建設委員会 第16号
- 発言数
- 214 件
- 登壇者
- 15 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1949/05/11
会議録
○淺利委員長 これより会議を開きます。 まず建設業法案を議題といたします。質疑を続行いたします。
○村瀬委員 本法案を見ますると、建設業の健全な発達に資するという第一條の目的の下につくられておることはよくわかるのでありまするが、法案全体から受ける感じを見ますると、すべて現内閣になりましてから、伸び伸びと國民に息をさせようという、自由主義と言いますか、資本主義の本体に帰ると言いますか、その方向とはいささか逆のような感じを受けるのであります。そこで各條にわたつて御質問申し上げまする前に、海外におきまして、たとえばアメリカ、欧州等で、こういう類似の法案はどういう形で出ておりまするか、それをまずお伺いいたします。
○中田政府委員 村瀬委員の御質問にお答えをいたします。この法案は現内閣の方針、いわゆる自由を尊重するという面、そういう主義からすれば、むしろはずれてはいないかというような御質問でございましたが、これは前会におきましても申し上げました通り、建設業の健全な発達及び建設工事の適正な施行というものが、日本の再建の上にまことに重大である。また工事の性質上、非常に公共の福祉にも関係があるという意味におきまして、日本の、大きく申しますれば國土再建に、非常に重大な関連を持つこの業界というものを、よりりつぱにし、発展させ、そうしてその行う工事を適正ならしめるという意味でございまして、必ずしも自由的な考え方と矛盾するものではないであろうと考えます。ことにこの法律におきましては、多年業界が望み、また業界の弊害であつたというような点につきましては、むしろこれを育成する観点に立つて、あるいは請負契約における欠陥等をも是正して、よりよき当事者間の関係をつけて行く。また登録いたしましても、このことによつて業界がますます信用を高め、そうしてよい事業界が出現することを期待するもりでございますので、その意味におきまして、現在の内閣の主義方針にもとるものではないであろうと考えます。 第二点の外國の事例におきましても、あるいはお手元に御配付申し上げたかと存じますが、外國においてもこの種の制度は相当行われておりまして、最近外國の事例等は、戰争の関係上新しいものはございませんが、アメリカにおける建設業の制度につきましては、比較的新しいものが得られましたので、それによりますと、大体において、御承知の通りアメリカにおいては州が憲法を持つてやつておるわけでございますが、十九の州におきましては、程度の差こそあれ、大体におきましてライセンス主義、いわゆる免許制をとつております。そのとり方におきましても、一定の工事を限度として、それ以上のものを制限するとか、あるいは全面的に業者のライセンスを発行するというような多少の差はございますが、この種の制度は相当廣く行われておるということを承知いたしております。
○村瀬委員 そういう制度は法律によつてあるのでありますか、あるいは規約、約款を整備するというような方法で行われておりますか。
○中田政府委員 これはやはり州の憲法によりまして、法律事項でございますので、州の法律で全部規律しております。
○村瀬委員 次に條文に移りますが、二十三條に下請の不適当な人をかえるとかありますが、これは規定しなくても当然わかり切つたことと思います。 それから二十條に入札を行う前に期間のいるのはあたりまえのことでありますが、「見積をするために必要な政令で定める一定の期間を設けなければならない。」ありますが、こういう点が、いかにも幼稚園の子供にものを教えるようなことで、私が最初申し上げたような、いわゆる自由の伸び伸びとした天地に國民を導こうとするのに、こういうところまで法律できめなければならぬかという疑いが起るのでありますが、この政令で定める一定の期間というのはどういう程度をお考えになつていらつしやいますか。 〔委員長退席、天野委員長代理着席〕
○中田政府委員 御指摘の二十三條のいわゆる下請人の適当でない場合に変更ができるという規定を設けましたことは、当然そういうことはなくてよいことだから、別段規定がなくてもいいじやないかという御意見もあり得るかと存じますが、おおむねここに各條文に列挙いたしました請負契約に関連する問題は、從來の実情から見まして、建設業界ことに建設請負に関連して、最も遺憾な点はどういう点であるかということを現実的にながめまして、その最も遺憾な点につきましては、やはり法のひとつの規定によりまして、そういうことのないように規定することが、いわゆる建設事業の請負を明朗ならしめ、またその工事の適当を期する上に必要であろうという意味で、書いたのであります。もちろんこの二十三條は、元請人が一切の責任を負うわけでありますから、下請人にだれを使おうが、それは元請人の自由であるという解釈もつくわけでありますが、発注者の側から言いますと本当に仕事をする者の出來不出來——もちろんこれは損害賠償等で解決する以上に重大な関心を持つておるわけでありまして、元請人が全責任を負うからというのでこれに発言できないということでは、あまり注文者が保護されないではないかというので、この規定を置いたわけであります。二十條の方は、これもまたむしろ注文を受ける業者の方を擁護せんとする趣意に出たものでありまして、こういう規定は幼稚園のようではないかという感があるかもしれませんが、業界の事情を見ますと、発注者側で大工事を出して、本当の見積りの期間の裕余なしに、いわゆる腹藝で見積りをやつて入札に臨むというようなことになりまして、眞劍によい工事をしてもらおうと思う場合においては、受ける側から見ても入念に、いわゆる良心的な見積りをするだけの期間を與えなければならぬのにかかわらず、実際においては見積り期間がないためにずさんな、いわゆる腹藝的な入札をするということが、業界における一つの現象になつておるのでありまして、これにつきましても、やはり法律のこの規定によつて注文者に御注意を願おうという趣意でございます。
○村瀬委員 その大体の期間はどのくらいですか。
○中田政府委員 この政令で定める期間は、事業の範囲及び量によつて違うわけであります。從つて若干こまかくなりますので政令に譲つたのであります。ただ腹案といたしましては、大体今日の物價からいたしまして、二千万円くらい以上の工事になりますと、少くとも二十日間くらいの見積り期間を與えなければ、ほんとうに実地檢分なり、單價の見積りをすることができないではないかというような意味で、大体二十日間くらいの期間を與えるようにしたいと考えております。
○村瀬委員 ただいまの適切な御説明で、二十條はたいへん必要であるということは了承いたしましたが、総じて第三章建設工事の請負契約として十八條から二十五條までの條文を見ますと、二十條は今の御説明で非常に大切な條文だということがわかりましたけれども、一般的に第三章の條文は、法律として多少不審に思える節もないではないのであります。たとえば第十八條の「公正な契約を締結し、信義に從つて誠実にこれを履行しなければならない。」ことは当然でありますが、しからば民法に、親には孝行をしなければならぬ、夫婦は仲よく暮すべきであるというような條文は別にいらぬのでありまして、特にこういう條文をこの法律に加えねばならなかつたという立法責任者の方で、御理由がありましたならば承りたいと思うのであります。 なおいままでの質疑應答によりまして、この点はやや明らかにはなつておるのでありますが、片務契約であつたために、第三章はいろいろ事こまかに規定せねばならなかつたという御答弁に盡きるように思うのでありますが、私たちのいままで扱いました関係によりますと、それぞれ地方自治体なり工事の施工者におきましては、まず工事約款をはつきりきめまして指名する場合におきましても、その約款を御了承の上で御希望ならば入札をなさい。こういうことを三名なり五名なりに言つたものであります。それにはちやんと事故の起つたときにはどうする、期限内につくらねばならぬというような大体この第三章に掲げてありますようなことは、ほとんど地方自治体なりそういうものでちやんとまず定めまして、約款にない場合には設計仕様書にそれぞれあるわけであります。約款と仕様書と両方をつき合せて見まして、それによつて請負人は見積りをするのが実情であつたと思います。片務契約と申しますけれども、それは官廳には一部押しつけがましいことがあつたかもわかりません。いな大いにあつたのでありましようが、しかしそれはそれが間違いであつたので、正当なものではなかつたのであります。間違つているものを基礎にしていろいろ繁文辱礼を設けるというよりも、正しいものを正しいことにして、新しく法律をつくられる場合には、なるべく簡潔にしてよいのではないか。完全な契約、約款の模範例を設けまするならば、この第三章に掲げられました條文の大半は、これが簡潔になるのではないかと考えるのでありますが、これに対する立法経過を承りたいと思います。
○中田政府委員 ごもつともな御質問でございまして、たしかに冷静な純法律的な解釈をもつて言いますれば、十八條、十九條等におきましては、一種の注意的といいますか、原則的な規定になつておるようなきらいはございます。しかしながらかようなことすら書いて、しかして建設業界の、いわゆる合理性のある請負契約を締結せしめなければならぬというその現実の姿というものは、実は昨日の参考人の御意見にもるる伺つたごとく、ことほどさように不備な点、あるいは不満足な点があつたわけでございます。もちろん村瀬委員の仰せのごとく、中には非常にりつぱな契約をなさつております方もないではございません。また地方公共團体におきましても、決して請負契約が片務的でないような、りつぱな約款で臨んでいらつしやる向きもないとは言えませんが、われわれいろいろと調査いたしますと、かなり独断的な、つまり御都合主義的な約款の内容がございまして、これも業界にとりましては、やはりしかたがないというので甘んじてやる。ほんとうに腹から甘んじたのではなくして、しかたがないから甘んずるというような向きが、かなり少ないのでございます。そこでこの十八條以下、請負契約の内容をもつと合理的にするようにという、注意規定を設ける趣意が出て來たわけでございますが、十八條にいたしましても、これは民法の解釈からいいまして、当然のことであるとも申されましよう。しかしながら請負契約というものが、実際の個々のケースを洗つてみますと、民法上の双務契約であるにもかかわらず、ただいま申し上げたような片務契約的具体的な約款になつている。しかしそれにも双方の行為が成立したわけですから、文句の言いようはないではないかといえば、それまでではございますものの、それではほんとうの良心的な工事の施行と、また業界の維持育成等から見まして妥当を欠くという、その現実を押えまして、あえてかような條文をつくつた次第でございます。十九條のごときにいたしましても、当然あたりまえのことを書いておるのではないかとおつしやられますれば、確かにそういう点もないではございませんが、しかしながらただいま申し上げたような、なるべく双務契約の趣旨に合うような請負契約を普及さしたいという念頭からいたしまして、おおむね從来紛争が起りそうな、また片務的になりそうな現実の情勢を把握しまして、その弊害の起るような点をここに列挙して、なるべく事前にさようなことのないようにし向けて行こう、こういう趣意で立案したような次第でございます。
○村瀬委員 次にお尋ねいたしたいと思いますのは、建設業審議会の問題で、あります。これは本法律案の山と申しますか、急所と申しますか、われわれの期待するところは一にこの点にあると思うのであります。紛争処理その他にあたりまして、この審議会の活躍に期待するところは非常に大きいのでありますが、それだけにまた一部危險も含まれておると思うのであります。この点につきましては、池田委員でありましたか、すでに御質問になつたように思うのでありますが、重ねてお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。この建設業審議会の法制監督等につきまして、これが当面の責任の監督に立たれます建設省といたしましては、どういう成案と言いますか、簡單でけつこうですから、この法案を審議するにあたつて、不安を起さないようた御答弁を、もう一度お伺いいたしたいと思います。
○中田政府委員 御懸念の点につきましては、まことに重大な問題でございまして、立法の技術といたしましては、この程度以上のことをこの審議会の性格に盛り込むことは困難でございましたので、一應この程度にいたしたわけでございますが、さてほんとうにこれを活用するということになつた場合におきまして、これに弊害を伴わさせぬようにするということは、非常に大事なことでございます。またこれが無用の長物と言いますか、いわゆる開店休業的な存在になつたのでは、せつかくの趣意がほとんど全部没却されることになりますので、これまた非常に大事なことである。いわゆる運営が曲げられては一大事でありますし、また運営が活発化せずに休業状態になるということ、あるいは役所の方のお手盛案をただ賛成ということで終るというような、形式的な存在になつたのでは、また一大事でございます。この両者につきましては、今後われわれ最善の努力をいたしまして、またその人選におきましても、ほんとうに建設業法の健全な運用のために、また業界のほんとうの進歩発展のために、また他の一面から申しますと、公共の福祉に重大な関係ある事柄にかんがみまして、これらの点からこの審議会に要請される任務を、できるだけ公正に遂行し得るような人材を選びまして、一つのいい慣習と言いますか、いい習わしにこれを持つて行つて、本法でせつかく制定いたしました審議会を、龍頭蛇尾に終らせないように、ほんとうに役立つように、うまく仕組んで行きたいと思つております。要は、このメンバーの人選等がまず第一に問題になるかと思います。この審議会の性格につきましても、公聽会等でいろいろと論議がありまして、むしろ執行機関にしたらどうかというような意見もあつたのでございます。そこでこの審議会におきましても、一種の行政権の発動に対する重要なる保留権を持つておる。いわゆる同意がないと行政権が発動できぬようになつております。その意味で行政権に対する一種のコントロール的な任務を持つておるわけでございます。また積極面におきましては、どんどん自分の所でいろいろな研究をいたしまして、関係方面に建議し、また標準約款をつくつて、一般の関係者にこれを勧告するというような面もございます。從いまして、要は人選をまず第一に公正ならしめて、それからひとつこの審議会の任務の重大性を各委員に御認識願つて、健やかにこの運営ができるように、最大の努力をいたしたいと念願しておるものでございます。
○村瀬委員 その人選こそ一番の問題と思うのであります。これはやり方によりますと、非常によい効能を発揮できるに違いないのでありますが、われわれが心配をいたしますのは、いかにも土建界がボス化される、いわゆる生殺與奪の権を握り、一つの官界でいえば第四官僚ができ上るようなものでありまして、そういうものに個定化されるおそれが非常にあるのであります。そこでその人選の方法について、なおお尋ねをいたしておきたいのでありますが、あるいは人選をする特殊の母体といいますか、選考委員というようなものをおつくりになつて、人選をなさる方針でありますか。それとも建設大臣において、お一人で慎重を期して人選をなさるお考えでありますか。その点の腹案を承りたいと思います。
○中田政府委員 お説の通り人選が非常に重大でございます。ただボス化はせぬかということにつきましては、多少のくふうをいたしておるのでございまして、業界の方から出ていただく方、それから発注者、いわゆる注文主の方の側から出てもらう方、それから公平な立場で公益を代表していただくような、いわば中立的な方というような、アンバランスにならぬようにくふうをいたしております。ただ前会でしたか御質問があつたかと思いますが、その相対立的な者がグルになつたらたいへんではないかというようなことも、しいて想像すれば考えられるのでございますが、そこはやはりバランス・オブ・パワーで、そこに調和を求めれれば、ボス化することもなかろうとわれわれ想定いたしております。それから人選についての選考の方法でございますが、実は率直に申しまして、人選方法をどういう形態でやるかということについては、今日まで確たる成案がございません。しかしながらこれはただいまお話のような、選考母体による一つのピラミッド型の選考方式、あるいは選考委員をあらかじめつくつて、それで選考された者を府縣知事が内申し、建設大臣が任命するということも一つの方法でございましよう。あるいはまた大臣が本当に良心に從つて、公正な、妥当な、自己の責任において任命するということも一つの方法でございまして、これらにつきましては、御趣旨の点は十分拜聽いたしましたので、どの方式によつて選考するかにつきましては、とくと研究考慮を拂いまして、間違いのないようにやつて参りたいと存じます。
○村瀬委員 最後にもう一点だけお尋ねいたします。これは何度も他の委員からお尋ねしたことにも関係があるのでありますが、結局登録の問題であります。そこでここにちやんと條文にありますけれども、なおもう一度明らかに御答弁を記録にとどめておきたいと思うのでありますが、かりにその地方の私立工業学校の先生とか、あるいはその地方におります一つの技術者というものを、顧問または相談役というようなものに一時いたしまして、そして届け出る場合、あるいは相談役で悪ければ社員ということになるかもしれませんが、そういう実際問題にぶつかつた場合、どの程度におとりはかりをなさるのでありますか、地方の末端の実際の面を御考慮願いまして、御答弁をいただきたい。
○中田政府委員 登録の要件につきましては、第五條に列挙いたしました最小限度の事業を担任するものとしての技術を持たなければならぬということにいたしておるわけでありますが、これもしからば業主、あるいは法人の場合でありますれば、役員というようなものにそういう要件を要求するのが妥当ではないかという一つの考えもございますが、しかしそうきゆうくつにいたしましても、実際の実情に合わぬ点もあるので、要するに役員であろうと、あるいはその使用人であろうと、とにかくほんとうにこの仕事についての責任が負える、 〔天野委員長代理退席、委員長着席〕 そういう人ならば、必ずしも事業主あるいは会社の重役でなくてもよろしいということまで緩和いたしたわけでございます。そこで今お尋ねの顧問とか、いわば一種の名義人的な存在でもいいのかどうかということでございますが、これが非常にむずかしい要件を要請するならとにかくといたしまして、まあ土建界における事業主となる以上は、ここに掲げましたのは、私らの考えとしましては最小限度なのでございまして、少くともこれだけの経歴をお持ちの方が一人くらいはおつていただかなければ、どうにもならぬという意味なのでございます。但し身分といたしましては、実際そこの会社の、お仕事をなさる責任を持つていらつしやる場合においては、名義のいかんを問うわけでございませんで、その実体で論じなければならぬと思います。ただ看板的な存在でもいいかということになれば、やはり使用人の範疇に入るものでなければならぬということだけは、われわれは解釈上要求したいと思つておるわけでございます。
○村瀬委員 私の質問は終りました。
○淺利委員長 次に池田委員。
○池田(峯)委員 この前私が質問したことに対する答が出ていないのですが、それはどうなつておりますか。
○中田政府委員 池田委員の前会の御質問の中に、第五條の資格を要求することによつて、現在やつておる者でも登録ができない、登録要件を欠くことになる、そういう者の数いかんという御質問に対しては、その際的確に調査する方法がございませんので、お答えをいたしませんではなはだ遺憾でございましたが、現在いろいろなケースで推定を加えておりますが、的確にこの條項のために落ちるであろうということは、はつきりした数字をお答えできません。ただしこの資格要件を定めるときに、実はこういう業界等の團体でお調べを願つたわけですが、一体業主ともあろう方、あるいは会社の役員、その他で土建の事業に関係なさつておる技術者が、最小限度業界にどの程度おられるであろうか、たとえば学校を出た人たちにはどんな人がおられるか、また学校を出ていないで経験でおやりになつておる方は、何年くらい経驗をお持ちになつておるであろうか、その最小限度のものはどんなものであろうかということをお調べを願いまして、それによりまして、大体においてこの程度が最低限ということになつたわけであります。そこで独断で申し上げることを差控えますので、ただいまそういう的確な数字を抑えてないということを申し上げたのでございますが、大体においてはみ出るというのは少いのではないかと考えております。ただしお断り申し上げておかなければならぬ点は、軽微な工事を除外することにいたしておりますので、その点でも相当救われると思います。大体において軽微な工事を除外いたしましたので、残つた業界におきましては、この條件のために非常に血が出ることは万あるまいと想像いたしております。
○池田(峯)委員 軽微な事業というのですが、それがはつきりしないとまた計数の答も違つて來るわけですが、その点は今成案がおありですか。
○中田政府委員 政令に譲つております。軽微な工事の範囲でありますが、これは実はいろいろ考えております。業界の方でも昨日の参考人の御意見の中にも修正意見が出ておりましたようなわけで、とり方にはいろいろございます。ただ立案者としてざつくばらんに悩んだ点を申し上げますと、この軽微な工事の金額を上げますと、どういう結果になるかと申しますと、庶民住宅を建てるようなものおもはずす結果になつて、いわゆる一般大衆の保護と申しますか、零細ななけなしの金で家を建てるという場合の保護が抜けてしまうおそれもございます。その点あまり金額を高くいたしますと、抜けが多くなるという意味で、大衆の保護という点にうらみがある。さりとてそれではうんと下の方にこの範囲を廣げて、いわゆる適用除外を狭くいたしますとどうなるかと申しますと、これはあまり小さい一人親方的なものにも適用するので、この法律の要求するいろいろな條件あるいは手続等が、煩瑣な感じを国民に與えるのではないかという欠点が一方において感ぜられるわけでありまして、その両者の悩みをどう妥結するかというので実は苦んでおつたわけです。そこでかりに十万円といたします。そういたしますと、今日の物價から申しますと、坪かりに一万五千円といたしましても、六坪くらいのものしかできない、この程度のものなら登録がなくても一人親方で工事ができる。しかしちよつとした家になると、皆登録業者でなければならないということになるわけであります。当初十万円くらいという一つの案も考えておりましたが、少しそれは制限が少な過ぎるのではないか、もう少し適用除外の範囲を拡張したらどうかというような議もありましたので、これを三十万円程度の線で切るか、あるいはもつとずつとゆるめて五十万円程度にするかというような点につきましては、法の実施までもう少し檢討いたしまして、適当な線を見つけ出して政令を定めたいと考えております。ただ御参考までに申し上げますが、その筋にこの法案の審議を願つた際における、向う側の有力な所見と申しますか、御意見によりますれば、そう適用除外を廣めることは適当でないではないかというような意見が相当強力にありましたので、その点もお含み置き願いたいと思います。
○池田(峯)委員 そういたしますと、今一人の大工さんでも二十万、三十万くらいの工事をしている人がたくさんあるわけですが、そういう人たちも登録をして、工事をやるときには、主任技術官を置かなければならないことになると、そういう人たちに相当痛手を與えることになりますね。
○中田政府委員 これはおそらく二十六條に、主任技術者の設置という、いわばぎようぎようしい文字が書いてありますので、そういうお感じをお受けになつたと思いますが、これは二十六條をごらんいただけばおわかりの通り、(第五條各号の一に該当する者)と書いておりますので、登録した方が第五條の、実歴十年、それから中等学校程度なら五年とか、そういう登録要件にパスした人ならば、特にそれ以上の主任技術者を要求するわけじやございませんので、そういう小さい業者に非常な痛手をこうむらせる結果には、二十六條ではならぬかと存じます。
○池田(峯)委員 それじやそれでよろしゆうございます。次に合意契約の問題ですが、片務契約でなくして、正当な両者の立場を認めた上の契約制度にしたというふうにうたわれておりますけれども、やはりこういう場合に、大きな資本の持主と、小資本の持主とでは、小資本の方がかなわなくなるという事実はお認めになるでしよう。
○中田政府委員 業界は大小いろいろございまして、またいろいろあるところに妙味もあろうかと思います。発注する仕事も大小いろいろございまして、やはり分相應な仕事をお互いに競争してやるところに業界の刷新もあるし、また注文者の意図も、それによつてかなえられるわけでございますので、單なる大資本とか、あるいは零細資本とかいうことだけで圧迫を受けるというわけには参らぬのではないか。その点につきましては、やはり注文者においても、この工事ならばこの程度の業者を選んだ方がいい。あるいはこの程度の小さい工事ならば、かつこうな業者にお願いすることがよかろうという、自由な範疇もございますので、從つて大業者がことごとく工事をとつて、小業者がほとんど存在する余地がないというようにはならぬのではないか。私あたりの考えといたしましては、やはり大なりに、小なりに健全な誠実な工事をおやりになる、そういう信用のある業者こそ、ほんとうに將來伸びて行き、またこれを保護すべきである。そういうことがうるわしい状態であろうと思いますので、いちがいに御指摘のようにはならぬではないかと考えております。
○池田(峯)委員 そういうかぎを握るのが、建設業審議会というのだろうと思いますが、この審議会の内容は政令で定めることになつておる。これについては、先ほど村瀬委員の方からも質問がありましたが、この審議会の中で一つ疑問に思うことは、需要者を入れることになつておりますが、この需要者の中へは外國人は入れないということになつておりますか。その点はつきりした御答弁を願いたいと思うのです。
○中田政府委員 うかつでございまして、外國の需要者を入れるか入れないかということは考えておりませんでした。しかし法律の建前からいたしますれば、ある建築あるいは土木の事業主、いわゆる発注者がだれであろうと需要者には間違いないわけでございます。從つて外國の需要者がどんどん参りましてそれを代表者に入れるというようなことは、おそらく実際問題としてはないと思いますが、法律の條文の文字から申しますれば、需要者であれば國籍のいかんを問わぬ、こうお答えする以外にはないと思いますけれども、おそらくそういう事態は現実にはないと考えます。
○池田(峯)委員 現実にはないとお答えになりますけれども、今日本の公共事業費は非常に僅少なものです。御承知のように、官廳営繕の工事は非常に少いものです。今の政府は外資導入をやろうとしておる。そういたしますと、外國の商社が日本にどんどん建築されるというようなことになれば、日本人の需要者よりも外國人の需要者の方が比率において多くなることは、今の政府の建前から行くと考えられる。そうすると、何と言つても外國人の需要者の方が多いから、審議会に外國人が入つて來ることになる。すると日本の國の法律によつて定められておる建設業審議会に、外國の意見が反映されることになるのでありますから、やはりこの審議会には外國人を入れないという建前をはつきり入れておく必要があると思いますが、その点はいかがでございますか。
○中田政府委員 一つの理論から申しますれば、御説のような解釈も成立ち得ると考えます。しかしながら日本の建設工事が少くなつて、外國資本による外国の直営的な工事が多くなり、そういうものの代表者を入れなければならぬような事態が起ることは、われわれも望まぬわけでございまして、やせても枯れても日本も公共事業その他相当な事業があるわけです。また民間の事業につきましても、日本國民が切磋琢磨して、蓄積資本によつて日本を再建するわけでございます。もとより外國資本を導入して、日本の再建に役立たせることも必要でございましよう。しかしながら建設工事の需要者に外國資本が大多数を占めて、その代表者を入れるというようなことは、私は万なかろうと考えます。
○池田(峯)委員 あなた自身なかろうというふうに保証されても、総理大臣がどういう政策を実行するか、日本の國務大臣がどういう考えを持つておるか、それはあなた自身には保証できないことだと思うのです。いくらあなた一人で頑張つてみたところで、それはだめであります。私はあなたを信用しないわけではないのですけれども、日本の政治全体を今の動向から見て、どうしても外國資本が入つて來るということが見通しできる。そうなつた場合に、建設業審議会に外國人を入れなければならないことになるのでははないかということが予想されるのです。もしこれが杞憂ならばけつこうな話なのですけれども、そうでないこともあり得るのであります。そういう点ではつきりした政府の態度が保証されませんと、安心ができない。あなた一人がそういうことがないと思うだけでは信用ができないのでありますが、その点いかがでありましよう。明瞭な文を入れておいていただきたいと思います。
○内海政府委員 ただいまの御質問でありますが、外國人を審議会の委員の中に入れるということは全然考えておりません。対象となるものが日本の領土内における日本人という考えをもつて立案したのでありますから、日本の領土内におけるこういつた建設事業等に対しましては、日本人によつて構成する審議会でなければならぬという考えを持つております。
○池田(峯)委員 次にこの間参考人が参りましたときにも、同様の質問をしたのでありますが、日本の建設業者に不正が多くて、そのために國民が非常な損害をこうむる場合がある。そういうことをなくするために、今度建設業法が出されたのであるということは、提案理由の説明の中にも書いてあるのであります。しかし日本の建設業者に不正が多いということは、必ずしも監督が不十分であつたとか、業者に悪い者がいるとかいうことではなくて、もつと別な原因があるのではないかと思うのです。たとえば土建献金事件というのがありましたけれども、あの土建献金は、やはり政府と土建業者が結びついていないと仕事ももらえないし、もうけにもあずかれないというわけで、日本の政治は昔から土木建築業者と深い結びつきがあつたのです。これはほかの業者もそうでありますけれども、特に土建業者においては、政治あるいは官僚機構と密接な結びつきがあつたのです。ですからこういうところにメスを入れませんと、今度の法律だけでは土木建築業者の不正をなくすることはできないと思います。登録ということをいたしますと、これはこの前瀬戸山委員も指摘されておるところでありますけれども、登録した業者は非常に優秀な業者だということになる。ところが登録の條件というものは、この條文にうたわれておる通りで、その登録の要綱にあてはまつた業者が、必ずしも誠実な業者であるとは限らない。にもかかわらず、登録された業者は正しい業者だということになつていれば、ペテンにひつかかる率はかえつて多くなる。こういうわけで、不正な建設業者を排除する意図は、今度の業法ではちよつと達せられないのではないかと思います。日本の建築業者が不正をやらぬでも、その業態をどんどん改善して、公共の福祉に寄與できるような政策、法律を考えなければならぬのじやないかと思いますが、そういう点について、現在政府で何か考えているところがありましたならば、説明していただきたいと思うのであります。
○内海政府委員 ただいま池田委員より、何か建設業と、あるいは政府当局といつたようなものの間に、しばしば疑獄事件のようなものが発生しておるがために、今度の法案の提出を契機として、何かこれを防止することについて考えておらぬか。こういうような御質問のように思うのでありますが、日本の現段階におきましては、まずもつてこの建設業法案程度をもつて進めておきまして、そうして現在展開されておるいわゆる日本の経済なり、産業の再建なり、あるいは公共事業の完遂を期して行きたいというのであります。今言うところの疑獄事件というようなものは、國民全体のいわゆる道義心にまつべきものであつて、一つの建設省独自の見解をもつてこれを防止するということは、なかなか容易なことでないと考えております。現段階におきましては、この建設業法をもつてやるというよりほかに、お答えする道はないのであります。
○池田(峯)委員 ところが、そういう日本の官僚機構そのものが、非常な欠点を持つておる。少くともそういう実例は、これは幾多あげることができる。そういう官僚機構であり、そういう政治機構なんでありますが、そういう官僚機構が、業者のところに行つて何だかんだ監督をやつても、その監督なるものは、はなはだ不完全なものになりやすいと私は考える。安本に経済調査の機構がありますけれども、しかしあの安本の機構が一体今まで何をやつたか。実際特筆すべきものは何にもない。ですから、日本の官僚機構が業者に立入つていろいろな調査をやつたり、いろいろの檢査をやつても、その実績というものは相当疑わしいものがある。むしろそれによつて官僚機構を強大にし、業者がその官僚機構に屈服して、そうして贈收賄のようなことをやるような危険性が、そこから出て來ると私は考えるのでありますが、そうしてまたそのことは、民主自由党の官僚政治を打倒するという政策と、むしろ反するようなことになるのではないか。そういう点をお伺いしたいと思うのであります。
○内海政府委員 官僚機構を打倒するとか、あるいはそういう弊害を芟除するために、官僚機構を根底から破壊するのだというような考えは持つておりません。官僚といえども、やはり日本の国民であります。現在のこの行政組織におきましても、御承知のごとく皆さんの中から選ばれて、あるいは國務大臣となり、あるいは近く発足するところの参政官の制度のごとき、さらにまた政務次官制度のごときは、まさに現在まで存続したる、いわゆる官僚独善の根本の思想を打ちこわさんとしつつ進んでおるのであります。この際、池田委員の御説のごとく、官僚を打倒するというような考えは毛頭持つておりません。
○池田(峯)委員 次官にお伺いいたします。そうすると、官僚機構をむしろ強化するような、業者に対してそういう監督権というようなものを今度新たに設定するというようなことが、むしろ業者と官僚との贈收賄と言つたような、そういう不正事件を発生させる原因になるという私の質問に対しては、いかがでございますか。
○内海政府委員 それがために、今日こういう常任委員制度などというものがありまして、あなた方の欲するところ、あなた方の考えるところは、この委員会において堂々と御質問もできることになつておるのでありまして、これが民主政治と言わずして何をか言わん、こう考えるのであります。
○池田(峯)委員 その点なんです。ところが、われわれ立法府の議員は、あなた方の行動に対して、むしろ今のところあなたたちが主で、議員が從というような関係に置かれておる。一例を申し上げますと、たとえばどこの河川にどれだけの金をやるのか、どこの府縣にどれだけの金をやるのかということについて、私は大臣に口をすつぱくして質問しておるのであります。これは災害特別委員会でも私は質問した。ところが大臣は、頑として口を開かない。結局最後に何を言うかというと、私どもは行政権を持つておるのでありまして、あなた方にお答えする必要はない、ここまで極言しておるのであります。そうなりますと、あなた方、つまり政府の行政機関のやり方に対して、実際から言うと、立法府の議員は、監督権というか、そういうものは実は持つていない。河川に対しても、あるいは府縣に対する國庫補助金のようなものが、どういうふうに使用されておるか。そこにボスの介在とか、あるいは運動の強弱によつて、それの多い少いがきめられておりはしないかというようなことについて、私どもは知つて、そうして正しい政治をやつて行きたいと思うのだけれども、大臣はこれは話さないのであります。こういつたように、われわれが官僚機構に対して、少くとも建設省に対して、本委員会が監督をやるとかいうようなことは、なかなかできない。これはむしろ大臣、次官初め、もつと常任委員会というものを重要視してくれなければだめだという結論になると思うのです。 そこでもう一つ質問したいのですが、建設工事本部に、これは特殊資材だそうですが一時價六十億円に上る建設資材があるそうであります。これが今後どういうふうに処分されるか。今後建設業審議会というようなものができまして、この審議会に集まつた業者などによつて、不正に配分されるようなことがあつてはたいへんなんでありまして、この六十億円の資材というようなものが、どういうふうに配分されるものであるか。これは明瞭に知つておきたいと思うのであります。これは建設業法とは直接関係はないかもしれませんけれども、しかし建設業法の運営という点において、やはり参考までに聞いて置きたい問題でありますから、お答え願いたいと思います。
○中田政府委員 建本は、今度の建設省の機構改革によりまして、完全になくなつて、ほんとうの意味におきまして、各部門に吸収されて建設能力を発揮していただくことになるわけでありますが、建本は、御承知の通り、昨年の七月以前は運輸省に運建と称して、海軍の施設本部の方々、及びその施設局に保有しておつた復興資材を、一括保管轉換いたしまして、もちろん保管轄換と申しましても、有料でございますが、そうして運輸省の復興に当つたわけであります。そこで去年の七月、これを建設省誕生とともに引継いだわけでありまして、爾來建本となつて、いろいろな営繕その他の日本の国土再建に役立つて参つておるわけであります。從いまして資材の主要なものは、大体において私の承知しておる限りにおいては、ほとんどストックが少くなつておるように存じております。ただいろいろな雑品その他こざこざしたものは、まだ整理未済のものがありまして、これにつきましては十分整理して、ほんとうに有用な公共事業等に、材料のないときでありますので、これを活用しようというのがみそでございまして、これを一部の業界に流すとか、また建設審議会でうまくわけ合いをするのではないかというような御懸念は、毛頭ございません。それから六十億とかいうお話をただいま承りましたが、私寡聞にしてそういう厖大なものがあるということは開いておりません。またよく調べましてお答えしてもよろしゆうございますが、とてもそんな資材のあろうはずもございませんし、ないと存じます。
○淺利委員長 ちよつと皆さんに申し上げますが、会期も切迫しておりますから、なるべく法案の実体に触れた御質問を先にして、時間がありましたら廣汎な質問をなさるという方針で御質問願いたいと思います。
○池田(峯)委員 しかし法案がどういうふうに運営されるかというところが実は問題なんです。今までの政府の法案を見ていましても、法文はなかなかいいのです。労働組合法だつて民主的なものがうたわれている。ところがそれが運営される段となると、これが労働者を圧迫し、正当な権利を侵害するようなことになる。ですからこれがどういうふうに運営されるかということが、私たち一番心配するところなのでありますから、はなはだ恐れ入りますけれども、問題が多面的になつて來るのでありますが、もうしばらくお願いしたいと思います。 もう一つ最後に御質問いたします。建設業を維持育成するというのでありますけれども、何といつても現在建設業者が一番困つている問題は、仕事がなくなつたということであります。御承知のように終戰処理費による工事も減少しておりますし、公共事業費も五百億円、地方財政も破綻しておる。群馬縣などでも、去年の災害復旧のために莫大な借金を背負い込んで、非常に困つておるというような話を聞いておりますし、それからいわゆるやみ建築というようなことでありますが、これも非常に減小しております。共産党の言ういわゆる人民大衆の窮乏というようなもの、あるいは経営不振というようなものによりまして、民間の建設工事というものも著しい減小が見られておる。ですから土建業者というものも、以前のような繁栄を期すことはできない状態に追い込まれているのであります。こういうときにこの建設業法が出されるということを私たちが考えてみますると、これは結局ほかの事業会社などになされておりますような、政府の一種の集中生産方式、大業者だけに仕事を集中して、そうして中小業者に対しては、むしろこれをこうした需給関係から除外してしまうというような、そういう政策の現われであるというふうに、やはり考えられるのであります。そうでないとするならば、やはり根本的には今の工事の量をどんどんふやして行く。ことに当面日本において喫緊の要務とされておる公共事業、河川、住宅、こういうものに対して、政府がどんどん工事を進めて行くような方式を進めないと、実質的に、私が今言つたような集中生産になるおそれが十分あると思う。政府の注文量が非常に小くなつて業者が多過ぎる。そうすれば結局自由競争で、大業者がそういう事業を独占してしまうということは、これははつきりしていることと思う。ですから、そういうことをなくするためには、やはり公共事業を大々的にやつて行くことでなければならぬと思う。しかもこの公共事業をやれという日本全國の国民からの要望が、これは請願書などにも現われている通り、実に今議会にきびすを接して出ておるという実情なんであります。でありますからして、まず政府の御決意のほどを承つておきたいのですが、一体公共事業をどんどんやる意思があるものかないものか。大藏大臣は、外國から一千七百億円ですか、それが來ればその援助資金を公共事業の方にもまわすというようなことを言つたということをあるいは安本でありますか、どちらかの人が言つたというようなことを聞いておりますが、また一面ではそういうことはちよつと考えられないというような情報も聞いている次第であります。一体政府でそういう公共事業を、今度開かれる臨時國会に補正予算を上程して、そうして現在五百億というような非常に少い公共事業費を、もつとふやす意思があるかどうか、そうすれば業者が非常に安心すると思う。今度の建設業法が出ても、業者は大資本に食われてしまうというような心配がなくて、そういう国家の工事に均霑することがあるというようなことを考えると思うのでありますが、現在の公共事業費では、とうてい自分たちはそのわけ前にあずかれない、こういう心配があると思う。ですからそういう点で政府の御決意のほどを承つておきたい。もつともここには大臣もいないし、大藏大臣も安永長官もいない。実は大藏大臣、安本長官にも聞きたいところですけれども、ひとつ次官でもけつこうですから——そう言いますとたいへん失礼になりますが、御決意のほどを承つておきたいと思います。
○内海政府委員 まことにどうも池田さんからは、御鞭撻やらいろいろな苦言やら、ありがたいお話でございます。二十四年度の当初予算におきましても、公共事業費としては一千億以上の要求をしたのであります。そういう積極性を持つた考えは、建設省としてはあくまで堅持したいのでありますけれども、現在の日本の財政の状態から、遂に五百億程度になつたのであります。來るべき臨時議会に対して、なお積極的に要求する考えがあるかどうかという問題でありますれども、これはもちろん建設省の立場としては、毎日のように請願なり陳情なりが、まつたく日本全國から殺到しておるような現状なのであります。でき得ることならば皆さんの御協力によつて、当初の一千億なりあるいは一千五百億の予算を組みたい、そうして要求したいという考えは持つております。どうぞこの上とも共産党の方からも御協力を得まして、この予算が通るように、御協力を願いたいと考えております。
○池田(峯)委員 それはたいへんありがたい御意見ですけれども、しかし実現性のないものじやしようがないのです。絵に描いたもちではしようがないのですから、はたしてそれがいわゆる九原則によつて、ドツジ・ラインなるものによつて可能なるものであるかどうかというような責任のある御回答を得たい。私は実際そういうことはできないのではないかと実は思つているのですが、できないとすれば、今度の建設業法というものは必然的に大業者を潤し、小業者に対してはこれを排除するというような方向に行かざるを得ないものであると、こう考える次第でありますが、この点九原則との関係をひとつ御説明をくださいまして、私の質問をこれで終ります。
○内海政府委員 御指摘の通り十分努力したいと考えております。これ以上御答弁申し上げることは遺憾ながらできないのであります。
○淺利委員長 ほかに御質問はありませんか。
○天野(久)委員 村瀬君及び池田君から、各條にわたつて詳細なる御質問がありましたので、大体了承いたしましたが、一、二お尋ねいたしておきます。 この建設業法をこしらえる根本の骨子は、私は建築、業者の不正を除去いたし、そうしてとうとい國費をもつてつくるその建設物が健全にでき得る、こういうことが目的ではないかと思つております。そこで率直にお尋ねいたしたいのは、この二十二條の一括した請負の禁止ということであります。「建設業者は、その請け負つた建設工事を、如何なる方法をもつてするを問わず、一括して他の一の建設業者に請け負わせてはならない。」こういうことになつておりますが、一括は悪いが個々にわけて渡すときならよいかどうか、この点についてひとつお聞きしたい。
○中田政府委員 二十二條の一括請負の禁止と申しますのは、一括して他の同一のある一人の業者に請負わせるということは、いわゆるトンネルになるわけでございまして、非常に弊害がございますので、これはいけないという意味でございます。從いまして今御指摘のように、ことに総合業者としてはほとんど常識というべきものでございますが、一括ではなくして分割してそれぞれの專門の部分を一部下請に出すことは、さしつかえないことになつております。
○天野(久)委員 そうするとつまり分割して渡す場合には、全部渡してしまつてもさしつかえない、こういうことになりますか。
○中田政府委員 その通りです。
○天野(久)委員 そういたしますと、ここに下請けの禁止をいたしましても、それは事実上効力のないことになりはしないか。いわゆる一つ請負つて、そしてそれを分割して二人か三人に渡せば、それで法を免れるということになれば、下請を禁止した効果がなくなりはしないか。これに対して何かいま少し、かりに下請は一部分を渡さなければならぬ、こういうことがあつても、請負人の主たる業務は、請負業者がやらなければならぬ、何かここになければ、今現在においても、請負業者の一番社会から指彈されておるところは、つまり名義をもつて請負つて、それを一割なり二割はねて下請に渡す。またその下請が下請に渡すというようなことをして、請負工事金の大体三割、四割はそこですつ飛んでしまう。從つて安い請負であるから工事が粗雑になるということで、社会から指彈を受けておる。これを主たる部分は元請負業者自身が施行するよう規定いたしておかないと、つまり裏をかかれる結果が出やしないかと思います。その点いかがでしようか。
○中田政府委員 たしかにごもつともな一つの御意見だと思います。ただ二十二條でねらいましたのは、天野委員の御説の点に比べますれば、少し生ぬるい点はあろうかと思います。しかしなかなかこれは実際の仕事になりますと、分割請負すらいけない、つまり骨格だけは必ず自分で組んで直営しなければならぬということにいたしましても、総合業者などの例をとつて見ますと、これは必ずしも妥当しない場合がございまして、今一番現実的に、まるまるトンネルに出して涼しい顔をしておるという強い弊害だけを除去しよう。それ以外につきましては、この法律ではあまり制限しない。但しその次の條文にもございます通り、元請人が部分的に下請に出したところが下請に出したその下請人が非常にだらしのない仕事をやるとか、どうも不徳義なことがある、これは注文者としてはまことに迷惑千万であるという場合には、これはひとつ適当でないから下請をかえてくれという請求権を認めるということでその点をカバーする。まず第一着手としては、この程度のことはいいではないかという意味でやりましたので、御説の点はごもつともの点はございますが、しかしまずこの法律としては、この程度から始めてみたらどうか、こういう趣旨で立案いたした次第でございます。
○天野(久)委員 大分思いやりの深い御説明でありますが、私はこの法案をこしらえて、ほんとうの根本精神としてこれはどうしても少し直して、ほんとうの主たる部分は請負業者がやる。こういうことでなければ、どうもせつかくこしらえた効果がないように受けとれます。どうかひとつその点御考慮願いたいと思います。 次にお尋ねしたいのは、現在地方におきましてもいろいろありますが小さな請負業者で非常に堅実な仕事をする、かりに村なら村の中の仕事を請負つてやる、こういう者に非常な堅実ないい請負業者がある。しかしこの請負業者がこの資格に当てはまらないとうことで、請負をやめてしまわなければならない。こういうことが相当生じはしないかと考えますが、この点について、この小さな業者を生かして、小さな工事に堅実な仕事をさせる。こういうような部面にお考えがないかどうか。それは私の村などでも現実にあります。大きな請負業者が堤防を請負つてこしらえた。それから村の小さい業者が請負つて堤防をこしらえた。それがはからずも同じ河川に同じような形であるが、しかしその村の小さい請負業者のこしらえた堤防は、こしらえるときに、この堤防は決して流れませんと請負業者は豪語してこしらえましたが、それが昨年の水害、一昨年の水害ともにしつかりと水から守つておつた、その下にある大きい業者が下請に出してこしらえた堤防は、二度とももろくも流れて人家を四、五軒流した、こういう実例がありますが、こうした例は日本の各所に散在しておると思いますが、これに対してこの小さな請負業者も生かしておく何か道を考えて、これを有効に使つて行くことこそ、日本の建設業あるいは土木請負業がしつかりと行くことではないか、こんなふうに考えますが、その点について何か……。
○中田政府委員 堅実な業者でございますれば、その小さい大きいということはあえて問うものではございませんし、企業単位の大中小というようなことは問題でなくして、個々の企業單位が大なれば大なりに、小なれば小なりに、堅実であるということこそわれわれの最も望むところであり、また世間一般もそれを望んでおるところであります。そこでこの第五條の登録條件で、そういう小さい方がこの條件に当てはまらぬために、残念ながら選に入らぬじやないかという御懸念じやないかと思います。しかしこの條件も最少限度の條件と考えて立案いたしたわけでございまして、学校卒業と申しましても、中等学校を出ましたのは五年間、それから専門学校以上を出た者は三年間実際に仕事をやつた經驗のある方——何も学歴を論じてはおりませんので、学歴はなくも十年間やつた方ならば、この資格がある、こういうように見たらいいだろう、こういう意味でこの程度のことは、御本人あるいはその方が信頼してお使いになつておる使用人のうちに該当者があれば、それでよろしい、そういう趣意の最少限度の條件でありますので、大体において天野委員のお話になつたような問題が、あえなく漏れてしまうというような方は、万あるまいと存じます。今日午前に参議院の方の証人の意見を拜聽したのでございますが、その中にも、十年くらいは実務の経驗がなければならぬ、むしろこの法律にも学校を出て三年、五年では経驗が少な過ぎる、少くとも人さまのものを預つて仕事をやつて行く上においては、十年くらいは必要じやないかというような御意見すらあつたわけでございますが、そういう意味で、業者して御本人あるいはそのお使いになる方の一人くらいは、ぜひともこの程度の経験をお持ちになつた方が望ましい、こういう意味でございますので、おそらく御指摘のような場合も、この條文のために落ちるということは万あるまい、こう考えております。
○天野(久)委員 それからもう一つ、これは條文ではありませんが、お尋ねいたしておきたいと思います。これは多く土木請負業に関係がありまするが、今までかりに各河川に町村を守るべく堤防をこしらえる、その場合に官の監督者と請負業者とが仕事をしてしまう。ほんとうの利害関係のある町村民は、これに関せずえんの形で、またこれにくちばしを入れることもできない形になつておりまするが、私はこれがほんとうの利害関係民が、何かの形でこれを正規な監督ができる條文を入れて置いたら、今後において非常に有効ではないかと考えまするが、この点のお考えはいかがでしよう。
○中田政府委員 たしかに私もその点は何かもの足らないと言いますか、何かが不十分な点があるのではないかと思います者の一人でございます。ことに一朝洪水のときには、財産、生命なり耕地なりを氾濫壊滅させるというような、地元の重大な利害関係ということを考えますと、たとい河川法で縣知事が管理しておる川とはいいながら、縣廳の役人の監督だけにまかせて、地元の方で歯がゆいような感じを受けても、発言権がないという点は、何かこれを是正する道がないものか、こういう点については、私も天野委員と同感でございます。そこでこれは私思うに、今の日本の河川法というものについて、根本的な再検討を要するのではないか——これは私個人の考えでございますから、役所の意見とお聞取り願うことははなはだ恐縮いたしますが、かりにその川の流域の関係者によつて、たとえば管理委員会とかあるいは管理者とか、その川をほんとうに守つて行くというようなものができて、そこの判断により、またそこの設計によつて工事が進められ、あるいは維持ができ、補修ができるというようなことに、日本の河川法をしないと、ただ縣廳の役人だけにまかせたのでは、どうも地元としては不満足であるというような感じがいたしますので、これはいずれ、道路にしましてもあるいは河川にしましても、山腹から河口までの間の流域の関係住民が、その大事な川に非常な愛護の精神と責任とを感ずるような、河川法の仕組みを今後考えなければならぬじやないか。こういうことを私は日ごろから考えておる一人でございます。今の御趣意の点は、この建設業法ではちよつとまかないきれぬかもしれませんから、いずれ河川法なり、道路法なりの基本の法規を再檢討いたしまして、十分御意見のあるところを取入れて、また國会に御審議を願うように努力してみたいと思います。
○天野(久)委員 たいへん御理解ある御回答を願つて喜んでおります。河川法によつてこれを補おうというお話でありまするが、実際この問題は大きな問題であつて、今現実に利害関係人がこれから離れておる。かりに自分が建築物を請負わせるならば、その使用する人が必ず世話をする。けれども國の河川の提防においては、利害関係人が別に離れておるということは、一つの不思議なような存在でありますので、どうか河川法なりあるいは何かの法案をつくるときにおいて、その河川の関係者、あるいは團体というようなものが、その工事に対しては監督権を持つようにお願いがいたしたいと思います。 それからいま一つ、これはお聞きしないでもいいと思いますが、参考にお聞きして置きます。同じ工事をするのにも、請負雇用でなく日雇いで雇つた場合には、この法案に何ら関係ないと承知いたしておいていいと思いますが、その点はどうでしようか。
○中田政府委員 日雇いの場合には全然これには関係ございません。ただ日雇いという名によつて脱法しようという意図が明瞭な場合はいけませんが、ほんとうに日雇いでやる場合には、この法案上は全然関係ございません。 それから前段の問題でございますが、三十條にこういう規定を設けてございます。「建設業者に第二十八條第一項各号に該当する事実があるときは、その利害関係人は、当該建設業者が登録を受けた建設大臣又は都道府縣知事に対し、その事実を申告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。」つまり工事をやつているのに不正がありそうだ、どうもこいつはだまつておれぬという場合には、その利害関係人は監督廳に事実の申告をして、適当にあれを処置してくれということが求められるということを書いております。これはなるべく不正の事実がないようにという意味の、一種の予防的方策でございますが、ただ河川をやる場合に、その河川の沿岸の地元住民がその利害関係人に当るかどうかは、ちよつとむりなようでございます。
○天野(久)委員 私の質問はこれで終ります。
○淺利委員長 松井君。
○松井(豊)委員 他の委員諸君から、本案に対しては具体的質疑應答がございまして、私の申し上げることはごく少いのでありますが、二、三の問題を簡單にお伺いしたいと思うのであります。 まず最初に本案が通つた場合には、一應希望請負人の選定にあたつては、まず登録名簿の閲覧ということが最初に起ることと信じておりますが、これらの登録所は各府縣——それは人口にもよるでしようが、一体何箇所くらい閲覧所を設ける予定でございますか。その点に一つお伺いいたします。
○中田政府委員 閲覧所を設けるということにいたしておりますが、御承知の通り建設大臣登録は建設省に閲覧所が設けてあります。府縣知事の登録につきましては、府縣廳に閲覧所がおそらくできるだろうと思いますが、あるいは適当な建物がありますれば、それを利用して、なるべく公衆の便になるようにいたしたいと思います。ただ大きな府縣でありますと、一箇所で間に合うかということになりますが、これはなかなか一箇所では不便ではないかということになるかもしれません。しかしながら今のところ一應閲覧所は縣廳あるいは建設省に設けるというつもりでございます。但し、これを実施いたしました結果、それではどうも注文者のサービスをするために不便で、あるというような実情がございますれば、これらの副本をとつて台帳を備えることは、それほど技術的にはむずかしいことではございませんので、適当にこれを拡張して、あるいは地方事務所とか、あるいは各区に一つとか、あるいは主要の都市にもつて行くというようなことも、また今後考えて遺憾のないようにいたしたいと思つております。
○松井(豊)委員 大分簡單にできるような御意見でございますが、私たちの研究するところによると、そう簡單には行くまいと信じておりますが、一体建設省と各府縣に、一箇所ということになりますと、縣によつてはとまりがけでこの閲覧所を一應閲覧する必要がある。場所によつては一泊では帰れないような所もあると思うのでございます。そこでそのとき必要に應じてということを入れて、大体人口によりますが、少くとも何箇所置くという程度のことは必要ではなかろうかと信じております。また一箇所の閲覧所の費用がどの程度でできますか、その点をお伺いいたします。
○中田政府委員 これは閲覧所と申しましても、大体においては登録台帳になります。この登録台帳の作成方法につきましては、なるべく業者の方の不便にならぬように、それぞれ出された書類が統一あるようにという意味で、印刷に一つの様式をこしらえまして、その様式に書き込むような形にいたしまして、それに書き込んでお出し願つたものが登録ということに決定いたしますれば、それがただちに登録台帳になるような仕組を考案いたしたいと考えております。登録所の一箇所の経費は幾らかというお尋ねでございますが、これは業者の数にもよりけりでございまして、今ここで何万円かかるということは、ちよつとお答えできません。
○松井(豊)委員 われわれはただいま申し上げたようなことを非常に心配しておるのでございますが、おそらくこの登録資格者は各縣におきましても相当数に上るのではなかろうかと思います。そこで工事を縣が入札に出す場合におきまして、それぞれ指名者を指名するにいたしましても、特定の少数の人々に指名するということでは、この法案を制定されまた議決された精神に反するので、一應ある程度まで業者に通知する必要がある。そこでこの名簿閲覧所というものは、便宜と実をあげるために郡市程度に必要ではなかろうか。これを設置するにあたりましては、費用を縣が負担するとしても、これを相当見積る必要があると思う。この法を制定される精神は、特定の人だけに入札通知を出すという。が理想ではないと信ずる。これらについて当局としてはどの程度まで御研究をなされているか、伺いたい。
○中田政府委員 登録したものを、公衆の閲覧に供しまして、注文者のサービスに資するということは非常に有益なことと思い、この意味において閲覧所はなるべく多くして、注文者に比較的簡單に見えるようにという点は、松井委員と同じ考えでございます。できるだけそうやつて行きたいと思います。お尋ねの点は、たとえば縣とか市が工事を出す場合に、登録したものにこれを全部通知するとかして、公正な入札の趣意を貫くことが必要ではないかということでございますが、日本の入札制度はできるだけフエアーにする、チヤンスを與えるという点については、ものにもよりけりでありますが、中小業者に大きな工事を請負えと言つても、事実能力の足りない場合もございます。從いまして、おのずから指名する業者を選択するという必要がございましよう。しかし業者を選択する場合、登録された台帳というものはたしかに一つの便益になると思いますが、ある工事を請負に出す場合に、全登録者に通知するというようなことは容易なことではない。松井委員も御承知の通り、一般公入札でありますれば、公告するとか、縣廳の掲示場に出すとか、市役所の掲示場に出すというような方法をとつているわけであります。またある工事が公入札に適せぬというような場合におきましては、その工事をやつていただくのに妥当するような業界の人からセレクトするということも、実際問題として適当な場合があろうかと思いますので、いちがいに競争入札という原則ではいかないこともあろうと存じます。これらについて、セレクトする方法というようなことは、法案に何らうたつてありませんが、どこまでも指名入札の公正を期して参ることは望ましいことでございます。そういう場合に、登録のリストか何かを見て、どういう業者があるというようなことを御判断願う材料にお使い願えば、ある程度閲覧所の機能が発揮できると考えている次第であります。
○松井(豊)委員 現在行つております方法は、各府、縣、市單位で申し上げますならば、大体請負人にも一流、二流、三流、四流とありますが、金額によつて特定の者を指名してやつております。この法案は、それらの特定の人でやつた今日までの実情を調査研究された上で制定しようとするのでありますから、私は平等に通知を出すことが適当ではないかと思う。これらの問題を検討しまして、平等に公開して、今まであつた汚職事件のようなことを防ぎ、合法的にやろうというのがこの法の精神ではないかと思いますが、実際施行にあたつてはなかなか重大だと思う。少くも閲覧所は市あるいは郡程度くらいは設定するとして、その費用は大体どの程度かかるかはつきり御答弁願いたい。悪業者排除とか、あるいは家屋の受渡主が非常に迷惑しているというところから、この法案が今度生れておりますけれども、今日ではこのような弊害はおそらくないと申し上げても過言でないと思う。終戰後のどさくさのときには、どうしても自分の住居がほしいというので、非常に注文者も殺到した。当時は官職にしても五分あるいは一割の保証金をとり、契約する人は國税を何円以上納める人が保証人になるというような方式でやつておつたのですけれども、縣を初め國まで何でもかんでもやるというような関係で、この契約條項は使用しなかつたのであります。もちろんこの契約條項とか、あるいは事業者の資格とか、請負人の資格、この程度のことは実際行つておりましたが、いよいよ金詰まりになり、建築主にいたしましても、今日はどの人が勉強してよいものをつくるかということを確めます。これからは、この法案を議会に提案して決議を得なくても、日常行われると思う。私たちはこの法案が施行されると、今後この弊害は非常に大きいものになるではなかろうかと思つております。三十條のこの内容についても、惡い建築主は、仕事をさしても、設計に即應して仕事をしない。たとえば石垣の石積みを二尺の裏積みにするところを一尺八寸しかしていないときに、途中で金を拂うのがいやになつて、この三十條によつて摘発して、故意にやる場合がある。こういう裏を見なければならぬ。そこで下請、あるいは一括請負人の関係といたしましても、縣といたしましても、國といたしましても、力がある人々には、一應金を立てかえてやれというので、相談的にやつております。そこでむりをして、一括して一箇所、二箇所、三箇所、こういうふうに引受けて、そうして本当に内容はトンネルであるけれども、一應信用があるから、責任を持つておる。群馬縣あたりにでも五千万、八千万、一億に近い立てかえをして、一應工事の責任を負うておる。そうして下請に分配して、すみやかに完成したという実例もございますけれども、こういうふうに、この法の裏には相当弊害があることを私どもは認めておりますが、これらの点については、当局はどういうようなお考えを持つておりますか。
○中田政府委員 三十條の規定は、もちろん注文者等の利害関係人を保護する意味で規定を設けたわけでございまして、これを濫用することを認めるわけではございません。ことに三十條は、第二十八條の第一項各号に該当する事実があるときという限定をいたしておりまして、どえらいひどいことがある、これをだれにも訴えることができないというのでは、保護ができないというので、その救済を意味する規定でございますので、これを濫用するというおそれについては、かえつて私はこの規定くらい設けて保護した方がよいのではないか、こう考えておるわけでございます。 それから、一般的な不景氣になりまして、仕事が減つて來るから、注文者の方でよい業者を十分選択するチャンスがあり得るから、この法律を施行しなくても法律を施行したと同じような結果が得られるではないかという、根本的な問題についての御質問でございましたが、しかしながらこれは、確かに一つのお考えであろうと存じますが、不景氣になりますればなるほど、業者の競争は激しくなります。その激しくなる過程において、必ずしも公正な意味の競争というばかりではない場合があり得ることは、これは競争場裡における一つの通念でございます。從いまして、景氣がよくなつて、仕事がだんだんふえる場合には、非常にまたこれも乱立して、いわゆる世に言ういかがわしいような業者も多くなることもございましようし、また景氣が悪くなつて、仕事が少くなつた場合において、仕事の取合いから來る非常なトラブルというものも考えられるわけでございまして、從つて本当の意味の個々の業者の健全な発達をはかつて、そうして仕事をうまくやつていただくというためには、この程度の法律の規定は必要ではないかと、こういう趣意でこの際立案したわけでございます。
○松井(豊)委員 先刻天野委員から御質問がありました、技術の堪能な、たとえば資格を持たない業者でありましても、それは採用されるような御答弁でございましたが、その條項によりますと、学歴、経験、その他はここに出ておりますが、ただ十年の技術者という人たちは、その十年の資格というものを、市町村がその経歴によつて認めていただけることは当然と信じておりますが、たとえば五年でも、七年でも、十年以上の技術を持つた人より以上にでき得るという人がたくさんあると思います。なおまたこの法案に示された資格を具備した技術者を雇うこともできない、またこの法案に対する資格を全部そろえてやる力がないという人もたくさんできるので、そこで今はなかなか時代もうるさいときでありまして、これらの下の方の人には盛んに反対の声がある。一昨日あたりでも、経驗者の代表者を呼んで、いろいろ聽取いたしましたけれども、いずれも代表者という人たちは、あらゆる角度から研究されておるでしようが、全國五十数万の人が業を営んでおりますが、それらの末端の方面まで一々行き届くものではございません。これらの実情に対しましては、大きな弊害があるのでございます。でありますから、この十年をあるいは五年にするか——たとえば技術者を一人かかえて、事務所を建てて、そして成規の手続をして営業ができない者がある。これに対してはもう少し適当に研究する必要があると私は信ずるのであります。でありますから、まだこの程度では國民が納得しないのではなかろうかと私は信ずるのでありますが、その点についてお伺いします。
○中田政府委員 小業者におきまして、第五條の各号が要求しておる條件を満たせない者がたくさんあるのじやないか、しかも満たせないからといつて、相当の実力を持つておる者があるのではないかという御意見でございますが、この各号の要求といたしましても、その事業の責任者であられる業主、あるいは信用してお使いになつておる使用人のうちの一人がこういう條件が必要だということにいたしたわけでございまして、この程度の技術的な経驗というものは、少くとも人さまの家なりあるいは大事な仕事を引受けていただく者としては、ぜひともこの程度のものは要求した方がいいではないか、ことに経驗十年ということを立案いたしましたのも、各事業者團体、ことに中小の事業者團体等の御援助を得まして、労務者としては別でありますが、ほんとうの業者として人を使つて請負当事者になる方々の、学歴は別として、実務の経驗はどれくらいであろうということを、お調べ願つたその結果は、大体十年ぐらいはやつておるだろう、まあ少くとも十年くらいはやつた者でなけらねば、人さまのものをお預りすることはできないだろうという、実情を調査しました結果、この経驗年数を十年と算定した次第でございます。 それから事務所等のお尋ねもございましたけれども、別にこれは特に事務所を設ける必要はないのでございまして、御自分の家でおやりになるのは、御自分の家が営業所でございますから、別に営業所を設ける必要はございません。從いまして、実際においてこの程度の條件は満たしていただけるものと考えております。しかしなおこの程度の條件のない方で、あるいはそういう特殊な天才的な方があつたという場合にどうするかとおつしやれば、それまででございますが、制度としましては、大体においてこの程度は妥当ではないだろうか、こういう趣意で立案いたした次第でございます。
○淺利委員長 ちよつと速記をとめてください。 〔速記中止〕
○淺利委員長 速記を始めて……。
○松井(豊)委員 今当局から事務所の問題は、個人の店舗でいい。私はそういう意味で申し上げたわけではないのです。この條文に備えて、たとえば技術的経験者を雇つて、そうしてその十年に満たない技能者——大工さんがあつて、御得意もたくさんあるという人人は、どうしても資格者を一人採用しなければ、法の精神から、言いまして、この登録を受けることができない。この法案をしかれると、まずこの書類をしたためるために、各市町村に特別なる代願人ができると思う。この物資の不足のときに、数十枚の紙の必要がある、手数もかかる。私はおそらく一件一万何がしかかかるのではないかと思うのです。それはなれて來れば別でありますが、なかなか今までの経驗から言いましても、非常に注文が殺到して、なかなかその書類が完全にできない。そういう関係で、おそらく大工さんの資格のない人が技術者を頼む。一箇月五千円なりあるいは八千円なり、一万円以下で食えないから、それくらいかけて頼むと思う。從つて小さい、二十万か三十万の建築を請けたと仮定いたしましても、実費というものが高くなるのではなかろうか、こういうことが心配であります。これはおそらく事実でございましよう。大工さんも、勢力のある人は、五年であろうが、七年であろうが、この法に資格がないからといつて、おそらく営業を放棄しないと思う。そうして兼務なり、あるいは正式に頼むなりのかつこうで、この法案に大体当てはまる人を頼むでしよう。たとえば嘱託にしても、一箇月五千円ぐらいとられます。そこにおいてたいていの建築主は、金のないこのときに、きわめて大損をするのではなかろうか、こういうことは私どもの調査において事実あるのであります。でありますから、これらの問題は、少くとも金額においてかりに通す場合でも、これらはこの法の除外をする程度でなければ、たいていの建築主が一層負担を増すのではなかろうか、こう思うのでありますが、これらの点についてはいかがでありますか。
○中田政府委員 経験の十年という点について、非常に重大な支障があるではないかというお話でございますが、これは先刻來申し上げます通り、御本人あるいはそのお使いになつておる方のうちで、実務の経験が十年でございますれば、別に学歴等は論ずるわけではございません。学歴の方は三年とか五年でございまして、学校を出た人ならば、十年という経歴は三年あるいは五年に、実務の経歴を短縮いたしております。それで学校を出ないで、ほんとうに実地からお上りになつたというような人は、少くとも十年くらいの御経驗を持つた方であるか、あるいはそういう方をお使いになつておるとかという程度のことは、やはり業者として土建業界にお仕事を願う最低限の線ではなかろうかと考えておるわけでございます。 それから書類の申請について、たいへんめんどうではないか、あるいは一万円くらいもかかりはせぬかという御計算でございますが、これは今日物資のないことは、重々お説の通りでございます。なるべくこのむだな紙とか学力を節約し、なければならぬことは当然でございます。今係の者の申しますのには、一つの型を示して登録をしていただくので、紙にいたしまして、半ぺらの紙が大体十枚くらいで十分済むというように目算いたしておりまして、とても一万円というような金はかからぬだろうと思いますが、御趣意の点は十分注意いたしまして、節約できるように考えたいと思います。
○松井(豊)委員 これで結論にいたしますが、こういうようなことを何回も繰返してみたところで、最後の結論に到達することができないと思つておりますから、一言申し上げて、私は質問を打切ります。要は今日までいろいろ自由経済から統制経済になつて、あらゆる営業関係の人とかが、非常に複雑多岐きわまつて迷惑しておることは事実であります。そこで、それとこれは根本が違うという御解釈かしれませんけれども、ややそれに近いものでございます。この法案をどうしても施行しなければならぬという必要性があつたかもしれませんけれども、それは終戰直後の当時で、今日では先刻も申し上げたごとく、もう注文者の人たちが選定をして、そうして金を途中で持ち逃げされるとか、あるいは途中で工事が進行を中絶するとかいうような人には、おそらく頼まないでありましようから、総合的に申し上げて、われわれは自由経済に着々進む今日こそ、ただ書類上複雑なることを避けたいということと、実際実情にあたつて、これが必要であるだろうが、この法案そのままでは私たちはいかぬ。相当大幅修正せねば賛成はできない。
○大西(弘)委員 ただ一点お尋ねしたいと思います。この法案をもし施行するにあたりまして、関係法規とのにらみ合いはきちつとできておるのであるか、ないか、その点をまず一点先にお伺いしたいと思います。
○中田政府委員 この法案と関係法規との関係につきましては、若干の研究はいたしておりますが、あるいは神ならぬ身のそういうことがなきにしもあらずと思いますが、大体においては、この法案を実施いたしましても、他の法律と直接に衝突するようなところはなかろうかと思います。
○大西(弘)委員 それではお尋ねいたしますが、二十二條に部分的なれば、下請を認めるということになつておるのですが、職業安定法によつて、下請の制度は許されないことになつておる。すでに下請をした者は検察廳にたくさんの起訴を受けておる現状であります。これとにらみ合して、この法案を施行するにあたつて、どうなるか、こういう問題であります。
○中田政府委員 職業安定法の関係が、たしかにいろいろむずかしい問題を惹起していることは、大西委員の御指摘の通りでありますが、これは大西委員よく御存じの通り、つまり下請に流されぬという條件につきましては、全面的に下請がいけないというのではございませんで、たとえば機械力を使わぬとか、まつたく労力の提供だけの下請はいけないというような、いろいろむずかしい條件が書いてあるわけでありまして、下請が全然いけないという意味ではないように私は解釈いたしております。これは間違いないと思います。
○大西(弘)委員 その労務の供給という下請がいけないというのが問題です。そこでこの法案を施行するにあたつて、下請はかまわないということは、労務の供給の下請もかまわないととれるのではないかと思う。そういうことになりますと、業者の今後行くべき道に迷いを生ずるというような結論になつて來るのではないかと思うが、その点……。
○中田政府委員 二十二條の一括下請をしてはならないという意味は、いわゆるトンネル式に一括して、ある一つの下請業者にごそつと流すということをしてはならないという規定でありまして、その反面の解釈から、それでは分割してやるならできるではないか、こういう法律上の反面解釈は可能になりましよう。しかしながら他の法律の解釈上いろいろな條件が要請される場合においては、その條件を満さなければ他の法律の違反になるということは、これは法律の解釈として当然あることだと思うのであります。從いまして、この二十二條がそういう誤解を生ずるおそれはないかという点につきましては、万一そういう誤解があるとすれば、これはまつたくの誤解でありますので、これらは十分徹底させて行きたいと存じております。
○大西(弘)委員 こういうふうに質問をし説明を受けて見るとよくわかるのですが、二十二條については、先ほど天野委員の御質問に対してもさように答えられておるのでありますが、二十三條においても下請を取消すというような條文が入つていることから思い合せて、この点は法的に、おそらくこれは、弁護士さんのような本職の人でも疑義を生じて來るような事柄じやないかと思うのであります。そこで一般の法的に素養のない土建界の連中は、いろいろその誤解を生じて、そういう犯罪に問われるようなことがもしありとするならば、これはたいへん迷惑するわけだから、この條文によつてここにはつきり示すか、この條文によつて示さなくとも、その関係筋に向つて、ここを間違えないようにという指導、通達をしてやることが望ましい、こう私は思つておるのでありますが、そういうことをやつてもらえるかどうか。
○中田政府委員 大西委員のお尋ねの点はごもつともでございまして、そういう誤解を生じ得るようなおそれのあることにつきましては、最善を盡すしまして、ことに労働省等の職業安定当局と相連携をとりまして、そういう誤解の生じないように、最善を盡したいと思います。ことに労務供給に問われるという点につきましては、私の方としては、建設業の力の担当の役所としまして、相当労働省とかけあいまして、あの程度までになつたわけであります。しかしまた根本的にわれわれとしては意見があるわけでありまして、まだ折衝途上にございます。従いましてこの條文との関連等におきまして、もし万が一そういう誤解をされる業者の方があるというような御意見でございますれば、この点は十分示達いたしまして、間違いないようにやつて行きたい。また一方の職業安定関係の條文につきましては、今後とも最善を盡したいと考えます。
○淺利委員長 これにて通告されました質問は全部終了いたしました。 お諮りいたします、本案に関する質疑はこの程度に打切りたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○淺利委員長 御異議なしと認めます。それではこれにて質疑を打切ります。
○淺利委員長 次に屋外廣告物法案を議題といたします。 この際法制局長より、本案に関して発言を求められております。これを許します。法制局長官入江俊郎君。
○入江法制局長 ただいま当委員会にて御審議中の、屋外廣告物法案につきまして、最近関係方面から私に対して、こういう点を修正することについて考えて見てはどうかという一つの参考意見の提示がありまして、これを委員会の方へしかるべく傳えてもらいたいということでありました。もつともこれは関係方面としても、あくまで参考意見であつて、これをとるとらないは自由に委員会でおきめを願いたい、そういう趣旨でありますから、その趣旨においてお傳えする次第であります。 大体この法律を通じて、國民の権利を制限する規定があるわけでありますけれども、それについては、でき得る限りその立場を尊重し、かつまたでき得る限り廣く一般の意見を、公聽会等を開いて聞いた上でするようにしたいものである、こういうのが根本になつておりまして、各條項について、ひとつそういう線に沿うて考えてみたらどうかということであります。それで三條、四條あるいは五條等につきましても、何かそういうふうな道があるかどうか。特に七條につきましては、これは府縣知事が廣告物の設置について、直接国民に制限をするわけでありますので、この七條の規定を働かせる場合等においては、相手方に対して抜打的にやらないで、あらかじめその趣旨をよく知らせておいて、また不服があるならば、それを公聽会等で十分意見を述べる機会を與えたらどうか、こういうことを言つておりました。この七條の点につきましては、私もその点はしごくけつこうと思うということを、私の個人の意見としては言いましたけれども、前の方の三條、四條等の規定につきましては、大体條例で定めることになつておりまして、條例というのは、府縣会でこれを定め、かつその場合に地方自治法で公聽会を開く道もあるように思いますので、それにそういう複雑な規定をきめることが立法技術上いいかどうかということは問題だと考えますけれども、前の方の規定でも、もう少し法律でこまかく書くことができるならばさらにいいのじやないか、かように考えるのであります。 それだけをお傳えいたしまして、当委員会の御審議の際の御参考に供したいと思う次第であります。
○淺利委員長 法制局長に河か御質問がありますか。
○池田(峯)委員 憲法二十一條に「一切の表現の自由は、これを保障する。」ということになつております。それをこの條例で大分制限するわけでありますが、特に三條、四條、五條、六條、七條においてこれを制限するわけでありますが、それと憲法との関係について、ひとつ詳しくお答え願います。
○入江法制局長 私の考えますところでは、憲法二十一條におきまして表現の自由を保障しておりますが、やはり公共の福祉に反する場合には、法律でこれを制限することは可能であると考えるのであります。ただいま御指摘のこの法律の三條、四條等につきましては、一つの表現の自由を制限することになつておりますけれども、それはやはり公共の福祉に反する、限度においてこの規定ができているものと考えるのであります。そういうわけでありますから、できる限り相手方の立場を尊重する規定にしておいて、それが制限の最小やむを得ないものであるとするということが、立法技術としては必要かと思いますが、憲法上の制度から申しますと、こういうふうな撰定があることは、たとえ原案でありましても、これは憲法違反であるとは考えないのであります。
○池田(峯)委員 そこでその憲法に違反する行為にならないようなそういう制限をやることは、都道府縣條例できめることになつております。そうすると、この法案でその限界をはつきりきめておかないと、それぞれの都道府縣の議会で、あるいは憲法違反をやるかもしれないという心配が出て來るのであります。從つてこの法案においてその点をもつと明確にしておかないと、たとえば美観風致あるいは公衆に危害を及ぼすもの、こういう漠然たる範疇では、非常に今後疑義が生じて、紛争を巻き起す種になるのではないかというふうに考えられるわけであります。從つて美観風致を害するというのはこういうものか、公衆に危害を及ぼすものはこういうものかという、その限界がもう少しはつきりしなければいけないのじやないかというふうに考えられるわけであります。特に問題なのは、五條でありまして、ここでは「形状、面積、色彩、意匠その他表示の方法」と言つております。これで廣告物を表示するものの意思まで制限するというようなことになるのでありまして、こうなりますと、憲法違反の疑いが出て來るのではないかと思いますが、こういう点に関して御答弁願いたいと思うのであります。
○入江法制局長 ただいまの御指摘の点は、條例できめることがほんとうに公共の福祉を保持するために必要である限度を越えれば、まさに憲法違反になると思うのであります。五條等の規定によつて、こういうふうな規定がありますと、一番迷惑をするのは国民でありますから、そういうことがないように、この法律でどういう方法が美観風致を維持するために必要であるかということを、説明的に書くことができれば、それは非常に望ましいかもしれませんが、これは立法技術的に申しましても、なかなか困難なことであつて、できるだけ知惠はしぼつて、考えたいと思いますが、よほどむずかしいことのように思うのであります。それで條例でもつてきめる際に、十分府縣議会においてこれを討議し、また一般的に府縣議会において、公聽会を開いて、規定の内容を審議してもらう。そういうふうな規定をきめる段階において、でき得る限り民意を入れ、また公正妥当なものにする方向へ持つて行くことによつて、それが救われるのではないか。これに積極的にどれが美観風致を維持するために必要なものであるかということを書くことは、なかなか技術的には困難ではなかろうかと思います。
○池田(峯)委員 これに入れることは技術的に困難ではなかろうかという御答弁でありますが、現実に、たとえば公安條例などの問題で、そういう憲法違反の疑いがあつて、またそれを変更して出さなければならないという問題もあつたわけです。現実に大阪などの例で公安條例があつた。そういたしますと、この問題もやはりそういうことが起り得るのではないかということが考えられるのでありますから、本委員会において、この点をもつと明確にすべきではないかと私は信ずるのであります。もつと具体的に申しますとたとえば警視廳の前でありますが、お堀端の交通標識に「危い」という漫画の大きな廣告があります。ぼくがあれを見ると美観風致を害するような感じがする。ところがまた議事堂のまわりに「首切反対、労働法規改悪絶対反対」というビラを見ますと、私は別に美観風致を害せぬと思うのでありますが、見る人によつてはあれは美観風致を害すると考えられるだろうと思う。そこでどうしても、美観風致は見る人々によつてみな違つて來る。思想によつて、階級によつて、立場によつて違つて來る。だからその点をはつきりしておかないと、日本には階級がいろいろありますし、職業もいろいろありますし、思想系統もいろいろありますから、これを民主的に決定するといつても、ちよつと困難じやないかと思う。都道府縣にこれを決定させるといつても、都道府縣は実際上の問題としてできないと思います。もつと具体的に言いますと、こういうのがあるのです。水戸市の銀杏坂という所の下に貯蓄の看板が出ている。これがどういうことを書いてあるかというと、「金だ、金だ、金さえあれば。」こういうポスターです。そうして貫一がお宮を足げにしている絵が出ている。ぼくに言わせると、これははなはだ美観風致を害する。場合によつては公衆に危害を與えると言つていいと思う。ところがまた貯蓄を奨励する立場の人から見ると、これは堂々たるいいポスターだということになるのです。それから電車の横腹に「税金を納めましよう。納めないと処罰されます。」というポスターが張つてある。これは不当な課税を課せられている者にとつては、はなはだ目にさわるポスターなんです。税務署に言わせるといい看板なんです。この点を明瞭にしておかないと、共産党や民主團体のポスターは取締るけれども、貫一お宮のポスターはますます出される。こういうふうになつて來ると困る。この点美観風致というふうな漠然としたことでなくて、もう少しはつきりした内容で取締る方がいいのではないかと考えられる次第であります。その点ひとつお願いいたします。
○入江法制局長 ただいま御意見はお説として拜聽いたしますが、私は衆議院の法制局長でありますから、原案者の立場に立つているわけではないのですし、今この法律の内容の政策的なよし悪しを論ずる資格もないものですから、先ほどの答弁をもつてお許しを願いたいと存じます。
○池田(峯)委員 では立案者の御答弁を願いましよう。
○財津政府委員 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。美観風致の点につきましては、できれば規定いたした方がいいと存ずるのでありますが、ただいまの法制局長からお話のありました通り、具体的にいろいろこれを規定いたしますことは、非常に困難でございます。從いましてやはりその條例を制定いたします際に、公聽会とか、あるいは審議会とか、そういうできるだけ多くの人の意見を聞いて、定めることにいたしたいと存じております。 それから第五條のお話があつたのでありますが、第五條は廣告物によつて表示される内容としての意思表示そのものについては、全然触れないのでございます。もつぱらそれらが表示せられた場合の表示の場所、方法、及び媒体といいますか、そういう廣告をいたしますところの廣告板とか、廣告塔というようなものの設置、及びこれを維持して行く点につきまして、必要な規制を加えて行こうというのでありまして、内容がどういうものであるかについては一切触れない。たとえば吉田内閣打倒という表示がありましても、その内容については別にこれを問題にするのではないのでございます。また、ただいまお示しになりましたような貫一がお宮をけつているというようなことにつきましても、その書いてある絵そのものにつきましては、こちらにおきましては、別にこれに対して何ら触れないのであります。ただその次に危險ということでありますが、これはたとえば税金を納めないとか、納めろという廣告を見て、危険を感ずるという場合を意味しておるのではないのでありまして、廣告物が壁にかけてある場合に、壁の素材構造等が非常に弱体で、こわれそうになつておるとか、あるいは風が吹いたらその廣告が落ちて來て、下を通つておる人がけがをするようなおそれがありはしないか。そういうほんとうにからだに対する危害のおそれのある場合に、この第六條は発動するものであります。
○淺利委員長 ちよつと速記をとめてください。 〔速記中止〕
○淺利委員長 それでは速記を始めてください。
○池田(峯)委員 旧廣告物取締法が廃止され、あらためて屋外廣告物法にした。それで取締りの対象がかわつて來た。それはこの前は安寧秩序または風俗を紊るおそれのあるものというのがあつたのでありますが、これを規制の対象から除外した理由はどういうわけでありますか。
○財津政府委員 現行の廣告物取締法には、美観風致並びに危害防止の観点と並びまして、公共の安寧秩序及び風俗の取締りに関する規定があるのであります。これを今回風俗の方と公共の安寧秩序の方を除きましたのは、一つは公共の安寧あるいは風俗取締りの関係は警察取締りに属しておりまして、この法律がなくとも、大体刑法なり、あるいは警察法なり、軽犯罪なりによつて取締りができるのであります。現在におきましては、この法律は古い法律でありまして、ほとんどそういう方面においては動いてない実情でございます。それで今回そういう思想関係あるいは風俗関係というようなものを一切離れまして、純粋に美観風致という観点からのみ廣告物の取締りをしたい、かように考えてこの法案を提出した次第であります。
○池田(峯)委員 そうしますと、結局大きな看板が出て、男と女がキッスしてみたり、はだかの女が足を上げたりしておる看板はあれはあのまま見のがすというわけですね。純粋の美観風致の建前からというのですが、その美観風致というのが、さつきから申しておるように抽象的で、不明確な概念なのでありますが、美観風致というのは、その内容は一体どういうことを指すのでありますか。立案者の方から詳しく御説明を願いたいと思います。
○財津政府委員 美観風致の美観というのは、建物の美観をそこなうようなものという観点から見ております。風致というのは、その附近一帯の風景というか、そういうことを見ているのでありました、この法案をごらんいただきますると、第四條に掲げておることが、大体美観風致の両方にかかりますけれども、風致に非常に主力が置かれ、第五條の物件の形状、面積、色彩、意匠というような部面が、主として美観に関係して行くというわけであります。
○池田(峯)委員 そうすると、都市計画法にも、市街地建築物法にも、実際はそういう條文がうたつてあるにもかかわらず、また本法案を出さなければならないという理由は、一体どういうところにあるのでありますか、それを御説明願いたいと思います。
○財津政府委員 都市計画法なり市街地建築物法なりで規定いたしておりますことは、建築物を制限することでございまして、看板とか廣告物、いわゆるここで言つておる屋外廣告物のことは規定してないのでございます。
○池田(峯)委員 この法案で、特に営利を目的とするしないにかかわらず、すベての廣告物を規制の対象としたのはどういうわけでありますか。こういう條項を入れるためには、それを特に必要とした動機がなければならぬと思うのであります。從つて、こういう弊害が起つたから本法案を出さなければならないという動機と現象とを、あわせて御説明願いたいと思うのであります。
○内海政府委員 現行の廣告物取締規則は、提案理由の説明でも申し上げましたが、御承知の通り明治四十四年の制定になるものでありまして、その内容は新憲法にふさわしくないのであります。そこで今度改正されました地方自治法の精神に照しましても、改正の必要に迫られたのであります。そうしてこれを廃止して、これにかわるに屋外廣告物法というものを制定したいと考えたのであります。なおこの法律は御承知のごとく実質的には規制を定めまして、その実行方法については、都道府縣の條例の制定によつて行わしめるというのでありますから、いわば都道府縣における屋外廣告物法の基準法とも言うべき性質を持つたものであります。こういうような精神から立案いたしたのでございます。
○淺利委員長 この際法制局の第二部長が見えておりますから、先刻局長から示されました屋外廣告物法に対する修正案についての御説明を願います。
○福原參事 先ほどこの席で私の方の入江局長から関係方面からの参考意見を御披露申し上げたのでございますが、その線に沿いまして、私の方でこの程度の修正ならばどうであろうかという試案をつくつたものがございますので、それを御参考にお示ししたいと思います。 その説明を簡單に申し上げますと、二箇所ございますが、まず一箇所の第四條第二項の分は、これはあるいは原案者の方のケアレス・ミステークではないかと思うのでありますが「條例で定めるところにより」という部分が落ちている。それからさらに表現において、ほかの條文と違う表現を同じ條文についてしておりますけれども、それを形式的に改めた点でございます。 その次に第七條の第二項として、公開の聽聞の規定を入れたらどうかと思うのであります。さきに入江局長から申し上げた点は、三條ないし六條の條例の制定についても、必要的に公開の聽聞を行うような規定が要るではないかというふうにも参考意見としては聞えたのでございますが、條例につきましては、これも入江局長から御説明申しました通り、地方自治法等において、もし必要に應じては公開の聽聞に相当する公聽会の規定がございますので、それに譲つて十分だと考えるのであります。從いまして、第七條の都道府縣の條例に基いて、行政長である都道府縣知事が、具体的にその條例の規定に從つて一定の処分をするという場合に、その処分の当不当について、あらかじめ保護方法を講じておくことが妥当かと考えます。それで、その点にのみ公開の聽聞の規定を置こうというのがこの改正案の第二点でございます。この公開の聽聞につきましては、御存じのことと思いますが、第二回、第三回國会等で、一定の営業的な法規の取締り処分について規定を置いてあるのでございますが、それにならいまして、第七條第二項もかえたのでございます。もつともこの第七條第二項の最後のところに但書をつけてありまして、「但し、緊急を要する場合は、この限りでない。」というのは、從來の公開の聽聞の規定にはないのでございますが、この屋外廣告物法案を見ますと、この中には公衆に対する危害を防止するための一定の措置を考えているのでありますが、もしこの公衆に対する危害がきわめて緊迫した状態にあるものならば、その違反物の管理者その他に対して、あらかじめ呼び出してその意見を聞いてからそういう障害を除去するというのでは、事遅きに失するということも十分予測せられますので、そういう場合を免除することが必要であろうと思いまして、この規定を置いたのであります。大体この程度で御了解願えるかと思います。
○淺利委員長 関連しての御質問はありませんか。
○前田(榮)委員 法制局の方へお尋ねいたしておきたいのですが、この関係方面からの指示と申しますか、勧告と申しますか、そういうものは、大体この法律案を政府が出すのには、関係方面の了解を得て出したものに違いないと思う。その後情勢がかわつたという関係か、もしくは衆議院の方から何かの関係でお伺いを立ててこういう結果になつたのか、その点を明確にしてもらいたいと思います。
○淺利委員長 速記をやめてください。 〔速記中止〕
○淺利委員長 速記を始めてください。
○池田(峯)委員 あらためて質問しますが、先ほど次官の説明で、営利を目的とするもの以外に、その営利を目的としないものまで含む、こういつた法文にした理由はどういうところにあるかということを聞きたい。
○財津政府委員 お答え申し上げます。これはもしも安寧秩序とか、風致云々というふうなことがありますと、その点でいろいろ制肘が加わると思いますけれども、今回のこの法案は、純粋な美観風致の維持及び危害防止という観点からのみ取締るということにいたしましたがために、この目的を達しますためには、單に経済目的を中心とする廣告物のみに限定する根拠もないと考えますし、こういつた種類の廣告物でありましても、美観風致という点から見ますと、美観風致を害するものもある。また危害を與えるおそれのあるものを、放置しておく理由もないと考えたのであります。從いまして、経済目的を中心とするものだけに限定しなかつたのであります。
○池田(峯)委員 そういたしますと、こういう場合はどうなるのでありますか。日本人は憲法によつて表現の自由が與えられておる。ところが現実に、たとえば労働組合などにおきましては、新聞紙を発行するにしても、なかなか金もかかりますし、演説会をやるにしてもなかなか思うにまかせませんし、公衆の輿論を喚起するという建前から、どうしてもやはりビラ戦術といつたようなものがとられる。これは非常に労働者階級の生活というものと密接な関係があるのです。実際その人たちの生命、人たるに値する生活の保持という点から言つて、非常に重大な関係がある。こういう問題と美観風致といつたような問題とはかりにかけて、そうして立案者は美観風致の方に重きを置くという、ここはちよつと考えられない。人間がほんとうに自分の意思を発表する自由がなくて、ただその一つにかけて自分の意思を発表しようというときに、ここは美観風致を害するから、このビラを張つてはいけないと言われた場合に、その人の表現の自由がほんとうに奪われることになる。しかもその表現の自由を制限する法律の建前は、公共の福祉に反しない限りと、いうのである。公共の福祉ということの概念の中に、美観風致を害するということと、それから労働組合とかその他の民主團体の政治的な活動の自由を奪うということと、どつちが重いかということになりますと、どうしてもやはりそういつた民主主義というものを日本において確立しなければならない以上、そういう團体の表現の自由をあくまで確保してやることの方が、美観風致を守るというよりもむしろ重いのじやないか、こういうふうに考えられるわけであります。そこでそういう問題について、これは地方の條例をつくる場合でも、またこれを現実に実行に移す場合でも、どうしてもいろいろな問題が出て來るのじやないかと思う。そういう点について、立案者のお考えを伺いたいと思います。
○財津政府委員 ただいま池田委員の仰せになりましたことは、まことにごもつともでありまして、そういう点を十分考慮しなければならないであろうと思います。ただその中で、ビラをまくということは、これは法律の範囲外でございますから、ビラまで取締る意思はございません。ビラをまくことはよろしうございますが、張るということになりますと、それはやはり美観風致に関係があると思うのであります。しかしどこの場所でも、またどういうビラでも、それは全部張つてはいけないというわけではないのでありまして、第四條に示してありますように、場所において制限をし、またそのビラを張る物体において制限をしておるのでありまして、廣告物そのものを制限いたしますのは第五條で、形あるいは面積というようなものを制限いたしまして、あまりみにくくないような方法によつて、そういう意思の発表をしてもらいたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
○池田(峯)委員 立案者の意思はあるいはいいのかもしれませんが、もしこれを仮に濫用いたしまするならば、労働組合のビラをただの一枚も張らせないこともできます。この第三條から第四條、第五條、これを全部廣汎に活用いたしまするならば、共産党のビラ、労働組合のビラ、これを全部、ただの一枚も張らせないようにしようと思えばできます。私がもしこれに基いて條例をつくるのであるならば、そういうふうにやつて見せます。こういうことは民主主義の破壊になり、そうして憲法の違反になるおそれが十分あるということなのであります。だからそれをどういうふうな基準に置くかということで、これは当然地方の條例で、他日問題が起るから、その概念をこの委員会においてはつきりさして置かなければならないというのが、私の主張なのでありますけれども、そういう点では、この條例を濫用しようと思えばどうにでもできる法律であるというふうに考えられるのであります。そういう点、御意見いかがでございましようか。
○財津政府委員 ただいまお話になるように、もし惡用いたしますれば、そういう懸念がないことはないのでありますが、しかしもしそういうことになりますると、それは当然憲法違反になるのであります。憲法違反として取締らなければならないのであります。從いまして都道府縣において、そういう憲法違反になるような條例をつくることは、萬あるまいと存じます。ことに府縣知事は一般縣民から選ばれて、現在はいわゆる公選の知事でありまして、縣民の福利増進のために常に心を用いておると思うのであります。從いまして、そういう憲法違反になるような條例をつくることはないと確信いたしております。
○池田(峯)委員 そこでその美観風致というものの概念が漠然としているから問題が起きるんだと言うのです。たとえば街路について見ても、日本の街路などに美観風致という概念に当てはまる街路はおそらくないのです。ぺーブメントがあれば、どこも穴だらけであるし、焼跡の跡始末もまだできておりません。下水も虫がわいておりますし、美観風致という概念から言つたら、日本の國土は寸土といえども合格する所はないと私は思う。そこで美観風致を害する所は、どことどことどこが害するかという、その概念がはつきりしていない。公園というのははつきりしております。史蹟名勝天然記念物のある所あるいは墓所、そういう所もはつきりしております。そういう所が美観風致という例に入つておりますから、それはいいかもしれませんけれども、その他の住宅地にいたしましても、あるいはまた東京の一番目抜きの銀座通りにいたしましても、私たちが見たところでは、これが日本の美観風致を維持するために、ここにビラ一枚も張るべきではないと思うほど、それほどりつぱな街路だと私は思わない。むしろあそこで美観風致をそこになつているものといつたら、実は別のものなんです。ですから美観風致を維持するというその概念が、もう少しはつきりしておらないと、この法律は非常に惡用されるおそれがある。と言うのは、日本の現実の政治情勢、あるいは経済事情といつたようなものが、いろいろな階級にわかれておりまして、それが爭つているという現実の上に立つて、しかも一方の階級が一方の階級を取締るというような、そういう政治組織が現実に存在している。こういう情勢から判断いたしますと、これは一方の階級が一方の階級を取締り、弾圧するというようなことにいくらで惡用できる。たとえば明治以來のいろいろな法律にいたしましても、表面上はうまくできており、それを制定するときには、これは決してそういうことはないんだというようなことを言つておいて、そうして最後にはそれを惡用している事実がたくさんあるのであります。われわれはそういうことがないように、本委員会において十分討論してもらいたいというために論議しておるのであります。一体日本の街路に美観風致というような概念の当てはまるものがあるかどうか。一体美観風致というものをどの程度に——街路を百パーセントに見れば、日本の街路のどことどこが何パーセントになるかというような限度でも当てはめて置かないと、非常にうるさい問題が起きて來ると考えられますから、立案者として、そういう点まで十分考慮に入れてこの法律を立案したか、お伺いしたいと思うのであります。
○内海政府委員 池田さんの御質問、ごもつともであります。しかしあなたの御質問の趣旨は、法文の第二條で明らかに規定されております。「この法律において「屋外廣告物」とは、常時又は一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに廣告塔、廣告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するもの」である。そうしてこの実行方法について具体的に示すのが第四條の規定である。「都道府縣は、條例で定めるところにより、美観風致を維持するために必要があると認めるときは、左の各号に掲げる地域又は場所について、廣告物の表示及び廣告物を掲出する物件の設置を禁止し、又は制限することができる。」この第一号から第八号によつて、大体おわかりのことと思います。これが屋外廣告物の一定の場所、一定の継続したる期間といつたようなことが記録されているのでありますから、この点で御了承を願いたいと思います。
○池田(峯)委員 いや、そういう具体的な問題は第四條に規定されていると思うのですけれども、第三條が非常に廣汎な意味を持つている。それから第五條がやはり非常に廣汎なんです。ですから四條では具体的にこういうところということがありますけれども、四條にしても第二項四号に「前各号に掲げるものの外、当該都道府縣が特に指定する物件」というのがありますし、そうなりますと、こういうところに電柱なんてものを当該都道府縣が特に指定したる場合は、これもまた非常に制限されることになります。第五條においては、「物件の形状、面積、色彩、意匠その他表示の方法」といつて、これまたこうなりますと、先ほどは内容の制限はしないと言いますけれども、まさにここに内容にまでわたつた禁止條件が出ているのであります。そこなんです。四條はともかくといたしまして、三條と五條、これを惡用しようと思うと、いくらでも惡用できる廣汎な内容を持つているのですから、この点について私先ほどのような論議をしているわけなんです。ひとつ、その点を……。
○内海政府委員 新しい屋外廣告物法案というものは、古い明治四十四年以來実施されて参りましたいろいろな法律、たとえば各府縣においてもいろいろな規則をきめまして、都道府縣おのおのかつてな、違つた規則によつて取締つて参りましたものを、今度あらためてこれを整理いたしまして、そして都道府縣に対するいわゆる基準法ともいうべきものをつくつたのでありますから、ただいま御質問のごとき場合は、各都道府縣においては、それぞれ地方長官の権限において行われているような現状なのでありますから、よくこの点も御参照願いたいと思うのでございます。
○池田(峯)委員 先ほど内容については問題にしない、あくまで美観風致並びに公衆の危害防止というような点からと、こういう回答でありましたけれども、現実に内容が問題にされるような事例があるのじやないかと思う。たとえば、交通標識が各所に立つている、これは私たちは特にそれほどと感じておりませんけれども、まあ皇室を尊崇する人たちは、あのほりばたにいろいろな廣告が立てられているのについては、非常に美観風致を害するというように、私は感じるのじやないかとそんたくするのであります。ところが、交通を取締るために、どうしても必要だというような廣告物はあそこに設置しなければならないという観点がそこに出て來ると思う。一方の人は、これを美観風致上取締らなければならないという論者が出て來る。交通を取締るという責任を持つている者は、公共の福祉という観点から、ここには立てなければならないという論点を持つて來る。こうなつた場合に、一体両者をどういうふうに裁判するつもりでありますか。ここのところをお聞きしたい。
○財津政府委員 美観風致の観点から制限または禁止いたしすますものは、極力狭い範囲に切り下げなければならないと思うのでございます。從いまして、今お示しになりましたような場合は、別に美観風致を害するものではないと存じます。
○池田(峯)委員 たとえば現実に言いますよ。警視廳の前に「アッあぶない」というペンキ入りの看板をべたべたかけている。ああいうものをかけられると、はなはだ美観風致を害するし、またあそこはおそらくこの法案で言つても、美観風致を保つ地域で、あるということになるのじやないかと思うのですが、そうした場合に、あれの撤去を命ずることが東京都の廣告物審議会でもつてできるものかどうかということなんです。警視廳は警視廳として、いやあれは公衆の危害を防ぐためにどうしても必要だと言つてがんばる、東京都は、いや、あれは美観風致を害するかを撤去しよう、こういうことになつた場合に、一体どつちをほんとうにしたらいいか、そういう問題なんです。どつちを正当なりと断定することができるか。これと同じような問題は各所に出て來ると思うのですが、そういう判断の基礎はどこに置きますか。
○財津政府委員 大体におきまして、交通のためにやむを得ないもの、あるいは慣例上ほんの一時的なものというようなものにつきましては、これを認めざるを得ないと思うのでございます。しかし、その程度、範囲につきましては、條例で一部きめることは書いてあります。
○池田(峯)委員 すると、條例できめるのでありますから、都道府縣が非常に、そういう強力な権限を持つことになると思う。そういう場合に都道府縣が誤つた判断をして、実際に憲法違反に近いことをしたとか、あるいは相当紛議が起きたとかいうような場合に、これを何らかの方法によつてどちらが正当であるか、判断する中央の機関といつたようなものは必要でないと思いますかどうか、それを伺います。
○財津政府委員 第五條で取締りますものは、あまりに醜いものに限りたいと思うのでございます。あまり拙劣なもの、あるいは醜惡なもの、あるいは公衆に嫌惡の情を起させるようなところに制限の対象を置きたいと思います。また、もしも池田委員のおつしやいましたように、万一にもこの條例が憲法違反のような疑いがあるという場合におきましては、これに対して訴願の道が開けてございます。
○池田(峯)委員 そんなことを言つてもだめです。当該都道府縣知事に訴願をするのでありまして、私が先ほどから言つておるのは、都の意見とそれから警視廳の意見とが完全に相対立したというような場合に、それを裁断する機関がどこにあるかということを言つているんです。
○財津政府委員 ただいまの御質問のような場合は、お互いに役所同志でありますし、話し合つて相談した上できめれば、解決つく問題だと存じます。
○池田(峯)委員 役所と言つておりますが、それは民主的でないと思う。廣告物審議会というものがきめる。廣告物審議会がこの前四條に規定する事項及び廣告物に関する指導、助成、その他の重要事項を調査審議して都道府縣知事の責任において、それを行うのでありますが、ですから役所同士といいましても、なかなかそこはむずかしい問題になつて來るのじやないかと思う。ですからそういう問題につきましては、やはり明確な判断の基礎がなければいろいろな問題が起きて來る。それから公共のためにやるものは、たとえ美観風致を害するような事項であつても、それを許すというような御説明と思いますけれども、これはそうなりますと、はなはだ片手落ちになつて來ると思う。というのは、時の権力を握つておる政府は、なんでも公共の福祉のためといつてやつて來る可能性がある。しかも民衆はこの政府のやり方を公衆の福祉に反しておるからと言つても、なかなか政府を彈効することは困難な場合が出て來るのであります。でありますから、これはどうしてもそういう意味で、日本の現状から照し合せてみると、本法案は非常な摩擦をあらゆる場面に引起す要素を持つておるというふうに考えられるのであります。私は質問はこれで打切りますけれども、要望事項といたしましては、本法案を全面的に修正するか、あるいは撤回することを要求いたしまして、質問を終りたいと思います。
○淺利委員長 次に通告順によりまして、瀬戸山委員。会期切迫の折柄でありますから、簡潔に要を得た御質問を願います。
○瀬戸山委員 ただいま委員長から、会期が切迫しておるから簡潔にというお話でありますが、この法律はただ九條でありますけれども、きわめて問題になる法律と私も考えます。それであまり長くならないつもりでなるべく簡單に申します。 まず第一番に、この法律を制定されたのでありますが、その提出の理由はよくわかります。またこの法律をつくる必要があるということも、私は信じて疑わないのでありますが、現に行われておりますところの廣告物取締法を改正して、さらに美観風致を維持しようというのでありますが、現在の廣告物取締法で相当取締つておられるかどうかということをまず伺つておきたいと思います。
○財津政府委員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。現在の法律は非常に廣汎な範囲で府縣人権限を委任いたしておるのでございます。從いまして、府縣はその委任に基きましておのおの規則をつくつておるのでありますが、この規則は府縣によりましてまちまちでありまして、その取締りもまた、現在におきましてはそう厳重にやつておられないような状態であります。
○瀬戸山委員 現在の法律は、先ほど共産党の池田委員も非常に心配しておられると思いますが、現行法においては、今度改正しようとするこの法律以上に廣汎な取締りができるようになつておるのであります。しかも地方廳に事実上委譲しておつて、その効果が現われておらないということを今承つたのでありますが、さらに今回全面的に府縣の條例に從わせるという根本の理由が私にはわからない。私に先ほど池田委員が聞いておられましたが、これはきわめて観点が違いますので、この議会のまわりを見ましても実に美観風致を害しております。ああいうことをしておいて、なるほど日本の全國の國土はすべての点が美観風致を害するような状態になつておりますけれども、お互いの家庭におきましても、きわめてきたない家でも掃除をすればきれいになる、かように思つております。きたないから美観風致でないという池田委員の見解には大いに反対するのでありますけれども、きたないからこそ、少くともそのきたない状態にあるわが國の状況においては、なるべくお互いが協力して、廣告をするにしても、宣傳ビラをはるにしても、きれいにいたしたい、こういうつもりの法律であろうと思いますから、法律をこしらえるだけでは問題にならない。効果をどの程度にあげるかということが問題になると思いますので、その点を聞くのであります。現在議会の下のへいを見ましても、実に不快きわまるようなビラのはり方であります。これは何も思想が違うからとか何とかいうような問題ではなく、言論の自由は憲法によつて保障されております。また出版の自由も保障されておりますから、私は思想そのものを取締ろうという法律をつくるということは絶対反対でありますけれども、思想の表現方法におきましても、もう少し美観風致を維持するような方法でやらせるというのが、この法律のねらいだろうと思いますので、現行法をさらに法律によりまして府縣に全面的に委譲するという場合においては、相当論議の的になつておりますところの、この廣告物取締法を制定する以上においては、府縣において相当の効果をあげるかどうかという点の見通しを、私は聞きたいのであります。現在強力なる取締りができるようになつており、きわめて廣汎な、何らの制限のない法律でさえ取締りができない、これは相当の制限を付していただきたい。屋外廣告物法として出そう、しかもそれは府縣の條例にまかせようというのでありますが、効果のあがる見通しがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
○財津政府委員 ただいま瀬戸山委員からお話になりました点は、まことにごもつともであります。しかしながら、現在あまり行われていない理由といたしましては、現在の廣告物取締法が、美観風致のみでなく安寧秩序、風俗壊乱というようなものを取締るということになつておりまして、主として安寧秩序あるいは風俗取締りの方に力を盡された関係が非常に多かつたのではないかと思うのであります。なおもう一つの理由といたしましては、この現行法は、初め警察の取締りに属しておりまして、これが建設省の所管に移つたのは昨年でありまして、この法律の運用について、まだ主管省であります建設省といたしましても、十分手が伸びなかつた。府縣に対する指導も十分行き届かなかつたということが言えるのであります。そういう意味からいたしまして、今回この法律を改正いたしまするに際しまして、地方府縣の國有事務としておりますけれども、新しい権限が付與されたというような感じを地方府縣としては持つであろうと思うのでありまして、この法律によりまして、今までと違つて美観風致の観点から好結果をもたらすのではないかと考えております。
○瀬戸山委員 今まで効果がなかつたから、これから大いに効果あらしめる考えであるというのはけつこうであります。たびたび繰返しますが、法律をつくつてあとは野放しというのが、大体日本の現状でありますので、特にこの点を問題にいたしたわけであります。今回のこの法案によりますと、先ほども申しましたように、すべてが地方の都道府縣の條例によつて云々、そうしてやるかやらないかは都道府縣の意思にまかせるという法文になつております。これは現在の憲法の趣旨によりまして、自分の管轄区域内をいかにきれいにするかという点について、それぞれの各地方の実情に應じて、自治にまかせるという点については大いに賛成するのでありますが、しかしこれをやるかやらないかは各都道府縣の考えにまかされた。しかも相当風致美観という点からは、取締りをしなければならないという法の根本方針は、全國同じであると思つております。そこで從來も都道府縣にまかしておつたが、その実績が現れていなかつたというのを、この法律によつてまかせようということでありますが、各都道府縣において、この國の事務を都道府縣の國有事務に移す場合において、各都道府縣の意見を聞かれたことがあるかどうかということをお尋ねいたしたい。さらにまた、これは九十日以後に現行法が廃止されることになるのでありますが、廣告物の取締りは必要である。そこで、九十日以内に全國の都道府縣がこの法律に基いて取締りの條例をこしらえるだけの見込みがあるかどうか、この二点をまずお尋ねしておきたいと思います。
○財津政府委員 お答え申し上げます。 第一の点の、地方の府縣の意見を聞いたかどうかという点に対しては、計画課長会議などで意見を聽しましたし、また地方からそういう要望が数箇所から出されております。條例でこういう取締りをしたいという希望が出ておるのでありまして、おそらく地方としてはこれを歓迎するのではないか、かように存じております。 それから第二点は、九十日間ではたして條例ができるかという質問でございますが、それは極力指導、督励いたしまして、この期間内にできる見込みでおります。
○瀬戸山委員 それからこれは常に問題になるのでありますが、かように國の事務を法律によつて地方の事務に移す場合に、少しも経費のことが考えられていない。もちろん今日までやつておつたから、そう経費がかからないというお答えがあるかもしれませんが、かりに幾らの経費がかかろうとも、地方公共團体の現在の財政状態は、私から申し上げるまでもないことであります。さらにまた地方財政法におきましては、國の事務と地方の事務との厳格なる費用の分別がなされておりますけれども、さらに地方の事情ということを考えないで、簡單に事務を地方の公共團体に移してしまうことは、相当考えてやらなければならない。財政的の裏づけというものについていかに考えておられるか、簡單にお答え願いたい。
○財津政府委員 経費の点を御心配になるのはまことにごもつともでありまして、この点は私の方でも非常に心配しておるのであります。しかしこれを都道府縣の固有事務に移した関係上、経費としましては、どうしても府縣の方で持つてもらうほかはないと存じます。なお現在は、これは國家事務として地方へ委任しておるのでございますが、國としてはこれに対して別に補助も何も出していないような状態でありまして、從つて府縣においては、その点から言いますれば、それほど新たな負担が増すわけではないかと存じます。
○瀬戸山委員 経費のことは、屋外廣告物についてそれほど大きな金ではないと思います。ただ審議会をつくるとそれについて相当費用がいります。私が申し上げたのは、地方財政について、その財政をかまわずいろんな仕事を地方にさせるという点を問題にいたしておるのでありますが、この点は、この法律については、これ以上追究することをやめます。ただあと條文について二、三明らかにいたしてもらいたい点がありますので、お尋ねをいたしてみたいと思います。 第三條についてでありますが、これには「市及び人口五千以上の市街的町村の区域」、こういうことになつておりますが、市は当然全部の市が入るのか、それともそのうちのある特定の区域かという点と、さらにまた條例に定められたところの市街的町村は全部入るのか、あるいは市の場合と同じように、市街的町村のある部分だけが入るのかという点を、まず第三條についてはつきりさしていただきたいのであります。
○財津政府委員 第三條の市街的町村というのは、大体廣告物はその効力を市街地において発揮するものでありますから、こういう規定を設けたのでありますが、この制限をいたしますのは、大きな東京都なら東京都というものをするのではないのでございまして、特殊な所、たとえば京都とか、奈良とかいうような特殊な都市、そういう所をこの第三條で指定することもあるかもしれませんけれども、他の場合においては、市の一部分を指定することが多いであろうと思います。その市の一部分というのは、やはり特殊な意味合いにおいて、たとえば観光その他の見地からも、どうしてもこの場所では、美観を保持したいというような所に限つて、この第三條が適用になるものと考えます。
○瀬戸山委員 今の御説明では、市もしくは條例によつて指定されました市街的町村のある特定の区域というふうに承つたのであります。この法文の読み方によつて、市街的町村の区域についてという点が重要なものであろうと思いますが、それは都道府縣によつて、いかようにも解釈ができます。もちろん條例をつくる場合には、健全なる常識にまかせなくちやならぬから、こまかく云々するわけではありませんが、ただいまの御説明の趣旨を、この條例をつくる場合には明らかにして、指定をしていただきたいという要望をしておきます。 それと同時に第三條並びに第四條、第五條との関係についてお尋ねをいたしたいのは、第三條は、ただいまお尋ねしたように概括的に制限ができるような規定になつております。ところが第四條また第五條も同じでありますが、これは特定な地域もしくは特定の物件についての禁止もしくは制限をなされておるのであります。第三條の場合は大体概括的に制限もしくは禁止がされる。第四條並びに第五條の場合は、これは第三條に規定された場所もしくは物以外において、こういうものはどこでもよろしいという関係になるのかどうかかをはつきりさしていただきたい。
○財津政府委員 第三條は第四條と通つて少し包括的に規定されてあります。それは先ほども申しましたように、たとえば奈良市のごときは観光上も、どこへでも廣告物を持ち出されては困るというふうにもしも知事が認めた場合には、その市全体を指定し得るの、あるいは京都の場合には、京都の何区なら何区というものを指定し得るのでございます。しかしこれは美観を保持するために、どうしても必要であると知事が認めた場合に限るのでございます。また市でなくとも、人口五千以上の市街的な——市街的町村というとおかしいのでありますが、町村のうちで町を形成しているような区域についても、そういう必要がある場合もあろうかと存ずるのであります。ただ第三條で注意していただきたいのは、制限だけでございまして、禁止を認めておけません。從いましてもし第三條によりまして、府縣知事が指定いたします場合には、つまり廣告物の許可ということになるだろうと思うのであります。届出をして許可を與える、こういうことに第三條はなつておるものだと考えます。
○瀬戸山委員 私がお尋ねいたしますのは、第三條は、これは制限と言われても、すぐにやられるということになれば、禁止になるわけでありますが、それは別問題といたしまして、第四條の場合には、三條とは違つて、こういうものはその区域に指定された市街的町村以外、もしくは市の特定の区域以外、どこでも第四條もしくは五條にあるような地域、またはものについては、禁止もしくは制限ができるのかどうかということであります。
○財津政府委員 第四條の場合には別に市街的町村、あるいは市街的な区域に限らないのでございまして、これに規定されたような場所でありますと、ずつといなかの方でもやはり適用になるのでございます。
○瀬戸山委員 もう時間が切迫しているようでありますから、あとはこの法律の運用についての要望だけを申し上げておきたいと思います。この法律は定義にもあります通りに、いかなる内容であるか、もしくは事業に関係あるか、政治上の見解であるか、思想の表現であるかということについて、何ら制限がないのでありますから、一切の表示されたる物件についての制限であります。從いましてこの取扱いについては、條例の制定については相当慎重を要するものである。もちろん美観並びに風致の維持その他危險の予防という点については、十分なる取締りをしなければならない。一面行き過ぎますと、憲法に規定されたところの言論の自由並びに出版の自由というものを制限されるおそれがありますので、この点については、かりに全面的に各都道府縣にまかされましても、十分なる示唆と申しますか、指導は私はきらいでありますが、そういう面を十分御考慮願いたいということと、これはこの法律の外でありますけれども、私は内を治めない者は決して外を治め得るとは思いません。これはお耳ざわりな点があるかもしれませんが、きわめて重要なことだと思つておりますので申し上げるのであります。この衆議院内にはそういう点はございませんけれども、現在の各官廳の内部に入りますと、きわめて乱雑をきわめております。いわゆる屋内廣告物取締法というものはできないのでありますけれども、この法律の趣旨は外さへきれいにすれば、内はどうでもいいということでないと私は思つております。これは建設省だけとは限りません。玄関から入つて行くとたんから、これは一面議論から言えばきわめて美観であるかもしれませんけれども、普通の常識においては決して美観ではないのでおります。同じく政治上もしくは思想上の表現をするにいたしましても、その表現の方法については美的感覚もあるでありましようし、また知らせる方法としては一定の場所もあると思いますけれども、各官廳におけるあの乱雑さは、決して私は屋外廣告物を取締ろうという精神のある人の態度ではないと思つております。そこでこれは建設省だけに限りますが、私はこれは政府の問題といたして、日本國家國民の財産であるところの公共建物の内部でも、もう少しきれいにしていただきたいということを、これに関連して希望いたすと同時に、せつかく政務次官が見えておられますから、建設省内のあの乱雑さは、何とかこの精神を織込んでいただいて、これは管理者の権限においてできると思いますから、あえて屋内廣告物法をつくる必要は全然なく、管理者の責任において——制限してくださいとは申しません。もう少し秩序ある廣告を張らせていただくように要望いたしまして、私の質問を終ります。
○淺利委員長 次に前田委員。
○前田(榮)委員 私はこの法案の質疑に入る前に、議事進行について委員長にお尋ねいたすわけでございますが、委員長はこの法案を早く本会議にかけて参議院にまわさなければならぬ事情を理事会等でもお訴えになつた。そして與党の諸君がそれに御賛成になつて、できるだけ質疑を早く打切つて、本案の可決をお急ぎになつておつたのであります。私はそういうことについては、われわれも與党をやつておつた時代があるので、委員長として当然なことだと思つておつたのであります。ところがすでに本日は時間も相当長い間経過いたしておる。それにこういう場合における與党のやり方といたしましては、大体與党は政治的にも政府をしてやらしめるところの実行力をお持ちになつておる。何もここで長い間かかつて質疑をいたさねばならぬことはない。ただこの議案の疑問等のある点につきましては、何もここで速記録へ掲げなくても、政府の当局者を呼んで御相談もなさろうし、また御質疑ができるはずだ。それにもかかわらず、與党の議員に相当質問させて、その質問させる反面に、野党の諸君が質疑をしようと思うと、いろいろ、時間がどうだとかこうだとか言うて、先の池田君の質問に対しても、できるだけ簡潔にされるようなことを御要望になるような御態度なんです。委員長は実際この案を早くあげようというほんとうの決意なのか。われわれが與党時代には、まあ與党は遠慮せい、そして野党に十分質疑をさせて、納得の上ですべての法案を早く処理するようにしようじやないか、われわれはこういう態度をとつて來たものなんです。にもかかわらず、委員長の今朝來の態度を見ると、実際にこの法案を早く審議を終つて、予定のコースをたどろうという御意思があるのかどうか。あるいはそれはただ單に言い訳であつて、野党のいろいろな質疑を牽制するという御意思であるかどうか。この点はつきり明確にいたしてもらいたいと思います。
○淺利委員長 今のお話、ごもつともの御意見ですが、與党であるから全然質疑をしないということも、これは議会審議の上から遺憾だと思うのです。ですから瀬戸山委員からも、二時間くらいの時間を要するというのを特に切詰めていただいたので、時間が遅れましたことはまことに相済まぬのでありますが、どうぞ皆さん御勉強くださいまして、時間外にわたりますけれども、ひとつ御精励願いたいと思います。從つて前田さんなり上林さんの御意見も、大体何分くらいということを承つて、それで調節をいたしておりますから、どうぞ十分に質問なさつていただきたいと思います。今後出る法案につきましては、なるべくそういう方針をとることにいたします。
○前田(榮)委員 委員長から、今後議事の運営については、相当御考慮を拂われるという御意思もあつたので、議事進行についての私の質問なり意見は、これで打切ることにいたします。 本案について、内海政務次官がおいでになるので、内海政務次官から第一に御答弁を得たいのは、本案を提出される際において、この作成については非常に慎重審議をして、これなら法の精神は十分生きるというような責任をもつて、愼重にこれを作成されたと思うのでありますが、はたしてこれは自信をもつてやられたのかどうか。この点は、さきに法制局長が試案として出された案を見ましても、非常に妥当な修正の意見も出ておるようでありますが、こういうものが関係方面から指示されなければならぬということは、政府のこの案の作成責任者の責任、並びに作成者の用意周到さ、慎重さが足りなかつたのではないか、こういう点について、この原案は自信があるかどうか、そういう点についての所信をお尋ねいたしたいと思います。
○内海政府委員 お答え申し上げます。政府というよりも、むしろ当局としては、当然自信をもつて提出したのでございます。ただここに聞いていただきたいことは、私が政務次官になりましたのは、本年の二月十九日でありまして、すでにこの法案は一月の半ばにできておつたということであります。本日御答弁に当つておりますのは、御承知の通り立案者であり、各種の方面を調査研究されました財津都市局長がその任に当つておられるようなわけでありまして、なお答弁全体を総合されまして、政府としての責任はどうかというところまで追究されるがごときように論旨が発展いたしましたときにおいては、私は当局として責任をもつて御答弁申し上げたいと思います。
○前田(榮)委員 就任が二月であつたということで、本案作成当時には関連がなかつた、あるいは薄かつたという意味かもわかりませんが、そういうことについては、われわれも納得が行くのであります。しかしたとい十日前であろうと、二十日前であろうと、これは内海代議士でなしに、内海政務次官として吉田内閣の政府委員であり、大臣に代理して國会に臨む政府の代表者でなければなりません。從つて本案について、これを國会に提出されたときに、責任をもつて、これがはたして適当であるかどうかという判断を持たなければならぬのは、当然であります。從つてこの問題は、その作成当時に参画しているいないにかかわらず、責任を持たなければならぬと思う。そういう観点から、この原案が万全のものであるとお信じになつて出したか出さないか、こういう点が第一点。 第二点は、入江法制局長から出された試案というものは、これはただ表面だけであつて、内容は関係方面からの弱い意味での勧告で、一つの指示を受けておるわけです。そこに指示を受けておるだけに、もしこの指示が正しいものだとすれば、この法案に欠陥があつたということを表明しておる。從つて第二点としてお尋ねするのは、この指示が正しいとお考えになるか、またこの委員会が修正し、本会を通過した場合においては、当然政府はこれの公布をなさなければなりませんが、これが適当と政府の責任においてお考えになるかどうか、この二点をお尋ねいたします。
○内海政府委員 この法案の立案にあたつて、参画しないから私に責任がないとは申しません。やはり提案された当局と連帯責任をもちまして、やらなければならぬと確信しております。この法律案提出にあたりまして、いろいろその当時の立案の必要に迫られた理由を聞きますと、すでにこの法案を提出いたしましたときに、益谷大臣から説明申し上げました通り、日本の屋外廣告物取締法というのは、明治四十四年の制定になるものであつて、しかもこの法律は、各府縣において、府縣のいわゆる地方長官において、独自の立場においてそれぞれの情勢から見ますと、都道府縣ともまちまちの取締法が行われておつたということと、このたび御承知のごとく、新しい憲法が制定せられ、また地方自治法も実施せられるということになると、こういうような取締規則をもつてしては十分でないというので、この法案を制定いたしまして、このたび皆さんの御協賛を仰ぎたいということになつたのであります。でありますから、この法案の通過に対しましては、どこまでも努力いたしまして、皆さんの御審議もいただいて、一日もすみやかに成立されんことを希望しておるものでございます。 なお入江試案とやらがここに配られておるのでありますが、これはこの法案に対する一つの指示でありますが、これは委員会の皆さんとわれわれ当局があらためて審議いたしまして、これを修正すべきものであるかどうかということは、今後の問題として取上げたいと考えるのでありますが、私一存でここにこれがこの指示によつて、ただちに原案を修正すべきものであるかどうかということは申し上げることができません。どうぞこの指示につきましても、委員各位の愼重なる御研究をお願いしたいと考えておる次第であります。
○前田(榮)委員 今指示案なるものについての御見解が明確に表示されないことは、この法案審議について非常に支障を來すもののように私は考えるのであります。少くともわれわれがこれらの法案を審議し、修正しようということになれば、各般の関係をも考慮に入れて、そうして自信のあるものを立法部としてこれを決定しなければならぬ。しかもその行政廳であるところの政府当局が、この案に対して明確なる態度を御決定にならずにおる。この案の態度決定については、今明日に迫つておるわけなのであります。そういう際になお明確な表明がないことについては、非常に遺憾の意を表する次第であります。しかしながらただいま御答弁にありましたように、事実を率直に申されたことについては、私はその誠意をかつてこれ以上追究することを差控えたいと思うのであります。ただ問題は、政府がこの案を作成するに際しての慎重な態度について、私は一つの疑問を持つておるのであります。本日も建設省の労働組合の諸君から、本案は労働運動その他労働階級の向上発展のために、一大重大関係を持つておるから、公聴会を開いてもらいたいという要求があつたのであります。これは当然この法案が先ほど池田君からのいろいろな質疑の中にあつたように、われわれの最も恐れるのは、日本を民主的に一大改革をしなければならぬ途上において、この民主運動を万一誤つて圧迫するような状態になつたときには、都市の美観等の問題でなしに、憲法の問題から、人権擁護の問題から、一般大衆の生活向上に関係する問題として、美観どころではない。比重の上において一大重大な関係だと思うのであります。しかしながら、労働組合員諸君のこの要求は、残念ながら、すでに時日もありませんし、手続きの問題もありまして、公聽会が開かれないような場面に追い込まれておるので、これは非常に労働組合諸君に私は申しわけないと思うのでありますが、それができない状態になつておるのであります。こういうような観点から、この第七條の修正案等も、これとは別個なものでありまするけれども、この法案の中にその実施についての聽聞会等を聞くようなことをわれわれに示唆されておるような、一面言えばわれわれは屈辱的な感じがするようなところまで追い込まれておることは、私は非常に遺憾に思うのであります。 ここで当局にお尋ねいたしたいのは、建設省の労働組合の諸君は反対かどうか。それをここで明確に言つてよいかどうかわかりませんが、相当この案については意見を持つておられるようでありますが、これらの自分の省における労働組合員諸君の意見を、どの程度まで調べたか。どういう程度に聞かれたか。あるいはこれらについては、われ関せずえんで、一部官僚諸君がおつくりになつたのか。またそういうことは必要ないとお思いになるのか。これは別に内海政務次官をわずらわそうとは思いませんが、まず第一にこの点を明確にしていただきたいと思います。
○内海政府委員 前田さんの御質問に対してお答えいたします。このたびの法案は、実質的な規則をつくる、いわゆる全日本をこのわくによつて、各都道府縣の議会の決議によるそれぞれ異つた條例によつて円満なる運行をして行きたいというのが、政府のねらいなのでございます。從いまして、ただいま前田さんの御懸念になられるがごとく、政府の命令によつて、いろいろな労働組合の方だとか、あるいは一政党の宣傳ビラを取締るといつたようなことは、おそらくでき得ないことであると思うのであります。これは各都道府縣それぞれが、都道府縣議会の決議によるいわゆる條例で行うのでありますから、決してそういう懸念はなかろうと思われるのであります。そういうような観点でありますので、建設省内の労働組合等に対しましての意見などは聞いておりません。そういうような考えをもつて立案したのであります。
○前田(榮)委員 大体政府側の態度については、今の答弁でわれわれは推測できるのでありますが、本案の問題は、先の質問者から申されたような、いわゆる風致を害する、あるいは公安に危險を及ぼすという問題は、当然一般國民全般ができるだけりつぱにしなければならぬということは、これは議論の余地はないのでありますが、ただ人間は主観的なものでありまして、そこに実際問題があるのであります。これは現に本日の池田君の質問と、瀬戸山君の質問と二人の質問を比べて見ても、はつきりしておるのであります。また一方の方から見れば、あの張紙だけでも非常に醜惡な場面じやないかということを言つておられるし、片方の方は、そういうことはそう大して醜惡でなしに、もつと世の中に醜惡な部面があつて、しかもこれがいろいろな民主的な運動の上から見て、むしろ心持よいような感じがいたしておる。こういうような見解の相違がある。從つてこの問題は、最もこの点が重要なのであります。取締りの上から言つても、施行の上においても、きわめて重要なのであつて、これをただこういう條文だけで都道府縣がうまく運用できるかできないか、こういう点にかかわると思う。この内容がもつと明確にしてあつて、そして取締りの範囲というものの標準が、その見解の主観的な相違というものに立つて、非常にあやまちのない程度にできているならよろしいのでありますが、この條文では、われわれの見たところではそうできておらぬと思う。これについて政府はそういう責任が持てるかどうか、こういう点をまず第一に明確にいたしてもらいたいと思います。
○内海政府委員 ごもつともな御質問であります。幸いに皆さんの御協賛を得まして、法律としてこれが世の中に出発するにあたりましては、もちろん施行に九十日間の余裕もあることでありますから、都道府縣に対しては、それぞれ建設大臣の指示と言うか、そういうものをつけ加えまして、そして前田さんのただいまの御意見のごとき、いわゆるこの法律実行の結果は、一党一派のために惡用されるようなことは、われわれは全然考えてもおりませんし、またそうあつてはなりません。嚴にこういつたような問題に対しては、慎んでもらいたいというような意味を加味した、通牒と言うか、指示と言うか、そういうものをつけ加えてみたいと思つております。御意見にはどこまでも善処したいと考えております。
○前田(榮)委員 私の質問した内容の精神は、一党一派に関する取締りと申しましても、いろいろあるのでありまして、たとえば一枚のビラが張りつけてあつても、これは共産党的だから取締る。これは民自党的だから取締らない。こんなことはどんなに軽薄な地方官吏といえどもやるお考えはない、やろうと思わないのであります。ただ問題は、そういう張るビラが、一般労働組合やその他の社会運動をやつている者といたしましては、大体この戰術を——すなわち現在の労働力と現在の資力というものの上に立つて、これが最も近道で、これが最も徹底しやすい方法です。たとえば新聞雑誌その他のことによつて徹底させると言いましても、現在の文化の程度でそれは不徹底に終り、またそれらを十分に利用することは資金が許さない。こういう観点からビラ戦術というものが常識的に使われておるのであります。しかもそのビラにつきましては、このごろの紙の不足、あるいは紙の價格の高いこと、こういう点から勢い古新聞等を利用しなければならぬのは、当然なる帰結なのであります。これを圧迫するということは、むしろ憲法の條章における二十一條の違反行為の範囲に入るおそれは十分あるのであります。從つてこのわれわれの今申し上げようとするのは、民自党と共産党の違いの派閥的な取扱いをしようというのではないのでありまして、今の政府の態度は、この労働組合やその他の運動をこれによつて非常な制約をされるものである。こういうことはお覚悟の上でこれを制定されたかどうか、そういうことは全然ないとお思いになるのかどうか、この点を明らかにしておかれたい。
○内海政府委員 もちろんそういう労働運動であるとか、あるいはその他の社会運動であるとかいうようなものを取締るために制定された法律ではなく、この法律の目的とするところは、市街なり、あるいは名勝地なり、そういつたところの風致美観を保持するということを主眼点としてできたのでありまして、労働運動やあるいは政党運動などを考えてやつたのではございません。
○前田(榮)委員 それはなるほど、まさかそういう考えを持つているなどとはおつしやらないとは思いますが、これがために制約を受けるものであるということだけの、見通しがつかないわけはないと思う。これらの運動を圧迫し、これに一種の被害を加えようとする意思でなしに、本法の精神であるところの風致美観を害するとか、あるいは公共の危険を冒すようなことのないというところに立法の精神があることは、もちろんこれはわかり切つた話なのでありますが、そのつもりで、そういう考えでやつたら、結果としてそういう運動に支障があるということを、もつとお考えにならなかつたかどうか。事実上これによつてこういう制約を受けるなら、それならほかの方法をもつてこれを補わなければならぬということになります。かつて軍部、官僚のはなやかなりし時代に、あらゆる思想運動を圧迫した。その圧迫した結果はどうなつておるか。決してそれがきれいさつぱりに思想が善導されておらない。それらの思想はみな地下にもぐつておる。その地下にもぐつておるものが、必要以上にあるいは暴力行為に現われてみたり、きわめて秩序を乱すような状態になるのであります。そういう点を、政府はこの法案立案において考えなければならぬ。この法案を実施した結果、必ずなるという見解をわれわれは持つておる。政府はそういう見解をお持ちになつておらないのか。この点をひとつお尋ねする次第であります。
○内海政府委員 原案作成にあたりましては、やはりそういつた考えもないではなかつた。しかしそれは労働運動であるとか、一政党の運動を制圧するためにというような考えではなく、條文にもその当時規定いたしましたるごとく、安寧秩序を害し、もしくは風俗を乱るのおそれありと認むるものというような條文を入れておつたのであります。それをいろいろ論議いたしましたる結果、そういつたような不穏当な文字は避けようじやないかというので、削除しているところの事実から考察いたしましても、政府においては、そういつたいわゆる法律を惡用するという意思は断じてないということを、重ねて言明しておきます。
○前田(榮)委員 私は討論になるようでありますから、あまり追究はいたしませんが、ただ政府の御答弁になつた本案作成についての心持はわかるのであります。決してわれわれはその心持を曲解しようとは思いませんが、この法案を実施した結果が、いろいろな社会運動に事実上影響があるという点を、私は明確にいたしてもらいたかつたのでありますが、この点もどうもいくらお尋ねしても明確にならぬようでありますから、しいてこれ以上水かけ論みたいな答弁は求めることは差控えます。 その次にお尋ねいたしたいのは、大体廣告物法によるところの廣告者の問題でございますが、廣告者を本案によつていろいろ制限し、美観を阻害し、あるいは公共の危険をおかすという條件によつて制限をされようとしておりますが、これらのことは民主的な日本の文化國家を建設しようとする國民に対しては、みずからの責任において、こういうことをやらせるように法律をつくるべきものじやないかと私は思うのであります。從つてこの私の見解として廣告、ことに張紙、この点から言いますと、張紙に責任者を明確にさしておいて、そうしてその責任者が張紙の使命が終つたらあと取除かせる、こういうようにみずからの責任において、国民一人々々が日本國家の全体の都市の美観その他のことを守る、こういうことでなければ、いくら社会的訓練をしようと思つても、從來の日本のように、ただ官吏が何か命令してくれるわ、あるいはサーベルで何か指示してくれるわというような依存的なことでは、ほんとうに文化國民としての育成にはならぬと思います。從つてこの法律が、そういう点から私は一つの不備な点があると思うのでありますが、そういう点についての政府のこの法案に対するところの御意見を、お伺いいたしたいと思います。
○内海政府委員 重ねての御質問でありますが、実はその点は提案者である当局の考えと前田さんとの考えが少し食い違いがあるのではないかと考えます。先ほども申し上げましたるがごとく、地方自治法の改正と、さらに民法方面においては改正は加えられておる。そこで今日の公選知事によつて、しかも都道府縣民全体の公選による知事によつて、さらに府縣民が選挙したるところの都道府縣議会の議員によつて、そうしてこの法律のわく内におけるいわゆる條例を決定する。つまり都道府縣議会の自由にして、明朗なる氣分をもつて制定するところの條例によつて行うのでありますから、そこには決して官僚的色彩もなければ、また専制、独裁の意味もなく、今日までの明治四十四年以來の官僚万能時代の法律のおもかげがなくなつて、まことに民主的な屋外廣告取締法というものを、一つの規制といたしまして、その中に民選議員、民選知事によつて審議して條例を決定することになるのでありますから、その御心配はないのではなかろうか、こう考えております。
○前田(榮)委員 その手続についての民生的な方法云々という点には、別に私は疑義を持つておりません。しかし民主国家というものは、ただ府縣の團体やその他の團体だけが民主的な行動をすれば、民主国家はでき上るのではないのでありまして、八千万國民の一人一人が民主的でなければならぬ、またその精神が織り込まれていなければならぬという建前に立たなければならぬと思うのであります。そういう点で、廣告物をするその者が、その廣告物に一つ一つ責任を持つ、われわれが一歩街路を歩いても、街路を歩くそのものがあるいは啖をはくことはいけない、あるいは紙をばらまいてはいけないというような責任を持つ、こういうことでなければならぬと思う。そういう点から、廣告物法によるところのこれらの廣告者に責任を持たせて、そうしていたずらに今瀬戸山君や池田君からの質問にあつたように、あるいは地方の各府縣の取締りに差違ができてみたり、あるいは行き過ぎができるのではないかというような、御心配になつておる点はたしかにあると思う。そういうような心配のある方に頼らないで、個人々々に、ビラに対して、何の何がしが張つたという責任を明確にさしておいて、それは何日間という一定の制限を加えるか、あるいは演説会等であるならば、何月何日何時に演説をするという廣告をいたしたならば、その演説が終つたならばそれを取除かせるというようなことでやれば、何もそう大して廣告というような法律にいたしましても、いろいろなこの箇所がいけないとか、あるいは張り方が右に向いておるからいけないとか、左に向いておつてはいけないとか、これは風致を非常に害するとか、われわれからいうと、いらざる制限を加えて、あるいはこれが労働運動その他の、今日重要なる、健全なる発達を願われるところの、労働組合あたりの運動に支障を來すというようなことなしにこれができると思う。その点をなぜやらなかつたか、そういう点の御当局の御見解を願いたいと思う。
○財津政府委員 御趣旨はまことにごもつともでありまして、理想といたしましてはそういうふうに仕向けて行きたいと思うのでございます。しかし現段階におきましては、まだそれだけで美観を維持するという目的を達成するまでに至つていないと存ずるのでありまし。從いまして、ここには一應罰則を設けたのでありますが、しかし実際問題といたしましては、ただいまの前田委員の仰せになりましたように、そういうように、みずからの責任において守らして行くというような、指導をして行く必要があろうと存じます。またビラに対しましても責任者の名前を書かせるように、これは條例で定めたいと考えております。そういうふうにして行きまして、自然にお互いが責任を持つように仕向けて行くように指導して行きたい、かように考えております。
○前田(榮)委員 相当時間も経過いたしたようでありますから、私は最後に二件ほどお尋ねいたしたいと思う。前に瀬戸山君と池田君との質問の中にあつたのでありますが、瀬戸山君の質問の中の言葉では、張紙を見て非常に不快に感じ、風致を非常に害したとおつしやつたのであります。池田君の質問に対して、当局は、その書き方や色彩やそういうようなビラの内容には触れない、そういうことは、それによつてこれが風致を害するとか、その他の関係で取締標準を置いておらない、こういうようにお答弁になつたと思うのですが、これはそう解釈してよいのかどうか、この点。もう一つは、選挙法の取締りの上において、選挙にはビラが相当使われるのであります。もちろん大体今日の衆議院議員の選挙法は公営になつておりますから、そういう心配はいらないわけですが、しかしながらこれはただ衆議院の選挙法にのみ今使われておるのであります。將來どういう改正等が行われるかもわかりませんが、この選挙法による選挙の取締りのビラについては、特殊な考えが何もこれには規定してありません。その点は選挙に使われるものもこの中に含まれておるかどうか、またこれに対して何かほかの御意見があるかどうか、この二点をお尋ねいたします。
○財津政府委員 第一点につきましては、ビラの内容そのものには触れないのでございます。從つてビラの中身にどういうことが書いてあるかということについては触れないのでありますが、ただ色彩については取締りの範囲に属するのであります。ですからきわめて醜惡な色、あるいはあまりに見る人が嫌惡の情をもよおすような色彩があるとすれば、そういうものは取締る対象になります。それから第二の点については、ほかの法令で規定されておるものにつきましては、この法律は触れないのでございます。
○前田(榮)委員 色彩の問題でふに落ちぬ点があるので、もう一度お尋ねしますが、色彩は取締るが、中に書いてある文字等は取締りの対象としないという御意見でありますが、そういたしますと、文字は対象としないが絵画は対象とするというように解釈するのか、また色彩というものはただ色だけで憎惡というようなことはあり得ないと思うのですが、この点もつと明確にしていただきたいと思う。
○財津政府委員 色彩は、どういう絵が書いてあるかというような問題ではなくて、ちよつとその廣告を見た場合に、目に触れるその色が、きわめてあくどいとかというような場合に取締るのでありまして、大体色彩についてはそう取締りはないものだと存じます。
○上林委員 私質問に入る前に議事進行に関して発言いたしたいと思います。私どもも国民の代表として選ばれておるのでありまするから、重要法案の審議に対しましては、なるべくこの、審議を早めることに協力することについては、やぶさかでないのであります。そのために本日もまた時間を経過してもいろいろ質疑應答されておると思うのでありますが、なお残つておる問題も相当あると思いますので、本日は質問を一應打切つて、明日に持ち越してもらいたいということを提案いたします。
○淺利委員長 通告はあなただけが残つておるのでありますから、どうぞひとつ勉強してやつてください。あなたでおしまいですから——ちよつと速記をとめてください。 〔速記中止〕
○淺利委員長 速記を始めてください。
○上林委員 先ほど來の質疑應答で、風致美観の一般的な概念は、大体明らかにされたと思うのです。それが一つでありますが、都道府縣の條例によつてそれを取締るというようなことがあるのですが、その場合を考えて、ひとつ風致美観という点を具体的に明らかにするために御質問申し上げたいのであります。私ども、という言葉が妥当であるかどうかわかりませんが、農民運動、労働運動ないしは大衆的な立場に立つ政党運動をやつておるものから申しますと、いろいろな事情もありまして、りつぱな紙にりつぱな文字で、常にポスターならポスターを張るということができない場合もある。農民大会の告知をする、あるいは、税金の懇談会があるから集つてもらいたいというような案内の意味のポスターを張る、そういう場合に、りつぱな紙でポスターを張るということができない場合が多いと思います。たとえば新聞紙を用いるとか、あるいは官報の不要なものを利用するとかいうことを、非常に私どもは用いておるのでありますが、古新聞紙あるいはいらない物に書かれる文字は、必ずしも墨痕淋璃、あざやかに書かれない場合もあると思うのです。そういうものが風致美観を害することになるかどうかということを、つまり本委員会の法定解釈とでも申しましようか、それを明らかにしておくためにお伺いしたいと思います。
○財津政府委員 お答え申し上げます。いかなるものが風致美観を害するかどうかということは、ときと場所とによつても異なるのでありまして、ことに場所の関係はきわめて重要な要素をなすと思うのでございます。從いまして、どれが風致美観を害するから取締り、どれが風致美観を害さないものとして取締らぬかということは、條例を待つて、さらに具体的な問題に移すほかはないと存ずるのであります。必ずしもりつぱな紙でなければならない、あるいは新聞紙の場合にはいけないというようには考えておりません。また一時的なものでありますれば、さしつかえはないと思うのでありまするが、ただ定着される場合、べたべた張られるということは、やはり第二條に書いております一定の期間継続して云々ということに該当して行くものと考えております。
○上林委員 その問題についてもう一点お伺いしておきたいのですが、農民大会なり、あるいは労働組合の大会なり、あるいはいろいろなそれらに関連した会合を持つことを予告するために、ポスターを張るという場合を考えてみますると、集会を持つ前に取締られてしまえばすでにだめである。これはこちらからいえば圧迫と申しましようか、全然集会がぶちこわしになつてしまいます。それでこういう点ははつきりしておいてもらいたいと思うのです。大体そういうポスターは、こういうものを張ればこれだけの利益があると予想されるというような、営業者の非常にりつぱな告知とは全然異なる場合が多いと私は考えるのであります。從つて張る場所といえば、許されたる電柱とか、あるいは個人の建物なり、公共の告知板というものに限られておるというので、そういう所に張られておるポスターなりビラなりが、取締りの対象になるかどうかという点をお伺いしたいと思います。
○財津政府委員 今のお尋ねの、たとえば講演会を開く告知をするというようなビラに対しましては、これは何も内容を言うわけではありませんが、そういう一時的なものに対しましては、できるだけ取締りたくないと考えます。ただやはり電柱などにべたりとくつつけられますと、これははがすのにたいへんでございます。從つてやはりこれは相当の期間継続して張られるものと同じように見なさなければならないのではないかと考えます。この法案を施行しまして、條例ができましたならば、できるだけ多く告知板等を設けさせるように指導いたしたいと考えておりますから、そういう場所に張る、あるいはこれは実際問題としては、そう行かないかとも思いますが、ピンでとめるとか、つまり期間が來たらすぐはがしてしまえるというような状態において張られるならば、そういうものは一時的なものとして取締らない方針でございます。
○上林委員 先ほどちよつと申し上げました通り、そういう目的を持つて、大会なりそういう集会を持つ場合に、集会の以前に取締られてしまえばそれはもう目的を達することはできないので、そういう場合を救済する道はどこで開かれておるか。法制の建前は都道府縣知事にまかされているような形ですが、それで必ずしも全國の都道府縣知事の意見が一致するとは思えない。それを救済する方法は、どこでその道が開かれておるかという点をお伺いしたい。
○財津政府委員 第一に、この條例をつくります場合に、そういう種類のものは、できるだけ取締らないようにこの條例で規定することができると思います。なお実際問題といたしまして、そういうビラが除去されるという場合がありましたときには、それは第八條に基いて救済をして行くことになろうかと思います。
○上林委員 ただいまの説明で大体了解いたしましたが、希望として條例をおつくりになる場合に、そういう救済規定を一つ置いてもらいたいということを申し上げまして、これに関する質問は終りたいと思います。 その次に御質問申し上げたい点は、私らから言えば突如としてなんですが、先ほど屋外廣告物法案に対する修正案が私どもに配付になつておるのです。そこで私は速記のないときに一應御質問を申し上げましたが、私ども承つたところでは、これは政府の提案でもなければ、議員から提出された修正案でもない、法制局長の修正試案であるということを聞きましたが、かつてこういう例があつたかどうか、この点をまずお伺いいたしたいと思います。
○内海政府委員 法律案が上程されましたときに、あるいはそれに利害関係を持つた團体なり、または個人なりから、いろいろな修正意見が出ることはあなたも御承知の通りであります。また委員個人としても、その法律の審議に当りまして、いろいろな希望もあり修正意見もあるということは、御承知であろうと思います。先ほど法制局長がお見えになつて、われわれの前に指示せられました修正案なるものは、やはりその一つではないかと思います。この修正案に対しては、政府としてどういうように扱うかと申しますと、われわれが現段階においていやしくも確信を持つて提案いたしましたる以上は、原案をもつて最も妥当であるということを考えまして、まず委員会の修正意見が出まして、委員会において多数をもつて修正意見を可決いたしましたときにおいては、それに対して態度を決するのでありますけれども、この修正案に対しましては、前段同様私としてはどこまでも政府原案をもつて正しいものと考えるほかはございません。
○淺利委員長 上林君に申し上げます。今のは法制局長試案というようなものでもないのであります。先刻法制局長の説明されました通り、ある方面からの勧告が出た、その勧告を委員会において取上げるならば、こういう形でやつたらどうかということで、かりに案をつくつて見て委員会の参考に供したにすぎないというのでありまして、修正をするかしないかは委員会の判断でやつて行くということでありますから、その点はよく御了承願います。
○上林委員 委員長のお話はよくわかりましたが、政務次官の御答弁は私はなはだ了解に苦しむのです。個人的にせよ、團体からにせよ、修正意見はいろいろ出されると思う。かし先ほどの場合は正式に委員会が開催されているということをよくお考え願いたいと思う。休憩の時間ないしは理事会の懇談会という場合であれば、今の政府次官の御答弁が当てはまるのではないかと思うが、先ほどの場合は正式に常任委員会が開催されておつたのですから、そういう場合とは全然意味が違うのではないか。これは先ほど速記中止中でありましたが、今後の前例になるおそれがあると思う。しかし法制局長のお話を聞いておりますると、内容については答弁する何ものもない、あるいは批判の何ものもないという意味に受取られる御説明があつたのであります。それが内容に触れておる、しかも政府原案を修正するという重大な問題を突如として正式の委員会に持出されるということに対しまして、私は納得が行きかねるのです。その意味ではただいまの政務次官の答弁では私は不満です。その点正式の常任委員会であつたという前提のもとに立つて、もう一度御答弁願いたいと思います。
○淺利委員長 ちよつと申し上げておきますが、その案は修正案と見る必要はないので、法制局が委員会の参考の資料として持つて來たものにすぎないのでありますから、そこは誤解のないように願います。
○上林委員 しかし先ほどの答弁は懇談会と混同しています。もう一度政務次官に御答弁願いたい。
○内海政府委員 それではもう一度御答弁を申し上げます。先ほどのは提案というよりも、むしろ政府並びに委員会に対して、こういう意見もあるのだがどうかという相談であつて、一種の試みの参考の案であります。それをまともから受けて政府が同意するのせぬのという次第のものではない。私は、そういう懇談的、相談ずくのものを頭から取上げて、どうこうという次第のものではないから、政府としてはあくまで政府提案の原案を支持するほかはないと申し上げたのであります。
○上林委員 懇談会の席上に持出されたものをあえて問題にしているかのごとく答弁が受取れるのです。その点をはつきりしていただきたい。
○内海政府委員 決して問題にしているわけではありません。どういうように扱うか、これに対してどういう考えを持つておるかという御質問のようでありましたから、私が申し上げたのであります。どうぞ誤解なく御了承願います。
○淺利委員長 速記をとめて。 〔速記中止〕
○淺利委員長 それでは速記を始めてください。
○池田(峯)委員 この屋外廣告物法が憲法違反になる疑いがあるものですから、わざわざ御足労を煩わした次第でございます。この「美観風致を維持するために必要があると認めるときは、市及び人口五千以上の市街的町村の区域について、屋外廣告物の表示及び廣告物を掲出する物件の設置を制限することができる。」とか、あるいは「美観風致を維持するために必要があると認めるときは、廣告物及びこれを掲出する物件の形状、面積、色彩、意匠その他表示の方法について禁止又は制限をすることができる。」こういうことがずつとこの法案にうたわれているのでありますが、私正式に法務廳の御見解をここで伺つておきたいのであります。つまり憲法第二十一條の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」という條文と、本法案に盛られております内容との関係、これについて御見解をお伺いしたいと思います。
○殖田國務大臣 この法案は、憲法に申しまする公共の福祉のためにその自由を制限するという結果になるので、公共の福祉のためにやむを得ざる規定として出て來るものであると思います。
○池田(峯)委員 憲法の第十二條にはなるほど「公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。」「國民は、これを濫用してはならない」というのがありますけれども、その前文に「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、國民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」こういうことになつております。從つてこうした民主的な諸権利は、國民の責任において、國民の不断の努力によつて、それが濫用にならないようにすべきでありまして、これが上から法律として国民を取締るというような形式で出されることは、いささか逆に、この憲法の公共福祉ということを利用して、上から統制を強化しようというように考えられるのでありますが、その点はいかがでございますか。
○殖田國務大臣 政府で提出をいたしました法案でありますけれども、これは法律となります以上は國民の法律でありまして、国民が自分の意思をもつて公共の福祉のためにさような取締規定を設けたい、それがつまり不断の努力の現われであると私は思います。
○池田(峯)委員 それでは今度はこまかいところで質問したいと思います。第五條では美観風致を維持するために必要があると認めるときは、廣告物及びこれを掲出する物件の形状、面積、色彩、意匠その他表示の方法、これを制限し、あるいは禁止するのです。そういたしますと、実際上これを表示する場合に、この形ではいかがでございましようか、この色彩では法に触れないでございましようか、この面積ではいかがでございましようか、こういう意匠ですがどうでしようか、こういうことを一々縣廳の縣知事にお伺いを立てなければならないことになる。この千差万別の廣告物を、一々條例に規定するということは困難でございます。それは先ほど政府委員もそう言つております。從いまして都道府縣知事が、これじやいかぬ、あれじやいかぬというように、一々検閲するという形になつて來ると思う。これはやはり憲法違反だと思う。検閲はこれをしてはならない。これは事前検閲になる。明らかに事前検閲をやらなければ、実際にこのことを実行することができなくなります。この点はどうでございますか。
○殖田國務大臣 それは実際に出て参ります條例の内容いかんによりますけれども、條例がもし非常に行き過ぎたものでありまするならば、憲法違反の問題が起つて來ます。しかしながらいやしくも博識ある都道府縣知事におきまして、あるいはさような憲法違反の條例をつくるとも思えません。また実際今のお話のごとく、一々あらかじめ事前検閲を受けるというようなことは決してないと思います。しかしそれは現在においてもさような取締りはあるのでありまして、そうして不十分ではありますけれども、相当な成績もあげております。さような行き過ぎの——ごく行き過ぎた場合は別でありますけれども、普通の場合でありますならば、決して御心配はないと考えます。それからまた常識的に考えましても、ずいぶん風致を害するような看板も出て参りました。何とかあれは取締れないものかと、これは何人も思うのであります。つまりこれはそういつた國民の考え方に合致する法案であろうと思つております。
○池田(峯)委員 ただいま法務廳総裁は、どうもおかしな看板も出ておる。これは取締らなければならないというようにおつしやいましたけれども、先ほど政府委員の方では、内容については問題にしないとおつしやつておる。そうするとこれは法務廳の見解と大分違つて來ると思いますが、どうでしようか。
○殖田國務大臣 内容ではございません。外に現われた形状、色彩等について申すのであります。
○池田(峯)委員 外に現われた形状、色彩というのがはなはだ不明確でありますから、われわれが先ほどから問題にしているのです。今法務廳総裁は、そういう非常識な都道府縣知事はないだろうとおつしやいましたけれども、たとえば大阪府の公安條例とか、福井の公安條例とか、非常にこれは憲法違反であるといつて糾弾された問題があつたのです。そうして実際にあれは憲法違反の疑いがあるといつて一部修正されたのです。実際にそういう事例があるのでありますから、必ずしも全國の都道府縣廳が、さような非常識なことをしないということは、現在の日本においては保証の限りではないのであります。でありますから、われわれ衆議院議員が、ここへあなたをわざわざ呼び出して問題にするわけなのでございます。 そこでもう一つ質問したいのですが、第三條の「條例で定めるところにより、美観風致を維持するために必要があると認めるときは」云々という條項ですが、こうなりますと、この地域を一括して、その地域全体においていかなる看板、いかなる表示も全部これを禁止するということになるのでありますかどうか、それをお伺いしたい。
○殖田國務大臣 極端に申せば、あるいは禁止することができるかもしれませんが、しかしこれによりますと、設置を制限することができるとありますから、絶対に禁止することはできないのではないかと思います。
○池田(峯)委員 そうするとあるものによつては設置を制限し、あるものによつては設置を許可するということになりますか。
○財津政府委員 私からかわつてお答え申し上げます。第三條の場合は許可を得ることになると思いますが、その前に條例におきましては、規格をきめるということになると思います。たとえば大きさについては、何尺四方のものはいけないとか、あるいはこういうものはいけないとかいうような見本を示しまして、そういう悪い見本に合致しない以上は、すべて許可を與える、こういうことになると思います。
○池田(峯)委員 そこがはなはだ不明確なのですが、たとえば人口五千以上の市街的町村の区域について、そういう物件の設置を制限するという場合に、たとえば市町村の掲示物のごときものも全部一様に制限の対象になるものかどうか、それともそういうものはいいが、こういうものはだめだというような規定になるかどうかということなのです。
○財津政府委員 内容については全然問わないのでありますから、内容ではなくて、規格を定めるというだけの問題になります。ことに今御質問の点によりますと、人口五千以上の市街的町村の区域においてはどこでもそういうことが起り得るのではないかというようにお考えになつておるのじやないかと聞えたのでありますが、これは特殊の所でありまして、大体第三條が適用になる場合はそうたくさんはないものと考えております。
○池田(峯)委員 それではもつと具体的に申します。たとえば市街地建築物法の規定によれば、指定された住居専用地区または美観地区というのがある。ここで一切禁止するということになると、たとえば指導標だとかそれから役場の公示板、こういうものも撤去しなければならぬ。もつとひどいことを言いますと、史蹟名勝、天然記念物の保存法により指定された地域の立看板——これはどういう由來のもので云々、源義経がどうのこうのというような説明事項も廣告だということになつて、これも制限されるということになる。これはよいとして、こういうのは置いてはいかぬというように、結局内容に対する制限がここから出て來ざるを得ぬと思うが、その点どうお考えになりますか。
○財津政府委員 ただいま御質問になりましたような場合については條例できめるのでありまして、條例において、たとえば例をお引きになりました天然記念物の説明のごときものについては、これは除外するというような規定が條例の中でもしうたわれたとしますならば、それは除外されるわけでございます。しかし一應この法案の中味には入つておるわけでございます。
○池田(峯)委員 それでは法務総裁にあらためて質問いたしますが、美観風致というようなことで國民の表現の自由を拘束するということと、この美観風致という概念から拘束されて非常に困る階級が現実にあるのであります。それはたとえば労働組合であるとか、あるいは共産党とか、社会党とか、労農党とかいうような、すなわち現政府と闘争をしている團体があるわけです。これは現政府と闘争しなければ自己の権利を守ることができないといいう建前で闘争しておるのであります。闘争という過激な言葉を使いますと、法務総裁はへんに聞くかもしれませんが、いろいろな要求をし團体交渉をし、團体的な行動をする自由ははつきりとうたわれておるところでありますし、極東委員会の十六原則においても、ポツダム宣言においてもはつきりとうたわれておるところであります。美観風致というような概念で、そういつた運動がいささかなりとも妨害される、ないし拘束制限されるということがあつては、これはまた憲法違反になる。憲法の自由を拘束されることになると私は考えるのでありますが、そういう点いかがでありますか。そういう團体交渉、政治運動、労働運動の自由ということと、美観風致を守るということとどつちが重いか、憲法上どつちに重点を置いて問題を処理しなければならないか。將來こういう紛争は以ず起きるのでありますから、そういう場合にどつちに重点を置かなければならぬかというような点について、法務総裁の明確な御答弁を伺つておきたいと思うのであります。
○殖田國務大臣 非常にむずかしい問題でありますが、結局國民が美観を維持したい、美観に與えるバリユー、それからただいま申しましたような闘争行為の自由に対するバリュー、これは権衝論であります。國民がどつちが重いかと考え、重い方が自由をよけいに感得するわけであります。重くない方が制限されるわけであります。それは國民のディスクレッションに任せるほかはないと思います。從つてこれは條例を制定する都道府縣の縣知事が、國民の叡知を代表いたしまして考えることだろうと思います。それをとうてい常識をもつて考えられないような條例をつくるようであれば、都道府縣知事はその任にたえざるものである、また國民全体がさようにはなはだ理性に欠けた処置をするならば、この國民は憲法を維持するに足らない國民だと思う。そういうことはないと思うのでありますから、まず國民の常識に訴えて憲法の大きな精神から考えまして、調和のある運用ができて参ると思います。この法律自体は決して悪いものではありません。私はりつぱな目的を持つておると思う。よきインテンシヨンを持ち、そのインテンシヨンにかのうごとき立法であると思います。さように御心配の点はいろいろございましようが、これは実際の今後のこの法律の運用によつて考えていただくほかはないと思います。極端なことを考えれば、これは心配は際限がありませんが、私はさような心配は、日本の國民においてないと考えます。ことにこれはお話を伺つておりますと、都道府縣知事に任せずして、國会が詳細な規定を設ける方があるいはお考えに合うかもしれません。しかしながら風致のごときものはその地方々々によりまして特殊な味を持つておるものでありますから、その地方團体において考えることが最も適切ではあるまいか、自治の精神にもかなうゆえんではあるまいか、こういう意味でこれは都道府縣その他の地方團体の條例に任してあるものと考えております。御懸念の点は私も重々考えないことはないのでありますが、まずもつてさような心配はあるまいと考えまして、この法案に私どもは賛成をしておるわけであります。
○池田(峯)委員 最後に、法務総裁としては、この法案がそういうふうに実施されないことを願う意味で、本案の附則についても、日本の労働運動ないし政治運動、自由な組合運動、こういうものを取締るがごとき意図を持つていないというような意味を、つけ加えた方がいいという考えはお持ちになつておりませんか。
○殖田國務大臣 お話のごときことであれば、いかなる法案にも、これは憲法に違反してはならぬ、これは憲法の精神に抵触してはならぬと書くべきでありますが、それはもう憲法治下の常識でありまして、その必要はないと私は考えております。
○淺利委員長 これにて質問は大体終了したものと認めます。お諮りいたします。本案に関する質疑をこの程度において終了いたすに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○淺利委員長 御異議なしと認めます。これにて質疑を終了いたします。 ちよつと速記をやめて……。 〔速記中止〕
○淺利委員長 速記を始めてください。 それでは本日はこれにて散会いたします。なお明日は午前十時からの予定ですから、定刻に御参集願います。 午後七時三十三分散会