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7回国会衆議院1950/03/14

外務委員会 第9号

発言数
100
登壇者
11
会派数
6
開催日
1950/03/14

会議録

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 ただいまより会議を開きます。  前会に引続き、国が有償で譲渡した物件が略奪品として没収された場合の措置に関する法律案(内閣提出第六一号)を議題といたします。質疑を許します。山本利壽君。

山本利壽民主党(第九控室)

○山本(利)委員 まずこの法案の形式的な点について、一、二御質疑申し上げてみたいと思います。それは第四条の第四号でありますが、「申請者が当該物件を略奪品として没収されたこと。」こうなつております。これは申請者が払いもどしを受けようとするために、提出する書類に記入する要綱でありますが、当該物件が有償で払い下げられたときのことに対しては、前三号によつて国の機関の名称であるとか、譲渡の時期であるとか、それから当該物件の品名であるとかいろいろこまかに書いてあるのでありますけれども、それが略奪品として没収された場合においてもそのことが必要だと考えるのであります。何月何日にどこでどういう機関によつて没収されたかというようなことが、こまかく必要だと思うのでありますが、この法案ではただ没収されたこととなつておりますから、記入する場合にこの品は略奪品として没収されましたということだけ書けばいいように思われるのでありますが、この点についての御答弁をお願いします。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 御質問は第四条第四号に関することでございますが、没収いたします際には没収令状というものがございまして、それに詳細なことは書いてあるわけでございます。証拠書類と申しますと、当然没収令状が出て来なければ、没収されましたという証拠にはならないのであります。簡単に書いてございますけれども、御心配のような点はないと存じます。当局の方におきましても、没収は比較的新しいことでありますから、すべて書類はそろつております。間違えることは断じてないと思います。

山本利壽民主党(第九控室)

○山本(利)委員 今の御答弁ではまことにふに落ちないのであります。払下げの場合の項目ではこれだけ詳しく書いておいて、それで今度没収された場合のことは簡単にする。今の第四号に対する答弁が許されるならば、第一号、第二号、第三号に関することでも、同じく定められたる申請書に記入の上提出すればいいというぐあいに簡単でいいはずである。それで譲渡されたときにだけこれだけ詳しく書いて、今度没収されたときの分だけは今のような形で許されるなれば、私はこの点は法律として非常におかしいと思います。もう一つ答弁のおかしいことは、略奪品として没収されたのはまだ最近のことであるから、それに関する帳簿はわかつている、そうしたら譲渡しのときまではもう帳簿がなくても書いて出せばそれでいいわけですが、そこらのところがたいへん不備である。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 没収いたしましたことは比較的新らしいことだからわかつていると申し上げたのでありますが、これは実はその品物が没収されたか没収されないかということさえわかりますならば、この法律の目的には十分なのでありまして、逆に一、二、三の方は特殊物件なり何なりといたしまして、払下げをいたしました方は厳格に書き出していただきませんと、間違いが起りやすいと存じますので、かように詳しくいたしましたわけでございます。

山本利壽民主党(第九控室)

○山本(利)委員 それではまたこれから後に対しては、ずつとこれはいろいろ年数が続くわけでありますから、もし第一号、第二号、第三号に関することがこれだけ必要であるならば、法律の形を整える意味でも、第四号に対してもう少しこれを書き上げておく方が当然だと思いますが、その点に対して……

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 没収いたしますときは、どういう品物を没収するかということをはつきりした上、没収いたしておりますのが当然でございます。従いまして、先ほど申し上げました没収令状というものにはお話のようなこまかいことも全部記載してございます。それを出していただけば、没収されたという事実だけでもつて、何ら間違いを起すことはございませんわけであります。

山本利壽民主党(第九控室)

○山本(利)委員 ただいまの御答弁では、私はまことに不十分だと思うのであります。ことに法文に「没収されたこと。」と書いてあつて、まことにこの点では形式上納得が行きませんが、時間の関係上一応これはこのままにしておきます。  その次の第五条でございますが、五条の終りの方に「当該申請書を調査の結果とともに賠償庁長官に送付しなければならない。」と書いてあるのであります。これは常識的には大体わかりますが、「当該申請書をそれに関する調査書とともに賠償庁長官に送付しなければならない。」でなければ私はおかしいように思います。その点の御説明を願いたいと思います。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 今お話のありました御趣旨の通りわれわれも考えておりまして、「当該申請書を調査の結果とともに」云々と申しますのは、調査書なりそのほかの書類なりを、当該申請書とともに出していただく意味でございます。

山本利壽民主党(第九控室)

○山本(利)委員 私が御質問申し上げましたからそのようなお答えが出るのであつて、ただこの文章だけを見ましたときに、そのようにすべてが解釈されるかどうかということは、私はすこぶる疑問があると思うのであります。但しいろいろな法律の場合において、それに関する調査書ということを、調査の結果というような言葉で表わしてあることが、法律上多いかどうかという点に対してお伺いします。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 ささいなことであるかと思いますが、われわれといたしましては、調査書というふうに限定いたしませんで、広く知事が申請を受付けて調査をしてもらいまして、その結果をすべて賠償庁長官に報告をしていただきたいという意味で、「調査の結果とともに」と書いたわけでありまして、普通常識的に何ら誤解は起さないと思うのでございます。

山本利壽民主党(第九控室)

○山本(利)委員 何ら誤解を起さないということは、この案文をこしらえた方はそういうつもりで書かれたのでありますから、そうでしようけれども、一つの法律としての形といいますか、だれが見てもそれが誤りを生ぜないような形において表わしておかなければ私は非常に不備だと考えるので、今審議の途中でありますから、これが法律的に全般的にこういう形で表わすのですということであるならば、私は了承しますけれども、そうでなしに、ただ今回出された立案者がそういうことを考えておられただけであつて、一般にこういうことが法律的に表われていないとするならば、私は文章を直すだけのことでありますから、明確にしておいていただかなければ、この委員会としても責任上非常におかしいと思う。なおここで通しても参議院の外務委員会に参りまして、この案文の不備と申しますか、そういうものをつかれたときに、衆議院の外務委員会というものはまるきり審議しなくて通したように考えられる。だからもし直すべきものならば、虚心坦懐に不備な点は直しておく方がいいのではないか、その点に関する御意見を……

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 法律の文字といたしましても、十分研究いたしました結果、これでさしつかえないということに政府といたしましては落着いたした次第でございます。なおまたお話のような誤解がございませんようには、十分知事の方と連絡いたしたいと存じます。

山本利壽民主党(第九控室)

○山本(利)委員 今までの御答弁で、この法案に対する表現の仕方はすこぶる私はまずいと考えるのでありますが、質問をこの程度にいたしますが、内容的に申しまして、先般の委員会でも、有償払下げを受けてから略奪品として没収されるまでの間に、その品物の運用によつて十分に利潤を上げているものに対しては、払いもどす必要がないではないかというような質問がありまして、これは調べるのがなかなか困難のことであるが、といつたような意味の御答弁があつたと記憶するのでありますが、この点に対して実際的にはその質問の通りでありますから、その後今日に至るまで、その不備を補うために何らかのことが考えられたでありましようか、もうしかたがないから、いかにその間利潤を上げておつても、略奪品として没収されたものに対しては、支払つてやらなければならないという態度でありましようか、その点をお聞きいたします。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 この前同様の御質問がございまして、山口国務大臣から申し上げましたと思いますが、その当時といたしましては、それが適法の取引としてなされまして、それによりまして利潤等を上げた場合もございましようが、そこまで政府といたしまして、あとからさかのぼりまして、とやかくしますことは、一般的に申しまして取引の安全と申しますか、あまりに個人の利害関係に立入るように思いますし、また実際問題としても調査しかねるので、それはこの法律ではいたさないことにしたいという趣旨の答弁を大臣がされまして、現在でもさように考えております。

山本利壽民主党(第九控室)

○山本(利)委員 もう一点、たとえばミシン等が略奪品として没収されたあと、いろいろな陳情があつて、国産品をマル公で売り渡してやるとか、いろいろなあつせんがあつた場合があるというお話が、先般の会議であつたのでありますが、そういうようなこともあるとすれば、やはり今回の払いもどしに対しては、慎重を期するために、何らかの審議会的なものを設けて、それによつて当然払うべきであるというものにだけ払つた方が、国家としては非常に慎重ではないかというふうに考えるのでありますが、その点についてさらに考慮が重ねられたかどうか、御質問申し上げます。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 御質問の御趣旨はわれわれも十分考えているところでございますが、この法案の趣旨といたしますところは、その損害をカバーしてやろうという補償ではございませんで、政府が払い下げまして、代金を受取つておきましたものを、後に無償で没収いたしました場合に、その代金を返還するのはきわめて妥当であろうというところから、出発いたしております。従つて補償の問題には及んでおらない次第でございます。補償の問題になりますと、いろいろのほかの戦争に基く損害の関係ともあわせ考えなければならない。従つてこの法案では、そこまで行くべきではない、かように考えておる次第でございます。

山本利壽民主党(第九控室)

○山本(利)委員 私はこの前の委員会で要求いたしました資料を今回提供していただきまして、たいへん感謝しておるものでありますが、ミシンの問題等にいたしましても、女学校であるとか、あるいは社会事業協会であるとか、授産所であるとかいうようなものから没収されたものが相当ある。こういうものはぜひ返してやるべきだというふうに、私は強く考えたのであります。それは社会政策的な意味から、困つた人たちに、少しでも潤いを与えるようにという観点から、この法案には、場合によつては賛成するにやぶさかでないという気分がしておつたのでありますが、ただこれが国家が有償で譲渡したものであるから返すということになると、他の戦災者の場合においても、非常な災害を受けたものとに比較して、いやおうなしに戦災によつて、非常な災害を受けて、補償されないものもあるわけでありますので、どうかと疑念を持つに至つた次第であります。私ばかり時間をとりましても失礼でありますから、一応私の質問を打切ります。

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 浦口鉄男君。

浦口鉄男公正倶楽部

○浦口委員 政府の政有物のうち略奪品としてはつきりしているものは、日本政府が自発的に相手国に返還していると思いますが、その点いかがでしようか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 いろいろの場合がございます。政府で大体手元にありますものはわかりましたから自発的にやりました。しかし司令部から注意されまして出した場合もございます。

浦口鉄男公正倶楽部

○浦口委員 その場合、最近仏印あるいはタイに返還した、こういう事実もあるそうでありますし、また三月一日の毎日新聞によりますと、やはり総司令部民間財産管理局の指令によつて、戦時中日本が中国から略奪した約二十万米ドル——この金額が違うというお話もあるのでありますが——と見積られる金属類を中国に返還するように命じたという、こういう発表があるのでありますが、これに対しても返還をされたと思いますが、その点いかがですか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 返還はいろいろの場合に起り得るのでありまして、略奪品として返還するのは、そのうちの一つなのであります。たとえばシヤム、仏印に返還いたしましたのは、これは略奪品だから返還したのではございません。戦争中に日本が仏印、シヤムで使いました軍備なり、品物の買入代金といたしまして、金を支払う約束をしており、現実にその金をイヤマークしておりましたのを戦争後になつて今日引渡したという関係でありまして、あれはもともとの所有者は日本であります。略奪品関係で返還になつたのは、また別の話であります。中国に返還になりました新聞記事は、これは事実でございます。これは略奪品として中国から持つて参りました非鉄金属類を返還いたしたのであります。多数返還しておりますうちの一つが、たまたま新聞記事になつて載つたものでございます。

浦口鉄男公正倶楽部

○浦口委員 それでは政府は略奪品とわかつているものは、自発的に返還したはずであるが、なお請求によつてそういうものが出て来る場合が今後もある。こういうふうに考えてよろしいのですか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 われわれが司令部から聞いております範囲では、われわれでも判断できるのでありますが、こまかいところになりますと、複雑なところがございまして、司令部から聞かないとわからないというような場合もございます。そういう場合は、向うからの指令なり指示を待ちまして、やるほかないのであります。

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 次に聽濤委員

聽濤克巳日本共産党

○聽濤委員 この間資料を出してもらいましたが、それによりますと、今日までの陳情ないし調査によつて、賠償庁で集計したものが云々となつて、大体三千万円程度としてありますが、このほかこの前に質疑応答中に、山口国務大臣が言つたと記憶しておるのですが、大体一億くらい見積つておけばいいんじやないかというふうな話があつたのですが、その点をちよつともう一度確めておきたいと思います。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 お話の通りであります。この前山口国務大臣のおつしやいましたのは、一億にはならぬだろう。一億以下だろう。こういうことであります。

聽濤克巳日本共産党

○聽濤委員 そうしますと、大体今わかつているのは三千万円程度で、あと一億といたしますと、七千万円程度のものは、これは今後陳情があり、あるいは調査によつてわかつて来るものが、大体この見当だ、こういう趣旨なんですね。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 さようでございます。まだわかつておらないものも入れますと、多分七千万円程度であろうというようなことでございます。

聽濤克巳日本共産党

○聽濤委員 そうしますと、この三千万円というのは、もちろんその当時の払下価格に相当するものだと思うのですが、これを大体今の時価に踏んでみますと、一体どれくらいになりますか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 その計算はまだいたしておりませんですけれども——と申しますのは、法案のためには当時の価格でやるものですから、現在にして値踏みは幾らになるか、ちよつとはつきりいたしておりません。

聽濤克巳日本共産党

○聽濤委員 これはごく常識的にお聞きしたわけですが、というのは、三千万円といいますと、補償金としてはわずかでありましようが、その内容に至つては、評価の仕方によりますと、相当やつぱり大きなものである。たとえばミシンなんかは百五十円ぐらいで、踏まれておるようですが、これが一万五千円とすると、百倍ということになりまして、簡単に百倍しますと、三千万円の内容は三十億円に匹敵するようなものになつて来る。一億円といいましても百倍すると百億円というようなものになつて来て、略奪品としての数量金額というようなものは相当大きいものであると想像されるわけです。そう単純な問題ではないように思われる。それで聞いたわけです。もう一つお聞きしたいのは、陳情及び調査によりとなつておりますが、これは相互関係があるのですか、陳情があつて、そうして調査をやつたというふうになるのですか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 そういう関係はございません。ダブつておるかもしれませんし、別々であるかもしれません。

聽濤克巳日本共産党

○聽濤委員 陳情というのは現にどういうふうなところから、どういう形で出て来ておるわけですか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 われわれの役所を中心にして申しますと、直接没収された人たちから書類を受取ることもございます。あるいは口頭で申出があることもございます。あるいは住所地の県知事等に申出があることもございます。

聽濤克巳日本共産党

○聽濤委員 それで今後いろいろなものが出て来て、そうして賠償庁で審査、確認することになるのでしようが、この審査、確認するについては、略奪品のいろいろな数量や金額やその他の払下価格そういうもの一切をはつきりした帳簿というものがなければできないと思うのですが、そういうふうな帳簿はあるのですか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 略奪品を没収いたしました関係の帳簿は全部ございます。

聽濤克巳日本共産党

○聽濤委員 没収したというだけでなくて、実際これはわれわれいろいろ想像してはおりますけれども、おもに終戦後ばたばたと払下げをやられたように聞いておるのですが、そのころ民間に払下げた内容は略奪品であつた。しかしながらその当時はかりに軍なら軍が持つておつたいろいろな物資が、どんどん民間に払い下げられた点、そういうもののうちのどれが略奪品で、民間に払い下げられたものが数量がどのくらいあつて、払下価格がどうであるか、そういうことを記帳した帳簿があるかどうかということです。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 これは払下物件の方の帳簿は、払下げの物件の方の帳簿がございますわけであります。それは当時の所管の内務省、現在では建設省があとを引継いでおります。内務省、引継ぎました建設省あるいはその払下げをいたしました関係都道府県というところに当りますと、その当時の帳簿はあるはずでございます。但しお話のようにそのうちどれだけが略奪品としてとられたかということを、一緒に書いた帳簿はないのでございます。略奪品は略奪品の帳簿、払下げの方は払下げの帳簿ということになつております。

聽濤克巳日本共産党

○聽濤委員 つまり私が問題としておりますのは、大体今までわかつておるのは三千万円程度、将来の予想を入れて大体一億見当というふうに言つておりますが、そのほかにもあるんじやないか。つまり戦争後のあのどさくさのときに、相当わけがわからずに民間にどつと流れてしまつておるのである。それはもう消耗され、いろいろな形になつてしまつておる。そういうことについて、ほんとう言えば政府の方ではつきりした資料がなければいかぬと思うのですが、そういう問題の全貌をわれわれの委員会に、はつきり明らかにしてもらう必要があると思う。ごく部分的な資料しか出て来てない。特に今までにわかつたものだけしか出て来てないという形になつておるのですが、それでは問題が非常に不明朗なものが残つてしまつて、ここで私たちが実際審議をする上で問題がつかめなくて弱つておるわけです。そういう意味でお聞きしたのですが、たとえば終戦後の東久邇内閣のときに、緊急の払下命令みたいなものでどんどんやられたという事情があるように聞いておるし、その帳簿というものは焼き捨てられたというふうな話まで聞いておる。そこで私、念を押して聞いておるのですが、実際はそういうふうなはつきりした帳簿というものはないのじやないですか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 建設院に聞きますと、払下げをいたした帳簿はあると言つております。私の方には持つておりません。

聽濤克巳日本共産党

○聽濤委員 そういう資料をほんとうはこの委員会にはつきり提出してもらつて、かくかくの数量のものが実際に民間に流れておる。しかし、それはどういう事情のもとに行われたか、そうしてこれはもう現在では実情を調査しても、一部しか判明しないような状態になつておるとか、そういうことがはつきりしまして、そうしてこの中で法案の趣旨というものが明瞭にされないと、実際われわれは責任だけ負わされて、審議のしようがないような状況だと私は感ずる。それで問題を究明して行けば行くほど、だんだんわけがわからなくなつて来るので、実際これはどう取扱つていいのか、まことに判断に苦しむ状況なんです。政府の方では委員会に提出する資料というものは、ここに出したもの以外には全然お持ちになつていないわけですか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 原簿のようなものはございますわけですが、私の方の役所にございます資料を集計いたしましてその総計なり、おもな内容なりを申し上げますと、すでに御提出いたしましたようなものになるわけでございます。

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 福田昌子君

福田昌子日本社会党

○福田(昌)委員 この払下物件が没収されます場合の手続とか順序、そういつたものを聞かしていただきたい。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 一番初めに略奪物件というものの存在を確かめます。たれが持つておるものである、どこにあるというようなことを、これをわれわれの方では調査すると称しております。それは先ほどからお話のありましたように、日本側で自発的に発見することもございますし、司令部の方から注意されることもございます。その存在をはつきりしました上、司令部から覚書を受けます。これを没収して連合国に返還すべしという覚書を受けまして、その通りに実行いたすわけでありますが、その実行に当りますのは、窓口は県知事でございます。県知事が没収令状を発して個人から没収いたし、それをわれわれの手を通じて連合国に返還するということになつております。

福田昌子日本社会党

○福田(昌)委員 その払下物件の払下げ当時の価格の基準となるようなものはあるのですか。そのときの相場でお払下げになるのですか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 それはその当時のマル公で払下げます。

福田昌子日本社会党

○福田(昌)委員 そのときどきによつて違つたわけでございますね。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 さようでございます。

福田昌子日本社会党

○福田(昌)委員 そういたしますと、その払い下げました物件の単価は違いますが、没収いたしましたときの数量の記載ははつきりとしておるわけでございますね。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 もちろんはつきりしております。

福田昌子日本社会党

○福田(昌)委員 そういたしますと、この払下物件に対する不当利得としての政府の支払いをなさる場合におきましては、この書類の形式におきますと、第四条の形式によつて申請書をお出しになるのでございましようが、この場合において、この書類の形式はむしろ逆の方が非常に便利じやないかと思うのでございます。第一号から第四号までのこの形式はむしろ逆で、没収された当時の記載を詳しく書いた方が、お支払いになる官庁の側においても、非常にお楽じやないかということを考えますが、その点いかがでございますか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 それは没収されましたときには、もちろん詳しい調査をいたしまして、数量その他はつきりいたしております。何が没収されたかということは、何ら間違いを起すことはないのでございます。問題は、それがかつての払下物件であつたかどうかということに主眼点を置きまして、知事の審査をしていただき、あるいは賠償庁長官が確認する次第でございます。

福田昌子日本社会党

○福田(昌)委員 具体的な例でお示し願いたいと思うのですが、きよういただきましたこの資料で、たとえば非鉄金属の大口のものとして、日本鋼業の亜鉛の八十四トンというのがございますが、この亜鉛八十四トンが日本鋼業で没収された当時すでに半分四十トンは転売しておつたというような場合におきましては、この場合の払下金額の対象は、どういうことに相なるのでございますか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 かりに日本鋼業が百トンなら百トン払下げを受ける。そして没収になりましたのは八十四トンと仮定いたします。そういたしますと、百トン払下げを受けましたときの書類があるはずでございます。官庁の方にも、当事者の方にもございましよう。それによりまして、そのときの一トン単価はわかるわけでございます。他方没収のときの書類は、われわれの手にも、関係者も持つております。それで、そのとき八十四トンであつたということも正確にわかるし、そのときの払下単価に八十四トンかけて支払いをいたすということになります。

福田昌子日本社会党

○福田(昌)委員 あとの十六トンは非常なやみ値で転売してもうけておつても、それに対しては政府は何ら干渉するところでないという先ほどの御答弁でございましたが、その通りでございますか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 やみで転売いたしますことはあり得ないと思うのであります。転売いたしましても、原形のままでしたら、どこかで没収されておるかと思いますが、いずれにしましても、その部分につきましてまで、さかのぼりますことは、とうてい政府としてはでき得ないし、またその当時の取引にさかのぼりまして幾らもうけたというようなことも、調査が事実上困難であろうと思います。

福田昌子日本社会党

○福田(昌)委員 そういたしますと、結局マル公でしたか、やみ値でしたかは別として、転売することによつてもうけたということは政府もお認めになるわけですね。そのように解釈してよろしゆうございますか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 それはこの法案には関係ないことでございまして、その品物を売りますなり、あるいは製品の材料にいたしますなりいたしたことであろうと思います。われわれの方といたしましては、司令部と話合いました結果、原形をとどめていないものは、略奪品として没収しないということにいたしてもらいましたわけであります。

福田昌子日本社会党

○福田(昌)委員 たとえばやはり日本鋼業を例にとりまして、日本鋼業で亜鉛を百トン払い下げてもらつて、その中の五十トンを乙の会社に転売して、乙の会社をその転得者としてこの法律に該当するものとして申請いたした場合においては、その金額はその転得者に支払われるものですか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 かりに百トンの中、八十四トンだけ日本鋼業から直接没収した、他の十六トンは第三者が持つておつたということになりますと、その第三者が持つておりました十六トン分はそのものに支払います。

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 小林進君。

小林進社会革新党

○小林(進)委員 それでは三点ばかり質問させていただきますが、この略奪品は政府の方で没収されたものに対する跡始末の支出でありますが、今後司令部を通じて新しくまた略奪品の没収がなお行われるような見通しがありますかどうか、それを承りたいと思うのであります。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 予想されます。

小林進社会革新党

○小林(進)委員 そういたしますと、今おつしやつた一億という金は、従来没収いたしましたもののみに対する見積り額でございますか。新しくまた指令されて取上げる方の額については、どのくらいのものかというような御想像も何もつかないものですか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 一億あるいは一億以下であろうと申し上げましたのは、それを全部入れまして、われわれが現在まで司令部の命令を受けて仕事をして参りました経験からいたしまして算出した場合、これからの返還から生ずることも考慮いたしました上、一億以下であろうということを申し上げたのであります。

小林進社会革新党

○小林(進)委員 どうもこういう略奪品の返還などというようなことは、私どもはすべからくもう済んでいたものと思うのでありますけれども、将来も某々国、某国からまたその返還を要求されることがあり得るということになりますと、一体この事業はどこまで続くのでございましようか、将来の見通しを承りたい。これはわれわれの持つている品物、あるいは国の経済にも少からざる不安定を及ぼしていると思うのであります。一応こういうことは早く終止符を打つてもらわなくては、経済にも及ぼす影響が大きい。自分の持つている品物がいつまた取上げられるかわからぬという不安がついてまわるわけであります。その見通しをひとつお伺いいたしたいと思うのであります。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 まつたくわれわれも同感でありまして常々司令部に対して理論上はかつて略奪品でありました物をすべて提出いたしますれば済むわけでありまして、それ以上要求があつても、略奪品はもうすべて出したということで断ればよいわけでありますが、実際問題としては、なかなか小口のものでわからないようなものがあつたりしまして、そのたびに先方から注意をされてやつておりますと、お話のごとく、いつ果てるともわからぬじやないかというような懸念も出て来る。従つてわれわれとしては、政治的にできるだけ早い機会に——もちろんわれわれも略奪品をすべて発見して返還を完了すべく、努力して参つたのでありますけれども、なお政治的に司令部に対して、こういう仕事はいつか大体終つたと思うときに打切つてもらいたいということは、かねがね懇請いたしております。司令部の方もわれわれの気持は了解していてくれます、但しこの問題は司令部一存できめ得ない。つまり連合国側の話合いによることでありますから、司令部の方でも、おそらく連合国側ともさような趣旨の話合いをそのうちに遂げてくれることと期待しております。

小林進社会革新党

○小林(進)委員 第一点は了承いたしました。願わくばできる範囲内の政治力で、こういうことは早急に打切るように御努力を願いたいと思います。  第二点としては、今度は品物の点で、転売の場合であります。善良な第三者が所有した場合であります。これは条文の第三条第二項に該当するかと思いますが、ミシンならミシンと仮定して、それが甲、乙、丙、丁と移つて行つた場合でありますが、条文によれば現在の所有でありますから、払下げを受けた者が甲であつても、所持している者が丁であれば、結局丁が相当額の支払いを受ける勘定になる。ところが一台のミシンが二百円で政府から払下げを受けたとすれば、やみ価格によつて乙へ行くときは四百円、丙へ行くときは六百円、最終の所持者である丁のところに行つたときには、もはやそれが二千円にもなつている。ところが丁は丙から二千円でこのミシンをもらつたにもかかわらず政府から略奪品として品物を取上げられて、元金の二百円をもらつたとすると、結局千八百円の損をするわけであります。しかし中間にある乙、丙というものは、千二百円くらいの不当な利益を受けている。このように最終の一番高値で買つた者が、一番大きな損失を受けていることに対して、どういう救済策を立てておられるか、お尋ねしたいと思います。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 その点も先ほど来ちよつと触れましたが、補償の問題にかかるわけであります。補償の問題でありますと、現在略奪品関係だけをとつて補償を実行するということが、なかなか困難な状況にございますことは、先ほど来申し上げた通りでございます。今のように転々とした場合は、一体幾らで売つたか、買つたかという証拠は、おそらくなかなか困難であろうと思うのであります。のみならず、その間に買つた上、自分で修繕したり、手入れをして少し高く売つたというようなことも非常に多いわけであります。われわれがこの法律案を出しましたのは、かつての払下額の限度において返還をするという程度にとどめて、それ以上の補償の問題あるいは譲り受け、譲り渡し相互間の利害関係の調整の問題というような一般補償に触れます問題は、他の一般問題と一緒にして、一つの計画的なものを将来つくらなければいかぬと考えております。

小林進社会革新党

○小林(進)委員 これは現在の法律というか、普通の売買取引の方式で、善良な第三者に不測の損害を及ぼすような賠償の仕方は、どうしても商法の原則にも違反するし、経済秩序の違反にもなる。私はこの賠償のやり方によつて、そういうふうに中間における善良なる乙ないしは丙、丁という人たち、ことに最終の丁という善良なる所持者である者に損害を与える法律は、私はどうしても納得ができない、これはあくまでも弁償されるという親切心があるならば、その正しい秩序を経て来た最終の所持者には、その入手した相当額を賠償してやるのがほんとうだと私は思うのであります。どうもこの点はお役所式の仕事で、冷たくてよくないことである。この点十分御考慮願いたいと思うのであります。  今度は第三番の反対弁償の問題であります。これはこの前もちよつと例を引いて申しましたように、新潟のミシンのことでありますが、確かに品物は没収されたが、当時それに相当する代替物を県当局の政治的手腕によつて与えられており、所持者は当時の政府から払い下げてもらつたより以上の余得をもう得ており、損害は十分補填せられておるけれども、今のあなた方の法律案から行きますれば、この人もやはり所持者として、当然その代金を要求する権利を与えられておるわけであります。行政的な措置で一切の取上げられた損失を補填されて、余分な利益を享受しておきながら、今度はまたこの法律によつて払下げの価格を要求できる。二重の支払いを受けるわけで、これはまつたくうまい味をしめるのであります。こういう問題について、一体どうお考えになつておるのか承りたい。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 お話のありましたような場合は、こまかいところまでわれわれは承知いたさないのでありますけれども、とにかく元持つていたミシンを無償で没収したことは事実でございます。無償はかわいそうだからということで、県が自分の責任においてそれを補償したということがあつたかないか私は存じません。しかし国といたしましては、確かに当時無償で没収いたしましたが、その代金は国庫に入つておりますから、そのから人から国家はひどいじやないか、ただでとつた、不当利得じやないかと言われます際には、まさにその方の言うことが妥当であろうとわれわれとしては思うのであります。なおお話のように、県が親切にめんどうを見ましたのは、実はわれわれといたしましては例外だろうと思うのであります。ことにミシンの場合などは、たいへん多くの陳情を受けておりますが、まことに気の毒な事情の方がたいへん多かつたのでございます。

小林進社会革新党

○小林(進)委員 今の御説明で実はまだ納得できないのです。確かに没収されて気の毒な人が、いわゆる陳情やら請願に見えておるのだという一面もあることは、十分想像がつくのでありますが、私はこれは悪意の推定でまことに申訳ありませんが、こういう法律を今おそまきながら出されたこの根底には、むしろ私が申し上げました二重の利得を得ようとする相当巧みな連中があなたがおつしやるいわゆる気の毒に名をかりて、強くそういう補償といいますか、相当額の返還を要求しているのではないかというような懸念も多いのであります。一方においては、ちやんと当時の安い値段で払下げを受けて、今日まで十分な利得を甘受して、なおかつ余るものがありながら、没収されたという表面きれいなだれでも納得しそうな理由をもつて、さらに政府の金を受けて二重の利得を受ける、どうもそういうようなにおいがこの法律についてまわるような気がしてしかたがないのであります。これ以上の悪意の推定をやることはやめたいと思いますけれども、その支払いをされるときには、今御答弁になつたことでは私どもは非常に満足できません。その間の事情をよく御審査をいただきまして、確かに無償では受けたけれども、その間にはもうこの人は賠償をしてやる必要はないというくらいの慎重なる考慮のもとに、もとつ正しいお支払いをしていただきたいということを申し述べまして私の質問を終ります。

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 竹尾弌君。

竹尾弌自由党

○竹尾委員 私のお尋ねは、あるいはこの法案にはちよつと当てはまらないかも存じませんが、ちよつと疑問なのでお尋ねいたします。昨年の夏ごろまで各官庁などにおいて、FV何号という自動車が相当ございました。あれは聞くところによりますと、やはり略奪されておるので取上げられたのだということでありますが、これはどういうぐあいになつておりますか、これとは関係ございませんか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 あれは略奪品として指定を受けました。しかしながら所有者がすぐ没収されては困るというので、猶予期間をもらいまして、使つている間にFVというものをつけて走つておつたわけであります。昨年三月だつたと記憶いたしますが、その期限が切れまして、あれは返還されまして、略奪品として返還いたしました自動車でございます。

竹尾弌自由党

○竹尾委員 その数は相当あつたようでございますが、どのくらいですか。これはやはり無償ですか。どういうことになつておりますか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 正確な数字は持合せございませんが、三百台見当かと思います。

竹尾弌自由党

○竹尾委員 それは無償で、この法案とは関係ないのですか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 この法案に関係あります。

竹尾弌自由党

○竹尾委員 関係ありますと、自動車というものはここにあまりないのですが、これはどんなぐあいになつておりましようか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 この前第一回に差上げました資料には、今日まで返還いたしましたものが四百五台でございます。そのうちのある部分がかつて政府から払い下げたものであつた次第であります。政府から払い下げたものであるということが判明いたしました分につきましては、この法律によりまして、元の代金を返還いたします。

竹尾弌自由党

○竹尾委員 それはマル公でごく安い値段になると思いますが、どのくらいですか。

石黒四郎賠償庁次長

○石黒政府委員 ここに書いてございます。二、三千円というのが大部分であります。

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 これにて質疑を終了することといたします。  暫時休憩いたしまして、正十二時より再開いたします。     午前十一時三十四分休憩      ————◇—————     午後零時十五分開議

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 ただいまより会議を再開いたします。  国が有償で譲渡した物件が略奪品として没収された場合の措置に関する法律案を議題といたします。なお先ほど質疑を終了いたしましたので、ただちに討論に入ります。討論は通告順にこれを許します。仲内憲治君。

仲内憲治自由党

○仲内委員 ただいま議題となりました国が有償で譲渡した物件が略奪品として没収された場合の措置に関する法律案について、私はここに自由党を代表し、本法案を可決すべしという賛成の意見を述べるものであります。  本法案を提出された政府の意見によれば、国がかつて有償で民間に譲渡した物件が、後日政府によつて略奪品として没収された場合、政府は一旦売つた同一物件を再び無償でこれを取上げたことになり、売つた際の収納代金だけを余分に収得したことになるから、善意の被没収者に対して、収納代金に相当する額を払いもどすことを妥当と認め、そのために本法案を提出したというのであります。しかして本法案の対象となつている物件は、政府の説明によりますと、緊急放出物件として、あるいは特殊物件として、あるいは需給計画による配給物件としての払下品であつて、その物件中にはすず、鉛等の非鉄金属類が多く、次はミシン、次いで自動車、工作機械、化学薬品、羊毛等があるとのことであります。しかし私はここで本法案の根本をなすところの収納代金が、いかに定義づけられるかということについて、政府当局に対し念を押しておきたいのであります。  本法律が、被没収物件の対価として、国庫に収納した代金に相当する額を限つて被没収者に支払うと言われておりますが、被没収者が国、またはその機関から直接当該物件の譲渡を受けた場合には、この収納代金は簡単明瞭であります。しかし公団その他統制団体を通じて取得した場合、個々についての国庫への収納代金は必ずしも明らかになし得ないものと思うのであります。被没収者が公団等に支払つた公定代金は、種々の要素からなつているものと思います。その要素の中のどの部分を認め、あるいは認めないのでありますか。従つて政府の説明の中にありました非鉄金属、鉄鋼、繊維、化学薬品、ミシン、自動車、その他について不公正な、換言すれば任意的な取扱いのおそれが十分にあるのであります。私はこの点はなはだ懸念にたえないのであります。  さらに本法案が提出されるに至つた根本にさかのぼつて考えてみましても、これは戦時における政府当局の重大な過誤の結果であると言つて言えないことはないのであります。しかるに本法案第六条においては「賠償庁長官は、前条の規定による送付を受けた場合において、当該申請に係る事実を審査し、審査の結果に基いて申請書に記載された事項が事実に合致していることを確認したときは、遅滞なくその旨を当該都道府県知事を経由して申請者に通知しなければならない。」とあり、また第二項に、「賠償庁長官は、前条の場合において、申請書に記載された事項を確認するに足る充分な証拠がないと認めたときは、その理由を付して申請書を当該都道府県知事を経由して申請者に返還しなければならない。」という規定があります。私はこの第六条について政府当局に一応念を押しておきたいのであります。本法案を提出された根本にさかのぼれば、さきに私が述べましたごとく、この法案を必要ならしめた原因は、戦時における政府の過誤にあると言つて言えなくはないのであります。しからば政府は、当該物件の対価として国庫に収納した代金を不当利得の一種と考えて、これを被没収者に返還しようというお考えに、何ゆえに、さらに一歩を進められて、本件の審査、確認行為を賠償庁長官の専断にまかせることなく、その審査のために、民間人を加えた審査委員会のごときものを設けられるようにせられなかつたのでありますか。そのようなものを設けられることが、本法案を提出せざるを得なくなつた理由を考えましても、きわめて公正であり、かつ民主的であると私は思うのであります。政府はこれらの点について十分に考慮を払われ、適切妥当な運用方法を考慮せられんことを希望するものであります。  要するに本法案は戦時中元陸海軍がやつたことの跡始末をするためのものであり、その事務は終戦直後主として内務省が取扱つたことでもあり、賠償庁としては、外賠償義務の実施を忠実に履行し、もつて連合国のわが国に対する信用を高めるとともに、内戦時における国民犠牲の補償をでき得る限り公正に行おうとするものであると考えるのであります。もちろん戦時における国民犠牲の緩和是正を要するものは、もとより本法案をもつて足るものでなく、いわゆる在外資産の問題を初めとしてたくさんあるわけでありますが、本法案はすでに実施中の戦時における在外公館の在留邦人よりの借入金の整理に関する法律とともに、戦時中及び終戦時における幾多国民犠牲の諸懸案を解決する善後措置の一環として、きわめて意義あるものであることを認めざるを得ないのであります。  本法案施行のための予算は、昭和二十四年度分六百万円、昭和二十五年度分一千四百万円余とのことでありますが、現下の諸情勢から考えましても、私は政府に対しまして、以上に述べましたような理由で、強い意味の警告を与えて、本案の可決に賛成するものであります。

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 福田昌子君。

福田昌子日本社会党

○福田(昌)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、この法案に反対するものでございます。  なるほどこの法案は法案それ自体は、世間から切り離して考えてみます場合においては、その精神においてまことに尊敬すべき法案だと思うのであります。しかしこれを今日の国民生活の現状と照し合せて考えてみます場合に、この法案がその内容においても、その運営においても、非常に慎重を期さねばならない法案でないかということを考えるものであります。思いまするに、この法律の適用を受けるところの人たちは、戦時中あるいはまた終戦直後においての利得者であるか、または戦時中あるいは戦後の統制官僚、あるいはまた旧軍閥と結託したところの特権階級が多かつたのでありまして、こういう人たちが払下げを受けました当時において、すでに持てる階級の人たちが多かつた。今日においてもこれらの人はさほど困窮した生活をしておるとは考えられないのであります。ところが今日国民生活の全般というものを翻つて考えてみますと、御承知のように公務員それ自体は、六三ベースの改革を叫んでおります。また中小企業は倒産餓死の寸前にあえいでおります。また母子家族というものを考えてみます場合においては、一家心中の寸前にあり、まつたくその生活は困窮のどん底にあるといつても過言ではないのであります。こういつた国民大衆に対する救済の法律案に先がけて、国が不当利得をしたという名のもとにおいて、この法律を先走つて今回御提出になるということに対しまして、私たちはまず第一に反対せざるを得ないのであります。  次にこの法律の支払いの予算の項目でありますが、この予算面からするところの支払いが、いかなる項目の中に入つているにいたしましても、結局そのもとは戦争に対して大きな犠牲を払つたところの、しかも先ほど申しましたような、今日ただいまの生活にさえ困窮しておるところの多くの貧困な庶民階級が支払つておる税金によつて、その一部があがなわれる。そういう庶民階級の犠牲によつて、一部戦後において利得をしたところの特権階級に向つて、またどろぼうに追銭的なこの金銭の補償をするという点におきましても、この法律には賛成しがたい点があるのであります。  政府は先に阿波丸事件において、日本政府といたしまして、当然国際法上において、請求し得る権利を放棄しておりまして、私どもといたしましては、非常に残念に存じたのでありますが、その跡始末に対しまして、今日なお相当の金額を使用しておるのであります。今回さらにまた政府は、政府が不当利得をしたという名目のもとにおきまして、この法律を提出いたしまして、戦時中あるいはまた戦後において利得したところの持てる階級に向いまして、不幸なる国民の犠牲において、あえてまたこの救済を重ねるという今回の措置に対しましては、私は政府の態度に対しまして、非常にげせないものを感ずるのであります。見方によりますと、殉教的なきわめて高貴な精神のごとくにも感じ得られますが、しかしその裏において、考えようによつては、何か伏在しておるものがあるのではないかということさえ考えさせられるのであります。またこの法案自体において考えてみましても、この法案の各条項においては、きわめて不備な点がたくさんあるのであります。  第一にこの法案の支払いの理由というものが、政府の不当利得、その不当利得をこの法律によつて支弁するのだということになつておりますが、不当利得と申しますその不当利得の理由は、私どもは納得できがたい理由が多々あるのであります。よしこの不当利得を不当利得といたしまして是認いたしましたとしても、各業者あるいはまた個人にいたしましても、これらの物件を払下げを受けまして、それから没収されます間の期間においては、この払下物件を相当に活用いたしまして、利潤を生んでおるに違いないのでありますが、そういつた利潤に対しては、政府はこの法案のらち外であるから、何ら関与するところでないといつて、その処置を考慮されておらない。またこの支払いにおいても、その転得者の順位によりまして、非常な不公平な点が出て参りますが、それらの点に対しても、政府は何らの考慮を払われていない。また第三番目に考えておられますことは、私どもといたしましては、こういつた政府の終戦当時におきまするところの考慮の足りない処置によりまして、この物件を民間に流したことによりまして、戦後のインフレを助長し、やみ成金の温床になつたとさえ考えるのであります。そういうような点からいたしましても、この払下物件によりまして利潤を得た人たちに対して、さらにまた今日こういう法律のもとにおいて、金額の援助をするということは、私たちといたしましては、何といつても納得できない点なのでございます。すでに予算がとれておるそうでありますが、私どもといたしましては、戦争の犠牲者であるという観点に立ちますならば、この法律の適用を受ける人たちよりも、もつと大きな犠牲を受けた人が多々あると考えられるのであります。たとえば、たつとい人命を戦場にささげた方の遺家族、あるいはまた寄るべないところの老人、孤児というような方々に対して、第一番目にこれに先んじたところの処置がとられる必要があろうと考えるのでございます。あるいはまた青年におきましても、将来に野望を持ちながら、また優秀な才能を持ちながら、今日の学資がない、働くに職がない、そういう日本の前途をになわなければならぬ優秀な青少年が、今日非常な困窮した立場に置かれておりますが、そういう人たちに対する救済も、この法律に先がけてなされなければならない処置であろうかと考えるのであります。従いましてこれだけの使い得る予算がありましたならば、私はこの法律よりも先んじてなすべき処置が多々あるべきものであろうと考えまして、この法案に対しましては反対するものでございます。

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 並木芳雄君。

並木芳雄民主党(第九控室)

○並木委員 私は民主党を代表いたしまして、この法案に警告づき賛成の討論をごく簡単にいたします。実はこの法案は表題のごとく、まことにややこしい法案です。そうして両方の方面からながめることができて、いずれの立場にもそれぞれ理由があるように思われるのでございます。そこで私たちは先日の委員会から今日まで、同僚山本委員とともに、政府に対してあらゆる角度から質疑を行つて参つたのでございます。それと申しますのも、こういう法案が自由党内閣のもとに出されるということから、私たちに多少のそこに疑問を生じさせた点もなきにしもあらずでございまして、いやしくもこういう法案を通しておいて、あとからいざこざが起つては困るという見地から検討したのでございますが、まずもつてそういう私たちの疑念を持つようなことはないというふうに結論づけられたことが、私の方としては本案に賛成を表することになつた第一の理由でございます。  第二の理由は、私たちはそういう見地から政府に何かあるだろうという疑いの眼を持つて政府をついておつた。それが強きあまりに、国民の立場からこの法案を見ることを弱めておつたと思います。一歩翻つて国民の立場からこの法案をながめますときは、もしこれがほんとうに善意の人たちばかりであつて、そうして没収されたことに対して恨みを抱き、一刻も早くこれが補償的金銭の返還を受けるならば、さぞ喜ぶだろうという気持を考えましたときに、やはりこの法案は通してもいいという結論になつたのであります。ただ問題は、私たちの質疑の中にもありました通りに、これだけを先走つて出したというところに、国民が疑惑を抱き、ただいまの福田さんの討論にもございました通り、国民の間である人は満足するが、他の人は不満を抱き、不平を漏らすようなことがあると思いますので、山口国務大臣も答弁の中に、一刻も早く全面的補償ということに努力を払いたいと約束しておりましたから、これをきつかけとして、できるだけ早く、全般的な戦争によつて生じた犠牲の公平なる負担、つまり全面的な補償というところまで持つて行つていただきたいと思うのであります。その他のこまかいことにつきましては、ここに私はこれを省略いたします。なお法案の中にもかなり不必要な点がございまして、前の委員からもその点が指摘されておりまして、特に仲内委員から指摘されました審査委員会をどうして設けなかつたというようなことは、これはくれぐれも政府においても心にとめておいていただいて、いやしくも本件取扱いの上において、何人から指弾されても、うしろ暗いことのないように、だれの前に出ても堂々とこれが説明でき、そうしてこの法案を生かすようなやり方に、特に注意をしていただきたいという厳重なる警告をつけて、私は賛成の討論を終ります。

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 聽濤克巳君。

聽濤克巳日本共産党

○聽濤委員 私は日本共産党を代表しまして、本法案に絶対に反対いたします。  大体この略奪品というものを払い下げた分量が、相当莫大なものであろうとわれわれは想像いたしますが、その全貌はちつとも明らかにされていない。たとえば政府が今までに調査し得たところで三千万円程度と言つておりますし、これから予想されるものを総合して、大体一億と言つておりますが、しかしかりにこれだけをとつてみましても、これは払下価格に匹敵した価格だけでありまして、実際のこの内容は、時価に直して考える場合に、かりに百倍としても、百億円の物資が動いておるわけであります。しかし実際はこれは一部である。今日ではもはや手のつけられないような状態で、多くの物が散逸してしまつておることは明らかであります。このことを考えてみますのに、あの戦争が終つた当時の東久邇内閣が、実際に緊急払下げの処分をやりまして、しかもわれわれがはつきりつかんでおるところによれば、連合国の目をくらますために帳簿まで焼いてしまつた。そうして軍の持つておりました重要物資を実際に分散隠匿しておる。このうちの一部をなしておることは明らかだと思う。こういうことで終戦後やみと不正利得との温床にこれがなつていた。今度の略奪品の問題もその一部をなしておるのでありまして、これを厳密に考えますならば、一般の隠匿物資は、当然日本の人民の財産として帰属すべきものが略奪されたのでありますが、略奪物品は、他民族から強奪した財産が、日本の国内で隠匿されておる。しかもそれはいろいろな形で処分されて、不当利得を生んでおるということはきわめて明瞭であります。事実いろいろ簡単な調査資料によりましても、結局大部分は大口の払下げがおもでありまして、軍、官僚に結びついた軍需会社、あるいは個人、こういうものに払い下げて、結局これらがもとになつて、戦後のやみ行為の大きな原因にもなつておると思われるのであります。東久邇内閣のときにやられたその事態につきまして、今日の政府が一番最初にやるべきことは、その問題の徹底的な真相の究明である。このことを日本の全国民のみならず、関係の連合諸国に対してこれを明瞭にする必要がある。また事実最後に善意の取得者の損害を補償するにいたしましても、こういう事実を明らかにし、全貌を明らかにすることによつてのみ、そういう処置は正しく行い得るものであります。それをやらずにやつておるということは、事実東久邇内閣のやりましたこういう不正な犯罪的な行為を隠蔽し、そうしてこれを逆に援護する形になつて来るのであります。これは連合諸国に対するきわめて重大な不信である。また日本国民に誤つた観念を与えるに違いございません。しかも実質上には、すでにこれによつて不当な利得を得た、莫大な利得を得た者に対して、先ほど福田委員も言つたように、事実上どろぼうに追銭のような形で再補償をしてやるという形になつて来るのでありまして、こういう点は本法案では何事も明らかにされていない。結局この外務委員会では政府は果すべき事態の解明を行わずに、われわれにこの法案の審査をしろと言つて、責任を転嫁している。事実上は審査ができない状態でこれがうやむやのうちに採決されようとしておる状態であります。私はこういう点からまず第一に反対の意見を表明いたします。  次に第二の点といたしましては、これは国際法的にいつても、政府みずからも暗に承認しておるように、これの最終的な決定は当然平和条約を待つて行われるべきものである。先ほど全面補償を要求するという並木委員からのお話もありましたが、これを実際にやるためには、一刻も早く平和条約の成立を待たなければいかぬ。しかしながら政府は言うのであります。平和条約はなかなかできないじやないか。こういうこことを言いますけれども、事実このことを考えますと、今の政府がやつておることは、講和会議の促進ではなしに、条約なき講和、事実上の講和、一方では軍事基地化への協力、こういう形で講和会議そのものの可能性をどんどん粉砕しつつある。そういう中で平和条約の成立を待つて全面的に解決される問題、この問題自体をも、この事実上の講和、なしくずしの講和の線に沿つて、日本の国内でかつてに処理して行くような傾向になつて来ておるのであります。これはあわせて連合国に対する不信であるとともに、日本の早期な講和の可能性をまた一歩遅らせて行くところの行為であると考えます。これが第二の反対点であります。  第三には、これがあたかも国民の利益に合致するがごとく言つておりますけれども、その内容はすでに私どもの指摘いたしましたように、事実上戦後の不当利得の源泉になつたものであります。そうしてこういう形で実際はポツダム宣言下のわれわれが他民族に負つておるところの大きな義務に対して、国民の反省をだんだん薄らがせ、こういう中から、たとえば戦争犯罪人の刑の減刑とか、釈放を喜ぶような傾向を促したり、あるいはすでに連合国間で決定されておるところの台湾の問題であるとか、あるいは千島の問題であるとか、こういう領土の返還の要求をすることが、あたかも国民の利益であるかのごとく印象づけて、結局日本の国民をして再び排外主議的な方向に逆もどりさせようとする傾向の一端であると私は考えます。  私は大体以上の点をもちまして、この案に対しましては絶対に反対を表明するものであります。

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 これにて討論は終了いたしました。  それでは、国が有償で譲渡した物件が略奪品として沒収された場合の措置に関する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君は御起立を願います。     〔賛成者起立〕

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 起立多数。よつて本案は可決されました。  なお本案についての衆議院規則第八十六条による報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。  政府委員より発言がありますから、これを許します。

寺島隆太郎自由党賠償政務次官

○寺島政府委員 本案が上程せられますや、慎重に、しかもきわめて快速に御可決くださいました委員各位の御労苦に対しまして、政府を代表いたしまして一言お礼を申し上げます。なかんずく、本法の審議の過程において、さらにまた本日の討論において、仲内委員並びに並木委員より要望せられました警告並びに希望の件につきましては、法運用の際において、十分にこれを体して運用して行きたいと思うものであります。  以上お礼の言葉を申し上げます。

岡崎勝男自由党

○岡崎委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十三分散会

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