法務委員会 第5号
- 発言数
- 83 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1948/12/13
会議録
○高橋委員長 これより会議を開きます。 裁判官の報酬等に関する法律案の一部を改正する等の法律案及び檢察官の俸給等に関する法律の一部を改正する等の法律案、この両案を一括議題とし審査を進めます。 この際委員長より御報告いたします。政府が右両案について議案を修正するために國会法第五十九條によつて院の承諾を求めた結果、昨日本会議において右修正が承諾せられました。まずこの修正について政府より御説明をお願いします。
○岡咲政府委員 政府の修正案について簡單に御説明申し上げます。 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する等の法律案の第二條によりますと、最高裁判所長官、最高裁判所判事及び高等裁判所長官の報酬につきまして増額された月額は、昭和二十三年六月一日から十月三十一日までの間のものにつきまして、これをさかのぼつて支拂う旨の規定がございましたが、この規定を削除いたすことにいたしました。その理由は、内閣総理大臣そのほかの特別職の認証官たる官吏につきまして、六月一日にさかのぼつて俸給を支給する旨の規定がございませんので、その趣旨に準じまして、この第二條の規定を削除いたしたわけでございます。そのほかのものにつきましては、この第二條の規定を削除することに必要な改正規定を改正いたしただけでございます。檢察官の俸給等に関する法律の一部を改正する等の法律案につきましても、ただいま申しましたような趣旨におきまして、檢事総長、次長檢事及び檢事長の遡及支拂いに関する規定を削除いたしまして、その削除に伴う必要なる字句上の修正をなしたものでございます。
○高橋委員長 以上のごとく修正せられました政府原案について審査を進めます。両案について御質疑はございませんか。
○石川委員 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する等の法律案及び檢察官の俸給等に関する法律の一部を改正する等の法律案でありますが、この表に掲げてあります給與は、今度の國会において給與のベースがかわりました場合、たとえば五千三百七十円ベースが六千三百八円ベースになりました場合におきましては当然変更されなければならぬと思うのでありますが、政府はその場合においてはただちにこの給與を変更して、裁判官並びに檢察官に迷惑をかけないように、ただちにその利益を均霑せしめるような御処置をとられるかどうかをお聞きしておきます。
○宮下政府委員 仰せのように、この法律案は一般政府職員の総平均月收五千三百三十円ベースを基準とした俸給案でありますので、もしこの平均月收のベースが上りますれば、その変更に準じてこの表を訂正して、さらに御協賛を得たいと考えております。
○高橋委員長 それでは質疑もないようでございますから、質疑はこの程度で終局し、討論に移りたいと存じますが、御異議はありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なしと認め、質疑はこれにて終局いたしまして、討論に移ります。討論は通告順にこれを行います。
○佐藤(通)委員 民主自由党を代表いたしまして発言をいたします。裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する等の法律案、檢察官の俸給等に関する法律の一部を改正する等の法律案に対しまして、政府の方から出されました修正案に対しましてわが党といたしましては賛成の意見をここに表明するものであります。
○猪俣委員 日本社会党を代表いたしまして、政府の修正案に賛成いたします。
○酒井委員 國民協同党を代表いたしまして、ただいま上程の政府修正案に賛成いたします。
○高橋委員長 討論は終局いたしました。それでは両案を一括して採決いたします。 右両案は政府原案のごとく決するに、賛成の諸君の御起立を願います。 〔総員起立〕
○高橋委員長 起立総員。よつて両案はいずれも全会一致、政府原案の通り可決されました。 なお両案の取扱い、その他委員長報告書等の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なしと認め、そのようにとりはからいます。 —————————————
○高橋委員長 続いて刑事補償法を改正する法律案を議題として審査を進めます。
○石川委員 お伺いいたします。これはわかりきつたことでありましようが、一つ明確にお聞きしておきたいのであります。この刑事補償法における補償の意義が、憲法の四十條における補償の意義と同一であるかどうかをお聞きしたいのであります。
○岡咲政府委員 刑事補償法を改正する法律案におきまする刑事補償法の本質と、憲法四十條に規定されておりまする刑事補償の本質は同一と思量いたしております。
○石川委員 憲法によれば何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、國にその補償を求めることができる。」と規定してあります。またこの第一條の第一項の末尾に「抑留又は拘禁による補償をする。」とうたつておりますが、その補償の限界については、憲法と改正案の第一條とではいささか異なるものがあるかに思われるのでありますが、この点をまずお聞きしたいと思います。
○岡咲政府委員 憲法四十條によりましても「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより國にその補償を求めることができる。」となつておりますので、改正案の第一條の第一項の「抑留又は拘禁による補償」も、從來の未決拘留の補償を廣めまして、全般的の抑留または拘禁すべてに権限を廣めたのでありましてその間にいささかも矛盾はないと考えております。
○石川委員 四十條によればなるほど「抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受け」とありますが、この場合の規定の意味は、抑留または拘禁された、その事実に対する補償のように見えますけれども、起訴されまして、抑留も拘禁もされずに、無罪の判決を受けました場合には、四十條はこれを除外するという意味でありますか。
○岡咲政府委員 私といたしましては、憲法四十條は無罪の裁判を受けた者が、その刑事手続において抑留または拘禁という重大な侵害を受けておりまする場合に、國家が刑事補償をするというふうに解釈しておるのでありまして、無罪の判決を受けた者でありましても、その刑事手続において何ら抑留、拘禁をされておりません場合には、憲法としてはこれに対して補償をしなければならないということを要求しておるものとは思つておらないのであります。
○石川委員 その点は明かにいたしましたが、今度は補償の意義をもうちよつと明かにしていただきたいと思います。過日の御説明で、当初適法の行為と思つてなした行為が、結果において不適法になつた、その不適法になつたためにこうむつた損害の補償である、このような御説明であつたのでありますが、この補償の意義は、受けた物質的損害の填補のみを目的とするのか、精神的に受けた損害の填補、慰藉というものも目的とするかということについて、お聞きしておきたいのであります。
○岡咲政府委員 昭和六年に刑事補償法が成立いたしました当時におきましては、当時の政府は、刑事補償法の本質を單なる恩惠あるいは國の仁政、あるいは恩惠的慰藉というような説明をいたしておつたのでありますが、これに対しましては、その後の学者も全部反対をとなえておりまして、單なる國家の恩惠ではなく、あくまでもそれは法律関係であるということが通説になつておりまするし、また憲法四十條が新たに刑事補償請求権を憲法上の権利として認めておりまする点をも考慮いたしまして、今回の刑事補償法改正法律案におきましては、刑事補償法の本質を單なる恩惠あるいは慰藉という程度のものとは考えておりませんで、前会にも申し上げましたように、その手続をいたします当時は適法な手続でありましたのが、結果においては不当な結果が判明いたしました場合、それによつて生じた損害を國家、社会の公平的な観念から、できるだけこれを補填するという考え方を基本にして、この改正案をつくつたのでありまして、從いましてこの刑事補償は、その者の受けました全損害を償つてやるという考え方でもございませんし、また反面、何ら損害のない者でありましても、一定の標準の補償はしてやる、言いかえますれば、公平の観念から平均的な補償をしてやるという考え方が基本になつておるのであります。現実に生じました損害全部を補填するという考え方でもございませんし、法律が規定いたしておりまするような二百円ないし四百円の範囲におきまして、何ら損害のない者に対しても平均的に補償はするという考え方に立つておるわけでございます。
○石川委員 ただいまの御説明でわかるような氣もいたしますが、もし損害を填補するということがこの原則の一部にあるといたしますならば、一体二百円ないし四百円という填補の限界はどういう意味から出て來たのでありましようか。ただいまの御説明のように、損害を受けなかつた者にも補償をする、損害を受けた者にも補償をするという、その限界が二百円ないし四百円だというその限界の見方でありますが、これはどこから出て來たのでありましようか。
○岡咲政府委員 最近におきまする國民の收入の大体の平均を考えまして、一日二百円ないし四百円が妥当ではないかと考えたのでありまして、この場合本人が抑留または拘禁を受けておりまする場合においては、國家からすべての食事等の支給も受けておりまするし、たとえて申しまするならば、全然收入のない者が抑留または拘禁を受けました場合には、この金額では、場合によつてはその者にとつては利益になるということも考えられるかも知れないと思います。また多くの普通の人でありまするならば、抑留、拘禁を受けず、社会的な普通の事業を営み、普通の活動をいたしておりまするならば、それ以上の收入があつたものとは思いますけれども、先ほど申し上げまするように、平均的な國民の收入というものを基準にいたしまして、二百円ないし四百円という数字を出したわけであります。
○石川委員 もう一つ疑問の点を伺つておきますが、憲法四十條における補償は、なるほど「法律の定めるところにより、」と書いてありますが、そのような限界を定めて、実際受けた損害以下であつてもいいというように読まれないと思いますが、どういうようにお考えになりますか。
○岡咲政府委員 憲法第十七條におきましては、國または公共團体の機関が不法行為によりまして損害を加えました場合には、損害賠償をするという規定がございますので、この場合におきましては、あくまでもその本質は損害賠償でございまして、その不法行為によつて生じた全損害を賠償するものと考えております。しかしながらこの憲法十七條以外に、憲法が特に憲法四十條という規定を設けました趣旨は、刑事手続はこれを行いまする当時においては適法な手続ではありまするが、もしその結果が無罪となりますると、適法な手続ではありまするが、結果においては不当ということになりましたので、これをそのまま放置いたしておきまして、この手続によつて損害を受けた者に対して何ら損害の補填をしないということは、公平の観念から申しまして看過できないことでありますので、憲法十七條の言うがごとき損害賠償のほかに、刑事補償という制度を憲法がつくることを要求しておるものと考えるのであります。このように刑事補償というものは、損害賠償のごとく全損害を補填するものではなくして、國家といたしましては全体の利益のために、あくまでも場合によりましては、人権を侵害する危險を内包いたしまする刑事手続をやむを得ず遂行しなければならないわけでありますが、このような刑事手続は國家全体の見地からどうしても遂行する、これによつてもしもそれに過誤があつた場合は、國家全体から見てこれをある程度補填しようというのが刑事補償の根本的な考え方ではないかと思つておるのであります。このような考え方から申しまして、個々の場合に生じました全部の損害を補填する必要はないのではないかという考え方から、今回の改正案のような、公平の観念から一定の制限された損害の補填という考え方をとつて、この案が立案されておるのであります。
○石川委員 一体この補償は、補償を受ける側からいいますと補償請求権でありますが、本質的にはどういう権利でありましようか、この前には一身專属権だという御説明でありましたが、財産相続権なのかどうか、その本質を承つておきたいと思います。
○岡咲政府委員 通常の財産権とは考えておらないのであります。從いまして法案におきましても、補償請求権の相続ということは考えておらないのであります。この補償権限があります本人に補償をする。それでもしもその本人が死亡いたしました場合におきましては、あるいは法律の立て方といたしますならば、それで補償は打ち切つてしまうというようなことも考えられるのでありまするが、すでに現行法において遺族に対する補償ということも認めております点を考慮いたしまして、單なる本人よりも少し範囲を廣めまして、その本人の身近におりまして、本人とともに刑事手続による不当な損害に苦しみました近親者に対して、ある程度の補償をするという立て方をとつたのでありまして、この本質はやはり一身專属の補償請求権であつて、單純なる財産権とは考えておらないのであります。
○石川委員 その考え方から讓渡を許さないという規定をおいたのでありますか、讓渡を許さないという規定をおきました理由をお聞きしたいと思います。
○岡咲政府委員 御指摘のように、改正案十八條におきましては、初め補償の決定がございました場合に、その補償の決定を受けた者が補償拂渡の請求権を取得するのでありますが、この権利も、なおかつ他に讓渡することができないという規定を設けたのであります。これはその補償の補償請求権の本質が一身專属の権利であるという点を考慮いたしまして、その点から十八條のような讓渡禁止の規定を設けたのであります。
○石川委員 この補償を求むる側から参りますと、このようなきゆうくつな権利ではなくして、讓渡の許される一つの権利であることが望ましいものではないでしようか、そういう法律がおありになりませんでしようか。
○岡咲政府委員 補償の決定がございました以上、國家といたしましてはその決定を受けた者に対しまして、その請求によつて補償金額を支拂つてやればいいのでありまして、この補償拂渡の請求権の讓渡まで認める必要はないのではないかと考えております。また補償決定を受けた者といたしましては、その補償の拂渡を受ければいいのでありまして、必ずしも讓渡を許すという規定を設けなくても、補償決定を受けた者に対してさして不利益をこうむらしめるものとは考えておらないのであります。
○石川委員 從つてこれは差押等の強制執行の目的にはならないということになりますでしようか。
○岡咲政府委員 拂渡を受ける前におきましては、強制執行の目的にならないと考えております。
○石川委員 この刑事手続において無罪になりました場合、被告に收めさせておつた費用はどうなりますか。
○岡咲政府委員 今回の改正案におきましては、その刑事手続に要しました刑事訴訟費用を被告人に負担させておつたものは返還して補償するという考え方はとつておらないのであります。
○石川委員 無罪になりました場合に、それを返還する必要はないでしようか。
○岡咲政府委員 そこまで行く必要はないと考えたのであります。
○石川委員 第四條に参りますが、その前にちよつとお聞きしておきます。この第四條はこの間問題になつたのでありますが、健全なる裁量という言葉がありますが、この健全なる裁量をこの第四條から拔きました場合はどうなりますか。解釈としては同一の結果にはならないでしようか。
○岡咲政府委員 第四條から「裁判所の健全な裁量により、」という言葉を拔きましても、解釈といたしては同一の結果になると考えております。
○石川委員 これは実例で一つお聞きしておきたいのでありますが、四條の二項でありますが、この場合「一個の裁判によつて併合罪の一部について無罪の言渡を受けても、他の部分について有罪の言渡を受けた場合」には「健全な裁量により、補償の一部又は全部をしないことができる。」ということになりますが、たとえばことに詐欺と窃盗で起訴せられた者が、詐欺は非常に軽かつたが、窃盗の方があつたために拘留せられたという場合には、一方が無罪になり、一方が有罪になつたという場合には、健全なる裁量はどう働いて來るという御予想ですか。
○岡咲政府委員 御質問のような場合には、むしろ健全な裁量は全額の補償に傾くものと考えております。
○石川委員 次に第五條になりますが、附加的補償という言葉があります。これはどういう意味ですか、これはどういう補償のためにできたものですか。これは精神上に受けた苦痛に対する意味と解釈しなければならないのじやないのですか。
○岡咲政府委員 刑事補償の根本的な考え方といたしましては、刑事手続を進めましたがために本人に損害を生ぜしめたということを考慮いたしまして、その本人を中心にして刑事補償を考えるという立場に立つておるのでありますが、その趣旨は第二條第三項におきまして、遺族に対しまする補償の額についても「本人が受けるべきであつた額又は本人が生前無罪の言渡を受けたならば受けるべきであつた額に等しくなければならない。」という規定を設けまして、この第二條において遺族の補償請求がありました場合におきましても、裁判所は本人を中心にして補償の額の決定をいたすのでありまするが第五條の第三項におきましては、すでに死刑の執行を受けた者の遺族から補償請求がありました場合には、この第二條によりまする本來の本人が受けるべき補償を支拂いますことはもちろん、これ以外に附加的な補償といたしまして、第五條第三項の補償をするという規定をいたしたのであります。從いましてこの場合の補償は、本來の本人が受けるべき補償に附加するという意味で、附加的補償という言葉を用いたのであります。御指摘のように、多分に慰藉料的な要素が含まれておるのであります。但書にございますように、單なる慰藉料ではなくして、その場合にその遺族が現実に財産上の損失を受けておりまする場合においては、その損失額に一万円を加算した額の範囲内で裁判所が額をきめますので、單純なる慰藉料と申すこともできないかと思いますが多分に慰藉料的な考えが基本になつておるということは、御指摘の通りであります。
○石川委員 死刑になりました場合には、これはまず無罪になりました本人に対する拘禁による補償として、二百円ないし四百円の補償と、それにこの第五條の三項に書いてあります補償を受けるべき者が現に生じた財産上の額と、これに一万円という範囲の附加補償がなされるのだと承知すればいいわけですか。
○岡咲政府委員 本來の補償といたしましては、御指摘のように抑留、拘禁による補償と、もしその者が判決を受けました後で、刑法第十一條第二項によつて拘置を受けておりますならば、その拘置による補償、このすべてを拂いますほかに、第五條第三項の附加的補償をいたすのであります。附加的補償は、現実の補償額に一万円を加算した額の範囲内で裁判所が定めるわけでありまして、二本建に、本來の補償と附加的補償と両方が一緒に拂われるということに相なるわけであります。
○石川委員 警察における留置でありますが、これは補償の対象になつて参りますか。
○岡咲政府委員 第一條第一項によります抑留または拘禁による補償の中には、改正刑事訴訟法百九十九條によりまする通常逮捕、二百十條によりまする緊急逮捕、二百十三條によりまする現行犯逮捕、拘引、拘留、百六十七條によりまする鑑定留置、このすべてを含んでおるのでありまして、御指摘のように適法な手続によりまして警察において建捕して留置した日数というものも、当然に対象の日数の中に入るのであります。
○石川委員 警察において留置したということは、刑事訴訟規則では今度起訴状一本になりますが、これをどこで証明してくれるのですか。
○岡咲政府委員 十二月一日の官報に掲載されております刑事訴訟規則におきましても、起訴いたしました場合における逮捕状、勾留状等の令状は裁判所に差出すことになつておりますので、これが訴訟記録として添付されまして、しかもその令状には警察に引置した時間、檢事に送置した時間が記載されておりますので、一見して記録上判然といたすわけであります。
○石川委員 第五項でありますが、罰金または科料の場合には、年五分の割合の金額を加算して補償するとありますが、これは補償になるのでしようか、返還なのでしようか。
○岡咲政府委員 本質として補償と考えておるのであります。徴收いたしました罰金または科料の額に年五分の割合による利息を加算いたしました額の補償金を交付すると、これはあくまでも刑事補償である。これを徴收いたしました当時は、正当の権限に基いて徴收したものでありましても、あとで無罪になりましたような場合には、罰金額に年五分の利息を加算した補償金を交付するというように考えたのであります。
○石川委員 第六項でありますが、「沒收物の時價の額に等しい」といつておりますが、この時價の概念を聞いておきます。
○岡咲政府委員 補償の請求がありました当時におきまして、処分、破壊、もしくは廃棄された沒收物に相当するものを、新たに取得するに足りる價格という意味であります。
○石川委員 その場合、今のように價格が公定價格と、しからざるやみ價格とありますが、これはどうなりますか、新たに取得するものが公定價格ではとれないという場合には、どちらの價格ということになりますか。
○岡咲政府委員 公定價格があります場合には、適正な公定價格が基準になるものと考えております。
○石川委員 次にお伺いしたいことは十二條に関連しておりますが、この刑事補償を受ける者、すなわち抑留または拘禁された者が、國家賠償法によつても請求権が出て來る場合はあるでありましようか。
○岡咲政府委員 もしも警察官、檢察官、裁判官等が故意または重大な過失によりまして抑留、拘禁をしたというような不法行為がありまする場合におきましては、國家補償法によりまして、同一の原因について國家補償法上の國家賠償請求権がある場合があるわけでございます。この場合には、刑事補償請求権と損害補償請求権とが競合するわけであります。
○石川委員 十二條によつて國家に対する補償請求をやつた一面、刑事補償による補償をやるという場合、拂渡はどういうようになつて参りますか、その場合國家賠償はきまりがたいと思いますが。
○岡咲政府委員 刑事補償手続は当事者主義ではございませんで、職権主義で、しかも一定の金額の範囲というものがきまつております。簡單な手続で刑事補償を支拂うという手続でありますので、多くの場合刑事補償の決定の方が先になろうかと思つております。このような場合におきましては、あとの國家賠償法に基きまする損害賠償請求事件の方で損害額を算定する場合に、刑事補償の額を差引いて損害賠償額を決定するものと考えておるのであります。
○石川委員 もう一点お聞きしておりますが、この補償の権利は、解釈の仕方によつては法律の解釈がいろいろ変つて來ることがあると思います。財産権であるならば、從來の財産権の考え方によつてきめて行つた方がいいし、そうでない別な権利だというならば、それに対する方法を出した方がいい。また請求権であれば從來の請求権の線に沿つてこれをやつた方がいい。一身專属権としてこれを守らなければならない理由があれば、この法律をつくるにもそれに対する考え方があるわけです。また讓渡は許さないといつても、遺族の方には補償請求権が出て來るということになりますと、相続でないといつても、ある一定の事実があつたから請求権が発生するのだということになると、相続といえないこともないわけでありますので、この権利の性質をお知らせ願いたいと思います。
○岡咲政府委員 ただいま御質問がございましたように、この刑事補償請求権は純然たる財産権と考えまして、これは普通の民法の原則に從いまして、順次相続されて行く権利である。しかも普通の民法の財産権の原則によつて、いろいろな解釈がなされて行く権利であるということが、法律の立て方としては可能であろうと考えております。しかしながら繰返して申し上げますならば、今回の改正法律案につきましては、このような通常の財産権でありましても、しかも相続の対象になつて行く権利とはいたしませんで、この法案に現われておりますように、この法律に基く特殊の一身專属権であるという立て方をいたしたのであります。すでにこの三條におきましても、遺族の範囲というものを配偶者、子、孫、父母及び祖父母に限定いたしておりましてこれよりも縁の遠い者に対しては、この権利が相続されて行くという考え方はとつておらないのであります。この第二條の遺族が取得する権利も、相続ではなくして、このような條件がございますると、遺族に個別に発生する権利であるとして組み立てたのであります。なぜこのような立て方をしたかということでありますが、普通の財産権といたしましてどこまでも相続されて行く権利であるという立て方をするよりも、この刑事補償法の本質を考えるならば、中心は本人の損害を補填することであるから、本人が死亡した場合には、本人とともに苦痛を受けたごく近しい者に対しましてその損害を補填して行けば、それで足りるのではないか、從つてこの損害額も金額を補填するのではなくして、ある程度の制限された限度におきまして損害を補填して、國家社会の公平な立場を明らかにするという立て方をとつたために、このような特殊な一身專属の権利という立て方をいたしたのであります。御議論のように、通常の財産権という組み立て方も理論としては成り立ち得ると考えております。
○石川委員 この刑事補償法が恩惠的なものでなくして、損害を受けた本人に対する補償であるということであれば、從來の損害賠償の観念と同一になつて來るのでありまして、損害賠償債権と同一に取扱つた方がかえつて解釈上にも、運営上にも明瞭になつて行くだろうと思います。そして補償の範囲は四百円ないし二百円ときめることは、それは法律できめるのだからいいといたしましても、一身專属権というのは、特別の法律から発生した一つの権利だということになると、解釈のしようがなくなるのであります。補償という意味であります。恩惠ではないのであります。それで今御説明のような一種特別の一つの法律から生れて來た権利であるという立て方が、この法律以外に出て來るものはありますか。
○村專門員 委員長。一寸発言をお許し願います。
○高橋委員長 村專門員。
○村專門員 特に委員長から許されて発言させていただきます。この刑事補償がいかなる性格のものであるかということにつきましては、相当むずかしい問題でありまして、私はかつて國家賠償法のときにも考えたことがあります。また大陸におきまして、不動産の補償につきまして各國の立法例を考えて、相当この問題は調査したことがあるのであります。結論的に申しますと、この刑事補償法は公法上の財産権であつて、請求権に属するものでありまして、一身專属権ではないと考えておる次第であります。もとよりこの請求権のあり方を、刑事政策的な見地から特定の範囲に型を與えまして、その面において処理するということは可能であります。新憲法以前におきまして、刑事政策的な見地から恩惠である、あるいは法律関係であるという取扱い方は可能でありましたが、新憲法におきましてはこれは許されないのではないかと考えておる次第でございます。新憲法におきましては、損害を受けた人あるいはその遺族ということが問題ではなくして、基本的人権ということに由來して考えなければならないと思うのであります。新憲法制定以來、少くとも補償の性格というものは姿をかえたのではあるまいか、しかるにこの原案におきましては、しばしばそうした古い刑事政策的見地から考えられたと思われる部分が残つておりまして、たとえば新憲法におきましては國民に請求権があると書いてありますが、この刑事補償法におきましては、請求権ということよりも、國は補償に應ずるという、國からの方面の規定をしておるのであります。これは新憲法の精神に合致した刑事補償の取扱いではなかろうと考える次第であります。このように公法上の財産権であるという考え方をとります以上は、ここに現われております順位の面、損害額の面、その他の問題が起つて参ります。もちろんこれは私の專門員としての調査の結果を申し上げたのでありまして、本案の審議とのものには直接関係しないことは、あらためて申し上げるまでもないのであります。
○岡咲政府委員 御質問の点につきましては、ただいま村專門員から御見解の発表がありましたごとき、刑事補償の本質を公法上の財産権とみて、通常の相続その他の規定がすべてかぶつて行くという立て方をするか、あるいは一身專属の権利として組立てるかという点について、立案当時におきましてもいろいろ議論がなされたのであります。それで法律の立て方といたしましては、いずれの立て方も成り立ち得ると考えたのでありまして、刑事補償の本質を考えたならば、むしろ一身專属権として構成すべきものであるという考え方から、この法律ができ上つておるのであります。考え方としては両方の考え方が成り立ち得るとこうと考えております。現行刑事補償法におきましては、財産権でなく、一身專属の特殊の権利として構成しておつたのでありまして、ただいまのところこれ以外にその分類というものは思い浮ばないのであります。
○石川委員 本日はこの程度で打切つて、またお伺いいたします。
○高橋委員長 それでは本案についてはあらためて審査を続行することとし、本日はこの程度で次に移ります。それでは暫時休憩いたします。 午後一時三十分休憩 ————◇————— 午後四時三十分開議
○高橋委員長 休憩前に引続きまして再開いたします。 本委員会に付託せられております請願の審査に入ります。 三條市所在の旧武徳殿拂下に関する請願、文書表第三五号を議題といたします。紹介議員の御紹介を願います。
○亘四郎君 新潟縣三條市の武徳殿は、公会堂、武徳殿両樣に使用できるよう、市民の寄附によつて設立されたもので、地代等は市において負担して來た。しかるに今回武徳会が解散されたので、多年の宿望を実現すべく、同施設を公会堂として專用し、市民の文化厚生施設に利用する計画のところ、同施設は解散團体に接收されたのであります。ついては該施設を該市に拂い下げられたいというのであります。
○高橋委員長 この際政府委員より御意見があれば伺いたいと思います。
○鍛冶政府委員 請願の趣旨はまことにごもつともでありますが、大日本武徳会はポツダム勅令に基きまして、昭和二十一年十一月九日内務省令第四十六号によつて即日解散を命ぜられ、同会が所有する一切の財産は政府が接收保管することになつております。この財産の処分方法は二つの方法があります。第一は、現に連合軍最高司令部民間財産管理局、GHQまたは政府の許可を受け公用財産として使用中のもの、及び連合國最高司令官から特に指定があれば賣却せずに將來も継続使用できること、第二は、右以外のものはすべて賣却すること、賣却の方法は不動産についてはすべて廣く廣告し、入札の方法によつて行われ、この賣却金は貿易資金として使用することになつております。なお賣却決定についても、政府、法務廳独自の判断ではできないのでありまして、あらかじめ関係筋の承認を受けることになつておりますので、本請願の趣旨のように無償拂下げは現在のところ不可能であります。
○高橋委員長 何か御質疑なり御意見はありませんか別に御意見もないようでありますから、それでは本請願の委員会における取扱いを決定いたしたいと存じます。本請願は議院の会議に付し、採択の上は内閣に送付することにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 異議なしと認めます。それでは本請願は議院の会議に付し、採択の上は内閣に送付すべきものと決しました。 —————————————
○高橋委員長 次に昨日付託せられました吉原市に刑務支所設置の請願文書省第一二二号を日程に追加いたしたいと思いますが御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なしと認め、本請願の審査を進めます。專門員より御説明願います。
○村專門員 靜岡縣には靜岡、浜松に刑務支所が設置されております。また掛川、島田、吉原にそれぞれ代用の刑務所として、警察署の留置場が指定されております。しかし現在の実状に沿はないところが多く、富士郡は全日本の七割に当る紙の生産地として、周辺の町村とともに新興工業都市として急速に発展しつつあるのでありまして、代用刑務所を置くようになつた当時と著しい相違があるのであります。また島田、掛川においても、当時とは格段の相違を生ずるに至つたようでございます。このような次第でありますから、富士宮市、吉原市及びその周辺町村の治安に重大な影響を與える刑務支所設置につきましては、郡下縣民のひとしく熱望してやまないところであります。さしあたり四、五十名の收容力を有する刑務支所の設置を促進実現していただきたく、郡下の住民を代表して請願いたす次第であります。
○高橋委員長 この際政府より御意見がありましたら伺いたいと思います。
○鍛冶政府委員 お答えいたします。刑務支所設置に関しましては、ただに吉原市のみならず、全國各地の新興都市において要望がありまして、当局においては昭和二十四年度にはぜひこれを実現いたしたいと思いまして、目下関係廳と折衝中でありますが、國家財政の面に制約せられまして、全面的な実現は困難と思われます。御請願の趣旨にかんがみまして、本件の実現をできるだけ努力いたしたいと存じております。
○高橋委員長 本件について御質疑なり御意見はありませんか——別に御意見もないようでありますから、それでは本請願の委員会における取扱い等を決定いたしたいと思います。本請願は議院の会議に付し、採択の上は内閣に送付したいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なしと認めます。それでは本請願は議院の会議に付し、採択の上内閣に送付することに決しました。 なお両請願に対する委員会報告書作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 それではさように決します。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時四十分散会