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6回国会参議院1949/11/26

予算委員会 第6号

発言数
55
登壇者
10
会派数
5
開催日
1949/11/26

会議録

黒川武雄民主自由党

○委員長(黒川武雄君) これより公聽会を開会いたします。先ず公述人に対して御挨拶を申上げます。本日は公私共御多田中委員会のために御出席頂きましたことを厚く御礼申上げます。では国鉄労組書記長、星加要君。

星加要国鉄労働組合書記長

○公述人(星加要君) 私が国鉄労働組合本部の書記長をいたしております星加でございます。  二十四年度の補正予算につきまして、勤労者の立場から御注文を申上げ、我々の正しい主張に御賛同を願いまして、勤労者の立場を擁護して頂きたいと念ずる次第であります。  補正予算の概念は先ず財源の過半であるところの三百五十億程度の金額を、価格調整費の削減によりまして、これを捻出する。他の経費節約及び歳入の増加を図りまして、約六百億円の財源が作られる。これに対しまして歳出として本年の減税、及び各省予算の増加に充当されることになつておるのでありますが、ここで問題となつて参りますのは、財源の過半を占めますところの価格調整費の節減が勤労者にどのような影響を与えて来たであろうか。又一月から予想されますところの減税がどのように実質賃金の向上に影響を及ぼすであろうかという、差引きいたしましたところ、勤労者に果して何が残るかということで、今回の補正予算の性格が決定されると思うのであります。  尚私は米価審議会に委員として出席いたしておりまして、本年度の米価が決定されようといたしたのであります。その際結論といたしまして、四千七百円という石当りの価格が審議会において採択され、これが政府に対して上申をされたわけであります。その際審議会の意向といたしましては、石当り三千六百円の米価を四千七百円に値上げを承認することも、その値上げによつて消費者価格というものが引上げられないようにして貰いたい。その引上げをする財源と見込まれるところは、中間経費の節約にある。このように指摘されたのであります。けれどもこれがその後政府で審議されました結果、最近新聞にも発表されておりました通り四千二百五十円という金額に石当りの金額が決まりました。そうして四千二百五十円に値上げをするために、超過供出報奨金を今まで三倍の所を二倍に引下げられるということと、もう一つは一月からの消費者価格を一割一分程度の上昇をさせねばならないという勧告にあるわけであります。その消費者価格一割一分の値上げの点につきましては、まだ決定的な段階に立つておりませんが、ほぼこういう値上げを見るであろうということは確実なところであります。従いまして本年度補正予算の惡い皺寄せの面が、勤労者の方へ皺寄せられることによつて決済されておるような感が深いと考えるのであります。この点参議院において予算を御審議になります際は、よく数字的に御検討を願いまして、適当な修正を実現して頂きたいと考えるのであります。価格調整費が補正予算の通過以前から漸次執行をされておりまして、七月上旬、ガス用炭補給金廃止、その他鉄鋼用炭、コークス用炭、銅、ソーダ、油脂、ゴム等補給金の廃止などの削減が行われ、又十二月よりは漁網用の資材輸入補給金廃止、春の肥料からは四割の値上げをいたしまして補給金を切り下げ、これで合計約三百五十億程度の補給金が節減されることになつて行きます。その意義は、我々としては分らないことではない。これは再建を急がせられる日本にとりまして、予算がドツジ案によつて推進せられておる、それは一般に予算を切り詰める方法と並行いたしまして、補給金が打ち切られるという二つの方法が主として目立つたものであります。この補給金を節減する意義は、有効需要が生産回復と共に、相関において需給の均衡がとれるから、価格の上昇が抑止される段階で、これを打切る、企業の合理化とコストの低下を促進し、輸出の増強を図ることにあると言われておるところであります。我々もその通りに了解しておるのでありますが、その時期の判定を誤つたり、又はそれを推進するにあまり急なる場合には、やはりマル公物資の騰貴ということを必然的に伴なつておるわけであります。かかる情勢の中におきまして、国鉄労働組合といたしましては、直接関係がありますところの今回の貨物運賃の八割の値上げ、それから海上運賃の九割三分の値上げが、この補正予算として見込まれておるわけであります。又私共国鉄労働組合といたしまして、貨物運賃の値上げにつきましては、国民に多大の御迷惑をおかけすることでもありますので、重大な関心をもつておる次第でございます。併しこの結論と申しますものは、国家の経済政策によりまして国鉄の運賃が余程押えられて参つたということに端を発しておるという点を御了解願いたいと思うのであります。  先ず物価指数を検討しますと二百四倍、本年の七月日銀の調べによりますと二百四倍となつております。これに対しまして、貨物運賃は七十四倍に押えられておる。これが公共企業体に移行いたしますと同時に、独立採算制という名目の下に、そのままの状態で放り出されておる。価格のバランスという点について考慮されることなしに、国家的事業が、そのまま公団の事業と変りまして、独立採算制という名目の下に、何等の保証なく放り出されたという結果であります。従いまして、一般の補給金を以て経営しておりました基礎産業を、これらの措置なしに、極端な補給金の打切りという格好を来たしましたので、本年の当初から当局におきまして、この予算を以ては運営し切れない、当然間もなく赤字を見るであろうということを予想されたところの予算を以て国鉄は運営を開始したのであつて、この赤字が生じたということは、年度当初より予想されておつたところの五百九十億程度の赤字であります。従いまして私はこれらの赤字処理に当りましては、この点を明確にして頂きまして、政府の責任において速かに処理されるように、又我々はこれから申上げて証明をいたしますが、誠に勤労者は生活の点において困窮をいたしておる、そうしてその困窮を或る程度のバランスのあるところまで改善をいたしたいという熱意に燃えておりまして、賃銀値上げの要求をいたしておる次第でございますが、この要求等が予算の組み方、若しくは国鉄の運賃が一般の物価に対比して非常なアンバランスであり、それが国家の経済再建政策から出ておつた止むを得ないものであることを御勘案になりまして、財政、その他の面からするところの理由を以て、これら正当な要求をむげに退けられることのないように切に御了解を願いたいと思う次第であります。  先ず価格調整費が三百五十億程度切られました結果、それがどのように勤労者の生計に影響を及ぼすであろうかというところを、安本調査課の調査によつて調べて見ますと、月平均支出額一万一千円に対しまして、三百五十円の支出増加となつております。一万一千円というのは、これが消費者価格調等において、平均の家計支出であります。この三百五十円というものを%に取つて見ますと三・五%の影響を及ぼしております。これを六千三百円ベースの我々の官公吏の、国有鉄道の従業員等の給与ベースに対しましての生計といたしまして影響するところは五・七%となるわけであります。これは安本調査課の資料に基いて計算を出して見た数字であります。  次にシヤウプ博士の勧告に基きまして、政府が今回考えております減税の率は、シヤウプの勧告を上廻つておるものでありますが、併しこの減税が、一体どれ程勤労者の税金を軽減するものであろうかという点を概算して見ます場合に、一万一千円程度の家計支出をするものに取りましては、差引き価格調整費の影響によるマル公の値上りによつて生計に及ぼす三・五%というものと見合う金額三百五十円が、やはり減少することになりまして、ここに価格補給金を廃止して物価がそれだけ上る、それが家計に及ぼす影響と、税金が減少される、そのために実質賃金が殖えまして、そうして差引きいたしました場合には約三・五%として、これは零ということになつておるのであります。これも安本の調査課の資料に基いておるわけでありますが、それが又六千三百円程度のものになるとどの程度になるかと申しますと、六%の増しとなります。差引きいたしまして給料の低い所ではこれは六%負担が増加するということであります。それから余程給料が高くなりまして一万四千円から二万四千円ぐらいになりますと、二万四千円程度の所では二%負担の軽減ということになつて参ります。従いまして我々の生活というものは、この一月から減税ということを見込みましても、今までの実質賃金がマル公の高くなることによつて減つておつたものが一月から補われるかというと、とにかく給料が一万円以上の実收入となつて入つて来る人間には元々の程度に還える。即ち三百五十円程度は増加される。減つておつたものに対しては、増加される。けれども低いところのものは尚六%のマイナスの給料を続けていかねばならない。これが税金とそれから補給金打切りによるマル公の値上りの影響だけであります。けれどもこれに米の価格を一月から一割一分予想されておる通りに値上げされて参りますと、この一割一分と六%を足しまして、一七%、一割七分の收入減ということに相なつて参るわけであります。それからこういう点は余程これは財政上の問題から直接来ておる問題でありまして、実質賃金がこれは一割とか、二割とかいう程度でなしに減額されておるということは、国鉄の予算について見ましてもこれを非常に圧縮いたしまして、九十億の赤字を持つておる。且つ今回約十万人の馘首をいたしまして、これに退職金を支拂つたというようなことで、その財源がなかつたために或いは節約をした費用から、その退職金を支拂いまして、国鉄のごときは本年度は石炭費を非常な額に上る節約をいたしました。只今私が正確な数字とは思いませんが、約二十億円に上る節約をしたと考えております。この石炭費の節約はカロリーも上昇して来たということと相俟ちまして、やはり従事員の努力に負うところが多かつたと考えておりますが、こういう節約をしましても、それらを上廻る出費が出る。且つは予算を押えられましたので、独身者におきましては合宿の費用というものが、鉄道の厚生施設として賄われておりましたが、これが独立採算制ということになりまして、合宿するものの経費を住んでおる人間が負担しなければならなくなつた。そのためいろいろと直接勤労をいたしておりますものの代価と、それから十二時間勤務をいたしておりますので、夜間の手当のごときもこれが率が下げられる、半分の率になります。それから超過勤務手当というようなものもこれを減少をいたしまして、殆んど超過勤務手当というものが支拂われないという現実でありますから、金額的には予算の縮減のために非常な打撃を受けておるわけであります。これに加えまして今回の補正予算等の方法による実質賃銀の増加という考え方だけマル公の値上りと、それから税金の減ることとの差引きの点のみから見ましても、約二〇%に近い実質賃銀の低下を来たすという計算に相なるわけであります。でこれらが影響をいたしまして、尚我々が予想いたしておりますところでは、地方におきまするところの地方税が相当に増額されて課けられるのであろう。住民税等の増加についてはちよつと想像しにくいものがあります。それから家賃の値上というようなことも言われておりますので、これらが重大なる脅威を示すものであろうと考えておる次第でございます。  そこで国鉄が只今賃銀値上の要求をいたしておりますが、国鉄労働組合は我が国におきますところの最も健実な労働組合運動の代表的なものでありまして、最近にいたりましては共産党の影響を完全に脱却いたしまして、民主主義的な運営をいたし、我が国の民主的再建に寄与すべく努力中であります。従いまして賃銀値上の必要性に迫られております今日においても、これの計算等におきましては十分国家の経済情勢並びに国鉄経営の現状を考えまして良心的な算出をいたしております。これは調停委員会において論述されておりますので、最早お耳に達しておるかも分りませんが、国鉄は九千七百円という要求をいたしております。これに対しまして共産党の風早という代議士が入りまして、そうして意見を公聽会で述べましたが、この際その通りの計算をしても一万二千五百円程度になるので、そういう計算は間違つておるということを申しております。で共産党系がやはり主張しておりますところのものは、経済情勢を考えないところの賃金要求である。けれども、我我はストレートの計算をするとその通りになるかも知れないが、やはり国家の経済情勢、その赴くところの方法を考える、又は国鉄の経営状態とか、又賃銀値上が社会的に及ぼす影響等を勘案しまして九千七百円の要求をいたしておる次第であります。何故このような要求をしなければならないかというところは、只今申上げました通り約二割の実質賃銀の低下が、これは收入が実際に減つておるという面を捨てておいて、予算面から来るところの社会的な影響を、物価の値上り、それと減税との見合せ及び米価の値上の予想、これが一月から直接行われるであろうところの社会的な影響のみを考えまして、約二割という値上りが予想されております。従つてこの九千七百円はその値上りに対応したぎりぎりのものでありますが、これが調停案として出されましたものは八千五十八円でありました。そこでこの八千五十八円はどの程度の値上りになるかと申しますと、六千九百二十五円というのが只今国鉄が現に支拂つて貰つておるところの賃銀ベースであります。従いまして六千九百二十五円に一割四分をプラスいたしまして、そうしますと八千五十八円になります。一割四分の値上げが社会的に見まして妥当と調停されたわけであります。従いまして二割の経費増加がこの一月から見込まれておるのであります。これに対しまして一割四分の値上げが適当であろうと調停委員会において調停をされたというような結論になつております。これが一般民間と比較いたしますとどの程度になるかと申しますと、只今の六千三百円というベースは昨年国会で決まつたのでありますが、その算出に当りましては、人事院が二十三年の七月の給与を基礎として計算をいたしました。従いまして二十三年の七月から二十四年の七月まで、その間にどういうふうに物価並びに民間の賃金が変動をしたかということを見ますとC・P・Iという物価の変動率を見ますと、三〇・七%、三割七分という値上りを示し、それから民間賃金では五一%の値上りを示し、地方鉄道、軌道等の私鉄関係では四五・七%の値上りを来しております。七月以後はこれが横這いの状態を続けて今日に来つておるわけであります。従いましてこれらの約四〇%から五〇%の開きというものを、やはり或る程度バランスされるように努力をして頂かないならば、このドツジラインその他によりましての予算、即ち直接的にはこの追加予算が始まります来年の一月からの減税その他のものを合せましても、尚二〇%程度の今よりも苦しい生活ということになるわけであります。従いまして我々は只今仲裁委員会で仲裁をして貰つておる最中であります。併し仲裁案も間もなく出ることと考えられますが、どうかこれらの仲裁案等が出ました際には、これが最後の決定でありますので、我々としても、鉄道の当局としましても従わねばならない問題であります。併しそれの最後の決定は国会において承認を願わねばならないということになつております。新聞等の伝えるところによりますと、不確実ではあろうと思いますが、政府においてはそれらの予算というものを組んで国会に相談をするつもりはないということが言われております。併しそれらは法律上定められました手続をやはり歪曲した考えであろうと考えます。是非とも法律の定めました通りに国会の御審議を待ちまして、その決定に我々は服したいと考えておるような次第であります。この点を御了解の上、若しそれらのものが出ました際には、どうか国会側においても積極的に御審議を煩し、且つは御支持を願いたいと考えておる次第でございます。又これを社会の一般的な影響から考えて見たいと考えます。たとえマル公が上りましても、半面でこの政策が遂行される限り、闇の物価というものが下つておるのは現実であります。併し私が前に申上げましたように、生計費の方が高騰を来しておるということも事実でありますが、それを抜きにいたしまして、マル公が上つても、闇が下れば実質的な実効価格というものが下つて来るのではないかという議論をされる方があります。若しこの状態を進めて、もつと実効価格を下げるようにしたならば、それで国民の生活が、勤労者の生活が楽になるであろうから、その効果の出るまで待てという議論があります。このことは尤もなようでありますが、実効価格が低下して行くその原因がやはり問題であろうと思います。今日の我が国の社会情勢を見まして、実効価格を下げまして世の中が明るくなるであろうかという点を考えて見ますと、やはり安定を少し或る面では通り過ぎまして、デフレの傾向に入つておる。どうも中小企業等の小さいところでは採算が取れないので、工場閉鎖をする、或いは商売が成り立たないという暗い面が横行しておる面があるのではないか、又は輸出その他の面を見ましても、輸出の滞貨を放出物資として出しておる、綿布の配給もされておる。一面我々としても便宜を供与されておるところでもありますが、これを輸出しなければならないものが輸出できないので、それを国民に配給する、だから衣料品が多少安くなつたというようなことでは、これも困つた惡いよさであろうと考える。或いは資金の圧迫があり、又購買力の減少がありまして、物の売行きが惡いというようなことのために、実質的な物価、即ち実効価格が下落しておるというような社会情勢というものは、これはよい社会情勢ではない、発展的な明るい希望のある社会情勢ではなしに、やはり暗い暗沮とした社会情勢であろうと考える、こういう社会情勢では、これは国家の再建計画にも好影響を及ぼさないのではないか、国家の政治を担当する者は、やはり国勢が隆々として伸びるという明るい積極的な面を出すように考慮して頂きたいと考える、これがためには適当な資金を出しまして、そうして経済循環というものが活気を帶びて来るような方策を採る、即ち実効価格というものを維持するような政策を採る方がよいのであろうと考える次第であります。かかる意味におきましても、適当な購買力が与えられ、経済循環が明るいものとなるような第一方策としての賃金値上げ、その他については一応の御考慮を煩わしたいと考える次第であります。  又これは余分なことになりますが、我が国が民主的に再建をされて行く、過去のような状態であつてはならない、民主主義ということが盛んに言われておるのでありますが、我々もその方途を以ちまして国家の再建を念願いたしておりますが、この民主主義ということにつきましていろいろの議論があろうと思うけれども、やはり平和的なということであろうと思います。暴力を否定した行き方、即ち国会中心主義の行き方、国会を以て運営をして行つて、そうして世の中をよくして行く方法というものは、暴力によろずして十分に可能なのであるという証明をすることが必要であろうと考える次第であります。従つて経済情勢がかくのごとき、又は国家の政策等によりまして、勤労者の生活が圧迫をされておるというような面におけるところの労働者の正当な要求につきましては、これが十分に通つて行くという現実を見せて貰いたいと考える。そこに議会に対する、議会政治に対する国民の心からなる信頼感が涌きまして、国家の運営というものが、民主的に進められる基礎になると、私は考えておる次第でございます。  以上述べました通り今回の補正予算は二十五年度の本予算の縮図となつておるようでもありますし、又、その精神が将来にも貫かれるであろうとは思いますが、その運用の方法が、やはり金持階級の方に有利であつて、そして勤労者の方にはやはり不利な結果を招いておる。価格調精費を減額しまして、それによるマル公物資の値上りの影響というものは、給料の低い生活者には苦しい増加を与えておるということ、又税金の減少等につきましても、税金減少の恩惠は、給料の低いところでは少く、少く收入の高いところに多い。差引きいたしますと、給料の低いところでは六%程度の負担増加となり、高いところでは約一%乃至二%の負担の軽減となつておる。  尚米価の値上りを予想する場合には、これは二割程度の実質賃金の低下を来たしておる。従つて一般民間賃金その他と較べまして、非常な低位にあるところの官公吏並びに国鉄の従業員等につきましては、少くとも二割見当の補正というものは、この際いたして貰はねば非常に困難な生活状態になるのであるという点を御勘案願いたい。概評いたしまして、この二十四年度補正予算の影響というものは、労働者、勤労者階級に対しまして、やや苦しい影響を与えておるものであると断定いたして差支えない。どうか参議院の皆さんにおかれましても、この点を勘案されまして、税金の減少率を、少し低い勤労者の方へ減税率を多くする、或いはその反面といたしまして、給与の、人件費に関するところの予算を増加してやろうという御結論に達して頂きたいと考える次第であります。  これを以て、私の意見を終ります。

黒川武雄民主自由党

○委員長(黒川武雄君) 御質問ございませんか。

小川友三各派に属しない議員

○小川友三君 星加さんに、お伺いしますが、今度の予算の中で、国有鉄道の方に三十二億幾らかの金を廻すことになつておりますが、

星加要国鉄労働組合書記長

○公述人(星加要君) 借入金として…

小川友三各派に属しない議員

○小川友三君 借入金ですか。こうしたことを審議しつつあるのでありますが、この点につきまして、あなたのお考えを伺いたい。

星加要国鉄労働組合書記長

○公述人(星加要君) それで今回貨物運賃が九割値上げをして貰いたいということを、当局から言うておつたらしいのですが、それが八割程度の値上げに止まりまして、それに附加えまして、三十億の、一般会計から借入金をするということになつて、九十億程度の赤字というものを、本年度内で消化をしようということに目安がついたようであります。これは一体どういうことでありますか。この前のときには、一般会計から国有鉄道が繰入れをされた金は、約三百億に達しておつたと思います。このようなやはり三百億の借入をしたのですか。そうでなかつたならば国鉄がやはり運営出来ないという程度な、やはり運賃が物価に対するところの非常な低率、二百四倍に対する七十四倍というような低率で追いつけなかつた。併しそれを貨物を上げるということは、物価に影響を及ぼされる、これを抑えて参つた必要性がありまして、今までは、そのような国有鉄道に対する一般会計の繰入れを以て、運営をして来たのでありますが、ドツヂ・ラインその他によりまして、そういう方法は改めねばいかんというところから、それを削減してしまつたのですが、やはりそれは無理に過ぎまして、今年度は九十億の赤字、それでそれをどういうふうにするかという点につきまして、若し国鉄の運営が悪いというならば、運営の衝に当る者が責任をとらねばなりません。それを監督するとことは会計検査院等がありまして、国鉄運営等につきましては監査をされることと思つております。併しその点にですね、やはり落度なしに、人力は盡しておるのであるが、併しまあ予算の面から無理があり、こういう結果になつたということが承認されるという現在は段階になりました。それで政府とされてはこれは貨物運賃が低く過ぎるのであるから、余り影響の及ぼさない程度で、でき得る限り引上げてやろうというので、八割の引上ということを言われております。その上で尚ですね、不足の部分に対してましては、国有鉄道へ金を貸すということになつておりますので、先ずそういう方策を執られるのも無理のないところであろうかと思う。労働組合といたしましては、直接国民に迷惑の掛らないようにというところから、旅客運賃の値上はこれを差控えて貰いまして、貨物運賃なら多少という考もあります。併し貨物運賃が一般の物価に影響することでもありまするから、でき得るならば全額を借入金とするかですね、ということにしたいと思いますが、それでは根本的な解決策にもならない。賃金物価とのバランスをも考えねばならない時期にありますので、こういう方策につきましては止むを得ないものであると感ずる次第であります。

小川友三各派に属しない議員

○小川友三君 それから貨物運賃を上げるよりも客の運賃を上げた方が、大衆の影響は少いのですよ。旅客運賃を上げた方が、貨物運賃を上げると全体の物価が騰つてしまう。それであなたの方針は客の方を上げるがよいかどうか、貨物が上ると物価で一齊に騰つてしまう。これはいつも言うことでございますが、実際片山内閣もやつて来たし、吉田内閣もやつた。社会党内閣もやつて来た。貨物を上げちやいけないという方針でやつて来た。逆に貨物でどかんと物価で騰るということは一齊に窮してしまう。客の方は来る人だけ拂う、運賃を拂えば済むが、貨物の方は全部に影響してしまう。この点があるのですが、それは片山内閣の方がよかつた。お客の方を上げて貨物の方は上げなかつた。今度の吉田内閣は荷物を上げて乗る人には影響がないようですが、実際は物価が騰つてしまつてこの方がサラリーマンに対する影響が、一七%一〇%二二%と、どんどこどんどこ騰つてしまう。これに対する何か專門家の御意見を伺いたい。

星加要国鉄労働組合書記長

○公述人(星加要君) 貨物運賃が今まで値上げを抑えて来ましたのはあなたの御説のような面があつたと思います。今日のときに来ておりますと、やはり貨物運賃がそれで少し抑え過ぎました。抑え過ぎると補給金を出すかということになりますが、補給金というものが出ないという現実になりますと、やはりそれに或る程度の値上というものは勘案されるのである。併しそれもただ値上げのみによつて手放しにというわけに行きませんので、値上を抑えまして三十億のやはり借入金というもので値上りを抑えて、そうして賄つて行こうとする考えであるように思います。それから安本の方で計算をして貰いましても、この八割程度の値上りによりまする物資の値上りについての影響は、それはわりかた外国の物価に対する貨物運賃を含めておるパーセントから見ますと、畧畧容認されていい程度のものではないかと考えておる次第であります。

小川友三各派に属しない議員

○小川友三君 それから国有鉄道拂下げ法案というのは、この前出ましたが、又いつか出ますが、国有鉄道を民間に拂下げた方が、この方が皆さんの御待遇がよくなるのじやないかと思いますが、あなたはどうお考えですか。

星加要国鉄労働組合書記長

○公述人(星加要君) 私はここで国有鉄道のやはり使命というものを他の会社と比較して考える場合に、国有鉄道であるということは、国民に対してよくサービスをすることになると考えております。併しそれはやはら会社制度にしますと、採算のみならず、利益という点を是非考えねばならないと思います。そのためにどこで差を付けるかといいますと、車輌の修繕、線路の補修という点で差が付いて参ります。でそういうところに差が付くということは、これはその危險を伴います、で又発達というような点から考えても、発達が比較的阻害されて、田舎の私鉄を御覧になるとよく分りますが、田舎の軽経鉄道というのが今でもあると思いまするが、そういうものは明治の三十年時代のものをそのまま今でも使つておる。で一向発達を見せておらないというのが現実でございます。大都会の電気鉄道は近代になりまして、発達して、これは非常に改善されたもので国有鉄道と肩を並べて行けるものもありますが、併しそれが一歩田舎へ入りますというと非常に程度が落ちまして、明治時代そのままの姿で運転をしておるという、こういうことでは輸送量の増加も伴いませんし、又危險も増加して参ります。国有鉄道のごときは相当その事故件数もありますが、その事故件数が、そのように私鉄が運営しておるように、修繕の手を抜き、線路の補修を怠つてやつたとしたならば、余程のものなろうと考えております。輸送の安全性、確実性というようなことを確保するような意味から申しましても、採算の取れ得るような線路というものは国鉄で持つておりまして、そうしてこれが国民に対する輸送上の義務が十分に果されるようになつておつて、従つて国有鉄道の線を民間事業に拂い下げるというような点につきましては、やはり交通政策上から面白くないと考えております。

高橋啓民主党

○高橋啓君 簡單に三つの点をお伺いしたいのですが、この倍率の問題じやなく、いわゆるコストを形成する中で、一番主なるものは何かということ、もう一つは物価と運賃との問題ですが、物価を決めるのに一番大きな影響を持つものは賃金、それから食糧、それから運賃だと思うんです。その運賃の性格が値上げをした場合に或るものは殆んど影響はない。ところが距離或いは量、嵩というもので非常に影響を受けている。今度の価格を決めるについて、そのような調和をしなかつた場合に、非常に物価に影響が出て来るその再生産も全然絶望的な結果になるのもあると思います。それは距離や嵩の問題があると思いますが、そういうことについてどう考えられておるか。もう一つは鉄道が独立採算制になりまして、間に合わなければ人を減らす、それから又一方運賃を値上げするというような面だけでなく、労組の関係の方方から見てこれを経営の合理化の面にこのような大きな世帯で沢山の物資を使つて、さつき石炭を節約して二十億出したというようなことがあつたのですが、そういう意味でもつと切りつめて出すような方法があなた方の立場から見られないか。一つこの三つの点をお伺いしたいと思います。

星加要国鉄労働組合書記長

○公述人(星加要君) 最初物価を決めるに当つてですね。人件費と物件費、それに運賃というものがあつて、運賃が相当大きな部分を占めるのではないかという御質問ですね、これは私物価というものがどの程度に決りますかいろいろ分析いたしますと成つて参りますが、経営上人件費と物件費とに分けまして普通には五〇%・五〇%ということになつておるように思います。国有鉄道の過去を顧みましても物件費が五〇%、人件費が五〇%、それから私鉄の方面を見ますと、物件費が四五%で人件費が五五%、人件費の方が少し多いように考えます。現在の国有鉄道におきましては人件費が四〇%でありまして、物件費が六〇%ということになつております。これが本年度の統計でありまして、人件費は過去の如何なる時代と比較し、又は他の企業と比較いたしましても、人件費対物件費の比率は現在が又国鉄においては一番低いという状態になつております。それから次に運賃の占める割合ですが、これは私只今数字を持合わしておりませんけれども、過去においてこれを調査しますと、結論といたしましては法の諸外国と比較いたしましても、それから又物価の中に占めるところのパーセントにいたしましても、これは非常に低かつたという考えを持つております。今日のところ運賃が物価に及ぼす影響というものは非常に少ない。但しここで非常に安い、重くて、それから嵩の高い砂利とかいうような、バラス、木材こういうものに対しましては多少運賃も嵩高になるのではないかと思いますが、併し運賃はパーセントからこれを採りましたならば、鉄道の運賃のごときは極く微々たるものであつて、その間に河底からそれを伴い或るところまで持ち出して来るところの人夫の費用、それからそれを鉄道から手を放しまして小運送にかけるトラツクの費用とかいうものに、その莫大な費用を喰つておると考えるのであります。従つて若し如何なる物資を御覽になつて、その構成している価格をお調べになつても、鉄道の貨物運賃が大きい部分を占めているというものはないと思います。運賃という中には人夫の手間代、或いはトラツクの輸送費用等、余り機械化されておらないところの力に非常な部分を奪われているのが現実ではないかと考えております。  それから次に節約の面でありますが、節約に関しましては企業の合理化という点をやかましく追求する必要があると考えております。この企業の合理化或いは節約というような面につきましては余程思い切つたことをいたさねばならない。けれどもそれがなかなかできがたいというのも亦現実であろうかと思います。こういう点につきましては、労働組合側としましては、とに角誠心誠意節約に努める、或いは能率を上げるという点で協力をいたしております。併し我々の主張としますところは、経営協議会等、或いは只今我我の言うているところでは協力会議というものを設定したい。そこで一つ腹臓のない意見を検討し合つて節約に努め、或いは能率の増進に努めて行こうではないかという提案をいたしておりますが、協力会議はまだ発足をいたしておりません。そういうものが労働協約で締結されて参りますと、余程労働組合が本格的にその方面で動けるようになると考えております。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 私も簡單にお伺いしたいのでありますが、先程のお話を聽いておりますと、九千七百円の賃上げの要求が、これは大体現在の賃金状況においては約二〇%の実質賃金の低下であるので、それを六千三百円に対して賃金を計算して九千七百円に決定されたのでありますが、中労委の調停案が而も六%も下廻つている、一四%くらいの八千五十八円というようなところで出された。併しそれに対して不満ではあつたけれども国鉄側はこれを呑んだ。こういうことは今まで余り例がないと思うのであります。労働者側がこれを呑んで、然るに政府はこれを予算的措置ができないという点で蹴つてしまつた。これも余り例がないと思うので、政府の措置が非常に現在の要求に合致し得ないと我々は見るのでありますが、こういうことになりますと、今後どういうふうにしてこの要求を貫徹されるというふうにお考えになつているか。無論先程のお話には国会に対してその要求を飽くまで貫徹する、こういうようなことをお考えのようなのですが、その外にどういうふうなことをお考えになつておりますか、この点をお聞きしたいと思います。

星加要国鉄労働組合書記長

○公述人(星加要君) まず只今国有鉄道は公共企業体に移行いたしまして公共企業体労働関係法というもので規正されている。従いまして要求が取上げられるところは当局と組合側との交渉が第一番、次には調停委員会、公共企業体の調停委員会に入ります。調停委員会で出ましたものがこれが成立をいたさないときには、実は我々の九千七百円ベースにつきましては只今御指摘のありました通り、当局側が受諾できなかつたのでこれが仲裁委員会というところに廻つております。仲裁委員会で仲裁されますと、この仲裁案というものが鉄道当局及び組合を拘束いたしまして、それに従わねばならないという権限を持つているわけであります。けれどもその仲裁案に予算的措置を必要とする場合には、これは国会で決定を見るまでは有効とならないわけであります。従いまして仲裁案が間もなく出る運びになつておりますが、この仲裁案が出ましたならば、我々もそれに法律の定めに従いまして、仲裁案の線に承服をいたすわけであります。鉄道当局も承服をいたしますけれども、それを監督しておる政府が、そういうことをしても予算の措置はしないのだということを前以て発表されておるようでもありますが、兎に角それは国会で審議をして貰つて、それでいいのか惡いのかという最後の判定を仰ぐことになつておるわけであります。併しこれが又只今の御質問では政府並びに国会等の動向によつては、否決されるであろう。そのときに労働組合はどういうふうに進むつもりであるかというところにお尋ねの主眼点があるのであります。この点につきましては我々といたしましても、民主的な国民であります限り最後の判断が国会で出される。その国会の結論がこれを否決するという場合は、これに従うより他に方法はないのでありまして、それを不満として国会の決定を覆すためにゼネストを敢行するというがごときことはあり得ないと考えておる次第であります。従つて我々といたしましては、これが否決せられるという場合には、国会の意思を尊重いたしまして、国会に従わなければならないが、従しながらその国会において我々の要求が満足されるように、国会が正しい判定を下してくれるように国会の方々に我々は十分なる了解の運動をいたしたいと考えるのであります。且つ又それが否決されましてもその次にということもあると思い、我々の組合の指導者はそのことを念願しておるわけでありますが、併し事態は組合の指導者の思う通りにこれが動かせるものでもないというむずかしさを持つておるわけであります。即ち私が最後の点で多少申上げておきましたが、民主主義が成功するか否かということは、この苦しい苦しさというものがやはり国会に持ち込まれたならば、国会において如実に解決されるのだというところに本当の力を見せるものでありまして、私共が念願するところのものが、実現に成功して行くためには、我が国会のやはり理解ある御援助を俟たねばならないと考えておる次第であります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 連関して……非常に我々の見通しでは今の要求はなかなか通らないような実情になつておるけれども、過般の日教組の大会において、国鉄の菊川副委員長であつたと思いますが、こういうような情勢では合法闘争の枠を破らざるを得ないということを言われております。こういうような意向は国鉄の今の人たちが持つておられる意向であるかどうか、それからもう一つは、その結果非常に労働者の生活の破壊ということが起つて来るのですが、労働者の生活の確保なしには絶対にお話の民主主義の確立も、それから平和的な生活というようなことも、そういうことは全然これは望み薄になつて来る。絶対不可能であろう。こういう点について労働組合としてどういうような一体決意を持つておるか、その点を簡單にお答え願います。

星加要国鉄労働組合書記長

○公述人(星加要君) 合法闘争にも限界があるということを申したそうでありますが、併しそのことは予測されない事態が、或いは発生するかも知れないという不確実な予想を述べたものであろうと私は考えます。従つて我々が現実に生活をし、或いは社会的な行動をいたします理念というものは、民主国家の国民である以上合法の枠を超えるというような行動を頭に置いて生活するということはあり得ないことであります。これはまあ法律上刑法等を見ましても、人殺しをしてはいけないというようなことはありますが、併しながら人殺しは現実にあるので、そういう事態は或いはあり得るかも知れないというようなことを述べておるのだろうと思います。世の中がそういうふうに人殺しが横行して惡くなるということは、別段法律がよくなつたり惡くなつたりしておるのではないが、やはり社会生活そのものが苦しいというところに社会不安が醸成されまして、それらの行動をする。それらのない安定した社会情勢に我々が努力して置かねばならないのであるから、ここは参議院の諸賢において我々が要求しておるところのものに、是非合理的なものであるから支援をして頂きたいということをお願いしておる次第であります。以上であります。

森下政一日本社会党

○森下政一君 先刻価格調整費の節約がマル公の跳ね上りになつて、家計が膨脹するということをお述べになつたときに御引用になつたのは、安本の調査課の調査だと思いますが、価格調整費の減額を三百五十億と押えておる。つまり政府が当初計画しました額ですね。補正予算案では二百三十億に減つておる。尤も当初は減税を政府は二百五十億を見込んでおつたのです。補正予算では二百億二百万円というふうに減つてはおりますが、そこであの調査課の調べだけで計算されると、今度は少しこの補正予算の実態と変つて来ると思うのです。とは言いながら私の考えでは貨物運賃の値上りであるとか、主食の値上りというものを考えると、大体マル公の方で来ると家計費の膨脹というものが減税では吸收されない。大体似たようなことになるか、若しくは多少とも家計が膨脹して負担増になるのじやないかと思うのですが、是近我々に寄越しました物価庁の調査によると、貨物運賃の値上りとか、或いは主食の値上りなども計算に入れて、尚且つ家計が膨脹しない、減税がこれを潤すと、こういうのですが、若し国鉄労働組合あたりで、この安本の調査を離れで、今度の新らしい予算の数字によつて計算されて、尚且つやはりこの家計が負担増になるというふうな将来調査があつたら一つお聽かせ頂きたいと思うのです。お願いいたします。

星加要国鉄労働組合書記長

○公述人(星加要君) それは私共の方で税金の計算表、税率表というものが、ちよつとまだ確定的なものが入つておりませんので、安本の意見を使いました。且つ私は米価審議会に出ておりましたので、このことはまあ確実でありますので、あらゆる方面からこの減税というものに見合うものの増加をし得る。増加を計画しておるということであります。で、米を来年の一月から一割一分程度消費価格を引上げるという、この一割一分を引上げする見通しも、これは一体何と引当てに引上げるかというと、減税がこのくらいに見合うだろうといいますので、とにかく価格調整費が切下げられまして、物価が上るやつもそれを減税と見合う、米の方もそれと見合う、その他の計画もそれと見合うというので、まあ今のところおつしやつたような点でも私共は非常に不安を持つておりますが、一応計算等によりまして税率表が確定しましたら、実態の調査についてお知らせできると思います。

黒川武雄民主自由党

○委員長(黒川武雄君) 奥公述人は病気のため出席できかねますので、これを以て一時まで休憩いたします。    午前十一時四十五分休憩    —————・—————    午後一時二十四分開会

黒川武雄民主自由党

○委員長(黒川武雄君) これより公聽会を再開いたします。公述人の方に申上げますが、公述の時間は約二十分の予定でお願いします。後十分を質問の時間といたしたいと思います。  朝日生命取締役本間喜一君

本間喜一朝日生命保險株式会社取締役

○公述人(本間喜一君) 今回提案になりました補正予算の特徴と申しますものは、一言にして申しますれば、二十四年度本予算と同じく、インフレの終熄に対する強い意志を踏襲しておるものといえると思ふのであります。  本予算でとりましたインフレの終熄策は、要するに消費インフレを防止するがために、税金の吸上げによる国内購買力の削減を行うこと、政府の支出の切詰め、及び追加信用を抑制するということであつたのであります。その考え方は、補正予算においても貫ぬかれておりまして、明年一月以降米価並びに運賃の引上げ改訂を行うとともに、給与ベースは据置きとして国民の消費生活には、一層の耐乏を要求したのでありまして、企業に対しては、一段と合理化を推進する方向をとつておるのであります。その方向は、補正予算案において、むしろ一段と強化されているように思われております。  我々が過去において、特に終戰後におきまして、激しいインフレの禍害に悩まされまして、このインフレを何とか喰止めなくちやならない、これを喰止めるためには、政務財政におけるところの、インフレの要素を断つというために、財政面の健全化というものが絶対に必要であるということを痛感するものでありまして、今回の補正予算の持つ狙いも亦、そこに置かれておるのであつて、その点については、何ら異論とすべき点はないのでございます。  さて、我々はこの本年度の予算が実施されましてから後の財界の推移を、一応振返つて見る必要がある。通貨は昨年度始めから、十月末までに約六百億円の増発でありましたが、本年同じ時期に六十億円の收縮となつておるのであります。物価は、昨年中非常な昂騰をいたしましたが、本年は相当の低落を演じておりまして、特に生産財物価のごときは、相当大幅の下落を来しておるのでございます。これらの点から見まして、内外における情勢の変化もありますが、本年の予算によるところのインフレの收束は、予期以上に進行しておるということが、見られるのでございます。ここにおきまして、先ず過去におけるような、インフレの再発というものを来さないような確実な状態を確保するということは必要でございますが、それと同時にポンドの切下げ、或いは世界的な購買力の低下というような環境の変化並びに国内におけるところの金詰り現象、産業界におけるところの全般的な不景気現象という財界に対する大きな変化を回避するような考え方もおのずから必要となつて来るんじやないかと思うのでございます。一言にしていえば、均衡財政の行過ぎというものから来る産業界の部分的及び全般的なデフレの惡影響を除くことも亦、必要となつて来たのでございます。例えば昨年度十月までの政府資金の撤布超過約七百億円ぐらいじやなかつたかと思いますが、本年は三百億円以上の引上げ超過ではないかと思はれますが、こういう民間資金の引上げによるところの極端なるデフレ面を展開せしめる懸念があるのでございます。こういう懸念はときを経るに従つて、下半期においては、いよいよ深刻に現われて参りまして、滞貨の増大、生産の停頓というふうなものが、全面的にあらわれて来るようになつたのでございます。こういうデフレ的な影響というものは、一般産業界のみならず、金融界においても深刻に影響は感じられて来たのでございます。本補正予算を見る場合におきましても、特に現実の財界の状態を重視しなければならないと思うのでございます。けだし、日本の復興再建というものについては、これが大きな障碍となつてはならないからであります。国民生活の耐乏化、企業の合理化ということは、これは止むを得ないことでありますけれども、併しそれにはおのずから限度がございまして、その限度を超えますと、失業者の氾濫、或いは社会不安の釀成となりまして、健全なる企業の運営を破壊するような結果になるのでありますから、かかる急激なデフレ化を避けるためにね本補正予算案を見る場合に次のような点について考慮を拂う必要があると思うのであります。  第一番目は、政府は今年度の予算によつて経済界の一部に、目下若干困難な事態を生ずる。更に国際経済状態の変化も加つて来たのであるが、この事態に対して、公共事業過を追加するとか、失業対策費を増額するとかいう方法によつて、本補正予算において適宜な調整の方法を講じたと述べておられるのでありますけれども、今回の補正予算の歳出面をみますと、民間の有効需要を喚起し、不景気の行過ぎを防止するような経費が余りに少いのであります。価格調整費等の削減を差引いてみましても、新規の追加支出なるものが約六百億円というものになるのでございますけれども、そのうちおよそ三分の一の二百十億円余は、食管会計及び公団の増加運転資金というものでございます。地方財政を除きまして、百二十五億円余が政府関係機関の赤字の補填というものに使われておりまして、真に建設的な経費といたしましては、公共事業費及び都市失業救済事業費その他でありまして、それは百十億円余に過ぎないのでございます。現在のデフレ状態を緩和するというためには、これは甚だ不十分であります。  第二にこれは特に考慮を要することだと思いますけれども、食管会計の予算、こういう予算は食糧の輸入の増大という特別の事情、及び食糧価格の値上げというものが影響して増加している公団会計の運転資金と共に、これらは比較的短期間に回收される性質のものを多く含んでいるのでありますから、特に現在のような政府資金の引上超過が慢性的な状態にある場合に、金融的に解決する問題ではないかと思うのでございます。  第三には歳入面で減税措置が講ぜられているけれども、いわゆる自然増收として勤労所得税並びに法人税の水増しが非常に大きくなつて来ている。実質的には減税ではなくて、いわゆる取り易いところから多く取るという従来の傾向は依然として改められていないのであります。民間の講買力を大きく吸い上げて、そのうち民間に還流する部分が極めて少いのであります。要するに今回の予算はデフレ財政の傾向を一段と推し進めたようなものであつて、政府説明のような復興予算的な性格が乏しい。インフレの收束、健全財政の実施に対しては、何ら異議はないけれども、その点については一応成功したものとみられるのでございますけれども、それだけ経済界に対する重圧も亦大きいのでございます。健全財政とは国民所得と財政の規模、生産的経費と不生産的経費の比重が適当なものとなつて、租税負担の公正化が図られたときに初めて達成されるものであつて、收支均衡というだけでは尚その一部に過ぎないのでございます。今回の補正予算は二十四年度本予算と同じく国民経済力の基礎の上に正しく立つている收支均衡であるということは疑わしいのでございます。これに伴つて、今後特に留意しなければならない点があると思うのでございますが、その第一は、予算の運用面であつて、その第二は財政面の圧迫を金融面で調整するという点でございます。予算の運用面においては、毎々怨嗟の的となつておりますところの政府支拂の遅延を絶対に防止しなければならない。次に金融面でございますが、これは経済界のデフレ化を防ぐものとして、次のような方法を講ずる必要がある。第一番目に見返り資金の適時適切な運用、第二に預金部資金の活用、第三に日銀オペレーシヨン融資の促進、この三つでございます。第一に見返り資金につきましては、現在までのその運用が頗る不活溌である。見返り資金のうち鉄道通信に対する二百七十億円、復金債の償還六百二十五億円、こういうものは予定通り進められているのでございますが、当初予定されました産業投資の五百余億円というものは今まで僅かに二件、四億円程度を実現しただけでありまして、この形体が不況の程度を一層深刻なものにしておるのでございます。従来の復金融資のごとき総花的融資は甚だ以て不健全でございまして、嚴に戒めなければならんと思うのでありますけれども、重要産業の設備資金に対する投資はもつと活溌に行われていいし、電源開発、造船資金などというものは早急に貸出さなければならないのでございます。この政府の貸出手続の遅延というものによる時期のズレは、影響するところが非常に大きく、見返り資金運用のタイミングが事業金融、ひいては景気動向を大きく左右することになるのであります。概して言えば、本補正予算案を実行するに当つては、金融機関の協力によつて、金融政策面において大きく緩和的でなければならないと考えるのでございます。  第二に預金部資金におきましてはその余裕資金は、社債などの民間投資に振向ける必要がある。今後企業はその所要資金を従来の借入金方式によらないで、増資、或いは社債発行というようなものによつて賄うことが理想的でございますが、現在のこの証券界、この株式市場というものの、非常に不振な状態に際会いたしまして、極めて一部の事業を除きましては増資の実行は極めて大きな困難にありまして、社債の発行というものにおきましても、今後漸次その数量が増大するにつれまして、その消化が懸念されて来ておるのでございます。証券民主化運動というものが近年大いに推進されているのでございますが、大衆の蓄積資金のみに頼るということでは証券の消化はできないので、預金部資金は本来民間の零細な蓄積資金を吸い上げたものであつて、これを民間に還元しても決して不当とは言えないのでございます。  第三に日銀のオペレーシヨンによる融資でございますが、最近苦干これは進展しているように見られるのでありますけれども、今後尚活溌に運営する必要があると思うのでございます。今後巨額に上るところの政府債務償還が行われるのでございますが、その償還の方法というものは注目すべきものでございまして、それが單純に日銀への還流となり、そうして貸出の縮少、手持債の償還、日銀発券の收縮というような政策をとるならば、デフレ的影響に拍車をかけられると思うのでございます。産業界におけるところの設備資金の供給、増資資金の拂込み等の資金需要は極めて多いのでございます。一方民間に蓄積される資金は決して十分でないのでございます。銀行その他の預金、貯金額は、現在の物価の位置から見ても極めて低調でございます。現在の過渡期におきましては、むしろ最少必要限度の信用造出はこれも亦止むを得ないと思われるのでございまして、これによつて経済界のデフレを或る程度喰止めることができるだろうと思うのでございます。併しながらここで、議論は堂々廻りとなる嫌いはございますが、注意を要する点があるのは、金融政策面によつてデフレーシヨンの緩和をするという、この方策というものはおのずから限度がございます。又これに対する金融機関の協力にも亦おのずから限度がございます。それでありますから例えば最近の日銀の貸出しの増大というものは、金詰りを打開するこの均衡予算から来ておるところの、金詰りに対する匡救策として止むを得ない施策であると思いますけれども、併しながらこの貸出しの増大というようなことは必ずしも健全なるものとは言えないのでございます。本来金融機関の自主的な運用に俟たなければならないものであつて、結局金融政策による資金面の緩和と言つても、その根幹たるところの財政面におけるところの極端なるデフレ的原因を解消しなければこれは期待し得ないのでございます。  結論といたしまして、補正予算は経済安定化のために止むを得ないものと考えられるのでございますけれども、そのデフレ化の行過ぎは是正する必要がある。そうしてその運用面並びに金融上の措置については特段の考慮を拂う必要があると考えるのであります。

黒川武雄民主自由党

○委員長(黒川武雄君) 御質問がございましたら……

森下政一日本社会党

○森下政一君 大変結構な御意見を拜聽いたしました。大体今年度予算の基本的方針が経済の安定並びに復興を目指しておる、そういう意味で二十四年度の当初予算と補正予算は大体同じ方針である。これはその二十四年度予算の実施して今日に至るまでの実績に鑑みて、インフレの終熄ということには相当の効果を挙げておると思うが、併しながら一般企業界に対して覆うことのできないのはデフレ的な傾向だ。今度の予算でも耐乏生活、或いは企業の合理化ということが積極的に要請されておるようだが、おのずから限度があるのだから、その行過ぎを是正しなければいかんというのが御意見のように聽きましたが、そこで少しお話の趣旨はよく分るのですが、抽象的に傾き過ぎたと思いますが、金融措置をどうするにしたところで、根本は財政面のデフレ的にややもすれば行過ぎる面を是正しなければいかんという御意見だと思いますが、具体的にどうしたらというお考えがありますでしようか。財政面の行過ぎというのは、これが行過ぎだという……

本間喜一朝日生命保險株式会社取締役

○公述人(本間喜一君) それは先ず具体的な問題としては、ここに一つは財政面でなしに、金融面で以つても賄い得るというふうなものを、この予算の中に計上しておるのです。そういう点があると思うのですね。一つは……

森下政一日本社会党

○森下政一君 それはおしやるのは例えば食管会計百七十億円繰入れということなんですね。

本間喜一朝日生命保險株式会社取締役

○公述人(本間喜一君) そういうようなことはありますね。その外まあ金融的な面というものじやなくて、予算実施の面において非常な時期的なずれというものがあるのが、民間に対する資金の引上げが余り不当に大きくなつて来ていやせんかという点が考えられると思うのです。

小川友三各派に属しない議員

○小川友三君 今の高説を承わりましたのですが、いわゆるあなたの最後の方にこういうことを言われたけれども、結局堂々めぐりのような感じだということを言われたものでありますが、それは物価指数から割出しますれば、私もあなたの言い方の一致すると思いますが、紙幣の発行高が物価指数は二百四倍になつておりますから、紙幣の発行は実際五百億円出していなければこれはうまく行かないのですが、この点についてお伺いします。物価指数は二百四倍ですから……

本間喜一朝日生命保險株式会社取締役

○公述人(本間喜一君) 物価指数が二百四倍に対して或る程度低目になつておるわけですね、通貨は……百倍ぐらいのものですか。併しそういうことは物価だけから通貨の量というものは考えられないので、物価の外に国民経済で十分考えなくちやならない点がある。例えば民間資金、一般の資金の蓄積というふうなものは非常に少ないですからね。我々生活しておりましても消費面が非常に沢山金がかかる。それから税金にうんと取られる。自分の手許に残る金というものは非常に少ないから、貯金というものは前よりもうんと少なくなる。貯蓄に前の物価のときの二百倍も持つておるというふうなことはちよつとないわけなんです。やはり皆の懐ろの中の金も物価通りには殖えていないということから来ているのじやないか。それだけ日本の経済が低下した、だからやはり前の物価通りに通貨なんかもなくちやならんということにはならんと思います。

森下政一日本社会党

○森下政一君 ついでながらこの際本間さんにお伺いしたいのですが、直接今度の補正予算に影響はないのですけれども、御承知のシヤウプ勧告によつて通常国会に全面的な税制改革が行われておると思うのです。その際に今日まで事業税として課せられております地方税ですか、これが価値附加税というふうに変つて来る。今日の読売新聞に野津博士が書いておられるところを見ると、某保險会社では若し価値附加税がシヤウプ勧告通りに行われるならば二百九十億の増加がある、こういうことを書いておる。価値附加税というものについて御社あたりで事業税と比較してどれくらい増徴されるということを何か御研究になつておることはありませんか。

本間喜一朝日生命保險株式会社取締役

○公述人(本間喜一君) それは保險会社なんというものが一番ひどいでしよう。その外に原始産業に属するマイニングであるとか、サーヴイス業、或いは公共事業の電鉄であるとか、いろいろなものがひどいですが、保險会社なんかもすごくひどくて、あれをあの文字通りあのままにやられたのじやとてもやつて行けないということになります。というのはその附加価値というものが、保險会社は別に原料を使つて仕事をしておるわけじやないのですから、殆んど人件費であるというふうなところから非常に大きなものであります。それから不動産というものはこれは皆店舗を持つてやつておるのですけれども、この店舗というものは収益性がないのですね。そういうものに対してそれが非常に漠大なものになつておりまして、私は例えば例にとれば日本郵船会社というふうなものであると、そのビルデイングを沢山持つている、それから船を持つて船を運営している。船は収益性があるからこれは不動産税ですか、ああいうものの対象として相当なものに考えられると思いますけれども、ビルデイングというような、事務所というふうなものはこれは収益性がないのですから、そういうものに対してうんと課税されたら困るのじやないか。例えば紡績会社なんかにおきましても、紡績工場そのものは収益性があるかも知れないが、寄宿舎とかその外いろいろな厚生施設とか、大きなものを持つていればそんなものに対して不動産課税が響いて来たら非常に大きなものです。私共もやはり店舗が非常に大きい、これに対する課税ということを考えると非常に大きなものになる。一方において附加価値税の方はまあ私共の方は特段にそういう大きく増徴されないのですが、鉱山業とか、ああいう鉱山なんかも殆んど動力が主ですから、そういうものに対して非常に大きな負担になるのです。私はあれは文字通りにはちよつと実行できないじやないかと思う。実行したら非常な困難を来たすんではないかと思います。

小川友三各派に属しない議員

○小川友三君 今の本間さんの答弁は、こういう私の質問に対してはどうか。  昭和十二年の紙幣発行高は二十五億万円、そのときに一ドルが二円五十銭、そうすると十億ドルの米ドルだつたら現在の紙幣発行高は三千六百億円、それが台割れして、八億ドル程度の紙幣しか出ていない。後は国税とか地方税の税金で取られて生活も困難である。これは紙幣の発行高が少いから残らんのですよ。そこで事業の運営が、政府の紙幣発行高が少いからなかなか合わない。

本間喜一朝日生命保險株式会社取締役

○公述人(本間喜一君) それは今のこういう予算で見る通り吸上げが多いから残らん。ですからこの証券民主化などと言つて、大いに証券を買えと言つたところで、やはり懐ろ勘定が、食べることと、この税金に取られてしまいまして、本当に民間の蓄積資金というものは少いものになつてしまう。だからその点を拡大するというように持つて行というためには、やはりこういう予算から来るデフレ的な影響をできるだけ少くするように、民間の資力が多少でも殖えて行くように、生産が増大するように、輸出が増進するように、そういうふうに考えて行かなくてはならんと思います。そういうことによつて通貨でも、蓄積でも殖えて行くというふうに考えます。

小川友三各派に属しない議員

○小川友三君 これは吸上げが多いのではなく、紙幣発行高が少いから吸上が多いように見えるのでしよう。

本間喜一朝日生命保險株式会社取締役

○公述人(本間喜一君) それは少いから多くすると、多くするにはやはり健全財政でなく、インフレに進まないとこれは多くならんということなのです。それはそういうことによつて、或いは極端なデフレーシヨンが来ました場合には、呼び水的に通貨の方を増すというふうなことも必要だと思うのですけれども、極端なデフレーションは避けるように、やはり進んで行かなくてはならんのではないかと思うと同時に、又現在急に通貨を増発しなくてはならんという理由もないのではないかと思う。

小川友三各派に属しない議員

○小川友三君 ちよつと、もう少し。今のデフレ状態は、これは極端なデフレであると私は解釈しています。配給さえも買えない極端なデフレ状態であると私は思いますが違いましようか。

本間喜一朝日生命保險株式会社取締役

○公述人(本間喜一君) それはやはり、日本は敗戰によつて、ここまで来たのですから、まあ相当貧乏して来たということ確かなんです。

小川友三各派に属しない議員

○小川友三君 極端なデフレに入つていると思いますがどうでしよう。入つておまりせんか、まだ。

黒川武雄民主自由党

○委員長(黒川武雄君) 次は東京商工会議所理事守谷正毅君。

守谷正毅東京商工会議所理事

○公述人(守谷正毅君) 私は会議所の理事をいたしておりまする守谷でございまするが、本日の公聽会におきまして、五つの意見を申上げまして、皆さんの批判を仰ぎたいと思つております。  第一は補正予算に対する東京商工会議所の要望でありまして、これは実は会議所の專門家がプリントいたして呉れましたから、これは後で朗読なり又時間がありますれば御説明いたします。  それから第二はこの年末から明年初めにおける金融対策如何、これは歳入の方にも大きな影響があることと存じまするから、一応御説明申上げてみたいと思うのであります。先ず今申上げましたように各項目を先へ出しまして、あとから一々御説明をいたしたいと存じます。  それから次は石炭国家管理法によつてこの九月まで経営をいたして参りました炭鉱に対する関連産業業者の資材の売掛代金が非常に延滞をいたしておりまするので、これは何とか特別の金融措置を講ずるにあらずんば業者は潰れてしますということであります。これは大体紐付融資をして頂きたいと思うのであります。それは予算の支出面に影響のあることと存じます。  第四は我々の收入の純益の大半というものは税金に納めるのであります。その中で製造販売業者に対する課税の標準というものは、今まで債権債務を生じたことによつてそこに差益が出て、それを益として一方経費その他損勘定が出て、それに税金をかけられているのがまあ大体でありまするが、取引高税におきましては金が入つて初めて取引高税というものはかかる。我々はこの債権債務の発生によつてそれを標準として課税するにあらずして、その金が入つて、即ちこれを私に言わせると入金主義によつてそれでその取引というものは完結するのであります。入金したものに対する税金を納めるのは当然であります。この債権債務発生主義を入金主義に替えて貰いたい。又これにはいろいろ專門家に伺いましたが、債権債務主義と入金主義とどうもはつきりしておらんようでありまするが、これは是非入金主義にして頂きたいということであります。  それから第五は、私は実は会議所の理事と地方刑務審議会というものの委員をいたしておりまする関係上、この提案をいたすのでありますが、刑務所員並びに税務署員の待遇をもつとよくして頂きたいという二つであります。これはあとで説明いたします。以上申しました五つが、私が皆さん方の御研究を頂きたい、又御協力を頂きたい点でありまして、これは大切だと思いますから一々御説明申上げたいと思います。  第一の補正予算に対する商工会議所の要望、これは実は私は余り專門でありませんので書いて貰つて来ましたから、これをこのまま読みます。  今回の補正予算は明年度の予算と通じて十五ヶ月予算の構想であると言われているが、その基本方針、即ちドツジラインを貫くところの完全な均衡予算を堅持しながらも価格調整費を削減して減税を実施しようという点は概ね適当であると思われる。又予算の中の新規施設として輸出振興を図るため、輸出金融補償制度を設け、補正予算にその経費五億円を計上したこと、住宅建設を促進するため新たに住宅金融公社を設けるため、明年度予算に五十億円を計上せんとしているごときは我々の賛意を表するところである。  この予算について若干の問題を挙げれば左のごとくである。  第一にこの予算は均衡予算であるが、むしろ或る点では超均衡予算であるといえる。国債の絶対額を相当額減少せしめるのみならず、通常は一時借入金を以て賄うことを当然とするいわゆるインヴエントリー・フアイナンス例えば食糧管理特別会計、日本国有鉄道等の増加運転資金に対する金融をも一般会計の歳出に計上しているごときはこの証左である。インフレの完全收束を目的としては、この措置も妥当であるかも知れんが、最近の情勢からすればやや引締め過ぎはせんかと思われるので、問題はこの財政面の強度の緊縮をカバーする金融上の措置が円滑に行われるか否かという点にある。従つて予算実施の面になるが、見返資金による融資を更に迅速に行うこと、現在相当の遊資を有する預金部資金を産業面に活用することが最も必要であると考える。更に明年度予算においては均衡予算の範囲内で更に公共事業費を増額し、又鉄道通信等の建設公債、見返資金引受を以て一層設備の拡張に充てることを望むものである。  第二に補正予算において二百億円の減税を行つたことはよいが、シヤウプ案に示された事業者に対する所得税の過渡的軽減が実施されなかつたのは遺憾である。インヴエントリー・フアイナンスは均衡予算の範囲内でむしろ借入金によらしめ、尚一層の減税を行うべきではなかつたか。又米価の引上げ、貨物運賃値上げによる生計費の増加を、反面取引高税、織物消費税の廃止、物品税の軽減及び所得税の軽減でカバーし綜合して若干生計費が軽減する見込であると言われるが、これには地方税の増加が計算されていないようである。地方税の増加は相当の額に上ると思われるから、従つて明年度以降には更に国税の軽減を計るよう努力せねばならない。  又これに関連して地方団体の経費をできるだけ削減して地方税の増加負担をできるだけ少からしめることを併せて希望する。尚税についての問題はこの際は省畧する。  第三に補正予算においては価格調整費を二百三十億円削減し、明年度予算では本年に比し、これを半分以下とするというのであるが、この方針は妥当である。物価安定の面からは問題が余り無い場合にも経済情勢の変化によつて、価格調整費の削減廃止が当該産業に与える影響は極めて大きい。従つて価格調整費の削減の時期、方法については周到な研究が必要であつて、重要産業、ひいてはその関連産業にとりその準備をなさしめるよう十分配慮すべきであると思う。  次に年末、年始に対する金融対策でありまするが、これと何とか予算面で御検討を願いたいと思うのでありまして、これは先程朝日生命の本間さんからもお話がありましたが、亭主の好きな赤烏帽子ではありませんが、大体本年の始め頃政府支拂いが非常に遅延した、これにつきましては参衆両院におかれまして、それぞれ政府支拂いの促進委員会等をお設けになりまして御盡力を頂きましたことは、今日尚我々感謝の念を持つておる次第でありまするが、現在その亭主の好きな赤烏帽子がどうも民間の大企業に移りまして、今日民間の大企業、企業が大きければ大きい程、その支拂いが悪いのであります。これは品物の性質上そうかと思いまするが、まさか八百屋の大根二本を買つたのをこれを掛け代金にすることができないであろうが、大きな買物であればある程その支拂いが遅れておるのであります。これが事例は、私は実際にたくさんに商売をいたしておりまするから持つておりまするが、大企業程その絶対額の多いのは、これは取扱うものが多いから当然でありまするけれども、延滞額が多いのです。普通大根、ごぼうは現金でありまするが、こういう大企業に納めるものは、検收をして後金を貰う、これがまあ戰前は二ヶ月、戰時中は大体現金拂い、これが今日は平均五ヶ月とか六ヶ月、まあ大きな会社になると七ヶ月、八ヶ月になつておるのでありまするが、何とかこれを丁度水を流してそれを洗うように、何とか金融措置を講じて頂かないというと、これに関連しておる業者、即ち殆んど日本の全産業というものがこれに関連しておるのでありまして、これらがみんな金融難でまさに手を挙げているのであります。これは又後で税金の方でも申上げてみたいと思いまするが、そうしてそんならどうしてそんなになつたかというと、それには私は二つの原因があるだろうと思うのです。これは一つはつまりこの企業の統制、例えば石炭とか鉄道とか、電気とかいうものは価格を統制しておる、この価格の統制は私に言わせれば必ずしも適正でなかつたと思うのです。  例えば石炭のごときまあ本州と九州と北海道は多少違いまするけれども、同じ値段でこれを供給されたということは、非常に不合理だと思うのです。電気も同様であります。  例えば宇部地区における宇部窒素その他の工業は、宇部地方にその足の下でできる石炭を使うことによつて、あの企業が成り立つておるのです。即ち安い石炭を使うことによつてこれが成り立つておる、北陸方面における電気を使つておる化学工業のごときは、安い電気を使うからこそあそこへ工場を持つて行つたのでありまして、にも拘わらず、電気の価格を本州と大体同じにし、或いは石炭を同じにしておつたというところに、非常な無理がありましたためにこの石炭とか鉄道、電気の事業は非常なアンバランスの状態、つまり損の状態であつた。こういう大企業がそんならばなぜそんな安い値段で安いマル公で我慢をしたかといいますと、これは私の申上げるまでもなく、それは大きな固定資産を持つておるにも拘わらず、そのランニング・エツキスペンスというものは比較的少いのでありますので、短期間は我慢できるのでありますが、これは償却その他を見込まなければならんのでありまして、従いまして償却をなし得るだけのマル公の余裕がなかつたために、設備の改善ができない。又それをその公共性なるが故に強いてやつたところは、それは一般の拂いを止めて、そうしてその方に若干でも金を廻した。こういうことになつておりまして、その結果というものはこれらの関連産業業者に対する未拂いの厖大ということに相成つておると思うのでありまして、これは何らかの年末に当つて是非財政支出をして頂きたい。これは紐つき融資でありますが、そういう方法を講じて頂いて、そうして年末に停頓しておる金の状態をぐるぐるとうまくやつて頂きたいとこう思うのであります。  時間の関係で端し折りますが、次は第三の官公向売掛代金の即時金融措置を講じて頂きたい。これはしばしば参衆両院或いは通産省、G・H・Q方面に要望いたしておるのでありますが、第二の項目で申上げましたようにこの炭鉱がまあ九月から配炭公団がなくなつたのでありまするが、この石炭国家管理法によりまして、炭鉱は昨年度三千六百万トンというものを出さなければいけないというので、大いに炭鉱業者は努力されたのでありまするが、その途中におきまして、今まで設備資金というものは、これは炭価の中には償却費が入つていなかつたと思うのでありまして、従いまして設備資金は復金の融資によつて賄われておつたのでありますが、復金がなくなつたために、その代金の支拂いができない。勿論復金のあつた時代には手金は三分の一なり、或いは二分の一をお出しになつたのでありますが、あとの金は拂わない。それがためにこの炭鉱というものは関連産業業者に対して未拂金というものは約百億あるのであります。この百億という非常な延滞資金に対しまして関連産業業者というものは、中には首を縊つたものもありますが、或いは炭鉱に行つて喧嘩して怪我をさせたというのも聞いておりますが、是非この百億は丁度石炭そのものがこれは国家管理法によつて一生懸命に掘られたと同様に関連産業業者は、やはりこれは国策に協力して、丁度供米と同じように資材を供給したのでありまして、実に罪なき正直な連中なのでありますからして、この国家の施策のために、これが戰前の分はいたし方ないといたしまして、戰後の今日において尚且つ国家が管理をしておる。これは石炭は商工大臣の管理であり、そうして地方石炭管理局というのがあつて、皆これは官の管理になつておる。炭鉱管理者というものがあつて、それが物を注文しておるのであります。こういう国家機関によつてなされたところのこの売掛代金をいつまでも拂わずにおくということでありましては、これは今後国家の政策に協力するという大事なことに相反するのではないかと思いますので、まずこの百億円の中で、なかんずく大きな延滞と思われる八十億に対しまして、今年の六月にやつたと同じか、或いはその他の特別融資を市中銀行へやられてそうして日銀保証をやり関連業者に紐つきで拂うというようなことをやつて頂きたいと思うのであります。また特にこの炭鉱の中で、中小企業の方はさあ掘れさあ掘れで掘らせたその結果として配炭公団がなくなつて、そうしてそれが半分解けたようなことになつておりますが、その結果は設備はしたのはいいが、設備の償却というのは十年なり二十年ありますので、従つてこれを掘りけることができないというと設備の償却はできない。設備の償却ができないということは、僅かしか金を拂わないということより手がないのであります。それが関連産業に支配されておるのでありますからねこれは是非早急にこの中小炭鉱に対しても同様、而して中小炭鉱に対する売掛代金というものは約三十億と推定されておるのでありまして、これは長期低利資金を何とか予算面で講じて頂きたいとかように考えるのであります。  それから第四の製造販売業者に対する課税標準でありますが、大体先般来も私国税局にも関係の業者の方で集つておるのでありますが、どうも債権債務の発生を以てその差益はこれは益だということにされておるようでありますが、それは是非入金によつて初めてその課税の対象にして頂きたいとかように考えるのであります。それは只今申上げました、例えば炭鉱への売掛の延滞金が百億といたしますれば、これは製造業者の手許の計算で行きますというと、ゼネラルエキスペンスの関係がありますからおそらく二倍か三倍の販売差益だと思います。販売業者におきましては七分とか八分の差益だと思います。これを炭鉱について見ましても、百億の延滞に対して十億とか二十億という差益を、金の入らんうちにそれはお前の差益であるとして、その二十億なり三十億に課税をせられる、大体法人でありますれば三割五分超過所得は五割五分になりますが、この二十億なり三十億の差益に対して課税をされるということになりますというと、業者は到底金を拂うことはできないのでありまして、この製造販売業者に対する課税の標準というものは、債権債務を発生したときによらずして、入金があつて即ち商売が完結したときに、その差益をちようどこれは銀行の未経過利子と同じでありまするから、それでその入金を経過して、始めてその差益に対して課税をして頂きたい、これは是非入金主義ということにして頂きたいと思います。これは予算の上に相当に影響があることと存じますので、ここで申上げます。  第五の刑務所員、税務署員をもつと優遇して頂きたいということは、これは先程申上げました通り、私は地方刑務審議会の委員をいたしておりまする関係上、関東地方の刑務所は大分方々廻つて歩いたのでありまするが、必ずしもその待遇はよくないと思います。受刑者に対する待遇は相当改善せられたように伺つておりまするが、これは余りいい待遇ではない、これはそう言つては失礼ですけれども、余りいい商売ではないのでございまして、それに反してこれはいわゆる教悔つまり教えて、そうして善人にならせるという教育者の役目をやつております。なかなか重大なる仕事をやつておるのにも拘わらず、余り好ましくない仕事であると考えますので、これはどうしても優遇をしなくてはならない。  それから税務署員の優遇でありまするが、これは先程もちよつと申上げました通り、実は我々産業業者の生殺与奪の権は税務署員の双肩にありと言つてもいいと思う。我々の純益の大半というものは税金としてこれをお納めをしておるのでありまして、私共は必ずしも税金を少くするということはいいと思いません。税金を多く取らなければ政府事業が成立たないのでありますから、その点には異議はないのでございまするが、例えば各会社におきまして監査役というものがあつて、そうしてそれを立派な銀行会社を経られた立派な監査役が、この計算は正確にして問違いないという刻印をおしたものを、更に税務署の方が調べられて、そうしてこれに対して税金の更正決定をされるのでありますからして、これは監査役以上なんであります。そういう重要な役割を持つておられまするし、今日この税務の関係におきまして、この予算関係は先般来兜町に税金旋風というのがあつたそうでありますが、これは先程初めからお話しましたが、証券界の不振の一つの原因だと思います。この税金旋風が又我々産業界の不振の原因も担当にこの税金旋風の影響がある、今日潰れる大半というものは税金が拂えないからだと思う。これは私から申上げるまでもなく角を矯めんとして牛を殺すなかれ、又税金を納めるものは成るべくこれに温存して行かなければならんというふうに考えるのでありますが、そういう重大なる役柄を有する税務署員、而してこれを相当に誘惑も多いことと考えるのでありますからして、これらの税務署員に対しては特に優遇方法を講じて頂きたい。これは予算面に一つ優遇案を出して頂きたい、こういうふうに考えております。

黒川武雄民主自由党

○委員長(黒川武雄君) 何か御質問ありませんか。    〔「なし」と呼ぶ者あり〕

黒川武雄民主自由党

○委員長(黒川武雄君) ありがとうございました。次は、慶応大学の経済学部長金原賢之助君。

金原賢之助慶応義塾大学経済学部長

○公述人(金原賢之助君) 只今までに各方面の公述人の方から具体的にお話が御意見がございましたが、私は突然お呼出しを頂きまして、補正予算の内容につきましても細かく検討する暇を持つておりませんでしたので、具体的なことを申上げることはできませんのは甚だ遺憾でありまするが、私の考えの一部を申上げさして頂きたいと思います。今度の補正予算はその結果においては三百六十数億円でありまして、本年度予算七千四百万円の金額に対しましては、極く僅かなパーセンテージしか占めておりませんから、数字的にはそれ程の意味を持たないと一応いうことができると思いますが、併し又他の一面から考えますと、ドツジ・ラインの基礎の上にシヤウプ勧告の要点を織込んだ第一歩がここに現われて来たわけでありまして、若しこの予算がすでに説明されておりますように明年度予算との連続的という考え方で見るべきものであるとしますならば、今申上げましたような見地から吟味する必要があると思うのであります。相当な意味を持たれることができると思うわけでございます。勿論それにつきましては、いろいろ考慮すべき点があると思いますが、私は本日は少くとも二つの点でこの補正予算について考慮すべきところがあるとこう考えておるのであります。その一つはすでに先程も本間さんの御意見の中にもありましたけれども、この補正予算におきましても本年度の当初予算と同様に健全財政の形が示されておるのでありまして、これは我が国のインフレーシヨンを抑えるためには当然の進み方であると思います。財政の改革なくしてインフレーシヨンの阻止ということは絶対的にあり得ないと思うのでありますから、当然行くべき一つの筋道であると思いますけれども、その狙いは今回の場合は私もよく存じませんが、やはりデイス・インフレーシヨンであろうと思います。デイス・インフレーシヨンの何んであるかについてはいろいろ意見はありますけれども、とに角本年度の予算はデイス・インフレーシヨンを狙つておるのだろうと思います。ところが今まで、本年度予算を実施しました結果につきましては、皆さん方の御承知の通りインフレーシヨンの進行は止まりましたけれども、一応止まつたという状態になりましたが、その反面において深刻な金詰り、滯貨の激増、企業の整理、失業の増加というような即ち一連のデフレ的現象が起つておりまして、このデフレ的現象は、或いは一般の人が考えておつたよりも少し進んでおつたのではないかと想像いたします。勿論インフレを抑えます場合には、どんな場合にも或る程度の反動は免れがたいということはいいと思いますけれども、我が国現在の場合におきましては恐らく最初想像したよりも、より進んでおるのではないかとこう思うのであります。それではなぜ我が国の場合において予想以上にデイス・インフレ的現象が起つておるかと申しますと、それについてはいろいろ原因があると思いますが、まあ私の考えておりますところを掻いつまんで申上げますと、一つは我が国の場合におきましては、安定恐慌と整理恐慌の二つの形が合わさつて混合して現われておるというところに予想以上のデフレ的現象の起つておる原因が、理由があると思います。御承知のように、前回大戰後、ヨーロッパの各国がインフレを抑えますためにいろいろな方法を取りましたが、そのうちに大まかに申しまして、二つの形があつたと思います。一つは旧幣貨解禁と当時言われましたもので、戰時戰後を通じて上昇しました物価をだんだん引下げて、戰前のような状態まで戻して金本位に復した国が一つの形であつたのであります。それはイギリス、日本などは皆そうでありましたが、もう一つはすでに物価が戰時戰後を通じまして、非常に騰貴してしまつて、元のところまで下げるということは到底できないから、その上つたままの状態で通貨の安定、金本位の復帰を実行した国でありまして、当時新幣貨解禁と言われたものであります。この旧幣貨解禁と新幣貨解禁の二つの形があつたと思いますが、又今度の戰争後におきましても、各国のインフレ対策は前回大戰後以上にいろいろバラエテイが殖えて参りまして、この通貨は今の面から見ますとやはり同じ二つの形を挙げることができると思います。ところが前回大戰後の経験によりますと、新幣貨解禁を行なつた国では御承知のように安定恐慌が起きました。インフレ進行中に見ましたようなインフレ景気がなくなつて、経済は安定するというその反面において、或る程度の不況の状態を呈したのであります。ところが旧幣貨解禁を行なつた国では物価をだんだん下げて戰前の状態まで戻して行きましたために、非常に財界の整理が行なわれまして、深刻な不景気に見舞われたのであります。いわゆる整理恐慌が起つたのであります。前回大戰後のヨーロツパの経験では、この整理恐慌の起つた国と安定恐慌の起つた国とでは別々であつたのでありますが、我が国現在の場合においてはその両者が重なり合つて現われておると私は考えるのであります。  それは何故かと申しますと、ドツジ・ラインは御承知のように一方において財政の緊縮と健全化を行い、もう一方において三百六十円の單一為替レートを設けまして、この二つの柱で日本の経済を支へながら、いわゆる竹馬経済から地面に足の届いた経済に持つて来ようとしたのであります。一方の支えでありますところの財政の方は、本年度は当初は約七千億円でありましたですが、この予算は昨年度の予算に比べますると、勿論金額においては殖えておりますが、その間における人件費と物件費の上昇を考えて見ますと、若干緊縮した形になつておると思います。前年度と同じ予算をその後の人件費物件費の増加の割合で殖やして行きますと、七千八、九百億円になるところを約七千億円に止めて、今度の補正予算を加えましても七千四百億でありますから、或る程度の緊縮になつております。従つてこの予算の面から見ますと、経済を安定化するべき要素が与えられておると思います。その面からは安定恐慌が当然起つて来ると考えられるのであります。又現に起つておると思います。ところがもう一方の支えでありますところの三百六十円の為替レートを設けましたために、御承知のように従来一ドル三百六十円以上の割合でなければ輸出できなかつた産業は、ここで非常にコストを下げて価格を下げなければならん。それがためにいろいろな処置を講じなければならないという状態に置かれておるわけであります。従つてこの面では物価の価格の低落という面を通じて、始めて安定した状態に到達し得るわけでありますから、その状態はちようど第一次大戰後の旧幣貨解禁をやつた国の整理恐慌と同じ恐慌に襲われておると、こう考えておるのであります。一方に財政の面を見ますと、確かに極く若干の緊縮で而も健全化したという形ですから、その面では安定恐慌をもたらすべき財政であり、或いはいわゆるデイス・インフレを狙つた財政であると言い得ると思いますけれども、その内容におきましては全体的に見まして或る程度の黒字的な要素を持つておるということも考えて見ますと、この面からもただのデイス・インフレーシヨン、或いは安定恐慌をもたらすものよりも、少し程度の強いものであるのではなかろうかと、こう思われるわけであります。そんなわけで、我が国の場合におきましては、整理恐怖と安定恐怖と二つ重なつておりますために、財政の面から見ますと、一応デイス・インフレを狙つたものと考えられるにも拘わらず、それ以上の影響が現われておると、こう考えてもいいのではないかと思います。大体この前の戰争後のときにすでに示されたことでありますけれども、インフレを抑えて経済を安定させましたために、一旦不景気の方へ持つて行きますれば、自然に景気は回復して来るという考え方が従来の伝統的な考え方であります。ところがその伝統的な考え方が前回大戰後において誤つておつたということが相当示されたと思うのであります。前回大戰後旧幣貨解禁をやつた国は伝統的な景気理論に従いましてどの経済でも不景気に持つて行きさえすれば、景気はいい方に向うということでやつたのでありますが、それは世界の経済に自動的に伸び縮みする力がある間はその原理のように動きますけれども、景気が変動いたしますけれども、今日のように経済の変動に自動的なものが非常に少くなつておるような段階におきましては、伝統的な景気理論に従つて、ただ一旦経済界を抑え付ければ、又それがだんだん景気のいい方に向うというような政策は失敗に帰する可能性をもつておると考えてもいいと思うのであります。勿論本年度の当初予算、それから今回の補正予算、或いは来年度の予算が必ずしも伝統的な景気政策の考え方に基いておると断ずるわけには参りませんけれども、又一応形の上においては只今申上げました通り、デイス・インフレーシヨンを狙つたものであると考えられますけれども、やつた結果においては、そこに私が只今申上げましたような事情から複雑な要素があつて、予期以上のデフレ的な現象が起つていると考えられるのでありますから、ただ財政を或る程度緊縮して健全化すればいいというだけの考え方でなく、今仮にデフレ的現象が予期以上に起つているとすれば、更にそのデフレ的現象の進行を抑えて、とにかく最初の目標であるデイス・インフレーシヨンの方向へ、できるだけもつて行くような措置を講ずる必要があると思うのであります。勿論予算そのものには或る程度の枠が与えられておつて、そこにそれを按排する余地が非常に少いとしますならば、その予算の運用の面において、又その予算が金融面の接触において、一層このデフレ的現象の進むのを抑える措置を講ずるようにお考え願うのが妥当ではないかと思うのであります。非常に抽象的に申上げましたが、それが一つの点であります。  それからもう一つの点は、今度の補正予算におきましては、この説明にあります通り、一方において勤労所得税の軽減、若干の間接税の軽減によつて負担を軽くし、一方においては運賃の値上げというようなことで、差引いて生活にはできるだけ関係のない、影響がないように説明されておりますが、又成る程その通りにそういうふうに考えられておると思います。仕組まれてもおると思います。併しながら尚考えてみますると、運賃の値上げの外に価格調整金が逐次減少して行くという点や、又為替レートの設定というような点などから、一般的に或る部分の商品の価上りを来す要素が与えられておるのではないかと思います。一方の負担の軽減の場合は、この補正予算のやり方ですと、若干の勤労所得税の軽減の外は、間接税が若干軽減されるという形になつておりまして、而もその間接税は、生活必需品というものに対する物品税の廃止というようなことでありますから、一般の人に均霑するようにも考えられますけれども、今日の情勢から申しますと、負担の軽減の方は全般的には、一般の国民に等しく及ぶというよりも、少しく限られたものになるのじやないかと思います。然るに一方、物の値上りの可能性の方が負担の軽減よりも一般化する可能性をもつておると思うのであります。勿論具体的に私が数字的に申上げることはできませんけれども、若し仮にそうであつたとしますならば、国民の生活がこの点において或る程度重圧を加えられて来るという虞れもあると思うのであります。従つてそういう面において相当の考慮を拂いませんと、一方において経済界が今日のように非常な苦境に立つておりますから、経済問題を更に社会問題に転嫁する虞れもないでもない。こう考えられるわけであります。そんなわけでありますから、そういう面において、今度の補正予算が一方において税制改正を実現して来る第一歩といたしますれば、十分そういう点を考慮に入れながら、明年度予算と限定して御検討を願いたいというのが私の第二の考えておる点であります。極めて抽象的なことを簡單に申上げて甚だ恐縮でありますが、私の本補正予算に対する一般的な考え方の二点だけを以上申上げた次第であります。

黒川武雄民主自由党

○委員長(黒川武雄君) 何か御質問ございましたら……

小川友三各派に属しない議員

○小川友三君 金原先生に伺いますが、インフレが止まつたというお説を聽きましたのですが、インフレは線状型になつてまだ残つておるという私は観点を持つておりますが、貨物運賃が上るというようなわけで、いろいろ今のお説の通り価格差調整金がなくなりますので、インフレは依然として線状型になつてだんだん続きまして、貨物運賃が上ると、又インフレも上るということで行くと思いますけれども、このインフレは相当長い問続くと思いますけれども、この点について……

金原賢之助慶応義塾大学経済学部長

○公述人(金原賢之助君) インフレが続いておるか、止まつたと見た方がいいか、その点についてはいろいろ説がありますことは、只今仰せの通りでありますが、只今御指摘の通り、一面において価格が騰貴して行く面があり、一方で相当値段が下つておる面があり、凸凹の状態が強くなつておると思いますが、ただこういう凸凹の状態が強くなつておるからインフレが続いておるということも言えないのではないかと思います。先程本間委員に対する御質問の中にもありましたように、通貨は一方で非常に減つております。全体としましては、生産財、消費財で違いますが、消費材の実際価格をとつて見ますと、本年の当初から最近までは、総体的には若干値下りしたような形になつておりまして、一応私はインフレーシヨンも止まつておると考える方がいいのではないかと、こう思つております。

小川友三各派に属しない議員

○小川友三君 インフレは実は、大幅なインフレでなく、私は線状型のインフレに変つてどんどん延びて行つておるという見方を持つておるのでお伺いしておるのですが、大幅なインフレが線状型になつて、それからデイスインフレというものが又横から入つて来て、今度は整理恐怖というものが狭まつて行つて安定恐怖が又加つて四つの線で、今こうした予算も難コースをしているのじやないかと思いますけれども……

金原賢之助慶応義塾大学経済学部長

○公述人(金原賢之助君) お説の点で、インフレ的部分があるというお考えならば、それは同感でございます。全体として見れば続いておるとは私は考えておりません。そうではなくてインフレはすでに止まつておると考えておりますが、今の日本の経済情勢では、或る部分ではインフレ的な部分がございます。それはお説のように、一方に為替レートの設定で輸入品の原料の関係から、品物は当然上つて参りますし、それから国内の価格調整金の撤廃で当然上るべき要素がございますから、インフレ的な部分はございます。それに対して他の部分では非常にデフレ的な、いわゆる安定恐怖的な、或いは整理恐怖的なものがあつて、凸凹になつておりますから、インフレ的部分が続くというお考えならば、私は反対でもありません。御同感でございます。

岩崎正三郎日本社会党

○岩崎正三郎君 單なる緊縮予算だけではデイス・インフレにならん。デイス・インフレを強行できない。要するに予算の組替えをせえというようなお話のように承わるのですが、ところで今の予算で、一体そのためにはどういうふうに組替えたらよかろうか、公共業費がどうであるとか、或いは又価格調整費がどうだということについて、もう少しお話が願えませんか。

金原賢之助慶応義塾大学経済学部長

○公述人(金原賢之助君) 先程申上げましたように、私は今度の予算をただ新聞で見た以外には、急にこれを頂いたわけで、検討する暇もございませんから、具体的に申上げられないのが、非常に残念でございますが、併し私はこれはいろいろの事情があつてできた予算案だと思いますので、これを全部組替えなければいかんと申上げたわけでもございません。何かこれに伴う措置をお考え願いたい。先程本間さんから具体的に金融面の措置のお話がございましたけれども、一つ一つ勿論尤もなことでございまして、非常な金詰りさえ強くさせればインフレはなくなつてしまうという考え方でなく、もうすでに相当の、予期以上のデフレ的な現象が起つているとすれば、或る場合には寧ろ金を出してもいいというくらいの考え方を改策としてとる必要があるのではないか、こういうふうな考えであります。

森下政一日本社会党

○森下政一君 金原先生の第二の考慮すべき点として御指摘になつた点でございますね。国民の負担軽減というのは今度の予算では所得税の軽減、間接税の一部の軽減、これは明らかに負担の軽減である。ところが反対に負担増となると思われるのは鉄道の貨物運賃の値上げであるとか、或いは主食の値上げ、それから価格調整費の節約による物価への跳返り、こういうようなことが考えられる。両方比較されて前者よりは後者の方が普遍的だというふうにおつしやつたように聞いたのです。ところが現在の所得税というものは戰前と違うて納税人員が非常に殖えている。大衆が納めているといつていい。ところがそれが軽減され間接税が軽減されるということになると相当大衆の負担が減る。そこで普遍的だという点でですね、後者の方がより一層普遍的だとおつしやるのは先生の感じだけですか。

金原賢之助慶応義塾大学経済学部長

○公述人(金原賢之助君) 私は数字的に申上げる根拠は別に持つておりませんが、例えば物品税の軽減、或いは織物消費税が廃止されるということになりましても、それがために一般の人が全部均霑するかというと必ずしもそうじやないだろうと思います。寧ろ運賃の値上げや、価格調整費の節約による価格の騰貴があるとしますれば、その面の方が一般的に影響を及ぼすと考えられるのじやないか、こういうだけのことであります。

小川友三各派に属しない議員

○小川友三君 ちよつと簡單に。今の最後にあなたが札はもうちよつと出してもいいだろうという場合もあるとのお話ですが、昭和七八年頃は二十五億の紙幣が出ておりましたが、あのときは一ドル二円五十銭です。そうすると現在は、三千六百億円出て、ちようどその何倍ですか。去年六百億削つたものだから……それから今の盛り上つたところに、百億拂えない、あつちもこつちも拂えないという問題が起きたが、結局日本の経済を運営するには三千六百億の紙幣が一番正しい発行高であるという断定を、この現実に昭和二十四年の金詰りの状態において示したわけであります。でありますから三千六百億の紙幣の発行が一番正しい紙幣の発行であつて、それは芦田・片山内閣が出したのですが、その紙幣の発行量が一番正しいと見ております。又新聞社が紙が三割の値上げになつてこぼしており、米は値上りになるということでインフレは依然としてやまないでしまうのです。そういう状態で、物が不足して来る、金は不足するというようになつてインフレになつてしまうのであります。学者のお考えでは三千六百億の紙幣の発行が昭和十二年の生活程度を維持するだけの現実であるということを御存じであると思いますけれども、その点につきまして御説明願います。

金原賢之助慶応義塾大学経済学部長

○公述人(金原賢之助君) 通貨の量というものは、そのときどきの金額だけの比較では言い得ないのじやないかと思うのですが、昭和七八年のあのまだアメリカと連絡のあつた頃の通貨の量、その他の為替相場と、現在の通貨と為替相場を比較しますと、通貨の量がどのくらい少ないというふうに数字的に出て参りますけれども、これはインフレがひどくなつた場合も同様でありまして、ドイツが前世界大戰後の、インフレが極端になつた場合に、これをその紙幣の価値を金の価値に引延しても、結局同じようにインフレが進行した。というのは通貨の量というものは、その発行したものだけではなくて、流通の速度というものに非常に影響して参りますし、循環の仕方というふうなものがありますから、通貨の量というものは、そのときどきの紙幣の価値をアメリカのドルならドル、金なら金の価値に引延して比較した紙幣の量が正しいということも言いがたいのです。もう一つ、戰前と今日の清算取引の状態、つまり経済活動というものが違つて来ておりますから、その点も考慮して行きませんと、数字だけで三千六百億が適当な量だとはいいがたいと考えます。一体どのくらいの紙幣が出たらいいかということを聞かれても、これは簡單に答えられることではないのです。一年間に各時期によつて、いろいろ変化するものですから固定的な数字は上げがたいように考えます。

黒川武雄民主自由党

○委員長(黒川武雄君) 先程も申上げました通り公述人の方々はお急がしいところ、わざわざおいで願いましたことを重ねてお礼申上げます。  公聽会はこれを以て閉会いたします。    午後二時四十六分散会  出席者は左の通り。    委員長     黒川 武雄君    理事            内村 清次君            高橋  啓君            高橋龍太郎君            田村 文吉君            寺尾  博君            岩間 正男君            岩男 仁藏君    委員            岩崎正三郎君            木下 源吾君            森下 政一君            和田 博雄君            岡田喜久治君            城  義臣君            深水 六郎君            中川 幸平君            西川 昌夫君            西川甚五郎君            平岡 市三君            仲子  隆君            深川タマヱ君            油井賢太郎君            伊達源一郎君            藤野 繁雄君            帆足  計君            小川 友三君   公述人    国鉄労働組合書    記長      星加  要君    朝日生命保險株    式会社取締役  本間 喜一君    東京商工会議所    理事      守谷 正毅君    慶応義塾大学経    済学部長    金原賢之助君

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