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1回国会参議院1947/09/23

在外同胞引揚問題に関する特別委員会第2小委員会 第1号

発言数
39
登壇者
8
会派数
3
開催日
1947/09/23

会議録

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) それではこれから開會いたします。在外同胞の引揚に關する特別委員會の第二小委員會は、御承知のように在外財産に對する請願竝びに陳情等を審議して行くことになつております。只今まで請願、陳情でこちらが受取りましたものが、請願が二件、陳情が二件、四件になつております。今日はその四件について御審議頂きたいと存じます。  先ず最初に請願の第九號舊滿鐵社員の會社に對する諸請求權に關する應急措置等に關する請願、これの請願者は東京都杉並區馬橋一丁目四十番地、古山勝夫、紹介議員北條秀一君でございます。  それからその次の請願は、第五十五號滿洲における同胞救濟金の償還に關する請願、請願者は財團法人滿蒙同胞援護會内、全滿日本人居留民會殘務整理委員會委員長平山復二郎、紹介議員は北條秀一君になついております。  それではこの二件を一括いたしまして、紹介議員の北條君から御説明を頂きたいと思いますが、よろしうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) それでは北條君。

北條秀一緑風会

○北條秀一君 只今提出されました問題でありまするが、この二つの請願書は全く一つの基礎から出發している問題でありますので、一括いたしまして御説明申上げたいのであります。この點につきましては、特別委員會の各位は疾に最もよく承知しておられますので、改めて詳細に亙つて説明する必要はありませんので、要點だけにつきまして説明することをお許し願いたいのであります。  これらの陳情は、全國的には非常に澤山の陳情があるわけでありまするが、國會に對しては今日までのところ極めて少數の請願或いは陳情しか来ていないのは何故であるか、といいますのは敗戦以來二ヶ年間、外地から澤山の同胞が引揚げて參りまして、眞劍になりまして、只今の問題になりました二つの請願の問題を政府或いは當時の議會に對して持出したのでありますけれども、遺憾ながら今日まで國家の實情からいいまして、容易にこれが解決しなかつたのであります。その間に全く無一物で歸つて參りました引揚者或いは復員者の人たちは、俗な言葉でいいますと、待ちくたびれてしまいまして、すでに國會に對して、もう請願をする氣持もない、政府に對して陳情をする力もないというふうな状態にあるのであります。この前第一小委員會におきまして、この問題が問題になつたのでありまするが、輿論を起すにももう力がないという現状ではないかということをいわれたのでありますが、正にその通りであります。  この問題は、根本の趣旨は、戰爭犠牲の公平なる負擔をやる必要があるという主張であります。即ち戰爭によりまして、或る者は過重な負擔を受け、或る者は極めて輕微なる負擔を受けた、そうして國民の間に著しい不均衡があるのであつて、その不均衡を是正することが、新らしい日本を作る上に是非必要である、民主日本を作り直す基礎絛件になるというのが根本の精神になつておるのであります。そこから出發いたしまして、外地から引揚げますところの復員者或いは引揚者、こういう人たちが多年外地において築き上げたところの個人の資産、その資産を唯一の當てにして外地で働いておつたのでありまするが、敗戰と同時にすべてを放棄せしめられて日本に歸つて參りまして、險惡な日本の今日の經濟情勢の中にあつて自立更正せんといたしましても容易に更生できないのであります。而して又政府の政策がこれらの人たちに對して極めて不撤底、微温的でありまして、これらの人たちが更生せんとしておりましても非常に困難であります。殆ど不可能なような状態にあるのであります。といいますのは、外地におりました人たちが日本に歸りましても、永年外地におりました關係上、殆ど人と人との關係も薄くなつておりますし、土地はなし、家はなしというような現状でありまして、就職するにも就職しにくい、例えていいますと、食糧難のときに縁故米を貰おうとしても縁故米を貰う先がないというような現状であります。物價高の中に筍生活をしようにも筍生活をする物がないというような現状にあるのでありますが、少くとも外地から歸りました人は、國を失つたことが非常に悲慘なことである、從つて國がいかに大事であるかということを最も強く感じて歸つて來ている人たちであります。どんな困難な状態になりましても、とにかく自分の力でこの危機を切拔けて行きたいという強い意思に燃えていると私は信じているのであります。併しながら新らしい憲法の施行されている日本の中において、國民が當然その人權を平等に保障されるという建前の今日におきまして、これらの外地から歸りました者だけは非常に不公平に扱われているというところに最も大きな問題があることを私は主張したいのであります。  いろいろ申しますと長くなりますので、以上申上げまして、根本の問題が基礎になるということを御了承願いたいのであります。  さてこの問題は、既往の經過は今日申上げることはやめまして、特に今日第一囘の國會がこの問題を採り上げて愼重に研究し、これに對する根本的の方針を確立するように願いたいというのが、今日まで出ました陳情の更に第二の重點であると考えるのであります。これらの問題を解決しますには、政府は勿論、當面の行政官廳として、行政の範圍内において處理すべきものは處理しなければならないのでありますが、行政を出ます政治の範圍に屬するものにつきましては、當然國會において處理すべきものであります。從來政府にしばしば陳情したこれらの問題が、政府の現状からいつて容易に解決しなかつた、從つて國會は全然別個な立場に立ちまして、これらの請願、陳情を受取りまして、それをどう處理するかということを十分に研究して、眞に新らしい日本を作り上げる、基礎條件を完全に作り上げるように、本委員會において研究を進めて頂きたいのであります。  さて、そこで、この度出ました陳情について申しますと、第一の滿鐵社員の舊會社に對するところの債權の請求の問題であります。滿鐵には社員が十一萬人おりまして、家族を合せますと、大體三十三萬人乃至四萬人になるのであります。それらの人たちが國策の線に沿いまして滿洲に出掛けまして營々として働いておつたのでありますが、遂に敗戰と共に日本に歸つて參りました。滿鐵は御承知のように特殊な會社でありまして、特に會社の中におきまして社員の貯金を預かる銀行業務等もいたしておつたのであります。その結果滿鐵社員が會社に對しまする債權と申しますのは、内容は社員の貯金、それから社員の身元保證金、當然に會社を辭める時に會社から支給されるべき退職金、そういうものが根本になつております。その額が總計で九億圓の額になつております。即ち十一萬人で九億圓の額になつているのであります。この額を本國において是非補償して頂きたいというのが第一の請願の中心であります。  更にこの請願にあります問題は、これらの歸還しました社員が國内におきましてちりぢりばらばらになつておりまして、自分の債權を請求するにも請求する方法がないというので、みんなが集りまして、一つの團體を作つた、即ち滿鉄社友新生會というものを作りまして、そこで債權の處理に當つておるわけであります。御承知のように滿洲關係の特殊會社は、昭和二十年の九月三十日限り一切閉鎖機關となりまして、すべての財産は封鎖され、すべての機關は停止を命ぜられたのであります。從つて歸りました人たちが組織を作つて連絡をするにも、基礎もなければ資金もないというふうな現状であります。從つてこれらの歸還社員の處理を是非國家で面倒を見て頂けないかということが陳情の内容の一つをなしておるのであります。  この點は單に滿鐵だけでなしに、滿洲国關係の問題につきましては彼此皆然りであります。と申しますのは、舊滿洲國は、御承知の通りに國家の國策によつてすべてを處理されておつたのであります。從いまして滿洲國にありまするところの各種の會社は、悉く滿洲國籍のものになつておりました。ところが、その大元の滿洲國が敗戰と同時になくなつてしまいましたので、從つて元を失いましたこれらの會社、銀行、官廳というものは、瞬間にして地上から一切を拂拭されたのであります。この點につきましては朝鮮でありますとか、臺灣でありますとか、樺太でありますとか、こういうふうな日本の行政下にありました地域と違いまして、非常に歸国後の連絡をするために困難を感じておるのであります。この點は滿鐵關係は特殊な困難さを持つておるのであります。從いまして先程申しました滿鐵の連中、滿鐵の人たちが特に國家機關において問題を處理して頂きたいということを申出ておるところであります。  それからその次の滿蒙同胞援護會から請願のありました救濟資金の問題であります。これは敗戰後滿洲におきまして、臨戰地區と申しますか、國境地帶であります、國境地帶におりましたところの多數の日本人が、戰火に追われまして、無一物で主要な都市へ都市へと集中して參りました。誠に悲慘な状態を呈したのでありまするが、それらの同胞たちを救濟するために、現地の日本人の自治機關が、現地の同胞の間からそれぞれ借入金をいたしまして、その借入金で以て、身一つで逃れました避難同胞たちの救濟に當つたのであります。その借入金をする條件が、日本に歸つて日本政府でこれを改めて、補償して貰おう、こういうふうに考えて、その條件の下に一定の證券を發行して救濟資金を募集したのであります。而もその當時の條件は、借入れた時から一ヶ年後に、日本政府で定めた爲替レートで以てお拂い申上げるという條件になつているのであります。ところが、歸りましてから今日まで、政府におきましてはこの問題を處理せずに來ておるのであります。從つて全國にありますところの數十萬の救濟金を醵出しました人たちから、一時も早くこれらを自己の更生資金とするために國家において、補償して貰いたいという請願であります。  更にこの問題につきまして、在外公館の公館員の人たちが、敗戰後生活の困窮を救うために現地の同胞から借入金をしておるのであります。この點につきましては、現地の公館員から本國政府に請訓いたしまして、その結果現地の同胞から金を借りて生活の資に充てよという指示が出たと私は聞いております。從いまして現地同胞たちは喜んで在外公館員の救濟のために醵金したのであります。ところが、これも亦日本に歸りまして後、何らの處理を今日までされていないのであります。現地で助けました人たちが本國で今度助けられなければならんのに見向きもされないという現状でります。茲に申し上げました滿洲の救濟金と在外公館の救濟金は全く撥を一にする問題であります。いずれも今日最も深刻な問題になつておるのであります。この問題を荏再日を過しまして、問題の解決に當らないということは、況して今日のごとき險惡の世相の中にありまして、外地から引掲げました人たちの思想上に非常に惡影響を與えると考えますし、同時に現内閣の片山總理が精神革命を、崇高な精神革命を説いておられるのでありますが、その精神革命の將來に非常な大きな暗影を投ずるというふうに考えるのであります。  從つてこれらの問題につきましては逸早く國會におきまして根本方針を立て、たとえ具體的なそれらの處理ができないといたしましても、今後あらゆる機會においてあらゆる方法を以ちまして、これらの問題の解決に邁進して行くということが、民心を安定する大きな原因になつて來ると考えますので、是非これらの請願を愼重に協議して頂きまして、御解決を願うようにお計らい願いたいのであります。  大分長くお話しましたが、要點を申上げたわけであります。

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) 九號、五十五號を一括しての御説明を終りましたが、これに對して何か御質問でもありましたらお願いたします。

天田勝正日本社会党

○天田勝正君 北條君の説明の中で第二の説明の滿蒙同胞援後會、これが在外同胞から一機關として借入をした、その借入をするに當つて、本國に引揚げた後に政府がこれを支拂うという約束をしたというお話でありましたが、これは誰がお約束したのか、これを一應お聞きした上で… 。

北條秀一緑風会

○北條秀一君 只今天田委員から御質問のありました點につきまして、當時本國政府との連絡は全く斷たれております。從いましてこれらの救濟金がどうしても必要でありましたけれども、現地の同胞からなかなか救濟金の醵出がなかつたのであります。なぜかといいますと、當時の混亂した状態において、而も何らの保護を求めることのできない日本人たちは、唯一の頼みは彼らのお金であり、又財産であります、從つて何年先に日本に歸られるか分らないという不安の状態においては、財産なりお金なりというものをどうしても自分の手許に持つていなければならんというのが當然の心理であります。從つて醵金がなかなか困難であつたのであります。そこで滿洲の人たちは新彊、奉天、撫順、鞍山、鐵嶺、錦州、これらの各地の代表者たちが集まりまして、中國政府と折衝いたしまして、日本人の救濟のために金を借入れるということについて御了承を得たいというお話をいたしまして、その決議を得、同時に中國政府から本國政府に對して、是非この金は當然日本政府が敗戰後、避難同胞を救うために行政費として支出すべきものだから、日本政府においてこれを補償して貰いたいという、そういう條件を附けて、金を借りるからして了承して貰いたいということを、中國側の出先機關から本國政府に連絡をして頂くことにお願いをし、中國側でそれを了承されたのでありますが、我々が日本に歸つて參りますと、中國政府からこれの傳達がなかつたのであります。ところが、昭和二十一年の五月になりまして、中國政府から我々に次のような通達が參りました。即ち日本政府は現地の同胞を救うために、金を中國政府から借りることに話が成立した、その額は三億圓である、從つてその三億圓を現地の同胞に貸付けるからということで、直ちに中國出先官憲と我々との間に契約が成立しまして、三億圓の金を借入れることができるようになつたのであります。そうした中國側の取計らいもありましたので、我々の要求は當然本國政府に著いておると考えて、我々は日本に歸つて參りました。要求は日本國に確かに著いておりました。併しながら政府としてはそれに何らの訓令を發しないまま今日まで來ておるという状態であります。  それから上海の方の公館のことにつきましては、只今外務省の方が出席されておりますので、特にその間の經緯についてお伺いしたいと考えるのであります。これにつきましては先程も申しましたが、外務大臣が金を借りろという訓令をこちらから發しておるというふうに聞いております。この點につきましては外務省の政府委員の方から經緯を明らかにして頂けば幸いであります。

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) ちよつとお諮りしますが、岡元君はまだこの小委員會の委員になつておられないのでございます。御發言を許してよろしうございますか。   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) ではそういうことにいたします。

岡元義人緑風会

○委員外議員(岡元義人君) 只今北條委員のお話を承りましたが、これは單に滿洲の問題だけを取上げずに、只今の滿蒙同胞のようなお話、それから青島、濟南にも殆ど同じようなことがあるのであります。これは一括いたしました問題として滿洲のみに限定せずに、全般的な問題としてこれを取上げて頂きたいと考えるのであります。

北條秀一緑風会

○北條秀一君 只今岡元氏から話があつたのでありますが、全くその通りでありまして、先程私の説明が不十分であつたかと思うのでありまするが、外地から引揚げました邦人たちの受けました戰爭の犠性を公平にして行こうというのが根本の趣旨になつておりまして、それから出發いたしまして、今日大事な問題として取上げられて行く問題は、いわゆる在外企業資産の問題、或いは在外個人資産の問題、現地同胞救濟資金、現地公館員の救濟資金、こうした問題になつて來るのであります。

岡元義人緑風会

○委員外議員(岡元義人君) 今北條委員の提案に對しまして、私は只今まで地方一般の引揚者關係の實質的な指導をやつて來たのでありますが、もうこの問題を取上げる力もなくなつたというようなお話でございましたが、實際はそうではなくて、これは今の日本の國情からして、今持出しては都合が惡いのじやなかろうか、併しながら必ず解決つく問題だというのが一般引揚者の觀念となつておるのであります。それで特に外務省の方々にお伺いいたしまして、今こういう問題は取上げても絶對駄目だという根據が果してあるか、或いは局部的にでも、これは解決つけて行く途が開かれておるかということをばお尋ねして見たいと考えるのであります。

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) 外務省の在外同胞課長の小島君から御説明申上げたいということですが、よろしうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) それじやどうぞ ・。

小島太作外務事務官(管理局在外邦人課長)

○説明員(小島太作君) 御説明は、先程北條委員からずつと述べられましたことと、後で岡元さんから御質問になりました點を兩方にかけて述べさして頂きます。  終戰後大陸各地で非常に多數の難民が發生いたしまして、而も政府はこれを救濟すべき所要の經費が送られないという事態が起つたのであります。この事態に處しまして、當時外務大臣から中國に在る各公館長に宛てまして、所要經費が送れないという事情を述べて、現地で然るべく調逹するようにという訓電が出ております。これは當時の通信状況上、滿洲の各公館には到達しなかつたと思いますが、この問題はその訓令が到達した所だけは、訓令通り後で解決される、到達しない地域については政府は知らんという建前で行くべき問題ではないと考えております。それから先程も御説明がありましたように、現地で救濟された在外公館員を初め、その他の者が只今は所を變えまして生活上よい立場にあるのに拘わらず、これらの人を現地で救つた方方が、逆に非常に困窮していられるという状態が非常に多いのでありますが、これを又そのまま棄てて置くということは德義上の問題として甚だ重大な性質を帶びておるものと考えております。又先程の現地の居留民會の役員の方々が、内地に歸つたらば、政府から償還するという約束で滿洲でお借りになつたというこの點が、果して、當時の政府と連絡濟み協議濟みのものであるかどうかという點に關しましても、事實は協議濟みでないと申上げるのでありまするが、だからと申しまして、協議濟みでないことは知らないという筋のものてはないと考えております。  この問題の中心をなす戰爭犠牲均分の主張と申しますか、原則、この點につきまして少し觸れますと、引揚者が殆ど無一物て内地へ上陸しておる。これは非常に引揚者が戰爭の犠牲の中て重い部分を背負つていると思われるのてありまするが、少しこの點を理論的に分折して見ますと、何故引揚者が無一物で上らなければならなかつたかと申しますと、その主たる財産が外地、大陸等にあつたために、在外資産の凍結令のために、自由にこれを内地に持歸ることができなかつたという點にあるのでありまするが、形式的には引揚者も内地の在住者も同じ取扱いを受けているといえるのであります。それは引揚者と雖も内地において所有していた預貯金、これらにつきましては、内地在住者と同じ取扱いを受けるわけであります。内地におつた人々について申しましても、それが外地に所有しておる資産、これにつきまして同じように凍結令を受けておるのでありまして、形の上から申しますれば、引揚者も、内地在住者も同じ法令の下に制限を受けていることになります。ただ實際的な問題につきまして、引揚者はその多くが在外各地に壓倒的に多い比率の財産を所有しております。從つて引揚後それを享有し得る財産というものは、大勢から申しますると、引揚者が一番少い割合と申しますか、或いは現在自由に處分することのできない状況に置かれておることになります。そこでこの實際上の不均衡と申しますか、戰爭の犧牲が不均衡に負わされているという點につきましては、事務當局もいろいろ研究いたしまして、この解決の方法をとつたのでありまするが、在外資産凍結の現状におきまして、これは簡單に解決できると考えられないのであります。もう一方の點から見まして、實際上引揚者がその財産を享有する上において、内地の戰災を含む一般の國民に比べて甚だ惡い状況に置かれておる、この實際問題を解決するという方向からこれを考えて見ますと、これにつきましては困窮者無差別待遇という強い原則が只今は行われておるのであります。いろいろの點から引揚者を見ますと、確かに内地の戰災者以下の氣の毒な状況にある人が壓倒的に多いのでありまするが、その困窮の事情、發生事情の如何を問わず、無差別に現存の救濟方法を以てこれを救うということが行われておりまする最も強い原則の一つであります。そこで事務當局として堅持しておりまする考え方は、この中國や滿洲、朝鮮その他各地で發生しました同胞救濟事件及び在外公館の借上金というものは性質上同じだらうと考えておりまするが、これはそれを提供した、それを貸付けて呉れた人々が引揚後困窮しておるから、だからこれは返すべきだという筋でこの問題に取組むのではなくて、勿論關係しておられる引揚者が困窮しておるということは、この問題解決を一日も忽せにすることはできないという大きな事情の下にはありまするが、性質上これは國家が當然盡すべかりし行政費の支出に該當する、この點は事務當局として強く主張し、將來この問題が解決し得る時期には必ずこの線で解決しようと決意しておるところであります。  先程岡元さんから、御質問になりましたこの問題は解決できそうかどうかという點につきまして御説明申上げますと、事務當局としては引揚者が實際内地在住者に比べていろいろの點で困つておるという點は十分承知いたしておりまするので、決してこの問題の困難性を厭わずに、できることなら一日も早く解決に向いたいと考えておるのであります。ただ先程觸れました通り、在外資産凍結の指令、この指令の關係におきましてこの問題が解決されるときまでは、徳義上甚だ重大な問題であり、性質上も政府の行政費と目されるものではありまするが、今直ちに解決し難いのではないかと見通しております。  以上を以ちまして大體の御説明といたします。

北條秀一緑風会

○北條秀一君 只今小島説明員から、在外資産の問題は、形式的には且つ原則的には、外地も内地も同様に扱われておるというお話であつたようでありまするが、これは私としては承服し得ないところであります。政府がそうした考えを持つておるとしますならば、それは非常に大きな過ちであることを確認しなければならんと思うのであります。といいますのは、一つの例をとりますと、國策の線に副つて家を賣り、土地を賣り、村を擧げて外地に移住しました例の開拓民をとつて見ますと、彼らは父祖傳來の一切の財産を持つて外地に移りましたので、國内には何も殘つておりませんです、従つて歸りましたときに、それこそ本當に無一物であります。これは最も極端なといいますか、極端な事例でありますするが、あとは逐次これに準じておるのでありまして、從つて内地に財産を殘しておつたというふうな者は極めて一小部分でありまして、外地におります者は、殊に朝鮮、樺太、滿洲、北支、中支、臺灣に、二代、或いは三代の世代をかけて外地におりましたので、全く内地には財産を殘していないというのが實情であります。從つて先程の、形式的には同一に取扱われておるというお考えは改めなければならないと、私は考えるのであります。  それから困窮者無差別待遇の原則は極めて當然のことでありまするが、ここで我々が考えなくちやならないのは、外地から歸りました復員者、引揚者というものと、内地における人たちの比較をして見ることであります。即ち困窮者無差別待遇の件は、これは敗戰直後、國家が社會政策として、敗戰後の國民生活を安定させるという原則に基いて、こうした無差別待遇の處置をして來たのでありますが、我々の言うのは、その前に新らしく國家が出發する基礎條件として、戰爭犠牲の公平なる負擔を圖ろう、圖るというのが當然であるということでありますが、從つて外地から歸りました者が、生活困窮なるが故にこれは援護の手を差し伸べられるということは、極めて結構な社會政策でありますけれども、先程私は最初に説明しましたときに申しましたように、外地から歸つて來た者は、できるだけ國家の力を借りずに、自分の能力において更生して行こうという強い意志、行動力を持つておるのでありますが、それらの人間が日本におきまして新生日本人として平等に取扱つて欲しいというのが根本であります。從つて困窮者無差別待遇の原則といいますのは、その前提絛例を滿して後の問題であります。その點を政府においても、事務當局においても、十分に認識して頂きたいということを私は重ねて希望するのであります。

岡元義人緑風会

○委員外議員(岡元義人君) 只今北條委員の御説は全く同感であります。もう一つ無形ではありますが、この引揚者には、どんな日本人も體驗しなかつた屈辱、これが今の北條委員のお話の上に私はもう一つ附いているのではないかと考えております。  尚もう一つ外務省の方にお尋ね申上げたいことは、今の御説明で大體今後の見通しというものについては、分りましたのでございますが、それでは只今まで引揚げて參りました者たちが、いろいろな方法で以て、これの證據書類ともなるような物をば、或いは海外における地方の民團とか、領事館とか、そういう所に預け放しにして歸つて來た、又海運局が上陸港においてこれを保管いたしまして、千差萬別なんでありますが、これらに對して完全にその後の保管その他が行き届いておりますか、一應お尋ねしてみたいと思うのであります。

小島太作外務事務官(管理局在外邦人課長)

○説明員(小島太作君) 同胞救濟資金についての證據書類でありますが、これは現行の法令で行きますと、海運局で保管することになつております。ただ滿洲關係の分は、各自携行を認められなかつたために、その他の預貯金の通帳類等と共に、現地の日本人會が一括これを取り纏めまして、中國側の檢閲を經てしばしば内地へ送還されております。これは部數が甚だ多數に上りますので、只今政府側といたしましては、大藏省、厚生省、外務省、遞信省、この四省が共同いたしまして、只今の救濟金の證書類その他の預貯金通帳類等を、法令に從いまして、政府に保管すべきものは保管する處置を、引揚者の方に速かにお屆けすべきものは、これを轉送するという方法に進んでおります。從いまして、一括現地から送り屆けられました證書類は、これは海運局ではなくて、現實にはこの四省共管の事業といたしまして、そこで保管することになるわけであります。以上を以てお答えいたします。

岡元義人緑風会

○委員外議員(岡元義人君) 今の御説明で大體分つたのてありますが、地方の各引揚者は殆どこの問題につきまして分つておりませんので、政府はこれに對して、何らか發表して頂くというような方法が講じて頂けないものですか。

小島太作外務事務官(管理局在外邦人課長)

○説明員(小島太作君) 只今の御質問は、引揚者が自ら上陸港において、政府側機關にそのような證書類を保管した方々以外の、先ほど申しましましたような、滿洲から一括して送られた證書類はどうなるのだろうという點についての御質問だと了解いたしますが、こういうものにつきましては、只今の四省共管の引揚者所有有價證券類の處理に關する事業が近々發足いたしますが、その取扱振りにつきましては、ラジオは引揚者の時間等を通じ、その他いろいろな方法を講じまして、引揚者の方々に徹底するようにいたしたいと思つております。

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) ちょつとお諮りいたします。淺岡君は小委員外の委員でいらつしやいますが、發言を許してよろしうございますか。   〔「異議なし」呼ぶ者あり〕

淺岡信夫日本自由党

○委員外議員(淺岡信夫君) お許しを得まして發言させて頂きましたことを感謝いたします。實は説明員の説明を伺つておりまして甚だ滿足な點もあり、又我々の知らなかつた點について蒙を啓かれたという點もありますが、ただ一點お伺いいたしたいと思います。  この在外資産の凍結令、大體この凍結令が出たから何も彼も如何ともならないのだというような説明のように私は了しておるのでありますが、それでよろしうございますか。ちょつとお尋ねいたしたいと思います。

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) ちょつと速記を止めて下さい。   〔速記中止〕

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) それでは速記を始めて…。

岡元義人緑風会

○委員外議員(岡元義人君) 外務省の關係で以て、法人の在外資産をば將來賠償額に中に入れておく必要がないかという問題が起きまして、邦人の中には、我々は負けて歸るのではあるが、少しでもお國のためになればいい、こういうような考え方から、自分たちの財産をばできるだけ將來の賠償に取つて頂くということをば念願いたしまして、多數の人がこの手續をとつたわけであります。併しながらこの手續について中國側の調査その他に要しましたところの經費は、實に厖大なものでございまして、この經費をば一般邦人が自腹を切つて捻出して、そうして賠償の方へ繰入れて頂きたいという手續をば取つて歸つて來たのであります。これらに對しましては、敗戰の直後でございますし、いわゆる矛盾した萬止むを得なかつた處置であるとは思いますけれども、外務省ではそういう事實をばどの程度まで御存じであるかということをば質してみたいと思います。今後外地におきまして賠償手續を取られた財産というものは、すべて講和條約後におきまして賠償の中に確實に入れられるものであるかどうかということをお伺いしたいと思います。

小島太作外務事務官(管理局在外邦人課長)

○説明員(小島太作君) 只今岡元さんから御質問になりました邦人が所有しておりました在外の諸施設の賠償に關聯しまして、これを調査するのに自辨で貢献したという問題は實は初めて承わりました。賠償の問題がどう決められるかという點は、これは私の卑見でありまして、而も推測に過ぎませんが、まだはつきりと申上げられませんというのが實情だと思います。在外資産が一切賠償に充當されるのが、そのうちで個人資産は相當程度まで尊重されるのか、これは講和條約によつて決められることだと見ております。

岡元義人緑風会

○委員外議員(岡元義人君) 私が質問を申上げましたのは、この賠償問題につきましては、特に全般的な問題でなくて、中國に關する問題として取上げて頂きたいのでありますが、中國政府との間で打合せができて、中國側のいわゆる調査を受けたものであります。だから當然今からどうこうというわけではなくて、對中國に關する一つの協定の下に、賠償物に將來これは取るという中國側の囘答の下に、中國側と兩方で査定されまして、そうして中國政府において、一つのレートを決められて、これを金額をば記入され、これが外務省に必ず來ておる筈であります。この問題について質しておるのであります。

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) それでは外務省の鈴木經濟課長から發言を求めておられますが、許可してよろしうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) それでは鈴木經濟課長。

鈴木政勝外務事務官(管理局在外經濟課長)

○説明員(鈴木政勝君) 只今の岡元さんの御質問に對してお答えをいたしたいと存じます。  終戰時におきまして、中國におきまして在留邦人がその持つておりました財産につきまして、中國側にできるだけ日本が有利になるようなお氣持を以ちまして接収を受けて、その具體的な評價に關する書類も整備されてお歸りになる、こういつたような非常な御努力をいたされましたことにつきましては、私共よく承知いたしておるわけであります。只今私共政府の内部におきましては、日本の在外財産の全體を調査をいたしておるような状況になつております。それでもできる限り、その在外財産というものが、日本に有利に解決されるようにという根本の氣持を以て調査をいたしておるのでありますが、終戰時中國におられました在留邦人の方々が、非常な努力をしてそういう措置をとつて歸られました文書その他が、非常な有意議な資料になつておると、私はここに明らかに申上げまして、それらの方々の現地におきまする御苦勞、御努力に對しまして非常な感謝をいたしておるようなわけであります。

岡元義人緑風会

○委員外議員(岡元義人君) 只今の説明でまだ納得できないのでありますが、この問題は外務省と出先中國正式政府、その前に日本は中央政權、いわゆる重慶政權をば我々の相手として、日本の相手として認めておるのだという發表がありましてから、中國政府との間に協定ができて、そうして中國政府側が日本の出先外務省の方々と一緒になつて検査をされ、そうしてあらゆる多くの事務員を通じて事務處理をばなされまして、相當の日數を經まして、そうしてレー卜まで決めて、これは幾ら幾らだというくらいに決められた、その實際の額面というものは、單に日本側だけではなくて、中國側も承認したその額面が、外務省の方に保管してある筈である。外務省の方に移管して呉れたということを承つておるのでありますが、これらは今後の賠償の中に、完全に繰入れて行くかどうかということをば、お伺いいたしておるのであります。

鈴木政勝外務事務官(管理局在外經濟課長)

○説明員(鈴木政勝君) 只今の點につきましてお答え申上げます。只今御質問になりました日本の在外財産というものが、將來賠償の對象と一體なるかどうかという點は、これは一に聯合國側の方針によるものでありまして、只今のところ明確に日本の在外財産というものが、企業財産、政府財産、個人財産を問わず、或いはその一部分が賠償の對象になるというようなことは、まだはつきりと決つていないように私共承知いたしておるのでありまして、日本側といたしましては、これがどういう形で、或いは賠償になるか、或いは賠償以外で處理されるかということは、これは非常な大きな關心を持つておらなければならない點でありまするが、實情は只今のところ未だそういつたものは決定されておるものはない。又これは日本側が決められるべきものかどうか。勿論一方的に決められるべきものでない、こういうふうにお答えいたすより外ないと存じます。

岡元義人緑風会

○委員外議員(岡元義人君) 度々誠に恐れ入りますが、それでは只今の御説明によりますと、一應中國側と兩方で協定した承認の證書ではあるが、これは一應無效であるというぐらいに解釋してよろしうございますか。

鈴木政勝外務事務官(管理局在外經濟課長)

○説明員(鈴木政勝君) 只今の現地で調べましたそういうものは、無效であるかという點でありますが、私は將來日本の在外財産というものが、聯合國側において、或る方針を以て建てられるという場合に、必ずこれは有效な一つの資料として役に立つのではないかというふうに、お答え申上げて一向差支えないと存じます。

島清日本社会党

○島清君 只今は從來からの外地でやり、而してその外地の在外財産についてその御説明を承つたのでありまするが、從来は内地であつた北緯三十度以南の、今は日本政府の行政權の及んでない所の琉球列島の諸地域の預貯金、竝びにその財産の處置について御説明願いたい。  それから又何らかの關係方向の御指令によつて處置をしておられますならば、その指令の概要、竝びに預貯金以外の財産の處置の状況等について御説明を煩わしたいと思います。

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) ちよつと速記を止めて……。   〔速記中止〕

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) それじや速記を始めて下さい。

北條秀一緑風会

○北條秀一君 先程島委員から御質問されました點については、更に政府におきまして、十分に説明資料を作られて、次囘において明確にこれを報告して頂く、こういうことにした方が有效であると考えます。  もう一つ外務省の方で次の委員會において明確にして頂きたいと考えますことは、先程救濟金及び在外公館に對する貸付金というものは、政府行政費として確認しておるのだという話でありまするが、單にこれは外務省だけの態度であつては困るのでありまして、政府全體として、行政費としてこれを確認しなければならんと考えるのであります。從つて次囘の委員會におきまして、その點を一歩進めて政府としての方針を明確にするようにして頂きたいと思います。  それから本日特に外務省の方では、本日の陳情、請願の趣旨に對して準備をされたと考えておるのでありますが、時間がありませんから、本日はこれで以て委員會を閉じて頂いたらどうか、こういうふうに考えます。

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) それでは、この問題は、滿洲からの陳情ではありますが、全體に非常に大きな影響のあるものでございますから、この上の御審議は次囘に廻すことにいたしまして、今日は委員會をこれで閉じたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

穗積眞六郎緑風会

○委員長(穗積眞六郎君) それでは散會いたします。    午前十一時五十二分散會  出席者は左の通り。    委員長     穗積眞六郎君    委員            天田 勝正君            島   清君            小杉 繁安君            藤野 繁雄君            北條 秀一君   委員外議員            岡元 義人君            宇都宮 登君            淺岡 信夫君   説明員    外務事務官(管    理局經濟課長) 鈴木 政勝君    外務事務官(管    理局在外邦人課    長)      小島 大作君

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