司法委員会 第31号
- 発言数
- 69 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1948/06/14
会議録
○井伊委員長 開会する。人身保護法案を議題とする。
○打出委員 人権の保護は憲法、刑事訴訟法、警察法等により保護せられているのに、さらに本案を提出する特別の事情があるのか。
○泉參議院專門調査員 これらの法律によつては、事後における救済あるいは蹂躙者に対する制裁はあるが、現実に拘束されているものに対しては、救済するところがない。本案は当面の被拘束者救出の必要から提案するものである。
○打出委員 説明書に軟禁という用語があるが、これは具体的にはたとえば政爭時における中立議員の抱きこみのため、よそに連れ出して優遇するような場合は、中立議員はかえつて喜ぶものもあり、また別に公娼制度が廃止された今日でも、なお場所によつては継続しているものがある。かかるものが遊廓以外に外出できないが、またそれかといつて外部へ解放されることを希望しない。このような状態の本人の意思に反して、相手方や客等から救済するのは妥当ではなく、このような場合には、主観によつて判断すべきものであると思うが、本案では客観的にできていると見える点ガあるがどうか。
○泉參議院專門調査員 主観を重視しているのであつて、客観的な拘禁に見えても、本人の自由意思に基くときは救済に値いしないと考える。
○打出委員 管轄する高等裁判所もしくは地方裁判所に請求するとあるが、高等裁判所及び地方裁判所とした理由いかん。
○泉參議院專門調査員 場合によつては重要なもの、あるいは愼重を要するものがあり、一部には高等裁判所のみにする議論があつたが、事犯は全國にわたる可能性もあり、また迅速を要するので、一審として高等裁判所または地方裁判所と規定した。
○打出委員 重大、軽微を見分けのはいかなる目安によるか。
○泉參議院專門調査員 たとえば反対派のものが拘束したような場合は重大と考える。
○打出委員 第三條に地方裁判所とあるが、今日地方裁判所の事件がきわめて多く、重大な事犯を單独判事に委せるおそれがあるから、地方裁判所では会議制にする但書を設ける必要はないか。
○泉參議院專門調査員 本案による請求に対しては、すべて会議体のもとに行うことになるが、なお、それらの詳細な規定は、最高裁判所の定めるところになる。
○打出委員 濫訴のおそれがないか。あるいはまた同一事犯について他の人から請求するというような煩雜はないか。
○泉參議院專門調査員 人身保護請求し始めての制度であるから、相当の事犯が提起されることが予想されるが、そのブレーキとして、第二條で弁護士を代理人とする原則が立てられているから、訴訟に明るい責任のある弁護士が適当に判断すると考える。また第五條で全然要件を缺くようなときは、決定で却下できる。また理由のないことが明白なときは、第九條で決定により棄却することができる。
○打出委員 第十條中五百円以下の科科は安過ぎるのではないか。
○泉參議院專門調査員 これは一種の法廷侮辱罪的規定であるがわが國では、現在これを缺くので、一應秩序罰的規定となるであろうが、第十五條にあるように、出頭命令に服さぬときは、勾引勾留ができるし、なおその上に一日について五百円以下の割合で科料に処することができるのだから、大体この辺の規準でよいと考える。
○打出委員 十八條の上訴は、控訴の意味か、または上告の意味か。
○泉參議院專門調査員 今回修正によつて十九條となつた。この規定における上訴は、地方裁判所のしたものも、高等裁判所のしたものも、一律に最高裁判所が法律審すなわち法令違反の審査に限られるものであつて逐條説明に事実審のように書いてあるのは訂正する。これは憲法並びに判令違反についてとなつている改正刑事訴訟法によらない。
○打出委員 地方裁判所や高等裁判所は、未済事件が多い。さらに本案によりたくさんの件数が提起され、事実上審理可能か心配する。ついては裁判官の数を増すような点について、最高裁判所に交渉したか。
○泉參議院專門調査員 從來立案に当つて交渉したが、刑事数の点については交渉していない。元來裁判所の多忙は、多く刑事事件によると思うが、この審理そのものは民事訴訟的である。
○打出委員 他の法律と本案の裁判と抵触のときはどうか。
○泉參議院專門調査員 事は拘束が正当な法律の手続によつたかどうかにあるから、他の裁判による不服申立との関係であるが、実体的な公判裁判の免訴等とは交渉をもたないと思う。刑事事件以外については、問題は起らないと考える。
○井伊委員長 休憩する。 午後一時三十分休憩 ————◇————— 午後二時四十二分開議 〔以下速記〕
○井伊委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。
○鍛冶委員 この間から審議があつたのに出てきませんで、新たに質問いたしますことは、まことに恐縮でありますが、事情を御了察の上、御答弁をお願いいたします。 まず本法の趣旨についてでありますが、人身保護法というものは、いわゆる人権蹂躙を排除するというか、救済するということをもつて目的とするものと考えますが、その趣旨は、いわゆる官憲の不法拘禁を排除するつもりでありましようか。それとも一般のあらゆる場合を予想して、やられたものでありましようか。この点からお伺いしたいと思います。
○伊藤參議院司法委員長 提案理由にも御説明申し上げております通り、御指摘のように、あらゆる場合を想像いたしまして、官憲の場合、いわゆる刑事事件の場合にも起り得る状態でありますから、そういう場合も、また私人間におけるところの拘禁というような場合も、ともに含むつもりで、本法を立案したつもりであります。
○鍛冶委員 そこでもちろんわれわれもそうあらんければならぬと思いまするが、一般世人の考えておりまするところ、——世人といいましても、素人だけではありませんが、專門家はなおさらこの点に間違いを生じやすいとは思いまするが、これはいわゆる不法拘禁、檢察官もしくは警察等の捜査に関する不法拘禁を排除するをもつて目的とするもののように考えておるものが非常に多いのであります。從いまして、そうなりますると、刑事訴訟法その他の不法拘禁をいうのではなくて、他の一般の大きな権利から出ていると思うのでありまかが、その根本はどこから出ているのか、その点をまずお伺いしたいと考えます。
○泉參議院專門調査員 私より御答弁をいたします。御案内のように、憲法三十四條の後段に、その入身保護法を示唆する根本の規定がございますので、これに應える裏づけの規定として、本法を立案した次第であります。
○鍛冶委員 憲法三十四條を見ますると、「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を與えられなければ、拘留文は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」となつておりますが、どう見ても、これは先ほどから言う捜査のために、もしくは警察上の方面からやられたものを規定しておるのではないかと思うのであります。何となれば、いわゆる私人の拘禁というか、掠奪その他のものになりますと、理由を告げるとか、弁護人を依頼するとか、弁護人を出席せしめるとか、そんな私人が理由を告げる必要はない。理由も何もない。無法にひつぱつていくことが、いわゆる私人の拘禁になるのでありますから、どうもそれだけでは、説明が足らないのではないかと考えますが、いかがでしようか。
○泉參議院專門調査員 御案内のように、憲法三十四條は、その前の憲法三十一條及び三十三條を受けたものと解釈せられておるのでありまして、三十四條の字句から見ますと、一應さようにも考えられるのでありますけれども、これに三十一條を含むというふうに言われておる趣旨から考えまして、三十一條は、あえて刑事事件の場合のみならず、すべての場合を含んでおるというふうに、一般学者も説いておるように心得ております。
○鍛冶委員 私はすべてのものを入れることがいかぬというのではありません。すべてのもとを入れなければいかぬ、そう思うのだが、どうもこの法案の第一條だけを見ては、その意味が現われておらぬのじやないか。という誤弊がありかもしれませんが、はつきりしておらぬと思いますから、そこでその根拠はどこにあるか。そしてかような日本にとつては画期的の法律が、何ゆえに必要なのであるか、この点をまず第一番に明確にしておくことが、何よりも必要事項なりと考えますから、申し上げるのであります。そういたしますと、むしろ三十一條の前段が主じやないでしようか。この点はいかように思つております。
○泉參議院專門調査員 本法の必要性については、鍛冶委員もつとに御了承くだすつたことと思うのでありますが、その根拠につきましては、本法では「法律上正当な手続によらないで、」と書きました。憲法の三十四條では「正当な理由がなければ、」という表現を用いておりますし、また憲法の三十一條には、「法律の定める手続によらなければ、」というふうに言葉づかいをしております。そこで憲法の三十四條といえども「正当な理由がなければ、」という意味は、決して公判、裁判に関するような事由を理由としては救済を必要とすることはできなすのだという解釈は、ほぼ一定しておるように考えられますので、むしろ表現としては、三十一條の「法律の定める手続によらなければ、」という方がまさつておるのではなかろうかというので、本法の第一條でも「法律上正当な手続によらないで、」という表現を用いたわけであります。御指摘のように、三十一條もまた三十四條の後段に劣らない有力な根拠になるわけでございまして、直接には三十四條の後段が、本法制定の根拠になるのではないかというふうに考えております。 なお本法第一條の「身体の自由を拘束されている者は、」というこの「拘束」という文字を用いました点も、その意味を含ましたつもりであります。刑事訴訟法の逮捕、拘禁あるいは勾留というような文字をことさら避けまして、一般私人または私人團体による場合にも、すべてこれを含むという趣旨から、廣い意味で「拘束」という文字を使つたつもりであります。御了承を願います。
○鍛冶委員 大体わかりましたが、何しろ本法は画期的な法律でありまするし、今ごろこんなことをされるのは遅いという人があるかもしれませんが、いずれにいたしましても、わが國の法律体系としては画期的なものと考えるのであります。そこで近ごろは新しい法律の第一條として、この法律を制定するに至つた根本理由、または本法のねらいとする目的等を掲げることが、だんだんはやつてまいりました。大分現われてきたのでありますが、私は旧來ある民法、刑法であるとか、または刑事訴訟法などにはさようななくてもいい、もう法律家が一分わかつているし、素人においてもわかつている。ただこういう画期的な法律で、どういうねらいで、どの程度のことをしようということが、國民にもわかつていないものに対してこそ、ああいうことが要るのではないかと考えます。從いまして、われわれにとつても疑問のある法律であり、特に画期的な重大な法律であるから、これは第一條として本法の根本理由を現わすことが、最もこの法律に精彩を添えるゆえんではないかと考えますが、いかがなものでありましよう。
○伊藤參議院司法委員長 まことに鍛冶委員の仰せには、われわれとしても全的に賛成するものであります。第一條にこれを表現するかどうかという点に対しましては、あるいは前文に鍛冶委員の仰せのごとき趣旨を十分盛りこんで、この法律の運用に指針を與える、もしくは法律の解釈の基礎を與えることが、最も好ましいことではないかと考えますが、第一條はわれわれとしても、はなはだ不十分な点があるのであります。これは関係方面に対しても、われわれの意思がどうしても透徹できなかつたので、表現の方法としては遺憾な点があるのですが、それを補う意味において、たとえば御指摘のような趣旨を、前文にしていただくということになれば、なおさらわれわれとしても好ましいことだと信ずる次第であります。
○鍛冶委員 今参議院の委員長のおつしやつたことは、私はあえて前文でなければいかぬとか、第一條でなければならぬということは申しませんが、まことに必要なものと考えますので、よく懇談して、いま一遍お考えを願いたいと思います。われわれもできるだけ御協力してやりたいと考えます。 そこで次に承りたいのは、個人の資力または私的團体により不法拘禁の場合であります。入れることはまことに必要なことでもあるし、入れなくちやならぬと思いますけれども、この点も明確にしておくにあらずんば、第一非常な社会不安を生じ、濫用とかそんなことを生ずる憂えがないかと思うのであります。殊に近ごろは夫婦関係に対しても——これは一つの例ですが、妻の覊束される行為を夫が取消すことをなくしました。私はあの條文の改正に対しては、これは何とか考えなければいかぬものだと言つたのですが、原案のまま押切られたのですが、ああいうような場合に、女房が夫に默つてほかへ稼ぎに行つておる。そうすると夫が來い、私の妻を不法監禁していると言う。こういうようなことで、いろいろな場合を想像できるのでありまして、この目途というものをつけておかなくては、第三者に非常に迷惑を及ぼすということが考えられると思うのであります。殊に私的拘禁という場合をいろいろ想像してみますると、どこかに基準というものがなくては、きりがないように思いまするが、その点はお考えにならなかつたでしようか。
○泉參議院專門調査員 お答えいたします。仰せのように、本法は初めての試みでありまして、すべてが予想のもとに立案されておるのでありまするから、英米にはその先例もあるわけでありまするけれども、とつてもつて範とするに足るケースも、事があまりに向うでは習熟されておりまするために、十分にはまいりませぬでした。それで私的の拘禁というようなことについては、説明書にも多少書き上げましたが、政爭関係、選挙関係、あるいは労働爭議の関係、それから精神病者、未成年者の監置、あるいは監獄部屋というようなものを想像したのでありまして、これらの場合を通じて、一つの基準と申しますれば、要するに本人の意思に反する場合ということが一つの基準になろうかと思うのであります。從つて本人の意思に反しないというような場合には、本法の救済は求めることができないと、解釈しておる次第であります。
○鍛冶委員 一應そう言えば、それで抽象的には少しは現われるかもしれませんが、非常なデリケートな問題が起つてこぬかと思います。ここにも書いてある監獄部屋というような話ですが、監獄部屋というので、行くときには承諾の上で行つている。行つてみるとひどかつた。それで逃げて出たくとも逃げて出られぬというような場合は、どういうことになりますか。
○泉參議院專門調査員 御説のような場合は、もちろん本法の救済を求め得るというふうに考えておりまするが、要するに手続の全過程において、その意思に反し、あるいは不法が生じた場合には、すべて本法の救済に価いすると考えております。
○鍛冶委員 そうなると、その不法という意味は、まつたく当事者の意思のみによりますか。客観的情勢ということも考えなければならぬと思うのでありまするが、今の監獄部屋の場合は逃げて出たいが出さない、こう言われればそれでいいかもしれませぬ。いろいろな場合が想像できます。よくある例は、金を借りて藝者になり、喜んでやつておる。ところがほかから親なり男がやつて來て、おれの娘を監禁しておると言う。そこで娘を呼んでみると、わしはいやなんだけれども留められておると言つて、借金を踏み倒していこうとする。これは実際ずいぶんある。これもやはり不法監禁であるとして人権蹂躙したものになるということにすると、これは藝者だからいいじやないかと言えばいいかしらぬが、これでは社会秩序は保てない。これらの点は、何かそこにしつかりしたものがなければ、非常に問題がこんがらかるようになりますよ。
○泉參議院專門調査員 仰せの通り、さような非常にデリケートな場合が数々あろうかと思いますが、要するに本人の意思と主観的條件と、それから具体的な場合における客観的條件とをにらみ合わせまして、それは不当ということに相なろうかと思うのであります。具体的な御設例のような場合には、やはり債務のためにその個人を抑留しておくということは、法律上不可能だろうと思いますので、その二つの場合は、いずれも本法によつて請求できるのではないかと考えております。
○鍛冶委員 その点を議論しておつてもしようがありませんが、そうなると、これは借金を踏み倒すための法律になりますよ。喜んで働いておる、それを実際は男が來て引つぱつて行つて、そうしてつかまえれば、私はいやだつたと言うのです。要するにもつとこれらの場合を、抽象的にただ不法にやられたというのでなくて、社会情勢上どういうことが起るかということを、もつと見きわめて、特に私人の場合にはこうというような標準をおかなければ、やたらにやられると思います。私一つか二つの例をあげたのですが、われわれの多年の経驗からみると、えらいことが起つてきはせぬかと思うのであります。これはとくとお互い協力して、もう少しこのような目途をつけないと、今の藝者の場合なんか、働きますと言つて喜んで働いておる。それを人身不法拘禁だと言われることになると、いろいろな事態がそれに伴つて起ることになり、社会上ゆゆしい不安が起つてくると思います。これはもう少し確固たる基準が欲しいと思いますし、また私もあまり勉強もしておりませんが、外國等においても、この私人の拘束に対する救済の例もあろうかと思いますので、いま少し專門委員のあなた方に研究していただいて、具体的にある程度の標準を示してもらいたいものだと考えます。
○泉參議院專門調査員 ただいま仰せになりました前借の場合は、御承知でもありましようが、現行法上前借によつて拘束した稼業をさせることは、すでに禁止せられておると思うのであります。しかもなお本人が喜んで働いておるというのは、実は拘束者被拘束者が、なれ合つて脱法行為をやつておるんじやないかというふうに私は考えております。実は参議院の司法委員会におきましても、そういつた意味において、鳩の町ですが、向島方面のそういう関係の実態調査もやつてみたいと思つておりましたが、実はそのひまがありませんので、いまだ試みておりませんけれども、その点の御心配はあるいはないのではないかというふうに思います。その他の例につきましては、さしあたり具体的にはちよつと思いついたものはないのであります。要するに被拘束者の自由な判断と申しますか、完全な判断に基く意思に背いておるというような場合には、何人の彼のために本法の請求ができるというふうに、一線を画しておるわけであります。
○鍛冶委員 どうも本人の意思だけに任せるということになりますと、客観事情と異なつたことでも言うのです。もちろんいやだと言うのを、金を貸しておるからといつて止めてはおけぬ。それはわかつておりますが、そうじやないのです。働けばよいと思つておるのです。ところが横から行つておだてると、よくひつぱり出されてきて、そうして、とうとう私はいやなのを、金のために縛られておるのですと、こう言うのです。それはそういうものを世間から一切よせばいいということになりますが、そうなりますと、からだを束することの契約というものは一切できぬことになります。本人の意思はすぐ変りますから、私はいやなのですが、おるのです。これが第三者に取引上に不安を起させる。この点なのです。これが本人の意思だけでと言われると、一通りはいいようだが、客観情勢とにらみ合わせれば、必ずそういうことになる。これは藝者だけではない。いろいろな場合が想像できると思います。
○泉參議院專門調査員 事柄は、具体的な事件の際に、裁判官の判断に委ねるわけでありますが、概括的に、身体の拘束を伴うこの種の契約は、すべてただいまでは法律上無効ということになつておるのではないかというふうに考えております。この点はなお法律上の根拠等につきまして、後ほど研究して御報告申し上げたいと思います。要するに、ほしいままなる意思ではなくて、客観的に見てそれが自由意思に反するというようなことが、判断の基準になろうかと考えておる次第であります。
○鍛冶委員 これ、あなたとそう議論しておつてもしようがないが、もう一遍まじめに考えてみましよう。身体を束するというが、実際はよそから通つてやつてもよいし、その家におつてやつてもよい仕事があるのです。からだを使わなければならぬ。ところが殊に今日のごときは食糧事情が悪いのだから、特にその家で食べさしてもらつて働いておる。それをつかまえると、私はいやなのに使われておる。こう言う。これらの点等、多岐多樣にわたるので、もう少し考えていただきたいと思います。考える余地がないのだとおつしやるならば、これは本氣で議論をしなければならぬが、そうでもなかろうと思うから、もう一應研究してみたいと思うのであります。それはこの程度にしておきましよう。 次いで私は、この救済に関する手続のすべてでありますが、本法案によりますと、大体において最高裁判所の規則に委ねておられるようであります。しかし今日われわれがここでやつております刑事訴訟法にいたしましても、一体この刑事訴訟法に規定すべき事項と、最高裁判所のいわゆる規則制定権に委ねるべき事項と、どこに区別があるか。これは非常に問題になつておるのであります。われわれは最高裁判所の規則というものは、主として法廷における秩序維持、その他施行に関する事柄をやるものじやないかと思うのでありますが、この法案のごとく、あげて最高裁判所の規則に任せるということはどんなものか、こう思われるので、本法案をつくるに至られましたときに、どこから最高裁判所の基準で、どこから法律によつてきめるか、この目途をおかれたらよろしかろうと思うのであります。
○伊藤參議院司法委員長 御指摘の点に対しましては、いろいろわれわれとしましても研究いたしてまいつたのでありますが、御承知の通り、まだ最高裁判所の規則制定権に関する見解というものは、最高裁判所自身においても、ここからここまでという確定的な意見はまだ発表していないように承知しております。また國会におきましても、その点に対するところの確定的な意見はきまつてないように思いますが、われわれの考えるところによりますれば、ただいま御指摘のような範囲において、かつまた少くとも國民の権利義務に影響を與うべき事項につきましては、ルールに讓るべきものではないと、こう考えておるのでありまして、本案におきましては、その線に沿いまして、極力本案中にそれを盛りこみたいと、こう考えたのでありますが、最初立案するときにおきまして、いわゆる訴訟手続はルールに讓ろう、こういうような立案基本方策がありましたものですから、それによつて讓られたのが、たまたま廣範囲にわたつてルールに讓つております。お手もとに後ほど差上げましたいわゆる修正によりまして、少くともただいま申し上げたようなおそれのある部分は、ここに取入れまして、いわゆるルールの制定の範囲を極力狹めまして、その一線を画したいと、こう考えて、修正案というものをお手もとに差上げておる次第であります。さような次第ですから、よろしく御了承願いたいと思います。
○鍛冶委員 大体これはやつぱり一種の裁判だと思いますが、裁判所の構成並びにその基準等は、それこそ根本だと思うのであります。私まだ修正案の方はあまりよく読んでおりませんが、その修正案というのは、あとの分ですか。その修正剰のどれにその点がはいつておりますか。
○伊藤參議院司法委員長 たとえば勾留、勾引とか、あるいは過料を科する手続とか、ないしは費用の負担でありますとか、そういうような点を、本法に取入れた次第であります。
○鍛冶委員 そうすると、今言う訴訟法に関するような規定は、やはり最高裁判所のルールにお任せになるのですか。
○泉參議院專門調査員 御指摘の点は、会議でやることに予定しておりまするが、それは地方裁判所に関する問題であります。その点は、実は七條にちよつと覗かしておるつもりであります。それから、これがいかなる手続によつて運用されるかという点は、大体の構想をこれに書いたつもりでありますが、しかし御案内のように、刑罰を科するのが目的でもありませんし、また勝ち負けをきめるのが目的でもありませんので、民事訴訟法でもなければ、刑事訴訟法でもない、こういう独特な新しい制度でありますので、そのいずれによるべきかということについては、かなり困難な問題があるのであります。それらの点については、そのどれによるということも実は書いてないのであります。その運用によつて、それに特殊な手続であるということに相なろうかと思うのであります。それらの点については、本法は骨子を規定したに止めまして、些末と言つては語弊があるかもしれませんが、こまかい点はすべて、特に憲法七十七條の規則制定権のみならず、本法に特に最高裁判所に必要な規則を定めるという一條を設けまして、憲法七十七條以上に、ルールできめる権限を最高裁判所に任したというふうに解釈しておる次第であります。そこであなたの言われる二十一條でありますか、それには、「最高裁判所は、請求、審問、裁判その他の手続について、必要な規則を定めることができる。」ということは、最初は書いたのでありますが、この手続というだけでは、少しはいらない点がありはしないかという懸念をもつておりましたので、この手続という字句を修正して事項というふうに書き改めまして、これを拡張した次第であります。
○鍛冶委員 そこで問題になるのですが、そういう点まで最高裁判所に委ねてよいものかどうか。ここに懸念をもつわけなのであります。殊にこれは決定ではなく、判決でしよう。判決をやるには、判決をやるだけの法律の規定がなくちやいかぬと私は思います。ですから何としても私は法律できめるべきもので、少くも法律できめるべきものは法律できめなくちやならない。特別なる手続なるがゆえに、最高裁判所に任せるということは、もつとやかましく言えば、最高裁判所に権限のないものを、法律の委任命令が何かで考えられることになります。これはどうもおかしいのではないかと思います。これはやはり基本法として考えなければならぬ。そうすると、どうしても基礎的な手続規定だけは、これに附属したものか何かでこしらえるのがほんとうじやないかと思います。これは最高裁判所の方でもお困りになつているじやないかと思いますが……。
○泉參議院專門調査員 なおこれについて申し上げたいと思いますが、実は何人でもこれを請求することができるというので、その請求をもつて事が始まる。そうして裁判所としては、まずほとんど職権上の証拠調べその他はやらないという建前で考えているわけであります。そこで訴訟運行の手続だけの面から見ますと、民事訴訟的な性格が非常に強いのではないかというふうに考えておりますので、ルール制定の際にもそういう線に沿つてつくつてもらうことを予定しているのでありますが、もし本法においてぜひこの程度の大綱は示す必要があるということでございますれば、どこかにルール制定以外のものは民事訴訟の規定によるというような一條は、入れた方がいいかとも考えている次第でございます。
○鍛冶委員 ただいまの点ですが、民事訴訟法によるということも、原則としては結構かと思いまするが、ただ民事訴訟法と簡單に言つても、そうはいかぬと思います。非常にめんどうな問題がつきまとつてきやせぬかと思いますから、われわれもできるだけいたしまするが、ひとつあなたの方でも、基本的なことだけはお取調べをお願いいたします。 次にお伺いしたいのは、まことによい制度には違いありませんが、先ほど私的拘禁についても申し上げましたが、一切の点にわたつて非常に濫用をするおそれがないかと考えるのであります。この点は立案者においても、十分お考えになつてと思いまするが、これを防ぐ方法について、具体的にどういう方法をやつておいでになりましたか、この点をまずお伺いしたいと考えます。
○泉參議院專門調査員 鍛冶委員の憂えるられる通り、私どもも本法の施行によつて相当事件が続出し、場合によると濫用にわたるのではないかということも考えた次第であります。一面またその濫用を戒めることの度が過ぎるために、陪審の二の舞のごとく、本法がちつとも動かないということになつても、本法制度の趣旨に反するということも考えられますので、その本の調和をいろいろに考えまして、主として濫用を防ぐ意味におきまして、第二條、五條あるいは九條というような規定を置いたのでありまするが、その趣旨はもつぱら濫用を防ぐという趣旨でありまするから、事に当りまする裁判官は、みだりにこれを使つてはいかぬ。裁判官もまたこの條文を濫用してはいかぬということを、切に希望しておる次第であります。二條におきましては、原則として弁護士が請求の代理人になる。これは法律知識の豊かな、そしてその制度上やや公職を帶びた弁護士が、責任をもつてまず事件を選りわけてくれるということを期待しておるわけであります。第五條では請求が明白に理由がないという場合、あるいは補正を命じてもその理由が整わない、あるいは疏明がないというような場合、また本法ではいわゆる一事不再理の原則は行われませんので、同じ請求が何度か繰返されて行われることも予想されまするし、そうした場合に、すでに一つの請求について、懇切丁寧な判断がなされた場合には、その後のものについては、やや五條に相当するようなものが出てくるのではいなかということも予想されますので、そうした場合には、決定をもつてこれを却下するということ。また第九條におきましては、準備調査の結果によつて判決まで行かないで、これまた決定で請求を棄却するというような場合も設けたわけであります。以上によつてなんとか濫用の点はブレーキがかけ得られるのではないかというふうに考えておる次第であります。
○鍛冶委員 第五條の点並びに一事不再理の点等に関しても、私意見がありますが、これは各條にわたつてのときに質問をいたすことにいたしますが、この第二條の場合、なるほど公職を帶びておる弁護士が代理するとすれば不法なことはやらないだろうということも私も考えもし、またそうも言いたいのでありますが、当事者の依頼によつてやるというこの制度のもとにおいて、弁護士にどこまでも公的公平を期していくということは、理想としては結構ですが、実際においていかがなものかと考えられるのであります。從いまして、もしそういうことであるならば、依頼したる弁護士にこれをやらせるということではなくて、ちようど立会のときに後で官選弁護士会から選んでもらうというようなことにもありますように、これをほんとうの公職として当事者の依頼でなくてやるということでなくては、ほんとうの目的が達せられないじやないか、かように考えられますが、この点はお考えになつたことございませんか。
○泉參議院專門調査員 從來の弁護士については、鍛冶委員の仰せのような場合が多々あつたことは、私も承知いたしております。しかし將來の弁護士のあり方としては、まさに先ほどの來私が述べましたようなことでなければならぬと考えておる次第でありますし、また今次弁護士法の改正も考えられておることもにらみ合わせまして、実はかように決定した次第でありまするが、それがもし理由があるとか、そうして弁護士会なり、あるいはその他の人権擁護團体が進んで請求をしようという場合には、第一條の第二項におきまして、当事者の代理人としてではなしに、独自の立場においてしていただくということも、期待しておるわけであります。
○鍛冶委員 理屈はその通りだが、実際にはそういうことは行われぬということが考られぬでもない、そこでそういう場合を防ぐのならば、この人身保護を請求するものは、当事者が直接請求する。しかしお前は素人だからいかぬというので、当事者が金を出して弁護士に頼むのでなく、裁判所なり、弁護士会から弁護士をつけよう、こういつて立会の弁護人の制度と同じことにせられるということなら、これは目的を達せられる。そうでないと、理屈はその通りでありたいものだということは、私も人一倍思うが、そうでなかつたらどうするか、そういうふうに根本的に制度を考えて見られるということが大事じやないか、こういうことなんです。
○泉參議院專門調査員 鍛冶委員の仰せまことにごもつともに拜聽いたします。その点はひとつなおよく研究してみたいと考えております。
○鍛冶委員 さらに虚偽の申立に対する制裁はあつたんですか。これも相当の規定を設れておかなくてはいかぬと思いますが、これはどういうふうになつておりますか。
○泉參議院專門調査員 実は立案の際に、それらの点や、また濫用に対する制裁の点なども、一應考慮したのでありますが、わが國の法制としては、まだその種のものを見出せませんので、本法ではそこまで積極的なものを規定しなかつたわけでありますが、ただ後に配付いたしました修正案の中に、わずかに費用の負担について新しく十五條を附加して、それに役立てたいというふうにしたわけであります。
○鍛冶委員 それは先ほどのお言葉の通り、あまりやかましく言つては飾りものになつて、こわがつてやらぬかもしれぬが、人身保護だから虚偽の申立をしてもよいという問題ではない。明らかに虚偽の申立てをしたというときには、罰しても少しも差支えないと思いますが、この点お考えが願えるかどうか。
○泉參議院專門調査員 実は軽犯罪法制当の際にも、警察犯処罰令とにらみ合わせて、官廳に虚偽の申立てをしたというものが削られておるのでありますが、それらのことも考え合わせまして、官廳は人民からときにだまされてもいいというようなことで、これには書かなかつたのであります。その点もことつ十分御趣旨に副うように考えてみたいと思います。
○鍛冶委員 なお大きな問題として考えましたのは、捜査のための勾留及び勾引、逮捕等に関する規定と本法との関係、刑事訴訟法には刑事訴訟法としての救済方法があります。それとこの法律との関係をいかにお考えになるか。重複する場合には、どうせられるお考えでおつくりになつたのですか。この点よほど重大だと思いますから、伺います。
○泉參議院專門調査員 仰せのように、刑事事件について拘束されておる場合には、殊に新しい刑事訴訟法改正案を見ますと、本法と重複する場合が、多々あるのであります。立法立案の際には、まだその重複点はごくわずかだつたのであります。それで刑事訴訟法にかかわらず、本法で請求し得る。從つて並行して重複して請求し得るというふうに考えて立案したのであります。また刑事訴訟法で請求し得ない場合でも、本法で請求し得る場合もあるというふうに考えております。ただ一言附け加えて申し上げたいのは、刑事訴訟法でもそうでありますが、本法におきましても、公判の裁判に属するような事項をもつて、本法の理由としてこれを請求することはできないというふうに考えておる次第であります。
○鍛冶委員 両方で救済方法をやつておつた場合に、どつちが優先するのですか。
○泉參議院專門調査員 本法に現に拘束されておるものを救済するという建前でありますから、もしそれ刑事訴訟法の手続でその拘束を解かれたような場合には、対象を失うことになります。從つて手続はそれで終了するようなことになりますので、重複の結果を見ないのでありますが、刑事訴訟法上の上訴その他の方法で請求が棄却された、そして依然として拘束が継続されておるという場合に、本法による請求が理由ありとして拘束を解くという裁判があつた場合には、それは、本法によつて釈放されるという結果になるわけであります。從つてその点大した矛盾は感じないのではないかというふうに解釈しているのであります。
○鍛冶委員 今新たに出されておりまする刑事訴訟法の改正法律案八十二條ないし八十七條の規定を見ますと、この規定自身において、まず勾留の理由の開示を請求する。それから裁判で理由があるかないかを調べる。こういうことになつている。恐らくこれで調べられた場合は、本法で保護せんとする正当の手続によらないとか、不法というようなことになりますけれども、同じことになると思います。そうすると、こういう申立をして、何月何日に開示の裁判か何かをやる。これがあるから、やらぬでいい、向うの方でやるのだから、おれの方はやらぬでいい、こういうことが当然起つてくるのではないかと思いますが、そのときはどつちを優先させるか。
○泉參議院專門調査員 刑事訴訟法改正案八十二條以下のいわゆる勾留の理由開示の請求があつた場合と、人身保護の請求があつた場合、どちらが優先するということはないものと考えております。ただ事実上は本法による請求は、修正でごらんのように、申立のあつた日から一週間以内に開くというふうに、非常に迅速に事を処理するように要求しておりますので、恐らく本法による請求の方が、先に進行するのではないかというふうに考えております。重複しましても、両々相まつて進行するというふうに考えておりますし、それから刑事訴訟法改正案八十二條以下の手続は、これはかなら疑問のある規定と、私らには解せられる点でありまして、憲法第三十四條後段を受けて、こういう規定があるのでありますが、一体開示の請求を受けて何になるか、理由があるかないかというだけで、一向結果が出てこないじやないか。理由があつたらどうなるか。勾留取消か何かになるのでありましようが、勾留取消になれば、本法の請求も自然消滅になる。つまり開示の請求なんてことが要求されるのではなくて、実は人身保護の要求が請求されているのだ。それを日本の学者といいますか、刑事訴訟法の立案者が間違えて、開示の請求なんてものをここに規定したのだというふうにも言われておりますので、実は本法の立案の際には、むしろ勾留開示の請求といつた観念を正す意味からも、人身保護法を通さなければならぬというふうに考えておつたのであります。繰返して申し上げますが、両方の手続は両々相まつて進行せられ、結果においては重複することはなかろうというふうに考えているのであります。
○鍛冶委員 私ももちろんこの新刑事訴訟法で救済がなかつた場合とか、解徐の請求がなかつた場合と、初めから理由がなかつた場合はどうするかということを考えますと、いずれにしてでも、一つの救済方法を二つの法律でやる。その実体のことならよいが、手続のことなんですから、手続を二つともやるということは、どうしても相容れぬと思います。要するにあとでなわばり爭いが起るということになる。実体法にはこうだということを求めることは、ただあつてもよい手続のことです。これは根本的にお考えおきを願いたい。これは最高裁判所にも意見を述べたいと思いますが、本日はこの程度にしておきます。
○井伊委員長 本日はこれで散会いたします。 午後三時五十一分散会