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2回国会衆議院1948/01/30

本会議 第11号

発言数
8
登壇者
3
会派数
2
開催日
1948/01/30

会議録

松岡駒吉日本社会党議長

○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。      ————◇—————

松岡駒吉日本社会党議長

○議長(松岡駒吉君) 日程第一、議員原侑君の逮捕について許諾を求める件、右の件を議題と致します。委員長の報告を求めます。議院運営委員長淺沼稻次郎君。     〔淺沼稻次郎君登壇〕

淺沼稻次郎日本社会党

○淺沼稻次郎君 ただいま議題となりました、議員原侑君の逮捕について許諾を求める件につきまして、議院運営委員会の審議の経過ならびに結果をご報告申し上げます。  本件は、去る一月二十四日、本委員会に付託になつたのでありまするが、その内容が國会議員を会期中に逮捕しようとするものでありまして、憲法並びに國会法において特別に保証されておりまする國会議員の身分に関する重大な事件であり、かつまた議会史上未だかつて見ない事例でもあり、今後の憲政運営上の先例ともなりますので、その取扱いについては、きわめて慎重の上にも慎重を期したのであります。すなわち、内閣総理大臣及び司法大臣の出席を求めて説明を徴する等、付託以来今日まで六日間にわたつて、連日これが審議に当つてまいりました。  審査委員会における大要を申し上げますれば、まず第一に、逮捕の許諾要求の手続きについて問題となりました。すなわちこの要求は、逮捕の権限を有する者が、これをその院に対してなすべきであり、逮捕状を発するものは裁判所であつて、従つて、逮捕許諾の要求は裁判所がなすべきであり、内閣からこの要求をなすのは不当ではないか、さらに一歩譲つて、内閣からこれを要求するとしても、憲法第五十條及び國会法第三十三第五十條に定められたる議員の身分保障の規定の精神と、刑事訴訟法の應急的措置法第八條の規定から見て、まず裁判所に逮捕状を要求したる後議院の許諾を要求することが手続上正しいので、先に議院の許諾を求めるのは逆ではないかとの意見でありました。これに対しては司法大臣から、逮捕の権限は検察官にあり、従つて、行政権の責任者たる内閣総理大臣から要求することは、手続き上正しいものと考える、また、まず議院に逮捕の許諾を求めたのは、議院という特殊の身分に鑑み、特に慎重を期する意味において、裁判所に逮捕状を要求する前に、議員の許諾を求めることが妥当であり、國会を尊重するゆえんであると確信するとの答弁がありました。次に、今期中特に議員を逮捕しなければならぬ捜査上の必要について説明を求めたのでありますが、捜査の機密に属する問題であるとのことでありましたので、特に一昨二十八日祕密会を開きまして、鈴木司法大臣より、会期中に議員原侑君の逮捕を必要とする理由について説明を聴き、次いで、原侑君から一身上の弁明を聴きまして、それぞれ各委員との間に質疑應答が繰返されたのでありまするが、これは祕密会の内容でありまするから、申し上げることを差控えます。  かくて質疑は終了しましたので、昨日の午後討論に入り、各党を代表して、本件の許諾に関する賛否の意見が開陳されました。討論の内容について、その概略を申し上げます。  まず、社会党を代表して笹口晃から、第一に、検察廳が逮捕権を行使する場合、直接その行政長官たる責任者から議員に対して許諾を求められた点については、刑事訴訟法の本法がなく、應急措置法を用いているから、この点に明文を欠くが、行政権の責任者たる総理大臣から当院にその許諾を求めるという手続が正当であるという通設に一應従いたい。しかし、この問題については、将來において深甚の考慮が加えられるべきである。第二に、この事件を明らかにするために、傍証を固める必要があるという当局の説明を一應諒とし、本件の傍証が、いわゆる人証によるほかないと考えられるので、この際、やはり一定の拘束を必要とすると思われる。第三に、本案の内容が、議院の地を利用して行われたものと思われるふしがある点から、今回不当財産取引調査特別委員会が本院に設けられた事情から言つても、また政界浄化のためにも、遺憾ながら司直の手によつてこれらの事情を明らかにした方が良いのではないか。われわれはあくまでも憲法第五十條の議員不逮捕の特権は守らなければならぬが、この特権に隠れて、議員がどのようなことをしても逮捕されないという印象を社会に與えることは、国民道義の高揚を強く要望する本院のとらないところである等の理由から、憲法第五十條の特例として本件の許諾に賛成の意見が述べられました。  次に、自由党を代表して山口喜久一郎君から、第一に、司法大臣と原侑君の説明中、事件の内容に根本的な相違点があること。第二に、司法大臣が逮捕の必要なる理由として説明した証拠湮滅のおそれのないこと。第三に、新憲法の人権擁護の精神からすれば、普通人ならばむしろ逮捕監禁の必要のないものを、代議士なるがためにかえつて逮捕を要求された感がある。第四に、憲法が会期前に逮捕された議員の釈放すら要求できるものとしているのは、國権の最高機関たる國会の尊厳と議員の審議権と身分を保証している憲法の精神から、これを軽々に扱うことは、議員みずからを軽んじ、國会を冒涜することになる。第五に、逮捕の許諾要求は、逮捕状を発し得る裁判所のみがなし得るのであつて内閣総理大臣にはその権限なき者と認められる等の理由に基づいて、國家永遠の発展のために、憲法護持の精神から、大乗的見地に立つて、本件の許諾に反対する旨の意見が述べられたのであります。  次に、民主党を代表して小島徹三君、第一に、逮捕の権限は検察官にあり、逮捕状を裁判官に要求する前提條件として、検察廳は書類を完備する必要上許諾を求めたと解釈するのが正しいと思う。第二に、内閣総理大臣の要求に対して許諾を與えることは、将來官僚の手に國会が蹂躙されるおそれがあるというが、内閣が國会の信任の上にある議院内閣制の本質と、裁判所が完全に独立している点より、絶対にその心配がないこと。第三に、原君の事件の内容が國家的犯罪でないがゆえに逮捕の要がないという点については、最も弱い人間が完全に保護されてこそ民主主義が実現されるのであつて、犯罪の性質から逮捕の必要なしという議論は成り立たない。第四に、事件の性質から、人的証拠によることが多いと考えられる点から、傍証をはつきりするためには、どうしても身柄を要求する必要がある等の理由から、本件について許諾を興うべきものであるとの賛成の意見が述べられたのでありますが、ただ今度の内閣総理大臣の要求書の書き方はきわめて不備である。すなわち、罪が決定していない以上、何人もりつぱな市民としての権利がある。殊にわれわれは、國会議員として相当な人格をもつているにもかかわらず、この要求書には、単に原侑として、君とか氏とかの敬称を使用していない点ははなはだ不当であるから、十分警告すべしということを強く希望されたのであります。  國民協同党の石田一松君よりは、原君が衆議院議員としての身分において、引揚者團体をバツクにし、引揚者を食いものにした疑いが濃厚であるのと、また証拠湮滅のおそれがあるという当局の意見に同意して、これに許諾を與えるべきであるとの意見を述べられ、なお附帯する希望條件として、第一、本件の許諾の要求が、検察当局からの要求により、内閣総理大臣の名によつてなされておる、すなわち検察廳は、裁判所に原君を逮捕する令状を要求する前提條件として許諾を求めてきているのであつて、もし検察廳が、本院の許諾をもつて裁判所に逮捕令状を要求しても、裁判所が逮捕令状を発しないというような事実があつたときの責任はどうなるか。この場合には、單に検察廳、司法大臣の責任のみではなく、國会の不名誉も、これに過ぎたるはない。また、その許諾を要求した内閣総理大臣の重大なる責任である。ひいては内閣全体の責任であると信ずるが、この点についての司法大臣の言明を信頼し、許諾に同意せんとするものである。第二、この許諾要求の手続きに関しては、まず検察廳から裁判所に逮捕の令状を要求し、裁判所がこの令状を発行するその前提条件として、この容疑者がたまたま國会議員であるから、裁判所自身が、その院に対して、まずその逮捕の許諾の要求をなすべきである。その議院において逮捕を許諾したという條件を具えて、初めて裁判所が検察廳に対して國会議員の逮捕の令状を出すのが正しいのである。行政府の長官である内閣総理大臣の一片の要求によつて、この許可が云々されることは、ゆゆしき問題である。今後は、総理大臣や司法 大臣がみだりに國会議員の逮捕を要求するようなことは、絶対に禁止しなければならないのであるとの旨を強調せられました。  同志クラブの工藤鐵男君よりは、新憲法が人権を擁護し、個人の権利を尊重するという点に重きをおいた建前から、ひいて國会の権威が行政権、司法権等に侵されることのないように、國会が憲法上與えられた障壁を擁護して國会を清めることは、國会の自主権によるべきであるとの見地から、反対の意見を述べられました。  第一議員倶楽部の田中久雄君よりは、逮捕状を出すについての許諾は、裁判所が求めるのが正しいので、総理大臣が逮捕の許諾を求めたことは間違いであるから、これは返すのが妥当であるとの理由で、本件に許諾を與えることに反対の意見を述べられました。  日本農民党の中野四郎君よりは、國会開会中に國会議員を逮捕すべからずという憲法上の原則を確立するという意味におきまして反対の意見が述べられ、なお、原君の善処を要望する旨を述べられました。  かくいたしまして、討論を終局し、採決の結果、多数をもつて本件に許諾を與えるべきものと議決いたしました。この段、御報告申し上げます。(拍手)

松岡駒吉日本社会党議長

○議長(松岡駒吉君) 原侑君より一身上の弁明を求められております。これを許します。原侑君。     〔原侑君登壇〕

原侑無所属

○原侑君 私は、第二回國会初頭、開会日にあたりまして、片山首相から逮捕の許諾を求められております。事件の結果を申し上げれば、不徳不明でありまして、議員皆さんに対しましては、まことに相済まぬと考えております。しかし六日間にわたりまして、運営委員会において、朝は十時から夜は十時まで慎重審議いたされまして、席上にも列なりましたが、身の不徳から皆さんに御迷惑をかけたことにつきましては、まことに相済まぬ次第であると考えておるのであります。(「その通り」「今に見ておれ」と呼ぶ者あり)  事情をはつきり申し上げれば、市井のブローカー小川平之助からだまされたということが、はつきりいたしておるのであります。すでに、私が小川平之助と関係をする前に、小川平之助は、約九百万円の金を、多数加工業者その他農業会から取得いたしておつたのであります。これは、社会党の鈴木茂三郎氏も言われた通りに、最初安田財閥が、いわゆる政党人をして、一つの人氣といいまするか、これを補助援助いたして、政治に活躍をさせよう、こういう氣持におきまして、最初われわれは、これの言を信じ、また行動を信じまして、金を収受いたしたのであります。ただ、ふしぎなことには、いわゆる山本力造なる者がおりますが、これはやはり全連を背景にいたしましたブローカーであります。これも六百万円をとつておるのであります。約九百万円とつております小川平之助および山本力造が、今日何ら逮捕せられていないということにおきまして、私は、これが政治的に扱われてはいないかということを感ずるのであります。もし詐欺いたしたといたすならば、私は二%であると思うのであります。いわゆる6〇〇万円とり、九百万円とつておりまする本人に対しては、何ら逮捕命令が出ていないということにおきまして、私は疑惑を深く感ぜざるを得ないのであります。(拍手)  第二は、昨年5月以來今日まで、9箇月たつております。この間、警視廳及び検察廳において調べられているのであります。すでに起訴、不起訴は決定されていなければならぬと私は思うのであります。しかるに、一片の疑いをもつて、國会議員を逮捕しなければならぬということに対しましても、また私は深く疑惑を感ぜざるを得ないのである。(拍手)  第三におきましては、詐欺罪は市井における一つの犯罪であるということは、皆様の御存知の通りであります。私は議員といたしましては、もちろんかくのごとき疑いを受けることに対しては、重大でありましよう。しかしながら、市井あり得る犯罪の中において、私は重大な犯罪とは考えていないのである。しかるに諸君、どうでありましよう。この疑いをもつて國会議員を逮捕しなければならぬという理由を、私は見出すことができぬのであります。しかも、昨年の暮、不当財産取引委員会の設立をみるようになつておるのであります。民主主義的な政治、大衆、民衆をして納得せしむる調べというものは、私は國会におかれております不当財産取引委員会において、民主的に調べられることが正しいものと思つているのであります。しかるに、開会劈頭、詐欺罪として逮捕せられるということにつきましては、私は民主的扱いでないと考えるのであります。  諸君、國会は國権最高の機関だと思います。ただ一つの立法の機関と思つておるのであります。議員は全國民を代表いたしまして、新憲法下、基本的人権をわれわれは擁護しなければならぬと考えるのであります。しかるに、諸君、どうでありましよう。この原則を忘れまして、ただ検察廳の働きによる手続上の機関といたしまして逮捕をせられるということに対しましては、議会の尊厳が保たれるかどうかということに対しまして、私は疑惑をもつものであります。  諸君、私は今この本議会は、私の断頭台上の立場だと考えております。私は一片の不安をもつておりません。かつてキリストが十字架上におきまして、この同じ無心の氣持のうちに、彼は刑を受けたと思つておるのであります。私は無心な氣持において、皆さんの公正なる御批判をを仰いでおきたいと思うのであります。  憲法第五十條における基本的人権が、簡単な詐欺罪によつて議員を拘束するということになりますれば、今後政治の上におきまして、重大なるクーデターといいますか、こういう大きな問題が起きぬとも限らないと私は思うのであります。諸君、かくのごとき状態でありまして、もしこれを諸君が許諾せられたとするならば、私は議員といたしまして、議会の権威のため、裁判所に起きまして最後まで闘いたいと思うのであります。どうぞ、私が去りましても——あるいはお互い議員は去ることがあるでありましよう。しかし、新憲法の永久永劫の生命を守ることは、私は最も大切なことであると思うのであります。願わくば、私、原一個の問題ではありません、永久永劫にかくのごとき事件のないように、一つ今後の國会を運用していただきたいということを希望いたすのであります。  最後に、皆さんに申し上げます。私が多小でもこの問題に対しまして議会のためになれば、私は一身をなげうつことは何とも考えておらぬのであります。今日寝て明日覚めずんば永久の死であります。この阿吽の境地に立ちまして、私は日常の教えといたしておるのであります。最後に裁判所におきまして、自ら晴天自白の身になるということを私は信じております。無罪になるということだけは、はつきり信じておるのであります。これだけは、皆さんに御安心を願いたいのであります。  最後に私は、皆さんに、先例にならぬように、この重大なる憲法第五十條の議員の身分に対する保証に対しては、原をおいては他にこういう問題の絶対に起こらぬように、皆さんの御協力をお願いいたしまして、一身上の弁明にかえる次第であります。  最後に、皆さんに申し上げます。身分上における私は、辞職をいたしまして、一市民といたしまして、司法の上にはつきり私の信念を吐露いたしたいと思います。(拍手)御安心願いたいと思うのであります。(拍手)      ————◇—————

松岡駒吉日本社会党議長

○議長(松岡駒吉君) ただいま原君より、議長に議員辞職願を提出いたされました。これは本件に直接関連した先決問題でありまするから、ただちに同君の辞職の件をお諮りいたします。その辞職願を朗読いたさせます。     〔参事朗読〕     辞職許可願                             私儀  新憲法擁護の爲め辞職致したいと思ひます。  御許可願います。   昭和二十三年一月三十日      衆議院議員 原  侑    衆議院議長松岡駒吉殿     〔拍手〕

松岡駒吉日本社会党議長

○議長(松岡駒吉君) 原侑君の辞職を許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松岡駒吉日本社会党議長

○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて許可するに決しました。  つきましては、先刻委員長から報告のありました、日程第一、議員原侑君の逮捕について許諾を求める件は、審議する必要がなくなりました。  明三十一日は定刻より本会議を開きます。本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十六分散会

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