。現状回復の義務はないものであります。いわんや鉱害の発生を無視して、強行採炭を要請せられた点につきましては、不可抗力的な要素が加わつておりまするので、鉱業法上の義務第七十四條の二の規定するところの、いわゆる賠償義務をそのまま適用するわけにも行かないと思思うのであります。さらに関係の県あるいは市町村については、これはまつたく被害者の立場でありまするから、賠償責任を負うべき筋合いのものとは思えないのであります。このように考えて来ると、責任の所在がまずもつて問題となるのでありますけれども、かくのごとき冷い責任論をもつてしては、この切実なる悲惨なる特別鉱害問題の解決はできないのであります。問題の実態はここに嚴存し、絶対に放置し得ざるこの惨状を、すみやかにかつ計画的に復旧するにはいかにすべきか、この社会問題をいかにするかということが、この法案の意図するところであります。もしこり法案に多少の欠陥があるとするならば、これをよりよく修正していただくということは、もとよりけつこうでありますけれども、今日までの復旧工事の継続に、大きな支障を来すような扱いをされるといいうことは、われわれとしてはまことに遺憾千万であります。われわれの立場は、この法案をすみやかに通していただきたいという立場であります。問題は、無加害炭鉱にもひとしく納付金を課するという点、もつともこれは第二十二條の減免規定が関係いたしますけれども、この点が第一不都合であるという論が、強硬に一部論議せられて来ていることを承知いたしております。この議論を徹底して行く場合にはこういう結論になります。すなわち納付金は加害炭鉱だけに課すべきものである。その加害炭鉱といえども、與えた鉱害の程度に応じて、納付金に厚薄をつけるということが、そのものの徹底した行き方である。従つて無加害炭鉱は一切納付金を出さない。復旧事業には関係しないということになりまして、もしこの行き方で行くならば、この法案の意図するところは、まつたく没却せられます。この法案が社会立法として、その第一條並びに第三條に公共の福祉ということを掲げておることも、まつたくその意味を失うことになると思うのであります。言うまでもな鉱害の程度というものは、〇%から1〇〇%までの段階があるわけでありまするから、この法を推し進めて行く場合、加害炭鉱だけで復旧団を設けて、納付金をプールするということになりまして、結局自分の山の鉱害は、自分の山だけで復旧するという行き方になると思うのであります。それではたしてこの問題の解決を期待し得るであろうかと、私は憂慮いたすのであります。以下私の議論でありますが、二、三の点を申し上げたいと思うのであります。 第一点は、国の責任ということに関連いたしまして、戰時補償打切りという問題についてであります。戦時補償一切打ち切りということは、本質論としては、元来むりなる原則であると思うのであります。ただ現実に国の財政力から、他にいかようにもしようのない問題であるという点、その意味からのみ、この原則もやむを得ないとされるものでありますけれども、これが基準となつて、すべて右へならえということになるならば、そこにいろいろな無理が生じて来るということは必至であります。国が特別鉱害のために補助をするということは、戦時補償の一種ではないかという議論もあつたとも、伺つておりますけれども、これは他の一般の場合とは相当程度の区別ができるのではないかとも私は思つておるのであります。福岡県で申すならば、六十二市町村にわたつて、この鉱害は、その地方の一帯の社会的不安を醸成いたしております。軍に個人の財産に対する補償というようなことではありません。差迫つた社会不安の除去のために、いかにするかという問題であり、この場合できるだけの援助を国がなすということは、決して筋の通らない話ではないと、私は思のでありまして、法案にもこの性格は出ていると存じております。 第二点は、無加害炭鉱の納付金負担の関係でありますが、私は法律的な言い方はしばらく別といたしまして、むしろ社会感情に訴えて、次の諸点を考えていただきたいと思うのであります。戰時中、ことに戰争末期におきまして、北海道には八十万トンの貯炭があつたが、この石炭を本州に運搬することができない。当時機械、設備の一部と数万の労務者が九州、山口に送られて参りました。ここにむりな採炭が要請せられまして――現在福岡県では全国出炭量の四〇%を出しておるのでありますけれども、戰時中は統計が示すごとく実に六〇%を引受けておつたのであります。そうしてその陰にかくのごときさんたんたる特別鉱害を残した。わが国すべての石炭鉱業に要請されたこの犠牲が、特に福岡県、山口の鉱山に重く課せられたのであつて、この復旧についての跡始末を、わが国のすべての山が力を合せて、引受けていただくことはできないものであろうか。これは戦後のことであり、一昨年のことでありますが、宇部興産の沖の山炭鉱に災害が起り、炭坑が水没したときに、その復興のために業界全体としてもこれに対する援助を惜しまなかつたと、私は確信するのであります。この問題につきましては、昨日宇部興産の上田さんから私の発言に対しての反駁はありましたけれども、私の所論は昨日においても決して間違つておつたと、私は思つておらぬのであります。これは私は業界が今日まで相助け、相協力して来たということの、一つの例としてあげたことでありまして、その問題はこの本筋に関係はありませんから、その金額が幾らであつたというよなことは、この席では申しません。 大体石炭企業の性格からいたしまして、戰時中から傾斜生産方式がとられて参つておりますし、国のお世話を受けたことも、きわめて多いのであります。業界が相寄り、相助けて参つたとうことは、きわめて多かつたと、私は確信するのであります。その石炭によつて戦時中は戦力を持ちこたえ、戦後は経済再建の基盤が築かれて来た。しかもそのあとにこのような惨害を残して、多くの人に迷惑をかけていることについては、国も業界も及ぶだけの力を貸して、その復旧を援助しようというような素直な考え方が願わしいと、私は思う次第であります。原因は完全な戦時統制経済時代のものであり、しかもこれを解決しようという現在は、自由経済の今日であります。従つてるならばそこにいろいろ問題があり、利害の対立が出て参つておりますけれども、今後といえども業界としては共同の利害を主張し、相協力して起つべきところの場合が、必ずあるべきであると思います。 憲法論については、別に専門家の公述もある由でありますので、私はさしひかえたいと思いますけれども、私としては、憲法論についても違憲論はあり得ないと、確信しておるのであります。私は必ずしも憲法についてはしろうとではありません。はなはだ失礼な言い方でありますけれども、私も教壇に立つておつたときに憲法論を講じ、また二十一年、この新憲法の制定当時におきましては、衆議院に議席を持つて、この特別委員の末席をけがしておつた者といたしまして、憲法論につきましては多少の考えは持つておるつもりでありますが、私の考えからするならば、この問題は憲法論にかかることはないと確信いたしておるのであります。以上述べたような事実からしても、十分説明がつくと考えまするし、また生きた政治としては、なおさら問題ではないと思うし、あるいは、たとえば農業の問題につきまして、農業共済組合の強制加入というような場合には、いつも憲法論が出て参りますが、私はこの点に関連いたしまして、憲法論はあり得ないと考えておる、その立場をここに一言いたしておくにとどめたいと思います。 次に一般鉱害と特別鉱害の区分につきまして、これは専門家からの公述があると思いますが、私としてはこのことだけは申し上げておいて間違いはないと思います。昨日の参議院においての公述において、青山教授のお話がありましたけれども、それは私が考えておつたこととまつたく同じであります。大体においての見当では、特別鉱害と一般鉱害においての区別はつくはずである。しかしながら数学的な正確さをもつてこの部分が一般鉱害である、この部分が特別鉱害であるというように、具体的に論証するということが困難な場合が必ずあると思います。しかしながら大体の見当においては、決して間違いがありませんので、この特別鉱害の認定については、第三條の審議会が認定にあたつて、嚴正を期するというこ。またわれわれが地方の被害者について述べる場合に、そういう方々がこの特別鉱害に便乗して、一般鉱害の復旧をも希望するということのないように、指導する必要があると私は思つております。なおこの点は現地御視察の際にも、十分御説明はいたしておきましたので、今日あまり誤解はないかとおもいますけれどもなお、次の点からも御了承をいただき得ると存じております。すなわち一昨年九月の、関係各省の福岡県鉱害復旧費共同調査によりまして、その数字が出ております。その福岡県の鉱害復旧費総額として百三十億円が出ておりますが、そのうち八十九億円に、いわゆる特別鉱害であるということになつております。福岡県のだけで八十九億円、九州、山口の分を加えたものは九十八億円を査定されておりますが、これを今回の数字においては大体五十億円と押えてあるようであります。これらはよほどの圧縮と言わねばなりませんので、この点からいたしましても、特別鉱害に便乗して一般鉱害の復旧をやるという余地は、まつたくないものと私は思うのであります。 以上をもつて私の公述を終りますが、われわれは戦時中の戦力増強、戦後の経済再建のために、多くの犠牲を拂つて参つたのであります。もとより国のために奉仕することはわれわれの素志であり、本懐であります。しかしながらその後の措置について、跡始末について、国も国民もひとしく考えてもらわねばならないと思うのであります。当時の政府が何を約束したかということを、今日ここで申すのではありません。観点をかえて、この実害の認識の上に、社会問題化しておるところの現地の不安の除去のために、また新しい公共の福祉のために、また国民経済復興の名において、早急にこの解決をお願いいたしたいと存ずるのであります。本法案は右の見地からして、きわめて重要なる社会立法であると信じまして、これが成立を福岡県被害民百万の熱望をもつて、私は強く要望いたす次第であります。
○神田委員長代理 次は同じく福岡県直方市長、行實重十郎君。
○行實公述人 私が御指名を受けました直方市長行實でございます。 本公述に先立ちまして、一言御礼を申し上げたいと思うのであります。過般は年の初めの屠蘇の香もまだ消えやらぬ三日から、遠く九州の地まで、本法案の重要性を認められまして、わざわざ被害地を、風雪の中を数日にわたり親しく御視察をかたじけのういたし、今また私どもを召されまして、つぶさに鉱害の実情をお聞きくださるこの機会を與えてくださつたことを、衷心からお礼を申し上げたいと思うのであります。 御視察の際に私どもにお話くださいましたお言葉の中に、この被害は何とかしてあげねばというあの御親切なお言葉が、今なお耳に残つておるのであります。この意味におきまして、御視察の結果を一応は思いたしていただきたい。かように考えておるのであります。見渡す限り田も畑も一面の湖水となつて、水の中に墓地がぽつかり浮び上つておるその状態を。従つてその水没のために三方も四方も道がなくなりまして、交通が完全にできない、わずかに農道によつて行きかいしておるあの悲惨な、哀れなありさまを。さらにまた井水は枯渇して、飲むに水がないために、川の水を汲み上げて、日常の糧にしておる実際を。さらに学校を見ていただいても、軒は傾き、窓はあけつぱなし、ねじれておればねじれたままなこのありさまを。かようなありさまの中におります被害農家も、供出の面におきましては、默々として国家の要請にこたえ、車を通す道がなければ肩で、あるいは脊で、ともかくも供出の義務だけは果さねばならぬと懸命になつておるのであります。さきに公述されましたお方の仰せられる通り、県下においても一万千三百有余町歩の被害地がありまして、これがために収穫の欠損を生じておりますのが、五十七万有余町歩になつておるのであります。家といたしましても軒が傾き、戸か倒れておる家屋が、二万三千余戸に及んでおる。この被害の実情を御視察くださいました先生方から、さだめて御報告はあつたことと思いまするが、どうかこうしたことを一応思い出していただきたいと思うのであります。この中にあります被害者が、一日千秋の思いで本法案の成立を一つの救い神のごとくにして、待ちこがれておることを想像していただきたいと思うのであります。この法案が成立して、すみやかに復旧をしてもらいましたところが、特別に被害者が利益を受くるということはあり得ないのであります。しかるにうわさに聞きますと、何か陷落成金ができたとかいうようなことを、放言せられる無責任な人もあるそうでありますが、これはもつてのほかのことでありまして、一生懸命に被害者が炭鉱に、国家にお願いいたしましても、前の状態よりも、さらによくしてくださいということを申しても、決して認めてくださるはずはないのであります。ようやくいれて、復旧をしてくださつても、前の通りになれば、ほんとうにようやくのことでありまして、この悩んでおります被害民の気持をくまずして、そういうことのために被害者が利益を得るというようなことは、一応取消していただきたいと思います。こうして被害者がこの地下資源開発のために困つておる原因は、地下の採掘をすれば、必ずや地上の物件が被害をこうむるということは、始めからわかり切つておるのでありますが、それに対しての対策が一つも講じてないのであります。国家は資源開発を資本家に命じまして、第三者が必然的にこうむる被害復旧の責任を、計算高く、資金と利益関係に支配されます業者にまかして、第三者の保護に何らの考慮が施されてないことはもまことに私どもの遺憾とするところであります。 一例を申し上げまするが、名前は申し上げられません。遠慮いたしておきますが、これは参衆議員のお方も、一応御視察くださいましたことでありますから申し上げますが、いかに資本家が親切に被害民に救済をしてやろう、復旧をしてやろうといたしましても、資金あるいは物資の関係その他におきまして、十分に思うようにならないことは、この一例からして御了察を願いたいと思うのであります。昨年の秋でありました。ある部落に参議院のお方と一緒に視察に参りましたが、その部落は、家はむろん傾いておりますが、大事な大事な井水が一つも出ないのであります。そうした関係で、さつき申しましたように川の水をこして飲んでおられるのであります。ところで炭鉱のお方は、これは自分の災害の関係であるから直してあげたいというて、しきりにその間に奔走されておるのでありますが、物資がない、金がない。してあげたいけれどもただちには間に合わないというて、非常に炭鉱のお方も困つておられたのであります。そうしたことを見ました市のお方が、これは市民に対していかにも気の毒だということから、炭鉱の業者とお話し合いをいたしまして、一応市が立てかえまして水道を敷設した事実があるのであります。これは決して炭鉱の業者がしてやらぬのではなくて、やれないのであります。こういうことも国家の力でやるならば、あるいはそういうことが、市の力でさえもできるものである以上、これは完全にでき得るのではないかと考えるのであります。さらにまた被害者と業者の間に、いろいろ政治上欠陷がありますために、被害の上でいろいろの紛争を来しておることは枚挙にいとまないのであります。これまつたく政治の欠陷であり、法の欠陷であると思うものであります。そうした間におもしろからぬ人間が介在いたしまして、そうして炭鉱も困るし被害者も困るようなことも、たまにはあるのであります。この好ましからざる風潮が、現在では百姓にも商家にも、とうとうとして全部に行き渡つておるのであります。こういう結果を生じましたことは、返すがえすも国家の責任であると、私は考えるのであります。しかし私は、この問題につきましてはさらに意見がありますけれども、あまりこの問題を突き進んで申し上げますと、本問題に遠ざかるきらいがありますので、一応これはこれにとどめますが、復旧ということは先ほども申しますように、旧態以上に直すという方法ではないのでありまして、第三者が不当の利益を得るというようなことは絶対にないということを、御認識願いたいと思うのであります。そうした当然第三者が復旧をしていただかなければならぬ権利があるにもかかわらず、数度にわたつて業者あるいはそれぞれの機関にお願いを申し上げまして復旧をしていただいた。そうした結果はおかげでよかつた。あなたのおかげでこういうふうに家屋も直りました、田も直りましたというて、自分の権利なんということは毛頭考えておらず、そうして業者に、あるいは仕事をする請負人にまで頭を下げて喜んでおるのであります。この被害者の心持に比べまして、この法案に対し鉱業権者の一部に反対があるように承つておりますが、そもそもこの法案は鉱業の健全な発達をはかるとともに、半面被害者の希望にこたえ、一般公共の福祉を増進することが目的であるのであつて、業者自体も本案の趣旨を生かしまして、大乘的見地から何とか考えてもらいたいものと思います。たとえて言えば業者は地下資源の採掘を国家から託されておるのでありますが、この託されるにつきましては北海道も九州も、はた常磐も宇部もみな同一條件で許されておることを考えてもらわねばならぬと思うのであります。反対せられておりました無加害業者は、この九州方面の業者が一トン当り二百円も一般鉱害に日常の負担をしており、さらにその上にこの法案の負担を負わされておるものと比較して、無加害炭鉱業者はいかに天與の惠みを受けておる境遇であるかと私は考えるのであります。この天與の條件に対して感謝してこそ至当ではないかと、極端ではありますが考えておるものであります。この法案は戰時中に国家の強制命令によりまして起りました被害であるがゆえに、政府において当然責任を負うべきものという建前から、一昨年より政府はプール制度の行政措置によりまして、国家と業者と消費者とが直接間接にこの負担をいたしまして、関係炭鉱の責任により復旧工事を起こされておつたのであります。たまたま昨年九月配炭公団の廃止によりまして、右ような行政措置ができないということになつた関係上、それにかわるに本法案が法制されることになつたのであつて、いわばプール制度の延長あるといつても、さしつかえはないと思うのであります。このプール制度の時代においては、全石炭業者は一人として反対する者はなく、この制度の前に業者はともに直接間接に恩恵によくしておつたのであると、私は信じておるものであります。このことはすでに私が申すまでもなく、業者その他一般の周知の事実でありまして、この時代に賛成をしておられました業者が、自由経済になつたからといつて、たちまちほこをさかさまにして反対せられることは、ほんとうに被害者に同情されておるかどうかということを疑うものであります。負担が直接伴わないことならば同情をするが、自分が負担をすることならば反対するということは、ほんとうの同情とはちよつと受けとりかねるような気がいたすのでございます。これをプール制度の延長であると考え直していただくことはできないものでありましようか。国家がこの鉱業に全面的に責任があるとともに、この被害の惨状を一日も早く復旧してやらねば、被害者に気の毒であるということは、業者のひとしく一致しした御意見であるのでありますが、たまたまある事情において国家が全面的に負担を負いかねるというやむを得ざる事情のもとに、業者諸公と共助の意味において、本法案にぜひ賛成してもらいたいということは、政府の本法案提出の初頭における説明で明らかなところであります。 以上の通り政府においてやむを得ざる処置としても業者及び国家、さらに一部の被害者に負担をわかちて、とにもかくにも一日も早く復旧に着手せんというのが、政府の立案の本旨なのでありますが、口では特別鉱害については臨時措置法自体に対しては絶対に反対はせぬが、負担はごめんをこうむるということであるのであります。そのかわりに国家に全面負担をせよということですが、それは結果においては、政府ができないということを強調されることから考えまして、本法案に反対をしておられる結果となるのであります。そうしたことによりまして、困るのは私ども被害者でありまして、被害者が気の毒であるということが、ほんとうにおわかりであるならば、この間に何とか一致点を見出してもらうわけには行かないものでありましようか。無加害炭鉱は負担には応ぜず、また一方では国家の当然負うべき負担を業者も負うてくれという国家の要望である以上は、国家が均等に地下資源の開発を託されておる業者全般において負うものであると、互いに議論をなしておられますが、私ども被害者は黙々として自己を忘れて協力しておる立場からして、絶対に本法案は通過させてもらわねばならぬのでございます。われわれ被害者といたしましては、現実に迫られておる問題であります。これ以上業者が激つておることは、まつたく承知できない次第であります。私ども業者に全面的に協力しておる者からいたしまして、いずれの反対業者を見ましても、宇部も北海道も常磐もわずかトン当り二十円以下の負担は、これが本法の死活になるほどの重みではないと、私は見ておるのであります。さらにそれをそれ以上に主張さるるのは、要するに事業の業績をあぐるための主張ではないかというようなことをも推測されるのであります。私の知つておる範囲におきまして、筑豊炭田の業者で、トン当り二十円の負担に耐え得るかどうかと思われるような者も、黙々として負担に応じておるのであります。さような被害者の気持と、業者のただいままでの行動を静かに考えてみまして、いかにも私どもの納得のしがたいものがあります。重ねて業者諸君に私は御反省をお願いいたしたいと思うのであります。この問題で業者が甲乙双方にわかれる、そうして将来ともそうした対立的な場面になると考えてみますならばも相互がこれまで結束して幾多の業績をあげました面を打切りまして、目のことにのみ汲々として、将来の業界の発展に資せんと考えられぬことは、実に私は悲しむべき現象であると思うのであります。この意味において業者の反省を重ねぐお願いいたします。 本法案につきまして一言申し上げたいのは例の第二十二條でありますが、あの減免措置の條項が実行の上において、お困りになるようなことがあるのではないかと思うのであります。九州方面におきましても、無加害炭鉱は相当にあるのであります。さらにまた低品位の炭鉱も同様でありまして、そうした炭鉱の方は主として中小炭鉱のお方で、二十円の負担が苦になるような炭鉱が多いのであります。そうした業者が今度二十二條で通産大臣に食い下つたならば、この法案の実施上相当に支障を来しやせぬかと考えるのであります。但しぜひ修正してくださいといいう、強いことは考えておりませんが、一応こうした線にお考えを願いたいと思うのであります。 さらにこの法案がいろいろの事情のために、不成立に終ることになつたならばどうなるかということを、私は考えてみて、はだにあわを生ずるの思いがするのであります。そうした結果被害者の将来は一体どうなるでありましようか。取残された被害者もそのまま黙つて手をつかねて見ているものでありましようか。私は土地柄なり、気質柄なりをよく知つておる立場からいたしまして、決してそんなことで手をつかねて見ているような人ばかりではないと思うのであります。それを極端に言い現わしますならば、あるいは暴動化するおそれがあるのではないかと思うのであります。しかしそうしたことは皆様のお力によりまして押えることはできましようが、心に持つております暴動の気持は、とうてい押えることができないのでありまして、この間にはまたおもしろからぬ空気が、その中につくられまして、大きな社会的の騒擾になるおそれが十分にあるのでありまして、この結果国を恨み、行政を恨み、さらに事業を恨んで、必ずや事業の上に支障が来るような結果になるのではないかと、私は非常に心配をいたしておるものであります。そうした意味におきまして私ども関係の市町村におきましては、この法案には絶対絶命のものでありまして、是が非でも通過をさしていただいて、百万被害民の安心の行くような方法をとつていただきたい、かように考えておるものでありまして、さきに御視察になる前の日に、関係六十有余の市町村長が集まりまして、この法案が不成立になるようなことがあつたならば、一人々々が佐倉宗五郎になつて、どこまでも社会のため、郷土のために闘おうじやないかというかたい決心をいたしておるのであります。そうした意味におきまして一部の人が不平を持つているから、承知せぬからということで、法案を修正あるいは不成立に終らせることのないように、賢明なる議員諸公の御正断を仰ぎたいと思うのであります。その他におきましてさらに申し上げたいこともありますけれども、時間の制約もありますので、私はこれをもつて本案の無修正通過を念願いたしまして、公述を終わりたいと思います。
○神田委員長代理 次は同じく町村側代表、長崎県高島町長福崎俊多君。 なおこの際御参考までに御注意申し上げておきます。公述人の方々に、制限時間を十分お守りしていただくようにお願いしておきます。
○福崎公述人 ただいま御紹介いただきました長崎県の高島町長福崎であります。もうすでに十二時を過ぎておりますので、なるべく簡單に片づけるようにいたしたいと思います。 昨年の四月配淡公団廃止後プール資金の廃止によりまして、この鉱害復旧がどうなるかということが、私どもの悩みの種であつたのでございますが、その行政措置にかわるものとして、ここに法案が提案されましたことは、おそまきの感がありますが、まことに感謝感激いたしておるわけでございます。きわめて簡單な法案のようでございますけれども、二回、三回、五回と回を重ねて読むに従い、この法案の実に意味深長な、よくできておることに心から賛意を表するものでありまして、本案が無修正で一日も早く成立することを、念願してやまないものでございます。なお本案の問題になつております二十二條につきまして、少し言及してみたいと思うのでありますが、その以前に長崎県の離島における鉱害の実情をごく簡單に説明してみたいと思うのでございます。 私の島は百二十メートルの権現山という山を中心にいたしまして、周囲四キロのきわめて小さな島でございまして、そこに人口一万人、鉱害を受けておるところの現住民が三千四百、こういう実情でございますが、この百二十メートルの権現山が数年間に高さがニメートル低くなつておる事実であります。科学的な測定ではございませんが、私のところで一般に申しております測定の方法をまずごひろうしておきたいと思いますのは、その権現山の、頂上に上つて東の方を望めば野母牛半島越しにはるかに雲仙岳を望むことができたのでありますが、現在権現山から雲仙岳を望もうとする場合には、一間半ものはしごに上らなければ見えない事実でございます。少くともニメートルはこの権現山が低くなつておる。この事実が家屋に、耕地にあるいは井戸にいろいろな被害を及ぼしておることは申すまでもないわけでございます。さらにそれよりほかにこの離島炭鉱の特異性といたしまして、至上命令によつて採炭をいたしました結果、防災設備をしないでボタを海底に捨てたことでございます。すでに十万坪にわたるところの、ボタが流れておることを炭鉱側でも承認しておられます。従つてその沿岸には魚族の繁殖ができない。特に御承知の伊勢えびのごときは石の下だとか岩の穴に棲息するものでありますが、ボタのためにそれが埋まつておりますから、伊勢えびの棲息が全然できませんので、伊勢えびが絶滅でございます。その次にわかめ、ふのり、貝類というものは絶滅をいたしております。農耕地に行けば亀裂、陥没で農作物はできない。海に行けば魚はとれないし、家に帰れば軒は傾き床は落ち、井戸にいつても水は出ない。明日の生活を、だれが保証するか。それよりあすの生命をだれが保証するかというような非常な苦境に追い込まれておる。この事実を一日も早く救つていただきたい。雨戸はくるものではなくて、たてるものである。これは先般福岡においでいただきましたときに申し上げたように、雨戸をさらさらとくるというようなことは、これは夢の夢でありまして雨戸を一々はめたりはずしたりしなければならない実に哀れな現状でございます。 かくのごとき被害を一日も早く救つていただかなければならぬということは、すでに現地御視察の折に、御承知を願つておるわけでありますが、一体この責任の帰趨をどうするか。今まで公述された方々のは、きわめてやわらかなお説でありまして、この責任の帰趨はだれが何と言つても私ども被害民の立場から考えれば、加害炭鉱が徹頭徹尾、破産をしてでも復旧をしてやらなければならぬ責任があるということを、ぜひ御認識を願いたい。しかもその加害炭鉱に対して至上命令を出されたということ、さらにまた監督上の立場にあるところの政府が、同じような責任を負わねばならぬ。加害炭鉱と政府は同じにとことんまで責任を負つていただかなければ救われない。 さらにまた非加害炭鉱の問題でございますが、非加害炭鉱は、これまた加害炭鉱と政府と同列の責任を感じなければいけない。なぜ私がそういうことを申し上げるかと申しますと、戰争中から終戰後においての石炭鉱業は、国民の犠牲において、いずれの産業よりも最も政府の保護を受けたものであります。国民はあらゆる犠牲を忍んでおる。政府はあらゆる手を打つて石炭鉱業を保護しておる。ただたまたまそうした惡いくじを引かなかつたというにすぎない。加害炭鉱というのは、惡いくじを引いたのであつて、政府から同じ国民の犠牲において保護をせられた石炭鉱業が、加害炭鉱だとか非加害炭鉱とか言われる筋合いではない。おそらく今年の資産の一町評価においては、石炭鉱業が最もふくれておるということを私は固く信じております。それだけ石炭鉱業というのは、国民の犠牲において政府はあらゆる方法によつてこれを保護しておる。だからこの際幾百万、幾十万のこの鉱業地の被害民を救うためには、加害炭鉱と非加害炭鉱とを問わず、手を取合つて政府と協力して、何とかしてこれを復旧していただきたい、救つていただきたいという念願でございます。 さらにまた戰時補償とこの鉱害補償との問題につきまして、一言言及してみたいと思うのでございますが、私も二十年の長崎におけるところの原子爆弾において全焼いたした一人でございますが、まつたくの無一物になりまして、その年にはしらみがわく、何も着がえがない、草履をはいて登庁するというような、きわめてあわれな生活をいたしましたが、あの燒かれた直後におけるところの心理状態は、やれ、これでさつぱりした、あすから空襲があつても荷物を持ち出す必要はない、こういう気持でありました。それは私の戦争に対する協力の気持が、はつきりしておつたのでありますけれども、これに対しては、もう決して家を建ててください、家財道具を返してくださいということは申しません。しかしながらこの鉱害はいつの間にやら、知らないうちに働けど働けど生活は苦しくなつて行くというように、地方は減退して行く。いつの間にやら寝ておるうちに雨戸は動かなくなる、床が落ちて行く。こうした被害が次から次に起つて来るのを平気で見ておられるか。どうしても私は見ておることはできない。なるほどそうした鉱害地の被害民も息子を戰争に出しました、娘も徴用に出しました。しかしながら私の家は倒れても、私の農耕地が水没しても、戰争に勝とうとまでは戰争に協力はしておりません。私どもはもう燒けたといつても、ああこれでさつぱりした、明日からいよくまる裸で戰争ができるぞという気がいたしました。しかしながら鉱害におけるところの被害民の状態は全然違います。もしこの問題も一日手遅れをすれば、一日大きな社会問題化して行くことを考えますときに、更にひや汗が出るような感じがいたすのでございます。言いかえて申し上げますると、二十二年に非戰災者特別税、非戰災者家屋税の制度ができましたときに、そういう税金は納めきれないという。それではあなたは家を燒いておつた方がよいのですかというと、家を燒くよりは税金を納めた方がよろしいという。何らかわりはない。非加害炭鉱はなるほど現在の事業の運営から行けば、苦しいことはよく存じておりますが、この際は大乘的に日本精神の真髄であるところの隣保扶助の精神を発揮していただきたい。たとい富士の自然美は失うとも、日本精神の真髄、日本道徳の真髄であるところの隣保扶助の精神は捨てたくない。二言目には統制を解かれると申しますが、統制が解かれるのではない。現在は石炭鉱業再編成の時期であつて、将来には明るい見通しがあるものと、私どもは承知をいたしております。どうかそういう意味におきまして加害炭鉱も非加害炭鉱の別なく、政府と相ともにもこの鉱害復旧の法案を御支持を願いまして、一日も早くこの大きな社会問題の除去を、念願してやまないものでございます。なお詳細ないろいろの意見も持つておりますし、準備もいたしておりますけれども、冒頭に申し上げましたように、時間もたいへん過ぎておりますので、以上申し上げまして、本案の一日も早く成立することを念願いたしまして、やまないものでございます。
○神田委員長代理 暫時休憩したします。午後一時半より再開いたします。 午後零時二十七分休憩 ――――◇――――― 午後一時五十一分開議
○神田委員長代理 休憩前に引続き公聴会を開会いたします。 この際お諮りいたします。鉄道代表の門司鉄道局施設部保線課長藤木芳一公述人のかわりに、門司鉄道局施設部長の齋藤卯之吉君がお見えになつておりますが、藤本公述人の代理として、齋藤卯之吉君より意見を聞くことに用意するに、御異議はありませんか。 〔「累歳なし」と呼ぶ者あり〕
○神田委員長代理 御異議なしと認めます。齋藤卯之吉君より意見を聞くことといたします。鉄道代表門司鉄道局施設部長齋藤卯之吉君。
○齋藤公述人 御紹介にあずかりました門司鉄道局施設部長齋藤でございます。線路並びに建造物の鉱害について申し上げたいと思います。国有鉄道の鉱害につきましては、本年一月早々数日にわたりまして、通商産業委員の方々の現場御視察をいただきまして、つぶさにその実情を御承知いただいたことと存じますが、私はさらに繰返しまして、九州並びに国鉄全体の特別鉱害の実体につきまして申し述べさしていただきます。 鉱害の被害地域といたしましては、九州におきましては筑豊炭田、糟屋炭田、三池炭田、唐津炭田、北松炭田それぞれ全地域にわたつております。なお宇部炭田の一部にも発生いたしております。現在線路の沈降いたしております箇所は、五十六箇所に及んでおりまして、その沈降の延長は実に七十九キロに及んでおります。被害を受けております建造物を少し申し述べさしていただきますと、橋梁におきまして、百六十七箇所、駅舎びに建造物の被害は八十四戸に及んでおります。電線路におきまして、四千メートルに達しております。なお線路の延長と現在沈下をいたしております区間との比較をとつてみますと、筑豊炭田におきましてはその延長の一五%、上山田線におきましては二四%、篠栗線におきましては二一%、後藤寺線におきまして二七%、伊田線におきまして一七%、幸袋線におきまして五十一箇所の沈降簡所を見ておる次第でございます。なお駅間について沈降のはなはだしい箇所を調べてみますと、鹿児島本線の折尾、遠賀川の駅間におきまして、全延長の五八%が現在沈降しておる実情でございます。なお佐世保線の北方高橋間におきましても、四十箇所の沈降箇所を見ております。 線路に発生いたします鉱害の状況につきましては、急速に参りますものと、徐々に来ますものと、突然陥没するものとがございますが、急速に沈降いたすものにつきましては、一箇月五十ミリないし七十ミリに及んでおります。徐々に参りますものにつきましても、一箇月十五ミリ前後に及ぶものが普通でございます。なお陥没性のものにつきましては、降雨の後などにおきまして突然二十センチ三十センチという沈下を見る例があります。もう少し具体的に申し上げますと、宮田線の磯光、宮田間におきましては、鉱害による線路の沈下は、数学的に申し上げますと、建設いたしましてから現在までに七メートル五百沈降を見ておりますが、そのうち十七年以降の特別鉱害に属する沈降がニメートル三百になつております。現在これが復旧はようやく線路を汽車を通す緯度に復旧いたしておる現状でございまして、従来の線路に比べまして、まだ八百ミリの降下を見ておる状態でございます。伊田線の例に見ましても、赤池の駅所構内におきまして、鉱害の延長二キロ六百四十メートルでございますが、十七年以降の沈降だけでもニメートル六百に達しておりまして、現在そのうち五百ミリが工事をされておりまして、まだ従来の線に比べまして、一メートル百の工事未完成区間を残しておるわけでございます。幸袋線におきましても、幸袋、ニ瀬の間におきまして、延長二キロ五百メートルにわたつて沈下を見ておりますが、建設当時からの沈降五メートル三百ミリのうち、四メートル八百ミリが特別の鉱害の対象として現在その施工済みのものは三メートル六百ミリでございまして、まだ一メートル二百ミリの上げ足りない箇所を持つておる次第でございます。そのために二瀬の駅におきましては、昨年八月十七日ジユデイス台風の際におきまして、駅舎の浸水が一メートル四百に及びまして、運輸営業停止のやむなきに至つた実情でございます。以上申し上げましたように、相当の被害区域がございますが、現在運行を辛うじてできる程度に、復旧いたしておる実情でございまして、昔の建設当時の状態には、はるかに及ばない復興状態でございます。 なお突然陥没いたしました例といたしまして、昭和二十三年の六月に百五十ミリ程度の降雨に伴いまして、幸袋線の日尾の構内におきまして、径間六メートル百の橋梁が突然三百ミリ沈下いたしまして、翌十一日に再び二百ミリの沈下を見た例がございます。次に筑豊線の遠賀川の橋梁に発生いたしました沈下について申し述べますと、この橋梁は特殊の橋桁、鉄道でいいますとフラット・トラスでございますが、この二百尺の橋桁を使つておりまして、その延べ連数九十二連に及び、橋梁の延べ延長七千八百尺に及んでおりますが、その沈下量現在五百ミリ前後に及んでおります。なおそのほかに橋脚の不等沈下のために線路に相当の狂いが生じております。従来の慣例からいいまして、こうした大きな建造物の被害を及ぼすような例は、めつたになかつたのでありますが、戰争中の強行出炭のために、遠賀川橋梁の被害を見たような実情でございまして、特別災害の最も顕著なる例ではないかと信ずるのであります。これらの沈降その他によりまして、線路に及ぼす状況は、左右の狂いはもちろん、水平の狂いも出て参ります。また線路の部分的な不陸も生じて参ります。橋梁その他の建造物の変状ももちろん伴つて参りますしこれらの移動は数ミリに達しますと、列車の運行が危険な状態になりますので、これらの保守につきましては、万全の注意を要する次第でありますし、さらに、風雨の節におきましては、保線従事員の絶えざる注意によりまして運転を確保している次第であります。 これらの沈降の実際運輸面に及ぼす影響につきまして、申し述べさせていただきますと、現在徐行いたしております区間は二十箇所に及んでおります。これを数字的に考えてみますと、二十三年度におきましても実際に徐行いたしました列車の数は三万七千列車に及びまして、一日約百箇列車が徐行いたしているという実情でございます。なお二十四年度の例を見ましても七万列車が徐行をいたしておりまして、一日約二百列車が徐行をいたしているという数字になつております。なお幸袋線その他におきまして、実際この災害のために列車の運休いたしました日を調べてみますと、延日数にいたしまして百二十二日、列車回数にいたしまして、五百三十一列車の運転休止を見ました実情であります。これらの列車の徐行並びに運転休止によりまして、間接に鉄道の受けます被害も、相当の金額に上りまして、二十四年度のみで一千数百万円の金が想像されております。従来これらの復旧工事の場合には、二十三年度以来プール資金によりまして、わずかに鉱害の復旧をやつておりますが、二十四年度九月以来プール資金の関係も、はつきりいたしませず、この際われわれといたしましては、本法案の一日も早く通過いたしまして、安全なる運行を確保いたしたいと信ずるものであります。以上簡単でございますが、被害の状況を申し述べた次第であります。
○神田委員長代理 次は農林代表、熊本農地事務局長小山正時君。
○小山公述人 私はただいま御紹介にあずかりました熊本の農地事務局長の小山であります。私は主として農地の方面から申し上げます。 第一に特別鉱害の状況でありますが、これにつきましては、すでに多数のお方から申し上げておりますけれども、なるべく重複を避けながら申し上げます。私どもの立場から見るならば、この鉱害は一口にいうと、水のコントロールの問題であります。すなわち日本農業の一般的な特質と同じように、いかに水との戰いをやるかという問題に帰着すると思うのであります。そこでこの点を最もよく理解するために、九州及び山口も大体そうでありますが、そこにおける炭鉱鉱業の地理的な、また人文的な一、ニについて概略を申し上げますが、御承知のように、九州の筑豊炭田、あるいは福岡を中心にする早良の炭田、あるいは大牟田、三池の炭鉱、そのほか佐賀、長崎にいたしましても、これらを通じて私どもの立場から見て、二つの特徴が大体あると思うのであります。その一つは、その所在するところの土地がきわめて標高が低い。これが一つ。第二には、それらの地方におけるところの雨が比較的多く降る。この二つが水という観点からいたしまして、きわめて重要な地位をなすのであります。 さらに具体的に申し上げますならば、三池の炭田、あるいは姪浜の早良の炭田、あるいは佐賀県の一部の炭田というようなことは、大体において干拓地であります。すなわち海をせき切りまして、通常ならば水の入るところをせき切つてやつているところに、炭鉱の経営が行われているのであります。従いまして満潮時はもちろん海の下にある土地において、農耕が行われております。一方炭鉱の中心をなします遠賀川の流域にいたしましても、たとえば直方市は大体遠賀川の河口から約二十数キロありますが、標高は大体三メートルか四メートルというふうにいわれております。飯塚のごときに至りましても、おそらく標高は二十メートルにはならぬと思うのであります。干拓地はもちろん、そのほかのところにおきましても、今申し上げましたよに非常に標高が低い。 それから一方雨量の問題はどうかといいますと、大体連続雨量二百四十ミリに達することは、そう珍しくないのであります。私どもが耕地の復旧の設計をやりますときに、大体において少くとも二百四十ミリくらいな連続降雨量を前提にして、水をどう処理するかということを、計算しているような次第であります。いわんや台風、たとえば昨年のデラそのほかの台風のありますときにおきまして、何百ミリというような雨が降つた場合には、ただこれだけの状態を考えてみても、きわめて危険な状態にあるということが言い得ると思うのであります。 次に人文地理的と申しますか、そういう点から見ての一つの特徴は、炭層と耕地、市街地、あるいは河川というものが、上下の関係において重なつているという、この事実であります。そういうところは、これは言わぬでもわかりますが、上の方を掘ると、掘つたあとの充填が適当でない場合には、当然陥没して行くということになるのであります。しかもかような状態におきまして、これはいわば日本の一つの宿命と申しますか、そういう炭鉱あるいは農地の両方から見ますならば、あまり條件のよい所ではない所でもつて過半数の石炭を掘らなければ、日本経済の運営がやつて行けないという一つの宿命に、われわれは追い込められているという、厳然たる事実であります。かるがゆえにこれを採掘いたします場合におきましては、特別の注意を拂わなければ、当然この農地あるいは市街地に災害が起るということは、想像されるのでありますが、悲しいことに大東亜戦争に入りましてからの、いわゆる濫掘によりまして、この悪い方の條件ばかりが思う序分に働くような状態を現出したのであります。それに加うるに従来国の補助と県費とをもちまして、若干ずつの耕地の復旧を実はやつておつたのでありますが、太平洋戦争に入りまして、昭和十七年は一ぺんに従来の五分の一くらいに復旧面積が減つたのであります。のみならず二十年及び二十一年におきましては、全然打切つてしまつたというような状態になつております。かような状態でありますがゆえに、災害が起つて非常にひどい状態にあるということは、言わぬでも明らかであります。かくいたしまして若干の数字を申し上げますならば、耕地につきまして特別災害と推定せられるものは、福岡県におきまして七千四百町歩、熊本県において約三十二町歩、佐賀県において約三百九十町歩、長崎県におきまして約四百町歩、山口県において約二百町歩、合計約八千四百町歩と推定されます。そしてこの復旧費は約三十一億円と推定をされておるのであります。それから被害の態様は、これを大体ニつにわけて考えることができるのであります。一つは水の過剰の問題、一つは逆に水の不足の問題であります。まず過剰の問題でありますが、先ほど申し上げましたような條件のもとに土地が陥没する。そこで排水の不能ないし排水の困難を来すのであります。こういう状態の起ります一番多いのは、地盤が沈下いたしまして、その結果としての地表の沈下、大体、沈下のはなはだしいところにおきましては、二メートル以上のところがあります。また沈下の結果、干潮時におけるところの水面以下数十センチというところすらあるような状態であります。かようなところにおいて排水ができないということは当然であります。それからもう一つの排水の問題といたしましては、微粉炭が河川に流入いたしまして、それによるところの川底の隆起、それによる排水の困難というような問題が起つておるのであります。 次に二番目には逆に水の不足の状態でありますが、灌漑の不能ないし困難の状態でおりまして、これにもいろいろの形態がありますが、その一つはごらんになつた方はおわかりと思いますが、耕地そのものが傾斜するのであります。今まで平面であつたがゆえに水をたくわえて、そこに稲の作づけができるのでございますが、耕地が傾斜いたしますと、水のたくわえができません。そこで作づけのできないもの、それから次には用水の設備であるところの溜池、あるいは水路であるとか、あるいは用水池というようなものの土台が動きましたために、使えなくなるというようなものがあります。それから第三番目には地盤が動いたために地表水が減少いたしまして、その結果水の枯渇を来す。また特殊のものといたしましては、鉱毒水そのものによりまして、水稲の成長に障害を起すところもあるのであります。 かようにいたしまして、もう一つ数字を申し上げますならば、福岡県におきましては不毛田が約千四百町歩、五割以上の減収田が千八百町歩、五〇%未満の減収田が一約四千二百町歩、それによるところの米の減収は、これはいろいろの見方がありましようが、まず少なくとも七、八万石、それから同じく麦の減収が四、五万石余りに推定されておるのであります。熊本県、これは主として荒尾でありますが、これはほとんど三十二町歩全部が不毛田と推定されるわけであります。このほか佐賀、長崎におきましても、反当少くとも一石ぐらい、平均いたしましても半作というような状態であるのであります。しかしながらこの農民の苦痛は単にこれだけではないのでありまして、先ほど申し上げました傾斜面におけるところの植つけのためには、たんぼをきわめて小さい区域に区切りまして、そこを平面にいたしまして、水をたくわえてやるというようなところが、かなり多いのであります。その時間的なロスと、労力と費用というものは、並たいていではないのであります。それよりもさらに根本的には、かような災害地におきましての生産の不安定というこよがありますが、さらに農家は一般市民といたしまして、先ほどから話がありますように、家屋あるいは墓地、あるいは交通の不便、あるいは濕潤地の非衛生的な生活環境というように、一々数えあげると枚挙にいとまがないところの、経済的にもあるいは物質的にも損害を受けておりまして、私も実は朝晩見ておるわけでありませんから、ほんとうの実感は申し上げられませんが、あの土地におる人の立場から見るならば、実際憤激の持つて行場がないというような状態ではないかと思うのであります。ついでに申しあげますが、かかる災害の結果、たとえば二瀬町におきましては、一戸当りの平均経営面積はわずかに二反であるといわれております。かような災害のい土地におきましては、九反程度の経営面積であるといわれておるような状態であります。かような状態でありますがゆえに、私は特に私の関係しております農民諸君の経済的損失、物質的な苦痛を軽減するために、すみやかに復旧していただきたいということを、切にお願い申し上げる次第でありますが、さらに積極的には国土の有効利用という観念からも、この問題を考えていただきたいと存ずるのであります。言うまでもなくわれわれ敗戰国民として、この狭い国土の中にあるものは、ただこれ人のみであります。ゆえに一片の土、一すくいの水といえども、これを有効に利用しなければならぬと存じます。かるがゆえにこそ、国におかれましては財政困難の折柄にもかかわらず、干拓、土地改良、そのほかの要するに国土資源の有効利用という点につきまして、いろいろ御配慮を願つておるのであります。この特別鉱害地の復旧こそが、国土資源の有効利用という点から申しましても、きわめて大切でありまして、たとえば山を開くときのように、山の持主との間に、いろいろな争いもございません。まさにこれは一石三鳥の良策であると存ずるのであります。かような意味からいたしまして、もしもこの復旧、あるいは法案の成立ができないというようなことになりますならば、地元民の失望あるいは広くあの地方の鉱業の障害というものは、絶大なものがあると思うのであります。特に御承知のように九州は台風のしばしば来るところでありまして、幸いに今のところ遠賀地方はあまりひどい災害を受けておりませんが、今年もやがて台風が来るでありましよう。そのときに当然雨が降るでありましよう。排水は困難でありましよう。もしもこの法律ができない状態におきまして、かような災害が起りましたとしたならば、あの地方の民心に與える影響、極端に申しますならば、政治というものに対しての信頼の深さというものに、非常に大きな変動を来たすというようなことを、私は案ずるのであります。 従いましてこの復旧については、何人も議論の余地は大体ないように、私予想するのでありますが、問題は一体その金をだれが負担するかという問題であります。この問題につきましては、実は私ども、少くとも私といたしましては、あまり広く立入つて言うことを避けたいのであります。われわれの立場から見れば、とにかく災害を復旧していただけば、けつこうなのでありまして、その金が国から出ようが、あるいは業者から出ようが、それはあえて問うところではありません。しかしながら経費の負担のゆえに、復旧工事ができないというようになるならば、われわれもまたそこに発言権があると存ずるのであります。この負担の問題、従つて責任の帰属の問題につきましては、法律的にあるいは各企業の負担能力の弱き経済と申しますか、経営と申しますか、そういういろいろの問題があると思うのでありますが、それは專門家の方なり、あるいは最終的には賢明なる国会の皆様方が、適当に解決していただきまして、地元民の苦衷を一日もすみやかに解決していただくように、格段の御配慮をお願いいたしたいのであります。 最後に重ねて結論を簡單に申し上げます。今まで重複したところがありますが、あの標高の低い、あの雨の多い、しかも耕地と被害地と断層とが、上下に重なる地区におきまして、米と並んでわが国民経済の運営の一方の支柱であるところの石炭の過半数を掘らねばならないということは、日本炭鉱業、いな日本経済、あるいは日本国民と申しますか、そのもののおかれておるところの、現実的な宿命的な事実であります。この宿命的な事実のために、多くの人々が苦しんでおるとするならば、この点をとくとお考えいただきまして、反対の立場にある方々も、小利を捨てで大道につくという大乘的な見地から、御賛成をいただきまして、この法案の無修正通過あらんことを切にお願いをし、またお祈りをいたしまして、公述を終ります。
○神田委員長代理 次は建設代表福岡県遠賀川工事事務所長中澤安藏君。
○中澤公述人 私建設省遠賀川河川事務所の中澤でございます。まず最初に復旧工事に関與いたしておりますものといたしましては、一日も早くこの法案が成立いたしまして、すみやかに計画的な復旧工事に着手されて、民生の安定と公共の福祉を確保して、国の基礎産業である石炭業の健全なる発達をはかつていただきたいと思うものであります。われわれが関係いたしております公共物であります河川道路等の鉱害は、直接鉱害の被害者であります方方の被害ばかりではなしに、その附近に住んでおられます一般大衆が常に災害の危險にさらされ、またいつも交通が阻害され、現状のままにおきましては、とても安全な社会、そうして公共の福祉を願うということは、不可能ではないかと思つております。私が現在従事しております遠賀川について一例を申し上げて、御参考に供したいと存じます。 遠賀川は御承知のように筑豊炭田の中心を流れておる河川であります。むしろ筑豊炭田は、遠賀川の流域に沿つて発達しておると申し上げた方が、適切なのではないかと思います。 〔神田委員長代理退席、澁谷委員長代理着席〕 この遠賀川は明治の末期から大正の初期にかけまして、国の直轄で改修工事を施行いたしました。大正六年に一応工事が完成いたしました。そうして筑豊地区は、一応は遠賀川の水位から完全に守られておつたのでございます。それが鉱害のために河川といわず堤防といわず、水門も橋梁も各所で沈下をいたしました。現在は遠賀川が洪水にまでならぬ水でも、十数箇所から堤防が隘流し、破堤する危險にさらされておるのであります。そのために昭和二十年度から国の直轄工事として、遠賀川の復旧工事が着手されました。その後二十三年度より特別鉱害ということが言われまして、特別鉱害になつたものと、明らかに特別鉱害だといつて査定を受けましたもののうち、国で直轄をして現在続けております直方市から下流の分についてだけ申し上げて見ましても、本川だけでございますが、特別鉱害の堤防の沈下箇所は五箇所、この延長は約十キロ以上に及んでおります。沈一量の最大は一メートル五〇、そのために一朝非常洪水がございましたときは、被害の予想は氾濫面積において四千七百町歩、そのほか人家の流失浸水、交通の杜絶、石炭の減産、保安衛生上の被害等基大なるものが予想されるのであります。ただいま申し上げましたのは一応特別鉱害として査定を受けた分の中で、直轄工事で施工します直方市から下流のみについて申し上げたのでありまして、直方市より上流の遠賀川関係におきましても、非常に堤防の沈下が多うございまして、かつて明治の末期から大正の初めにかけて、改修工事を施行いたしました区間だけでも、相当の量がございます。ことに沈下のはなはだしい所は、二メートル七〇という堤防の沈下を来しておるのであります。従つて上流部におきましても一たび洪水が出ますと、その被害は莫大なものに上るものと想像されるのであります。なお遠賀川の本川のみでなしに、遠賀川にございます小さな支川でございます黒川、笹尾川、曲川、西川、これらの諸河川もやはり同様各所で沈下をいたしております。これはその河川の沈下のみでなしに、そのほかいわゆるボタ山から出て参りますボタの微粒子が河床に沈澱いたしまして、河床が上昇し、沈下のない田面と同じ高さ、あるいはむしろ高いところもあるくらいになつております。そのような状態でございますから、陷沒田ばかりでなしに、付近の田も用水の取入れが不可能だというような所もございます。それから沈澱による河床の上昇のために、河敷がぐつと狹まつておりますので、普通の程度なら問題にならぬようなわずかの雨でも、堤防が破壞する危險にさらされておるのであります。これらの河川、堤防、道路、橋梁等の復旧工事は、單なる鉱害の復旧という概念よりも、もつと広く公共的の観念から、民生安定と公共の福祉を確保し、食糧並びに石炭の増産をはかり、戦後の経済安定に資するために、これは国が責任を持つて急速に復旧工事をする必要があるのではないかと思われるのであります。 飜つて考えてみますと、普通の経済状態、または通常の経済通念におきましては、鉱業権者もこのような公共施設、公共に甚大な利害関係のある河川とか、堤防とかいうものの下を採掘するがごときことは、あり得ないだろうと思われるのであります。まつたく国の、戰時の戦力増強のための強力な要請によつても初めてこのような危険負担を冒することをあえてするような状態になつたのではないかと、想像されるのであります。しかしこれもその当時といたしましては、わが国の石炭の絶対必要量を確保するために、やむを得ず石炭業界の採炭責任量を、九州地区にしわ寄せられたためだ、こういうふうに考えるのでございます。この特別鉱害を加害炭鉱のみに責任を負わしむるということは、あまりに残酷過ぎるのではないか。また加害炭鉱のみにてこの鉱害を復旧することは、経済的にもまつたく不可能ではないかと思われるのであります。でございますから、どうしてもこの復旧工事は国が責任を持つて、急速に仕上げていただかねばならぬと考えるのでございます。 前にも申し上げましたように、われわれの関係しております河川、堤防等の公共物の被害は、直接の鉱害の被害者の方々だけでなく、鉱害に直接関係のない一般の大衆に及ぼす被害が甚大でありますから、この法律案が一日も早く成立いたしまして、急速に復旧工事に着手されて、社会不安をなくし、民生の安定と公共の福祉を確保していただきますように、お願いする次第であります。すでに委員の皆様方も、親しく鉱害地を御視察されて、鉱害による被害の甚大さと、またその鉱害に原因した災害の実情をごらんになつたことと存じますが、国において何らかの処置を講じていただかなければ、この数多くのまたたくさんの鉱害の復旧は、とうてい不可能となつて、そのため放置された被害者は遂に永久に救われない、また永久に救われる道がなくなつてしまうのではないか。そうしてまたその付近、地元一般の人たちは常に災害の危険にさらされて、かつまた保安衛生上にも憂うべき状態に放置されることとなるのであります。従つてそれは国の再建の基礎産業である食糧並びに石炭の増産も、そのために阻まれ、非常に憂慮するような状態に至るおそれが、あるのではないかと考えるのであります。以上申し上げましたような理由によりましても私はこの法案を一日もすみやかに成立させていただいて、被害者並びに関係者一同に安心と喜びと希望を、與えていただきたいと思うものであります。
○澁谷委員長代理 次は特別鉱害関係代表の方々に御発言を願いたいのでありますが、一般炭鉱代表の方と交互に御発言を願つた方が、御意見を拝聴いたします上に、よりよく参考に相なるのではないかと存ずるのであります。特別鉱害関係炭鉱代表と、一般炭鉱代表の方よりそれぞれ大手、中小労働組合の方々の順序で、交互に御発言を願うことにいたします。それでは特別鉱害関係の炭鉱代表の九州石炭鉱業協会会長小西春雄さん。
○小西公述人 私ただいま委員長から御紹介にたりました小西であります。私は現職は今委員長から言つていただいたようなことでありますが、炭鉱生活約三十年、ちようどこの法案の実体をなしておる特別鉱害の問題の起ります当時は、明治鉱業株式会社の専務として、親しくこの問題を体験した一人であります。そいう立場からも一言申し上げてみたいと思います。 特別鉱害の被害状況につきましては、ただいままで被害者代表の方々から、るる陳述がありましたので、私は一切省略いたします。またこの複雑な問題をわずか二十分や三十分で、すつかり盡すことはとうてい不可能なのであります。勢いきわめて大筋の荒筋だけを申し上げるというようなことになりまするので、お聞きになりましても、いろいろ疑問が起るかもしれませんから、御疑問の点は時間が許しまするならば、あとで十二分に御質疑をお願い申し上げたいと思うのであります。 最初に結論から申し上げますと、私はこの法案の成立に賛成いたすものであります。今日一般鉱害特別鉱害とわけて、いろいろ論議されておるのでありまするが、本来特別鉱害というものはないはずのものであります。これはまつたく戦争が残した一つの特産物であります。実にやつかい千万な負債であります。先般親しく現地を視察していただました方々は、高松炭鉱その他におきして、一般鉱害はどんなものか、特別鉱害はどいうふうの区別があるのかという点につきましても相当はつきり御認識をいただいたことと思います。一般鉱害の場合に、鉱害が起りますれば、その復旧または賠償は、加害炭鉱がいたさねばならないのであります。現にまた日々行つて、賠償なり復旧なりをいたしつつあるのであります。そういうわけでありますから、炭鉱では鉱害防止のためには非常な苦心、努力をいたしております。きわめて経済的に安く掘り出せるような区域におきましても鉱害が起るおそれがある所は、みすく掘らない所が相当多いのであります。にもかかわらず日華事変以来国家は次々とむりな増産を要求いたしまして、太平洋職に入りますと、軍需官が炭鉱へ乗り込んで参りまして、そんなところ掘り残す必要はない。そこも掘れ、ここも掘れと、命令をいたすのであります。もしも命令通りに掘りませんと、いわゆる軍需会社法によりまして、重役も業務担当者も解任をされ、あるいは処罰されるのであります。査察使というものが参りまして、これくを増産せよ、査察使の命令はすなわち陛下の命令だというわけでありまして、警察も来れば憲兵も来ます。いろいろの人が参りまして、増産をむち打つのです。一方割当てられました数量を出炭いたしませんと、その罰として労務の充足を減らされる、あるいは工員にとつてはなくてはならない絶対必要なせつけんとか、地下たびの配給を減らされるというようなことなのであります。こんな強行採炭によつて起こりましたさんたんたる鉱害は、これは国家が起こさせた鉱害であります。今申し上げたのが特別鉱害の実態であります。従つてこれが賠償は国家でやれ、こう一応私も存じます。私は加害者の代表というので、実はお呼び出しを受けたわけでありますけれども、加害炭鉱という言葉が使われておりますが、加害者はむしろ国家であつて、われわれ被害炭鉱なのであります。きようは委員長もいろいろ言葉を使つておられまするが、関係炭鉱という言葉々使つていらつしやるので喜んでおるような次第であります。加害といえば刑法上の加害に通じて何だかおもしろくない感じが伴いまするので、今後は用語は関係炭鉱と、そうでない炭鉱というふうにお用いなされることを希望いたします。この点につきましても東條内閣の顧問であつた山下亀三郎君が、査察使としまして朝鮮に参りまして、その帰りに福岡に立ち寄りまして、何としてもこの戦争遂行に石炭が出なくてはどうにもならないというので、私と貝島、麻生、大正の各社長、それに中島徳松君を加えまして、五人が特別招集を受けて、いろいろと増産問題の論議をいたしたのであります。あるいは炭価の面から、あるは金融の一面から、資材労力というような方面からいろいろ議論も出たのでありましたが、その際に公害地、これが掘れれば九州で百万トンくらいの増産は可能だという話が出たのであります。時の福岡県知事九州総監の吉田茂氏は――今の総理ではありません。厚生大臣や軍需大臣をやりましたあの吉田氏が、さつそくそいつをやろうじやないかというので、卓を叩いて喜んだのであります。公害地と申すと言葉の上では間違うかもしれませんが、鉱害防止のために残してある区域で公の字の公害地なんです溜池の下とか、密集家屋の下とか、あるいは鉄橋の下とかいう所です。そこで私どもはちよつと待つてください。こういう部面を掘れば、鉱害は必至だ陥落が必ず来る。そのしりぬぐいは一体だれがやつてくれるか。こう申しますと、吉田知事は、だから実業家はだめだ、いくさが全勝つが敗けるかというこのせとぎわになつておるのにもまだ君らはそろばんをはじいておるのかと言つてしかるのであります。どつこいそう吉田さん大きな声を出したとて、あんたは知事さんだから辞令一本か電信一本来れば、やめるか、転任するか、免職になるか、それで責任は終るのだ。われわれは事業をやつておる。その仕事の結果に対しては、はつきりした責任を負わなければならぬわれわれの立場だ、そう簡單に片づけられては困る。しつかりした裏づけをしてください。それでなくてはやれませぬ。こういう主張をいたしたのであります。よしそれでは命令をする。おれか命令する以上、おれも責任をとるのはもちろんだというようなわけで、そこでたいへんな力み方であつたのであります。いまのは一つの話にすぎませんが、強行採炭の状態が、どんなふうであつたか、御想像のつく一端かと思いまして、お話を申し上げたのであります。 終戰後に行政措置による配炭公団のプール制度ができまして、これで一応の復旧策か立ちましたので、また実行されたので一応の安心を得ておつたのが、昨年九月限りで打切るという。そこで被害地の関係者がいかに困惑しておるか、呻吟しておるかという悲痛の叫びは、先ほど来お聞きでありますから略します。国家的の見地から見ましても、民生の安定、交通の確保、食料の減産防止など、幾多の重要問題がこの法案の通過いかんにかかわつておるのであります。もしも第六臨時国会のときのごとく、今度も流産になるようなことがありましたら、この嚴粛な事実に対しまして、まつたく政治はないものだと断言いたします。ただこの決審議の上に、御意見がいろいろ出そうな点につきまして、一つ二つかいつまんで所信を申し上げたいと思います。 第一は戰災による損害無賠償という原則の関係であります。法律の專門家でない私は、これに対していろいろのことを申す資格もないし、知識もないのでありますが、法案のねらいは国土の復旧という点にあるのである。ですからこの法案は、個人々々を対象として、個人の賠償をするという趣旨のもとにできたものではないと思うのであります。国土復旧のためにとられまする施策が。たまたま個人に反射するにすぎない、こういうふうに思うのであります。戰災無賠償の原則には反しないと、私は考えるのであります。 第三は一部の非加害炭鉱――一般炭鉱と申しまするか、自分らは全然関係がないから、この賠償費を負担すべきではない、こう主張しておるようであります。これは反対理由といたしまして、相当有力なものと考えられておるようでございますから、この点につきまして、私の考え方をお話申し上げたいと思うのであります。ただいま申し上げた反対論をなさる方々も、特別鉱害復旧の急務という点については、十二分に認められておられるのであります。これは国家が賠償すべきだ。その走をとるべきだと言われるのであります。国家がその点わかりまして、全額賠償の策をとるということが実現さる得れば、これまた一つの考えでありまするが、今日の国家財政におきましては、相当容易でない現状にあるというふうに、私は承知いたしておるのであります。私も今山しますように国家賠償ということは認めておりますけれども、これは本来の建前でありまして、できない相談をいつまでも繰返してやつてみましたところで、しよせん現実の問題には役に立たないのであります。それよりもむしろ次善の策と存じまするけれども、現実に即した解決策を講ずることが、われわれの急務とするところであります。この点この法案は、石炭界の戰時中からの過去の歴史と仕組みというものを勘案して、非加害炭鉱にも一部を負担せしめようとしておる、現実に即した法案と信ずるのであります。配炭公団によるプール資金制度が、昭和二十三年四月九日の閣議で決定いたしまして、同年六月より行政措置として続けられて来た。それが公団廃止によつて取扱われなくなつた。そこで今度は立法措置によりまして、措置をしようというのが本案であります。今まで炭業界を、国家といたしましてはほとんど一本のごとき取扱い方をいたしてり参ました。たとえば出炭のごときも、需要の面からまず全国の目標をきめて、各地区別に生産を割当てるという行き方で、その他炭価の面におきましても、あるいは復興金庫の金融、あるいはその他の金融機関からの金融の措置等につきましても、みな今申しましたように全国を一本に見て、それを地区にわかつて、措置をして来るという制度が根幹となつて、ずつと実行して参つたのであります。この法案におきましても、やはり問題の根底には全国一本というような考え方るように、私は解釈いたしおるのであります。自由経済、石炭自売の今日となつても、今できておりますこの特別鉱害の問題を解決するためには、ただいま申し上げました根本を無視するわけにはいかないというのが、私の所見であります。こういう観点から非加害炭鉱も、また賠償費の一部を負担するのは当然だ、こう結論いたします。 昨年六月二十九日に、日本石炭協会の評議員会では、公団廃止後のこのプール資金の処置についてどうしたらよいかという打合せをいたしました。そこで復旧費の三分の二を国庫で負担してもらう、残りの三分の一を関係炭鉱で負担しよう、こういう決議ができ上つたのであります。そうしてその決議を政府関係当局に陳情をいたしたのであります。ところがその意見はいれられませんで、いろいろの石炭奨励費によつて、この問題を解決しようと種々な研究が続けられたのでありますが、結局のところ、この法案となつて現われて参つたのであります。今反対の立場をとつておる方々におきましては、この六月二十九日の協会の一致した評議員会の決議があるから、この線で行くべきだということを、主張しておられるようであります。これを金科五條として主張しておられまするが、実はその点につきましては、一昨七日の日本石炭協会の評議員会におきまして、いろいろと再検討を試みたのであります。しかし六月二十九日当時は、まだ公団廃止が十月であるか、十一月であるか、あるいは九月であるかわからない、とにかく近くなくなりそうだ。何とかしてこのプール資金でやつたことを、継続しなくちやならないんだという観点から、今のような決議ができ上つたのでありますが、今日までにおきまして、実は一昨七日の日におきましても、その内容についてもその内容について、疑義いろいろ生じ、また客観的な情勢もたいへんかわつて来たというようなことで、遂にその線を再確認をするには至らなかつたのであります。今日なおあくまでも国庫全額賠償を繰返す、あるいは加害炭絋のみで負担しろという論を固執いたしますることは、結局法案の通過を阻害するという結果になるんじやないかと思います。そこで本法案の第二十二條の減免規定を無制限に拡げまして、非加害炭鉱は全然問題なしとするなら、せつかくの加害の過去の歴史と仕組みを勘案してできましたところの、国家的立場から石炭産業の意義を認めた本法案というものは、根本的につぶれてしまいます。加害者だけで負担しろという議論をとるならば、法案それ自体がまつたく無意味となる。そうなりますと非加害炭鉱は無負担という論は、修正論のようでありますが、結局は法案の抹殺論をやつておるのだ、こう批評した人が昨日あつたのでありますが、その評が当るように私も考えるのであります。しかし先刻も申しますように、これらの方方も特別鉱害復旧の急務と、またこれに対する臨時措置として法案を必要とすることは、十二分に認めておられるのでありまして、その点は去る七日の打合会でもまつたく一致いたしたのであります。この点特に御留意をお願いしたいと思います。 第三に非加害炭鉱と加害炭鉱との、本法案に対する賛否の状況が、どうなつているかと申しますと、九州におきましては、先刻来井上公述人その他から話がありましたように、賛成一本にまとまつております。それらの公述人のうち、ある者はこの法案が成立しますと、自分の損ではあるが、あの悲惨な被害状況を見ては反対する勇気がないと、こう言つております。北海道、常磐、宇部三地区のそれぞれの一部には法案反対の声がありますが、これは私は一部の声と申し上げるのであります。全国の出炭トン数から計算いたしますとも七五%の出炭をしている炭鉱が法案に賛成なのであります。特に申し上げますが、北海道におきましては、石炭協会として本法案の反対を決議いたした由であります。ところがあえて申し上げます。その後におきまして、北海道にも炭鉱を持つておる三井、三菱、明治製菓というような東京支社は、それぞれその本社におきまして本案の成立を希望するという最終的の態度を決定いたしておるのであります。また常磐におきましても古河は反対しない、賛成だということを、責任者が言明いたしておるのであります。そこでこれは北海道の中小炭鉱のうちのある有力者の話でありますが、国庫負担の割合を、公団時代の倍額くらいに増額をしてもらい、その上にこの法案の審議会制度をきわめて民主的にしてもらう、いま一つは減免の規定のごときも、判然と基準を明文化してもらうというようなことになれば、必ずしも反対をするものではないということを、親しく私に言明した人もあるのであります。 最後に特別鉱害復旧団が、結局公団組織というものが赤字だらけ、失敗だらけの歴史を各種の公団がやつておるのは御承知の通りでありますからもまた今度の復旧団も何かそんなことはないか、それの運用について懸念はないかというようなことを、再三にわたつて私に確かめられた議員もあるのであります。私の見解ではこれはまつたく簡單な事務的の処理機関である、所要人員のごときも中央、地方を通じて、百人足らずで済むくらいの機関だと思います。その点は御懸念無用と存じます。以上積極、消極の両面から一応お話を申し上げたのでありますが、結論的には社会公共の立場から民生安定、食糧増産というような種々の観点から、法案の通過を念願してやまないものであります。これをもつて終ります。
○澁谷委員長代理 次は一般炭鉱代表者、北海道炭鉱汽船株式会社常務取締役萬仲餘所治君。
○萬仲公述人 私北海道炭鉱汽船株式会社の常務取締役で、夕張鉱業の所長を勤めております萬仲餘所治と申します。同時に北海道石炭協会長を勤めているのであります。昨日参議院の公聽会にも出席いたしましても北海道石炭協会は私と同じ意見てあるということを申し上げたのでありますが、その後に、今ちようど小門さんから御発言があつたうちに、北海道石炭協会のうちにも原案に賛成の人もあるというお話があつたので、私はその経過もお話したいのであります。今日はその点をはつきりするためにお話申し上げるのでありますが、九州と北海道と両方に炭鉱を持つておられる北海道石炭協会の会員である方は、最初反対の決議であつたのですが、その後いろいろと事態が進展するに従つて、もし原案が通過するならば、自分たちは北海道の出炭量に対しても、負担してもいいという御発言があつた、そのことを小西さんがおつしやつていらつしやるのであります。なお中小炭鉱についても意見がありましたが、これは私全然存じませんから、それについては触れません。 なおちよつと前に申し上げたいと思いますが、実は今朝から八人の被害者代表の方がお話になりました。さらにまた続いておそらくは原案賛成でありましよう関係炭鉱の方がお述べになつたあとに、もし私が出てお話をすることになりますと、たいへんに歩が惡いと思つておつたのでありますが、委員長のおとりはからいで一人置きにしていただいたことを、私たいへんけつこうに存じております。なおまた昨日参議院でお話申し上げましたうちに、私原案をおつくりになつた御当局を大分攻撃申し上げたのでありますが、その際にはどなたもおいでになりませんでした。いらつしやらないから攻撃を申し上げたようになつては非常に困ると思つたが、幸いただいまは政府当局の方もいらつしやいますので、その前で私の意見を申し上げ得ることをたいへん仕合せに存じております。どうもけさからの議論をいろいろ拜聽いたしますと、この法案に反対であるとか、修正をせねばいかんとかいうのは、この法案をつぶしてしまつて、鉱害の復旧というものをできなくするのであるというような意見が大分出ているのであります。これは内容的に私申し上げますけれども、私も北海道で二十六年間炭鉱ととつ組んで、現在も北海道で、やつております。九州炭鉱の鉱害状況は現実には知りません。北海道においても第三者に影響を及ぼすことなく、炭鉱がみずからの施設を害し、みずからの機構を損つておるということが相当あるのでありますが、これはみずから直しております。これらのことに関連いたしまして鉱害の及ぼす影響、絋害なるものの悲惨な状態は私もよく存じております。なお昨日も伺つたし、今朝からもいろいろ伺つて、この鉱害はまさに社会問題である、この社会問題をいかにせんということについては、私どもも日本国民の一人、特に炭鉱関係業者の一人として、即刻に、一日も早くこの鉱害は復旧せねばならぬという熱意においては、人後に落ちないつもりであります。 もう一つ申し上げたいことは、原案は十分ではないかもしれないけれども、現在においては最もよいものである、これは直せないものである、だからこれを汚そうと主張することは、これができなくなつてしまうことである、これは直してはいけないのだ、直せないのだというような前提のもとに、大分御心配があるようであります。もし御心配でありますならば、私はこれは議会にお預けせねばならぬことであると思います。もしそうであるとお考えになるならば、これはとんでもない話である。原案がそのまま通過せねばならぬということで、攻撃されるというようなことは、戰前においてはともかくとして、今日においてはそういう言動をなすことは、どうかと思うのであります。 なおまたこれも昨日お話があつたので、私もちよつと申し上げておいたのですが、どうも反対するのは我利々々亡者が自分の私利私欲をはかるのだというふうな意味合いのことを、はつきり仰せにはなりませんけれども、おつしやつたので、私、はつきりおつしやるならばわれわれも開き直つて、文句を言わなければならぬと昨日も申し上げたのですが、今日も一言一句かわらない言葉で、かもしれぬということをおつしやつたのであります。こういうことは私どもは決して考えておるものではありません。そういう意味合いでこういう議論をしておるのではありません。特別鉱害は御承知のごとく、法案の第三條にありますように、戰争中の採掘によつて起つた鉱害であつて、普通ならばやらないのを、国が特別の要請をして、非常採炭をするということの命令によつてやつたものである。しかも急速に復旧せねばならぬという條件のついておるものであります。しかも国が要請されましたときには、どの場合も、この鉱害は国の責任である、国で補償復旧するのであるという條件がついておるのであります。これは小西さんもおつしやつた通りであります。それはいろいろ理由もありましようが、今日国ができない、こうおつしやるので、そこに第一の、われわれとして困る点、これではいかぬという点があるのであります。私どもはただ反対するのではありません。復旧の一日も早からんことを希望いたしますが、その費用の負担方法が妥当でないということを申し上げておるのであります。御承知のように、戰後配炭公団がございまして、炭価が統制されておりました。炭鉱に対しては採炭費を基準にして、一定の炭価が統制されておりました。炭鉱に対しては採炭費を基準にして、一定の炭価で買い上げる。これにいろいろなものをつけ加えて、またきまつた炭価で消費者に渡す。その際にこの鉱害の復旧に充てる費用が、差入れられたということは御承知の通りであります。これについては私ども法理論も何もわかりませんから、どうこう言うのではありませんが、先刻も小西さんのお話のように、やがて配炭公団はなくなるかもしれぬ、一部の統制は廃止されたという六月に、私どもはこのままであつては困る、早く次の問題を考えていただきたい。理論的には国家負担妥当であると思いますけれども、なおいろいろの問題もございましよう、万やむを得ないときには、三分の二を国家で御負担願いたい、あとの三分の一は関係炭鉱で負担しましようと、日本全体の石炭協会が決議をいたしまして、六月二十九日付で資源庁長官、大蔵大臣、安本長官、その他の方々に陳情申し上げたのであります。さらに配炭公団がなくなることが明瞭になりました九月九日に、あらためて、前に陳情はしたが、なお早くやつていただかなければ困るからお願いしますという再陳情をいたしておるのであります。この精神は国家負担しかるべしということには違いありませんけれども、万やむを得なければ関係炭鉱で三分の一は負担しよう――これは私どもが、お前の方で負担しろ、おれたちは負担しないと言い争つた結果生れたものではありません。日本の石炭協会がみんな集まつて相談し合つた結果、だれもが妥当と考えてこの決議をしたのであります。しかもその陳情をいたしたのであります。しかるにこの陳情の趣旨をはたしてどの程度まで御当局はお考えになつたか。もしこの陳情の趣旨をお考えのもとに進められるならば、問題は何も起つていない。ただいま石炭協会の業者の間で争いのごとく見えるような状態がありますが、外部から見えるほど争つておりません。おりませんけれども、おるかのごとく見える状態は、初めからわれわれの陳情の趣旨によつて法案が考えられておつたならば、こういう問題は起つておらぬと思う。どういうふうな間違いか知りませんが、すつかりかわつたかつこうで法案が出て参りました。私北海道におつて法案を承知したのでありますが、十月の下旬北海道で協会の手続をして出て参りましたときには、大臣官邸で御説明のあつたあとであります。この点についても私ども不満に思います。もう少し早くわれわれに御相談願い、業会で意見をまとめろとおつしやるなら、またまとまり方があつたと思います。まあそういうことは申し上げてもしようがないのでありますが、ここに問題の根底があるのであります。ここに問題の根拠がある。業界は争つておるというが、業界はおれは一部は持たなければいかぬ、一部は持たないという争いはやつておらなかつたのであります。しかしこの法案が出て来てからはだんだん違つたふうになつて来たのは事実であります。なるのは当然であります。ただいま申し上げましたように、北海道と九州と両方に炭鉱を持つておる人々は、北海道における利害と九州における利害が違うのだというような事柄から、問題が起つて来るのはあたりまえであります。起つて来たのであります。しかしながら外部から考えられるほどの問題ではありません。ありませんか、起つております。この点私ども非常に遺憾に思います。どうして一番初めに、万やむを得なければ三分の一は関係炭鉱で負担しようというこの原理、このりくつをお取上げにならなかつたかと思うのであります。そうして法案が出まして、私ども現地におりましたのですが、協会長の名において十一月出て参りました。何回も委員会も傍聽いたしました。いろいろの御説明も承りました。またじかに官庁へもお尋ねして伺つております。御説明の中には、いろいろありましたが、二、三つまんでみますと、これは君たちに負担させるつもりなのではないのだ。配炭公団時代に炭価統制をしておつたときに、十六円何がし、あるいは十七円何がしというものを上積みにしておつた。それと同じ気持なんだ。一応は君たちにそれを課するようなかつこうになるけれども、それが消費者に転嫁されるという趣旨なんだとおつしやいます。趣旨はそうであるかもしれません。またそうでありましよう。ありましようけれども現実はそうなりません。自由販売の今日にそういうことになりません。これはお前とわれわれとは、こういう炭価で売るのだときめたあとに、二十円加えてもよい、十五円加えてもよいということに、はつきりなりますれば別でありますが、そうではありません。なるはずはありません。また先刻からいろいろお話がありますように、相互扶助的な考え方から、お互いに炭鉱業者が助け合つてやつてもらいたいのだという御趣旨も承りました。われわれは戰前、戰後を通じて、炭鉱業者としても、日本国民としても、お互いにこのしいたげられた現在の状態を、一日も早く回復しようと思つて、あらゆる努力をしております。同業としても、国民全体としても、相互扶助の建前を十分とるつもりでありますけれども、これは法律をもつてこういうふうなかつこうにすべきものじやないと私は思つております。いろいろ御努力をなさつたと思います。できないから、それじや前と同じようなかつこうで炭鉱業者にみんなわけて負担させるのだ。しかもその背後には強制徴収の形もある、罰則もあるというような法律のかつこうで――これは最も安易な方法でありましよう、安全な簡便な方法でありましようが、そういう事柄が今後続々行われることになりますならば、われわれは考え直さなければならぬと思います。新憲法下、民主国家の国民として、私どもはもしそういうふうにして相互扶助が行わなければならぬということになるとすれば、考えなければならぬと思います。またこれは非常に誤られて解釈されておりますから申し上げるのでありますが、北海道の炭鉱は――常磐のことは私は申しませんが、北海道の炭鉱は、戰時中は戰争がだんだん進展するに従つて、輸送その他が困難になつたので、ここに重点を置かないで、九州に重点を置いたために、北海道はある程度楽な状態になつた、九州は辛い状態になつた。だからこういうものができたのだというような御説明もありました。だからお前の方は楽をしたのだから、こちらの方に加担をしてもいいのではないかというような御意見もあつたように思います。特別鉱害はそうして起つたことではありません。それは九州に重点を特別かけたということではなくて、全国の炭鉱にみんな重点がかかつた、そのために特別鉱害が出たのであります。でありますから、特別鉱害は特別な負担をしろというこの法案が出ておるのであります。私は大正十三年に学校を出まして、しばらく東京の本社におりましたが、昭和六年十月、夕張鉱業社長として転勤いたしまして、戰時中も戦後も、ただいまも鉱業社長をしておりますが、ずつと現地におります。昭和十九年に樺太炭、釧路炭が輸送その他の関係上、あのまま採掘をしてはいかぬということで、採掘を中止いたしまして、労務者並びに施設を九州、山口、常磐地方へ移しております。また道内でも、同系の炭鉱へ移しております。こういう時代はありましたが、そこは操業中止――というとおかしいのですが、採炭をやりませんで、ここだけやつておるというような状態になつておつたのでありますが、その他のところは九州と同じに、山口と同じに、常磐と同じに、われわれは強行採炭を命ぜられもしましたし、またやつてもおりました。三十年に至りましては、三十年下期になつて、山はこわれてもいいのだ、一生懸命掘れという命令をされております。はなはだ恐縮でございますが、当時私どもと一緒に現地で御努力願つた中村さんが委員としてここにいらつしやいますが、われわれはその指揮のもとに働いたのでありますから、お聞きいただきますれば十分おわかりのことと思います。またこれは私間接に承つたので、もしそうでなければたいへん恐縮でございますが、ある炭鉱に対して、あの炭鉱はもうかつているのだから、非加害炭鉱という言葉は惡いでしようが、関係炭鉱でなくても持つていいのだというような御意見が、どつかからあつたやに聞いておりますが、これはもう問題外であります。私はこれには反駁も何もいたしません。 かくのごとき状態でありまして、この鉱害はあくまで社会問題でありますがゆえに、日本国民全体八千万全体が相互扶助すべきである。つまり国家が負担するということでなければならぬと考えます。しかしながら万やむを得ないときには、私どもが一応決議しました線、この線まではやむを得ぬと思つております。しかし、これは私どもが主張すべきことではない。私ども、こういうことを主張したくない。関係のない、非関係炭鉱に至りましては、私は今言うような相互扶助論的な考えから持ち出すべきものではない。私ども、あくまで相互扶助は相互扶助、情熱に生きるときは情熱に生きますが、物事を法律できめるときにはあくまで冷靜に、科学的にやつて行かなければならぬと考えております。その意味において私は本法案を負担方法を訂正していただかなければならぬと考えております。どうか御賢察いただきまして、よろしくお願いいたします。
○澁谷委員長代理 次は特別鉱害関係炭鉱代表の北九州石炭株式会社社長、藤江正泰さん。
○藤江公述人 私はただいま御紹介にあずかりました福岡県下の中小炭鉱が集まつております北九州石炭株式会社の社長藤江でございます。国会が私に対しまして、当公聽会において当法案に対して意見を申し述べろという御指名をいただきましたことは、本法案が北九州地区における中小炭鉱に対して、重大なる影響を與えるものであるという点を御考慮くださいまして、これらの炭鉱の本法案に対する考え方をお聞き取り願うという意味であろうと存じまして、この点から中小炭鉱として厚くお礼を申し上げる次第であります。従つて私は主としてこの見地に立つて本案に対する率直なる所信を申し上げたいと存ずるものでございます。 あらかじめ申し上げておきますが、北九州石炭株式会社関係炭鉱は、現在その数において約百四十鉱、鉱業権者数百十五名、現在の月産は三十万トンないし三十二万トンでございまして、九州の全出炭に対して二割弱でございます。そうして炭鉱の中において本法案の特別鉱害に該当するものを持つている炭鉱は、数において三十八鉱、約二八%、石炭出炭量において月産十七万トン、約五三%でありまして、それ以外の残りの炭鉱は、この法案にいわゆる非加害炭鉱であります。従つて私といたしましては、この北九州地区における中小炭鉱のうち、加需炭鉱並びに非加害炭鉱、両者の意見を総合して申し上げたいと存ずるのであります。 率直に結論を申し上げますならば、北九州における中小炭鉱は、いわゆる加害炭鉱たると非加害炭鉱たるとを問わず、すべて本法案が一日も早く国会の協賛を経て実施せられ、あの悲惨な鉱害を一日も早く復旧せられんことを、心から国会に対してお願い申し上げたいのであります。 特別鉱害のよつてもつて発生いたしました原因が、戰時中における国の要請による非常強制採炭の結果であり、かつ鉱害の現状の悲惨なるは周知の事実であります。この点は過日来衆参両院の代表の方が実地御視察くださいましたので、とくと御承知のことでありまして、またこれらの点については先刻来九州の石炭鉱業協会長並びにその他の団体の代表の方から、十分に御説明がございましたので、私がここに重複してくどくど申し上げる必要はないと存じます。 要する特別鉱害は、まつたく国家の要請による強行採炭によつて発生したものでありまして、全然当該炭鉱の自由意思によるものではないのであります。従つて、これは当然当該炭鉱に自任を負わすべきものではないと思います。またその結果の悲惨にして重大なる社会問題を惹起している点を考えますならば、その被害は一日も放置しておくべきではないという点につきましては、全国炭鉱業者中にたれ一人として反対するものはないのでございます。この点は昨日の参議院の公聽会における各地代表の御発言、またただいま萬仲さんの御発言によつても明瞭なのでございます。ただ問題は、その復旧費の負担方法にあるのでございまして、要するに非加害炭鉱に対してこの経費を負担さすべきでないというのが、これらの方々が強く御主張なさる点でございまして、この法案に対する修正の御意見であろうと、私は存ずるのでございます。もちろん本来ならば、この復旧は当然国の責任においてなさるべきものであると、私は考えるのでございまして、しかもできるならば全額国庫負担を強く国会にお願いしたいのでございますが、戰後のあらゆる財政措置、あるいは現在の国庫の財政状態その他の見地よりいたしまして、どうしてもこれが困難であるならば、やむを得ざる措置として加害炭鉱はもちろん、非加害炭鉱といえども、その負担に軽重の差はありましても、全炭鉱業者がその復旧費の一部を、最小限度において負担せざるを得ないものであると考えるのでございます。これは先刻申し上げましたように、北九州地区における中小炭鉱のうち、加害炭鉱はもちろん、非加害炭鉱の一致した考えでございまして、先刻福岡県合議員の井上氏が、強く業者として発言されたことによつても明らかなことでございます。非加害炭鉱という点におきましては、別に九州の炭鉱も北海道、常磐、宇部地区の炭鉱においても、何ら立場が異なつておるわけではございません。不必要な経費は一銭も出したくないというのが、業者全体の真意でございます。特に中小炭鉱は、昨年の九月十五日の配炭公団の廃止以来炭価は下りますし、金融には非常に逼迫いたしておりまして苦しんでいるのでございまして、特にこの考え方は強いのでございますがひとしく国家の要請に協力した点は、全体の炭鉱が同一であるにもかかわらず、おる炭鉱においはその自然條作とか立地條件とかによつて特別の鉱害が発生上、しかもそれは現在の炭鉱の経営状態では、とうてい私企業において全額負担するということは困難であり、しかも一方社会一般に多大の御迷惑をかけているという点を考えてみますと、現在自分の炭鉱にはこうした鉱害が発生していないが、ただこれをじつと見ているのだ。そういうことはとうていできないであろうというのが、炭鉱の考え方でございまして、また絶対に坐視すべきでないというのが、これらの業者の考え方でございます。またこれが石炭鉱業の対社会的信用、炭鉱業者の共存共栄、相互扶助的な立場から考えましても、全炭鉱がその分に応じて復旧費を負担すべきであるというのが、根本的な考え方であるのでございます。別に特別鉱害が九州に起つているから、九州の非加害炭鉱がこれを持つのだ、そういう考え方ではございません。かりにこの問題が北海道に起つておつて、九州に起つていなくても応分の力添えはすべきである、こういう考え方を大体いたしているわけでございます。 またもう一点考えてみますと、こういう考え方は、別に今日始まつたわけではないと考えるのでございます。これは先ほどからも再三話が出ているのでございますが、まつたく炭価の統制の時代ではございましたが、一昨年の六月二十三日の補正炭価には、御承知の通りこの特別鉱害復旧費が、十六円十一銭見込まれておりまして、それが配炭公団で保留されて、この復旧費に使われておつたのであります。しかも当時これに対して業界からは、たれ一人として文句を言う人はございませんでしたし、また補正炭価の全国各地区別配分に際しましても、これは北海道では持たないのだ、常磐では持たないのだというようなことは、全然ないのでございまして、全国業者が一律に全部納得して、この十六円十一銭を負担しておつた、こういうふうに考えるのでございます。現在すでに炭価は統制からはずれまして、自由炭価となつているのでございますが、しかも自由炭価というものは、需要によつて左右されるものでございますから、この統制炭価時代のように、十六円十一銭全国一律というような考えだけでは、とうてい参らないだろうと思うのでございますけれども、とにかくその一部を負担するということについては、精神的には私は全然かわりはないのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。これに対してあるいは反対の御意見があるかもしれません。それは十六円十一銭というものは炭価に加算してもらつているのだ、こういうことでございまして、政府からもらつたようにお考えになつているのでございますが、これは非常に間違つているのではないかと私考えるのでございます。当時二千三百八十八円という炭価がきまりましたときには、業界はたしか二千六百円ないし二千七百円の炭価がいただきたいということを、強く要望しておつたのでございますが、いろいろの見解から、それがずつと下へ下りまして二千三百八十八円にきまつたわけでございます。しかもその中に十六円十一銭入つているという御説明があつたわけでございまして、二千三百八十八円がわれわれと政府とのきめた炭価で、別に十六円十一銭が加算されたというわけではないのでございます。私はまことに簡單でございますが、こういう考え方を十分に御考慮くださいまして、本法案が一日も早く成立することを重ねてお願い申し上げる次第でございます。 なお最後にお願い申し上げておきたいことは、本法案が成立いたしましても、この特別鉱害の発生の原因にかんがみまして、できるだけ国庫財政でもつて経費は御負担願いたい。業者の負担はできるだけ軽くしていただくように国会においても御努力願いたい。できるならば業者の負担がゼロになるまでに御努力願いたい。こういうことをお願い申し上げておきたいのでございます。それからまた本法案の実施にあたりましては、業界の意見を十分におくみとりくださいまして、ただいま小西さんのおつしやいましたような、ああいうむずかしい非能率的な公団のような組織が再び出ないように、十分国会において御注意願いたいとともに、もう一つ、業者の負担能力を十分に御研究くださいまして、本案の第二十二條を活用していただくような、お仕組みに願いたいということをお願い申し上げておきたいと存ずるわけでございます。私の公述はこれで終らしていただきます。
○澁谷委員長代理 次は一般炭鉱代表の常磐炭鉱株式会社社長大越新さん。
○大越公述人 私は一般炭鉱代表の中小の代表と言われておりますけれども、全国の中小を代表するというのではございません。ただいま私は東部石炭協会の副会長を勤めておりまして、常磐炭鉱の社長をしております。どうかさようお含みおき願いたいと思います。 わが東部石炭協会の所属百五十炭鉱は、昨年末十二月二十一日付をもちまして、百五十炭鉱連署で当衆議院議長あてに請願書を差出しております。それには今回の特別鉱害復旧臨時措置法案に対して、その費用の負担から、きわめて明確に免除していただきたいということを主張しておるわけでございます。昨年末この特別鉱害なるものを私どもが承りましたときに、一体これはどういうのが特別鉱害であるのか。東京におきまするわれわれ同業者の石炭協会のいわゆる評議員会においても、説明会もございまして、この法案の立案の御当局と申しますか、政府の方々から御説明があつた。これはあの法案の第三條の第一項の一に書いてある戰時中の特定期間、すなわち昭和十六年十二月八日から終戰までの間に石炭鉱業を営んだために起つた鉱害というのではないんだ、こういうはつきりした御説明もございました。またあの第二には平常であるならば鉱害を防止する見地から、禁止または採掘を制限しておつた、そういう区域に対して政府が非常命令を出した、しかもそれは文書によつてなされてある、こういうのが特別鉱害であるという御説明がありました。その後本法案を手にとりまして第三條をよく見ますと、第一項に一、二、三と書いてありまして、戰時特定期間において今申し上げましたような特定の場所が強制的に採掘させられた、つまり鉱業権者がやむを得ず掘つたためにできた鉱害なんだ、こういうように言われておりまして、その第一項の末尾にも「左の各号に該当する鉱害」というようなことを書いてあります。もちろん私は法律の專門家でもございませんし、ただいままで私どもが承つておりました範囲内においての鉱害と考えておるわけであります。もしはたしてただいままでの御説明や、その法案にいうところに間違いがないならば、われわれ東部の業者といたしましては、この鉱害の費用を負担すべき義務なし、ですから本法案から明確に免除していただきたい、こう申し上げておるわけであります。その後われわれ石炭業界におきましても、公団もありましたし、また先ほど北海道の萬仲さん、また九州の小西さんからもいろいろ御説明ござましたが、このいわゆる特別鉱害については、従来配炭公団で例の十六円何がしをやつ来たので、今後いよいよ重要だということをだれもが考えておるのであります。従つて昨年の六月二十九日にわが全国の石炭業者の意思を代表するところの、日本石炭協会の会長名をもちまして、いやしくもこの特別鉱害の費用の負担につきましては、三分の二国庫、三分の一が炭鉱と申しておりますが、やむを得ざる場合といえどもこの線はやらなくてはならぬという決議をいたしまして、それぞれの関係官庁に陳情したわけであります。爾来今日までまだわれわれ業者の意見はかわつておりませんで、陳情をいまだ撤回しておりません。でありますからその内容については先ほどの小西さんのお話のようにまだ検討の余地がありましようが、とにもかくにもわれわれ石炭業者といたしましては、その線でこの法案についていろいろ考えていただきたい、こう考えておる次第でございます。なおそうした特別鉱害につきましても、先ほど萬仲さんからもお話がありましたように、たまたま政府の財源の不足という理由によりまして、今日全国炭鉱、ことに全然これと関係のないような炭鉱にも、これを法制化して向う五箇年の間、強制的に賦課徴収するというようなことは、どうも今日の占領治下において不合理もはなはだしいと考えられるのであります。かつまた従来配炭公団存続中のトン当り十六円何がしというものも、今までの政府御当局の御説明では、全炭鉱の責任においてということを申されておりますが、事実はまつたく消費者負担でありまして、今日まで数億に上る支出も、はたしてどういうふうに使われておるか、われわれはもちろんのこと、おそらくは全消費者の方々もあずかり知らないところであろうと思います。それとそれといたしましても、日本の今日の鉱業法はまだかわつておりませんので、現在の鉱業法によりますれば、その第五章の鉱害賠償の規定によりまして、二つ以上の炭鉱が採掘をして鉱害が発生したという場合には、連帶してその鉱害の賠償の責を負う、もしそのいずれかはつきりしないというような場合におきましても、連帶で賠償の責を負うということになつておるわけであります。たまたま二つくらいならともかくといたしましても、おもに北九州のようにあの広い炭田区域におきましては、一つ二つの炭鉱ではございません、数多い炭鉱が相隣接して作業をしておるという場合、これは必ずしも北九州には限らぬと思いますが、一例をあげて申し上げますならば、個々の炭鉱が採掘して鉱害ができて来る、そうするとその個々の鉱害ががおのおの鉱害を及ぼす。小区域であれば大した問題にならぬかもしれませんが、これが広い範囲にそれぞれの炭鉱がみな鉱害を引起すというようなことになりますと、勢いこの鉱害が発展いたしまして、総合的な鉱害現象を呈する。しかもそれがきわめて重大な社会問題にまで発展するというようなことは、私ども三十年炭鉱の石炭を掘る実務に携わつて来ておる採炭技術者としても、きわめて明確に想像し得るのでございます。はたしてそういう現象が起つた場合、いずれがいかにしてかかる総合鉱害の賠償の責を負うかというような問題は、きわめて重大でもあり、きわめて困難な問題に発展する可能性があると考えるのでございます。先ほど来被害者の真劍なる実情の御報告もございましたが、それを承つておりまする際にも、ただいま私の申し上げましたようなことが、あるいは特別鉱害というようなことに考えられておらるるのではないかと考えられます。はたしてそうしたことに相なりますそのもとは、一体何だろうかと考えますときに、これは私としては現在の鉱業法の不備なるがゆえに、あるいはまた今日までの行政措置の手遅れのために、こういうことになつて来たというふうにも考えらるるのでございます。はたしてそうであるとするならば、この復旧に対してはもちろん政府並びに地方公共団体、かつまたこの関係炭鉱が、相協力いたしまして、戰時補償打切り云々とはまつたく切離して、将来をおもんばかり、ここに根本的な対策を立てて復旧に努力することこそが、お互いの責任であり、また義務でもある、こう考えるのでございます。 最後に重ねて申し上げますが、われわれ全国の業者は、協会の決議に基いた三分の二国庫、三分の一関係炭鉱負担というた考え方を堅持しておるわけでございます。どうか委員会各位におかれましては、いやしくも国法でおきめになられる以上、厳正公明にして過ちなからしめるよう御配慮賜らんことを、この席から再び重ねて請願いたす次第でございます。
○澁谷委員長代理 次は特別鉱害関係炭鉱代表の、日本炭鉱労働組合福岡地方協議会生産部長漆原光國君。
○漆原公述人 私は日本炭鉱労働組合福岡地方協議会の漆原でございます。特別鉱害炭鉱の労働組合の代表として、法案に対する意見を述べたいと思います。 この法案の目的については、われわれの組織としてはまつたく賛成なのであります。先般来調査団の方が鉱害地区を御調査になり、被害の状況はつぶさに御存じのことと思いますし、さらに今日は被害当事者の代表の方たちからも、詳しくその被害状況が報告されて、議員諸氏にはすでに十分の御認識があられることと思いますが、何しろわれわれは直接この石炭を掘つており、被害を出さしたという責任の一端を感じておるものであり、従つて社会的な考え方の上からも、これを復旧しなければならないという責任感の強いものがあることを、御推察願いたいと思います。われわれは公共福祉の立場から、狭くなつた日本の国土の中で、これをいかに有意義に活用するかという考えの上からしても、早急にこれを復旧しなければならないという意向に対しては、まつたく賛成するものであります。 次に法案の細部にわたつてでありますが、第三條関係について一応意見を申し述べたいと思います。この中で問題になることは、特別鉱害と一般鉱害の分離についてだと思います。われわれの考えとしては、特別鉱害を復旧するという名目によつて、一般鉱害の復旧を便乘させることは、嚴に避けるべきことである。従つて特別鉱害と一般鉱害の認定はこれを明確にやる。査定をした上できめなければならないと考えておるのであります。従つて法案に盛られております鉱害対策審議会を十分活用させるべく法案を組まなければならないのではないかと考えるわけであります。具体的に申し上げますれば、鉱害対策審議会には各層の代表者を網羅しまして、社会的に見ても疑惑のないような査定がなされるような機関にしてもらいたい、こう考えるわけであります。そうしたことによりまして、特別鉱害を復旧するという精神を生かして行きたいと考える次第であります。 次は同じ第三條でありますが、第三條第一項第二号に「国の増産」によつて云々ということが強く主張されております。この件については、期間のみで特別鉱害の発生を定めるということは矛盾があるのではないかと考えるのであります。少くとも第三條の第一項第二号の精神を生かした、條件を含んだ特別鉱害の認定期間を定めてもらいたいと考えるわけであります。 問題の拠点になるのは第二十二條関係かと思います。これは各層代表の方が申されましたごとく、まつたく国に負担してもらわなければならぬ性質のものであると考えます。従つて全額国庫負担を要求する次第でありますが、どうしても国庫負担はできないという理由で、法案が通過しないような場合は、二十二條に考えている趣旨には賛成するものであります。しかしながら、條件としまして、基本的には、あくまで国が負担すべきであるという考え方に立つていることを、御認識願いたいと思います。従つてこの鉱害復旧費の負担は、ただちに労働者の労働條件の基本問題に響くおそれがあることを考えておいていただきたいと思います。プール負担を否定されて、加害炭鉱のみにかけるという場合にも、影響があるということをお考えになりまして、あくまでも国が負担すべきであるという基本精神に立つて御努力願いたい。 附則の第2項の復旧の期間でありますが、特別鉱害復旧は、五年などと棚限を切らずに技術、資力の配分を考えて可及的すみやかにやつていただきたい。重ねて申しますが、石炭を掘ることによつて一村の八割にも及ぶ不毛田をつくつた呈に対し、われわれとてもこれを何らかの方法によつて、すみやかに復旧してやらなければならたい社会的な義務みたいなものを痛切に感じておるので、そういう精神をくまれて、この法案を御審議され、ぜひとも今議会には通過させるよう、お願いしてやまない次第であります。
○澁谷委員長代理 次は一般炭鉱代講の日本炭鉱労働組合北海道地方協議会の生産部長をしております吉光さん。
○吉光公述人 私はただいま御紹介にあずかりました日本炭鉱労働組合北海道地方協議会の生産部長をしております吉光であります。本問題につきましては、午前中より諸種の方がいろいろと現地の模様またはかくあるべきだというふうなことを述べられておりますので、私は時間的に集約いたしまして、要点を申し上げます。 皆さんもすでにそこに掲げられました二十八枚にわたる写真によりまして、現地の模様は、逐次皆様の胸のうちにひそめられているものと思います。この写真を見ましたり、また本日諸氏の公述をお聞きいたしまして、こういう悲惨な状態が起つたことにつきましては、非常に遺憾に感ずる次第であります。さてこの問題をいかように解決するかということが、実にわれわれ日本人に課せられたところの使命だと思うのであります。従つて各氏からプール計算とか、あるいは国庫負担とかいような御意見が出ておりますが、私はかかる状態は、先ほど九州の方の加害炭鉱は、われわれ業者が加害したのではない、政府自体の命令によつてなされたものであるがゆえに、加害者は政府でさるというふうなことをるると申されておりましたが、私もかように考える一人であります。でありますがゆえに石炭業者にのみ加害の復興の責任を負わせることについては、私は考え直さなければならないのではないかというふうに考えるところの一人であります。なぜならば、現在日本の再建は石炭の過去における傾斜生産という建前から、石炭に重点を置いてすべての方針が立てられて来たのでありますが、しかし現実の石炭の姿を見ましても、やはり日本の基礎産業なるものは、石炭以外に私はないと思うのであります。しかしながら石炭業者にのみこの状態を押しつけて行つたならば、石炭業者は復興どころでなく、再びこういう状態を重ねて行かざるを得ないではないかと、私は考えるのであります。従つてこの状態を早急に復興することは――本法案においても五箇年ということが言われておりますが、私は五箇年ではなく、さらに短期間に――日本の経済を建直し、民生の安定を確立するために、二年なり三年なりの間に、早急やるべきところの国民の一大努力が、必要ではないかと考えるのであります。でありますがゆえに、石炭業者にのみよつてプール計算をすることは、考え方においては一応そういうことにも考えられようと思いますが、しかしこの石炭業者にのみ課せられた一トン二十円という考え方、これは一つの総合的なプール計算であつて、相互扶助の考え方でありますから、この相互扶助の考え方を広めて、これは石炭業者にのみ課せられた問題ではない、炭鉱労働者だけに課せられた問題ではなくて、日本国民八千万の同胞が相寄つて、責任を持つて復興しなければならぬという見地において私は国庫負担を主張するものであります。でありますがゆえに、この法案については、私は五箇年ではなく、さらに短期間において日本の民生の安定、経済の確立のために、解決しなければならぬお互いの義務があるのではないかと考えるのであります。たいへん同じようなことを申し上げましたが、私の主張する点は、国庫負担として、これを全面的に行うべきこと、しかも短時間のうちに復興せなければならないということであります。たくさん申し上げたい点はありますが、前者において種々な角度から主張されておりますので、この点は私は省きたいと思います。私の結論は、総合的な考え方をさらに大きく広げて行つて、これを国庫負担とすべきこと、五箇年でなく、さらに短時間において復興すべきであるということを私は主張いたしまして、公述を終ります。
○澁谷委員長代理 これにて本日予定の公述人全部の御発言は終りました。公述人各位におかれましては御多忙中のところ、貴重なる御時間をおさきくださいまして、御出席くださいまして、それぞれのお立場から熱心に御意見をお述べくださいまして、ここに委員会を代表し、私より厚くお礼を申し上げます。各位の貴重な御意見は、必ずや本委員会の本案審議の上に、よき参考と相なることと思われます。なお明日は学識経験者及び一般合計八名の公述人の方々より、御意見を伺うことに相なつております。今日御発言のお済みになりりした各位も、明日もう一日御出席を願いまして、委員よりの御質疑にお答えを願いたいと存じます。本日は長時間はわたりましてたいへん御苦労さまでございました。 本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。 午後四時七分散会