法務委員会 第15号
- 発言数
- 106 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1949/05/06
会議録
○花村委員長 これより会議を開きます。 まず訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案、刑事訴訟法の一部を改正する法律案を一括議題といたします。本案について他に質疑はありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○花村委員長 御質疑がなければ、両案を一括して討論採決に移ります。討論はいかがいたしましようか。 〔「討論省略」と呼ぶ者あり〕
○花村委員長 それでは討論を省略して採決いたします。 両案に御賛成の諸君の御起立を求めます。 〔総員起立〕
○花村委員長 起立総員。よつて両案は原案の通り可決いたしました。 右両案の報告書は委員長におまかせを願います。 政府委員の都合により、午後一時まで休憩いたします。 午後零時五分休憩 ━━━━◇━━━━━ 午後二時二分開議
○花村委員長 休憩前に引続き会議を開きます。 日程には上つていませんが、去る四月三十日に付託になりました皇族の身分を離れた者及び皇族となつた者の戸籍に関する法律の一部を改正する法律案について提案理由の説明を求めます。 —————————————
○山口(好)政府委員 ただいま議題となりました皇族の身分を離れた者及び皇族となつて者の戸籍に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。 皇族の身分を離れた者及び皇族となつて者の戸籍に関する法律は、皇室典範の附属法として、また戸籍法に対する特別法として、皇族の身分を離れた者及び皇族となつて者の戸籍の取扱いを規定いたしておりますが、同法は、旧戸籍法を基礎として制定されたものでありますので、これを、新戸籍法の建前に沿うように改正する必要がございます。すなわち、新戸籍法は民法の改正に対應して、「一つの夫婦及びこれと氏を同じくする子」を戸籍編製の單位として、三代同籍を避ける建前をとつており、また、婚姻によつて氏を改めた者が離婚等により復籍する場合には、復籍者は新戸籍編製の申出をすることができることになつておりますが、これらの点につき現行の皇族の身分を離れた者及び皇族となつた者の戸籍に関する法律を、新戸籍法の建前に從つて改正するとともに、なお現行法の戸籍届出に関する規定中、新戸籍法の規定によつて不必要となつた部分を整理するため、ここに、この法律案を提出いたす次第でございます。 次に、この法律案の内容につきまして簡單に御説明申し上げます。 まず第一條についての改正規定は、現行法第一條によりますと、皇室典範第十一條の規定により、皇族の身分を離れた者については新戸籍を編製し、同第十三條の規定により、これと同時に皇族の身分を離れた配偶者や直系卑属は、すべてその新戸籍に入ることになつております結果、直系卑属に配偶者やさらに直系卑属がある場合には、その新戸籍に一つの夫婦及びこれと氏を同じくする子以外の者も同籍する結果となりますので、このような場合には、その直系卑属については一つの夫婦とその子、もし配偶者がない場合にはその者とその子ごとに、それぞれ新戸籍を編製するようにいたそうとするものであります。 第二條についての改正規定は、現在同條第二項によりますと、皇室典範第十四條第四項の規定により、皇族の身分を離れた者は、その直系卑属につき第一條の規定により編製された戸籍に入ることになつておりますが、たとえば、その戸籍が祖父母または曾祖父母等父母より親等の遠い直系尊属について編製されている場合には、三代以上同籍の場合が生ずることがありますので、これを改め、父母について編製した戸籍に入ることとし、また現在皇室典範の右規定により皇族の身分を離れた者は、新戸籍編製の申出ができないことになつておりますが、これを改め、一般の離婚復籍者と同様、新戸籍編製の申出ができるようにいたそうとするものであります。 第三條についての改正規定は、現在同條によりますと、皇室典範第十二條の規定により、皇族の身分を離れた者が離婚する場合、第一條の規定により、その者の直系尊属につき編製された戸籍があるときは、その戸籍に入ることになつておりますが、祖父母または曽祖父母等について新戸籍が編製されている場合には、やはり第二條と同樣三代以上同籍の場合が生ずることがあり、また現在右の離婚した者は新戸籍編製の申出をすることができないことになつておりますが、これを第二條同樣の趣旨に改めようとするものであります。 最後に、第五條から第七條までについての改正規定について御説明申し上げます。 第五條は、第一條または第二條の規定による新戸籍編製。第六條は第二條の規定による入籍。第七條は第四條、すなわち皇族以外の女子が皇后となり、または皇族男子と婚姻し、その戸籍から除かれる場合の除籍の届書の記載事項等に関する規定でありますが、現行法に列挙されている記載事項は、新戸籍法の規定により記載すべきことが当然明らかなるものがありますので、これを整理しようといたすものであります。 以上がこの法律案の内容の要点でございます。 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決されんことをお願い申し上げます。
○花村委員長 本法案に関しましては、本日政府の説明を聞く程度にとどめ、質疑は後に讓りたいと存じます。 —————————————
○花村委員長 次に民法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑があれば承ります。
○梨木委員 現行民法の三百六條の三号には、雇人の給料ということになつておるのでありますが、この雇人の給料という中には、雇用関係から生ずる一切の労働者にとつての報酬というように理解しておるわけでありますが、そうした場合において、退職金というようなものはこの雇い人の給料の中に入るかと思いますが、政府の方ではどういうようにお考えですか、伺いたいと思います。
○岡咲政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、この「雇人ノ給料」と規定してあります給料は、大体雇い人がその労働の対價として使用者から支拂われるところの給料、手当、賞與その他のものを指すのでございまして、ことに三百九條に六箇月間の給料について存在するというような規定があります建前上、一應勤労の期間に対應して支拂われるものというように理解すべきものではないかと考える次第であります。從つて雇い人が退職する場合に受けるところのいわゆる退職手当というようなものは、ただいま申しましたような給料の性質を持つような、たとえば一應退職する、しかし生活に困るであろうから、これまでの労働の対價として三箇月分は便宜拂つてやるというような退職金であるならば、あるいは給料と解釈してさしつかえないかと考えますが、その範囲を越えて、特別の退職手当を出すということになると、それがはたしてその給料の中に入るかどうか、多少疑問ではないかと考える次第でございます。雇い人の労務に対する対價の支拂いについて、なるべく法的にその確保をはかることは、勤労というものが尊重されなければならない現在においては当然のことでございまして、雇い人の給料に関する先取特権の規定を改正いたします際に、もつと廣く全面的な改正案を考えた次第でございますが、民法の規定全体が相当古い立案にかかつておりますので、いずれ遠からざる將來において、民法について全面的に檢討いたすことが適当ではないかと考えておりますので、その際に讓ることにいたしまして、このたびはとりあえず、やむを得ない必要のものだけを取上げて、雇い人の給料の先取特権の順位を変更することと、二百九條の金額の制限を削るということにとどめた次第でございます。
○梨木委員 どうもよくわからないのですが、今たとえて言われましたが、それをもう少し一般的に説明していただけませんか。
○岡咲政府委員 一般的に申しますと、退職金は雇い人の給料という概念の中には入りにくいのじやないかと思います。退職金についてなおかつ先取特権を認めることにいたしますと、規定をさように改めるのが至当かと考えます。しかし退職金と申しましても、実はいろいろございまして、先ほど申しましたように、勤労の対價として労務者に支拂われるもので、しかもその計算の基準が、ある勤労の長さというものを基準にされているような場合には、あるいは給料として取扱い得る場合があるのではないか、これは私の解釈といふわけではありませんが、一般的には、学者は退職金は雇い人の給料の中には包含しないような解釈をいたしておると心得ております。
○梨木委員 大体現在日本で行われている退職金の制度というものは、これはやはり勤労に対する報酬ということが一般的な考え方だろうと思うのであります。そうすると、今の説明から言いますと、退職金が勤労に対する報酬の性質を持つているものならば、この中へ入るということになると承知してよろしいわけですか。
○岡咲政府委員 労働基準法の第十一條にございます賃金というように給料を解釈してよろしいのではないかと考えております。
○梨木委員 この問題はまたあとに讓りますが、抵当権と、今改正しようとするこの雇い人の給料との優先関係を少し具体的に説明していただきたい。
○岡咲政府委員 先取特権に基きまして債務者から弁済を受けまするには、競賣の申立てができるわけでございますが、抵当権は特別担保といたしまして、先取特権に一應は優先いたすわけでございます。
○梨木委員 どうもそういうような突き放したような答弁でなくて、もう少し現行法上から抵当権に対して雇い人の先取特権がどういうような関係になつているか、あなたの方が專門家なのだから、もう少し具体的に説明していただきたいと思います。
○岡咲政府委員 梨木委員から何か具体的にお示しになつてお尋ねになると、たいへん幸いかと存じまするが、たとえば抵当権は一般に不動産上に存するわけでございまするが、先取特権の順位から申しますると、まず動産に対してこれを行使いたしまして、最初に不動産に参るわけでございます。その場合にたとえば債務者が、この場合で申しますと使用者が、建物を持つております。その上に使用者が他の債権者に対して抵当権を設定いたしておりますると、抵当権の実行によりまして、債務の弁済をする。そしてその残額がありまするならば、それに対して一般の先取特権者が弁済を受けることができるという関係になるわけであります。
○梨木委員 そうすると、大体今一番問題になつているのは、不動産に対して抵当がついているかと思うのでありますが、そういう場合には、雇い人の先取特権は抵当権に優先しないわけですか。
○岡咲政府委員 さようでございます。
○梨木委員 そういう程度では、今の民法の雇い人の給料について一部改正をしても労働者の生活の方に寄與するところがないように思うのですが、もつと抵当権に優先するというようなぐあいに改正する意思はないのでありますか、はつきりその点を……。
○岡咲政府委員 將來債権の弁済の確保につきまして、一般勤労者というものの権利をいかように確保すべきであるかということは、非常に重要なる問題でございまして、先ほども申しましたように、民法の全面的な改正をいたす際には、これを愼重に研究考慮いたしたいと考えております。しかし今部分的な改正におきまして、梨木委員のお説のように、抵当権に優先するような雇い人の給料に対する先取特権を認めるということは適当でないと考えまして、実はさような改正を考えなかつた次第でございます。このたびの改正を企図いたしておりまする範囲でも、現状よりははるかに勤労者の給與に対する権利の保障がはかられるように考えますので、梨木委員のお説のように、抵当権に優先するような規定を置かなければ実効はないのではないかという御意見につきましては、私は現状でもなおかつ雇い人の給料については効果が加えられるであろう、かように考えておる次第でございます。
○花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。
○押谷委員 ほかの方からすでにお尋ねになつているかもわかりませんが、民法の改正につきまして、第一回國会において、親族、相続の両編について全面的な改正が行われまして、この改正の際の経過を調べますれば、相続あるいは物権、債権等の諸編におきましても、全面的に改正の必要あることを認められまして、そういう附滯決議があつたように聞いているのであります。爾來相当の日時を経過いたしておるのでありますが、この民法の全面的な改正については、どんな御準備をお進めになつているか、その経過を伺つてみたいと思います。
○岡咲政府委員 政府といたしましては、近く法制審議会を法務廳の機関として設けまして、その法制審議会に民法に関する審議を取扱うべき部会を設けまして、その部会におきまして、今お尋ねになりましたような民法に関する基本的な調査研究をいたし、至急新憲法に沿い、現在の社会情勢に適應したような民法の起案をいたしたい、かように考えております。
○押谷委員 この民法のような基本的な法典の改正は、本日御提案にあるような小さな條文をその都度ばらばらに提案されて改正をせられるという、こういう態度はどうかと思うのでありますが、今後こういう民法のばらばらな改正をせられるような計画なのですか。あるいは全部にわたつて全面的な改正をするような御意図があるのですか。その民法改正の態度について多少私は疑問があるのです。
○岡咲政府委員 審議会におきまして、愼重に御研究を煩わした結果、結論がおそらく得られるのであろうと考えておりますので、私から申し上げるのは多少僭越かと考えるのでありますが、その審議会におきましては、民法の部分的な改正でございませんで、全面的に改正いたすというふうな取扱い方をいたすであろう、かように考えております。
○押谷委員 もう一点伺います。これは梨木君からお尋ねになつたかもしれませんが、この本日の改正は、これは今日の時代から言つて急いでなすべき必要もありましようが、しかし今日の大きな政治問題として最もさしせまつておることは、行政整理であるとか、あるいは企業整備に伴つて生ずる退職者に対する退職金の関係でありますが、この退職金に対する優先権であるとか、先取特権であるとか、あるいは差押えの関係等についてのお考えはどうなつておりますか。
○岡咲政府委員 先ほど梨木委員のお尋ねに対しましてお答えいたした点でございますが、退職金は一應雇い人の給料という中には入らないと解釈されておるのが通説と考えております。しかし私はこれは多少個人の見解を申し上げるようになつて恐縮に存じますが、労働基準法の第十一條でございますかにあります賃金と大体同趣旨にこの給料を考えてよいのではないかと考えておりますので、その賃金に準ずるような退職金であるならば、あるいは解釈上、先取特権を認められる場合もあり得るのではないか、かように考えて行きたいと思つております。しかしこれは裁判所におきまして結局解釈をされ得ると考えますので、一般の通説といたしましては、退職金は入らない、かように御了解願つてよろしいのではないかと思つております。
○押谷委員 これに含まれないことはわかりますが、その退職金についての差押えを禁止するとか、あるいは先取特権を認めるとかいうような制度を新しくお考えになるおつもりではないのですか。
○岡咲政府委員 將來は十分考慮され得ると考えますが現在ではこの程度の改正でよいではないかと考えております。
○梨木委員 先ほどの退職金の問題についてもう少しはつきりさせてもらいたいと思います。労働基準法の十一條によりますと、とにかく労働の対價として支拂うすべてのものは賃金だということになつておるわけであります。そうすると、俗にいう退職金というものは、これは明らかに労働に対する対價であると思うのであります。こういうことになりますと、労働基準法は最近できた法律でありますが、民法もやはり、この新憲法下に労働者の基本的な権利を保護する趣旨のもとにつくられたこの新しい労働法の趣旨に則つて、理解されなければならぬと思います。そうなれば当然民法三百六條の雇人の給料の中には、退職金を含むべきものであつて、これは新しい憲法下においては当然なことだと思う。今の説明を聞いてみますと通説などと言われますが、それは新憲法が施行される前においての考え方じやないかと思います。でありますから、この点は個人的にどうこう考えておるということは聞く必要はないので、政府として現在どう考えておるかということを、明確に答弁していただきたいと思います。
○岡咲政府委員 民法の三百九條の方には「雇人給料ノ先取特権ハ債務者ノ雇人カ受クヘキ最後ノ六个月間ノ給料ニ付キ存在ス」こういうふうに規定いたしておりまして、この規定はそのまま修正いたさないで、置くことにいたしております関係上、やはり月々に支拂われるところの労働の対價、かように給料は考える方が、やはり解釈としては妥当ではないかと思います。從いまして梨木委員の仰せの退職金は、廣く退職金と考えます場合には入らない、かように解釈いたすべきではないかと考えます。
○梨木委員 今首切り、工場閉鎖が非常に起つております。その際に退職金をいくらいくら出そうという場合におきまして、これをやはり民法が保護してやらなければならないと思う。これは從來の旧憲法下におけるところに民法的な考え方ではなくて、やはり新しくこういう労働諸法規ができた現在におきましてはこの観点から保護するように理解されなければならぬと思う。どうもそういうようなことでは、せつかく労働者の生活権保護のために改正される趣旨も沒去されることになりはしないかと思いますが、どうでしようか。
○岡咲政府委員 ごもつともな御意見と拜承いたす次第でございますが、終局的な解釈は結局裁判所においていたされると考えております。現在におきましては、他の先取特権との関係もありまして、一應先ほど申し上げましたように、退職金は入らぬというふうに解釈せざるを得ないものと考えます。
○梨木委員 それでは次に伺いたいと思うのですが、労働基準法の第二十條で予告の解雇というのがありますが、この一箇月分の支拂いですね。この分についてはどういうようにお考えでしようか。これに対して民法三百六條の雇人の給料の先取特権の適用があるかどうか。
○岡咲政府委員 この場合は給料に準ずべきものと考えまして、先取特権を認めてさしつかえないと思います。
○花村委員長 他に御質疑はありませんか。
○田万委員 ちよつと政府委員にお尋ねしたいと思います。ただいま梨木委員からもいろいろ給料の解釈について御質問がありましたが、そのことについて私も一点お尋ねしたいと思います。この民法の一部を改正する等の法律案によりますと、三百六條の二号と三号を入れかえするということが眼目らしいのでありますが、給料の解釈については、ただいま承つておりますと退職金というもの全部が給料にならないとか、あるいは一部は給料になるというふうな非常にあいまいなようにも受取れるのです。そうして政府委員のお話では、それは裁判所の解釈にゆだねるべき問題であるという回答があつたのでありますけれども、これは立法府のわれわれにおいて、裁判所に明かな一つの指針を與えることが重大な問題でないかと思うのであります。つきましてはこの給料という言葉、これはすでに御存じの通り、この法律は明治二十九年法律第八十九号でありまして、梨木委員も言われた通り、相当古い給料という解釈を、今日の時代に適合せしめるごとく、狹義に解釈せずして廣く解釈して、そうしてできれば政府においては給料その他退職金あるいは手当、そういうものを付加して労働省を保護せられる意思があるか。それに関連して三百九條の「雇人給料ノ先取特権ハ債務者ノ雇人カ受クヘキ最後ノ六月間ノ給料ニ付キ存在ス」というような拘束的な、制限的な規定を撤廃せられて、眞に労働者を保護せられるという立法に改正せられる御意思が今日あるかないか、その点をお伺いしたいと思います。
○岡咲政府委員 まことに適切なお尋ねで、ありがたく存じます。実は雇い人の給料の先取特権の順位を変更することと、三百九條の但書を削るというのがこのたびの改正案の骨子でございますが、私どもの方でこの問題を取上げました際に、雇人の給料という表現自体を檢討いたしまして、新しい現在の法制に適應するように改めようということも一つの案として考えた次第でございます。それから三百九條もまた、これを根本的にかえて、勤労者の勤労に対する対價というものをもつと強く保障するというような制度にしてはどうかということを実は考えた次第でありますが、この問題を深く掘り下げてみますと、ここだけの改正ではとどまりませんで、もつと廣く民法典全般についてさらに手当をしなければならないというふうな問題が生じて参りました。そういたしますと、やはり全面的な改正の際に取上げる方が適当ではないかというふうに考えた次第であります。從いまして「雇人ノ給料」という言葉そのものには手をつけませんで、旧來通りの言葉をそのまま踏襲いたしまして、解釈はもとよりこの立法当時の解釈をそのままいつまでもとつておりませんで、裁判所におきましては、この時勢の進運に從いまして、その時の社会情勢なり勤労者の状況、その他諸般の事情を勘考せられつつ、適正な解釈をされるであろう、その裁判所の解釈に一應おゆだねすることにいたしまして、この順位を変更する点と、それから三百九條における但書はあまりに不合理な但書でありますがゆえに、この但書を削るとういうことだけをきよう改正として取上げた次第でございます。
○田万委員 なお一点念のためにお尋ねしておきたいのですが、いわゆる行政整理あるいは企業整備によつて相当失業者が出ますが、それらの人に対する退職金あるいは手当というものは、今日の事情においては法律の手続上やむを得ないとすれば、ある程度のものは給料に準じて認めてやるべきであるが、それを條文とすることを私は希望いたします。 それからいろいろ私が申し上げた点について、全般的に深く掘り下げた場合においては、廣汎な法律の改正があるということも一應われわれはわかるのですが、その時期は今國会には間に合わないとしても、次期國会には必ず出されるやいなや、それをひとつ明確にお答え願いたい。
○岡咲政府委員 勤労者の保護につきましては、なるべく早い機会に適当な措置を講じたいと思いまするが、民法の改正といたしましては、なるべく全面的な改正として取上げたいと考えておりまするので、次期國会までにその点に関する成案を必ず得るということをお約束することは、ちよつと困難ではないかと考えます。しかし御趣旨のあるところは十分くみとりまして、私どもといたしましては十分の努力をいたし、研究いたすということを申し上げてよろしいと考えます。
○梨木委員 商法の二百九十五條では「会社ト使用人トノ間ノ雇傭関係ニ基キ生ジタル債権」こういう表現をしており、これは退職金を含んでおることは明確なのであります。この点から申しましても——この商法は明治三十二年ごろにできたのでありますが、どうもその時分でも商法では、少くとも会社と使用人との間の雇傭関係一切の債権について先取特権を認めておるのであります。こういう点から言つても、私は民法の雇い人の給料の中には退職金が含まれなければならぬと思うのでありますが、どうも先ほどからの説明を聞いておりますと、通説を非常に固執されるようでありますが、この点商法との関係について、どうお考えになりますか。
○岡咲政府委員 商法の二百九十五條は梨木委員の御指摘のように、雇傭関係から生ずる一切の債権について、先取特権を認めておる次第でございますが、この二百九十五條の改正は、昭和十三年にいたされたわけでございます。先刻來申し上げますように、雇い人の給料という言葉の表現自体には何らの修正を実は加えませんで、むしろ裁判所の適正な解釈におまかせしようという考えで、この程度の改正をいたした次第でございます。政府といたしまして、その給料の中には退職金も当然入るのだという解釈をとるべきではないかという御意見のように承りましたが、その点はわれわれとしては十分檢討いたしたいと考えておりますし、先ほど申しましたように、私個人といたしましては、大いに解釈の余地がある場合もあるのではないか、かように考えておりますが、一應の從前から行われております解釈を申し上げれば、先ほどのように申し上げなければならないかと考えております。
○梨木委員 商法の行政は私うかつでありましたが、昭和十三年にこういう改正ができたとすれば、時代の進展とともに、雇い人の給料については退職金までも含めなければならないという必要からこういうぐあいに改正になつたのだから、民法の給料についての考え方も、退職金を除外するという考え方はもうあり得ないと私は考えるのであります。先ほどからのお話では、これは結局は裁判所が決定すべき問題でありますが、運用の面において、政府は退職金を含む趣旨で運用したいということを、実はこの委員会で政府の言明として私聞きたいと思います。
○岡咲政府委員 お尋ねの御趣旨はよく拜承いたしました。もう一度とくと研究いたしまして、次の機会に政府としての解釈をもう少し明らかにしてお答え申し上げたいと存じます。
○梨木委員 それからさらに政府の見解を伺いたいのですが、民法には六箇月だけ保護を與えておるわけであります。現在経営者は非常に金詰まりのため困つておるわけでありますが、こういうことのために給料の遅配、欠配が続出しております。そこで勤労者の生活権を保護する建前からのみならず、健康で文化的な生活をする権利を保障するという憲法の二十五條からいつても、六箇月というような制約を設けることは現在の情勢のもとにおいて憲法違反じやないかと思う。こういうように私は考えるのですが、政府の見解はどうでしようか。
○岡咲政府委員 雇い人の給料が未拂にの状態におかれておるというようなことはしばしば承るのでございますが、一應この六箇月間を保障すれば、まず通常の場合には保護し得るのではないか。それ以上給料の支拂いが滯つておるという場合はきわめて少いのではないか。かように考えた次第でございまして、なおこの三百十條あたりを対照いたしましても、この六箇月の制限も民法の規定の上から無條件にいたすことには多少疑義がありますので、三百九條の方は但書を削るだけで、まずとりあえず必要は満されるだろう。かように考えた次第であります。
○梨木委員 こういう点を政府はどうお考えでしようか。今非常に経営難に陷つておる工場があつて、その工場の不動産は抵当に入つておる。そこでそこの労働者は給料について先取特権を持つておる。その先取特権を持つておるということも、はつきりその抵当権者に明示しておいた場合に、これは労働基準法によりまして給料は毎月一回ずつ拂わなければならぬということになつておりますが、実際抵当権を実行すると、勤労者の給料財源の先取特権を蹂躙する形になるのですが、こういう形における抵当権の実行は基準法の違反になりはしないかどうかと私は思うのですが、こういう点についての見解を伺いたいと思います。
○岡咲政府委員 どうも抵当権は一般の先取特権に優先します。もつともその先取特権であつても、三百三十九條にございますように、特に特定のものを登記いたした場合には抵当権に先立つわけでございまするが、雇い人の給料は一般の先取特権でございまして、どうも抵当権に遅れる、抵当権の方が優先することは民法の建前上やむを得ませんので、梨木委員の御指摘のような基準法違反ということにはならないであろうと考えております。
○田万委員 もう一点念のために——少し念が入り過ぎているかもしれませんが、梨木委員の質問に対しまして、次会までに給料問題の解釈に対して御研究なさるというお話でございますが、その際に先ほども私はちよつと申し上げましたが、給料並びに退職金あるいは手当を付加して、やむを得なければ六箇月の範囲でもけつこうですから條文化していただきたい。そういう熱意をもつて御研究を願いたいと私は思います。この点をひとつお願いしておきます。
○花村委員長 ほかに御質疑はありませんか——なければ本案に対する質疑はこの程度にとどめます。 —————————————
○花村委員長 次に人権擁護委員法案を議題といたします。御質疑があれば承ります。
○猪俣委員 人権擁護委員法と人身保護法との関連について御説明願いたいと思います。
○大室政府委員 お答えいたします。それは別に直接関係はございません。
○猪俣委員 しかしこの第一項の目的、あるいは第二條委員の使命というようなことと、人身保護法における目的あるいは使命というようなものには重複しておるような点が多々あると思いますが、そういうようなことはございませんか。
○大室政府委員 それは人権擁護委員がいろいろ調査いたしまして人身保護法によるような場合は、人身保護法によるということになるわけであります。
○梨木委員 この人権擁護委員法がねらつておるような人権擁護についての施設というものは、從來どういうものがあつたか、それはどんな活動をして來たか、それを説明していただきたい。
○大室政府委員 從來は人権擁護委員は全國に百五十人ございました。東京が十一人大阪と北海道が五人、その他の府縣は三人でありました。
○梨木委員 どんな活動をして來たか、それとこれとの関連はどうなつておりますか。
○大室政府委員 今までの人権擁護委員と申しますのは政令できめたのであります。これは昭和二十三年七月十七日の政令第百六十八号でつくりまして、大体全部ではありませんが、大多数発令になりました。何分これはまだ発令いたしまして日にちがあまり経つておりませんので、この人権擁護委員からこういう侵害事件があつたというような報告が参りますと、それに基きまして事務官が調査に参る。それから五月三日に、人権擁護委員にお願いいたしまして、全國で人権相談所を開発いたしたのであります。從來の仕事は人権擁護委員会の第二條に、人権侵犯事件の調査及び情報の收集に関する事項、それから人権擁護に関する啓蒙及び宣傳に関する事項、民間における人権擁護運動の助長に関する事項、貧困者の訴訟援助に関する事項、その他人権の擁護に関する事項、こういう仕事をお願いしておるのでありますが、ただいま申し上げましたほかに人権擁護に関する啓蒙宣傳に関する事項、これは講演会なんかをやりますときに、いろろい人権擁護委員のおせわになつておるのであります。大体そういうような仕事を今までしてもらつておるのであります。
○梨木委員 もつと具体的に聞きたいのです。從來の人権擁護委員はどういう基準で選定したのか、それから人権擁護局はどれだけの予算をもつて仕事をしたか、それから人権相談所をつくつたとか、人権に関する啓蒙宣傳をするということでありますが、昨年中に何箇所人権相談所をこしらえて、どれだけの回数そういう講演会を開いて、そこへ聽衆が幾ら來たか。それから少年審判について何か調査したというのでありますが、その調査の内容、そういう資料を出してもらいたい。
○大室政府委員 それではお手元にその資料を差上げます。それからただいまお尋ねの人権擁護委員の選任の方法についてお答えを申し上げます。その方法は都道府縣知事と弁護士会長にその推薦を委託したのであります。それぞれ推薦がありましたものを、法務総裁から人権擁護委員に委嘱いたしたのであります。各都道府縣の擁護委員は、東京では先ほど十一人と申しましたが、そのうち六人は東京の三弁護士会長、日本弁護士協会、全日本弁護士会長、自由人権協会、その代表の方々と、あとの五人は知事と弁護士会長の御協議の上、御推薦願つた方々になつていただいたのであります。それからそのほかの府縣におきましては、一人は弁護士会長、他は弁護士会長と知事との共同と御推薦で法務総裁から委嘱する。こういう形で委嘱をいたしたのであります。何分局ができまして新しいのでありまして、発令いたしましてからまだあまり日にちがたつていないのであります。これからお手元にその資料を差引しますが、局の方で受付けました事件が昨年は四十件、処理済みのものが三十二件、未処理のものが八件。本年になりまして四月末日までの受理件数が百七十一件、うち処理いたしましたものが百三十七件、未処理のものが三十四件、この百七十一件のうちには、先ほどお尋ねになりました人権相談所の受付けた数字も含まれておるのであります。でありますから昨年度に比べますと、昨年度は一箇年で四十件であつたのでありますが本年度は四月末日においてもう百七十一件というふうに増加いたしておるのでありまして、だんだんに受理件数が多くなつて参つておるのであります。局の予算といたしましては、昨年度が三百六十万円、今年度ははつきりしたことはわかりませんが、大体四百五十万円程度であります。
○梨木委員 一体四百万円そこそこの予算でこういう法律をつくつて、この法律がねらつているような目的が達成できるのですか。その構想をお聞きしたい。
○大室政府委員 これは私が初め局に参りましたときからの構想なのでありますが、少くとも各町村に一人以上の人権擁護委員を委嘱したい。と申しますのは、人権あるいは自由人権というような思想が普及されていないようなところが、まだ一般には大分あるように思われるのであります。そこでこういう人権擁護委員を各市町村にお願いいたしますということは、あるいは情報の收集、あるいは審判事件の調査という目的もあつたのでありますが、そういう啓蒙宣傳というようなこともまた非常に大きなねらいといたしております。仰せのように予算は非常に少いのであります。その点は私もはなはだ遺憾といたしておるのでありますが、何分新しい局でありますので、なかなか予算が認めていただけません。予算はそういうことになつておるのでありますが、こういう人権擁護委員を置くということはどうしても私は必要と考えておるのであります。予算につきましては、請求は相当たくさんいたしたのでありますが、やむを得ずこういう少い予算でやつております。
○梨木委員 人権を侵害されたり、蹂躙される被害者というのは、大体において労働者や農民中小商工業者、その他勤労大衆であります。ところがこの人権擁護委員の選任方法を見ますと、労働組合だとか、農民團体から推薦するような方式が明確に出ておらないので、これでは私は人権擁護の目的が達成できないと思います。その点どうお考えですか。
○大室政府委員 第六條の第三項に「婦人、労働者、青年等の團体であつて直接間接に人権の擁護を目的とし、又はこれを支持する團体の構成員」というふうに、特に労働者ということもこれにうたつてあるのであります。
○梨木委員 私の聞きたいのは、これは大分複雜な推薦過程を経て來ておるのでありまして、直接労働者が推薦して、法務総裁がそれに基いて委嘱するという形をなぜとらないか。非常にまわりくねつて、かつこうだけは民主的な形をとつておりますが、これでは実際労働組合から上つて行くことが、市町村議会の意見を聞いたりなんかする過程において相当ゆがめられる危險があると思うのですが、どうですか。
○大室政府委員 現在の百五十人の委員でありますと、あるいはそういうこともございましようが、今度は二万人からになりますので、そういういろいろの方面の人を推薦していただきたい。こういう趣旨なのでありまして、まず市町村長に推薦してもらい、それから市町村議会の意見を聞く。そのほかになお人権擁護について今まで非常に活動しておりました弁護士会の意見を聞く。しかも定員の倍数を推薦してもらいまして、法務總裁がこれをきめるというようなわけで、これにつきましては、そういう労働者にも入つていただきたいというので、非常な考慮を拂つたつもりであります。
○梨木委員 考慮を拂つておつても、これでは労働者の代表が出て來ません。市町村議会の意見を聞いて、こういう形では出來てないですよ。ですからもつと直接的に労働組合の推薦したものを法務総裁か委嘱する、こういう形をとらないで、どうして期待するようなこの労働者の代表が出て來ますか。私はこれでは出て來るはずがないと思うのです。それで実際人権擁護の必要性は、労働組合や農民團体、そういう團体が最も人権蹂躙の被害者なんだ。その被害者との密接な提携なくして、どうして人権擁護運動がその目的を達成できるか。これを私は聞きたい。実際にこういうものをつくつて、ただ上の方だけで何か形だけの人権擁護の委員会をつくつて、そうしてひま仕事にでもやつて行く。そういうことでは、私はせつかく國家の費用を使つてやつて、十分なそのねらいが達成できないと思う。だから私はもつと人権蹂躙の被害者の側からより多くのそういう人権擁護委員を選出するような方策をとらなければならないと思う。そのためには、こういう規定では一体十分な目的を達成し得る委員が出て來るかどうかに非常な疑問を持つておるのですが、あなたはどうお考えですか。
○大室政府委員 御質問の趣旨はよくわかりました。これをつくりますのにつきましては、全國にあまねく委員を置きたいという考えから、こういう地域的に置くという案を立てたのであります。その選任の際には御趣旨をよくくみまして、御期待に沿うようにいたしたいと存じます。
○梨木委員 次に第七條の第四号に「日本國憲法施行の日以後において、日本國憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壞することを主張する政党その他の團体を結成し、又はこれに加入した者」とありますが、一体こういう日本國憲法またはそのもとに成立した政府を暴力で破壞することを主張するような政党や團体は政令で禁止されておる。禁止されておるものはあり得ないわけです。こんなものを何だつて第七條にこしらへて來たのか、これを聞きたい。
○大室政府委員 これは國家公務員法第三十八條の第五項にこれと同じような規定があるのでありまして、これとの関係上こういうものを置くのがしかるべきだと考えまして入れたのであります。
○梨木委員 國家公務員法にそういう規定があるからといつて、一体私の聞きたいのは、こういう政党や團体は新憲法下においては存在し得ないでしよう。團体等規正令によつてすぐ解散を命ぜられることになつておる。そういうあり得ない團体をどういうわけで書くのですか。そういう團体だということがわかつたら、すぐ解散されるんですよ。
○大室政府委員 これはやはり國家の一部の公務に携わるものでありまして、やはり國家公務員法という大きい法規の趣旨に從うのがしかるべきだ、こう考えましてこの條項を入れたのであります。
○梨木委員 そういうことを聞いているんじやなくて、私があなたに伺いたいのは、こういう政府を暴力で破壞することを主張する政党やその他の團体を結成し、またはこれに加入するというようなことは團体等規正令で禁止されておるのでありますから、こういうものは存在し得ないことになつておるわけです。存在し得ない團体を存在するように仮定してこういうところに設ける必要は全然ないわけだと私は思うのです。その点をひとつ私の納得の行くように説明していただきたい。
○大室政府委員 しかし解散を命ずるということになりますと、やはり前提としては、そういう團体があり得るというふうに考えられますので、やはり公務員法のその趣旨に沿いまして、この條項を入れたのであります。
○梨木委員 それでは一体こういう團体は今どんな團体があるのですか、示してもらいたい。——これは法務総裁から直接伺いたいと思います。
○花村委員長 それでは本案に関して御質疑はありませんか。——なければこの程度にとどめます。 —————————————
○花村委員長 次に司法警察職員等指定應急措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑はありませんか。
○猪俣委員 大体この立法の趣旨には反対でありませんけれども、こういう鉄道職員なんかに司法事務の一部を取扱わせることについて、一体どういう訓練あるいは修練をしておるのであるかということをちよつと承りたいと思います。
○高橋政府委員 お答えいたします。鉄道司法警察職員、いわゆる鉄道公安官につきましては、各地方鉄道局管内で定期にそういう人々を集めまして、檢察廳の方からも檢察官が出かけて参りまして、また警察関係と経驗者なども参つておりまして、一般の刑事関係の法令でありますとか、あるいは実際の捜査の方法などという問題につきましてできるだけのことを、運輸省の方の所管が実際いたしております。
○猪俣委員 過去の事例で、こういう鉄道職員なんかが急に司法権を持つようなことになつて、何かの弊害があつたかどうか。
○高橋政府委員 ごく初期にそういう弊害と思われるような事案がありました。たとえば東京駅において犬箱に被疑者を入れた。もつとも大きな犬箱のようでございますけれども、そういつた行き過ぎたものもありました。最近においても絶無とは思つておりませんけれども、著しく改善されておるように考えております。今後ともその点については、運輸省もむろん改善いたす考えでありますし、われわれもそれに十分の協力をいたしたいというふうに考えております。
○梨木委員 この海上保安廳に関する改正案でありますが、これは人手不足のためにこういう改正をするように見受けられるのでありますが、この扱つた件数、どういうような不便を生じておるのか、これをもう少し具体的に説明してもらいたい。
○高橋政府委員 海上保安官関係の犯罪檢挙件数、人員等についてただいま手元に調査のできておりますものを申し上げますと、昨年五月から十二月までの八箇月間に全体で三千七百三名の人員を檢挙いたしております。その内容は、たとえば船舶安全法でありますとか、船舶職員法といつたような海事関係の法律違反が百五十九名、それから不法出國、あるいは入國、これは外國人登録令によりますもので、これが千七百九十六名でございます。ほかに関税法違反、あるいは漁業法違反というようなものもございます。昨年中の統計はございませんで、本年の一月から三月になりますが、直接に捜査をいたしまして、檢察官の方に引継ぎましたものが二百六十八人あります。それから警察その他の方に、つまりほかの警察職員に引継ぎましたものが四百四十一名あるのであります。そのほかに送致をしないで、いわゆる訓戒処分にとどめたものが三百六十五名ありまして、合計が本年になりましてからの三箇月間では千七十四名ということになつております。この警察その他に引継ぎましたものは、全部がそうというわけではありませんけれども、書頼をまとめたり、要するに事件の処理を完結するための能力が不十分なために、やむを得ずほかに引継いで自分のところで完結することができなかつたというものが、相当に含まれておると考えております。
○梨木委員 今の國鉄の方の司法警察官の数、それから二級の海上保安官と三級の海上保安官とはどれくらいおりますか。
○高橋政府委員 鉄道公安官の方を最初に申し上げますと、現在のいわゆる鉄道公安官の総数が最近の調べで八千八百四人であります。そのうちいわゆる司法警察員というものが千九百八十三名、その他の六千八百二十一名がいわゆる司法巡査ということになつておりまして、四分の一足らずでございます。 それから海上保安官の方の関係は、二級の海上保安官、すなわち現在の司法警察員でありますが、これが二百七十九名、それから三級の海上保安官、すなわち現在の司法巡査に相当するものが千七百九名、從いましてその合計は千九百八十八名ということになつております。
○猪俣委員 この法律でできまするところの司法警察職員となります鉄道職員及び海上保安廳の職員、ことに鉄道職員は、今度はいわゆる日本國有鉄道の職員ということになるのでありまして、純然たる官吏と違う身分に相なる。そこでこの指揮監督の責任の帰属するところはどこであるか。かれらのやつた行為に対する監督者、責任者は何人であるか、それをお聞きいたしたい。
○高橋政府委員 鉄道公安官の司法警察職員としての職務の監督者は運輸大臣であります。この法律案の第四條に「左に掲げる日本國有鉄道の役員又は職員で、運輸大臣の定める者がその役員又は職員の主たる勤務地を管轄する地方裁判所に対應する檢察廳の檢事正と協議をして指名したもの」ということで、個々の鉄道公安官を指名するものは、おそらく現在の地方鉄道局長級のものになると思うのでありますが、その指名するものを定めますのは、運輸大臣の責任において定める。從つてその者がいかがわしい者を指名したというような場合は、これを指名者と定めないことがあり得るわけでありまして、このような指名者を定めるという行為を通じまして、運輸大臣が國会に対して責任を負うというふうに考えております。
○猪俣委員 それからただいま問題になつております、食糧檢査のために一齊に下車を命じて調べるというようなことは、あれは一体應急措置法によつてつくるところの鉄道職員がやるのであるか。その他の行政警察官がやるのであるか。それをお聞きしたい。
○高橋政府委員 現在福島縣あるいは新潟縣等で列順をとめて大規模に主食の檢査をやつておりますが、これは先日参議院の本会議で、法務総裁からも答弁されましたように、法務廳といたしましては、これをこのまま放置すべき問題ではないというふうに考えております。そうしてこれをいろいろな方面で是正するということについて、毎日苦慮して、研究をしまたいろいろ関係の向きとも折衝を重ねておるのであります。從いましてこの鉄道公安官の仕事としてああいうことをやるというようなふうには考えておりません。
○猪俣委員 これは実際にやつておることでありますが、そうすると、その責任が、あなた方の考え方では法務廳を通じての責任ではない、こういうわけなのですか。
○高橋政府委員 現在やつております、たとえば平その他におきますものにつきましては、鉄道と、國家及び自治体の警察と、それからその事件の送致を受けて、檢察廳がやはり関與しております。その檢察廳のやることについては、法務廳は責任がございます。
○猪俣委員 そうすると、この法律によつて指定せられるところの鉄道職員の司法警察官は、その責任は運輸省だということになると、一体人権を蹂躙したような事件についても、やはりその責任は法務廳ではなくて運輸省ということに相なるのでありますか。
○高橋政府委員 その点はさように考えております。ただし檢察官が特に指揮をしたといつたような場合は、これは檢察官を通じて法務廳の責任ということに相なると思います。
○梨木委員 特殊の警察でなくて、一般の警察の場合における司法警察官と司法警察吏と申しますか、司法巡査と申しますか、この割合はどうなつておりますか。
○高橋政府委員 通常司法警察職員につきましては、司法警察員が総数の三割九分でございます。
○梨木委員 つまり司法警察官の方が、司法巡査に対して三割九分になつている、こういうわけですか。
○高橋政府委員 司法警察職員総数の三割九分が司法警察員である。それであと六割一分が司法巡査である、こういうのでありますが、これは國家地方警察についての数でありまして、自治体の数につきましては、まだつかんでおりません。
○梨木委員 そうすると、今御説明の鉄道公安官の場合の司法警察員と司法巡査の比率、それから海上保安官の比率は、大体わかりましたが、具体的にどのように困つているか、少し説明してもらえませんか。
○高橋政府委員 具体的な個々の場合、どのようなというところまで、私ただいま存じておりませんけれども、いわゆる普通の警察で申しますと、司法主任あるいは搜査主任というものの下に刑事巡査の部長がおりまして、その下に刑事が数名ついております。通常司法警察官の場合におきましては、警部、いわゆる搜査主任と、それから刑事巡査の部長というものが、いづれも司法警察員になつているのであります。そしてそういうものがいろいろ令状の請求権とかいうものを持つておりますので、部下の言うことを聞きまして、すぐその者のはからいで直接に令状を請求したり、あるいは事件をまとめ上げて檢察廳に送つたりすることができるのであります。ところが率をごらんになりましてもわかるように、海上保安官の場合には、部下の数は相当ございますけれども、その持つて來た事件をまとめる者が非常に少いのであります。そういう点で、先ほど申し上げたように、自分の手で処理できないで、ほかにまわさざるを得ないというような現象を生じているものと考えておるのであります。
○梨木委員 鉄道公安官の場合も、それから海上保安官の場合も、これは大体現行犯の搜査並びに檢挙ということのみに限られておる、そういうように私は理解するのでありますが、そうすると、一般の國家警察の場合におけるところの司法警察員と司法巡査の比率のような割合を要しないのじやないかと考えるのです。つまり仕事の内容が非常に違うのだということから、司法警察員の数は、そんなに多くなくても事足りるのではないかというように考えるのですが、その点どうですか。
○高橋政府委員 鉄道公安官の方は、この法律によりまして、列車または停車場における現行犯ということに限られております。しかしながら海上保安官の方は、これは大ざつぱに申し上げますと、陸上の犯罪はいわゆる通常警察官、それから海上の犯罪は海上保安官、こういうようなふうに考えられるのでありまして、ただいまそこまで育つておりませんけれども、権限といたしましては、單に現行犯に限られない、すべての態樣の犯罪搜査を含んでおるのであります。從いまして、假に現行犯の処理の場合には、まとめ上げるまでの数が割合に少くともいいのじやないかという議論が正しいといたしましても、海上保安官にはそれは当てはまらないというふうに考えております。
○花村委員長 御質疑はありませんか。なければ本案の御質疑はこの程度にとどめておきます。 —————————————
○花村委員長 次に公判前の証人等に対する旅費、日当、宿泊料等の支給法案を議題といたします。御質疑があれば承ります。御質疑はありませんか、——なければ本案に対する質疑は後に讓りたいと存じます。 次に檢察廳法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。御質疑はありませんか——御質疑がなければ本案に対する御質疑はこの程度といたしておきます。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時四十一分散会