人事委員会 第11号
- 発言数
- 43 件
- 登壇者
- 3 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1950/03/01
会議録
○藤枝委員長代理 これより人事委員会を開会いたします。委員長におさしつかえがありますので、私が委員長の職務を行います。 議事に入る前にお知らせいたしておくことがあります。去る二十五日川上貫一君が委員を辞任せられ、米原昶君が新たに委員となられました。以上お知らせいたしておきます。 —————————————
○藤枝委員長代理 ただいまより国家公務員の職階制に関する法律案を議題として、審査を進めます。成田知巳君。
○成田委員 職階制に関する法律案について御質問いたします前に、ちよつとお伺いしたいのであります。数日前に淺井人事院総裁と全官公労の代表者が面会されました席上、淺井人事院総裁は、現在の六・三ベースを規定しております新給與実施に関する法律は、三月三十一日で失効する。それに対して政府が何らかの手を打たないならば、’人事院として手を打つ用意があるというような談話を発表されたらしいのでありますが、人事院のお考えになつている手というのは、どういう内容のものであるか、お知らせ願いたいと思います。
○山下(興)政府委員 私は実はそれは新聞で見ただけで、ございまして、実際のところはわかりませんが、別に手というものはないと思うのでございます。あれは三月末で法律が失効するわけでございますから、どんなことをしても延期することだけはしなくちやならぬ。その以外にどういうことがありますか。もつとも給與ベースがかわりますれば、むろんやりますし、その他緊急にどうしてもやらなくちやならないことがあつたら加えるかもしれませんが、今のところ、給與ベースがかわらなければ、あまり加えるところがないような気持でおります。
○成田委員 山下人事官は、給與べースがかわらなければ云々という、かわらないという前提でお話になつておるようでありますが、人事院の方から七・一べースの勧告も出していらつしやいますし、給與に関する企画立案というものは、国家公務員法によりまして人事院がやつておる。最近新給與実施に関する実施本部の権限も、人事院に移つたと聞いておつたのでありますが、人事院が最近給與ベース改訂の勧告を出ざれた以上、それに引続いて、それに必要な法律案を提案なさる用意があつてしかるべきだと思うのでありますが、それに対する御意見を伺つておきたいと思います。
○山下(興)政府委員 私どもも一日も早くそういうふうになることを希望しておるのでありますが、周囲の事情がそういうことができるということになれば、即日でも出しますが、しかし国会の中の情勢が、それを出しましても、それを取上げられないという情勢であれば、出してもつまらぬことでありますから、それは国会のやられることでありまして、われわれはそれをどうすることもできない。国会が最上の審議機関でありますから、あの勧告を出した以上は、国会があれを適当に取上げてそうして国会で何ものかを通すというように御盡力を願いたい、そう思つておるのであります。
○成田委員 ただいまの山下さんのお話を承つておりますと、勧告の出しつぱなしという感じを受けるのであります。人事院として、新給與実施に関する法律の改正案を出す権限があるとすれば、勧告までお出しになつて、そのあと引続いて手を打たれないということは、おかしいじやないかと思います。国会の情勢その他を云々されますが、これは国会自体で——いつも淺井人事院総裁が言われますが、国会自体で解決すべき問題でありまして、法案をお出しになることは、人事院としてその手続をおふみになつていいのじやないかと考えます。
○山下(興)政府委員 その点につきましては、私がここですぐ申し上げるわけに行きませんから、十分研究いたしまして、適当な時期に適当な方法をとるようにいたします。しかし勧告のしつぱなしであるということについては、私どもはそう思つておらない。勧告をする以上は、国民の代表者であられます国会がこれをお取上げになつてそうして適当に予算の中に組み込まれるはずのものでありまして、私どもがその最高の権限の、予算に携わるということ、あるいは意見を述べるということは越権であろうと思いますから、全部を国会の御審議におまかせしてお願いしたい、こう思つております。
○成田委員 その予算の問題でありますが、淺井人事院総裁の談話は、山下さんは新聞でごらんになつただけと言われるのでありますが、それにしてはあまりにうがつた新聞報道でありまして、予算の問題については人事院は全然権限がない。しかしながら法律案その他の提出については、人事院としても考えられるというような口吻のもとに、手を考えておるということを言われておるのですが、これは淺井人事院総裁個人の単なる思いつきの御意見じやないと思うのです。人事院は人事官三人で、三位一体で運営なさつておるわけであります。山下人事官も当然この問題については、何らか御意見があつてしかるべきものと思う。また淺井人事院総裁談話についても、何らかの知識を持つていらつしやると私たちは考えておるのですが、あの新聞記事は單に責任のない談話だ、風説だというふうに解釈していいのでありますか。
○山下(興)政府委員 いや、決してそういうわけでは、ございません。私どもが実は新聞で見ましても、あと総裁に確かめておりませんから、総裁と新聞記者あるいはその他の人との間に、どういう談話があつたかということは、私はわからないと申し上げるわけであります。しかしあの給與実施に関する法律案というものの額は、結局予算と非常に密接な関係がありまして、御承知のように予算総額がきまらなければ、給與のことを織り込むわけに行かないのでありますから、予算がどうかわるか、給與べースが上るか上らぬかということで、あの中へ組み込む数字が違つて来るわけであります。それで私が今申したようなことを私自身として考えておる次第でございます。
○成田委員 それから勧告の問題についてお尋ねしたいのであります。人事院が勧告を出されましてしかも出しつぱなしのような形になつておりますし、政府は受取つて受取りつぱなしのようなかつこうになつておると思うのであります。この国家公務員に対する人事院の勧告というのは、御承知のように公企体労働関係法の仲裁委員会の制度と同じレベルにあり、むしろそれよりも強い意味を持つておると私たちは考えておるのであります。公企体労働関係法に基く仲裁委員会の裁定というものが、予算上、資金上不可能な支出を内容とする場合には、国会の承認を受くべしということを規定してある。政府は国会に承認、不承認の議を求めなければいけないということになつておりますが、これから考えますと人事院の勧告も、ただ政府が受取つて、そのままほおかむりをすべきものではなしに、受取つた以上、公企体労働関係法のにらみ合いにおいても、承認にしろ不承認にしろ、一応国会に付議するのが、法律の精神だと私は考えるのでありますが、それに対する山下さんの御見解はどうでありますか。
○山下(興)政府委員 私どもは、だれが見てもだれが計算をしてみても、同じ結果が出るようにということで、今までの数字はできるだけ科学的に出してあります。ことに公務員の生活水準というものは、国民全体の平均の生活水準に合すということになつております。御承知のように公務員というものは、新憲法下で観念が切りかえられまして国家、国民に対して全力を盡してサービスをする。それであるから国民に対してストライキもしないし、団体協約といつたようなことはすべきものでないということの立場に立つておるのでありますから、国民の生活水準に合すということならば、これは国民全体として受入れてもらえるものだと思うのであります。それはいろいろな政策もありましよう。国全体として考えますと、予算その他においていろいろなことを考えなければならぬでありましようけれども、少くとも公務員の生活水準を国民全体の生活水準に合すということだけは、受入れてもらえるだろうと思つておるのであります。それであるから国民の代表者である国会は、それを受入れてくれることを確信しておるわけであります。しかし人事院というものができてからまだ目が浅いがために、政府が人事院を十分理解しておらぬと思うのであります。その理解していない証拠には、いわゆる給與白書なるものを出して、人事院の言うことは間違つておるということを国民に告げておるのであります。これは給與や何かの專門として人事院を設けてある以上は、その專門である人事院が出した数字が間違つておるということを政府が国民に告げたら、国民は何を信じていいかわからぬと思う。だからわれわれは白書戰などはしない。なぜかというと、政争の火中には入りた、くないからであります。われわれの言うことに間違いはない。国民は百パーセントこれを受入れてもよろしい。政府も百パーセントこれを信じてもよろしい。ただ議論をするのは、その数字ではなくして、それをまかなえるかどうか。すなわち予算が組み入れられるかどうかということは、国会が審議せられるし、また政府がそれを提出すべき義務があるように私は思う。しかしどうもあまり人事院が新しいがために、政府自体もこれを十分に理解しておられないし、また労働組合の方も何かやつてくれるだろうと、あたかも国会以上の何かの存在であるがごとき観念を持つておられるということは、非常に間違いだと思う。われわれにはフアシヨというものはないのでありまして、どこまでも国会が最高権威であるとわれわれは信じておりますから、国民の代表者である国会がそれを取上げないという道理はなかろうと信じておる次第であります。
○成田委員 山下さんは非常に該博な知識を持つておられるので、答弁も詳細にわたつてかえつてお問いした要点に対する御答弁がないような感じを受けるのであります。私が申し上げているのは、今度の人事院勧告に対する政府のとつている態度というものが、政治的にどうであるとかこうであるとか、これは言う必要はないと思います。そこで法律論といたしまして、国家公務員法に基く人事院の勧告と、公共企業体労働関係法に基く仲裁委員会の裁定というものは同じレベルにあり、むしろ勧告の方に重点を置かれなければいけないというくらいに考えておる。そういたしますと、公共企業体労働関係法の関係で仲裁がなされて、その仲裁の結果を施行することが資金上、予算上不可能な場合には、公共企業体労働関係法十六條二項に基いて国会の承認を得なければならないということになつております。この観点から考えますと、人事院が権威ある勧告を国会並びに政府に対してなさつており、国会がこれを取上げるか取上げないかは別といたしまして政府は人事院から勧告を受けた以上、公共企業体労働関係法との関係から行きましても、承認不承認を当然国会に付議すべきではないか。これが法律解釈として当然ではないか。現在のように握りつぶすということは違法ではないかということを承つておるわけです。
○山下(興)政府委員 その点につきましては、十分研究してお答えいたします。
○成田委員 この問題は今ごろ十分研究なさる筋合いのものではなくして、当然人事院が勧告なさつた当時、この問題は十分研究なさつておられるはずだと思うのです。もし研究されておられないとするならば、人事院としては非常に手落ちだと思いますし、これくらいの問題が研究されていないはずはないと思います。現在の山下人事官の考えも、こういう法律解釈は正しいか、あるいは間違つておるか、現在の山下さんのお考えを承りたい。
○山下(興)政府委員 これは御承知のように、人事院は三人の会議体でありますから、私一人の意見をここで申し上げるのは困難でありますから、十分研究いたしまして——という意味は、私どもはあれだけ国会に勧告し、政府に勧告すれば、当然それを取上げてもろうべきはずのものだと疑わなかつたわけでございます。今度のように全部それをそつぽを向いて知らぬのだというようなことはあり得べからざることのように実は思つておつてそういう審議を実はいたしておらないのであります。十分考えまして、お答えいたしたいと思います。
○成田委員 今の山下さんの御答弁を承りますと、当然国会なり、政府が取上げるべきである。取上げないというような事態を予想していなかつたということから反対解釈いたしますと、法律論としても当然政府に勧告があつた場合は、政府はその承認不承認にかかわらず、どちらにしろ一応国会に付議するのが正しいという結論に達すると思うのでありますが、この問題は重大な問題だと思いますので、人事院としての結論を早く出していただきたいということをお願いする次第でございます。勧告の問題につきましてはこの程度にいたしまして、次に職階制法案に関する二、三の点を質問申し上げます。 第一は、この法案の第一條に「この法律は、国家公務員法第二十九條の規定に基き、同法第二條に規定する一般職に属する官職に関する職階制を確立し」云々と規定しておるのでありますが、この法律というのは、国家公務員法第二十九條第一項に規定しておりますところの法律をさしておるのでありますか。
○山下(興)政府委員 さようでございます。
○成田委員 この職階制に関する法律案が、国家公務員法二十九條一項の法律そのものであるといたしますならば、この法案の條文として私たち非常に理解に苦しむ点が多々あるのであります。その一つといたしまして第四條に「人事院は、この法律の実施に関し、左に掲げる権限及び責務を有する。」と規定いたしまして一号に「職階制を実施し、その責に任ずること。」というようなことを規定しているのでありまして、法律の語句としてはまことにおかしいのじやないかと思います。この法律そのものが職階制に関する法律でありながらさらに第四條に職階制に関する云々というようなことを書いているということは、非常に重複しているという感じを受けるのでありますが、その点はいかがでありますか。
○山下(興)政府委員 私どもはこういうふうに考えております。階職制の法律は、たとえば職種をきめ、職級をきめ、それから格付をし、それの変更をするという、全体の行き方をきめたものである。しかし私どもは、初めの計画から最後の実施に至るまでを、かくのごとくすべきものだということをきめたのが、この法律だと思つております。但しそれから後これを実施する場合は、人事院が実施するのであります。実施するのはどうするかというと、この法律の規定に従いまして各官職を種類にわけたり、責任の大小によつて序列をつくたり、またその区画をして職級をつくつたり、そういう作業全体が実施であり、それを人事院がやるべきものだというふうに思つております。
○成田委員 ただいまこの職階制法案というものは、職階制に関する詳細を規定するという御意見がありましたが、私たちはこの法案を見ましても、職階制に関する詳細を規定しているというふうには少しも考えられない。だれが見ましてもこの職階制法案というものは、大体どういうことを規定しているのかよほど頭のいい人でもわからないと思うのです。そこでお尋ねしたいのは、国家公務員法の三十九條の職階制は法律で定めるという第一項目は、最初の国家公務員法の原案にはなかつたと私は記憶しております。これは職階制という重要な事項を、人事院の專断にゆだねる結果になりはしないかというので、修正案としてこの一項目が入りまして、職階制は法律で定めるということがはつきり規定されるのだと記憶しております。この二十九條一項の法律というものが、先ほどの御答弁によります職階制法だとすれば、当時の国家公務員法の修正理由に徴しましても、この職階制の詳細を法律で規定するのは当然だと思います。この法案を見ますと、原則だけ規定しまして、その詳細はすべて人事院規則にまかされている。すなわち委任立法の形になつている。これでは国家公務員法の二十九條を修正した当時の立法理由にも、合わわないのではないかという感じがいたすのでありますが、それに対する見解はいかがでありますか。
○山下(興)政府委員 私どもはこれが詳細に原則をきめたもののように思うのでございます。これよりも先に入りますと、これはどこで切つてよいかわからない。非常に複雑になつて来るのであります。現にここに職級明細書がお配りしてありますが、それは明細書のごく一部分でありまして、おそらく五分の一くらいではないかと思うのでありますが、それにつきまして職階担当官というものがあります。この担当官は大体千人について一人くらいおるのでありますから、日本でいいますと大体千人くらいおつて職階、職級などをすつかりきめて行く。それが全部済んでも、毎日次から次へと研究をし、変更をして行く。そうするとおそらく一日に十件くらいは変更をしなければならぬ。それでありますから、そういうことはとても法律できめることはできないのであります。それで職級で切るというわけにも行かないわけであります。職種で切るかといいましても、職種それ自身が五百もあるので、そこで切つてみても何らの意味がない。それでどこでも切る場所がないのであります。従つて計画から格付の最後の最後まで原則をきめることが必要だから、こういう法律ができているわけであります。
○成田委員 国家公務員法二十九條の四項には「前三項に関する計画は、国会に提出して、その承認を得なければならない。」とあります。前三項というのは、第一項はただいま申しました職階制は法律で定めるということ、第二項は官職の分類整理、第三項が給與に関する分類整理の規定でありますが、この三つの條項について、事前に国会に提出してその承認を得なければならないということになつておるとすれば、法律で定めるということになりまして、この法案が出たことは、事前に国会の承認を得るという結果になると思いますが、二項、三項の官職の分類、あるいは給與に関する規定は、どういう形で事前に国会の承認を得る用意を持つていらつしやいますか。
○藤枝委員長代理 ちよつと速記をとめてください。 〔速記中止〕
○藤枝委員長代理 速記をはじめてください。
○成田委員 そういたしますと、今回の職階制法案と給與との関係はどうなるのですか。
○山下(興)政府委員 それは御承知のように、一九三四年のあのアメリカの連邦政府による職階法は、あすこに給與があるのでございます。職種の非常に大きな四つの区切りと給與とがちやんとでき上つておるのです。それがアメリカの職階法でございます。ところがそれを理論的に考えますと、職階に給與があるはずがない。職階は給與に役立ちはするけれども、同時にそれは試験にも役立つし、その他いろいろなものに役立つのだから、これは職階は職階で独立しておるべきであり、給與は給與でまた独立しておるべきものであるという考え方になつたわけであります。それで日本としては、今その職階の中から給與の一部分を取除きました残りが、この職階法になるわけであります。但しアメリカではそこに今申しましたように四つにわけてありますがPと、SPと、CAFと、CPCというこの四つにわかれるのであります。Pというのは專門的、科学的職掌、それからSPというのは準專門的職掌、CAFというのは書記的、行政的、会計的職掌、CPCといいますのは技能防護監視的職級、この四つにわけたのでございます。五百の職種がありますが、それは四つに大別してあるわけであります。ところがそれでずつと去年まで来ましたら、やはり職種というものを入れるのはぐあいが惡いということになりまして、それでアメリカでは去年の十月にこの四つをなくしてしまつたのであります。なくしてしまつたから、アメリカでは給與だけは残つておるようなかつこうでございます。ところが日本ではもう一つそれを給與と職階とをわけまして、それでそのわけた中からこの四つも何も、職種を全部のけましたものであるから、こういう今差上げたようなものができたわけであります。それでこの次は給與準則をここへ出しまして、それを御審議願いたいのでございます。それは給與の方の側であります。それを出します。そこで初めてこの二つを合すと、今までの普通の職階法が給與と合併して働きをすることになるのです。アメリカではその四つと、それから横の給與の等級とだけが法律になつておりまして、その他は皆人事院規則で全部扱つておるわけです。ですから、われわれの方も横の給與準則は、法律で出します。それから今の縦の職種の方はこの法律で出します。その二つの法律が合わさつて、そうして人事院規則がここにはまり込みまして働くというのが構想でございます。
○成田委員 そういたしますと、国家公務員法第二十九條三項は、五項によつて事実上帳消しになつたというのですか。この二十九條三項の制定された理由、あるいは今回のこの法案の第三條一項の四号でございますが、「同一の俸給表をひとしく適用」云々ということを規定してあるのから見ましても、この職階制と給與というものは無関係とは言えないと思う。今回の職階制法案と給與というものは、相当密接な関係がある。こう解釈できると思うのでありますが、いかがでございましようか。
○山下(興)政府委員 その通りでございます。非常に関係があるのであります。
○成田委員 給與と職階制というものが、密接な関係があるということになりますと、この職階制法というものに対して、相当疑義を持たなければいかぬという結論になるのであります。と申しますのは、職階制と給與を切り離しまして任用に関する試験その他についての職階制法案でしたら、私たち非常に異議があると思うのでありますが、給與との関係が強く出て来ますと、相当身分的な上下関係というものが、この職階制法案によつて規制せられるのではないかという心配が一つあります。さらに現在の日本の社会状態から行きまして、今回の職階制法案を見ますと、高い責任だとか、複雑な職務というものに対しては、結局給與との関係が出て来ますと、高い給與を拂うという結果になると思うのでありますがそうしますと高い資格を得ることのできるものは、ごく限られた少数の人々であります。大多数の人は学校にも行けない、專門的な技術も学べないということになりますと、無産者の子弟はこの職階制法によつて、一生下積みにならなければならないという結果になることを心配するのでありますが、これに対する人事院の御見解はどうでございましようか。
○山下(興)政府委員 それは私どもも最もおそれるところでありまして、人事行政の全部の切りかえについては、非常にその点を重視しておるわけであります。と申しますのは、学問によらない、過去の経歴によらないで、そしてその人の現在持つておる能力によつて、評価して行こうという考え方でございます。それで試験を非常に重視しておりまして、これから先の試験は、昇任試験——ある職級から上の職級へ行きますときには大体試験があるのですが、その試験の問題はどうしてやるかというと、こういうふうにこまかく分析をして、これに合うような試験問題を出して行くのであります。それですから職階制というものは、給與に非常に大きな関係があると同時に、試験に非常に大きな関係を持つておるのであります。学歴を重視しておる今までの行き方を全部切り離すためには、非常に骨が折れるのであります。ということは、その履歴を見てもわかりませんから、それで試験もしなくちやならぬ。試験をするのには、大きな任用局のようなものがあつて、こまかな問題からやらなければならぬ。まれそれによつて給與もきめて行かなければならぬということになつて、今までの人事行政を全部書きかえるというような、大きな仕事を控えておるわけであります。それですから給與には非常に関係がありますが、それと同時にまた試験をやる上にも、非常に大きな関係があるということを御了承願いたいと思います。
○成田委員 試験に密接な関係があるということは了承するのであります。給與に密接な関係があるということになりますと、今申しましたようないろいろな弊害が出るのではないかという心配を、私たちは持つておるのであります。今山下さんのお話では能力による。学歴なんか問題にしないと言われるのでありますが、能力というものも一定したものではないのであります。その人が持つておる能力というものは、やはり学歴とか、社会的地位とかいうものによつてその能力が高くもなり低くもなる。もちろん限度はありましようが、やはり学歴によつて能力というものが養われて来るということになりますと、能力によつて判定されるといいながら、実際にはその能力を裏づけるところの資産あるいは社会的地位、学歴というものが、大きなエレメントをなして来るだろうと思うのです。そうしますとやはり学校へ行ける資力のない人は、一生下積みでこの職階制のもとで苦しまなければいけないという結果になつて来ると思う。能力というものが、そういう学歴なんか問題にしないで判定できるならいいですけれども、事実上能力を裏づけるものは、学歴であり、その人の資産状況であり、社会的な地位であるということになりますと、今言われた能力で判定するということも、事実上不可能になるのではないか。その能力というものは、結局社会的なその人の地位によつて評価されるという結果になるのではないかということを心配するのであります。
○山下(興)政府委員 もしそういうことになりますと、われわれの企てが全部水泡に帰するわけでございますが、私どもはたとえば大学を出た者でも、その人がただのタイピストであるならば、タイピストとしてのお金しか拂わぬようにしよう。その人が学校を出てから何年だから、ほかの仕事をさせればさぞやるだろうと思いましても、現実にその仕事をしていなければ、何の価値なしということであります。ということは、結局公務員が努力をいたしますのは、国民に対するサービスであるのだから、現に出すサービスに対して国民が金を出して、それのサービス料を提供するという考え方から行きますと、その人がいかに能力があろうとも、ほかのところへ持つて行けばいかに能力があろうとも、それでは国民がお金を出すということにはならぬと思う。但しそういう人でほかの仕事をしたければ、どんどん試験を受けて、自分の適するところに進んで行けばいいということになる。現に私どもの方でもこの間うち五級、六級の採用試験をどんどんやりましたが、今までですと大学生を入れますと、あれは三年すれば資格変更にしなければいかぬから、そんなにたくさん人をとるわけには行かぬから、まあ十人にしておこう、二十人にしておこうというように、われわれが役所におりましたころにはそうしたのであります。しかしこのごろはそういうことはない。みんな自分の力で行くのでありますから、わあつと全部一緒に試験をしまして、大学出であろうが何であろうが、受かつた者からとる。そういう行き方ですでにスタートしておるわけであります。
○成田委員 次に自由任用の範囲についてお尋ねしたいのでありますが、この前の公聴会でもありましたが、この職階制法案はアメリカの制度の輸入でありましてそのアメリカにおいても試験による一般職の制度というものは、七〇・五%でございまして、残余は自由任用の制度だということを言つておられるのでありますが、今回の法案を見ますと、すべてが一般職になつておる。ほとんど九九%まで一般職になつており、次官までこの法案の適用を受けることになつておるのでありますが、もともと国の政治的な活動というものは、国会その他で政治的な意思決定がなされてそれを実際に適用するのが行政官庁ということになつておるのですから、その交叉点をどこに求めるかということは、非常に必要だと思うのです。そういう意味でもう少し自由任用の範囲というものを、広げる必要があるのではないかということを痛感するのでありますが、これに対してどのようにお考えになつておりますか。
○山下(興)政府委員 私ども、これから政党政治が強く、盛んになつて来ますと、二大政党の時代がすぐ出て来るだろうと思うのです。そこでそういうときに、ある政党が天下をとつたときに、それによつて影響せられる人数を極力減らしたい、そういうことを考えておるのです。それで事務次官は少くとも政府がかわつても、かわらぬこににしてもらいたい。つまり国会でおきめになる政策を実行するものはかわらないが、そのかわりおきめになる事柄は忠実に実行をする。もしも政党によつてその地位を動かされますと、今度また次の政党が出たときにそれを動かそうということになつて、公務員の地位が非常に不安定になるのであります。それですからできるだけたくさんを一般職にしてしまつて、地位を安定なものにしてしまおうという考えをしておるのであります。一つはこの間の政治活動の禁止にしても、いろいろ評判は惡うございましたが、事実のところ、将来二大政党下になりますと、一つの政党の色がつきますと、次の政党が来たときも首を切つてしまうということになりますので、そういう人をできるだけ少くするために、安全の位置に公務員を置く必要がある。それには政治に関與すべからずという原則を立てまして、将来公務員の地位を非常に安全な位置に持つて行こう、こういう考え方からあれはスタートしておるのであります。できるだけたくさんの人を一般職に持つて来ようというのが、私どものねらいでございます。
○成田委員 そこで私たち考え方が全然逆になるのでありまして、この制度はアメリカからとつて来られたと思うのでありますが、アメリカにおきましては、御承知のようにスポイルス・システムというものは非常に弊害ができた。そこでこういう職階法というものができたのだろうと思うのでありますが、制度を輸入するときにはやはりその国の歴史的な伝統、社会的條件というものを考えなければいかぬと思うのです。日本はそういう段階ではないと思うのです。最初アメリカでスポイルス・システムができた当時の状況が見本なので、むしろ今までの封建的な官僚制度、特権的な官僚制度、これを打破する必要があるのであります。そういう社会的な條件の違つている日本に、アメリカの制度をそのまま持つて来るということは、旧来の官僚制度をますます温存、強化する結果になるのです。アメリカと日本の社会制度、官僚制度の相違というものをこの際相当考えてやらなければ、お考えとは逆の結果になるのではないかということを私たち考えております。
○山下(興)政府委員 成田さんのおつしやる通りでございます。但しわれわれは、政党政治ができたら、必ずこのスポイルス・システムというものが生れるのだということを確信いたしておるのであります。現に私自身が鉄道省におりましたときに、憲政会と政友会とが非常に争いまして、そして小川さんかやめて憲政会の江木さんが鉄道大臣になられたときに、局長で残つたのは私一人だというようなぐあいで、その二つの政党が相争うときの弊害は、十分われわれ承知しおるのでございます。そしてまた世界中そういうスポイルス・システムの行われなかつたところがほとんどないのでありますから、日本も少し先手を打つて、そしてああいうことをやつたわけでございまして、一ペン苦しんだ上でやると、なるほど公務員の保護だということピンと来るのでございますけれども、それがない前の手ですから、ちよつとおかしな、公務員ばかりを制限する、自由を奪うというふうにとられたわけでございますが、そういう気持は全然ございません。
○成田委員 私が申し上げたのは、公務員の自由を奪うというのではなしに、現在の高級官僚の根強い特権的な地位というものを、かえつて自由任用の範囲を狹めるために、温存、強化する結果になるのではないかということを心配して申したのです。 最後にもう一言お尋ねしたいのは、罰則の規定なのでありますが、十五條の罰則を見ますと、「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」というので、報告をやらなかつた場合とか、人事院に対して虚偽の報告をした者ということが書いてあるのですが、もともとこの規定というのは、使用者である政府と被使用者である公務員との関係を規定しておるので、権力服従関係ではないと思います。政府の権力発動の問題ではないと思う。そういたしますと、これに対して一年以下の懲役または三万円以下の罰金を規定するということは行き過ぎじやないか。一つの犯罪のように考えてやつておられることは行き過ぎじやないか。むしろ懲戒の規定で十分ではないかということを考えるのですが、いかがでしよう。
○山下(興)政府委員 お説の通りと思います。ある方面から眺めてみますと……。但しこういう罰則は、罰を與えないということが根本にあるのでありまして、これを單に與えるということでは困るのであります。少し嚴格過ぎますけれども、だれもこういう罰を受けないように希望するのでございまして、程度の問題でございます。
○成田委員 嚴格過ぎるとか、程度の問題と言われますけれども、私は程度の問題ではない、性質の問題だと思う。これが国家の統治権力の発動の問題でしたならば、懲役とか罰金はいいでしようけれども、使用者と被使用者とのいわば雇用関係なのである。その間の規律を保つための罰則だとすれば、当然懲戒規定でいいと思う。程度の問題ではなくて、性質の問題だと思うのですが、いかがでしよう。
○山下(興)政府委員 それはどうも、ちよつと意見の相違でありまして何とも私の方からは申し上げかねます。
○成田委員 それではこれで質問を終りますが、最初にお願いいたしました人事院の勧告に対して、政府が承認にしろ不承認にしろ当然国会に付議すべきだ。これは公共企業体労働関係法から見ましても当然のことだと思う。山下さんも、政府が国会に付議しないということは予想しなかつたから、そういう問題は考えなかつたということで、私だちと同一の御意見のような御答弁があつたのですが、個人の意見を申すのはどうかというようなお話で、至急解釈を一定したいということでございましたが、これはできるだけ早く人事院の公式の解釈にいたしまして本委員会に報告していただきたいということをお願いする次第であります。
○藤枝委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもつてお知らせいたすことといたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時二十五分散会