法務委員会 第2号
- 発言数
- 46 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1948/12/10
会議録
○高橋委員長 これより会議を開きます。 まず、鍛冶良作君理事辞任につきその補欠選挙を行いたいと存じます。
○中村(俊)委員 理事の補欠は委員長において御指名願います。
○高橋委員長 中村君の動議に御異議ありませんか。
○高橋委員長 御異議なしと認め佐藤通吉君を理事に指名いたします。 —————————————
○高橋委員長 次に刑事補償法を改正する法律案、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する等の法律案、檢察官の俸給等に関する法律の一部を改正する等の法律案、三案を一括して議題といたします。政府より提案理由の説明を願います。 —————————————
○佐藤(藤)政府委員 ただいま議題となりました裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する等の法律案、及び檢察官の俸給等に関する法律の一部を改正する等の法律案の提案理由を、便宜一括して御説明申し上げます。 裁判官及び檢察官の給與については、さきに第二國会において一般政府職員に関する職員総平均の月收二千九百二十円を基準とする政府職員の俸給等に関する法律(昭和二十三年法律第十二号)、及び政府職員の新給與実施に関する法律(昭和二十三年法律第四十六号)、並びに内閣総理大臣その他のいわゆる認証官に関する内閣総理大臣等の俸給等に関する法律(昭和二十三年法律第五十五号)が制定せられたのに対應して、各位の御盡力により、裁判官の報酬等に関する法律(昭和二十三年法律第七十三号)、及び檢察官の俸給等に関する法律(昭和二十三年法律第七十六号)が制定せられ、その後内閣総理大臣等の認証官を除く一般政府職員について、職員総平均の月收三千七百九十一円を基準とする昭和二十三年六月以降の政府職員の俸給等に関する法律(昭和二十三年法律第九十五号)が制定せられるにともない、認証官たる最高裁判所の裁判官及び高等裁判所長官を除くその他の裁判官については、昭和二十三年六月以降の判事等の報酬等に関する法律(昭和二十三年法律第九十六号)、また認証官たる檢事総長、次長檢事及び檢事長を除くその他檢察官については、昭和二十三年六月以降の檢事等の俸給等に関する法律(昭和二十三年法律第九十七号)が提案制定せられたことは御承知の通りであります。しかるにその後物價は依然として高騰を続け、一般勤労者は長期にわたる耐乏生活のために、まつたく困窮し、特に政府職員の給與は、一般勤労者の給與に比してはなはだしく均衡を失するに至りましたので、政府はこの際更に政府職員の給與を増額して支給することを必要と認め、数日前國会に昭和二十三年十一月以降の政府職員の俸給等に関する法律案を提出して御審議を仰いでおり、また内閣総理大臣等の認証官その他のいわゆる特別職については、特別職の職員の俸給等に関する法律案を別途提出することになつておりますが、この前の方の法案は、一般政府職員の総平均月收五千三百三十円を基準としたものであつて、その俸給月額は昭和二十三年六月以降の政府職員の俸給等に関する法律の別表に掲げる俸給月額に対しては十三割二分、また政府職員の新給與実施に関する法律に定める別表の俸給月額に対しては、平均十七割二分の割合になつており、また後の方の法案は、内閣総理大臣等の認証官の俸給月額を内閣総理大臣等の俸給等に関する法律に定める俸給月額の十六割といたしておりますので、裁判官及び檢察官につきましてもこれにならい、その報酬または俸給月額を増額することを必要と認めて、ここにこの法案を提出した次第でありまして、その第一條は、裁判官または檢察官の報酬または俸給月額を、裁判官の報酬等に関する法律及び檢察官の俸給等に関する法律の別表に定める報酬、または俸給月額に比し、それぞれ認証官たるものについては十六割、その他のものについては約十七割に相当する金額に増額するよう別表を改め、また從前檢察官の俸給等に関する法律第九條の規定により、檢事について特別のものに限り認められていた俸給月額も同樣増額するとともに、新に簡易裁判所判事及び副檢事についても、特にこの地位に老練かつ優秀なる人材を得る必要上、特別のものに限り別表に掲げる月額以上の報酬または俸給月額を支給し得ることを定め、第二條は、認証官たる裁判官または檢察官については、昭和二十三年六月一日より同年十月三十一日までの間の報酬、または俸給月額が、その他の裁判官及び檢察官のごとく増額されていなかつたので、これを同樣この法律による改正後の裁判官の報酬等に関する法律、及び檢察官の俸給等に関する法律の別表に定める額の十六分の十三に相当する金額に増額することを定め、また附則はこの法律の施行及び適用の期日その他の経過規定を定めるとともに、この法案の成立により、その存在理由を失うべき昭和二十三年六月以降の判事等の報酬等に関する法律、及び昭和二十三年六月以降の檢事等の俸給等に関する法律を廃止することを定めております。 以上簡單にこの法案について御説明いたしました。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御可決のほどをお願いいたします。
○殖田國務大臣 ただいま上程になりました刑事補償法を改正する法律案の提案理由について御説明申し上げます。 現行刑事補償法は、昭和六年法律第六十号をもつて制定され、昭和七年一月一日から施行されて今日に及んでいるものであります。 しかるに、日本國憲法は、刑事司法について、その第三十一條から第三十九條までの多くの規定により、事前に愼重な手続をとることを要求し、過誤を未然に防止するに努めるとともに、その第四十條において、「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、國にその補償を求めることができる。」と規定し、もし愼重な手続にもかかわらず、刑事司法が誤に陷つていたときは、國に対する補償請求権を認め、事前、事後の両面相まつて、人身の自由の保障を完からしめようとしているのであります。 現行刑事補償法の規定の内容を、この新憲法第四十條の規定と対比檢討するときは、その補償原因及び補償不成立條件について、当然改正を必要とする点があるばかりでなく、民法の改正に伴い、補償を受けるべき遺族の順位及び遺族相互の間の割合について改正を要する点があり、國家賠償法の制定に伴い、同法による損害賠償と刑事補償との調整をはかる必要もあり、さらにまた、現行法に基く拘禁による補償金額が、一日、五円以内というのは、いかにも現状に適しないところであります。從つて、昭和二十一年秋の臨時法制調査会においても、日本國憲法の施行に伴い現行刑事補償法もまたこれを改正すべきものとして、その改正要綱の答申があり、政府においても、引続き刑事補償法を改正する法律案の立案準備を進めて参つたのでありますが、刑事補償法は、刑事訴訟法と密接不可分の関係があり、刑事訴訟法も全面的に改正される予定でありましたので、刑事補償法の改正も今日まで延引せざるを得なかつたのであります。しかるに、すでに刑事訴訟法の改正も終り昭和二十四年一月一日から施行されることになりましたので、ここに新憲法の精神にのつとり、刑事補償法を全面的に改正し、新刑事訴訟法とともに、昭和二十四年一月一日からこれを施行するのが、最も至当と考えられるところであります。以上が本案提案の趣旨であります。 次に、本案の内容について改正の要点を御説明申し上げます。 改正の第一点は、補償原因の拡張であります。現行法においては、刑事手続上の未決勾留及び刑の執行についてのみ補償をすべきことを定めているのでありますが、新憲法第四十條の趣旨にのつとり、刑事手続上のすべての抑留及び拘禁、刑の執行及びこれに伴う抑留及び拘禁のすべてについて補償をすることとし、補償原因を拡張したのであります。 改正の第二点は、補償不成立條件の整理であります。現行法第四條においては、補償不成立條件を相当廣く規定しており、この規定によつて、運用の実際においても、補償を阻まれる事例が極めて多かつたのであります。しかるに、新憲法第四十條は、無罪の裁判を受けた者には、必ず補償をすべきことを要求している趣旨と解されますので、現行法第四條に規定する補償不成立條件を整理し、單に、(一)本人が、ことさらに、任意の自白をすることにより、又は他の有罪の証拠を作為することにより、起訴、未決の抑留若しくは拘禁又は有罪の言渡を受けるに至つたものと認められる場合、及び(二)一個の裁判によつて併合罪の一部について無罪の言渡を受けても、他の部分について有罪の言渡を受けた場合のみを補償不成立條件とし、しかも、これを絶対的不成立條件とはせず、この場合においても、裁判所の健全な裁量によつて補償の一部または全部をしないことができるとする相対的不成立條件としたのであります。 改正の第三点は、民法の改正に伴い、補償を受けるべき遺族の順位及び遺族相互の間における割合を改め、遺族たる配偶者を、常に補償を受けるべき遺族とするとともに、補償を受けるべき同順位の遺族が数人ある場合における遺族相互の間の割合は、民法第九百條の例によることといたしたのであります。 改正の第四点は、抑留、拘禁または体刑の執行による補償の額を、一日最低二百円とし、且つ、いかなる場合にも、一日四百円を越えてはならないこととし、死刑の執行を受けた者の遺族に対する補償においては、一万円以内で、裁判所の相当と認める金額の附加的補償をすることとしたのであります。なお、死刑の執行を受けた者の遺族に対する補償において、もし本人の死亡によつて補償を受けるべき者に現に生じた財産上の損失額が証明された場合には、その損失額に一万円を加算した額の範囲内で、裁判官の相当と認める金額の附加的補償をすることといたしました。 改正の第五点は、國家賠償法の制定に伴い、同法による損害賠償と刑事補償との調整をはかるため、補償を受けるべき者が同一の原因について他の法律によつて損害賠償を受けたときは、裁判所は、補償の額を定めるについて、これを考慮しなければならないと規定し、もしすでに受けた損害賠償の額が本法によつて受けるべき補償の額に等しいか、またはこれを越える場合には、百円以内の名目上の補償をすることとしたのであります。 以上簡單ながら刑事補償法を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げました。すでに述べました如く、刑事手続における事前の保障は、刑事訴訟法がこれを規定するところであり、この刑事訴訟法は、第二回國会において、基本的人権の保障を強調する新憲法の精神にのつとり、画期的改正がなされました。今回、本案の成立を見るに至りますならば、刑事手続における事後の補償もまた全きを得るに至り、事前、事後の両面相まつて、基本的人権の保障が完全となることと存ずるのであります。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを希望いたします。
○高橋委員長 暫時休憩いたします。 午後二時四十分休憩 ————◇————— 午後三時二十九分開議
○高橋委員長 それでは休憩前に引続きまして会議を開きます。 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する等の法律案、檢察官の俸給等に関する法律の一部を改正する等の法律案を議題とし、審査を進めます。
○石川委員 裁判官の報酬等に関する法律案、檢察官の俸給等に関する法律案についてお伺いいたします。 今度の給與改訂の結果、政府職員の給與月額が、從來の二千九百二十一円に比較いたしまして、十七割二分になつておるというように給與案は説明されておるのでありますが、この点間違いないかどうかを聞いておきたいと思います。
○今井政府委員 そういう立案で計算を初めております。
○石川委員 同一の率をもつて裁判官及び檢察官の報酬、俸給は立案されておるのでありますか。
○今井政府委員 ただ裁判官以外の中で、認証官でございますが、総理大臣、國務大臣以下の認証官等につきましては、これを六割ということにいたしております。二千九百二十円ベースのまま、実は今まで打ち捨てて置かれたのでありますが、これにいろいろの意味を込めまして、また関係方面の意向もございまして六割になつております。その関係が若干上の方に、裁判官の方として響いて來た面がございます。あとは端数整理等の意味合いで今回の号俸はできております。プリンシプルをかえる意向は持つておりません。
○石川委員 この配布されております裁判官の報酬に関する参考資料によりますと、他の政府職員は七割二分の増額となりますのに、裁判官のみは十七割に達しておりません。ただいまの御説明ではちよつとわかりかねます。どういうわけでこうなりましたのかをお聞きしたのです。
○今井政府委員 申し上げます。この判事の一号を十七割二分に持つて行き、それから基準になる判事補の六号を十七割二分に持つて行くという、こういつた建前ででき上つておる点については、少しも一般官吏と差をつけているわけではないのであります。ただこの間の刻みの問題でございますが、人事委員会の勧告等にもございますように、等比級数的な要素を入れる。人事委員会の申します理想曲線型を考慮に入れるといつた意向がありますので、この差違を両者の間に加えまして、その間の端数の問題や、從來の関係というものを、いろいろ考慮いたしました結果が、非常にでこぼこがあるようなかつこうになりました原因でございます。從來はすべて一号から五号まで千円刻みというような建前がとられましたのでありますが、これはやはり考え方としては適当でなく、やはり本俸に対して、同じように五パーセントなら五パーセント上つて行く仕組みでないと、号俸を計算する昇給の観念から申してもおかしいからという、專門の関係方面の意向が織込まれまして、こういうことになつたのであります。プリンシプルにつきましては、一般官吏と区別をつけたつもりはありません。判事と判事補の一号と六号が落ちておりますが、これは端数だけの話で、その意味を御了承願います。
○石川委員 もう一つ聞きたいのであります。政府職員は全部十七割二分ということになつて來るのでありまして、判事と檢事とがそれ以下であるのですが、政府職員中にも、十七割二分とならない者もある。この計算の仕方についてはわからないのですが、その点お聞きしておきたいと思います。
○今井政府委員 端数の関係で若干の違いがありますが、建前は政府職員は七割二分でそういつた例外はありますが、これは端数だけの関係と思います。
○石川委員 ところがこの表によりますと、これはわずかな数のようには見えますけれども、政府職員よりは裁判所判事並びに檢事が安くなるというかつこうになります。そうすると裁判官の報酬等に関する法律であります昭和二十三年七月一日法律第七十五号の第十條には「一般の官吏の例に準じて、報酬その他の給與の額を増加し、又は特別の給與を支給する」とあります。この法律をこしらえます当時、われわれが審議いたしましたときには、行政官が百円上るならば、裁判官もそれ以下であつてはいけないのだという建前で、法律ができ上つたのであります。予算を組みましたときに、この十條をどうお考えになつたかお聞きしたいと思います。
○今井政府委員 一般官吏の例に準ずるということは私どもも十分承知しております。特に判事あるいは檢事を虐待しようという意味は、むろんこの中にはございませんが、ただ從來の一般官吏の分が正確にきまりますのと別に、裁判官の規定が御承知のような経緯で第二國会で成立いたしましたが、その際の案というものが、昔のいわば日本式と申しますが、なるべく数字をまるくいたしまして、五百円なら五百円刻み、千円なら千円刻みということが、わかりがいいという建前でありまして、それを御決議いただいた次第でございます。特に檢事につきましては國家公務員法におきましても、檢察官は全然行政官と同じような法律上の適用を受ける建前になつている関係もございます。裁判官の方は特別職で問題はございませんが、現在の日本におきまして、判檢事というものに差をつけるということは適当でないという國会の御決議によりまして、そういう関係から一般政府職員の上下のカーブに準ずるという考え方を入れろという意向がこの中に織込まれまして、上へ行くほど刻みが多くなる。上と下の基準になるところは、少しも差をつけておらないけれども、刻みが今まで等差級数で参りましたのが、等比級数的になつておりますので、そういつた要素を織込まれたために、形の上ではいかにも虐待したようにごらんになるかもしれませんが、趣旨は少しもそういうところにございません。單にそういつたカーブを行政官のカーブと同じようにそろえるという、いわば正誤的な意味におきまして、こういうような操作になつたのであります。千円刻みのためにここでは五、六厘下るという形が出て参つたというだけのことでありまして、別に少しもかわるわけではありません。
○石川委員 政府においてこれをなおすだけの予算はございますでしようね。
○今井政府委員 これは別に予算の問題ではございません。ただ特に行政官と檢察官、そういつた権衡から、裁判官につきましては、実を申しますと関係方面におきましては、特別扱いする頭が強いのでございます。しかし檢察官については國家公務員法において純然たる一般職に置かれてありますので、一般行政官と同じような仕組みといたしております。現に人事委員会の今回勧告された法律案によりますと、檢察官の特別の法律は全部これを撤回いたしまして、一般行政官の職階表の中に織込めということを、法律案の参考として國会に提案されておるわけでありまして、そういつた関係から政府といたしましては、判檢事をこの際区分することは適当でないと考えて、今回の案をとつたのであります。そういつた関係からやはり行政官のカーブと司法官のカーブを、同じようにそろえることをこの際やつておくことが適当である。ここで一回やつて置けば、今後はただいま御指摘のような点はなくて、一般の率で行かれるということに相なると思います。この機会にそういうことをやらしていただきたいと思います。それだけでございます。
○中村(俊)委員 ちよつとお伺いいたしますが、現在の二千九百二十一円ベースによると、たとえば最高裁判所長官は四万円になるのですが、税を引いた手取りの金額をいつていただきたいと思います。
○今井政府委員 総額の三分の二、六割以上は税額になりますので、一万五千円殖えましても、まあ五千円ぐらい殖えることになると思います。
○中村(俊)委員 少しは上りますか。
○今井政府委員 おそらく手取りは、三分の一しか上らないのではないかと思います。 —————————————
○高橋委員長 それではこの案の審査はこの程度にしまして、刑事訴訟法施行法案を議題として審査を進めたいと思います。
○安田委員 私は主として刑事訴訟法施行法第二條の規定についてお伺いいたしたいのであります。まず新刑事訴訟法と旧刑事訴訟法とのいずれを適用されるかということによつて、被告人の防禦権について非常に大きな差異がある。從つて被告人の利益関係は、この点についてきわめて重大であると考えるのであります。さきの國会に提出されました政府原案は、新法の適用をするか、旧法の適用をするかの分界を、第一審における第一回の公判期日が、開かれるか否かという点に置かれておつたのでありますが、今回御提案の原案については、公訴の提起ということを標準にせられておるのであります。そこでこの点についてお伺いしたいのであります。この新旧刑事訴訟法の分界を、公訴の提起ということによつて定めますと、御承知の通りに公訴の提起をいつ行うかということは、檢察廳の捜査の手加減によりまして左右されるのであります。從つて新旧刑事訴訟法の適用の有無が、檢察官の捜査の手加減で左右せられる結果になります。これは私としては好ましくないことではないかと思うのであります。それよりもむしろ檢察官が公訴を提起した事件につきまして、裁判官が第一回の公判を開く期日はおよそ限界があるのでありますから、この裁判所の期日の査定による。第一回の公判期日が、開かれるかどうかという点に設けて置いた方が公平ではなかろうか、公正明朗になるのではなかろうかと思いますが、この点につきまして政府の御見解を承りたいのであります。
○木内政府委員 お答え申し上げます。第三國会の際には、政府といたしましては新法適用の時期を、第一回の公判期日が開かれるかどうかという点を境にした方法で、政府案を出したわけでありまするが、これはもともと裁判所側も檢察廳も、あるいは在野法曹界も、この点に関し実際取扱いとして相当の反対意見があり、法務廳といたしましても、同様の意見を持つておつたのであります。結局いろいろ各方面と折衝の結果、やはり第一回の公判期日が開かれるかどうかを境として新法を適用するという形で原案ができたわけであります。しかしながら当委員会におきましてもこれはかえつてよくないというので、御承知の通り御修正になりまして、起訴を境として新法を適用するかどうかというふうに修正されまして衆議院を通過し、参議院の法務委員会においても、その点がそのまま通過したわけでございますが、不幸にして参議院の本会議に上程するに至らずして、今日になつて再び本案を提出することになつたわけであります。前國会のときの空氣、あるいはその他先ほど申し上げましたようないろいろの事情から見ましても、修正案の方がよろしい。ことに前回の院議を尊重するという意味におきまして、今回提出するにあたりましては、修正された案を政府案として提出いたした次第であります。ただ御質問の点で御心配になつておられるのは、おそらく檢察廳側は新法を適用するのがいやなのじやないか、そうだから未だ起訴の時期に達していない者でもどんどん起訴をして、新法の適用を避けるようにして、旧法をもつて行こうじやないかという考え方を持つておるのではないかというお含みもあつての御質問と思いますが、さようなことは全然ありません。また檢察側といたしましても、起訴の時期に達していない、捜査の未熟なものを起訴するということは、かえつてその公訴を維持する上において不利なものとなり、決して利益になるものではないのであります。そういう点から見ましてもさようなことをするわけもないのであります。この点については御安心くだされてけつこうだと思うのであります。
○安田委員 次にお伺いいたしますが、この十二月末現在におきまして起訴せられておるが、公判期日が開かれない事件というものは、およそどの程度に達するお見込みでありますか、從來の資料を参考に大まかなところをお答え願いたいと思います。
○木内政府委員 御承知のことと思いまするが、從來も大体年末におきましてはいろいろの未済事件を処理し、そのために事件処理は各月よりも大体倍は上廻る程度の処分率になつておるわけであります。從つてこの新法の適用は前の原案通りで行くにしましても、今度の案の通りに行きましても、そういうことにかかわりなく、大体普通の月の事件処理数の倍には当然なると予想しておるわけでございます。なおこれに関連いたしまして、細かい点にわたりましては、野木課長から御説明いたさせます。
○野木政府委員 十二月末日現在の現状を推測する資料といたしまして、お手元に昭和二十三年十二月一日現在における東京地方裁判所における刑事事件の公判開否調というものを差上げております。これによりますと、十二月一日現在における東京地方裁判所の係属事件数は、三千二百五十二件でありまして、十二月一日で一回も公判を開いていないものは、そのうち千二百七十九件、これはちようど三六%に当るようであります。それから一回の公判も開かれていない事件のうちで、本年中に公判を開く見込みのものは六百五十二件であります。東京は御承知のように全國でも一番忙しいところでありますので、全國の平均はこれよりもずつと下廻るものと存ぜられるのでありますが、大体この数字で東京あたりの年末の情勢も、一應推測できるものと思います。それからなおお手元に、別表といたしまして昭和二十三年九月二十日現在における東京地方裁判所及び簡易裁判所における第一審刑事事件の公判期日指定調というものを差上げてありますが、これによりますと、東京地方裁判所では、本年九月二十日現在におきまして、まだ期日を指定していない事件が七百三十二件ありました。これは当時公判に係属しておつた事件の三三%に当ります。この期日未指定事件のうち、受理後一ケ月以内のものは三百九十六件で、五四%、受理後三箇月以内のものは二百五十六件で三五%、受理後六箇月以内のもの五十三件で七・二%、受理後六箇月以上のものは二十七件で三・七%でありまして、東京簡易裁判所におきましては、同じく本年九月二十日現在におきましては、期日未指定件数十九件、いずれも一箇月以内のもの一七%、こういうことになつております。これは私どものところで直接裁判所の下部で調べたものでありまして、今回の平均はこれよりもずつと低くなると思います。一番忙しいところの状態がこれで大体御推察願えると存ぜられる次第であります。
○安田委員 ただいまの御説明によりますと、十二月一日現在で一回も公判が開かれないものが、東京地方裁判所において千二百七十九件、そのうち本年中に公判を開く見込みのものが六百五十二件、こういうお見込みのようでありますが、さらに十二月中に起訴を予想せられるものが、これは檢務長官のお話では、例年よりも多いというのでありますが、かりに平均といたしまして千二十四件ということになるようであります。そうしますと本年末東京地方裁判所において公訴を提起せられて、第一回の公判も開かれない数が、これ以上になるのではなかろうかと思うのであります。私はこれを全國に及ぼしてみますと非常にたくさんの事件になると思うのであります。こういう事件の被告人たちにとりましては、新刑事訴訟法が適用せられるか、旧刑事訴訟法が適用せられるかということは、実に死活の問題であるのでありまして、私どもはそこまでさらに眞劍に考えなければならない。せつかく新しくできました新法の思惠に浴するように、あらゆる費用と犠牲を拂つても努めなければならぬと思うのであります。そうするためには、ぜひとももとの原案によつて行きたいと思うのであります。この旧原案を何ゆえ今度のような原案にかえなければならないか、どうしてももとの原案では行かれないという理由があるのでありますか、その理由を承りたいのであります。
○野木政府委員 ただいまの点でございますが、立案当初から公訴によるべしという説が非常に多かつたのでありまして、その後いろいろの方面と折衝している間に、第一回公判期日を開いたかどうかによつて区別して、少しでも新法によらしめた方がいいじやないかという議論が途中から多くなつたわけでありまして、それに從つて前回の政府案を立案したわけであります。しかしこれに対しましては、現行法によつて、起訴後記録などが全部裁判所に行つております関係上、その記録を檢察官にもどしたり、また起訴状を訂正したり、その起訴状を被告に送達したりいたしまして、非常に手数が煩雜になります関係上、この新法実施の準備期間が少なかつたために、一ぺんに新法に切りかえるということになりますと、非常に混乱を來すのではないかという議論もありまして、おそらく前回の國会といたしましては、これらの点その他を斟酌いたしまして、政府案を御修正になつたものと存ぜられるわけであります。政府といたしましても一應政府案を立案いたしましたが、國会が最高の機関としてこれを修正いたしました以上、これは十分尊重しなければならぬところでありますし、また國会の修正にも十分理由があるのでありまして、考え方によつては、むしろその方がよかつたのではないかというふうにも考えられますので、今回は國会の修正の線に沿つて、政府案を出した次第であります。
○安田委員 旧原案によりまして記録を取りもどしたり、起訴状を訂正したり、これを送達し直したりする手数がめんどうであるということをおつしやいますが、そのようなめんどうは、この犠牲となる被告のために、私は國家として甘んじてやつてやらなければならないことであつて、そういうことではこれを新しい原案にかえる理由にはならないと考える次第であります。さらに國会が修正をしたからそれを尊重する意味において原案をかえたとおつしやるようでありますが、そうしますと國会が、あらためて今旧案に修正するについては、もちろん御異議ないものと承つてよろしゆうございますか。
○木内政府委員 先ほど私から御説明申し上げました通り、このただいま出ておる原案の方が、これは各方面におきましても、これの方がいいという強い意見があつたわけでありまして、ただ國会だけの声ではないのであります。そうしてわれわれもそれがいいという考えを持つておつたのでありますが、いろいろその筋とも折衝の結果、前回の修正案となつたのでありまして、むしろ今度の國会に提出いたしましたこの原案の方が、私どもはいいと考えておるわけでありますが、これをさらに元の案に修正することに賛成かどうかという意見を申せということでありますれば、私どもはむしろこの原案を維持したいという考え方を持つておる次第でございます。
○安田委員 第二條の公訴の提起があつたときという意味でありますが、今日の檢察の慣習といたしましては、重大な事件につきましてはまず枝葉末節の、小さな事件を起訴いたしまして、これによつて勾留を行い、その勾留中に目的とする主たる事件の搜査を進めて証拠が得られた場合に、主たる事件を追起訴するのが慣習のように行われておるのであります。これは私非常によろしくないことであると思うのでありますが、ともかく現在行われておることであります。そこでそのような事件につきまして、今年中に末節の方の事件が起訴せられ、そうして來年に至つて主たる事件が追起訴になつた場合におきましては、今年中に起訴せられた末節の方の事件は、旧刑法によつて裁判をせられ、來年になつて追起訴せられた事件は、別件として、新刑事訴訟法によつて裁判をせられるべきものであろうと私は解釈するのでありますが、その点については政府の御意見はいかがでございますか。
○木内政府委員 旧法によつて起訴したものは旧法により、その後新法が適用されるようになつてから起訴したものは新法によると、こういう考えでございます。
○安田委員 さようであるといたしますと、同一人が二つの事実について起訴せられた場合におきまして、今日の裁判の通例といたしましては、これを併合して審理をいたしまして、併合罪の規定に基いて一つの刑を言い渡すのが通常でございます。またそうしなければ量刑上はなはだ不当となるのであります。今私がお尋ねいたしましたような事件が起つて、二つの事件、ことに名目的な事件を取上げて、後で追起訴をやつた事件とを、新旧刑訴で別に裁判せられて、併合することができないということになりますと、これは二つの刑を別々に言い渡さなければならないことになりまして、その間に量刑についてはなはだしい不当が生じ、裁判所もこの刑の量定について、非常に困難をしなければならぬ場合が起ると思います。この点につきましては今日まで当局は、何かお考えになつたことがございますでしようか。
○木内政府委員 御心配の件は私どももごもつともだと思うのでございます。併合審理を受けられるべきものが併合審理を受けられない。これは法律上から見ましても、相当の不利益になる場合が考えられるのであります。しかしこの点につきましては、檢察官といたしましても求刑の場合に、実際上その点を考慮いたすことといたすつもりでありまするし、裁判所側におきましても、おそらくそういう点はごしんしやくになるであろうということを考えておるのであります。しかして判決の結果、なお不利益の点があるというような場合には、仮釈放の規定を活用するなり、あるいは恩赦によりまして減刑する等の方法をもつて、この点の不利益は與えないように十分考慮する考えでおるわけでございます。
○安田委員 ただいまの御答弁の中に私は非常に不満な点がございます。量刑について不当な結果が生じた場合に、仮釈放あるいは恩赦によつて調節するであろうというお考えでありますが、これは政府委員の方が、長らく檢察官をおやりになつておつて、刑罰ということに対して無感覚になつておるから、無意識にさような考えが出るのであります。被告人が懲役三年に処せられるか、五年に処せられるかということは重大なことでありまして、仮釈放というようなことで償われることではないのであります。それが仮釈放で調節ができる、恩赦で調節ができるというお考えでいるから、こういう点をお氣づきにならないのであります。これは苦いことを申すようでありますが、野に下つて弁護士として痛切に感じておるところであります。かような点はひとつ心構えをかえて、ほんとうに被告の立場に立つてお考え願わなければならぬと思うのであります。 そこで次にもう一度お伺いいたしたいのであります。この原案によりますと、たとえば同一事件について共犯関係、あるいは牽連関係にある多数の被告があります場合に、最初に捜査に着手され逮捕を受けた人は、御承知のように十日以内に起訴しなければならないから、年内に起訴せられる。しかしあとで捜査に着手し、あとで逮捕せられた人は、來年になつて起訴せられる。こういうことになります。まつたく同一の事件について共犯関係あるいは牽連関係にある人が、その起訴の順序によつて一方は新刑訴で非常な強い防禦権を認られる。一方は旧刑法で不利益な立場に置かれる。そのために片一方の裁判は無罪になり、片一方の裁判では有罪を言い渡さなければならないというような、極端な場合も生じはしないかというおそれもあるのであります。この点につきまして、当局は御配慮になつたことがございますか。
○木内政府委員 先ほど私の申しました御説明で不備の点があつたかもしれませんが、不利益な判決があつた場合と申しましたのは、裁判所においても、そういうことはないことをむろん確信いたしておりますが、かりに万が一ということを前提として申し上げたのでございますので、その点は仮定論で申し上げたのでありますから御了承願いたいのであります。なお共犯関係あるいは牽連関係の場合におきましては、もちろん旧法で起訴したものは旧法により、新法実施後起訴したものは新法によることになるわけでありますが、そのために一方は共犯であるにもかかわらず、旧法で起訴せられたために有罪となり、一方は新法によるがゆえに無罪になるということがあつたならば、どうするかというお話でございますが、新法になりましても当事者間に異議がなければ、当然旧法によつて裁判手続をした記録を公判に提出することもできるわけでありまして、その点につきましては、むろん裁判所においても十分考慮して裁判されることと信じておりますので、御心配のようなことは起らないとかように思つておる次第でございます。
○安田委員 私は今の御答弁には承服ができないのであります。ことに異議がなければ新法でも他の記録を証拠に採用することができると申されましたが、新法のもとにおきましては、弁護士は必ず異議を述べるであろうと私は考えております。ことに新法におきましては嚴密な証拠の制限があるのであります。裁判所はたとえ旧法によつて共犯者が有罪となつておる場合でも、新法においてはそれらの形式的な証拠の効力が認められず、無罪を言い渡さなければならない事件がしばしば生ずると思うのであります。また私といたしましては、せつかく新刑事訴訟法によつて裁判をせられる被告でありますから、その被告の裁判の場合に、他の共同被告が旧刑事訴訟手続によつて有罪を受けておるからという観念によつて、有罪無罪を判断されることがあつてはならないと思うのであります。さような点を防ぐ意味におきましても、私どもは多数の被告が共犯関係、牽連関係にある場合におきましては、一方が旧刑訴で裁判を受け、一方は新刑訴で裁判を受けるというような事態は、極力防がなければならぬと思うのでありますが、その点についてもう一ぺん意見を承りたいのであります。
○木内政府委員 いろいろ御心配の点はごもつともでございまして、その点につきましては十分その運用に当つて間違いのないようにやりたいと考えておるのでございます。この問題はまた同時に、前の國会のときの原案の場合においても、同樣の問題が起り得るわけでございまするし、とにかく画期的な法案ができて、全然現行法とちがつた形の手続になるために、どこで線を引くかということは、なかなかむずかしい問題でありまして、いろいろ諸般の事情を考えまして、やはりこの原案の方がいいという考えであるわけでございまして、御心配の点につきましては、十分運用に当つて考えて行きたいと思つておる次第でございます。
○安田委員 もう一点であります。さらにただいまのような事件を想像いたしますと、もしこれが一つの事件として併合審理を受けることができるのであるならば、一件として証人も一回呼べばよろしいのであります。別件となりますと、同じ事件でありながら、多数の証人を二回も呼ばなければならない結果も生ずるのであります。かような事例を考えてみますと、私は裁判所の手数がかかるという点では、むしろこの新しい原案の方が、ある点においては手数を要し、不都合を生ずるというようなことも、考えられるのじやないかと思うのであります。いかがでございますか。
○木内政府委員 大体今御心配になるような両方へまたがるというような事件というものは、実際においてはごく少数であると考えておるのでございます。從つて多少の困難が伴いまするけれども、新法を実施する以上は、ある程度の点はまたやむを得ない、從つて運用の上において、御心配の点は十分考慮いたしまして運用いたして行きたいと、かように考えておる次第でございます。
○高橋委員長 それではこれにて散会いたします。 午後四時五十八分散会