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5回国会衆議院1949/05/11

労働委員会 第17号

発言数
311
登壇者
23
会派数
7
開催日
1949/05/11

会議録

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 ただいまより会議を開きます。  前会に引続き労働組合品法案及び労働関係調整法の一部を改正する法律案を議題に供します。質疑を許します。前田種男君。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 私は労働大臣に相当いろいろな箇所から質問を申し上げたいと思います。まず第一に公聽会でも問題になりましたが、労働組合法が保護立法であるかどうかという点について、労働大臣の見解を明らかにしておいてもらいたいと思います。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 御指摘の通りに、労働組合法は保護立法であるという建前で進んでおります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 この前も私はちよつと触れましたが昨年來問題になりました紛争の処理機関の問題について、私がいくらか掘り下げてお尋ねしたいと思いますことは、九原則と本年度予算から参りますところの今後の経済界の動向というものは、今私が申し上げるまでもなく、労資の紛争が、終戰以來かつてない大幅に激化するのじやないかということが予想されるわけです。そうした問題に対するところの対処策としては、法規上から参りまするならば、労働委員会を中心とする、労調法の関係におけるところの調停、あるいは仲裁、あつせんということが、できるようになつておりますが、はたして労働委員会に依存して、こうした重要な、激化するであろうと予想されておりますところのたくさんの紛爭処理が、万全を期せられるかどうか。少くとも私の見解から申し上げますならば、できるだけ紛爭というものは避けて、あるいは起きたものも早期に解決する、あるいは未然に防止するということが賢明な対策であり、また政府もできるだけ努力してそう努めなくてはならぬと考えます。そういう観点から、はたして今日の労働委員会の機構、あるいは予算的措置において、そうしたことの万全が盡されるかどうかという点を考えてみましたときに、中労委にいたしましても、あるいは地労委全体を私は申し上げませんが、全國を見渡して、有力な地労委等につきましては、相当の予算的措置、あるいは人員その他についても万全を盡さなければ、こうした処理がうまく行かぬと思いますが、そうした紛爭処理の早期解決というような問題等について、大臣はどういう見解と、どういう対策をもつて臨まれようとしておられるか。その点を明確にお願いしたいと思います。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 根本的には労働問題の解決は、いろいろな法規に訴えて行くよりは、まず労資双方の協調による紛爭処理の形式で、極力まとめて行くということが正しいと思つております。ただ紛爭処理機関というものに関する規定を、法律の中にこの際盛り込んでおくかどうかという問題になりますと、いろいろな見解が出て來るのでありまして、現段階において、労働省当局として考えておりますのは、紛爭処理は労資双方の協約の中においてまず極力これを実現するようにやつて行く。そして教育その他によつてこの方面の機能を充実して行くという方式をとりたい。そういうふうに考えておるのであります。いずれにせよ、紛爭処理というものが、労働問題の解決のために最も望ましい方式であり、これに極力力を入れて参りたいという考え方を持つておるのであります。  それから労働委員会の問題でありますが、今回の改正案におきましても、労働委員会の、強化という点に対しましては、及ぶ限りの考え方を取入れ、それを実現したつもりであります。ただ予算の関係とか、あるいはその他につきましては、現在の日本の財政全体との関係もありまして、必ずしも十分と言い得るところまでは行き得なかつたかとも思いますけれども、労働委員会の強化、それから独自の活動を促すという点におきましては、極力あらゆる面からこれを実現して参りたいと考えておる次第でありまして、將來にわたりましては、予算の問題そのほか人員、機構の問題につきましても、重点的に個々の面では極力力を入れて参りたい。そう考えております。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 大臣は本案の提案の説明の中にも、その後の委員の質問に対しても、理由の一つとして、今日の労働組合の中で、破壊的な労働組合運動を押えて、健全な建設的な労働組合運動を助成しなければならぬということを言われたように思いますが、一体この法規から照しまして、その趣旨が徹底するかどうか。そういうことができるかどうか。あるいはどうしてそういうことをやろうと労働省は考えておられるか。この点を明らかにしていただきたいと考えます。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 申し上げるまでもなく、労働組合の根本的の任務は、経済的の面においてあるのでありまするし、それから廣い意味において、労働者諸君全体の地位の向上維持ということが根本的の使命であることは、申すまでもないと思います。從いましてきわめて政治的な意味を持つた組合運動とかそういつたものは、本來の労働組合の使命、運動というものからは、はるかに遠い方面のものであるといわなければならないと思います。破壊的の組合運動を排除すると申しましたのは、そういうような労働組合運動本來の面から逸脱して、きわめて明白な政治的な運動――それからまた労働組合自体は名実ともに民主的に組織され、民主的に運営されなければならないことは当然でありまして、労働組合のそういつた民主的な組織の方法、民主的の運営方法が、少数の人たちによつて動かされて行く、全体の組合員の意思が反映しないような組織、方法、運営というものは、どう考えてみても労働組合自体の本來の使命からいいまして正しくない、そういうふうな考えが根本的にあるのでありまして、改正法案におきましては、たとえば組織の面において、あるいは運営の面において、労働組合の労働者諸君の基本的な権力を侵害しないという範囲におきまして、できる限りそういつた精神がここに取入れられるような形でもつて、最終案というものが練り上げられた次第であります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 ただいま主として政治運動をやるのは、労働組合の本質を逸脱しておるというようなお答えがありましたが、私は今日の労働組合運動、あるいは経済問題全体をながめまして、一つとして政治問題と関連しない問題はないと思います。大小あるいは軽重の差こそあれ、少なくとも労働組合のいろいろな行動、運動にいたしましても、政治運動と関連しないものはないと私は考えますので、その点について、どの線が政治運動と経済運動の限界をなすかという点を、もし労働大臣の方において主たる経済運動をやるもの、主たる政治運動をやるもの、あるいは内容的にこういう線から上はいかん、こういう線から下は経済運動だというような限界がございますならば、この際お聞きしておきたいと思います。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 お説のように現在の國家機構、社会機構、経済機構のもとにおきましては、組合運動、たといそれがただいま申しましたように、経済及び一般的の労働者諸君の地位の維持向上というものを、主要な任務にしたにいたしましても、個々の問題については、一般政治問題と全然無関係の形に自体の本來の使命からいいまして正しくない、そういうふうな考えが根本的にあるのでありまして、改正法案におきましては、たとえば組織の面において、あるいは運営の面において、労働組合の労働者諸君の基本的な権力を侵害しないという範囲におきまして、できる限りそういつた精神がここに取入れられるような形でもつて、最後案というものが練り上げられた次第であります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 ただいま主として政治運動等をやるのは、労働組合の本質を逸脱しておるというようなお答えがありましたが、私は今日の労働組合運動、あるいは経済問題全体をながめまして、一つとして政治問題と関連しない問題はないと思います。大小あるいは軽重の差こそあれ、少くとも労働組合のいろいろな行動、運動にいたしましても、政治運動と関連しないものはないと私は考えますので、その点について、どの線が政治運動と経済運動の限界をなすかという点を、もし労働大臣の方において主たる経済運動をやるもの、主たる政治運動をやるもの、あるいは内容的にこういう線から上はいかん、こういう線から下は経済運動だというような限界がございますならば、この際お聞きしておきたいと思います。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 お説のように現在の國家機構、社会機構、経済機構のもとにおきましては、組合運動、たといそれがただいま申しましたように、経済及び一般的の労働者諸君の地位の維持向上というものを主要な任務にしたにいたしましても、個々の問題については、一般政治問題と全然無関係の形において、そういう問題が生起して来ることはなかなかない。この見解においては前田委員と私どもも同様であります。しかしながら組合運動の実体が、主としてと申しますか、ほとんど純政治的な意味のみでもつて動いておるような場合には、明らかにただいま申しましたような政治的な組合運動であると、原則論としては言えるわけであります。では実際には、どういう場合に、というのが御質問の御趣旨であつたように思いますけれども、これは根本原則を一本きめておいて、そしてその場合場合の実情に應じて運営の上でもつて、あるいは労働委員会の認定、それから行政当局の運営の上でもつて、個個に判断して行くということになると思うのでありまして、具体的に原則の線を一本画して、これからこれまでは、というようなことを明確にすることができれば、きわめて明確でいいのでありますが、なかなか困難であると思うのであります。あとの方の御質問の中心的の問題は、実際運営の面に当つてそれぞれ適処することになるだろうと思うのであります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 お忙しい中を総理が御出席願いましたので、私は総理に対する質問を先に済ませまして、さらに労働大臣への質問を続けて行きたいと考えます。まず総理にお伺いしたいことは、総理は幸い外相を兼務されていらつしやいますので、今日講和会議がまだいつ開かれるかわからないという日本の現状でございますが、もうすでに戰爭が済んで四年も過ぎております。私はこの際國際外交と申しますか、あるいは日本國民の國民外交が、國際的に伸ばされなくてはならない絶好の機会だと考えます。いろいろな観点から申しますと、労働委員会で質問する要点にはずれますので、私は今日成長しつつあります日本の労働組合の立場から、世界の労働組合と提携して、日本の親善、民主化、再建のために、どうしても労働組合間においても国際的に提携ができるように、あるいは協力ができるように、進路を開いてもらわなくてはならぬと考えます。そうした観点から日本政府といたしましては、そうした道が開けるように関係方面に強く要請を願いたいと考えます。  さらにもう一つは、國際労働機関に対する日本の労働組合の参加の問題でございます。これは今申し上げましたのと相関連いたしますが、今日外交が復活する前に、むしろ労働組合の間においては、先行されて行かなければならぬ状態になつておるように見えるのでございますので、この点におきまする政府と司令部との関係、あるいは連合各國と日本政府との関係等について、経過あるいは今日の情勢、今後の見通し等について総理から明確な御答弁を得られますならば、日本の労働階級としても非常に仕合せであろうと考えますので、どうぞこの点について見解を明らかにしていただきたいと考えます。

吉田茂民主自由党内閣総理大臣・外務大臣

○吉田國務大臣 お答えをいたします。御趣意はまことにごもつともと思います。しかしながら今司令部とどういう交渉をしておるかというようなことは申し上げにくいけれども、御承知の通り労働会議にはすでにオブザーバーとして招請を受けておるようなわけで、労働会議方面から、日本が国際会議その他に参加を希望するような機運ができ、それがやがて講和会議の促進というようなことになれば非常に満足だと思います。また労働会議としても、すでに日本の委員をオブザーバーとして招請するくらいでありますから、万國國際会議等に日本を加えたいという希望は十分あるものと思います。また世界の労働問題を、日本の側が参加することによつて一層善化する、発展するように、日本側からも持ちかけていただきたいと思います。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 私はこの問題はなかなか簡單に解決すべきものではないと思いますが、そういう好機が到來しておりますので、吉田総理といたしましても、ぜひとも司令部に対しましても、あるいは連合各國に対しましても、強く要請されることを希望しておきます。  さらにそれと関連いたしますが、われわれ國民の外地移民の問題でございます。外地移民という言葉を使うことがいいかどうかは別といたしまして、あるいは本委員会としては、むしろ日本人の出かせぎを許してもらうように、強く司令部に要請して、もらいたいと私は考えます。これは多くの理由を申し上げる必要もないと思いますが、かつてはわが國は侵略國だとして扱われましたが、終戦以来今日四年、しかも新しい憲法が施行されて参りまして満二年を経過し、新憲法は今日不動なものに確立しておるのであります。この世界平和に貢献しようとするところの日本國民の心構えは十分できております。しかし今日残念なことには、国土は半減され、しかも人口は八千万をオーバーするという現状においては、どうしても自給自足は不可能な関係に置かれておるのでございます。どうしても私は連合各国の認識を新たにしてもらうことに努めまして、出かせぎができるように、外地移民が許されるようにしてもらいたい。これはただひとり日本がよくなるというばかりではなくして、あり余つておるところの日本の労働力を、世界経済の興隆に協力せしめるという観点に立つても、絶対に必要なことであると思います。世界各國の中には人口が稀薄で、もつと労働力がほしいという國がたくさんございます。私はそうした所に日本人がどんどん出かせぎして働けるような道が開かれることを、一日千秋の思いで、おそらく全國民が要望しておると考えます。特に今日輸入食糧にたよつておりますところの日本の食糧事情から申しましても、いたずらにこの狭い日本に徒食するに忍びないという人々も多数あると私は思います。こうした点等を考えてみますならば、どうしても今日非常な制限は受けておりますが、吉田総理の強い決意によつてマッカーサー元帥に要望をされ、連合各国に要請をされる。その時期がもうすでに到来しておると私は考えます。しかももしこれが実現されましたならば、今日一番わが國の悩みとしておるところの、國内的には失業問題の解決の緩和にもなり、食糧問題の解決の緩和にもなる。さらに單一為替レートが制定されまして、ようやく貿易が軌道に乗ろうとしておりますところの今日の状態のもとにおいて、われわれがほんとうに外地の出かせぎが許されまして、外國のほんとうの貿易その他の事情等を見ることができますならば、日本の今後の貿易事業の再建の上についても、大きな期待が持てると私は考えます。さらに外地に出かせぎをいたします人々が、日本國内の経済に協力することの偉大なものがあるということは、いまさら申し上げるまでもないのでございます。私はこうした國内の事情、國際的の関係、そして今日わくをはめられておりますが、もうすでにその時期が到來しておるという見解から、この点について強い要請を、非常な熱意をもつて私は総理大臣にお願いしたいと思います。この点につきますところの今日までの経過、あるいは内容、見込み等について、もしこの機会に明らかにしていただける点がございますならば、むしろ絶好のチャンスであると思いますので、ぜひ総理の見解をお聞きしたいと思います。

吉田茂民主自由党内閣総理大臣・外務大臣

○吉田國務大臣 これまた御趣意はわれわれ御同感でございます。しかしながらここに考えなければならぬことは、なるべく相手方が日本の移民によつて脅威を受けないようにということであります。現にオーストラリアその他南洋に未開の土地がたくさんあるのでございますが、これらの入植についても、今なお感情的に脅威を感ずるという痕跡が残つております。日本が移民することによつてその土地が改良せられる。日本が海外に発展することによつて世界の繁栄が増しはしても減退はしない。こういうことを相手方が十分納得するように、日本側からもいたしたいと思います。これは單に理論問題ではなくて、政治問題もあれば、國際情勢もあるのでありまして、どうしても相手方が日本移民を歓迎するようにし向けて行くことが必要であつて、私一人の決意ではどうにもできないことを御了承願います。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 この問題については多くを聞きただしてもいたしかたがないと思いますが、総理一個の決意ではなくて、少くとも日本を代表する政府の代表者として、この点は機会あるごとにぜひともわれわれ日本國民の認識を新たにしてもらうために、あるいはそういう道が開かれるように、ベストを盡して、最善の方法を講じていただきたいと、最後にお願いを申し上げておきます。  次に私は國内問題の一般労働行政の問題について、二、三点まとめてお尋ねしたいと思います。今日日本の國内における労働行政の問題というものは、政治全体から見ても非常に重要な問題だと私は考えます。特に経済の安定、あるいは経済の復興に対するところの労働階級の協力なくして、日本の再建があり得ないことは、いまさら私が申し上げるまでもないわけであります。そうした重要な労働行政に対し、あるいは労働階級の協力を求める施策について、政府が一体いかなる大方針を立てておられるかという点について、総理大臣の見解をこの際承つておきたいと考えます。

吉田茂民主自由党内閣総理大臣・外務大臣

○吉田國務大臣 御趣意はごもつともであつて、われわれも始終日本の資源としては労働力があるのみであるのだ、この労働力あるいは労働階級が生産意欲に燃えて、日本の復興に協力するということは、政府といたしましてもあらゆる機会において強調しておるわけでもあり、またこのたびの労働法規の改正も、ここに目標を置いて改正を企てておる次第でございます。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 今の御答弁の中に、そのために今度の労働法規の改正をするに至つたという御答弁でございますが、私は、もしそのために労働法規を改正するに至つたということでございますならば、見解を異にするものであります。むしろ今日労働階級全体は、今日のような労働法規の改正は、災いこそ起せ、決してよいものではないと見ております。識者もまたそう見ておるのであります。それにもかかわらず、今日改正案を提案されておるという現状でございます。ほんとうに労働階級の協力を得るために、労働法規を改正したということでありますならば、逆だと私は考えますが、総理は依然として、眞に労働階級の協力を得るために、労働法規の改正をされたと深く信じておられるかどうか、もう一度聞きたいと思います。

吉田茂民主自由党内閣総理大臣・外務大臣

○吉田國務大臣 そう、確信いたしております。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 労働法規の問題について、確信をしておられるようでありますが、そうした箇條にわたつての質疑は、あとで所管の大臣に十分私はお尋ねしたいと考えます。  次に私は、政府が今日の労資双方に対する見方を、どういうふうに見ておられるかということを、この際明らかにしていただきたいと考えます。一つは過去三箇年におけるところの資本家陣営、あるいは労働組合の実績に対する政府の見解、あるいは政府自身の労資双方に対する対策に対しても、幣原内閣、片山内閣、芦田内閣、吉田内閣と、要するに終戦以來の各政府のとつて來ました労働行政等についても、はなはだ遺憾の点があつたことは認めます。しかし將來労資双方に対してはどうあるべきかということについて、むしろこの際明かにしておく必要があるのではないかと考えます。あるいは一部には、今度の労働法規の改正は、労働組合の行き過ぎであつたために、改正をしなければならぬついうことを強く言われておる節もありますが、私はこの点についても、労働組合全体に、全然行き過ぎがなかつたということを言うものではありません。私は三年間の労働組合運動の幼稚な擁籃期におけるところの行き方につきましては、いろいろの問題があつたことを認めます。しかしこれは労働組合が揺籃期であつたのと、それから終戰以來における日本の回復していないところの情勢のもとにおいては、やむを得なかつたのではないかと考えます。むしろ終戰以來の資本家陣営が、あまりにもふしだらで、だらしがなかつたということが、一つには組合運動を激化さした原因になつておるということを、私は率直に申し上げたいと思います。終戰以来の資本家陣営のやり方というものは、一にも二にも終戦後の軍需物資を手に入れることに狂奔し、やみ行為に狂奔し、政府の金を引出し、補給金をもらうことに汲々としておつて、ほんとうに自力で自分の経営をやろうという気魄を持つて臨んだところの実業家が、一体幾人おつたかということを考えて見まするならば、そういう点についてほんとうに資本家陣営の心構えがなかつたというようなことが、今日九原則というようなものを押しつけられて、苦しい状態に置かれざるを得ないことになつたのじやないかと考えますが、この点に対するところの総理の見解をお伺いしたい。  さらに総理がお急ぎになるそうでございますから、私は次の質問をあわせて申し上げますが、大原則と本年度予算から來ますところの企業整理、あるいは首切りで失業者が続出するというごとの対策については、どうしてももつと失業対策が根本的になされなくてはならぬと思います。過日政府から提案されました緊急失業対策、あるいは失業保險法の一部改正等につきましても、政府といろいろ論議いたしましたが、結局今日の失業問題を解決するためには、あまりにも貧弱な失業対策の費用で、あれではいかんともすることができ得ないというのが、今日の状態でございます。首を切られて行く多くの労働者大衆に対して、もつと安んじて日本の再建のために犠牲になり得るところの対策が、政府においてなされなくてはならぬと思いますが、その意味において勇氣を振つて、失業対策のためには根本的な政府の施策を、もつと積極的に出していただきたいと私は考えます。  その次には国民生活確保の問題でございますが、これまた日本が赤字経済のもとにございます現状においては、なかなか簡單に行くものではありません。食わしてくれるならば仕事をするという意見もございますが、私はほんとうに八千万國民が、満足に食えるような日本の経済状態でないことをよく承知しております。しかしそうした中にあつても、一部にはぜいたく三昧をしている。一部にはまじめに働きながら食えないという、悲惨な状態が今日あることを考えてみましたときに、どうしてもまじめに働く勤労大衆に対しては、政府の施策として親心でもつて、十分な対策がなされなくてはならぬと考えます。これは物質的に惠まれなくとも、政府の施策がほんとうに努力をしておるという結果が現われますならば、勤労大衆は欣然として今日の耐乏を忍んで、日本再建に協力すると私は考えますが、この点に対する政府の見解を明らかにしていただきたいと思います。

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 前田君、今参議院の本会議で総理大臣を待つて開会ができないそうでありますが、答弁をあとに讓つて、参議院の方に先に行つていただくことにいたしたいと思いますが……。

吉田茂民主自由党内閣総理大臣・外務大臣

○吉田國務大臣 ちよつと今の御質問だけ答弁いたします。ただいまのお話でありますが、組合が惡い、資本家が惡いといつて、互いにののしり合う――というわけではありますまいが、攻撃し合うよりも、政府の希望するところは、どうか労資協調して、この日本の復興に協力するという態度を整えてもらいたい。これが私の眞の希望であります。それからまた失業対策については、費用がはなはだ少い。これはその通りであります。しかしながら現在のところは、均衡予算の関係からいつてみても、できるだけの金額を出したつもりでありますが、しかしながら今後において、常に申す通りに臨時議会等において補正して、そうして必要な経費を生み出すことを政府は考えております。一應答弁をいたします。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 労働大臣に対する質問を続行いたします。本法の第一條の問題につきましては、いろいろ各委員からも議論がございましたし、公聽会でも眞劍な発言があつたことは御承知の通りでございますが、今日現行法にありますところの経済の興隆に寄與するという條項は、むしろ削除するよりも、入れておいた方がいいということは、民自党の各委員の中にもそうした意見が十分あるわけです。これをなぜ創つてしまつたか。少くともこの條項は挿入すべきがほんとうではないかと私は考えますが、もし本委員会がこの條項は挿入したいということになりますならば、労働大臣としてどういう見解を持たれるか、この点お聞きしたいと思います。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 経済の興隆云々という字句を削りました意味は、これはもうすでに御説明申し上げたかもしれませんけれども、あれに反対だというよう意味が毛頭われわれにはあつたのではないのでありまして、ああいうふうなわかりきつておることは、なるべくこういつた法律の中には書かない方が、法文が簡素化されていいのじやないか、こういう考えでもつて、あれを削つたことにほかならないのであります。根本的な考え方といたしまして、いかなる場合でも、特に今日のような條件のもとにおける日本の実情におきまして、日本経済の再建に、労働生産性の維持昂揚というものは絶対無二の重要な要素である。從つて健全なる労働組合、あるいは労働者諸君の活発な活動というものが、経済の興隆の中心となるべきものであるという考え方に、毛頭異論はないのでありまして、そういう意味で労働組合、労働者諸君の経済興隆に対する重要性という問題については、考え方が同じであります。御質問の趣旨は、それをさらに加えるという修正の方針に対してどう考えるか、こういう御質問であつたと思います。それは政府が修正するのでなくして、國会側が修正することは、國会の立法権の問題でありまして、私どもといたしましては、形式的にも何ら申し上げるところはないのであります。趣旨は今申しましたように、反対であつて創つたのではないのでありますから、御質問の点は、國会の立法権の方におまかせいたしたいと思います。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 今経済の興隆に寄與するということは、わかりきつた條項であるから、入れなくともその趣旨を決してうとんじたものではないという答弁でございましたが、もしわかりきつたことであるという條項から行きますれば、改正案の第一條のごときは、これこそわかりきつたことであるわけです。私はわかりきつたことだから、もううたわなくともいいというその答弁は、どうも了解に苦しむのでございます。根本的に議論を申し上げますならば、私は労働組合法の第一條というものは、保護立法の建前から行きましても、基本的な労働組合のあり方というもの、あるいは理想目的を明確にすべきだと考えますので、むしろ改正案よりも、現行法がまさつていると考えます。労働組合運動は、ただ單に労働條件の維持、改善をやる経済團体という狭い範囲でなくして、労働組合が国家、社会に貢献するところの職責というものは、相当廣いものがあろうと私は考えます。おのおの國民を人格的に育て上げる、また世界の労働者に負けないところの、技術的にも、人格的にも、りつぱな労働者を育て上げるという大きな役割を労働組合は果さなくてはならぬと考えます。そういう意味から行きまして、私は社会的にも、経済的にも、あるいは文化的にも、労働組合の役割というものはかくあるべしということを明確にうたうべきが、本法の第一條であろうと考えますが、この点についてもう一度大臣の見解を承つておきたいと考えます。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 いらないものだから削つたというならば、第一條の方はどうかという御質問でありますが、一條の方は憲法に定められておることを、そのまま、労働者の基本的の立場と合せまして書いたのでありまして、これはやはり書いておく方がいいという考えのもとに、書いたのであります。それから経済の興隆云々という言葉を省いたということに対しましては、重ねてお答えいたしますけれども、修正という問題が起きましたときは、われわれとしては別にそれに反対という意向は、今も申しましたような推移でありますから、持つておりません。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 第一條の二項に関しましては、法務総裁が見えましたときに、暴力の行使の問題について、私は新しい観点から質問したいと思いますので、留保します。  第二條関係につきまして労働大臣にお尋ねしたい問題は、專從者のことがいろいろ問題になつておりますが、私は專從者の問題を考える前に、一体賃金制度というものはどうあるべきかという、根本的な労働省の見解を明らかにしてもらいたいと考えます。今日生活給か、能率給かという問題も、いろいろ言われております。また日本の賃金制度は非常に複雑多岐にわたつておりまして、勘定袋をもらいますならば、十項目くらい項目をわけて、そして賃金が支拂われておるというようなところも、少くないわけであります。私はこうした点等を考えてみましたときに、この賃金制度が一体どうあるべきかという点について、労働大臣の根本的な見解を承つておきたいと考えます。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 賃金制度の問題につきましては、根本的な賃金制度の理論のほかに、現実の問題といたしましては、今日本が與えられた九原則の問題、あるいは従来補給金でもつて重要産業のある部分は賃金が維持されて來た。そういう問題が、四月以降切られたというふうな現実の問題ともにらみ合せまして、一つは根本的な理論的な問題、一つはきわめて現実的な、現段階的な措置の問題というふうに考えなければならないと思つております。いずれにせよ、今後最も重大な問題の一つとなつて来るということは、私どもも考えております。大体といたしまして生活賃金、あるいは理論的の生活賃金というふうな考え方は、理論としてはともかく、現実の問題として、そういうところまでなかなか行きえない日本の現段階であると考えておりますので、依然として実質賃金というものの維持、積極的には、さらにその向上をも含んででありますけれども、これを当面賃金政策の中心として行くべきである。そういうふうに考えておる次第であります。なお根本的な賃金の問題につきましても――基準法その他の関係の賃金の問題につきましても、政府といたしましては、この際周囲の事情の根本的の轉換をにらみ合せまして、積極的に新しい検討の方面に進みたいと考えております。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 今の日本の賃金制度の中にはいろいろございますが、本給が安いために、あるいは交通費を事業主が全額負担する、あるいは税金を負担する、あるいは健康保險の掛金を負担する、その他いろいろな項目をまとめまして、それが総括的な今日の賃金になつておるというようなところが、相当ございます。さらに職工を募集するにあたりましても、事業主みずからが交通費全額負担だとか、あるいは保險金は会社持ちだとかいうようなことをいつて、職工の募集をやつておるということすらあるわけです。私はでき得るだけこうした複雑な賃金制度を一本にまとめて、俸給として一本にしたらいいと思う。何も交通費を会社が負担しなくても、みずからが定期を買うて通勤したらよい。それだけの賃金がもらえますならば、それでよい。税金なり保險金というものは、当然それぞれの法の命ずるところによつて、負担をしてやつて行くということが正しい行き方であつて、それができ得るような賃金制度にしなければならぬ。あるいは計算上の面から行きましても、わずかな工場でも何人、あるいはちよつと大きいところは、何十人という賃金の計算の係の者がおつて、計算をしなければわからぬような、複雑な賃金制度にすることは、今日の國際的関係からいつても、あるいは今日の賃金制度の理想からいつても、当を得たものではないと私は考えます。こうした問題等につきましては、どうしても賃金は一本にして、その線に沿うように簡素化するということが、必要であろうと私は考えます。そうした点に対する見解と、あわせてこの專從者の問題について私は申し上げたいのでございますが、この法規で行きますならば、嚴重に專從者は認めないということに改正案はなつております。この專從者があまりに多くなることは、その企業自体から参りますれば、お互いに働いて、そうした人々の給料を拂つておるということになるわけであります。私はこれもまた先ほど言つた論法から行きまして、労働組合が高い組合費をとり得るような賃金制度になりますならば、何も事業主から給料をもらわなくても、組合から給料を拂つて、專從者を置くことができるわけです。そうできるような高い賃金制度にしてもらうことが、妥当であると私は考えます。しかし実際問題として、専従者が一人もないというような状態で、はたしてその企業がうまく行くか、どうかということを現実に考えてみましたときに、むしろある程度の專從者があることが、実際に労資の関係におけるところのいろいろな交渉、折衝等が円滑に行くという実例を、私は戦前の労働組合においてもこれを認めておるのであります。それはなぜかと申しますならば、ここに麻生さんもいらつしやつたのでありますが、組合長が坑内奥深く入つておるというような状態のもとにおいて、交渉するといつても、なかなかうまく行くものではありません。それから流れ作業をやつておる組合の幹部が、手をはずして交渉をするということになると、工場の流れ作業というものはとまつてしまうわけです。私はある一定の者は、むしろそうした流れ作業や工程の関係から、わく外に置いて、そしてある程度の仕事はしつつ、組合と会社側との折衝が円滑に行くという方法を認めてやる方が、実際の運営の上からいつても、事業内部の労資の関係からいつても、うまく行くという実例をたくさん持つております。一律にまかりならぬというような改正案を押しつけてしまつた結果、一体どうなるかということを考えてみましたときに、私はここに相当の猶予期間を置く、あるいはそれぞれの企業において便法を設けて、ここがうまく行くような、とりはからいができるような方法を、労働省は考えてやる必要があろうと思いますが、大臣の見解を承つておきたいと思います。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 最初の御質問は、賃金の形態は、なるべく現在よりは複雑でない、一目瞭然とわかるような單純なものにした方がよいではないかという御意見でありましたが、根本的の考え方、動向といたしましては、それはその通りだと思います。ただ保護に関する方面の形式というようなものを、一挙にその方式にあてはめて、切つてとつてしまうというふうなことは、まだその段階ではないし、必ずしも労働者諸君の利益にそれが結果するとも思われないのでありまして、そこにはいくつかの段階を置いて、そして措置して行かなければならないというふうに考えております。根本的の考え方といたしまして、賃金の形態はなるべく現在よりは簡素な、わかりやすいものにするという考え方には賛成でありまして、將來そういう方面の検討にも、また実現にも努力いたしたいと思います。  それから專從者の問題であります。前田さんたちのような、実際の面をよく知つておられる方々の経験から徴して、御指摘になりましたような場合もないではないと思いますけれども、そうであるからといつて、組合の專從者が経営者側からそういつた経費の補助を受けてよいか、それとも受けるべきでないかという根本的な考え方を、この段階においてくつがえすことは、妥当ではないと思うのでありまして、組合の事務自体に專從する人たちは、今後もあつていいのでありますが、それは組合自体の創意とくふうとにおいて、それぞれ新しい段階に應じ得るような形に、くふうしていただきいと思うのであります。專從するところの組合の人たちが、経営者側から経費をとつては、いわゆる御用組合になるおそれがあるからいけないという根本の原則だけは、この際立てておくのが妥当ではないかと思つております。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 厚生大臣がお見えになつておりますから、私は厚生大臣に二、三の質問を申し上げて御答弁を願いたいと考えます。  一つは労働者の保健衞生の問題でございます。これは工場衞生ということになりますと、あるいは労働大臣の所管になるかわかりませんが、私は廣い意味におきますところの國民の保健衞生という立場から、特に労働者の保健衞生――御承知のように今日でも紡績工場におけるところの肺結核がその跡を断たないという現状、特に敗戰後の今日の事業場というものは、いろいろな制約を受けております関係もございますが、非常に保健衞生という面については欠けておるわけでありまして、そうしたことのために、今日労働階級が非常に病に冒され困つておるという現状から、どうしても保健衛生の問題は、もつと重要に、大々的に取上げられなければならぬと私は考えますので、この点に対して厚生省としてどういう見解、あるいはどういう施策を持つておられるか。お聞きしたいと考えます。

林讓治民主自由党内閣総理大臣臨時代理・厚生大臣

○林國務大臣 お答えいたします。ただいま前田委員のおつしやいました通りに、大体ただいまのところは、労働者に対しまする保健衞生の問題は、もちろん労働省の管轄でありまして、ただ私どもの方におきましては、國民衞生の点からかんがみて、緊密なる連絡をとりまして、遺憾なきを期したいと考えておるわけであります。なお今厚生省の方でどういうふうにいたしておるかと申しますると、結核の対策の上におきましては、まず第一に病氣になつた者については、療養ということを考えまして、現在では公私合せますと、結核の療養をする病床が、約六万二千くらいございます。これは先進國などの研究をいたしました結果によりまして、まずわが日本におきましては、八万病床くらいほしいと思いまして、その予定で進んでおります。幸い今日國家病床として、昭和二十四年度には、國立療養所と國立病院とに、完全とは言われませんけれども、まず一万三千床だけ増加することの予算がとれましたのでうこれを適当にあんばいして参りたいと考えておるわけであります。しかしながらこれはなつた者の問題でありまするから、いまだならざる者に対しましては、今後大いに患者の療養あるいは隔離などにつきましても、十分宣傳をいたしまして、結核予防に対する思想を十分普及するように努めることが、大事ではなかろうかと考えておるわけであります。なおそのほかにBCGによる結核免疫の普及があります。それは本年の七月から予防接種法の施行によりまして、青少年を中心に指導的に行つて参つておりますが、厚生省ではこれを逐次拡充いたしまして、生れたばかりの者から三十歳くらいに至るまでの約三千万人くらいの接種を事する予定でおるわけであります。なお施設の問題などにつきましては、医者だとか、その関係者その他國民の御協力によりまして、逐次病人の数を増さないように、どこまでも努力いたしてみたいと考えておるわけであります。  それから最近新聞に出ております通り、今般連合軍の非常な好意によりまして、アメリカからストレプトマイシンという藥が、約二百キログラム参つたのであります。それを各病院に、あるいは府廳等に分配いたしまして、その患者の全快をはかるようにいたしたい。こういうことを今厚生省で行つておるわけであります。ですから工場における設備その他の問題につきましては、労働省あたりともよく相談をいたしまして、遺憾なきを期して行きたいと考えておるわけであります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 さらに厚生大臣にお伺いしたいことは、今日いろいろ問題になつておりますところの産兒制限の問題でございますが、いわゆる貧乏人の子だくさんで、今日のような経済情勢のもとにおいては、勤労大衆が非常に生活に脅かされておる。そして子供はだんだんふえるばかりだという実際の実情でございます。この点につきましては、実際弊害をいかにして避けてやるか、あるいは根本的には産兒制限がよいか悪いかという議論もありましようが、政府としてどういう方法を持つておられるか。あるいは産兒制限をやるということになりますならば、國民、特に子だくさんで困つている勤労大衆に対して、どういう普及の仕方をするかという点について、この際お聞きしたいと考えます。  ついでに私はもう一つ質問してお答えを願いたいと思いますことは、労務者住宅の問題でございます。これはあるいは建設省の所管かとも思いますが、厚生大臣は副総理でもございますし、特に私がお尋ねしたいと思いますことは、厚生年金は今日大蔵省が預かつておるわけです。五十億、あるいは六十億、あるいはそれ以上あるかもわかりませんが、こうした労働階級を対象にして掛金をとりましたところの年金というものは、ただ單に大蔵省の金庫に入れておく、あるいは大蔵省がその責任において使うということでなくして、労働階級の特殊の施設等に融資をして、特別に使う道を講じてやることが非常によいのではないかと私は考えます。これは失業保險の金にしてもそうでありますが、私はこの意味において、非常に労働階級が困つておりますところの住宅問題、特に労務者住宅という観点から、ある程度の融資を政府の責任において行つて、労働者階級の住宅の緩和をはかるということに努力すべきであろうと考えます。これはなかなかできないというお答えがあるかもしれませんが、政府に熱意をもつて何とかしようという方法を檢討してもらいますならば、その道が開けて行くと思いますので、あわせてこの点に対する御答弁を願つて、厚生大臣に対する私の質問を終ります。

林讓治民主自由党内閣総理大臣臨時代理・厚生大臣

○林國務大臣 ただいまの産兒制限の問題でありますが、昨今こういうような問題が非常ににぎにぎしくなつて参つておりまして、私どももこれをいかにして解決するかということにつきましては、相当に研究もいたして参つたのであります。敗戰後の今日におきましては、他国に移住をするということはもちろんなし得ませんでしようし、從つて受胎調節ということを一應考えて見なければならぬのではなかろうか。人口の問題につきましては、先般も内閣において人口問題審議会などをつくつて、今後の非常に大きな問題といたしまして、これが考究すべきものとなつておりますが、しかし今のところでは統計などをとつてみたところによりますと、國民の約二割余りというものは、受胎調節を実行いたしておるということが現われております。また最近死産が非常に増加をいたしておりまして、その死産が二割六分くらいになつておるような統計が現われておるのでありまして、まことに遺憾に思われるわけであります。しかしながら政府がどういう方法によつて受胎調節をはかるかということになりますと、なかなかむずかしい問題でありまして、その大きな問題の取扱いとして、今後人口問題の審議会に御考究を願つて、その結論を得るように努めて参りたいと考えております。なお今日、ただいま申しましたような死産とかいうものがたくさんありますが、仰せのことく生活の脅威によりまして、妊娠をいたすことを好まない者があります場合におきましては、あるいはそれに対しましては、医学上有効で適切な一つの実行方法と申しましようか、あるいは保健上害のない藥品などを用いるようにということがいかがであろうかと考えまして、先般来それらの藥品を厚生省の方で確実なものといたしましたものを若干発表いたして、使用していただくようになつておりますが、なお昨今保健所を各地方に設けておりますから、幸いにしてそういうような所へ御相談にでもなつていただいて、いかなるものがいいかということを御研究になつていただくということも、一つの方法であろうかと内閣の方では考えておるわけであります。  それからただいまのお説の労務者の住宅の問題につきましては、仰せの通りであります。その点につきましては多額の積立年金がありまして、今私どもの方で取調べて参りましたところが、厚生年金積立金の剰余金と合せまして、二十四年四月三日現在においては、百八億余円という巨額なものになつております。それで私ども労働者の福祉厚生のために、これをぜひ使わしてもらいたいと考えておりますが、なお現在では御承知の通り預金部の資金になつておりますので、この運用については非常にきゆうくつな実情になつております。しかしながら仰せの通りに、厚生省当局といたしましては、これを大蔵省にできるだけ折衝いたしまして、こういう方面にこそ多く使用していただくように、今後使い得られるような方法に向つて、私ども進んで行きたいと考えております。

石野久男労働者農民党

○石野委員 厚生大臣にお尋ねいたしますが、結核病者に対しましての、特に工場労働者に対しましてのいろいろな考慮を十分しなければならない段階に今入つておることは、先に前田委員からも言われた通りでありますが、アメリカからストレプトマイシンが参りまして、そういうことについての当局としているくな御配慮にあずかつておることは、非常にけつこうなことだと思います。そこで去る三月ごろだと思いますが、新聞紙上で、岡山縣の玉野市の方で池上という医師の発明した注射液が、非常に効果があるということを見たことがございます。私もたまたま岡山の方へ参りましたときに、実はその医師を訪ねまして、その実情をお聞きしたのであります。実際その藥品が非常に効果があるかどうかについては、私確たる調査は持つていないのでありますが、本人の御意見によりますると、相当効果があつて、またその実績もあがつておるように聞いております。それからまた現在、それについての結核菌の培養なども盛んにやつておるということも聞いておるのであります。当局としましては、こういう問題についてはどのような関心をお持ちになつておるか、またせつかくわれわれの國の中でそういうりつぱなものができて、これは世界的にも実にすぐれた発明であろうかと思うのでありますが、こういう問題の取扱い方等について、当局としては特別な御配慮をする御着意がありますかどうか、また現にどのようにこの問題を取扱つておられるかということについて、お尋ねいたしたいと思います。

林讓治民主自由党内閣総理大臣臨時代理・厚生大臣

○林國務大臣 ただいまの藥の問題につきましては、私まだ詳細に存じておりません。從つて予防課長が來ておりますから、御答弁いたさせます。

小川朝吉厚生事務官

○小川説明員 ただいまのお尋ねは、國内でいろいろ発見される結核特効藥の取扱いについてのお話でございますが、私どももまことに同感でございまして、できるだけ國内でりつばな藥が生産され、それが十分利用されることを熱望いたしております。從いまして今までわれわれの耳に入りましたものについては、十分鄭重に扱つて研究いたして参つておるのでむります。ただ結核の特効藥につきましては從來多々出ておりますが、いまだかつて眞の特効藥に遭遇いたしておらないのであります。從いましてそういうものが出て参りましたときにも、簡單にこれを承認するわけには参りませんし、研究にも結核の特殊性から、相当時日を要するので、愼重に取扱うということだけは、ひとつ御了承置き願いたいと存じますが、私自身まだ岡山縣のそのものについて具体的なことを存じ上げておりませんので、さつそく調査いたしまして、でき得れば御趣旨に沿うようにいたしたいと考えております。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 さらに労働大臣にお尋ねしますが、この前も私は尋ねたと思いますが、今日労働保護立法の違反行為が相当行われております。基準法の問題にいたしましても、あるいは失業保險、その他労災保險等においても、相当あるのじやないかと考えます。今のような経済事状態のもとになりますと、基準法は守れぬじやないかというような者すら、事業家の中には出て來ておるのでございますが、こういう問題に対して、労働省として今後どういう措置、あるいはどういう指導をやられるか、この点をもう一度明らかにしていただきたいと考えます。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 各般の法規にわたつての違反の問題はともかくとして、さしあたつて基準法のことを中心にお聞きになつたようでありますが、基準法につきましては、すでに一、二度御質問もあつたように思います。根本的の考え方といたしましては、基準法はあくまでも労働者諸君の労働條件の必要な基準を示したものであつて、いかに條件が困難になつて参りましようとも、極力その線に沿つて労働者諸君の立場を守るというのが本質でありまして、その方針に今かわつて來たことはありません。それからそのほかの労働法規関係の違反というような問題も、御指摘のようにこういう困難な状態になつて参りますと、從來よりも複雑な形でもつて、切実な形でもつて、各方面に困難な事実が出て來ることも、一應考えなければならない段階か事とも思いますけれども、労働行政の本質といたしましては、あくまでも本來の立場はわかつておるのでありまするから、その線に沿つて違反のないように、労働者諸君の立場を守るという線において進むのが正しい。またそういうふうに進むつもりでおります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 委員長にお願いしますが、昨日お見えになつた法務廳の高橋局長でけつこうですから來てもらうようにお願いします。労働省と両方の見解を明らかにしたいと思いますので、法務総裁がお忙しいようであれば、局長でけつこうでありますから、お願いいたします。

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 さようとりはからいます。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 次に質問いたしますのは、これは労政局長に答弁願つた方がいいと思いますが、第四條の警察吏員の問題でございます。私には十分國、家公務員法の内容を見ていない関係かおかりませんが、地方警察官はこの條項ではつきりしますが、國警関係の警察官はどうなるか。國家公務員法で、私の知つておる限りにおいては、組合を結成することは、公務員としても何らさしつかえないことになつております。現行法から行きますと、警察官が全部できないという條項はありますが、特にこの改正案のように地方公共團体の警察官吏ということになつておりますと、國警関係は除外されることになると思います。当然公務員法によつては縛られると思いますが、特に警察官吏には公務員法によつて團結権がないという條項がちよつと見当りません。この点明確にしていただきたい。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 國家警察の警察官の組合結成は、御承知と思いますが、公務員法の九十八條の第四項で、禁止されております。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 それから五條の会計の監査の問題について、職業的に資格がある会計監査人の証明書が必要だという問題でございますが、実際問題として、このねらいは会計の内容を公表して明確にし、しかもその使途をみだりに労働組合運動の本来の姿から逸脱しないように、明らかにすることにあるのだと私は考えます。事業家の方におきこましては、それぞれ商法なり、いろいろな法規によつて、みずからやれるようになつておるにもかかわらず、労働組合だけが、労働組合以外のそうした職業的な監査人の証明書が必要だということは、今日全國的にできております労働組合の現状において、いなかに行きますならば、縣廳のあるような町に出て行かなければ、そういう計理士はいない。そのために相当莫大な費用を組合が負担させられるのでございます。それがはたしてこのねらいであるかどうか。もつと労働組合に対して親切な、公正な立場から行きますならば、この條項は、公正な会計報告が公にできるというようなことにすれば足れりと思いますが、この点に関する見解を、もう一度明らかに願いたいと思います。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたします。われわれ当初には、組合の基盤は何と申しましても財政でありますから、財政並びに会計について、組合員の信頼があるということが、組合を強くする重大な要件だと考えたのであります。從つて外部の公正な会計監査を受けるというふうに、いたしたいという考え方で進んでおつたのでありますが、公聽会において組合側でも、極東十六原則による規定にするならば、すべきであるということになりましたので、これはごもつともと考えて、これを職業的な会計監査を必要とする、こういうふうに直したのであります。ところが御指摘のように改正法において、ああいうふうな表現になると、いわゆる計理士というものを使わなければならないことになるのであつて、それ以外のものをもつてこれに充てることは、現在の状況下においてはむずかしいのであります。しかしただいま御意見にもありましたように、現在は全國に計理士が大体二万四、五千人おりますけれども、地方においては、やはり縣廳所在地等にしかいない所もあろうと思います。労働省としては、組合のなすべきことは、してもらうように要求はいたしますが、しかし組合がそれがために、非常に苦しむようなことがあつてはならないと考えておるのでありまして、この点はわれわれといたしまして、將來御意見のようにするために、あらゆる考慮を拂い、努力をいたしたいと考えております。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 次に十九條の労働委員の選任の問題、きのうも同僚議員から質問がありましたが、特に労資の委員の選任は、推薦をした者を大臣なり地方長官が委嘱することになつておりますが、この法規全体から参りますと、労働組合の行う行為は無記名投票でやらなければならぬということになつており、必要でないような規約を載せねばならぬことが相当法律として出ておるわけであります。そうした法律を設けながら、この労働組合法で一番重要な問題である労働委員会の権限、あるいは労働委員会のもとをなすところの労働委員の選任について、推薦した者を委嘱するという行き方は、前段の規約と比較して同一でないわけであります。ぜひとも労資双方の立場から――資本家團体といえども、これは日経連のようなものに推薦させるよりも、それぞれの團体がたくさんありますし、一昨日の資本家團体の公述人の中には、逆な意見をいろいろ言つておられましたが、多岐にわたつておる労働問題を処理する上において、各方面の人がやはり出なければならないと考えますので、一定の選挙方法を設けて、いわゆる公選さして、それを大臣が委嘱するという形をとる方がいい、この法律の体裁からいつても、そうすべきだと私は強く考えますが、もう一度この点についての御答弁を願つておきたいと思います。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたします。昨日土橋委員からもその点の強い御指摘がありまして、お答え申し上げておいたのでありますが、ただいまのように、労働委員の選任を労資とも選挙制にしたらいいじやないかという御意見なり御希望があることは、われわれも十分認めております。これについてはいろいろ議論の余地はありますが、われわれの本法案を立案した考え方といたしましては、現行法のやり方をそのままとるという建前であります。この理由は、労働委員会は特別の行政機関であります。從つてこの行政機関の責任は、労働大臣あるいは知事が、國会あるいは縣議会に対して、とることになつております。しかしながら労資の代表の選任については、やはり労資の意見を十分しんしやくいたしまして、最も公正妥当なる委員の選任をしなければならない義務は当然あると考えております。それで労資の推薦に基いて、その推薦された方々のうちから、労働大臣あるいは知事の責任において、最も適切な、妥当な、公正な方を選任いたすのでありますから、目下のわれわれが考えておる制度におきましては、その際にそれらの同意を得て、推薦された方の推薦の順位であるとか、あるいは多数、少数に制約されることなく、責任をもつて最も妥当な状態においてこれを選任するのが、現下の状況においては適当であると考えまして、法案を立案いたしておる次第でごぎにいます。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 今の賀來さんの説明を聞いておりますと、都合のいいところはそれぞれ言い訳をして、こういう形をとつておるというように聞こえるのです。労働組合の内部のいろいろなことについては、こういうことは法律でも必要ないし、あるいは施行令でも必要がないという條項すら、法規にして盛り上げて、無記名投票をしなければいかぬとか、こうしなければいかぬとか、こまかくあげながら、かんじんなこの問題になつて來ますと、政府の都合のいいような條文を盛られておるということにしか、ならぬわけであります。そこに一貫性がないのです。私は今説明されたような状態から行きますならば、労働組合内部の問題についても、こうきゆうくつにわくをはめなくても、いいのではないかという考え方を、さらに深くするのでございますが、もう一度この点についての御答弁を願つておきたいと考えます。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたします。労働委員の選任に関しまする趣旨は、ただいま申し上げたような次第でございますが、先ほど申しましたように、この選任の方法に関しましては、前田委員の御指摘のような意見も相当あるのでありまして、將來にわたりましては、これは研究を続けて行かなければならぬものと考えております。第五條の組合規約の必要記載事項を、ああいうふうに書きましたことは、本法立案の全体に流れておりまする趣旨といたしまして、組合の設立はこれは自由設立主義をとるべきである。しかしながら民主性、自主性の明確な組合といたしましては、最小限度この程度の規約を設けてもらいたいということを、書いておるのでありまして、特にこれによつて、組合を縛つて行くという考えはないということを、御了解願いたいと思います。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 さらに十九條の八項の労働委員の資格という問題について「禁治産者及び準禁治産者並びに懲役又は禁この刑に処せられてその執行を終り、又は執行を受けることがなくなるまでの者」というこの文字を読んでおりますと、どうも解釈がわからぬのです。だからこの点は修正をすることが一番いいと私は考えますが、この意味に明確にせなければ、いろいろ疑義が起きて來ると考えますので、これは法規上のことですから、それぞれ專門家の立場から、この意味を明確にしてもらいたいと考えます。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 お答え申し上げます。これの正確な読み方は御承知のことだと存じますが、「終り」「までの者」というふうに続くわけでございます。これは他の立法例で、これと同様の規定がございまして、その先例を踏襲いたして書き上げたということでございます。そういうふうに考えております。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 そういたしますと、かりに前科がありましても、國会職員法なんかにもこの文句が引用されておりますが、それであれば資格はあるということになるのですか。前科が終れば……。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 終ればそういうようになります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 さらに労働委員会の権限の中の、一番重要な問題になつておりますところの、公益委員の特権の問題でございますが、これは労働大臣にお聞きしたいと考えます。こういう改正案にせなければならなかつた事情、あるいは理由等も、ある程度私は認められる節もありますが、しかし全体を考えてみ、しかも今日全國的な労働委員会の構成事情等から申しますと、むしろこうすることよりも、現行法の三者対等の立場に置く方がいいのじやないか、私はプラス、マイナスという言葉で申し上げますならば、現行法の三者対等の関係の方がプラスであつて、改正案の方がマイナスになるのではないかと懸念するのであります。それは準司法的な処置等も考えられておりますが、私は労働委員というものは、労資双方の立場から選出されていようとも、労働委員会の運営をうまくやつて行くという観点に立たなければならぬと思います。過去三箇年間の実例の中には、いろいろの特殊なものがあることは、私はよく知つておりますが、全体をながめますと、やはり三者対等の立場で構成をしておりますところの労働委員会の運営が、非常にうまく行つておるという多くの事例を知つておるわけです。このように公益委員に特権を與えるということになりますと、労資双方を、必要以上に階級的な立場に押しやつてしまつて、事ごとに労働委員会が労資の爭いの的になるということになつて、労働委員会の本來の使命を達するのに、現行法よりもむしろ惡い結果になりはせぬかということを私は心配いたしますので、この点に対するところの労働省の考えを、明らかに願つておきたいと考えます。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 法文の細目の点については、すでにそれぞれ政府委員から答弁があつたと思います。要するに前田委員の見解のような考え方も、一應の考え方として考えられますが、諸外國の実例、それからこの数年の経験等から考えまして、ああいうふうな種類の権限は、公益委員によつて運営して行くことの方が、やはり妥当である。しかし一面において、労資双方の委員の人たちの意向というものを、十分取入れなければならない。その方がいいという考え方がもちろんご、さいましたので、双方とも必要なとき審問に参加し得るということにしたのでありまして、大体現状におきましては、いろいろな角度から、いろいろな見方はありますけれども、あの線において決定し、あの方式によつて運営して行くことが妥当である、そういうふうに考えた次第であります。現在そう考えておるわけであります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 それならもう一度聞いておきますが、現行法よりも、むしろ改正案の方が、実績をあげ得られるという確信を、大臣は持つておられますかどうか。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 そういうふうな見通しのもとに考えております。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 私は労働大臣と法務廳の人と一緒におられるときに質問したい点が二、三ございます。それから大蔵大臣と安本長官にはぜひ午後出席を願うことにいたしまして、一應私の質問は留保いたします。

石野久男労働者農民党

○石野委員 労働大臣にお尋ねいたしますが、私は持ち時間が非常に短かいので、重複したことはなるべく避けまして、お尋ねしたいと思います。この法の改正にあたりまして、政府の説明によりますと、三年間の経驗にかんがみてということが、特に重点になつております。私ども立法府の立場からいたしまして、法の改正をいたします場には少くともその法益を受ける者の立場において、法の改正が特に考えられなければならないのではないか、こういうように思うのであります。憲法の前文におきましても、「そもそも國政は、國民の嚴粛な信託によるものであつて、その権威は國民に由來し、その権力は國民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」とあります。少くとも法益を享受する者の立場から、この法案が改正しれなければならないというふうに、私ども考えておりますが、政府の経驗といい、また改正しなければならないという理由は、このような観点から法を改正するに至つたものであるかということについて、まず基本的なものとしてお尋ねしたいと思います。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 御質問の点は、提案理由の際にのしばしば申し上げましたように、一つはこの二年、三年間の経驗により――そういうこともしばしば申し上げた通りであります。ただこの根本的な方向は、できるだけ組合を、これもしばしば申し上げた点でありますけれども、民主的な、自由な、そして建設的な組合たらしめるように、三年間の経驗から、そして各方面の意向をも取入れて、立案するという立場をとつたのであります。それから法の制定にあたつて、関係方面の意見を十分徴すべきであるという御質問は、しばしば指摘された点でありまして、重々もつともな点であります。ただ與えられた諸條件のもとにおきましては、公聽会その他――あえて公聽会だけではありませんが、中心は公聽会でありましたけれども、そのほか各方面の意向というものは、直接間接に、聞き得る限りお聞きしたつもりであります。と同時に單に聞き流しではなくして、これも與えられた今日の條件のもとにおいて、とり得るものは取入れて、そして最後の案をつくり上げたという推移でありまして、この間の事情を御了承願いたいと思います。

石野久男労働者農民党

○石野委員 ただいまの御答弁は、私の簡單にお聞きしておることをはずしておるように思います。法を改正するにあたつて、法益を受ける者の立場を十分に考慮するという点を、重視されておるかどうかということをいま一度お尋ねしたい。  それからこの法律を改正するにあたりましては、もちろん憲法及び極東十六原則というものが、その基本的な考え方として、常に改正の大筋を貫いていなければならない。こういうふうに考えるものでありまして、そのような立場からいたしますと、少くともこの労働法というのは、しばしば同僚委員も言つておりますように、労働者の権利を擁護する、いわゆる労働権をより具体的に記載するような形において、改正されなければならないというふうに思つておりまするし、また労働法は保護法であるという建前において、確認されなければならないというふうに思うのでありますが、今度の改正にあたりまして、政府はそういう立場をはつきりやはりおとりになつておるかどうかということ、この二点をお聞きしたいと思います。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 前段の、受益関係者の立場というものを主として考慮の対象として考えて、そして進んで來たかという御質問でありますが、労働省当局といたしましては、そういう立場のもとに進んで來たと申し上げることができます。  それから憲法、十六原則等との関係というものも、注意深く考慮を拂いつつ立案したのでありまして、そういうものと抵触しないという方向において、本法案の最終案を決定したという推移をたどつておるのであります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 一應大臣の答弁を、とにかく法の受益者の立場の側から、この法案の改正にあたつては、政府は考慮したというふうに、了解いたしたいと思います。  それからなお十六原則及び憲法に即應するように考えたという御答弁は、当然この法案が、労働者の保護法案として考えられておるものであるということと考えてよろしいかどうか、ということをもう一度ひとつお聞きしておきます。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 労働者の保護法であるというのが、本体であるという考え方のもとに進んでおります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 政府の説明の中にこのようなことが言われておるのであります。「三年間の同法施行の結果を顧みまするに」云々、「その後の実施の過程において当時予想せられなかつた不備の点が現われて参つた次第でございます。」こういうふうに言われて、その後「三年間の実績に鑑み、これらの不備の中に労働教育乃至行政運営を以てしては的確に補い難い点があることが痛感せられ」た。こういうこと、本法を改正しなければならない大きな理由になつておるというように言われておるのであります。このように痛感されたというのはどのようなことであり、またその痛感されたのは特にどのような人々であるか。たとえばそれは政府であるか、あるいは資本家の側であるか、あるいは労働者の側であるか、あるいはまた政府與党である民主自由党の痛感された理由なのか。そのような点について、はつきり御説明を承りたい。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 要約してお答え申し上げます。たとえば現行法におきましては第一條の二項におきまして刑事上の免責の規定があります。これを立案の当時におきましては、正当な行為というものは社会通念によるものとするという行き方をいたしておりましたが、この社会通念という立場だけでは行けないような事例、たとえて申しますと、いかなる行為といえども、労働組合の行つた行為は正当であるというふうな主張なり、意見を持つ方も出て参るのであります。組合規約におきましては、当然労働組合は日本民主化の基盤でありますとともに、その組合自体は、きわめて自主性、民主性を持つておらなければならないという建前でありますにもかかわらず、組合規約の中に、その役員の選挙、あるいはその他の重要事項を決定する際の選挙方法等の不明確なものも、多数出て参つております。さらに使用者側が労働組合の育成を阻害するというような事実、これも相当は逐年増加をいたしつつあるのでありまして、御用組合的な第二組合をつくるという事例も、多く出て参つております。さらにまた、それらの使用者の不当労事行為によりまして、被害を受けました労働者の原状回復が非常に遅れるという例も、多々出て参つたのであります。具体的な最もはなはだしい例は、御承知と思いますが山口縣の小野田の大浜炭鉱でありまして、九十何名を首切りまして、その最後的解決が一年以上を経ておるのであります。この間労働組合は、九十何名の労働者の生活の救援のために、約百五十万円以上の金を費しておる、かような事実も出て参つたのであります。さらにまた、はなはだしい例でありますけれども、会社の部課長までが組合に入りまして、内部干渉をやり、御用化するという例も出て参つております。あるいはまた労働委員会の運営におきまして、三者はそれぞれの立場を堅持しつつ、一体として公正妥当なる活動をなすべきであるということを期待いたしておりましたが、さようでないと申しますか、使用者側は百パーセントに使用者の利益を主張して讓らず、労働者側はまた百パーセント労働者側の利益を主張して讓らない。それがために調停にいたしましても、あるいは十一條違反の審判にいたしましても、非常に結果が長引くというふうな事実が出たりいたしておるのであります。これらに関連いたしまして――これらは教育あるいは指導等ではできない。特に労働委員会の原状回復の問題でありますとか、あるいは使用者の不当労働行為に対しまする処分の方法でありますとか、あるいは労働組合の行き過ぎの不当な行為を是正する、かような意味におきましても、單なる教育ではできないという結果が出て参るのであります。これらのことに関連いたしましては、政府当局といたしましても、各般の資料によりまして、かように改正すべきであるという意見も感じておりまするが、さらに労働委員会の全國会議におきましても、二回または三回にわたつて改正意見を申しておりまするし、また実現をされておる点もあります。特に中立委員におきましては、やはり準司法的事項は、中立委員だけで行うべしという意見も申しております。使用者側にももちろん、自分らがふしだらであつたというふうな反省はしないで、そうして法律によつて自分らの力をバツク・アツプしてもらおうというふうな意見の者もありましたけれども、しかし公正な立場から、労資双方の正当な対等な地位を保持して行こうとする主張もあつたのであります。從いまして労働組合側の主張、あるいは使用者側の主張、学識経驗者の主張、労働委員会の主張等も、十分さような点は認めて議論されておつた点を、われわれは認めておるのであります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 安本長官が見えましたので質問申し上げますが、この前の本委員会に、安本長官がお見えになつて約束されました労働行政全般に対するところの政府の計画、言いかえますならば、生産計画、資金計画、あるいは労働計画、配置轉換の問題、あるいは企業合理化に対する適切なる政府の施策、あるいはそれから生れて参りますところの失業対策、中小企業の対策、あるいは社会保險制度に対する対策、いろいろな問題があろうと考えますが、私が質問する内容を申し上げるまでもなく、安本として相当準備されておられると思いますので、その全貌を明確にお願いしたいと思います。

青木孝義民主自由党経済安定本部総務長官・中央経済調査庁長官・物価庁長官

○青木國務大臣 ただいまの御質問の中で、生産計画あるいは資金計画、それらの点はただいま関係筋と折衝中でありまして、発表できないものがございますので、ただいまの御質問中の特に、労働関係を、これはごく大綱的なものではありますが、その点だけをお答え申し上げます。昭和二十四年度におきましては、行政整理によりまする失業者が約五十万、引揚者が二十万、潜在失業者の顯在化、この数が二十万、それから新規の学校卒業者で未就職者が約十万、こういう数を考えておりまして、さらに企業の合理化によつて生ずる失業者が約六十万、もちろんこれもラウンド・ナンバーでありますが、合計百四十万ないし百七十万、これは労働省の方でも大体一致しておると存じます。この失業者が出まして、これを輸出産業に約二十万、そのほかの産業に約二十万、この程度のものを吸収するという考えを持つておりまするし、それから失業保險と日雇失業保險におきまして四十五万人、それから職業補導におきまして約五万人、失業対策事業で約四万人を救済する見込みであります。またまだ確定いたしておりませんが、見返り援助資金の決定を見ますれば、電力と鉄鋼と造船等に対する設備資金によつて、相当数の失業者が吸收できるものであると考えております。それから本年度はわが國の戰後経済の大きな轉換期に際会いたしておりまして、戰後長い間続けて参りましたいわゆる竹馬経済と申しますか、温室経済、そういう点から雇用面におきましては生産と雇用の不均衡、それから労働生産性の低位、いわゆる水増し雇用の状態を、インフレーションの收束、為替一本レートの設定によつて、正当の経済に引きもどしますとともに、これを契機といたしまして、いよいよわが國経済の安定と目立への発足の年と、今年を考えておる次第でありまして、本年度は1回におきまして輸出産業、生産財産業等の生産復興の必要と、他面企業の合理化を行わなければならない。これが必至であるという條件がありまして、失業問題の発足もまたやむを得ないのではないかと考えます。これに対しまして、現在のわが國の貧弱な経済力をもつていたしましては、産業吸收のみでは不可能でありますので、一面輸出産業等への吸收と、他面において保險、失業対策事業等の経済的面をも並行いたして考えた次第であります。こういたしまして、本年度多少のむりをしても、從來の温室経済、跛行経済を清算いたしまして、今後の経済復興のテンポに大きな齟齬を來さないように、努力をいたして参る所存であります。こういう点を考慮いたしまして、かねて経済安定本部におきましては、わが國の長期的な復興計画、復興過程を檢討中でありますが、労働力の問題に関しましても同様に、これに即應して長期的数字を檢討いたしておる次第であります。それによりますと、昭和二十四年度では全從業者事数が三千三百六十六万人、それから二十五年度では三千四百四十六万人、二十六年度は三千五百四十五万人、二十七年度では三千六百三十七万人、二十八年度では三千七百三十八万人、こういう計数を考えまして、毎年約百万人前後増加して参るという見込みであります。もちろん生産規模が著しく縮小したのに対しまして、人口はだんだん増加いたしております。すべての者に職業を與えるということは、なかなか困難な状態にありまするので、この二、三年は失業対策としての産業吸収の面のほか、失業保險等の救済に依存しなければならない面も、いたし方がないのでありまするが、年一年、年を追いまして雇用の吸収力が大きくなり、労働力の活用によつて、いよいよ、経済復興の実績をあげて参りたいという考えであります。なお労務用の物資の計画につきましては、いろいろと数字がございますので、その方面の係官に詳細に説明をいたさせたいと思います。

石井通則総理廳事務官(経済安定本部労働局次長)

○石井政府委員 この間労務用物資に関しまして御質問がございましたが、まだ関係筋と交渉中でありまして、最終的な報告をするところまでは至つておりませんけれども、大体品目別に現在の見通しを申し上げたいと思つております。まず労務加配主食でございますが、昭和二十三年度におきましては――二十三年といいますと、昨年の十月から本年の六月末を予定いたしております。総数三百四十五万石、加配の対象人員が約七百三十万人でありまして、基準量は業種によつて違いますが一日七勺ないし三合五勺、稼働日数は二十二日平均でありましたが、本年度におきましては國内生産食糧の見通し、ガリオア資金、輸入食糧の数量等、未確定の要素が多いのでありまして、いまだ決定いたしておりませんが、目下折衝しておりますところによりますと、大体本年度程度の主食の確保はできる見込みでございます。なお本年度におきましては、稼働日数は二十二日平均というのが、二三・五日というふうに認められそうでございますので、その面におきましては、増加するということになるのであります。  次に衣料品でございますが、昭和二十三年度は労務用はリンク用を含めまして四千五百万ポンド、対象人口は約二千五百万人でありましたが、これで一人当り年間一・七ポンドになるのであります。昭和二十四年度の労務用につきましては、一・八ポンドの基準を維持するように計画を進めております。なお品質につきましても大部分綿で配給したいという考えで、目下作業を続けております。  次にゴムのはきものでございますが、昭和二十三年度におきましては、原料事情の好轉によりまして、地下たびの生産は大体目標を確保いたしましたが、まだ昭和五年ないし九年平均から見ますると、非常に少い状況でございます。地下たびを必要とする配給の対象人員は、農林、水産業を含めまして約二千五百万人と推定されますが、これによりますれば、大体一人年間約〇・七足というようなことになります。総ゴム靴は生産計画が二百八十八万足で、大体戰前から比べますと九%というぐあいに非常に少量ございます。昭和三十四年度におきましては、生ゴムの輸入量が三万五千トンの要請に対しまして、三万トン程度の確保の見込みがつきましたので、地下たび千七百四十万足、ゴムぐつ三百九十万足の生産計画を立てて、大体二十三年度の程度は維持し得るということになるわけでございます。  酒につきましては、昭和二十三年度の総供給量は百六十二万石でありましたが、昭和二十四年度においては、約二%増の百六十五万石の供給を見込んでおりまするが、財政收入等の関係もありまして、自由價格酒が増加する予定でありまして、労務用としては昨年度の四十八万石に対しまして三十三万石、約三一%減小ということは、やむを得ないことではないかと思われます。ただ酒に関しましては、家庭用の配給は停止されるようですが、労務用配給はこの目標でぜひ存続して行きたいという方針であります。  次にタバコでございますが、タバコは二十三年度におきましては労務加配が三十八億本の計画でありましたが、二十四年度の一月以降において、家庭用配給は一人当り月十本を増加いたしましたので、減少することになるわけであります。三十四年度におきましては大体十七億五千万本の見込みを立てて檢討中であります。なお家庭配給が廃止できるということになりますれば、労務用の配給も増加し得るということには相なり得るのでありますけれども、この交渉は現在のところ、なかなか困難の状況であります。しかしながら一般家庭用の一人当り月十本が加わりますので、労務用だけといたしましては、三七%減ずるということになりますけれども、家庭用を合せますと、大体前年度同様の数量が労務者にも確保されるということになろうと思います。  せつけんでありますが、二十三年度の労務用年間割当量は三千八百四十九万個で、対象労務者七百七十一万人でありましたが、これは一人当り約五個となつております。昭和二十四年度におきましては、せつけんの原料用油脂の輸入が、約二倍に増大するというように見通しをつけられておりますので、二倍の生産計画が可能であると思います。從つて労務者用の方は約八千万個、一人当り年平均十個というふうに、二十三年度よりも二倍くらい増加するように見込んでおります。これは目下檢討中でありまして、大体この見通しで、そう大きな狂いはないと思つていますが、目下最終的決定を急いでおるような状況であります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 安本長官の数字をあげての説明は一應感謝しますが、二十四年度に出ます失業者が百四十万ないし百七十万と言われますけれども、私の見込みから行きますと、二百万人以上、あるいは政府の数字の倍になりはしないかと懸念いたします。もう一度この点について、百四十万ないし百七十万で食いとめられるという確信があるかどうかということを聞きたい。それから第二点は、雇用量が年一年増加するという数字をあげておられますが、今日の日本の経済の状態から行くと、その数字は、架空の数字になつてしまつて、むしろ日本経済が破滅に瀕するような痛手を、本年から來年にかけて負わなければならぬのではないかと私は考えます。それから立て直るということになつて参りますと、なかなか今申されたように雇用量も増さず、うまく收拾がつかないと私は見ております。そのためには、今日経済政策の基本的なわくははめられましたが、今日の実際の実情から推して、どうしても政府はさらに勇気を振つて、何とかこれの対策を立てて、日本の経済の生、きる道を考えてやらなければならぬのじやないかと思います。この点に対する方策があるかどうか。それから四十五万人を失業保險、あるいは日雇失業保險において吸收すると言われますが、一時的にはもちろん保険制度で吸收されることは当然でございますけれども、これによつて生活をささえるということは、今日の國民生活の現状からいつて、なかなか至難な問題であろうと考えます。その半面、失業対策方面にさしずめ四万人を吸收するという数字をあげておられますが、私はこれはもつと大幅に何とかして予算の措置を議じて、失業対策のためには、四万どころか、むしろ四十万、あるいはそれ以上吸収できるような対策を、この際安本としては考えるべきではないかと考えます。それから輸出産業に二十万、一般産業に二十万吸收されるというような数字も出しておられますが、この数字はむしろ甘い数字ではないか。というのは今日の全体の経済事情から申し上げまして、私はむしろ甘いという見解を持つておりますが、安本の見解を明らかにしてもらいたいと考えます。それに今政府委員から労務物資の配給計画を親切に数字をあげて説明されましたが、実に遺憾に思いますことは、酒、タバコが減額になつておるという問題でございます。これは國家経済全体から見て、やむを得なかつた、あるいは予算面等から見て、そういう結論になつたと思いますが、私はむしろこの問題こそ安本、あるいは政府全体が力を盡して、そうしてまじめに働く者に対する職場配給に対しましては、減額するよりも、たとい一本のタバコ、一合の酒でも、ふやしてやるという親心がなくてはならぬと考えます。今日の財政計画の全般から見て、やむを得ないと言われますが、実際に日本の経済をささえておる者はだれか。でき上つた製品をやみからやみに賣買して、やみ行為をやつて巨万の富を積んで、そうして日本橋や赤坂へ行つて、何十万の金もいとわずに、ぜいたく三昧をしている者が、今日の日本をささえておるかといえば、そうではありません。実際に苦しい中から、血みどろになつて働いておるところの勤労大衆こそ、今日の日本をささえておると私は考えます。しかも勤労大衆は、今日そうした世間のいろいろな惡評を聞き、あるいはいろいろな行為を見つつも、なおかつ祖國日本再建のために、涙をのんで黙々として働いておると考えます。一部にはいろいろなことを指摘される人もあるかもわかりませんが、全体の労働階級は、一部にぜいたく三味をしている者のある半面に、ほんとうに血みどろになつて工場で営々として、日本再建のために盡すのだという氣持で働いておると私は考えます。そうした人々に、一人に一合にも当らないような酒をさらに減額し、あるいはタバコを減額しなければならぬということは、どうしても今日の政府の政治力の貧困から來るものだと考えます。選挙で多数の國民の支持を得てできております吉田内閣こそ、國民全体の立場に立つて、勤労大衆に対して、もつと何とか対策を立てるべきだ。あるいは吉田内閣は、資本家を代表した保守党の代表だといわれておりますが、選挙の結果は多数の票を集めて、今日の政権が樹立されておるのであります。資本家を代表したといわれるその基盤はございますが――私は一例を申し上げますと、自分の子供が近所の子供とけんかをして、自分の子供がかわいいから、近所の子供をしかるのが普通の親です。しかし賢者は、まず自分の子供をしかり飛ばして、そうしじゆんじゆんと事情を聞いて近所の子供をさとす。これが常識ある人々の態度であると考えます。今日の日本の再建のためには、吉田内閣は、あるいは資本家階級に対してしかつてでも、犠牲を忍んでもらつてでも、勤労大衆に対して、何とか親心を示すという対策を立てるべきだと私は考えます。一本のタバコ、二合の酒、何でもありません。しかし働いている者が、安い金でもらえる制度になつているという政府の施策を、労働階級はありがたいのだと考えます。全体に滿足の行く量はもちろんございません。しかし少くとも減らすことなく、現状を維持するか、たとい一本でもふやすという対策が、立てられてしかるべきだと考えますが、この点に対する見解を承つて、私は安本に対する質問を終ります。

青木孝義民主自由党経済安定本部総務長官・中央経済調査庁長官・物価庁長官

○青木國務大臣 お答えいたします。潜在化しておる失業者が顯在化する。こういう点で、先ほど二十万と数字を申し上げましたが、これは二十万から四十万というふうに考えておる次第でございまして、この点を訂正いたします。それから失業者の数が、政府の考え方は甘いというお言葉でございましたが、われわれもできるだけその点については注意をいたして参つておりますけれども、この問題は單に想像の上で、こうだろう、ああだろうと言つてみても、なかなか結論はつきません。從つてわれわれは、これが出て來ることは、大体先ほど申し上げましたような数字で予想をいたしておりますが、しかしこれがわれわれの間違いである、もつと多くの人が出て來るという結果になれば、またそれに即應するような態度を、とつて参る考えを持つておる次第でございます。しかしわれわれとしては、まだこの数字の中で、何とかできるものと確信をいたしておる次第であります。なおそのほかに配給物資についてタバコ、酒が少い、こういうことでございますが、この点よく御了承願いたいと思いますのは、いろいろなものが豊富に渡つて参りますことは、私どもといえども、願わしいことであります。しかしわが國の現状では、できるだけ勤労者に対して報いるという意味での努力も、今日のところでは発表いたしました程度しか行き渡りません。ことに吉田内閣は、いろいろな面で、どうしても統制を強くして行かなければならぬ面は、強くいたしますけれども、他面におきまして、自由に、取扱つて行つていいという状況にあるものでございますれば、むしろそうすべきである。すなわち無意味な統制はしないというような考え方からも來ておりますが、なお勤労者の面におきましても、配給されたものがすべて、必要なときに、必要なものが、必要な程度にまわつて來るということでなければなりませんので、酒のごときも、これは全部が全部用いるというものでもございませんし、そこいらは今日の酒の販賣というような面、たとえば料理飲食店の再開といつたようなことも考え合せて参りますれば、適当にこれが用いられて行くということをも、考えて行かなければなりませんので――ただ特に多く配給すればよろしい。これができるならばよろしゆうございますけれども、現在の生産並びに配給という面では、この程度しかできないということの制約のために、やむなくこういう状態に置かれてある次第であります。ただいま申し上げましたような意味合いで、國民生活のあらゆる面において、いろいろと困難なところはありまするが、今年度は御承知の通り、ともかくも今のこのインフレーシヨン経済を收束せしめる、安定経済の第一年に属するという今年度においては、どうしてもインフレーシヨンを收束せしめるという決意のもとに臨んでおりますので、予算的関係におきましても、單一為替レート設定の問題におきましても、皆様御承知の通りであります。從つてこの二十四年度の経済は、少くとも安定したる経済の上で、われわれの出発点を得るというところに、この基盤を置いて考えて参りますならば、われわれはこの程度の努力をもつてして、十分だと思いませんけれども、あらゆる面から企業整備、企業合理化を行い、しかも労働者の生活の面についても、これに沿つた、また失業対策についても、これに沿うような対策を考えて行くことにおいて、決してやぶさかではございません。ただいまのところ、予算的措置が明瞭でないという御非難もあるかと存じますけれども、失業者の現われます場合においては、それに即應した予算的措置を考えたいと存じております。なお御承知通りに、対日援助見返資金の点におきましても、この面からまだはつきりした資金計画というものを申し上げる段階に立ち至つておりません。しかしこの方面における基幹産業に対する資金の運用ということを考えますれば、相当この方面におきましても、失業者を吸收する力ができて來ると確信をいたしておる次第であります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 今の安本長官の答弁の中で、できるだけ自由な面によるようにして、統制のわくをはずす。酒やタバコの問題も市中で買えるようにしたい。これはなるほどけつこうなことです。私は労働者といえども、ほんとうに自由に買える状態になりますれば、何も当てにできないような特配をくれというような者はないのであります。今日働いても食えない、飲もうとしても飲めない、しかも町にはある。この実際の労働者階級の生活の実情を見て、そして政府は特別の方策をもつて、勤労者への報奬という意味で、今までの特配の制度を設けていると思います。一合が百五十円、二百円もする酒を、今日賃金をもらつている労働者階級が、一体どの程度飲めますか。飲める人はそれでけつこうです。飲めない労働者階級のために、特別の措置を講じてやるのが政府の施策だと私は考えます。その面を拡大して、そうして配給を減す。そしてかつてに飲んでもらつたら、タバコを買つてもらつたら、町になんぼでもあります。買える金があるならば、そういうことは言いません。買える金がないから、今日労働者に対する特別の施策をして、やらなければならぬという問題になつて來ていると私は考えます。もちろん國家経済全体の予算面から私も考えております。また労働階級といえども、それを考えていない者はないと思います。しかし二十三年度と比べて、こうした減額をしなければならぬというところに、むしろ吉田内閣の親心でなくて、本質が現われておると言つても、過言でないと私は考えます。少くともこうした問題を特別に考えるとか、親心をもつて施策を講じてやるというところに、政府としてやるべき措置がなくてはならぬと私は考えます。これ以上は議論にわたりますから、私は議論を申し上げませんが、一言私の意見を申し上げましてなおこれに対する大臣の御答弁がございますならば、承つておきたいと考えます。

青木孝義民主自由党経済安定本部総務長官・中央経済調査庁長官・物価庁長官

○青木國務大臣 おつしやることはごもつともでございまして、私もできることならば、今年度も昨年度と同様、あるいはそれ以上に配給をいたしたい。タバコ、酒等もそういうことを考えて参つたのでありますが、しかし今年度の財政の状況から考えまして、どうしてもこの程度以上には、配給ができないということでありますので、やむを得ない次第であります。

川崎秀二民主党(第九控室)

○川崎委員 簡單に言いますから、簡單にひとつお答えを願いたいと思います。青木安本長官には、先般の委員会でも、一應長期復興計画について具体的に質問するからということを、予告をしてあるわけでありますが、本日は時間の関係もありますので、簡單に申し述べます。資金計画、生産計画が作業中なので、まだ全貌を発表するに至らない、こういうことでありました。しかしながら一体この困難なる時代において、計画性のない経済を続けて行くということは、非常に私は不安を感ずるのでありますが、本年度だけの生産計画、あるいは資金計画というものも、近く発表する段取りにならないのでしようか。

青木孝義民主自由党経済安定本部総務長官・中央経済調査庁長官・物価庁長官

○青木國務大臣 前々から、なるべく早く生産計画、資金計画等を説明しろということを、川崎委員からもお話がございました。私どもは鋭意努力をいたしておりまするが、ただいまのところ、まだ発表する段階に達しておりません。遺憾ながら申し上げることができません。

川崎秀二民主党(第九控室)

○川崎委員 資金計画、長期計画の作業の完成しないのに、先ほど労働行政について、二十七年度までの雇用量なんかもあげて言われましたが、これはいつの数字ですか。いつつくられた数字ですか。

石井通則総理廳事務官(経済安定本部労働局次長)

○石井政府委員 これをつくりましたのは、第一案は一月ごろに一應の案ができておりました。それがだんだんいろんな情勢がかわつて参つておりますので、ごく最近、現在の段階の案を立てたようなわけであります。また今後もいろいろな情勢で、再檢討して行く必要が起つて來るだろうと思うのであります。

川崎秀二民主党(第九控室)

○川崎委員 私はそういうことがでたらめな数字だということは、さつき知つておつたのですけれども、失業の続出を予想して、今年は百四十万の失業者が出るのだ。しかも行政整理、企業整備というものも、本年だけではなしに、経済安定に至るまでは、とにかく基本的な政策の一つとして実施をするということは、政府がしばしば言明しておるわけでありますから、現在の雇用量が減つて行くという段階で、來年度三千四百四十六万人の雇用量、今年が三千三百六十六万人、來年八十万ふえる。その次には百万ふえる、こういうような数字は成立たないと私は思う。それは一月ごろの御計算であつて、爾後訂正されたものではあるけれども、大体基本がそういうことだとわかりましたので、それ以上追究してもしかたないと思いますが、やはり安定本部の権威のために、発表されるときには――おそらく新聞方面なんかでも、注目しておる数字だと思いますが、こういう数字は新聞紙上には出せないと思います。そういうことで御考慮を煩わしておきます。それからひとつこの点安本長官にとくと伺つておきたいのですが、長期復興計画の担当者がございます。これは稻葉秀三君で、ずつと担当者の中心人物としてやられておるのでしようけれども、その安定本部の長期復興計画を練つておる人と、政府の首脳者というか、安定本部の責任者との間に、非常に思想的なギヤツプがありはしないか、それから來るところの方式の差がありはしないかということを感ずるのですが、そういうことはありませんか。

青木孝義民主自由党経済安定本部総務長官・中央経済調査庁長官・物価庁長官

○青木國務大臣 お答えをいたします。先ほど川崎委員がこれはでたらめの数字だとおつしやいましたが、決してでたらめではありません。そのことははつきり申し上げておきます。それからもう一つは、ただいま名前をおさしになりまして、経済復興計画を担当しておる参與の稻葉君が、他の幹部と申しますか、他の係員との間に、思想的にギヤツプがあるかどうかという御質問でありますが、その点は、ないと私は信じております。

川崎秀二民主党(第九控室)

○川崎委員 それからさつき輸出産業に二十万、本年度失業者を吸收するというお話がありました。この間私伺つたときに、有田政務次官から詳しい内容が言われたのです。ところが有田君の言うことが、大きく取扱われないのかどうか知らぬけれども、非常に注目しておることだろうと思うのに、内容がちつとも新聞紙上に出ない。あれはひとつ、商工省の方で輸出産業に吸收するのは、こういう方に吸收するのだということを発表して、そういうことで、やはり一つの安心感というものを高める必要があると思う。そういうこともしていただきたい。これは注文です。  それからさつき見返資金特別会計、つまり対日援助資金の中で、電力と造船の関係で、相当將來失業者を吸收できるのではないか、こういうことでありましたが、何分造船計画は、今海運の再び立ち上るという機運が出て來たときに、非常に今各界が注目しておると思うのですが、そういうことに関連しての造船計画というものを、今御発表していただくわけに行きませんか。

青木孝義民主自由党経済安定本部総務長官・中央経済調査庁長官・物価庁長官

○青木國務大臣 それらの点につきましては、ただいま経済安定本部がせつかく研究中でございまして、実はここでまだお答え申し上げるところまで参つておりません。はなはだ残念でございます。

川崎秀二民主党(第九控室)

○川崎委員 どうも答えられないものばかりで、残念ですが、この間うちからの炭鉱のストの問題です。先般私質問しようと思いまして、ちよつと私用で質問できませんで、まことに恐縮だつたのですが、炭鉱ストの経過を見ると、私はどうも裏で経営者と労働者が、今までのストライキの様相とは違つて、補給金は出ない、賃金は上げるなということの政府の政策に対して、なれ合いとまでは私は言わないけれども、両方ともこのストを相当長期間に持つて行くという形が見えておると思うのです。それに対して安本長官はどういうふうに考えておられるか、ひとつぜひ伺つておきたいと思います。

青木孝義民主自由党経済安定本部総務長官・中央経済調査庁長官・物価庁長官

○青木國務大臣 私の存じて得ておる範囲におきましては、おそらくなれ合いといつたようなことは、ないだろうと考えております。

川崎秀二民主党(第九控室)

○川崎委員 そういう意味でなしに、長期化する傾向があるので、政府は今静観状態で、末弘さんのあつせんだけをたよりにしているようですけれども、長期化する場合におきましては、強制調停に出るというような考え方がありはしないか、これは労働大臣に対する質問です。それから安本長官に続いてお答え願いたいことは、何か関係方面から原則的なものを指示されておると開いているのですが、その点をひとつ御答弁いただきたい。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 強制調停というふうな方式も、もちろんございます。御承知のように、今までその問題は、考えておつたか、おらないかは別といたしまして、具体的には出て來なかつたということは、周知の通りであります。現段階におきまして、強制調停というふうな問題――ストライキ自体の解決策としては、やはり労資双方の努力により、それから労働委員会のあつせん等によつて解決して行くのが常道であり、その形を今日まで続けて來たのであります。時間的関係の問題とかみ合つて参りますが、ここ何日までという、日の切つた話ではありませんけども、中労委の最後の奮闘にまつという段階に來ており、切にその成劫を祈つておるわけであります。しかしそれでは何もせずに、漫然と手をこまねいて待つているのかと申しますと、そうではないつもりであります。御承知のように、強制調停その他に、どういう方式があるかというような問題になりますと、具体的の形式的方法論としては、そう幾つもないわけでありますけれども、今の強制調停というような問題をも含めて、政府自身も、これはわれわれ全然無関心でおられる問題でなしに、責任がないとは言えない問題でありますから、十分な檢討をし、必要なときに、必要な措置をとる考えではおりますけれども、ここ数日といいますか、中労委の最後の奮闘、それから時局を認識しての労資双方の協力によつて、これが解決することを、國家のために、注意深く見守つているというのが実情でございます。強制調停自体の問題につきましては、以上申し上げた点について、現段階においては御了承願います。

青木孝義民主自由党経済安定本部総務長官・中央経済調査庁長官・物価庁長官

○青木國務大臣 これは関係筋から、一應所定の方法に依頼して、この解決をはかれという意味の――覚書と自分は了承いたしておりますが、私と労働大臣と商工大臣あてに参つております。

石野久男労働者農民党

○石野委員 経済安定長官に一つだけお聞きしたいのでありますが、先に前田委員から質問があり、今川崎委員からも指摘されました、いわゆる失業者の見込数については、私ども政府の見ておるところが、非常にでたらめなように思うのであります。実際百七十万の失業者が出る、それから安本長官の言葉によりますと、潜在する失業者が二十万ないし四十万、と訂正したのでございますが、そういうふうに出るのだと見込んでいる、こういうふうにおつしやつています。私ここに一つだけ取上げて、特にそれが非常な見誤りでないかというようなことについての、御意見を承りたいのであります。それはすでに配炭公園の一部改正法律案が政府から出ておるわけでございますが、これに伴いまして、私先般來、商工大臣、または労働大臣にも重ねてお尋ねしておりますいわゆる中小企業の炭鉱の問題でございます。特にメリツト制の問題から、中小企業、ことに低品質の炭鉱におきまする企業の経営というものが、非常に困難になる事情、これは茨城地区であるとか、あるいは福島、宇部の方面において顯著に現われて來ておるわけでありまして、ことに茨城地区のものだけを考えてみましても、このメリツト制の問題から來まする打撃と、それから配炭公團法の一部改正に伴つて來る打激というものは、非常に大きいというふうに考えられるのでございます。四千七百カロリーを基準としてきめる炭價の問題、それからそれに伴つて起るであろう福島、あるいは茨城地区における常磐炭田方面のいわゆる失業者というものは、予想外に大きいのではないかと思います。あの地方においては、炭鉱の從業者は約四万七千人おるのでございますが、このような炭價の決定、あるいは配炭公團法の改正等に伴いまして――いわゆる低品質炭の公團取扱いを停止するということによつて起きる失業者は、われわれの推定によれば、四千七千人のうち約三万二千人が、それに該当して失業者となつて來るであろうし、また企業はつぶれるという形になつて來ると思うのであります。全般としての予算、それからこういう法案に伴う失業者として、ごく小さな部門でありまするが、この石炭産業におきまして、このような見込みが予想されておつたかどうかということを、まず私はお聞きしたいのであります。

青木孝義民主自由党経済安定本部総務長官・中央経済調査庁長官・物価庁長官

○青木國務大臣 私どものとらえている推定数字が、でたらめであるというようなことをおつしやいますけれども、決してさようなわけではございません。但しただいまおつしやいますような、メリツト制による一定カロリー以下のものについては、相当困難な状態に当面するだろう。その場合における失業者を考えていたかどうかということについては、その数字はまだ私どもでは考えておりません。

石野久男労働者農民党

○石野委員 ただ失業者だけの問題でなしに、これらの企業についての、経済安定本部としての総合計画の面から来る御配慮は、どのようになつておるかということもお聞かせ願いたい。

青木孝義民主自由党経済安定本部総務長官・中央経済調査庁長官・物価庁長官

○青木國務大臣 その点は今のところ、私どもの考えとしては、合理化が行われるというような意味で、今度の配炭公團の問題に関連いたしまして、一定程度以下のカロリーの石炭山はどうなるか、こういう問題については適当な処置がとられて行くものと考えておりまするし、おつしやるように、これが極端に立ち行かないものになるというふうには考えておりません。

石野久男労働者農民党

○石野委員 適当な処置がとられるであろうということの意味は、いわゆる中小企業それ自体の努力によつて、適当な処置がとられるであろうという意味でありますか。それとも政府がそのようなことを考えるであろうという意味でありますか。はつきり承りたい。

青木孝義民主自由党経済安定本部総務長官・中央経済調査庁長官・物価庁長官

○青木國務大臣 その点につきましては、政府ももちろんこれに考慮を拂つております。また拂う考えでありまするが、どういう考えをもつてやるか、どういう方法を講ずるかというようなことは、ただいま申し上げられません。ただ中小企業それ自身が、かつてにおやりなさいというような態度をとるような考えは、政府としては決して持つておりません。

石野久男労働者農民党

○石野委員 政府としては考慮するつもりであるというふうに理解いたしたいと思います。それでこの問題は、今政府から提案されておりまする配炭公團法の一部改正の問題にも当然かみ合いまするし、それから基本的には、メリツト制の問題に関連すると思うのであります。メリツト制の問題につきましては、今指示されておりますように、四千七百カロリーを基準としまして、それより百カロリー上つたものについては三%のプラス、百カロリー下つたものについては三・五%のマイナスの炭價の設定が行われる、こういうふうに聞いておるのでありますが、この建前から行きますと、特に低品質を持つている茨城縣常磐炭田におきましては、経営上非常に大きな困難が出て來るのでありまして、いわゆる五大山炭鉱である三井、三菱、北海道炭鉱汽船、井萃、古河というようなところのものでは、トン当り炭價としては約千円以上もはね上つてしまう。ところが低品質におきましては、六百円もずつと下つてしまうという実情になつております。こういう問題についての経済安定本部のメリツト制に関しましての考え方について、明確な御答弁を願いたいと思います。

青木孝義民主自由党経済安定本部総務長官・中央経済調査庁長官・物価庁長官

○青木國務大臣 その点は経済安定本部としてもただいま研究し、いろいろと作業もいたしておる状態でございます。

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 この際、昨日の土橋一吉君の法務廳に対する御質疑に対して、法務廳側が出席しておられますから、説明を求めます。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 労働組合法第五條第二項第四号の規定が、憲法に違反しておるのではないかという御質問であつたように伺つたのであります。それについてお答え申し上げます。現行の労働組合法におきましては、御承知のように政治的信條と組合員の資格の問題については、何も触れておるところはございません。今回の改正法案におきましても、政治的信條と組合員の資格の問題については、同様に触れておらないのであります。それで私的自治に関するものについては、そのものに一任しているというかつこうをとつております。その点は現行組合法と同様であります。しかして憲法第十四條の規定によりますならば、特定の法律を制定して、政治的信條によつて國民に差別待遇をすることを規定しておりますれば、これは明瞭に憲法違反の問題も生ずると思いまするが、個々の労働組合が、その私的自治の範囲内で、政治的信條と組合員の的格の問題について定める余地を残しているということは、これは立法政策の問題は別といたしまして、憲法上の問題は生じないというふうに解しております。

土橋一吉日本共産党

○土橋委員 ただいまの御説明を承りますると、現行法においてもこれは私的な自治にまかしてあつたんだ。また現在改正せられる原案についても私的な自治にまかしてあるんだ。從つて改正案も現行法もこの点については何ら間違つている点はないんだと言われますが、私が憲法の規定について御質問申し上げている点は、さような点ではないのであります。憲法の第十四條が規定しておりまする内容は、國民の基本的な人権に関する、條項であります。その第十四條は、ここで申し上げなくてもわかるように、あらゆる條項について、法の前においては国民が平等であるという原則を立てておるのであります。從つて現行の労働組合法のように、かような條項が書いてなければ、これは問題ないのでありまして、憲法第十四條の規定に從つていかなる政治的信條を持とうとも、いかなる思想的な信條を持とうとも、これは自由であるのであります。またその範囲においても、各組合におかれて自由にその内容が討議せられるようになるのであります。ところが第五條第二項第四号のような規定を設けるとすれば、この中に必ず憲法第十四條と同じ内容を盛らなければならない。もしこれが意識的に落されたとするならば、これは弁明の余地はないのでありまして、ただちにこれは挿入すべきである。ところが意識的にこれを削除しているという点が、私はどうしても理解できない。するならば、憲法の規定の、國民は法の前に平等であるという原則は、当然第五條の第二項の第四号にも明確にすべきである。これを書かないというところに、きのうも石田委員からいろいろ御質問があつたが、これは共産党に対するところの政治的な信條なり、あるいは思想的な信條に対する反撃ではないか。特に民主自由党が、日本共産党に対するあらゆる誹謗的な行動、そういうものを立法化して、自分の一党的な考えを法文化するという考え方は、これは独裁政治ではたないか。こういうような発言があつたと考えておるのでありますが、これは私も同感であります。從つて國民は法の前に平等であるという原則を、あくまでも第四号の規定においても明確にすることが、法的技術に見ましても――また現在の民主的な方向において、思想あるいは信念がいかようであろうとも、労働組合については國家が保障してやるんだということを書かなければ、憲法違反であるということを明確に言つておるのでありますから、その点についての御答弁を願えればよろしいのであります。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 昨日の御質問を傳え聞いてお答えいたしましたので、あるいは私の誤解に基いて御答弁を申し上げたかもしれませんが、その点はあしからず御了承願います。御質問の点でありますが、ただいまの土橋委員のお話のうちには、政策の問題、憲法自体の法律的問題と、両方あるように私ちよつと拜承いたしたのでありますが、その政策上の当否の問題、これは私ども申し上げる筋でないし、これは差控えることといたしまして、法律上の問題といたしましては、憲法の十四條の規定というものが、私的自治の範囲を全然没却しておるというならば別でありますが、その範囲というものは別に考慮されてよろしいのでありまして、そこまで憲法が言つておるというように、は、解せられないのであります。それでたとえば、特定の宗教團体が特定の宗教を信ずる、その信ずる信者だけをその構成員とするということ、これが憲法違反であるということは言えないのではないか、というような意味合いにおきまして、申し上げてお答えしたつもりでございます。

土橋一吉日本共産党

○土橋委員 そういたしますると、労働組合に対して信條という條項に関しては、これは私的自治にまかすものである、こういう御見解でありますか。最後の御結論を承りますると、労働組合に関する限りにおいては、特定なる――ここに書いてありますような人種の差別はしない、さらに宗教の差別もしない、あるいは性別の差別もしない、門地あるいは身分的の差別はしない。労働組合については政治的信條、思想的信條についてはこれは自治にまかす、こういう御意見でよろしいのでございますか。、

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 重ねて申し上げますが、憲法違反であるかどうかということについて実は申し上げておるので、労働組合だけについて、政治的信條を抜かしたのはどうかという、当、不当の問題は、私から答弁する筋合いでないと思いますので、憲法問題について申し上げたいと思うのであります。それにつきましては、第五條第二項といいますものは、差別的取扱いを禁止する最低限のところを抑えて、それ以上は触れていないかつこうになつておりますので、その触れていない部分については私的自治に一任する、それは別に憲法違反の問題とは直接なつながりがない。かように見ているつもりでございます。

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 それでは午後二時まで休憩いたします。     午後一時十四分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十三分開議

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。石野君。

石野久男労働者農民党

○石野委員 朝の質問がちようど中途半端になつておりますので、引続いて申し上げます。先ほど労政局長からの御答弁は、私の質問の重点にまだ触れていなかつたわけです。私の質問は、政府が今度の改正にあたりまして、過去三年間の経驗にかんがみてということを言つておる。それによつてとにかく痛感された点から改正案を出すに至つたのだという説明をしているが、その痛感したのはだれであるかということを私は聞いたわけであります。これは事は簡單なようでございますが、一番最初に私がお尋ねしましたように、立法の建前からして、特に法の改正にあたつては、受益者の側におけるその意見を多分に取上げられることが、立法府の基本的な建前だというふうに私は考えている。その痛感された方々に、ほんとう受益者の層が含まれておるかどうかということの相違は、この法安の取扱いについて、非常に重要なわかれ道をなして來るというふうに、私は思つておるわけです。從つて痛感された方々は政府であつたり、あるいは民主自由党だけであるのか、それともこれの受益者である労働者全般も含めておるかということを、私はお聞きしたいのであります。特に政府から配付されております多くの資料が――労政局から出ております労働協約に関する調事、あるいは労働組合に関する調査などという資料は、少くとも過去の経驗の裏づけとして、私どもに配付されたものと私は思うのであります。この資料を細部にわたつて檢討してみます場合に、私はこの法律を改正するような理由が、どこからもなかなか見出せないように思う。むしろ逆に、政府当局が心配しておるような傾向は、徐々によくなりつつあるということが、この資料の中から見てとれるというふうに思うのでございまして、特に痛感された方々がだれであるかということを、明日に御答弁願いたい。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたします。午前中お答えいたしましたところでもありますが、労働委員会の全國会議におきまして、第一回もそうであります、第二回もそうでありましたが、その会議の決議といたしまして、労働委員会制度の改正、あるいは現行法第十條の改正ということが言われておるのであります。この労働委員会は御承知のように、労資及び学識経驗者の代表からなつておるものでありまして、これらの方が、確実にさような点を感ぜられておると思うのであります。さらに具体的な例になりますが、山口縣の小野田の大浜炭鉱におきましては、九十数名の労働者が約一年近くにわたつて失業の状態にあつたのであります。その際に労働者各位を應援し協力いたしましたのは、これは総同盟系統の日本鉱山労働組合連合会であります。これらの組合におきまして百数十十円の金を使つておるのであります。痛切に現行労働組合法の欠点を感じられたということを、われわれは聞いておるのであります。使用者もまたさようなことを具体的に大いに感じられ、賛成の意見を表明いたしておるのであります。政府といたしましては、これらの各方面で感じられましたことを総合いたしまして、今度の法案にいたしたということを申し上げた次第でございます。

石野久男労働者農民党

○石野委員 ただいまの御意見によりますと、全國の労働委員会会議とか、あるいはその他の各方面の意見に從つて改正した、特に今労政局長のおあげになりました点は、労働委員会とか、あるいは現行法第十一條の点について、いろいろな意見が出ておるということを言われて、おるのであります。けれどもこの法案を通読いたしまして、法案の改正の重点がどこにあるかということを思つてみますと、それは第一條あるいは第二條、第五條というようなところに、最も大きな重点がおかれておるようにわれわれは見受けるのであります。しかもこれらの点は、すべて労働者の権利に対する大きな制約を加えるものであるというふうに考えております。ただいまも院外において多くの労働者諸君の、この法案通過阻止のための動きを、皆さんは十分見てとられると思うのでございますが、少くともこれらの第一條あるいは第二條、第五條等に書かれておりますところのその趣旨――ほんとうに政府当局がこの法案を改正しなければならないという裏づけになる経驗を、どこで見出しておるのかということを、私はお尋ねしたいのであります。細部にわたつて各條のときになおお尋ねしたいと思いますが、労働組合に関する調査というこの資料に、非常に詳細なデーターがございます。このデーターの中から、たとえば專從者の問題にいたしましても、あるいは組合員の範囲、あるいは利益代表の問題、こういうような点をずつと数字で見ますときに、そのいずれの面を見ましても、ここで企図しておりますような、改正を必要とする理由が出て來ないと私は思うのであります。その一つの例をとりましても、組合員中の使用者、利益代表者というものの数をずつと見まして、含まれているものと、含まれていないものとの比を見ますと、全体としましての比率は、この法案を改正しなければならないという理由になるものは、非常に少いのであります。たとえば含まれていないものというのが約千五百三十件、それから含まれていると思われるものというものが二百六十七件ございます。それから決議機関に対する構成員の選出の仕方についても、選挙によるものというものが千八百五十六件あるのに対しまして、不明なものというのが二百十七件というふうに、およそこれらの比率というものは九対一の比率の状態になつておるのでございまして、少くともこういう資料は、過去三年間の統計によられた数字であろうと私は推定いたしております。おそらくこの数字の構成内容というものは、その逐年的な経過については、非常に相違があるだろうと思います。おそらく初年度におきましては、相当多数あつたでありましようが、最近においてはこういう数字はだんだん漸減の傾向になつて來ておるのであろうと私は思うのであります。この資料からは詳細なものは得られませんけれども、われわれの日常の労働運動の姿の中から、そういうことをはつきり確信を持てるのでございます。それにもかかわらず、なおこの法案の改正をしなければならない理由がどういうところにあつたか、それはおそらく民主自由党とか、あるいは資本家側、あるいは政府というような一連のいわゆる資本家を中心とする、われわれの言葉をもつてすれば、反動的な性格によつてのみ、これが裏づけられるのである、こういうふうに私どもは考えるのでありますが、そのように見てよろしいのでありましようか。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お手元に配付いたしました資料は、現在石あります組合約三万の中からその一割弱、すなわち二千六百幾らの組合につきまして、本年の一月以降の状況を調査したものであります。御意見のように、われわれといたしましても、日本の労働組合運動というものが当初に比較いたしますると、著しい成長を遂げて來ておることは認めるのでございます。しかしながら、ものによりましては、たとえて申しますれば、專從者の生活費を使用者から受けておるというふうな組合は、パーセンテージで一割ありましても、これは認めるべきものではないという考え方もございますし、なおその率がかりに二割程度であるということにいたしましても、その含んでおります内容が、相当労働組合運動自体にとつて重要な事項でありますならば、これは改善を要すべき点があると考えるのであります。たとえて申しますならば、使用者の利益を代表する者が入つているものというのが、一割でも、あるいは一割五分でも存在するということは、これは認めらるべきものではないとわれわれは考えております。  なお具体的にどういう例があつたかということでありますが、われわれはこの三箇年間に多くの経驗を打つているのでありますけれども、とりあえず御参考までにお手元に差上げました資料をもつて、御参考に供した次第であります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 この資料そのものについても非常に大きな疑問を持つているのであります。これは前にも春日君から、あるいは土橋委員からも、あるい、はその他の同僚委員からも、指摘せられましたように、たとえば豊和工業の場合におきましても、東芝の川岸工場の場合におきましても、いろいろとここに出されております資料に対して、組合側の意見があるのでございます。この中の最後の方に書かれておりますたとえば全鉱連の会計不正問題についても、ここに書かれているように、非常にあやまられたものであるというような見方は、全鉱連の大会においてもとられていないのでございます。私自身この大会には列しまして、ちようどこの問題の討議されたときの大会の空氣も見て來ておりますが、決して一部の人々が故意にこれをごまかすような決議の仕方はしなかつたのでございます。それらの事実をどのように考えてこういうような資料を出しているのか。これはおそらく政府が、一方的に労働者側の不正な事実を露骨に出そうというようなたくらみから、されていると私は思うのでございまして、もつともつと労働者側の意見を聞かれなければならないと私は思うのでございます。法を改正しようとする政府の建前が、ただ單に一部の階級、一部の陣営の人々の意見のみにおいて改正されるならば、それは決して全國民のためにも、人民のためにもいいものではない。ことに労働者が、日本の産業再建のためになつて立つ立場というものは、しばしば大臣からも言われているように、また労政局長みずからが言われているように、重大な責務を持つているものと私は感じているのでございます。私たちはこの二十四年度予算の中から出て來る失業者、あるいは企業整備、そうしたもの、あるいは税金からの苦しみ、物價に対する闘い等、一切のものが労働者の餓死的な生活を思わすそのときに、この法案を組み立てて行く政府の意図を実に怪奇に思つて見ているのでございます。これはむしろ政府がそうした一連の政策を遂行するために、労働者の持つ團結権や、あるいは争議権、交渉権というようなものを、故意に制約しようとする意図から事出ているものではなかろうか、こういうふうに思つておりますが、政府はそのような考えのもとにこの改正案を出したものであるかどうか、御回答願いたいと思います。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 改正法案を出した動機、及びただいま提案されております法案を最終的に決定するに至りました推移につきましては、繰返して申し上げるまでもなく、政府といたしましては、一部の経営者側の立場を擁護するとか、あるいはその他いかなる特殊の階級の立場をも擁護するとかいうような考えのもとに改正を考えたのでもありませんし、同時に委員決定の推移におきしましても、そういう考えのもとにおきまして、政府が立案を決定したようなことはありません。この点につきましては、率直に申し上げますが、私どもはそういうような意図からは全然離れて、保護法としての労働組合法並びに労調法の一部を改正するという考え方で終始したつもりであります。

春日正一日本共産党

○春日委員 ただいまの石野君の質問に対して、労働大臣あるいは賀來局長からの答弁があつたのでありますけれども、一体たれが改正を望んだかということに対して、今局長の答弁では、労働委員会がこれを望んでおつた、これには労資、中立委員全体の意向が反映されておる。そういう者が望んでおつたというような御答弁でありましたけれども、確かに労働委員会も改正を望んでいる。労働者も改正は望んでいる。しかし労働委員会の望んでおつた改正の方向というものが、はたして今度の案に出て來たような方向で望んでおつたか。そうではないと思う。たとえば前の試案に対する意見ではありますけれども、大体今度のもほとんど内容は同じでありますが、一つの例を言えば、全國労働委員会第三回連絡協議会の決議事項として、第二條については、労組法試案第二條第二項第一号はその趣旨を正確に表わすために、使用者の利益を代表すると認められるものを、業務の性質上使用者側に立つべきものと改める。あるいは第二項第二号については、組合に経費を支給することによつて、その御用化を企図している使用者の行為は、不当労働行為として防遏しろ、專從者の給與の問題については、急にそういうことをやると非常に混乱を起すと思いますから、猶予期間を設けて適宜にやれというような意見をつけている。さらにこの第二号の点については、御用化する傾向もあるけれども、そうでないものもある。これを政府が一挙につぶそうとしているのはいかぬ、というよう意見をはつきり出している。これは全体の試案に対する意見を通じてみても、あの試案ないし今度出て來ている法案に盛られているような傾向を、決して労働委員会が望んでいなかつた。このことは先日の公聽会における労働委員会の経験を持つた人たちの意見においても、はつきりそう言われておる。こういうことになると、今あなたのお答弁を聞いてみると、労働委員員が直してくれと言つたからこうやつて直してやつたのだという態度である。しかもこれをもつと具体的の例をもつて言うならば、子供が麦飯を食わされて食いたくない、白い飯を食いたいと言つて泣いているのに、麦飯を食いたくなければ食うな、と言つてとつてしまつた。それと同じ態度である。はたしてそういう態度で臨んでいるのかどうか。もう一つは労働大臣の答弁でありますけれども、労働大臣は労働組合のためによかれかしと思つてやつた。これはほんとうだと思う。労働大臣が惡かれと思つてやつたとすれば大問題である。だからほんとうによかれかしと思つてやつたというのは、当然だと思いますけれども、しかしそのことの判断は、決して本人の、主観とか、あるいは口から出す言葉によつて判断さるべきものではない、やはりそこに現われた具体的な事実によつて判断する。これは裁判の場合と比較するのはちよつと妙でありますけれども、やはり本人の口述書というものよりも――あんなものは値打がない、物的証拠がすつかりそろつておれば、断定するというのと同じことで、こういう法案を出して来て、大臣がいかに労働者のためを思う、労組の発展を思うと言つても、現実に出て來た法律、あるいは先ほど石野委員からもあげられた、この法律をつくるために、参考にしたと言われるあの資料、こういうものを合せて見るなら、明らかに労働組合を、資本家側と同じ立場に立つて見て、労働組合というものは不法なことをやるものだ、この通り惡いのだという建前から、押へつけるという意図によつてやつたと考えるよりしかたがない。こう解釈してさしつかえないかどうか、この点御答弁を願いたいと思います。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたします。本法案の作成にあたりましては、関係のいろいろの方面の意見を聞いてやつたのであります。從いましてたとえば使用者側から十の意見があつて、これを聞いたからといつて、われわれは十全部聞き入れなければならないとは考えないのであります。労働行政の責任にありますわれわれの立場、あるいは政府の立場におきましては、あらゆる方面の意見を聞きまして、最も妥当であると思う線に、この法案を持つて参つたということでございますので、その点はひとつ御了解願いたいと思います。

石野久男労働者農民党

○石野委員 先ほど私の質問に対して労政局長は、組合の運動はその初期のころよりもだんだんとよくなつて來ているけれども、一の惡いことでもあれば、それに対して、それを規正するための法律の改正が必要であるということを言われました。私はこの場合お聞きしたいのでございまするが、賀來労政局長は、法律の設定にあたりまして、――法律というものには、刑罰を科するところの法律がありますが、その法律は、はたして國民の間に全的に法が守られるということを前提として、これは出されたものであるだろうか、あるいはその中には、必ずその法を犯す者があることを前提として出されたものであるかということをお聞きしたい。もし前提となることとして、法を破る者があるということが言われるとするならば、その法の建前といたしましては、そういうことを前もつて予想して書かれるものだと思うのでございます。労働組合法の改正にあたりましても、大勢がよき方向に進んでいるときに、そのごく少数の者を重点として法の改正をするということが、どうもわれわれにとつて解せない。しかも立法府としましては、そういうような態度をもつて國民に面するということ、これは著しく人民を抑圧するものであるというような形になる。しかもこの法律の改正にあたつて、労働大臣は、しばしば法案の條章、あるい極東十六原則を守つて、労働法は労働者の権利を保護する法律として設定するのだ、ということを言明されております。保護するという建前からするならば、多数を保護しなければならない。少数は、それらの行政施策の中において、除除に漸進的によき方向に持つて行くというのが、建前ではなかろうかと私は思うのでございます。今一つの惡いことがあるものをとつて、法制を改正しなくちやいけないというりくつは、どのようなところから労政局長としては立てられているのかということを、いま一度お聞かせ願いたい。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたします。現行法の施行にあたりましても、当然現行法の第二條によりますると、主たる経費は使用者側が出してはいけないということがあります。しかしながら育成期にありました関係からいたしまして、当分の間すなわち約三年近い間は、これが施行に関しましては緩和的な態度で参つたのであります。しかしながら提案理由にもありますように、三年を経ました今日、内外の諸情勢から考えまして、もうすでに労働組合といたしましては、本筋にかえるべき時期になつている。從いまして本年の一月あたりから、組合に対しまして、現行法の施行はかような解釈のもとにやるべきであるから、すみやかにその方角にかえつてもらいたいということを、勧奨いたして参つたのであります。同時に法の改正も、その時期に立ち至つたという考え方で、今度の立案に当つたのでありまして、われわれといたしましては、大部分の組合というものは、非常に健全な歩み方をいたしているわけでありますので、この法案によつて一般人民、あるいは労働大衆を彈圧しよう、さような考えは一つも持つておらぬのでございます。

石野久男労働者農民党

○石野委員 角をためて牛を殺すことはよくないということ、これは特に為政者にとつて注意しなければならぬことだと思うのであります。ただいまも労政局長は、大部分の組合はよくなつて來ているということを言つている。その大部分の組合が、この改正法律のもとに、はたしてよくなるのだろうか、どうだろうか、よくなりつつあるものが、この法律の改正によつて、一層苦しめられ、一層縛られて行く。こういう形が出ていると私は見るのでございます。自主的の健全な組合をはぐくまなければならない。それを育てなければならないということは、特にこの法案改正の重点であつたと思います。その観点からいたしまするならば、一のものをためるために、九のものを殺すというようなことは、おそらく法律改正にあたつての基本的な誤謬であろうと私は思うのでございますが、その点については、どのようなお考えを持つておりますか。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたします。御質問は多分第二條あるいは第五号の点が、労働組合を非常に苦しめるものであるというふうな御趣旨のように拜聽いたしたのでございます。ところがこれらの点につきましては、先ほど石野委員の御指摘のように、この法律の施行のために、ただちに組合規約を改め、協約を改めなければなりませんものは、全部の組合ではないのでありまして、二割あるいは三割に当るかとも考えておるのであります。さような意味あいからいたしまして、われわれといたしましては、それがただちに全部の組合をつぶすということにはならない、必ず組合は、われわれの庶幾いたしておりますように、強いものに成長してくれることを、期待いたしておるのであります。同時に本法案におきましては、石野委員の御意見と思いますが、重点が二條、及び五條にあるという御意見でありましたが、われわれは全体にわたつての重点を考えておりまするので、特に二條、五條におきまして、組合は自主性、民主性及び責任性の明確な組合になつていただきたいということを庶幾いたしますると同時に、不当労働行為の章の明確化及び労働委員会の原状回復命令の規定等をいたしまして、そうして全体として組合の健全化をはかる。さような考え方を持つておることを御了承願いたいと思います。

石野久男労働者農民党

○石野委員 労政局長はこの法律案が改正されることによつて、いわゆる第五條の規定等によるところの届出の件については、全部に行き渡るのじやないということを言つておられますけれども、先日末廣博士の公述の中におきましても、東京都におきましてこの法律が改正された場合におきまするところの、いわゆる從來届出をしておるものが、あらためてその届出をしなければならない操作で、非常に混乱を來すであろうということを言われております。決して労政局長が言つておるように、全部が簡単な安易な見方で行けるものではないと、私は考えておるのであります。ことに制限を付してある期間内に、どうしてもこの法律に從うような届出をしなければならない、立証しなければならないということなどを考えます場合には、ただいまの労政局長の考え方は、非常に間違つておると私は思うのでございます。この法案全体を貫くところの政府の趣旨が、言われておるように、組合の民主化、あるいは健全化、自主性を確保するためにというようなことであるならば、その親心は、決してこの法案を貫いたものとしての成案にはなつていない。逆にその親心のために、組合が殺されて行くと私たちは見ておるのであります。この点について労政局長は、この法案改正にあたりまして各層の意見をお聞きになつたとおつやいます。ところが公述人の論ずるところによりますと、資本家側を代表する方のみがこれに対しての賛意を表しております。労働者側、あるいは中立側の意見によりますると、ほとんどのものは、本法案は、いましばらく愼重な審議をしなければならぬ、それの方が將來のために、もよろしかろうということを言つております。労政局長としましては、再三この問題について同僚議員に答弁をしておられるのでありますけれども、今あらためて私はお聞きしたいのであります。こうした公聴会に現われた空氣というものは、今日の各層の空氣を如実に代弁しておるものだと私は思うのでございまして、こういう各層の声を政府当局としてはどのようにお聞きになつておりますか。その意見によつてあるいはこれを撤回し、あるいは次期國会にまで延ばすというような御意見を持たれていないかということを、次官でもよろしゆうございますが、お答えを願いたいと思います。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたします。各方面におきましていろいろ意見があつたのであります。なお現在におきましても、あることは、ただいま石野委員の御指摘の通りでございます。しかしながら特に労政の責任を持つておりまするわれわれといたしましては、先ほど來あるいは午前中以來申し上げたように、各般の事情からいたしまして、この國会におきまして、本法案の御審議を願い、國会の協賛を得ますれば、この時期においてやるべきが、最も適当な時期であると考えた次第であります。御意見のように改むべき点は、まだ幾多もあると存ずるのであります。これらの点につきましては大臣からも御答弁申し上げましたように、労働運動というものは生きたものであります。從いまして常時変化もいたして参ると思うのであります。これらの事情を常時周密なる注意をもちまして、その実態に即應するように、しかもその線といたしましては、民主的な組合が健全に発達して行くように、日本の民主化の基盤として、労働組合運動がその十分な活動ができるように、対処して行かなければならぬと考えておるのであります。從いまして本法案を本國会から撤回するという考え方は、われわれとしては持つておらないことを御了解願いたいと思います。

石野久男労働者農民党

○石野委員 政府としても、この法案を撤回する考え方に立ちかえることは、とうていできないであろうと思いまするし、またその與党である民主自由党の諸君の考え方も、そうであろうと思うのでありますけれども、私といたしましては、この法案が労政局長が言うように、決して自主的な、民生的な、組合育成のためによきものであるとは、思つておらないのであります。これはどうかひとつ再考を促したいと思うのでございます。そこで私たちは、この法案の審議にあたりまして、先ほど來、再三再四にわたつて述べられた、いわゆる憲法の條章、あるいは極東十六原則の條章を守つて、そして保護法としてこの法律案の改正にあたつておるという、その政府の建前を前提といたしまして、私は次に各條にわたりまして、簡単な貸間を二、三試みてみたいと思います。  第一條の規定は、これは政府の説明にもありまするように、宣言的な規定である。そうして憲法二十八條を、より一層具体的に記述したものだということが言われておるのでございまするが、それははたしてこの第一條の中において、どういうところが具体的にそうなつておるのかということを、お尋ねいたします。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたしますが、第一條におきましては、憲法において規定されておりますところの團結権、團体交渉権、及び團体行動権を具体的に現わして行きますためには、労働組合というものをつくつて行くべきである。その労働組合が、使用者と対等の地位におきまして、團体交渉をし、かつ團体協約を締結し、その他團体行動をやることを、この法律で擁護することにある。さらに正当なる労働組合活動につきましては、刑事上の免宝貝もやる、かようなことが書いてありますことは、憲法の趣旨を大筋において表現しておると思うのであります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 憲法二十八條は労働者の團結権及び図体交渉権、團体行動権をはつきりと保障しておるのでございます。具体的に説明するということでありますが、この第一條に書かれておるような内容を持つものが、具体的なものであるかどうかということに、私はまず第一に疑問を持つのであります。これは野村公述人の公述にあつたと思いまするが、團結権あるいは交渉権、あるいは争議権というものに対しましても、この條文に書かれておるのには、すべてみな交渉においてとか、交渉するためには、という制限が付せられておるようにこの第一條は見られるのであります。憲法第二十八條の具体的な記述とは、このような制限を付することが具体的な記述であるのかどうかということについて御説明を願いたい。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 お答えいたします。労働組合法の今度の第一條の規定は、憲法の規定を具体的に示したものであるという労働省のお話、その通り間違いはないと思います。ただその憲法の規定をあれで全面的におおうておるかどうか。つまり労働組合以外の労働者の團体を、あれで禁じているというふうにもしとられるなら――それは労働組合法自身がいつておりますように、労働組合法の特別のサービスの提供を受け得るというような種類のものは、これは憲法の規定以上に出ているというふうに解してさしつかえないと思うわけです。

石野久男労働者農民党

○石野委員 ただいまの御説明によりますと、この規定に書かれておりますようなことが、憲法の二十八條のいわゆる労働権というものを全的に制約した意味でなくして、読み方を、そういうふうに読まないようにしてほしい、というような御意見であつたと思うのでございます。私どもは、具体的に記述するということは、憲法に保障してあるところのものを、より一層わかりやすくすることであつて、疑義をさしはさまないようにすることだと考えるのでございます。この條項を見まして、特に労働者側と資本家側との交渉の際において、この「交渉において」とか、あるいは「交渉するために」というようなことが、はたして労資の間における疑義となつて読まれないであろうかどうかということを、非常に危ぶむのでございます。私は、御説明のような観点から、こういうことが書かれておるとするならば、むしろこういうことをはつきりとはずして、現行法に書かれておりますように、保障するということをはつきり書くべきでなかろうかと思います。この点についての御見解を一つ。それからいま一つ、憲法においては團結権を保障するということがはつきり書かれております。この條項におきましては、擁護するということが書かれておる。擁護と保障するということの通俗的な語の読み方、これはどのように法律的には読まれるものであるかということについての御見解を承りたいと思います。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 お答えいたします。ただいまの労働組合法の現行規定によりますると、憲法の規定をそのまま書いたような部分があるわけでありますが、それでは実は繰返しにすぎないので、労働組合法のこの法律といたしましては、さらにそれを具体的に明示しようということで、ここにありますように具体的に書かれたわけでありますが、これはその本筋とも見られるものを、その筋に沿つて書いてあるというふうに御了解願いたいのであります。それから擁護するというのと、保障するというのとありますが、擁護するというのは、保障するということをもちろん前提としてのものであると解さなければならないと考えるのであります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 どうも説明は納得しかねるのであります。具体的に書くということが、憲法に書かれておることよりも狭義になるということであるならば、それは具体的ではないと私は思うのでございます。むしろ書かれておることがそのまま、どんな問題に適用してもわかりやすいということが、具体的でなくてはならないのであつて、憲法に書かれておることがむしろ狭義になつてしまうということでは、決して具体的ではないと思うのでございます。私は、具体的に記述するということの観点から、この條項が書かれておるということを率直に善意にとりまするならば、こういう文句は出て來ないと思う。ここに特にこういう前置きをして、それぞれの権利の擁護ということが書かれておるということに、非常に大きな疑義を持つし、ここにこそ改正しようという意図があつたというふうに私たちは思うのでございます。先ほど來、一方的な立場に立つてこの法制を改正するのではないという政府の答弁でありましたけれども、私たちの立場からすると、これはむしろ労働者に対しまして、憲法で保障されたものを労働運動の中においては、こういうような制約を受けて行使すべきであるというふうに、書かれておるものと考えられるのでございまして、そういうような意図が、この中に隠されておるのではなかろうかというような疑義を持つのでございますが、いま一度この点についてはつきりした御答弁を願いたいと思います。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 これらの表現の形式、あるいはその趣事旨につきましては、高辻局長から御説明した通りでありますが、われわれといたしましては、今御指摘のような意向は全然持つておりません。ただこの際念のために私自身の感想を申し上げますと、昨日でございましたか、土橋委員が、最後に時間切れになりましても質問をされたときの、あの労働者のためを思う誠意の態度につきましては、私も感激をいたしたのでありますが、私は実はこの法案の作成にあたりましては、さような意図のもとにわえわれの責任が侵害される、あるいは支配されるということにつきましては、断然われわれの名誉のために、さような意図は通らないようにという趣旨で、努力をして参つたものであります。從いましてこの第一條の表現において、さような意図が現われるというようなことは毛頭考えておらないのであります。この点は御了解願いたいと存じます。

石野久男労働者農民党

○石野委員 これは、ただ賀來局長がそういうように思つている、御了解願、いたいということだけでは、済まされない問題だと思うのであります。一つの法律ができますれば、八千万の國民に対して、この法律の適用がなされなければならないのでございまして、一人の解釈だけではなかなかそういうふうには行かないのでございます。現にこの法律をもとにして、餓死状態から脱皮しようとする労働者の運動が、今盛んに行われております。それに対して、そうした労働者側の疑義が解消されないような條項を改正法案の中へ盛るということは、私たちにとつては理解できないのでございまして、私はむしろこのようなことがこの具体的な記述の中から出て來るとするならば、政府はよろしくこれを前の現行法の文案にもどすべきであると思うのでございます。これを現行法にもどさない方がいいということについての、政府のいわゆる過去の経驗はどのようなところにあるかということを、いま一つ聞きたいのであります。  なおいま一つは、高辻政府委員にお尋ねしますが、いわゆる擁護というものは、保障を前提としてなされるものだということを言われました。保障を前提とするという意味から、この擁護が書かれておるならば、ここではこういう理解のしにくいような言葉にしないで、保障ということを言つて、なぜ惡いのかということについて御説明願いたい。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたします。現行法の第一條というものにつきましては、新憲法の施行されました今日におきましては、同じ文句でありますならば憲法に讓りまして、それの具体的な表現が必要である。先ほども例で申し上げましたが、現行法の一條二項におきまして、正当なる行為はというふうな表現で、その行き方といたしましては、社会通念によるというふうな簡單な書き方をいたしておりましたこと自体が、労資双方にとつて必ずしも適当でなかつた。從いまして、憲法の條章から出まする基本的な筋をここに明確に書くことが、組合法自身の了解を深めるものと考えてやつたことでございます。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 擁護と保障の点について重ねてのお尋ねでございますが、先ほど擁護というのは保障を前提としていると申し上げましたが、その意味は、擁護という方が保障よりも一歩先に出ているのだ、この法律によつて、たとえば不当労働行為というような、そういう憲法の要請している保障以上のものが、これに加わつておるというような意味で、擁護するという別な言葉を使つておるわけです。

石野久男労働者農民党

○石野委員 私は実は法律は非常に不得手なのでありまして、法律用語については十分な知識を持つておりませんので、あまりつつ込んだことをお尋ねできないのであります。しかし私たちの通念からいたしますならば、保障はきびしいものである、擁護というのはこちらの意思次第によりまして、擁護しようも、擁護しないも、それはかつてだ、受ける者からすれば、保障はいつでもどんな場合でも確保されておるものである、擁護はその場所によつて、その相手によつて、どうにでもかわつて來るものである、こういうふうに通俗的に私は理解するものでございます。もしそうだとするならば、憲法二十八條の保障ということが、この法律の第一條によつては、むしろ相手によつてどうでもなるというように、弱められて來ておるように私は理解するが、この理解は間違つておるかどうか。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 ただいま申し上げましたような趣旨で、ただいまおつしやつたように解することはできない、もう少し廣く解すべきであると、われわれは考えるものでございます。

石野久男労働者農民党

○石野委員 廣く解釈すべきであるということの意味が、私にはわからないのです。保障というのは、私個人にとつては、どんな場合でも保障されておることだと思うのです。特に憲法二十八條が、永久の権利として一切のものを保障しておる以上は、この保障は実に私たちにとつてはきびしい保障である。ところが擁護というものは、その場所によつて、相手によつて違つて來るのです。この考え方が間違つているかどうかということを、高辻さんにお尋ねしたい。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員  私の解するところは、保障といいますと、制限されないという消極的な意味にしかすぎないので、もう少しそれにさらに積極的にプラスする場合には、これは保障では足りない、擁護するというような積極的な意味合いが入つてないと、いけないように思うのであります。そういう意味において、先ほど御説明したように解すべきだと思います。     〔「もうよし」と呼ぶ者あり〕

石野久男労働者農民党

○石野委員 もうよしという声もありますが、これは実に重大な問題でありますので、もうよしでは治まらないと思います。保障というのはむしろ狭いもりであつて、擁護というのは廣いものだというふうに言われるけれども、保障というものは、私が保障されるという場合は、私が一つの権利を持つのだ、こういうふうに思います。ところが擁護というものは、私には権利がないというふうに感ずるのですが、これは間違いないでしようか。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 同じことを繰返してはなはだ恐縮でございますが、保障と申しますと、これは制限されないということだと思います。自由権の保障というような言葉から行きましても、それを侵害されないという、そういう消極的な意味が主であつて、さらに積極的にそれに付加されるというような意味合には、保障では足りないので、もう少し何かプラスされるような語感を伴う言葉がいいのではないか、こういうふうに考えるのです。

石野久男労働者農民党

○石野委員 これは混同するといけませんから、保障される者と、保障する者と、どちらかの立場に立つて考えるのがはつきりするのじやないかと思います。私は保障される者の立場に立つて、ひとつお答え願いたい。保障される場合は、保障された者にとつては、保障された事項は一つの権利として持たれるものだと思うのであります。ところが擁護するということは、擁護される者にとつては、私には非常に不安定なものだと思うのです。それは決して私にとつての、権利でも何でもないことになると思うのであります。從つてその條項に関しては、保障を受ける者は、御説明とは反対に、より積極的である。そして擁護される者の方が、その事項については、より消極的な立場に立つものだ、こういうふうに私は考えるのですが、それは間違いでしようか。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 法律が擁護するということを言つているのは、その法律によつて、特別な意味が法律的には與え、られているのである。擁護するという以上は、擁護される権利というものが、やはり法律上認められているということになるのであります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 法律が擁護するということになれば、その法律で擁護された者は、擁護される権利を持つということになるというのでありますが、しかし擁護されるということは、具体的な象については、それをきめるのは相手方である。擁護する立場の者である。擁護される者は、積極的にどれをどうせいということは私は言えないと思う。保障されている場合には、保障を受ける者は、どんな場合でもそれを主張し得る権利を持つのだ、こういうように私は思う。從つてここには大きな相違が出て來るのであります。憲法二十八條の労働権というものは、われわれ労働者にとつては保障されたところのものであるという場合には、われわれの権利としてそれが出て來るのであります。けれどもそれが擁護された場合におきましては、われわれにとつてはそれは積極的な権利としては出て來ない、こういうように私たちは考えるのでありますが、この点はいかがでありますか。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 擁護するという言葉について、擁護する者と擁護される者というふうにおつしやるのでありますが、擁護するというのは、実はこの法律が擁護するのでありまして、される者、する者というただいまおつしやつたようなそれとは――法律で擁護するというふうに考えていただかなければならぬと思います。

石野久男労働者農民党

○石野委員 いつも同じようなお答えになるのですが、労働者の側が保障を受けるというときには、権利として労働者がそれを持ち得るとわれわれは感じております。擁護という場合には、そういう権利が労働者にとつては積極的に持たれない、こういうふうに私は考えるのでありますが、その点についてはいま一度はつきりした御説明を願いたいと思います。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 たびたび同じようなことを申し上げるようになつて恐縮ですが、法律が擁護するという以上は、法律によつて擁護される権利があるというわけであります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 今度は逆の立場からお尋ねいたします。今は擁護される者の方からお尋ねしたのでありますが、今度は保障する立場からしますると、どうしても保障しなければならぬ。しかし擁護する立場から行きますと、擁護ということに対する認定は、その擁護する人の任意になつて來るのではなかろうか、こういうように私は考えるのですが、その点についてはいかがですか。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 それは擁護される方から言いましても、擁護する方から言いましても、実は同じでありまして、法律が擁護し、法律によつて擁護されるわけでありますから、そういうふうに御了解願いたいと思います。

石野久男労働者農民党

○石野委員 擁護するということと、保障するということの言葉の使い方については、非常に大きな疑義が存しておると私は思うのでございます。私自身法的な知識が非常に狭いものでありますから、この堂々めぐりしているものに対して、まだ十分に解明することはできませんけれども、疑義を残しております。いずれにいたしましても、擁護するという言葉は、私の見解をもつてすれば、憲法に保障されている條項について、非常に解釈が弱められているというように解釈するのでございまして、從つてこの條項に掲げておることは、政府は具体的に憲法二十八條を記述したと言うのでありますけれども、先にも申しましたように、すべての團結権なり、あるいは行動権というものに対して交渉においてというような局限された形容詞が上についておるのでありまして、そういうような意味からいつても、むしろその権利が制約されております。今の擁護という場合においても弱められている。むしろこの第一條は現行法の規定を一層弱め、一層ゆがめておる。從つてまた憲法二十八條の趣旨に沿い得ないものであり、またさきに労働大臣がしばしば言つておりまするところの、保護立法という趣旨をゆがめておるものだというように、私は考えておるのでございますが、その点についてひとつ御回答願いたいと思います。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 私どもの方では、ただいまおつしやつたような見解を持つておりませんで、反対の見解を持つておるわけであります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 反対の見解を持つているということにつきましては、それはおそらく、これが正しいのだというふうに、おつしやられるのだと思うのでありますが、そういうことになると、またもとへもどつてしまうことになる。どうも私の理解できないのは、交渉においてとか、交渉するとかいうような制限を付した言葉があることです。この点もう一度聞きますが、これは憲法二十八條の権利の範囲の問題ですけれども、この点で制約は加えられていないかどうかということを、はつきりひとつ御説明願いたい。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 憲法二十八條との関係でございますが、憲法二十八條を制約していないことはもちろんのこと、この法律によつて独自に、特別の手続あるいは救済方法なりを、さらにそれ以上に附加して規定しているということであります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 おそらく政府としましては、そういう答弁しかできないだろうと思います。この法律の改正にあたつては、少くと事も先ほど來何べんも聞いておりまするように、労働者諸君のその受益層の声は、むしろ無視されておると私は思うのであります。そこで私は一部の資本家の諸君、あるいは民主自由党の内閣であるところの吉田政府というものの、來るべき予算、あるいは経済九原則の実施とか、あるいは企業整備というようなものから來るところの厖大なる失業人員、そういうようなものから脱しようとするところの労働者のいわゆる労働権に基く攻勢をはばもうとする意図が、この法律改正の大きな重点になつておると私は考えておりまするので、それ以上の説明ができないのは、ごもつともだと私は思つております。もうこれでこの問題は、疑義を残しながらも一應おきます。

石田一松新政治協議会

○石田(一)委員 ただいまの説明によりますと、     〔委員長退席、三浦委員長代理着席〕この改正案の第一條は、憲法二十八條に保障した権利を、またより以上に附加しているということをおつしやいましたが、昨日私が質問いたしましたときに、政府委員の答弁が、非常に断定的なことをおつしやつたので、より以上私は追及しましたら、政府委員は改正案の第一條は憲法二十八條の本筋だけはあらまし具体化してある、こう言つたのです。そうすると、あなたは二十八條より以上のものを附加してい毛と言う、もう一人の政府委員は、本筋だけはやつておるということでは、非常に差異があります。それでは答弁にまつたく食い違いがあると思うのですが、そうじやないのですか。

松崎芳労働事務官(労政局労働法規課長)

○松崎政府委員 ただいま石田委員からの御質問でありますが、私が昨日答弁した点と、今高辻政府委員から御答弁になりました点とは、全然食い違いがないのでありまして、憲法二十八條の規定を、この案の第一條第一項におきましては、その本筋を漏れなく盛つております。さらにその本筋について、憲法が、たとえば今高辻政府委員の話のように、保障というような消極的な言葉を用いておるのを、擁護というような積極的な意味を持つた言葉で表わしているという点であります。

土橋一吉日本共産党

○土橋委員 私も昨日この問題では非常に討論をして、あなたの方に御質問したのであります。憲法第二十八條は團結権と團体交渉権、その他團体的行動権に関する権利を保障する、こう書いてあるのであります。ところがここに書いてある内容は、先ほど石野委員も石田委員も指摘しておりまするように、どういう内容かといいますと、その團体交渉権なら團体交渉権の内容を実現する、一つの技術的な方法の一場面を規定して、これが團体交渉権の内容であると、かようになつているように考えます。たとえばそのいい例は、ここに書いてありますが、地位の向上をするという内容の説明に、どういう地位の向上をするかということになつて参ると、「労働者が使用者との交渉に、おいて対等の立場に立つことを促進することにより」ということが地位の向上である。こういう説明になつておるのであります。ところが地位の向上には、やはり労働階級の経済的な地位の向上、社会的地位の向上、政治的地位の向上、さらに文化的な地位の向上というものが、考えられなければならないのであります。これが現行法の第一條の精神である。ところがこの内容を見ると、單に労働者が使用者との交渉において、対等の立場に立つことを促進するという説明である。從つてわれわれ一般社会においては、労働階級の地位の向上というのは、政治的にも目ざめて來るし、経済的にもどんどん上つて來る。文化的にも、また社会的地位においても、労働階級というものが上つて來るという内容を、含んでいなければならないにかかわらず、これでは單に対等の立場に立つというだけが、地位の向上になつて來ておるのであります。從つて次の第二項で「前項に掲げる目的を達成するため」云々というように、範囲が非常に縮小して來るわけであります。從つてそういう縮小する解釈をとつて、次の暴力行為の行使については、世界の学説においても異論のあるような――現行の刑法では、暴力という言葉はどこの條項でも使つていない。暴行という言葉は昨日の高橋さんのお話では、ほとんど暴力行為と同じだというようなことを言つておる。そういう労働階級にとつてはめいわく千萬な、考えてもいないような事項については、がんと大きく持つて來る。そうして地位の向上というような面については、非常に狭い幅でこれを規定しようとする。次の條項でもそうであります。團結権を擁護するという規定の説明に、「労働者がその労働條件について交渉するために自ら代表者を選出する」これはあたりまえのことである。何もそんなことは團結権の保障の問題にならないのである。それは組合の自主的な問題であつて、第五條において論議せられるべきものである。労働組合が自分の代表を出すのに、選出するというようなことで、どこが團結権を保障するゆえんであるか。それはむしろ解釈の問題である。次の條項も、團体行動を行うために自主的に労働組合を組織する、そういうことが團結を保障するゆえんだという。それも一つの方法であるが、團結権を保障することには、最も反動的な政府、政党官僚というものから、労働組合の組織をうんと守つてやるということがなければならないのである。そうでありましよう。團結権を保障してやるということは、最も反動的な政府とか、官憲とか、あるいは資本家とか分裂主義者というようなものから、その團結を徹底的に守つてやるということがなければ、團結の保障にならないのである。にもかかわらず、この中に書いてあることは、自分の團体交渉する代表を選出することだとか、自主的な労働組合をつくることだとか、そんなことは労働組合の「いろは」であつて、團結権保障の精神にならないのだ。そういうことのために、これが團結の保障である、團結権を保障してやつておるというようなことは――少くなくとも第一條はこの法規全般の宣言規定である。從つて宣言規定に、かような小さいわくをきめてかかることは、いずこに、労働階級の権利伸張のため、労働階級の利益のため、この法文が考えられておると言えるところがあるか、そこが私にはわからない。いかにあなたが詭弁を弄しても、この法律は第三章において、たとえば使用者と労働者との関係を規則する労働協約を締結するための團体交渉をすること、及びその手続の助成である、これが團体交渉の中身であるというのであるが、團体交渉というものはそういうものではない。一方においてはストライキをやるぞという威力をわれわれが持つて、資本家側がいかなる横暴をしても、ときにはストライキをやるぞというところに、われわれの労働条件を闘いとる本質があり、それが労働法規の内容に充満していなければならない。これが労働者の権利を擁護し、生活を向上せしめる基本的な原則である。にもかかわらず、ここに書いてあることは、單に労働者との関係を規約するのみである。労働協約というものは、労働者が團体交渉によつて徹底的に闘つて、その成果、その結論が出て、一定期間において取結ばれて、文書となつて現われるものである。問題はストライキを行うことの威力によつて、資本家側の惡いたくらみ、労働條件を低く下げておるということに対して、闘うことを保障してやることが法の精神である。これが憲法第二十八條である。この点が閑却されておるから、次の條項へ行つて、第二項に「前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。」こういうような免責規定を設けておつても、この範囲以外のことに対して、常に今後の暴力行使について、この項を適用して來るのである。この点をわれわれはあなた方に徹底的に言うのである。それでも間違いないというならば、確信をもつて御答弁を願いたいのである。これが答弁できなかつたならば、この法律は明らかに民主自由党を中心とする鈴木労政の反動のきわみの法律であり、全人民に対する明らかな暴令である。かようなものは憲法違反の法律である。かように私は断ずるのであるが、もしそうでないというならば、はつきり表明してもらいたい。それでもなお労働者の基本的な権利を擁護しておると言われるなら、はつきり條文をもつて説明してもらいたい。それをちやんと説明しなければ、この法律は明らかに労働階級に対するところの、行政整理とともに、労働階級の不平不満、生活の困窮というものから、生ずる憲法第二十八條に基く権利の行使をはばむところの、最も惡辣なものである。しかも日本語とも思われぬような、かようなわけのわからない法文で、民主自由党の本質的な性格を現わしておるものであると思う。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 労働者の地位の向上等を例にお引きになりまして、政治的に、あるいは経済的に地位が向上することこそ、地位が向上し、あるいはそういうことによつて対等の立場に立つことを促進するのだというお話は、まさにその通りだと思いますが、ここで申しますのは、その実質的な地位の向上そのものには触れていないのでありまして、その方法としての立場から、この筋をとつて規定しているわけなのであります。

土橋一吉日本共産党

○土橋委員 だから、あなたの――労働省の説明は、常に地位の向上の一の方法をさしておるではないか、技術的な方法にすぎないではないか。あるいは團結権を擁護するということも、團結権を擁護するいろいろな方法があるわけだ。その方法の一端を示して、これで團結権を保障するのだということに、全部これを帰納的に團結権という言葉の内容が、こういうもので團結権を保障してやるという規定であるということになつて來ると、第二項の「前項に掲げる目的を達成するためにした正当なもの」という範囲が非常に縮まつて来るのである。あなたは法律をやつておつて、この規定についてわからぬはずがない。基本的に、團結権を保障するための一切の行為について保障してやるといつても、それが刑法第三十五條の免責規定で、なお制限せらるべき事項もあるかもしれない。しかしながらわれわれはさようなやぼなことは言わない。三十五條の規定でも、その範囲によつて律せられるものがある。しかしながらこういう小さいわくを設けて、一つの技術的な方法の一端をあげて、これで團体交渉権の内容の説明であるというならば、團体交渉権を、この法律は徹底的に憲法に違反して規定したものである。この法律は憲法違反である。憲法にはそんなことは書いていない。條文を読んでも、明確に書いてある。「勤労者の團結する権利及び團体交渉その他の團体行動をする権利は、これを保障する。」と書いてあるのである。しかも憲法第十一條に書いてあるように、宣言規定がある。これが民主主義の基本的な原則である。「國民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が國民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び將來の國民に輿へられる。」とある。またこの憲法に違反をするいかなる法律も、命令も、詔勅も、政府の執行行為も、その全部あるいは一部を排除すると、先ほど石野君が説明したように、憲法の前文の後段にも書いてある。そういうことが民主自由党の政策規定であるならば、これは明らかに邪道である。なぜかならば、かように書いてある。平和を維持し、專制と隷從、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しなければならぬという大原則に立つている。從つて民主自由党が、自分の政策であるとして、かような法律を制定するならば、ちようどおとといの公聽会に現われたように、日経連の最も惡辣な、労働階級を苦しめているその代表の諸君の意見と、皆さんの意見とが一致しているのである。ここに一党一派に偏する政策を掲げて、國民の名においてつくられている國会の審議権を惡用して、これを国民に強行せんとするものである。ここまで至れば、何をか言わんや。明らかに憲法違反行為を民主自由党を中心とする鈴木労働大臣が行つている、こう断ぜざるを得ないのであるが、答弁を願いたい。

春日正一日本共産党

○春日委員 一緒に答えられると思うから、今のに関連して……。高辻政府委員の言われた擁護と保障ということの説明で、保障ということは制限しないことだ、こういうふうにあなたは言われましたね。それから擁護するということは守つてやることだ、こういうふうにも言われた。ところで、石野委員は受ける方の立場から説明したから、あなたのその説明は十分はつきりしなかつたと思う。法が保障し、法が擁護するとしても、保障するということになれば、制限の必要はないのだから、團結権、團体交渉権を保障するということは、それが刑法規定にも触れない限り、いかなる形で團体交渉をしようと、それは法によつても制限しないということが保障でしよう。ところが、擁護するということになると、法によつてめんどうを見てやるのだから、そこに手がかかつて來ることになる。そうすると、その保障というものは、制限されないものを、今度はめんどうを見て、手を加えて來るから、その説明から言えば、当然制限されるということになつて來る。だから、擁護するということが、労働組合が、初期で非常に弱いから、擁護して促進しなければならぬ、労働組合結成促進法案とでもして、労働組合に事務所を國費で立ててやるとか、あるいは組合の経費は國家で補助してやるとかいうふうなことならば、これは擁護するという意味も、ある程度通るけれども、そういうものがこの中に含まれているのではなくして、この擁護という意味が、法で手をつけてやる、制限してやるというので、この第二條及び第五條に出て來るように、これこれの規約を持たなくてはならぬとか、こういうストライキをやつてはいかぬというような制限ですね。文章で言えばこれを導き出すための一つの伏線になつている。この擁護という言集は、あなたの説明から言えばそうじやないですか。そうすれば、憲法の二十八條に保障されている制限しないぞと言つているこの條項に、明らかに違反するという結論に、あなたの説明自体がなつて來る。これは日本語の建前から言えば、当然そうなるが、その点どうですか。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 この憲法による保障と言いますのは、これは公共の福祉に反しない場合には、法律をもつても奪われないということが主眼であろうと思います。ところが、この法律は憲法に保障されたものの上に、七條にいわゆる不当労働行為の手続とか、あるいは二十七條による労働委員会の命令等の手続のような特別の保護をその上に附加しているのでありまして、保障ということと、そのことが矛盾するというふうには考えられないのであります。

春日正一日本共産党

○春日委員 それでは、今あなたは、労働委員会の調停とか、あつせんとか、そういうことを加えられておるというように言われましたけれども、今言つたように調停とか、不当労働行為の禁止というようなものは、やはり他のものからこの労働者の持つておる憲法で保障されている基本的な権利――團結の権利、交渉の権利、生きる権利、こういうものにそれが加えられて來る心配を除くために、当然この保障という言葉の中に入つておるものであつて、そういうものが特に憲法以上に擁護しているということにはならぬ。憲法以上に出たとしたならば、これは問題だと思う。憲法以上のことを、ほかの法律でさらにきめたとしたならば、これは問題である。憲法以上に出るなどということを、あなた方が考えておつたら、憲法というものが最高の法律ではなくなる。一番高いのだからその上に出る法律はない。そういう考えを法務廳がしておつたら、大問題であると思うが、その点はどうですか。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 土橋委員からの御質問を落しまして、はなはだ申訳ありません。この第一條の規定は、すべてを網羅している、保障の全部をここに書いてあるというふうに御解釈になりますと、それはそうではないのでありまして、その前から申し上げますようにこれは本筋と申しますか、そういうところを書いたにすぎないのであります。  それからもう一つ、憲法の保障する以上に出るということは、憲法違反ではないかというような御趣旨のように伺つたのでありますが、誤解がありますればもう一度申し上げます。それは憲法の保障するところのものは、特別の場合――公共の福祉とかそういうような場合は別として、そうでなければ奪われないことを言つているので、保障という消極的な意味以上の、何か特別なものを附加するということは、別に憲法違反というような問題は、全然生じないと思います。

土橋一吉日本共産党

○土橋委員 ただいまの御説明は奇怪千万であります。本筋を書いている、從つてあなたの御説明では、憲法第二十八條の件については、そういう心配はいらない、こういう御答弁だと考える。ところが、この法律の宣言的なことの書いてある第一條の規定の最後の結論をごらんになりますと、この法律はその手続を助成することを目的としておるのである。何も憲法に書いておる基本的な権利であるところの團結権、團体交渉権、あるいはその他團体的のもろもろの交渉権、そういうものを保障すると書いてはいないのである。ここに書いてあるのは、制限されたその地位の向上なり、あるいは團結を擁護する権利か何か知らぬが、ぼやつとしたお湯にもならない、ぬるま湯みたいなもの、それと團体交渉をするその手続なのである、そういうものを保護助成すると書いてある。從つてこの法律を、あなたの言うような結論に、一般の常識ある人が解釈するかというと、これは絶対に解釈しない。ここに書いてある制限された地位の向上、すなわち團結することの擁護及び團体協約を結ぶところの交渉をする手続、そういうものを目的として、本條はつくられておるのである。あなた方がそういうことを言うならば、憲法第二十八條が規定しておるような内容をきちつと書いて、たとえば本法においては労働者の團結権、團体交渉権、さらに爭議権を保障する。これによつて労働者の経済的、社会的、政治的、文化的地位の向上を期するものであると明記するならば、簡單にだれでもわかるのである。ところがこの法文を見れば、今申し上げたように諸種の制限をつけて、技術的な一つの方法のみでその地位の向上を表明し、あるいは團結の擁護の内容が、單にみずから代表者を選任し、團体交渉を行うために、自主的に労働組合を結成すること、これが書いてあるだけである。なせ資本家とか、反動政党、反動政府、分裂主義者が、労働組合の團結権を阻害するということを明記しないのか。なぜそういう解釈が與えられるように文字を表現しないか。その点を説明してもらいたい。反動政党とか、特に多数を占めておる政党が、自分の政策、規定をもつて、労働組合を彈圧することは、憲法がある以上は断じて許されないのである。そういう点をなぜだれでも納得できるように、きちつと書き改めていないのか。この法律は、そういう一つの技術的な方法を達成することを目的としているのである。從つて労働関係における爭議を、徹底的に押える法文であることは明白である。正当な闘う場所においての團体交渉というものを、この法律は否認しておるのである。その点について御答弁を願いたい。そうでないと言われるならば、この條文を書き改めたらいい。どの人が聞いてもわかるような法文に書き改めることが必要である。これは憲法が規定しているものであるから言をまたないわけである。これは單なる技術的なものとなつて來ることは、法律の常識である。この点明確に御答弁を願いたい。條文的に、法律学的に、たれが聞いてもわかるように答弁してもらいたい。あいまいなものではだめである。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 前と同じことを申し上げて何ですが、これは本筋を書いたのでありまして、それ以上の御説明はむずかしいと思います。

土橋一吉日本共産党

○土橋委員 政府は本筋だけ書いたと言われるが、こんな本筋しか書けぬと了解してよろしいのでありますか。あなた方の解釈で言う本筋――これは民主自由党、吉田内閣は、憲法第二十八條の規定について、こういう本筋しか表示ができない。われわれの考えておるのは、そういう狭い技術的の一つのわくにはまつた、しかも労働者の人権を保障しないようなものではない。しかるにあなた方の考えはそんなものであると、かように了解してよろしいですか。

大橋武夫民主自由党

○大橋委員 ただいま土橋委員から同じことをたびたび御質問になりまして、政府からも同じようなお答えがあつたのでありますが、ただいまの土橋委員の質問に関連いたしまして、私も政府に対して質問いたします。  まず第一は、第一條に掲げております事項は、労働組合の團結権、及び爭議権、あるいは團体交渉権、こういうものを労働者が行使する場合の手続並びに組合を設立する場合の手続、それから設立せられた組合、あるいはそれらの労働交渉の手続に対して、この組合法がいかなる保護を與えておるかというようなことを規定してある。こういうふうに解釈してよろしいでしようか。     〔三浦委員長代理退席、委員長着席〕

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 ただいまお話がありました通りに解してよろしいと思います。

大橋武夫民主自由党

○大橋委員 そういたしますと、憲法第二十八條の規定と、この第一條の規定は、なるほど同じ團結権、同じ爭議権、同じ交渉権を規定してはおりますけれども、憲法というものはそれがいかなる場合においても、公共の福祉に反せざる限り、國家の権力によつて奪われることがないということを規定しておるのであるし、またこの第一條は、これらの労働組合の爭議なり、交渉なりが、どういうふうに運ばるべきものであるかということを規定しておるのであつて、一つは自由権の保障であり、一つはその法律によつて定められたところの、それらの組合についての法律上の別個の事項を規定しておる。自由権そのものの規定ではなくて、それを行使する場合の、しかも自由権の全部ではなく、その自由権の一部について、具体的にこの法律に規定してある事項についての権利義務関係を、この第一條では規定してある。こういうふうに解釈してよろしいでしようか。

高辻正己法務廳事務官(法制第三局長)

○高辻政府委員 お答え申し上げます。ただいまのお話でございますが、先ほど申し上げましたことを繰返すことになりますが、人権の保障という以上に、独自にこの法律に從つて、労働組合に対しては憲法で保障されておるそのこと以上に、特別な手続、特別な救済方法を與えようという部面があるのでございます。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 私は議事進行についてちよつと発言します。政府委員の答弁は、昨日と今日とまつまちの答弁になつておりますし、信念がないと思います。これではこの審議は進まないと思う。少くとも政府のそれぞれの立場における最高責任の地位にある者が出席して、統一ある答弁を願いたいと考えます。そうでなければ、同じことを何回繰返しても、答弁がかわつてくれば、審議は進まないと考えますので、どうぞ委員長はそういうふうにとりはからつて、この委員会がスムースに進行するようにお願いします。

石野久男労働者農民党

○石野委員 先ほどからの高辻政府委員の説明は、やはりどうしてもわれわれにとつては理解ができない。ただいま前田委員からも、議事進行に関しての意見がありましたように、政府はもつと統一ある回答をしていただかなければならないと思うのでありまして、でき得るならば、委員長にそのような手続をしていただきたいと思うのであります。

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 ただいまの前田君の動議に御異議ありませんか。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 御異議がなければ、さように決定いたしました。質疑を続行いたします。

石野久男労働者農民党

○石野委員 ただいまの動議によりまして、責任者が参りましたときに、この第一條の後段の質問をいたしたいと思いますから、一應第一條はこれで保留しておきをす。  第二條の規定につきましては、本條の規定は第五條によつて立証されなければ、本法及び労調法の手続に参與する資格及び保護を受ける資格を喪失するということになるわけでございまして、立証した証明は、本法の改正案の第二十條、第二十四條によつて労働委員会、特に公益委員の権限に置かれておるのでありますが、その第一條、第二條のことは、しばしば他の同僚委員が意見を述べておりまするように、また公述人の多くの方々も指摘しておりまするように、組合の自主性と民主性を抑圧し、ぶちこわすものであるというふうに考えるのでありまして、公益委員のみの権限のもとに置かれるということは、それに一層拍車をかけるもののように理解するのでありますが、これは明らかに憲法の精神にも相反することにもなりまするし、また組合を弱体化するように思うのであります。第二條の全体の規定は、そのように私ども理解するのですけれども、政府としましては、これについてどのようにお考えになりますか。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたします。第二條は現行法にもあります通り、かような状況にありまする組合は、組合として認められないという規定であります。われわれといたしましては、現行法におきまして使用者の利益を代表する者が加入する、あるいは主たる経費を使用者に仰いでおる、あるいは政治活動のみを目的とする、あるいは共済事業を目的とするもの、これらのものは労働組合としての資格がないというので、現行法もそれを現定しております。この現行法を明確にいたしますために、詳細にいたしたにすぎないのでありまして、現行法の通りであります。これをゆるめ、使用者側の利益を代表する者が入る、あるいは使用者から金をもらう、そのこと自体が組合を弱めるものとわれわれは考えておるのであります。なおこれに関連いたしまして、中立委員のみがこの審査に当ることは、組合を弱めるというようなお話でありましたが、われわれはさような考え方はいたしていないのであります。今日までの状況から見ますると、中立委員のみがこれに当ることが至当と考えて、立案をいたしたのでございます。

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 檢務局長はお急ぎのようですから、前田種男君。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 私は労働大臣と檢務局長同席の上で二、三の点をお聞きし、たいと考えます。  第一番は生産管理の問題が正当か、合法か非合法かという問題は、昨年來、あるい一昨年來、いろいろ問題になつておるわけでありまして、昨日もこの改正案の條項の中にあります「正当なる行為」の解釈について、相当意見が出て來ておるわけでありますが、正当なる行為の解釈についても、いろいろな見方があろうと私は考えます。昨日大橋委員は第一條、第七條、第八條の「正当なる」という文字の解釈は、いろいろ違うべきが妥当だ、またこの解釈について政府は統一した姿で臨むべきだ、その結論が得られていなければ、至急に研究して次の機会まででも、この解釈を統一すべきだと言つておられましたが、私は大橋委員とは反対の見解を持つております。この改正案に盛られております「正当なる」というこの解釈は、文字通り解釈して至当だと考えます。もしここに一本の線を引きますならば、その線の裏をくぐつて、いろいろな不正行為が行われることが予想できるのです。私はあくまで「正当なる」というこの文字の実体は、個々に起きました一つ一つの事件それ自体を見て、適当な、公正な態度で政府が臨めば、それで足れりと考えるのであつて、一定の見解なり、あるいは線を引くというやり方でやりますと、結局弊害がまた生れて來るという点も考えますので、この点について、もう一度檢務局長のお答えを願つておきたい。全体の生産管理の問題について檢務局長はどういう見解を持つておられるか、あわせて御答弁願つておきたいと思います。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 お答えいたします。爭議行為その他組合活動の当不当という問題につきましては、われわれはどこまでも、その態様の非常に複雑なことでありますとか、これに対して用いる各人の用語の混乱といつたようなことを考慮して、具体的にこれを見きわめて行きたいという考えを根本的に持つております。それから生産管理の問題は、生産管理の定義そのものが、また人々によつて使い方が違うのでありますけれども、いやしくも使用者の反対にかかわらず、いわゆる生産管理をやることは、一般にいつて不当であると考えております。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 いまの局長の答弁でありますが、生産管理の問題も、合法か非合法かということをきめるべきものではないと私は考えます。これは起つた事態を見きわめて、当局が適当な処置を構ずべきだ。特に最近のように賃金不拂い、遅配が続いて参りますと、責任をのがれるために、事業主が雲隠れをする、あるいは責任を回避してなかなか明確にしないというような場合が出て來るわけであります。生産管理が非合法だという結論は、労働組合がむちやをやるから非合法だということが、印象的に残つておりますが、その逆が――最近のように経済界の不況の事情が深刻になつて参りますと、むしろ事業主が非常に惡質な行為を行う場合があるわけです。こういう場合に、なおかつ生産管理が非合法かどうかという問題になつて來ますと、十分内容を検討しなくてはならないのでございまして、一概に生産管理は非合法だと言うべきものではないと私は考えます。結論から申しますならば、あくまでその実態を見きわめて、これは正当にあらざる行為だ、これは正当な行為だという断定をすべきだと考えますが、この点に対する労働大臣並びに檢務局長、双方からの見解を承つておきたいと思います。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 檢務局長もただいま申したように、普通の場合において経営者の反対を押し切つて行われる生産管理、そういう場合には不法であるということは決定しておることでありますが、特殊の場合、前田委員の指しておられたような極端な場合そういつた場合には、特殊の事情を十分考慮するという余地は残つておると思います。原則として今申したような、経営者の反対を押し切つて行うような生産管理が非合法であるという解釈には、かわりはないと思います。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 生産管理が一般に不当であるということは、不適当ではないかというお尋ねでありましたが、この際資産管理に対するわれわれの見方を一應明らかにしておきたいと思うのであります。  われわれは生産管理が不当だと申しましても、ただちにこれに対して檢察の活動をしようというふうには考えておらない。ではどういう意味であるかと申しますと、第一に使用者側はこれに対して自由に対抗手段をとることができるということであります。すなわち生産管理に入ろうとする前に、あらかじめ工場閉鎖をすることはできます。この場合に生産管理を強行しようとすれば、必ずそこにいわゆる錠前をねじ切るとか、表に立つておる番人を押しのけて入るとかいう現象が起るのであります。すなわち暴力違反であります。それから生産管理に入ろうとして、資材倉庫のものを取合いするというようなところで、再びそういう問題が起るのであります。次にすでに表面平穏に労働者側が生産管理に入りまして、すなわち工場を占拠してしまつた後において、これをもし使用者側が奪還しようとしますれば、そこに使用者側の暴力行為が起ります。たとえば高萩炭鉱事件のごときものであります。そういう場合には、もちろん使用者側の暴力を許しません。そのときには、それではどうすればいいのかという場合に、いわゆる生産管理は正当であるというような弁解で、何らの救済措置もないのではないかというような誤解が、一部にあるのではないかと見受けられるのであります。この場合には自力救済は使用者側にとつてできない。暴力を伴いますから、当然できないのであります。そのかわり私人対私人の問題を救済できない場合は、これは民事上の訴訟をいたしまして、いわゆる仮処分なり、本訴の請求なりをもつて、工場の占有ということを、正当の軌道に乘せるということができるのであります。現在までに民事裁判所において数十件のこの種の事件がありますが、その際に判決その他で、いろいろの理由は言つておりましても、組合側の生産管理をそのまま放任したという事例は一件もございません。すなわち全部組合側の自主的な占有というものを解きまして会社側に返すとか、あるいはいわゆる法定管理と称して、第三者の占有にゆだねるのでありますが、必ずその場合には、裁判所の監視のもとに、法律上のわくのもとでやることであつて、組合側の自主的な一方的な工場占拠というようなものとは、本質的に異なるのであります。そういうふうな結論は、やはり生産管理が不当であるから出るのであつて、そういう意味で申しておるのであります。もしこの種の民事訴訟の結果の裁判に対して、さらに生産管理を強行続行しようとすれば、そこには必ず暴力違反が起るのであります。從いまして今回の法案では生産管理を特にうたつてございませんけれども、それはかえつてその方がよろしい。つまりできれば当事者間の対抗手段にまかせればいいのであつて、やむを得ない場合のみ國家が介入する、こうい考え方をわれわれとつておりますので、生産管理をあらかじめレツテルつけて、どうしようという考えはございません。しかしながら生産管理を強行しようということは、暴力をあえてするという前提なくしては、どうも行いがたいのではないかとわれわれは見ております。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 この生産管理の問題については、末端のそれぞれの機関においては、いろいろ行き過ぎた行為が過去においてもあつたと思います。檢察当局の態度においても行き過ぎた点があつたということも考えますので、この点はどうぞ末端の機関に至るまで、生産管理の問題の取扱い方等については、愼重なる態度をもつて臨んでいただきたいということを希望申し上げておきます。  それと相関連いたします第一條第二項の暴力行使の問題でございます。これは本委員会の審議の焦点なつておる箇所であります。私がこの点について観点をかえて、大臣並びに局長にお尋ねしたいと思いますことは「暴力の行使」というこの文字が挿入されなければ、現行法のもとにおいては、どうにも当局は手をつけることができないということを明確に言い得られるかどうか。言いかえますならば、今日ありますいろいろな法規によつて、現行の法働組合法においても、いわゆる暴行その他暴力を行使したというような行為に対しては、当然当局が正当な立場に立つて取締りができるはずだと私は考えます。それが今日まででき得なかつたのは、ここにこういう字句がなかつたから、でき得なかつたとおつしやるのか、あるいは当局がようやらなかつたという、いわゆる政府の責任であるのか、その反対に、ここにこうした文字を加えたために、今後は取締りができるという解釈ができるのか、あるいは取締りする場合は、どういう法規によつてやられるかという点が、問題になつて來るわけであります。これは大事なところでございますから、双方からひとつ御答弁願つておきたいと考えます。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 ただいまのお尋ねの点でありますが、この「暴力の行使」という文字が入つてからと、從來と、運用上少しもかわりません。それではなぜこのような文字を入れたかと申しますと、從來実際に違法な爭議行為として検察の方面に現われて参りました事案の中で、明らかに労働者諸君が労働組合法を誤解しておりまして、暴力もまた許されるのであるということで犯したと認められる事犯が、二、三にとどまらないのであります。そのようでは、まことに無用の犠牲者を出すということになるのでありまして、これはぜひとも明らかに法律に書いて、あらかじめそういうところに落ち込むことのないようにという必要があると考えたのであります。從いまして、われわれといたしましては今回の改正によりまして、この種の不祥事件は從來よりは減つてくれるものというふうに期待しておるのであります。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 檢務局長の答弁と同じでありまして、暴力的な行為が正当視されるはずはないのでありまして、これを入れておく方がはつきりする。そして効果もあるという見解を持つておることを申し上げておきます。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 令の局長の答弁を聞いておりますと、奇怪に聞えるのです。入れてあつても、入れてなくても、同一だということを言つておられます。しかし今日までの実績の上において目に余るものがあつたから、入れておく方がよかろうという結論のように答弁されたと思います。しかしながら現行法においても、十分暴力を行使した行為というものは取締りができる。刑法その他の法規があるはずです。それが目に余るものがあつたということで、取締りができなかつたと言いますならば、これはむしろ政府当事者、検察当事者の責任だと私は考えます。むしろ当局がなすべきことを、法の命じておることをやらずにおいて、法の不備だという言い方は、これは許されないと考えます。この四つの文字を入れることによつて、行き過ぎた今までのような行為が未然に防止できるあるいは取締りができるということを考えられますならば、これは大きな間違いだと考えます。私はこの意味において、むしろ今日まで行き過ぎた行為を見のがして、そのまま寛大な処置をとつたというやり方――そうした好意は、ある意味においてはありがたいが、しかし國家治安の立場から申しますれば、当然取締るべきは嚴として取締るという檢察当局の態度が、確然として行われなければならないと考えます。そうした不備がはたして今日までいろいろな法規上にあつたとするならば、私はそれを認めますが、この四文字を加えることによつて、これが完備されるとは考えられません。どうしても当局の態度を糾彈しなくてはならないという結論になつて参るわけでございまして、この点について、もう一度檢務局長の答弁を願つておきたいと考えます。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 私の答えが不徹民でありましたか、十分の御了解を得られなくて遺憾であります。從來でありましても、何もこの暴力の行使というような文句がなくても、取締りをすることが法律上もできましたし、またやつて参りました。ただ実際に檢挙いたしました事件で、たとえば具体的に申し上げますと、東洋時計の上尾工場の場合、あるいは前橋の泉機械のような場合に、明らかに組合側が、暴力でやつてもいいんだというような誤解に基いて、大勢の犠牲者を出しておつたと見えるのであります。でありますから、そういうものは、今後はこういう法律にはつきりといけないと書いて、やつぱりいけないんだなあということで自重されまして、無用にこの刑罰に触れるというようなことがないようにというのが、われわれの念願であります。決してこの改正によりまして、何らか刑罰法規というものが、つまり犯罪の種類というものがふえるものではございません。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 今の局長の答弁を聞いておりますと、さらに私は了解に苦しむのでございます。多数の爭議團が、暴力を行使してもかまわぬというような認識のもとに、名数の犠牲者を出した。そのために、こうしたものを置いておくと明確になるという御答弁でございますが、私に言わしめますならば、先ほども申し上げましたように、むしろ当局の態度が明確でなかつたがために、そうした印象を爭議團に與えたと言いたいのでございます。むしろ当局が明確な態度を持つておりますならば、決して國民が、あるいは集團をもつて爭議團を結成しようとも、少くとも暴力の行使というものを是認する者はないと私は考えます。しかしこれは勢いに余つてやる行為もありますが、少くとも当局が――当局という意味は必ずしも檢察当局ばかりを言うのじやありませんが、それぞれ國民が間違わないように指導し、あるいは注意をするという、指導の責任にある者があるはずだと考えます。私はそうした意味において今申し上げております。  さらに先ほど來双方から、この暴力の行使の文字が挿入されておつてもなくとも、結局内容的には同じだということをおつしやられましたが、私はこの法の体裁から申し上げましても、労働保護法の、しかも第一條の劈頭に暴力の行使という字句をうたわなければ、日本の労働組合運動はやつて行けないというようなこの印象が、一体世界の労働組合に対して、世界各國に対して、どういう結果を與えるかということを憂うるものでございます。少くとも私は、この文字を挿入することによつて、他に非常な重要な効果があるといたしたならば別でございますが、この字句があることによつて、むしろ労働組合法が非常に惡いものになつてしまつたという結論になるわけであります。まして保護立法である労働立法に、暴力の行使というような言葉を使うべきものじやない。過日來同僚委員がいろいろ言われたように、刑法その他においても、暴力行為等の処罰以外には、暴力の行使というような字句は一項目も使うていないというような現状のもとにおいて、しかも労働組合法の第一條にこういう字句を使うということは、はなはだぼくは國のために残念だと思います。健全なる労働組合の発達のためにも遺憾だと考えます。どうしてもこの字句というものは、さらに政府が考慮されなくてはならない。しかしどうしてもこれをつけなければ、今日の労働組合運動を是正することができない、いわゆる政府から言いますならば、穏健な、まじめな労働組合にならないという認識なら別でございます。しかしそのことによつて、決して政府の言うようなことにはならない。むしろ逆の結果になるおそれが、多分にあると思いますが、私は日本の労働組合運動の健全な発達のためと、日本の國の再建のために盡す労働組合の使命を思えば思うほど、この字句を削除していただきたいと考えますが、もう一度この点について、大臣並びに局長の御答弁を願つておきたいと考えます。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 御意見の根本、それから御意見の労働組合というものに対する惻々たる気持はよくわかりまして、ごもつともの点も感じられますけれども、しかし現在の段階において、この條件のもとにおいては、これを挿入しておく方が妥当であると私どもは考えております。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 今まで政府が、やるべきことをやらずに、そうしてその結果があつたからといつて、こういう改正をするのはいかぬじやないかという第一点のお尋ねと思いますが、檢察といたしましては、先ほど事例にありました事件につきましても、ちやんとこれを檢挙し、処罰を求め、実際に有罪の裁判も受けておるような次第であります。やるべきことは実はやつておるのでございます。それからそのほかに、いろいろ何か政府として一般に知らしめるような方法を講ずるのも、これは一つの方法かと思いますけれども、行政府がそういう解釈をいろいろ発表するとかいうよりは、やはり國会において法律によつて、その点を必要であれば必要なりとすることが、よろしいのではないかというふうに考えるだけであります。もちろんこの種の言葉をこういう法律に出しますことは、できれば私も避けたいと思うのであります。その点は御同感でありますけれども、しかし遺憾ながら從來、及び今日におきましても、いまだにこの改正の必要があるように感ずるのであります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 今の答弁でございますが、私が先ほどの答弁に対してさらに申し上げたように、こういう字句がないと、労働組合の者が暴力を行使してもよいということを認めてやつておるというような認定、これが間違いだと私は考えます。勢い余つてそういうことになつたかもしれませんが、少くとも今日労働組合を結成しておる者が、暴力を行使してもよいというようなことを、是認しておるものはないと私は考えます。たまたまそうした事件があつたことを指摘されたのでありますが、それはたまたま起きた事件の処理でありまして、そうしたことを是認する者があるから、暴力の行使というものはいけないという文字を労働組合法に使つておけば、そうしたことはないようになるだろうという親心は、なるほどけつこうです。しかしそれによつて実際問題がうまく、あるいは少くなるものではないと私は考えます。私はそうしたことは、むしろもつとほかで、高い廣い立場から、國民教育の必要があろうと考えます。ここにそうしたことを挿入することによつて、防げるものではないと私は考えるのであります。しかもこの暴力の行使という解釈が、複雑多岐であります。この解釈について、容易に結論が得られないような字句を使うというのは、さらに私が過日申し上げましたように、これを口実として、労働組合に対して官憲の干渉の糸口を與え、中央の官廳の幹部は、今答弁されたような氣持でおられるかもしれませんが、全國末端に至りますところの官憲の態度というものは、必ずしも中央の幹部の意思通り動くものではございません。この法規の命ずるままに、あるいはかつてな解釈によつて、労働組合に必要以上の干渉をするという口実が設けられるのでございます。それから來るところの結果というものは、労働組合の健全なる発達でなくして、むしろ必要以上に労働組合が官憲との間において、あるいは政府に対して、あるいは社会体に対して、いろいろな点が話題になるようなことを惹起するおそれがありますから、そうしたものは、いわゆる載せても、載せなくとも同一だというようなことでありますならば、むしろ削除した方がよいのではないかというように私は考えます。この点に対する答弁がいただけますならば、もう一度お願いしたいと考えます。  さらに私は質問を続けたいと思いますが、他の人の質問もございますので、一應私の質問は留保いたして、この程度でおきたいと思います。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 運用が濫用にわたるのではないかという御心配の点は同感でありますので、運用につきましてはもちろん十分に注意をいたし、この國会における審議の経過なんかも、十分に末端に傳えるつもりでおります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 今の問題に関連しまして――ただいまの前田委員の質問に対しまする最後の御答弁でありましたが、運用にあたつては、國会における審議なども末端に十分浸透させるつもりだという御言葉でありました。先ほど局長の説明によりますと、この暴力行使ということが、書いてあつてもなくても、すでに今までもその筋においては十分なことをやつておつたのだ。こういうような御説明がありました。その通りだと思います。至るところで、そのために、かえつて労働者が迷惑をこうむつておる事例がたくさんあつたと思うのであります。ことに集会等の場合におきまして、暴力行為云々ということが書いてあつた、ないにかかわらず、官憲がこの文字から來るであろう労働運動に対する介入なり、あるいは官憲の支配というようなものが、その集会に及ぼされた例が多々あるのであります。私どもは憲法の二十一條において集会の自由を確保されておりますし、また労働組合十六原則の第三項におきましても、自由な集会、言論、出版並びに放送施設利用の権利を有すべきである、労働組合に対して差別待遇をなさるべきものでないということが、はつきり明示されておるのであります。今日この暴力行使の規定が置かれます場合には、從來でも、この條項がなくても官憲がすでにやつておつたことを、前田委員も言つておるように、呼び水を注ぐような形になつて、官憲の労働運動に対する介入なり、支配なり、干渉というものが、起きて來るであろうということを心配するのであります。局長の説明によりますと、なるべく、下部にまでこのような國会における審議状況を浸透させて、注意するのだといつておりますが、それだけでは私たちはとても滿足できないのでございます。全國の労働者はそれでは滿足できない、私は從來いろいろな官憲の労働運動に対する圧迫なり、干渉というものをまざまざと見ておる、昨年の八月二十八日における日立におけるあの事件のごときも、明らかに官憲の干渉であつたとわれわれは見ております。また去る三月大阪においても同じような事件が起つておりますし、北九州においても、またこれに類似のいろいろな事態が出でおる。このようなことから考えますと、この條項が入ることによつて、將來非常に官憲の労働運動に対する干渉が容易になり、しかもきびしくなつて來るであろうということを考えるのでございます。檢察当局としましては、このようなことに対して特に何らかの御配慮をされておるか。それは全然考慮しなくてもいいというのであるか。その点をお聞かせ願いたいと思います。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 ただいまのお尋ねの点は、直接労働運動という問題ではありませんけれども、これと密接な関連を持ちます集会、あるいは表現の自由の問題であります。御指摘のようないろいろな事件がございましたが、私どもは自分らの力のできる限り、憲法的な解決をいたそうと思つて努力いたしております。この程度で御了解願いたいと思います。

石野久男労働者農民党

○石野委員 ただいまの説明だけでは非常に納得が行かないのでございまして、特に暴力の規定につきましていろいろな議論のあることは、昨日來盛んにこの委員会において論議されておることでも明らかであります。暴力それ自体についての疑議についてはさしおきまして、この暴力行使云々という條項が入ることよつて、最もわれわれの憂うることは、その点から來る官憲の介入ということが危惧されるから、特にこのことが大きい問題として論ぜられるのだ。もしこのことがわれわれの予想するような形において、官憲の労働運動に対する干渉、介入ということになつて参りますならば、この條項はやがて、かつてありました治安維持法のような形へ逆行する一つの呼び水にもなるというように考えるのでありまして、この点について積極的な――このような條項を労働者に押しつける改正案を持つ以上は、それに対処する考え方を聞いておかなければならないと思うのでございます。私たちはこのような條項は、他の法律によりまして十分律せられるものであり、ことさらに労働組合に対して――個人としてのものでない労働組合に対して、こういう規定を必要としないというように考えております。どうかひとつこの法案を設定するにあたつての当局の、特に檢察当局におけるところの、今後そういうような不備を來さないような着意を、はつきり知らしておいていただきたいと思います。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 官憲の弾圧を起さないように、どのようなことを考えておるかというお尋ねでありますが、われわれといたしましては、すでに來月全國の労働係の檢事を招集いたしております。その際に今回の組合法の成立、あるいは成立の経過なんかを詳しく話をして、徹底させたいと思うのであります。それから各警察に対しましても、これは直接の指揮権は限られた場合のみでありまして、一般的にはございませんけれども、十分に各種の連絡の機会を利用しまして、徹底をさせたいというふうに考えておるのであります。それから特に重要なる事件等につきましては、常に注意しておりまして、その個々の問題につきまして、始終これを調査いたしまして、改むべき点があれば、次の機会に再びそれを起さないようにというような手を、現在もいろいろ打つておるのであります。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 ただいまの点は、私自身に対する御質問であつたかどうか存じませんけれども、重要な点でございますから、私からも率直に考えを申し上げておきます。あの言葉が官権の濫用というような意味に使われるということは、立案の当時から毛頭考えておりませんし、もし不幸にしてさようなことになりましたならば、立案し提案した私どもの趣旨とも反するものでございまして、私どもはこの点につきましては、そういうことがないように、十分注意いたしたいと思います。

春日正一日本共産党

○春日委員 ただいま、ついでにちよつとはさみたかつたのでありますけれども、この前の前か、いつかの会議で政府委員の方から、大体労働組合は昔から見ればずいぶんおとなになつて來た、團体交渉なんかも上手になつて成果をあげているという報告がされておる。そういうことを頭に置けば、もうずつと古い昔の東洋時計の問題だとか、それから先の北海道の人民裁判の問題にしても、もちろん労働者の側から言えば、言い分はいくらもあるのだが、しかしそんなものを一つか二つ引出して來て、だから暴力を入れなくちやならぬということには、私はならぬと思う。もうずつとおとなになつたのですから。しかもこういうものを入れることによつて、先ほど前田君の言つたように、大阪の事件とか、日立の事件とかいうように、官憲の暴力が促進されるおそれがあるということ、もしもあなた方の論理で行つて、人民裁判があつたから、東洋時計の事件があつたから、今後もそういうおそれがあるというのなら、大阪の事件があつたから、日立の事件があつたから、官権の濫用されるおそれがあるということも、当然成立つわけです。もしそういう論理で、この暴力云々いうことをどうしても入れなければならぬというのなら、それに並べてもう一つ但書を入れて、但し官憲はいかなる場合においても、不当に暴力を行使してならない、これをつけ加えるべきだと思う。そうでなければ私は片手落ちだと思うが、どうですか。ごれはりくつじやない、実際の問題です。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 具体的の事例としてあげましたのが、時期が古いじやないか、今日はそういう必要はないじやないかというお尋ねであつたのでありますが、どうも現実の事件を見ておりますと、決してそうは言えないように考えておるのであります。それから官憲の弾圧につきましては運用上十分注意いたしまして、その点はそういうようなことの起らないようにして参りたいというふうに考えております。

土橋一吉日本共産党

○土橋委員 ただいままでの御説明によりますと、暴力の行使という観念の中身というものが、説明されてないのであります。それで私はこの間もあなたから御説明があつたのでありまするが、今日は相当時間がありますので、中身として、暴力の行使という内容は、この規定に該当するような場合は、どういう場合をあなたの方でお考えになつておるか。単純暴行のような場合、あるいは脅迫あるいは暴行という行為のどの程度のことをあなたの方では予想されておるか。たとえば私はこの暴力の行使という言葉は、團結権を守る場合にも、当然いろいろな暴力の問題が起つて來ると思う。また團体交渉をする場合にも起つて來る。特に一番重要なのは、爭議行為でストライキを敢行する場合に一番起つて來ると思うのであります。この三つの場合を考えてみた場合、その他大衆的な行動の場合にも暴力ということが問題になると思うのであります。そういう場合において現刑法の立場、あるいは軽犯罪法、そういうような法律技術的な立場において、一体この暴力の行使というのはどの程度が免責をされ、どの程度が罰せられるか、その中身をひとつ説明していただきたいと思うのであります。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 暴力と申しますのは、前にもお答えいたしましたように、不法な実力の行使でありまして、刑法の罪名で言いますと、暴行のすべて――器物毀棄、いわゆる器物損壊のすべて、それに該当する傷害、殺人なんかもちろんでありますが、傷害等であります。脅迫などとなりますと、暴力という意味から言いまして、通常の程度のといいますか、軽い程度の脅迫を、通常暴力というふうにはわれわれは常識的に理解しないのじやなかろうか、というふうに考えておるのでありますが、ただ強盗罪が成立するような場合のいわゆる脅迫、すなわち相手方の反抗を抑圧する程度のきわめて強度の脅迫であります。そういうものはやはり暴力というふうに考えられるであろうが、しかしこれらは今後の研究問題であると思います。しかしそれが暴力に入るにしても、入らぬとしても、その程度の脅迫などが、いわゆる不当なるものであるということはもちろんでありまして、要するにここに「暴力の行使」と書き上げましたけれども、何も不当なるものが暴力の行使に限られるという趣旨ではございません。從いまして、たとえば團体が一つになるための、爭議をやる場合のピケツテイングの際に、相手方がどうしても仕事場に入るというのを、かりにぶんなぐるとしますれば、これは免責されません直しそのときどきの事情によりまして、一々そういうところまでやつておつたのでは――全体としては、大体ごくまともな爭議行為をやろうとしているのに、たまたま若い人が氣があせつてそういうことをやつたというような場合に、それがあつたからといつて、すぐ飛び出すということは、これは必ずしも運用上やるべきでない。しかしこれは免責されるというのではなくして、要するにそれは情状を酌量すべき問題で、たとえば起訴猶予にするとかいう問題であると考えております。

土橋一吉日本共産党

○土橋委員 ただいまの御説明で、大体あなたの御説明の内容はわかつたのでありますが、それならばただいまのような説明で、反抗を抑圧する程度の暴行、あるいは脅迫を加えるというようなことで、普通の場合は罰せられる。こういう御意見ならば、何らここに規定を入れる必要はないので、現行刑法においても、ただいまの單純暴行罪にしても、傷害罪にしても、すべて相手方の反抗を抑圧する程度にいたした場合に、処罰いたしておるのであります。そうしますと、中身の理論においても、刑法各條が規定しておるような犯罪構成要件を充足する場合に、初めて罰せられることになるのでありますから、そういたしますると、この前も私質問申し上げて決定的な解釈の内容がなかつたのでありますが、それならば刑法各條がちやんと保障しております。生命、身体、財産、器物に対する傷害なり、あるいは器物毀棄というようなことについては、ちやんと刑法が各條で書いておるのであります。そうすると、どうしてもあなたの御説明ならば、それ以外の場合をもなお含める、こういう場合にはこうなるのだということの説明がないと、この規定は、今の内容の説明においても、どうも刑法の規定をそのまま御説明になつたようでありますので、何らここに特別に暴力の行使はいかぬということを入れるまでもないのであります。これが第一点でありますが、その点についてなお御所見を聞いておきたいと思います。  第二点は、こういう行為は、労働組合側のみを対象としてお考えになつておるから、そう考えられるけれども、こういうことをやるその基本的な挑発行為というものは、むしろ資本家側に九十パーセントも九十五パーセントもあると私は思うのであります。現在のような経済は、非常に労働階級にとつては困る状態になつておる。そういう過程においては、特に労働階級としては團体交渉をする場合でも、爭議行為をする場合でも、そういう必然的な過程に追い込まれておる政府の責任が第一あるでありましようし、また資本家側がそういう政府の政策に便乘して、爭議行為を誘発する。どうしても労働組合としては正当防衛をやらざるを得ない。自分の労働権を守るため、特に労働権は生命権なり、生存権なり全人格を打込んでおるものでありまするから、そういうことに対しては、どうしても緊急避難行為もあるだろう、正当防衛も行われるであろうということは、刑法が規定しておりますが、そういう場合において、資本家側が行う場合、あるいは官憲が行う場合も同様でありますが、意識的にこれを挑発するということが間々あるのであります。これは御承知の通りメーデーの場合を見ましても、労働者側には司会者があつて、責任を持つて團体行動しているのに、たくさん警察が寄つて來る。何も寄つて來る必要はない。にもかかわらず何か知らぬが、從來の例によるとたくさん寄つて來る。こういうことはある意味においては労働階級に対する一種の挑発的なものだと思うのであります。そういうようなことがあつたときに、たとえば予定のコースなり時間が違つているとか、あるいは歩き方がどうであるとかいうようなことで文句を頂戴する。労働階級は、何を言つているのだ、われわれはちやんとやつているのじやないかというので、いさかいを生ずる。そこで大きな声をして、このやろうと言つたときには、その問題だけで、一種の單純暴行が成立するというようなことになつて來ると、法的内容の解釈自体についても非常に困難を生ずるのであります。從いましてそういうような個々の單純暴行も入るのだ、しかしながら、これは必ず反抗を抑圧する程度のものであるということが條件になつている。そうすれば、もとに帰りまするが、刑法の規定と何らかわらない、こういうことになるように考えるのでありますが、それでもなお違うというような事例なり、御意見があるでありましようか。  第三点は、資本家側の諸君が暴力行為を行う場合は必ずあると思う。現に私の知つておる西多摩の日本セメントの工場においては、いわゆる資本家側の諸君が、一種の暴力團になつて、会社側のブローカーを使つて、組合側がどうしても憤激をせざるを得ないような状態が起つておるのであります。この人の名前は、この前申し上げた益田道義という人であります。この方のいろいろな経歴について、私はよく存じておりますけれども、こういう方が意識的に会社に乘り込んで、そうして課長なり、あるいは工場の主任をどんどんあごで使つて、あれやれ、こうやれというようなことで、どうしても労働組合が、この挑発的な行為に反激せざるを得ないような場合でも、正当防衞と認めないか、そういう場合は正当防衞として当然但書の免責規定に当るかということについて、お伺いしたいと思います。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 どうも私の御説明が下手でありまして、御了解を得がたいのが残念でありますが、この労働組合法第一條第二項の規定は、いわゆる違法性の問題でありまして、刑法その他の罰則もありますけれども、たとえば刑法のいろいろな犯罪がございます。それに当る場合であつても、こういう場合には処罰しない、こういうことであります。それで今回の改正の、暴力の行使の場合は云々と申しますものを入れた結果、どうなるかということになりますと、そういう刑法各條の罪の中で、たとえば暴行罪に当つたとか、あるいは傷害罪に当るとか、あるいは器物の損壊罪に当つたとか、あるいは監禁罪に当つたというような場合には、これはもう違法性という問題を生じないぞということになるのでありまして、決してそれらの罪のほかに、また別の何か暴力行使罪というようなものをここでつくつておるわけではございません。なお、不十分でありますかしれませんが、一應御説明をすると、そういうことになると思うのであります。

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 土場さんいかがでしようか。先ほど石野さんの御発言中、関連質問でということでおやりになつたのですが、こういうふうになると、石野さんの質問がどこに行かれたかわからなくなりましたので、とうぞひとつ……。

石野久男労働者農民党

○石野委員 私は先ほど第二條の問題につきまして質問いたしまして、途中で切れてしまつたわけでございます。第二條の全般を通じて、この改正法案は労働組合の自主性と民主性を抑圧して、かえつて労働組合を弱体化するであろうというふうに、私たちは見ているがどうかということに対して、賀來局長は、そうではないという御返事があつたのでございます。しかしこの條項の但書からずつと出ておりまする一号、三号、三号、四号というようなものは、どう考えても、私たちにとつては、労働組合の自主性とその民主性を、法の力をもつて抑圧するものであるというふうに考えざるを得ないのでございます。私たちはこういうような問題は、どこまでも團結権あるいは極東十六原則の第三項である、労働組合は何らの差別待遇なくという考え方に基きまして、組合員である者に対しての法的な干渉が行われるべきではないというふうに考えておるのでございます。ことに第二條の但書第一号の問題のごときにつきましては、これは從來の例から見ましても、幾多の労働組合の中において、この條項から、非常に政府が御心配しておるように、御用組合的な組合が出たとは考えられないのでございます。ことに政府から出されておりまするいろいろな参考資料を見ましても、多くの組合はここに書かれてあるようなことは、もうすでにやつておるのでございます。先ほど賀來局長は、ほとんど大多数のものは非常によくなつて來ておつても、一部のごく少数のところでも惡いことがあれば、それを規定すべきだ、こういうふうに言われたこの考え方と、いわゆる保護法であるという考え方との背反する点は、どこまでも私どもにとつては、つかなければならない問題だと思うのでありまして、こういう考え方のために、いわゆる角をためて牛を殺すようなことになつてはいけないというふうに考えておるわけでございます。いわゆる非組合員の問題が、どのように今後労働組合の中に現われて來るかということについての、私たちの非常に大きな危惧を、政府としては何ら考えていないのでありますかどうか。これについては、たとえば非組合員というものが出て参ります。非組合員が出たときに、非組合員たる者がどのような憲法上の保障を得られるか。これを特に私はお聞きしたいあであります。この條項の第一号に掲げてあるような規定内容からいたしますと、さきに春日委員からも指摘せられましたように、たとえば東芝のごときはその二万数千人のうち約六千人の人員がこれに該当する。またたとえば日本製鋼の会社から出されております労働協約の内容を見ましても、ほとんど組長級の者が、この規定内容に該当するものとして規定されておるのであります。私も実際に工場に働いておりますが、その場合組長とか、班長というような立場にまで入つて來ます場合には、どのような工場においても、おそらく從業員の四分の一までは、これに該当することになつて來ようと私は思うのであります。この四分の一にも及ぶような人員が非組合員として、いわゆる労働法によるところの組合員になることができないということは重大な問題であります。政府はこのような非常に多くの労働者に、どのようにして、憲法の保障する労働権を保障するのであるかという点について、ひとつお伺いしたい。  いま一つは賀來局長はさきに三年間の経驗にかんがみていろいろと善処したのだ、特に労働者側の声を聞いたということの中に、幹部労働組合を第二次試案からはひつ込めたではないかということを言つておる。私たちの見るところからいたしますと、この非組合員の取扱いは、必ず幹部労働組合の精神に基いてまた取扱われるものであろうと思うのでありますが、この二点について、第二條の規定から来る政府側の考え方を、ひとつはつきり御説明願いたい。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたします。  御意見によりますと第二條の規定は、たとえば但書の二号によりましても御用化するものではない。こういう御意見でありますが、現にわれわれは使用者側におきまして、今度、專從者の経費を支出することを全然禁止することはいかぬ。これは使用者として組合が非常に強くなるので困るという意見を聞いておるくらいであります。これを逆に申しますならば、これはわれわれから言いますと、かような金をもらいますことは御用化するおそれが多分にあるものと見ておるのであります。  今度の規定によりますと相当数の非組合員が出るではないかというお話でありますが、われわれは四分の一に達するものとは考えておりません。ただ現在は課長、部長という名目でもつて非組合員の線を切つておりますために、非常に少いということになつておりますが、今度の規定によつても、さような数になろうとは考えておりません。ただ幹部組合の問題につきまして御意見がありましたが、これはあの名前を幹部労働組合という扱いをしたがために、非常に大きい誤解を受けたのでありますが、現行法におきましても、もし國鉱の組合において駅長助役、あるいは区長を全部非組合員とするという、組合員みずからの決定がありましたときに、これらの駅長、区長、助役が劃合をつくることは許されておるのであります。小学校の校長先生は全部非組合員にすべきであるという教員組合規約ができましたならば、これらの校長先生が一つの組合をつくることは現行法でも認められておるのであります。ただ現行法の施行にあたりまして、労働委員会はさような組合は妥当でないというので、從來は認めてないという慣例をつくつて参つたにすぎないのであります。今度の法案にいたしましても、やはりその行き方については同じことであります。ただ組合側あるいは使用者側が反対いたしましたような趣旨の幹部組合、すなわち中間におつて漁夫の利を占めたり、あるいは組合の分裂的傾向を來すというような幹部組合のつくり方は、これはわれわれとしても妥当でないと考えておりますが、それらの人々が組合をつくつて自分らの保護に当る。あるいは地位の向上を團結の力によつてやつて行くということ自身は、何ら禁止はされていないのであります。かように申し上げますれば、これらの保護や、これらの組合のつくり方、組合の行動というものを非常に労働組合大衆は危惧されておるというその氣持はよくわかりますので、規定として出すことは、これを削除いたした次第でございます。

石野久男労働者農民党

○石野委員 ただいま賀來局長からの御説明があつたのであります。非組合員となる人員がどのくらいあるかということについては、これは調査をすればわかることでございますので、四分の一だとか、五分の一だということはここでは私は申しません。しかし非組合員が相当数出るということだけは、政府当局もおわかりになつておることと思うのであります。そこでこの非組合員になつた労働者諸君、この諸君に対し、憲法の保障はどのような形においてなされようとするのであるかということについて一つお聞きしたいのであります。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 労働者の保護に関してでありますが、憲法の規定に基きましていろいろの関係法令ができております。労働組合をつくつた場合の、その組合といたしましての、すなわち本法案の二條、五條に該当いたします組合としての保護は受けられませんが、その他の関係法令におきましては、これは受けられると考えます。

石野久男労働者農民党

○石野委員 ただいまの御答弁で非常に私どもとしては驚くのでございますが、この非組合員の関係の人たちが、組合を結成した場合には、本法第二條、第五條によるところの法のいわゆる保護を受けることができないということになりますと、これは本法のただ二條、五條の保護だけでなくして、本法全体のやはり保護を受けないことに該当することだと私は理解するのであります。特に第五條の規定によりますと、その手続に参與する資格も有しない、またこれらの法律に規定するところの救済も與えられないということになつて來るのでありまして、これらの多数の人たちが、労働者としての権利は憲法上認められておるにもかかわらず、團結権、交渉権、團体行動権もほとんど法律的には保障されない。擁護という言葉も言つておりましたが、擁護もされないことになつて來るのでありまして、これても政府としては、これらの人々が労働者であるということを、お認めになつておるのでありましようか、どうでありましようか。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 われわれといたしましては労働者と労働者でない者は、本法第三條できめております。非組合員と絹合員の範囲は切つております。が、これは白と黒と、はつきりわかれておるわけではないのでありまして、われわれは一労働者という立場におりましても、家に帰りますと、女中を使うということもあります。私が先ほど申し上げましたのは、二條、五條の條項に該当する労働組合につきましては、これは本法並びに労調法におきます手続に参與し、救済を受けることができる。これを具体的に申しますと、労働委員会によります、いわゆる不当労働行爲の処置に関しまする原状回復の手続に参加し、その救済を受けることができる、また労調法の手続に参加することができるというのであります。ただいま私が例示いたしましたような組合は、二條、五條の組合ではありませんが、それ以外の労働者といたしまして團結することは、これは認められております。それからその團結いたしました組合の人たちが、使用者側の処置がはなはだけしからぬというので、それを要求いたしまして、團体交渉をいたしますことも、認められております。それに関連いたしまして、争議をやるということも、何らさしつかえはないのであります。ただその際には、二條、五條の労働組合としての救済は受けられないというのてありまして、労調法におきましては、争議團という形において、労働委員会はその調整に当るものと考えておるのであります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 ただいまの御説明は非常に理解できないのでございまして、法による保護は受けられないけれども、團結権もあるいは團体交渉権も争議権もそれは認めるのだ。しかしその團体交渉権なり、あるいは争議権というものが、本法の保護を受けないで行われるような場合、どのようにそれらの、労働組合を利益するか、これはおそらく赤ん坊が見てもわかる。法的には何らそこには保護されるものがないのであります。そういうような組合を認めても、これはまつたくナンセンス。こんなことで労働者の権利が保護され、憲法二十八條の精神が生きるものでないと私どもは考えるものであります。ことに第五條の但書には、第七條第一号の規定に基く個々の労働者に対する保護を否定する趣旨に解釈すべきではないというようなことを、ことさら言つておるのでありますけれども、こんなことはまつたくこれはナンセンス。こんなことで労働者は決して救われないと私どもは考える。政府としてはこの法の保護を受けない労働組合というものが、どういう形になつて行くか、それらの人をそれじやほんとうにどういうところで保護してやろうというのか、その法律はどこにあるのかということについて、はつきり御説明願いたい。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたしますが、私も用語が間違つておつたと思いますから、訂正いたしますが、石野さんの言われる、本法による手続に参加し、その保護を受けないというのは、保護でなく、救済ということになつております。救済というのと保護と大分違うののでありまして、救済というのは、具体的に申しますと、労働委員会の原状回復のあの命令というだけになります。その他特権的な保護と申しますか、労働組合法及び労調法にはいろいろ保護の規定もあります。それらは受けられるというのでありまして、ただいまお話の、それらの労働者はどうして保護を受けるか。これは基準法はもちろん全部に適用になつております。私が申しましたのは、これらの二條、五條の組合の者は、これは手続に参加し、その救済を受けられるというのであります。その他の労働者は團結し、團体交渉し、あるいは爭議行為を行うことには、何らの制限も加えていないのであります。憲法のそれらの規定の通りであります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 どうも説明が非常に苦しいように思うのでございまして、保護と救済ということは――とにかく政府の案は、非常に用語をたくさん使つて、ごまかそうとするような意図が、各所に現われているように思うのであります。救済でも保護でもどつちでもよろしゆうございますが、いずれにいたしましても、この改正にあたつての大方針としては、この法が労働者に対する保護法であるということは、前提としてうたつているのでございまして、救済もまた他の保護の一環になるというふうに私どもは考えておるのであります。それはいずれでもよろしゆうございます。しかし、とにもかくにも局長さんが言われますように、そのような形で與えられるいわゆる保護でおるか――救済はされないけれども、保護はされるのだというようなことで、今この労働者がおそらく餓死するかもわからないというようなときに、徹底的な労働権の行使ということができるとお思いになつておるのでございましようか。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 御質問の趣旨がよくわかりませんが、労働者といたしましては、どうしても自己の生活の最低線さえ守れないということになりますれば、憲法で保障されました権利に基いて、それぞれの行動をするだろうと思つております。

石野久男労働者農民党

○石野委員 憲法に基いた行動をするであろうということは賀來さんの見解でございますが、しかしそれが法で何らの保護も、あるいは救済も與えられないということになる。しかもこの救済規定のそれに当てはまるところのものは、労調法にいたしましても、あるいは本法にいたしましても、すべてが労働者のいわゆる権利の大筋を行くものである。ほとんど大筋のものはみな救済規定の中に入つておる、こういうふうにわれわれは考えておる。この救済規定をはずしてしまつたならば、おそらく労働権の行使というものが無意味なものになつてしまうことは、これはだれが見てもわかつておる。そのようなことがこれらの非組合員に與えられる保護であるというようなことは、まつたく私どもとしても、何べんも申しますけれども、これは子供だましのことである、こういうふうに思つておるわけであります。これはいくら話しましても討論のような形になつてよくありませんが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、この非組合員の取扱いというものが非常に労働者にとつての権利剥奪である、こういうように考えておるのでございまして、この点についてだけ、ひとつ局長の明快な御答弁をいただきたい、こういうふうに思うのであります。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 繰返して恐縮でありますが、第五條の規定あるいは第二條の規定は、これらの要件を備えた組合は、労働組合法及び労調法の規定する手続に参與し、その救済を受けることができるというのでありまして、これは具体的に申しますと、労働委員会におきまする原状回復の命令に関します手続及び救済を受けることができる。また労調法によります調停、あつせんの手続も受けることができる。その他の組合につきましては、労調法によりますあつせん、調停を受けることもやはりできるのであります。ただ労働委員会の原状回復の命令が、七條――一号は違いますが、二号三号におきましてはこれは参加することができない。こういうだけであります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 もう一つだけ確かめておきたいのでございますが、そういうような非組合員のつくるところの組合というものは御用組合であるということだけは、はつきり政府は認めておるのでございますか。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 嚴密に解釈いたしますと、校長だけがつくつております組合は御用組合とは考えておりません。ただそれに上下のと言いますが、使用者と被使用者の関係にあります者が加わりましたならば、これは御用組合ということになるのであります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 ただいまの問題はこれで一應おきまして、法務総裁がおいでになつておりますので、先に第一條の問題で、問題になりましたものを一度お尋ねいたしたいと思うのでございます。第一條の規定は、これは政府の説明によりますと、本法改正のいわゆる宣言規定でありまして、そうしてそれは憲法二十八條をより一層具体的に記述したものである。こういうふうに言われて説明されておるのでございます。私どものこの條文を読む読み方といたしましては、政府の説明するように、憲法二十八條、あるいはまた労働組合十六原則の精神によつて、より具体的にそれが記述されたものであるというふうに理解されないのでありまして、ことに現行法の規定ではつきりしておつたものを、一層その範囲を狹めて、かつまたそれの理解の仕方を弱めるという方向に、記述されておるように思つておるのであります。特にここで記述されておりますところの團結権にいたしましても、あるいはまた團体交渉権にしましても、あるいはまた爭議の行動権にいたしましても、そこではどの條文をとりましても、交渉上においてもとか、あるいは交渉するためにというような、こういう制限規定がされておるのでありまして、憲法二十八條における保障ということに対して、大きなわくをかけた規定であるというふうに考えておるのでございます。この点に関しまして、法務総裁はどのようにお考えになつておるのでございますか。

殖田俊吉法務総裁

○殖田國務大臣 お答えいたします。憲法第二十八條と、第一條との関係でありますが、この法律が憲法第二十八條の基盤に立つものであることは、申すまでもないことでありまして、結局第二十八條の、いわば土俵の上におきまして、必要と認められる事柄を立法しよう、こう考えておるのであります。憲法の保障という文字から見た場合には、これを上まわつた規定も設けているわけになるのであります。平面的の問題として見ますると、二十八條でカバーする事項のうちに、基本的なものを取上げた、こう言つてよかろうと思うのであります。幾何学的にこれがぴつたり一致するというものではございません。特に法律によりまして具体化する必要のないものは、憲法の直接の保障にゆだねてよろしい。そうでないものを法律の規定にゆだねた。そういうような趣旨に私どもは解釈いたしております。

石野久男労働者農民党

○石野委員 憲法二十八條の精神の、土俵の上に組み立てられたところの、特に必要とする面だけをここに規定したのだ。こういうふうな法務総裁の説明でありまするが、さきに本法が上程されましたときに、政府の説明によりますると、いわゆる二十八條の條文と第一條は重複するような面があつて、その重複するきらいを避けて、しかもそれを具体的にわかるようにしたものである、こういうふうに説明されておるのでございます。私どもは、この條項の第二項には、前項に掲げる目的をというふうに受けて、いわゆる免責規定というものがされておるのでございまするけれども、この受け方からいたしますると、今法務総裁が言われましたように、憲法で規程しておるものの土俵の上に立つて、必要なものだけをここに書いたということだけでは、これは非常に組合側にとつては不利な立場になつて來るのであり、しかも憲法二十八條が規定しておるところの保障というものが、ぐらついて來るというふうにまでも考えるのでございます。この点につきまして、特に先ほど問題になりましたいわゆるこの保障という文字と、それから擁護するという文字の見解でございまするが、私どもは憲法によつて保障されたところのものが、いわゆる労働者にとつて権利として存在するものであるというふうに理解しておる。擁護するという建前からいたしますると、これは非常にそのものについての制限が加えられて來るというふうに考えられまして、憲法二十八條の精神と相反するものであるというふうに考えておるのでございまするけれども、これに対する法務総裁の明確な御答弁をお願いしたいのであります。

殖田俊吉法務総裁

○殖田國務大臣 私の申し上げましたことと、その前の解釈とは多少言いまわしは違いますが、私は精神においてまつたく同様であると思うのであります。それから擁護と申しますことは、保障を上まわつておる。保障よりさらに一層強い意味がありましても、保障を弱める意味はないと考えております。

石野久男労働者農民党

○石野委員 擁護が保障よりも上まわつているというお言葉でございますが、これは先ほども高辻政府委員が言われておりましたけれども、これに対して私どもは大きな疑義を持つているのでございます。私たちは保障されるという場合においては、いかなる場合においても、そのことは労働者にとつての権利であるというふうに考えておるのでございます。けれども擁護されるということについては、その権利というものについての建前が非常にぼやけて來る、こういうふうに考えております。先ほど高辻政府委員の説明によりますると、保障というものは制限がないのである、こういうふうに言われておつた。この擁護するという問題については、その擁護する建前からするところのいわゆる行為は、それを受ける者にとつては非常に受身の立場になつて來るのでありまして、権利の立場をぼやかしてしまうというように、私たちは考えておるのでございます。この保障と擁護の問題、これは上まわつておるのだという見解が、労働者にとつての権利をどのように價値づけるものであるかということについての、はつきりした御回答をお願いしたいのであります。

殖田俊吉法務総裁

○殖田國務大臣 擁護という言葉では保障を弱めるというお話でありますが、私はそうは考えません。保障を強めるものである。これは解釈の問題でありまして、その字義に対するセンスの持ち方いかんであると思いますけれども、私はどうしても今の石野さんのお話が了解できません。やはり擁護ということは、保障の上にも、さらにこれを強めるものである、こう考えております。決して弱めるものではないと思います。

春日正一日本共産党

○春日委員 ただいまの大臣の答弁は、大臣の立場からすれば、擁護ということは保障を強めることになる。これは私は間違いではない、確かにそうだと思う。私どもの方は、それだから困つておるのだと言つておるのです。われわれの方は、実際に保障されておれば、絶対的に手をつけられないのだから、團結を保障すると言えば、われわれがどう團結しようと干渉されないし、どう規約をつくろうと干渉されないと思うけれども、あなたの方では、それ以上に強いものとして、具体的な内容を、第三條なり第五條なりできめてもらつて、そうしてその無制限な保障をさらに――保障の場合は、あなたの方では手を出さなくともいいのに、手を出して來て、労働組合はこの型でなければいかぬという。だからあなたの方の保障を強めるということは、われわれの立場から言えば、保障というものに対して、擁護は権利を狹めて来る、干渉して来るというふうな結果になつて來る。これは一つのことを別な立場から言つているだけのことで、むしろこの場合は、労働者の立場が尊重さるべきであるというように私たちは考える。

殖田俊吉法務総裁

○殖田國務大臣 どうも私は頭が惡いかわかりませんが、保障しているということは間違いないのであります。権利を保障していることは間違いない。その上にこういう法規をもつて、それをもつと育てて行こう、擁護して行こう、こういうことであります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 どうも法務総裁の答弁を聞いておりますると、私は現行法のいろいろな箇條は抜きにして、現行法をちよつと見ますと、本法は團結権の保障となつております。改正案の箇條を見ますると、團結することを擁護するとある。この文字が、現行法に比べて、さらに廣い、高い立場で、團結権が守られたとは、何人が解釈しても考え得られぬと私は考えます。私はこの團結権の保障という現行法の文字、憲法二十八條の規定と、改正案の、今読みましたところの團結することを擁護するというこの意味とでは、何といても團結権の保障がこの方が上まわつておる、という解釈はできませんので、これは專門家の佐藤局長から、もつと明快な御答弁を、お願いしたいと思います。

佐藤達夫法制長官

○佐藤(達)政府委員 ただいま法務総裁から数回にわたつてお答えを申し上げましたが、私は御承知のように純粋場な立法技術者といたしまして、この文字を見ましての所感を申し上げます。御承知のように擁護の擁という字をごらんになるとわかりますように、擁という字がいかなる意味を持つかということから推して参りましても、これは憲法の保障している権利というものを、盛り立てて行く趣旨であるということは、日本語の問題でもあると思いますが、私は確信しております。なおこの擁護という言葉が、法律自身で擁護していることであるということは、この目的の中にうたわれておる点から見ましても、当然だと考えます。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 今の答弁でございますが、そうするともう一度再確認を願つておきたいのでございます。もちろんこの文章の書き方が、現行法とはかわつて來ておりますが、今申し上げましたように、團結権の保障という憲法二十八條の明快なる規定を、ここで申し上げますところの團結することを擁護するというこの意味で、絶対に侵すものではないという確信を持つて答弁ができますか。私はどうも確信を持つて憲法二十八條なり、現行法の團結権の保障というものをそのまま、あるいはそれ以上に擁護するものではないように解釈されてならぬのでございますが、もう一度、大事なところでございますから、この点に対する佐藤さんの答弁を願つておきたいと思います。

佐藤達夫法制長官

○佐藤(達)政府委員 今のお尋ねに対しましては、私は、確信を持つて、憲法の保障というものに、これがマイナスとなるようなものを持つものではない、むしろプラスの面を規定しておるということを申し上げます。

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 この際、先日來法務総裁に対する質疑を留保されておられた大橋武夫君の質疑を許します。

大橋武夫民主自由党

○大橋委員 過日公聽会におきまして、中立委員の一部から、このたびの労働組合法案は、憲法二十八條の團結権、團体交渉権またその他の團体行動権を制限するものではないか、かような意見が述べられたのであります。もちろん労働側の委員からは、かような意見はたくさんに出ておりましたが、この委員会におきまして、比較的公正なりと認めて招致いたしました中立側の委員からすら、さような意見が出たのであります。これに対しまして、憲法二十八條の権利をこの法律がはたして制限をする、すなわち憲法の保障する自由権を侵害しておるものであるかどうであるか。この点について、この機会に法務総裁から明確なる御答弁をいただきたいと思います。

殖田俊吉法務総裁

○殖田國務大臣 今回の労働組合法の、あるいは労調法の改正案は、憲法に違反するものでは断じてないと確信をいたしております。二、三の問題をひろつて申し上げますれば、一番問題になりますのは第一條と二十八條の関係でありますが、これはただいま申し上げた通りであります。第二條におきまして、組合員の範囲を明確にしておりますのは、これは先ほどから質疑應答がございましたように、労働組合の御用化を防ぎまして、自主性を擁護するためでありまして、憲法の趣旨を助長するものでこそあれ、これに反するものではないと考えております。また問題になりましたのは、第五條第二項第四号について、信條と申さずに、わざわざ宗教と書いておる点でありまして、いろいろ問題があるようでありまするが、個々の労働組合が、自治の範囲内におきまして、政治的信條について、組合員の資格に一定の定めをする余地を残しても、さしつかえない。必ずしも信條について差別することが、憲法上違反であるとは考えておらぬのであります。組合法は、但し宗教のごとき根本的な問題につきましては、これは差別をしてはならないと、宗教につきましては、特にこれを明らかにいたしたのであります。從つてこの條文も憲法に抵触するものとは考えておりません。労調法におきまして、公益事業につきまして、爭議行為に制限を課しておるが、憲法に規定しておりまする権利であつても、公共の福祉との調整をはかるために、必要な限度の制限を課することは、これは憲法の第十二條、十三條等の規定の認めるところでありまして、他にも例の存するところであります。從つて今回のこれらの法規の改正は、いろいろ御議論もありましようが、憲法に違反する点は少しもない。こう確信しております。

春日正一日本共産党

○春日委員 まだたくさんありますけれども、ほかの人もあると思うので、この点だけただしたいと思うのです。第五條の二項四号、政治的信條については、自治的に差別することも認めてさしつかえない、こういうふうに言つております。ところがこれが問題だと思う。というのはもしそういうりくつを言うなら、労働組合は自主的な團体で、みんなが集まつて合意できめる團体だから、そういうことを差別しても、それは憲法の権利を云々するということでないと言うなら、宗教だつてさしつかえないと思う。欧州にはカトリツク労働組合というものがある。現在そういう事実がある。宗教がいかぬ、人種がいかぬ、性別がいかぬ、門地がいかぬ、身分がいかぬということを、あらためてきめるということになれば、労働組合の性質は、株式会社とか何とかというような、そういう任意的なものでなくて、一つの経営に雇われるという條件が前におつて、しかも雇われるということは、その人にとつては生きるという問題、生活手段を取得するという問題だ、だから政治的な信念が悪いから、たとえば春日は共産主義者だからおれの労働組合に入れない。しかもクローズド・シヨツプということになれば失業しなければならない。生活権をはずしてしまう。憲法に生きる権利、生活する権利があるのだが、そういう権利をはずしてしまつて、それで憲法に違反しないというりくつがあるか。労働者にとつてこの労働組合から除外されるということは、今大体クロ一ズド・シヨツプの多い時代においては、失業することだ。そういう内容をあなた方は含めて、なおかつ憲法に違反しないと言うか。一つの任意の文化サークルに、同じ趣旨を伴うものでなければ入れぬと言うならいいけれども、労働組合はそういう性質のものでないと思う。その点で法務総裁は、労働組合を何かそういうサークルみたいなものと混同しておられるように思うけれども、その点はつきりさしていただきたいと思います。

殖田俊吉法務総裁

○殖田國務大臣 宗教あるいは人種というような基本的な問題につきましては、区別をいたしておりません。しかし信條の場合は、ただいま共産党を除外するというお話でありましたが、逆にナチは除外する、極端なナシヨナリストは除外するということがあつても、さしつかえないと思うのであります。それは自治にまかせる方が適当であると考えて、自治にまかしたのであります。

石田一松新政治協議会

○石田(一)委員 今殖田法務総裁の御答弁の中に、憲法の十四條から引例したとおぼしい人種あるいは宗教、性別、門地、地位というものを引用して來て、特に信條だけ省いた。しかもここに指摘しなければならぬことは、第一次の労働省の試案には、この信條が入つていたということであります。この入つていたものが、二月この方のあらゆる檢討の結果、この信條のみが省かれたということであります。しかもこの信條のみを省いて、しかも現在の説明において、これを労働組合が自由に決していいのだということになりますと、ただいまの法務総裁の言葉をもつてすれば、その組合が民主自由党に属する者でなければ、組合員になつてはいかぬということをきめられてもいいということになります。そうなりますと、なるほど多数党を持つておる民主自由党の者だけは、労働組合の組合員になれて、あとの政党に所属しておる者は、全部組合員にはなれないというような不都合な結果も生じて参ります。憲法において、信條あるいは人種、性別、門地、社会的地位等によつて差別してはならない。しかもこれが社会的、経済的に法律上差別してはならぬ。こういう明らかな文句が憲法にうたつてあるにもかかわらず、この経済活動をする、すなわち経済的な面の労働組合において、信條だけは差別してもいいのだということになりますと、これは私はゆゆしい問題じやないかと思います。しかもこの信條という言葉が第一次試案に挿入してあつたものが、あなたのような今のお考えでこれを抜かれたとするならば、ほかの人種とか性別とかということを書かないで、信條によつてはこれを組合員として拒否することができる、こうした方がむしろ明らかなのであつて、こうした憲法の十四條の條文を引用する必要はない。私はこういうふうに考えるのであります。これではあまりに露骨に信條のみが出るというので、宗教という字を持つて來てこれを挿塗しようとした、こういう考え方を持つているように思われる。むしろこの際第一次試案にあつたように、信條という字の入つていた方が公正であり、妥当であり、その判断は組合自身にまかせる方がいいじやないか、こういうように思うのですが、いかがですか。

殖田俊吉法務総裁

○殖田國務大臣 憲法に信條と申しますのは、國家と國民との関係を主として規定しておるのでありまして、國家が國民に対して差別をすべきじやない、こう考えておるのであります。しかしながら労働組合は労働者の私の自治的團体です。だから、それはその労働者の自治的の考えにまかしてよろしいじやないか。民自党だけの労働組合ができるとおつしやいますが、逆に共産党だけの組合ができるとも私は考えます。

土橋一吉日本共産党

○土橋委員 ただいまの答弁では、ここに書いてある憲法の規定は、國家がそういう取扱いをしないのであるという御説明であつたのであります。もしそれに間違いなければ、その御答弁に全然ゆるぎのないものであるならば、この法律はだれがつくるかという場合に、やはり國家の名においてこの法律がつくられるのであります。この法律は民主自由党がつくるのじやないのです。これは國会でただいまつくろうとしておるのであります。從いまして、労働組合の基本的な構成要素としてこういう内容を掲げてある法律を、今政府が國会に上程している過程において、憲法第十四條を見れば――今あなたの御説明になつたように申しますと、労働組合の自治的なものにまかすというのであれば、國家がこういう法律をつくりたい、こういつて國家が組織に対して干渉しようとしている場合に、その内容をなぜ政府として明確にしないか。憲法第十四條には「すべて國民は、法の下に平等であつて、人種、信條、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」ということを、國家が憲法において明記しておるのであります。そうすると、政府が國家の名において法律を國会へ上程している過程において、なぜこれを削除するか。その点を自治にまかせるというのでは、全然理由にならないと私は思いますがもう一回明確な答弁をしていただきたい。

殖田俊吉法務総裁

○殖田國務大臣 労働組合は労働者の組合でありますから、なるべくならば組合内部の問題につきましては干渉をしない方がよろしいのです。從つて干渉しなければならぬと思うだけのものを、ここに宗教その他の制限を設けましたので、その他の分はなるべくならば自治にまかせる、こういう考えでこの法案を提案しておるのであります。從つてこの提案に対して、國会が今度おきめになるのでありますが、國会がもし提案を不都合であるとお考えになれば、それは否決されるだけでありまして、私どもはこれが非常にいい提案で、なるべくこれに御賛同を願いたいと、こう考えておるのであります。

土橋一吉日本共産党

○土橋委員 一体労働組合というものは、政治的に、経済的に、または社会的関係においてつくられているのであります。從つてこの第五條の規定は、労働組合の組織に関する問題として、國家がこういうものがいいということをただいま決定しようとしておるのでありますが、政府の原案として、これは労働組合の自治にまかした方がよろしい、そこまで政府としては考えなくてもいいというような考え方を持つているが、それは憲法第十四條そのものが保障しているところの権利を、あなた方が歪曲して上程されている法律案である、かようにわれわれは断定するのであります。そうでないと言うならば、憲法第十四條が規定しているように、人種なりあるいは思想的な信條なり、政治的な信條、あるいは性別、社会的な身分、あるいは門地によつては区別しないということを、やはりあなたの方でこの法案の中に織り込んで、國会へ上程されるのが妥当じやないかと思うのであります。にもかかわらず、あなた方の上程されているのは信條だけのけて、今のような御説明で出されているというところに、私は民主自由党の政策的な、労働組合に対して一党的な、一派的な、考え方で上程されているということを言うのでありますが、そうでないと言うならば、なぜ憲法の規定通りにあなたの方はお出しにならないかという点を重ねて御質問いたします。

殖田俊吉法務総裁

○殖田國務大臣 ごもつともな御議論のようでありますが、私どもは信條は労働組合にまかせてよろしい、この方がいいと考えたのであります。その点につきましては見解の相違と申しますほかないと思います。

石田一松新政治協議会

○石田(一)委員 法務総裁にもう一度だけお聞きしたいのですが、そうすると、先ほどおつしやいました憲法にいうところのあの十四條の、差別してはならないというのは、あれは國家と國民との関係においての問題であつて、本案のいわゆる信條が抜けたということは、これは私的な組合と組合員との関係であるから、これでいいのだとおつしやいますが、しかし國家と國民との関係において十四條があるならば、この法案そのものがもし議決され、決定されるとなると、この法案と組合との関係は、すなわち國家と國民との関係になる。そうなりますと、國家と國民との関係において、その信條によつて差別してはならないということを、この法律自身がすでに侵す、こういうことになる。そうなると、ただいま殖田法務総裁がおつしやつたことは、根底からくつがえることになりますが、この点どうお考えになりますか。

殖田俊吉法務総裁

○殖田國務大臣 信條を特に入れなかつたのは、從來信條について自治にまかせておらなかつたものを取上げて、自治にまかしたというわけではございません。從來といえども、信條について自治にまかせてもさしつかえなかつたのであります。しかしこのたび少し立ち入つた規定が加わりましたために、その御懸念が出て参つたと思います。しかしながら精神においては、今回も前のもちつともかわらないのであります。決して御懸念のごとく、信條によつて差別することを奨励したいとか、あるいはそういう意図を持つてこういう條文をつくつたわけではありません。信條については政治的の見解でありますから、これは労働組合の組合員の各位のお考えにまかせた方が、かえつて組合の権利を保障するゆえんであろうと考えて、かようにいたしたのであります。

春日正一日本共産党

○春日委員 ただいま非常に妙な議論を言つておりますけれども、しかし先ほど私が言つたように、これには信條という題から出て來る大きな問題が入つておるのであつて、あなたは日本の労働組合の実情というものを御存じないと思う。欧州では、先ほど私が言つたように、カトリツク労働組合というものがあるけれども、日本には宗教でもつて、お前念佛だから組合に入れないとか、法華組合なんというものは、日本にはありはしない。そういうものをことさらにここに記入して置いて、しかも現在労働組合の中において最も大きな問題になつておるのは、政治的信條の問題であります。また労働組合をごらんになつても、役員の選挙に、共産党、社会党、革新同盟というような形で、はつきりと立候補して選挙が行われておる。政治的信條こそは、労働組合において一番問題になる。だからもし規定しなければならぬとすれば、人種、宗教、性別、門地なんというようなことは、実際問題として問題になつていないのであつて、政治的信條こそ、これが一つ問題になるだけだ。これによつて差別してはならないということを規定すべきである。もう一つは、あなたは先ほど労働組合は私的團体であるから、自治にまかせていいと言われたけれども、私の質問に対して答えておられない。私の言つたのは、私的にまかすのはけつこうだ。それはまああなたの見解通りでよろしいけれども、しかしこれは單に信條の問題でなくて、労働組合というものは文化サークルなんかと違つて、労働する場所における組織であり、生活を守るための組織であるということになれば、そこの何万人の労働者の中で、自分の信條が合わぬからここの工場に働けないということになれば、就職の機会均等という問題で憲法の條文にやはり違反して來る。政治的な信條その他によつて、そういう機会の均等を奪われてはならぬということが規定してある。それでなければ、直接生活を脅かす問題になつて來る。あなたは、先ほど私が共産党と言つたら、ナチスの問題を出された。しかしナチスは、日本で言えば戰犯と言われている人たち、これは追放されているけれども、しかしそれは政治團体を結成し、政治活動をすることを禁止されて、追放されているのである。そういう人たちが自分で事業を営み、自分の家で耕作することを惡いという禁止は、ちつともない。だからそういう信條によつてナチスが出て來て、これが弊害があるというならば、そういうナチスが政治的な組織をつくつてはならぬということを、禁止することをやるべきであるし、現在やられている。そうするとあなたの言われたように、共産党だけでなく、ナチスの問題を言われたが、共産党とナチスを工場からほうり出してしまつたら、私は仕上工だから――國会にでも來ているから何とかやつているけれども、そうでなかつたら、ほうり出されたら一体どこへ行つて働くのか。仕上工だから工場に行つて働くより手がない。それを政治的信條がそうだから、工場で働いてはいかぬということになれば、これは生存権を奪うことになる。そういう点をお考えになつていない。だから文化サークルと混同してはならぬということを、念を押して言つているのに、私的な團体だからそれは自由にした方がいい……。そんなに自由にされたら、生存権を奪われてしまう。労働組合の原則は、そこの労働者である以上、どんな政治的信條を持とうと、全部組合員としなければならぬ。それが政治的な活動をして、それに戰犯的なおそれがあるというならば、その政治的な活動そのものが別な法規によつて禁止されればいい。労働組合に今一般に行われている原則はそれだ。政党支持の自由は、いかなる信條を持とうと、やはりそこで働いている以上、組合員としての権利を與えられなければ、自分の労働條件その他に対して他人の意見によつてきめられるということになる。こういう大きな問題が含まれている。それでもなおかつあなたは、これは私的な問題だというふうに言えるか。

殖田俊吉法務総裁

○殖田國務大臣 私の申し上げましたのは、ナチを組合から放逐すべきものだと申し上げたのではございません。ナチをほうり出す場合もございましようと申し上げたので、それはいやしくも労働組合を組織するほどの今日の労働者において、それだけのデイスクレツシヨンは十分あると思います。ですから、信條によつて区別するか、しないかということは、むろん区別すべきではない。おそらく多数の組合においては区分してないでしよう。だから区別する、しないという考えは、労働者におまかせしてもいいではないかというだけの話であります。

春日正一日本共産党

○春日委員 どうもあなたの言うことはわからぬ。区別する必要がないというのではいかぬ。今の労働者からすれば、そんなはずがないというように言われながら、しかもそれは自由にまかせたらよろしいと言うくらいなら、何も第四号は全部必要ないのです。必要ないものを――あなたは内閣の一員なんだから、私は知らぬとは言わせない。労働大臣の責任だけで出すものじやない。なぜあなた方はこういう四号というようなものを入れて來るか。入れるならば、むしろ政治的信條こそが一番大きな問題である。これで一番トラブルが起つて來るから、この点を明確にすべきじやないかということを言つているので、あなたが、私的な團体なんだから、そんなことは自由にまかせというというのならば、何も五條の第二項の規定なんかは必要ないのだ。それこそ自治的にまかすべきだ。それをなぜそうやるか。ことさらに政治的信條だけを、組合にまかせなければならぬ理由がどこにあるか。これがはつきりしなければどうにも議論にならぬと思うのです。なぜことさらにこの項目の中から政治的信條だけを抜かなければならないか、それが立証されなければならぬ。

殖田俊吉法務総裁

○殖田國務大臣 どうも私の説明のいたし方が、はなはだ不徹底で申訳ありませんが、これ以上に私が理由を申し上げる何がないようであります。やはりこれはあくまで見解の相違とお考え願うほかに、道がないようでありますから、どうぞあしからず……。

石野久男労働者農民党

○石野委員 それではどうもどうも飛び飛びの質問になりますが、第五条の問題につきましては今いろいろ論議されました。不十分ではありますけれども、問題は見解の相違だということになりますと、これはもう、これ以上申し上げることはちよつとむだだと思います。  第七條に不当労働行為がきめられておりまして、この不当労働行為は、前の十一條を詳しく規定したものだというふうに言われている。私たちもそれはそのように思います。そこでこれに関連するような問題で、さきにも前田委員から質問のあつたことでございますが、最近賃金不拂いの問題が出ているのでございます。こういう行為は將來も相当やはり起きるであろうと考えられるのでございますが、特にこの経驗にかんがみまして、こういう問題の取上げ方、不当労働行為に対してどういうような見解であるか、それとの関連性について、一應御説明願いたいと思います。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 お答えをいたします。賃金不拙いが、いわゆる差別待遇に基くところの、差別的な賃金不拂いであるならば、これは別論でありますが、一般的な別な理由による賃金不拂いというのは、この不当労働行為にはならないというふうに解釈いたしております。

石野久男労働者農民党

○石野委員 そうするとこの問題は、不当労働行為にならないということになるのですが、この法案は基準法との関連性が十分あると私たちは考えております。基準法におけるところの取上げ方と、この法案の取上げ方において、やはり関連性はないというふうにお考えになりますか。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 ここに不当労働行為としてあげておりますのは、私の理解するところでは、この行為によつて、組合の切りくずしなどが行われる可能性のあるものをあげておるのでありまして、單に使用者の方のやり方がいかぬという問題を、すべて不当労働行為としておるのではないように考えるのであります。從いまして他の理由に基く賃金不拂いというものは、労働基準法の第二十四條の違反にはなりましても、必ずしもここにいう、不当労働行為にならないというふうに解釈しております。

石野久男労働者農民党

○石野委員 労働者はその團結権あるいは團体交渉権を確実に保障されておりまして、労働法は、その團結権または交渉権の結果として出て來るところの團体協約、あるいはそれから生れる効果についても、十分保障しなければならないというふうに思うのでございます。今日労働契約の問題は、少くともこの労働協約の線から規定されるというふうに考えておりますが、労働協約としてきめられるところの賃金の問題と、労働組合法によるところの使用者側の不当労働行為というものとの間に、関連性はないのでございますか。     〔委員長退席、三浦委員長代理着席〕

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 使用者側の何か不当行為、たとえば債務不履行といつたものについても、すべてこれを刑罰をもつて強制するかどうかという問題になりますと、全然別個でありますが、ここにいわゆる不当労働行為というのは、どこまでも團結権を保障する。なお先ほどから問題になつておりますところをとれば、いわゆる擁護するために、特にこのようなハンデイキヤツプを使用者側に設けておるものと理解されるのでありまして、一般的な使用者側の不当行為というものに対しては、また別個の対策があるべきではないかというふうに考えます。

石野久男労働者農民党

○石野委員 別個の扱い方があるのではなかろうかという、その別個の扱いはどういうふうな扱いになるのですか。

高橋一郎法務廳事務官(檢務局長)

○高橋(一)政府委員 その一つは、労働基準法の第二十四條などでありまして、労働基準法中には、そのような意味での強行規定が相当含まれておるように考えております。

石野久男労働者農民党

○石野委員 この問題についてはいろいろな疑義を残しますが、私の時間とあとの質問なさる方の関係もありますので、一應おきます。第十五條の規定でございますが、労働協約の期間の問題でございまして、今度の條文において新しくはつきり加えられましたものに「いかなる場合においても、三年を越えて有効に存続することができない。」ということが書かれておるのでございます。これは從來しばしば同僚議員からも尋ねられた点でございます。いかなる場合においても三年を越えて有効に存続することはできないということは、必然的に、労資双方におけるところの無協約の時代が出て來るということを、予想しておられることと存ずるのでございまするが、もしそのような無協約時代が出まするときに、このことから発するところの労資間における係爭の扱いというものを、どのように考えるか。そうしてまたそのことは一面においては、やはり労働者の種々なる爭議行為を無放任に許すものである、許してもいいのである、どしどし爭議はやつてよろしい、協約がない時代におけるところの團結権に基き、また憲法に保障するところの團体交渉権または團体行動権というものは、無放任にされてよろしいのだという建前において、この條項を入れたのであるかどうかということについて、御説明願いたいのであります。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 御承知の通りに團体協約は、労資間の関係を平和的に調整し、双方の権利義務を守つて行こうという規定であります。從いまして協約の期間が切れましたならば、労資双方にとつて利害が非常に深いのでありますから、必ずや労資双方は、みずから進んで適当な、合理的な労働協約を結ぶものと期待をいたしておりますとともに、われわれといたしましては、爭議を抑圧しようという考え方はございません。しかしながら爭議が起らずに済むことは、最も合理的な状態であると考えておるのであります。御指摘のように、爭議が無制限に起ることを奨励しようという考えは持つておりません。

石野久男労働者農民党

○石野委員 もちろん無制限に爭議の発生することを期待するものではない、それは当然だと思うのでありますが、しかしこの條文のままで行きますると、当然やはり無制限に爭議はやられることになるだろうと思うのでございます。それでは政府側としましては、これに対する別な考慮はされるのでございましようか。この無協約時代に対する取締りというようなもの――いわゆるこの改正法案は、私どもにとつては取締りの趣旨によつて改正されたと思うのでございます。必ずそういうようなことの意図が、どこかにあるだろうと思うのでございますが、それはどうなのでございましようか。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 先ほど申しましたように、労働協約は労資双方の権利、義務を明確に規定し、その関係の調整をはかつて行くものであります。正常に維持しようとするものでありますから、労資双方は、おそらくみずから進んで合理的な協約を結ぶものと期待いたしておりますが、もし現在のように使用者側が非常に無理解でありまして、かつてな労働協約を押しつけようとする、あるいは労働者側が一方的に権利を主張した労働協約をつくろうとする、かような場合がありましたときには、われわれはただちに爭議に訴えるということでなしに、労働委員会の活動によりまして、また労資双方とも一應は労働委員会を活用することによつて、すみやかに解決できるものと考えておるのでございます。なお申し上げたいと思いまするが、労働協約は労資双方がお互いに自主的につくるべきものでありまして、これに関連して、いろいろな法律でもつて律することは適当でない、かように考えておるものであります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 労働協約は自主的につくられるものであつて、それに対していろいろと介入すべさものでないという御趣旨は賛成でございます。しかしそれはさきにも議論がありましたように、第二條、第五條等においては、むしろその逆を行つておるのでありまするが、この十五條の規定は、どれだけ善意に解釈しましても、先ほど労働委員会を活用してということを言つておりまするが、労働委員会が活動するのには、やはりどちらかの側からの申出がなければ、活動が開始できないというふうにわれわれは考えておるのでございます。從つてこれについては、おそらく無協約時代の爭議が、頻繁に行われることになつて來る危険性をはらむのでございまするが、それでもやはりその点に対する危険がないというふうに考えておるのでございますか。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 御指摘のように、調停は公益事業でない限り、一方の申請だけではできないのであります。しかしながらあつせんの規定によりますれば、申請がなくても、労働委員会は積極的に出てあつせんすることができると考えております。さような意味合いにおきまして、今後特にいろいろな意味で苦難な状態に労資双方とも入るのでありますから、労働委員会が積極的に活動することを期待いたしております。     〔三浦委員長代理退席、委員長着席〕

石野久男労働者農民党

○石野委員 この点については、あつせんをここに活用させようという意図によつて――この問題に対して政府の考えていることは、労働委員会等が積極的に介入して行くことによつて、解決できるだろうという考え方であるというように理解いたします。  第十九條についてお尋ねいたしたいのでございます。この点についても各委員からしばしば論議されておるところでございますけれども、私はこの委員の任命ということについて、これはやはり同僚委員が言つておりまするように、任命ではなくして――野村公述人も言つておりましたように、利益代表になるものについては、選挙制で行くべきであるというふうに考えております。任命ということは、少くとも所管大臣のこの問題に対する介入を意味するものでありまして、労働委員会がやはり同じように民主的に構成されなければならないという意味合いから行きましても、このようないわゆる任命という規定でなくして、選挙なり推薦による者に対して、委嘱するという現行法の規定の仕方の方が、より民主的であり、皆もまたよく理解しやすい問題であるというふうに考えるのでございます。これに関しましては、千葉その他においてもいろいろな例が出ておりますように、また茨城縣等におきましても、前の委員の改選のときなどには、この推薦委員と知事の委嘱する過程においてトラブルが起きております。そうして多くの労働者諸君が信頼をもつて推薦した労働者側の委員が、長い期間にわたつて忌避されまして、多くの労働者にとりましては、ほとんど第一次的でない、第二次、第三次の人々が、現在労働委員の職についておる事実があるのでありまして、このようなことでは、労働委員会が労資の紛爭におたりまして、それを調停し、あつせんして行くところの信頼性を、失つて來ることになるのだというふうにも考えるのでございまして、私はやはり現行法のように委嘱するという形がすつきりしたものであるというふうに考えるのでございまするけれども、それについていま一度政府の御所信を伺いたいと思います。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 御質問は、けさほど前田委員にお答えいたしたところでありまするが、まず任命という言葉を使いましたのは、労働委員会は行政機関でありまして、公務員法の一般職になつております。從いまして今度は任命という言葉を使うことにいたしたのであります。実体についてはちつともかわりはありません。委員の選任の方法につきましては、現行法の通りに今度も規定をいたすのでありますが、労働者側あるいは使用者側の推薦に基きまして、知事または労働大臣が、責任をもつて最も適切なる人を選任するということが、適当と考えておる次第であります。但しけさほども申しましたように、ただいまのような御意見が非常にあるということは、われわれも認めておるのでありまして、從來の運営に從いまして、研究はいたしたい、かように考えておる次第であります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 鈴木労働大臣にお尋ねいたしまするが、大臣はこの任命の衝に当る重要な位置におるのでございます。任命するにあたりまして、さきに第五條第四号におきまするいわゆる信條の問題がありました。ここで大臣はこの任命にあたりまして、特にこの信條の点についての考慮を持つて、任命される今後の御方針であるかということについて、お尋ねいたしたいと思います。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 ただいま御指摘になりましたような、そういつた任命にあたりまして、信條その他というふうなものにとらわれることなく、高いと申しまするか、もつと全体的の廣い意味でもつて、任命という問題には当ろうと考えております。

石野久男労働者農民党

○石野委員 いま一つ二つお尋ねいたします。十九條につきましてはこれで質問をおきます。第二十四條の、いわゆる公益委員のみの権限の問題でございまするが、いろいろな面から政府はこの公益委員に対して、その中立妥当性、公正な立場を立証しようとしておるのでございます。私たちは從來労働委員会の中におきまして、いわゆる第三者委員というものについても、中立公正ということは、なかなか保しがたいことを経験しておるのでございます。これについては末弘会長の先日の公述の際においても、るる公述されておつたところだと存じております。今公益委員に與えておりますところの非常に廣汎な権限というものは、このような観点からしますると、私どもにとつては非常に過大であり過ぎる、こういうふうに考えております。そもそもこの公益委員という考え方でございまするが、私どもからいたしますれば、公益というものの立場は、どこまでもいわゆる労働者側、資本家側、その両者がともにいるときに、初めて公益の立場がとり得られるものであろう、こう思うのであります。資本主義的な社会におきまして、公益委員として選び出されるところの人には、主として資本主義的な社会において教育される。そしてまたそういうような通念において、妥当な人として選び出されて來るように思うのでございます。そうして労働者側と資本家側との両者の側から行きまするならば、ややもすればその大部分の者は、いわゆる資本家側の陣営の方の方々が、妥当な人として選び出されるように思うのでございます。このような危険性のあるいわゆる第三者でございまするが、その第三者を、ただひとり手放しで、いろいろな問題の審議に当てることは、非常に労働者にとつては脅威であります。私たちはそのような脅威を含んでおるところの公益委員に、このような大きな権限を與えるということに対しては、反対の考え方を持つておるのでございます。政府といたしましては、このような危惧を持つておるところの公益委員に対しましては、やはり労働者あるいは資本家の両方の側を、同時にその中に入れることによつて、そうして一切のこの公益委員のみに與えようとする権限を、やはり三者の同時的な立場における権利としてとる方が、妥当ではなかろうかと考えておるのでございまするが、政府はそれについて、どのようにお考えになつておるのでございましようか。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 労資があつた場合に、初めて第三者といいますか、中間ができる、それ以外に第三者といいますが、中立というものはあり得ないという考え方につきましては、私どもは賛成できないのであります。さような誤解を起すおそれがありましたので、今度の改正に際しまして、第三者委員という言葉を、特に公益を代表する委員というふうな表現を使つたのであります。御指摘のように、この公益を代表する委員の適任者を得るということは、今日までの状況におきましては、非常にむずかしいとわれわれ認めておりまするが、この委員の選び方におきまして、労資の同意を得てこれを任命するということになつておりますのは、御指摘のような危惧のないように、という考慮が拂われておるのであります。今日までの経驗によりますると、準司法的事項に関しましては、大体労資の意見はまつたく反対の立場にあります関係上、その決定は大体実際におきまして、公益を代表する中立委員によつて決定されておるという状況であります。実際面はさようになつておりまするが、準司法的事務の取扱いにつきましては、裁判所に準ずるような事務になるわけであります。從いまして公益を代表する第三者的な立場にあります者のみが、この判定に当るということは、取扱いの事の性格から見て至当であると考えます。但しこの公益の委員のみがこれに当るということになりますると、御指摘のような欠点もまた出て参るということを考えましたので、公聽会の御意見でも、労資双方からも特に強く要望せられましたように、これが審問に際しましては、労資がこれに参加するということができる。この審問の参加の形式、あるいはどういう形でやるかということは、中央労働委員会規則によつて定めることになつておるのであります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 ただいまの問題につきましては、私の見解と違うということの御答弁で、もうこれ以上は討論になつてしまいますから、申し上げません。労働委員会の非公開の原則につきましては昨日も土橋委員から論ぜられたところでございまして、私どもとしては政府の御説明でありましたけれども、やはりこの問題は、労働者側にとつても、あるいは資本側にとつても、非公開よりも、むしろ公開するという建前をとる方が、より民主的であり、しかも事件の解決に当つては、一層それの方が両者に、あるいは対社会的にも、解決の道を早めるのではなかろうか、こういうように思つておりまするけれども、政府といたしましては、それに対してやはり非公開の方がよろしいとおつしやるのでございましようか。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたします。その問題につきましては、昨日土橋委員に私からお答え申し上げましたように、経驗者といたしまして、私自身がこれは悩んだ問題であります。しかしながら大体におきまして、やはり現行法の非公開原則というものが、これは原則としては適当であると考えます。しかしながら、法律上さように定めましても、これは御指摘のように、労働委員会がこの解決に当るのでありまして、いやしくも御意見のありましたように、またわれわれの経驗から申しましても、公開することによつて、輿論の批判を仰いで行くことが、事の解決を早める場合もあり得るのであります。そのようなことは労働委員会自身が、その都度公開か非公開かをきめて行くということにいたしておる次第であります。

石野久男労働者農民党

○石野委員 それでありますならば、現行法におきましては、この問題について、確かに労働組合かどちらかの要請があつたときには、公開ができるというふうな規定があつたと思うのであります。それはやはり現行法のままにして残しておいた方が、よろしいのではないかと思うのでありますが、政府としては、それを残しておいた場合に、何か非常にまずいような点があつて削除されたのでありましようか。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 お答えいたします。経驗によりますと、現行法のような行き方で参りまするならば、関係者の要求によつてということになるのでありまして、これは事の解決に当る労働委員会の自主的な決定にまつのが至当と考えたので、かような意味に書いた次第でございます。

石野久男労働者農民党

○石野委員 それではその質問は一應おきまして、労調法の問題につきまして一つだけお尋ねいたします。  改正試案の際には但書として、公益事業の指定に関しまして「爭議行為の発生中にその事業が第八條第二項または第三項の規定によつて公益事業として指定されても、その爭議行為については、この限りでない。」とこういうふうにうたつてあつたのであります。今回の改正におきましては、これが削除されておるのでございますが、改正法案においては、どのような御措置をなさるつもりでありますか。

松崎芳労働事務官(労政局労働法規課長)

○松崎政府委員 今の御質問の点は、ちよつと條文の場所が違うように思うのであります。御指摘の点は、改正案においてもそのまま残つております。

石野久男労働者農民党

○石野委員 私の質問はこれで打切ります。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 私は時間が非常に迫つておりますから、ごく簡單に、今まで他の委員から質問のなかつた点だけ、お尋ねしたいと思います。  昨日來のいろいろの質疑應答を聞いておりますと、この法案は実にあいまい、解釈がまちまち、私ども何べん読んでも、どうもわからぬところが相当多い。前の第一次試案と、第二次試案と、今度出たものとでは相当開きがある。この開きはどうしてできたかという質問に対して、いや労資の間のいろいろの意見を聞いてやつたとか、あるいは九原則の実施のためとか、いろいろ考慮してやつたとか言つておりますが、結局第一次試案の意図した、すなわち政府案といいますか、労働省案といいますか、それが了解が得られなかつたから、やむを得ずこうなつたのか、速記をとめてでもよいから、はつきりさせてもらいたいと思います。これは自発的にこうしたのだ、向うさんの意図はない、はつきりそう言えるか、まず第一にそれをお聞きしたい。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 御承知の通り、今次の改正につきましては、総司令部は有力なる指導と援助を與えるということを言われておりまして、事実有力なる指導と援助を與えていただいたのであります。この指導と援助に基きまして第一次試案をつくりまして、これを発表いたしたのであります。試案は同意を得て発表したものではございません。しかしながら、かようなものを発表してはいけないというふうなこともなかつたのであります。もちろんこれは総司令部と十分打合せまして、その指導と援助を受けたのであります。その後試案を発表した結果の公聽会は、速記をとりまして詳細総司令部に提出をいたしてあります。われわれも自主的にこの結果に基きまして、研究をいたしておるのであります。その結果できました案について、総司令部と打合せたのであります。総司令部におきましても、この公聽会の意向は十分尊重すべきであるということと、諸情勢の変化から見まして、今度のような法案にすることが適当であるということになりまして、われわれといたしましては、その基本的な指導に基き、立案いたしたのでございます。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 せんだつて來ある委員から尋ねられまして、今後漸進的に改革する意思があると言つておりましたが、第一次試案がいろいろな関係で実現できなかつた。ことに與党である民自党の内部にも相当反対があり、特に日経連においては、せんだつての総会に、吉田さんが祝辞を述べに行かれた席上で、私どもが見ても解せない点が決議されている。そういう日経連並びに民自党の内部の意向を参酌し、その了解を得るために漸進的にこれをやつた。であるから本心は、第一次試案を漸進的に実行したい、こういう説明が大臣の答弁の中にもありましたが、そういう意図があるのかどうか。いやそうでない、これは固定したものでないから、將來はその通りやるが、今の諸情勢を考えて、やむを得ずこういうことになつたというのか、この点非常に重大だと思いますので、お聞きしたい。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 漸進的という意味は、ただいま一面の例をあげられましたように、民自党の政策とか、あるいは日経連の政策、そういうものと直接の関係があつて、それを第一次、第二次、第三次と実現して行くというような考え方でもつて、申し上げたのでは毛頭ないのでございます。公聽会その他で発表された有力な意見のうちで盛り得なかつたもの、また皆さんの國会における討議をも率直にお伺いして、改正し得べきものがあれば、改正してもいいのではないかという、平面的な考え方で申し上げたのでありまして、前段のような意味は持つておりません。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 逐條的に入ります。第二條の一項ですが、計画と方針とに関する機密の事項に「参画し」と第一次試案にはあつたが、「接し」となつている。「接し」というのは字句が非常に範囲が廣くなるし、「参画し」というと非常に狭い範囲になる。これは字句は簡単でありますが、内容が非常に違つて來ると思います。その点ひとつお伺いしたいと思います。

石黒拓爾労働事務官

○石黒説明員 ただいまの御質問に対して御説明申し上げます。第一次試案におきまして「参画し」と書きました点は、決定に直接参画するということでございまして、こちらは機密の事項に「接し」ということで、これは機密の情報に接触するというような意味でございます。決定に直接参画するというのは、たとえば決定をする会議に出席する権限を有するというようなことであります。機密の情報に接するというようなことの、機密の事項というのを、情報というような意味であるということで御了解願えば、その区別はおわかりになると思います。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 それでは今申し上げましたように、範囲が非常に廣がつたと考えまするが、その点はどうなんですか。

石黒拓爾労働事務官

○石黒説明員 ただいまの御質問に対しまして、労働條件の決定に直接参画するものというのは、今回の提案いたしました法案におきましては「雇入、解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、」これに対應するものでございまして、機密の事項に接しという点は、試案で申し上げますと、労働省試案の第三項の第四号にほとんど同文のものが出ております。別に廣げた趣旨ではございません。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 それでは次に第二條の四号であります。これもまた新しく加わつた條項でありますが、「主として政治運動又は社会運動を目的とするもの」これは実際に主として政治運動をやつているところの労働組合、社会運動をやつているところの労働組合が、事実あるのかないのか、その点お尋ねいたします。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 今まで三箇年間におきましてはこれに該当した組合はございません。それから社会運動と書いてありますが、現行法には社会運動は入つておりません。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 これはよく言われる十六原則の第六項に、労働組合は政治運動並びに政党の支持を妨げるものではないということがありますが、それに抵触しないかどうかということと、それから、たとえば今度の労働法改惡反対という、この労働者の意思を表示するために同盟罷業が行われた場合に、一体これに合うのかどうか、その点をお聞きいたします。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 この規定は主として政治活動で、すなわち労働組合の本質的な使命であることはそつちのけにいたしまして、ほとんど政党と同じような活動ばかりやる、こういうものを言うのであります。從いましてわれわれは労働組合が十六原則に書いてありますように、政治的な活動をすること自体は、何ら禁止さるべきものではないと考えております。今度の法規改惡反対というふうなストライキをやる、このこと自体は、労働組合の資格否認の條件にはならないと思つております。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 こういう條項を入れると――政治的に関係なしに労働者の運動、さらにまた地位の向上というものを、別個に考えるわけに参らぬのであります。そこで政治的に意見のある場合に、そういうことに解されるおそれがあるために、経済上の問題をくつつけてやる、すなわち政治上の意見を反映さすために、特にこの経済上の問題をとつて爭議を多くするというおそれが、これで多分に出て來ると思います。そういうおそれがないかどうかということを重ねてお聞きしたいと思います。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 法律によりまして、政治ストを禁止するとか何とかいうことになりますと、あるいはまた、たとえば同情ストがどうであるとかいうことになりますと、やはり今御指摘のように、むりに経済的要求をくつつけてやろうとする傾向が出るだろうという御意見は、われわれもごもつともと考えております。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 そういうおそれのある――しかもその爭議を、つとめて平和的に團体交渉によつてやろうとするこの法律の精神等から行きまして、おそれがあるようなものを、さらに加えたということに対して、私は疑義を持つのであります。この点は、どうして――しかも今聞きますと、そういう主として政治運動をやつているような團体はないにかかわらず、こういうものを入れているということは、私は非常に了解に苦しむのであります。なおその点を簡単でよろしゆうございますから、お聞きいたします。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 御意見ごもつともでありますが、これは現行法にも書いてあります。また組合といたしまして活動いたします場合に、主として政治活動をやるようなものができることは、やはり適当でないと考えておりますので、現行法のようにこれを残した次第であります。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 それでは第四條に「地方公共團体の警察吏員及び消防吏員」と書いてあります。これは多分公務員法で國家警察並びに消防は禁止されているから、ここにわざと地方公共團体ということを持つて來たと思いますが、これは前に監獄の人なんか、公務員法で附則の中にこれを禁止した例があることを、説明書の中に書いておりましたが、これはごの地方公共團体ということをどうしても入れなければならないのならば、附則の方に持つて來るか、あるいは地方公共團体ということをのけるか、さもなければこれだけのりつぱなものを――りつぱではないけれども、法律をつくつてやろうとするのに、地方公務員法ができますと、ただちにこれが死文になつてくるようなものを、第四條に掲げているのはどういうわけですか。私はこの点は、置かなければならぬのでしたら、むしろ附則の方に持つて來るのが適当でないか。もし置くのならば、地方公共團体というのでなしに、全般の警察及び消防の労働組合の結成禁止をした方が――地方公共團体ということをとつた方が、合理的だと思いますが……。

石黒拓爾労働事務官

○石黒説明員 第四條につきまして御説明申し上げます。この規定をここに置きましたのは、できるだけ現行法の建前をかえないために、かえないという趣旨から、特にこの規定を省く必要も認められませんので、ここに置きましたのです。これを「地方公共團体の警察吏員及び消防吏員」といたしました理由は、國家公務員法の附則第十六條におきまして、國家公務員については、労働組合法、労調法は適用がないと書いてございますので、ここに現行法のごとくに、警察官吏及び消防職員はと書きましても、その中の國家公務員に属するものは当然に省かれますので、そういうここに書いておきながら、それが実際に動かないという規定を置いておきましては、かえつて惑わしめるゆえんであると思いましたから、必要のあるもののみを残した次第であります。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 ちよつと今の第四條の答弁に関連してでございますが、私は國家公務員法はあくまで特例法だと思います。この労働組合法こそほんとうの法律でありますから、警察官吏全体の禁止事項を書くならば、やはりここに明記すべきだ。そして要するにここの後へ受けて、國家公務員法の九十八條の規定にあるというようにすべきであつて、國家公務員法という特例法にあるから、本法にいらないというのは、逆だと私は考えますが、この点に対する見解はどうでしようか。

石黒拓爾労働事務官

○石黒説明員 ただいまの点につきましては、國家公務員法九十八條との関係におきましては、あるいはそういう見解も成立つかと思いますが、國家公務員法の附則第十六條におきまして、労働組合法、労働関係調整法、労働基準法及び船員法並びにこれらの法律に基いて発せられる命令は、第二條の一般職に属する職員には、これを適用しないと書いてございますので、ここに何を書こうとも、全然意味がないという結果になりますので、國家公務員法のこの規定が生きております以上は、こちらの方へ書くことが無意味であるということでございます。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 私はかりにそれであつても、國民の團結権を擁護する二十八條の規定を中心にするところの労働組合法である以上は、あくまで労働組合法にも一應明確にしておいて、そしていろいろな特例がでた場合は、特例でそれを受けるというようにすべきが、やはり正しいと考えます。これを國家公務員法ができ、地方公務員法ができてから、そちらの方にするからいらぬじやないかということになると、今大矢委員の御質問のように、第四條の問題についても、さらに地方公務員法ができて來ると、またこの條項は削らなければならぬということになりますが、やはりこの條項は明確にはつきり生かしておいて、そして特例法でそれをするというふうにする方が正しいのじやないかと、あくまで考えるのですが、どうですか。

石黒拓爾労働事務官

○石黒説明員 同じようなことを申し上げて恐縮でございますが、國家公務員については、労働組合法で何を書いても適用がない。しかも警察官吏につきましては、國家公務員法九十八條が御承知のように適用になります。國家公務員法第九十八條の、職員は組合云々という規定は、警察官吏、警察職員等は職員の組合をつくれない。しかしながら警察官吏が個人として――警察官吏のみならず、國家公務員が個人として、職員組合以外に他の労働組合に加入することは、第九十八條の禁止するところではございません。從いまして警察官吏につきましても、必ずしも他の労働組合に加入することは禁止されておらないというのが、人事院の見解のようでございます。これに対して、第四條におきまして、警察官更は労働組合を結成し云々とというぐあいに書きますと、はたしていずれの方が警察官吏に適用になるかというような混乱を起すおそれがございますので、こちらには明確を期した次第でございます。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 四條にはこれは不必要だと私は考えます。警察官吏と、警察に勤めますところの一般公務員との区別を、やはり明確にすべきだと考えます。警察官吏並びに消防官吏というものは禁止されておりますが、それでない警察、消防に勤めておる者があるはずです。そういう者は、おそらく公務員法の九十八條の四項でも除外されておると思います。むしろこの点をここで明確にすべきだと考えますが、私は、それは意見になりますから、もうこれ以上申し上げません。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 第五條の問題ですが、これはずいぶん議論になつた條項であります。これは私も從來届出主義であつたのが、今度は認可主義にかわつておると思うのであります。字句を読みましても、労働委員会に証拠を提出して、そして規定に適合することを立証しなければならぬ。立証しなければ、それが効力を発しないということでありますから、あくまでもこれは認可規定だと思います。そこでこの規定から行きますると、先ほど石野君もそういうことを述べられたようでありますが、せんだつての公聽会のときに、附則によつて、六十日以内にこれを終らなければならぬ、いわゆる立証しなければならぬということで、実は三万を越える労働組合が、六十日間にそれはとうていできるものではない、できないようなことを規定されては実は困るというような話がありましたが、この点はどうなんですか。できると考えて六十日と置いたのか。事実上はやらなくてもいいというさいぜんからの話もありましたが、こういう規定が明らかにあれば、これはやらねばならぬことになりますが、そういうことはどうですか。

松崎芳労働事務官(労政局労働法規課長)

○松崎政府委員 附則の六十日といいますのは、法人だけでありまして、一般の労働組合ではありません。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 それでは、第十九條の八は、もう前に前田君から質問がありましたから、この点は再び質問いたしません。九に「公益委員の任命については、その中の三人以上の員数の委員が同一の政党に属する者となつてはならない。公益委員が自己の行為によつてこの規定にてい触してその資格を失つたときは、当然退職するものとする。」とは、どういう意味か。たとえば政党に入党しなければ抵触しないというのか、ある特定の政党に向つて、選挙のときに應援演説だとか、あるいはまた推薦状を出すとかいうことについても、抵触するのか。そうでなく、それは党に入党して初めて自己の行為により抵触するのか。これをはつきり解釈していただきたい。

松崎芳労働事務官(労政局労働法規課長)

○松崎政府委員 今の御指摘の点は、入党しなければという意味であります。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 それでは労調法に入ります。「中央労働委員会の決議によつて」を「國会の承認を経て」と、こう言つてありますが、これはやはり前にどなたからか質問があつたようでありますが、労働委員会の議を経てですか。労働委員会に一應諮問なら諮問をして、そしてさらにこれを大臣が國会に承認を求めるという方が非常にいいんじやないかと私は考える。それが一つと、それから公益事業の指定の規定はここにあるが、取消しの規定がない。これは特に今日本が再建途上にあつて、今でこそ公共事業として指定する資格があつても、あるいはまた経済が安定して、ある一定の期間経過すれば、公益事業として指定の必要がなくなる場合がある。やる規定はあるけれども、取消し規定はないのであります。その点はどういうふうにお考えですか。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 前段の中央労働委員会の意見を聞く規定を入れろという御意見、これはごもつともと存じまするが、これは大体立法事項でありまして、それは政府の責任においてとりはからわれると考えております。從いまして、法律においてさようなことを規定する考えは持つておりません。ただ実際の取扱い上の立場におきましては、時の所管大臣、あるいはこれらの問題に最も関係の深い労働委員会の意見を聞くかもしれませんが、また聞くこともできると思いますけれども、法律でこれを指定することは適当でないと考えております。  後段の問題につきましては、やはり現在公益事業の指定は法律できめられておるわけであります。法律できめておりますものを、これを排除いたしますときは、やはりこれは議会の承認を経まして、法の改正で行かなければならぬと考えます。ただ追加指定の場合には、これは取消しの規定はありませんが、期間を限つてやることになつております。從いまして國会において御審議を願いますときには、一年以内ということで、適当な期間を限られるものと考えておる次第であります。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 次に「前項の期間が満了した時から六十日を経過した後」すなわち公益事業の爭議期間を六十日ときめてある。私はこれらの法案の欠陥の中で、一読して一番問題になるところは、労働者の例の暴力の問題と、それからこの問題だと思う。これによると、公益事業は六十日やつていいのだということになる。これでは私はたいへんなことになると思う。こういうことをきめなければならぬという理由が、私にはどうしてもわからない。ことに、もしこういうことをきめると、六十日の期限がなくなるから早くやらなければならぬというので、爭議を早期に導くところの大きな原因にもなる。もう一つは、六十日たつたならば、また一つの冷却期間を置かなければならぬということになると、問題をかえて、すぐに調停を申し込んで、その期間を生かそうとすることが私は考えられると思う。どうしてこういうものを置いたかという理由を、先ほどから熱心に御答弁を聞いてはおりますけれども、いまだに十分なる説明がない。その点一体なぜこういうように六十日と置いたか、しかも公益事業に対して六十日やつてもいいという約束になつて、たいへんなことになるからこの点ひとつお伺いいたします。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 御懸念の点はごもつともと存じます。われわれとしましても、この規定の趣旨を惡用すると申しますか、さようなことにならなければならぬ事情に立ち至ることがないように、念願するものであります。ただ、われわれがそのような規定を置きました趣旨は、公益事業のごときものが長い間爭議権を持つて、だらだらいつまでも爭議状態にあるということは、一般の公益の、あるいは福祉にとりましても適当でないと考えたのであります。第二は、そのような期間を置くことによりまして、労働委員会あるいは労資双方は、今日までよりも、より眞劍に爭議の解決に努力するであろう、かような考え方を持つたのであります。第三は、今日までの経驗によりますると、大体六十日、すなわち調停を申請いたしましてから九十日以内に片づかない爭議は、大体諸種の事情が変化して参るのでありまして、当初九十日以前に紛爭の主題になりました内容も、自然に違つて参るのであります。そういう場合、新しい立場の調停に服するということが、解決を早めるゆえんである、かように考えております。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 最後に私は第一條にもどつて、例の暴力行為のことをお聞きしますが、私はこの内容を見て論議しようとは考えません。私ども労働組合運動の経驗から行きまして、このくらい労働者を侮辱し、労働組合を冒涜した字句はないと思う。労働組合は、御承知の通り人格と、それから新しい日本の再建に対する一つの責任と誇りを持つている。これでは暴力團扱いだ。私はひとつ、賀來さんは特に労働組合の関係の人でありまするから、率直に意見をお話願いたいのですが、民自党内閣がいつまでも続くとも私は思わぬ。しかしながらこの法律は永久に続くのであります。これは鈴木労働大臣のためにも――賀來さんはもちろんこの労働組合運動に関係なさつた人でありますから、今後組合運動を指導し、保障するそれらの関係におきまして、これは大きな支障が出て來る。私はあなたの心情を、率直に申しましても、國家公務員法によつて身分が保障されているのですから、良心的に率直にここで私は言つてもらいたいと思う。どうも自分たちはいかぬと思うけれども、周囲の事情でやむを得なかつたというか、これが今どうしても必要なんだというか、私はどうしても良心的な、率直な答弁がほしいのであります。鈴木さんに遠慮する必要も何もない。あんたはちやんと身分が保障されておるのです。私は労働省でこういうものをつくつたということは、どうしても納得できない。しかも改惡と言われたこの法律を、どうしても強行するというならば、この字句においても、今後の日本の再建に大きな支障が來る。労働省の労働行政というものに、どんな影響があるかということを考えたことがあるかどうか。これは先ほど來いろいろな説明を聞いておりますると、ごく小数の者があつたと言う。あつたにしても、この言葉のほかに、もつと使いようがなかつたか。まつたくの暴力團扱いで、そのままに当てはめておりまするが、この点はどう考えても、私は何とかできるものじやないか。あるいはできないならば、ここで速記に、実はああいうものは好まなかつたけれどもやむを得なかつた。こういうことがあるならば、ぜひ意思表示をしてもらわなければ、今後の労働行政の上に対する影響と日本の再建、経済九原則の推進の上に私は非常なる支障があるということを眞劍に考えている。私はずつと法案を一読しまして、一番私の心に残つていることはこの第二項の但書であります。これはぜひ率直に労働大臣と、それから賀來局長と、お二人ともの意見をひとつお聞かせ願いたい。

賀來才二郎労働事務官(労政局長)

○賀來政府委員 かつて政務次官といたされまして、私大矢さんに仕えたことがありますので、大矢さんのお氣持はよくわかりまするし、今の大矢さんのおつしやつた言葉のうちに、眞情あふるるものがあることも私はよく了解できるのであります。從いまして私といたしましては、労政局長としてかかる規定を設けることになりましたまわり合せにつきましては、一つの因果だとあきらめておる次第であります。ただ二つの点で、私といたしましても、これは望ましいものではない、非常にいかぬと思つておりまするが、かような規定を入れることはやむを得ない、かように考えたのであります。一つは、かような規定を入れなければならないような事情に、今日までの労働組合運動の、一部とは解しまするが、一部にさような者があつたということでありまして、これは非常に遺憾に存じております。第二は、現在われわれは占領下にありまして、そうして総司令部の有力なる指導と援助のもとに、かような仕事をやつておるということにつきましては、そのこと自体がいかぬというのではございません。それのもとにおきまして、われわれは研究しなければならぬ立場にあるということを、御了解願いたいと思つております。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 こういうような字句を使わなくてもいいような時代が、日本の労働組合の発展段階のうちに一日も早く來ることを、大矢委員とともに、ひたすら待つております。

大矢省三日本社会党

○大矢委員 最後に、くどいようでありまするが、日本の労働運動は二・一ストを契機として反省期に入つております。しかも健全な、非常に反省して、民主的な方向に持つて行こうとする幹部の努力が拂われておるということを、私は考えるのであります。それはしばしば答弁の中にも言われておるところでありまして、大体傾向として――部分的にはいろいろありましようが、傾向として、そういう健全な組合発展の方向に向いつつあることは、再確認をしていただけるかと思います。從つて私は、くどいようでありまするけれども、この字句を何とか修正なりすることができぬかということは、これは卑近な例かもしれませんが、國家公務員あるいは官吏、警察官のような公吏の人のいろいろな事件――最近特にわれわれは三面記事で見ることがありますが、決してそういうことで全部を律して行けるものではないのでありますけれども、生活難のために窃盗、強盗をやるというようなことがあつた場合に、公務員の服務規定の中に、あるいは官吏の服務規定の中に、お前は窃盗をやつてはいかぬのだということを書いたときに、官吏は一体どういう氣持がするか。私はそういう意味で、一部にそういう者があつたからといつて、この健全に向いつつある労働組合に対して、暴力行為を正しいものだと解してはならぬということは、教養を高め、社会的な地位の向上をはかろうとして、あらゆる努力をしておるこの組合に対して、あまりにも酷な言葉ではないかと思います。しかしながら今いろいろな局長からの意見を聞きまして、自分の意思に反するようなこともあるということを、言葉の片鱗に伺つたのでありますから、これ以上は申しませんけれども、どうかそういう氣持を労働者が起すという、あるいは持つているということについて、あれは杞憂で、実際の上には先ほど法務総裁も言つたように、適用しないのだ。あれはわれわれは、單に杞憂でけつこうだつたということの事実が現われるように、労働行政なり、あるいはこれらの労働組合の運動の指導者にも、考慮を拂われたいということを切にお願いしまして、私の質問をこれで打切ります。

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 大橋委員の鈴木労働大臣に対する質疑の保留されておつたものを、この際許可いたします。

大橋武夫民主自由党

○大橋委員 私は前会の質問を通じまして、この法案の改正の動機は、いわゆる組合民主主義の徹底をはかるという進歩的な線に沿うものでありまして、そうして團結権、爭議権の制限というような反動的な線とは、およそ反対なものを意図しておる。かようなことにつきまして、過日労働大臣並びに政務次官よりお答えをいただいたのでございます。しかるにその後本委員会におきまして公聽会を開きまして、委員会が最も公正なりと認めて、かつまた労働陣営の主要なる意見を代表すると認めて招致いたしましたる労働側の三人の公述人は、いずれも口をそろえてこの案に反対の旨を述べたのでございます。また從來の公聽会その他の経緯を通じまして、労働者の間にこの案に対して相当反対論があるということほ、大臣もよく御承知のことと存ずるのでございます。しかしながら、この種の労働組合法のごとき法律を、眞に円滑にその目的に從つて運用をいたしますためには、関係者の最も大部分を占めておる労働者階級の、全幅的なる支持共鳴がなければ、この法案の施行を円滑に行うということは不可能であると思うのでございますが、この点につきまして、労働大臣は將來この法案に対して、わが國勤労大衆の多数の人々の協力を得て、これを円滑に施行することができるということについての御確信がありますならば、この際にお漏らしをいただきたいと存じます。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 法案は、いろいろな角度から檢討いたしますと、それぞれのよつて立つておる角度その他いろいろの批判もあると存じますが、提案理由の説明以來、ずつと私自身、また政府委員が御説明申し上げましたごとく、改正の動機も、それからそれ以後の推移も、ただいま大橋委員の御指摘の通り、一にかかつて民主的な、建設的な組合運動の推進性にあつたという点につきましては、私ども良心的に、その線をはずしておつたとは、今日も考えておりません。從いまして各方面からいろいろな批評はあつたにいたしましても、現段階におきましては、これを冷静に運用して、冷静にこの法の底を流れるところの意図を了解していただけるならば、多くの働く労働者諸君の同感を必ず得られる。こういう確信を持つて、今日臨んでおる次第でございます。今後の運用につきましても、そういう立場をとつて、この法案が幸いに國会の御協賛を得られましたならば、確信を持つてその線に沿つて労働行政に進みたいと存じます。

大橋武夫民主自由党

○大橋委員 ただいま大臣から、確信を持つて労働者の協力を得られるというお答えをいただいたのでありますが、労働問題の解決というものは、今日においていろいろな角度から考え直さなければならない時期であると思うのでございます。特に私は、この組合法の運営、またこれによるところの労働者の團結権、團体交渉権、爭議権等の行使につきまして、最も問題となるところは、労働者に対する使用者側の態度であると思うのでございます。使用者は戦時の統制において、創意とくふうとを失つたという面が、今日なおかなり指摘し得ると思うのでございます。企業の能率的な経営に対します熱意を失いまして、單に経済統制によるところの金融であるとか、あるいは公定價格の操作であるとか、そういつた統制の面を利用するところの利潤獲得というものが、戰時中及び戰後今日まで、比較的企業者の関心の中心であつて、企業自体の能率的運営による超過利潤の獲得というものが、ややもすれば等閑に付されておつたように思われるのでございます。そうしてこのことの結果といたしまして、戰後において租税が高くなる、また賃金が高く、その結果利潤の減つたという場合におきまして、経営能率の改善ということを考えることがなく、いわゆる補給金であるとか、赤字融資であるとか、またマル公の引上げであるとか、こういうことによつて、その赤字をカバーしようという方面に逃げ込んでおつたものも、少くないのでございます。しかるに昨年におきましていわゆる企業三原則というものが行われまして、この赤字融資、あるいは補給金の支給、あるいは價格の引上げ、こういつた面が閉鎖せられました結果、その損失ないしマイナスの面を、いわゆる賃金の不拂いというような事象へ持つて行つた。こういうことが今日賃金の不拂いを生んだかなり大きな原因ではないかと想像をいたしておるのでございます。過去二年間の爭議は、どれもそのおしりが結局において政府に來ておつたということ、すなわち企業家が、全部とはもちろん申せませんが、その一部のものは、自己の企業に対する責任を放棄しておつたものが少くないということを、言い得ると思うのでございます。労働問題の解決には、これを改善することが第一なのでございまして、企業経営に対する使用者の自主性、責任性というものを強調しなければならぬと思うのであります。大臣はこのたびの法案におきまして、労働者に対して自主性、責任性を強く要求せられたのでありますが、その半面において、今日わが國の企業家に対しても、また自主性、責任性を要求することが妥当ではないかと愚考いたすのでございます。まずもつて今日においては、企業の能率の向上に対する、企業家の創意くふうということを回復させなければならぬ、あるいは賃金の面において、これを例にとりますならば、今日における賃金はいわゆる生活給的な色彩が濃厚なのでございまして、高能率に対する高賃金政策というものが、実際において行いがたいようになつておる。またその他労働能率を増進せしむるための労務管理というものが、比較的閑却せられておるような部面が少くないのでございます。この企業家の自主性、責任性を労務管理の面において高からしめるということが、今後の労働問題の解決においては、最も重要なる一つのポイントとなるのでございますが、労働大臣におかれましては、企業家をして労務管理に対して強き熱意を持ち、今後の來るべき企業の合理化という場合において、その結果を労働者の犠牲において負担せしめるという方向でなく、作業能率の増進という面において解決をして行くという、方法に向つて指導せられるために、どういう御用意がありますかを、最後に質問いたしまして、私の質問を打切る次第でございます。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 労働問題の根本的解決が、國民経済の立ち直りにあることは申すまでもないのでありまして、同時にまた大橋委員の御指摘になりましたように、企業家側の自主性、責任性という問題に対しましては、新しい段階に即して、これも同様強く要請されなければならないという考え方には、全然同感でございます。ただ困難な諸條件のもとで――その原則については、もちろん百パーセント同感でございますが、これを具現して行く実際的の方式、経済政策というものは、なかなか一口にそう簡単に、適当な強力な政策というものが探し当らないというのが、率直のところ、現在の日本の現段階の中における実際の姿であることももちろんであります。それにいたしましても、経済九原則の犠牲を、労働者諸君のみに押しつけるという考え方は、考え方としても成立たないし、またそんなことを、しいてやろうとしても、現実の問題として、それが押し通せるものでないことも、わかりきつておるのでありまして、労資双方の協力――最初にも私どもしばしば繰返して申しましたごとく、労資の対等なる関係確立の上に、双方の民主化、双方の責任性の確立という線に沿つて、労働問題もすべての問題も解決して行くべきである。そう考えております。この段階におきましては、強く経営者諸君にも、新しい時代の経営者として立ち上つて、この方向を歩んでいただきたい。その実際的の政策を用意しておるかという御質問でもありましたけれども、これは各方面、安本その他経済省とも打合せまして、労働省といたしましてはまつたくそういう立場には同感でございますから、そういう方向に日本の経営者諸君が進んでくれるように希望いたしまして、その方向に強力に進んで参りたいと思います。

前田種男日本社会党

○前田(種)委員 大蔵大臣が本委員会に出席されなかつたことを非常に遺憾と思います。さらに関係の局長もすでにおられないということでありますから、労働大臣また國務大臣でございますから、要点だけ申し上げまして、鈴木大臣の答弁を願い、さらに政府で善処してもらいたい点を要望しておきたいと考えます。  第一番は所得税の問題でございます。特に勤労所得税の問題です。今度の予算面から見ましても、予算の審議にあたりましても、大藏大臣は所得税の軽減の問題は、昨日來朝されましたシヤウプ博士一行がお見えになると、この夏でも臨時議会を開いて軽減を実現したいというような公約を、予算委員会その他で意思表示をされておるわけでございます。しかし実際問題といたしまして、シヤウプ博士一行が來朝されまして十分の檢討をされました結果、はたして大藏大臣が予定しておられるように、早急に臨時國会を開いてそうした審議をするようになるかどうかという点は、その後の情勢等も考えますならば、はなはだおぼつかないものじやないか。私の見解から申し上げますならば、年末もしくは來年度の予算の編成のときになるのじやないかということすら、心配するのでございます。予算面から見ましても、私が数字をあげるまでもなく、所得税三千百億のうちで千二百億が勤労所得税になつております。しかも営業所得は二十三年度に比べまして三〇%増、國民所得の全体から見ましても三〇%増になつておるにもかかわらず、勤労所得税の方は五五%増ということに二十四年度の予算面になつております。これはいかに勤労大衆に、税の上においも負担が加重しておるかということが、二十四年度予算にも現われておるわけであります。昨年の三千七百円ベースのときには九十四円の税金であつたものが、六千三百七円べースになつたために、八百四十円の税金になつているわけです。どうしても勤労所得税の問題は、政府としても善処してもらわなければならない重要な問題でございますから、ぜひともこの問題のためには、特に労働大臣として最善の努力をしていただきたいと熱望するものでございます。  次に税金の取立ての問題について、過日も質問いたしましたが、最近賃金の不拙い、遅延等が続出しておるにもかかわらず、当然賃金として支拂わなくてはならない金を、税金の滞納という形において、税務署が差押えてとつてしまうというようなことが、全國に相当行われておることでございます。もちろん法律的には、賃金が優先するか、税金が優先するかという問題がございますが、國民の生活を脅かすという現実の問題にあたりましては、この関係の処理も適切なる方法を講じていただきたいと私は考えます。さらにもう一つは全体の政府支排いが、今日非常に遅れておる関係上、多くの事業は行き詰つておるわけでございます。そのために首切りがあり、工場の縮小が続出しているというこの現状においては、どうしても政府は、ベストを盡して政府支排いを督促して、そうした関係において各企業に迷惑をかけないということにならなくてはならぬと考えます。今日まで本委員会で審議しました中におきましても、取立てるべきところの保険料その他の滞納につきましては、相当苛酷な追徴金等の法的処置を講じてあるにもかかわらず、当然政府が支拂わなくてはならないものは数箇月も遅れておつて、それがあたりまえだというような今日の状態になつております。これはどうしても大藏省の責任でございますが、政府全体の責任において、政府支拂いのために多くの民間企業に迷惑をかけて、しかも勤労大衆全体に迷惑をかけているということを、一日も早くなくするということのために、最善の方途を講じていただきたいと私は考えます。この点について大臣の御答弁がございますならば、答弁を伺つて、そうしてこれ以上は私は申し上げませんからぜひ大所高所から、特に労働省の立場から、この問題等については御善処を要望する次第でございます。

鈴木正文民主自由党労働大臣

○鈴木國務大臣 第一の勤労所得税の問題は、私どもの立場からいたしましても、最も関心事であり、労働者諸君の実質賃金の中の重要な問題になつて來ますので、この問題につきましては、もちろん労働大臣といたしましても重大な関心を持つております。これは大藏大臣がお答えすべきことですが、閣議その他で受けている私の印象から申しましても、この勤労所得税の軽減という問題に対しましては、吉田総理も、それから大藏大臣も、特別の関心を持つて臨んでいると、私の印象ではそう見えるのであります。ただ諸般の事情によりまして、御承知のような推移はたどりましたけれども、あらゆる問題の中で、この問題を最も重要な問題として、総理は考えておられると、私はそういう印象を受けておるのでございます。私どもの立場といたしましては、先ほど申した通りでございまして、前田委員の御指摘の点は、もういずれの政党、だれから考えても異論のないところでございまして、これは言い過ぎかもしれませんが、私からも大藏大臣また総理にも、労働委員会においてその要望がありましたということを、正確にお傳えいたします。  それから政府支拂いの問題につきましては、これもすでに本会議でも問題になりましたし、政府といたしましては、率直に申し上げまして、その原因がどういうところにあるにせよ、これは政府の責任であり、そういう事態でもつて推移することは、まことに相済まないことだと思わざるを得ないのであります。この点につきましては、最近大蔵省の中に審議室というような窓口を設けまして、この問題について――そういつた当然支拂われるべきもので、しかも本省の方では支拂つたと思つているものが、まだ支拂われないというようなものにつきましては、一々具体的に、今日までのように單なる文書の通牒、監督という程度を越えて、直接その苦情を受取るところの窓口をつくつて、そうして処理して行くというような方式もつい数日前に決定したのであります。一方この問題につきましては、皆さんからの御指摘もありまして、労働大臣といたしましても、しばしば閣議において発言し要望したのであります。大体において五月の中ごろまでには、かつて四月の初めごろ指摘されたところの多くの支拂いが、完成するという形で、もつて推移し、またその手当も進んでおると聞いております。なお今日要望がありましたことも、正確にお傳えいたします。  それから税金と賃金の不拂いの問題は、賃金が税金以外のあらゆる債務に優先するところの第一の債務であるという原則に至つては、私どももちろんそう考えておりますが、賃金の関係におきましては、法律的にはどうなりまするか――労働者諸君にとつて今日のようなときにおいて、賃金の遅拂いというふうなことが、いかに切実な問題であるかということは、十分わかりますので、この点につきましてはさらに研究を重ねて善処いたしたいと思います。

島田末信民主党(第十控室)

○島田委員 私はこの際ただいま議題となつております両法案の質疑の打切りにつき、動議を提出いたしたいと存じます。本両案は去る三十日國会に提案されて以來、本委員会におきましては、連日熱心に審議が続行されて参りました。一部の方面からは、重労働委員会という、まことに名誉あるうわさをせられたほどに、文字通り寧日なき努力が続けられて参つたのでございますが、大体質疑も一巡したようでありますから、この程度で質疑の打切りをいたしたいと存じます。何とぞ御賛成あらんことをお願いいたします。

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 ただいまの島田末信君の動議に御賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕

倉石忠雄民主自由党

○倉石委員長 起立多数。よつて本動議のごとく決定いたしました。ただいま議題になつておりまする両案についての質疑を打切ります。  本日はこれにて散会いたします。     午後七時四十一分散会

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