厚生委員会 第21号
- 発言数
- 44 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1949/05/18
会議録
○堀川委員長 これより会議を開きます。まず、お断りいたしますが、当委員会の活動を一部完全にいたすために、当員会より閉会中の審査の申出をいたしたいと存じます。閉会中の審査申出書を朗説いたします。 閉会中の審査申出書 一、閉会中審査すべき事柄、厚生行政に関する事項。 一、閉会中審査の目的 公衆衛生、社会保障、婦人児童保護等に関する諸調査並びに対策樹立。 右により閉会中もなお調査をいたしたいから、しかるべくお計らいを願いたい。 昭和二一十四年五月十八日 厚生委員長 衆議院議長幣原喜重郎殿 以上の申出を提出するに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○堀川委員長 御異議なければさようにいたします。 次に当委員会より時期のよろしきを得て、委員派遣の申請をいたしたいと存じます。衆議院規則五十五條の議長に提出する委員派遣承認申請その他の手順に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、ご異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○堀川委員長 御異議なければさよういたします。ちよつと速記を中止してください。 〔速記中止〕
○堀川委員長 速記を始めてください。 次に優生保護法の一部を改正する法律案を議題といたしまして、前会に引続き質疑を許すことにいたします。床次君。
○床次委員 前回法務の方にご質問いたしましたが、途中でありましたので、引続いて法務関係を主としてお尋ねいたしたいと思うのであります。今回十三條に改正が行われましたが、この十三條の二号、三号に対しましてご意見を伺いたいのであります。現行法と比べていただきますと私がお伺いしたい点がよくわかると思いますが、まず現行法におきまして、特に二号、三号が加えられております点は、単なる医学的適應でもつて二号、三号が加えられたのでなしに、医学的適應範囲よりも廣いもので特に母性保護上あるいは同時に人口問題というようなことも加味せられまして、現行法にも置いてあるんだと思うのであります。この点ご見解はいかがですか。
○野木説明員 床次委員の御質問の点でありますが、実は優生保護法の立案にタッチしておりませんので、優生保護法立案当時どういう趣旨であつたかということは、今はつきりいたしませんが、現行法十三條二号、三号の規定がありますのは、刑法理論だけではまかなえない部分、すなわちこの規定がないと刑法上は堕胎罪等になる場合も一部は含む趣旨の分もあると思います。そうして、従来解釈上、母体の生命健康に非常に害のあるような場合には、刑法理論だけでも、研究批判的に堕胎罪の成立が阻却せられるという理論もあるわけでありまして、それよりもこの二号、三号はややそれを含む。あるいは含んでいる部分は刑法で解決されておりますから、それは含まないといつてもよいわけですが、いずれにしても刑法理論でまかない得ない点を幾分廣げている部分があるのではないかと思われるわけであります。
○床次委員 ただいまの御答弁によりまして、現行法の二号、三号が刑法のいわゆる医学的適應と申しますか、医学的適應並びに堕胎罪の適用よりも廣くなつておるという御答弁を得ましたが、次に今回の改正法におきましては、この二号、三号が大体二号一つにまとめられておるのであります。このまとめました字句におきまして、「母体の健康を著しく害するもの」というふうにこれが書いてあるのであります。従来は「虞のあるもの」という字が書いてあつたのでありますが、この「虞のあるもの」という字を削りまして「著しく害するもの」というふうに合わせられました結果、適用範囲が狭くなつたのだと私は考えるのでりますが、かく狭くなることは、実は私意見を申し上げて恐縮でありますが、今回の改正においてはむしろ従来どおりにせられた方がよいのだと思います。法務廳のお考えでは狭くなつたとお考えになるかどうか、その点を伺いたいのであります。
○野木説明員 現行法十三條の第一項二号、三号と、改正案の十三條第一項二号、三号と比較してみますと、狭くなつた点とあるいは廣くなつた点があるのてはないかと思われる次第であります。と申しましすのは、現行法の十三條第一項第二号におきましては「分娩後一年以内の時期に妊娠し、且つ分娩によつて」云々という認定や、第三号におきましては「現に数人の子を有している者が更にに妊娠し」云々というような條件が加わつておるのに対して、改正案の第一項第二号においてはそういう條件が撤廃されておる点におきまして、あるいはやや運用にゆとりがついておるのではないかと思われますが、御指摘になりました、母体の健康を著しく害する虞のあるもの」という点でありまして、「虞のあるもの」というのは改正案におきましては「著しく害するもの」となつておるのであります。この点はまさしく御指摘のように、法律上の解釈論といたしましては適用は狭くなつておるということになつおります。
○床次委員 ちよつとお伺いいたしますが今度の改正法の中に「著しく害する虞のあるもの」という字を入れた場合と現行法の第二号と三号の場合とどちらがそれでは適用が廣くなりましようか。
○野木説明員 全体としてどちらが廣くなるかということは、ちよつと小さい問題に関連して来ますので、言いにくいのでありすが、たとえば改正案におきましては分娩後一定期間以内にさらに妊娠したとか、現に数人の子供を有しておるという條件は全然なくて初めて妊娠した場合でも改正案の二号に該当するならば、改正案のほうでは妊娠の中絶ができる。しかし現行法ではそういう場合はできないという点で、やや改正案の方が廣くなつておるように思いますが、しかし「母体の健康を著しく害するもの」この点から考えてみますると、著しく害する場合でなければ改正案では妊娠中絶できないわけでありまして、その点は改正案の方が法律上狭くなつておるだろうと思います。
○床次委員 今の言葉の関係でこれはむずかしいのでありますが、最初に私が御質問申し上げたように、二号、三号が特に規定されておるということは単なる医学的適應あるいは従来の刑法の堕胎罪に対する違法性の阻却ということに対しまして二号、三号によつて範囲を拡げたというように解釈いたしますと、「著しく害する虞のあるもの」というものが相当何といいますか、従来の解釈よりも範囲が廣くなつておると見えます。拠つて特に今回の改正案のようにいたさなくても、従来通りに残しておけば、かなりこれに幅があるのでにないかと思いまするが、そう解釈してよろしゆうございますか。
○野木説明員 母体の健康を著しく害するかどうかという、そちらの方におきましては、現行法が確かにゆとりのあるものと思うものであります。
○床次委員 次に今回の改正案に加えられましたところの第三号についてお尋ねしてみたいのであります。今回の改正案は、ここに理由といたしまして、生活が著しく窮迫するものというのをあげてあるのでありますが、生活が著しく窮迫になるということが一つの堕胎罪に対する違法性の阻却の理由として認めることに対しまして、はたして認め得られるかどうかということについてお尋ねいたしたいと思います。私は人口問題という立場から見まして、ある程度まで産児が制限せられるということはやむを得ない。これは当然その立場から違法性の阻却があるものと思うわけでありますが、しかし貧富の差によつてこれが違法性阻却の理由になるということに対しましては、多少私は疑いを持つておるものであります。法理論から申しまして生活問題を取上げるということがはたしてどういうものか、御意見を承りたいと思います。
○野木説明員 私もこの点にあまり深く研究しておりませんので、十分な御答弁はできかねると思いますが、一度二、三の著書を調べてみましたところ、たとえば東北大学の木村亀二さんの新法律学会全集の刑法各論などによりますと、堕胎罪の違法阻却の場合として四つほど揚げてありまして医学的適廊に基く堕胎、優生学的適應に基く堕胎、社会学的適應に基く堕胎、倫理的適應に基く堕胎、そのうちの(ハ)の社会的適應に基く堕胎というところにおきまして、大体その要旨を申し述べてみますと、木村先生の見るところによりますと、「胎児の出生に因つて又は妊娠を継続することに因つて、妊婦又はその家族の経済的状態が甚だしく窮迫状態に陥りその生計を維持することが不可能となる虞ある場合に爲される妊娠中断を請う。」とありまして社会的適應に基づく堕胎につきましては、各國とも議論がわかれておるようでありまして、これを罰せざることを立法的に規定しておる國もあるようであります。それは木村先生の引用しておるところによりますと、ラトヴイアの法律、チェコスロバキアの一九二六年案、一九三二年の法律案などにあるそうであります。これを許せという学者といたしましては、木村先生の引用するところによれば、ドイツのリイーブマンという人であるそうであります。学界といたしましては、戦前ありました国際刑事学協会ドイツ部会の、一九三二年フランクフルト・アム・マイン会議の決議というのがあるそうであります。なおまたこれを絶対に許容しないことをはつさりしておる國もあるようであります。それは木村先生の引用するところによりますと、古いのをここで言うのにどうかと思いますが、「ナチス刑法の覚書」なとというものは絶対に許さないことにしておつたようであります。そうでありますから、木村先生の著書に説くところによりますと、理論的にに一度絶対に成立たないという議論でもなさそうにも思えるわけであります。ただ立法論的にこういう表現をとつてしたらいいかどうかという点には、まだまだ相当研究の余地があるのではないかと存ずる次第であります。
○床次委員 現行法が人口問題あるいに母性保護という立場から見まして、特に二号、三号という規定を入れまして、従来の規定よりも非常に範囲を廣くしたのでありますが、これに対しまして、現在さらに人口問題の見地から見ますと、社会的原因を加える必要性がふえておると思うのであります。今回、提案者において第三号を入れようとなさつたのもこの目的に出ておられるものでありまして、この趣旨には私は賛成なんであります。しかしながら、せつかく加えようとした社会的原因が、単に経済上の問題だけをここに取上げられておりまするが、人口問題の立場から申しますと、もつと範囲を廣げていいのではないか。もつといろいろの問題が社会的原因として、今後妊娠中絶を認めてもいいのでにないかという考えを私は持つておるのであります。どういう立場からと申しますと、元来人口問題の立場から申しますと、人口の制限は受胎調節でもつて始まつて参りまして、ここにあげられたところの妊娠中絶を行わなければならないというのは受胎調節に漏れたもの、あるいはこれを行うことをしなかつたものが初めて妊娠中絶という手術の問題として取扱われて来るのであります。從つて数は相当制限せられておるわけであります。しかしその場合に人口を抑制したいという考え方におきましては、当初の受胎調節の場合と同じであつてしかるべきであります。どういうことを目標とするかと申しますと、両親が子供を持つことを希望しない、また社会もそう子供が生れては困るというところからまず制限せられてしかるべきものだ、そういうものがまず主体になると思いますが、人工妊娠中絶の場合におきましても、やはり同じような立場においてそれが認められていいのではないか。人口問題の見地から申しますれば、同じ範囲内におきまして人工妊娠中絶を認めてもいいのではないが。ただ受胎調節の場合は、いわゆる精子と卵子程度でありますが、受胎いたしましてからはある程度までの活動力を開始しておる。ここに差がありますので、その程度に問題があるのでありますが、考え方としてはいわゆる社会的原因を人口問題の立場からみました点におきまして、人口妊娠中絶を認めても、いいのではないかと思うのであります。私ここに揚げてあります章は、そのうちのもつとも大きな生活問題をここに取上げておられるのだと思いますが、しかし規定といたしましては、やはりもう少し別の言葉をもつて書かれたならばいかがか。私が例として申し上げますれば、両親が子供を養育することを好まず、しかも将来その子供の養育が困難であると認められますものは、やはりこの適用の対象にしていいのではないか。違法性阻却の理由とすること、これは今日の人口問題から見ましてさしつかえないものではないふというふうに考えますが、これに対して法務廳の御意見を伺いたいと思います。
○野木説明員 わが國の人口問題をどう解決するかということに、國家の最高政策の一つに属するものと存ずる次第であります。従いまして、國家の最高政策から見まして、御議論のように考えて行くことも可能であると存ぜられる次第であります。ただ私ども刑事方面から見ますと、その政策を実施するに必要にして最少限度の点をはつきり法文に現して行きまして、それが濫用されたりして弊害がないような規定をつくつていただきたい、そういうことが一番問題として考えておる点であります。
○床次委員 少し問題が横にそれるかもしれませんが、たとえば正当の結婚でなくして子供が生れるという場合、その子供をある程度まで避けたいという考え方は当然であろうと思います。普通の場合でありますれば、当然それは受胎調節をまず行つておるのではないかというふうに考えるのであります。受胎調節に失敗した場合に子供が生れて来る、この場合に子供が生れるのを防止するために、人工妊娠中絶という問題が現れるのでありますが、これが現在ではその場合にに限つて堕胎罪という形をとるのではないかと思います。しかし幸いにして受胎調節を上手にやつたものが、実は堕胎罪は当然起さずに済むというのが実際ではないかと思う。正当の結婚でなくして子供ができた場合、あくまでこれを堕胎罪として追究しなければならぬかということに対しては、多少疑問があるようでありますが、法務廳はいかがお考えになりましようか。
○野木説明員 御質疑の点にまことにむずかしい問題であると存ずる次第でおりまして、たとえば姦通罪は新憲法の実施とともにわが國の刑法からは消えてしまつたわけでありますが、それがすぐ姦通を放任するという趣旨を興励し、あるいはそれを是認するという趣旨でないことはもちろんのことと存ずる次第であります。そうしまして、たとえば姦通の結果子供が生れた、それを自由に堕胎を許すということになりますと、姦通罪を撤廃しましたけれども、姦通自体はやはり國家社会的に見て不徳義の行為と思われる次第でありまして、ますます不徳義の行為が行われる余地を與えるような結果になりますので、今すぐに姦通の子供とかあるいは非姦通の子供とかは堕胎していいではないかというような立法をしてよいかどうかは、非常に疑問に存ずる次第であります。
○床次委員 堕胎の定義の問題でありますが、あまり妊娠の数が進んでからこれを妊娠中絶をするということに対しましては、相当これは問題もあるかと思いますが、比較的初期の場合におきましては、実際問題として堕胎として取扱わない場合が少くないと思いますが、従来人口問題の立場から社会適原因を考えるときにおいて、比較的妊娠の初期、たとえば三箇月以内というような場合につきましては、比較的社会的原因を認めまして、これに対して妊娠中絶を認めるということも、現在の情勢においては、あえてある程度までこれを認め得る根拠がすでに來つつある、これを認めてよいのではないかと思いますが、これは結局、議論の問題であるかと思います。あえてこの点につきましては、重ねてお答えも要求いたしませんが、なおこの機会にちよつと総括的にお尋ねしてみたいのであります。前にいろいろ優生の行政の問題、その他問題が、ありますが、今回の改正法によりまして、もしこれが成立したといたしましたならば、優生的な問題の方におきまして、予算その他において大体政府御当局は実施可能であるか、あるいはその場合においては追加予算をとつてやらなければできない状態にあるか、あるいは積極的に追加予算をとつてやるかという点についてお尋ねいたしたいと思います。
○三木政府委員 この法律案が成立いたしますと、さしあたり民生委員等の講習会、あるいは関係官の会合等を行うう必要がございます。説くに一般國民に対する周知徹底等の費用が当然必要になつて来ると思いますので、従いまして大体百万円見当の費用がさしあたり必要であると考え、諸般の準備をいたしておるような次第であります。
○床次委員 これは予算が成立しますならば、百万円程度のものなら、これは大体とれるものと考えてよろしゆうございますか。
○三木政府委員 これは必要最小限度が百万円でございますがが、それにつきましては、ただいまのところ、その泊増加予算が成立するものであるかどうか。さらにまた議会が遅れまして予備金がとり得るものであるかということにつきましても、はつきりと私からお答えいたしかねます。
○床次委員 この優生適用範囲を廣げられるということに対しましては、これが適正に運用せられるならば、まことにけつこうだと思う。しかしこのためには相当予算がいると思いますが、もしもこの法案を実施せられるならば、政府においても十分遺憾のないだけのことはやつておられなければいけないと私は考えるのであります。いずれもう少し審議をいたしました後に、その問題も、具体的に政府の御意見を承ることができるかと思いますが、十分予算的措置がなければ、せつかくのこれも効果をあげ得ないであろうということを申し上げまして、一度私の質問はこれで打切ります。
○堀川委員長 大石委員
○大石(武)委員 大体私の聞きたいと思うことは、床次委員によつて質問されたのでありますが、二、三付随して御質問いたしたいと思います。法務廳の政府委員の方に対してでありますが、この改正法案の第十三條第二号についてであります。改正前のものには、健康を害するおそれのあるものとあつたものが、この改正のものには健康を害するものとなつたのでありますが、この害するおそれのあるものと、害するものと、言葉上の違いはあるようでありますが、そして先ほどの御答弁の中にも、大分その範囲が違うような御答弁があつたのでありますが、実際に健康を害するものと、害するおそれのあるものは違うとお考えになつておられるのでありましようか。これをお聞きしたいと思うのであります。
○野木説明員 法律の解釈といたしましては、やはり違うことになるかと思います。
○大石(武)委員 法律の解釈でありますが、健康を害するというのは、結果を見てからの話でございますが、医者が診断して、妊娠を継続して、あるいは分娩をして、健康を害するというのは、それは診断した結果のあとの話であります。害するおそれのあるものの結果を予想しての話でありまして、実際は私は違わないと思うのであります。健康を害するというのは、おそれのあるものをさすのであろうと思うのでありますが、こういう言葉のあやだけをもつて、はたして法律的に区別し得るものでありましようか。確かなところを承りたいと思います。
○野木説明員 法律の用語の関係上、今までの使用におきましては、害するものと書いた場合と、害するおそれのあるものと書いた場合とでは、害するおそれのあるものというのがやや範囲が廣い。そういうように一般に解されております。
○大石(武)委員 これはこれ以上お話申し上げても水かけ論になるのじやないかと思いますので、一度やめておきます。 次は第三号でありますが、私はこの三号の、「妊娠の継続又は分娩によつて生活が窮迫状態に陥るもの」というこの改正に対しては、満腔の賛意を表するものであります。ただいま床次委員の質問及びそれに対する御答弁によつて、この項目を設けることが別に法律に反するものでないというような御意見のあることを承りまして、非常に喜んでおるのであります。この前参議院におきまして、この問題に関しまして公聴会が行われました折に、最高検察庁の岡本検事は、これに対して非常な賛意を表せられて、非常な進歩である、これによつていろいろな犯罪が防げるだけでなく、母体の保護あるいは自殺の予防といつたいろいろ非常な長所があるということを認められまして、この改正案を支持せられたようでありますが、この岡本検事の御意見というものを、日本の法律における正しい見解であると認めてよろしいのでございましようか。これをちよつとお伺いいしたいと思ます。
○野木説明員 最高検察庁の岡本検事の申さたことが、今ただちに日本の学界なりの通説的見解であるかどうかという点につきましては、私としても通説であるとまで断定していいかどうか、ここでちよつとそこまで答えられないのであります。
○青柳委員 法務庁の方が来ておられますので、関連して質問いたします。ただいまこの十三條の第三号の問題につきまして、床次委員並びに大石委員から法務廳に御質問があつたのと同じ点であります。私の考えでは、堕胎が刑法上の犯罪である以上は、その違法性を阻却いたします理由といたしましては、生命とか、身体とかに害がある場合、すなわち胎児の生命よりもさらに保護すべき公算が大きな場合が理論的には認め得る場合で、貧困が違法性を阻却することになると、法律一般の緊急避難の理論が非常にあぶなくなるおそれがあるというのが、私の疑問の点であります。この点に関しましては、先ほど来説明員の方から政府の立法を木村さんの例を引いてお話がありましたが、法務廳の御意見としてはまだはつきりきまつたものがないと私は思います。従いましてその点につきまして次会において法務廳の意見をはつきりとお示しを願いたいと存じます。 次に、私は一昨日のこの委員会におきまして、主として予算の問題に関連いたしまして申し上げたのでありますが、ひとり予算の点からばかりでなく、生活保護法あるいは社会保険制度とこの法律、ことに第十三條第三号との関連に関しまして御質問をいたしたいのであります。委員長におかれましては次会においてに大蔵当局、あるいは保険局並びに社会局の御当局をお呼びをいただきたいと存じます。
○堀川委員長 それでは苅田さん、労働省からお見えになつておりますが、御質問がありますか。
○苅田委員 前回の質問の中で、私は現在の労働組合に対して優生保護的な、また婦人衛生に関してどういう処置がとられておるかということの質問をいたしたのであります。これは地方で労働組合の婦人部などと交渉を持つておる者はすぐ感ずることですけれども、生理上の休暇というものを公然と認めておるにもかかわらず、婦人労働者の中には、まだはつきり何のために生理休暇が必要かということについて十分な認識がなく、そのために生理休暇のとり方についていろいろ問題が起つているような組合も相当あるわけなのです。こういう点に、まず何よりも婦人労働者に対して婦人衛生を十分に啓蒙しなければならない。これが現在どういうふうに行われておるかということについて御質問しまして、十分な御答弁をいただけなかつたわけですが、それについて政府当局の方から、実際行われておることについてお聞かせ願いたいと思います。
○谷野説明員 生理休暇につきましては労働基準法に規定されておりますが、法律が施行されまして間もなくは、これが画期的な規定でございますから、使用者にも労働者にも、十分理解を持つてこれを活用するというところまで行つておられなかつたと思います。それで婦人少年局といたしましては、生理休暇をよくわかつてもらいますために、生理休暇は働く婦人になぜ必要かというようなリーフレットを一つ出しまして、これを中心にして私どもの地方の職員に事業場をまわつてもらいまして、十分使用者労働者ともに討議をしてもらう機会をつくつたわけでございます。ところが生理休暇については、法律の内容といたしまして何日とも規定されておりませんし、有給とも無給とも規定されておりません。また女子の特質から、これを活用しますのに非常に遠慮をして使わなければいけないような心理的な微妙なこともございますので、これを十分に活用しておるとは考えられないわけでございます。私どもとしては、なお生理休暇が十分むりのないように、特に使用者の間で、どうかいたしますと健康診断を出せとか、あるいは医者の証明を出せとかいうような特別な要求がございますので、私どもはそういうことのいらない規定であるということを機会のあるごとに宣称し、なお労働者側にも、生理休暇が何日と規定しておらないし、あるいは有給とも無給とも規定してないために、中には少数の者がこれを本来の生理休暇でないときに使う者も少しあると思いますけれどもこれもだんだん生理日に使うというような理解が深まつておるのではないかしらと思います。私どもとしては、機会のあるごとに、生理休暇の問題がよく使用者にも労働者にもわかつて、むりのないように活用していただくことに努力いたしております。
○苅田委員 今から十数年も前に私が東京でもつて、ソ連の婦人の生理の問題、それから婦人衛生の問題を取扱つた映画で女性線と申しますか、そういうものを見たことがあつて、そういうことの話を労働者の会合でいたしたことがあるのです。映画ですからわかりやすく、しかももしもさしつかえのある場合には赤ん坊を使つて、非常にこまかい手当までも説明しておるような映画であり、あるいは残業しておる婦人には休時間が必要であるとか、あるいは家庭婦人ににどういう必要があるかということを映画でわかりやすく説明してある。そういう映画があつたわけで、そういうものもし日本にでもあれば、婦人の生理休暇というものがこれだけ必要であるかということをやはり慎重に考えなければならないものであり、そのために法律の規定としてそういうものが設けられたということが、十分理解ができるということしておるわけです。それが啓蒙宣傳の方法としてはもつともいい方法じやないかと思いますので、ぜひそういうことについても立案されてご計画を願いたい。もしそういう御計画がなければ御計画願いたい、かように考えるわけであります。 そのことともう一つそれに関連して、最近全連、國鉄、特に全連ではそういうふうになつておるそうですが、従来三日間であつた生理休暇が二日間になつた。これについての御当局の御見解を承りたいのであります。
○谷野説明員 私の承知しております限りでは、新給與実施本部で生理休暇をとつた場合に、有給として二日は給料を差引かないという基準を一度きめたのだと、私は承知しております。公務員に関しては私ども労働省の所管でございませんから……。
○苅田委員 私はそういうことがしばしば起こると思うのです。どちらの所管でもかまいませんが、従来の大蔵省の給與の関係はともかく、従来は三日間が與えられたのが、最近は二日間になつた。こういうことが労働省の衛生管理をしておる方向からは、やはり見のがしてはない事実だと思う。そういう点に対して、どちらの方がこういう衛生の方の管理の責任がおありになるかわかりませんけれども、その御当局の方の御答弁を承りたいと思うのです。そういうことになつたことに対してどういう考えを持つておいでになるか、それをお聞きしたいと思うのです。
○谷野説明員 婦人労働課といたしましては、生理休暇の規定を二日であり三日であるなどということに基準法できめられておるわけではございません。それで二日がいいのか三日がいいかということも、科学的資料も根拠してないわけでございます。ただ実際上、事業場で生理休暇を使つておる実情についての調査を私どもの方は今いたしておりまして、ただ労働協約について婦人労働者が大体何日獲得して、それは有給となつておるか、あるは無給となつておるか、あるいは生理休暇の使用状態は平均何日くらいであるか、あるいは生理現象が日本の婦人労働者として何日くらいであるかということを今調査いたしておるわけでございます。そうして新給與実施本部できめられた方針について、それがどうなければならないかという点について、婦人労働課としてはきめたいつもりで今検討いたしているわけでございます。ですけれども二日としなければならない、三日としなければならないという適当な資料は、私どもまだ持つておらないわけでございます。 なお私の局、省の所管でございませんが、公務員の労働條件については、労働基準法以外に下まわることのないような規定について、私どもの局としての考え方を一度人事院の方に申し送りたいつもりで、検討いたしておるわけでございます。
○苅田委員 実は今申しましたように、そちらの方で御研究になつておいでになる前に、すでに全官公の方で、従来習慣上か何かずつと三日間公然とつておつた生理休暇が、二日間になつたという事実があるわけであります。この問題に対して全連の婦人部あたりは非常に苦痛を申出ているわけです。これに対してぜひ至急に善処いただきますように、婦人少年局なりあるいは労働省の衛生課なりで御対策を立てていただきたいことをお願いしたいと思います。 それからせつかく谷野課長がおいでになつておりますので、この機会にお聞きしたいと思うのは、最近特に紡績の工場あたりで、従来のような周旋人はなくなつたはずであるのにかかわりませず、実際は募集人、周旋人が職業安定所の中に入つて、事実それとかわらない募集方法をやつている。特に岐阜あたりの中小企業の多い所では非常に行われている。こういう事実がある中で、これに対しどういうお考えでおいでになるかということが一つ、それからやはりそういつた紡績の工場では、婦人の労働者の健康に非常に大きな支障を来すような悪い労働條件が一般的に行われておる。たとえば近いところでは千葉の日毛あたりもそうだし、あるいは大阪の東洋紡でございましたか、岸和田でございましたか、はつきり資料を持つて参りませんでしたが、いずれご相談に行きたいと思つていたのでありますが、そういう健康上に害のあるような非衛生な点がたくさんある。たとえば藥品が流れておる場所を、地下たびその他のはきものが支給されないために、たくさんの女工たちがはだしで歩いているので、その方面で取返しのつかない病気になるということがたくさんあるので、こういうことについてあなたの方で、そういう実情がおわかりになつておいでになれば、これに対してどういうような対策を立てておいでになるか。あるいはこういう研究を進めておるということが現在おありになれば、この点についてご答弁を伺いたい。もしこういう事実をご存知なければ、これに対して至急に御調査になつて処置をお伺いしたい、かように考えております。
○谷野説明員 中間搾取の問題につきましては、職業安定法と労働基準法の適用を受けますが、以前にかわらないような周旋人がおるという苅田さんのお話でございますが、もしそういう事実がございませば、私ども婦人少年局といたしまして、基準局に連絡をとりますなり、職業安定局に申し送りまして、すぐに調査をお願いすることができます。できるだけその事実を私どもの方へちようだいいたしたいと存じます。その他の方針につきましては、今特別な研究はいたしておりませんが、なおそういう点について具体的な問題がございましたならば、私どもどんどん調査を進めたいと存じます。
○松永委員 優生保護法の改正法案の問題は、非常にむずかしい問題でありまして、人権の尊重はもとよりでありますが、自然の法則にも従わなければなりませんし、これを道徳的、宗教的に見て、あるいは民族性及びその将来も考え、社会科学の方からも、食料対策の方からも、あるいは國土計画の上からも、諸般の点から見まして、これはよほど慎重に考究、しかも人口対策の上からも早急に解決しなければならない問題でありますが、もつともつと別の立場においても掘り下げた研究をやつてみたいという点がありますが、これをむりのない、しかも科学的な理性と道徳に立つた立場から、きわめてなだらかな關節をもつと範囲を拡げたものでやつて行きたい。それにはどう考えても予算が伴います。問題の十三條第三号をこのままで予算を伴わずにやつて行きますと、貧困家庭、要するに生みたくない家庭に子供が生れる。われわれ永年幼児教育をやつて来た者から見ますと、大体生みたくない子供を生みますと、その七、八十パーセントがよくない子供になるということに、はつきりした統計上の数字であります。従つて生みたくない子供を生ませないというところまで掘り下げて行くためには、この法案だけでは——なるほど受胎調節に失敗して妊娠した人は、もうすでに妊娠中絶をやつておられるであろうと言うけれども、有識階級は問題ないのですが、それをやり得ない無識階級、あるいは要保護者階級、こういつた俗に言う貧乏人の子だくさんというところを調節して、優生保護上、人口対策上、ここに大きな國策を立てて行くという上におきましては、やはり相当の予算が伴わなければうそだと思う。かりに一万人の妊娠中絶を施すに、前後処置を入れて、しろうと考えから一人三千円使うとすれば、一万人調節すれば三千万円は消える。一万や二万の調節をするのみならばこんな法策をつくる必勝はない。國家が何かのゼスチュアで指導して行つても足りるわけであります。それで十万人調節すれば三億いる。この点で予算も伴わなわなければならないと思いますし、これを私ども宗教家の観点から見ると、これは性倫理、性の上からも問題とされるのでありますが、政治の倫理化という問題は、単なる収賄、贈賄、涜職等の排除という考えではなくして、もつとあらゆる観点から政治の上にあたたかい潤いを持たせて、そのすみずみまでも倫理化して行かなければならないという考え方を持つて政治を眺めておる立場から言いましても、ただちにこれに承服することはできない。そこで先輩斯道の大家である大石、福田あるいは丸山等の専門医師の方も、幸い厚生委員会にいらつしやいますから、ひとつなお十分に掘り下げた研究をやつてもらいたい、かように考えますので、本日は一度この程度でお打切りを願つて、次の再開を急いでしていただきたい。それまで留保としていただきたいと考えるのであります。
○大石(武)委員 今の問題に関連いたしまして、この問題に対する考え方、見方というものは、お互い委員の間に多少違いがあると思います。もう少しこれについて質疑なり、研究をいたさなければならぬのでありますが、先ほど来の経過から考えましても、青柳委員が言われましたように、これは結局法務廰と厚生省との一つのまとまつた定見がなければ、これは審議を締結することができない問題であろうと思うのであります。従つてできるだけ早く厚生省及び法務廰におかれましては、これに対する一つのまとまつた代表的な意見をお持ちくだすつて、できるだけ早い機会においてこの審議を進められるように希望する次第であります。従つて本日はこれで散会されんことを希望いたします。
○堀川委員長 ただいま松永委員、大石委員からお述べになりましたように、本日はこの程度で散会することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○堀川委員長 それでは本日はこの程度で散会することにいたしまして、明後日午前十時から開会いたすことにいたします。 午後零時三分散会