労働委員会 第13号
- 発言数
- 46 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 7
- 開催日
- 1949/05/04
会議録
○倉石委員長 ただいまより会議を開きます。 まず、失業保險法の一部改正する法律案を議題といたします。前会において質疑を打切りましたので、ただいまより討論に入ります。討論は通告順に行います。大橋武夫君。
○大橋(武)委員 私はただいま議題となりました失業保險法の一部を改正する法律案に対しまして、修正の動議を提出いたしたいと存じます。その案文を朗読させていただきます。 失業保險法の一部を改正する法律案に対する修正案 失業保險法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。 「第五條及び第六條を次のように改める。」を「第六條を次のように改める。」に改める。 第五條を削る。 第十七条の二第一項を次のように改める。 賃金日額は、被保險者の離職した月前において第十四條の被保險者期間として計算された最後の六月(月の末日において離職した場合は、その月及びその前五月)に支拂われた賃金の総額を百八十で除して得た額する。 次に修正の理由を述べたいと存じます。このたびの失業保險法の改正の眼目は、失業保險の適用範囲の拡張に合せまして、保險料の引下げ、保險金の引上げが重要なる項目となつておるのでございまするが、この保險金の引上げの原案によりますると、從來の実績によりまして、賃金日額の百分の五十四であつたものを、このたび一律に百分の六十に改めようということになつておるのでございます。しかしながらこれと同時に、保險料におきましては、從來の千分の十一を千分の十に引下げておりまするが、その実質におきましては、算定基準となりまする賃金日額の範囲に、賞與及び臨時の給與を含めまする結果、実質的な引下げはわずかに千分の〇・四程度にとどまるものでございます。しかるに今日におきまして、失業保險の保有いたしておりまする積立金の額は、きわめて巨額に上るのでありまするが、この保險の本質を考えますると、來るべき失業に対しまして、失業救済事業と相まつて、失業救済事業によつて救済されることのできない失業者に対しまして、その生活を保護しようというのが、この制度の目的となつておるのでございます。申すまでもなく失業者の存在は、労働條件の維持改善に対しまする不断の脅威でありまするがゆえに、この保險金を引上げ、これによつて労働者の生活の保障を高めますることは、労働市場に対しまする労働予備軍の圧迫を緩和することによりまして、安定恐慌時におきまする労働條件の切下げに対しまして、労働者の抵抗力を補強する作用を有するのでありまして、その労働政策、社会政策の上に有しまする異議は、きわめて重かつ大なるものがあることを疑わないのであります。かかる意味におきまして、今日保險経済が巨額の積立金を擁しておりまする実情にかんがみまして、いやしくも保險金の算定の基礎に賞與及び臨時の給與を含めまする以上は、給付でありまする保險金の算定の基礎にも、やはり賞與及び臨時の給與をひとしく含ましめて、これによつてただいまの作用を一層有効に働かせることが、適切ではないかと存ずるのでございます。これがすなわちただいま修正案を提出いたしました理由でございます。 なお私はこの機会に政府に対しまして二、三の要請をいたしたいと存ずるのであります。その六一は、保險料の問題でございます。先にも申し述べました通り、保險料はこのたび千分の十一より千分の十に法文上低下いたしておりまするが、しかしながらその実体はわずかに千分の〇・四の低下にとどまるのでございまして、多額の積立金がありまして、一般に引上げの要請が強く主張せられておりまするこの際、もとより將來の失業者の増加並びに保險経済の予測は今日きわめて困難でありまするから、ただいまただちにより以上の引下げを断行することは、あるいはこれを期待することがむりであるかもしれませんが、わが党といたしましては、政府におかれまして、すみやかに將來の失業の〇勢並びに保險経理の將來というものについて、確たる見通しを立て、その見通しが許しまするならば、急速なる機会において再び保險料の引下げを断行いたしまして、労働大衆の負担の軽減をはかりますると同時に、企業経理の合理化に一層貢献されんことを、切に要望する次次第なのでございます。 次に日雇労働者の保險料は、一般労働者の保險料に比べまして、きわめて高率であると存ずるのでございます。元來失業救済におきましては、失業救済事業によつて失業者を救済するというのを、本來の目的とすべきでありまして、失業保險というものは、あくまでもこれが補充的な役割を與えるということにとどむべきものと思うのでございます。この日雇労働者の保險料、が、きわめて高率になつておる理由は、何に基くのであるかと申しますると、今日日雇労働者の稼働日数が統計上二一・三であり、また土建界の常識によりますると、それが二十二、三日くらいということに相なつておりまするが、政府はこのたび保險料を算定するにあたりまして、將來の失業の増加を予想いたしまして、これを一箇月平均稼働日数十八日まで低下するという想定のもとに、この保險料を定められたものと承知いたしたのであります。しかしながら今申し上げましたように、失業救済はあくまで失業救済事業によるのが、原則でなければなりません。そうしてその失業救済事業には、常に失業の情勢に対應したる十分なる規模を持たなければならぬと思うのであります。失業救済事業が十分なる規模を與えられまする以上は、將來失業の増加によつて、日雇労働者の月平均の就労日数が、わずか十八日にまで低下をするということは、あり得ないはずであるといわなければならぬと思う。何となれば、その失業救済事業こそは、この日雇労働者を主たる対象として行われるものであるからなのであります。私どもは過日の予算審議の際におきまして、今年度において失業救済事業のために用いられるところの予算が、あるいは少額に失しはしないかということについて疑いを持つたのであります。これに対して当時政府は、將來失業の情勢に應じて必要があれば、必ず別途に措置するという言明を與えられたのであります。しかるにこのたび日雇労働者の保險料の算定をせらるるにあたりまして、將來失業増加の結果、日雇労働者の就業日数が、一箇月平均十八日までに低下するかもしれぬというお答えを承りますると、あるいは政府はかねて言明せられました通り、失業救済事業の規模を、失業者の増加の趨勢に應じて拡大するということをなさず、その救済をもつぱら失業保險によらしめようとするのではないか。そうしてそのために、失業保險経済の健全性を守ることを目途として、このたび高額な保險料を定むるに至つたのではないかということを疑わしめるのであります。もし、かりにもかかる意図がありまするならば、なるほど保險経済の健全性というものは、この高い保險料によつて維持することができましようけれども、しかしながら労働力の健全性と、社会生活の健全性というものは、われわれは何によつてこれを維持することができるでありましようか。健康にして健全なる労働者の要求いたしますところは、單なる生活費の補給ではないのでありまして、常により多くの就労の機会を與えられたいという、切なる要望なのでございます。彼ら自身の労働力を通じて、國家の再建に参與するということの喜びでありまして、無爲徒食の惰民的な生活を要求しておるのではないのであります。それだからこそ、失業救済において、失業救済事業の重要なるゆえんがあると存するのでございます。かつまた日雇労働者というものは、失業者の落ちて行く最後のおちつき先である。そしてそれはまた、健全なる社会人、生産人として彼らが社会にとどまります最後の段階であると思うのであります。彼らがこの段階から轉落いたしますならば、そこに待つておるものは怠慢であり、悪徳であり、犯罪であり、また破壞的な思想であると思うのでございます。健全なる社会人、生産人として、彼らを守り通すために、少しでも多くの就労の機会を與えなければならぬ。そして労働こそ、生産と建設の喜びを彼らに與えて、彼らを怠惰と悪徳と、犯罪と破壞的思想から守るものであると思うのでございます。わが党は、かるがゆえに、失業者に対してはでき得る限り就労の機会を與えよということを、かねてより主張いたしておつたのでございます。労働大臣はこの委員会の席上におかれまして、もしも將來失業の増加によつて必要が生ずるならば、必ず失業救済事業の規模の拡大をはかるということを言明せられたのでございます。私はこの言明に対して多大の期待をつなぎますと同時に、將來必ずこの通り実行せられまして、失業救済事業が失業の規模に應じて拡大せられましたあかつきにおいて、労働者の就労の機会が適当に増加した場合、それによつて、この日雇労働者の保險料の引下げを断行せられることを強く要望する次第でございます。 修正案を提出いたしますと同時に、わが民主自由党の要望いたしますように、將來でき得る限りすみやかなる機会に、一般の保險金の再引上げを断行せらるること、第二には失業救済事業の規模を將來の失業の増加に應じて適当に拡大せたるること、第三にはその拡大せられたあかつきにおいて日雇労働者の保險料の引下げを断行せらるることこの三つの要望を強くいたしまして意見を申し述べた次第でございます。
○倉石委員長 次に前田種男君。
○前田(種)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました失業保險法の一部を形成する法律案の修正部分を含めまして、原案に賛成するものでございます。ただこの際二、三の点に触れて、意見を申し述べて結論としたいと思います。 失業保險法が完全なものであるかどうかということにつきましては、多くの意見があるわけです。今日の日本の現状において、完全な社会保障制度のもとにおける失業保險制度をながめますならば、現行法におきましても、今日一部改正の提案の内容を見ましても、たくさんの不備があることを私は指摘するものでございます。まず第一に提案されました案の中で範囲を非常に拡大されたことはけつこうでございますが、今日の政府機構のもとにおいて、提案されましたように範囲を拡大されることが、はたして運用上うまく行くかどうかということについては、私は疑問を持つておるのです。すなわち一方に五名以上使うところの飲食営業あるいは旅館等にまで、本法を適用することになつております。一方には十分事業者の形態をなしておるところの水産加工等が、除外されておるという一例を見るのでございます。こうしたことはあまりにも事務が煩雑になり、そして実際にこの適用が円滑に行くどうかということが、危惧されるわけであります。現行法においても、適用されなければならない事業場が、はたしてすべて本法の適用を受けておるかどうかということになりますと。相当受けていない部分があるのではないかと私は推測いたします。こうした点は、少なくとも労働省の下部の機構が、ベストを盡して本法の内容をもつと徹底せしめるとともに、加入せしめる方策を立てなければなりませんが、そうした点についても、必ずしもうまく行つているとは思つていないのでございます。さらに今申し上げましたように、拡大されて來る結果、一体どうなるかというと、相当税法を講ずる事業主が出て來ると私は考えるのであります。特に旅館、飲食営業というようなものに、はたして失業保險の被保險者になるような対象の人が、どの程度おるかということを考えますと、こういう方面が非常に心配されるのです。そうした方面等を十分徹底普及せしめるためには、労働省所管のそれぞれの人が、必要以上の労力を費しながらも、実績が上らないという結果になるおそれがあるのではないかと私は考えます。さらに今回申告制にされましたことは非常にけつこうですが、これから來る脱法行爲が、また相当現われて來るのではないかということを、私は指摘したいと考えるのであります。どうしてもこうした面からしまして、日本の現状から申しますならば、必ずしも実績が伴わないということになりはせぬかと考えます。それから改正された点によりますと、保險料金が千分の一減額されておるのでございますが、嚴密に申しますならば、必ずしも減額にならないと私は考えます。私は保險料金の問題は、一番重要な問題でありますので、前に本法が提案されたときにおきましても、多くの意見を申し述べておつたのでございます。かような社会保險のようなものは——現行法では政府、事業主、労働者が三等分に負担するということになつておりますが、私は少くとも國家が二分の一を負担して、あとの二分の1を労働者が負担するというくらいまでに、掛金のパーセンテージを変更する必要があろうと考えます。もちろん今日の國家財政のもとにおいては容易ではございませんが、こうした社会保險制度は、少くとも國家の予算において半分を負担し、残りの半分を、労資双方が当分に持つということにならなくてはならぬと考えます。私は保險料金を引下げるということに必ずしも反対はしませんが、むしろ私はこうした保險を十分に活用するためには、政府の負担金を増額して、実質的には 労資双方の負担金を減額するという内容に持つて行かなければならぬという意味から申し上げましても、少くとも政府の予算がこうした制度にもつと大幅にとれるように、改正する必要があろうと考えます。そうした点等を指摘して参りますならば、この問題についてもいろいろ意見がございますが、要は、今日の政府機構が、眞に失業保險の実施の上に、今まで以上の馬力をかけて、特に事業場における問題、あるいは被保險者に対するところの取扱いの問題等につきましても、万全を盡してもらわなくてはならぬと考えます。特に今年の予算成立以後におけるところの経済界の変動、不況等を考えてみますならば、失業保險のねらつておるところのねらいと、実際に失業保險の適用を受けて、忠実に負担金をかけて行くという現実の問題の中には、相当いろいろな問題が起きることを予想いたします。困難な問題が、想像されるのでありますが、そうした困難な問題を克服してやつて行かなければならぬということは、いうまでもありませんが、ぜひとも本法の施行にあたつては親切に、そうして國民の理解の上に立つて本法が適用されるように、さらに政府の万全の対策を希望いたしまして、簡單ではございますが本案に賛成する次第でございます。
○倉石委員長 川崎秀二君。
○川崎委員 私は民主党を代表して、ただいま討論の対象となつております失業保險法の一部を改正する法律案の政府原案並びに民自党から提案されました修正案に賛成をいたします。 ただいま内容についての討論において、大橋委員並びに前田委員から述べられました点は、多くの失業保險法の欠陥を指摘されて、その欠陥を是正するための要望であつたと思います。また私どもも、ことごとくとは申しませんけれども、その大部分に対しまして、同じような見解を持つておるのであります。そこでこれらの点は省きまして、大体失業保險法の改正並びに拡充ということは、今回の総選挙にあたりましても、民主自由党から共産党に至るまで、それぞれの立場はございますけれども、掲げました選挙の政策の一部分に盛り込まれておつたものだと思うのでありまして、今回提案になりましたものに、その一部分なりとはいいながら、各政党の政策の幾部分かは実現をしておる。こういうような意味合いで、私は実は失業保險法の前進を、腹の底から祝つておる次第であります。失業保險法というものは、元來失業対策としてはきわめて消極的なものであつて、こういうものは私は末の末のことであると思うのでありますけれども、なお失業者を絶滅させるということは、今日の経済組織、今日の財政事情をもつてしては、とうていできない状態でありますので、法律が完璧になることは、それ自身としては望ましいのではないかというふうに考えるのであります。また今後日本においては、社会保障制度の一環として、失業保險法が取上げられるような形勢も出て來ております。一九四四年に御承知のごとくイギリスでは、社会保障制度の廣汎な立法を断行いたしまして、あらゆる貧者、老幼、失業者というような、いわゆる社会がつくつたところの陰を、すべて解消させるための英断的な措置に出たのでありますが、わが國においても、將來は社会保障制度の確立ということが、一番大きな問題として登場して來ることは必至の勢いであります。從いまして、失業保險法がどういう範疇に入つて行くかということも、將來の大問題となるのではないか。この点現在厚生省の所管事項であるところの社会保障制度の確立という問題に関連をして、労働省としても、労働対策、失業対策の一環だけではなしに、社会保障制度確立への前進ということで、これらの問題を取上げる必要があろうと私は存ずるのであります。なお失業保險法の実際の活用の面でありますが、昨年並びに一昨年の実績は、まことにその運用の点において、心細さを感ずる次第であります。前年度の政府の剰余金のうちにおいて、失業保險法の関係部分が非常にパーセンテージが多かつたということは、つまりは失業保險法が運用されておらないということなのであります。昨年度も十五億の政府予算のうちに、実際に使用されたものは、最終的な計算は私は知りませんけれども、おそらく二億以下の数字であつたかと思うのであります。そのようなことで、実際のもくろみと、全然違つた結果を示しておるのであります。もちろんそれだけしか受取る者がいなかつたということは、一面喜ばしき現象かもしれないけれども、実際はそうではないと私は思うのであります。手続の複雑、その他運用の妙味が欠けておることによつて、実際には失業者が続出しておるのにかかわらず、失業保險法が完全に運用されておらない。この点の欠陥の是正に向つて、労働大臣初め関係官が努力をされることを、特に最後に要望いたしまして、本案に賛成するものであります。
○倉石委員長 土橋一吉君。
○土橋委員 私は日本共産党を代表いたしまして、ただいま大橋委員長から提案をされておりまする、失業保險法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正するという、この修正案につきましては、賛意を表するものであります。しかしながら、ただいま政府が提案をいたされております失業保險法の一部を改正する法律案については、遺憾ながら日本共産党は反対の意見を表明しなければならぬと思うのであります。それはただいままでの政府の説明によりますと、今年度の予算は二十一億六千五百余万円をもつて救済の予定を考えておるのでありますが、しかしながらこの政府の説明の内容は、約三十万人の失業者を救済する、かような説明でありまして、昨年度の剰余金が五十四億余万円である。從つて今年度は六十万ないし七十万人の失業者を救済できる。こういう御説明であつたように考えます。しかし私の見るところでは、ただいまの保險経済の原則というもの、すなわち從來の民間あるいは一般の保險学原理に基いて、保險経済の内容を拡充するために、特に被保險者でありますところの労働者に対して、その負担をせしめるというようなこの制度は、いわゆる社会保險制度の大原則に反するのであります。政府では失業者を百八十万と予定しておりますが、わが党が政策、あるいは調査、あらゆる面において調べた結果では、おそらく一千万以上失業者が出ると思うのであります。この失業保險法の第一條及び第二条において見ますると、就職をいたしておつた者が、離職した場合の規定でありますが、たとえば小学校、あるいは中学校、さらに專門学校、大学、かような学校を出まして就職せんとする者が、現実においては失業状態に置かれる状況であります。これも政府のお見込みによりますと十万人、こういうような数を限定しておりますが、これは明らかに調査不十分の結果であります。われわれの見るところでは、ほとんど予測し得ないほど就職できない者があると思うのであります。また賃金が六千三百七円基準において全官廳といわず、民間企業もくぎづけになるのであります。そういたしますと、安い賃金物價はどんどん高騰する。現に民主自由党の政策によりまして、郵便料金は四割、鉄道料金は実際においては定期券等を利用する者は、二倍半以上の料金を支拂うというような状態になつております。從つて現政府が経済九原則に便乗いたしまして、失業者を一方においてはどんどん製造しながら、片や二十一億ないし八億八百余万円というような少額の金額をもつて失業を救済するがごときことは、一方において首を切つて、一方ではそのしり埋めをするというような態度でありまして、これは民主自由党及び現内閣の重大なる政策の誤りであると思うのであります。そこでその結論については、保險経済学の範囲を越えまして、政府全額負担による——少くとも二十一億あるいは二十九億というような少額において失業救済の対策を行うことは、民主自由党が資本家の諸君、一部の反動的な保守政党、こういう諸君のために政権を担当せられた結果、この一部改正が余儀なく上程されておる。かように考えておるのであります。從つてかような彌縫的な失業保險法一部改正に関する法律案は、全労働階級にとりまして、二階から目薬のようなもので、ただ氣休め、あるいはただ一部の諸君が給付を受けるというようなものでありまして、修正案を出しておられますが、政府原案の意図につきましては、共産党は根本的に反対の意見を表明するものであります。 次は失業対策全般についてでありますが、先ほど申し上げましたように、給付の條項につきましては、非常な制限が加えられ、かつ保險料支拂いの方法につきましては、きわめて過酷であるのであります。從つてそういう過酷な状態において、昨年度すでに労働省においては経驗済みの、五十四億も剰余金を残すような保險制度が行われておるのでありますから、ただいまも各委員から御指摘があつたように、日本共産党といたしましては、もつと保險金額の支拂いの際における手続の簡易敏速、しかも的確なものを要望するものであります。現在の法規によりますれば、おそらく日雇労働者諸君におきましては、失業保險金を頂戴するというような者は、きわめて微々たる範囲ではなかろうかと考えておる次第であります。また政府の方針によりますと、林業あるいは水産業に対しましては、これを除外いたしております。こういう面においても、私がやはり先ほども申し上げたように、賃金ベースがきわめて低いというために、奥さんなり、あるいは子供が余儀なく就職をしなければならぬ。そういう諸君は、なるほど離職はしていても、失業ではないけれども、実際においては、賃金ベースがくぎづけをされておるという政府の結果、必然的に失業者の範疇へ入つて來るのであります。こういう諸君に対する救済処置が、本法案においては寸分も書いてありませんので、こういう点に非常に遺憾の意を表するものであります。たとえば給付の制限におきましては、依然として従來のままでありまして、特に解雇者あるいは任意退職者というような退職状態にある者につきましては、保險金が支拂われないという給付制限を設けておるのであります。また徴收方法におきましても、これを國家全額の負担の方法において行うならば、ただいまの法案に書いてありますようないろいろな追徴金の問題、あるいは延滞金の問題、かような問題も解消いたしますから、國家の全責任において、かようなものを保障するという態勢をとられることが必要であろう。かように考えておりますので、これがなお原案に反対するゆえんであります。また適用事業範囲に、五人以上を雇用するものというような條件を設けられておりますが、われわれに、失業状態にある者はすべて一切の人が、失業保險法によつて救済せられる措置を講ずることが、やはり社会保險制度の基本的原則に一致しておりますので、こういう点においても、現行法につきましては、非常な不滿と反対の意見を表明するものであります。なお給付金額の限度におきましても、等差が設けられておりますが、現実に失業した場合におけるその関係は、必ずしも本人がもらつておる賃金によつて失業状態の緩和というものは、考えられないのでありますから、かような等差を設けることについては十分考慮しなければならぬ。かように考えておりますので、そういう規定につきましては、日本共産党は全面的な修正を要求してやまないものであります。いろいろ各條項にわたりまして、共産党といたしましては、本案の内容そのものに根本的な修正を加える決意を持つておりますが、私は民主自由党のこの内閣において、先ほど私が申し述べましたような廣汎な社会保險制度の確立をする根本的な失業保險法の改正原案を國会に上程されまして、そうして失業者は全部救済をする。また第一点においては失業者を出さないところの方策を講ぜられまして、あらゆる労働者諸君が安んじて職を得まして、そうして自分の生活が安堵でき得る態勢を確立せられることが、最も望ましいのであります。先ほどかような法案は末の末であるということを、だれか委員の方が申されましたが、まつたくその通りでありまして、かような法案を日本共産党員として討議すること自身、政府の重大なる責任であつて、かような法案について、わが党の議員が審議をするということは、もはや民主自由党の誇れる政策の結果でありますので、遺憾ながらわれわれは反対の意見を表明せざるを得ないのであります。かような趣旨をもちまして、この失業保險法一部改正に関する法律案につきましては、企画的な修正を要求いたしまして、反対の意見を表明するものであります。
○倉石委員長 島田末信君。
○島田(末)委員 私は民主党を代表いたしまして、ただいま議題になつております失業保險法の一部を改正する法律案につきまして、修正案を伴う原案に賛成するものであります。 大体要望の要点は、前賛成論者と共通店を持つておるのでありますが、ただいささか二、三要望を申し上げますならば、まず資金すべての法文は文語体から口語体に改まつて、まことに平明になつことは喜ばしいのでありますが、それにいたしましても、諸般の情勢によりまして、いささかあらゆる法文が晦澁をきわめておるような氣がするのであります。特に本法案については、われわれも多少難解を感ずるのでありまして、この点につきましては、將來機会を得ましたならば、さらに平明なわかりやすい、いわゆるしろうとわかりのする法文に改めていただきたいという希望を持つのであります。次に原案の第三十條には、給付の実情によつてはいつでも保險料率を引上げ得るような規定になつております。これはまことに彈力性のある規定でありまして、こういう観点から申し上げますならば、もし給付の実情によつて、いつでも保險料率が引下げ得られるような、これまた彈力性ある実施が必要なのでありまして、この点につきましては、給付の実情のいかんによつては、当局はすみやかに保險料率を引下げるような方針で進んでいただきたい、かように考えるのであります。最後に第五十三條の罰則規定は、もちろん最高を示したものでありまして、まことにけつこうだと思いますが、ただ今日の経済実情より推しまして、その適用に至つては、よろしく現在の実情に即したような、いわゆる手心のある適用をお願いしたいのであります。從來そういう規定がきまりますと、中央の意向とは別途に、末端に至るほど法規法文に拘泥いたしまして、非常に実情とはかけ離れたような実行が行われる場合が多いのであります。この点につきましては経済界が安定するに從つて、そういつた罰則規定も十分適用すべきであると考えられますが、今日の状況より推しましては、なおその適用がよろしくを得ないならば、いささか嚴に過ぎはしないか。かように考えます。こういう点につきまして要望を申し上げ、原案に賛成するものであります。
○倉石委員長 石野久男君。
○石野委員 私は労働者農民等を代表いたしまして、ただいま提案されました原案に対する大橋委員の修正意見については、賛意を表するものでありますが、それを含める原案に対しては反対をするものでございます。私どもはこの失業保險法の趣意から申しまして、失業者を救済するというその考え方には、決して反対するものではないし、これは党の政策といたしましても、積極的に取上げなければならぬということを從來主張しておつたものでございます。けれども現行法におきましても、その保險給付に付します保險料の掛方の、國家と労資のこの三者における均整した分担の仕方については、失業それ自体の発生する原因等を考えましても、いわゆる被保險者なるものが、その三分の一の料金を負担するということについて大きな疑義をもち、また反対するものでありまして、すでに現行法が制定されるときにおきましても、私自身はその意見を持つており、また反対しておつたものでございます。しかし今日現行法が一部改正されるということにつきましては、特に政府のその提案理由の説明をお聞きいたしますと、これはさきに発表された経済安定九原則に基く諸般の施策を強力に実施することによつて、企業合理化のための企業整備が、その程度、規模等は別として、避けることができないこととなつたからなのでありまして、その結果、今後深刻な失業状態が発生するものと予測される。こういうふうなことに前提が置かれて、この失業保險法の改正がもくろまれておるということが言えるのでございます。これを言いかえますならば、今回改正をする——失業者の発生する主たる原因というものは、政府の施策によつて発生することが最も大きな原因になつておるのであります。私たちは失業者となるいわゆる被保險者それ自体の罪でなくして、むしろ政府の施策がこのように厖大な失業者を出すことを予測しておる現実におきましては、この保險料の問題等につきまして、特に政府の責任が、この際改正される主たる重点にならなければいけない、こういうふうに考えておるのでございます。なるほど千分の十一が十に低下されたことは、前進しております。けれども今日のこのインフレーシヨンのもとにおける失業者の、失業の窮地に追い込まれたこと自体から考えますと、またそれに至るまでの過程から考えましても、この負担料金というものはまだまだ非常に高い。これは先ほど社会党の前田委員からも言われましたように、どんなに悪い條件におきましても、少くとも半分は政府が持つべきである。もつと前進すれば政府が全部を持つべきだという意見を持つておるのでありまして、そういう意味合いからしましても、この改正法案には反対でございます。なおそれだけではございません。この改正法案の裏づけになる予算の額にいたしましても、厖大な失業者を予想される現状におきましては、決して十分なものではない。過去二年間における経驗が、予算の実施において多大の剰余金を残しておるということ、それは法案の持ついわゆる不手ぎわさから來ておるものであり、また失業者の実際に給付を受けなくてはならない人々に対する、いわゆる手続関係その他における不備な点から來るものでありまして、決してそのこと自体、この予算額が、失業者を救済するに十分なものだということににならないというふうに信じております。私どもはこのような予算のもとにおいて、今日発生されるであろう数百万人に上るこの失業者は、とうてい救われるものではないし、またこの法案改正それ自体においても決して救われない、こう考えておるのでございます。なおこの法律案につきましては、先に大橋委員から族正意見が出ておりますように、政府といたしましては、取立てるものは一ぱいに取立てるけれども、給付を與えるについては、そこには非常に手心を加えて余分を残して、取立てたものの何割かに相当するものは政府に剰余金として残そうというような、ずるい考え方が原案には盛られておつた。修正意見によつてそのことが今日修正されることになつたことは非常によいことでありますけれども、法案全体にはこういう氣分が、少くとも政府の腹の中において、眞に失業救済の意味をこの法案の中に持たないことが、露骨に第五條などによつては、はつきり出ているというふうにも言えるのでございます。私どもは法案全体にそうした眞の意味の失業保險、その原理が貫かれていないというような形における改正案に対しては、反対であるというふうにわが党は主張するものであります。以上のような意味におきまして——その他いろいろ法案の内部におきます不備な点を指摘することは多々できるのでありますが、大約以上のような点を申し述べて、党の反対意見といたします。
○倉石委員長 討論は終局いたしました。この際鈴木労働大臣より発言を求められておりますので、これを許します。鈴木労働大臣。
○鈴木國務大臣 大橋委員のみでなく、共通の御意見でありました保險料の問題、これはほとんど見方の角度は多少ずつ、あるいは相当違つておりましても、各党共通の御意見でありまして、たとえば土橋さんの方で全額負担にしろというのは、これは共産党としての御意見だろうと思いますが、とにかくこの問題は各党共通にいろいろの御希望なり、御意見なりがありましたから、この際簡單にこの点についてだけ、これは御質問ではございませんけれども、私どもの考え方を申し上げたいと存じます。 根本的の考え方といたしまして、保險料は事情の許す限り低い方がよいのだという考え方には、もちろん賛成でありまして、また可能な限り、できるだけ早く引下げの方向に努力したいという考え方もしばしば今までも申し上げた通りでございますが、もつと具体的に申し上げますれば、千分の十というのを、九なり、八なりに改めて行く。これは現実の基礎の上の計算、あるいは情勢によるのでありますけれども、そういう方向に持つて行くべく、情勢とにらみ合せて十分努方をいたしたいと考えております。日雇い保險、この点についても、御指摘のような傾向もないではなかつたかもしれませんが、これは初めて設けたものでありますし、保險経理の安全ということをまず第一に考えたのでございますけれども、各党御指摘の通り、この点につきましても、実施と同時に、あるいはそれ以前におきまして、さらに実情を十分調査いたしまして、保險料はできるだけ安い方がいいのだという原則が実現し得る見通しがつきましたならば、これもこの線に沿つて、急速にかえて行く方向に進みたいと思つております。以上簡單に共通の点の御希望だけについて、お答え申し上げます。
○倉石委員長 これより採決に入ります。 まず大橋委員より提出せられました各派共同提案による修正案に賛成の方は起立を願います。 〔総員起立〕
○倉石委員長 起立総員。よつて修正案は可決することに決しました。 次に本修正部分を除いた他の部分について採決いたします。修正案の部分を除く他の部分を、原案通り可決するに御賛成の方は起立を願います。 〔賛成者起立〕
○倉石委員長 起立多数。よつて修正案の部分を除く他の部分については、原案通り可決するに決しました。 なお報告書の作成につきましては、委員長に一任されることに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉石委員長 御異議がなければさようとりはからいます。 —————————————
○倉石委員長 次に労働組合法及び労働関係調整法の一郡を改正する法律案を議題といたします。まず政府側より提案理由の説明を求めます。
○鈴木國務大臣 労働組合法及び労働関係調整法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由と大体の構成を、去る三十日本会議において御説明申し上げたのでありますが、当委員会上程にあたりまして、遂章的にいま少しく詳細に御説明申し上げます。 まず労働組合法案につきまして申し上げます。この法案提出に至りました理由は、三年間の現行労働組合法施行の経驗から見て、立案当時予想せられなかつた不備の点が現われて参つたこと、眞に自主的、民主的であり、かつ経済再建に対してその責をみずから負うところの、自由にして建設的な労働組合が、九原則実行の不可欠最大の基盤をなすと考えたこと、並びに新憲法及びその成立後に行われました諸立法との調整をはかる情勢が生じて來たこと、この三点、及びこの法案は現行法のかたかな書き文語体を、ひらがな書き口語体に改める必要上、形式的には全文改正の形をとつておりますが、実質的には一部改正にとめ、公聽会その他各方面の意見と経済九原則の円満な実施のための諸情勢を考慮致しまして、改正は漸進的に処置することといたしておるものであることについては、すでに本会議で御説明申し上げた通りであります。 第一章の総則は、本法の目的、定義など、法全体に関係する事項を規定いたしておるのであります。現行法は旧憲法当時に公布施行せられ、その後今日の日本國憲法の施行を見、その第二十八條は現行法第一條第一項とほぼ同様のことを規定しました関係上、本法案におきましては、同條同項を改正いたしまして、本法の目的である労働者の團決権、團体交渉権の保障をより具体的に規定し、明確化しております。第二項本文は、現行法の文語体を口語体に改めただけでありますが、これに但書をつけ加えましたのは、労働組合の正当な行爲は罰せられないという本文の規定が、ややともするとほしいままに解釈せられておつた從來の経驗にかんがみまして、少くとも労働組合の暴力の行使等は、正当な行爲でないことを明らかにいたそうとした結果であります。第二條におきましては、本法案の大目的である労働組合の自主性確保のために、その但書第一号及び第二号を改正して労働組合に加入し得る者の範囲を明示するとともに、使用者の財政上の援助を禁止したほか、現行法とかわりありません。第三條のろう同社の定義も現行法と同様であり、第四条は國家公務員法の改正と関連しまして、所要の改正を施したのであります。 第二章、労働組合の章につきましては、現行法の規定中届出、規約変更命令、組合解散命令等、行政廳ないし裁判所の干與に関する規定を一切廃止して、労働組合の一層自由な発展を期すると同時に、第五條において、組合員の平等権、公正な会計監査及び役員選挙、同盟罷業、規約改正における無記名投票制等を、組合規約の必要記載事項とすることにより、労働組合の民主性、責任性の保障をはかり、かつ労働組合の資格を備えないもの、またはその規約が必要な要件を滿たさない労働組合に対しては、本法及び労働関係調整法の手続に参與できず、救済が與えられないことといたしております。第七條においては、使用者が正当な理由なくして團体交渉を拒否することを禁止して團体交渉権を擁護し、その不当労働行爲の範囲を拡充して、使用者の労働組合に対する一切の干渉妨害を排除することにより、團結権及び團体交渉権を保障したのであります。その他の点につきましては、組合の自由な発展を期するという建前から、第十條の組合解散事由を整理した点、第十二條の民法の準用規定を整理した点において変更を見ているほかは、現行法と同様であります。 第三章労働協約の章につきましては、第十五條において労働協約の不合理な延長を排除することにより、合理的な労働関係の保障をはかり、また現行法第二十一條及び第二十五條は從來ほとんど実益がなかつたので、これを削除いたしまして法の簡素化をはかることといたしましたほかは、現行法とおおむね同様であります。 第四章、労働委員会の章につきましては、第十九條その他におきまして從來施行令にゆだねられていた労働委員会の職責、権限、組織を法律上明定することにより、労働委員会の性格を明確にし、かつその使命と職責とにかんがみ、その権限を強化するとともに、第二十四條におきまして、準司法的機能につきましては、労働委員の参與のもとにおいて、公益委員のみによつてこれを行うこととし、その公正妥当な運営を保障いたしました。また第二十七條におきまして、不当労働行爲に対する労働委員会の原状回復等の命令、裁判所の緊急命令その他労働者及び労働組合の権利の回復のための迅速な処分手続を定めることにより、不当労働行爲の防止及び是正のための有効適切な措置を講じたのであります。さらに中央労働委員会に地方労働委員会の処分に対する再審査権、規則制定権等を與え、かつ全國的な問題の優先的管轄権を明確にすることにより、労使間の紛爭議の合理的解決をはかつたのであります。その他の條文につきましては、現行法と同趣旨であります。 第五章、罰則につきましては、不当労働行爲の性格にかんがみ、これが行爲を直接に罰する方針を改め、第二十八條及び第三十二條において労働委員会及び裁判所の命令違反に対し、有効かつ強化された罰則を科することにより、正常な労使関係の確保をはかることとしたほか、現行法の趣旨とほぼ同様であります。 最後に附則として、施行期日その他必要な経過規定を定めております。以上のように現行法の條文の約半ばは、そのまま本法案中に取入れられており、その條数は現行法に比して四箇條だけ少くなつております。 次に労働関係調整法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。この法律案は労働爭議、なかんずく公益事業の爭議行爲と公共の福祉との調整にその改正の重点を置き、形式上においても一部改正といたしておりますことは、本会議において御説明申し上げた通りであります。 第八條第二項を改正いたしましたのは、同様第一項におきまして、公益事業としてその主要な事業を法律に明記しておりますから、これが追加指定もまた立法的手続によることは、新憲法との関係から妥当な措置であると考えられますので、現行法が公益事業の追加指定を行政機関のみで行うこととしておるのを改めまして、國会の承認を経て行うことといたすことにしたものであります。第十一條に新たに一項を加えましたのは、從來調停とあつせんとが混用され、かえつて事態を紛糾させることもありましたので、調停とあつせんとの本質を明確にし、かかる紛糾を避けようとしたからであります。第二十六條に新たに三項を加えましたのは、労使の当事者側に了解が成立したにもかかわらず、その了解の解釈または履行に関しまして、爭議行為をもつて双方が相爭うというような、從來往々にして見られた不合理事態を、合理的かつ平和的に解決するため、調停案を当事者双方が受託した後においては、調停委員会の見解を聞かなければ、その調停案の解釈または履行については爭議行爲をなし得ないことといたしまして、労使間の無用の紛爭をつとめて除去するようにいたした結果であります。第三十七條に新たに二項を加えましたのは、現行の第三十七係の公益事業に関する規定は、公益事業に三十日の冷却期間を設け、その労働爭議をつとめて防止し、早期かつ平和的に解決しようとするのをその趣旨とするのでありますが、從來の経驗に徴しますると、必ずしも所期の目的を達成し得ず、かつ一度冷却期側を経過いたしました後、いたずらに爭議解決が遷延されるうらみもありましたので、冷却期間経過後六十日間を経た後には、さらに調停手続を経て冷却期間を経過しなければ、爭議行爲をなし得ないこととしたこと、及び当事者が調停案を受諾した以上、その調停案中に團体交渉を継続すべき旨が定められている事項があるときは、これらの事項を理由とする爭議行爲は、新たに冷却期間を経過しなければならぬものとし、無用の爭議行爲を防止することといたしたことの二つの理由によるのであります。第四十條を改正いたしましたのは、正当な爭議行爲に対する保護は、すベて労働組合法中に規定することとしたからであります、その他の点について若干改正しておりますのは、もつぱら技術的なものであります。 以上が労働組合法及び労働関係調整法の一部を改正する法律案の大体の説明であります。もちろん政府は、法律の改正によつてすべての労働問題が解決するものであるとは考えておらないのでありまして、行政運営、労働教育、特に政治全般の組合施策にまつところがきわめて大であり、労使の自覚と努力、及び公正な世論の批判と協力とが何よりも肝要なことであることは、本会議においても強調した点でありますが、この法案が御審議の結果通過成立を見ましたあかつきには、労働者の地位の向上、自由にして建設的な労働組合の発達、及び労働運動と公共の福祉との間の調整につきまして一段の努力を傾け、法的措置と行政と相まつて労使各方面の協力のもとに、日本経済再建の目的のために邁進いたしたいと存じます。何とぞ御審議の上、すみやかに可決あらんことをお願い申し上げます。
○倉石委員長 この際お諮りいたします。ただいま本委員会において審査いたしております労働組合法案及び労働関係調整法の一部を改正する法律案は、一般的関心が強く、またきわめて重要な法案であると思われますので、各派委員諸君におかれましても、両案の審査のために公聽会を開くことを希望せられておられるのでありまするが、衆議院規則題七十七條によりまして、公聽会を開こうとするときは、あらかじめ議長の承認を得なければならないことになつておりまして、公聽会を開こうとする議案並びに意見を開こうとする問題を定めた上で、諸般の手続をとる順序になつております。つきましては公聽会承認要求書を提出いたさねばなりませんが、公聽会を開こうとする議案につきましては労働組合法案及び労働関係調停法の一部を改正する法律案、意見を聞こうとする問題につきましては労働組合法案及び労働関係調整法の一部を改正する法律案についてといたしたいと思いますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉石委員長 御異議なしと認めまして、さよう決定いたします。 これにて暫時休憩いたします。午後は一時半より再開いたします。 午後零時十七分休憩 ————◇————— 午後一時四十九分会議
○倉石委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。 この際お諮りいたしますが、労働組合法案及び労働関係調整法の一部を改正する法律案の審議のため、本日議長に付して公聽会開会承認要求書を提出いたしたのでありますが、議長より承認を得ました。つきましては本日正式に公聽会を開くことを議決いたすことに相なつておりますが、これにつきまして公聽会開会の日時を決定いたさねばなりません。この日時の決定に関しましては、公聽会に対する申出、公述人の選定、公述人への通知、公述人出頭等の時間的余裕を考慮いたしますとともに、両案の審査の進行状況とにらみ合せて決定することが妥当と思われますが、諸般の情勢によりまして、來る五月九日午前十時より開会いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉石委員長 御異議なしと認めます。それでは衆議院規則第七十九條によりまして、公聽会開会報告書を議長に提出いたさねばなりませんが、公聽会を開く議案は労働組合法案及び労働関係調整法の一部を改正する法律案、意見を聞く問題は労働組合法案及び労働関係調整法の一部を改正する法律案について、公聽会の日時は昭和二十四年五月九日午前十時といたしたいと思いますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉石委員長 御異議なしと認めまして、さよう決定いたします。それでは公聽会開会報告書を議長に提出するとともに、それを公示するように諸般の手続をとることにいたします。なお公述人の選定については、委員長及び理事に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉石委員長 御異議なしと認めまして、それでは委員長、理事においてしかるべくとりはからいまして、後日皆様の御承認を得たいと思います。 —————————————
○倉石委員長 次にただいま議題になつております両案について、逐條説明を行います。
○賀來政府委員 労働組合法案及び労働関係調整法の一部を改正する法律案につきましての逐條説明をいたしたいと思います。 まず労働組合法案につきまして申し上げます。第一條の第一項は、労働組合法の目的を具体的に規定いたしておるのでありますが、現行労働組合法は新憲法施行前に制定せられたものでありますので、第一條の目的に関する規定も、憲法二十八條の規定と同趣旨のことを規定しているにすぎなかつたのであります。しかし労働組合法の最大の使命が、憲法に規定されておる基本原則をより具体的に規定いたしまして、これを保障するにあることはいうまでもありませんので、本法案におきましては、現行法第一條を改正いたしまして、次の三つの目的を規定し、憲法第二十八條の根本精神の具体化をはかつたのであります。第一は、労働者の地位の向上であります。労働者が使用者と交渉する場合において、対等の立場に立つことは、この地位の向上のための根幹であることはいうまでもないのでありまして、本條はその目的を第一として、労働者が使用者との交渉において、対等な立場に立つことを促進することによつて、地位の向上をはかるということを目的としておるのであります。第二は團結権の援護であります。本條において、労働者がその労働條件について交渉するために、みずから代表を選び、その他の團体交渉を行うために、自主的に労働組合を組織し、團結することを擁護するということを考えておりますのは、新憲法の根本精神から当然のことでありまして、第二章において、労働者が自由にかつ自主的に労働組合を結成し、また民主的に手続をみずから定め、また使用者が行う不当労働行爲を禁止いたしまして、團結権、團体交渉権その他の團体行動権を保障したわけであります。第三点は、團体交渉及びその手続の助成であります。本條におきまして、この手続を助成するというふうに掲げておりますのは、労働協約を締結するための團体交渉が、労働組合の最も基本的な行爲であり、その適正な運用によつて初めて労使間の不安を除去することができるのであります。從いまして第七條第二号というふうなもの、使用者が正当な理由なくして、その雇用する労働者の代表者と、團体交渉をすることを拒み得ないというふうなことを規定するのも、その意味であります。 第二項の本文は、現行法第一條第二項の規定と同じであります。すなわち刑法第三十五條におきまして「法令又ハ正當ノ業務ニ因リ爲シタル行爲ハ之ヲ罰セス」という規定がありますが、労働組合の行爲でありまして、第一項に掲げまする目的達成のためにいたしました正当なものは、この正当な業務によりなしたる行爲ということに含まれる規定であります。但書は、改正法案において新たに加えた規定でありますが、この趣旨は、労働組合の行爲としてなされましたものは、すベて正当であるというふうな極端な論が一部に行われておりましたために、労働組合の行爲には、社会通念に從つて正当なものと不当なものとあること、及び傷害であるとか、あるいは器物破壊の行い、その他身体または財産に対する権力の行使は、いかなる場合においても正当な行爲にはならない。これは刑法の犯罪構成要件に該当するときは処罰を免れることはできないということを、特に明らかにしたものであります。もちろんこれ以外の行爲でありましても、その秩序を乱すもの、あるいは権利の濫用にわたるようなもの、その他労働組合の行爲であつて不当なものがあることは、いうまでもないのであります。かかる不当なる労働行爲について、本條文の免責がないことは当然であります。本項の規定は、いわゆる宣言的規定でありまして、刑法第三十五條の解釈として当然のことでありますが、戰前において労働組合の運動が往々にして不当なる彈圧をこうむつたこと、また現行法施行後においても、労働運動が往々にして暴力の行使等を見ました事例に徴して、特に年のために規定いたものであります。 第二條は、現行法の第二条の第一号解釈上不明確な点がありましたのでで、これを具体的かつ詳細に規定したほかは、原則として現行法の趣旨とかわりないのであります。まず第一号におきましては、現行法においては單に「使用者ハ共ノ利益ヲ代表スト認ムベキ者ノ参加ヲ許スモノ」と規定してあつたがために、その限界が必ずしも明瞭でなく、それがときとしては、労働組合の自主性の阻害の原因となつたので、これをより具体的かつ詳細に規定したものであります。なお現行法におきまして「使用者」というのを書いてありますが、それを削除いたしましたのは、労働組合に使用者が加入すべきでないことは当然のことでありますから、これを削除いたしたのでありますが、今度の法案におきまして、役員と申しますのは、使用者が法人その他の團体である場合において、社長、取締役、監査役その他理事会等を構成するものの構成員を言つておるのであります。「雇入、解雇、昇進、又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者」と申しますのは、労働者に対して監督的地位にある労働者であつて、労働者の雇入れ、解雇、昇進、または異動について直接これを決定する権限を有する者をいうのでありまして、人事課長、労務課長はいうまでもなく、技術的な仕事、あるいは経営の方に関係のあります部課長等でありましても、このような権限を持ちます者はすべて含まれるのであります。なおこの場合におきまして、その役職名にかかわりないということは、いうまでもないのであります。從來の行き方から見ますと、課長以上あるいは部長以上というような役目でもつて、非組合員、組合員の範囲を採決した傾向がありますが、今度の行き方といたしましては、職能によつてこれを切るというふうな態度をとつておるのであります。次に「使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての忠誠と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者」と申しますものは、労働者に対して監督的地位にある労働者でありまして、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接しており、その結果その職務上の業務と責任とが当該労働組合の組合員としての責任に直接抵触する者であります。すなわち工場支配人、人事課長、会計課長、労務課長等はいうまでもありません。その他人事課または労務課等の上級職員のうち、労働関係の機密事項に接する地位にある者を含むのであります。さらに以上のほかに「使用者の利益を代表する者」ということがありますが、これは会社の高級幹部、社長秘書、会社警備の任にある守衛等を加入させておるものは、労働組合としての資格が認められないというのであります。 第二号の、この團体の運営のために必要な経費の支出について、使用者による経理上の援助を受けるものと申しますのは、但書の場合を除いて、本法にいう労働組合とは認められないことを規定したのでありますが、これは現行法第二條第二号におきまして、「主タル経費」として規定しておるものよりも、明確かつ具体的に規定したものであります。いわゆる組合專從職員の生活費といたしましての賃金、給料、爭議行爲に参加した労働者の賃金、給料または就業時間中に行われまする組合大会等の労働組合の会合に出席した労働者の賃金、給料等のごとく、労働組合の対内、対外の活動を問わず、すベての組合の運営のため必要な経費の支出につきまして、使用者から財政的援助を受ける團体は、本号に該当するということは、いうまでもないのであります。このような使用者の経理上の援助は、それを受ける團体が労働組合と認められないばかりでなく、労働組合に対してなされました他用者のこれらの行爲は、不当労働行爲とされることに注意をしなければならぬと考えるのであります。次に但書におきまして、使用者の経理上の援助の禁止から除かれるものは、次の三つであります。第一は「労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すこと」この場合におきまして、使用者の許可の形式というものは、労働協約その他の協定によつて一般的に許可しておいてもよろしいわけでありますが、あるいはまたその都度許可を與えてもよいわけであります。労働協約におきまして規定することは望ましいこととは考えますが、この規定は使用者がかかる許可を與えるということについて、労働者がこれを請求する権利を與えたものではないということは、いうまでもないのであります。第二は「厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附」は、この場合において、その使用者の寄附が、たとい明示の意思表示がなくても、指定寄附であつて、かかる寄附による基金を他の基金に流用した場合には、その團体は本法にいう労働組合とは認められないことになるのであります。第三は、最小限度の必要な事務所の供與であります。第三号は現行法通りであります。第四号もまた現行通りであります。 第三條は現行法の第三條そのままを口語体に改めたのであります。 第四條でありますが、これは地方公共團体の警察吏員及び消防吏員は、労働組合を組織し、または労働組合に加入することができない旨を規定したのであります。現行法の第二項及び第一項中、「監獄ニ於テ勤務スル者」を削除いたしましたのは、これは國家公務員法の附則第十六條によりまして、労働組合法が國家公務員には適用されないこととなり、地方公務員についても政令第二〇一号の適用を受けているからであります。次に現行法第一項の「警官官吏」及び「消防職員」を「警察吏員」及び「消防吏員」と改めましたのは、國家公務員法との関係からでありまして、本條によりまして、地方公共團体の警察吏員及び消防吏員すベて労働組合を結成し、これに加入することができないのであります。 第二章の労働組合の章に入ります。第五條、本條は第二項におきまして労働組合の規約に必ず記載すべき最小限度の事項を規定するとともに、第一項においては、労働組合として設立されたものが、本法及び労働関係調整法に規定する手続に参與し、救済を受けるための要件を規定したものであります。現行法におきましては、第五條において組合設立等の届出、第六條において労働組合の資格審査の規定があります。さらに第八條におきましては、組合規約の変更命令、第十五條におきましては組合に対する解散命令等について規定しておりますが、本法案においては、かくのごとき行政廳または裁判所が労働組合の存立そのものを決定し、またはその内部に干渉するような規定をすベて削除いたしまして、單に法律に規定するところの自由にして民主的な労働組合として、必要な最小限度の要件を満たさない労働組合に対しては、この法律による特別のせわをいたさないということを規定した次第であります。すなわち第三條に該当しない労働者の團体は、本法にいう労働組合ではなく、この法律に規定する労働組合に関する規定が適用されないことは当然でありますから、問題はないのでありますが、第二条に該当する労働者の團体であつても、その規約が本條の第二項の要件を滿たさないときは労働委員会といたしましては、前者の場合と同様に、何らそのせわをしないということを想定したのであります。労働組合が労働委員会のせわになろうとするときは、その都度第二條に該当していること及び規約が第二項の要件を滿たしていることを、証拠を提出いたしまして、労働委員会に対して立証しなければならないのであります。この立証ができなくて、労働委員会が、たとえば、この労働組合は御用組合であるとか、この労働組合の規約は組合員に対して均等の取扱いを與えていないということを認定いたしたときは、当該労働組合は、労働組合法及び労働関係調整法に規定いたしまする不当労働行爲、あるいは調停時の手続に、労働組合として参加する資格がなくなり、さらに第二十七條に規定する労働委員会の不当労働行爲に対する命令等の救済をも受けられないということになるのであります。すなわち法律の特別の保護は、法律が要求しておりまする最小限の要件をも備えておらないようなものに対しては、與えないというのがこの項の趣旨であります。しかして第五条第二項の要件を滿たさない労働組合も、たとえば労働関係調整法に規定する調停申請のごとく、それが労働組合でなくとも、労働者個人または労働関係の当事者としてなし得る場合は、労働組合としてでなく、爭議團その他の労働者の團体、または爭議の当事者としての資格において、その手続に参與することができるのであります。次に本條但書の規定は、第七條第一号に規定する個々の労働者に対します保護については、第五條第二項の要件を滿たさない労働組合の組合員であることのみを理由として、労働委員会が救済を與えないというようなことにはならないことを規定しておるのであります。第二項は労働組合の規約に関する規定であります。労働組合は規約を定めることが必要であります。その規約には少くとも本項各号に掲げる事項を内容として規定しておられなければならないのでありますが、なおこれらの事項以外でも、目的その他に関する規定は、社團である性質上、当然規定さるべきであると考えておるのであります。第一号は名称、第二号は事務所であります。第三号は單位労働組合の組合員が、すべての問題に参與する権利を有すること、及びその権利の行使に十分な機会が與えられ、いかなる組合員にも特権的地位を與え、または差別的な取扱いをしてはならないということを規定しておるのであります。これらの組合員の基本権を保障いたしますところの規約の規定は必ず設けなければならない。從つて中央執行員や部長の選出等につきまして、特定の組合員に選出権の二重行使を許すとか、特定の組合員に選出権を與えることは許されないのであります。たとえて申しますれば、青年部に入つております者は、青年部員として一般の執行委員の選挙に参加すると同時に、青年部長を選挙し、その青年部長は、青年部長たるゆえをもつて執行委員に参加することは、青年部員が二重の権利を行使することになるのであります。第四号は、何人も人種、宗教、性別、門地または身分によつて組合に加入する権利なきものとされ、または組合員たる身分を失うことはないことを規定しておるのであります。第五号は役員の選出に関する規定でありまして、單位労働組合の役員は、その單位労働組合に加入する組合員の直接無記名投票によつて選出されねばならないのであります。ただ連合團体である労働組合または全國的な規模を持つた労働組合につきましては、單位労働組合の組合員の直接無記名投票によることがもちろんいいのでありますが、実際上それが困難な場合は、その組合員の直接無記名投票によつて選挙された代議員によつて、選出されるということが規定されてあるのであります。第六号は組合員の総意を反映いたします組合の最高意思決定機関であります総合は、少くとも年一回以上は開催されなければならぬという規定であります。総会と申しますのは、組合の最高意思決定機関であり、かつ組合員全員、または組合員全員によつて選ばれた代議員によつて構成されたものであります。第七号は会計に関する規定であります。組合存立の基本は、財政確立と組合財政に対しまする組合員の信頼感が基礎でありますので、民主的かつ、強力な組合となるためには、組合財政を嚴正に行わなければならないのであります。そこですべての財政及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況等を示す会計報告は、組合員の総意によつて委嘱された公認会計士及び経理士の檢査を受け、正確であるという証拠と一緒に公表しなければならぬことを定めたのであります。なおこの号は、日本労働組合に関する極東委員会の十六原則第十六号と同じ趣旨であります。第八号同盟罷業は、組合員または組合の直接無記名投票により選挙された代議員により直接無記名投票を行い、賛成が投票数の過半数を得なければ開始されないということを規定したものであります。同盟罷業は組合の最も重大な行爲でありますので、組合幹部や一部少数者によります独裁を排除したものであります。なお過半数は最低数でありまして、これ以上の数になることを妨げるものではないのであります。第九号は、組合規約の改正に関する規定であります。規約は労働組合の憲法ともいうべきものでありまして、その変更は愼重を要するのであります。この改正にあたつては、單位労働組合におきましては、その組合に加入する組合員の過半数を得なければならないというのであります。但し連合團体でありますれば、先ほど申しましたと同じであります。なお過半数と申しますのは、これは最低数をいつておるのであります。 第六條は、現行法と同じでありまして、交渉は労働協約の締結その他の事項に関してなされるのでありまして、普通労働協約の締結を目的として、賃金、労働時間等の労働條件が、交渉内容のおもなものになるであろうと思うのでありますが、その他の事項についても交渉することもできる。組合の代表者というのは、組合の規約、総会の決議等によりまして外部に対して組合を代表するという者であります。交渉する権限と申しますのは正式に協約、契約を締結する権限を含むものではなくして、單に交渉する権限をいうのでありますが、実際上はこれらの点について権限の範囲に関しましては、紛糾を生じやすいものでありますから、これらのものは交渉にあたつて、その権限を明らかにしておくことが必要であると考えております。 第七條に、不当労働行爲に関する規定であります。本條の規定は、使用者の不当労働行爲として禁止された行爲を列挙したものでありまして、本法の最も重要な規定であります。第一号の本文は、現行法第十一條と同じ規定であります。個々の労働者が労働組合に加入をしたり、あるいは労働組合を結成しようとしたり、その他労働組合の正当な行爲をしたことを理由として、不利益な取扱いをすること、及びいわゆるイエロー・ドツグ・コントラクトを禁止したものであります。但書は、ある労働組合に特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数が加入しておる場合当には、その労働組合は、当該事業場工場で働いておる労働省がその組合員であることを要求するところのクローズド・シヨツプやユニオン・シヨツプの労働協約を締結することができるということをいつておるのでありまして、これは念のために規定をいたしました但書であります。第二号は、使用者が雇用する労働者の加入する労働組合の代表者等との團体交渉に應ずる義務をきめておるのでありまして、これが違反は不当労働行爲となることであります。ここにいうところの代表と申しますのは、労働者の代表者でありますが、代表者がさらに委任することが一般に許されることは当然であります。その使用者が應ずる義務のある團体交渉が、平和的に秩序のある交渉であることを要するのはもちろんでありまして、しからざる場合に、その他の正当な理由がある場合、使用者は團体交渉を拒むことができるのであります。第三号は、使用者が労働組合の結成、運営等を支配すること、すなわち御用組合化しようとすること、及び組織運営を妨害することを禁止したものであります。金錢上の援助は、多くの場合組合の支配に至ることが多いのであります。ことに組合の役職員の專従者が、その生活費を使用者から受けておるというふうなことは、御用化するおそれが多分にあるのであります。この程度に至らないものでありましても、組合の経理上につきましてその援助を與えることは、但書の場合を除いてはすべて禁止されるのであります。但書は第二條第二項の場合と同じようなものであります。なおここで「支配」あるいは「介入」と書いてありますが、組合の内部意思に干渉するものであり、「支配」はその結果の意思を左右するというところまで行くのを支配といいますし、「介入」と申しますのは、その左右する程度までには至らないものをいつておるのであります。 それから第八條は現行法と同じであります。ただこの際申し上げておきたいと思いますことは、この第一條第二項には、暴力行爲の行使が労働組合の正当な行爲と解釈されてはならないという旨が規定してあります。暴力行爲の行使は主として刑事上の問題でありますので、第一條第二項の但書として規定したのでありますが、本條におきましても、暴力の行使が正当な爭議とならないことはもちろんであると考えております。 第九条は現行法とほとんど同じであります。労働組合が行う共済事業その他福利事業等について、これが使い方を変更すると言うふうな場合には愼重を要しますので、総会の決議を必要としたものでありますが、なお使用者が、福利事業その他共済事業のために寄付いたしまして場合に、その使用者の寄付した金を流用すれば、総会の決議があつた場合でありましても、その組合は第二條第二号に該当するに至つて、労働組合ではなくなるものと解釈いたしておるのであります。 第十條は労働組合の解散事由といたしまして現行法に規定されているもののうちから、組合資格否認による解散と、裁判所の解散命令による解散は、資格否認または解散されたこの規定が廃止されたのでありますので、これを除いております。さらに破産を労働組合の解散事由とすることは妥当でないので、削除いたしております。規約で定めましたところの解散事由がある場合は、これによることはもちろんでありますが、組合規約に解散の規定がないときでも、総会で組合員の四分の三以上の多数決で決議いたしますならば、解散することができるのであります。なお総会の決議の多数決につきましては、規約で三分の二以上とか別段の定めをした場合は、それによるのであります。 第十一條は、労働組合がこの法律の規定に適合する旨の労働委員会の証明を受ければその主たる事務所の所在地において登記して、法人となることができるということを規定いたしておるのであります。第二項は、労働組合の法人登記事項その他に関しては政令で定める。第三項は法人である労働組合が、その登記事項に変更を生じたときは、変更した事項について変更登記をした後でなければ、第三者に対抗することができないことを規定しておるのであります。 第十二條に、法人でありますところの労働組合について、民法及び非訟事件手続法の所要規定を準用することを規定いたしておるのであります。この内容は省略させていただきます。 第十三条は現行法と同じであります。 第三省労働協約の章に入ります。この章におきましては、現行労働組合法のうちから第十九條第二項、第二十一條及び第二十五條を削除いたしましたほか、第十九條第一項、第二十條及び第二十四條に若干の修正を加えたのみで、現行の第三章の規定と別段の差異はないのであります。 第十九條第二項を削除いたしましたのは、労働組合の届出制を削除したのと同じ趣旨であります。第二十一條を削除いたしましたのは、この規定が当然のことと解せられるからであります。次に第二十五條を削除いたしましたのは、この條文はほとんど実益がないのみでなく、かえつて平和條項を労働協約中に規定することを妨げるおそれがあつたからであります。 第十四條は現行法第十九條第一項をそのまま口語体に改めたもので、労働協約の当事者、協定事項及び効力発生要件を規定したのであります。労働協約の当事者の一方は労働組合でありまして、他方は使用者またはその團体であることはいうまでもありませんが、労働協約におきまして協定される事項は、労働條件その他労働関係全般に関する事項であります。しかして労働協約は書面に作成し、両当事者が署名することを労働協約の効力発生要件といたしましたのは、その内容について、後に至つて無用の紛議を生ぜしめないためであります。 第十五條は現行法第二十條を改正したものでありまして、労働協約の有効期間について規定したのであります。第一項は、労働協約には必ず有効期間を定めなければならないことを規定したものでありまして、不確定期間を定めた労働協約は有効であるが、有効期間を定めない労働協約及び條件つきの労働協約は無効であります。次に労働協約は、いかなる場合においても三年を越えて有効に存続することはできない旨を規定されておるのでありまして、三年を越える有効期限を定めた場合は、その三年を越える部分は無効となり、三年の有効期間を定めたことになるわけであります。從つて労働協約にいわゆる自動的延長規定があり、労働協約の効力が自動的に延長し、かつ当事者のいずれもが廃止の意思表示をしない場合でも、労働協約が効力を発生した日から起算して、三年を越えて有効には存続し得ないのであります。三年の期間を経過したときは当然効力を失います。しかしいわゆる更新規定がありまして、これに基いて労働協約の効力が更新される場合は、同一内容を持つ新しい労働協約であるから、この規定の適用はないのであります。第二項は、本法において新しく設けられたものであります。その趣旨は、從來の労働協約の多くに規定されておりました、いわゆる自動的延長規定のもたらす不合理な結果を是正せんとするものであります。すなわち労働協約のうちに、労働協約の改正の意思表示があつた場合においては、期間滿了後においても、なお本協約は、新協約成立まで有効とするという規定がある場合におきましても、労働協約の中に規定された期間が経過したとき以後におきましては、当事者の一方が反対の意思表示をすれば、そのときからその労働協約は失効することを規定いたしたのであります。從つていわゆる自動的延長規定があつて、改廃についての予告期間の規定がある場合におきまして、その予告期間の定めに從いまして、当事者の一方が改訂の意思表示をしたときは、その労働協約は自動的延長規定に基いて、新協約が成立するまでは、その期間滿了後においてもなお有効に延長されるが、一方の当事者が破棄の意思表示をいたしましたときには、そのときから当該労働協約は失効することになるのであります。次に自動的延長規定がなく、ただ改廃についての予告期間のみがある場合におきまして、一方の当事者が改廃の意思表示をしたときは、その労働協約は期間滿了のときから効力を失うことは、いうまでもありません。次に但書は、労働脇的中に、この労働協約の期間滿了一箇月前までに、事事者のいずれか一方が改廃の意思表示をしないときは、この労働協約は引続き同一期間有効とするという、いわゆる更新規定を設けてさしつかえない旨を規定したものであります。從つてかかる規定がありまして、当事者の双方が期限滿了一箇月前までに、改廃の意思表示をしないときは、その労働協約は期限の到來したときから、新しい労働協約として、その効力が更新されることになるのであります。 第十六條は、現行法第二十二條の規定を括弧内を削除いたしまして、そのまま口語体に改めたものであります。この括弧内の規定を削除いたしましたのは、從來この規定の解釈につきまして種々の紛議を生じたること、及びこの規定を削除しても、別段弊害が生じないのみでなく、労働條件その他労働者の待遇に関する基準は、でき得る限り労働協約に規定しておくことが、労働協約の本質上当然のことであるからであります。 第十七條は現行法第二十三條をそのまま口語体に改めたものでありまして、同一工場、事業場における労働協約の一般的拘束力について規定したものであります。 第十八條は、現行法第二十四條をそのまま口語体に改めたものでありまして、一定地域内における労働協約の一般的拘束力につきまして規定したものであります。但し現行法の職権決定は削除いたしております。これは労働委員会がこの決議をなし得ますのは、当事者の一方または双方から申立てがあつた場合にのみ限つておるのであります。 第四章は労働委員会の規定でありますが、現行法が施行されましてから、労働委員会は非常な業績をあげております。しかし改正法案ではさらにこれが機能の十全の発揮を期して、準司法的機能と調整的機能との運営を分離し、中労委と地労委との関係を緊密にする等の方策をとつたのであります。その他の点では國家行政組織法などの新しい文法に伴つて必要な調整を加えたほかは、おおむね現行法の建前を踏襲しているのであります。なお新憲法下の立法として、新たに法律事項となつた現行施行令の規定が、法律の上に多く加えられておるのであります。 第十九條は労働委員会の組織、権限、委員等について定めております。すなわち第一項から第四項までは労働委員会の構成、労働委員会の種類、労働委員会の職員の身分、及び政令委任についての通則であります。第五項以下は、中央労働委員会について、その所轄、組織、委員の任免、任期、給與、及び費用弁償、会長、事務局長等について定めております。これらの規定は第二十項で地方労働委員会に、第二十一項で船員労働委員会に準用しております。第一項は、現行第二十六條第一項と同様、労働委員会が三者構成である旨の規定でありますが、「第三者」を「公益を代表する者」と改めたのは、從來ともすれば誤解の生じやすかつた、いわゆる中立委員の意味を明らかにしたまでのことで、從來と異なつた性格を與えようとするものではないのであります。第二項は労働委員会の種類であります。労働委員会に中労委、地労委船員中労委、船員地労委の四種があることは、現在と同様でありますが、現行法第二十六條第三項は船員労働委員会について触れるところがなく、施行令第四十八條第三項で「労働省」が「運輸省」に「都道府縣」が「海運局の管轄区域」読みかえられているところから、施行令第三十五条に基いて、それぞれ船員中労委、船員地労委が設けられていたのでありますが、行政機関の設置がすべて法律事項となつた今日では、適当でないので、法律の上に明記したのでありまして、実態にかわりはありません、なお現行法第二十六條第三項後段に規定する特別労働委員会の制度は、從來さして実益がないのみならず、いわゆる準司法的機能の強化拡充を見た改正法案においては、かかる制度により労働行政運営の一貫性を阻害することは、避くべきでありまして、また行政機関の設置を、労働大臣の專断とすることも、新憲法下妥当でないので、廃止することにいたしたのであります。第三項は現行法第二十六條第四項と同趣旨の規定で、職員が刑法上第七條の公務員であることを念のために規定したものであります。第四項は政令への委任規定であります。政令で定められるおもな事項は、労働委員会の委員の推薦方法、労働委員会の名称、地方労働委員会についての條例に関する規定等が考えられるのであります。第五項は、中央労働委員会が労働大臣の所轄に属することを明らかにしております。これは現行法のもとでも同様であつたのでありますが、國家行政組織法との調整上、この点を明確にしたのであります。労働省設置法改正案にも、中央労働委員会が労働省の外局であることを規定しております。なお、中央労働委員会が労働省の外局であると規定されましても、労働委員会の本質上、その專管に属する判定的事務及びあつせん、調停、仲裁の事務は、独立して行われるものであること、從來とかわりはないのであります。ただ國会との関係においては、労働委員会の活動全体について労働大臣が責任を有することは言をまたないのであります。第六項は、第一項の趣旨を受けて、具体的に委員の数を定めたのであります。現行施行令第三十七條第一項で「二十一人以内」と定めてありますが、本法案では「各七人」と員数を限定しております。なお、現行施行令第三十七條の三に定められている臨時委員の制度は、廃止されることになつたのであります。これはこの制度がねらう目的のほとんどは、労働法に定める調停委員制度をもつて達せられているし、また準司法的機能の強化された改正案の建前からも、妥当でないからであります。第七項は、現行法第二十六條第二項と同様の規定であります。現行施行令第三十七條第二項によりますれば、この場合の推薦資格を有するのは、二以上の都道府縣にわたる組織を有する使用者團体、または労働組合であります。第八項は中央労働委員会の委員の欠格條項を前段に規定し、後段では、委員が欠格條項に抵触した場合には、当然に退職すべきことを明らかにいたしております。本法案に特にこのような欠格條項を定めましたのは、もとより労働委員会の職責の重要性にかんがみましてのことでありまして、その内容は衆議院議員の場合と同様であります。第九項は中央労働委員会の公益委員の任命についての制度規定であります。これは公益委員が、いわゆる準司法的機能を運営することからいたしまして、その中立性を担保するために設けられた規定であることは、いうまでもありません。すなわち七人の公益委員のうち同一の政党に属する者が三人以上となつてはならないのであります。公益委員が入党その他のみずからの行爲によつて、前段の規定に抵触したときは、抵触するに至つた順位に從つて、資格喪失者が定まり、その者は当然退職することになります。第十項は中央労働委員会の委員を労働大臣が罷免することができる場合を定めたのであります。現行施行令第三十九條第二項の場合とは異なつた規定の仕方をしておりまするが、欠格條項に抵触したときは、当然退職することになつておりまするから、内容的には大差はありません。ただこの場合の中央労働委員会の同意は全員の同意でなく、通常の会議の議決方法に從うのであります。第十一條は委員の任期の規定であります。現行施行令第三十九條第一項本文及び第三項の規定と同様であります。第十二項は再任の規定であり、現行法でも規定はなかつたが、同様にいたして参つたのであります。第十三項は任期の到來した委員でも、後任者の任命があるまでは、その職務を行うべきことを定めた規定でありまして、現行施行令第三十九條第一項但書と同趣旨の規定であります。第十四項は労働委員会の委員の俸給、手当等につきましては、この法律とは別の法律で、また費用弁償につきましては、政令で 定められる旨の規定でありますが、これは委員の職責が、特別法による給與を必要とするものであるとの見解に基くものであります。ただこの法律が定められるまでは、中央労働委員会の委員も一般職に属する国家公務員でありますので政府職員の新給與実施に関する法律の適用を受けるものであります。第十五項から第十七項までは現行施行令第四十條第一項及び第二項と同趣旨であります。ただ会長が労働委員会を代表することは、國家行政組織法第六條から当然でありますから、省略をいたします。第十八項は現行施行令第四十條第三項にかわるものでありまして、すなわち会長に長期にわたる事故があり、そのためその職務を行うことができないとき、または会長が欠けたときは、この條の規定、すなわち第十六項の手続きに從つて、新会長が選挙され、旧会長は当然その職を失うことになるのであります。第十九項は事務局に関する規定でありますが、現行施行令第四十二條と同趣旨であります。職員の定員につきましては、中央労働委員会が労働省の外局であることから、労働省定員法で定められます。第二十項はこの條の規定のうち労働委員会に共通の規定を、地方労働委員会に準用する旨の規定であります。從つて地方労働委員会は、都道府縣知事の所轄に属する都道府縣の機関ということになり、また委員及び職員の任免は都同府縣知事が行います。地労委の委員の数は現行通り労使の公益代表おのおの五人であります。從つて第九項の公益委員の任命についての制限も二人以上ということになるわけでありますが、なお地方労働委員会に関して條例で定められるべき事項は、政令で明らかにいたすことになつております。第二十一項は船員法の適用を受ける船員に関する労働行政が、運輸大臣の所掌に属することから來ます調整規定でありまして、現行施行令第四十八條第三項の規定の趣旨と同じでありますが、都道府縣知事の権限も海運局長でなく、直接運輸大臣が行うものとしたことは現行規定と異なつております。 第二十條は労働委員会の権限を定めたのであります。すなわち労働委員会は、第一は労働組合が提出いたしますこの法律の規定に適合する労働組合である旨の証拠においてその認定を行う、これは第五條であります。第二は法人である労働組合となる前提要件として、それがこの法律の規定に適合する旨の証明を第十五条でやることになつておりますが、それをいたします。第三は労働協約に地域的の一般的拘束力を持たせることの適否を決議するのであります。第四は、十八條の不当労働行爲について必要な調査審問を行い、命令を発し、これに関連する措置をとる等の、いわゆる準司法的機能及びあつせん、調停、仲裁の調整的権限とを有するのであります。なお現行法第二十七條第一項第一号及び第二号を省いたのは、これらの事務が労働省と重複して行われることを避けるためであり、また第二項の建議の規定を廃したのは、建議の内容が現行法施行の後に設けられた労働基準委員会の事務であるからであります。 第二十一條は労働委員会の会議についての規定であります。第一項は会議の非公開原則を定めたものでありまして、現行法第二十八條と同じ趣旨の規定であります。ここで公益上必要があるというのは、事案の審判について、公正な輿論によることを適当と認めるような場合であります。ただ関係者の請求を削除したのは、從来の経驗からこれが労働委員会の円滑な運営を阻害した例が少くなく、公開するか、しないかは委員会自身の判断にまつことが妥当であるからであります。第二項から第四項までの規定は、現行施行令第四十一條第一項第二項と同様の規定で、会議の招集、定足数、議決方法等を定めておるのであります。 第二十二條は現行法第二十九條とまつたく同様の規定でありまして、関係者は労働委員会の要求または檢査に應ずる義務があります。本條に違反してこの義務を怠つたものは三万円以下の罰金に処せられます。 第二十三条は現行法第三十條と同様の規定であります。中央労働委員会及び船員労働委員会の委員及び職員は、國家公務員法の起用を受けるわけであるが、秘密遵守義務については、まずこの規定の適用があるものと解すべきであります。 第二十四條は労働委員会の権限のうち、公益委員のみで行う権限を定めました。労働組合が第二条及び第五條第二項の規定に適合するかどうかの立場の認定、法人たらんとする労働組合が、この法律に適合することの認定、不当労働行爲に関する判定及び処分並びに労調法的四十條の処罰請求についての決定がそれであります。いわゆる司法的機能は、事の性質上、その権限の行使も、中立的性格の公益委員のみで行うのが妥当なわけであります。但し労使委員といえども、これらの処分に関する決定の前に行われる審問に参與して、意見を述べる等のことはさしつかえないのみでなく、決定の公正を保つために必要でもありますので、但書が設けられてあります。 第二十五條でありますが、本條は労働委員会のうち中央機関である中労委について、その権限を定めました。すなわち中央労働委員会は労働委員会の一種として第二十條の規定による一般事務を行うほか、第二十六條に定める規則制定権を持ち、しかも二以上の都道府縣にわたり、または全國的に重要な問題にかかる事件のあつせん、調停、仲裁及び不当労働行爲に関する命令等の処分については、優先的管轄権を持つております。ここで全國的に重要な問題にかかる本件とは、單に地域的規模において全國にわたるもののみならず、事件そのものの発生は局地的であつても、問題の性質が國家的影響を持つものをもいいます。また優先して管轄権を持つとは、かかる事務については中央労働委員会がみずから行うことを原則とし、必要があれば、特定の地方労働委員会を指定して行わしめることができるという意味であります。次に中央労働委員会は当事者の申立てに基き、または職権で地方労働委員会の第五條、第七條及び第二十七條に関する処分の再審査を行う権限を有します。このような権限を定めたのは、地方労働委員会の行うこれらの処分について統一性を保持し、かつ事務の愼重を期することが必要であるからであります。再審査の手続等については、中央労働委員会規則で定められます。なお本來中労委と地労委の間には、一般的に上級下級の関係があるわけでなく、ただこの法律の特別の定めをまつて、一定の場合にのみこのような関係が生ずるにすぎないことは、從來の通りであります。 第二十六條でありますが、本條は中央労働委員会がみずから行う手続及び地労委が行う手続について、規則を制定し公布する権限を有することを規定しました。この規則は内部手続を定めるいわゆる行政規則のみならず、法規たる性質を有するものでありまして、國家行政組織法第十三條に定める規則に該当するものであります。從つてその形式的効力は政令の下にあり、また、省令に抵触することはできません。この規則で定められるべき事項は、第五條の証拠の種類、形式認定の手続、第十一條の証明の様式、第二十七條の労働委員会の命令等についての手続及び、あつせん、調停、仲裁の細部手続その他労働委員会の運営に関する事項等であります。 第二十七條は、労働委員会の命令等についての規定であります。本條は第七條の規定に違反した使用者の行爲、すなわち不当労働行爲があつたときの労働委員会の原状回復等の命令及びこれに関する裁判所の手続を定めたものであります。第一項におきましては、労働委員会は、労働者、労働組合その他のものから、使用者が不当なる労働行爲をした旨の申立てがされたときは、遅滞なく事件の調査をしなければならないのであります。この場合労働委員会は、その申立てが第五條第二項の規約を備えない労働組合からの申立てである等のときは、不適法として却下することができるのでありますが、適法の申立てとして受理いたしましたときは、必要があると認めますれば、両当事者その他の関係者を呼び出しまして、現実に不当労働行爲があつたかどうか、それがいかに行われたかについて、当事者の言い分を聞く審問を行わなければならないのであります。この手続は裁判に準ずるものでありますから、特に愼重を要し、調査、審問の手続は前條の中央労働委員会の規則で定めまして、労働委員会は審問をするときは、使用者と申立てをしたものとに、証拠提出証人として呼び出された者に対する反対尋問等を行う、十分な機会を與えるようにしなければならないのであります。第二項におきましては、労働委員会が審問を終つたときは、裁判所の行うように事実認定をいたしまして、この事実の認定を基礎として、不当労働行爲があつたかどうか、その程度、被害の態様などを判断いたしまして、申立人が申し立てた救済、すなわち復職、賃金支拂い、組合に対する干渉の中止等のことを命ずるのであります。申立人の申立てが全部認められることもありますし、一部だけを認めることもあり得るわけであります。また全然不当労働行爲がなかつた場合、あるいは不当労働行爲があつたけれども、ごく軽微で命令を出す実益がないような場合は、申立て棄却の命令を発するのであります。この命令は裁判の判決に相当するものであります。從つて命令と事実認定とは書面に書きまして、命令を受ける使用者と、申立人とにその写しを交付いたします。命令の効力発生の時期は公付の日であります。この場合の手続も、中央労働委員会の規則によるものであります。第三項におきましては、事件を処理した労働委員会が、中央郎党委員会でありますときは、行政上さらに不服を申し立てる道はないのでありますが、地方労働委員会であるときは、使用者は中央労働委員会に再審査の申立てをいたしまして、さらに審査を受けることができるのであります。但し、事件は迅速処理を要するものでありますから、申立てができるのは、命令の交付があつた日から十五日以内に限られております。また再審査の申立てをしたからといつて、地方労働委員会の命令がすでに効力を停止するのでは、労働者保護に欠けるおそれがありますから、中央労働委員会がその命令につき不当その他の疑いがあつて、事件を取上げる價値があるとして、再審査を開始する決定をするまでは、完全にその効力を保つものといたしまして、再審査開始決定があつて、初めてその効力を失うことといたしたのであります。なお第七項で労働者から再審査の申立てがあつたときは、中労委が地労委の命令の取消し、変更等をしない限り、原命令が効力を保つことは、いうまでもないのであります。第四項におきましては、委員会の命令も行政処分でありますから、使用者は当然行政事件訴訟特例法の規定によりまする訴訟を起して、その命令の取消し、変更を求めることができるのであります。しかしながら迅速処理の建前からいたしまして、出訴期間は命令交付の日から三十日以内といたしたのであります。また同時に、委員会と裁判所両方で爭わしめるのは無用の紛糾を來すから、地労委が最初に事件を取扱つたときは、その命令について中労委に再審査を請求しないときにのみ、裁判所への出訴を許したのであります。中労委が初めからみずから事件を取扱い、または再審査をして命令を発したときは、もはや行政上さらに不服申立の方法はないから、ただちに行政訴訟を起すことができるのであります。第五項におきましては、行政訴訟を起したときは、当然相当の日数を要することが予想せられまして、その間において委員会の命令が行政代執行法によります強制方法だけしかないのでは、実効に乏しいうらみがありますので、判決確定までの間、仮処分的なものといたしまして、裁判所が委員会の申立てに基いて、その委員会の命令の全部または一部に從うことを命ずる命令を出すことができることとしたのであります。この命令違反は過料に処せられるのであります。裁判所は一旦命令を発しても、必要によりその取消しまたは変更をすることもできるのでありますが、この命令は民事訴訟法による裁判所の決定の手続によるものであります。第六項におきましては、使用者が地方労働委員会の命令につきまして、中央労働委員会に再審査の要求をしたところが、却下され、しかもその却下のときには、地方労働委員会の命令があつた日から、三十日以上経過していたというようなときは、第四項によりますと裁判所に出訴できないことになり、不都合であるので、再審査を要求したときの出訴期間は、中央労働委員会による申立ての却下、もしくは棄却の命令のあつたとき、または地労委の命令を変更し、もしくは取消してみずから命令を出したとき等の、終局的処分をした日から起算することとしたのであります。第七項におきましては、使用者が地方労働委員会の命令について、期間内に内審査の要求もせず、訴訟も起さないときは、労働委員会の命令は、その使用者については爭う方法のないものとなつて確定いたします。この中央労働委員会の命令については、再審査要求の余地がないから、期間内に訴訟を起さないことによつて同様に確定をいたします。労働者が再審査の申立てをしたし、中労委が職権で再審査することを妨げておりません。確定した命令の違反についても、第五項の場合と同様の過料に処せられるのであります。この過日の裁判を開始するためには、裁判所が命令があつて確定したこと、使用者がこれに違反したことを知らなければならないので、このような場合には、命令を出した労働委員会が、裁判所にその旨を通知しなければならないことといたしました。また当初労働委員会に申立てをしたもの、その他の労働者も、裁判所の注意を促すために、その旨を裁判所に通知できることは当然でありますが、労働者でない他の関係者が、かかる通知を裁判所に対してすることも、もとよりさしつかえないのであります。使用者が地方労働委員会の命令に対して訴訟を起したが、裁判所の判決でその訴えの全部または一部が容れられなくて、労働委員会の命令の全部または一部がその判決で指示されたときは、使用者の当該命令違反に対して、刑罰が科せられるのであります。しかるに確定判決に使用者が違反を犯し、刑罰に処せられた後になつて、中央労働委員会が地方労働委員会のその命令の再審査をして、その結果万一地方労働委員会の命令が取消され、または変更される等のことがあつたのでは、はなはだ困るので、第八項においては使用者の起した訴訟の判決が確定した後には、中央労働委員会は、再審査をすることができないこととしたのであります。以上各項においては、もつぱら使用者の再審査請求、出訴について規定いたしましたが、労働組合または労働者が地方労働委員会の命令になお不満なときに、中央労働委員会に第二十五條第二項の規定により、再審査の請求をすることや、民事訴訟法によつて、たとえば解雇無効確認の訴えを起すことは、もとよりさしつかえないことでありますので、念のために第九項でその旨を特に規定したのであります。なお調査、審問、命令交付などは、中央労働委員会が再審査をするときにも、地労委の審査の場合と同様の手続で行うべきでありますから、第十項で第一項、第二項の規定を準用したのであります。この條の規定は他の各條に比し詳細に定めてありますが、改正前の第十一條では、使用者の一定の行爲を禁止し、これに違反したものに、ただちに刑罰を科しておりましたが、使用者が禁錮の刑に処せられても、なお不当労働行爲の中止をがえんじないようなときは、被害者たる労働組合または労働者は、民事訴訟で解雇無効確認の判決を求め、これに基いて強制執行をしなければならず、時間と金のない労働者にとつては、不可能に近いことでありまして、改正法案では、使用者の不当労働行爲をただちに罰することはいたしておりません。当事者間の私法上の関係を正常な状態にもどし、もつて労働組合の組織と活動とを守ることを第一義といたしまして、そのために、労働委員会が必要な命令を出し、この命令に使用者が從わないときに附則を科することといたしまして、その手続をできるだけ簡易迅速にできるようにして。時間と金を費さずに解決の方途を與えたのであります。第五條でいう救済とは、主としてこの手続をいうのであつて、第五條第二項の要件を満たさない労働組合は、この有利な方法を利用できないわけであります。 第五章は罰則でありますが、第二十八條は不当労働行爲に関する刑罰を定めたものでありまして、第二十七條の規定により労働委員会の命令が発せられて、これに対して使用者が命令交付の日から三十日以内に不服の訴えを行政事件訴訟特例法の規定によつて提起したときに、その判決で労働委員会の命令の全部または一部が適法であるとして支持され、その判決が確定した場合は、使用者がその支持された労働委員会の命令に違反したときは、その違反行爲をしたものが、一年以下の禁錮または十万円以下の罰金に処せられます。改正前の規定よりは相当の加重でありますが、罰を受けるものは法律上の使用者自体でなく、その行爲を実際に行つたもの、たとえば担当重役とか、労務部長とか、工場長とかいう人であることは、改正前の規定とかわりはないのであります。 第二十九條は第二十三條の規定に違反して祕密を漏らした者は、一年以下の懲役または三万円以下の罰金に処せられる旨の規定であります。現行法でに千円以下の罰金でありましたが、國家公務員法の例に準じて規定したものであります。 第三十條は第二十二條の規定に違反した者の罰を規定したのでありまして、現行法では五百円以下の罰金であります。 第三十一條、本條第一項は、法人、または人の代理人、同居者、雇人、その他の從業者が、その法人または人の業務に関して第二十二條の規定に違反して報告をせず、もしくは虚僞の報告をし、または帳簿書類の提出をしない場合は、その代理人、同居者、雇人その他の從業者が処罰されるのみでなく、法人または人も罰せられることを規定した両罰主義の規定であります。條二項の規定は、右の違反行爲については、行爲者が法人または未成年者、もしくは禁治産者であるときは、その罰が一定の責任者に転嫁されることを規定したものであり、労調法第三十九條第二項の規定と同じ例であります。 第三十二條は、不当労働行爲に関する過料を規定したものであります。使用者が第二十七条第四項の規定により訴訟を起した場合に、同條第五項の規定によつて労働委員会の申立てに基く裁判所の命令が出たときには、この裁判所の命令に対する違反行爲に対しては、使用者が過料に処せられます。過料の額は、たとえば「労働者を復職させよ」というような作爲を命ずる命令であるときは、使用者がその命令を履行しない限り、その履行しなかつた日の日数を十万円に乗じた額、すなわち一週間経過後にようやく履行したときは、七十万円まで科することができる。不作爲を命じた命令、たとえば「組合事務專從者の給與を支拂うべからず」というような命令に違反したときは、これに違反して給料を拂う等の行爲をしたたびごとに、十万円以下ずつ科せられる。この不履行の日数に應じて額を定めることは、労働者保護の法の趣旨を実効あらしめるために、今回初めて設けられた制度でありまして、わが國法体系上、他に類例のないものであります。過料を科する裁判の手続は、一般の例と同じく非訟事件手続法第二百六條以下の規定によるのであります。 第二十七條第五項の規定による、確定した労働委員会の命令に使用者が違反した場合も、まつたく同情にして過料が科せられるのであります。 第三十三條、本條は規定の仕方が現行法と異なつているが、その実質的内容は非訟事件手続方第三十六条に関する過料を省いたほかは、現行法第三十七條第一項第四号ないし第六号と同様であります。すなわち民法第八十二條の規定による裁判所の検査を妨げたとき、民法第八十一條の規定に違反して破産宣告の請求をしないとき、民法第七十九條または第八十一條の規定に違反して公告をせず、または不正の公告をしたときは、民法代八十四條に定める過料と同一の範囲の額の過料に処せられるのであります。第二項は、法人である一労働組合の代表者が、第十一條第二項の規定に基いて発する政令で定められた登記事項の変更の登記をすることを怠つた場合には、民法第八十四條第一号の規定に準じて、同條に規定する過料と同一の範囲の額の過料に処せられることを規定したものであります。 附則におきましては、第一項は、施行期日に関する規定であります。第二項は、改正法施行の以前から、すでに法人である労働組合の処遇についての経過規定であります。すなわち、この法律施行の再現に法人である労働組合は、一應この法律の規定による法人である労働組合とみなされるが、改正法施行の日から六十日以内に、この法律の規定に適合する旨の、労働委員会の証明を受けなければならない旨を定めたのであります。第三項は、労働委員会の委員及び事務局職員に関する経過規定であります。第四項は、この法律施行の際、現に労働委員会に係属中の事件の処理については、從前の法律の規定によることを定めたものであります。從つてたとえば不当労働行爲の処罰にあたつては、労働委員会の請求が訴追事件となるわけであります。第五項は、この法律施行前にした行爲に対する罰則の適用については、從前の法律、すなわち行爲時法によるべき旨を明らかにしたものであります。第六項は、本法改正に伴う公共企業体労働関係法の必要な改正を規定したものであります。條文の変更から來る当然の改正でありまして、実体的にはかわりはありません。第七項は法律番号の変更に伴う整理についての規定であります。 引続いて労働関係調整法に入ります。第八條第二項、從來は、公益事業の一年以内の追加指定は、主務大臣が中央労働委員会の決議によつて行うこととなつていました。しかしながら公益事業の範囲は、本條第一項に規定せられておるので、これ以外の事業を一年以内の期間を限り、公益事業に追加指定するのは、新憲法との関係及び第一項との関係から見て、從來のごとく行政機関のみに行わしめず、國会の承認を経て行わしめ、さらに主務大臣にかうるに内閣総理大臣をもつてして、公益事業の臨時的追加指定の手続を、より新憲法の精神に適合せしめ、かつ愼重ならしめようとしたものであります。第三項以下の改正は、第二項の改正に伴う調整であります。 第九條におきましては、現行第九條が行政官廳として予定しているのは、都道府縣知事であるが、都道府縣知事は地方自治法の制定により、國の機関ではなくなつたので、國の機関に用いられる行政官廳という用語を用いることができなくなつたので、行政官廳を都道府縣知事に改めたのであります。なお改正労働組合法の規定に対應して、船員法の適用を受ける船員については、都道府縣知事を海運局長と読みかえたのであります。 第十一條、本條に新たに第二項を加え、斡旋員候補者名簿に記載されている者は、労働委員会の委員であることができないこととしたのは、從來労働委員会の委員が斡旋員候補者を兼ね、斡旋員に指名されることによつて、労働爭議の調整手続があつせんから調停に、または調停からあつせんに不明確に移行し、あつせんと調停との区別が明瞭を欠くことがあつたので、労働委員会の委員は、第十二條但書の規定によるほかは、原則として斡旋員となり得ぬこととし、あつせんと調停との本質的区別を明らかにしたものであります。 第十七條の改正は、労働組合法の改正に伴う條文調整あります。 第十八條の第一項におきまして、本項第五号において行政官廳として予定せられているのは、労働大臣または都道府縣知事であるが、第九條において述べたごとく、國の機関にあらざる都道府縣知事と、國の機関たる労働大臣とを、同一の名称をもつて呼ぶことはできないので、「行政官廳」を、「労働大臣又は都道府縣知事」とわかつて規定したのであります。船員法の適用を受ける船員に関しては、労働大臣を運輸大臣と読みかえているのは、改正労働組合法の規定に対應するものであります。第二項及び第三項の中央労働委員会の再調停の規定が削除せられたのは、第一に、いわゆる判定的機能にあらざる調停のごとき事項について、一審制をとることは適当でないこと。第二に一の都道府縣のみにかかる事案については、当該都道府縣の地方労働委員会のみに行わしめるのが、実情に即した合理的な調停をなすことを可能ならしめ、かつ当該地方労働委員会の責任ある調停を行うことを促進するゆえんであるから、再調停の規定は適当でないこと。第三に、全國的に重要な問題にかかる事案については、改正労働組合法案第二十五條によつて、中央労働委員会が優先して管轄することとなつたので、労調法において別に再調停の規定を設ける必要がなくなつたこと。以上の三点に基くものであります。 第十九條、第二十一條、第二十二條。本三條において「第三者である」を「公益を代表する」に改めたのは、労働組合法の改正に伴う調整であります。 第二十六條の第二項におきましては、調停案が一たび双方の当事者によつて受諾された以上は、その後その調停案の解釈または履行について爭いが生じたときは、当事者がその調停案を提示した調停委員会に、その解釈または履行に関する見解を明らにすることを申請し、もつて調停案を受諾した後の、労使の紛爭をでき得る限り防止し、平和を維持しようとする趣旨であります。第三項は、右の申請を受けた調停委員会の職責を規定したものであります。すなわち右の申請を受けた調停委員会は、関係当事者に対して、申請のあつた事項について、解釈または履行に関する見解を示さなくてはならない。しかして右の見解は、申請のあつた日から十五日以内に示されなければならない。期間を十五日と限定したのは、調停委員会に対して、すみやかに見解を示すべきことを義務づけるとともに、本條第四項の爭議行爲の制限を、一定期間後解除する必要があること、及び本法施行令第十條の規定と符合を合せたものであります。第四項におきまして関係当事者が、調停案を提示した朝廷委員会に、その調停案の解釈または履行についての見解を明らかにすることを申請した以上、その解釈または履行に関し爭議行爲をなすべきかいなかは、右の調停委員会の見解を合理的に判断した上で、決定さるべきであります。本項はこの趣旨によつて、右の見解が明らかにされるまでに、関係当事者がその調停案の解釈または履行に関して、爭議行爲をなすことを禁じたものであります。但書において、申請のあつた日から十五日を過ぎたときは、この限りではないとしたのは、第三項に應ずるものであつて、当事者の爭議行爲を長く制限することを排除するためであります。 第二十九條改正は、労働組合法の改正に伴う條文調整であります。 第三十七條第二項においては、本項が新たに加えられたのは、第一には、一般大衆が長期にわたり爭議行爲の脅威にさらされることは、公共の福祉と公益事業の爭議行爲の調整をはかることを目的とする第三十七條の趣旨に反すること。第二に、関係当事者がいつまでも爭議行爲をなし得るとする場合に、かえつて当事者の自主的解決の努力がおろそかとなり、公益事業における労道爭議の迅速円満な解決が遷延するおそれがあること。第三には、第一項の冷却期間が進行を開始してから九十日を経るも、なお労働爭議が解決しない場合は、その間川諸種の情勢の変化もあり、おのずから紛爭事情も変化するので、再び調停の手続を開始し、関係当事者、関係機関がその解決に新たな努力をすることが適当であること。以上の三点に基くものであります。本項は公益事業に関し、関係当事者が第一項の規定により爭議行爲をなし得るに至つてから六十日を過ぎた後は、新たに第一項に規定する條件が滿たされなければ、爭議行爲をなすことができない。すなわち、第十八條の規定による調停の申請、労働委員会の決議または労働大臣もしくは都道府縣知事の請求がなされて三十日を経過しなければ、爭議行爲をなし得ないことを規定したものであります。本項によつて、冷却期間経過後六十日を経たときは、継続中の爭議行爲も、そのとき以後なお継続するときは、本條違反の爭議行爲となる。第三項、公共事業に関し、関係当事者の双方か受諾した調停案の中に、なお関係当事者間において交渉を継続する旨が定められている事項がある場合に、これについてその後関係者当事者間の交渉が不調となり、意見の不一致が生ずる場合がある。本項は、このような場合においても、調停案の受諾により、当事者が平和的に交渉をすることを認めたのであるから、公益事業における爭議行爲の公共の福祉への影響の重要性にかんがみ、たとい右のような條件付であつても、関係当事者がその調停案に含まれた事項について爭議行爲をなすには、新たに第一項に規定する條件を滿たさなければならないとしたものであります。なお右のような條件付でなく、全面的に調停案を受諾した場合に、新たに第一項に規定する條件を滿たさなければ爭議行爲をなし得ないのは、いうまでもないのであります。 第三十八條を削除したのは、國家公務員法の改正、政令第二〇一号の制定に伴い、不要の規定となつたからであります。 第三十九條。「前二條」を「第三十七條」に改めたのは、第三十八條の削除に伴う技術的調整であり、一万円以下の罰金を十万円以下の罰金に改めたのは、刑法等における罰金額の引上げに準じたものであります。 第四十條。現行第四十條が、爭議行爲をなした労働者を保護する旨を規定しているのは、現行労働組合第十一條のみでは、爭議の際における労働者の保護の全きを期することができなかつたからであるが、労働組合法の改正により、使用者の不当労働行爲の禁止の規定が整備拡充され、また使用者の不当労働行爲に対する労働者の救済も、きわめて強力なものとなつたので、爭議行爲の際の労働者の保護も、労働組合法の不当労働行爲の禁止のうち、労働組合の正当な行爲を理由とする不利益な取扱いの禁止の中に含ましめることが、理論的にも一貫しており、かつ、労働者の救済の実際面からも妥当であると考えられる。本條中「又は労働者が爭議行爲をなしたこと」を削つたのは、以上の趣旨に基くものであります。本法による労働爭議の調整をなす場合において、労働者がなした発言を理由として、使用者がその労働者に対して不利益な取扱いをすることは、本法の規定により労働委員会が行う公的な労働爭議調整の事務に対する妨害行爲であります。從つて右の発言を理由とする取扱については、労働者が爭議行爲をなした場合と異なり、本法の的確嚴正な運用を確保する見地から、組合法にゆだねず、本法みずからこれを禁止したのであります。第四十一條において、本條違反に対する処罰を、不当労働行爲に対する組合法の処罰と異なり、行爲者を直接に処罰することとしているのも、同じ趣旨であります。從來は本條但書によつて、事情により労働委員解の同意があれば、その労働者に対して不利益な取扱いをなし得る場合もあつたのを削り、いかなる場合でも労働者の発言を理由として、これに対して不利益な取扱いをなすことを禁ずることとしたのであります。 第四十一條で、第四十條違反に対する五百円以下の罰金を五万円以下の罰金に改めたのは、労働組合法の不当労働行爲に対する罰則との均衡を考えたものであります。 附則第一項は、この法律の施行期日を定めたのであります。第二項は、本法により改正された第二十六條の規定を、改正前の第二十六條の規定により提示された調停案についても適用することは、法の不遡及の原理並びに調停委員会の再編成及び調停案の解釈等について、かえつて混乱を生ずることも予想されるので、これを避けたものであります。第三項は、この法律の施行前の第三十七條及び第四十條の規定に違反した行爲については、本改正によつても処罰を免れることなく、なお從前の法律の規定によつて処罰されることを規定したものであります。 以上で、はなはだ急ぎましたが、大体の逐條説明を終ります。
○倉石委員長 それでは質疑を許します。前田種男君。
○前田(種)委員 私は緊急を要するところの炭鉱ストの問題につきまして、簡單に御質問申し上げたいと思います。 商工大臣、安本長官の御出席を願つておつたのでございまするが、労働大臣のみ見えておられますので、政府を代表して炭鉱ストの経過及び見通し、あるいは政府の対策、この三点について政府側の御答弁を願いたいと思います。
○鈴木國務大臣 御質問の炭鉱の問題は、國家復興のためにも、それから諸般の関係上からも、非常に重大な問題と考えまして、政府でも安本、商工省とも、しばしば協議もし、そうして何とかして爭議の状態には持つて行かないうちに解決にということを心がけたのでありますが、遺憾ながら一両日前から、一應爭議の形に入つたということは御承知の通りであります。大体解決に持つて行く心構えといたしましては、労働組合中心とする自発的な経営者側との折衝、この方法の中に妥当なる解決を見出してもらうことが、一般論としては正しいのでありまして、むやみに政府が介入をするということは、非常特殊の場合のほかは避けるのが原則であると考えまして、中労委を通じまして、あつせんの方法によつて話を通めて來たことも御承知の通りでございます。一、二の條件の点につきましては、経営者側と組合側とにまだ了解のつきかねる点がありまして、さらに今日も引続いて全力をあげて、何とか話合いの段階に持つて行つて、爭議は一應とどめて、そして解決の道をはかる。こういう方向をとろうとして今の段階におきましても、全力をあげて努力しておるわけであります。見通しにつきましては、もう一歩双方が努力して近寄ることによつて、一應爭議は中止して、そうして双方でもつてもう一ぺん話合うという段階に達し得るのではないかという見通しをもちまして、今日ただいませつかく努力中であります。なおこれは御質問の中にはありませんでしたけれども、労調法第十八條による調停というふうなことは、でき得るならば避けたいのでありまして、事態眞にやむを得ざる場合という以外にはなるべく考えないようにしておるのでありますが、しかし性質上非常に重要なものであり、時間的の関係もありますので、どうしてもという場合には——政府はあえてこの労働問題に介入、干渉するというような意味ではございませんけれども、場合によつては、そのことが必要な段階も來るのではないかということを考えておりますが、しかし今のところ、ただちにその方法に訴えようという考えをもつて臨まずに、ただいまも申しましたように、中労委のあつせんの中から、妥当なる経営者側と労働組合側との再交渉の道が開かれるものという見通しのもとに、せつかく努力しております。なおそれに至るまでの双方の條件、それからもう少し詳細の点につきましては、労政局長から数字をあげまして、説明してもらうことにいたします。
○賀來政府委員 ただいま大臣から大体のお話を申し上げましたが、経過はすでにご存じの通りでありますので、途中を省略させていただきまして、昨夜からけさにかけての状況について説明いたしたいと思います。 御承知のように、今度同盟罷業に入りましたのは、本格的な賃金に関します爭議ではないのでありまして、四月以降の本格賃金がきまりますまでの暫定支拂いの問題について、中央交渉できめたいという組合側の主張と、中央交渉はできないから、各山別でやりたいという使用者側の交渉とが、正面衝突をいたしました結果、遂に爭議行為に入らざるを得なくなつたのであります。もちろん暫定支拂いの問題とは申しますが、これは本格賃金と切り離して交渉あるいは解決し得ない問題であります。從いまして表面は暫定支拂いということになりますし、組合の作戰といたしましても、さようなことも認められるのでありますけれども、問題にやはり本格的な問題が底流にあるというのであります。すなわち今度の中労委のあつせんにおきましては、本格的な賃金の協定は七月以降に持ち越すことといたしまして、とりあえず四月——六月の暫定賃金といたしましては、三月までの協定の線を認める。但しこれが実施に関しましては、九原則その他の関係から各山別でやるという大体の線が出たのであります。これにつきましては組合も使用者側も大体應諾しそうな状況でありましたが、先ほど申しましたように、今度の暫定の問題に触れて参りますと、当然本格的な問題が出て参るのであります。そのうちで、今は暫定拂いのような形でありますが、直接問題になりました点が二点あります。一つは〇・八トンの季節差の能率計算をどうするか、これを依然將來においても認めるかという問題、これは七月、八月の問題ではありますけれども、場合によりましては九州あたりは六月にすでにこの問題が出て参るのであります。第二点は、米の値段の値上りに関しますはね返りをどうするか。これは金額にいたしまして五百円程度の問題であります。この二つの問題につきまして、このあつせん案では明確を欠いておりましたので、組合側から、あつせん員であります末弘会長の意見を求めたのでありますが、いずれもこれは本格賃金の際に見送られた形でありましたので、遂に組合側としては爭議に入つてしまつたのであります。その後労働委員会末弘会長はあつせん員といたしまして、昨日の夕刻から再あつせんを開始いたしまして、この〇・八トンの季節差の能率問題につきましては、これは労資双方で一週間以内に交渉を開始するように、しかし末弘あつせん員の行き方といたしましては、この〇・八トンの季節差の問題を、何とか原則として今度の本格賃金の協定の際にはこれを認めて、交渉に入るようにという意味が現われておるのであります。第二点のはね返りの問題につきましては、九原則から申しまして、拂えれば拂つてよいのでありますが、拂えないところも多いと思う。そこで何とかこれは一時金の支拂いの形で解決をつけたらどうかという勧告が、昨晩労資双方に示されたのであります。今朝になりまして組合側は大体このあつせん員の第二次の案を了承いたしまして、この線でまず経営者側と交渉に入りたいという回答を、あつせん員の末弘会長のもとに出しております。それに対しまして使用者側は、先ほど申しましたように、表面はいかにも問題が見送られたような形であり、あるいは解決ができそうな形でありますが、本格的な問題に触れておりますので、けさ十時から経営者の会議をやつておりますが、またその結果がいずれに決定したか、報告を受けていないのであります。ただわれわれ事務関係者の見通しといたしましては、先ほど申しましたように、本格の問題に触れておりますけれども、組合側も何とかして爭議を回避したいという氣持は十分に持つておりますし、また使用者側もそういう氣持は持つておりますから、あるいは今明日中に末弘会長の最後的努力によつて、解決をするのではないかという感じを持つておる次第であります。
○前田(種)委員 大体了承しましたが、私自身もかような炭鉱のストのようなものは、どうしても回避しなければならぬと信念的に考えております。もちろん労資双方の交渉に対して、政府がみだりに干渉がましいことをするのは、避けなければならぬことも私は了承いたします。しかしかような大きな問題になつて参りますと、干渉がましいさしず、その他のことは遠慮しなければならぬ点もよくわかるのでありますが、しかしここまで押し詰まつて來てしまえば、結局政府の巧妙なあつせん、努力等が大事なことだろうと私は思うのです。その意味においてぜひとも——今局長が申しましたように、一両日のうちに解決しますならば幸いだと思いますが、最後の努力を政府にお願いしておきたいと思います。 商工大臣が見えておりますので、この機会にこのストに対する商工省の見解も承りたいと考えますが、それとあわせまして、二十四年度の四千二百万トン出炭の計画が、商工大臣としては計画通り遂行されるという見通しがあるかどうか。それにあわせまして、九原則あるいはドツジ氏案、新予算等がら参りますところの、炭鉱関係の昨年來からの融資その他の問題の打切りのために、非常に関連産業が今日困つておるということは、私が申し上げるまでもないわけです。二十三年度においては、商工大臣の表彰状までもらつたような関連産業の多数が、要するに生産の実績をあげた多数の工場が、金がもらえないというので、今日賃金は拂えない、工場は縮小しなければならぬというような逆の結果を來しておるということも、商工大臣よく御承知の通りでございますが、こうした問題に対する対策、あるいは金融の措置その他の方法を講じなければ、四千二百万トンはおぼつかないという結論になつて参ります。こうした問題等に対する商工大臣の見解を明確にお聞きしたいと思います。
○稻垣國務大臣 ただいまの御質問でありますが、まず第一の点につきましては、先ほどここで労働大臣がお述べになりましたと同じ見解を持つておるのであります。できるだけ中労委のあつせんによつて、この問題を円満に解決してもらいたい、かように存じておるのでありまして、政府としてこの間に介入して、そうしてこの問題にある意味において干渉するといつたことは、できるだけ避けなければならぬ、かように考えておりますので、ただいまの情勢におきましては、多分中労委のあつせんによりまして、円満に解決されるものだろうと存じておるのであります。 それから第二の御質問は、四千二百万トン出炭能なりや、なおあわせて関連産業への未拂いの問題についての御質問であります。大体この四月の出炭の報告を得たのでありますが、四月の出炭成績は九九・四%であります。実は最後の月なので、三月に一生懸命がんばる関係から、毎年四月は出炭量がいつも下る、うつかりすると八〇%台に下つておつたのであります。それが今年は、九九・四%というよい成績をあげておるのであります。これは最近三月一日にもらいましたメモランダムにうたつてありました坑内外の炭坑夫の入れかえ、その他の点が順次並んで参つております結果もあるかと存じておるのであります。この調子で参りますれば、所期の目的が達せられ得るのではないか。ことに採炭夫の一人当りの能率は、時間的に見まして、ほとんど戰前と同じ、あるいはそれ以上に相なつておるのであります。ただ坑内外出の割合が、まだ所期のようになつていない。これを二箇月あるいは三箇月の間に、坑内六〇%、坑外四〇%の割合にするように、今各炭鉱に御努力願つておりますので、その御努力が実を結びますると、大体四千二百万トンの出炭は可能になるのではないかと、私は考えております。 それから関連産業への支拂いの問題でありますが、この点につきましては、政府としていろいろ心配いたしておるのであります。そして復金融資はもうできませんことは御承知の通りでありますので、日銀その他を通じまして、市中銀行への融資について目下交渉をいたしております。大体一部の支拂いは可能になるのではないかというような見当を持つております。この関連産業未拂いの問題については、日ならずして融資の手だてが実行され得るであろうと考えておるわけであります。
○石野委員 ただいま前田委員から質問がありましたので、重複する点は避けたいと思います。石炭労組の今度の爭議に関連しまして、非常に私たちの危惧するような段階にまで來ておることは、憂慮すべき点だと思います。それは今政府の説明のように、ここ一両日の間に解決点を見出されるかもしれないということでありますれば、非常にけつこうだと思います。この際、一つだけ労働者諸君のいろいろな係爭が起きましたときに、常に同時に問題になりますのは、金属鉱山関係の問題だと思うのであります。これは昨年の暮れにも同じように問題がありまして、金属鉱山関係の産業労働者についての問題は、前に水谷商工大臣あるいは大屋商工大臣のときにも、問題解決は同一ペースで、同時解決ということを原則として來ておるわけでございます。今回の場合にも同じように、金属鉱山関係の諸君も係爭の中にあるわけでございますが、政府としましては、この原則はやはり從來通りはつきりお認めになつて、その解決の線に御努力くださるかどうかという点を、ひとつお尋ねしたいと思います。 それからいま一つ、石炭産業の問題につきまして、本年度の年度計画の石炭を出そうとする場合に、中小炭鉱、特に低質炭の炭鉱の問題が非常に大きな問題になると思うのでございますが、それらの点についての商工大臣の今後の対策なり、お考えを御説明願えればけつこうだと思います。
○鈴木國務大臣 前半の御質問についてお答えいたします。根本の原則としては、同一條件に置かれておる産業の賃金は同一であるべきだ、その原則は今日でもくずすことのできない原則だということは十分了承しております。ただ御承知のように、これらの産業に対しましては、從來そういつた原則が打立てられる過程におきましては、初給金の形をもちまして、賃金のでこぼこが平均化せられていたという過程が続いておつたのでありまして、四月以降は補給金によるところの賃金の維持、もしくは引上げということが、企業の三原則その他の関係からいつて、できないのだということは、累次すでに関係方面でも声明しておりますし、また声明のいかんにかかわらず、現在の條件のもとにおいては、そういう新しい原則が行われなければならなくなつて來るだろうと思います。從いまして、主として今後の賃金の維持——あえて消極的に維持だけではありません。場合によつてはさらに向上をも意味するでありましようが、そういつた問題は、主としてと言うよりも、ほとんど全体的に、経営者と労働者双方の企業努力の向上、それに企業努力を成功させるための政府の資金とか、資材、政策的の援護、この三つのものが結びついて、そして成果をあげて行くという過程の中からでなければ、生れて來ないのであります。これは現在において與えられた條件でありますので、先ほど申し上げましたところの同一の條件における同一の賃金という原則は、私たちは原則としてあくまでもこれを認めるのでありますが、この段階における遂行におきましては、適宜その企業体の関係、あるいは今申しました金属及び石炭というものが、ほとんど経理的に同じ立場に立つているのでないといたしましたならば、そこに時間的の調節の面というものが、必要になつて來るという段階はあり得るのではないかと思います。原則といたしましては、御指摘になりました原則を、今日でも私たちは了承しております。
○稻垣國務大臣 ただいまの御質問にお答えいたします。今労働大臣がお答えになりましたことで、同一の條件の場合には、同一の立場をとるということですが、水谷、大屋両大臣が石炭工業と同じ並に金属工業を見るという話をされたことについて、今なお同じ考えを持つておるかという、念押しのお話だつたろうと私は思うのであります。ところが、私は少し考えが違つておりまして、必ずしも同一條件にはないというものもある。金属鉱山と申しましても、金鉱、あるいは硫化鉄、あるいは鉛鉱、それぞれ條件を異にいたしておると私は思うのであります。そこで大体においては同一の立場にあると存ずるのでありますけれども、しかしながら、金属鉱山の中にもいろいろな種類の金属鉱山があり、また坑内の事情も種々私は違つておると思うのであります。坑内の條件が同じでないかということを言う場合には、坑内の條件は、金属鉱山の中でも炭鉱と同じものもあり、あるいは炭鉱以上悪い條件のものもあり、あるいはまた炭鉱よりもずつといい條件のもとにあるものもあつて、これは必ずしも一律には律せられないのではないか、かような考えを持つておる次第でございます。 第二の御質問でありました、いわゆる中小炭鉱についての問題でありますが、中小炭鉱と大炭鉱との間に、何ら差別を設けることは考えていないのみならず、できるだけ中小炭鉱も立ち行くような建前で考えて行くことはもちろんでありまして、その点については特に商工省として、区別をしておる点全然ございません。中小炭鉱は中小炭鉱として立ち行く方策を考えるということをわれわれはやつております。その点御了承を願いたいと思います。
○石野委員 ただいまの商工大臣の御答弁の、同一條件のもとにあるものには同一賃金という考え方について異議があるという点でございますが、この点、同一條件ということを言い出しますと、炭鉱それ自体の中にも、いろいろ同一條作と必ずしも言えないものがあるのではないかと思います。從來そのことを含んで、前々の商工大臣の各位は、この原則を認めて來ておられました。今日におきましても、稻垣商工大臣のお言葉によりますと、たとえば炭鉱よりも一層過酷な労働條件のもとに置かれておるものもあり得るだろうというようなことであつたのです。しかしその場合、それならば、そのようにまた取扱うかということになると、なかなかそうは行かないだろうと思います。そういうもの全体を含めて、やはり同一條件として、しかも爭議に対しては、同時解決ということも一つ含まれておるわけなのであります。いま一度その点についての御答弁をお願いしたいと思います。ことに同時解決という問題は、昨年の暮れにおける爭議の際においても、同時解決ということを原則と認めていながら、約一箇月以上も金属の方は解決が遅れてしまつた。最後には補給金問題でごたごたするような状態になつたわけでございます。この点は特に金属鉱山労働組合の諸君が、はつきりとした政府の考え方を知つておきたい点だと思つておりますので、その点もお聞きしたいのです。 なおいま一つ、中小企業の炭鉱につきまして、特に低質炭の炭鉱について、メリット制等によるところの問題があり、しかも融資がそれに伴つて今度は断ち切られるということから、非常に不利な條件に置かれておるということは、もうすでに商工大臣御存じの通りであります。これらの点について、特に商工政策としましての御意見を伺いたいと思うものであります。
○稻垣國務大臣 同時解決にまで私は異議を申し上げておるのではなくして、いわゆる坑内夫の條件が、必ずしも同一でないということを私は申し上げたわけでありまして、その点は誤解なさらぬようにお願いしたいと思います。同時解決ということを私はいかぬといつたわけではないので、同時解決けつこうだと思いますが、必ずしも一つでないであろうということを申し上げたわけであります。これはこの前全鉱連の方が見えましたときにも、私はそういう考え方を表明いたしておいたわけであります。 それからこのメリット制を実行するにつきまして、中小炭鉱の低品質炭の問題についてでありますが、低品質炭については、これは今炭鉱の経営者側でいろいろ話合いが進んでおるようであります。それに対して、できるだけ中小炭鉱の方が不利にならないように、政府としても十分措置を講じたい、かように考えております。
○小川(半)委員 大体從來からの炭鉱労働組合の爭議を見ておりますると、経済問題を行き過ぎた政治的な意味を持つたストが多かつたんですが、しかし今回のストを大体初めから見ておりますると、これは純然たる経済問題の立場に立つておるということが言えるのであります。大体業種別賃金を見ますると、炭鉱労務者の賃金というものは、山別によつて非常に差があつたのです。最近はやや均衡して参りましたが、それでも、たとえば非常に危險な山と、安全な山とある。それから作業場まで行くところの坑道の近距離、長距離などがあるし、発掘の際非常に簡單に掘れるところと、非常に困難生ずる場所がある。そういう大きな違いがあるものですから、賃金が山別によつて異なつている。これがために炭鉱独特の一つの賃金があるように私たちは解釈しているのです。大体それによつて低いところは、どうしても補給金によつて補うて行こうというような形態をとつておつたんですが、今度は補給金というものがなくなるわけですから、おそらく必然的に統一された賃金という声が起つて來たんだろうと思います。ところが、私は統一された賃金というものをつくつても、さらに將來危險地帯におる労務者たちから、やはりおそらく補給金か何かの要求が出ると思うんですが、これについて、政府としては断固として統一された賃金で行くという方針をとるか、もしくはそういう危險な山などには、補給金を加えるとか、そういうふうな解釈を今から立てておかなければ、將來私は問題になるんじやないかと思うんです。これについての政府の見解を発表しておいていただきたいと思います。この爭議に関しても、非常に私はこれは重大な示唆になると思いまするから、ひとつ御答弁願います。
○賀來政府委員 御質問のように、今日までの炭鉱賃金の状況を見ますると、御指摘のような欠点が出たのであります。炭鉱の賃金につきましては、戰爭以前の状態と比べまして、非常にご指摘のようによい点もありますが、悪い点もあります。悪い点につきましては、その後の統一交渉によりまして、逐次統一されて行きまして、是正されて行きましたが、同時に特長とすべき点がなくなつた点もあるのであります。今度の九原則の実施の結果、統一賃金でもつて支拂うことが非常に困難な実情になりましたので、先ほど申しましたように、経営者側においては、中央交渉における中央統一賃金の勘定を拒否いたして参つておるのであります。それに対しまして、組合側は依然統一賃金の要求を堅持しておるというのが、今度の爭議のやはり重要な原因になつておるのであります。この点につきまして解決をはかるというのが、ただいま御指摘のように、將來の問題を解決する一つの大きな問題であると思えるのであります。原則といたしましては、やはり今日におきましても、全炭山を通じましての共通な問題もありまするし、また戰後さような傾向で來た状態でありますので、一氣に中央の全般的統制を解除してしまうということが、適当な解決ではない考とえられております。しかしながら、今日までのようなああいう協定書に基きまする統一賃金の実施は、かりに協定いたしましても、実行困難に陥ると思われるのであります。のみならず、ただいま御指摘のありましたように、今日の炭鉱賃金の一つの大きな欠点といたしまして、十分働いておる者、たとえば坑内夫におきまして、先山でほんとうに働いております者の賃金と、坑外夫で働いておりまする者の賃金とを比較いたしますと、あるいはそれらの坑内夫の賃金と、全体としての各種の業種別と比較いたしまして、必ずしも坑内夫の先山でほんとうに働いている人の賃金が、高いとは申されぬのであります。しかし、この高い賃金を拂われべき者がもらつておらぬ、さように働いておらぬ者が相当の賃金をもらつておるということは統一賃金によりまする欠点もありまするが、終戰後現在までの状況におきましては、鉱山の経営者及び労務管理者が非常に、何と申しますか、権威を失つておりまして、実に極端な言葉を使いますれば、だらしない賃金の支拂い方をしておるということにも、原因があるのであります。從いまして、政府の施策といたしまして、補給金であるとか、何とかいう問題もありまするが、それよりも最も重大であり、最も解決の要点になりますのは、労資双方が、先ほど労働大臣から申されましたように、これらの点につきまして、賃金の支拂い方法を合理化するということが必要である、かように考えるのであります。從つてわれわれの考え方といたしましては、今までのような中央統一賃金は、これは不可能と思いまするが、大体の基準を中央で決めまして、その基準に基いて各山元で、各種職別、業種別に、合理的な賃金をきめらるべきである、かような考え方をいたしておるであります。
○土橋委員 ただいま賀來労政局長からお話がありましたが、稻垣商工大臣のお話によりますと、中小企業の炭鉱についても相当考えておる、こういう御答弁であつたのですが、われわれの考えてみたところでは、現在の炭鉱業者の階級をA、B、Cとわけて、少くともメリツト制によつてA級に所属するところの炭鉱業者七十有余、第二のB級の炭鉱は大体百九十有余あるように考えております。第三のC級の炭鉱は大体二百九余あると考えておりますが、今までの政府の方針によりますると、第一級の業者に対しては、大体政府の資材なり資金の面は、九〇%程度これを保障する、あと一〇%程度はB級、第二級の百九十有余の山に行うということを、われわれは聞いておるのであります。そういたしますと、先ほどの御答弁の内容のC級の二百九十有余の炭鉱業者は、崩壞せざるを得ない運命にあるのであります。そうしますとただいまの爭議状態から考えてみましても、私はC級の二百九十有余の炭鉱業者がどういうような賃金の内容を考えておるか、あるいは四千二百万トンの採炭について、二百九十有余の炭鉱労働者を崩壞させるような運命に置いて、どういう御処置をとられておるか。また今度の爭議においてB級以下の炭鉱労働者がどういうような点を、主張し、あるいは大手筋の七十有余の業者とどういうような関係になつておるかというような点を、事こまかに御答弁願いたい。かように考えておるのであります。
○山地政府委員 御質問になりましたA、B、C炭鉱の問題でございますが、御質問のように、たとえばAクラスの炭鉱に九〇%の資金と資材を配当し、Cの方はほとんど運轉のできないような資金になるということを考えておるのではございません。大体考え方といたしましては、今後のわが國の石炭は高品位の石炭をなるべく多く出炭いたさなければならぬ、四千二百万トンの中でも、品質のよい石炭を多く出炭せしむべきである、かように考えまして、品位の向上という、方面に特に力を入れたいと考えておる次第であります。こういつた意味合いから、一應の考え方の基準としまして、A、B、Cといつたふうなことを考えておるのでありますが、これは各炭鉱の努力次第によりまして、Bの炭鉱と認められておるものもAなるものになりましようし、Cなる炭鉱のものもBになるということも考えておるのであります。もちろんCの炭鉱にも、自分の経営に必要な資材なり生活物資などは、必要なだけを配当しなければならぬと考えておるわけであります。資金の問題については、実は現在では昨年までと情勢は異なりまして、復興金融金庫というような仕事もなくなりましたので、実は各炭鉱のみずからの努力によりまして資金を獲得する、かような建前になるわけであります。設備資金等についてはこういつたA、B、Cといつた問題よりももつと高い建前から、わが國としてはほんとうに生産の復興上、炭鉱に欠くべからざる施設はどうであるという点を考慮いたしておるような次第であります。これまたA、B、Cといつたような格づけには、関係ないのであります。なお先ほど大臣からもお話がありましたごとく、低品位の石炭そのものについても、わが國の全体の需給状況から見まして、高品位の石炭は十分にわが國の経済を滿足するだけあるものではありませんし、低品位の石炭も適当な需要があるわけであります。これは日本経済全体から考えまして、それぞれその所を得せしめて仕事をしてもらうことが、日本経済の再起に役立つわけであります。そういつた意味において、要するに低品位炭鉱だから、これを言葉で申せば、つぶしてしまつて、高級炭鉱だけ残すというようなことを考えてはおらないのであります。低品位の炭鉱は適当な品位に應じた生産を続けてもらうように、それぞれ分野に應じた仕事を続けてもらうように考えておるわけであります。それぞれ各炭鉱の労資双方において、具体的なそういつたふうな、たとえば賃金問題その他で要求があります。ただいま詳細な資料を持つておりませんが、大体のところ、高級の大手筋の炭鉱のために保護政策をとる、そうして低品位の炭鉱はなくなつてもよいというような政策をとることは考えておらないのであります。それぞれ分に應じ、所に應じ、日本の石炭需給上バランスをとつた仕事をしていただくようにさせたい、かように考えておる次第であります。
○土橋委員 ただいまの説明によりますと、高品位の炭鉱については努力する、低品位についてもその所に應じ相当な努力をしたい、こういうような御説明であつたようであります。そうすると、日本で非常にカロリーの高い層がきわめて豊富な炭鉱は、そうないと思います。特に常磐炭鉱なりあるいは山口縣、北九州においても同様と思いますが、メリット制を採用するということになれば、低品位の炭鉱及び規模の小なるもの及び炭屑がきわめて薄いとか、あるいは搬送その他の工事において非常に困難をきわめるという炭鉱については、きわめて冷淡な態度がとられるわけであります。それはメリット制が持つた基本的な條件であります。これはきわめて重大な問題であります。先ほど労働大臣も答弁されたように、同一労働、同一賃金という建前をとることを、わが日本共産党も主張しておるのであります。そういたしますと、この爭議の問題に関連して、政府の御所信が、あくまで高品位炭鉱の問題に重点を置くという説明をされるならば、私はこの問題はもつと十分考究をして、今政府が考えておるような高品位炭の量は、四千二百万トンについて、どういうような関係にあるかということを明白にしていただいて、その中から当局の所信をさらに聞きたいと思うわけであります。その内容が説明できないと、労働條件の問題も、それからメリット制の内容がほんとうに文字通りに実現するかどうかという点についても、また四千二百万トンの採炭計画についても、重大な支障があると思いますので、私は商工大臣が知つておられる範囲において、明確な責任のある御答弁を伺いたいと思います。時間も経過しておりますので、あとは保留をしたいと考えております。
○稻垣國務大臣 ただいまの土橋委員の御質問は、四千二百万トンの中の低品位炭と高品位炭との割合いかん、また搬送その他の悪い條件のものはどうなるかという御質問でありましたが、ただいま数字を持つておりませんから、あとで持つて來て申し上げます。
○倉石委員長 本日はこの程度にとどめ散会いたします。次会は明後六日午前十時より開会いたします。 午後三時五十八分散会