決算委員会 第12号
- 発言数
- 127 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1948/06/05
会議録
○松原委員長 これより開会いたします。 経済査察廳法案に対する質問を継続いたします。中曽根君。
○中曽根委員 前から引続いて質問をいたします。今日は逐條的にやつていきたいと思いますが、まず第一條の経済査察廳の事務の中で、私は一番大事なことは、統制経済に関する國家的統一を確保することであろうと思います。つまり各府縣によつて経済統制というものに緩急があつてはならない。もしそういうことがあると、やわらかい縣に物は流れて、かたい縣には物は流れないし、あるいはまたそういう点から見て、人心にかなりの妙な摩擦を起す、こういう点があるだろうと思います。この目的を読んでみますと、そういうことに対する辞句が一つも見当らない。國家機関としての経済査察廳を設けるためには、それが非常に重要な要素であろうと思うのでありますが、その点を載せておらなかつたというのはどういう御意図でありますか。まずその点をお伺いいたします。
○田中(己)政府委員 お尋ねの点につきましては一條の第二項第一号にそのことを規定したわけでございまして、中央経済査察廳におきましては全國あるいは地域的な経済統制の励行を確保いたすためにすべての計画を立案いたしまして、すなわち從前の内務省警保局におきまして企画立案をいたしたような経済取締り計画はもちろんのこと、いやしくも経済統制の励行確保の方策はすべて一元的にこの査察廳において立案することを意味しておるのでありますが、かようにして立案した計画に基きまして、経済査察廳が以下に規定しておるような手段方法によりましてその計画を実施することにいたしたわけでございます。
○中曽根委員 抽象的にはそういうことはうかがわれるのでありますが、しかし地方の身になつてみると一番大事なことは各管区経済査察廳、あるいは地方府縣における経済査察廳というものの取扱いが画一的であつて、あるとところに厚く、あるところに薄くということのないことが一番大事な点であろうと思うのであります。抽象的にかそういうようなことはうかがわれるのでありますが、しかし一番大事なそういう点を——たとえば全國における経済統制の公平を確保するとか、そういうような文章を入れてやつた方が、私は趣旨がはつきりすると思いますが、そういうふうに修正なさる御意思はないか。その点をまず承りたい。
○田中(己)政府委員 この点管区経済査察廳につきましては第七條、地方経済査察廳につきましては第十三條に同様この條項を引用しておりまして、これで明らかではないかと考えている次第でございます。從いまして、ただいまこれを修正するという考えはもつておらない次第でございます。
○中曽根委員 その次には、今まで御当局から承つたところによりますと、経済査察廳を設ける御意図は、國民の啓発であるとか、あるいは調査であるとか、そういうところに重点をおかれているようであります。それと同時に、各委員から御質問になりましたように、これを行う官廳の監査ということが相当重大である。こういうふうに言われているのでありますが、たとえば配給の状況はどうであるとか、あるいは取締りの状況はどうであるとか、そういうことに関する規定が私はあまり杜撰であるのではないかと思います。國民を取締ると同時に官廳を取締るということの方が大きな要素があるのであつて、これについては國民を取締るという、あるいは啓発するという各号が載つておりますが、官廳に関するものがあまりに載つておらぬ。わずかに第七号に載つているにすぎない。こういう点をもう少し詳細に規定する。たとえば行過ぎを是正するとか、あるいはか弱い國民を無用に苦しめるようなことは是正する、そういうような点について條文上考慮する必要はないか、この点をお伺いいたします。
○田中(己)政府委員 本法の第一條第七号におきまして、行政監査の事務を執行する旨が規定してございますが、これは從來経済安定本部の監査局におきまして実施しておつた事務でございまして、経済統制に関する行政監査の事務をこの査察廳に移管して次第でありまするが、経済安定本部監査局の行政監査といたしましては、経済安定本部令の第一條で規定されていたものでございまして、物資の生産配給及び消費、その他貿易業務、國家財政、金融運送、建設というようなものに、非常に廣く経済安定の緊急施策実施に関する監査を実施してきたのでございます。これを若干範囲を狭めたのでございますが、大体從來の経驗によりまして、行政監査の必要性は十分に認めているのでございますが、あまりに手を拡げては廣範囲にわたり過ぎて弱くなるというようなおそれからかようにいたしたのでございます。大体行政機関の経済法令に関する経済施策の実施に関する事務の監査事項という中に、この行政機関に対する、たとえばお説のごとき行過ぎの是正であるとか、國民に苦労をあまりかけるというようなことのないように、ある機能を包含していると考えてかような規定を設けた次第であります。
○中曽根委員 第八号に「隠退藏物資の調査」とありますが、これは摘発は含まないのでありますか。
○田中(己)政府委員 俗に摘発と申しますが、結局隠退藏物資があると認められるところへ査察官が参りまして一應調べまして、必要があればそれの供出を求めるということを通常のやり方といたしておりまして、必要がございますればそれぞれ正規の手続を用いまして、その事務を執行することに相なる次第であります。
○中曽根委員 今までも隠退藏物資の調査摘発をずつてやつておられたと思うのですが、過去一箇年間に全額にしてどれくらいの摘発をやつて、そのものが國民経済を動かしていく上にどのように役に立つているかという点について、もう少し御説明を願います。
○國塩政府委員 昭和二十二年の四月から二十三年の二月末までの集計でありますが、安定本部でけの調査件数二百八十九件、情報は八百状あつたのです。そのうち物があつて取引を指令したのが四百二十七件、地方安定局の調査の分は手もとの資料には明確に現われておりません。その他に関しましては、本部でまとめまして指令する関係で全部わかるのでありますが、それが合計四百二十七件、そのうち本部が引取調査したもので、引取指令をしたものが百六件、地方安定局でやつたのが三百二十一件、こういうことになつております。その品目は相当あります。いろいろの面にわたつておりますが、金額にいたしまして一億一千六百九十七万円ということになつております。これは本年の二月末まででありまして、マル公におきましては旧マル公によるものが相当多数を含まれております。その後新マル公のものがあるのでありますが、昨年末までに引取指令を発しましたもののほかは、調査して金額等が計算できないのがたくさん押えてあるけれども、一つ一つについて正確に枚数なり目方をはかり、單價を出しまして、計算を完了してから正式に引取ることになるのでありますが、それまでの段階に至らぬのが他にたくさんあるのであります。昨年末までの統計で、私の記憶するところでは、こういうものを除きますれば約四億くらいになるわけであります。
○中曽根委員 今の報告を聽きますと、一億ないし四億のものを摘発するのに五千の人間と七億の予算を使うというのはどうもはつきりしないと思うのですが、査察廳ができてもおそらく同じような結果になるだろうと思うのです。その点は御当局はどうお考えになつておりますか。
○國塩政府委員 四億くらいの物資の調査に四億使うというお話でありますが、ただいままでの安定本部の監査関係の予算は五千万人でありまして、そのうち隠退藏物資の摘発に從事しておる者はその何分の一かであります。それ以外の大部分のものは、行政監査の事務に從事いたしております。全部が隠退藏物資の摘発に関係するものではありません。またかりに費されるといたしましても、現在までのところにおいては、十分にカヴアーしておると考えておる次第であります。
○中曽根委員 今の経済の実態を考えますと、これはどこでもそうですが会社はほとんど二重帳簿でやつておる。個人は安定本部がこの間出した白書によつてわかる通りマル公の生活は二五%であつて、あと七五%はやみの生活である。ここのところを経済統制の励行を行つていつたならば、一体会社というものはどうなるのだろう。個人の生活というものはどうなるのであろうか。この経済査察廳がほんとうに忠実に、確実的に行われれば、國民生活は萎縮してしまうであろうし、会社というものは実際存立していけない。個人の生活というものが非常な苦しみに陷る。そこに私はやはり政府の能力の限界というものが出てくるだろうと思うのでありますが、この條文の上から見ると、そういうことに関する手心というものは一向考えられない当局の方は緩急よろしきを得るようにやるというようなことを言つておりますが、そういう現在の会社経理の状況や、あるいま実際國民経済がやみに流れて、正式なルートに乗つておるのが三割であるというような実態を見て、一体どの程度にどういうように経済統制の励行を確保していくのか。その点について明確な御答弁を承りたいと思います。
○國塩政府委員 流通秩序を確立して、やみの部分をなくしたいというのが申すまでもなく政府の方針でありましてそういう方針のもとに経済安定本部が設立されたわけでありますが、その後の実績を見まするに、遺憾ながらお話のごとくやみに依存せざるを得ないようなことが非常に多いのであります。これはその状態を放任しておいてよいというのでなくして、できるだけやみに依存する部分を少くする。全部をやみでなく生産し得るように、配給し得るようにしなければならないと考えるのであります。昨年五月に安安本部の機構が新になりまして以來、その點は特にわれわれも注意しまして努力をいたしたのでありますけれども、その成績はなかなか所期の通りに上らなかつたのであります。しかしながらこれを放任しておいたならば、今日の状態はさらに惡いであろうということは私どもは十分推測できるのであります。昨年の十二月十五日から、御承知のように、生鮮魚介類、野菜類の統制励行、すなわち法規の命ずるところに從つて配給組織を確保する。しうして規定された通りにやるようにという猛運動を政府を中心といたしまして強力に展開いたしました結果、生鮮魚介類に関するやみ依存の分は、非常に減つてきたという顯著なる事実があるのであります。昨日の委員長のお話にもありましたが、それによる六大都市の利益と申しますか、やみによらなくて、もしやみによつたならば費すであろうという金額との差額が、約二十億になるというような成績をあげておるのであります。その当時の安定本部の機構というものはきわめて貧弱であつたわけでありますが、今後この新しい組織ができましたならば、そういう國民運動というものもなお一層強力に展開できるのではないか。從いましてやみ依存の部分が逐次減少するという可能性は相当に大なるものがあると私どもは確信しておるのであります。もちろんこの國家國民全体にわたりまするやみ経済を、一挙にして撲滅するということはまた困難であります。同時にまたそれをするならば、経済の運営というものを破壞するおそれもあるのであります。從つて順を逐つて秩序を立ててそのもとから逐次正していく。枝葉末端の部分をいたずらに追究いたしましても、それは單にその場限りの線香花火的な効果をあげるにすぎない。一部に迷惑をかけるにすぎないというような結果も起るのであります。その辺は組織的に政府の経済再建方式とにらみ合わせまして、統制秩序確立のために邁進していきたい。かように考える次第であります。
○中曽根委員 具体的に申し上げますると、たとえばタイヤならタイヤの会社あるいは木材の会社なりが何パーセントと供出を命ぜられて、それは供出しておる、しかしそれ以外にごくわずかの、あるいはかなり大きな部面についてやみに流して初めて会社経理というものが成立つておる、これはあらゆる会社がそうであります。そういう場合に、統制経済の励行を確保していくという場合には、その会社存立のためにやむを得ずやみに流しておるものも、統制経済のためにどんどんびしびし取締つていくのか、あるいはそういうものは見逃していくのか、やみ帳簿を認めていくのか、こういう具体的の点について國民は一番心配しておるのであつて、この点に関して政府の明確なる見解をお聽きしたいと思います。
○國塩政府委員 やみ行為自体は政府としてはこれを公に承認するわけには法の上において絶対にできないのであります。これは先ほど申し上げましたように、運用によつて解決していく以外にないのであります。現在御指摘のように、会社の大部分が経営上非常に困難な問題を包藏しておる、それがためにやむを得ず一部やみに依存せざるを得ない点があるのは理解するところであります。個人生活においてさような点があると同時に、会社の経営においても確かにそういう苦しい点があることは私どもも十分承知しておるのでありますが、しかしその部分をそのまま放任するということは、結局経済秩序を確立するゆえんではない。從つて会社のやみに依存する部分を逐次なくするようにしていかなければならない。それがために会社だからと申しまして、技葉末端の経理状況について、会社をその対照としてやり玉にあげるということは絶対にしたい。やはり生産の基本、すなわち原料、一つの例をあげて申しますれば、石炭とか鉄鋼とか、そういう基本になる経営の方から逐次やみを撲滅する、そうすることによつて全般の経済がやみに依存しなくてもよいように、同時に放任しておけば他の基礎産業でない部面といえどもやみに依存しない面が多くなる、これは会社の存立、生存のためというだけでなくして、暴利追究のためにやみに走る会社も相当あるのであります。そういう点はわれわれは区別して、暴利のためにやみをやるというような会社に対しては相当強く臨まなければならないと考えておる次第であります。
○中曽根委員 政府の政策が適切でないために、あるいは日本の経済力が参つておるために、会社なりあるいは個人というものが、生存のために、あるいは最低生活のために、やみに依存しなくちやいかぬという部面については、政府としても手心を加えるというような意味の言葉がありましたが、確かにその通りでありますか。
○國塩政府委員 ただその査察を行う場合において、その運営において、経済界に無用の混乱をひき起さないように十分に考慮するつもりでおります。
○中曽根委員 今のお言葉を聞いて私も非常に安心したのでありますが、そういう温かみのあるお心で取締られるならば、第一條の目的の中にそういうようなにおいのある言葉をぜひ入れていただきたい。今までの條文や、あるいは政府のやり方から見るとどうも冷たい文章に流れがちなので、これもその弊に陥つているような氣がするのであります。その点に関して栗栖長官が言われたように、春の官である、冬や秋の官ではない、そういう温かい官廳の親心を盛つたような文句をこの中に挿入することができないか。そうすることによつてこの経済査察廳というものに対する國民の見方も違つてくると思うが、その御意思があるかどうか承りたい。
○國塩政府委員 法律をつくる場合におきまして、運用の方針に至るまで詳細に條文の中に盛るということはきわめて技術的に困難なのであります。統制経済を励行しなければならぬという場合においても、ある部分は励行しなくてもよろしいというような印象を與えるような文字を用いることは困難であるのみならず、また弊害、誤解を生ずるおそれもあるのでありまして、御趣旨はきわめてごもつともで、私どもも十分了解いたすのでありまするけれども、この一條の中にいかにその趣旨を織りこむかということにつきましては、私どもは適当な字句なり、あるいは方法というものを発見するのは困難ではないかと思います。できればこのままにしておいていただいて、それはひとつ運用の方で十分考えるように御了解いただければ仕合せかと存ずるのであります。
○中曽根委員 どうも私はそのお言葉はあまりにも官僚的な法制局の考えるようなお言葉ではないかと思う。法律というものは國民のためのものであつて、しかもその法律の精神というものは條文にまでにじみ出ていなくちやいかぬと思うのです。最低限を確保するために法律というものは冷たい言葉になつてしまうのだというお言葉ですが、私はしかし民主主義の時代の法律というものはそんなものではないと思う。今までの型を破つて違う言葉がはいつてもいいし、とつぴな言葉がはいつてもいいと思う。ほんとうに國民のためを思う法律であるならば、今までの法制局がやつておるような即成観念にとらわれる必要はない。そういう新しい民主主義時代の文句や條文をつくる御意思はないか、この点を伺います。
○國塩政府委員 第一條は特に愼重に研究いたしまして数箇月を要してここに至つておるのでありまして、これの変更はいろいろまた各方面と折衝いたさなければなりませんし、御趣旨はよく了解するところでありますが、そういう意味を含んでおるのでありますから、できれば御了解願いたいと存ずる次第であります。
○河合委員 このことに関しましては、過日の委員会で田中政府委員の私の質疑に対する答弁に、こういうことがあつたのであります。そのとき私は果実について例をとりましたのでそれに対するお答えでありますが、果実につきましてはマル公ははずしたのでありますが、これを法外な高値で賣るような場合におきましてはこれは物價統制令の第十條に該当する、つまり暴利の対象となるわけでございまして、從つてこの物價統制令の関係事項を扱います査察廳といたしましては、やはりこの暴利の点につきまして査定をいたすことに相なる次第でございます。こういうお答えであつたのであります。このことを私は指摘いたしまして、この第一條の今問題になつております「中央経済査察廳は、物資の生産、配給及び消費並びに物價(賃金を除く。)に関する経済統制の励行を確保するため、左の事務を掌る。」このままの文句でありましたら「物資の生産、配給」というこの「配給」という言葉とか、次にございます「統済統制の励行」という「統制」という文字が現われてきますと、今までの経済警察のときのことを連想いたしまして、実に冷たい感じを與えられる。これは單に統制を布いておる物資だけに限らずして、すべての流通過程、あるいは経済の進んではく途を規正するということを考えますならば、私は配給というよりも分配という文字の方が適切ではないかと思う。昨日GHQの方へ参りましていろいろ話を聽いておるうちに、配給という向うの指しました原語はデイストリビユーシヨンであるということを聽いた。それならばなおさら私の考えを強めるわけであります。今中曽根委員の申されましたことく、この法律は國民に対して実に温かみのある法律である。これによつてわれわれの消費経済は安全に行われるものであるというような感じを與えますためには、なるべくそういう考えを現わす文句に変える必要があると思う。ただ單に配給とか統制といつてやみを押えることに重点をおいておるような感じを與えないように、これは方法があると思う。私はかりにこういうふうに考えてみた。経済査察廳は、物資の生産、分配——かりに分配といたします。——及び消費並び物價に関する経済査察を行うため、左の事務を掌る。これでいいと思う。経済統制の励行は今までやつていたむりな統制の励行なんだ。当然、自然発生的にやみが行われるようなことをやつておきながら、やみが現われてきたらそれをきびしく取締るというようなことは、私は間違いだと思う。そういうもとにさかのぼつてやみが行われないように規模を改め、あるいは取締りの方法に手心を加えるというようなことを現わすためには、経済統制の励行なんていう文字を使わないで、経済査察を行うとして、生産から分配、消費に至るその過程が正しく進行しておるかどうかということを査察するという意味の方がどれだけ温かみがあるかわからぬと思うのでありまして、ただいま政府の御意見を聽いておるわけでありますけれども、私は國民はそうする方が喜ぶと思うのであります。また法の精神によく合うと思うのでありますから、もう一度政府当局の御意見を承りたいと思います。
○國塩政府委員 ただいまの河合委員の御意見はきわめてごもつともであります。経済統制の励行という字句をとつたらどうか、及び配給という文字を分配という文字に変えたらどうか、こういう御意見のようであります。精神はきわめて私どもも賛成でありますが、分配という言葉と配給という言葉はわれわれはほとんど同じ意味ではないか、俗にふつう配給という言葉の方が多く用いられておりますので、配給という言葉を採用いたしたのでありますが、分配という言葉を使いましても、私は大した意味の相違はないと考えるのであります。ある意味におきましては分配の方が廣い、たとえばなんら法規的統制を受けてない物資についても分配ということはあり得る。配給という観念はその背後に法規を予想しておる。その点において若干の違いがあるんじやないかと思いますが、法規のないものについては権力的な干渉はできないのでありますから、かりに分配という言葉を用いましても差支えはないと思います。しかしながらやはり法規の励行が中心でありますので、私の意見といたしましては、配給という言葉の方がいいのではなかろうかと考えるのであります。また次の経済統制の励行ということをやめて、單に物價に関する経済の査察を行うことになりますと、これも法規のないものにまで及ぶ、法規のないものにまで及ぶということは河合委員の御趣旨には合うのであります。また私どももそれはやつていかなければならないと考えるのでありますが、法規にない分まで及ぶ場合はわれわれといたしましは、さようなものが実情はどうなつているか、それを放任してよろしいかどうか、さらにこの実情を改善する何かの方策を講ずる必要があるのではないかということを事実上調査するのでありまして、その場合におきましては調査の権限さえ與えてもらつておりますればできるのであります。さような調査をするために國民に非常な負担、義務を課す、迷惑を及ぼすという事実はないので、法規的な嚴重な制限を受ける必要は通常ないのであります。從つて河合委員の御趣旨とせられたところはこの條文においては十分達せられるのではないか、むしろ第一條の第一号第二号の趣旨はいたずらに査察官が法規に限定されたもの以外のものにまで容喙することを防止する。その権限をできるだけはつきりと精限をするという趣旨から出ているのでありますから、この経済統制の励行という字句を削除することがはたして妥当であるかどうかということについては、私はいささか疑問があるのではないか、むしろ削除しない方が國民に安心を與えるのではないかと考えるのであります。
○河合委員 実はただいまの御答弁を聽いておりますと、私のねらつているところはいい、しかしそういうふうに文句を変えることはいけないとおつしやるのでありますが、私は統制の布かれている物資以外にまで査察を行うことが國民に不安を與えることは決してないと思います。それは暴利をむさぼつている、あるいはやみをやつている一部の人がいやがるのでありまして、すべての國民は喜ぶと思う。またそこへ進んでいかなければいけないと思う。趣旨においては今の御答弁も合致しているのであります。文字の点でありますが、これはまた同僚委員のお考えもあることでありましようから、よく協議して審議いたすことにいたします。
○國塩政府委員 ただいまの御質問について一言附け加えておきたいのは、この範囲を拡げますと、査察官が権限的に臨檢、檢査、捜索ができることになります。その点が不安を與えることになりはしないか、励行ということに限定いたしておきまして、その他は必要ならば調査ということにしておきますれば、捜索はするけれども権限的に臨檢、檢査、捜索というところまでいけない。そこに私は事実的な差異があるのではないかということを御参考までに申し上げておきます。
○中曽根委員 第七号のところで事務の監査に関する事項ということがあります。行政機関の経済法令に関する経済施策の実施に関する事務の監査をやるというのはどういう程度の事までやるのか、第四号においては、捜査その他に対しては勧告をやるということになつておりますが、勧告を監査というのはずいぶんニユアンスが違うと思いますし、この監査というものはやらなければならないと思いますが、どのような権限に基いて経済査察廳がどの程度まで行政機関に対してタツチし監査するのか、この点をもう少し詳細に承りたいと思います。
○國塩政府委員 監査でありますが、從來は安定本部令に基いて、その監査の権限が與えられておつたのであります。今後はこの法律に基いて、その監査の権限を生ずるということは申し上げるまでもないのであります。監査をいかにしてやるかということでありますが、たとえば例をとつて申し上げると、輸送状況が非常に乱れておる、計画通りの輸送が行われておらない、重要物資が滯貨しておるにかかわらず、必要ならざる物資が輸送されておる。官吏の間に不正、情実が行われているというような状況でありますれば、政府の姓策並びに法規というものを基準といたしまして、実情がどうであるかということを末端に至るまで調べるのであります。すなわち、経済実施官廳官吏の運営状況がどうであるかということを見るのであります。その場合は國民がいかにしておるかということを見るのではない、関連いたしまして國民の方が迷惑をこうむつておるという事実があれば、その参考のために資料を蒐集する意味において調査することはありますが、主たる対象は官廳または政府の委員事務を受けてやつておる公共團体ということになるのであります。しかして調査の結果この点に欠陷があるということを発見いたしますれば、その部分をまとめまして改善意見を関係方面と打合せて作成し、これを当該官廳の最高責任者に渡すのであります。その場合において通常の事実上の勧告の形式をとる場合もあるし、現在の安定本部令第十五條による総理大臣の諭旨の形式による場合もあるのであります。諭旨の場合においては一種の命令的効果をもつ。それによつて当該官廳の改善を促がす。その結果の報告を徴する。さらに場合によれば責任者として何らかの措置を講じなければならないという人がある場合においては、その人の交迭あるいは処理ということについても勧告ないしは要求をし得る。かようになつておるのであります。
○中曽根委員 監査する場合に中央ならば各省の相当高官、あるいは地方ならば地方の廳長というものを召喚したり、あるいは尋問したり、そういうことがなければ有効な監査は行われないと思いますが、地方については地方の経済査察官の廳長が、他の経済官廳の廳長を査察し、あるいは尋問する。中央については同じような方法でやる。こういうことを実際行うことができるのか、その点をもう一回伺います。
○國塩政府委員 実際の調査の場合において、必要があれば行政官廳長官にお会いしなければならぬという場合もあるかと存じますが、その場合においてもできるだけ強権的に当ることを避けるのであります。臨檢、檢査というようなことは行政監査に関しては行わないのでありまして、ただ必要な報告を徴することができるということが、後の條文にございますが、これは違反事実の調査ではないのでありまして、官が政策を計画通り実施しておるかどうかということを見るのでありまして、犯罪捜査ではないのでありますから、犯罪捜査に関する規定はない。從つて召喚というようなことはいたさないのであります。事実行つてお伺いする。きわめて行政的な穏かな方法をもつてやる。しかしその事実だけは十分に調査する。その行政が廣範にわたつて行われる関係上、普通の犯罪捜査よりはきわめて容易にその事実が明らかにせられるのであつて、さような必要は私はないと考えるのであります。
○中曽根委員 ほかの方もおいでになりますから、この点についてはもう一箇所だけお伺いいたしますが、中央経済査察委員会というようなものを設けて、各廳間の連絡調整をはかるということになつておりますが、今まで中央部局に設けられた連絡委員会というものはほとんど意味をなしておらない。一つの行事的な存在であつて、実質的な効果というものはないのでありますが、今度の場合もやはり安定本部の系統のものがかなり強力な権力をにぎつて各省あるいは各部局と連絡をとつてやるということになると、おそらく官廳間にはなわ張り的に爭いやあるいは嫉視反感がわくであろうと思うのであります。ここでねらつておるような各廳間の連絡請整ができるかどうか私ははなはだ疑問に思うのでありますが、一体これによつて何を行おうとするのか、具体的な点をもう少しお伺いしたい。
○國塩政府委員 経済査察委員会におきましては関係官廳の経済政策並びにその励行を要する点について打合せをいたし、またその実情について是正を要すべき点についての意見交換協調連絡をはかるところであります。経済査察廳は御承知のように政策実行の裏の部面を受持つ関係上裏と表の間に食い違いがあつてはいけない。殊に励行が主でありますがゆえに、ある意味におきましては経済実施官廳の要求に從つて行動をする。経済の当面の政策を背馳するごとき方面に取締りの手を延べたりあるいは法規励行の要望に應じないということは國政の円滑なる運営を阻害することにもなるのでありまして、この査察委員会は單なる諮問機関あるいは連絡機関というものではないのであります。むしろ各廳の要望を受けて、査察廳が活動する。この委員会が活動しなければ査察廳の活動は不円滑になる。さような意味におきましてわれわれは最もこれを重要視しておるのであります。それがゆえにまた法律をもつて特に各行政官廳の責任を明らかにするとともに、査察廳もそれを尊重しなければならぬという趣旨をここに規定することによつて強調しておる次第であります。
○冨田委員 中曽根委員から御質問になりました点に関連して最初に一つお尋ね申し上げます。それは本法の第一條に規定されましたものは、提案理由の説明にありますような、いわゆる経済統制の励行を確保するという温かみをもつたものであるべきはずのものが、ほとんど一から八まで揚げられましたものは警察的と申しますか、すべてを檢挙する、摘発するといつた方面に重点がおかれておるような感じを與える。これはこの前栗栖長官からも御説明があつたのであり、さらに西村次官からもお話があつたのでありますが、大分政府の提案理由の趣旨とするところと表現された字句の間に矛盾があるのではないかという感じをもつのであります。その意味におきまして、たとえば第三号に揚げてあります「経済法令に関する違反行為の調査に関する事項」を経済法令の励行に関する事項、あるいは第四号に揚げられてあります「経済法令に関する違反行為について」を、経済法令の励行についてというように、違反行為、違反行為と非常にたくさん出てまいりますのを励行という言葉にお書きかえになる御意思はないか。またそうすることによつてこの法律の趣旨に反しますかどうか。その点をお伺い申し上げたいと思います。
○國塩政府委員 励行という言葉は第二項の一号から八号までの全部を包含いたしましてその励行という意味に用いておるのであります。それを明らかにしておるのは第二項の本文でありますが「経済統制の励行を確保するため、左の事務を掌る。」すなわち「左の事務」というのはそれぞれ励行の一部をなしておるのであります。さよう御了承を願います。
○冨田委員 いま一つは河合委員からお話のありました第一條の最初でありますが、「経済統制の励行を確保する」ということを廃して「経済査察を行うため」こう改めたらどうかということについて詳しくお話がありまして、立法の趣旨はよく了解いたしましたが、その意味から申しまして、これも経済統制という言葉でなしに、経済法制の励行とかりにこう改めましたら立法の趣旨に副わないことになりましようか。その点をお伺いしたいと思います。
○國塩政府委員 経済統制の励行を経済法制の励行ということに改めたらどういうことになるかというお尋ねでありますが、その点は單なる言葉の問題でありまして、実質的には大した相違はない。改めても支障はないと私ども考えておりますが、経済法制と申しますと範囲が漠然とする。経済法制の中の何をやるか。その中心点はやはり統制されておる部分でありますので、統制という言葉の方が中心がはつきりするという感じがありますけれども、理論的には大した相違はありません。
○冨田委員 これは後ほどまたほかの條文にわたると思いますが、その條文にわたりましたときにお尋ね申し上げますが、主として第一條において経済査察廳の任務がはつきりしておるわけであります。ここに現われました任務というのは計画の立案であり、啓発であり、あるいは調査、勧告及び協力であり、情報の收集あるいは監査ということだけが掲げられておるのでありますが、これが後に至りまして第四章以下に行くと、ほとんどこうした第一條の目的としたところから逸脱しておるような感じを受けるのであります。これは第四章の方に参りまして詳しく承りたいと思いますが、第一條の趣旨をはつきりつかんでこの経済査察廳の任務はこれ以外に絶対出ない、こう承知しておつてよろしゆうございましようか。
○國塩政府委員 お言葉の通りであります。
○冨田委員 第一條の第五号でありますが「経済法令の規定の趣旨についての警察官及び警察吏員の啓発」という規定がありますが、警察官あるいは警察吏員の啓発ということは、やはり警察法に從つておのおのその任務がおありになるのであつて、この査察廳と警察官及び警察吏員との縦の関係と申しますか、あるいは逆に横の関係と申しますか、どういう方法で連絡をおとりになり、どういう方法で啓発というようなことを行われるか、その点をお伺いしたい。
○國塩政府委員 第五号が存置されております理由は警察官は一般犯罪の捜査をやる。從いまして経済法令に関する違反事件は一般犯罪の一部として取扱うのであります。殊に專門の経済警察官が廃止せられた今日におきまして、経済事犯だけを專門的に研究しておる者はほとんどないという状況にあるのであります。しかるに経済法令の内容は非常に廣範であり、複雜でありまして、なかなか理解するに困難である。殊に経済状態の変化に伴いましてその取締りの重点が移動していくという事実もあるのでありまして、常時現実を把握して、法規が何を現在において要求するかということを確めるということは、一般犯罪を取扱う警察においてそれを明らかにすることはきわめて困難な状態なのであります。しかるに経済査察廳は経済統制の法規の励行の最高の責任を負う。從つてすべてのそういうことについて最もよく知らなければならない。そして知つたものについては一般國民に必要なものは普及啓発するとともに、その他の取締り機関についても、こういう点が重要であるということを資料の提供等によつて連絡により示すべきである。これは決して指揮命令するのではないのでありまして、こういう資料を作成し、あるいは会合等でその趣旨を強調するということによりまして警察官に徹底する。警察の幹部はそれを末端にさらに行き届かせるようにする。その運営の方法といたしましては、査察委員会というものがございますが、査察委員会を公式のものとして活用する。しかしながら非公式な連絡という場合も相当あると思うのであります。側面的にさような資料の提供、あるいは助言を與えるというのでありまして、その点は平等の立場で行われるのであります。
○冨田委員 警察官及び警察吏員に対して專門的な立場から啓発をなさる趣旨はよくわかります。しかしもとの経済警察の復活であつてはならないということも規定されておりますし、終りの方に参りまして、第四十條の規定には大正十二年勅令第五百二十八号の一部を改正して、第二條の二を削るということになつております。そしていわゆる経済警察の復活でないということをはつきりうたつて、経済警察廳が誕生する場合に、ただいまのお話のように、経済的な知識が足りない。あるいは経済法令を遵守させる、つまり励行させるために、警察官並びに警察吏員の足らないところを指導し、啓発をなさる。結局他に指導されて啓発されてしまつたら、その警察官及び警察吏員は昔の経済警察の姿になつてしまう。またなつてしまわなければ啓発が徹底しなかつたということにならないでしようか。
○國塩政府委員 警察は一般犯罪を扱うのでありまして、経済だけ專門に扱う警察官を置くということは、現在認められておらないのであります。特殊の例外といたしました、大都市についいは若干それはよろしいということになつておりまするが、それ以外の所においては経済警察官を設けることは認められておらない。從いましてその趣旨を徹底いたしましても、もつぱらその経済関係の犯罪のみに全力を注ぐということは事実不可能でありまして、普通の刑法に基く犯罪との調査と関連いたしまして、時期によりあるいは犯罪の発見の状況に應じまして取締りに從事する。從つてただいまのような、もとの経済警察の復活ということには制度上当然なり得ないと私は考えております。
○冨田委員 前にさかのぼつてたいへん失礼でありますが、たとえば第三号の経済法令に関する違反行為の調査をする、こういう点も経済行為は別だ、経済事犯は別だ、今の警察官あるいは警察吏員の啓発に関する問題も同じでありますが、警察官が一般犯罪を取扱うというように御説明になつておりますが、一般犯罪、一般犯罪と申しますけれども、私は現実の段階において経済事犯が一般の犯罪とそう区別さるべき特殊なものとは考えておりません。もしわれわれの生活の中において犯罪の生れる温床というものを調べたら、経済に関係しない犯罪、きわめて單純なる殺人、強盗、放火といつたようなものもむろんありますけれども、一般警察官が犯罪を取締る場合におきまして、経済事犯というものが大部分を占めておる。あるいはまた檢察当局におきましても、これは経済事犯なるがゆえにといつて特殊扱いをしておらないと思う。これは一般犯罪のうちの一つであつて、これを特殊的なものと切り離して考える、そうしてそれだけを経済査察廳がやる、專門的なものである、こういう考え方はきわめて観念論的なものでありまして、現実の生活に即しない、机上の立案であるように思います。これはむろん意見の相違であるかもしれませんけれども、われわれの生活はそう支離滅裂な分裂いたしたものではありません。経済生活に根を張らないわれわれの生活ということは考えられない。一重咲きの早婚も八重咲きの晩婚も同じ生活の木に咲く花である。われわれが早く結婚するのも遅く結婚するのもやはり生活の木に咲く花である。すべてのものはわれわれの経済生活に根を張つている。その立場からいいますと、この立案された氣持はあまりにも観念論的な経済事犯というものを区別し過ぎておられるのではないかというように考えます。そういう考え方からいたしまして、経済査察廳が調査をなさる。すなわち第三号に規定されておりますこの調査が檢察廳の行う調査とどう違いますか。この点をひとつお伺いしたいと思います。
○國塩政府委員 経済法令に関する犯罪でありまして、この経済法令は統制を必要とする間の臨時立法でありまするので、その点において他の恒久的な刑法等に基く犯罪とは本質的に違う。学説的に申し上げますが、御承知のように、自然犯とそれでないものとの相違があるのであります。しかして統制経済の励行を確保することによつてわが國の経済の再建を一日も早からしめるという趣旨でありまするので、その運用等につきましても一般犯罪とはおのずから違う点もあるかと思うのであります。そういう趣旨から経済査察廳というものが設けられたのでありますが、法的に違反して一たび犯罪ということになりますれば、性格的にはもちろん同じであります。ただそういう点において本質的に違うから、運用その他において大いに考慮しなければならぬ点があると私どもは考えるのであります。檢事の調査とこの調査との関係がどうなるかということでありますが、経済査察官の調査は檢事の指揮命令のもとに立たない独自の調査をする。檢事も調査をするのでありますが、その場合はおおむね警察官を指揮することによりまして調査をいたしております。從いまして同一事件について檢事の調査と経済査察官の調査とが競合することがありはしないかという御心配が起るかと思うのであります。それは連絡のための査察委員会におきまして常時方針をきめ、なお具体的にそういう競合するような事態が万一発生した場合においては、ただちにこの委員会において調整をいたしまして、いずれか一方においてやつていただく。ここだけの私の考えでありまするが、警察がやつていただくならば、場合によればその方にお任せした方が経済査察官の活動としては他にその力を用いるから有効ではないか、なわ張り爭いをする考えは毛頭ないことを御了承願います。
○冨田委員 この法律が、いわゆる統制に対する励行の確保ということが臨時的なものであるという趣旨はわかりました。きのうの委員会におきましても樋貝委員から、そのお話が出たのでありますが、それほど臨時的なものであるということを根柢としておられるならば、やはりこの経済査廳法の頭に臨時経済査察廳というように、臨時ということを冠する方が適当ではないかと思いますが、そういう御意思はございませんか。
○國塩政府委員 御説はごもつともでありまして、臨時という言葉をつけていただきましても差支えないのでありますけれども、そういたしますれば、経済安定本部がすでに臨時でありまして、臨時経済安定本部ということにしなければなりませんし、そのほか臨時の官廳というものは統制経済の今日においては相当たくさんあるのでありまして、單にこの査察廳だけではない関係上、私はつける必要がないのではないかと考えておる次第であります。
○田中(健)委員 この間大体伺いましたが、今日は少しこまかく逐條的にお伺いしたいと思います。この間のお話では、経済査察廳ということについて、取締りか調査か、その点がはつきりしなかつたが、今日はこれをはつきり調査機関というふうに片づけた。そこで名称を調査廳なりあるいは調査官にするというようなことができませんでしようか。その点をお伺いいたします。
○國塩政府委員 ただいまの査察廳の目的から來ます名称の問題でありますが、目的は先般來御説明申し上げてありますように、励行に関してあらかじめ啓発宣傳して予防する、そういうことがないようにするということに主眼点をおくのであるが、ひとたび重大な違反が生じた場合、経済の根本に関する非常に莫大な暴利追求行為があるという場合におきましては、それを放任することができないゆえに、徹底的に取締りをする、こういうことになるのであります。しかして調査という言葉の意味でありますが、この調査は英語で申しますとインヴエステイゲーシヨンという言葉を使われておるのでありまして、單に実情を見てそのまま報告書を出すという意味の調査をすると違うのであります。インヴエステイゲーシヨンという意味は、別の意味といたしまして捜索という意味も包含されておるのであります。すなわち犯罪の捜索という意味を含んでおるのでありますから、單にいわゆる調査官と申しまして、米穀のでき高を調べるというのとは違うのであります。その点を御了承願いたいと思います。
○田中(健)委員 それで大分はつきりしてまいりましたが。たとえばこういう場合にはどういたすつもりですか。これは具体的な問題ですが、警察官と一緒になつて、たとえば列車なら列車を調査して、相当量のやみ物資が摘発されたというような場合には、その調査、捜索によつて得たものをどういうふうに処分するのですか。從來鉄道などにおいて相当に捜索されていますが、それがどうも行方がはつきりしないのです。経済査察廳でやれば、從來警察がやつている不明朗なそういう点が、明朗になるだろうと思います。 それからもう一つの問題は、これはこの間の議論においても、そういうこまかいことはやらないというようなことをしばしば政府当局から伺つておりますが、しかし実際の今まで経済警察のやつているところをみると、今晩食べなければならぬ三升か五升の米を、一升くらいやつてあとは全部取上げてしまう、こういうような状態になつておるので、結局経済査察官が行過ぎというか、最低限度のその日の生活を脅威するようなことにならないか。そこでこの際そういう最低の生活を脅威するようなことは、経済査察官には絶対にやらせないのか。これを卑近な例で言えば、列車を警察官と一緒になつて調査査察して、そしてその晩に食べるものを——それはこまかい規定にあてはめればそういう取締りもできるだろうけれども、そういう極端なことはやらないというのであるか。この点を明らかにしていただきたいと思います。
○國塩政府委員 お話のように、列車を襲撃して大衆のリユツクサツクを調べるというような捜査は、経済査察官はいたさない方針でありまして、これは私ははつきり言えると思います。但しそういう事態が非常に激しいという場合におきましては、警察にそういうことをやつてもらいたいという要望を発することもあるかと思いますが、経済査察官自体がそれらのことはしない、またごく少数の、一縣五、六十名の人数ではさようなことは不可能であると私は考えるのであります。その場合において、警察が摘発した物資を処分するのに不明確な点があるというお話でありますが、さような問題は、経済査察廳ができれば、その連絡によつて明らかにして、正規の配給ルートに乘せる、公團があれば公團に、公團がないところはそれぞれの配給機関等にこれを引渡す、さようにいたしたいと考えております。
○木村(榮)委員 今の質問とちよつと関連したことですが、こういう場合はどうですか。たとえば遅配欠配が十日も続いた、そういたしますと、実際一般の消費者は食うものがないわけです。そこで死ぬわけにもいかず、しかたがないから何か買つて食つたとすると、その買つたこと、賣つたことがこの経済統制に反する場合があるのです。そういう場合に経済査察官がこれを調査して、むろんこれも処罰されますが、その遅配欠配をさせた片方の者の責任も、この趣旨からいけば処罰されるか、何かあると思いますが、この法律の目的から考えますと、そういうことをやらなければならぬことになると思います。そういう場合にはそれはほんとうにやるのですかやらないのですか、その点を伺つておきたいと思います。
○國塩政府委員 遅配欠配のあつた場合において、一般消費者が生活のためにやむを得ず、いわゆるやみの米を買つたというような場合において、いかなることを査察廳がするかというお尋ねだと存ずるのであります。そういう場合におきましては、一面において行政監査によつて、いかなる原因から遅配欠配が起つたか、いかなる点において欠陥があつたかという点を明らかにして、至急その是正策を講ずるような処置する。同時に今お話の緊急手段的な、いわゆる一般國民の消費生活上やむを得ざるに出でたる行為については、経済査察官は、さような問題については触れない、もつと根本に関する問題に触れたい。かように考えております。
○田中(健)委員 緊急避難行為ということに見るか見ないかという問題でございますが、たとえば医者が自動車一台をもつておつて、患者の人命を大急ぎで助ける方法を講じなければならないが、ガソリンがない。そういう場合にガソリンを相当量やみなりなんなりで買つてきて、一命を全うさせるような方法を講ずる。こういうことは、私はある意味における緊急避難行為じやないかと思うのですが、しかし地方の警察は、從來これを過酷に取締つている。そのために医者が非鳴をあげている。 それから明日お産をするというときに、綿製品が一枚もないので、綿製品を何とかする。おそらく今の國塩さんのおつしやるあなたの理念からいえば、そういうようなことはやらないだろうと思うのですが、実際にこの法律が布かれてくる場合においては、相当こまかいことまで警察官か一緒になつてやるのではないか、こういうように考えております。そこでそういうことをいかなる方法によつて停止するか、そういうことをやつちやいかぬ。そういう場合にはやみで買つてやむを得ないのだということを訓令でも出させるのが、また以心傳心でいくというのか、その辺の処置が明確でなければならぬ。あなたのお話によりますと、経済査察の実施に関する事務の監査ということでやれるのだ。しかしそれはどろぼうを捕まえてなわをなうの手合でありまして、あらかじめ予防という言葉が使えるならば、こういう方面においてもある意味において予防という言葉が使われてよいのではないか。一箇年どこそこの町ではこれだけの出生がある。これだけの死亡がある。それをその配給所に経済査察廳が勧告をして、政府にさような処置を地域的に、町村的にとらしめるだけのどういう具体的な実行策をもつているか、おらぬか、そういう点について何か政令できめるのか、どういうふうにいたすのであるか。 それから飲食店取締りはきわめて嚴重であります。これもものによつてはやむを得ないと思う。しかしながら復員して帰つてくる、あるいは遺家族が待つている。その遺家族が生活をするために飲食店をやつている。これも政令からいえばやめなければならないのかもしれない。しかしそれをやらなければ、犯罪を犯す以外に生活の途がない。極端に言えば、殺人、強盗をやらなければならぬようなことになるかもしれない。そこで他の重罪を防ぐ意味において、最小限度政令の違反をしてもやる、そういう貧しい人々の飲食業というものに、この飲食業緊急措置令によつて取締るということは、ある意味においては過酷ではないか。こういうことをはつきりきめてかからないと、結局最後においていろいろな物議を起すのではないかと考えます。それから建築の例にとつてもその通りでありまして、住むに家がない。そこで当局はなかなかこれを許可してくれない。そういう場合にはやむを得ずあり合わせの物を集める、あるいはやみで買つたりして無届けで、無許可で建築をする、こういうことです。今申し上げましたことは小さな問題でございますけれども、大きな問題においても私はそういうことはあり得ると思う、使上命令的な石炭の増産の場合においても、政府はなるほどある程度の金は出しましよう、あるいは助成方策は講ずるでしよう。しかしながらその生産者の生産のために必要なところの全部の資材というものは、商工省から百パーセントは行つておらない、こういうことになりますと、何一つ欠けても困る。こういう場合には、そういうものをやはりやみなり何なりで仕入れて、これを緊急に間に合わせるということが必要です。そうでないと政府の要請にこたえることはできない。そういう場合においてもやはり経済査察廳法によつて、あるいは調査の範囲を越えてさらに捜案し、そしてこれを現行犯である場合には現行犯として取締り、逮捕するというところまでおやりになるつもりでいるか、どうか。それとも事務監査だか何だか、この條文によつて、それで何とか是正する、あるいは勧告をする地方についてやるということであるのか。私は勧告するとか監査するとかいつたようなことではとても滿足できないので、これは先般來毎日のように聽かされていることだが、この際どういう方法によつてこれらの点を矯正していくのであるかということをまずお伺いいたしたいと思います。
○國塩政府委員 ただいまいろいろの具体的な例をあげての御質問でありますが、最初の物資の配分に基くところのいろいろなやむを得ない行為につきましては、配分計画そのものが惡ければ、それを是正させる措置は講じ得ると思うのであります。しかしながら絶対的に足りないもの、たとえばガソリンについては絶対的に足りない、從つてそういうような方面には使つては困るという方面に使つた場合においては、さつき言つた食糧の緊急避難の問題とは性質がおのずから変つてくる。それは國民全体が物がないというやむを得ない時代でありますので、そういう見地から、やはりそういうものに対しては臨まなければならないと考えるのであります。 それからそのほかのやむを得ない緊急避難的行為につきましては、原因を尋ねて將來にわたつてさようなことのないように処置する同時に、さような行為に対しては、これを犯罪として摘発し、檢挙し起訴するというようなことをできるだけ避けていきたいと考えるのであります。
○田中(健)委員 私はそういう答弁をお伺いしようとは思わなかつたのであります。実際そういうことがたくさんあるものですからお伺いしたのですが、今後ますますそういうことがあると思う。ただそこでなるべくとかなんとかいうことでなく、そういつたようなことは取締り以外のことなのだというふうにできないものでございますか。査察官の任務は、こういうこまかいことはやらせもしないし、そういうことではない、これ以外のことなのだ、こまかいことはやらないものなのだという御答弁はいただけないものでございますか。どうもあいまいに聞えてしようがないのですが、そういうことはやらぬ、やらせない、それだけの御答弁はできないものでございますか。
○國塩政府委員 経済査察官の違反行為捜査の対象は、たびたび申し述べまするように、大きな根本的なものに限定されておる。從つて末端的な現象に関しましては経済査察官はそれを対象といたさない方針であります。
○田中(健)委員 第四條——これもこの間西村さんからお話がありましたが、安定本部の長官である國務大臣が経済査察廳の長官を兼務する、これははつきり言うと、安定本部がなくなると同時に経済査察廳もなくなるという意味においてこうなつているのですか。それとも説明にある通り緊密な連繋をとつていくという意味でそうなつているのか、その点をお伺いいたします。
○國塩政府委員 第四條はお話のごとく緊密なる連絡をとるという意味で、そうして同時に安定本部がなくなるときには経済査察廳がなくなるという両方の意味でございます。
○田中(健)委員 そうすれば安定本部は一年限りだと思うが、経済査察廳はやはり一年限りなのでございますか。長く存続するのですか。
○國塩政府委員 安定本部の存続期間が一年限りで消滅するというのであれば、現在の方針といたしましては経済査察廳も今成立いたしましても一箇年先には消滅するということにならざるを得ないと思います。
○田中(健)委員 これは安定本部の長官たる國務大臣が長官を兼任するということになりまして、そこで安定本部が要らない、廃止になるというような場合に——これは先のことながら來年のことを聞くのもおかしいのですが、第四條の改正案を國会に提出するようなことになるのではないですか、この点はどうなのですか。
○國塩政府委員 もし安定本部がなくなつた後においてもかような機関が必要であるという状況でありますれば、第四條の改正によつてそれをやるか、あるいはまた別個にさようなものの設置案をつくりまして御審議を願うことになるか、いずれかしなければならないのでありますが、いずれにしてもその場合において國会における全面的な御檢討を願わなければならぬということになると思います。それを第四條の改正によつてやるか、別個の法律案の制定によつてやるかということはそのときになつてみないとわからないのではないかと思います。また存続するかしないか、存続する必要があるかないかも、そのときにならないとわからない。
○田中(健)委員 私は來年になるとどうなるかということをお伺いしているのです。手続上のことを聽いているのじやない。お見込みでは今年一年間で相当の実績をあげて、それでもう要らなくなるのか、その見込みを聽いているのです。五千人の役人が全國に駐屯して相当嚴重な査察を行つて多大の成果をあげて、そして一年後にはわが國は経済犯罪がなくなる、あるいはそういうことを根絶し得るお見込みであるかどうかということが前提であつて、それから見込みが立たぬ場合にはやはり法律の改正案を出すのかとお伺いしたかつたのですが、まずこの法案が成立したとして、どれだけの成果をあげられるお見込みかということをあなたの予想でもよろしゆうございますが、ひとつここで御発表願いたいと思います。
○國塩政府委員 きわめてむずかしいお尋ねでありまして、私も明確なる推定予測というものは立たないのであります。できれば一年間でその目的を果して経済査察廳のごときものは一日も早く消滅させるように努力いたしたいと思うのでありますが、はたして一年でその目的を達し得るや否やということにつきましては、いささか危惧の念も存在する。しからば何年あつたらその目的を達するかということでありますが、これは経済再建計画が何年経つて大体どの辺までいくかという目やすと相当関係があるのではないか、國民の協力によりまして経済の再建が早ければ経済査察廳の消滅も早い、單に経済査察廳だけの問題としてそれを考えることは困難でありますが、少くも一年以上は継続するであろうということは推定されます。その程度でひとつお許しを願いたいと思います。
○田中(健)委員 しからば一年経てば一年間の存続というふうに何年やるかわからない。安定本部長官が兼任ということだと一年ということも考えられるし、安定本部が延びればそれにずるずるくつついていつて延びるということも考えられる。成績がある程度あがれば廃めてもいいということも考えられる。そうすると結局こうなのですか、まだやつてみなければわからないという意味でございますか、その点をお伺いいたします。
○國塩政府委員 安定本部がある間は、統制というものは相当強く律せられるということを予想せられるのであります。統制経済というものを強度に実施する必要がある場合におきましては、いわゆる安定本部というもの、あるいは國家再建計画の強行というようなことも要るのではないか、從つてそういうときにはその励行を確保するということが必要なのではないか、それで査察廳もある、こういうふうに私は考えるのであります。安定本部がある間に経済査察廳が消滅するように目的を達する、國民がほつておいても法規の励行をやる、あるいは欠陥がなくなるということはきわめて望ましいのでありますが、現在の実情から見ましてそれはなかなかむずかしいのではないか。しかしながらもしさような事態に立ち至りまするならば、私は一日も早く査察廳消滅の手続をとらなければならぬと考えるのであります。
○田中(健)委員 この際委員長にちよつとお伺いしたい。私昨日申し上げました公聽会はやるのですか、やらないのですか。
○松原委員長 まだお諮りしておりませんこれからお諮りします。
○田中(健)委員 それはあまり出席者の人数が少いのでお諮りできないのですか、それとも……。
○松原委員長 いずれお諮りしようと思つておりましたが、昨日木村君よりほかに、あまり御賛成がなかつたものですから……。大勢としてはこの際一應質疑を打ち切つて党の態度を決定していただくということであつた。
○田中(健)委員 それは、私は國民の代表だからそうそうあらためて國民各階層を集める必要がないというふうに考えられますけれども、しかし一應議員外から呼んでいろいろと意見を聽いてみた方が、この法案が重要であるかどうかがわかる、こういうふうに考えるのであります。
○松原委員長 承知いたしました。拒否する意思は少しもありませんから、委員会に諮つた上で決定いたしたいと思います。
○田中(健)委員 それから國塩さんからもいろいろと政府の答弁をお伺いいたしましたので、大分よくわかつてまいりましたが、なおこの際、この間私のお願いいたしましたアメリカの経済取締りの諸法規、世界各國と申し上げましたけれども、わが國の現状においてはとうてい不可能であるという政府の答弁がありましたので、さしあたつてアメリカの経済取締りに関する諸法規、あるいはいろいろの参考資料となるべきものを、この際政府にお願いしておきたいと思います。 ついでにお願いいたしたいことは、経済査察廳において所管するところの経済諸法令、この條文のようなものが、もし早急に御準備していただいて、われわれの方に参考資料として出していただければ、非常に結構じやなかろうかと思うのであります。この際この点を、委員長を通じて政府に対して要求いたしたいと思います。
○松原委員長 承知いたしました。ただこの際委員長から申し上げますが、先般この席上で御要求がありました時分に、大戰の期間中外國の資料は手にはいらなかつたから、アメリカを除いては手にはいる見込みがないという政府委員からの返答があつたことは、お聽きの通りだと思います。アメリカの分は手にはいる望みがあるかのように私は伺つておりますが、この点につきまして、ただいま田中健吉君の要求を、政府の方ではお容れになりますか。できますかどうか、お答え願います。
○國塩政府委員 実はアメリカの資料も、司令部側から借用いたしておりまして、ちよつと見せてもらつて、向うが要るからというので返して、手もとにはないという実情でありますが、必要でありますれば、それをまた借りまして、飜訳してお手もとに差上げるということは、これはできます。できますが、相当厖大な文献でありまして、若干期日がかかるということはひとつ御了解願わなければならぬと思うのであります。
○田中(健)委員 結構でございます。
○冨田委員 ちよつとそれに関連してお願し申し上げますが、昭和二十三年度の五月分の暫定予算の中に計上されました経済査察廳の予算の明細書をお取寄せ願えれば、非常に結構だと思います。 いま一つ、大正十二年勅令第五百二十八号の第二條の二を削るとただあつて、その内容が私もよくわかりませんし、おそらくわからぬ者が多いと思いますが、これも簡單なものでございますから、資料としてお取寄せを願いたいと思います。
○松原委員長 冨田君の要求の通りに、資料としてこれはお出しを願えると思いますが……。
○國塩政府委員 ただいまの資料は間に合うと思いますが、詳しいものを御要求でしようか。
○冨田委員 定員が五千人になつておりますが、これはいろいろ総合してお伺いいたしました結果、必ずしも初めから五千人そろえるのではない、だんだんと順次にそろえるということになつておるから、從つて政府の方で本年中に何人おそろえになるか、そしてまた五月の暫定予算に何人分査察官の数を計上しておられるか、そういうことを知りたいと思いまして、五月分の暫定予算の中に、経済査察廳に関する明細書がございましたら、そういう点が明らかになると思いまして、お願い申し上げたわけであります。
○國塩政府委員 そうすると、その部分をお示しすればよろしゆうございますか。その人数の点の資料をできるだけ早くお手もとに差上げたいと思います。厖大なものを作成するということになると時間がかかりますので、全部差上げないというわけではございませんが、その点がございますので、さしあたつてその点だけにしていただくと、はやく間に合うと思います。
○松原委員長 木村君、ただいま法務総裁がお見えになりましたから、あなたの質問の要旨をお述べを願います。
○木村(榮)委員 法務総裁にお尋ねしたいことは、この経済査察廳法案の第四章の、経済査察官の定員及び権限のうちの、一般的なことでございますが、今まで政府委員から御答弁願つた中で、経済査察官は現行犯人は逮捕しないのだといつたふうなことが多かつたと思う。この法律によつて私の理解しますことは、大体どんな小さい経済犯でも、経済査察官が逮捕しようと思えばできる。明確になつておると思うのですが、その点で法務総裁の御見解を承りたいと思うのでございます。
○鈴木國務大臣 お答えいたします。御質問の趣旨は、経済査察官が現行犯をつかまえることができるかということでありまするならば、できるとお答えをいたすのであります。しかしできるという問題と、それじや何でもかんでもみなやるかと言えば、この査察官の置かれた目的から見て、比較的大きい経済犯を取締るということが目的でありますから、どこでも、その辺の露店の違反でもみなつかまえる——これは一般警察官に委ねべき問題でありまして、つかまえることは、つかまえたければつかまえられるわけでありますが、そういうことまで必ずやるということは申し上げかねる、こういうふうにお答えをいたしておきたいと思います。
○木村(榮)委員 從つて、今の御答弁に関連いたしますことは、経済査察官が今までの経済警察官と同じようなことをやつても差支えないし、またやる場合もあるだろうということになると思うのですが、その点はいかがですか。
○鈴木國務大臣 それはその通りであります。
○木村(榮)委員 それで今度はこまかい点を二、三お尋ねしたいと思いますが、第二十五條最後のところに、「経済査察官は、経済法令の関する現行犯人がその場所にいるときは、」とあるわけなんでありますが、これはこの間政府委員にお尋ねいたしましたけれども、私は納得がいかなかつた。現行犯人は、その場所にいない現行犯人というものがあるかないかということを、專門家の立場から御答弁を願いたい。
○鈴木國務大臣 お答えいたします。この表現ははなはだ適当でないと考えまするが、その場にいない現行犯人というのはたしかに仰せの通りないわけでありまして、ただ犯罪を行つておる場所におる現行犯人と、それからその場所を遠ざかりつつあるが、まさに彼は犯罪を犯して今帰つていくところであるということが現認される準現行犯というものがあることは御承知の通りと思います。そういうことを考慮に入れますると、正確に表現しておかなければならない。普通の警察官ならば、そういう犯罪が終つて、そうして別なところに移動しても、疑いがあれば逮捕することもできまするが、経済査察の官がそういうことまでやるということは行過ぎであるという見地から、そこをはつきりさせるためにこういう表現を用いたと思うのであります。言葉が適切でないことは認めまするが、そのように御承知を願いと思います。
○木村(榮)委員 この問題について、私は重ねて疑問に思いますのは、今御答弁から勘案いたしまして、たとえば逆に経済法令に違反するところの事件で、現におる人は何らそれに関係のない人もある。現にそこにおつたということならば、逆に解釈して、現にいたからといつて、現行犯人のごとく誤られて、経済査察官がひつぱつていくことのできるような一つの理由になる危險性があるのではないか、こう思うのですが、経済法令に違反したような行為が行われた場合、ほんとうにやつていなくても、そこにおつたからという理由で現行犯人として逮捕するというような、曲げて考えられるような危險性がないか、こういうことについて御解釈をお聽かせ願いたいと思います。
○鈴木國務大臣 理論上は仰せのようなことがあり得るわけであります。その場におつたために、関係ないけれども犯人と間違えられるということはあり得るわけであります。しかし実際上は経驗のある、多少眼光の鋭い査察官でありますならば、大体実際の現行犯人であるか、ただその場に居合わせた者であるかの区別はつくはずであります。また間違つてそういう者を捕えることがありましても、すぐにそれが間違いであることがわかつた瞬間に釈放するはずであります。それが人権蹂躪等の問題を起しましたならば、その責任を負わなければならないことは、もちろんでありますが、そういうことで、実際上は仰せのようなことは理論上あり得ることではありますが、あまり起らないだろう。そう考える次第であります。
○木村(榮)委員 今までの答弁を承つてみますと、非常にどつちにでも解釈できる、きわめてあいまいな、危險性のある文句だと思います。從つてそういうあいまいな、危險性のある、どつちにも解釈できるような文句は、実際状況にうまくタツチできるようなことに改めた方が——これは質問みたいな質問ではないようなことになるのでありますが、その方が適切ではないか。こういう意見で、この間政府委員に意見を求めましたけれども、これで結構であるというお話だつたのです。ところが今日の法務総裁の專門的な立場からの御答弁を承りますと、私が最初もつていた疑問がますます強くまた明確になつてきました。法務総裁としては、きわめて誤解を招きやういようなものは改められた方がいいか、惡いかという点について、どのような御意見があるか、承りたいと思います。
○鈴木國務大臣 先ほど私がお答えしたのは、逆に言うときには現行犯人がその場にいないときにはということも言い得るわけであるから、そこでこれは誤解を起しやすい表現であるというように申し上げたのであつて、刑事訴訟方では昔からこのことを使つてこれで通つております。つまり現行犯人がその場におるときはということで、現行犯の現場において、犯人を捕える。こういう意味を表現するのでありますが、特にこれをかえなければ不都合であるとまでは考えないのであります。しかし法律はできるだけ常識に近づくことを希望いたしますから、立法府の多数の諸君が、別な表現に直したいと仰せられるならば、あえて異議はない。こういう程度でありまして、刑事訴訟法などは昔からこれでずつと通つております。
○木村(榮)委員 大体わかりましたが、今度は第三十一條の「実力による應援を求めることができる。」というこの條項は、普通一般の社会的な概念から申しますと、実力というものはこのぶんなぐるか、行つて捕縛するかというような、何かの処置が具体的な方法が伴うことを條件としたように理解いたしますが、そこでこの條項へこれをあてはめますと、各都道府縣の警察廳または市町村の警察廳がこの應援を求められた場合にはできるだけこれに應じなければならないとなつておりますから、そういつたことをやる意味での文句になつておるかどうかという点をお尋ねしたいと思います。
○鈴木國務大臣 それは必ずしもそういう意味ではなくして、実際に出てきて應援をするということの意味であります。これも言葉としては他に適当な言葉があればと思われるような表現でありますが、実力によるということは、何もぶんなぐるとか縛るとかというわけではないのでありまして、警察官が親しく應援をしてくれなければ調査ができないというような場合がありますから、そういう場合には出動してもらう、こういう意味であります。それ以上のことを意味するものではないのであります。
○木村(榮)委員 それで結局、われわれ一般社会人の実力の場合、あるいは檢事なら檢事の実力の場合、警察官の実力の場合は、幾分違うのじやないかと思います。この場合は警察官の実力になるわけですが、大体警察官の実力というのはどういう権限、どういう範囲までのことを指すのか、ひとつ御説明願いたいと思います。
○鈴木國務大臣 それは抽象的に申し上げることは非常にむずかしいのでありますが、要するに警察官といえどもすべて法令に從つて行動しなければならぬ義務をもつております。法令を離れて実力を行使するということはあり得ないのであります。そうだとすれば別に不都合を生ずることはないはずでありまして、もし法を離れて実力の行使等をいたしますならば、これは明らかに違法でありまして、その警察官その人の責任の問題を生じ、懲罰その他の問題を生ずるわけであります。從つて何か檢事とか査察官とかいうものが現実に令状をもつております場合でも、縛るとか、連れてくることは警察官がやる仕事であります。たとえばものを開けて見るというようなことも、これは檢事も経済査察官もやつて一向差支えないことでありますが、警察官に開けさせるというようにするのが普通でありまして、そういう意味において実力を行使する、実力による應援ということを言つたものでありまして、すべてそれは法律が規定している限りにおいてやることでございます。
○木村(榮)委員 それでは結局檢察廳の檢事が大体警察官の方に出すいろいろな命令また執行の條件ああいうもの以上のものではないということは言えるわけです。ところが、そういつたものであるならば、そういう意味のことがわかるように書いていただかないと、何か経済査察官というものは特殊な権限をもつておつて、特殊な実力を行使できるような命令を出せるかのごとく解釈されると思うのであります。この点も今法務総裁が言われたように、この言葉がそういう点で惡ければ訂正してもいいということになれば、われわれの方も意味がまとまれば訂正して差支えないと思いますが、この点について御賛成か否かということを承りたいと思います。
○鈴木國務大臣 政府としてはこの言葉で差支えないと考えておりますが、しかし多数の御意見が別な表現の方がよろしいということであれば、これをかえられるということに対して、別に異議はありません。
○松原委員長 この際法務総裁に御質問の方があればお伺い願います。
○田中(健)委員 先ほど國塩政府委員からいろいろお伺いいたしたのでありますが、同じことを繰返すようでありますが、法務総裁にお伺いいたしたい点は、配給が行われておるということは、國家が國民の最低の限度の生活を保障しておるという意味ではなかろうかと思うのであります。ところで配給がときどきとだえるのです。主食はもれろんのこと、一切の主食類関係の配給はときどきとだえるのですが、こういう場合に明らかに最低限度の生活が脅威されておる。そこでこういう時代においては、國民みずからが自分の力によつて生活していく以外に解決する方法はないのであります。そこで具体的になつてまいりますが、配給がない場合には、いきおい田舍に帰つていつて米を運んでくるとか、あるいはまた配給がない場合には、魚のようなもの、あるいは副食物のようなもの、あるいはまたいろいろ生活上欠くべからざる品物を買いに行く。それが取締りの対象になりまして、いろいろとこれまで見られているようなむずかしい社会問題が起きてくるのじやないかと思いますが、私は配給のない場合には、そういう國民の行為というものは容認されなければならぬはずのものじやないかと考えます。しかしながら從來まで警察官が苛酷な取締りを行つておつた。今後明らかに政府の処置が不当であつた場合には、國民のそういう行為はこれを処罰することはできない、容認されなければならないものだというふうに考えまするが、これに対しまして法務総裁は、いかようなるお考えをもつておられるかをお伺いいたしたいと思います。
○鈴木國務大臣 憲法における國民の最低限度の生活を保障するという規定は、國家すなわち歴代の政府がどういう努力をすべきであるか、これを立法の最高の目標としてやつていかなければならぬということを示したものでありまして、いかに物資が不足でも、現実に食べるだけの物がなくとも、國民の生活を保障するという意味ではないのであります。その点は御了承を願いたいと思うのであります。從つて物が足りないから統制をやるのでありまして、物が余つておれば統制などはいたさないのであります。そこでその足りないものを足りないながらにも、平均化していこうというところに統制の目標もあり、努力もあるわけでありまして、ただいま仰せられまするように、実際配給が滯る、その場合に何らかの形で補わなければならぬということも確かであります。從つて実際食べるものがないから、物を買つてきたというようなことが明らかでありまする場合には、從來でもそういうために買つてきたか、やみに賣るために買つきたかよく調べてみなければわかりませんから、一應取調べもいたしまするし、汽車などで許可せられておる以上の数量を運びまする場合には、これを取合げもいたしまするが、要するに実際にわかつた後には、情状が量すべきものは大低起訴猶予または不起訴にして許しておるのであります。ですから経済事犯について実際に起訴せられる、処罰せられるというものは、統計的に銃しますならば非常に少いものなのであります。そのことも政府としては十分親心をもつてやつておるつもりでありますが、しかしそれを建前にして公然と配給以外のものを買うことを許すということを申すことはできないのであります。法の運用の上において手心というものはあり得ますけれども、やはり法はあくまで横流し、やみ買いを許さないものというふうに御了解願うほかはないのであります。
○田中(健)委員 從來取締りにおいて多量の物資が没收されておる。それはいかなる根拠に基いて没收されておるのかどうかわかりませんが、かりに犯罪のあつた場合においては、それは没收されても、犯罪の用に供したものは、やはり必要な場合においては、これを國民に対して返還しなければならない。しかるに犯罪にして裁判に付されてないものがどんどん没收されて、どこに行つたかわからないという事態があるのであります。処罰された者は数は少いようであります。しかしながら多量の生活物資が——特に主食のようなものは没收されておるのであります。その没收することが妥当であるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
○鈴木國務大臣 どういうものを没收されたのか存じませんが、たとえば米のような場合でありますなら、明らかに食糧管理法というものに規定がありまして、すべての米は政府にこれを賣り渡し、そしてそれを配給することになつておるのであります。自家保有米は別でありますが、そのほかにびた一粒の米でも、配給以外に携帶して歩く者は許可証を持つていて、これはどこそこで幾日間食べるためのものであるという、そういう許可証を示さなければならぬ。そうしないと許されないことになつております。それ以外のものはすべて取上げる、というと語弊がありますが、いわゆる公定價格で買上げる。ただ取上げるわけではない。中にはめんどうくさいといつて権利を放棄して投げて行く人もあるらしいのでありますが、それは別問題であります。とにかく公定價格で買上げて正当のルートにのせます。もしのせないならば横領罪であります。そういう人があつたら申告してくださいますれば、いつでも処罰するつもりであります。すべて法規に從つて正当に動いておるのであります。
○田中(健)委員 食糧管理法によつて正式の配給ルートをじて買上げる。その買上げる場合に政府は金を拂わなければならぬ。ところが配給機関が買上げる際に、その配給機関において金を拂わない場合がある。もちろん中には金を拂つておるものもないではないが、大部分は金を拂わないで、やはり没收しておるわけでありますが、これは明らかに違法である。そういう例はたくさんあります。例をあげろと言われればいくらでもあげてみますが、そういう例をあげるために言つておるわけでありません。そこで法務総裁は権利を放棄しておる者があると言われるが、決して権利を放棄しておるわけではない。それは半ば恐怖心にかられて権利を放棄したようなことになつているのであつて、決していい氣持で権利を放棄するわけではないのであります。ここまで取締りが及ぶことになると、その日の生活が脅威されることになるのであります。その点については法務総裁は情状を酌量すると言われるが、私はこの際法務総裁は主食糧の取締りを行われるにあたつても、決してそれは没收ではない。やはり配給機関が正当の代償を拂うべきものであるということを、警察官あるいは檢事に対しても指示してもらいたい。実際はあなたのおつしやる通りであろうけれども、下の方へいつてみると決してそうではないので、その点どういうふうにお考えになつておりますか。
○鈴木國務大臣 それはちやんと法律できまつておるのでありまして、もしやつていないならば、やつていないものが惡いのでありますから、私どもの方ではその点は十分注意いたしますし、そういう違法な官吏がありましたならば、申告してくださいますれば、十分に戒飾を加え、適当なる措置をとるつもりであります。しかし大体そういう人が多く精算をするのがめんどうであるというようなことで、権利を放棄していく、こういうことがありまするから、まことに困るのでありまして……。
○田中(健)委員 大量の権利を放棄しておるものはどうなりますか。
○鈴木國務大臣 それだけ國家が拂わぬで済むのでありまして、國家が利益するわけでありまするが、しかし品物は正当なルートにのせて配給するのでありますから、決して横領等がされるおそれはないのであります。
○樋貝委員 私一言だけお聽きしたいと思います。実はこの経済査察廳につきましては、私の見るところでは全体が経済警察の焼直しのように見えるのであります。この間から安本長官からもしばしば御説明がありまして、そういう趣旨ではないのだというお話であります。あるいはそういう趣旨ではないかもしれません。しかし文面の上に現われた全体の総合を見ますと、どうしても警察廳という感じがいたしております。しかし今日の日本警察制度というものが大分に全体から見ましては薄弱な状態にありますが、從つてこの方面でもまた警察廳というものをつくつて側面からこれを補助するということはあるいは必要であるかもしれないと考えております。從つて今の警察廳のもつておりますところの権限にプラスするにこの方面の警察力をもつてするということのためにこの役所が必要であろうかとも考えられます。しかしそれは二次的の考えでありまして、第一次の考えではないのであります。そういうような目的をこれがもつておられて御提出になつたのであるか、從つてある場合においてはこれの色を塗りかえて、本來の警察の方に変るような時期がありはしないか、どうか、その点をお伺いしたいと思います。全然そうでなくてこれは臨時的な警察、私どもの考えでは経済警察だと思つておりますが、それだけにすぎない、ほかに他意は全然ないのだというようなお考えでありますか、念のためそれを伺つておきたいと思います。
○鈴木國務大臣 その点はこの立案の際にも問題となつたところでありまして、警察の機能とこれは違うのでありまして、確かに仰せの通り、第二次的には補充的な意味ももつておりますけれども、元來統制経済が継続いたします限りは、この種の官廳が必要であるということはおそらくは樋貝委員もお認めくださるだろうと思います。そういう意味においてこれは將來警察に合流するというような考え方はない。また通常の檢察廳の方向も、いわゆる普通の犯罪を檢挙することにもつばらであるべきものでありますから、その領域を侵さないようにする意味で、特殊の官廳をつくるわけでありまして、統制経済がなくなるときにはやはりなくなるという性質のもので、合流することはないものと考えます。
○冨田委員 この際ちよつと法務総裁にお尋ね申し上げておきたいと思いますが、この経済査察廳の本來の目的とするところは計画立案であり、あるいは奨励と啓発であり、あるいは勧告、協力であり、あるいはまた情報の收集とか、監査あるいは調査といつた点に主力が注がれているのでありまして、現実の問題としてあるいは臨檢をするとか、捜索をする、あるいは差押えをする、逮捕をするといつたような問題にはタツチしないのだ、それがこの法案を御提出になりましたときの提案理由の説明の中にもはつきりと言われているのでありまして、そうした方面の行政的な手段によつてこの統制の励行をはかることが目的だというにもかかわらず、第四章を見ますと、二十條以下ほとんど檢察廳のおやりになるような仕事が大部分であります。そこでお尋ね申し上げたいと思いますことは、こうした逮捕をするとか、あるいは臨檢をするとか、捜索をするとか、差押えをするといつたような檢察廳の方にお任せをするのが本來の筋であつて、経済査察廳にこういうことを委ねるということは私といたしましてははなはだ好ましくない事象ではないかと考えております。法務廳総裁としての立場からこの点をどのようにお考えになつておられるかお伺い申し上げたいと思います。
○鈴木國務大臣 御質問の趣旨はまことにごもつともでありまして、そういう御心配もあり得ると思いますが、しかし経済査察官を設けた根本の趣旨は御説の通りであります。しかし調査を現実にやつておるときに犯罪に該当すべきものを見出す。それではこれから檢察廳の方にそれを引渡す。檢察廳はまた出て行つてこれを調査し、たとえば令状を執行する必要があるというので令状をもらう。そうして臨檢捜索あるいは差押え等をする。こういうことはなるほど理論上は正しいことでありましようけれども、行政経済の原則から見て、また敏活性を尊ぶ見地から見ましても、経済査察官は確かに主たる目的はただいま仰せになつた趣旨でありますが、たまたま調査の課程においてそういうものを発見いたしました場合には、やはりただちにそれらの臨機の処置をとり得るだけり権限を與えておいて決して弊害はなかろう。こういう観点から第四章のような規定を設けた次第であります。
○冨田委員 ただいまの御説明によりますと、やむを得ない場合は経済査察官にそういう権限を與えても弊害はなかろうという程度のお話でありますけれども、私どもの心配いたしますことは、われわれが兇器を持たないときには殺意を生じませんが、兇器を持つたがために犯罪を犯す場合が多い。小人もと罪なし、玉を抱いて罪あり。金をもつておらないときにはむだずかいをするというのが、われわれ凡人の世界における常識であります。私は政治はわれわれのようなごく平凡な人間を対象として行われるのであつて、聖人とか賢人とか神樣や佛樣を相手にして行つておるのではありませんから、その点をごく常識的な現実にスタートして考えてみますると、経済査察官が與えられたこの檢察的な権力を濫用するおそれがある。これがわれわれの心配する一点であります。 いま一つはこのような厖大な官廳が生れなければならなかつた根本の理由の一つに、現在の檢察廳の機構なりあるいは警察機構なりにおいて不十分であるがゆえに、こういうものをつくる必要がある。こうはつきり説明されておるのでありますが、法務総裁の立場から見て、現在日本の檢察陣において、どのような不備の点があり、どのような欠陷がおありになるということをお認めになつておられるかをお伺いしたい。
○鈴木國務大臣 第一の御質問の小人玉を抱いて協ありというおそれがないかということは、すべての制度に権力を與えると、これを濫用するものがあるということは否定できないことでありまして、そういうものが絶対にないということは保証いたしかねますけれども、大体この程度の権限を附與しておく方が、実際に仕事をやる上において行政経済の原則に合致するだろう、こういう見解からまいつておるのでありまして、嚴格に國費の増額その他を顧みないならば、仰せのように権限をわけて、檢察的な方面は全部檢察廳に任せるということでも差支えはないのでありますが、それは政府として賛成いたしかねる、こういうように御了承願いたい。 それから第二の、檢察廳がある以上はこういうものは要らないのではないかという御趣旨のように承りましたが、檢察廳は御承知の通り非常に限られた人員で、全國で檢事は八百五十人の定員でありますが、実際はみな生活難その他のためにやめて、五百五十人くらいしかおらないのであります。それがあらゆる國家の重大な犯罪を檢挙いたしておるのであります。その執務の激甚は言語に絶するのであります。そのほか経済査察というような仕事は、経済問題に対する深き認識と理解とをもたなければならない、特殊の知識技能を要するのでありまして、万能ならざる檢事に全部こういう仕事まで担任させる。させてできないことはありませんが、能率は非常に下るでありましよう。どうしても國家の現状から考えますれば、経済査察のためには、かくのごとき特殊の官廳を設けて、相当数の人員を増員して專心この任に当らせるということの必要はやむを得ざるものと考えている次第であります。
○冨田委員 今のお話で、万能ならざる檢事にすべてをやらせるということがむりであるということもよくわかりますし、今総裁が御心配になつておりますように、日本の檢察陣が非常に骨の折れるということも、十分私ども了解いたしております。そこで問題は、法務総裁の立場から、日本の檢察陣をもつと強化して、われわれ國民生活の上の不安なからしめるだけのことをするのが法務総裁の役目である。そしてまたそれあるがゆえにわれわれがまくらを高くして寢ることができると私は考える。それを他の経済査察官の力を借りなければということは、いかにも筋違いのように考えられるのが一点であります。いま一つは檢察陣において非常に仕事が多いと言われますが、先刻も政府委員の方にお尋ね申し上げておいたのでありますけれども、あらゆる犯罪の根は経済事象にある。われわれの俗の言葉で銃しますと、暮しの中から生れ出てこない罪、汚れ、科というものはあり得ないのであります。われわれは聖人でも神樣でもない。生きているのです。俗人なんです。われわれの台所から、自分の財布から、生きることから、そこからすべてが生れ出てくる惡の華がすなわち犯罪である。その犯罪は、経済犯罪と他の犯罪と截然と区別することはできないと思う。そこでこの経済査察廳をつくるについて、経済的な犯罪が特殊なものであり、專門的な知識を必要とするように説かれているが、私はそこに非常に観念論的な机上立案というものがあるように思われてならないのであります。むしろ端的に、すべての犯罪はわれわれの生活からスタートしておるのだ、かく考えてみますと、おそらく法務総裁がお取扱いになつておられます犯罪の大部分は経済問題に根を発していると思う。もちろん人を殺す、人を傷ける、火をつけるというようなことはいかにも経済事犯ではありません。しかしなぜ彼が火をつけなければならなかつたか、なぜ彼が人を傷つけなければならなかつたか、殺さなければならなかつたか、おそらく精神病者でない限り私は必ず彼をしてそのようなことをさせた、いわゆるたれが彼女をそうさせたかという根本の原因をたずねてみると、そこに私は経済上の根があると考える。こういう意味からいつて、六法全書の中にだけ閉じこもることなく、司法官は現実の生活に目を開いてこの現在の犯罪に対しましたときには、すべてが経済問題であるとまで言い切れるのではないかとさえ思います。もちろん百パーセントとは申し上げません。そこでそういう見地に立つみますと、私はむしろ法務総裁としての立場から、われわれ國民の生活をして安定せしめる、精神的にわれわれがまくらを高うして寢ることのできるようにするだけの予算を要求なされ、人材を養成なさつて、そして日本の治安を維持することが、何よりも尊い御任務ではないかと考えます。それをたまたま第四章以下、ほとんど檢察当局のなさるような仕事を盛りこんだ、いわゆる経済警察の復活ではないという舌の根の乾かないうちに、すでに経済警察が盛りこまれており、われわれの前にその全貌を現わしておるのであります。この点について法務総裁としての立場から、経済査察官の手によらずして、われわれ日本人のほんとうに生活の上にこうした犯罪をなくすることを一手にお引受けになつてやる勇氣をお持合わせにならないかどうか、それだけの要求を端的になさるだけのお覚悟があるかどうか、眞劍な、血の滲むような現実の國民生活をまともにごらんになつて、強い御決心があつてしかるべきだと考えるが、私の考えが間違つているかどうか、ひとつ法務総裁のお覚悟のほどをお伺い申し上げたい。
○鈴木國務大臣 御意見はまことにごもつともの点も多々あるように承ります。まず経済査察官の制度というものは、御承知のように、決して檢察的な仕事というものが主ではないのでありまして、附けたりにすぎないのであります。仕事をしているついでに現われてくることに対して、行政経済の原則上、便宜こういう権限も與えておいた方がよいということから、これは規定されているのでありまして、主たる権限、眼目は、どこまでも経済方制を円滑にやつていくための協力者として、法第一條に規定したような仕事をやつていくというところにあるのでありますから、その点については誤解のないようにお願いいたしたいのであります。 それから檢察陣営の充実、これにつきましてはお言葉までもなく法務総裁として日夜苦心をするところでありまして、閣議等におきましてもあらゆる努力をいたしまして、予算等の要求、定員の増加をはかる、それは経済査察官にかえるという意味でなくして、現在のままでも、日本の治安を維持していくためには、もつと充実したる定員をいただかなければやれないのでありますから、それで要求をいたしているのでありますが、御承知のような國家財政の現況でありまして、あらゆる方面から要求されるものをみな合わせますと、現実に組んだ予算の数倍あるいは十数倍に上るのでありまして、それをみな切捨て切捨てて最小限度に止めておるのが現実の予算の状況でありますから、その点も非常に困難に当面しているのでありますが、それにも増して困難なことは、檢事というものは特殊の資格をもつたものでなければならぬ。いかに充実すると申しましても、一夜に速成で檢事をつくるというわけにいかない。また待遇その他が、最近いよいよ増額をしてくださるように相なる予定でありますが、今日のごとく菲薄でありましては、とうてい弁護士、判事その他から檢事になつていただくということはできない状況にあるのでありまして、現に定員を埋めてからさらに拡張を望んではどうか、閣議におけるこういう強い御要求に接しますと、法務総裁としては遺憾ながらそれでもというわけにまいらないような次第であります。國会の協賛を経ましてさいわい檢事の待遇を非常に改善していただきまして、これによつて相当多量に欠員を補充することができる。その上さらにお言葉のような充実について考慮いたしたいという心構えであることを申し上げます。
○木村(榮)委員 安本長官にお尋ねしたいのですが、経済査察廳法案については大分質問いたし、安本その他の政府委員からいろいろ承つて大体了解しましたが、実は前々回くらいであつたと思いますが、田中委員の質問に対して共産党員は経済査察官には採用しない方針であるという意味のことで、不適当だとか何とか御答弁されたように承つております。私ちようど出席しておりませんでしたが、承るところによれば経済査察廳の役人は國家公務員法によつて採用され任命されることになると思うのですが、國家公務員法には共産党員は採用しないということは全然書いてございません。その点どういうお考えで田中委員の質問に御答弁になつたか承りたいと思います。
○栗栖國務大臣 これは法案の問題でなしに運用の問題としてのお尋ねであつたと思います。個々の問題について吟味しなければなりませんが、およそ國家目的殊に経済査察の目的と背馳するような考えをもつた人は、この事務に從事することは適当でないと考えるのでありまして、單に共産主義というようなお話もありましたけれども、そういうものはこの目的には反することが多かろう。——具体的に調べねばわかりませんけれども、そういう場合には多かろうと考えられるのでありまして、そういう場合には採用しないということを申した次第でございます。
○木村(榮)委員 共産主義あるいは共産党員が、この経済法令と矛盾しているという点はどういう点でございますか。それで結局そういうことになれば現在の日本の統制経済なり、あるいはそういうものに一番よけい違反した者が共産党員であるという建前から、そういう御意見を御発表なさるのかどうかということを承りたい。
○栗栖國務大臣 私が今申し上げたことと今あなたのお尋ねとの間に食い違いがあることがはつきりわかります。共産主義がどうのこうのというわけではないのでありまして、ある官吏を任命する場合には、その職に適当であるかどうかということを具体的に調べる必要があります。そういう場合に具体的に調べて、適当でなければ採用しない、こういうことになるのであります。共産的な主義を抱いておる人がこれに適当かどうかという問題でありますが、それは具体的にそれを審理しなければわからぬのであります。しかしこの査察の目的その他から考えましてそういうような具体的に審理した場合に適当でないということになれば採用しない、こういうことを言つたのでありまして、運用の問題で、規定の問題でありませんから、そこを誤解のないようにお願いいたしたい、こういう意味であります。
○木村(榮)委員 それでは何も共産党員だから、あるいは共産主義者だからという意味ではなくて、特定の個人であれば、一切の者は採用にあたつて審理をなさつて、適当な者を採用するという意味のことをおつしやつたわけですね。
○栗栖國務大臣 そういう趣意で採用の問題を個々に具体的に進めなければなりません。そのとき不適当ということになれば、この法の趣意にも反するようなことになれば採用しない、こういうことを言つたのであります。一般的の問題でないのですから、そこは誤解のないようにお願いしたいと思うのであります。
○木村(榮)委員 そういう趣旨ならば了解いたしますが、田中委員も違うとおつしやいましたから、あとで速記録をよく調べてみます。私が、申し上げるのはどうかと思いますが、村でも町でもこの問題が起つてくれば、たくさんひつかかる事件が起つてくるのは、現実の問題としてやむを得ないと思います。そこで安本長官は共産党員は適当でないとおつしやつたというわけなのですが、私の手前みその話ではないのですけれども、比較的経済違反などというものは共産党員あるいは共産党の組織の中には一番少いという確信をもつております。そこでこういつた問題に事ごとに共産党がひつぱり出されて、今度は政府側から共産党員は適当でないとか——新聞を見ますと、今安本長官が言われたとおよそ反対の、経済廳には共産党員は採用しないというふうにあらゆる新聞は書いております。これは何かそういう言質をとられるようなことをおつしやつたに違いない。官公吏の中に共産党員は大分おりますが、官公吏の中に共産党員があつて惡いとは思はない。今度國鉄の副委員長になつた鈴木君は共産党員であるが、そういうことに対して事ごとにこういうことを利用して、共産党員並びに共産党に対する恐怖感を與えて、われわれに不当な彈圧を加えられるのではないかと思うのですが、そういう点に対する安本長官の御意見を伺いたい。
○栗栖國務大臣 幾度も申しておるのですが、ここである人を採用するかどうかということは——お調べになるとよくわかるのですが、具体的にその人の考えておる考え方あるいはその他を考えてみなければわからぬ、こう申し上げておるのであります。であるから共産党員であれば官吏には採用しない、こういうような考えをもつておるわけではないのでありまして、そこをよくお考えを願いたい、規定自体の問題でなしに、運用の問題である。運用も、その人を採用するのは、その人について考えなければならぬのであります。あのときも具体的にという言葉を使つて——そういう種類の言葉を使つておると思うのであります。その辺をよくお考えを願いたいと思います。
○中曽根委員 今日はこの程度で打切りまして、月曜日の午前十時半から再開いたしまして、そのときは法制部の部長及びその係官を呼んでいただきたいと思います。
○松原委員長 お諮りいたします。中曽根君の御提案の通りに取計らつて御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松原委員長 それでは本日はこの程度に止め、來る月曜日の午前十時半から開会いたします。 本日はこれで散会いたします。 午後零時五十一分散会