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2回国会衆議院1948/03/30

国土計画委員会 第4号

発言数
15
登壇者
6
会派数
5
開催日
1948/03/30

会議録

荒木萬壽夫民主党

○荒木委員長 これより会議を開きます。  本日は東北地方水書復旧状況の視察に関する報告の件を議題といたします。御承知のごとく、昨年秋の東北地方の水害はまことに惨澹たるものがありまして、その復旧状況については、官民ともに関心を有するところであります。殊に本年融雪期に際しまして、その復旧進捗のいかんは、影響きわめて重大なりと考えられましたので、去る二月二十七日より五日間当委員会から内海、野原、高田、高倉の四君が親しく現地を視察してお帰りになつた次第であります。この際その御報告を願いたいと存じます。野原正勝君。

野原正勝民主自由党

○野原委員 東北地方の水害のありました北上川筋を先般調査してまいりましたので、その御報告を申し上げます。  明治以来数十億の巨費を投じました治山治水事業も、辛うじて大河川の下流及び中流に築堤を建造した程度でありまして、この上流であるとか、その支流及び全國数百にわたる中小河川に至りましては、ほとんど大半が原始河川のままに放置せられておつたのであります。特に戰時中には山林の過伐、濫伐が相次いで起りまして、なお戰後におきましても、その状態は少しも改善せられていないで、特に最近に至りましては、食糧対策の面から、全國にわたりまして開拓が進められるというようなことのために、山林の保水力は著しく減少いたしまして、そのために水害は非常な勢いで殖えてまいりまして、最近におきましては、この水害ということは、すでにわが國の特種的な疾患とみなされるような状態となつておると思うのであります。特に昨年東北地方及び関東に襲来しました大水害は、わが國の水害史上におきましても、その規模の廣大な点におきまして、また災害のきわめて甚大でありました点におきまして、未だかつて比類を見ないような大規模なものであつたと思うのであります。これが対策に関しましては、われわれ國土委員会といたしましても非常な関心を有する次第でありまして、たまたま先般内閣更迭の直後におきまして、小暇を見出しまして、委員長の御了解を得ましたので、同僚委員である内海安吉君、高倉定助君、高田弥市君三君とともに、二月二十七日に東京を出発しまして、三月三日までの問、五日間にわたりまして宮城縣、岩手縣のいわゆる北上水系に対する災害の状況、あるいは今後の復旧の状況等につきまして調査してまいつたわけであります。なおこの調査には、本委員会の專門調査員の西畑君と田中書記及び建設院の中尾技官も同行いたされまして、それぞれ專門的な立場から、われわれの調査を御援助願つたようなわけであります。  私どものもつぱら調査しました内容は、これを分けますると、第一に、災害復旧工事は予定の通りうまくいつているかどうかということについてであります。第二は、現在の進捗状況で、來るべき融雪期の出水にはたして万全を期し得るかどうかという点について、第三は、資金資材の点で非常に隘路が多いようであるが、それがどんなふうになつており、またどうしなければならぬかという点についてであります。第四には北上川の治水問題についての根本的な、いわゆる恒久対策というものはいかにあるべきものであるかという点についての、いろいろな檢討を加えてみたい、これが私どもの調査の趣旨であつたのであります。  日程を追つて申し上げますと、二月二十七日の夜行で上野を立ちまして、翌日の二十八日早朝に仙台に着き、ただちに東北地方建設局に参りまして、長久保局長及び橘内技官から、東北地方直轄河川復旧及び改修工事の進捗状況を承つたのであります。次いで宮城縣廰に参りまして、千葉知事、高橋副知事及び縣会議長や縣会の土木委員長及び照井土木部長から、宮城縣内における水害の復旧事業の詳細な事情と、それから特に資金調達の部面においての、いろいろな御苦衷を承つたのであります。ここから自動車で宮城縣内の吉田川、鳴瀬川、江合川の災害復旧工事の現状を調査いたしました。翌二十九日には、宮城縣北上川の下流地帯であるところの飯野川を中心にいたしまして、迫川も調査いたしました。そうして岩手縣の一ノ関に参りまして一泊いたしました。  三月の一日は岩手縣の大槻土木部長と、東北建設局盛岡統合事務所の佐藤技官等の皆様方の案内で、北上川の中流である一ノ関の下流宮城縣境の狹搾部一帶を調査いたしまして、それから北上川筋を漸次上流地帶に上りまして、水沢から江刺郡下の水害の激甚地を調査いたしました。そうして和賀郡の黒沢尻に出てまいりました。それからまた上流に進みまして、花巻まで参りまして、そこへ泊つたのであります。三月の二日には北上川の支流になつております猿ヶ石川の堰堤工事が、戰時中に着工されたのが今日工事を止めておりますので、その状況を調査するためにその現場に参りまして、そうして午後に岩手縣の盛岡に参りました。北上川統合事務所の若林所長から、北上川改修計画をいろいろと聽取いたしまして、それから縣廰に参りまして、阿部副知事や村上縣会議長等から災害復旧事業の状態や、また宮城縣と同様に、資金調達の面におけるいろいろな困難な御事情を拝聽したのであります。かような日程でありましたが、二十八日宮城縣側を調査いたしまして、三月二日までの間に視察箇所の現地の到るところで、関係の主として町村長さん方から、その地方のいろいろな事情の陳情を受けまして、いかにこの水害に対しまして、地方がその対策について深い関心をもち、また非常な熱意をもつてその解決に当るべく努力しておるかという実情を詳細に見聞いたしまして、私どもは非常な感銘をもつたのであります。  さてこの北上川の問題でありますが、北上川は御承知の通り岩手縣に源を発しまして、宮城縣に注いでおる本邦屈指の川でありますが、この川は明治年間におきまして、盛岡から下流百九十キロのあの低水工事を、オランダの技師を招聘いたしまして、その技師の指導のもとに行いまして、さらに昭和九年までに、宮城縣境の狹搾部以下追波湾に至る間の高水防禦工事を完了したのであります。洪水量は五千五百七十立方メートルでありますが、下流の宮城縣内は、一應洪水に対してのこれらの堤防工事等は改修されて、完了したようなかつこうになつております。しかるに上流部である岩手縣内はほとんど未改修でありまして、昭和十六年から総工費四千六百八十万円、二十箇年継続事業という計画で工事にかかつたのでありましたが、まもなくわが國が太平洋戰爭に突入しました関係上、この工事等はほとんど放任されましたので、岩手縣内におきましては、手がつけられていないと申しても過言ではないのであります。かような状態のところへ昨年の災害に遭遇しましたので、特に岩手縣のごときは、その工事が未着手、あるいはまた徹底を欠いておつたというために、ほとんど全面的に崩壊をいたしまして、非常な災害をこうむるに至り、なおまた宮城縣内におきましても、昨年の驚異的な出水量は、從來の観念をまつたく超越いたしましたために、せつかくの工事をしました箇所も、到るところ堤防が決壊するというようなわけで、非常な大面積が浸水されたというようなことになつたのであります。元來本改修計画というものは北上川における本流と支流の五箇所に調節用堰堤を構築いたしまして、洪水を調節するとともに、三万キロないし五万キロワツトの発電事業というものを併せて行う。同時に盛岡市から下流百十一キロの間に改修工事を施工せんとするものであつたようであります。從つてこの北上川においては、未改修工事と災害復旧工事とが重複いたして施工されるように予定されておるのであります。岩手縣におきましては、明年度この工事の重複する二十八キロ分の築堤工事は、東北地方建設局の事業として、委託実行するということに話合がついておりまして、従來の官僚機構におきましては、これ等の点は現地と建設局との関係は非常に調子よくいつておりますので、たいへん結構だと考えておるわけであります。  災害復旧事作業の状態等でありますが、昨年の氾濫は御承知の通りの総額四十三億を超える大災害でありまして、土木関係だけでも復旧箇所は実に二千四百七十六箇所に上りまして、復旧費約十億六千万円に達しました。これはいわゆる北上川についてだけであります。これは大体三年間をもつて、一應復旧を完成したいという計画でおるわけでありますが、宮城縣下約三万町歩の冠水の大きな原因であつた大泉の破堤箇処も、その土工数量は約十二万立米に達し、そのうち約八〇%はすでに完成いたしまして、護岸工事等を今急いでおるわけでありますが、これが完成いたしますと、流速の鋭い春水に対しましても万全を期し得るのではないか、かように期待しておるのであります。岩手縣内におきましては、ほとんど原始河川の状態でありましたために、たまたま施工された貧弱な堤防は、先ほど申しましたように大半破堤いたしておりますが、今回の復旧におきましては、是が非でもこれをやらなければならぬというので、ただいま一生懸命にやつておるのでありまして、今年度内には原形に復旧する見込みであります。なお堤防につきましても、平均いたしまして一メートル以上の堤防の蒿上げ工事も施工する予定になつております。一般に護岸工事は老廃しておりまして、流速の急激な春水に対しましては非常に心細い状態でありますので、今後これに対しましては徹底的に補強する必要があると考えております。概して復旧工事は、さいわいに本年の天候に恵まれましたのと、地元の方たちが非常な愛郷心から、こぞつて復旧に出役しております関係上、予想以上に工事は進捗いたしておるようであります。ただ問題は資金と資材の問題でありますが、特に資金の面におきまして、これは宮城縣も岩手縣も同様でありますが、非常に今困難をしておりまして、この面を何とかしない限りにおいては、地元民がいかに熱意をもつてやりましても、この復旧工事は非常に困難である。何とかしてこの問題だけは処理しなければならぬということを強く考えたのであります。  まず北上川に対する恒久対策として考えますと、最大の洪水量は從來五千五百七十立方メートル、これは毎秒であります。これを予防しておつたのでありますが、昨年の出水は、上流部たる一関附近におきまして約八千五百立米となるのであります。下流において六千五百立米。これははなはだ奇異の感をもつ方があるかもしれませんが、この宮城縣と岩手縣の境の地帶、いわゆる狹窄部は、長さ約二十キロにわたつておりまして、その間が非常に狹いのであります。そのために水はけがよくないので、上流地帯には自然と水がたまつてしまう、それが下の方に來まして、上流部が八千五百立米くらいなのに下流においては六千五百という現象が自然にできたわけでありまして、その六千五百立米を流すだけ從來の設備がない、つまり五千五百七十立米であつたために、約一千立米からの水が從來の計画水からオーバーするということが、宮城縣における水害を発生した根本の原因であるのであります。この上流部の八千五百立米というような、さような大水量をためておくだけの設備も何ももちろんないから、これが自然にあの狹窄部の狹いところから呑みきれずに、岩手縣内にたまつてしまうのでありまして、それが一関附近において最大水嵩が実に十八メートルというような非常な高い水位に上つて、あの一関の市街一帶が全部水浸しになるというような現象を呈したのであります。これに対しましては、当然何とかして、自然の出水のままにこれを放任するわけにまいりませんので、先ほど申しましたように、北上川の本流及び支流に対しまして、洪水調節用のダムをつくらなければならぬ。今考えられておりますものは、北上川の本流である澁民村にまず三箇所、それから零石川、猿ヶ石川、和賀川、膽澤川、以上の五つにそれぞれ相当大きな洪水調節のダムをつくる予定になつておりまして、これらのダムが平均いたしまして、一箇所五百立方メートルの水量を調節することができますと、五箇所でもつて二千五百立米の調節ができるということになります。從つて八千五百立米の上流部の一関附近の水量というものは、それだけの調節ができますれば、下流に対しては六千立米程度の水が流れてきますので、洪水期におきましても安全であるということになるのであります。これらの調節用のダムをつくるということが絶対に必要であるのでありまして、このダムをつくつて、これを一面においては、先ほど申しましたように三万ないし五万キロワツトの電力水源として活用する。同時にまた灌漑用水に利用するということが、北上の治水問題の根本的な考え方でなければならぬ、かように考えております。なお一関附近には、それでもある程度の遊水池を考えなければなるまいということで、今これらの土木工事を施行しておるのでありますが、これらのものを一切合わせまして、北上川に対する当面の工費は、約六十億円程度を必要とするというように考えられるのであります。  さてこの堰堤工事のうち、猿ヶ石川の堰堤工事は昭和十六年から工事に着工いたしまして、当時工費四千万円の予定であつたようでありますが、実際の施行設備を整えまして、基礎のコンクリート五万立米を施行したのであります。その後セメントの不足のために、同時に終戰のどさくさ以來は、建設的な仕事は一應中止いたされまして、今日その仕事が中断されておるのであります。今後のこの猿ヶ石川のダムに対するセメントの所要量は約八万トンでありまして、コンクリートの所要量は約三十万立米であります。この工事の現場には、コンクリートの混合能力約毎時六十立米という厖大な設備もございますし、あらゆる設備を完備されましてその設備だけでも現在の價格に見つもりますと、二億以上であろうというような、厖大な設備がそのままさびついておるような状態でありまして、この國家的な大きな資材があそこでは遊んでおる。セメントがないだけで工事ができぬでおるというようなことは、非常に遺憾に考えてまいつたのであります。このセメント事情好轉の暁におきましては、まずもつてまつ先にこれらの仕事をやつていただきたい、かように考えております。  このダムの一つである膽澤川の堰堤は、セメントのない今日におきまして、セメントを使わずにダムをつくるという、新しい日本技術の粋を集めた構想をもつて、岩石填充の堰堤として、昭和二十三年度から向う四箇年間の契約で、今日その準備をしておるのであります。この膽澤川堰堤のごとく、セメントを使わずにやれるという工事が、なおこの北上上流の一帶にわたつて應用されるならば、非常に將來大きな期待がもてるように考えるのであります。以上申しましたような北上の根本の問題としましては、この堰堤をやるということが特に重大な問題となつておることを承知してまいりました。  宮城縣の中に江合川と鳴瀬川という二つの川がありますが、この江合、鳴瀬の両川に対しましての工事は、大正十二年以來内務省の直轄工事として施行されてまいりまして、その中に吉田川、多田川等も含められて施行されてまいつたのでありますが、滑川の耕地約三万町歩に及ぶ宮城縣随一の穀倉地帯でありますので、昨年の被害額も約九億円という非常に厖大なものに上りまして、全耕地の七〇%が水をかぶり、その災害は非常に激甚であつたのであります。この改修計画中の主要工事は、江合川の中流である福江より新江合川を開鑿して、江合川の洪水を導きまして、これを鳴瀬川に合流せしめる、一方鳴瀬川は川幅を拡張整理いたしまして、両川の洪水全部を開通せしめんとする工事であります。吉田川はこれを品井沼から分流して、河口附近において鳴瀬川の本流に注入し、品井沼約二千町歩の湛水を取除くとともに、多田川の逆流防止のために、現在堤防をさらに強化せんとするものでありまして、これらのものはいずれ北上川改修計画に一連の関連性をもつものであります。本改修工事は三十年の長期にわたつて続行せられまして、新江合川の構造物を残し、その他の主要工事をほぼ竣功したのでありましたが、昨年の出水量が既定の排水量をはるかに超過したために、ここに既定改修計画は再檢討しなければならぬということに立ち至つたのであります。すなわち江合、鳴瀬両川とも、その洪水量を約五十パーセント増加する必要があるのでありまして、新江合川に対する江合川の洪水導入量は五百立米程度に減少するとともに、江合、鳴瀬両川ともに全面的に増補計画を企図せらるべきであると考えるものであります。吉田川もその放水量を三倍にする必要がありますが、これ以上の蒿上げ工事はきわめて困難でありますので、川幅を拡張するとか、あるいは松島湾に対して放水路を拡張開鑿するとか、いずれかの手段を講じなければならぬということになるのでありまして、これらの方法をとらない限りは、品井沼干拓工事というものは水泡に期する、さような状態になつております。  今回の視察中におきまして、各地方でいろいろと地元の要望がございましたが、その要望を披瀝いたしたいと思います。まず宮城縣、岩手縣当局としましては、先ほども申しましたように、災害復旧工事施行の面において非常に熱心に、また十分な実力と自信をもつて仕事をしているのでありますが、資金の面において、両縣ともはなはだ困難に直面しておりますので、今日のような資金事情におきましては、折角の工事も中止しなければならぬかとも考えられておりますような、非常な危機に直面しておりますので、その点に対して両縣とも非常な根強い要望があつたのであります。宮城縣におきましては、二十二年度所要災害復旧事業費二億三千七百余万円に対しまして、八十余万円の補助と五千余万円の国庫予算外義務負担としての資金融通が決定され、あるいは想定されたのでありますけれども、なお一億余万円というものが不足しておりまして、この不足額はいまだに資金の融通がうまくいつておらない。地元銀行よりの一町借入金等によつて、ある程度は急場をしのいでおりますけれども、地元銀行の貸出も飽和点に達しておりますので、これ以上借りるわけにはまいらないというので、國庫の助成を仰ぎたい、また強力にこの資金融通に対しまして、政府が善処してもらいたいという点を特に申しておられたのであります。岩手縣におきましても同様でありまして、二十三年度災害復旧事業費は三億七千五百万円でございますが、資金の面におきまして、今日一億七千万円ほどの経費が不足しております。これらの両縣は、いわゆる予算外義務負担として許可された融資額の資金化に対しまして、地方財務当局、あるいは地方銀行等に対しまして、いろいろとお願いをしておるのでありますけれども、この予算全部を資金化すという面におきまして、非常に苦心しておるのであります。これらの点におきまして、先般政府は何とかして災害の復旧に対しては、正式な追加予算としてこれを計上することが困難であつても、資金融通の面において、必ず地元の要望にこたえるように取計らうということを、しばしば言明しておるのでありますけれども、現地にいつて見ますと、それらの政府の言明というものはほとんどあてにならない、まつたくわれわれは、この資金の話においてだまされておるというようなことまで申しておるのであります。この点に対しましては、今後われわれ委員会としましても、重大な関心を拂いまして、この資金の面に対しましては、いろいろと地元の要望にこたえるような措置を、急速にとらなければならぬということを、非常に強く感じたのであります。  次には復旧資材の点でありますが、鋼材、セメント等重要な復旧資材が、要求額の五分の一あるいはまた三分の一という程度きり交付されておりません。中には全然いただいていないものもあるというような状態でありまして、現在の資材の事情から申しますれば、あるいは一面やむを得ない点もあるかもしれませんが、いやしくもこの水害復旧というものの重要性に鑑みましても、何としてもこの資材の面におきましては、最優先でもつてやつてもらわなければならぬ、かように考えておるものであります。  なお地元の要望として、これは全般的な問題でありますが、水害復旧事業費は、全額国庫の負担とせられたいという要望がございました。なお水害復旧工事は、一箇年もしくは二箇年くらいで完了するようにしてもらいたいということでありました。御承知の通り、この水害復旧の工事そのものは、ただちに食糧生産に非常に関係があるのでありまして、悠長に構えて三年も四年もかかつておつたのでは、今年の作付けにも困るというふうな事情が多いのでありまして、予算関係でもつて二年、三年というふうなことに予定されるようでありますけれども、それはどうも地元としては非常に因る。但防を半分にしてやめたのでは、せつかくつくつた半分の堤防もむだになつてしまう、一気にやるということがどうしても必要だといういうような仕事の性質上、そういうことが非常に強く要求されておりますので、少くも二年くらいでもつて、應急の処置というものは全部済ませるということを、非常に地元は強く要望しています。  なお地元の要望としまして、開拓に要する費用を治山治水事業に轉用されたいというような声が、どこへいつても非常に多かつた。これは私どももまことに無理からぬことと考えてきたのでありますが、御承知の通り同じ食糧増産をするという、いろいろな國家の政策という面から見ますと、どうも一面において、今すぐに水害の復旧をしなければ今年の作付けにも間に合わないというような、非常に差迫つておる熟田地帶、いわゆる穀倉地帶のこうした水害の工事が、予算の関係でできずにいて、そして反面においては、山の奥で、いつになつたら食糧の生産に役立つことやらわからないような、開拓というふうなものに対して、同じ政府の國家財政の苦しい中から、そういう方面に対しては比較的多額の予算が出ているというふうなことを見聞いたしますと、その災害地の農村の方たちは、どうも政府のやることは何をやつているのかわからないというふうに考えるのは、無理からぬことであります。それで私どもも、やはりこの点に関しましては、今後わが國の農業政策という立場から、特に開拓に対しましLは十分な再檢討を加えるという必要かあろうかと存ずるのであります。特に昨年の水害の根本の原因の一つが、この山林の過伐、濫伐、開拓の行き過ぎというようなことが、いろいろと論議されているように伺つている際でありますので、特にこの問題に関しましては、今後十分檢討を要するのではなかろうか、かように考えております。  それから、いろいろと項目を申し上げますが、植林及び増林を奨励して、過伐、濫伐を禁止する措置を講じてもついたい。これは非常な要望でございまして、もちろん山林の過伐、濫伐が今回の水害の大きな原因であつたという点におきましては、下流のこれらの被害地帯の方たちの非常に深い関心の対象となつているのでありまして、これらの点に関しましては、われわれとしましても、十分こうした國民輿論というものを尊重する必要があろうと思うのであります。  それから大小の貯水池を設置せられたいという要望が非常に強かつたのであります。つまり五大ダムを北上川に対してつくるというふうなことは、たいへん理想としては結構であり、また当然やらなければならぬことだと思うのでありますけれども、この五つのダムをつくつたらそれでいいというふうに考えられては困るのでありまして、御承知の通り北上川に注いでいる何十、何百という小さな川は、それぞれみな昨年の水害では到るところ災害を起しておるのであります。これらに対しまして、やはり大きなダムは別としまして、大小の貯水池を設ける。これは一面においては洪水の調節にもなり、農業水利の上にも大きな効果があるというようなものに対しては、何も五つのダムに限らず、到るところこれをやろうじやないか、やつてもらいたい。そしてできるならばこれに対しては発電施設というようなものを備えて、そうしてどの川もことごとく、その水量というものは発電として十分役立つようにしてもらいたいというふうなことが、下流地帶の特に災害地の諸君の中から非常に要望されたのであります。  それからなお各地にセメント工場を設けてもらいたいという意見が非常に強かつたのであります。御承知の通り、北上山系は石灰岩が非常に豊富であります。特に宮城縣、岩手縣境から東磐井郡の一帶においては、到るところ石灰岩でありまして、場所によりましては石灰以外の石がないというようなわけで、護岸工事まで石灰岩でやつておるということを、現に私どもが見てまいりました。水害地帯の石垣なんかは、全部石灰岩でつくつておつた地帶もあります。かような石灰岩地帯でありまして、なおあの北上の沿線には、到るところ良質の粘土もございます。ただ電力ないしは石炭さえあれば、いくらでもセメントができるという、非常に惠まれたる状態にあるのであります。これらの点に対しまして、セメントがないないという話になると、なんとかして東北にセメント工場をつくつてもらいたいという声が到るところございます。これも傾聽に値いするものと思います。  それから次に重要橋梁はほとんど木橋であるけれども、今後これをつくる場合には、できるだけ永久構造物にしてもらいたい。つまりセメントで、鉄筋コンクリートの橋にしてもらいたいという要望が非常に強かつたのであります。  以上の諸点を加味いたしまして、明二十三年度災害復旧事業費として、宮城縣は約六億六千万円、岩手縣は約七億四千万円、それから北上川直轄工事費として約一億五千万円というものをまた要望しておるのであります。つまりこれは、先ほども話しましたような水害復旧工事を、できれば二十二年度と二十三年度と、二年でもつて完成したい。そのためにはこの程度の経費を必要とする。これを二十四年度まで引延ばされたのでは、農業の上にも非常に影響があるからして、地元民としては、できれば二十三年度に災害の復旧だけはせめてやつてしまいたい。地元の労力等は、どんな無理をしても、総がかりで出役するから、予算の都合さえつくならば、早くこれをやらしてもらいたいというような、非常な意氣込みでございます。  次に宮城縣の大谷地村内の追波川と旧北上川の分流地点に水門をつくつてもらいたい。そして旧北上川からの逆流を防いでもらいたいという要望も関係町村から出ております。それから新北上川と旧北上川との合流点、辻堂の水門を修理して、その機能を十分に発揮してもらいたいという要望もございました。  それから天王寺橋という橋がございますが、この橋は非常に老朽腐敗しておつて、倒壊の危險に直面しておるから、早くこれに対してかけかえてもらいたい。二十三年度中にはぜひやつてもらいたいという要望がございます。この橋は私どもが先般渡つた橋でありますが、承るところによりますと、私どもが渡つた直後にトラックが通つたために、遂にこの橋が倒壊してしまつたそうであります。この橋というのは、関係町村約二十数箇町村、しかもそれは岩手縣の方面にも通う非常に枢要な橋でありまして、これらの橋が倒壊してしまつて、関係町村の方たちは非常に困つておるだろうと思います。私どもは先般見てまいりまして、なるほどまことにひどい橋であると考えましたが、錦織地帶の方から、その場でもつて、この橋は非常に危險であるから、荷物を満載したようなトラックは絶対に通さないように、嚴重に監視しなければならぬということを現地の人たちに注意されておりました。私どももそれを承知しておつたのでありますが、私どもが通つて一週間も経たないうちに、遂にこれがひつくり返つてしまつたということを承つたのであります。さように、北上川の宮城縣の方もそうであるが、岩手縣も、從來北上にかかつておる木橋は、到るところこういうような状態でありまして、ほとんど全面的に木橋はかけ直してもらわなければならぬ。非常に危險な状態である。こういう脆弱な橋を唯一の交通路として頼つていろいろな産業が行われておるのであります。こういう産業の動脈である橋が、かように腐つて危險な状態であるということは、これ以上これを放任しておきましては、ひいては地元の産業、農業、あらゆる縣民の方たちの生活の上にも非常な不便があろうと思いますので、これは実情を調査された上で、できるだけ早くこの改修をしてもらいたい。私どもも調査しまして、よくその辺の事情は見てまいつたのであります。  それから北上川の維持管理区域を拡張してもらいたいという要望が非常にございます。つまりこれは直轄事業として國家が管理する区域というものに、飯野川からの下流追波湾までの間を全部北上川の維持管理区域にしてもらいたいという要望であります。  次に錦織村附近には亞炭、セメント等の各種の工業が非常に集中して計画されております。これは非常に良質の亞炭がたくさん埋藏されており、それから先ほど申しましたようなセメントの資材としての石灰岩、粘土等が非常に大量にございますので、それらの工事が今計画されておるのでありますが、遺憾ながらその地帶は昨年の水害でもつて橋梁が流失され、今橋がないのであります。これらの橋をすぐにかけかえてもらいたいという要望もございました。  それから宮城縣の米谷町附近の北上川が、大迂回しておりまして、大きな迂回路となつておるのでありますが、さなきだに水ばけが惡いというのに、このうねうねまわつた迂回路でありましては、ますます氾濫が激化される。何とかしてこの迂回路に対しては、河川の切換工事によつて改修をしてもらいたいという要望が、関係町村から非常に強く出ておつたのであります。  それから岩手縣内におきまして、随所に破堤しております堤防に対して、必要な土地と土取場というふうなものは無償で提供してもよいから、早くやつてほしいというような要望があつたのであります。それは現地を御覽にならない方は想像もつかぬのでありますが、実に被害の状態たるや、まことに言語に絶しております。場所によりましてはとうてい二度と畑にはならない、もうすべて見渡す限り川原になつてしまつておるというような場所がございますが、これらの点を地方の人たちがよく考えられ、堤防を直すためにはどんな犠牲もやむを得ない、地元の人たちも、こうした土地あるいは土取場もみな提供していいから、何とかして一刻も早くやつてもらわなければならぬという熱意に燃えておるのであります。  それから猿ヶ石の堰堤工事に対しまして、地方の、あるいは関係官民の方たちが、早くこの工事をまた再開するようにお願いしたいという要望が非常に強くありました。  それから着工後三十年経つても完成しないでいる新江合川のある開鑿工事を早く完了してもらいたい、併せて江合川及び鳴瀬川の單独改修工事も直轄工事として、國家事業としてやつてもらいたいという要望もあつたのであります。  それから北上川の運河及び点山運河を改修浚渫して、これが利用効果を向上せしめたいという要望もございました。御承知の通り、北上下流には從來運河が掘られておりまして、これら運河はその地方の交通運輸、農産物の輸送等に非常に効果をあげておつたのでありますが、最近は陸路が割合に発達した関係ですか、運河というものに対しては非常に利用が減つておつたようでありますが、最近また從來の運河というものに対する地方の人たちの要望か非常に殖えてまいりまして、現にこの運河に頼つて重要な物資を輸送しておる向が非常に多いのであります。今の日本の事情から申しましても、またこの水郷であるところの北上下流一帶の運河地帶というものは、この運河を利用するということがむしろ非常に必要だと思いますので、これはぜひとも運河の活用が十分行われるように考慮してやる必要があると思うのであります。それから砂防工事を全面的に促進されたいという要望が非常に強かつたのであります。なお石巻港湾と防潮堤を強化されたいという要望もございました。石巻の港湾は北上川が太平洋え注ぐ場所になつておりますが、この港湾が非常に浅い。年々の土砂の流出によつて淺くなつたのでありますが、これらのものに対しての浚渫も考えてもらいたい。なおまた防潮の堤を強化してもらいたいという要望もございました。追川の三方島の切取りと佐沼町、若柳町附近の狹搾部の拡張も考えられたいという要望もございました。これらのいろんな地方の要望があつたのでありますが、これらの点に対しまして、建設院等におきまして十分愼重に今後の政府の施策として御檢討願いたいと思うのであります。  終りに臨みまして、北上川の筋を調査いたしました感想と申しますか、私の感じましたことを二、三申し上げてみたいと思います。まず率直に申しまして、今回の北上川を下流から上流部にわたつてつぶさに調査した私の感じは、從來の土木行政、特に治水政策というものが、根本的に非常に間違つておつたのではないかということを強く感じておる。つまり地元の要望等にはすでにもういろいろはいつておりますけれども、今までなし來つたところの土木行政は、治山治水というものに対しましては、どうも非常に根本的に何か欠陷があつたように私は感じました。それはものの見方の相違であると言えばそれまででありますが、その点に関しまして二、三所感を申し上げてみたいのであります。  第一に、この治山ということをはたして考えておつたのがどうかということを、私はこの機会に指摘してみたいと思うのであります。最近では一口に治山治水と口にも言い、ものにも書かれておりますが、しかしほんとうに日本の土木行政や河川の管理、いわゆる治水政策というものが、ほんとうに治山ということを考えていたかどうか疑問とするのであります。日本の現在の山林の状態というものは、御承知の通り國土全体の約七割を占めている。日本全体の面積三千六百万町歩のうち、二千五百万町歩というものは山林でありまして、その山林が日本における一大貯水池と申しますか、いわゆる保水力をもつております。大きな一つの貯水力的な役割をもつておつたということは、何人もわかつております。ところが山林の姿が一つの調和された——材木が成長し、それが一つの蓄積をもつて、そうして健全な材木成長の姿であれば、保水力が一番強いのでありますが、最近のように過伐濫伐でもつて、ほとんど山林が荒廃する。御承知の通り、日本の山林の伐採の状態は、年々に成長した立木成長量は最大に見積りましても年間約一億八千万石程度であります。にもかかわらず戰爭中におきましては約四億石からの伐採が行われ、今日におきましても三億石以上の材石が伐採されるという状態でありまして、いわゆる極端な山林資源の搾取が行われる状態でありまして、この状態を繰返しますと、今日の日本の二千五百万町歩の全山林の蓄積が約六十億石でありますから、この状態で伐つてまいりますと、今後三十五箇年で日本の山林はすべてまるぼおずになる。かような危險な状態である。しかもその伐採が全山林についで平均して行われるならばまだしものこと、最近においては搬出の容易な個所から極端に皆伐する、非常な幼齢なものも皆伐されるというような状態でありまして、從つて伐採が非常に不均衡に行われるというような関係上、到るところにぼおず山が生れた。そこで雨が降れば水が急に出る。最近は水足が非常に早いということをどこでも言つておるのでありますが、その点に対して雨の降つた割合と、洪水になつて現われる出水高と申しますか、予定出水と申しますか、そういうもののバランスが、最近は從來の予定よりはるかに上回る状態になつてまいつた。これは全國的に見て非常にぼおず山が殖えたということを立証するものであります。しかも伐採した跡に直ぐに造林をするということが、戰時中からほとんど放任されたために、最近は植伐の不均衡からぼおず山が殖え、一旦雨が降るとそこかう土砂が崩壊するというようなことになつてまいります。この点から最近の山林の復興、私どもは特に森林復興ということで大いに輿論に訴えておりますけれども、根本問題としては、森林復興をなさない限りにおいては、この大きな治水政策もとうてい満足にいかない。この治山ということに対して、われわれは大きな注意を拂う必要があろうと考えるものであります。この治山の中には、單に山に木を植えるというようなことのみでなく、山そのものの取扱いにおいて、技術的にこれを伐採する、皆伐を避けて、できるだけ斫伐でいくというふうないき方もございましようが、特に御承知の通り、山腹においての土砂の崩壊を食止めるような、山腹の各種の砂防工事が必要である。御承知の通り、最近は到るところ北上山系及び奥羽山脈におきましても、土砂の崩壊の跡が眞赤になつて山肌が見えておりますが、これらの地帶に対しましては山腹工事を行う。これは非常に地味で目立たないことでありますから、ややもすると等閑に附されるおそれがあるが、これらの山から落ちてきた土砂が沢を埋め、その沢の土砂がまた下流一帶に流れこんでくるということは非常な莫大な量に上ると思うのであります。こうした山腹の工事はもちろんのことですが、渓流に対して堰堤をつくることが同時に必要であります。そうした渓流工事をも含めた治山対策を強力に行う必要があると思います。これらの点を從來の土木行政は割合に軽く見ておつたんじやなかろうかと考えるのであります。  次に治水政策の根本的欠陥の一つとしましては、まず水を活かすことを忘れておつたんじやなかろうかと思われる節が多いのであります。つまり水が山から発して海に注ぐ、これはまことに自然な、子供でもわかることでありますけれども、その自然の理を忘却しておつたんじやなかろうかと思われるのであります。現に北上川を宮城縣から岩手縣にわたつてずつと見てまいりますと、下流一帶に対しましては、なるほど堤防を築き、いろいろな工事をやつておりますが、しかし中流以上にはほとんど何もやつておらないのであります。まつたく自然の状態に放つておる。下の方ばかり一生懸命に護岸工事なんかするが、奥に対しましては、今になつてあわててダムをおつくりになつておりますけれども、ほとんど何もやつておらない。山は伐りつ放し、木は伐り放題である。また地元でその点に基づいて、砂防等に対しましていろいろと要望しましたけれども、それに対してもほとんど満足な砂防も行われていない。中小河川においてはほとんど野放しのままである。雨が降れば、出るだけ水が出れば、もう何ともやむを得ないというような考え方で、下流ばかりに対して力を入れてきた。これは水上をきわめずして根本の解決はないのであります。まず治山から始まつて、先ほど申しましたように山腹の砂防工事であるとか、あるいは渓流の工事であるとか、中小河川に対する様々な措置があつて、初めて治水政策は完全に行われるのであります。もちろん先ほど申しましたように、五大ダムをつくる、五大ダムのみならず、各河川とも到るところ水源地帶に対して洪水調節の堰堤をつくつて、この洪水の調節をすることは、もちろん必要であります。こうした單に下流地帶に対してばかり重点をおいたということを、私は非常に遺憾に思います。今後はむしろ上流部に対して十分檢討する必要があります。そしてでき得べくんば水を活かしてもらいたい。水は敗戰後の日本としましては、非常に貴重な資源であります。これは野放しにして流し放しにすれば、あの通り大きな被害を及ぼしますけれども、これをうまく調節をして、ほんとうに活かすならば、わが國にとつては何よりも大事な無限の資源だと思うのであります。私どもの計算では、全國的に見まして約二万キロワット程度の発電をするだけの水力発電資源があると思います。これは、日本の山林資源のうちで一落大きな資源だと考えておるのでありまして、こういう一点から見ましても、一滴の水も決してむだにはならぬと考えますが、これらは治山治水の根本的の問題として考えていく必要があろうと考えております。こういう観点から見るならば、たとえば北上川のごときは、岩手縣から源を発しておりますが、岩手縣、宮城縣というふうに、これを切り離して考えるべきものでないということをつくづく感じたのであります。つまりこれは根本においてはまつたく利害がほんとうに共通しておる問題であります。岩手縣の地内にダムをつくるとか、いろいろなこういつた上流の施策をすることは、取りもなおさず宮城縣の下流地帶一帶に対しての非常な効果を及ぼすことでありますので、これは北上川全体にわたる一つの統一のある根本的な対策として行う必要がある、かように考えまして、先ごろ來宮城、岩手両縣の関係者みな一丸となつて、共同してこの面の対策に当ろう、かように考えて話合いをしているわけであります。この機会に申し上げますが、御承知の通り、北上川、青森縣に至る馬淵川及び秋田縣の米代川この三つの川は、それぞれ源を岩手から発しております。岩手縣の水源地帶が非常に荒れており、ここから土砂が非常に流出するということでありますと、いかに下流地帶に堤防をつくりましても、結局はむだになつてしまう。まず上流地帶から処理しなければならぬというふうに考えられるのであります。今の北上川の根本対策といたしまして、中には宮城、岩手両縣の間にあるところの狹窄を拡げて、それによつて水を早く流せばよろしいということを言う方もあります。あるいはまた宮城縣の北上川の川筋における護岸を、平均して二メートルなり三メートルなり高くすればよろしいと申す方もあります。もちろん從來と違いまして、今後五千五百立米というような、予定の出水を一千立米以上も超過すると思いますから、ある程度の堤防の蒿上工事は当然必要であります。しかしながら上流をかまわずに堤防を嵩上げするということは、まことに愚劣なことでありまして、根本を弁えざることであると思う。從つてこれは根本問題としては、どうしても上流地帶における洪水の調節、あるいはまた治山問題の解決、これによつて下流地帶を安定させることが一番賢明な策であり、根本の問題であろう、かように考えたのであります。  それから次に申し上げたい点は、先ほど來いろいろな報告の中で再三申し上げましたが、資金の問題であります。金融の面において非常に苦労しておる。これは私ども現地を視察しまして、身を切られるような思いをして承つてまいつたのでありますが、この災害地帶が本年の作付を前にして、水害の復旧に非常に努力してやつております。村の俸給も拂えないような状態になつていながらも、金を借りて、水害復旧の仕事だけはせめて続けてゆきたいというような、悲痛な覚悟をもつて、関係の町村長方は非常な苦労をなさつておるのでありますが、この状態にもおのずから限度がありまして、最近においては、これ以上資金の面で苦労するなら、とても自分たちは工事ができないというふうな、非常にせつぱ詰まつた氣持でやつてまいつております。私ども現地に参りましてもその話が非常に強く出ましたので、これは政府が当然追加予算として、十分なとは申せないまでも、われわれの最小限度要望する程度の追加予算は、当然組んでもらうということを私どもは期待しておつたにもかかわらず、何らそれらの措置に出ない。しかも追加予算として出さなければ、融資の面において何とかして、この災害復旧の工事は十分に進行させるということを約束しておきながら、その約束もまた知らぬ顔をして、今日何らの措置をしないというようなことに対しまして、私どもこの災害地帶をまわりまして、地元の人たちのこれに対する非常な憤懣の情を伺つてまいつたのであります。これらの点は、政府は今日明年度の食糧一割増産というようなことを発表し、それに対してすでにもう供出の割当も済まして、農村に対しましては政府を信頼して、そうして自分たちの飯米を割いても、供出だけはしなければなるまいという悲痛な覚悟で、この供出に対しましては、その割当を完成せしむべく、今一生懸命にやつておるのであります。ところがその期待に対しまして最小限度の水害の復旧が今日こういうような状態でできないでおるということに対しましては、私ども何と言つて農村の人たちにおわびをしていいか、言葉がないのであります。何とかして、私どもはいかなる方法をもつてしても、この災害地帶の方たちの窮状に対してこたえる方法をもたなければなるまい、さように考えまして、微力ながらも自分たちが一生懸命にやろうという約束をして、実は帰つたようなわけであります。何とぞ以上の点におくみとり願いまして、これらの点に関しまして、ひとつ十分の御協力を願いたいと思います。はなはだ簡單でありましたが、以上をもちまして北上川の流域調査の報告を終ります。

荒木萬壽夫民主党

○荒木委員長 ただいまの野原君の御報告に対しまして、政府側の率重なる意見を求めます。目黒政府委員。

目黒清雄総理廰技官

○目黒政府委員 北上川の視察につきまして、長い日数をかけ、詳細に御調査くださいましたことは、われわれの深く敬意を表するところでございます。いろいろたくさんの要望なり、あるいは御意見なりがありましたが、それを要約してお答えいたしますると、第一番目に工事費が非常に少い。これではとうてい工事が満足に施行できない。いわゆる資金の問題でありまして、そういう声が東北地方に起つておるということであります、これはすでに御承知の通りでありまして、非常に逼迫した補助状態であります。すでに約束づけられた融資の十億、その次の八億の融資と一億の追加予算は、不幸にして融資の方の見透しがつかないのであります。ただ二億の方の追加予算は、あるいは近く多少曙光を見出し得るのじやないか、あるいは追加予算として計上されるのじやないかというふうになつてまいつたのであります。しかしながら、次の四月暫定予算は一億八千万円という惨澹たる状態でありますので、これを東北六縣で現在どういうがうに割るかと申し上げますと、東北六縣の災害総額が三十二億九千万円ありますが、二十二年度の支出の補助額が五億九千万円、約一割八分の補助率であります。しかしながら、これを現在進捗しております工事の状態と比較してみますと、二十二年度は五億九千万円の補助でありますが、これに対して二十二年一月末の工事量が十一億九千百万円の支出状況を見ております。從つて金は約五割程度支出した形になつておりますので、工事量の進捗状況に対しては、非常に少いまことに氣の毒な次第でありまするが、今後ともわれわれは資金の獲得、補助額の増額については、努力いたしたいと思つております。  次に治水の根本策は治山にありという御意見でありますが、私もこの点については同感であります。私の方でもこのために砂防課を設けまして、砂防工事の全面的促進をはかろうというので、相当予算を要求しておりまするが、砂防工事の普及状況はそれほど進砂を見ておりませんと同時に、半面最近の濫代、過代によつて急速に山野が荒されていくのであります。從つて現在のような砂防工事の進捗をもつてしては、とうてい現在の治山を行うこともできないというみじめな状態に立ち至つておりますが、御意見に從いまして、將來とも治山の方に全力を離していきたいと思つております。  河川は單なる治水ではなく、重要なる資源としてこれを利用しなければなつぬ、水を利する、利水の方面を考えなければならぬという御意見、これもごもつともであります。われわれの方にも、このために一課を設けて調査をいたしております。安本においても資源調査委員会というものが設けられまして、河川を資源として取上げて研究されようという状態に立ち至つたと聞きます。ただ憎むらくは、現在において資材の関係その他の点で、この計画はできましても実現は相当困難があると考えられます。  次に河川特に北上川を例にとつて、河川を一縣に限定して計画すべきではないというお話でありまするが、これは私の方でも常にそう考えております。從つて建設院におきましては、北上川というような大きな河川につきましては、これを宮城、岩手という縣において施行をせしめない。建設院直轄の地方建設局においてこれを施行させるという方法をとりまするので、一河川が統一された計画をとつて現われておると存じております。  そのほか地方的なこまかい要望もありましたが、資材の配給の点につきまして、災害を優先にすべしという御意見であります。これはわれわれとしてもそういうふうにしてもらいたいと思うのでありまするが、御承知の通り、一應資材のわくをつくつてから予算というように、資材が先行するという形であります。殊に資材と申しましても、われわれの方ではセメントが主要資材でありますが、セメントは昨年度が百五十万トン程度のものでありまして、このうちわれわれの需要になるものは非常に少額であります。來年度はこれが二百万トン計画を立てているのでありますから、ある程度資材の配給が円滑にいくのではないかと予想しております。  セメント工場を岩手、宮城の石灰岩の多い地方に設置したらどうかというお話でございますが、御承知のようにセメント工場は石灰岩、粘土、電力以外に、セメント量の二分の一あるいは三分の一程度の石炭を要するのであります。この石炭といち重要物資の関係において、セメント工場の設置という問題はなかなか自由にいかないという現状でありますから、その点は御了承願いたいと思います。  また飛びまして申しわけありませんが、災害工事の補助率を全額國庫補助になすべしというのでありまするが、これは各縣で大災害の起るたびにお話がありますが、なかなか現在の國の財政の状態においては、実現が困難であると思われます。災害の復旧の場合、あるいはその他の場合でも、橋梁は永久構造にした方がよいという要望でありますが、もちろんその通りでございまして、われわれとしても、資材さえ見透しがつけば、できるだけ永久構造に改めていきたいと考えます。  その他開拓に要する費用を治山治水の方にまわすべきだというようなお話もありましたが、この問題はわれわれの方からかえつてお願いするような次第でありまして、私の返答外の問題だと考えております。  その他北上川下流に運河を開鑿して、水運の便をはかれというお話もありました。これも北上川利用の運河状況から推しまして、われわれも研究さしていただきたいと思つております。  それから全体的の北上川の問題を申し上げますと、この問題は昨年の水害から考えて、相当計画を変えいかなくてはならぬという現状に立ち至りました。從つてわれわれの方としても、このために治水調査委員会をつくつて、その道の権威者にお集りを願いまして、実際に現地についてこれが調査をなし、これの根本策を立ててもらうべくやつております。第一回の会合はすでに開かれておりますが、なかなか根本的な基礎を決定するまでには、相当の時間を要すると考えております。  以上あるいは答弁すべきものが漏れておつたかもしれませんが、大体要点だけを申し上げて御了承願いたいと存じます。

高倉定助日本農民党

○高倉委員 ただいま野原委員より北上川の調査報告をされましたが、私も調査に加わつた一人でありまして、御報告の通りの重要性を痛感するものであります。そこでお伺いしたいことは、どこへ行つても、野原君もお話がありましたが、融資の問題であります。工事はやつたけれども金の出道がないというので、非常に困つていることを到るところで聞いたのでありますが、先ほどの御報告にもありましたように、宮城縣におきましても一億余、岩手縣においても一億に近いものがまだ融資になつていない。しかし工事は進んでおるというようなことで、地方財政に対して非常な困難性を感じておるようなわけであります。從つてこれに対して今御答弁になりましたが、追加予算止して二億円のものを出して、これで賄いをつけたいというようなお話でありますが、北海道におきましても東北と同じように、相当の融資に対して困難を來たしておるようなわけでありますので、今後東北と同じような雪解けの條件が北海道にもあります。從つてこれに対するところの今後の工事が進捗しなければ、今までの工事をやりましたものが水泡に帰するような状況にありますので、速急にこれらの工事の完成をしなければならぬ。これにつきましては、どうしても融資を十分に解決し、それと同時に追加予算においてこれを出してもらわなければ、とうてい今後の農村の増産も期し得られないような状態にありまするから、この点融資の面において、どういうような今後御方針であるか、あるいは追加予算の二億円がどういうふうな割りふりになつてやられるかということについて、もう少し詳細に承つておきたいと思います。

目黒清雄総理廰技官

○目黒政府委員 北海道の融資の非常にお困りのことは聞いております。北海道は、一億二千万円のうち、昨年度五千万円すでに融資をみ、それから二回にわたりまして二千万円、二千万円、合計九千万円はすでに融資されております。残りますのは三千万円、これが今後の問題として残ると思われます。  それから二億円の追加予算をどう割りふるかということでありまするが、これは実ははつきり確定したわけでありませんで、今折衝中であります。この割りふりは二、三日中に決定いたしたいと考え、草案を練つておる次第であります。方針といたしましては、できるだけ工事の進捗したところの、非常にお困りのところにこの追加を出してやろうというつもりで今おります。

野原正勝民主自由党

○野原委員 セメントの問題でありますが、岩手縣及び宮城縣は非常に亞炭資源が豊富であります。亞炭と申しましても常盤炭に匹敵し得るようなカロリーをもつた良質の亞炭が相当あるのであります。これらの亞炭を使い、併せて電力も使い、あの無盡藏な北上山系一帶の石灰岩と粘土を使うことによつてセメント工場の可能性は必ずしも絶望でない。きわめて期待をもてるのじやないかと私は考えておる。なおこの問題に対してはいろいろ政府側でも御檢討願いたい。なお開拓問題に対しては、きようは開拓局長が見えておりませんから、これ以上お伺いするわけにまいりませんけれども、私どもとしてはこの機会に、できれば開拓と水害問題について、一つこの委員会として十分に檢討したい、結論を出したい、かように私考えてまいつております。これはまたあとの機会に譲りたいと思います。

荒木萬壽夫民主党

○荒木委員長 ほかに御発言ありませんか。只野直三郎君。

只野直三郎第一議員倶楽部

○只野委員 ただいま野原君から北上川その他の河川に関する調査報告を拝聽したのであります。その中で、北上川のような大きな河川は岩手、宮城にわたつて流れているが、この管理のことに対して、岩手、宮城が共同してそれを管理し、治山治水もともどもに緊密な連繋のもとにやるべきであるという御意見でありすまが、これはまつたく重大なことであります。現在も、日本においては、行政区画が小さいためと私は考えておりますけれども、大きな河川が数縣にわたつて流れておるために、途中きれぎれに河川管理の氣持があつて、結局その河がわれらの河、われらの山という観念を失わしめて、おのおのの地域の分だけに関しての利害を互いに相追求するというふうな氣分が、日本全國にある問題だと思います。それで河川管理の問題は、本來は現在のような行政区画でやつたのでは、これはとてもできない。要するに徹底的な地分権をやつて、通過縣を一つにまとめて、河一本が少くとも一つの自治行政の区画の中に織り込まれるというところまで徹底すれば、一番いいのであります。けれども現段階においては、かようなことも重大な政治問題になつてき、ただ單に河川一つだけでそういうことはできませんので、今日においては河川を少くも共同の利害関係のある、いわば母体である、そういう意味において、共同管理の形式を議会としても考えねばならぬことであるが、政府当局においても、そういう問題に対して十分檢討すべきであると思います。先ほど政府委員の方のそれに対する御答弁がなかつたような氣もいたしますので、野原君のおつしやることは、実は本日の報告のうちで最も重大なことの一つだと思いましたし、私も以上沿岸の選出代議士である関係上痛感しておりますので、一應お伺いしたいと思います。

目黒清雄総理廰技官

○目黒政府委員 ただいまのところでは地方分権、出先官廰の廃止というような輿論から、地方長官が管理をしておるのであります。しかしながらそういうふうな、あるいは縣によつて利害関係の相反するような河川があるわけでありまするから、これが改修につきましては、一應國がこれを取上げて、根本策をつくりまして改修するということで、建設局の出先の地方建設局がありまして、そこで工事を施行するということになつております。直轄河川というのがそれであります。それと管理権でありますが、管理の問題は將來、われわれの考えますのは、やはり水防組織を拡充するということを主眼にして、何かの法律をつくらなければならぬのではないかというふうに考えて、今研究中であります。あるいは水防組合法というようなものか、あるいは水防法というようなものか、何かの形において非常時に対する措置を法的にきめておく必要があるのではないかというふうに今考えております。

野本品吉国民協同党

○野本委員 先ほど野原さんの一應の意見の発表をお伺いしたのでありますが、私もそれに関連したことを特に申し上げたいと思います。それは先日の建設院総裁の御答弁によりますと、災害復旧の費用の予算化ということは、私どもから見ますとやや絶望に近いような感じを受けたのであります。またただいまの政府委員の御説明によりましても、多くを望み得ないという印象を受けております。もしさような状態であるといたしますならば、私どもは事業支出をできるだけ合理化し、能率化することに考慮を拂われなければならぬと思うのであります。すなわちそれは先事ほど來お話のありましたように、開拓費用を水害の復旧、農地改良等に思いきつて轉換すべきであると思うのでありまして、この事柄は、おそらく他の委員会等においても相当論議されたわけでありまして、今や一つの輿論であり、一つの常識であると私どもは思うのであります。従つて官職のセクト主義にとらわれて、事業の施策の本末選考を誤るがごときことは、われわれとしましては断じて黙視することができないと思うのであります。從つて本委員会といたしましても、また委員長におかれましても、予算委員会、農林委員会、水害対策委員会等と緊密な連絡提携をはかりまして、そうしてただいまの問題の速急解決の方向に努力を傾けていただきたいということを、強く要望いたす次第であります。

荒木萬壽夫民主党

○荒木委員長 ただいまの御意見に対しましては、とくと皆様とも御相談をいたしまして、適当な時期に適当な方法によつて、予算委員会等とも然るべく連繋をとりたいと考えます。

高倉定助日本農民党

○高倉委員 局長さんにお願いしておくのでありますが、先ほど申しました融資の問題、先ほども申し上げましたように、非常に困難をしておるようでありますから、中央銀行並びに大藏省の預金部長に、もう少し建設院の方からもお願いをしまして、十分にとはいかなくとも、工事をやつただけ今の支拂いができるように御盡力を願いたいのであります。

目黒清雄総理廰技官

○目黒政府委員 その点は十分われわれも努力いたします。できるだけ地方事情をわれわれによく聽かしていただいて、非常に融資の関係は敏速を尊ぶところでありますから、その非常な変化を見せていただいて、同時にわれわれの方からも一緒に日銀なり、あるいは預金部の方えまいつて督促いたしたいと考えております。

荒木萬壽夫民主党

○荒木委員長 本日はこれくらいにいたしまして、次の委員会の日時は公報をもつて御通知申し上げます。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後零時四十一分散会

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