法務委員会 第34号
- 発言数
- 169 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1949/07/25
会議録
○花村委員長 これより会議を開きます。 本日の議題は、平市の騷擾事件に関する件及び下山、三鷹事件等檢察行政における犯罪の科学的捜査に関する件であります。樋貝國務大臣及び齋藤國警長官がお見えになつておりますから、順次右事件に関し質疑をいたすことといたします。殖田法務総裁は後刻見えることになつております。猪俣委員より質疑の通告がありますからこれを許します。猪俣浩三君。
○猪俣委員 法務委員会から過般派遣せれまして、平市の騷擾事件等を視察して参りました。ことに関連いたしまして、樋貝國務相並びに齋藤國警長官に質問申し上げたいと思うのであります。 初めに樋貝國務相にお尋ねいたします。警察法の第六十二條に國家非常事態ということの規定があるのであります。この警察法第六十二條の國家非常事態というのはいかなる場合を指すのであるか、しかしその認定は何人がするのであるか、まずその点を承りたいと思います。
○樋貝國務大臣 お答えいたしますが、警察法の六十二條では、國家非常事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣が非常事態を全國または地方に宣言することができる。こういう規定がありますので、この非常事態というのは現在やつておりますように、いろいろ請求などを、たとえば公安委員会を通じて國警に請求して來るのがずいぶんありますけれども、そういうふうなもはや援助などでは足りない、全体を見ましてすでに援助くらいは突破したような大きな事件になると考えますときに、すなわち平常の状態でない、もうすでに暴動化し得るというような状態に達しましたときが、ここに言ういわゆる國家非常事態だと考えておるようなわけであります。それから事実においては客観的にそういう事態がありましても、結局総理大臣がその布告を発したときが、すなわち最終におきましては総理大臣のその間の客観的状態の認定をもつて最後と考えなければならないと思います。從つて総理大臣に認定権があると考えております。
○猪俣委員 今の御答弁でわかつたようなわからないようなのですが、大体におきまして政府においては、どんな事態の場合にこの國家非常事態と認定されるようになるかという、たとえばの具体的の何か話でも承りたいと思つておるのですが、これはいかがでしようか。
○樋貝國務大臣 たとえばと申しましても、例をあげるとその例がまた事実を生むというようなことからいたしまして、例は例によつてかえつて誤解されるようなおそれがありますから、たとえばということは差控えたいと思いますが、應援その他をもつてすでに足りないような状態に達しました場合には、客観的に見てそれが一般の世相を害するというような場合に立ち至りましたならば、宣言したいと思います。
○猪俣委員 しからば私の方から具体的にお問いいたしまするが、先般の平の騷擾事件のごときは、まつたく他の警察からの應援がなかつた。午後の三時ごろから十一時半ごろまでの間は、署長は一室で身動きのできないような状態にあつたのであります。そうしてまたその原因は、同じ近くの内郷町にも、あるいは福島にも郡山にもいろいろな事件があつたためというようなことになつておるのでありますが、ああいう一地方において他の警察からの救援ができない、それも時間の問題で、二日も三日もたてばできるが、一日くらいじやできないという平事件のような場合、またああいうことが各地に起つた場合に非常事態ということにお認めになるのであるか、その辺の御見解を承りたい。
○樋貝國務大臣 平の事件において、まつたく警察だけでどうにもならないというような時間は午後三時ごろから十一時ごろまでであつたと思いますが、その数時間のときも、すでに続々と國警の方の應援隊がはせ向つておる時期でありまして、ああいう事件がもう少し大きくなつて各地に起つた場合には非常事態を宣言いたしますけれども、あのごく限られた郡で、しかもこちらから援助が行つておるというような場合には非常事態宣言はいたしません。
○猪俣委員 そうすると平のような事件がもつと大がかりに起つた場合、こう承知してよろしゆうございますか。
○樋貝國務大臣 想像では困るのですが、事実起るならばまた考えるべきであると思います。しかし想像にはちよつとお答えができませんから、さよう御了承願いたいと思います。
○猪俣委員 それではその点はそのくらいにしておきます。 警察法の六十二條を見ますと、この非常事態の布告をするには國家公安委員会の勧告が要件になつておるようでありますが、國家公安委員会の認定と、総理大臣自体の認定が違つておるがために、この國家公安委員会が勧告をしない場合には布告はできるのであるかできないのであるか、これを承りたいと思います。
○樋貝國務大臣 総理大臣はその承認をいたしません。賢明なる國家公安委員であるならば、その事態を客観的に見て必ず勧告して参りましようし、またその間に意見がはぐれておるような場合には、それを幾らでも連絡して調整をすることができますから、從つてそういうことは実際問題としてはないと考えております。
○猪俣委員 実際に問題のあるなしの問題でないのでありまして、私は法律上の見解を承りたいと思うのでありますが、そうすればこう承つてよろしゆうございますか。國家公安委員会の勧告がない限り、いかに総理大臣が非常事態と認定いたしても布告はしない。第六十二條はそういうことに相なつておると了解してよろしゆうございますか。
○樋貝國務大臣 非常事態を宣言しようとはただいま考えておりません。
○猪俣委員 非常事態の布告が出ました際に、総理大臣の権限でありますが、これは警察法のいわゆる行政管理及び運営管理、両管理に及ぶものであるか、またいずれか一方のものであるか、その点を承りたい。
○樋貝國務大臣 警察法の六十三條にあるごとく、一時的ではあるけれども、全警察の統制が総理大臣によつて行われることになりますから、その及ぶ範囲は警察であろうけれども、全警察のいかなる部分にも及ぶものと考えております。
○猪俣委員 そうすると國家非常事態の布告のあります期間におきましては、総理大臣の権限において人事の異動もできるわけでありますか。
○樋貝國務大臣 必要があればそういたしますけれども、ただいまのところでは、まつたくそれは想像する以上には出ないと思います。
○猪俣委員 樋貝さんは想像とかなんとか言うけれども、私は法律の構成上聞いておるのであります。もし運営管理、行政管理が両方できるとするならば、そういう御見解があるのかないのかとさつき聞いたのであります。両方の権限だとするならば、法律上総理大臣が人事の異動もできるじやないかというふうに、お尋ねしている。法律上のあなたのため御意見を承りたい。
○樋貝國務大臣 だから六十三條の一時的に全警察に統制が行われるということを御了承願つたら、それでよろしいと思うのであります。
○猪俣委員 そうすれば全警察の統制でありまするから、人事の異動、配置、あらゆることができるというふうに了解いたしました。これはここで打ち切ります。 次に新聞の報ずるところによりますると、吉田総理大臣は國家非常時の際には消防団員を二百万動員するというようなことをおつしやつたというのでありますが、この法的根拠を明らかにしていただきたいのであります。
○樋貝國務大臣 これはたしか今單行法が出ているはずですが、警察のために必要なものならば、消防隊のみならず、他のものに対しても応援を求めることができるという規定があつたはずであります。その規定に從えば、応援を消防団員に求めること、もとよりさしつかえないと思います。私が自治体の方面等から聞きましたところによりますと、この間やりました協定で、消防隊が第一線に出ない、そうして留守居等の職につくという話合いをしたそうであります。総理大臣の談としてではないと思いますが、私の聞いたところでは、総理大臣が関与しないときにその話合いをしたということを聞いておりますが、その辺のことはよく存じません。
○猪俣委員 そうすると、今樋貝さんの御記憶では、あの二百万人の消防団員を動員するというようなことは、総理大臣がおつしやつたのではないということに相なりますが。
○樋貝國務大臣 私の知つておる範囲ではそうでないように思います。自治体から話をせられたところによりますと、自治体の方の消防の方面などとも相談いたしましたことは、消防団員は第一線に、すなわち警察の第一線に立つ権限は持つておらぬので、ただ助力を求められれば、警察官の補助でありましようか、そういうような立場に一般の規定によつて立つわけでありましよう。從つて警察の第一線になるような、警察官のするような仕事はしないと聞いておりました。そういう報告はありました。
○猪俣委員 消防組織法の第二十四條に、消防及び警察の協力のことが書いてある。この消防組織法の第二十四條を見ますと、これは原因が限られておるのでありまして、地震、台風、水火災、こういう非常事態に警察と消防が協力するということが書いてある。しかしいわゆる労働爭議その他のデモ、そういういわゆる騒擾事件が起つた際に協力するというようなことは、消防組織法の二十四條の精神からは現われておらぬと思うのでありまして、その意味においてお尋ねしたのでありますが、もちろん騒擾が起るというと、火や何かが出そうだということで、それによつて消防組織法の二十四條を発動するのだとおつしやれば、それも一理あると思います。ことに樋貝さんが、第一線には出ないというふうに聞いておるならば、それは消防組織法の精神からいつて、そうあるべきだと思うのでありますけれども、過般新聞の報道いたしましたるところの、吉田総理大臣の言明なりと称せられるものの中には、はなはだそれに対して私どもは違つた感じを受けるような、結局警察の予備隊、あるいは協力隊として全國の消防団員が一線に出るような印象を与えるふうな記事が見えましたために、今御質問したのであります。そうするとこの消防の協力といういとは、消防組織法の第二十四條に断つてありますごとく、いわゆる騒擾事件等に対して國家非常事態の布告された場合には、この消防組織法の二十四條はただちに発動するものじやないというふうに理解してよろしゆうございましようか。
○樋貝國務大臣 いろいろ誤解の点もあると考えますから、その條文の詳細にわたつては、國警長官からお答えいたした方がかえつておわかりが早いと思いますのでさよういたします。
○斎藤説明員 ただいまお尋ねの、消防団員二百万動員と称する総理の談話というお話に触れた御質問でありますが、私も総理はさようなことをおつしやつたことはないのではないかと考えております。これは新聞にさような記事が——さようと申しますのは、総理大臣の談話ということでなしに、消防二百万動員という見出しで書いた新聞があつたことは事実であります。これは非常に実情を誤つておりますので、われわれといたしましては、できるだけ正しい実情をお傳えしたいと思つておつたのであります。これは警察が騒擾その他天災地変等で、ある所に動員されて大部分が出かけて行くという場合が相当予想され得るのでありますが、かような場合に警察の手薄に乘じまして、たとえば窃盗でありますとか、あるいは放火でありますとか、そういうようなことが起つては困りますので、そういつた際の防犯的な仕事に消防の人たちが協力してもらうというのが趣旨であります。これはただいまお話の消防法の二十四條の第一項に基きまして、消防と警察は互いに協力をしなければならぬという規定があるのであります。ただいま猪俣委員のおつしやいますのは第二項だと考えるのでありますが、われわれは第二項の天災地変、水火災というような場合には、消防と警察は必ず一緒に仕事をしなければならぬのであります。この際の仕事の仕方、互いに協力の仕方を事前に協定をしておくことができるという規定を考えておるのであります。第一項の場合は、必ずしも同時に仕事をするという場合でありませんで、消防の見地から、また警察の見地から互いに協力を要するという場合は、自発的に協力し合うべしという規定だと解釈をしておるのであります。かような意味におきまして、先般の二百万動員と傳えられましたのは、警察が手薄であつて、いろいろな防犯的な措置その他に消防の協力を要する場合には、こういう範囲内で協力をし合うようにということを消防庁の方と話合いまして、こういう範囲内の協力ならば適当であろう。從つてこういう範囲内で地方それぞれ警察と消防と話合つて、そうして協力をし合うようにしたらよかろうという通牒を出したにすぎないのでありまして、騒擾の場合に消防団員を第一線に動員して、そうして一緒に第一線的な仕事に從事する、こういう趣旨、あるいはそういう指令ではないのであります。その点を御了解願います。
○猪俣委員 齋藤さんにいま一度お尋ねいたしますが、そうすると齋藤さんの御見解では、消防組織法第二十四條の第一項、いわゆる國民の生命身体及び財産の保護のためには、消防が警察に協力して第一線に出ても、法律違反というふうに思うておいでにならぬわけですね。
○斎藤説明員 警察官としての職権を行使しないというならば、私は法律違反にはならぬであろうと考えます。しかしながら適当か不適当かという問題があるだろうと存じます。從つて第一線で警察と一緒にやるということは、現在のところわれわれといたしましては消防庁との間では必ずしも適当ではない、こういうふうに考えております。
○猪俣委員 今國警本部から消防庁と連絡をとつていろいろのことおおきめになつて、あるいは相談になつてというお話がありましたが、消防の方面に対してはどういうふうな御通牒が出たのでありますか、ちよつと承りたい。
○斎藤説明員 先ほと申しましたように警察官がいろいろな緊急事態の場合に動員される、その場合にいろいろな防犯的な事柄について、消防は警察に協力をして仕事をする、一言で言いますとそういうようなことであります。
○猪俣委員 なおその際に齋藤さんにお尋ねしますが、この消防というのは、國家機関として消防及び自治体の機関としての消防と両方含むのですか。
○斎藤説明員 ただいま國家機関としての消防は御承知のようになくなつておりまして、全部自治体の消防になつております。
○猪俣委員 それでは樋貝さんにいま一点お伺いしておきたいのでありますが、自治体警察における警察関係の最終と申しますか、最高の責任者は何人であるか。國家警察における最終の責任者はだれであるか。このことは第五國会におきまして私が緊急質問いたしましたけれども、御答弁がなかつたと思うのでありますが、いま一応責任あるお答えをいただきたいのであります。
○樋貝國務大臣 自治体警察の場合におきましては、警察の方から見れば、その自治体にあるということになりましよう。しかしながらまた國家警察でいうならば、内閣総理大臣の管理のもとに國家公安委員会があり、國警長官、その他職員——國家の警察体があるわけですが、自治体におきましては、今の警察の方面から見ましたらそういうことになりますけれども、しかし治安維持の責任はどうしても内閣で負わなければならないと思いますから、今日のような、ややもすれば地方人が治安維持の点について疑惑を抱いておる、非常に不安を感じておるというような状態では、それがなくなることが私ども考えて行かなければならぬことであります。また現に考えておるわけであります。從つてその治安の責任という方から見れば、これは内閣が当然その責任を負うと考えております。それからまた國警においては、ただいま申し上げましたごとく、まかしてその仕事をやらせるというような状態になりますから、從つて政府としてはアドバイスの形をとることは一向さしつかえないと考えております。
○猪俣委員 私が質問申し上げましたのは、政治的意味よりも法律的意味でありますが、なるほど國内の治安維持という全体的な政治責任は内閣にありましようが、ある特定の自治体におきまするところの警察に対し、あるいはその運営の仕方、行政管理の仕方が不都合であるというようなことに対しましての最終の責任者は何人であるか、こういう意味で申し上げたのであります。そうすると横浜市ならば横浜市長ということに相なりますか。
○樋貝國務大臣 横浜市がそれを持つていることになり、それを横浜市を代表して市長が管理をして参るでしようが、しかしそのお説の本体はだれかということになれば、横浜市になります。
○猪俣委員 そうすると、いわゆる公安委員というものの自治体警察における責任はどういうことになりましようか。
○樋貝國務大臣 公安委員会はちようど相似形を求めると、國家公安委員会と同じような立場になるのでありますから、從つてそれを通じていろいろの仕事をいたしますから、それに対するアドバイスなどは一向さしつかえないと思います。
○猪俣委員 どうもわかつたようでわからぬのですが、ある自治体警察の運営行政についての最終の責任者は、その自治体の公安委員会ではないでしようか。あなたの御見解ではどうなんでしようか。
○樋貝國務大臣 私は公安委員が最終の責任者であると思つておりません。その場合横浜市の自治体が最終の責任者だと思う。言いかえれば、この警察を維持するのは自治体が維持しているので、決して公安委員会が維持しているのではない。それは公安委員の警察ではないからです。從つてその本体は自治体であると考えております。
○猪俣委員 そうすると、公安委員を選挙した自治体それ自身だということになるわけですね。 國家警察の場合はいかがでしようか。
○樋貝國務大臣 同樣に考えております。
○猪俣委員 これに対して斉藤さんの御意見はいかがでしようか。
○斎藤説明員 ただいま樋貝國務大臣のお答えになられましたのは、政治的な責任といつたような意味でお答えになつたと私は了承いたしております。法律的には公安委員が責任を負う。しかしそういう公安委員を選任するとか、あるいはもしその公安委員のやり方が妥当でなかつた場合に、それについて一般の市民あるいは選任した者というようなものが政治的な責任を負うという意味で、國務大臣はお答えになつたと考えております。
○猪俣委員 そうすると、政治的には別として、法律的には國家警察の最高責任者は第一次的に國家公安委員会であるというふうに承つてよろしゆうございましようか。
○斎藤説明員 法律的に見ますと、ただいまの法律は非常に不完全でありまして、警察法に明記をしておりますのは、國家公安委員会は行政管理について責任を負うということが規定されておるのであります。運営管理については、府縣の公安委員が責任を負うということになつております。自治体は行政、運営両方とも公安委員会が法律上では責任を負うことになつております。
○猪俣委員 そうすると、斉藤長官は、法律的には自治体においては自治体の公安委員会。國家警察においては法律的には國家公安委員会が、第一次的の責任者である、こういう答弁ですが、樋貝さんあなたの答弁と矛盾しませんかこれは一致しておりますか。
○樋貝國務大臣 斉藤君は言葉こそ違うけれども、同じことを言つているのじやないかと思います。私はすべての関係が警察だとは考えておりませんし、御質問のあることも当然だろうと思います。國家の仕事のうちの一部分が警察であろうと考えておりますから、警察法という目から見た場合と、全体から見た場合と違うだろうと思います。現に私たちも、たとえば予算の点につきましても、警察を代表していろいろのことを閣議でも申しておりますが、官制の上から言つたならば、默つていてもいいようなものでありますけれども、実際においてはそれらの点について打合せをやつて発言をしているようなわけで、その一部分である警察だけから見れば、そういうふうな解釈になりましようけれども、それを運用する上においては、法の許す最大限度において、それを今日の國家目的に合せるように運用して行きたいと考えております。從つてこれを狹く法律的に解釈するか、あるいは広目に見るかということによつてその見解が違つて参るのですが、何にしても、今日の時代が要求していることに適合するように解釈して行かなければ、ほんとうの解釈も得られぬのではなかろうかと考えております。
○猪俣委員 どうも頭が惡くて、何べんお伺いしてもはつきりしないのであります。私どもは斉藤長官の意見と同樣な意見を持つておるのであります。樋貝さんの御答弁は同じだとおつしやるけれども、はつきりしない。警察上の責任の第一次の責任者、あるいは最高の責任者は、警察という問題についてだけ特に考えた場合にはどういうものであるか。これは警察法の組立て及びマツカーサー司令官の警察問題につきましての覚書の精神——これは昨年の九月でしたか、長文のマツカーサー元帥の総理大臣あての書簡が出ておるがこれを通読いたしましたる感じから申しまして、どうも樋貝さんの御答弁ははつきりしないのであります。しかしこれはどうも禪問答のようになりますから、この程度で切り上げますが、なおこれに関連いたしまして、先般新聞の報ずるところによりますれば、ここにおられる國家警察本部長の斉藤長官に対して、内閣から罷免の問題が出ておつてということでありますが、これははたしてさようなことがあつたのか、ないのか、あつたとすればいかなる法の根拠からなされたものであるかということを明らかにしていただきたいと思います。
○樋貝國務大臣 その点いかにも御説のように、問題のありましたことは事実でありますが、総理大臣及び内閣方面においては、人事のことというよりも、むしろ現在の警察法に対するところの解釈がどうであろうか、今日のような治安状態では安心ができない。この状態では最後には内閣が責任を負わなければいけないのであるが、しかし現行法のままでは、広く解釈すれば政府のようになりましようし、狭く解釈すればただいま申した公安委員会の解釈のごとくにもなりますし、どちらかそれをはつきりした方がいいというのが内閣の考え方、從つてその結果がイエスかノーに出て來れば、それに対して國民の認識というものもはつきりして來るであらう。すなわち現在の警察法に対する認識もはつきりして來るであろうから、この法律がいいというのであるか、あるいは惡いというのであるか、あるいは欠点があるからこの点は直さなければならぬというようになるのかその点はどちらでもよろしい。結果はあまり論ずるところではない。だからその結果に從つて、場合によれば法律と直さなければならぬし、場合によれば解釈でそれも行けるし、その結果によつて行こうじやないかという考えが、当時の中心をなした考え方であります。その他の人事の点に関しては私もあまり関心を持つておりませんし、また当時いろいろの行き違いがありまして、声明書を発するとか、発せないとかいう話がありました、けれども、それらは第二義的なことで、深く論じなかつたところであります。
○猪俣委員 これは今樋貝さんは非常に簡單にお考えになつてえりますけれども、非常なシヨツクを世論に与えたのであります。昨年の九月十六日付のマ元帥の総理大臣あての書簡の全精神、これに則つて警察法はできた。そういう沿革から考えましても、あるいは警察法それ自体の法の成文解釈といたしましても、國家警察本部長官を内閣あるいは総理大臣がやめさせるとかいう発議をすることは、公安委員会を設けましたところの新しい警察法の根本的な精神を蹂躙するところの意図が含まれておるということになるので、これは相当重大問題であると私は思う。幸いにして内閣の方でどういうふうな妥協をなされたか、それを強行なさらなかつたことがこれはもつけの幸いであつたのでありますが、さように広く解釈すればできるのではないかとお考えになるところに、われわれは大いに疑義があるのであります。もしこれが総理大臣の権限において、公安委員会をそつちのけでこの人事行政がかつてにできるという解釈に相なりますれば、このマツカーサー司令官の書簡の全精神にも根本的に反しまするし、警察法の精神にも反することになる。それがまたこの警察の民主化という見地から組み立てられましたところの警察法のほんとうの根本精神を骨拔きにするようなことに相なるのでありまして、さようなことが強行されませんでしなから、これ以上は申し上げせんけれども、私どもはかようなことが発議されたそのこと自体に、この内閣の警察法の認識いかんを疑うものなんであります。それはそれでもう強行されなかつたのでありますから、私の質問もこれで打切りますが、なおこれは齋藤さんでも、あるいは樋貝さんでもよろしゆうございますが國家公安委員会と國会とはどういうふうな関係がありましようか、お漏らし願いたいと思います。
○樋貝國務大臣 御承知のごとくに、行政のことは公安委員会がやるのでございましようけれども、しかもなお公安委員の任命にあたりましては、國会の承認を求めるということになつておりまして、現にこの間も一人承認を求めたようなわけでありまして、任命にあたりましては、総理大臣が任命する場合に國会の承認を求める。その機会において國会が適当な人であるかどうかを判断するという関係になつておると思うのであります。適当な人を任命した以上は、別に國会としてかれこれ言わない、こういう態度に出ておるのではないかと思います。
○猪俣委員 この問題は、國家公安委員会が不都合な行為があつたような場合の責任追究の機関、また國家公安委員会が最高の統治機関としての國会に対して、どの程度の連絡あるいは了解的な義務があるのであるかというようなことにつきましては、なお將來の研究にまちたいと思いますから、樋貝さんにおかれましても、齋藤さんにおかれましても、御研究願つてまた後日御相談願いたいと思います。それはこの程度にとどめておきます。 次に今内閣におきまする警察関係につきましては樋貝さんがその衝にあたつておられるのでありますが、これは昔の内務大臣ならば法制的にはつきりしておるのでありますが、どういう根拠に基かれまして、この警察関係に対する当の責任者というような形に樋貝さんがおなりになつておられるのであるか、それを伺いたいと思います。
○樋貝國務大臣 私は内閣総理大臣の代理者というような立場におるわけで、同時に國務大臣であるから、内閣全体として答弁し、あるいは閣議に参与す。ることを妨げられないのであります。從つて当然便宜によつて警察の方を担当しております。そはから実際は、警察のことに関しては主として私が総理大臣の代理として仕事をしているような状態であります。
○猪俣委員 そうすると樋貝さんは一面総理大臣の代理という資格、なおまた一般國務大臣という資格において警察問題を担当しておられる、こういうことでございますね。
○樋貝國務大臣 そういうことであります。
○猪俣委員 それでは樋貝さんに対する私の質問はこれで終りますが、なお一点お聞きいたしたいのであります。現行警察法に対する改正の意思ありやいなや。もし現内閣において改正の意思ありとすれば、いかなる点であるか、もしお漏らし願えれば幸甚に存じます。
○樋貝國務大臣 事警察に関しますと、非常にデリケートな点がありますから、閣議においても、行く行くはもし惡いところがあるならば改正したいということで、そのようなことは自分にまかしてもらいたいというようなことを言つておるような状態であります。これはひとり内地の問題ばかりでなしに、外の関係もありますので、申し上げないことに今はしておりますので、どうかお含み願います。
○花村委員長 念のためこの際申し上げます。殖田法務總裁は所用のため出席できませんので、佐藤刑政長官がかわつて出席せられておりますから、殖田法務總裁に対する質疑は佐藤刑政長官にお願いいたしたいと存じます。
○猪俣委員 斉藤長官に対しまして、平事件の調査の結果にかんがみまして、一、二お尋ねしたいと思うのであります。平事件に対しましてわれわれが調査している際に現われました事実は、警察の專用電話が昨年春からなくなつて一本の行政庁に統一せられてから、どうも警察電話が傍受——他から聞かれる、漏れる、警察の秘密電話が他にみな漏れてしまうというようなことを聞いたのでありますが、かようなことが本部に報告になつておるかどうか、またこれは平地方に限らず、各地にあることであるかどうか、その点について承りたいと思います。
○斎藤説明員 警察の專用電話は、御承知のように逓信省にその維持補修、新設等が移管をされたのでありますが、その後警察電話がどうも盜み聞きをされるのではないかといううわさは方々から相当聞くのであります。しかしながら実際確証があるのかどうかということになりますと、今日までどうもまだ確証があがつておらないのでありまんが、私どもといたしましては、できるだけもしさようなうわさがあれば確証をつかみ、もしこれを盜み聞きするということであれば、犯罪になるわけでありますから、檢擧にまで進めたいというので努力をいたしておるのであります。今日までまだ確証をあげてないのは非常に残念に思つております。しかしながら電話を管理せられておる方におきましても、盜聽、傍受についてはずいぶん監視、監督を嚴重にせられておると聞いておるのであります。われわれはその傍受がはたしてどこでなされるのが、公衆電話に切りかえられたために傍受されるのか、あるいは電話の路線にひつかけて傍受をされるのか、話をしておるのを立き聞きされるのか、まだそこまで確証がつかめないのであります。はなはだ申訳なない次第でありますが、さような事情であります。
○猪俣委員 今警察法の改正問題は、樋貝さんが当分まあ答えられないような御答弁でありましたから、これは斉藤長官に質問することはむりかも存じませんが、われわれ平事件を調査いたしまして感じましたことは、いわゆるあの警察管区というものでありますが、たとえば平の警察署におきましては、茨城縣の水戸からの応援ならば三時間で応援が來るのに、福島からだと八時間かかるというのであります。ところがこれは管区が違うために手続が非常にめんどうで、なかなか水戸からの応援を頼むことができないということを警察署長自身がこぼしておつたのでありますが、一体こういう警察管区というものは、あなたの御経驗上存置する必要があるのであるか、ないのであるか、それをお尋ねしたいと思います。
○斎藤説明員 警察管区は私は、きわめて必要であると考えております。今後ともますます強化をし、その実をあげて行かなければならぬものだと、実際の面からは思つております。平の応援の場合のごとき例をあげられましたが、これはお説の通り、必ずしもあれは仙台管区であるから仙台から応援を出さなければならぬというわけのものではないのであります。現実に東京から応援を出して、仙台からの応援を帰したということもいたしておるのであります。だだ仙台管区は東北六縣の事柄をつかさどつておるわけでありますから、また東京は東京の方で責任を負つておりますので、一応は仙台管区は仙台で片をつけるというのが普通のやり方でありますが、特に急を要するという場合に、東京管区の方でさしつかえがないという場合は、東京管区から出すことも可能なのでありまして、しかもこれは手続は別にむずかしい問題ではありませんで、電話一本ですぐ実行されるということを御承知願いたいと思います。
○猪俣委員 なおこれは平事件の調査からわれわれが感じたことでありますが、これは檢察庁にお伺いしたいと思うのであります。どうも平の檢察庁の檢事の意見では、搜査の段階ではこれは警察がやるので、自分たちは手が出ない。ただあげて來たものを初めて自分たちが今度は起訴するかしないか関係するのだというような意向を漏らした。どうもこれは私どもはふに落ちない点なのでありますが、警察と檢察庁とではさような何か連絡に相なつておるのであるかどうか、お尋ねしたいと思います。
○斎藤説明員 一応私の方からお答えいたします。これは法律上は警察で独立の搜査の権限を持つておりますし、檢察庁は檢察庁でやはり独立の搜査の権能を持つておられるのであります。そうして警察が搜査をしたものについて公訴を支持するということは、これはもつぱら檢察庁の方の権能になつておるのであります。しかしながら実際問題といたしましては、両々互いに協力し、一緒になつてやる、こういう建前でいたしておるのであります。
○佐藤説明員 ただいまお尋ねの檢察官の搜査権と警察職員の搜査権との関係でございますが、これは法律において明らかにされておるように、お互いに協力関係にあるのであります。しかしながら警察官は、常に公安維持のために犯罪予防等の見地から搜査の任に当つておるのでありまして、そこに犯罪が生じますれば、まず第一に搜査に着手するのは警察官でありまして、警察官が一番早く犯罪の発生を知ることになるのであります。警察官がかように第一義的には犯罪搜査をいたしますけれども、檢察官の方で特に自分の方で搜査する必要があると思われた場合には、その次に檢察官が出て行くという、いわゆる第二義的な搜査権を行使する形になつておるのであります。しかしながら地方警察職員の犯罪搜査と申しましても、これは檢事が公訴を提起し公訴を支持するに必要な犯罪の搜査なのでありまするから、その意味において刑事訴訟法においても、檢察官が地方警察職員に対して、犯罪搜査に関して一般的な指示、指揮ができるという仕組みになつておるのであります。その範囲において地方警察職員と檢察官との犯罪搜査は、お互いに協力して円滑に搜査の運営をいたすということに相なつておるわけでありますから、檢察庁と警察庁との間に、事実上まず警察官が出て、そのあとで檢事が出て行くというようなことについて別に打合せというようなことはいたしておりません。
○猪俣委員 この点はまたあとでお尋ねいたすことにいたしまして、斉藤長官に対しまして、これはしろうと質問になるかしれませんが、警視庁は國家地方警察なんでありますか、自治体警察なんでありますか。
○斎藤説明員 警視庁は完全な自治体警察であります。
○猪俣委員 そうすると東京には國家地方警察というものがあるのですが、ないのですか。
○斎藤説明員 東京都國家地方警察というのがございまして、これは東京都内の自治体警察以外の部分を管轄いたしておるのであります。そして東京都内の自治体警察から応援の要請があつた場合には、東京都の國家地方警察が出て行つて応援をする。こういう建前になつております。
○猪俣委員 警察法を見ると、自治体警察から國家地方警察に応援を求めることは書いてあるのですが、國家地方警察が自治体警察に応援を求めるというようなことは、警察法にはつきり出ておらないと思うのでありますが、この点に対してどういう御見解でありますか。
○斎藤説明員 法律は今おあげになつた通りであります。実際問題として警察は國警と自治体、また自治体相互の間には互いに協力をするということになつておりますので、必要な場合には事実問題として応援を互いにし合つておるのが現状であります。
○猪俣委員 斉藤長官に対します質問はこれで打切ることにいたします。 次に法務庁刑政長官にお尋ねいたします。きようは法務總裁は御出席ないのでありますが……。
○角田委員 その前にちよつと平事件について……。これは樋貝國務大臣、あるいは斉藤長官どちらからでもけつこうでありますが、お尋ねを申し上げたい点は、平の自治警察の不法占據事件がありました際に、國家警察の方から何らの応援に参られた事実がなかつたのでありますか、その点をお伺いいたします。
○斎藤説明員 応援の要請がありましたので、國家警察から自治体警察の方に相当数応援に参つたのであります。不法占據のあつた場合に、応援の要請があつたかどうかというお尋ねだと思いますが……。
○角田委員 國家警察が応援に行つたのは、大分遅かつたはずだと思つておりますが、なお占據されたときからどの程度の時間のときにおいて國家警察の応援があつたか、その実を明らかにしていただきたい。
○斎藤説明員 私の聞いておりますところでは、当日の午後平の國家警察いわゆる地区警察の署長が絶えず平の自治警察の署長と連絡をとつておつたようであります。しかしながら当時の状況は、平の地区警察から自治体警察に応援に参るということは、平の地区警察自身の警備の関係からしてもおもしろくないという状況があり、かつまた自治体警察の署長が占據にまでは至らないであろうというような予想と、両方相まちまして、正式に応援要請は当初の間はなかつたように聞いております。しかしながら事態は急迫を告げて、応援の要請がありましたので、福島の縣本部の指令によりまして、周囲の自治体警察より相防衞の関係から出しますし、また國家警察は警察隊長の命令で出かけますし、さらにその他の方面からも応援に参つた、こういう事情であります。
○角田委員 その点非常に疑問にしておつたのでありますが、何でも平の自治警察の方に占拠があつた。ところが地区警察署の方へは一向なかつた。そういういろいろな事情があつたかもわかりせんが、そのことをもう少し詳くどうして一体こちらの方に応援したり何かすることを考えられなかつたかそうしてまた一方地区警察の方まで占拠されるような危險もあつたのか、問題は單にある一部の団体と自治警察だけの関係なのであつて、決して國家警察関係には占拠されるような危險はなかつた。こういうふうにわれわれは考えておるのであります。この点もう少しはつきりしていただきたいと思う。
○斎藤説明員 当時の情勢は、福島縣内の会津、若松とかあるいは福島市内でありますとか、あるいは郡山でありますとか、平市内はもちろん、あの附近の内郷及び湯本の地方に相当騒然たる状態がありまして、平の自治体署長としてはできるだけ事を円滿に解決いたしたいという希望をもつて折衝を進めていた模樣であります。平の自治警察といたしましては、これは輕々にやつて参ると、自治警察自身が襲われるおそれがあるということを平の署長も考えまた平の自治体署長も、そのことを念頭に入れておつたはずであります。
○角田委員 次にお尋ねをいたしたいのは、平警察の占拠事件についての、その後の捜査の状態をお話できる程度においてこの際承つておきたい。
○斎藤説明員 その後の捜査の状況は大分進捗をいたしておりまして、今日まで逮捕状の出ました者が九十四名であり、うち逮捕が六十四名、未逮捕が三十名ということになつております。
○角田委員 その次に大体樋貝國務大臣と斉藤長官にお聞きします。下山事件と三鷹事件の捜査の段階等をこの際承つておきたい。
○樋貝國務大臣 私から申し上げますのは、ああいうような事件一つ一つを見ましても、むしろああいう事件が次から次へと起つて來るという状態に対して、言いかえれば治安に与えますところの不安ということに対して、政府はいかなることを考えるべきかということがおもなことでありまして、今の御質問が事件の内容でございましたら、國警長官からお答え申し上げます。
○斎藤説明員 下山事件は警視庁がもつぱら檢察庁と協力してやつております。三鷹事件の方は応援の要請を受けまして、國警が主になりまして、自治体警察と檢察庁と一緒になつてやつております。いずれも捜査の途中でありますので、捜査本部から発表いたしました以外はちよつと申し上げることを差控えさせていただきます。
○角田委員 この際樋貝國務大臣、斉藤長官、あるいは佐藤刑政長官にお尋ねを申し上げたいのでありますが、御承知のごとく新刑事訴訟法は拷問を許しておりません。また自白も証拠とすることができないのであります。そういう訴訟法上におきましては、捜査はすべて科学的でなければならないのでありますが、まず國家警察として犯罪科学の捜査機関として現在どういうものがあるのであるか、そうしてその予算等は大体どういう程度のものであるか、また法務庁において犯罪の科学捜査としての調査機関、あるいは研究所についてどれだけの設備がありますか、この際承りたいのであります。
○斎藤説明員 捜査の科学化と申しますことは、いわゆる理化学的あるいは化学的に行うということももちろん必要でありますが、それ以外のいろいろな聞き込みであるとか、あるいは今までやつておりました捜査方法、これを理論的に、そして科学的にやるということが必要なのでありまして、さような意味で申しますならば、先に申しましたいわゆる理化学的な捜査の機関というものにつきましては、私の方は科学捜査研究所を中央に設けておりますし、各府縣本部にはやはりこういつた科学的な設備を若干持つているのであります。このほかに指紋というようなものもこの中に含まれるものであろうと思いますが、そういつた設備は新しい警察法とともに、相当の予算をもちまして出発いたしているのでありますけれども、お説のように、今日の國庫の状況から、いまだ十分とは言えないのが残念だと考えております。また現実にそういつた理化学的な費用をあげなくても、いわゆる捜査の方法を科学的に行うということにつきましては、これは極力教養、訓練等によつて進めているのであります。從前より相当進歩をいたしていると考えるのであります。しかしまだ今日これをもつて十分とは言えないと思いますが、われわれは全力をこれに注いでいるような次第であります。
○佐藤説明員 抑せのように犯罪を科学的に捜査しなければならぬということは、新憲法並びに新刑事訴訟法の規定によつて明らかなところであります。その点については法務府といたしましても相当な設備をして、この研究にあたりたいという氣持ではおりますが、目下の財政状態においては、とうてい法務府にさような施設を設けることができない状態にあるのであります。実は憲法並びに刑事訴訟法の改正せられる前以に、すでに司法省時代に、今後の裁判並びに檢察は從來のような自白偏重を排して、自白によらずして犯人を確定し、犯罪事実を立証するためには、どうしても犯罪に関連する事実を科学的に究明し、その得た結果を捜査並びに裁判に利用しなければ円滑な檢察の運営を期待することはできない、こういう考えのもとに犯罪科学研究所を司法省に設置しようと企てまして大藏省と予算折衝を始めて、昭和二十一年度の予算として総計四十三万円ばかりの計上を見るに至つたのでありますが、かような予算額をもつてはとうてい所期の目的を達することができませんので、その後予算増額を計画いたしたのであります。ところがその後総司令部にこの犯罪科学研究所の設置について協力を求めましたところ、意外にも、さような施設を司法省に設けるということに反対されましたので、この計画は頓挫いたして、その後訴訟法が改正せられ、また警察法が改正せられて、現在はただいま國警長官から述べられましたように、警察の側に、さような犯罪科学の研究施設を設けらるることになりましたので、檢察庁方面、法務庁側に対してかような施設を設けるということがいまだ進められておらない状態であります。
○角田委員 私ははなはだただいまの佐藤長官のお答えを遺憾とするのでありますが、すでに自白というものが証拠にならぬという段階におきまして、今たとえば被告人が供述しておること自体が眞実を供述しておるのか虚偽であるかということまでが、あるいは心理学的な方面、その他の方面から科学的にそれが認定されるという高い程度にまで至らなければならないと考えているのであります。ところが今日法務庁におきまして何らの設備研究というものがないのは、まことに遺憾とするものであります。そこでこれは法務総裁がおいでになれば法務総裁の御意見をお尋ねしたいのでありますが、樋貝國務大臣にお尋ねをしておきたいと思います。ただいまのような状態でありますると、犯罪の捜査というものについての第六感的なものが科学的なものと結んで、捜査ができるというようなこともあるのでありますが、現在においては三鷹事件についても下山事件についても、すでに——三鷹事件についてはそうは言えないかもしれませんが、下山事件のごときはまさに迷宮に入つてしまつたという観があるのであります。ただひとり犯罪科学捜査の研究だけで事足りるものではありませんけれども、ともかくそういう設備が必要だと考えるのでありますが、この点について國務大臣としての樋貝國務大臣はどうお考えになつておるのか。この点についての御構想をこの機会に承つておきたいのであります。
○樋貝國務大臣 今角田委員からお尋ねいただきましたもつと科学的に捜査を進めろというお話、まことに私も同感であります。現在において科学的に捜査をしておるということを申し上げたいのだけれども、実はそうした部面もあるけれども、きわめて幼稚であるという点において遺憾に存じておるわけであります。今回ちようど予算も非常に緊縮せられました。けれどもそういう方面に関して予算を要求したいというようなわけで、しばしば折衝いたしたようなわけであります。また國家の行政整理におきましても、その方面の鑑識、通信等におきましては、一人も人を減さなかつたというようなのも、その現れの一端であると思うのでありますが、私は全体を通じまして、あるいは警察において、あるいは法務方面において、そういうお説のような方面にますます急速な発展を遂げることを願つておるような次第であります。その方面に予算その他の点について十分努力したいと考えております。
○角田委員 去る國会におきまして、これは科学研究費という項目で、文部省で四十五億を要求しておつたのであります。そのうち認められましたのは四億五千万となつておるのであります。あの科学研究費という項目のうちから、警察関係の捜査の科学研究費について樋貝國務大臣は何かお考そがなかつたかどうか、この機会において伺つておきたいと思うのであります。
○樋貝國務大臣 文部省がとつておつたのは非常に少かつたという話でありますが、何分にも今年の予算に関しましては、皆樣もすでに御承知でありましようが、初めに内閣で考えておりました予算よりよほど違つたものが現われ來た。結局御審議を願つたのと最初に考えておつたのとはよほど開きがあつたような状態でありますので、今の費用等につきましても、初めに要求したものから見て、非常に少かつたようなことがあつたかもしれないと思いますが、全体において予算がノーマルな状態になつたらば、こうして進んでほしい。たとえば税を切り下げてほしいとか、あるいは公共事業費をふやしたいとか、あるいは一般に申せば、國民がもつと産業へ早く立ち上れるようなすべての方法をとりたいというような考えでただいまも進んでおりますけれども、この春の予算のときにも、そういうことを土台に申しまして、しばしばその点について努力を拂いましたのは事実であります。たまたまただいまお示しになりましたところの事例はよく存じておりませんけれども、かの六三制にいたしましても、警察の中央負担にいたしましても、これらに対して何とか方法があるだろう、研究の方法もあるだろうとも考えておりますので、その方面に進んで行きたいとただいま考えておる次第であります。
○角田委員 予算のこまかい問題を出してお尋ねすることは、恐縮に存じまするから打切りたいと思いますが、この際樋貝國務大臣に承つておきたいことは、國民指紋法というようなものをつくつて、家庭の國民全体に対して指紋をとる。そうして犯罪捜査、あるいは犯罪防止の用に供する必要があると考えるのでありますが、こういうことについて樋貝國務大臣は何かお考えがありますか、お答えを願いたい。
○樋貝國務大臣 これもすべて予算の点で、むしろ予算が許されるならばお説のように行きたい、すべての國民から指紋をとれるものならばとつてみたい、そういうことも法律が通ればできることであります。しかし指紋のとり方といたしましても、ただいまのような片手について指紋をとるというようなとり方でなしに、一本々々ですぐ索引ができるというようなとり方もありまするし、現在におけるところの指紋だけでも、これを指一本ずつですぐにそれからひつぱり出せるように組みかえたのでは、たくさん費用もいりますようなわけで、いろいろの方面に國費を使わなければならぬ今日、言いかえれば短かいところのたすきを長いものに使わなければならぬという今日の状態であるために、つい当面の忙しい方面にこれを使いましたようなわけでありますけれども、だんだんと余裕も生じて來ることと考えております。また現在の見通しもそんなようでありますから、いろいろ余裕ができましたら、ただいまお話のようなことは第一着にやりたいと考えております。
○角田委員 ただいま樋貝國務大臣は多額の費用がかかるということをおつしやつたのであります。國民全般から指紋をとりましても、索引等はきわめて科学的にぞうさなく編集することができるようになつておりますので、これはそう多く心配はないと思うのであますが、國民指紋法を実施して國民全体の指紋をとつておきますると、犯罪の捜査の場合にはきわめて迅速に、きわめて正確に捜査ができると思うのであります。しかしそれは費用がたいへんかかつて困難だとおつしやるのでありますが、一体どのくらいかかるとお考えになつておるのでありますか、この点承りたいと思います。
○斎藤説明員 私は確かな数字は記憶はいたしませんが、相当莫大な費用がいると考えております。最初全部の國民についてとることになりますると、指紋原紙だけでも非常なものがいる。これを整理する職員も必要だし、あとは生れて來る子供に対して指紋をとることだけでありますから、大したことありませんが、私は二百億以上いるだろうと考えております。
○佐瀬委員 今までの関連事項で、二、三点樋貝國務相と斉藤國警本部長官にお尋ねしたい。警察の人事と運営に対する行政上の責任者、特に國会に対する政治上の責任者はだれであるかということを明確にしておきたいと思います。これに対する御見解を承りたい。
○樋貝國務大臣 ただいまも申し上げたのですが、現在の警察は戰爭のあとを受けまして非常にかわつております。ちようど昨年の三月から現在の警察制度がしかれたわけでありますが、これによると大体警察が二つにわかれまして、主要な都市でありますものは、各一つ一つの細分化したる独立の自治体警察になります。それから地方の警察及び請求がありました場合において官庁等の警察が、これが國家警察になる。國家警察の分だけは内閣総理大臣の所轄のもとにある、こういう建前になつております。從つてもし法律上の議論をするならば、自治体警察に対しては、政府は非常事態にならない限りはこれに関与すべからず、大体まかしておけという考え方、それから國家警察に対しましては、こまかいことは口を出すな、非常事態というような大きくなつた場合には総理大臣が乘り出すということになつております。從つて平常においては、今申し上げましたような責任は内閣でとらねばならないということになつてありますけれども、しかしこまかい事柄に対して関与すべからずということになつておりますから、私どもも関与しておりません。ただ人民たる資格において、お互いに話したり話されたりするような状態であります。御承知のごとくに独立の警察ができましようけれども、政府がたとえば行政整理をやる、ひどい行政整理をやるとするならば、必ず失職者も余分に起りますし、勢い警察の方も余分にいろいろと考慮しなければなりません。これを全然しないということになれば、行政整理から來るところの警察の事項というものは、全部ないということになります。從つて警察の方面でも、政府がどういうことをするかということはある程度警察が知る必要もあり、また警察がどういう仕事をするかということも、結局政府において責任を負わなければならぬ結果になりますので、有機的にそれらがつながつておる形で、從つて今日政府において無関心の状態にはむろんおらず、また同時にいろいろの事情も聞き、教えて話をする。お互いにそういうことをやつている状態で、有機的に結びついておりますけれども、さような状態が今の状態であります。これに対してどういうふうにした方がよいかということは、いろいろ意見は聞いておりますけれども、しかし現在はさような状態になつております。
○佐瀬委員 司法権の独立というものとは、警察権の独立は性格上非常に違いがあるように思うのです。行政権の一部である警察権全体として内閣にそれが帰属しておることを、憲法は明確にしておる。從つて自治警察についてはただいまお答えのように、あるいは非常事態の宣告ということを契機としてさようなことになるのかもしれませんが、全面的に憲法上は内閣総理大臣が國会に対して警察に関する責任を負うということにならざるを得ないと思うのであります。從つてそこに責任を果すからには、前提として警察に対する人事、あるいは警察の運営について、まつたく司法権の独立というような意味において警察権に関与しないということは、憲法の予定するところではない。私は責任政治の原則から見てさように考えます。もしそれに反する警察法であるならば、警察法それ自体が憲法に即していないと断言してはばからないと考えるのであります。先ほど樋貝國務相は、警察法の改正について内容は言えないというような御答弁でありましたが、さような点において、根本的に私は警察法を見直す必要があるのではないかと思うのでありますが、その点について今一度樋貝國務相の御意見を承つておきたい。
○樋貝國務大臣 ただいま佐瀬委員のおつしやつた通り、最後に至りまして内閣が治安の責任を負わなければならぬことは疑いないので、同樣に國会に対しても責任を負わなければならぬことは疑いないと思います。從つて政府がこれに関心を持たないということはどうしてもできないわけで、人事におきましても、あるいは平素におきましても十分な関心をこれに持つておるために、從つて緊急事態に対しては、十分関心がある。何にいたしましても、敗戰の早々にでき上りましたので、至るところに長所もあるけれども、欠けた点もあるというような状態でありましたために、それらの点について考慮し、研究いたしておるような状態であります。現在のを道義的に解釈するならばどうか、政治的に解釈するならばどうかということで、非常にその見解のわかれる点は、將來はそういう問題の起らないように考えて進んでおるような次第であります。
○佐瀬委員 以上の点について國警本部長官として関係事項の御意見を承つておきたいと思います。
○斎藤説明員 ただいまの御意見は政府の政治的な責任についてのお尋ねかと思いますので、私から申し上げることはございません。
○佐瀬委員 犯罪の捜査について、先ほど下山事件以下具体的な事例について角田委員からも質問がありましたが、私はこの際問題の社会不安に備えて、警察が全体的にいかなる治安対策をもつて臨まんとしておるか、また非常宣言その他についての具体的な施策がどう運んでおるかというような点について、この際樋貝國務相の説明を承つておきたいと思う。
○樋貝國務大臣 中央におきましては、この間ちようど事件の上向きになつておる時代は、毎日のごとくに治安閣僚会議を開きました。それは新聞紙上で御承知の通りだと思います。同時に國警長官、警視総監、あるいは檢事総長、そのほか関係官に集まつていたがきまして、そうしてときどきの報告を受け、ときどきの手配を中央で出したことは事実であります。のみならず各地方におきましても、あるいは國警長官を通じ、あるいは各國警方面から、自治体の方に通知をいたしまして、互いに連絡をとつておるというようなことは事実であります。また法務庁の方においても、こんなことが起つたならばというわけで連絡をとつておるのも御承知の通りであります。從つて今日のように事件の瀕発しております時におきましてはことにそうでありますが、それらについて連絡を十分にとるということをいたしております。進駐軍がいないとか、あるいは警察力が少いというところを見はからつていろいろな事件などを起したような例もありますけれども、今日におきまして話題に上りますことは、多くはそういうような例であつたと思いますけれども、それもだんだん少くなつて参つたのも事実であります。なお將來起るべきところのいろいろな不安に対しましても、与えられる現在の状態をもつてして、十分にそれを対応できるだけの手はずは整えてあるつもりであります。あるいは申し上げることはできませんけれども、現在与えられている状態において過分と思われるくらいな手配をまわして、これで大体治安の心配はないというところまで参つておるように考えます。
○佐瀬委員 先ほども問題になつたようですが、消防団体二百万の動員によつて備えるというようなことであつたのでは、私どもまことに不安を感ぜざるを得ないのでありまして、政府もその点に十分思いをいたされて、徹底的な対策を講ぜられんことをこの際希望しておきます。 それから次に私は犯罪の捜査の段階において、警察と檢察当局が、それぞれの立場から捜査の衝にあたられるという現在の新刑事訴訟法上の欠陷というものが、相当あるのではないかと考えるのであります。先ほどの佐藤刑政長官のお話では、適当に檢察当局から警察に対して指示を与えて協力しておるからということでありましたけれども、これは旧刑事訴訟法に比べると、捜査が一本建になつて、一元化されて有機的に活動するということに比べてみると、きわめて迅速、的確を要する捜査権の発動が現行法規のもとにおいては鈍らざるを得ないというふうに思うのであります。そういう観点に立つて、たとえば先日の下山事件などを観察してみますと、警察当局は、全体ではないようでありますが、一部は自殺説を唱えておる。もつともこれは新聞の報道でありますから的確かどうかは知りませんが、とにかくさようになつておる。檢察当局は堀檢事正談をもつて、裁判科学に立脚してこれは他殺であることは疑いをいれないというふうに言つておる。かように捜査の衝にあたつておるそれぞれの警察及び檢索当局が、かくのごとくその見解を異にした場合に、一体だれが責任をもつて捜査の衝にあたるのか、あるいはそれが打切られるような懸念もないのではないかというようなことを、國民は疑惑を持つて臨まざるを得ないものがそこに含まれておると思うのであります。一体かような場合に、現在警察あるいは檢察当局はどういう方針のもとに局面を打開するか、その方針について私はこの機会に國警本部長官及び佐藤刑政長官から伺つておきたいと思います。
○佐藤説明員 下山事件につきまして、新聞の報ずるところによりましては、捜査当局において一部自殺説をとつて捜査を進めているのではないかという疑いを持つて読ませられるのでありますが、私の聞くところによりますれば、警察の方面においても、また檢察当局においても、この犯罪捜査については、どこまでも科学的な根拠を元にしてその眞実発見に努めているのでありまして、その捜査の途中において、あるいは自殺と思われるような根拠なり、あるいは風説がありますればその方面も調べる。また他殺の疑いを起すような風説なり、事実がつかまれた場合にはその方面も調べるというぐあいに、いろいろ各方面にわたつて調べは進んでいるのであります。要するに眞実を発見しようという建前において、犯罪の疑いある事実を捜査しているのであります。その間警察当局と檢察当局との間に、捜査方針について意見の相違があるとは聞いておらないのであります。どこまでも緊密な連絡のもとに、協力態勢で捜査を進めているように私は確信いたしているのであります。今後あらゆる犯罪捜査につきましても、警察と檢察は常に緊密な連絡をもつて協力して、捜査を進めて行かなければならぬと考えているのであります。
○斎藤説明員 私もただいまの佐藤刑政長官とまつたく同意見であります。
○佐瀬委員 これまで幾つかのケースを通じて見、また將來起り得べき事態を考えるとき、私どもはこの短かい経驗からしても警察法なり、あるいは新刑事訴訟法なりに相当不備欠陷があることを確認せざるを得ないのであります。これに対して政府当局はどういう御感想を持つておられるか、われわれは法務委員としてこの際その辺を的確に把握しておきたいと思います。その点に関する御意見を承つておきたいと思います。
○樋貝國務大臣 現在の警察法及び訴訟法等につきましては、大いにわれわれを考えさせるものがあります。終戰後、從來の日本の勢力と別の勢力との相拮抗している時代につくられたものは、必ずしも今日の時代に合わないということをよく考えておりますし、從つて今おあげになりました警察法及び刑事訴訟法につきまして、今日のゆえをもつて見直さなければならないところも多々あるのではないかと考えている次第であります。現在そういうことが見当つているのも事実であります。從つてこれらについて、近い機会でありますけれども、われわれに機会が与えられますならば、その時期において皆樣の御判断を願いたいと思います。
○上村委員 一、二の点について斉藤長官にお尋ねしておきます。平事件で國警からどのくらいの人数が、いつごろ応援に派遣されましたか。
○斎藤説明員 六月三十日の夕刻に管区本部から百名応援を送りました。あとは縣内の國警及び自治体の相互間で四百名ほど応援をしたと私は記憶いたしております。
○上村委員 樋貝國務大臣にちよつとお尋ねしたいのですが、今警察力などの問題に対して、あるいは見方によつては警察力が足りないというふうな見方をする人もありますが、私どもはむしろその逆のことをしばしば体驗しておるのです。たとえば東京の保安條例のときの警官の動員の数、あるいは広島の日鋼事件のときの警官の動員の数、こういうことを考えてみますと、ものは見方によりまして、これが少いと言えば少いのですが、條例反対のデモのためにあれだけの警官の数が必要であつたかどうかということ。それから日鋼事件は一つの爭議です。これに対してあれだけの警官を動員されておる。私の郷里は新潟縣でありますが、加茂東芝という会社の假処分の事件で、これはいわば民事のくずれにすぎないのですが、その仮処分を執行するにつきまして、何ら労働者の方で騒ぎもしないうちから三百名以上の警官が動員されておる。さうして警察官は皆同じ形をとりまして、労働者を逮捕監禁するのについて相当の暴力を用いておる。こういうことは方々の自治体の警察にあるわけです。こういうことについて一体元締めの方ではどういうふうな報告を実際に受けておるか。そしてそれに対する警察の運営についてどういう方針を持つておるかということをお伺いしておきたいと思います。
○樋貝國務大臣 後段の部分につきましては、今申し述べておいたように、自治体に対しては非常事態の宣言でもいたさぬと、まともからは何とも言えない、それを通してその方でいたしませんことには、まともには何とも言えないのです。あとは忠告を与えておくという程度にしか仕方がないのが現状であります。また國警につきましてはその程度は少し強いでしようが、同じような関係になつておるのが現在の法律上の事実であります。從つて政府としては、これらのこまかいことには干渉いたさぬということですが、現在の情勢から判断いたしまして、警察官がたくさんの威を使つてそのときに逆に出るということは通常ないわけであります。從つて通知を受けたり、あるいはその必要を認めたりして出ましたようなわけで、なるべくは出たくないというのが事実です。出るにしても自動車が一台しかなかつたり、それまで約束していた自動車が出てくれなかつたりして、費用もかかり、出動するさへむずかしいというような現状であります。そういうような状態で、何を苦んで何でもないところに出て乱暴を行う考えがありましようか。また今日の警察官に対しては、絶えず人権蹂躙をしないようにということを申しているわけでありまして、むしろ小さい自治体などは、今日においては微力であるということさへ批判されているわけで、決してやり過ぎているということで非難がないというのが事実であります。そういう小さい自治体につきましては、あるいは財政上縮んでおる、あるいは力が足らないということで、たくさんの非難は受けておりますものの、ただいま申しましたように、微に入り細にわたつて私の方からいろいろ指令することができないのみならず、監督することもできないような状態になつておるので、これを皆樣のお力によつて、正しきものは正しきものとして活用できるようにしていただけば、從つて今日の警察もその点助かるのではないかと思います。
○上村委員 その点上の方で監督者が見たようなわけではないのです。下の現場に当つている警察官の特に労働関係の取締りだとか、あるいは労働運動のデモなどに対する態度について、あなた方は少しその実際を見てほしいと思うのですが、まつたく狂暴そのものの状態である。応援とか取締とか、そんなものはいらないのに必要以上に動員して來る。そして結局は彈圧するのです。この点については樋貝國務大臣の御注意を喫起したいのであります。
○梨木委員 樋貝國務大臣に伺いたいのでありますが、過般斉藤國警本部長官の被免問題が起りました際に、増田官房長官の談として傳えられたところによりますと、警察に関しては内閣総理大臣が最後の責任を持つておる。從つて人事権についても最高の責任者であるということから、あたかも公安委員会を無視して——無視しないまでも軽視いたしまして、國警本部長官を被免できるかのごとき言説を弄しているのを新聞で見たのでありますが、この点についての樋貝國務大臣の見解を伺いたいと思います。
○樋貝國務大臣 新聞にはずいぶん私などが言わないことを言つたというふうに出たりすることがあります。すべての新聞というわけではありませんが、夕刊新聞などでそういうことを書いたりしたのがありまして、想像して書いたのなら想像して書いたというように書いてくれと私は申すのですが、当時新聞にどういうように出ておつたか覚えておりませんが、しかし狹く解釈するか、大きく解釈するかということによりまして、内閣の考えましたことでは、治安の責任を持つのが内閣であるから、從つてその点は十分連絡しなければ困るというのが本旨であつたのであります。從つて内閣が考えます事柄とそれ以上のことは実はどつちでもいいという腹で、それからまた人事などに関しては、あまり深入りするつもりはむろんなかつたことと考えております。また事務の方から、警察方面から考えれば、これを狹く解釈するような結果について、國民の今の状態ではとても不安にたえないというようなあの國民の状態を、この上に反映してくれればよろしい。それがはつきりわかればいいということだけで、現に今ごらんの通りに、その後総理大臣の考えていることを実現しようと試みてもいないし、何もしないであのまま知らぬ顏をしているような状態で、これは内閣がいけないといえばいけないことでありましようけれども、しかしながらそのことを、両方から深く言わないことにひとつお考えを願いたいと思います。もし内閣の考えている通りでなければ絶対にいけない、自分の考えている通りでなければ絶対にいけないというのであれば、いつまでも爭つていることでしようけれども、そんなことはない。今日の状態を見ても明らかなごとく、それにとらわれていないということだけを御了承願いたいと思います。
○梨木委員 これは私たちから見ると、非常に重要問題だと思つて、おるのでありまして、さらに技術関係について伺いたいのでありますが、当時吉田内閣総理大臣は、この國警斉藤本部長官にやめてくれということを要求した事実があるのですか、ないのですか、この点をまず聞きたい。
○樋貝國務大臣 私の知つておる範囲では、斉藤君にそういうことを言つたことはないと思います。私の知つている範囲ではそうであります。
○梨木委員 直接言つたことがないといたしましても、間接的にでも人を通じて言つた事実があるのでしようか。
○樋貝國務大臣 その辺は私の関係したことでありませんから、間接的に何を話されたかということは存じないのであります。
○梨木委員 それでは内閣といたしまして、現在國警長官は公安委員会が任命するものである。從つて内閣といたしましては、この國警本部長官の人事には法律的に関与すべきものでない。そう現在考えておるのかどうか。
○花村委員長 梨木君にちよつと御注意申し上げますが、ただいまの問題については、猪俣浩三君が非常に詳しく御質問なさつておりまするので、從つて速記録をごらんになつた上で、機会を見てまた御質問を願いたいと思いますが、しいて本日あなたが答弁を求められるとするならば、時間もありませんから、なるべく簡單にお願いをいたしておきます。
○梨木委員 つまり現在内閣といたしましては、この國警本部長官の人事に関しては、法律的に関与すべきものでない。また関与すべき権限がないというように現在考えておるかどうか、こういう点です。
○樋貝國務大臣 先ほども申し上げたごとく、これは言葉をかえて申せば、國民の代表である皆さんの御判断にまつ。しかしながらその方面からもし事務的に解釈したのが正しいとするならば、非常事態が発生しましても、そのときにぽいと勧告されたり、また非常事態を宣言したというようなことでは、何にも手に持たないということで、非常事態の宣言をしようもないし、また治安維持の責任というものも内閣が負わなければならぬのに、何も知らなんだ。それからまた内閣が出した政策も、事務当局の方で全然知らなんだではうまく行くものではない。そんな無責任なことでできるものではないのですから、そういうような必要程度において、お互いにそのことを表明して、お互いに連絡をとつてやらなければならない。第一段において公安委員にまかしておいても、そういう点については十分アドバイスはできるのではないかということで、そのことについては御判断を國民にまちたい。そうしてもし警察の方がそのことを是認するならば、改正の機会もあるでしようというのが今日の考えの全部であります。從つてそれらのことについては、人事等に決して深入りしないということを考えている次第であります。
○梨木委員 とにかく警察法によれば、國家警察本部長官の人事権は、はつきりと公案委員会が持つておると書いてある。だから内閣が少くとも法律を嚴正に、額面通りに実行して行くということになれば、これは内閣総理大臣といえども法律に從つて行かなければならぬのだから、法律に從えば、國家公安委員が人事権を持つておる。だからこれを広く解釈するか、狭く解釈するか、そういう問題ではなくて、これは明確に規定してある。だからこの点については、少くとも内閣といたしましては、現在新聞に報道せられているように、この罷免を要求したというようなことを、今後やるべきじやないと考えているのかいないのかということを、明確にひとつ答弁していただきたい。
○樋貝國務大臣 明確に法律が規定したとおつしやるけれども、そこが明確であるかどうかということで爭いが出たのであります。だから明確に法律か何かに規定しておるとおつしやるのは、すでに一方的に法律を解釈しておるのだから、そこに議論があるくらいだから、どちらがよくないということを判断しなければならぬということも、その一つに属するのであります。從つて今日においてはその御判断にまつよりしかたがない。こういうことを考えております。
○梨木委員 それでは伺いますが、警察権力というものを、時の内閣が自分の政権維持のために利用するということはいいことですか、惡いことですか。この点を伺います。
○樋貝國務大臣 政権維持のためにという文句を入れて、どちらが正しいなんということをお問いになつてはいけないと思います。もう少し冷靜に御質問になれば冷靜に御返事いたします。今のような余分のことを言つては困ります。
○梨木委員 私が伺つたのは、時の内閣が警察権力というものを、自分の——やはりこれは政権維持だね。政権維持のために使うということが正しいかどうかということは答弁できるでしよう。伺いましよう。
○樋貝國務大臣 余分の言葉を入れるなら、それに対する返事がありますけれども、誤解されるとまたいけないから、余分の言葉に対しては御返事申しません。
○梨木委員 それでは伺いますが、どうも過般の内閣総理大臣が行つた國警本部長官罷免の問題は、どうも警察権力を時の内閣が自己の政権維持のために使うというにおいがあつた。こういうにおいのあることは、こういう疑いを受けることは愼むべきであると思いますが、樋貝國務大臣はどうお考えになりますか。
○樋貝國務大臣 これ以上は御意見になりまして、そういう見込みとおつしやるならばそれはまた何をか言わんやで、御答弁の限りじやないと思いますから、そういう御意見があつたということを承つておきます。
○梨木委員 それでは別の点を伺います。過半七月の七日だつたと思いますが、当委員会におきまして、私は下山事件について樋貝國務大臣に質問を試みたのであります。そのとき下山総裁が行方不明になり、その後一つの轢死体が現われて、これは下山総裁かどうか、政府はどう考えているかについて、それは下山総裁の轢死体であることを確認した、こうあなたもおつしやつた。それでこれが自殺か他殺かということについて問題があるが、政府ではどう考えているのかということを聞いたところが、それは他殺であるというようにあなたはおつしやいました。ところがその後の捜査当局の調べによりますと、どうも自殺、他殺非常に両々拮抗しているというような事態であります。この点について過般あなたが、捜査当局が十分愼重に捜査を進め、いまだ的確な成果なくして、このように他殺だということを國務大臣ともあろう方が、当委員会において言明せられたことについて、私は少くとも愼重を欠くと思いますが、あなたはこの点についてどのような責任をお感じですか。
○樋貝國務大臣 当時私に対する質問が、他殺であるということ、あるいは自殺であるという点に向けられたとは私は考えておりません。その当時の速記録をごらんになればわかるけれども、他殺であると私は断言したことは一つもないのであります。私は決してその当時においても、言葉を用意深く使つておるはずでありますけれども、当時において他殺であるとか、自殺であるとか断言は決していたしませんから、そのことについて速記録をお調べ願いたいと思います。
○梨木委員 私は今の記憶では、周囲の状況から言つて他殺であると、こう考えておるというように私は聞いたように記憶しておるので、今質問したのでありますが、そうおつしやるならば、速記録をよく調査しておいて、さらにその責任は追究いたします。 次に國警本部長官に伺いたいのでありますが、三應事件につきまして自然的な事故、自然発車と言つておりますが、作為的な発車であるということについて、捜査当局はどの程度の捜査を行つたかということであります。これをまず伺いたいと思います。
○斎藤説明員 先ほどもお答えいたしました通り、搜査本部で発表いたしておりますこと以外は、ただいま申し上げることは差控えたいのであります。
○梨木委員 ところがどうなんですか。新聞では盛んに三鷹事件についていろいろな報道がなされております。一体この出所について國警本部長官はどのように考えておられますか。
○斎藤説明員 新聞はその使命からして、いろいろ独自で聞込みや、あるいは研究をされておることと考えられます。責任のある搜査当局から発表をいたしましたこと以外は、搜査に從事しております者は発言をしておらないと思いますが……。
○梨木委員 ところで取締りの当局といたしましては、ああいう新聞記事自身がむしろ社会不安を釀成していると思うのですが、この点についてあなたの方でこれを取締る意思なきやいなや。これを承りたいと思います。
○斎藤説明員 新聞等につきましては、從前のようなある事項の掲載を禁止するとか、そういつた取締りの條項は、ただいまそういう法律がございません。またさような取締りをしようという意思も持つておりません。
○梨木委員 大阪におきまして壁新聞に一つの事実を報道した。ところがこれは社会不安を起すものであるということで、大阪の鈴木警察局長は共産党員その他を大量に檢挙しております。私の考えからすれば、最近の三鷹事件についての新聞の報道というものは、まつたくあの報道それ自体こそが、社会不安を釀成激化しておる。大阪におきまして、共産党の壁新聞についてあのような取締りをしておるのに、何ゆえ一般の商業新聞についてその取締りをしないのか。これは私の聞くところによりますと勅令違反だそうで、占領目的違反だということで檢挙しているそうでありますが、こういう事実がありますか。その点を関連いたしまして御見解を承りたいと思います。
○斎藤説明員 例におあげになりました大阪の事件は、おつしやいます通りプレス・コードの違反、いわゆる占領目的を阻害する行為というので、勅令三百十一号違反ということで檢挙をしたと私は思つております。
○梨木委員 私の聞いたところによります、とつまり單に社会不安を釀成するような記事であつたということになつておるのです。だからこの点について私は疑問を持つておりますが、この点は、もう少し私の方も調査を進めて、後ほどまたお伺いいたしますが、この三鷹事件につきまして、事件が発生するや、間髪をいれず、多数の警察官がここに動員された。これは事件が起つた直後においてどういうような連絡が警察にあり、その連絡があつた何分後に現場に動員されているか、その点についてあなたの方へ來ている御報告を伺いたいと思います。
○斎藤説明員 当時の状況は、御承知の通り相当緊迫をいたしております。三鷹その他においていつどういう事件が起るかもわからないというので、警察は非常な関心を持つて警備、警戒に当つておつたのであります。從いまして事件が起ると同時に、警備あるいは搜査に警察が乘警戒、またその事件のり出したということは、当然のことだと私は考えております。何分後に何名が集まつたかは私は承知をいたしておりません、御了承願いたいと思います。
○梨木委員 現場へ警察官が來ることの必要性について、私は毛頭異議をさしはさんでおるわけじやないのでありまして、地元の人たちが非常に不審に思つておるのは、事件が起ると間髪をいれず、警察官がここへ多数動員されて、しかも民自党の腕章をつけた人たちが多数動員されている。こういう事実も私は情報として受取つておるのでありますが、こういう事実の報道をあなたは持つておられるかどうか。この点と、それから事故のあつたその交番の巡査は、いつもそこにおるのに、たまたまその事故のときおらなかつたという事実も聞いておるのでありますが、これはどういう事情であつたかという点について伺いたいと思います。
○斎藤説明員 民自党の腕章をつけた人がただちに出て來たということは、私は聞いておりません。駅前の交番の巡査が外に出ておつたと申しますのは、当日非常に暑かつたのと、それから交番の勤務と申しましても、その周囲の状況を見ておるのが巡査の仕事、でありますから、外に出ておることは何ら怪しむに足らないと思います。
○梨木委員 飯田という人と山本という両氏に対し逮捕状が出た。ところが実際逮捕状の出る前に、朝日の新聞が逮捕状が出たという号外を出しておる事実があるのですが、この点について、あなたはどうしてこういうことになつたのか、知つておられる点を伺いたいと思います。
○斎藤説明員 号外の出たのと逮捕状の出たのと、どちらが先でありましたか、私はよく存じておりません。
○梨木委員 これは私の方の調べたところによりますと、明らかに朝日新聞の号外が逮捕状の出るより先なんであります。從つてこういうことは非常に人権を蹂躪するし、また同時にこれは搜査の秘密と的確を期する上においても非常に遺憾な点があると思うのでありますが、この点あなたはとうお考えになりますか。
○斎藤説明員 逮捕状は、逮捕状を執行いたしまして、逮捕するまでは、これはできるだけ秘密にしておかなければならぬものだと私は信じております。
○花村委員長 時間がありませんから簡單にお願いします。
○梨木委員 下山事件に関連いなしまして、大西運轉手が長い間どこにおつたか、さつぱりわからないようなことが報道せられておるのでありますが、この点はどういうことになつておつたんだありましようか。正式の逮捕状に基いて、あるいは勾留状に基いて逮捕しておつたものか、それともどういう手続で留置されておつたのか、これを伺いたいと思います。
○斎藤説明員 大西運轉手の問題は、警察がどつかにとじ込めておつたとか、そういうようなことは全然聞いておりません。警察は関係しておらないように思います。
○梨木委員 警視庁の地下室に調べ室があるわけなんですが、そこは一坪くらいの調べ室のようですが、そこで調べる場合に、中に人を入れてかぎをかけて調べておる。こういうことは私は非常な人権を蹂躪するものだと思いますが、この点についてどうお考えでしようか。
○斎藤説明員 私は事実をよく存じませんので……。
○梨木委員 調査をされてさような事実があつたら、少くこも私は調べる場合にかぎをかけて調べるということは、本人に対して威圧と恐怖を与え、やはり人権を蹂躪するものと思いますから、やめさせなければならぬと思いますが、その点についてのお考えを伺いたいと思います。
○斎藤説明員 事実をよく調べまして、その判断と同時に御返事を申し上げたいと思います。
○花村委員長 この際おはかりいたします。世の耳目を聳動した平事件については、本委員会が調査を始めてより、この間あるいは調査委員を派遣する等、あらゆる角度から調査を進めて参りましたが、委員各位の御熱心な調査に対しましては深き敬意を表するものであります。本日をもつて、この程度において調査を終了せしむることに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○花村委員長 御異議なしと認めて、さようにはからいます。 調査につき報告等をいたしまするのに、調査報告書をつくる必要があるのでございまするが、調査報告書はここに起草してありまするが、これは大体前委員会において派遣委員が報告いたしておりまするのと大同小異であります。ただここにおはかりいたしたいことは、結論として本事件に対しまする委員会の意見をまとめたいと存じます。その意見に関しまする文案ができておりまするから、朗讀をここでいたします。 第五 結 論 一、本事件に対する意見 警察側としては道路使用許可申請を受理するにあたり、將來交通妨害を生ずるおそれがあるかいなかにつき、十分な調査をなすべきであつた。掲示板として簡單に事を片付けすぎたきらいがある。また使用許可を取消すにあたつては、一貫した理由を示し——傳達者が関係方面の命令だと傳えたということであるが——ゆとりのある、しかも明確な期限を付して通達すべきであつたと思われる。矢郷炭鉱における賃金不拂い等から生じた労務者及びその家族の窮乏生活には同情に値いするものがあるが、平市における本件掲示板撤去に対する反対示威は労働爭議ではなく、一種の政治鬪爭である。しかも掲示板設置を許可されたものは労働組合でもなく、また共産党地区委員会でもない。たまたま矢郷炭鉱の労働爭議の記事が掲載されるに至つて、交通妨害の状態が発生したため使用許可が取消されたというにすぎない。すなわち労務者側には、記事掲載という点において利害関係がないとは言えないが、本件の道路使用の許可は、平市署長から申請者長江久雄個人に与えられたものである。しからばその取消しに対する救済手段には、おのずから限界があるはずである。許可取消しの撤去応援と称して、警察の警備力の十倍に匹敵する多数が許可なくして警察署に闖入し——当日降雨が相当激しかつたことも事実であるが、單純な雨宿りでないことも事実である。——器物を破壞し、六尺四方の赤旗二流を警察署正面玄関に交叉掲揚し、留置場の入口ドアを破壞して、看守巡査からピストルを奪取して同志を留置場から解放せしめ、逆に看守巡査を一時たりとも監禁する等、多衆の威力と暴力に訴えて問題の解決を迫るがごときは、その動機ないしは目的のいかんにかかわらず、またいかなる団体によるものであろうとも、民主日本においては断じて許さるべき事柄ではない。 前述三十日内郷警察署における状況等に徴し、本件が共産党地区委員会の計画的指導のもとに行われたものであることも否定できないものと思う。 しかし縣民に与えた社会的不安の大であつたことも調査の結果明白である。さらに本平事件発生の日に、隣接都市たる福島市、郡山市、若松市において類似のデモンストレーシヨンが行われており、本調査においても相互間の関連性につきその片鱗を伺うに足るものがあつたが、徹底的調査を行う必要を認める。 二、対策問題 労働問題、失業対策等は他の委員会に讓らなければならないが、当委員会としては、現下重大問題である治安維持の面から、現行檢察制度及びこれに密接な関係を持つ現行警察制度につき檢討すべきものがあると思う。 福島縣は地理的條件によれば浜通、中通、会津の三地区に区分できるが、福島市所在の國家地方警察福島縣本部から応援を得るには、八時間を要するに反し、水戸所在國警茨域縣本部から応援を得るには、わずか三時間で足りるが、しかし國警茨城縣本部に応援を求めるには、國警福島縣本部から仙台警察管区を通じ、さらに東京警察管区から國警茨城縣本部に連絡することとなつているため、その手数が複雜である。自治警察と國家警察の現行制度とその機動力発揮につき檢討をする要があると思う。しかも警察電話は昨年夏ごろから各地に傍受事故が頻々と起り、電話連絡は全然その利用價値を失い、現在飛脚と同じ連絡員を派している状況である。警察電話の傍受は重大問題である。警察裝備の充実必要性を痛感する。本平事件の捜査の実務を通じ、当委員会は警察と檢察との犯罪捜査に関する一体性、ないし総合性を強く要望する次第である。 最後に社会不安に関連する問題であるが、過ぐる七月七日、本調査の最中、平市及びその隣接市町九箇所の消防団長、公安委員が会合し、平事件にかんがみ市町村民の生命財産を保護するため、互いに協力すべきことを協議し、これを契機として戰時中警防団類似の、または大震災後の自警団復活の声があると同時に、右翼的暴力団再建の兆候が喧傳されている。警察の威信保持、國民の社会的不安除去のため、共産党の暴力主義に対しては、政府はすみやかに適切な対策を講ずべきであると信ずる。政治的ボスに直結する自警団や暴力団のごとき、暴に報いるに暴をもつてする非民主的団体発生の兆候のある点について、特に注意を拂わなければならぬものと思う。以上。 この二点を決定するに御異議ありませんか。
○角田(幸)委員 今の事故の上で急速を要する場合には、福島を経て仙台を経る必要はない、これはただちに水戸に応援を願える。そこで急速を要する場合のほかはという文句を入れていただきたい。
○梨木委員 そんな一方的な横暴な、ことがあるものか……。
○花村委員長 ちよつと速記を待つてください。この原案を決定するに御異議ありますか、御異議の方の起立を願います。 〔異議者起立〕
○花村委員長 起立少数。原案の通り決定いたしました。
○梨木委員 そういう一方的な、そういう横暴なことがあるものですか。そんな報告は私ども認められない。原案の調査に参加した委員の何らの意見をそこに加味しない一方的な……。 —————————————
○花村委員長 ちよつと速記を待つて。——次に檢察行政における犯罪の科第的捜査を本委員会が取上げることに理事会において決定いたしましたが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○花村委員長 御異議なければ、本委員会において右問題を取上げることといたします。
○梨木委員 横暴だ、そういう不都合なことがあるものか……。 —————————————
○花村委員長 ちよつと速記を待つて、……。 この際お諮りいたしたいことがあります。先日の理事会におきまして、鹿兒島市における人権蹂躙問題について專門委員に一応下調べをしてもらうことに決定したのでありますが、本問題について、当委員会より委員を派遣いたし調査をいたすことにいたしたいと存じますが、この点についてお諮りいたします。御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○花村委員長 御異議なければさようにとりはからいます。 それでは委員を派遣いたすことにいたします。その員数、氏名、期間等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議がありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○花村委員長 御異議なければさようにとりはからいます。 本日はこの程度で散会いたします。 午後四時十八分散会