文部委員会 第5号
- 発言数
- 90 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1948/11/19
会議録
○圓谷委員長 会議を開きます。 お諮りいたします。懇談会に入りたいと思いますが、いかがでしようか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○圓谷委員長 それでは懇談会に入ります。 ————◇————— 〔午後一時三十三分懇談会に入る〕 〔午後二時八分懇談会を終る〕 ————◇—————
○圓谷委員長 それでは懇談会を打切りまして、委員会を開きます。
○高津委員 第三條に「研究所の事業は、他の研究機関又は個人によつて既に行われ又は現に行われている同種の調査研究と重複しないことを原則とする。」とありますが、現在民間のそういう事業や成績がどのくらい上つておるか。だれがどうやつておるかということを、政府当局はどのくらい御承知であるか、その点を聞かしてもらいたいのです。
○稻田政府委員 この法文といたしましては、そうした点について遺漏がないことを期するために、委託研究する各学界の方面その他から網羅した評議員会で相談する。こういう仕組みになつております。それからただいまの御質問は、ただいまの状況において民間の各研究がどういう状況にあるか。網羅的に全貌をわれわれがつかんでいるかというような御質問でございましたが、これは部分的には知つておりますが、お答え申し上げるほど網羅的に私ども今材料を用意いたしておりません。
○高津委員 第二項に「他の適当な研給機関又は個人によつて既に行われている場合には、研究所の事業として、その調査研究をその研究機関又は個人に委託することができる。」とありますが、委託することができるという原則規定であつて、道ら開いてあるだけで、それを割合軽く考えているのであるが、こういう委託ということがあるから、どんどん委託するという意味であるか。そうして委託する場合には、予算の使い方からいえばどつちが多くなるような見込みを持つているのであるか。もし委託が非常に多くなる場合には、民間研究所や民間の研究者への補助金の取次機関というようなことになつて、変なものになるように思うのですが、その点を聞いておきたい。
○下條國務大臣 ごもつともな御質問であります。実はこの案をつくりますときの考え方は、大体國語研究所は、いわばきわめて科学的な專門の研究所でありまして、そういうさようなものが民間にはあまりないということを前提にしておるのです。主としてもつぱら國語研究所で國家的に研究しようという考え方で來ております。ただ観点をかえまして、その研究が一方に偏して、あるいは統制的になつてはならないという観点からしますれば、他に民間でもし有力な研究があればそれも包容して行く。こういうような建前を加味した方がよかろうと思います。現在、特にここでさしあたり有力な研究があるということを考えているのではない。しかしながら、調査した結果もしありますれば、もちろんこの中に包容してもいいわけであります。主体はやはりこの國語研究ということ田、今後提案しております國語研究室において主としてもつぱらやる。こういう建前でできております。
○高津委員 文相の御意見だとないという前提に立つておるのであり、それから非常な自信を持つて國立のものができるのであつて、提案理由の説明書の中にあるように、國語及び國民の言語主活の全般にわたり、科学的総合的な調査研給を行う大規模な研究機関を設けることが絶対に必要である。そういうことになつておるくらいであるならば、第三條に、これだけ民間のことを重複しないようにするとか、あるいはまた民間の研究を少しも圧迫しないようにするとかいうような意味を、強く織り出す必要はないのだと思うのですが、文部大臣はその点をどのようにお考えになりますか。あなたの今の御答弁とこの法案とは大分違う。この法案の方が、あなたの御意向のままではなしに、はるかにその國語研究所というものが民間にさわらないように、自分が小さくなつているように印象を與えるのです。あなたの御説明の通りであれば、それでいいのでありますが、しかし法案はそうなつていない。これはいかんともすることができない。
○下條國務大臣 私この法案を読みまして、さように考えないのです。この重複しないことを原則とするとある通りでありまして、主体はやはり國立の研究室において総合的に科学的にやる。それでもし民間にありますならば、そういうものも包容しようということを、この意味は表わしたつもりでおるのであります。
○高津委員 あなたが読めばそういう意味にすらすらと読めるのでありますが、一松委員や久保委員、田淵委員、松本委員、だれが読んでもそうは読めぬので、一方的な個人的な解釈で押し通されるのはどうかと思います。これをわれわれの修正通り改める意思があるのですかどうですか。その点を聞きたいと思います。
○下條國務大臣 私述べた通りで別にさしつかえないと思うのですが、ただいまあなたのような考えはもつておりません。
○高津委員 それでは今のお答えは、修正には應じない。こういう意味ですか。
○下條國務大臣 修正は、これは國会の権限ですから私どもは何ともしようがないのです。願えますれば修正しないで、原案通り通していただきたいということを申したのであります。
○高津委員 御希望はそうですが、修正されればしようがない。受ける。こういう意味ですか。
○下條國務大臣 言葉の問題になりますけれども、修正は國会の権能でありますから、こちらで希望しなくも修正はなし得るのです。もしこちらの希望をおとりくださるならば、このまま通していただきたい。こういうことを申し上げたのであります。
○高津委員 それでは委員会を閉じて、各党へ帰つて、各党で相談をして、そうしか修正案がまとまるものならばまとめて、委員会を開いていただいたらどうかと思います。但しまだこの席で質問とか御意見があるならば、十分意見を盡されることが、一層望ましいことだと思います。
○田淵委員 この第三條は、私は半ば無用の文章だと思います。と申しますのは「他の研究機関又は個人によつて既に行われ又は現に行われている同種の調査研究と重複しないことを原則とする。」これは國家の事業としてあたりますのことである。ことに学問の社会においてはそうであると思います。だれが人のやつているのを承知の上で、追及したりなんかするということを考えるものですか。しかも國家は個人もしくは民間研究機関よりは優位にあり、立場が廣いのであります。学界を鳥瞰的に見渡し得る位置にあるその國家の事業として行うものが、個人もしくは他の民間團体においてなされている研究を追及しないことは、これは当然だと思う。單に個人対個人の研究におきまして、一方で行われている研究のそれ以上の成果を期する。つまり新しいものの発見、発明あるいは態度、方法というものを持してやるならば、これはもちろん重複ではなくて一歩前進なのでありますから行うことがありますが、同種の事業、他人が先鞭をつけてやつているのを個人としては追及しない。いわんや國家の事業としてこれを追及するというようなことは、常識的に考えてもあり得ない。ことに國語研究所というのは、國語に関する知性の固まりでなければならないのです。その機関が、こういう愚を繰り返すというようなことを予想して法文にするというのは、すこぶる妙なことだと思うのです。この全部は私は否定するのではありません。ここに述べられている内容は半ば空文的のものであると思う。無用なものはこの際大幅に修正するか、もしくは削るかしなくてはならぬものだろうと考える。御意見がありましたから承ります。
○稻田政府委員 いろいろな場合がありますけれども、たとえば方言の研究なんというようなものを想像いたしますると、やはりこれは中央でもつて研究所がそれ自体でいたしますのみならず、各地方々々に相当方言の研究があり得るだろうと思う。そういうものを委託して利用するということが、本來この目的に合致する。そうした場合はいくらか他にも想像でき得ると思う。
○田淵委員 そうした場合には、これは重複ですか、重複でないのですか。そこをお尋ねしたい。
○稻田政府委員 研究所でいたしまする調査は、非常に廣範囲な実態調査が中心になつて参ると思います。それだけの大きなスケールをもつても、全体の研究を重復するようなものは、まずほかにあり得ない。しかしながら部分的にある地方のある方言の研究といつたものを、その地方の民間で研究しているといつた場合に、その部分は重複するだろうと思います。その部分は民間のをどこまでも伸ばして行つて、適当であれば委託研究としてこのうちに包含する。こういうような趣旨であります。
○田淵委員 今の稻田局長の御説明によりますと、これは重複ではないのであります。重複ということは同範囲、同質を予想しなかつたなら重複ということは言えない。もしここにより廣範なる範囲において、より深い質を持つところの研究がなされるならば、それは重複ではないのであります。部分的にそういう重複があるというならば、人のなすところ何としてもこれは重複せざるものはないのであります。私はそういう意味においてこれは実に無意味だというふうに考える。
○松本(七)委員 委員長にちよつと伺いますが、これは全般にわたつて質問を一括してやりますか。それとも逐條審議をやりますか。
○圓谷委員長 お諮りいたしますが、松本委員の提案のように逐條にいたしますか。一括にいたしますか。
○松本(七)委員 最初に一括重点的な質問をやつて、後逐條審議をしていただきましようか。
○圓谷委員長 ただいまの提案でいかがですか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○圓谷委員長 御異議なしと認めます。重点質問をやつて後ほど逐條に入ることにいたします。
○松本(七)委員 文部大臣の人事権の発動について審議機題を設けてないのですが、その必要は認められないのですか。
○稻田政府委員 研究所の所員に対しまする人事権の発動につきましては、申すまでもなく一般の國家公務員法の適用を受けております。從つて國家公務員の念願といたしまする最も民主的に、公平に能率的にという人事が、ここに行われることを保障されておるのであります。
○高津委員 國語審議会官制を見ると、その第一條に「國語審議会ハ文部大臣ノ監督ニ属シ其ノ諮詢ニ應ジテ國語ニ関スル事項ヲ調査審議ス」とこうあるのですが、この國立國語研究所の設置法を見れば、まつたく重複するという感じがするのであります。そうしてきのうの政府委員の説明を聞けば、こちらは資料の作成だとか、國語研究資料の收集保存及びその公表だとかいうようなことをやるし、ほかにもちろん調査研究もやるのでありますが、資料に主眼が置られるかのような印象を受けたのであります。そうして國語審議会の方は政策の決定をやるのであつて、何ら屋上屋を架するようなことにはならないから、両方並存して行くべきものであるという御答弁でありましたが、私思うのに國立國語研究所を充実させて、國菊審議会を廃止されるのがいいではないか。政府にはこの廃止の意向がありやいなや。これを文部大臣にお伺いいたします。
○下條國務大臣 國語審議会は今お話のうちにありましたように、國語研究所の方でデーターを研究しまして、それに基いて、どういうふうな方向に進めて行くかという問題を決定するために、つくらるべきものであると思います。もつとも國語審議会の規則は大分古いのでありまして、先ほど御質問がありまして、お答えして置いたのですが、これは内容的にも改組して、今お話がありました國語番究所の方との調節を十分はかりたい。人的にも改組が必要だと思つております。
○高津委員 改組してやはり並存すると言われるのでありますが、この國立國菊研究所には評議員会が置かれるのであるから、それで兼ねられるであろうし、今まで國語審議会でやつておつたところの一部を國立國語研究所に移して、そうして残りの他の部分は政府の方でやるというようにうれば、こういう機関が一つでも少くて、國帑を費すことが少くて済むと思うのであります。私自身は文教関係とか、あるいは文化的な予算は、國家の総予算の中から、もつともつと大幅にとらなければならぬという持論、そういう原則論を持つておりますが、しかしその場合はまつたく無用のものになるのではあるまいか。こういうものをあくまでも並存させねばならぬと主張せられる理由を、もつとはつきりお伺いしたいと思うのです。
○下條國務大臣 研究所の方に設けられます評議員会というのは、研究所の方のいろいろの事態のアドバイスのための機関であり、國語審議会の方の関係とはまつたく違うと思います。國語審議会は國語研究所できめられた調査が完成いたしましたものにつきまして、あらためてどういうふうにそれを運用するか、どういうふうにそれを利用するかという方面の問題を研究するものでありますから、全然内容が違つているように思うのでありまして、設置の必要があるというふうに考えます。
○高津委員 私はけさ新聞を読みましたら、その新聞の中に賄賂をほしがるやつと、いばるやつと、なまけるやつと、この三つを除くことが公務員の中から共産党員を除くことよりも、もつと急務であるという記事がありましたが、私は共産党員を除くけかぬより、なまけるやつを除くというこの言葉を非常に意味深く読んだのであります。いやしくも國立國語研究所というものが、非常なる期待をもつてできるのであれば、そこでは予算を多くとつて、うんと働いてもらいたいという考えを持つております。それで政策は審議会でやる。こちらはその政策審議の資料をそれえて出すんだという御説明でありますが、これからはこういう政策が生れるのだという政策を三つなら三つ用意する。そういうようなことまでここでやるようになれば、そういう屋上屋を架するような必要がなくて済むのである。残りの部分は政府がやるという途があるべきではないか。政府の役人もたくさんおるのであるから、何もかも審議会を設けて、そこで仕事をさせて、その審議会の利用方法にもいろいろありますが、これは審議会の答申であるからといつて政府が責任を免れる場合もあるし、審議会の答申が氣に入らなければ、これはただ審議会の案にすぎないので、政府としてはといつてそれを否認する場合もあるし、何のためにいろいろな審議会を、文部省だけではないが、設ける意味がわからぬのでありますから、こういう審議会を設けることは一部は研究所でやらせ、一部は政府でやる。こういう道が完全にあると思うのですが、その示している私の案について文部大臣はどうお考えですか。やはり屋上屋があなたはすきですか。
○下條國務大臣 めんどうなお尋ねでありますが、今申し上げたように國語研究所の方は、こういう関係のエキスパートが集まりまして政策を決定し、必要なものは資料をそろえて参りまして、それは純科学的にそろえまして、そしてでき上つた資料をどういうふうに扱つて、どういう政策が生れるかということは、國語審議会の方が研究していただいて、その研究したものを具体的に行政面に出して來るのが、文部省の該当する仕事ではないかと思います。いずれも担当面が違いますから、結局そういうものが要る。こういうように私どもは考えております。
○高津委員 國語審議会の名簿を見ますと、その委員の数は実に対いのであります。その出席率はどのようになつているか。いつも文部当局は出られておるのであるからわかるはずであります。その出席率をちよつと参考のために聞きたいんですが、どれくらい集まりますか。
○稻田政府委員 この名簿でごらんの通り、臨時委員が非常にたくさん終戰後に加わつておりますが、國語審議会の平素の働きといたしましては、特にこの中から主査委員会を設けまして、それで例の当用漢字表あるいは現代かな使い、これに基く各種の音訓漢字表、義務教育用漢字というものを、次次に主査委員会を中心にして立案して参つたわけであります。その主査委員会は普通毎週あるいは盛んなときには二回、三回に及び、午前午後を通じて熱心に審議されるというような状況でございます。この主査委員会が終りますと、総会を開くわけであります。総会においてはむろん正規の規定によりまして、定足数以上御出席があつて審議立案されたものでございます。
○田淵委員 國語研究所の仕事というものは、量的にも質的にも廣く深くなされるならば、おのずからそこに政策の資料というものは集まつて來るものだと私は思います。ただいま文部大臣は、科学的に基礎資料を提供する事業をなすのが、國語研究所の事業であるというふうにおつしやつたのであります。あげ足を拾うわけではありませんが、私は科学的というのは目的をはつきりさせる。高い目的に向つて批判的態度をもつて臨むということが、科学的だと思うのであります。これは社会観の相違にもよりましようが、第一條におきまして國語及び國民の言語生活に関する科学的研究調査を行い、あわせて國語の合理化の確実な基礎を築くために國立國語研究所が必要である。これが目的及び設置の意義であると解するのであります。これを行うところのものが國護政策でなければならぬのであります。このだけ目的がはつきりしておるといたしますれば、この目的達成のためになされるところのものが、國菊研究所の事業であるのでありまして、この研究事業というものが熱心に眞劍に行われたならば、これはおのずからそこに國語政策の資料たるべきものが結集されるのであります。これをとつてもつて政府において政策化されるということが、当然であるといたしますならば、國語研究所の事業そのものを深め、進化させる。このことでおのずから國語審議会の不必要ということが、答えとして私は出ると思うのであります。いかがでございますか。
○下條國務大臣 科学研究調査と申しまして、結局その目的がここに限定されておりますが、「國語の合理化の確実な基礎を築くため」このわくの中でできる限りあらゆる雜念を去つて、純粹の科学的基礎の上に各般の資料を集めたり、分類したり、いろいろいたしまして、それが適当な政策を生むための便宜の形に仕上げて行くというのが、研究所の目的だろうと思うのであります。從いまして人的機成から行きますと、研究所の方の人は大体こういうような言語学者、その方面の專門家が集まつて來る。國語審議会でありますと、それをどういうふうな利用面に持つて行くかということになりますから、そういう言語学者も説明の関係その他いろいろ意見を述べるために入りますが、あるいは各般の文化方面の人、新聞方面の人も入る。あるいはその他の学界の人も入り、いろいろな人が入りますが、そうして総分的に政策が生れて來る。こういう段階になつておると思うのであります。でありますからそこに割すべき線がある。違つた分野をもつておる機関である。こういうふうに考えております。
○田淵委員 私田國語審議会の事業の目的というものと、國語研究所の事業の目的というものは、そこに本質的に何ら相違があるものではないと思います。純粹なる研究と、しからざる研究、このようになることは私は了解しかねるのであります。これはむずかしい論議になりましようが、純粹なる研究とは何ぞやということになります。目的がはつきりしておる以上は、國語研究所の事業も、國語審議会の事業もかわるところがないのであります。國語審議会においては各界の権威を網羅しておるのであります。これは國語に関係がある線において網羅しておられる。しかりとするならば國語研究所においても、國語に関連がある範囲において各界の権停を網羅され、あるいは選拔されることは何ら差支えないのであります。そこにどうも私は相違を見出すことはできない。もう一度繰返しますならば、結局は國語研究所の事業を深めて行きさえすれば、國語審議会というものが無用の長物になる。このように考えます。
○稻田政府委員 科学的調査研究と政策の決定という関連にきましては一例を申し上げますれば、たとえばローマ字という問題をとつて考えてみますと、今いろいろつづり字について問題がございます。どういうつづり字を使うか、あるいはまたそのローマ字を國字という問題に関連してどの程度に普乃発達させるかということが、國語政策の問題だと思います。しかしここで科学的研究と申しますれば、たとえば音声というものをローマ字のつづりでいかなる母音といかなる子音とを組合せるのが、一番よく音声を表わすかということが、科学的研究だろうと思います。そうした科学的研究の結果いろいろな材料が集まり、その材料を出すまでの研究はこの研究所の構成分子が——ただいま大臣も仰せられましたように、各種の学者が從事いたします。ところがそのローマ字というものははたして國民生活においてどのくらいにこれを普及するか、あるいはどう場合に用いるか、あるいは官廳用語に用いるというような政策の面になつて参ります。これは單に学者ばかりではなく、別の構成をなすところの分子をもつての國語審議会のなすことだろうと思います。しからばお泥のごとく、この政策を決定する者と調査研究する者と一緒に置きまして、一つの系統でやつたらというお話でございますけれども、これは先般もお答え申し上げましたように、政策を決定する者が調査研究をやり、資料をみずから出しました場合に、はたしてその政策のために都合のいい結果を集めるという意図が、かりにないにいたしましても、そうした國語問題について世間的の信用が得られるかどうか。むしろ純粹に科学調査研究をやる者と、言語の合理化を目指して國語政策を立てる者とは別にした方が、安全でもあり、安心感が得られるのじやないかと考えるのであります。
○田淵委員 どうもよくのみ込めないのですが、いかなる子音といかなる母音とを組合せたならばローマ字つづりは非常に完全であるか。一体そのローマ字というものはだれのためのローマ字か。人間のためのローマ字であり、國民のためのローマ字である。また現在の社会における國民が用いるとしたならば、どういう音韻の組合せによるところの表記法が最も完全であるかということが、ローマ字の使用の研究だろうと思います。そうとするならばおのずからそこに答案が導かれてくる。何を苦しんでその方に國語審議会において案ずるところがあるだろうか。どうも私はただいまの御答弁では了解しかねるのであります。
○稻田政府委員 補足いたしますると、たとえば科学的にいかなるつづり字が適当だというような研究資料が研究所から出たといたします。國語政策という面になりますと、たとえば活字を一時につきり得るかというような結済問題にもなりますし、財政問題にもなりますし、あるいはまた一般の國民思想、國民感情というような問題もございます。そういう問題は各段層を網羅した別途のこういう國の重大な政策を決定する國語政策でございますので、別の審議機関がやるべきではないか。かりに科学的調査研究の結果、科学的にできたといつても、それをいかなる順序、方法をもつて表わすかということは別途の政策の問題ではないか。またそれを決定するものは別途の機構によることを適当と考えます。
○田淵委員 ただいまのお説に対しましても私は意見がありますが、これは申しては失礼ですが、純粹な研究という、何か特別に人間から離れた研究というようなものがあつて、それが基礎となつて人間の社会に取入れられるというような御説明のように、私は印象を受けるのです。そうとお考えだろうとは思わないのですが、それくらいのあいまいさが私には感ぜられてならないのであります。ローマ字の使用におきましても、はたしていかなるつづりの表記法が最も完全であるかという研究と、そういう表記法を活字化するには、どういう方法が最も完全であるかという研究と、これは二つ取離して研究できる問題ではないと私は思う。必ずそこには現代の文化段階において可能か不可能かという、一つの研究の範囲というものがあつて進められるのが、これが研究だと思う。これよりほかに現実の研究の仕方というものはできないと思う。これはいささか理論鬪爭みたようになりますが、この点につきましては私の質問はこれで打切ります。しかしなお意見があることだけは申し述べておきます。
○圓谷委員長 この辺で法案全般にわたり質疑を終りまして、逐條審議にはいりたいと思います。いかがでしようか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○圓谷委員長 異議ないものと思いますので、これより逐條審議に入ります。 國立國語研究所設置法 (目的及び設置) 第一條 國語及び國民の言語生活に関する科学的調査研究を行い、あわせて國語の合理化の確実な基礎を築くために、国立國語研究所(以下研究所という。)を設置する。 2 研究所は、文部大臣の所轄とする。文部大臣は、人事及び予算に関する事項に係るものを除くほか、研究所の監督をしてはならない。 第一條について御質問のある方はありませんか。
○田淵委員 本條については質問を打切ると申しましたが、逐條審議の過程において重ねて質問いたします。「國語及び國民の言語生活に関する科学的調査刑究研を行い、」以上の規定で私が先ほど申し述べましたところははつきりしていると思います。問題は國民の言語生活でありまして、この國民のというのは、現在の國民の言語生活であります。これを予想せずして、今日の國語科学というものは成立たないと思う。先ほど申し述べんとしたところの私の趣意というものは、すでに御提案のこの第一條においてはつきりしていると思うが、御意見を伺います。
○稻田政府委員 第二條でもうかがわれますように、大体お話の通りでありますけれども、この國民の言語生活と申しますのは、現代のみとは限らないのであります。歴史的の問題ももちろん包含されるし、國語でございますから、人を離れての科学的研究ということはもちろんないのでございます。
○田淵委員 私がただいま現代の國民の言語生活ということを申しましたが、もちろん過去の國民の言語生活、未來の言語生活を予想しての研究であることは当然のことであります。しかしそれは現代の國民の言語生活というものを中心にして、これを右の延長線でしかないと私は思います。過去の研究が何ゆえになされるか、未來を予想しての研究が何ゆえになされるかということは、これは現代及び現代の延長であるところの未來を一つの目標とし、基準としているからなされるのであると思うのであります。といたしますならば、現在の國民の持つているところの文化、民度、感覚、そうしたものと有機的な関係を持たずして、研究がはたして可能であるかということなんであります。もちろん売機的な関係を持たないところの研待は研究でないという点において、これははつきりしていると思うのであります。といたしますならば、國語審議会の事業と國語研究所の事業というものには、本質的な相違がないのである。このことを私は強調したいと思うのであります。
○稻田政府委員 ただいまのお話まことにごもつともに承つておるわけでありますが、あるいは私の申しますことも同じことかもしれませんけれども、ここで申しまする科学的調査研究というものは、今お話しのように、もちろん國民の言葉でありますから、現在の生活に即して、それを立場としての研究ではございますけれども、どうしても純粹に科学的の研究である。いわゆる政策といつたようなものを加味しない意味での研究である。政策はまた別問題である。繰返しになりますが、私どもとしてはそういうふうにお答えを申し上げるほかはないのであります。
○圓谷委員長 第一條について他に御質問はありませんか——なければ、第二條に移ります。 第二條 研究所は、次の調査研究を行う。 一 現代の言語生活及び言語文化に関する調査研究 二 國語の歴史的発達に関する調査研究 三 國語教育の目的、方法及び結果に関する調査研究 四 新聞における言語、放送における言語等、同時に多人数が対象となる言語に関する調査研究 2 研究所は、前項の調査研究に基き、次の事業を行う。 一 國語政策の立案上参考となる資料の作成 二 國語研究資料の集成、保存及びその公表 三 現代語辞典、方言辞典、歴史的國語辞典その他研究成果の編集及び刊行
○高津委員 第二條第一項の「言語生活及び言語文化」というその單語の定義というか、意味を別の言葉で聞きたい。
○稻田政府委員 一般の生活と文化というものは相関連しておりまして、どこから文化で、どこが生活だということも、これは非常にむずかしい問題でございますけれども、ここに並べてありますのは、言語という面からとらえました生活面、生活という面から考えた言語、それから言語という面から考えた文化、こういうふうに並べた意味にお考えいただきたいと思います。 それで文化でまず代表的なものを申し上げますれば、いわゆる廣い意味の文学あたりは言語文化の一つの面であろうと思います。
○高津委員 第二項の「辞典その他研究成果の編集及び刊行」とありますが、それは研究所自体が発行するという意味ですか。
○稻田政府委員 これは研究所の事業として、研究所自体が発行するという意味であります。
○高津委員 発行こそ民間にゆだねてやるべきものではないでしようか。
○稻田政府委員 研究所の責任において刊行いたすわけでありまして、研究所の持つている著作権に基いて、出版権を民間に設定するということは、あるいはあり得る問題だと思います。
○圓谷委員長 第二條について御意見がなければ、第三條に移ります。 第三條 研究所の事業は、他の研究機関又は個人によつて既に行われ又は現に行われている同程の調査研究と重複しないことを原則とする。 2 研究所は、前項の重複をさけるために、前條第一項各号の一に該当する調査研究が他の適当な研究機関又は個人によつて既に行われている場合には、研究所の事業として、その調査研究をその研究機関又は個人に委託することができる。
○松本(七)委員 第三條ははなはだまわりくどい規定ですが、この重複しないことを原則とするということは、これはこういう研究調査には当然のことで、わざわざ規定しないでもそうなるだろうと思う。原則とするとわざわざ規定している以上は、必要があれば重複してもやるという意味だろうと思う。そうすれば、せつかくできた國立研究発も、足りないところが、あれば、ますます民間の研究調査を発達させ、これが充実してくれば、おのずから必要がなくなるわけだろうと思うのであります。もつとこれを簡單に、必要のあるときに他に委嘱するとかいうような、簡單な体裁のよいものものにまとめた方がよいと思いますが、いかがでございますか。こういうふうなまわりくどい規定をしなければならなかつたもつと積極的な理由を、はつきり伺つておきたいと思います。
○栗山政府委員 文部省の方で考えております事柄は、昨日から本日にわたつて繰返しての各委員からの御質問に対してお答えしました中に、よく現われておると考えるのでございますが、大臣もお答え申しましたように、また当然のことではありますが、各位におかれまして、各位のお考えをまた別個にお組み立てくださる手続をおとりくださるならば、私どもそれをお待ち申すことにいたしたいと思います。
○圓谷委員長 第三條に御意見がなければ第四條に移ります。 第四條 研究所に所長を置く。 2 所長は、一級の文部教官又は文部事務官のうちから、文部大臣が命ずる。 3 所長は、他の政府職員と兼ねることができない。
○高津委員 これは文部大臣の所轄の研究所が新たにできるわけでありますが、その所長に「文部教官又は文部事務官のうちから、文部大臣が命ずる。」となつております。昨日の御説明によれば、民間人を採用することもこの規定でさしつかえはない。その場合には民間人を教官または文部事務官に任命して、すぐそれを所長にできるのだ。こういう御説明でありましたから、民間人でもやれるということはわかりますけれども、從來の例からすれば、どの省でも外郭團体ができる場合に、その省の官僚の古手を、君は困つているか、そこに入れようというようなことで、あらゆる省で役人同士のソリダリテイーの精神から、みんな役人の古手がそういう團体に入つておつて、そうしてその省の現役の官僚と前の官僚とが、何もかも独占するきらいがあるのでありますが、今後この研究所にはそういう古手官僚を持つて來るように、すでに人選まできまつて、やつておるようなことはないのかどうか。それを一應お尋ねしておきます。
○下條國務大臣 実はこの問題は私最近聞いたのですが、何もまだきまつていないのです。それから公務員になるものですから、そこで一應教官とか事務官という形をとつてなるのでありますが、それであるために官僚の出身でなければならないというふうには考えておらぬことは、前の御説明の通りであります。
○高津委員 どういう人事が刮目して見ております。
○圓谷委員長 次に 第五條 所長は、毎年少くとも一回、調査研究の状況及びその成果に関する報告を公表しなければならない。
○田淵委員 この調査研究の状況及び成果に関する報告が、毎年少くとも一回とあるのでありますから、二回やつても三回やつてもさしつかえないことにはなつておりますが、一回とここに規定された理由いかん。
○稻田政府委員 大学あるいはほかの研究におきましても、年報あるいは事業といたしまして、普通一回は研究結果を発行するので例で、そうした点にならいまして、少くとも一回というふうにしたわけであります。
○田淵委員 私は二回とあつてほしいと思う。と申しますのは、從來あります諸研究の機関において、年次的に報告がされることになつております。ところがこの一回という報告の規定があるがために、その一回の報告が行われないことが多いのであります。そうするとその年度内においては、一回も報告が行われないというようなことが発生すると思うのです。報告は中途の過程において報告されても、何らさしつかえないのでありますから、身を入れて事業をやるためには、研究の大きな成果をまつて報告を行うというようなことを予想しなくても、研究の進度、つまり度合の報告というものが私は必ず要ると思う。そのために少くとも二回、こうあつてほしいと考える。
○稻田政府委員 こうした國立の研究所でありますので、自然毎年会計年度に從いまする予算をもとといたしまして、年々の事業計画を立てますし、評議員会がまたその初めにそれを審議しまして、やはり自然この研究所といたしましては、一年が事業々々の切れ目になつて参ると思います。御懸念のごとく、一回とありながら発表しないことがある、そういう例もあるかもしれませんけれども、法律において少くとも一回と書きまする以上は、一回は必ずやらなければならず、御懸念のようなことは実際には行い得ないものだと考えます。
○田淵委員 そうではありませんよ。
○圓谷委員長 第六條に移ります。 第六條 研究所に評議員会を置く。 2 評議員会は、研究所の毎年の事業計画、調査研究の委託その他重要事項について審議し、所長に助言する。 3 所長は、前項の重要事項については、評議員会の助言を求めなければならない。
○高津委員 第二項の「研究所の毎年の事業計画、調査研究の委託その他重要事項」という字句の、「その他重要事項」と考えられるものは何でありましようか。
○稻田政府委員 その他とありますのは、具体的な場合にいろいろなものが出て參ると思いますけれども、たとえば研究方法について非常に重要に論議される場合もあるだろうと思います。年度の研究報告を聞きまして、そうした点について論ずる場合もあり、また既往の刊行その他につきましても、問題になることがあると思います。
○圓谷委員長 (評議員) 第七條 評議員会は、二十人の評議員で組織する。 2 評議員は、國家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)の定めるところにより、学識経驗のある者のうちから、文部大臣が命じ、又は委嘱する。 3 学校の教職員を除く政府職員は、評議員となることができない。 4 評議員の任期は、四年とし、二年ごとにその半数を改任又は改嘱する。但し、再任又は再委嘱を妨げない。 5 補欠の評議員の任期は、前任者の任期の残任期間とする。 (評議員会の会長及び副会長) 第八條 評議員会に評議員の互選による任期二年の会長及び副会長各一人を置く。 (評議員会の運営方法に関する事項) 第九條 この法律に定めるものを除くほか、評議員会の運営方法に関する事項は、評議員会の助言によつて、文部大臣が定める。 (研究所の運営) 第十條 研究所の部課等の編成、職員の選出及び配置その他研究所の運営について必要な事項は、所長が定める。 (定員) 第十一條 研究所に置かれる專任の文部教官又は文部事務官の定員は、次の通りとする。 2 文部教官又は文部事務官で現に二級又は三級の地位にあるものは、轉任によつて、それぞれ前項の一級又は二級の文部教官又は文事部務官となることができない。 附 則 1 この法律は、公布の日から施行する 2 この法律施行の後、最初に命ぜられ、又は委嘱される評議員のうち、半数の者の任期は、第七條第四項の規定にかかわらず、二年とする。
○高津委員 文部教官または文部事務官の定員がここにきめられてありますが、そのほかにその研究所に働く全部の人員は、大よそどのくらいの予定でありますか。
○稻田政府委員 予算に認められておりまする全部の人員は、このほかに傭人、雇員、臨時職員等がありまして、法律に上つております定員を含めまして、全員五十二名でございます。
○西山委員 初め伺い漏らしたかもしれませんが、この研究所の予算はどのようになつておりますか。
○稻田政府委員 予算といたしましては、教育文化費のうちの学術教育調査研究費の中の國語研究費といたしまして、八百十七万二千円組まれております。ただなおこのほかに一般行政費の中に、職員の家族手当でありますとか、俸給の補正の費用その他がほかのものと一緒に組まれておりまして、全体といたしまして、研究所に向けられますものは、およそ八千万円程度でございます。但しこの予算は、本年度は八箇月分を計上しております。
○栗山政府委員 ただいま予算についての御質問がございましたので、つけ足して申し添えさしていただきます。それは提案の理由でも申し述べましたように、両院における請願の決議採択がありまして、それに基く前内閣の御功績と存じますが、前内閣のときにこの予算を組んでくださいまして、それが八箇月分通つているような次第でございます。もつと研究所設置の諸準備が早く進み、これが早く実現することこそ、議会の意思であつたと存じますが、遅れておりますような次第でありまして、皆樣の御協議、御決定が済み次第、すみやかに実施いたすというのが、みんなの考え方でございます。
○松本(七)委員 附則第二項の任期四年と二年のものを区別する場合、基準はどこにありますか。
○稻田政府委員 こうした評議員に関しまする規定につきましては、前の條文にありますように、評議員会の助言によつて、いずれ文部大臣が定められますので、確定はいたしておりませんけれども、およそこういう場合を想像いたしますれば、まず抽籤によることであろうと考えられます。
○高津委員 八箇月分の予算が、すでに前内閣によつてとられてあるということは聞いておりますが、三月末までは、ちようど五箇月分になると思います。そういう場合、その予算はどういうふうに使われるのであるか。余つたらそれを繰越金とされるのであるか。それともまた全額使うのであれば、そういうことがいつもされているので、予算面からは理解できるけれども、実際においては八箇月分を五箇月分に使うということがよく行われておるのでありますが、その点はどうですか。承つておきたいと思います。
○稻田政府委員 人件費についてはもちろん月割計算になります。事業費につきましては、予算組立てそのものが月割になつておりませんので、そうした関係はあり得ないと思います。
○高津委員 人件費が現在は相当に多いし、事業の方は月割り計算でないから、その事業の方へ残りの人件費を充てて予算一ぱい使える。こういう意味でありますか。
○稻田政府委員 人件費につきましては、他の款項目と彼此流用を許されないのでございます。
○圓谷委員長 質疑を打切りまして御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○下條國務大臣 先ほど栗山政務次官から、第三條につきまして、適当な案がありましたらというような意見が述べられたように思いますが、実は会期も切迫しておりますし、できますならば原案でお願いしたいと思います。その辺のところもよくおくみとり願いまして、よろしくお願いいたしたいと思います。
○圓谷委員長 それでは討論に入りたいと思いますが……。
○松本(七)委員 社会党では一應党の機関に諮つて態度をきめなければならぬので、本日はこれで散会して、また別な機会に討論採決されたいと思います。
○圓谷委員長 松本さんの動議に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○圓谷委員長 御異議なしと認めます。本日はこれにて散会いたします。 午後三時二十四分散会