法務委員会 第22号
- 発言数
- 183 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1949/05/18
会議録
○花村委員長 これより会議を開きます。 農業資産相続特例法案に関し、農林委員会より申入れの件を議題といたします。 一昨日農林委員会から、農業資産相続特例法案を農林委員会で審議中であるが、本案は民法における相続の特例をなすものであつて、十分愼重に審議したいから、法務委員会において民法等と牽連して、法律的な見地から檢討して、会期も切迫していることであり、本日中に意見を持つて來てもらいたいという申入れがあつたのであります。この件について御協議を願いたいと思います。ついては、農林委員会の申入れに答えるについて、一應本案の趣旨について政府の説明を聞き、説明について疑点を質しました後、本委員会の意見をまとめて農林委員会の方に御返事するようにいたしたいと思います。まず本案の趣旨について政府の御説明を願います。
○山添政府委員 それでは農業資産相続特例法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げたいと思います。申すまでもなくわが國の農業は、その経営規模がきわめて零細でありまして、農業生産力の発展をはかる上において、大いなる難点をなしていることは御承知の通りであります。從つて経営規模が現状以上にさらに零細化を示すことに対しては、可能な限り必要な対策を講じますことはきわめて大切であります。 この事柄に関連して、一昨年新憲法の施行に伴い民法が改正せられて、家督相続が廃止され、均分相続が行われることになりましたが、このことは、それをそのまま農地その他の農業資産の相続に適用することとなりますと、そうでなくとも過小な農家の農地等は、さらに細分化されるおそれがあることは明らかであります。從いまして新しい憲法の精神と民法の制度に即應しつつ、相続に起因する農業資産の細分化を防止して、農業経営の安定をはかるべき適当な措置を講ずることが必要であります。 この法律は以上の観点から、農業者の相続に関し均分相続の原則と農業経営の安定の要請との調整をはかるため、民法の特例を定めんとするのでありまして、本法案の主要な内容は概略次のごとくであります。 一、農地その他の農業資産は、原則として農業を営む見込みのある者一人に相続させることにいたしたのであります。しかして農業資産相続人の決定につきましては、まず第一に被相続人の指定した者があるときはその者、被指定者がなければ共同相続人間の話合いによつて選定された者が相続人になることとし、またこの話合いがまとまらない場合は、共同相続人の申出によつて家庭裁判所で決定することになるのであります。 二、次に均分相続の原則との関係につきましては、農業資産相続人一人に農業資産が帰属することになりまして、他の共同相続人が不当に利益を害されることのないように、民法による相続分に應じて他の共同相続人は一定額の求償権を有することといたしました。もつともその求償権については、農業経営の安定を害しないようにしなければなりませんので、その求償に関してもし当事者で円満な話合いがかつない場合におきましては、返還の金額、時期、方法等を家庭裁判所で諸般の事情を考慮の上これを定めるようにいたしております。 以上が法案の主要な内容であります。
○花村委員長 当該法案に対して質疑の通告がありますから、これを許します。石川金次郎君。
○石川委員 ではまず第一にお伺いいたします。この法案が本國会に提案せられますに至りますまでの経過についてでありますが、第一回國会において、たしか本法案が審議未了になつたのであります。そののち本國会まで提案せられませんでしたが、その間にどのような準備と調査とをせられたかをお伺いしたいのであります。たとえば本法案は農家にとりましては非常に重大な法律案でありまして、農業を営む者はどのような意見をもつておるかについてお聞きになつたかどうか。たとえば労働法規改正にあたりまして、政府は各縣において労働機関を通じまして、労働者もしくは経驗者の意見を聞いたのでありますが、本法案を立案された農林省がどのような調査と研究とをなされたかをまずお聞きしたいのであります。 次には諸外國の立法例についてどのような御調査をなすつたかという点であります。第二次欧州大戰後、各國において土地改革が起つておるようであります。東欧においては、ことにポーランド、ユーゴ等ほとんどすべての國において土地改革が起つておるのであります。ことにユーゴにおいては、憲法に土地は働く者に属するという原則を掲げてあるやに伺つておるのであります。そういたしますと、土地を働く者に属せしめても、やはり零細農家、農業資産の分散に対しましては、それぞれの措置を講じてあるかもしれません。またその措置を講ずる必要がないといたしまするならば、ユーゴがどのような社会制度でそれを講ずる必要がなかつたかということについて、御研究されておられるであろうと存じますので、その点をまず第一にお聞きしておきたいのであります。
○山添政府委員 第一回國会、一昨年の國会におきまして、本案が審議未了になりましたのは、関係方面から審議の中止を要求せられまして、実はそのままになりましたのでありまして、この法案を立案するに当りましては、本日お手元にお配りいたしましたが、昭和二十二年四月に社團法人輿論科学協会に委嘱いたしまして、農民の間における輿論の調査をいたしました。その先般の法案以外には組織的に農村の事情については調査をいたしておりません。ただ事例的に千葉縣等におきまして調査をしたことはございますが、その結果はこの前のこの委員会で申しましたように、多くは相続法規というようなことで、農業資産が分割せられずに相続されておるという事情を推知しておるのであります。これがこの前の法案から今日までそのままになつておりました理由につきましては、これは何と申しましても均分相続の主義と農業資産を原則的には承継せしめようという主義と大きく矛盾いたします点がございます関係上、関係方面との意見の合致を得ることにつきまして長いこと期間を要したのであります。そういう意味で遅れておるのであります。 それから立法例の調査でございまするが、これはドイツの例でありまするとか、あるいはフランスの例、スイスの例等を調査いたしております。それらのものを調査いたしました印刷物もあるわけであります。御承知のようにこれらの問題につきましては、農業資産の相続のやり方のほかに、家産制度というようなものもあるわけでありまして、これらのものにつきましても、それぞれ調査をいたして資料もあるわけであります。これをとつてもつて日本の参考にすべきようなものは、私どもの知つております限りにおいて、あまりないというふうに思つております。それからユーゴのことにつきまして御質問がございましたが、これにつきましてはまだ私どもでは調査をいたしておりません。
○石川委員 民法が改正になりましてからすでに二年にならんとしておるのでありますが、その間において、現在この法案にいう農業資産の相続を開始しなければならない原因が幾多起つただろうと思うのであります。その結果どのような不便が法律上に現われておつたか、またその人たちがどのような希望を持つておつたか、同時に從來多く家庭裁判所ないし家事審判所におきまして、調停の形において遺産相続権を放棄せしめておつたように思われるのでありますが、その遺産相続権の放棄について不便がなかつたかどうかをお聞きしておきたいのであります。
○山添政府委員 これは千葉縣の例でございまするけれども、農家だけということはわかりませんのでありますが、大体農村のことでありまするから、事件も自然農家のことになりますが、その地方の事情を見ますると、非常に相続権の放棄ということが多いのであります。從つて農業資産につきましても、相続を他の共同相続人が放棄するという形において、この法律に規定せんといたしておりますような解決がつけられておる。これは例は少いのでありますけれども、おおむねそういうことが多いのじやないかという推測をいたしておるのであります。
○石川委員 この前も御説明があつたかとは存じますが、現在のままの相続権の任意放棄というかつこうで、この法案が所期するところの目的を達成し得ないかどうか、その点の説明をまず承りたいと思います。
○山添政府委員 それが円滑に行われますれば、この法案の所期しておるところがそのまま行われるわけであります。この法案はもし話合いがまとまらない場合におきましては、家庭裁判所におきまして、共同相続人の中から農業を承継する見込みのある者、現実の場合におきましては、農業を営んでおります者一人を、農業資産相続人に指定することができる。こういう積極的な規定を設けておるわけであります。
○石川委員 私のお伺いいたしましたのは、本法案がなくても、相続権の放棄によつて同一の目的を達成するということができないのか。そういたしますとどのような欠点が現われて來るのかということをお聞きしたい。
○山添政府委員 すべてが合意の上でそういう処置をとりますれば、この法律の目的を達するわけでありまして、またこの法律がありません場合におきましても、そういう解決法をたどることが多い。これは実例を調べましても、そのように見受けられるのであります。しかしすべての場合にそれで事足るとは考えていない。こういうわけであります。
○石川委員 それではこの問題を中心として示談による解決、調停による解決ができなかつた例がございますか。
○山添政府委員 その具体的の例を一つ一つ調べておるわけではございません。しかし具体的に調べました例の中におきましても、それについて不服のある人、たとえば調べました中におきましても、実は放棄はした、しかし眞意はそうでなかつたというような例もあるわけであります。
○石川委員 そこで本法案が農業資産の細分化防止のためへの相続法の特例だ、このようになつておるのでありますが、資産細分化の防止のためには農業資産のみ必要だ、あるいはその他の漁業であるとか、工業であるとか、商業であるとか、そのような小さい企業もなお分散を防止して、一つの生産組織体を與えて置く必要はないのか。政府がこれらについてどのような御見解を持つておるかをお聞きいたしたのであります。
○山添政府委員 これは法務廳からお答えになるのが筋であると思いますが、政府におきましては、農業資産以外に相続に関する特例法を定めようという考えは、現在のところ持つていないのであります。しかし同じような中小企業にいたしましても、漁業にいたしましても、同樣の事態があるのではないか、こういう御質問であります。第一にこういう立法をいたします事柄にありましては、國家的重要性いかんということが問題であります。農業、特に土地の問題としては、この細分化を防ぎますことは、農業生産力の維持発展をはかります上の絶対的な要請である。かつまた食糧問題等は日本の死活の問題である。こういう他のものに比例して同日に論ずることのできない重要さを持つておる。これが第一点であります。それから分割できるか、できないかということは、物の性質にもよるわけでありまして、たとえばここに鍛冶屋さんがある。どうもそれをばらばらに分解して相続しようということも起り得ない。漁船を一艘持つておる。船をこわせば、これは浮ぶことができない。ところが農地におきましては、一町歩持つておれば、五反歩づつわけようじやないか。五反歩持つておれば、二反と三反にわけようじやないか。これはもともと筆数はわかれておりますし、枚数としてもわかれておりますから、わければわけられる。從つてそこには細分化をたどる傾向が、他の経済的に分割すべからざる業態のものよりも多い、こういう二つの理由があるわけであります。
○石川委員 さらに念のために少し強く聞いておきたいのでありますが、もし小さな各企業体でもこのような資産相続特例法をこしらえまして、今のような一つの相続を指定する、相続に関する特例を設けることになりますと、憲法の均分相続、民法の均分相続がこわれるという憂えがあるのでありますが、農業資産に関する以外は、政府はもう考えておらないとおつしやるのでありましようか。それとも事情によつて一般的な要請によつてはまたやらざるを得ないだろう、こう思われるのでありますが、この点ひとつ明瞭にお聞きしておきたいのであります。——もう少し附言いたしますが、たとえば農林省の所轄内である漁業の関係であります。先ほど例を局長がとられましたが、この法案が通過いたしますと、やはり漁業もまた望んで來るかもしれません。そういう場合には、そつちの方は断固として取入れないという御決心かどうか、それをひとつ承りたい。
○山口(好)政府委員 現在のところにおきましては、いろいろ研究をいたしましたが、この農業資産以外のものは取上げないつもりでおります。
○石川委員 そうするとこの特別法案は日本の農業、特に食糧というようなものに関係があるから、どうしても必要な法案であるのだ。一言にして言えば、こう承つてよろしいのですか。
○山添政府委員 その通りであります。
○石川委員 將來食糧等の問題が解決したならば、この特例法がそれでは不要になり、民法の原則にかえるという御方針でありましようか。
○山添政府委員 日本の國といたしまして、食糧を可及的に自給をする——完全なる自給は望み得ないのでありますけれども、可及的に食糧の自給度を高くして行く。また國民の四割くらいの人口を占めます農業におきまして、その生産力を高めて行く。この事柄は、今後における日本農業——過去でもそうでありますけれども、世界的な競爭の上に立つてやはり農業をやつて行くのでありまして、その意味において日本の農業が規模が小さいということは、これは生産費の上におきまして、あるいは生産能率の上におきまして非常に大きなハンデ・キヤツプでありますので、この意味から申しますれば、一般に経済が回復する等によりまして、食糧事情がきゆうくつであるという事態が解消いたしましても、依然この農業の生産性を高く保つ、ないしは発展し得るような方向に條件を整えておく、こういうことは必要でありまして、その限りにおいてといいますか、そういう理由に基きまして、この特例法は恒久的な法律と考えておるわけであります。
○石川委員 それから各條についてお伺いいたします。まず第一條でありますが、この法律は遺産分割という現象によつて生ずる農業資産の細分化を防止するのだということをまず目的に書いてあるのであります。なるほど遺産という事実によつて農業資産が分割されるということは一つの原因であります。その他に幾多の原因も数えられるのでありますが、特に農村において一番不安を感じておりますことは、経済上の重圧によつて生ずる財産の分割であります。その他の、遺産という現象以外によつて生ずるであろう農業資産の分割に対してはどういうことを予定し、どういう対策を政府は講ぜんとしておるか、またどういう立法によつてこれを防止せんとしておるかをお聞きしたいのであります。
○山添政府委員 ただいまの問題は、結局農業経営の安定を期するということでありまして、これは一つ一つの対策ではなくて、農業に対する諸般の政策が、すべて農業経営の安定ということを目的にいたしておるわけであります。從つてこれこれというふうに特定の政策だけをあげますことは不適当と思います。しかしただいまお述べになりました事柄に直接関連する問題といたしましては、結局將來自作農の維持施設というものを考えて行かなければならぬ。これは農地改革が行われるまでは自作農の維持ということをやつておりました。農地改革をやりましてこれは中止にしておりますが、現在インフレーシヨンを防止するという事柄が一番大切であります状況においては、自作農維持のために新しく資金を出すということはむずかしい。また現実の問題としてありましても、過去においてインフレの一つの影響として、農家負債は今ほとんどなくなつておる。こういう状態のもとにおいてその必要も感じておりませんが、將來の問題としては農業における負債がたまる、こういうような場合においては、高い利子の債務を低利長期なものに借りかえられるというような自作農維持施設ということは、当然要請されておるところであると考えております。
○石川委員 遺産という現象によつて農業資産の細分化をこの法案で防止するといたしましても、過去の農村が苦しんだごとく、將來農村が債権によつて苦しめられるかもしれません。債務によつて農業資産が分散するであろうということに対してどういうような御処置をお考えですか。たとえば農業資産について仮差押えをすることのできないものである、あるいは担保権を禁止する、讓渡不能の財産としてこれを守らんとする意思があるかどうか、これをお聞きしたい。
○山添政府委員 この趣旨のような制度をとるといたしますと、結局これは家産制度に到着するわけであります。それでありますと、これは金融上非常に不便であるということと、それからどうも新しい憲法の精神に沿わない点があるのじやないか、家産制度ということは、この二つの理由からこれをとつていないのでありまして、やはり資金は必要なものは供給して行く。しかし同時に非常な不景氣その他負債の累積によつて困るというような事態が生じますれば、これは農業資産の細分化を防ぐ。また現在行いましたところの農地改革の成果を維持して行く。こういう上からも、当然多額かつ高利の債務はこれを低利長期の資金に國家資金をもつて借りかえて行く。こういう施設が当然必要になると思うのでありまして、これは將來必ずそういう施設をまた必要とする時期もあると考えております。そういう考えで行くのでありまして、差押えをされるとかいうような事柄、すなわち金融を拘束するというような方法は実際考えておりません。
○石川委員 しかし政府がなるべく金融を安い金利で農村にまわして参りますれば、高利の、あるいはその債務の原因から來るところの細分化を防止し得るかもしれませんけれども、それはなかなか言うべくして行われないから、法案の趣旨を眞に守り拔こうとするならば、それをも考えての方法があつたろうと思うのであります。そこでお聞きしたいことは、家産法を日本にしくつもりはないのかということであります。ちようどふれておりましたが、この点も私ども苦しんでおつた点でありますから、政府の御見解をお聞きしたい。
○山添政府委員 農地改革が一應終了いたしました後における成果の維持、すなわち今までの言葉で申しますれば、自作農益維持施設については当然考えておるのでありますけれども、今これを実現すべき時期ではない、從つてこれは將來の問題と考えておるのであります。 それから家産法については、この法案を立案いたしますときに一應研究をいたしました。その結果としてこれを日本に実現する意思なし、こういう意見であります。
○石川委員 それでは二條に参ります。二條の読み方でありますが、これは問題になつたと思います。当初の第一回國会の提案は一反歩であつたと思いますが、二反歩といたしました理由をこの間も御説明になつたと思いますが、簡潔にお知らせいただきたいのであります。
○山添政府委員 第一國会当時は一反歩であります。二反歩にいたしましたのは、大体この法律の対象といたしますのは、維持すべき價値ある程度の農家でなければならぬと思うのであります。その意味におきまして一反歩ではあまりに小さい、そこでこれを引上げまして二反歩ということにいたしたのであります。農地改革を実行する場合に、あまりに小さい農家には、政府が買收しました農地を賣り渡さないという措置をとりましたが、その場合には二反歩以下の農家に対しては原則として賣り渡さない、こういう方針を実行いたしたのであります。
○石川委員 そこで次に農業資産の構成についてはつきりお伺いいたします。こういうふうになるためには、まず主体的には二反歩以上の農地の耕作者で、客観的には本法案第二條の一、二、三でありますが、この條件を満たしたもの、たとえば二反歩以上を耕作する者が、農業なりあるいは自家用薪炭の採取の目的のために一定財産を持つておるものだ、こういうふうに解すべきか、お聞きしておきます。
○山添政府委員 その通りであります。
○石川委員 それでは今度は第三項に参りまして、耕地を二反歩以上耕作しておらなかつた養蓄家、ないしは養蚕家はどうなつて参りましようか。
○山添政府委員 それは入りません。
○石川委員 それから第二條の、今度は小さく聞いて参りますが、第一項第一号に入会権が書いてあります。入会権は第一会國会提出の法案には書いてございません。まずここに入れました理由をお聞きします。もう一つは入会権が権利の性質上相続の対象になりましようか。
○山添政府委員 これを入れましたのは、当時國会に出ておりました新潟縣選出の清澤さんの御注意によつたのでありまして、新潟縣におきましては、まだこの入会権がたくさん残つており、かつこれが非常に相続等の場合に紛爭の対象になる、こういう話でありまして、ぜひ入れるようにという御希望がありました。そこで入れたのであります。さてこの入会権そのものは、一口に入会権と申しましても、その実体がいろいろございますので、非常にむずかしい。その場合々々によつて解釈をしなければならぬのでありまするが、これは單にその土地に住んでいる人はみな入会権があるというようなことでなくて、その土地に住んでおつて、かつ從來から一定の山に入るべき権利を持つておつた人が持つ。しかもその分量等も、木を切つたり草をとる量等についても、ちやんときまつた規定がある。こういうような明確な入会権につきましては、これはやはりその入会権を持つておつた人の地位を継ぐ人が入会権をとるというようなことで、やはり権利として相続の対象になり得ると考えております。
○石川委員 私どもの縣でも、この入会権が非常に多いのであります。ところで私これは忘れましたから申し上げられませんが、判例に現われた入会権は相続可能でしようか。入会権の本質上、一体相続の対象になり得るかという、ひとつの御見解を承つておきたい。
○村上(朝)政府委員 一般的に申しますと、入会権の性質は、ただいま石川委員の仰せになりました通りでありまして、部落民たる地位を失えば権利を失うのでありますから、部落民でない相続人がそれを相続するということは考えられないと思います。ただ地域によりまして、その部落民であるということのほかに、一定の人員を限つて入会権が認められておる事例があるようであります。さような場合におきましては、その部落民たる地位に基いて、その限られた人数の持つております入会権を承継することは可能でありまして、その場合においては、相続の対象になり得るのではないかと、かように解釈いたしております。
○石川委員 御見解がそうであれば、あえて爭いませんけれども、從來入会権を持つた農家の一戸があつた。その戸主が死んだ。息子がその入会権を承継したというような相続の事実から、そこに居住し、利用しておるという事実があるから入会権を持つておるということにならないでしようか。そうすると、ここに相続の対象として入会権をお書きになるためには、入会権の権利の本質について御説明を願わなければならない。ことにわれわれはこれから入会権について爭いが出て参りましたときに、この法案についてみますと、政府の見解がこうだということをもう一度爭い直さなければならなくなるのですが、それはどういうものですか、ちよつとお伺いしたいのであります。
○村上(朝)政府委員 ただいま申しましたように、人数の限られております場合を考えますと、入会権者の直系卑属は、部落民であるというだけの理由によつては、その入会権を取得することはできないのであります。そこにやはり相続の関係があるというふうに解釈いたしております。
○石川委員 なおまたここにお聞きしておきたいのでありますが、かりに部落の一定の人員が入会権を持つておつた山があつたといたします。そうすると、おやじが死んだから相続というのではなくして、一定の人数の参加者の一人がなくなつたことによつて、さらにその権利を行使して行く現実の人間があるという慣習からやつておるのではないでしようか。相続ということでこれは行くのでありましようか。もし規続に見ますならば、これは相続税の対象になつて行かなければなりませんし、いろいろな問題が出て來るだろうと思う。そうしてまた從來の判例を私忘れてしまつて相済みませんけれども、從來の判例をおかえになる観念をここにお入れになろうとするならば、それをやはりはつきりしていただきたい。
○村上(朝)政府委員 ただいまの点につきましては、なお研究いたしましてお答えいたします。
○石川委員 あとでお教えくださるようにお願いいたします。それから農政局長にお伺いしたいのでありますが、耕作しておらない養蚕家とか養畜家は、農業資産において守る必要はないのですか。そういう趣旨ですか。先の御答弁ではそうなりますね。二反歩の耕作を続けておつて養蚕をやり、養畜をやり——岩手縣で申しますれば、耕作をやつていないものが馬、牛をやつて養蚕もやつている。これは農業資産として認めない。こうなりまして、ここでちよつと均衡がとれましようか、それをお聞きしたい。
○山添政府委員 これはあまり小さいものはこの対象に入らないというので、二反歩以上といたしたのでありますが、極端に申しますれば、農林統計等を見ますと、農地のない農業者も相当数載つておるわけであります。これは先ほど他の魚の例を申し上げましたが、特別の法律によるところの基準を與えるなり、あるいは保護を失つてもそれはしかるべく話がついて行く、かような考えをいたしておるのであります。またそれを特に國家的にこういう立法を用いまして規制をして行くという必要もなかろう、かように考えております。
○石川委員 また小さいことになつて済みませんが、第二條であります。一項の二号「農業又は自家用薪炭材の採取の目的に供される樹木の所有権」これでわかりますが、自家用薪炭材——いなかではうちを建てようと思つて、自家用薪炭の山林の中に松の木を五本育てておいたというのは、薪炭用ではないのではないでしようか、建築用ですか、これはやはり除外されるということになりますね。
○山添政府委員 これは第二條第一項第二号に掲げてある通りに読んでいただけばよいと思います。從つてそういうものは、少くとも法律上対象にいたしておるわけではないのです。
○石川委員 今度は第二項に参りまして「一時」ということです。「一時」ということは、たしか自作農創設臨時措置法にも出て参りまして問題になりましたが「一時耕作の業務を営むことをやめ、」あるいは「一時同項各号に規定する目的に供されなくなつた権利」この「一時」というものは、どのようなことを考えたらよいかをお聞きしておきます。
○山添政府委員 「一時」といいますのは、これは必ずしも期間の長短を言つているのではないのでありまして、その原因が一時的であつてやがて回復をする。こういう状況で、適例を申しますれば病氣というようなものであります。そういうことによつて一時耕作をやめておつた。こういう場合をさすのであります。すなわち耕作の業務を営むことをやめた原因の性質によるのでありまして、これは一時的な現象で、いずれはその原因が解消する場合を「一時」と言うわけです。
○石川委員 そうすると、これは必ずしも時間的の長短というものは意味しないのですか。
○山添政府委員 さようであります。
○石川委員 そうすると、その原因そのものから見て、將來復帰するであろう、こういう場合には時間の長短なしに一時と見る。こういうわけでありますか。
○山添政府委員 そういう解釈をいたしております。
○石川委員 実際この法律がしかれます場合、効力を発生しました場合のことを予想いたしまして、なお小さいことですがお聞きしたいのは、二條の一項三号であります。「常時の居住の目的に供される建物」こうなつているのでありますが、いなかなどに参りますと、大きな小屋があつたり、土藏があつたり、そこで土藏が必ず農業の用に供せられるとは言えない、しかもそれがまた九條の兄弟げんかの材料とはならないとは限りません。そこで政府はこれらに対して、どうお考えになつておりますか。
○山添政府委員 これはなるほど土藏でありますれば、居住の目的とは言えないかと思いまするが、直接居住でありませんけれども、そこに居住することによつて、不可分の需用関係に立つているもの、從つて土藏のごときはこの三号の中に入るだろうという考えを持つております。
○石川委員 そこでさらに二條について吟味いたしますが、農業資産の構成要件とでも申しましようか、「二反歩以上の面積の農地について耕作の業務を営む者」といつております。それで農家ですと、畑の所有名義人が主人であるかもしれない、耕作の業務を営む者は夫婦二人で、子供を持つてやつておる。業務を営む者であります。その場合において、業務を営む者はだれでしようか、そこでそれは亭主であると認めるならば、どういう理由から亭主と認めなければならないのか、亭主が遊んで歩いて、細君が一生懸命耕作の中心となつておつた場合における耕作の権利主体はだれになるのですか、ひとつお聞きします。
○山添政府委員 これはすべての法律を通じて、農業を営む者という字はたくさん出ているわけであります。これは必ずしも具体的にだれがその中でよけい野良に出ているかということを問わなくても、やはりその家の世帶主として営業主である、こういうような観念に該当する人が、ここにいわゆる農業を営む者でありまして、おやじさんが病身であり畑には出ない場合におきましても、やはりそのおやじさんが農業を営む者、かように解釈をいたしております。
○石川委員 そうすると、この農業資産相続特例法においては、世帶主という観念がわきへ出て來るわけですが、そうすればその世帶はどういうものであるかをひとつ法律上明確にしていただきたい。
○山添政府委員 ひつきよう経営の主体、こういうのであります。
○石川委員 経営の主体ではちよつとわかりません。経営の主体ということはどういうことでしよう。経営を指揮担当する人というのでありましようか、はなはだ相済みませんが、いなかに行くと苦情が出ますから、どうしてもお聞きしておかなければなりません。指揮命令するという人でありましようか、労力を多分につぎ込む人という意味でありましようか、一家を主宰する者がその一家内の必ずあるものだ、こういう見解でございましようか、一家を主宰する者がすなわちあり得るということであるならば、それを何と名づける、法律上どういうような概念を構成して行くかということをお聞きしておきたいと思います。
○山添政府委員 これはもとの農地調整法改正の場合にも、いわゆる営む者の範囲について、相当論議をされたのであります。これはくわをとるものであるか、計算の主体なりやと、いろいろ議論された、この第二條の「業務を営む者」といたしましては、計算の主体、今申しました指揮をやつている人、こういうところに当てはまるのであります。
○石川委員 それでは明確にしておきます。その農業経営について、計算の主体、そうして指揮をする人、それであるのだ、必ずしも労力ばかり提供する者ではないのだ、こうなりますね。ところで今度は一つさらに明確にしておきたいのですが、私たちいなかには、これからはなくなるでありましようが、亭主が町に出て酒ばかり飲んでおる。うちに細君がおつて、そうして一切の苦労をしながら家業をやつて、そのうちの耕作一切をやつておるという場合には、その土地の所有権が、男のものでありましても、夫のものでありましても、この場合は妻をもつて農業資産構成要條と認められるのでありますか。
○山添政府委員 この法律は、一家族が農業を続けて行くことを保護しようという目的であります。從つてただいまの場合、所有名義者が酒を飲んで、まことに惡いかもしれませんが、亭主であるという場合には、当然この法律はその家族の子供が農業を継続して行く場合に適用せらるべきであります。從つて奥さんの方がたいへん勤勉でありましても、やはり農業業務を営む者は亭主の方であります。
○石川委員 そうすると要件としまして、亭主であつて、計算の主体となるべき者であつて、土地の所有者であつて、そうして命令指揮する者だ、その一つを欠いておつてもやはりそれは夫であると見るべきだ、こういう御見解ですか。
○山添政府委員 必ずしも亭主であるということは要件ではないわけでありますが、しかしただいま亭主の方が農地を所有しておる。しこうしてその間家族が農業を営んでおるということでありましたので、ただいまのようなお答えをいたしたのであります。
○石川委員 どうしてもここを明瞭にしておかないといけませんが、要件としましては、その農業の計算、いわゆる損失の帰属を受ける人、それから指揮命令する人、そうして土地の所有者であるということは影響しませんか。その三つになりますか、お聞きしておきます。
○山添政府委員 大体今お述べになりましたことがそのまま要件になるわけでありますが、これは仮定でありますけれども、この中には賃借権等、すなわち耕作権等も農業資産構成要素であります。もし自分が土地を持つていなくて、農業を営んでおるというときには、所有云々ということは要件にならないわけです。
○石川委員 そのときには賃借権者、こういうことになるのですね。——それでは第二條はそうしておきまして、第三條でお伺いいたします。そこで第三條でありますが、まず指定権であります。第三條の場合には、農業資産相続人の指定権といつて、これは一個の権利でございますね。
○村上(朝)政府委員 権利であります。
○石川委員 そこで権利だといたしますと、どのような性質の権利かをやはり実際上の事情がございますから、承つておきたいのであります。たとえば権利の分類がよくございます。私ども学生のときよく教えられたのですが、形成権であるとか、一身專属権であるとか、あるいは請求権、そういうものがございますが、これはどういう性質の権利でございますか。どういう地位からわいて來るのか、そうしてこの指定権というものを認めたことは、法律上の平等ということとどう関係があるのですか。
○村上(朝)政府委員 権利の性質分類についてのお尋ねがございましたが、これは一種の指定された者に法律上の地位を生ずることになりますので、形成権の性質を持つものと考えます。 それから指定をなし得る者の資格要件でありますが、これは農業資産について農業を営む者ということは、指定をなし得る者たる要件であります。それから指定をすることが平等の原則とどういう関係になるかというお尋ねでありますが、これは指定ということだけでは十分な御説明ができませんので、ほかの條文との関連において申し上げますが、指定を受けましたものは、第十條の規定によりまして、遺産分割の結果、農業資産を承継することになるのであります。そしてなお第九條におきまして、その農業資産が相続財産の價格の中で占める割合の特別の相続分を、指定されたものが與えられることになりますので、この点だけから見ますと、他の共同相続人との間の平等を破るような感じがいたすのであります。しかしながら一方におきまして、第十二條におきまして、その指定せられた者、すなわち農業資産相続人が、第九條によつて特別の相続分を與えられ、それにより特別な利益を受けた場合、その利益の額を民法による相続分に比例しまして、他の共同相続人に分配することにいたしてあるのであります。現物の帰属という点だけから見ますと、平等の原則に反するような感じがいたしますけれども、利益の分配という立場から見ますと、必ずしも平等の原則に反するものではない、かように考えております。
○石川委員 そうするとその権利は形成権である、一身專属権であるわけですね。そう承つてよろしいわけですね。——そこで権利の効果が発生いたしまする法律行為、この法律行為は單独行為でありますか。
○村上(朝)政府委員 單独行為であります。指定という行為は單独行為であります。
○石川委員 そこでそれは書面によるとありますから、要式行為になりますか。
○村上(朝)政府委員 第三條の第三項に規定してある樣式によることを必要としておりますので、要式行為であります。
○石川委員 そこで書面に書いて実際に署名した、これは意思表示はだれにやつておくのですか、ただしまつておくのですか。
○村上(朝)政府委員 いわゆる相手方なき意思表示であります。
○石川委員 そこで問題が出てきはしますまいか。たんすの中にしまつておいて、発見せられればよし、発見せられないで、死んだあとで発見せられたという場合は法律行為はどうですか。
○村上(朝)政府委員 それは自筆証書による遺言証書を作成した場合に、遺言書が発見せられなかつた場合と同樣に考えます。
○石川委員 そこで、これをだれかに意思表示をして、この法案の所期するところの目的を達せしむるためには、別な方法を考えられなかつたのでありますか。ただ意思表示をやつて書面をととのえればいいのですか。普通はたれかが預るか、むすこにというか、その相続人に言つておくかもしれませんけれども、しかし数の中には相手方なく、ただ書面だけこしらえたという場合は、そういうことであつては法規を殺してしまうことにもなるのであります。せつかくこしらえても意味をなさないことになりはしないか。そうしてこれは書きつぱなしにしていいということですか。
○村上(朝)政府委員 通常は指定される者に交付するとか、あるいは家族の者だけでも見やすいところにしまつておくかということで、大した問題も起きないのではないかと考えましたので、相手方をだけにするというようなことをあまり嚴格に規定いたすことは、かえつて実情に沿わないのではないかというつもりで、かような規定にいたしたのであります。
○石川委員 そこで法律行為でありますからして、これは委任できますか、代理による行使……。
○村上(朝)政府委員 代理による行使もできると考えます。
○石川委員 今度は取消し行為ですが、取消しの相手方は……。
○村上(朝)政府委員 取消し行為の性質及び取消し行為の相手方につきましても、指定について申し上げたと同樣に考えております。
○石川委員 それでは取消しの場合、必ず書面による意思表示が必要でありますか。
○村上(朝)政府委員 ただいまの御質問の点はまことにごもつともでありまして、民法に、遺言書を破棄したときは遺言は取消したものとみなすという規定があるのであります。この指定及びその取消しにつきましても、同樣の規定を考えたこともあるのでありますが、規定があまりに複雜になることを避けることが、この農業資産特例法という法律の要望の趣に合致すると考えまして、その点は特に規定いたさなかつたのでありますが、この取消しという行為は要式行為でありますけれども、指定をいたしました書面を破つてしまつたというような場合には、後日その指定があつたことを立証することはきわめて困難になるわけであります。理論的に申しますと、要式行為であるということは、書面が常に継続して存在していることを必要といたさないのでありまして、かような書面がつくられたということが他の書面によつて立証されれば、指定行為があつたということになるわけであります。通常の場合、指定をいたしました書面が破られたという場合には、指定行為はなかつたものとして、事実上爭いなく治まつて行くのではないかというような考慮から、かように遺言の場合のような規定は設けなかつたのであります。
○石川委員 そこで作成せられました書面をどうして保存するかということの規定はできませんかということです。民法の遺言という制度と、指定という農業資産相続に関する指定とどこが違つておりますか。遺言の一種の形式というか、遺言とは言わないが、遺言類似の形式で、そうしてその足らなかつたところは遺言の規定が類推準用せられるべきものということになるのでありましようか。
○村上(朝)政府委員 作成せられた書面をどういう方法で保存するかということでありますが、具体的にどういう形で保存されるであろうということまで実はこまかく研究いたしておりませんのですが、重要な法律行為でありますから、これを作成しましたものは適当な方法によつて保存せられることと考えるのであります。なお遺言との関係についてお尋ねでありましたが、遺言につきましては民法は御承知のように列挙主義をとつておりまして、特にこの第三條の第四項のような規定がございませんと、遺言で指定がやれるかということについて疑問がありますので、この規定を置いたのでありますが、指定行為そのものを遺言ですることも認められると考えております。むしろ遺言の方が後日証拠を明らかにする意味で確実ではないかというふうに考えるのであります。この指定という行為は実質において遺贈ときわめて類似した内容を持つておるのでありまして、遺贈と指定とどういう点が違うかという点について簡單にお答えいたしますが、要するに遺贈の場合にはむろん負担つき遺贈ということもございますけれども、遺贈は積極財産の移轉を生ずるのであります。指定の場合には、指定せられたものは、先ほど申し上げました第九條の規定によりまして、特別の相続分を取得するという効果を持つのであります。なお相続分を持つということは、第十條によつて遺産分轄の場合に一体として農業資産が取得せられた者に帰属するということになるのでありますが、遺贈と違いますなおもう一つの点は、相続分を與えられます結果、この相続財産の中で、農業資産の占める割合に應じまして、積極財産ばかりでなく、債務を承継するわけです。その意味において遺贈とは法律的には非常に違つたものであると考えます。
○石川委員 そこでこの指定の場合、民法の八百九十一條、これは欠格條項ですが、この適用は必要はないのですか。
○村上(朝)政府委員 指定自体については、相続欠格に関する民法の規定の適用は必要ないと考えます。しかし欠格事由がありますと、相続人たる地位を有しないことになりますから、相続人でない者を指定した場合と同樣な結果になるということになります。
○石川委員 そこで今度は農政局長さんにお伺いしますが、この指定権の行使能力ですね。子供でもこの指定権は行使できますか。まああとで指定を受ける者の能力もまた問題になるかも知れませんが、指定を受ける者の能力規定がございませんから、農業をむすこがやるのだということになれば、やれることになりましようが、その場合子供が受けておつたとすれば、子供でもやれるかということ、つまり指定能力であります。指定権行使の能力であります。
○村上(朝)政府委員 便宜私からお答えいたしますが、指定も法律行為でありますから、未成年者は法定代理人の同意がなければ、單独では、指定をしても完全な効力は発生しないということも考えられるのでありますけれども、実質におきまして、遺贈ときわめて類似しておる関係から、遺贈能力がある場合、すなわち遺言能力がある場合には、指定能力があると考えていいのではないかと、今のところ解釈いたしております。
○石川委員 それでは民法九百六十一條の遺言能力がこれは適用されるのだと、こう理解してようございますか。
○村上(朝)政府委員 適用と申しますか、類推解釈によつて、適用あるものと考えます。
○石川委員 そこでこの指定権でありますが、先ほど了解しかねたが、指定権は二反歩以上の耕作を営む農民に限る。それは自己の所有しておつた一定財産を、自己の欲する、しかしそれは農業を営む者という限界があるが、その範囲で指定するところの権利を持つておる。その地位において権利を持つておるということが、憲法にいうところの法律上平等ということに違反するものでないという点を、ひとつ國民に明らかに知らしておいていただきたい。そこで法律上平等であるということの條章、この十四條をお読みになつて、これにはちつとも違反しないのだ。これをこしらえますときには、特定の権利者が、特定の階級から出て來ないということの理想を持つておつたのだ。もつともそうばかりは言われない場合もむろんありますが、これがある一定の地位にあつたがゆえに、一定の権利を持つたというふうになるのでありますから、これに違反するものでないという御説明を……。
○村上(朝)政府委員 ただいまの御質問の趣旨をあるいは誤解いたしておるかもしれません。もし誤つておりましたら後ほどまた訂正いたしますが、農業資産相続人を指定し得る法律上の地位を、農業資産の所有者その他農業者が持つことが憲法に違反するかという御質問でありますが、この点は先ほど來申し上げました通り、農業資産に属する積極財産について見ますと、これは実質において遺贈にきわめて類似しておるのであります。財産の所有者が自己の財産を遺贈し得る自由が認められております以上、かような指定をなし得る法律上の地位を認められることは、直接憲法の精神にも違反しないのじやないかと考えます。ただ指定される側の問題でありますが、数人の相続人のうちの一人だけを指定することが、憲法第十四條の法の前に平等であるという原則に違反するかどうかという点につきましては、先ほど少しこの点について申し上げましたのですが、なお後ほど御質問によりましてお答えいたします。
○石川委員 触れましたから申し上げますが、憲法によつて財産処分の自由が許されておる。その点において、指定する方が、だれだれにこの財産をやるという自由を持つておるのだから、必ずしもこの法案に指定権を発生させることは平等の原則を破らない。今度は指定を受ける方の側に立つと、十二條かの規定の求償権があるのだからと、こうおつしやるのですが、求償権自体が、九條かに價額云々という問題がございまして、あとに配分すべき價額というものが現われて來るのですが、それは公平に行つておらなかつたら不当なることであります。公平に行つておらないけれども、かくかくのために、認めることが憲法に違反しないのだという議論がありましたら、ひとつお伺いしたい。
○村上(朝)政府委員 御指摘のように、農業資産の評價がきわめて不当であつたというような場合におきましては、結果において平等を破ることがあり得ると思いますけれども、法律の建前といたしましては、さようなことは予想いたしておりませんので、そういうことがあり得るからといつて、この法律自体が憲法に違反するということはないものと解釈いたしております。
○石川委員 それから胎兒、からだの中の子供に被指定者たり得る能力がごいましようか。
○村上(朝)政府委員 胎兒も相続については能力を認められておりますので、共同相続人の一人として指定することはできると思います。もつとも通常、成年に達したその他多数のその地位を持つた人が、胎兒を指定するということは必ずしも多くはないのではなかと考えます。
○石川委員 胎兒が共同相続人になることはよろしゆうございます。これは当然ですから。ただ農業資産の特別相続の被指定者たることはできるかというのです。それは第一條の農業の安定、こういうところから見て來なければなりません。農業経営の安定ということとどう違つて來るのか。
○村上(朝)政府委員 胎兒もまた被指定者たることができると思います。もつともその胎兒が成人するまで、胎兒にかわつて農業を経営して行くような適当な人がないというような場合におきましては、第五條におきまして、指定相続人が当該農業資産について農業を営む見込みがないことが明らかなときは、家庭裁判所は共同相続人の請求により、指定を取消すことができるという規定がございますので、この規定の適用を受ける場合が考えられるのでございます。
○石川委員 裁判所がそれを選択するよりも先に、農業安定、それから農業生産の維持増進ということに相なるならば、胎兒に指定を受け得る能力を持たせるということは、一体法のあれからいつて適当でしようか。 もう一つ。もしも胎兒もできるというようなことにしておきますと、すでにこわされてしまつたところの旧來の家族制度、家督相続制度というものが、ずつと入つて來ることを予定しなければなりません。一方においては、國家がそれをこわさなければならぬという政策をとつておる。一方においては、そういかなければならないといつてもよいような道を開くということはどうですか。これは農業安定、農産物の増進、こういうことが大切なためにこの法律を出すと承つておる。相続そのものを認めるという趣旨は承つておらない。胎兒までが農業資産相続人としての指定を受けるということはちよつとふに落ちません。
○村上(朝)政府委員 この法律案によりまして、家督相続制度が温存されるような結果になるということは、もとより避けなければならないと存じます。しかし胎兒が指定される能力があるということによつて、家督相続制度温存の危險を生ずるというふうには私ども考えておらないのであります。
○石川委員 現実に働かなければ農業ができぬのでありますから、その安定、増産という点から一体胎兒を被指定人として認めることは、法律案の立案の趣旨はそうでなく、子供でもやれるということで、これは家督相続になりはしませんか。それは農林省でお考えになつておることはどうでございましようか。
○山添政府委員 これは胎兒という極端な例を出されたのでありますが、小さい子供にいたしましても、自分が死ぬであろうというときに遺言ということでなくて指定しても、母親が主となつて働いてその農業を続けて行くという場合は十分あり得ることでありまして、それを少し延長いたしますと娘があつたけれども、これは嫁に行つてしまつた。今度また子供が生れそうだ。ところで自分の妻がずつと農業を守つて行くのだ、こういうことでありますれば、そういうこともあながちおかしいといいますか、不可能だということでもないと考えます。
○石川委員 今胎兒を問題といたしましたのは、民法も胎兒について相続を問題にしておるのでありますから、問題にせざるを得ないのであります。そのような場合には妻を相続人として指定しておつたらよいじやないか、胎兒をむりにここに持つて來てやらなければならぬという相続の概念をどうして出されるのですか、実際のところお考えはどうですか。
○村上(朝)政府委員 御質問の趣旨は、胎兒を指定することは法律上可能であるかという御趣旨に伺いましたので、法律上胎兒を指定することを禁止すべき特別の理由もないという意味でお答えいたしましたので、その妻が農業に從事しておるというような場合に、妻もまた共同相続人の一人でありますから、妻を指定することはむろんできるのであります。そういう場合にも胎兒を指定することがよいかどうかという点について申し上げたのではなかつたのであります。
○石川委員 ただ農業ということで農家一家を持つて行きたい。一定の資産で農業を増産させて安定させたいということであれば、その点から胎兒まで拡張して行くということがどうかというのです。そういう法の目的から考えて、農業のために必要なんだ、みなが食うために必要だとおつしやるから、それなら胎兒まで持つて行くのはこの法の趣旨からどうかと言うのです。それをどうしても胎兒まで持つて來るのははなはだ失礼ですが、皆さんがやはり一家というものを円満に持つて行こうという御趣旨だろうと思う。その趣旨はわからないことはないけれども、それは破らなければならぬ。ただ一に農業自体の経営を考えての法案だと見ておるのでありますから、私どもはお聞きしたい。
○村上(朝)政府委員 この法律案は遺産分割による農業資産の細分化を防止して、農業経営の安定をはかることが目的でありますけれども、この法案をお読みになりまして明らかな通り、なるべく被相続人の意思を尊重するという建前でこの法律はできておるのであります。相続人たる地位を持つ以上、相続人の中の何人を選ぶかということは、被相続人の意思によるのが適当ではないかということが私どもの考えであります。繰返して申しますが、これによつて家督相続制度の温存ということは毛頭考えていなかつたのであります。
○石川委員 ところが指定する人の自由、こう言いますけれども、法律がある一定の目的に向つてできた以上、しかも特例でありますから、その法律の目的に向つて指定権というものは制限しなければならぬと思うのであります。それを胎兒まで拡張する。どうしてもその御説を通し拔かれるならば、これは質問でありますから別に申しません。けれどもそこにはごむりはございませんか。われわれに原案を示した御趣旨に対してごむりはございませんか。私はこれだけにしてこの質問はやめましよう。けれどもこれはごむりではないかということを、はなはだ失礼でありますが、申し上げなければなりません。
○梨木委員 大体私が先ほどから政府委員の質問を聞いておりますと、言葉の上では家督相続の復活をねらつたのではないと言いながら、被相続人の意思を尊重する、あるいは胎兒にまで相続をさせよう、こういう考え方は、家督相続の考え方の上に立つているから、そういう結論がちよいちよいと出て來る。だから私の申し上げたいのは、それでは農業資産相続特例法の第一條の法律の目的というものは、何のためにこの目的を書いたか。この目的の趣旨に從つて法律の運用並びに解釈を決定して行くということのためにつくられた。そうであるとするならば、まだ胎兒で農業を営むかどうかがはつきりしないものにまで指定ができるというような考え方、これはとんでもないことだと思うのであります。こういうことの中に、あなた方は家督相続の復活ではないとおつしやるけれども、あなたの答弁自体から明らかに家督相続をねらつておるものだということを、いわゆる問うに落ちず、語るに落ちるということを言いますけれども、それ自身私は証明しておると思います。それに対して何か反駁の余地はありますか。
○村上(朝)政府委員 憲法においても、民法においても、個人財産権尊重の建前をとつておりますので、財産処分の自由も認められておるのであります。生前において処分することが自由であるばかりでなく、死後において処分することも自由であります。先ほど石川委員に対する御質問に対してお答えした通り、農業資産だけの問題について申し上げますと、遺贈に類似した形を持つております。たれに農業資産を相続させるかというと、被相続人の意思にまかせるということは財産権尊重の原則、財産処分の自由の原則という精神から來るのでありまして、繰返して申しますけれども、私どもとしては、家督相続制度をこれによつて温存するという氣持はないのであります。
○石川委員 もう少し述べさせていただきます。第六條、ここで今度は共同相続人の選定権というのがあります。だれか一人を選定する場合であります。この選定はやはり権利であろうと思いますが、この選定権の行使は代理人によつてもできますか。
○村上(朝)政府委員 代理人によつてできると考えます。また実際の事例におきましても、遠方におります兄弟のうちの一人が、國元にいる兄弟に委任して協議してもらうということもあり得るものと考えます。
○石川委員 この選定することは明らかなことと思いますが、多数決でありますか。この点をお伺いします。
○村上(朝)政府委員 第六條におきまして、協議して選定することができるとありますのは、全員一致のつもりであります。もし全員の意思が合致しない場合には、第七條の「協議がととのわないとき」に該当するものと存じます。
○石川委員 そうすると第七條がずいぶん活動することになると思います。七條の裁判所の選定は、この分化については司法命令でするのか、判決でするのか、そのいずれでありますか。その手続は何によりますか。
○村上(朝)政府委員 手続は家事審判法及びいずれこの法案が成立いたしましたならば制定されると考えられまする最高裁判所の規則によつて詳細に定められることと考えます。私どもの予想といたしましては、家庭裁判所の家事審判法による審判という形式で定められるものと考えます。
○石川委員 今度は裁判所が選定しないという審判があつたときは、普通の相続になるのですか。
○村上(朝)政府委員 第七條の第二項によりまして、選定をしないという審判があり、それが確定いたしますと、この特例法は適用の余地がないことになりまして、民法の一般規定だけが適用されることになります。それは選定をしないという審判があつた場合ばかりではなく、指定もなく選定もない、また第七條による共同相続人の請求もないという場合にも同樣であります。すなわちこの法律は指定による被相続人の自発的意思、または協議、もしくは第七條の審判の請求による共同相続人の意思によつて発動する。そういうものがなければ、一般の民法の原則が適用されるという建前でできておるのであります。
○石川委員 そこで民法の原則に從つて相続が開始された、細分化が始まつたこの処置は、今度は農地調整法等に返つて來るのでありますか。
○山添政府委員 これは農地調整法の田地の移轉設定につきましては、農地委員会の承認を要するという規定が適用し得るわけでありますけれども、農地委員会といえども、相続等によります場合をむやみにつつぱねることも妥当でありませんので、私の考えといたしましては、この法律によらないで相続する、すなわち分散相続いたします場合は、一應農地委員会の承認にひつかけるつもりではありますけれども、しかし農地委員会がその場合に承認するかいなかということにつきましては、非常なむりがない限りは、勧獎みたいなこともいたしますが、しかしやはりどうしてもそういう分散もやむを得ないという場合にはこれを認める、こういう彈力性のある取扱いをして行かなければならないと考えておるのであります。
○石川委員 ところがそうなつて参りますと、農地が分割されて來ますね。これはたくさんな中でありますから、紛糾することのあるのもしかたがないといたしましても、それを引上げて來た。そのときには、農地法によつて禁止されてある農地讓渡の関係で、あれはどんどん許して行きますか。
○山添政府委員 農地法で讓渡等は実は禁止いたしておりません。農地改革を実行いたしております途上におきましては、いろいろ混乱が起きますから禁止をいたしておりますが、今後は新しく農地改革の線に沿つたわくを設けまして、そのわくの範囲内では、権利の移轉があることを予想しておるのであります。しかしもとよりこれはそのわくの範囲内で、かつ農地委員会の承認、もしくは知事の許可を要することになつております。
○石川委員 今農地の所有権移轉は許可制でありますね。地方長官はそのときはどんどんこれを許可しますか、今言つたように話がまとまらないで、どうしてもこれは均分相続をやらなければならぬ、こうなつたらどうなるか。都会におる人もあるし、農村におる人もある。百姓をやる人もあるし、やらない人もあるということになると、この委員会でこれに関係して、その場合には禁止をしないとおつしやつたけれども、その場合に限つては必ず許可するのだという御方針ですか。
○山添政府委員 通常の場合においては、たとえば地方長官の許可を要するところの農地を讓渡するには、これはみずから耕作をする目的で讓り受けるというのでなければ、改正法によりましては許さないことにいたしておるのであります。しかしこの相続によつて起る場合におきましては、そうした農業政策上の要求一点張りでどこまで行くかということには、おのずから限度があると思いまするので、相続の場合における許可、あるいは承認等につきましては、これは特別の考慮をしなければならぬじやないかという考えでおります。
○石川委員 そこまで御趣旨を徹底すれば、ここの第七條にある農地調整法によつて地方長官の認可を受れることは、この場合は適用しないとお考えにならなかつたが、そうしなければ処理がつかぬのです。相続が開始されました後の方法がつかない。それをよく社会的に清算整理して参りますためには、じやまになる法律はここから排除しなければならぬが、どうしてそれを抜かなかつたか。それをここに書いてしまつた。堤防の一角がこわされた。そうするとまた次の堤防がこわされはせんかということをお伺いします。
○山添政府委員 農地調整の書き方は非常に包括的でありましてこれは政令で定めるということになつたわけであります。現在ならば何もかも農地調整法の中に織り込んでおるわけであります。この政令を実は整理をいたすことにいたしておるのであります。
○石川委員 それでまた問題になつて來る。政令におまかせすることは、これは本質的に國会できめるべき問題でございましようね、そういう問題が出て來る。できるだけ一方的に法律できめながら、一方で政令を持つて來なければならないということは、從來國会の審議において言われたことも、局長さんもとうに御承知のことだと思いますが、それを政令によつて重要視されたところを出すことになるなら、場合によつては、農業資産の讓渡は他の法規の規定があつたにせよ、これが自由をお認めになることをお書きになつたら、どうなりますか。
○山添政府委員 この法律によるところの農業資産の相続は、農地調整法に規定するところの許可ないし承認を要しないということを書くということは、法規それ自身としてはけつこうだと思うのであります。私どもはその点に対しましては、いずれにしても農地調整法に政令の定めるところによりということになつておりますので、そこで整理をいたしたいと考えておつたわけであります。
○石川委員 そこで共同相続人に対する債権者の場合、債権者の側では均分相続だと思つて信用を與えた。ところがそうならなかつた。農業資産は一團となつておる。それを差押えを禁止しておらないのでありますから、押えて來たらどうなりましようか。
○村上(朝)政府委員 農業資産に属する財産に対して、債権者の強制執行をすることをこの法律は禁止いたしていないのであります。
○石川委員 相続権が始まつてから、債権者が押えて來たという場合ですよ。
○村上(朝)政府委員 強制執行を許すと、第一條に掲げた目的が達成されないのではないかという御質問でありますが、農業資産はこれを徹底的に細分に防止しようといたしますならば、自由処分を禁止し、強制執行も禁止する。そして諸外國のそれぞれの例がありますようなところまで進まなければ徹底しないのであります。その意味におきまして、この農業資産相続特別法案は農地細分の方針に不徹底であると申せば不徹底なのでありますが、その家屋制度というようなところまで行くにつきましては、先ほど御指摘になりましたように、憲法の第十四條の原則に反するのではないかというような懸念もございますので、まだ研究は熟しておりません。そこまで徹底した制度をとるに至らなかつたのであります。從いまして御指摘の通り、自由処分または強制執行による農地の分割が行われる場合もあり得るかと考えるのであります。
○花村委員長 ちよつと速記をやめてください。 〔速記中止〕
○花村委員長 速記を始めてください。 本法案に関しましては、他にも質疑の通告者がありますので、本日はこの程度に止めておきます。 —————————————
○花村委員長 次に法務総裁に対する梨木作次郎君よりの質疑の通告がありますから、これより許します。梨木作次郎君。
○梨木委員 まず第一に伺いたいのは、昨日からけさのラジオでは、政府は非日活動委員会をつくるということについて大体の構想ができたらしいということであります。これによりますと、下部組織を市町村にも設けることになり、予算は法務廳の予算にすでに組まれている。この委員会では、日本の再建をはばむものすべてを取扱い、どんな思想でも研究することは自由だが、行動に移す場合はこの対象となる。いまだ課にするか委員会にするか決定していないが、議会が終つてから設けられる樣子である。こういうことが報道とれているのでありますが、ここで念のために伺いたいのでありますが、このような構想並びに非日委員会をつくる考えがすでに具体化しているかどうか、これを伺いたいのであります。
○殖田國務大臣 私は先ほど議場ではありませんが、さようなお話を伺いましたが、私も実は驚きましたのであります。私はラジオを聞いておりませんでしたので、どういうラジオであつたかをはつきりは存じませんが、多分ただいま梨木さんのおつしやつたようなことであつたろうと思うのであります。私は非日活動委員会というようなものをつくるかどうかということをしばしば聞かれるのでありますが、私は非日活動なるものがはたして具体的に存在するかどうかということすらも、はつきりまだ頭に入らぬのであります。また非日活動なるものは一体どういうことを言うのであろう。その内容もその限界も私にはわからないのであります。ただ、世間でかまびすしく言われるのでありますから、それはひとつ大いに勉強しなければならぬ。こういうわけでいろいろと世上に流布されている報道を研究はいたしております。從つて、ただいま非日活動委員会なるものをつくる意思は全然ございません。政府の中につくる意思は全然ございません。また非日活動なるものを対象として何らかの行政的措置を今何も考えておりません。その段階に達しておりません。でありますから、ただいまお話の点は單なる流説でありまして、私の何ら関知せざるところであります。
○梨木委員 次に伺いますが、過般團体等規正令が改正されました。これによりますと、新しく政党その他の團体の機関紙を届け出よということと、それからこれらの團体について人員ないし情報の提供を要求することができるように新しく規定が入つたのでありますが、これに関連いたしまして、今年の法務廳の予算を見ますと、他の官廳では予算が非常に削減されて來ているにもかかわらず、法務廳では二十六億円でありまして、非常に膨脹をなしているのであります。その内訳のうちの團体等規正令の諸團体調査等に必要な経費として、昨年よりも奥三倍四分の増加で、八千四百五十三万九千円増額しているのであります。これは中央でそうでありまして、さらに地方におきましても、都道府縣に專任職員四百三十五名を予定して、二千八百三万円の費用を計上しているのであります。私がまず伺いたいのは、一体他の行政官廳においては非常に費用を削減しているにもかかわらず、團体等規正令の運用についての費用が非常にふえている。これはどういう理由によるのか。特に最近國家主義的な團体がその活動をたくましくして來て、その調査の必要が生じてきたとか何とかいう客観的に必要な事実がどんどん発生して來たために、こういう増額をされたものかどうか、この点をまず伺いたいのであります。
○殖田國務大臣 その点はせんだつてもたしか内閣委員会でお尋ねがあつたのでございますが、團体等規正令に伴うそれは経費でありますが、それは仕事がふえたからと申すだけではございません。仕事もふえて参りましたが、それよりも一体この仕事をいたしますために、從來経費と人とが非常に不足しておつたのであります。それを一ぺんに拡張するわけに参りませんから、順次年を追うてこれを充実して行くという建前になつておりましたのを、ただその計画を実行しているに止まるのであります。ことに團体等規正令によりまして届出團体の数が非常にふえました。そして、その内容がやや複雜になりましたために非常に手数を要するのであります。それから從來民事局において扱つております仕事もこつちに移つて参りました。それがまた非常に手数を要することになりましたために、とうてい現在の経費と人とではやりきれないというのでふやしたのであります。それからこれは地方の公共團体にも非常に手数をかけますので、その地方の公共團体に対しまして補助金を出すというようなことのために経費がふえて参つたのであります。そのほかに何らの隠れたる目的を持つているわけではございません。
○梨木委員 今の御答弁の中でわからないのでありますが、仕事がふえるということは、大体において他の行政官廳においてもほぼ同じような條件があると思うのでありまして、特に三倍もふえるということについては、特別何らかその必要性があつたということが証明されない限りは、私はまだあとでいろいろ私の疑問を提出しますが、その問題と関連して納得が行かないのであります。特に國家主義團体の調査の必要がふえて來た事実はあるのでありましようか。
○殖田國務大臣 経費はふえておりますが、人間などそんな三倍もふやすことはございません。そんなにふえてはおりません。それから國家主義團体と申しますか、右翼團体が非常にたくさんあり、暴力團がたくさんあります。実はこれの調査に非常に手数がかかりますので、そのために実はずいぶん人を食われているのであります。御承知のごとく、最近そういう暴力團体を実は解散を命じております。しかしあの一つの暴力團体を解散を命じますためには、ずいぶん多勢の人手と金と時間とを使つている。それを急速にやりますためには、どうしてももつと一層の経費と人とを欲しいのであります。お話のごとく、行政整理の実施期でもありますし、財政の緊縮している事態でもありますから、なるべく最小限度の手段をもつてまかなつて行きたいというために、ただいまの程度に増額をいたしたのであります。
○梨木委員 昭和二十三年三月末現在では特別審査局の職員は何名おつたのでありますか。今年はこれは何人ふやすことになつておりましようか。
○殖田國務大臣 少しこまかくなりまして、事務当局がおりませんので、私あまり詳しく申し上げられませんが、約二百数十人おりまして、それが四百くらいになるのじやないかと思つております。
○梨木委員 この点はちよつと正確を欠いていると思いますから、後ほどそれでは昭和二十三年三月末現在の実在員とその後ふやそうとする人員——この予算書を見ますと、團体等調査に必要な経費として二百十三名を予定しているようであります。ですからいろいろごつちやにされておるのかもしれませんが、特に團体等調査に必要な実在員が、昭和二十三年三月現在において幾らか。その後幾らふやす予定か。その点を後ほどでよろしゆうございますから、提出していただきたいと思います。 その次に伺いますが、こういうふうに團体等規正令を改正し、さらに費用を三倍にふやし、そうしてその元締めにすわつておる特別審査局の局長というのは、吉河光貞という元思想檢事の経歴を持つた人であります。この法令と経済的な裏づけと、しかも人的には思想檢事の経歴を持つた人がすわつて、三位一体となつております。過般法務総裁はこの團体等規正命を特高警察的に運用しないと言われましたが、私はこの現状から見まして、今後特高警察的な運営が起つて來る危險性を非常に感ぜざるを得ないのであります。そこで法務総裁は現在の特別審査局の局長の吉河光貞という人が、どういう思想檢事的な経歴を持つた人かということについて詳細な報告を受取つておられるか。どの程度の報告を受取つておられるか、これをまず承りたいと思います。
○殖田國務大臣 私は吉河君がかつてそんなに長く思想檢事をしておつたとは聞いておりません。思想檢事の特徴の著しき人は全部追放されておりまして、残つております人はまず無害な人ということで残つておつたのであります。私はむしろ逆に吉河君はかつて学生時代に左翼思想の研究者であつた。從つて左翼に非常に同情のある人である。ああいう人ではかえつて公正な態度がとれないではないかというような批評すらして参る人があるのであります。從つて私はごく公正な人物で、適当な人であろうと考えたのであります。
○梨木委員 私の調査によれば、今法務総裁のおつしやつたように、吉河氏は学生時代に、その後一時共産党の幹部になつたことのおる田中清玄氏と、帝大の新人会において並び称せられて、学生運動をやつた経驗のある人だということは聞いております。同人の経歴は大正十三年一高に入学して、一高の社会科学研究会の最高指導者であつた、その後帝大——当時の帝大に入りまして、新人会において田中清玄氏と並び称せられて、非常に活発な学生運動をやつておつたということ、それから卒業後評議会関東木材の書記をやつておつたということで、共産党員として活動しておつたこともあるということであります。昭和五年ごろに運動から脱落したということであります。かつてそういう経歴を持つておつたからといつて、左翼運動に同情があるということは言えないのでありまして、かつてそういう経歴を持つておつた人は、その経驗を生かして、非常な辣腕と陰險な方法で左翼運動を彈圧するのであります。そこで法務総裁は御案内でないようでありますから、私の方で調査した資料を今申し上げますから、この点についてとくと調査されまして、その結果思想檢事的の経歴が非常に濃厚でありましたら、これは現吉田内閣のためにも即刻この地位からしりぞけられるのが、いろいろの疑惑を受けないゆえんであろうと思います。まず第一に申し上げますが、昭和十二年、名古屋地方檢事局で、石川友右衞門ほか二十数名のものをいわゆる人民戰線事件として檢挙した。この事件に参與しております。この事件におきましては佐藤時朗という人ほか数名が長期勾留のために獄死しております。第二番目には、昭和十六年の五月、東京地方檢事局におきましては、有名な企画院事件というのがありましたが、この企画院事件に関連いたしまして川崎已三郎、玉城肇、これらの人々を取調べております。第三番目には、昭和十六年いわゆるゾルゲ事件において、ゾルゲ、それから尾崎秀実事件の主任として活躍しております。最初主任としてこれに参加したのでありますが、その後同人は、いわゆる学生時代に社会科学研究会へ出入りしておつたということが暴露したために、退陣を余儀なくされたということなのでありますが、この事件の檢挙において抜群の功があつたということで、表彰されておるということをわれわれは聞いております。第四番目には、昭和十七年の六月、満鉄事件を檢挙するために中國に出張しております。そうして現在の日本共産党の参議院議員であるところの中西功、西里龍夫、これを檢挙し、さらに北京において白井行幸、尾崎庄太郎を檢挙しております。張家口においては新庄憲光、安齋庫次を檢挙しております。この新庄憲光はとうとう獄中で死んでおります。私もこの人を知つておりますが、これは死んでおります。中西功君は御案内ように死刑を求刑されて、無期懲役の判決を受けておつたのであります。こういうような重要な事件に参加しておるのであります。さらに昭和十八年一月、思想犯罪のエキスパートとして、当時の司法省から戰時下における犯罪とその対策の調査研究を委嘱されておるのであります。こういう事実を見ましても、彼がいかに思想犯罪についてのエキスパートであつたかということが明らかであります。大体われわれが調べた事実といたしましては、以上のようなものでありますが、こういう経歴は、これはいわゆる思想檢事としての——当時追放に該当する年の計算とか、あるいは当時思想檢事という辞令を正式に受けておつたとかおらなかつたという関係で、たまたま追放を免れたのかもしれませんが、現実にはこういう思想檢事としての非常なる辣腕を振つておつた人であります。從いましてこういう人が特別審査局の局長にすわり、しかもわれわれが納得し得ないような、予算を昨年度より三倍の増額をやる。そして團体等規正令を改正し、こういうように三位一体の改正を行つて來ておるということは、これによつて今後思想的な活動を干渉し彈圧し、いわゆる戰爭中におけるところの特高警察を復活するのではないかという危險をわれわれは非常に感ずる。そしてたまたまきのう、きようのラジオのニユースなどを聞きますと、法務廳内においてこういう非日委員会的な委員会を設けて行く予算もすでにとつてあるというようなこと、あれやこれや総合してみますと、現内閣の考え方について非常な疑惑を持たざるを得ないのでありまして、この点についてもしそうでないとおつしやるならば、この思想檢事の経歴を持つた吉河氏がこの地位にあるということについて、私が申し上げた経歴を調査されて、こういう事実があるのならば、こういう人たちをすみやかにその職からやめさせることが政府の疑惑をなくするゆえんであると思うのであります。この点についての法務総裁の見解を伺いたいと思います。
○殖田國務大臣 いろいろ御注意を承りましてありがとうございますが、吉河君はさような経歴が多少あるかもしれませんが、すでに資格審査の嚴重な審査を経ております。ことに法務廳の官吏につきましては、関係方面におきまして特に注意が届いておるのでありまして、他の官廳の官吏のごとく、しかく容易には資格審査が通過しないのであります。從いまして私は吉河君の場合は十分な審査を経て、これにパスした者であろうと考えておるのであります。人の一身上に関することで、実ははなはだお氣の毒なのでありますが、吉河君に関しましては、ただいま梨木さんのお話と逆な、左翼的な色彩が非常に強いというようなことをしきりに言つて参る方面もあるのでありまして、私はそれこれ考え合せまして十分研究いたしまして、私はまだあの人を自分の部下として使つて約六箇月足らずでありますが、今のところまことに公正で誠実であつて、思想的に彈圧を加えるとか、あるいは旧來の思想檢事のような態度は少しも認められないのでありまして、私はごくリベラルな、まじめな官吏であると実は考えておるのであります。いろいろ御注意を賜わりましてありがとうございましたから、いずれまた十分に研究をいたしてみるつもりであります。それから特別審査局が充実いたしますけれども、決してお話のような、旧來のいわゆる思想檢察というようなことは絶対に私はしない。でありますから御心配のないように願います。私も数年間憲兵に尾行されておりまして、その間の消息は人より一層よく自分でも体驗があるのであります。決してそういう御心配のないように願いたいと思います。
○花村委員長 梨木君まだ長いですか。
○梨木委員 あと阿波丸をちよつと……。今の私が申し上げた吉河氏の経歴についての疑いの点については調査されて、その事実の有無を報告していただきたいと思います。その次に昨日、私の党の志賀さんからいわゆる阿波丸事件についての緊急質問をしておるのであります。この点について吉田首相兼外務大臣は答弁をされたのでありますが、非常に不十分であり、またわれわれが納得できない点が多々あるのであります。きようは時間も切迫しておるので大体要約した点を申し上げ、また詳細な点は後日に讓りたいと思います。第一に伺いたいのは、この阿波丸事件の請求権を放棄するという決議が國会でなされたのでありますが、このアメリカに対する請求権を放棄するについては、これは國の債権を放棄するのであるから法律によらなければならない。しかるに決議案によつてこのようなことを措置しようとしているのはどういうわけかということを、私は本会議で質問したのでありますが、それは決議が通つたのちのことであるというように提案者から答弁があつたのであります。そこでこれは一應決議の趣旨を体して政府が措置したのでありますが、それについて、その後國の債権でありますから、これを放棄し、あるいは免除するについては法律によらなければならぬわけなのでありますが、この措置がとられておらないのでありますが、これはどういう理由に基くものか、また今後政府が法律をつくる意思があるのかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
○殖田國務大臣 國の債権であれば申すまでもなく梨木さんのお話のごとき手続を要するのでありますが、先般とりきめをいたしました請求権の放棄というあの請求権は、まだ結論として具体的に確定したものではありませんので、財政法第八條のいわゆる債権には該当しないと政府は考えておるのであります。
○梨木委員 きのうの吉田首相の答弁では、請求権であつて債権でない。だから財政法に基く法律の制定を必要としないのだというような趣旨の御答弁になつておつたのでありますが、今法務総裁もまた同趣旨の答弁をされるのでありますが、一体阿波丸事件によつて発生した損害賠償の請求権というもの、これは額こそ確定してないが、しかしながら相手はアメリカであるということははつきりしておる。しかも債権の確定はやろうと思えばいくらもできるわけである。しかも財政法において規定している債権というのは、何も債権額が確定しておらなければいけないというような制限はないわけであります。從いまして請求権であり債権でないから、財政法に基く法的措置が必要じやないのだということは、これは実に三百代言的な考え方であろうと思うのでありますが、一体債権と請求権とどういうふうに違うとおつしやるのでありますか、それをまず伺いましよう。
○殖田國務大臣 放棄しましたのは、その債権を確定したいという請求権を放棄したのであります。これから、今のお話のごとく相手國に請求をいたしまして、その内容を確定して、そこで債権が確かに定まるわけなのでありますが、その債権を確定する請求権をここで放棄したので、まだ債権にならない手前の段階において請求権を放棄した。こう考えております。
○花村委員長 梨木君に申し上げますが、阿波丸事件に関する問題は外務委員会に属する問題であろうと思うのですが、委員外の質問として外務委員会においてやつていただいたらいいと思うのですが……。
○梨木委員 法務廳では、私が寡聞にしてちよつと正確ではありませんが、條約に関することも法務廳の管轄になつているわけなのであります。この阿波丸事件に関する協定というものは一種の條約であります。從いましてこれは法務廳の権限内であろうと思うのでありますが、この点間違つておりましようか。これを私は伺います。
○殖田國務大臣 條約になりますれば、法務廳はもちろん関與いたすのでありますが、実はこれはまだ條約になつておりません。今のようなお答えをいたしておりますのも、ただお尋ねがありましたから、法務廳がほかから伺い知つた点についてお答えをしただけであります。
○花村委員長 ちよつと速記をやめて……。 〔速記中止〕
○花村委員長 それでは速記を始めてください。
○殖田國務大臣 このとりきめが條約であるかいなかということにつきまして、法務廳だけの見解を持つておるのであります。その見解をここで申し上げます。本協定の内容は、わが方としましては請求権の放棄を宣言し、あわせて犠牲者の見舞金についての決意を表明したものであり、先方としては、この事件についての遺憾の意と同情の意を表明したものである。その本体は法律的に申せば、一方的の意思表示であるのみならず、このとりきめ自体が、先に行われた國会における両院の御決議を誠実に実行したものでありまするから、何ら憲法違反の問題はない。こう考えておるのであります。さよう御承知願います。
○梨木委員 それではこの請求権の放棄というのは、これは相手方のアメリカに対して意思表示はしたことになるわけなのですか。一方的に宣言したとおつしやいますけれども。
○殖田國務大臣 一方的にわが方の意思を表明したわけであります。
○梨木委員 その意思表示はアメリカに法的に到達しておるのでありましようか。
○殖田國務大臣 到達しておるものと思います。
○梨木委員 そうすると政府では、この損害賠償請求権の額を確定する権限を放棄した。こういうふうに承知してよろしいですか。
○殖田國務大臣 もつと詳しく申しますれば、阿波丸事件の損害賠償については、今後日本からは何ら申出をいたしません。こういう立場を明らかにしたものと思います。
○梨木委員 そうすると、結局は損害賠償の額のみならず、基本的な権利すべてを放棄したことになるのでありましよう。どうですその点は。
○殖田國務大臣 今後申出をするという立場を放棄したというつもりであります。
○梨木委員 それではその次に伺いますが、この昭和二十四年四月十日付で外務大臣吉田茂、それから日本関係米國政治顧問ウイリアム・ジエー・シーボルト、この二人の間に成立した協定書には了解事項というものがくつついておるのであります。この了解事項は「本日署名された阿波丸請求権の処理のための協定の署名者は、各自國の政府のために、次の事項を確認した。」として「占領費並びに日本國の降伏のときから米國政府によつて日本國に供與された借款及び信用は、日本國が米國政府に対して負つている有効な債務であり、これらの債務は、米國政府の決定によつてのみ、これを減額し得るものであると了解される。」かような了解事項というものがついておるのであります。こういう了解事項を協定する権限の法的根拠を聞きたいのであります。
○殖田國務大臣 この了解事項でありますが、了解事項は占領國と被占領國の立場からして、当然の事実を明らかにしたものであると解釈をいたしております。
○梨木委員 予算委員会その他におきましては、降伏のときから、米國政府から供與された借款や信用については、これは贈與であるか、それとも債務であるかということについては、まだ未確定である。これは講和会議の際に決定されるものであると政府は答弁しておるのであります。ところがこの協定書によりますと、有効な債務だということを認めておるのでありまするが、その当時と、この協定書をつくるときまでに政府の方針が、あるいは見解と申しますか、それが変更になつたものなのでありましようか、それを伺います。
○殖田國務大臣 予算委員会でどういうお話があつたか存じませんが、この債務は包括的には債務であることは間違いないと思うのでありまするが、しかしこれらの関係のことは講和條約の際に具体化することでありまして、今日におきましては、まだ日本の國内法制上の問題となる段階に至つてないと考えておる次第であります。
○梨木委員 そういたしますと、この阿波丸事件の請求権の問題は、講和会議の際には、再びこの問題について論議並びに協定というものは行われることになるのですか、ならないのですか。
○殖田國務大臣 阿波丸事件はすでに結末を告げましたので、再び講和條約では問題にならぬと考えます。
○花村委員長 梨木さん、今本会議が始まつて定足数が足らぬということですから、簡單に願いたいと思います。
○梨木委員 それではこの点はきようの総裁の答弁をまた基礎にいたしまして、非常に重要でありますから後刻また質問することにいたしまして、きようはこの程度にして質問を留保しておきます。
○殖田國務大臣 この問題は実は外務省において担当しております問題でありますから、なるべく外務省にお尋ね願いたいと思います。
○梨木委員 それからこの前法務総裁にお願いしたのでありますが、例の地方自治法に基く公安條例、この違憲の問題について法務廳は研究しておくということでありましたが、その研究の結果を御発表願いたい。
○殖田國務大臣 まだそれはただいまのところ研究をしているだけでありまして、さてどうするという対策はまだ申し上げる段階に至つておりません。今日の法制の建前からいたしまして、お話のごとく公安條例をただちにやめさせる、あるいは地方公共團体をもつと進んで監督する制度を立てるということは、各方面に非常に実は影響するところが大きいのでありまして、私どもは研究はいたしておりまするが、早急にはこの対策は立てがたいと考えております。
○梨木委員 今まで法務廳は労働運動に関しては、労働爭議の解釈など、たとえば生産管理の問題などにつきましては、盛んに労働省に不利益な解釈を政令その他で発表して、われわれを憤激させておつたのでありまするが、この公安條例というものが、これは東京都でも今上程されておるのでありまするが、どんどん全國的にこれが波及されて來ることになりますと、実際上は憲法に保障されておる團体交渉権や、その他あらゆる自由というものが抹殺されてしまう、ですからそういう悠長なことは言つておられないで、即刻法務廳の見解だけでも、これは憲法違反であるという点を早急に発表していただきたいのであります。それによつて地方自治体も非常に遵法精神を刺激されるだろうと思いますから、こういうような措置をぜひ早急にとつてもらいたいと思うのですが、いつごろとられるか、それを伺います。
○殖田國務大臣 その問題が檢察の権限内へ入つた場合のことでありますならば、ただちに適当な措置がとれるのでありまするが、いかんせん法務廳は地方公共團体を監督する立場にありませんし、また地方公共團体の行動を直接批判する立場におりません。從つて法務廳はこれが適法であるか違法であるかというようなことを、そう簡單には表明ができないであろうと思います。もちろんこれは政府全体の問題でありまして、政府が全体といたしましてこの問題を考慮する時機があろうと思います。そのときに政府に対しまして、法務廳が法務廳としての見解を披瀝する時機がもちろんございましよう。ただ法務廳が独立して社会に向つて法務廳の見解はこれこれであるというのは、いささか過ぎておることではないかと考えておるのであります。
○花村委員長 この際証人追加に関してお諮りいたします。昨日横浜地檢問題調査のために、明十九日六名の証人の出頭要求の決議をいたしましたが、なお証人の追加として阿部正榮君の出頭の要求を議長にいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○花村委員長 御異議なしと認めてさようにはからいます。本日はこの程度にて散会いたします。 午後五時五十七分散会