法務委員会 第25号
- 発言数
- 148 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1949/05/21
会議録
○花村委員長 これより会議を開きます。 先般來予備審査中でありました公証人法等の一部を改正する法律案が、参議院において修正されまして、本委員会に付託となりました。まず政府より参議院において修正されました点について御説明を願います。 —————————————
○長谷川説明員 僭越でありますが、私から公証人法等の一部を改正する法律案の参議院修正の重要部分について、ごくかいつまんで御説明申し上げたいと思います。 改正の第一点は、このたび法務廳機構が改組になりまして、司法事務局が法務局、または地方法務局になり、その出張所が支局または出張所ということになることになりましたので、これに伴いまして、公証人法等の規定を整理いたすということが第一点であります。 それから第二点は、公証人の書証事務であります公証、認証等の手続がいたずらに複雜な点も見受けられますので、これを適当に簡素化しようとするものであります。もちろんこの公証人が公正証書を作成し、私署証書等に認証を與えることは、事件に相当重要な関係を有するものでありますから、公証人制度運用に支障あるような事務を簡素化することは、嚴に愼まなければならないことは申すまでもないのでありますが、現行法の規定の中にはいたずらに嚴格に過ぎ、かえつて公証人はもちろんのこと、当事者に対してもその煩にたえ得ざらしめるものもあるようでありますので、公証制度の趣旨に反しない範囲内において、これを適当に整理したいと考えて所要の改正を試みたのであります。その一、二を申し上げますと、嘱託を受け公正証書をつくる場合におきましては、その嘱託人と公証人が面識のある場合でなければ、公証事務を受けることができないのでありまして、もし面識のない場合におきましては、市区町村長のつくりました印鑑証明書の提出、あるいは氏名及び面識のある二人以上の承認によつて、その者が眞実本人であるということの証明を得た上でなければ、嘱託に應ずることができないというのが現行法なのであります。しかしこれ以外にも、たとえば写眞の貼付してある身分証明書というようなものがありまして、それによつてたしかに本人に相違ないというような確証が得られるような場合におきましては、やはりその嘱託に應じてよいのではないかということが考えられますので、二十八條を改正いたしまして、市区町村長の作成した印鑑証明書の提出、その他確実なる方法で人違いなきことを証明すればよろしいということに政府原案では改正したのであります。ところが参議院におきまして、ただ確実なる方法というのではまだ正確ではない。印鑑証明書に準ずべき確実なる方法でなければならぬということが論ぜられました結果、この点が修正になりまして、印鑑証明書の提出、その他これに準ずべき確実なる方法によつて人違いなきことを証明させなければならぬということに修正されたものであります。それからやはり簡素化の一つといたしまして、公正証書の文字を加除する場合の手続といたしましては、從前は公証人のみならず、嘱託人、またはその代理人及び立会人の全員がこれに捺印をすることを必要としておつたのであります。これも必ずしもその必要がないのではないか。公証人を信頼して、公証人だけ判を押せばよいことにしたらよいのではないかということで、政府原案はこのような場合は公証人が捺印すればよろしいということにしてあつたのでありますが、これがやはり参議院法務委員会で問題となりまして、それではやはり足らない。從つて公証人のみならず、嘱託人またはその代理人がこれに捺印することが必要であるということで、この点も修正を受けた次第であります。この点は公証人を信頼するかしないかという問題にかかろうかと思いますが、公正証書の信憑力といいますか、公正力を確実に保持するためには、あるいはここまで嚴格にする必要があるかも存じません。そういつた趣旨で、この修正に対しても別段政府側としては異議がない次第であります。 それから改正案の第三点は公証人の任用資格につきまして、現行法では判事、檢事、または弁護士たる資格を有する者に限つて、所定の試驗及び実地修習を受けないで、公証人に任ぜられることができるのでありますが、現状といたしまして、この公証人がなかなか得られないのでありまして、公証人がないために、公証事務を司法事務局またはその甲号出張所の法務廳事務官が公証事務をとつておりますところが全國約二十八箇所ばかりあるのでありまして、その他公証人のないところが相当に残つております。こういつた、現実の要求からも考え合せまして、多年法務に携わつて、学識、経驗も公証人として十分であるというような者があるならば、これを起用いたしまして、特に試驗及び実地修習をなさしめずして公証人に選考任用し、これを必要な箇所に所属させるという手当が必要なのではないかということを考えまして、改正案の十三條にこのことを規定した次第であります。ところがこの点も公証人の資質の低下という観点から、参議院でいろいろ議論がございまして、結局この措置は当分の間でやらなければならぬということと、それからこういつた特殊の選考任用をする場合は公証人法第八條すなわち司法事務局またはその甲号出張所に公証人がない場合、あるいは公証人の職務をとることができないような場合、こういつた場合に限つてこの選考任用をなすべきであるという議論がございまして、なおさらに公証人の職務に必要なる学識経驗を有するものというのでは、手心でいかようにもなるおそれがなしとしないから、さらにこれを嚴格に規定して、裁判官、檢察官、または弁護士に準ずる学識経驗を有する者をして、初めて公証人審査会の選考を経て公証人にすることができるというように制約すべきである、この三つの観点から第十三條という一箇條が公証人法に加えられまして、これを規定することに修正されたのでございます。 なお公証人法には停年制の定めがないのでございますが、公証人の資質の保持と申しましようか、そういつた観点から、やはり停年制を設くべきではないかということから、政府原案では全然取上げておりませんでしたが、参議院におきまして停年制を加えることに修正を見たのであります。これはまことにごもつともな御議論と存じまして、私どもこれに対しては何ら異論がございません。その他細部にわたりましては、たとえば公証人の居住の制限とか、そういうものをはずしたこと、ごく微少な部分にわたりまして改正点がございますが、おもなる改正点は大体以上に申し述べたようなものでございます。
○花村委員長 これより質疑に入ります。石川金次郎君より質疑の通告がありますから、これを許します。
○石川委員 速記をとめてください。
○花村委員長 それでは速記をとめてください。 〔速記中止〕
○花村委員長 速記を始めてください。
○石川委員 参議院で修正になりました箇所を中心としてお伺いいたします。十三條の原案中末項にあります「多年法務ニ携ハリ公証人ノ職務ニ必要ナル学識経驗ヲ有スル者ニシテ公証人審査会ノ選考ヲ経タル者亦同シ」これが参議院で「前條ノ者ニ準スル学識経驗」といつておるのでありますが、前條に準ずるというふうになると、弁護士、檢察官、判事、裁判官、これに準ずる者ということになるのでありますか。その準ずる者というのはどういう人たちが予定されてあるのですか。
○長谷川説明員 私どもといたしまして予定したものは、たとえば十三條の改正案の中でも、御承知のように裁判官の中から、簡易裁判所判事は除いております。また檢察官の中から副檢事は除いております。これはやはり公証人の資質の低下をおそれた結果であります。しかしながら簡易裁判所判事、あるいは副檢事の中には相当学識経驗のあられる方々もありまして、公証人としてふさわしい人もあるいはあるのではないか、そういつた場合は、はたして公証人として必要な学識経驗があるかどうか、その他の事項を公証人審査会の選考によつて判定していただいて、そうして公証人としてふさわしい者があれば、これを公証人に任用するということなども具体的事例の一つとして、われわれは考えておつたわけであります。もちろんこの場合に限つたわけではございませんで、具体的には、今ちよつと適切な事例をそれ以外に申し上げる準備がございませんけれども、これらのような場合がありまするならば、それを選考任用して行きたいというふうに考えておるわけであります。
○石川委員 今度、裁判所法がかわりまして、裁判所書記官という職務が出て参りました。それから司法試驗を合格いたしました者で司法修習生とならない人もあるのでありますが、裁判所書記官もしくは司法修習生をしない司法試驗の合格者も第十三條に準ずべき者というふうになり得ると思いますが、その点の御見解はいかがでありますか。
○長谷川説明員 同樣に考えてよかろうかと思つております。
○石川委員 それで十三條の準ずべきものの範囲は廣まつたのでありますが、ところで今度は二十八條の修正について聞きたいのであります。二十八條中先ほどあなたが御説明になりました「印鑑証明書ノ提出其ノ他之ニ準スヘキ」とありますが、その一つの例として、たとえば預金証書の印鑑の所に判がついてあつて、その判と預金証書を持つておつて、私が本人だ、こういう人があつた場合等も、そのような人をも人違いなきことを証明する一つの手段として想定されますか。
○長谷川説明員 具体的な問題になりますと、もつと十分研究さしていただかぬと即急にお答えいたしがたいのでありますが、この点については印鑑証明に準ずべき確実な方法ということをさらに具体化いたしまして、十分檢討いたしまして通牒いたしたい、こういうふうに考える。それでそれによつて、言葉は惡いですが、いいかげんに処理することのないように嚴重にやつて行きたい、こう考えております。
○石川委員 この人違いなきことを証明せしめることを要するのですが、証明する人は公証人になりますから、公証人がいいと思つたらそれでいいということになるのですか。
○長谷川説明員 具体的な場合はそうなりますが、しかしこれに準ずべき確実なる方法という法律上の要請がありますので、この要請に必ず從わなければならぬというふうに考えております。
○石川委員 おつしやつた法律上の要請に從うものであるという見方が、公証人の甲と乙、それから地理等の関係で、場所、地域、北海道と九州という所ではおのずと慣習等が異なるものがあれば、また異なるものができて來ると思うのです。その点は公証人にまかせるということになるのではないですか。
○長谷川説明員 先ほども申し上げましたように、一應もつと抽象的ではあつても、具体的に考究いたしまして、そうして誤りなきを期すように通牒してやつて行きたいと存じます。最後の問題は、御質問の通り、最後は結局裁判所の判断というようなことにも相なろうかと存じます。
○石川委員 そこで十三條は、参議院によつて、公証人たる資格を有する人を「前條ノ者ニ準スル学識経驗ヲ有スル」というように嚴重にしたのであります。そうして相当法律上の知識ないし社会的地位を持つた人のうちから公証人を選考するということになるのですから、その点は「之ニ準スヘキ」というようなことを入れないで、公証人その人を信じて、確実なる方法によつて人違いなきことを証明して、その証明を公証人が妥当なんだと思つた場合では公正証書を作製してやるということには行かないのですか。
○長谷川説明員 まことにごもつともに存じます。私どもといたしましても、これに準ずるという規定のあるなしにかかわらず、同樣な趣旨に考えておつたわけであります。しかしながらさらにこれを明確化せしめるという趣旨においての御修正と考えますので、私どもといたしましては何ら異論はない次第であります。
○石川委員 私はこれでよろしゆうございます。
○上村委員 今の証明の点ですが、趣旨は「準スヘキ」というものを設けてたいへんいいのですが、たとえば弁護士が公証人の所に行つて、あなたはどなたでございますか、私は上村でございますと言つて、その公証人に面識はないのですけれども、弁護士上村進という名刺を出すのです。そういうときにそれで証明になるかどうかというようなこと、また弁護士はそれが証明になれば好都合のことがあるのですが、今までの公証役場ではそれを認めなかつたわけです。それが入るかどうかということと、もう一つは弁護士が依頼者を公証人に紹介するのです。この人があなたの所で公正証書をつくつてもらいたいのだが、この人を紹介すると言つて、依頼者を紹介したときに、その私の紹介名刺が「之ニ準スヘキ確実ナル方法」の中へ入るかどうか、弁護士としては、とにかく今度は弁護士法によつて地位も上るし、そして弁護士が名刺を出し、弁護士が名刺で紹介したものが普通の場合と同じように取扱われるのか、それとも多少そこに認められて「之ニ準スヘキ確実ナル方法」になるかどうかということをお伺いしたいと思います。
○長谷川説明員 御質問の通り、弁護士であられる方々は十分信頼してよろしいのでありますが、しかしながらたとえば弁護士でないものが弁護士の名刺をたまたま所持いたしまして、そして嘱託をやるというような場合もないとは保しがたいのでありまして、從つてその程度ではいささか疑問なのではないかと存じております。しかしながらたとえば弁護士会におきましても、弁護士なることの証明を出しておるようでございますが、そういうような場合は、私まだ具体的に一々檢討しておりませんけれども、大体よろしいのではないかというふうに考えております。 それから第二の問題でありますが、面識のある者、あるいは以前に嘱託したことのある方は、これは自分の知人である、これに相違ないという書面をつくりまして、それに判を押して、それを持つた嘱託人が公正証書作製の嘱託に参つたというような場合は、紹介者の印鑑はすでに出ておりますから、それを照し合せればわかるわけです。そういつた場合はあるいはよいのではないかと私は考えております。
○上村委員 そうするとその点は結局弁護士が、私は上村進でございますと言つて——私が自身行くのですよ、そして名刺を出した場合に、それは「準スヘキ確実ナル方法」に私の名刺はまだ入れないわけですね。
○長谷川説明員 面識がございませんと、たとえばあなたのお名前をかたつて來るような場合がもしありとすれば困りますので、その程度ではいかぬのではないかと存じております。
○上村委員 そこのところ私自身が行くのですよ。私自身が行つて、これはある初面識の公証人のところへ行くのですよ。そうして私は人違いで行くわけでもなんでもない。しかし向うは一應私が上村進だかどうだかわからない。あなたはどなたでございますかと言うから、私は上村進でございますと言つて、名刺を出して、きようはひとつこういう公正証書をつくつてもらいたいというわけですね。そのときに私と私の名刺はくつつかないということは、弁護士を非常に侮辱した話であると思います。ですからなるほど私をかたつて行く人があるだろうし、また私の名刺を持つて行く人があるかもしれない。しかし実際多くの場合、弁護士がかたるということは例外であつて、公証人のところにせわしいときに急に行く場合に、印鑑証明など持つて行けないのです。そのときに名刺を出して、公正証書をつくつてもらえれば私も私の依頼者も助かる、こういうことなのです。それが準備すべき書面に私の名刺が入らないということになれば、非常に不便であるのみならず、弁護士を無視したことになりはせんかということなのです。 もう一つは、同じことですけれども、私が行かないで本人をやる場合に、本人はこれこれの者に相違ないが、こういう債務関係で公正証書をつくりたいと思うから、ひとつよろしくお願いしますといつた場合に、人違いでないことを私の名刺で証明ができないで、さらにその人が帰つて、印鑑証明をとつてから公正証書をつくるということになると、その人は非常な手数です。その場合に、私の名刺が何ら役に立たないということになれば、弁護士を無視されたことになるわけです。これを一つ確かめてもらいたい。
○長谷川説明員 まことにごもつともな御質問でございます。たしかに多くの場合、名刺をお持ちになつておいでになつた人がその名刺の本人であるということは、十中の八、九そうなのでございます。しかしながら公証制度は非常に嚴格に規定されておりまして、万一の場合をなるべく防ぎたいという建前でできております。その見地からいたしまして、その点公証人としても、情においてはなはだ忍びないであろうと思われますが、ちよつとむりなのではないかと思います。 なお附言いたしますが、たとえば一回公証人役場へ足を運びまして、嘱託したことがあるということになりますと、印鑑証明書がすでに出ておるわけであります。從つて人にもよりけりでありますが、人格者であるところのそういつた方々がほかの者を紹介いたしまして、それに判をつきまして、この人間は確かにこれこれに相違ないというような——具体的に申しますれば弁護士の方々のそういつた紹介状を持つて行くような場合は、確実なる方法として認めてよろしいのではないかというように考えております。
○上村委員 確実なる方法というのは……。
○長谷川説明員 人違いなきことを証明するに足る確実な方法です。
○上村委員 ほかのことはいいのですが、弁護士の名刺がそれにならないかていうのです。弁護士の名刺が自分の紹介なり依頼者を紹介した場合、依頼者がその人間であるということの証明になるかならないか。実際われわれは非常に苦心したところなのです。それで弁護士というものの地位が非常に低い場合はとにかく、弁護士法というものがあり、法曹一元、判事なり檢事なり弁護士なりが使つた名刺が、普通人と同じであるとすれば、ことに公証人のところに行くときなんか、何もよけいなことで行くわけではない。弁護士の職務に関することで行くのだから、その場合に弁護士の名刺が何ら物を言わないということはどうかと思うのであります。幸いにこの法案が出ておるから、準ずべき書類の中に入れてもらいたいというのが私の希望なのです。
○長谷川説明員 先ほど申しますように、弁護士の方々が、その弁護士たることの名刺をお持ちになる場合は、十中八、九は間違いないのであります。だからそういつたものもこれに準ずる一つの確実な方法と言えないまでも、それ以外の、もう一つのそういつたものがあるとか、あるいは何かがあるというような場合は認めていいのではないか。たとえば定期券をお持ちになつておる、あるいはそれ以外の何かの証明書をお待ちになつておる、手紙の表紙——もちろんそれだけでは困るのでありますが、そういつたいろいろのものによつて証明されるような場合はいいのではないかというふうに考えております。
○上村委員 そうすると、弁護士の名刺だけでは紹介できない。それで私がかりに公判の呼出状、あるいは訴訟の呼出状を持つておりますね。そういうものを名刺と一諸にして、私が上村でございますと言えば、それでいいのでしようか。
○長谷川説明員 非常に具体的になりましたが、私政府委員でもありませんし、非常につらいところであります。大体二、三のそういうものによつて証明されるような場合は、いいのではないかと私は考えております。
○上村委員 弁護士会の証明を持つて行きますね。私が弁護士たることの証明を持つて行けば、実際問題として印鑑証明なしでいいということになるでしようか。
○長谷川説明員 実は私弁護士会の証明書はどんな形式で出されているかよく存じませんけれども、大体それによつてその方が確かに弁護士である。しかもどういつた方であるということの間違いないような証明であるといたしますれば、それでいいのではないかというふうに考えております。
○上村委員 弁護士会で私が証明をもらう。そうすると、これこれは弁護士会員たることを証明するということが書いてあるのです。ですから、それに名刺をつけて行けば、印鑑証明なしに一面識もない者も公証人のところに行つていいということになるわけですね。
○長谷川説明員 先ほどからしばしば申し上げますように、非常に具体的になつて参りましたので何ですが、大体それで認められる場合が多いのではなかろうかと、私考えております。それで人違いなきことを証明する確実な方法として認めていい場合が多いのではなかろうかと考えております。たとえば私どもがまず念頭に浮ぶ点は、かりにそこの弁護士の事務所へでも出入りする方が、たまたま名刺をどうかいたしまして、それによつて適当に処置されるようなことになりますと、弁護士の方も迷惑でありましようし、また公正証書の公正力の点からはなはだ遺憾でありますので、そういつたことが念頭に浮ぶのでありますから、私が先ほどお答えしたように申し上げざるを得ないわけでございます。
○石川委員 今の問題を確かめたいのですが、二十八條は結局公証人が人違いなしと認めたならば、すなわち印鑑証明その他確実なる方法によつて人違いなしと公証人が認めたなら、よろしいのか。それとも法務廳においては、これこれこういう資料を持つて行つた場合に、人違いなしと認むべきものであると訓令するのか。そのいずれであるかということをお尋ねいたします。
○長谷川説明員 先ほど申しました点、あるいは言葉が足らぬで誤解を受けたのではないかと存じますが、通牒と申しましたのは、これよりももう少し具体化した通牒、こういう趣旨でありまして、このくらいこのくらいと列挙する趣旨では絶対ございません。だからそれ以後はそういうふうにいたしましてあやまちなきを期したいと思いますが、要は公証人の問題でございます。公正人はわれわれといたしましてはその素質を十分吟味いたしまして、いかがわしいものはこの事務をとることのないようにいたしたいと存じますが、多くの場合は公証人を信頼いたしまして、公証人そのものは本人に相違ないという確証を得られるような方法によつて、嘱託をいたして参つて場合は大体よろしいのではないか、というふうに考えております。
○石川委員 明かにしておきますが、この法律は法務廳が、これこれのものがあつた場合に人違いなしと認むべきものであつて、指令すべきものではない。公証人自身がこの法律の要請に從つて注意すべきものである。あるいは人違いないということを認めるならば、それでよいということが精神ではないか。公証人の責任においてやるべきである。もしも過失のあつた場合は別な方から責任を負い、賠障をとらるべきものであると解釈すべきではないでしようか。
○長谷川説明員 まことにごもつともな御意見と存じております。先ほど通牒と申しましたのは、それによつてあれするということでなくて、解釈上どんなふうになさるべきであるかというふうな、先ほどからしばしば申しますように、もちろん抽象的な解釈的なことを意味したのでありまして、具体的にこの場合、この場合、この場合ということを指示することはでき得ることでもありませんし、その必要はないと考えますから、そういうふうには全然考えません。
○石川委員 この法案の重要なことは、公証人の審査会でありますが、これをはつきりしておきたいのであります。公証人審査会は先ほどあなたにお聞きしたように、法務廳設置法の一部を改正する法律案の第十三條から第二表ができて参りまして、この第二表中に公証人審査会というのが出て來る。ところがこの公証人審査会というのはまだ法案にでき上つておりませんから、結局政令によつて公証人審査会なるものはでき上つて來ると思います。しかし公証人というのは、社会的に一つの重要な権利義務に関する仕事をやるのでありますから、政令にまかせないで、これを法律で明かにするということをどうしてせられなかつたか。また將來その氣持があるかどうかということをお聞きしておきたい。
○長谷川説明員 お答えいたします。御指摘の通り、法務廳設置法の一部を改正する法律案の十三條の二項に、公証人審査会は政令をもつてその組織等を定めるということになつておるわけでありますが、これは事が相当重要でありますから、あるいは法律で定むべきものと考えられないこともないのでありますけれども、しかし具体的な場合になりますと、ポスト、ポストによつて定めるということもどうかと思われますし、これは政令に委任していただいて、要求に即應した適正なる公証人審査会をつくつて行きたいというふうに考えますので、政令に委任していただくことにした次第であります。
○石川委員 政務次官に責任ある御答弁をお願いいたしますが、これは今申しましたように、公証人審査会が大切な機関となつておるようでありますから、法律でこの構成を定めるという御方針についての御意見を承つておきたい。もしその方がいいとなれば、早く着手する御意思があるかどうかを、政務次官御答弁願いたい。
○山口(好)政府委員 石川委員の御質疑まことにごもつともなことと思うのでありますが、法務廳の設置法案によりますれば、大体すような事項につきましては、政令をもつて列挙的に定めるというような方針になつておりますので、將來お説につきましてはよく研究いたしたいと思いますが、現在はさようなことになつておりますので、御了承をお願いいたします。
○猪俣委員 先の上村氏の質問に関連するのでありますが、そういう面識のない場合に、弁護士の名刺を持つて行つて、さあそれで名刺を信用しろというのは、ちよつとむりだろうと思うのであります。ただそこに印鑑証明を出して面識を得た後に、ここにある人間を、弁護士の名刺にその印鑑届をしたその印鑑を押して、その人間は何のだれ兵衞という名刺を持たしてやつた場合に、それが証明方法になるかどうかということが一つの問題で、その点をお聞きしたい。
○長谷川説明員 ごもつともな御質問と思います。先ほども申しましたように、印鑑証明または面識ある証人二人によつて人違いなきことを証明させれば、現行法においても公証の嘱託を明けることができるわけであります。それで御質問の場合におきましては、これも先ほど申しましたように人によりけりでありますけれども、社会的に相当の地位を持つておられるところの弁護士であられる方々が、すでに提出済みの印鑑によつて紹介人を本人であるというふうにして出す場合には、大体信頼してよろしいのではないかというふうに私考えますので、その場合はそれによつて人違いなきことを証明してさしつかえないのではないか、こう思つております。
○猪俣委員 もう一点、この公証人には各府縣とも定員というものがきまつておりますが、この表を見ますと、新潟あたり二名となつております。そうすると全縣下に二人しかないわけですか。
○長谷川説明員 これはお手もとに資料として差上げたんではないかと存じますけれども、定員の定めは、從來は区裁判所ごとに定めておつたのでございます。現在はどうかと申しますと、公証人法等の一部を改正する法律案で取上げておりますが、法務局もしくは地方法務局またはその支局ごとに定めるということにしております。これによつて從來の定め方をそのまま受継いでやつて行きたいと考えております。
○猪俣委員 そうすると、たとえば地方裁判所の支部のあるような所には、今度は一人できることになりますね。
○長谷川説明員 現在でも大体定員はそういうふうに定められております。そのまま受継いで——もちろんこの定員の中で、諸般の事情からもし改むべきものがあれば將來改めて行きたいと存じますが、現在では一應來前のものを受継いで行くというふうに考えております。
○猪俣委員 東京には公証人がたくさんおられますが、私は新潟の事情しか知らぬのですが、非常に公証人が少い、高田市という市にも一人もいないので、長岡まで行かなければ公正証書がつくれない。汽車で三時間もかかるのです。今度それが緩和されるようでけつこうだと思うのですが、ただそういうふうに数がふえました場合に、公証人の生活がどうか。生活の調べもしてあるようですけれども、その点いかがでございましようか。
○長谷川説明員 公証人は戰時中は、生活の点で非常にみじめであつたのでありますが、昨今世の中が平和になると同時に、信用関係も高まつて参りまして、逐次事件数もふえて参つております。しかし現在でも、この定員全部をふさぐことがはたしていいかどうかということは、現在の收入その他事件数等を考え合せまして、相当考慮すべき問題だろうと思いますので、必ずしも定員があるからといつて、それを全部ふさいで行くということは考えておりませんし、また現在のところ、先ほども申しまいたように、必ずしも公証人になり手がことほどさように多いわけでもございません。また選考任用の点も、とにかく公証人がない、足りないからどしどしと公証人をつくつて民衆の要請にこたえるということもどうかと思いますので、やはり公証人の素質の点を考えまして、嚴正な選考を行つて、眞に適格である者だけを採用して行くというふうに考えております。
○古島委員 それは説明員の説明は違つてやしませんか。とにかく定員がきまつておつて、たとえば新潟の例にしても、新潟には二人定員がある。新潟に一人だけ公証役場を開いておる。もう一人、たとえば判事をやめて公証人になろうという人があれば、許さなければならぬのじやないですか。
○長谷川説明員 公証人の任免権は法務総裁にございまして、それはやはり諸般の事情を考慮して任命すべきものであつて、定員があるから、志願者があれば全部それを埋めて行くということは、必ずしも当を得た処置ではないのではないかというふうに考えております。
○古島委員 しからば何の必要があつて、たとえば新潟、三條、新発田、村上、長岡、柏崎、六日市、高田というふうにきめてあるのですか。もし高田にいなかつたら、高田で有資格者が出願すればこれを許す。長岡で出願すれば長岡で許す。新発田で出願すれば新発田で許すというために定員がきめてあり、場所がきめてあるのでしよう。それをかつてに法務総裁が、あの場所は自分は許さぬ、あの定員はきまつておるけれども、不自由でも許さぬということになれば、こういう定員をきめておく必要はないと思う。
○長谷川説明員 ごもつともであります。適任者がございましたら、定員の許す範囲内において任命して行くのが至当だと思います。
○古島委員 もちろんこれは有資格者が出願するのですから。そうするとどの場所でも、欠けておる場所ならば、有資格者ならば任命されるということになりますね。
○長谷川説明員 やはり運用の問題といたしまして、諸般の事情を十分考慮して任命すべきものだろうと考えております。
○古島委員 あげ足をとるようで済みませんが、諸般の事情とは何ですか、たとえば三條なら三條という所は許さなければならぬ所です。定員が一名ある。そこに一人も公証人がいない。判事をやめて三條で開業しようということになれば、許さなければならぬのではないですか。諸般の事情はありはしない。三條で定員一名はきめてある。資格については諸般の事情もあろうが、場所もきまつておる、定員がきまつておる、一名もないという場合は出願したら当然許さなければならぬ。
○長谷川説明員 御質問のような場合は、まさに適任者があるといたしますれば、任命すべきものだろうと存じます。
○古島委員 元來、十三條の二の「法務」というのは何でございますか。
○長谷川説明員 「法務」という点でございますが、これは実は法務廳設置法にも法務という文字を使つておりまして、大体法務廳で取扱つておるような事務、あるいは司法事務というような事務が法務に当るのではないかというふうに考えております。
○古島委員 司法法律事務ということですか。法律事務の中の法務廳関係のいわゆる法務ですか。ほかのことは含まないというわけですか。
○長谷川説明員 それは例示したわけでして、それに準ずるような状態の方であればよろしいのではないかと思います。
○古島委員 裁判所の書記なんかは大分法務をやつてるようでありますが、書記を長くやつておるとか、雇を二十年もやつておつて一年間書記になつた、こういうのはどうでございましようか。
○長谷川説明員 ただ多年法務に携つておるだけでは足らぬのでございまして、裁判官とか、檢察官とか、あるいは弁護士に準ずべき学識経驗がないといけないということになつておりますので、その点から制約を受けるのではないかと思います。
○古島委員 弁護士や何かに準ずるというと、これは弁護士の事務員などもずいぶん法務には携つている。この多年は何年くらいになりますか。
○長谷川説明員 これも具体的な場合によつて、判断さるべき問題だろうと思いますが、たとえば十年も、それ以上もやつているような場合ならば、大体多年と考えてよろしいのではないかと存じます。
○古島委員 ここに書いてある当分の間というのは、どれくらいのことでありますか。
○長谷川説明員 先ほども質問があつて、私の説明でお答えいたしましたが、この措置は、大体現在では公証人をなかなか得られない。そのために公証人のないところが相当ある。二十八箇所も司法事務局で公正事務を取扱つているところもある。こういつたところは民衆に対して非常に不便を與えております。だから公証人として必要な十分の学識経驗をもつているような者があれば、これを採用して公証人にして行きたいというのがこの制度でありまして、從いまして、本來は正式な道によつて進んで來た者を公証人にすべきであるが、こういつた現状にあるので、臨時的措置といたしまして、この制度をとつたということから、当分の間という制約を設けたわけでございます。
○古島委員 そうすると公証人にふさわしいものが現われるまでという答弁ですか、しかし日本の法律では当分の間といつて、明治十三年太政官布告が今日まだ当分の間ということで生きているのがありますね。明治十三年の法律を昭和二十四年になつて使つているという日本ですから、この当分の間といつたら、いつまででこれは切れるかわからない。そして適当な公証人ができればそこで当分の間が切れる。できないということになれば何百年続くかわからない。当分の間というのは一向にわからない。
○長谷川説明員 御質問まことにごもつともなのでありまして、法律的に申しますと、御指摘の通りだと存じますが、結局この当分の間ということによつて、これを運用あるいは法律の改廃の上におきまして、十分考慮することをうたつた趣旨であろうかと存じております。
○古島委員 ちよつと政務次官に伺いたいが、あなたも御承知の通り、今明治十三年のあの法律がありますね。投票により——これが旧刑法から今度の刑法へ移つて、施行法で全部あれが当分の間で、当分の間が七十年後の今でもあれをやつている。明治十三年の人は選挙などという氣持はありません、專制政治だから。そこで今日の選挙でも、あの法條を使つて処罰している。ああいう古くさい明治十三年の太政官の布告を今日適用して処罰するというようなことは、どうも法務廳の威信にも関することだから、改正をしてつぶす考えはありませんか。選挙の実際観念のないところの投票の罰則、それが今日でも行われている。これは山口さんが法務次官になつたら、さつそくあれを廃止するだろうと思つたが、今日廃止法が出てないが、どんなものですか。
○山口(好)政府委員 先輩の古島委員の御質問でありますが、私たちもああした太政官布告などというものが今日行われておるということは、まことに不合理だと考えております。こいねがわくは立法府でありまする法務委員の方において、さつそくにひとつ來議会にでも御提案を願いましたならば、幸いと考えます。法務廳におきましても、この点は研究をいたしております。両両相まつて、ああいう法律はなるべく改廃をいたし、新しい法律できめる。こういうふうに行きたいと考えております。
○石川委員 古島委員の御希望はもつともだと思います。さらに一つこの問題を離れて政務次官にお聞きいたします。刑法五十五條の連続犯を廃した方がいいというので、せつかく廃止はいたしましたが、われわれ賛成したのでありますけれども、その後どうもあの法條はあつた方がよいように思われますが、法務廳においてこの点について研究しておられますか。廃止後における結果はどうであるか。五十五條の連続犯の規定を刑法におくという考えはございませんか。法務廳が賛成であるならば、われわれみずから立案してもよろしいのですが、御意見を承つておきます。
○山口(好)政府委員 ただいまの連続犯の問題でありますが、法務廳も現在いろいろ研究を重ねております。こまかい点は政府委員から説明させます。
○高橋(一)政府委員 連続犯の廃止の問題につきましては、その後この國会でも問題になりました。元の連続犯を二回にわたつて起訴する、從つてまた執行猶予にしたような場合でも、それができなくなるというような事例があることを私は知りまして、いろいろとその点について研究をしております。第一に実際どの程度あるのかということを今調べております。もう一つは執行猶予をなし得る場合の解釈の問題で、何とかそういう弊害を除くことができやしないかという点も研究いたしております。もし運用の方でそういう行き過ぎた場合がたいへんあつて、しかも解釈ではどうにもならないというようなことになりますれば、刑法の改正でも行わなければならないと考えております。
○古島委員 今の連続犯の問題ですが、実際はもしそういう場合があつたら、併合するようなことにやればよろしいのであります。ところが取扱い上非常に不都合なことをしている。たとえば檢事がその事件を調べて、いずれも記録には明瞭になつております。公判廷で調べるといずれの事件も明瞭に陳述して、明瞭に記録に書いてある。ところが初めの間、起訴状には片方の意見だけしか警察の意見書になかつた。今の新しい場合はそうでないが、現在引続いたものは、警察官の意見書通りというので起訴になつた。そこで裁判所がそのまま判決をするから、その一部だけは判決になつて、一つは残つておる。記録はちやんとできておる。しかも片方は強盗と窃盗の場合、強盗の方は地方裁判所の方でやるから、それがただちに今度は東京高等裁判所に來る。ところが窃盗を落したものだから、窃盗が簡易裁判所に來る。そこで簡易裁判所で判決したが、これは控訴しても、東京高等裁判所に行かずして、地方裁判所に行く、裁判所が高等裁判所と地方裁判所とわかれたがために、記録が明瞭になつておるのだが、それはどうしても高等裁判所で併合しないという不都合があるのですが、その場合、法務廳の方で何とか裁判所とうまく打合せをするとか、これは併合すべきものだという通牒をするなり、前の司法省でもあれば、裁判所にただちに移牒して都合よく行つたでしようが、今度はそうは行きませんから、何かそこに便宜ははかれませんか。
○高橋(一)政府委員 御指摘のような場合もあろうかと思いますので、その点もあわせて研究中であります。
○古島委員 あろうかじやない、現にあるのです。これは長いこと私の友人が弁護しておる事件ですが、東京高等裁判所に來て、東京高等裁判所でももう半年かかつております。地方裁判所の方でもそれは控訴されてから約半年かかつておりますが、私は高等裁判所が一まとめにやるべきものだという主張をして、そういうふうな手続をしろと言つておりますが、手続したが一向集まらない。共犯関係はほとんど同じだが、一人がそういう二個以上の犯罪を犯したというのが違う。共犯関係全部同樣なのだが、窃盗だけを落したものだから、窃盗だけはとんでもない方へ行つてしまつて、強盗だけは高等裁判所の方へ行つておるという実例がある。これから研究するなら大いに眞劍にやつてもらいたい。
○高橋(一)政府委員 承知いたしました。
○上村委員 この公証人法の改正につきまして、弁護士がつくつた証書の公証力というのですが、証拠力というのですか、これに対して私はずつと以前から考えておるわけですが、ある國では、たしか弁護士が自分の代理をしてつくつた証書に対しては公証力を認めて、執行力の基礎になるということをある古いもので見たのです。今の公証人法を見ると、まるで公証人のための公証人法のようになつておつて、人民のための公証人法ではないように考える。そうじやない。やはりどこまでも法律は人民のための法律でなければならない。そのために公証人がどういうふうになろうと、それは第二義的であつて、どうしても人民が契約書もしくは証書を確実にしておきたいということ、そのことが基本にならなければならないと思うのです。そうしますると、当然この弁護士が弁護士同士でつくつた契約書は、これは何かの形でそのままそつくり公証力を認めて、そうして原告代理になつた場合に、公正証書と同じ証拠力を持つなり、進んではその弁護士同士が正式な代理委任状をつけてつくつたところの契約書は公正証書と同じに認めて、あるいは執行役場へ持つて行つて、あるいは裁判所へ持つて行つて、この執行力を付與するところの基本的條項になるというふうにすべきではないかと日ごろ考えておるのでございます。今猪俣君の言われたように、私も新潟縣なのですが、あんな新潟縣の大きな廣いところで、公正証書をつくるといえば、新潟までわざわざ行かなければならない。そんなことをすると、せつかく公証人制度があつても、それを利用し得るものはほとんど少い。その近くの人か、あるいは金のある人か何かで、たいていの農民や山の中の人は公証役場で公正証書をつくれない。そういう場合には弁護士は方々に行きわたつておりますから、その弁護士というものが代理して、双方が契約書をつくつた場合には、これに対して公証力を持たすということは、弁護士の地位がだんだん上つて來た今日においては当然であつて、そうしてそれが人民のためになる。そのために公証人はあるいは事件が少くなるかもしれぬけれども、それはそれで、公証人のための公証人法ではない、人民のための公証人法であるならば、そういうこともお考えを願いたいと思うわけです。むろん弁護士がこれを濫用するということになれば、一面の弊害がないわけではないが、弁護士はおのずから弁護士法によつて正当に職務を行う。しかも自分らがつくつた証書はまるで反古同樣で、さあというときには何にもならぬというようなことが、われわれ弁護士の職務としてはどうもおもしろくないし、また公証力を持たすというようなことは、一面においては人民の便宜ではないかというふうに考えるのです。そういう御研究があつたか、当局においてそういうことを考えたことがあるかどうかということを、この際確かめておきたいと思うのですが、政務次官の御答弁を願いたい。
○山口(好)政府委員 ただいまのお尋ねに対してお答えをいたします。廣い意味では、上村さんの言われるように、すべての法律はやはり人民のためにつくられている法律であるということは、論をまたないと思うのであります。この公証人法にいたしましても、やはり國民の法律的な生活を確実にし、安全にいたすということのためにつくられておるものでありまして、ただほんとうにそれじや人民のためならば、弁護士同士のつくつたものもそれに基いて認めるとか、そういうこともさせるようにいたしたらどうかというような御説明を承つたのでありまするが、そこまで行きますと、やはり弁護士はお互い同士一種の代理人という立場にありますので、やはりその契約なり、とりきめに基いて公の権利を発動するというような場合におきましては、そこにやはり法律的なものをはさんで、より確実にし、安全にするということが國民のためではないかと思いますので、その意味におきましては、なおこの公証人の公証を経まして、一層その本律関係を確実なものにし、そうして國民がなるほどそれで確実なものと信頼いたしました、その信頼に基いて行われることが必要だろうと思います。もつとも弁護士同士がとりきめいたしたことにつきましても裁判所の法廷あるいは和解というような、調停に持出しまして、調書をつくつていただくような手続をとりますれば、一層確実なものに相なるわけであります。法務廳の現在の研究といたしましては、やはりそうした法的なものをはさみまして、國民の法律関係を一層確実、安全なものにいたすということを目的としておる次第でございます。いろいろと上村さんの御説のような研究はいたしておりますが、この公証人法としては、そういう根本的なとろこまで実はまだ研究いたしておりません。行く行くはそうした面についても、弁護士の地位あるいは教養、信頼というようなものが次第に高まりますれば、そこまで考えることも可能であろうと思うのであります。
○花村委員長 ほかに御質疑はございませんか。——なければこれより討論、採決に入りたいと存じます。 討論はこれを省略することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○花村委員長 御異議なしと認め、さようにとりはからいます。 これより採決に入ります。本案に賛成の諸君の起立を願います。 〔賛成者起立〕
○花村委員長 起立総員、よつて本案は参議院の修正した案文の通り可決いたしました。 なお本案に関する委員長報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願います。 ————————————— 〔委員長退席、北川委員長代理着席〕
○北川委員長代理 花村君より、安定本部に対して質疑の通告がありますので、これを許します。花村四郎君。
○花村委員 私は司法警察権と牽連いたしまして、経済調査廳の問題に関しまして若干の質問をいたしたいと思うのであります。 まず第一にお尋ねいたしたいことは、経済調査廳法の第一條に、経済調査廳の職務権限が大体において規定をせられておるのでありますが、これによりますと「中央経済調査廳は、國民経済の調和ある復興を図るため、物資の生産、配給及び消費並びに物價に関する経済統制を円滑に実施することを目的とする」とあるのでありますが、「経済統制を円滑に実施する」ということは、どういう意味になりましようか。これを詳細に御説明願いたいと思います。
○司波政府委員 経済統制を円滑に実施するという意味は、現在いろいろな法令によりまして、経済に対して統制を加えております。ところがそれに対して國民の法規の励行という面が必ずしもうまく行つていない。あるいはまた経済統制を担当する行政官廳においても、必ずしもこれを完全に実施していない。そのほかいろいろの原因のために、統制の秩序が乱れておるのであります。そういういわゆる流通秩序が乱れておるのを正しい方向に持つて行つて、國民経済の調和ある復興をはかることを究極の目標にいたしましてやるという趣旨でありまして、経済調査廳法の第一條の各号に掲げるような方法をもつて、この目的を達成しようというのであります。
○花村委員 そうしますと、経済調査廳の主たる職務権限というものは、経済調査廳法が審議せられたときに、鈴木國務大臣並びに安本長官がたびたび申しておることでありますが、要するにその一筋に、今度の案におきましては、そういう違反を防止するため予防的な方面に重要な意義がある云々ということで、大体において経済の違反行為に関します予防、防遏の方向に向つて進んで参りますことが、この経済調査廳を設置いたしました主要な目的とされておるのでありまして、從つて経済警察の復活であつてはならないということも、これきわめて明瞭であり、またこの種の事項に関して、安本長官を初めとして、殖田法務総裁もくれぐれも述べておるのでありまして、要するに経済違反の檢挙を主目的としたものでないということはきわめて明瞭であると思うのでありますが、この点に関してはいかがでありましようか。
○司波政府委員 もちろん御説のように、経済調査廳の目的は、でき得るならば國民の啓発指導その他の予防的な手段によりまして、流通秩序を害するような経済統制法令の違反行為を未然に防止するという点に重点を置いて運営される建前でありますし、また今日までその方針でやつて來ておるつもりであります。しかしながらこの統制法令の励行遵守ということは、口で言うべくしてなかなか困難なことでございまして、ことに業者の中にはいろいろの複雜な統制法令の拔穴をくぐつて、積極的にこれをもぐつてこの統制秩序を乱そうというような、惡質重大なものも相当あるのであります。これらに対しまして、ただお説教的な指導というようなことでは、なかなか流通秩序の確立ということは困難なのでありまして、この調査廳法第一條第二項の第四号に「経済法令に関する違反行為の調査に関する事項」ということを掲げ、またその第四章に調査官の権限といたしまして、強制調査に関する規定を設けました趣旨は、これらの惡質な者に対しましては、場合によつては強制権をも使いまして、断固たる処置をとるということを含んでおるのでありまして、ただ國民にお説教だけをしてまわれば、調査廳の任務はそれで済むのだという趣旨ではないのであります。
○花村委員 そうしますと、犯罪の予防防遏の方向に向つて指導して行くということが、要するに経済調査廳における本來の主たる使命であるということは、今の説明によりましても、またこの調査廳設置法案の提出当時における政府委員の説明によりましても明瞭でありますが、そういう事項に関しまして、今日まで経済調査廳はいかなる処置を講じておるか。それをひとつ詳細におつしやつていただきたいと思います。もちろん経済の違反行為に対しましては、第一條四号がありまして、これが調査でき得ますことはきわめて明瞭ではありますが、しかし違反行為は、これはちようど刺身のつまと同じことで、調査中にそういう違反行為を発見したというようなやむを得ざる場合に、この経済査察官に與えられた強権を発動するという建前でありますことは、これは一点の疑いもないところであります。ですから、この本來の使命である、ただいま申し上げました調査廳として当然なすべきこの指導等によりまして、そうしてこの犯罪を予防して行く。こういう調査廳本然の使命に向つて今日までいかなる仕事をやつて來られたか、それをひとつ詳しくお述べ願いたいと思います。
○山口(鐵)政府委員 お答え申し上げます。この檢挙のための檢挙をするのではなくして、統制の励行を確保する、経済の改善を目的とするということを目的としていろいろの調査行為をする。ここに調査廳が経済警察と異なる重要なる点があると思うのであります。しかしながら経済の改善あるいは統制の励行自体を目的としていかなる方法をわれわれが講じて來たかということになるのでありますが、これはいろいろな面でお答えできるのであります。まず第一点は、この実地指導という方法でございます。実地指導と申しますのは、一つの重要な事項を取上げまして、これが関係業者、すなわち生産者あるいは配給業者といつたような事業体を組織的に実地に歩きまわりまして、そうしてもし法令を知らないために違反を行つておる、——違反を行わないまでも、統制励行上不適当な業務運営をしておるという場合には、その点につきまして注意警告を発しまして、それを改善せしめるように措置する。これがわれわれが予防措置としてとつております最も重点的な方法でございます。なおそのほかに、一つの法令が新たに制定せられたような場合に、またすでに制定せられておる法令についても、十分関係業者の間に守られておらないような場合には、その関係業者を集めてよく法令の趣旨、精神等を説明し、違反を起さないようにするにはどういうように業務運営をしたらいいかということを説明し、また業者の実情を聞きまして、そして法令あるいは政府の運用方針が惡いということがわかつた場合には、ただちに行政監査、この第一條の第三号に書いてございます経済施策の実施に対する改善をはかるための行政監査の方法によりまして、違反の一つの原因となつておるような官廳事務運営の不備欠陷を是正するように心がける、さような方法も予防法的の目的でとつておる一つの趣旨でございます。なおこの廣汎複雜な統制を励行しますためには、関係業者に対する措置だけではどうしても不十分なのでありまして、どうしても八千万國民の協力ということが必要でございます。一般國民に対しても、法令の趣旨をよく了解してもらうためにいろいろの手段をとつております。たとえば新聞その他の報道機関を利用いたします。あるいはラジオの放送を利用いたします。またポスターの掲示、あるいはビラの撒布、あるいは展覽会、博覽会というようなものを利用いたしまして、統制の趣旨の励行につきまして、いろいろ國民の協力を求めるための宣傳をなしておるのであります。それで昨年度は予算があまりなかつたものでありますから、この一般大衆を対象といたします宣傳啓発の関係の事業につきましては、実はわれわれ大いに計画はあつたのでございますが、遺憾ながら予算的の裏づけがないために、極力経費のかからない方法を講じたのでありまして、從つて新聞その他の報道機関、それからラジオといつた報道機関、これらを利用することに重点を置いたのでありまして、これは中央放送局だけではなく、全國のローカル放送局を利用いたしまして、全國的にラジオ放送による宣傳啓発運動を展開しておるのであります。本日はこのNHKによつて放送された宣傳啓発事項の原稿をお手元に配付申し上げております。さようなことも予防的措置にわれわれが力を注いでおる一つの資料でございます。なお先ほど若干触れましたけれども、統制の励行ということは國民にだけ要求したのではいけないのでありまして、統制実施の状況を見ますと、遺憾ながら官廳の事務の実施方法に不備欠陷があるために、犯さなくてもいい違反が犯されておるという点も相当ありますので、かような方面につきましては、常に計画的に重要事項を取上げまして、これも全國組織的、一元的に行政監査を実施いたしまして、改めるべき点はすみやかに改められるように措置いたしまして、そうして相当の改善をすでに実現しておるのでありまして、これも申しますれば、違反の防止に関するわれわれの仕事の実績の一つの例であると考えられるのであります。大体われわれが違反防止施策として從來どういうことをやつて來たかという一般的な事柄につきまして申し上げました。
○花村委員 ただいまお述べになりました予防的措置に関しまする業者に対する分、また一般人に対する分、並びに官廳事務に対して行いたる分の予算をどのくらい使われたか、それは調査廳の全予算の中から人件費を引いた残りの部分の何パーセントになつておるか、それをお示し願いたいと思います。
○山口(鐵)政府委員 その関係につきましては、実は今ただちにお答えすることができないので、御要求によりまして、さつそくその分を摘出いたしまして計算して、後日資料として出したいと思いますが、それで御了承願います。
○花村委員 それでは後に、その予算に関する今の資料をお示し願いたいと思うのでありますが、要するに経済調査廳においては、先ほどから申し上げましたような、経済調査廳本來の使命でありまするところの経済違反の予防的面に活動をするというよりも、むしろ違反行為の摘発に全力をあげてやつておるのではありませんか。そういう話をわれわれはたびたび聞くのでありまするが、もししかりといたしまするならば、経済調査廳設置の趣旨に反するのでありまして、またその設置法案の説明並びに質疑における違反行為の摘発ということは、これは万やむを得ざる場合であつて、これは付随的の事柄であると、政府委員はしばしば明言せられたところであるのでありまして、その速記録にもはつきりと載つておるのでありまするが、その趣旨を轉倒して、そうしてこの違反事件の摘発にのみ沒頭して、予防の方面はほとんどかけ声だけで、実際的の仕事が行われておらぬということを聞いており、われわれもまた、そういうことではなかろうかと考えておるのでありまするが、その点はいかがでしようか。そうしてこの違反檢挙に関しまする総檢挙数並びにそれに要した費用、それをひとつお示しを願いたいと思います。
○司波政府委員 ただいまの花村委員の御質問は、いかなる具体的な事実によつてお述べになつたのか存じませんが、われわれといたしましては、この調査廳法の趣旨に沿いまして、予防に重点を置き、そうしてその間に、いろいろやつておるうちに生じたところの重大惡質違反は徹底的にたたくという心持で運営しておるつもりなのであります。このわれわれの仕事の対象は非常に廣汎にわたるのでありまして、ただいま具体的な数字は持つておりませんが、調査廳の各末端機構全般にわたりまして、いろいろ調査して行く。その結果、重大惡質違反に限つて告発するという建前になつておりますが、それに至らざる者に対しましては、警告を発しまして、將來の違反をいましめるというような措置をとつて來ておるわけでありまするが、それらの統計的な数字を見ましても、惡質犯として告発した件数は、そういう警告なり注意を與えた件数に比べまして、非常な小さいパーセンテージを示しておるのであります。さような資料につきましては、できる限り早く本委員会に提出したいと存じます。ただこの調査廳の活動の対象となりまして、違反行為を摘発され告発されたもの、あるいは告発されそうな、いわゆるすねにきずを持つ一部からは、われわれの活動に対するある種の惡声が放たれるということは、これは当然のことでありまして、それらの一部の声をもつて調査廳全体の活動を御批判なさるということは、若干当らない考え方であろうと考えます。
○花村委員 それでは今まで調査廳ができましてから、調査にとりかかつた件数は何件で、それを告発した件数は何件であるか、お示し願いたい。
○山口(鐵)政府委員 お答え申し上げます。何しろ出先機関が地方廳の末端まである関係で、調査統計がごく最近のものがなくて、この点は申訳ないのでございますが、たまたま昨年の八月開廳以來今年二月までの分につきまして、全國的のものを開めた統計数字がございますから、これについて御説明申し上げます。これについて全般を御判断願いたいと思うのでございます。先ほどから申しておりますような意味合いで、國民を対象といたしまして、調査に着手しました件数は、全國で一万四千六百十六件でございます。このうち告発するに至つた件数は一千百五十三件、すなわち一割にも足りない数になつておるのでございます。
○花村委員 ただいま調査と言われたのはどういうことですか。いわゆる経済調査廳法の第一條の四号の経済法令に関する違反行為の調査という、この意味の調査であろうと思いますが、この調査というのはどういう意味を持つておりますか。
○司波政府委員 調査廳の活動といたしましては、調査廳法第一條には項目別に職務権限を明らかにしておりますが、実際の運営といたしましては一定の計画を立てまして、いわゆる違反、摘発のための摘発をねらうという意味ではなくて、はたして法の命ずる通り、経済政策の命ずる線に沿つて経済の実体が動いておるかどうかということを、生産から消費に至るまで総合的に調査するというような方法でやつておるのでございます。その間に発見された軽徴な違反につきましては、注意を與えるなり、あるいは警告を発するなりにとどめ、その間相当組織的な大きな違反、あるいは小さくても非常に惡質なものを発見した場合には告発するという建前をとつておるのでございます。ただいま申し上げました数字に出ておる調査という意味は、そういう計画的、総合的な調査でありまして、告発した件数は、その間発見されたところの惡質なる違反行為になつております。
○花村委員 経済調査廳法でよく使つておりますが、調査という文字の意味がはつきりしないのです。私が調査廳法案を審議する場合にも、この質問はしつこくやつたのであります。やつたのだが、なかなか要領を得なかつたのでありますが、速記録にはこう書いてあるのです。
○田中(己)政府委員 経済法令の違反行為の個々の調査を申します。
○花村委員 個々の調査はわかつているが、その調査の内容を聽いているんじやありませんか。どういう行為であるか、具体的に何の行為、何の行為と並べて言うてくれ、 これが私の質問であつたのでありますが、これに対して、
○田中(己)政府委員 個々の事件につきまして違反行為がございますれば、必要な調べをいたしたいのであります。あるいは臨檢捜査あるいは差押えの手続をこの規定に從つていたす次第でございます。 こういう説明をいたしておるのでありまするが、経済調査廳法第一條第四号のいわゆる経済法令に関する違反行為の調査というのは、違反行為に関する臨檢檢査、差押え、その他の捜査を言うのではありませんか。あるいはそうでないのか、はつきりその点を伺いたい。
○司波政府委員 第四号の違反行為の調査は、第四章に掲げる法によるところの強制調査のみならず、任意の調査をも含んでおります。先ほど私の申し上げました計画的な、いわゆる生産から消費に至るまでの調査ということは、当初の目標は違反行為を見つけることが終局の目的でなくて、それぞれの企業を流通秩序を確立するような方向に動かして行くがために、いわゆるわれわれの言葉で査察と呼んでおりますが、査察して行く。そして査察する間に軽徴な違反なり、あるいは法令の不知というような事項がありますならば、よく業者に懇切に注意してやる。しかしながらその間に惡質な違反行為があるならば、これを告発するという手順になるのでありまして、経済調査廳の機構が三本建になつておりまして、そのうちの査察部という系統に属する係官においていわゆる総合的な査察をやる。その総合的な査察の一部に第四号の違反行為の調査という事項がある。そしてこの違反行為の調査は任意の調査と強制調査を含む、かように御了承願いたいのであります。
○花村委員 よくわかりましたが、そうしますと、今言われた任意の調査というのは、いかなる性質のものでしようか。
○司波政府委員 これは刑事訴訟法に基くいわゆる犯罪捜査と大体似た行為なのでありますが、強制調査はあるいは臨檢、差押え、あるいは逮捕するというような強制力をもつて調べるという行為でありますが、任意の調査とは、相手方の承諾を得た、つまり強制力によらざる調査ということであります。
○花村委員 そうするとただいま申された一万四千六百十六の調査は、任意調査と強制調査を含んだ件数であると承知してよろしゆうございますか。
○司波政府委員 さようでございます。ただそのうちの強制調査は、具体的な統計をとつておりませんが、おそらく告発した件数の大部分は任意調査の結果告発しておるのでありまして、強制調査を用いたのは非常に少数であることを申し上げておきます。
○花村委員 そうすると、任意の調査というと、相手方の同意を得た調査なんですが、調査をやるときに、相手方の同意を得てほんとうにやつておりますか。同意じやなく、経済査察官が強制的に行つて、向うできらおうが、好むと好まざるとにかかわらず、強制的に刑事訴訟法の規定によらずして査察をやつていやしませんか。これはあなたは口じやうまいことをいうけれども、実際においては、その一万数百件の調査というものは、好むと好まざるとにかかわらず、承諾するといなとにかかわらず、査察官が行つて、みなやつておるのじやありませんか。われわれの知り得た範囲においてもみなやつておりますよ。どうもその査察官がうるさく何回も來て査察をされるので、生産に大なる障害を來して困るということまで言うて、われわれのところへ頼みに來る者がある。そういうことをみなやつておるじやありませんか。これは任意といえばなるほど口の上では任意と言えるのだが、実際には任意にやつてもらいたくてやられる者はありませんよ。しかしこれを好むと好まざるとにかかわらずやるのは、まあいいでありましよう。しかしながらそういう調査をやつておりますけれども、非常に調査の割合に告発件数というものが少い。少いということは、要するにすべてが任意調査だといえば、それはまた別でありますけれども、おそらくこの任意調査というものは、実際刑事訴訟法によらざる強制調査なんだ。でありまするから、そういうむりをやるからこういう摘発すべき件数が出て來ないということを実績の上で示しているのだ。あなたは任意調査というようなうまいことを言うて逃げられるけれども、実際はそうではないのだ。任意調査に名をかりて、強制的な調査を実際やつておるからして、從つて告発の件数が少いのである。そこに要するに査察官のむりがあることを私は言い得ると思う。査察官が調査などしなくてもよろしいところをやつておる、要するに査察官の調査というものは、捜査、臨檢にひとしいものです。この違反を予防する意味において指導するとか、補導するとかいう建前ならいい。そうじやない。この調査は要するに任意に名をかりた不当な強制調査をやつておる。でありますから檢挙件数というものは、少しもあがつていないじやありませんか。そういう点をあなたはお認めになりませんか。ならぬとすれば、下部における役人の仕事というものをあなたは御承知がないのだ。そういうことじや、ほんとうにわが國の乏しい財政のうちで新しくつくつたこの査察廳というものが意味をなさぬ。そういう点はいかがですか。
○司波政府委員 率直に申し上げまして、現在のような國情、特に現在のような経済情勢のもとで、いろんな業者の立場から申し上げますと、おそらく大なり小なりの違反行為をやつていない業者は、ほんとうにまれであろうと思われる。そういう意味におきまして、業者から進んでぜひひとつ調査をやつていただきたいという氣持のないということは、そういう意味で、任意調査の名目であつても、強制調査じやないかという、ただいまの花村委員の御説は一應ごもつともだと思います。しかしながらこの流通秩序の確立ということは、ある意味では結局公共の福祉のための一つの國の行為なのでありまして、その線に沿うて違反行為を防止する。そうしてやみを撲滅して、流通秩序を確立するために國の機関がある計画を立てて業者その他を調査する。そうしてひとつそういう趣旨だから協力を願いたいという場合には、言葉として適当でありませんが、本能的な業者の心理といたしましては、おそらくいやだろうと思います。しかしながらやはり吏員は國家の一員でありまして、そういう國の機関の合理的な希望なり、協力を求めることに対しましては、何らか特別の正当の理由のない限りは、大体協力して來る。そしてその協力を得てやるわれわれの行為を、任意捜査と申してさしつかえないのじやないか。そうしてもし何らかの事情で正当な理由がない。こちらは何らかの違反行為の端緒を握つておるというような場合に、調査をもし拒むといたしますならば、最後の手段といたしまして、この四章に規定されておるところの強制調査の方法に訴えるよりほかないのでありまして、経済査察廳といたしましては、できるだけさような令状を持つて行くような強制調査というものは避けて、なるべく相手方を説得いたしまして、その協力を求めて調査をするというやり方でやつているわけでありまして、さような場合に個々の本能的な心理においてはいやだ、それにもかかわらずこれをやる、そうしてあとでいやなものをやられたといつて、國の行為を強制調査だとお認めになるならば、あるいはそういう見方もあり得ると思いまするが、私どもの立場におきましては、さような場合にはよく相手方の了解を得て、協力してもらいたいと考えておるのであります。なお、ただいま御質疑の後段にありました一万何千件の任意調査をやつて、千百件くらいの告発しかしていないというのは、事実上の強制調査をしておるからじやないかという御質問の趣旨がよく了解しかねるのであります。むしろわれわれの考え方からいたしまするならば、今言つたようなことで、たまたま業者の法規の不知に基くとか、またわれわれの発見する場合はこういう場合がたいへん多いのでありますが、商工省なら商工省のやり方が非常に惡い。たとえば主資材と副資材の割合が非常にアンバランスになつておる。そのために副資材についてはどうしてもやみ買いをしなければ生産というものが成立つて行かぬ。商工省においても、割当によつてはそういう足りない副資材をやみ買いしていることは大体默認しておるというような形になる場合に、その副資材をやみ買したような行為については相当の考慮を加えていると思います。そういうようなことによつて告発件数が非常に少くなつておるので、ただいまの單なる一例にすぎませんが、十分に経済施策なり、現在わが國の置かれておる経済情勢全般をよく勘案いたしまして、判断を加えてやつております。
○花村委員 それはなんとおつしやつても、これは任意調査に名をかりて強制調査をやつておることは、間違いがないのであります。現に私の知つておる人も、十何人か半月も行つてこの調査をいたしておる。十何人かで半月も帳簿を引揚げられたり、呼びつけられて毎日のように大勢尋問をされ、そうしてまた工場の方へ案内したり、倉庫に入つておる品物について一々調べられたり、それがために非常に生産の上に大きな障害を來すので、ぜひひとつ調べるならば早く調べて、そうして済ましてもらいたいということで、現に私が頼まれて東京の調査廳に行つて頼んだ。それでもまだやまない。これでやはり任意調査であるとして、調査される人の自由意思に基いてやるんだということがはたして言い得ましようか。これは一つの生きた私の体驗した例にすぎないのであります。ところがそういう場合をあちらでもこちらでも幾つも聞くのです。調査廳から來て調べるのに、歓迎して、どうぞ調べてくださいというようなことを言つて、喜び迎える者はおそらくあるまいと思う。みんな強制的に行つてやつておる。そういうことが要するに経済調査廳の行き過ぎであり、そういう行き過ぎを必ず將來において釀成するであろうことをわれわれはこの法案をきめる場合において心配したのであります。その始まりは経済査察廳という名前であつたのでありまするが、そういう名前はふさわしくない。経済警察の復活のようなことを経済調査廳がやるようなことに相なつては、これはまことに遺憾である。経済違反などは、これは経済警察へまかせればいいんだ。でありまするから違反行為のないように予防をするという意味で、また統制物資をその統制された線に流して行くということによつて、この犯罪を少からしむるという大きな意味をもつて、この経済調査廳なるものを設けることにして法案が出、しかもそういう説明をあらゆる場合にしておる。われわれもほかの委員も、こういう経済調査廳というものができると、必ずいわゆる違反行為の摘発に没頭する。いわゆる経済警察を復活するようなおそれが多分にあるから、そういうことのないようにというので、すべての委員がその一点に集中して、もつて警告を発したことはあなたも御承知であると思う。しかるにもかかわらず、やはりわれわれが予期した通りに、経済違反のないように指導し、そうして予防して行くというようなことはほうつておいて、むしろこの経済違反の摘発に興味を持つて、この点のみに集中してやつておる。しかも第一條にはいろいろ官廳に関しまする経済施策に関する監査等の規定が設けられておるのでありまするが、ほとんど官廳などに対してはやつておらぬじやありませんか。むしろ官廳方面に対する総合した計画の上に立つて、経済施策がうまく行われておるかどうかということを査察することが望ましい。むしろ一般國民よりも、官廳の経済施策に対してその運行よろしきを得るように、この経済廳において査察をして行くということこそ望ましいことであるのでありまするが、官廳方面のことはいろいろ規定があるけれども、ほとんどほつたらかしておいて、そうして一般民間の経済違反摘発にのみ專念をいたしておるということは、まことに遺憾に思うのでありまするが、あるいはそういうことはないと言つて否認をせられるかもしれませんが、たとえば「行政機関の行う経済法令に関する経済施策の実施に対する監査」は一体どういうことをやつたのか。そうして経済法令に関する違反行為について、警察その他行機関の行う予防及び捜査に対する事前勧告、事後勧告であるとかいうようなことはいついかなる方法でやつたのか、あるいは「経済法令の規定の趣旨についての警察官及び警察吏員の啓発に関する事項」なおさらに「経済法令に関する違反行為について、警察その他の行政機関の行う予防及び捜査の状況並びにその改善についての一般的情報收集」こういうことをどの程度にやつておるか、お示しを願いたいと思います。
○司波政府委員 ただいまの花村委員の前半の御質疑によつて、大体どういう事件でこういう御質疑になつたかということが了解できたのでございますが、具体的には名前を申されませんでしたが、おそらく津田纖維の関係の事件のことだろうと私は了解したのであります。この事件はこの津田纖維がやみをやつておるから、こいつをひとつねらい打ちにして、何とかあげてやろうというような趣旨で摘発した事件ではないのであります。御承知のように纖維産業というものは輸出産業の花形であり、しかも原料である原綿は全部海外からの輸入に仰いでおるというような趣旨で、その輸入綿がいかに國内に使われておるか。はたしてそのメーカーなり販賣業者の段階において、相当やみに流していはしないか。むしろわれわれの集めた情報によれば、相当量の綿糸あるいは綿布がやみに流れているということを入手していたのでありまして、この纖維における流通秩序を確立するということは、將來における原綿輸入の関係の対外信用上も重大な問題であるというふうに考えまして、経済調査廳といたしましては、いわゆる査察の重要なテーマとしてこれを取上げまして、三月一日から最初は二箇月の予定で全國の纖維関係のメーカー、販賣業者につきまして全面的に総会的に、計画的調査をするという綿密な計画を立てまして、調査を開始したのであります。そうしてただいま申し上げました津田纖維の事件もこの間に発見された、どちらかといえば惡質な違反なのであります。本件につきましては、最初は任意調査で着手いたしまして、別に違反を摘発するという目的でなしに、この津田纖維というのは漁網のメーカーであります。割当綿糸によつて切符に指示された通りの漁網をつくつているかどうか、この実体を把握するという趣旨から調査しておりましたところが、その漁網用の綿糸をメリヤス製造業者あるいはその他ブローカー等に相当量やみ流ししているという事実が出て参りましたので、中途から強制調査に移り、さらに檢察廳に告発いたしまして、現在においては檢察廳の捜査のもとにあるケースなのであります。そういう意味で、事件の全貌については檢察廳の関係もありまして、本席で説明することをはばかるのでありますが、ごく概数を申し上げましても、現在まで判明しているところの横流し綿糸の額は一億円以上に達しておる。さらに今後取調べることによつて、もつと多くのやみ流しの事実が出そうな事件なのでございます。それは全國にわたる纖維——纖維と申しましても非常に種類が多いのでございますが、これのメーカーあるいは販賣業者全般にわたつて調べたその一つにすぎないのでありまして、それをもつて経済調査廳の行き方が警察的だ、摘発のみを目的とした活動というような結論をお出しになることは、やや早計の感がするのでございます。それから調査廳が行政監査その他全然やつてないじやないかという御質疑でございますが、これははなはだ認識不足でありまして、もちろんこのごろの新聞は、必ずしも私どもの行為を全部書いてくれませんので、あるいはお目に触れないということをもつて、ただちにかような断定をされるということははなはだ迷惑なのでありまして、もし何か具体的にお調べになつた結果、何もやつていないということならば、はなはだけつこうでございますが、別に私の方で行政監査をやつているかどうかという事実につきまして、花村委員から御紹会のあつた事実もないのでありまして、これにつきましては、不幸にしてきよう監査関係の主任部長がこの席に來ておりませんので、なんでしたら別の日に詳細に監査部長から説明したいと存じます。特にこの調査廳発足後における監査部の活動というものは、最も活発でありまして、商工、農林その他の行政廳のあらゆる題目にわたりまして監督を遂げまして、そしてこれらの不備欠陷を指摘し、改善方策につきましてもいろいろ実現を見た部面も非常に多いのであります。そのほかおあげになつた事項についてもそれぞれやつておるのでありまして、ここで説明することは非常に長くなるので、いずれ御要求がありますれば資料として提出したいと考えます。
○花村委員 それでは資料として御提出を願うことにいたしまして、ちようど今漁網に関する問題が出たからさらにお尋ねいたしたいと思うのでありますが、昭和二十四年五月十日の新聞に、横流れ一千万ポンド、漁網用綿糸のやみ摘発、経済調査廳乘り出すという見出しで、新聞記事が出ておるのでありますが、これを見ますと、かなりこまかく書いてあると思うのであります。これはおそらく経済調査廳か、しからずんば檢事局以外に、かくのごとき事実を知る由もないことはきわめて明瞭であります。從つてこの新聞記事が調査廳か檢察廳から出たということに相なるのでありますけれども、こういう記事は、これはただ單に簡單に見逃すわけには参らないのであります。GHQ方面に対しましても、漁網一千万ポンドを横流ししておるというようなことは、これは経済九原則実施の上から言うても、あるいはまた統制経済実施の上から言うても、きわめて重大な問題であり、私もいささか関心を持つておりましたので、この点を檢察廳へ行つて聞きましたところが、檢察廳も驚いておつた。まことに困つた記事だ、こういう記事はわれわれ檢察廳では全然あずかり知らざることであつて、新聞記者等に対しては発表しておらないのであるから、從つてこれは調査廳でこの資料を提供したものに違いない。こう申しておつた。でありますから、われわれもそう思うが、こういう材料を世間へ発表したかどうか、それをお尋ねしておきます。
○司波政府委員 この新聞記事の点につきましては、私承知しております。発表したことにつきまして、調査の段階ではあり、やや妥当を欠く感があると思いましたので、私自身ではありませんが、主務部長におきまして調査いたしましたところが、新聞記者の探訪によつて、記録がありましたものに尾ひれをつけて書いたという事実なのでありまして、内容につきましてはかなり当つておる点もあり、違つておる点もございます。そのような点につきましては、調査廳が公式に発表したものではないのでありまして、新聞記者が探訪してとつた記事だというように御了承を願いたいと思います。
○花村委員 これは調査廳として公に発表したものではありますまい。私も公に発表したものであると申したのではありませんが、少くともこういう資料を出したことだけは間違いないのです。そうしますと、こういうことを書いたがためにその筋の方へも刺激を與えるどころじやない、ただちに向うの方で商工省の綿糸課の奥山事務官を呼んで、そして向うの方からすぐお小言が出ておる。そればかりではなく、こういう記事が出たがために、この事件に関係を持つておつた者が逃亡をしたという事実もある。捜査の面に、檢査権行使の面に、まことに重大なる惡影響を及ぼしておるというようなことが事実として現われて來ておるのでありまするが、まことに私は不謹愼きわまるものであろうと思うのであります。おそらくこういう発表は上層部では知らぬと思いまするが、しかしあなたはこういう記事をこの捜査半ばにおいて出すことが妥当であるとお考えになるかどうか、それをお尋ねいたします。
○司波政府委員 その筋との関係でございまするが、かような重大犯につきましては、その筋へは全部公式に報告することになつておりますので、いずれおそかれ早かれかような事実はその筋にわかる事実でありまして、その辺の惡影響ということは五十歩百歩の問題ではなかろうかと考えられます。ただ調査の過程におきまして、かような事実をたとい探訪記事といたしましても、新聞記者に漏らしたということは、妥当を欠く処置ではないかと私は考えております。
○花村委員 もしそういうことでありましたならば、こういう資料を一体何人が出したのか、その点を十分御調査をなすつて、今後かくのごときことを再び繰返さないようにしかるべき御処置を願うべきが至当と思いますが、その点いかがですか。
○司波政府委員 その点につきましてはすでに中央調査廳といたしましては、地方調査廳に嚴重に警告を発しまして、かようなことのないようにという措置はすでにとつております。
○花村委員 そこでなおお尋ねしたいのは、この新聞の記事によりますると、漁網用綿糸というものが、全配給量の約六割強が横流れをしておる。すなわちこの一千万ポンドというのは大体全割当配給量の三割強に当るということに相なつておるようでありまするが、もしこの記事のごとき事実がありとすれば、この記事こそまさに経済調査廳の怠慢そのものを私は暴露したものであると申し上げてよかろうと思います。こういうことのないように、何ゆえ今日まで犯罪予防に関するそれぞれの措置を行つて來なかつたか、経済調査本來の使命でありますところの統制違反を予防するという面に向つて、強力にその施策を進めて行かないがために、遂にこういう横流しの問題があらゆるところに起つて、しかも配給量の三割というような莫大な横流しをしておるというような結果を來した。違反として摘発して初めてこれがわかるようなことであるから、この経済調査廳がその本然の使命を果しておらない、こう私は申し上げたい。先ほどのようなくだらぬ任意的な強制調査というものをやつて、そうしてお約目的にやつている、こういう中途半端なことをやるからいけない。経済違反があつたならなつたで、その專門家の経済警察に渡してやればいい。そうしてその筋の專門家にまかして、そうして摘発なり何なりやればいい。こういう強制力を持つた、そうして刑事訴訟法の強い権限を持つた捜査檢挙、あるいは差押え等をやらずして、指導をするでもなく、摘発をするでもないというような中途半端の違反行為の摘発に向うようなことをやつておるから、こういう問題が起きて來る。でありますから、先ほどの調査の件数は多いが摘発が少いというのはそこにある。調査方法が惡い。考え方が惡い。第一経済調査廳でやらないようなことをやつておるからそういう結果が起きて來る。でありますから犯罪予防に対する面に対して強く推進して、そうしてこの違反行為というものをなるべくなくして、統制物資を軌道にまつすぐに乘せて行くという方向に多大の努力を拂わないがために、こういう全配給量の三割というような大きな横流れが出ておるのじやありませんか。こういうことに対しまして、調査廳の方においては何らの責任を感じませんが。これは当然であるとあなたは考えておられますか、いかがですか。
○司波政府委員 御承知のように、現在経済統制の対象となつておる物資、あるいは業種というものは非常に復雜多岐にわたつておりまして、もし経済調査廳が数万名の人員を擁しておりますならば、発足早々にあらゆる業種にわたりまして、調査廳の精神に沿つたいわゆる予防を主とした調査をやり、そうしてその段階において惡質なものがあれば摘発し、また行政改善を加えて行くという措置をおそらくとり得ただろうと思いますが、花村委員もよく御承知の通りに、わずかに全國で三千五百の人数をもちまして、しかも相当やみ攻勢の強い現在の経済統制のまつただ中に新しい官廳として乘り出したわけでありまして、もちろん今まで纖維の方面に査察の計画をやり得なかつたということにつきましては、その事実を認めざるを得ないのでありまするが、それぞれ重点物資を選びまして、それぞれの段階において、あるいは十月、十一月のころにおきましては木炭の関係をやり、また魚の関係をやり、その他あらゆる物資、あらゆる業種を対象にしてそれぞれの関係で重点的にやつて來たのであります。この纖維につきましても、ちようど二月一日から、いわゆる國有綿制度が民間業者に輸入原綿を拂い下げるということに制度が切りかわりましたのを機会に、この査察をやつたのであります。これからいろいろな、單に津田纖維事件という摘発の資料だけでなしに、全國的に集めた相当総合的な立場からするところの調査から得た資料によりまして、あるいは行政改善、あるいは民間業者に対する指導に手を打ちたいというふうに考えておるのでございまして、そういう今までこの問題を取上げなかつたことに対するおしかりは、能力に制限のある調査廳として、花村委員にひとつ御返上申し上げたいと思います。
○花村委員 それはあまりにも意外な御返答でありました。もちろん今日統制されておる物資の多いことはもちろん言うまでもありません。このすべての統制物資に対して経済調査廳がその万全を期するということは、これはもちろんできないでありましよう。できないけれども、しかし経済調査廳としての使命を果す意味における機構としては、大体これで十分であると申してよかろうと思う。またこれで十分であるということで、こういう法案をあなた方役人がつくつたのではありませんか。ただ経済査察官が五千名に相なつておつたのを、三千五百名に削られたのでありますけれども、しかしそれは削られたがために、おのずから経済調査廳の職務権限というものが縮小されて來ておる。前には査察官の権限は、司法警察官とほとんど同一の権限を與えるような原案であつた。でありますが、この三千五百名に五千名から少くしたということも、要するに経済調査廳の権限を縮小したためなのであります。でありますから、從つてこの経済調査廳のやるべき仕事以外の仕事をやろうとするからいけない。それだから何人査察官があつても、手が足らぬということになる。自分の官廳に與えられた職場をはつきりと守つて行くということでありますならば、決して私は足りないことはない、不可能なことはないと思う。もし今日のこの経済調査廳の機構をもつてしては不可能であるとするならば、あなた方自体が初めになぜそういう不可能なる経済調査廳をつくつたのでありますか。この犯罪の予防という方面に対して、あるいは経済の統制を円滑に運用せしめるという方面にひたすら力を入れて、そうして違反行為の摘発などということは、これは経済警察官にまかせておけば、今の機構で十分足りるのだ。それを本然の経済調査廳の職務権限というものを放擲しておいて、むしろ警察官的な——もちろん警察におられた人が査察官になつておるから、取締り強化の方面にむやみやたらに進みたがるのも、これもむりもなかろうとは思いますけれども、そういうやらなんでもいいこと、さしみのつまにもひとしいような仕事に向つて全力を集中して行くからできない。であるから、こういう横流しの問題が起きて來るのです。それで取締つているうちにこういう問題が出て來て、驚くようなことになる。それはあなた方みずからが墓穴を堀ると同じことなんです。そういうことをあなた方お考えになりませんか。手が足りないから、こういう横流し事件が出て來るというようなことであるならば、あなた方のような経済調査廳はおやめになるがいい、廃止するがいい。この國家財政のまことに窮乏の折柄であり、しかも出先官憲を整理しなければならぬという場合において、どんどん配給の三割もの糸が横流れをする。これは糸だけの例でありますが、おそらくほかの品種におきましても、やはりこういう事象が起きておるというても決して間違いないと私は思う。こういうことはあなた方の職務権限をはき違えておるからなんです。そうあなた方はお思いになりませんか。機構が小さいとか、予算が少いとか、人員が少いからできぬなどということは、これは兒戲にひとしい言葉で、われわれの國会においては、少くとも答弁すべき言葉ではないと私は信ずる。
○司波政府委員 繰返しても同じことで、結局見解の相違だと思いますが、ただ一点、調査廳の定員が五千名であつたのが三千五百名に國会で削られた。それは調査官の権限を縮小したからだというお説でございますが、これは花村委員も当時の委員会に御関係があり、私自身も政府委員としてこのことについて御説明申し上げたのでありますが、この調査官の権限の第四章につきましては、私の考えでは字句の一部を修正はしましたが、実質的な変更は全然ないという確信を持つているのでありまして、どういう点において権限の縮小があつたか、そのために千五百名だけ不用になつたか、そこらの因果関係が、もし花村委員から具体的に御教示願えれば幸甚だと思うのであります。またそれ以外の調査廳の行き方に対する批判につきましては、一應御批判として承つておきますが、私の信念におきましては、もちろんわれわれ力の足らざるところもあり、また努力の足りない点もあるかもしれませんが、全國の調査官極力一生懸命やつているのでありまして、もし國民の総意においてかような調査廳というようなものは無用の長物だという御意見でありますれば、われわれがどう考えましても、これはやむを得ないことでありまして、國会に廃止法案を提出いたされまして、廃止していただくよりほかはないと存じます。
○花村委員 私らはこの経済調査廳設置の際に、これは無用の長物だと言つて反対したのでありますが、しかししばらくその実績を靜かに見ておつたのでありますけれども、今日から振り返つて考えて見れば、われわれの言うたことがやはり的中している。権限を削つたものじやないとあなたは言われるのですが、今材料がありませんけれども、多分調査官にいたしましても、査察官という名義を用いて、しかも刑法の二百二十四條ですか、司法警察官と同樣な権限を與えられて、経済違反の檢挙をもつぱらやるというような建前を、しかもその名前も経済査察廳と呼ばれておつた。それを、そういう経済警察を復活するがごとき、司法警察官的な権限を持たせることはいかぬ、しかもこの経済調査廳の権限においては、ちようど今日の警察署と同樣な経済署という名前でしたか、名前ははつきり記憶がありませんが、警察署のような小さいものが全國へばらまかれる計画であつたんじやないでしようか。それはあなたも御承知でしよう。そんなものは私が説明しないでも、法案をごらんになればよくおわかりになることであろうと思う。そして権限もいろいろ縮小せられ、その権限の内容における性格がかわつて來たから、三千五百名でいいということになつた。三千五百名でありましても、これを有意義に使い、そして眞に業者の中に解け込んで、民主的に、官吏風を吹かせなんで、経済違反のないようにうまく指導して行きますれば、相当の効果をあげ得るのです。そういう予防的な措置を講じておらないから漁網用の綿糸においてすらも、三割も横流れがされている。これをあらゆる統制物資について考えて見たらどうでしようか。すこぶる多いものである。こういうことは要するに犯罪予防の面を必要とするということを経済調査廳設置法案のときに何度も繰返しておる経済違反の檢挙じやないということを栗栖安本長官も、ときの鈴木法務総裁も、その他の政府委員も繰返して言うておる。ここに私はちやんとしるしをつけて持つておるから読み上げてもいいのだが、時間がかかるから申し上げませんが、何度も繰返しておる。そうしてそこへ向つて全委員が万全の考慮を拂つている。経済警察の復活に相なつてはならぬ、違反行為に集中することがあつてはならぬ、違反行為に沒頭することがあつてはならぬ、犯罪予防の面に働いて、その働き中違反の出た場合においてはなるべく警察官にやらして、経済調査官というものは、犯罪には手を触れぬようにするということまで強調しておいた。そういう意味のことを政府委員が説明しておるのです。でありますから、これはただ机上の議論を言うのじやない。そういうことがこういうことに現われて來るのである。こういう大きな違反を起すようなことになつて——むろん起した人も惡い。起した人が惡いから刑法上の責任を負うのでありまするが、こうなさしめたことは、予防の面にそのよろしきを得なかつたからで、監督官の方でも大きな責任を負わなければならぬのではないかと思うのでありますが、こういう点について経済調査廳の機構が小さくて、統制物資が多いから手が間に合わぬなどという答弁をなさるのならば、もう経済調査廳からお引きになるのがよかろうと思う。そういう観念を持つた人では國家の統制などは思いもよらぬことで、百年河清を待つにひとしいものであります。そういうことであつては困る。またそういうことであつてはならぬ。しかしながら私は今日あなた方に対して、熱意がないとは申しません。もちろん官吏として相当に努力はしておられることも認めるけれども、その努力が軌道に乘つて、その與えられた本然の仕事に対して精根を傾けるのでなければ意味をなさないことになる。でありまするから、こういう問題はむしろ天下に発表して——少くとも経済廳ということを知つておるものは、経済廳の無能を自分みずから暴露したものであると申し上げてよかろうと思うのでありまするが、こういう点については十分に御考慮願いたいと思う。 次に與えられた資料の中で保管請書徴取調べというのがあります。保管請書徴取ということを行つておることを私も現に知つておる。これは現に先ほど司波さんが言われた津田纖維でも、昭和倉庫株式会社に百九十梱、岩友倉庫株式会社に百二十七梱、最近に配給された綿糸が入つておるのであります。ところがその綿糸に対して保管請書なるものをとつて、この綿糸はわれわれの許可あるまでは手を触れることもできなければ、処分することもできなければ、搬出することもできないというので、ほとんど差押えしたと同樣な状態に置いてある。今日実は津田纖維でも、その糸が出て來ないがために、四百の職工が手をこまぬいて工場を休まなければ相ならぬことになつておる。でありますから私は安本長官の青木君に対しても、どうも不合理なことじやないか、配給や消費の円滑をはかろうという目的をもつて経済調査廳ができておるのに、生産を阻害するようなことをやつておるのだから、こんなばかげた官廳はないじやないかと言つて抗議を申し込んで、きようは出て來てもらうように言つておいたのだが、出て來ない。個人的な話でははつきりしないから、公の場所において明快なる答弁を求める意味において安本長官の出席を求めたのでありますが、出て來ない。法務委員会を侮辱する意味はありますまいが、こつちは侮辱されるような氣持もして、これはけしからぬと思うのでありますが、とにかくここに保管請書というものがある。これは一体どういう性質のもので、いかなる法律によつてこういうものをおとりになつておるか、それをまず第一にお尋ねします。
○司波政府委員 これは弁護士をやつておられる花村委員としては、刑訴法上のいわゆる押收ということのほかに、法律に基かずして物を証拠品として押えた場合、本人の承諾を得てやる領置処分ということを御存じだろうと思う。保管請書と申しますのは現在は隠退藏物資の調査をする際に、いわゆる不正保有物資が発見されると、それは正式に不正保有物資等特別措置特別会計法によつて買上げになるわけでありますが、その買上げになる前の散逸防止の手段といたしまして、本人に保管させて、これは移動しないという本人の承諾を得て誓約をする文書なのであります。その保管請書を出さない場合には、臨時物資需給調整法に基いて発せられております過剩物資等在庫活用規則の第四條に基きまして保管命令を出す。しかしながら保管命令というかた苦しい処置でなしに、本人が應ずるならば、そういう任意処置でよいのじやないか。そして多くの場合これに應じますので、任意処置としての保管請書という形式をとつて事務を処理して來ておるのであります。本人が應じない場合には、四條によりまして保管命令を出すという建前になつております。なお不正保有物資を官廳が発見して、それが不正物資であると認定した場合におきましては、その物資は他に讓渡したり、引渡したり、またその形質を変更してはならないということにこの活用規則の第二條でなつておりまして、それぞれ罰則がついておりますから、ただいまお話になりました百五十梱の品物がはたして不正物資であるかどうかということは、私どもまだ具体的に調査しておりませんので、具体的な場合については言えませんが、おそらく保官文書を徴しておるのでありますから、当然経済調査廳の係官におきまして、不正保有物資という報告に基いて認定をしたものと存じます。
○花村委員 それがさつきの任意調査と同じことなので、本人の任意提出を求めるというのでありまするが、実際は任意提出じやないのじやないですか。強制的にやつておるんじやないですか。任意提出しておるのならば、任意に保管請書を出したものが、その荷物の保管を解いてくれというようなことを懇請する必要もない。私は現に津田纖維の実例で当つている。津田の方じや四百の職工が今日手をこまぬいて遊んでおる。不正でも何でもない。最近配給を受けたばかりの新しい物資がある。不正も何もないにもかかわらず、保管請書を取つて、これを差押えと同樣に扱つておる。もしそういうものであるならば、裁判官の命令書に基いてどうして正当の規定でやらないのであるか。そういうところに経済調査廳の行き過ぎが起つて來る。必ず起るであろうことをわれわれは予想し、そうしてこの法案の審議の折にも、あらゆる面から警告を発し、そうしてそのことなきよう、われわれは経済査察官の権限に対しては関心を深めておつた。でありまするから司法警察官的な権限も、それを濫用するおそれがあるから削つたのであります。それだからそういうものは経済警察官にまかせればいいという意味で権限を削つてある。ところがやはりこういう行き過ぎをやつておる。しかもこれは少いものじやない。私もこれはただに津田纖維ばかりだと思つておりましたところ、驚くなかれ相当数に上つておる。この数字はいかなる数字かわかりませんが、莫大な数字になつておりますが、こういう莫大なる法令違令を——三十億というのはあまり多過ぎるので、私は言うのを躊躇したが、三十億からも請書をとつて、そういう違反行為をやつておる。こういう権限外の行為をやつておるから、さつき言つた新聞に出たような配給量の三割からも横流しが出て來る。これは違法じやありませんか。任意に提出するものとありますが、経済査察官が行つてむりやりに強制的にとる。出さなければどこかでかたきを討たれる。江戸のかたきを長崎で討たれるから、いやだけれども皆出しておる。のみならず出すばかりでなく、出して生産に支障が起きては困るから、それを返してもらいたいと懇願しても返さぬじやありませんか。これでも任意提出とあなたは言うのですか。そういうことを強弁されるのですか。それをお尋ねします。
○司波政府委員 われわれのやつて來たのは、すこぶる穏便に相手方を設得いたしまして、請書を徴しておるのでありまして、應じない場合には、先ほど説明いたしました正規の第四條の一般命令によつて処置して來ておりますので、ただいま花村委員のお説のように、不当な処置はないと確信しております。
○花村委員 それでは司波さんみずからそういう扱いをしたことがありますか。みずから扱つたようなことを言われたが、任意に皆提出しておるという保証がつきますが、いかがですか。もしあるならば、どこでだれそれから任意に保管請書をとつたという事例をそこで言うてください。
○司波政府委員 私自身かような事務に携つたことがありませんので、ただいまおつしやつた意味では、あるいは少し言い過ぎかもしれませんが、常々この処置につきましては、あるいは文書をもつて、あるいは口頭をもちまして、部下にはむりにならないようにという注意はして來ておりまするし、また相手が拒んだというような例外的なケースにつきましては、常に報告がありまして、そういう正式の保管命令、これは最近までは物資の所管官廳で出しておりましたが、そういう所管官廳の保管命令を出す依頼をする文書には必ず私目を通し、実態を調べて判をついておりますし、また最近におきましては、経済調査廳みずからこの保管命令を出し得ることに法規の改正もありましたので、さような例外的なケースには目を通しておりますから、さような点から考えまして、むりはないというふうに考えておるのでありまして、もし具体的にさような例があり、これこれの調査官の行動に非常にむりな点があるというようなことがありましたならば、はなはだ私の不明のいたすところでありまして、これにつきましては何か具体的に御注意があれば、以後いろいろ注意をし、また実は保管請書の任意形式は、むしろ事務簡便ということのためにやつておる方式なのでありまするが、あるいは実情のいかんによりましては、すべて正規の保管命令で行く。これは私が判をつればすぐできるわけでありますから、若干手間がかかるだけでございまして、その正規の方式によるか、そういう点を再檢討いたしたいと思います。
○花村委員 それではやはりあなたは下の方でやつておることを知らない。それだからあなたがいかにもそういう間違いのないようなことを言われるけれども、下々の経済調査官のやつておるのはそうじやない。私の言うようなことをやつておるのです。それで今言われた何か命令を出せば保管ができるというのは、いかなる法律の何條ですか、それをお示し願いたい。
○司波政府委員 過剩物資等在庫活用規則、これは臨時物資需給調整法に基く各省の共同省令になつておりまして、その活用規則の第四條第一項でございます。これは改正前でありますが「物資の所管官廳は、不正保有物資の所有者又は占有者に対し、期間、時期、價格その他必要な事項を指定して、当該物資を保管し又は不正保有物資等特別措置特別会計の管理廳その他の者に讓り渡し若しくは引渡すことを命ずることができる。」という規定であります。
○花村委員 それは不正物資を前提とする場合ではありませんか。不正物資ならばなぜそのような手続をあなたはなさらないのですか。これはすべて不正物資でないのですか、あるのですか。この表に上つておるのは不正物資というものであるか、あるいはしからざるものでありますか、どうですか。保管請書をとつておる三十億の物件は不正物資なりやいなや。それをお尋ねいたします。
○司波政府委員 これは調査の第一線に出る調査官が一應取調べた結果、不正保有物資として認定したものについて、その現場で、ただちにいわゆる保管請書をとつて帰つて來るというものが原則としてここに掲げてある。数字は当時の段階において不正保有物資として認定したもので、ただその後いろいろ調査して、相手方のいろいろな弁解その他によりまして、後日不正保有物資にあらずということを認定したような場合には、早急にそのことが判明したときに、その保管請書を解除するという手続をとつておるのでありまして、從來われわれのやつた実例におきましては、そのパーセンテージははつきり覚えておりませんが、それによつて解除する場合は、そう大したパーセンテージには上つていないのであります。今正式に保管命令を出すという場合は、結局一旦調査官がそういうものを押えてそうして廳に帰りまして、上司の決裁を経てやるというようなことで、数日間遅れるのであります。過去のわれわれの経驗によりますならば、そういう隠退物資、不正保有物資を持つておるような者は、さような調べを受けてなまぬるい処置をとつておる場合に、どうもその間に物を横流ししたり、移動させたりするような実例も相当あるのでありまして、現場のかりの処置として、本人の承諾を得てそうやる。承諾のない場合には、その日にでも早く決裁を済ませて、保管命令を出すという処置をとつておるのであります。あるいはそれは一番最初のいわゆる任意調査の問題で御説明申し上げましたように、何かすねにきず持つ者は、自分の本能的な心理におきまして、そういうことを求めるのは決して任意でないという見方もありましようが、やはり國民も社会、國家というものに協力する義務がある。これが新憲法の精神であるというふうに私は確信するのでありまして、そういう合理的な点を説明するならば、必ず普通の常識を持つておる者ならば協力してくれるのであります。さような意味におきまして、私どもは相手方の承諾を得ておるものだと考えております。
○花村委員 あなたの言われるのは、それは机上の空論というもので、実際進んで自分の品物を縛られるようなことをやる者は、おそらく一人もないと言つてよかろうと思う。私はこの三十余万の人が、みな私の言つたような氣持であろうと思う。でありますからそういう不正物資であるならば、法律の命ずるところによつてどうして保管命令を出さないか。あるいはまた刑事訴訟法による押收、差押えもできるわけである。刑事訴訟法による押收捜査ということは、これは相当に重大なことで、單に司法警察官だけではできない。裁判官の令状がなければできない。それまでにこの不正物資に対する押收捜査ということに対しては、この刑事訴訟法では最も愼重なる態度をもつて臨んでいる。しかるに保管命令というような簡單な命令で、われわれ國民が持つておるところの重大なる財産の処分を全然禁ぜられる。強制的に禁じられるということは望ましくないことだ。この保管命令というような手続はむしろ廃止すべきである。こういうところに人権蹂躙の問題や、あるいは國民の所有権を毀損する問題が起きて來る。こんな命令こそ廃止すべきものであるのでありますけれども、しかしそういう規定は多分法律でなく、政令で設けられておるでしよう。少くともそういうわれわれ國民の基本的人権に関しますような重大な事項については、法律をもつて規定すべきである。政令で規定してあるならば、その命令を発動したらよいじやないか。そういうことを発動せずして、発動してももしそれが不正物資でなかつた場合においては、私らがその責任を背負わなければならぬというような、不明朗な氣持からこういう脱法行為をやつて、表向きは任意に出させるのだと言いながら、強制的にやつておるのであります。説法行為と言わずして何でありましよう。あなたが申された任意であるということと同じ筆法なのだ、同じ筆法であなた方は脱法行為をしておる。経済の取締りをすべき公正な立場にあるところの人、しかも國家機関の中で人権に対する最も重大なる地位にある人、そういう人がきわめて愼重なる態度をもつて臨まなければならぬにもかかわらず、また國民に対して常に正しく、正当公平に職務を行つておるということの模範を示さなければならぬ立場にある人なのであります。そういう役人がこういう脱法行為をやつて、そうして強制的にやらしておいて、任意に出さしたというようなりくつをつけてうやむやに葬つておるから、この法案がだんだん紊乱して來たり、そうして惡いことをやるものが多くなつて來たり、やみの横流れもどこまでいつてもとまらぬようになるのであるということを申し上げてよいと思います。明らかに脱法行為である。これを脱法行為でないとあなた方が固持するなら、それでよい。そういうよこしまなりくつをつけてどこまでも押して行くというならそれでよいが、その点をはつきりお聞きしておきたい。
○司波政府委員 これは檢察廳等におきましても、いわゆる任意調査ということはやつておるのであります。あくまで相手方の承諾を得た以上は脱法行為ではないと考えております。
○花村委員 承諾というのは、それは任意の承諾ですか、強制的な承諾とおつしやるのですか。そうして今まで行つたその保管請書は、今言う前者に属するものであるというお考えだとあなたは言われるのですか。
○司波政府委員 言うまでもなく任意の承諾である、從來やつた点につきましても、やはりさように考えております。
○花村委員 そういうお考えで経済調査廳の主脳部が立つておるから、從つて経済調査廳がうまく運営して行かないのである。これは重大なる憲法違反と言つてもよいと思う。それでもまだ正しいと言われるならば、それ以上言う必要はありませんけれども、しかしこれに対する何らかの防止方法を講じなければいかぬと思うのであります。ことに民主主義の今日において、また人権の尊重さられる今日において、こういう脱法行為が公々然として行われておるということは、私はまことに遺憾に思うのであります。さてそこで、これは安本長官にも申し上げたように、津田繊維の、先ほど申し上げました倉庫にある物件も、あなたは任意による保管請書に基くものであると、こうお認めになりますか。
○司波政府委員 その具体的なケースにつきましては、調査しておりませんので、断定的なことは確言いたしませんが、おそらくその担当の調査官が正当に業務を執行しておるという前提に立ちますれば、任意のものであろうと、こういうふうに考えます。
○花村委員 任意のものであるとするならば、これはひとつ解除されたらどうですか。解除しませんか。任意の保管請書を入れて、それは差押えられたような形に相なつておるのでありまするが、おそらく強制でなく、あなたの言われる任意に提出したものでありましよう。そういうことであるならば、あなたは解除されますか。
○司波政府委員 これは保管請書はあくまで任意の処分でありまして、もし本人が請書を出しましたが、それに対して実際は腹では不服だつたという場合には、別に正式の差押えとかそういう処分のように、これを使いましても刑法の横領罪にはならない。但し不正保有物資の形状を変更するという場合におきましては、この規則の第二條違反となりますので、物調法によりまして十年以下十万円以下の罰則がついておる。その違反を覚悟なら、かつてにお使いになつてもけつこうだろうと存じます。
○花村委員 そういう不正物資である場合には、それは処分を受けることは当然ですから、そんなことをあなたが言われなんでも、法規に触れる場合には、おのずからそれに対するそれぞれの手続があつて罰せられるのですからかまいませんが、そういう不正なものでない限りは、保管請書を出した場合においては、それはかつてに使つていいというあなたの御意見ですね。そう承つておいていいですね。
○司波政府委員 さようであります。但し今の不正保有物資であるという認定は、やはり自分は不正保有物資でないというだけの根拠では、犯意阻却にはならないと思います。
○花村委員 それでは最後にもう一点お尋ねしておきますが、その不正物資なりとして処分を禁じておいて、生産にも大きな支障を來さしめるというような事態をかもしておいて、もしそれが不正物資であらざる場合には、どういう責任をおとりになるのであるか。それを明確にいたしておきたいと思う。
○司波政府委員 そういう保管請書をとつた場合には、できるだけ早く——それが確定的に不正保有物資なりや否やは大体その保管請書をとつたときにわかつておるのでありますが、さらにそれを確認いたしまして、特別会計に対する買上げ措置をとるはずでありまして、もし間違つて不正保有物資と認定した、そしてそういう保管請書をとつたという場合には、早急に解除をされるはずでありまして、たとえばそれが二、三日保管請書を間違つてとつたという場合についての責任につきましては、その責任の意味がどういう意味かよく存じませんが、具体的にその担当官をやめさせるとか、そういうふうな責任をとる措置は、現在までのところとつておりません。これは官吏といえども人間でありまして、ときには間違いも起るのでございまして、今までのところ、さようなことで本人の懲戒免官とか、そういうふうな人事的な行政措置をとつた前例はないのでございます。
○花村委員 私はこれで質問を終りますが、この経済調査廳設置法案審議の折を振り返つて靜かに考えてみまする場合において、しかも今日経済調査廳がやつておりまする事柄をこれまたつぶさに檢討いたしてみまする場合において、われわれが心配し杞憂したことが要するに今日現われて來ておりますることは、まことに遺憾であります。その経済調査廳の本來の使命でありまするところの経済に統制違反を予防し、もつて経済の統制をして円滑ならしめることによつて、わが國の復興に寄與しなければならぬという建前を忘れて、この違反行為の摘発にのみ没頭して、そういう方向にむりをしておるということは、これは爭われざる事実でありまするのみならず、今申し上げましたように、現にわれわれの人権を毀損するがごとき、任意に名をかりて、この刑事訴訟法の規定にもひとしき強柏行為をやつておる。こういうことはまことに私は遺憾でありまするので、こういう問題に対して、あるいは経済調査廳の上層部においては知られないかもしれませんが、しかし調査官の中には誤つた考えを持つておられるものが多いように思う。でありまするからこういう点に対しまして、大いに反省するところがあつてしかるべきのみならず、その本來の使命に向つて最善と熱情とを捧げて御努力あらんことをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
○司波政府委員 ただいまはなはだありがたい御忠告にあずかりまして、われわれとしては從來におきまして、これは人間の官吏の官廳でありますし、足りない点は多々あつたと思いまするが、基本的に言いまするならば、大体調査廳の精神に沿つて活動し得たと確信しておるのでありまして、それらの足りない点につきましては、さらに今後におきまして十分に反省しながらやつて行きたいというふうに存じております。
○北川委員長代理 本日はこの程度にて散会いたします。 午後五時五十九分散会