労働委員会 第5号
- 発言数
- 47 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1947/08/02
会議録
○加藤委員長 前會に引續き開會いたします。 質疑の繼續をいたします。菊川忠雄君。
○菊川委員 私は勞働省の運營について根本的な問題とか、あるいはまた當面重要な問題が二、三まだ明瞭でないような點が感ぜられますので、今までと重複を避けながら質問をしてみたいと思います。 まずこの法案における勞働省が設立された場合における勞働行政の一元化との關係であります。はたしてこの程度の勞働省で勞働行政が一元化されるかどうか。また、されるとすればどういうふうな方針でおやりになるか。こういう點をお伺いしてみたいと思う。この法案の最後の理由書きを見ますと、勞働に關する行政機構を整備するために新たに勞働省を設置する必要がある、こういうふうに説明をしておられるのであります。勞働行政機構の整備であつて、勞働行政機構の一元化というふうには書いておられないのであります。今日われわれが多年の要望でありましたところの勞働省の設置ということについて心強く思つておりますのは、勞働省という形の獨立省ができるということではなくて、その中に盛り込まれるところの勞働行政の一元化という點に期待をもつわけなのであります。ところが、今日のこの法案における勞働省の内容を見ますと、從來の厚生省で、あるいは局、あるいは課といつて存在しておつたものをいくぶん移管して、そうして勞働省をつくり上げるというふうなことでありまして、早くいえば、厚生省の新らしい分家ができたいというような感じしか受けないのであります。しかるに一面においては、從來の現業官省などにおきましては、そのままその官省の勞働行政が残されているのであります。先日の米窪國務大臣の御説明によりますれば、船員の場合においては、いろいろの特殊事情からして、そのままおかれるということでありますけれども、これは船員の場合に限らず、現にまた運輸省、鐵道總局の中には職員局があり、その中においてもそれぞれの課がおかれて、そうしてほとんど獨立したところの勞働行政をやつているかの觀があるのであります。また商工省におきましても、商工省の總務局勞働部、あるいはまた石炭廳におけるところの生産局勞務課、それぞれそういう仕事をやつている。こういうものを見ますと、はたしてそれをそのまま置いておいて、そうして勞働省ができて、勞働行政の一元化が可能であるかどうか。それを私は疑問をもつのであります。この點についての御見解をひとつお尋ねしてみたいと思う。今日いろいろの事情から急速に、そういうものの機構的な統一ができないとする場合においては、はたしてそれでは現在のまま寛質的に勞働行政機構を一元化していくところの方法があるかどうか、こういうことにつきましての御方針をお伺いしてみたい。まずその點をお尋ねいたします。
○米窪國務大臣 ただいまの御質問まことにごもつともだと思うのですが、勞働行政の一元化ということは、理想としては質問者と同様に、われわれもこれを望んでおるのでありますが、現下の日本の行政全般から見ますると、勞働省ができるからただちに、いわゆる勞働と称し得るものはほとんど全部勞働省の傘下に集めるということは、思いきつてやればかえつてその方がよいのでないかというお考えもありましようか、豫算等の關係も困難である。たとえば先ほど、運輸省あるいは遞信省等において、いわゆる現業廳において、職員局その他勞働問題を取扱うところがあるのでないかというように御指摘になつたのでありますが、御承知のごとく今日こういつた官廳は豫算の面から見ますると、獨立採算制をとつておるので、すなわち特別會計をもつておるという關係から、一般會計によつてその豫算をきめる他の省との點において、若干その行政の扱い方が違つてくるのであります。こういうことから考えると、將來純豫算の面から、とうてい獨立採算制がとれずに、一般會計ということにあるいはなるかもしれないという場合においては、從つてそこでやつておる勞働行政もせつかく勞働省ができたから、その方へ全面的に移管する、すなわち鑛山はかつては特殊ということを條件として、別の勞働行政をしたのであるが、今度の勞働省設置については、鑛山勞働も原則としてこれと一緒になるということから考えると、いわゆる現業廳と称するところの所管に属しておる勞働行政も、その形式も實質もあげて勞働省に移管されることが、必ずしも私はそう遠い將來ではないというふうに思うのでありまして、要は勞働省がいかなる運用をしていくかということにかかつておるのと、そうして今日の客觀的情勢がすべてを勞働省に移し得るというところが困難であるという情勢、この二つから見て、ともかくも今日この勞働省ができ上るときにおいては、この法案に盛られた範圍においてやつていきたい、それについては船員の問題にせよ、あるいは婦人の問題にせよ、あるいは保健の問題にせよ、これらの關係各省の間には、緊密なる連絡協議會をつくつて、勞働省がそのイニシアチブをとつていきたい。こういうぐあいに考えております。
○菊川委員 ただいまの點についてお伺いしますが、たとえば勞働省が獨立の省になるというのは、いうまでもなく近代的な工業國家における傾向であります。ちようど文教のために文部省がある、あるいは財政金融のために大蔵省がある。これらは現業官省の縦の關係に對して、横の面から強い糸を織り込む。そうして國家國民の經濟生活を強化する、こういつた意味のものだろうと思います。でありますから行政機構を今後改革するにあたつては、そういう見地から勞働の横の線を強く織り込むという點に主眼があると思う。そういうふうな點から考えますと、ただいまのお話の中の、たとえば現業官廳で獨立採算制その他の事情で、厖大なるところの勞働行政の機構を一部温存しておる、こういうことでありますが、私はこれはむしろ今までのゆきがかりであつて、今後はこういう方針こそ變えなければならないのではないかと考えます。この點について重ねてお尋ねをしてみたい。それは、今まではそういう現業官廳においては、自由な勞働組合というものが認められない。でありまするからその現業官廳は、實員は從業に對しては使用者の代表であります。その使用者の代表として、たとえば民間會社におけるところの勞務課のごとき、あるいは勤勞課のごとき、そういうものがありまして、それが人事あるいは勞務管理をやるということは、これは當然必要なことだと思います。しかしながらその官省が、役所であるがゆえに勞務管理と合わして勞働行政の一部をもつておるというふうなところに、今までの官營におけるところの勞働行政の特徴があつたと思うのであります。このことは言いかえれば、使用主でありながら從業員に對しては對等の立場にあらずして、場合によれば行政官廳として臨む、こういつたところの官僚主義、ある封建的な勞務行政がそこに温存されておると思うのであります。でありますから從來よく國鐵などにおけるところの國鐵大家族主義とか、あるいは遞信におけるところのそういう思想というものが、こういう封建的、官僚的な勞務管理の一つの典型的なものだと思うのであります。でありますからわれわれは勞働省ができるこの機會にこそ、そういうそれぞれの官廳におけるところの勞務管理と勞働行政というものは截然と區別をする。從業員とその使用者の代表であるところの現業官廳の大臣は、それぞれ使用者、被使用者の關係において對等に折衝してよろしい。國家はそういうものに對しては、勞働の面から勞働省を通じて勞働行政を行い、監督指導を行うのでなければ、日本におけるところのいわゆる民主的な勞務關係というものは發展をしないと思う。私はそういう點から考えまして、どうしてもこの際に勞働行政の一元化ということをやるべきである、お話のごとく機構上ただちにできなければ、そういう方針だけはここに明示して進まれる必要があるのではないかと思うのでありますが、この點につきましての御所見をお伺いしたいと思います。
○米窪國務大臣 この點は菊川さんの御意見の通りと解釋しておるので、たとえば遞信省なりあるいは運輸省のやつておられる該當局は、いわゆる勞働の問題を扱うておるところは、あくまでも會社におけるそういつた勞務管理と同性質のものであつて、決して私は勞働行政を特に勞働省とわかれて別にやつておるとは思つておりません、たとえば勞働組合法、勞働基準法、勞働關係調整法というものはあくまでも勞働省が主管すべきものであつて、ことこういう勞働法規に關する限りは、一一勞働省の指示を受け、あるいは監督を受けてこれらの現業廳がやつておるのであつて、あくまでもそれは勞務管理のいわゆる使用者側の立場に立つものと解釋しております。たとえばかりに例を引くと、運輸省の職員局の内容については私よく辨えてはおりませんが、おそらくそれよりも一歩も出ていないものだ、こういうぐあいに考えております。また今後の勞働省の方針もその方針に基いて各省との關係はやつていきたいと考えております。
○菊川委員 現在いかにあるかという點につきましては、米窪國務大臣と私とはいささか實情においての認識が違う點があろうと思います。この點は議論になりますから申し上げませんが、ただ現在お調べになれば、それぞれの課は從來勞働省がなかつたために、必要やむを得ず自然發生的にそういう勞働行政の面を多分に取入れておることは事實であります。たとえばただいまお話の鐵道總局の職員局の内容を見ましても、その下には勞務、勤勞、教育、調査というような課かあるのであります。むろんこの點においては厚生省の該當局竝びに課以上の陣容をもつておるのであります。こういう勞働行政のみならず、行政機構全般を簡素化するといつたようなことの必要な今日において、相當これを檢討されれば、當然これは勞働省の設置によつて簡素化し得る部分があると私は見ておるのであります。殊に教育、調査といつたようなものにつきましては、必ずしもその企業の經營上勞務官理の必要上のみからやつておる點ではないのでありまして、むしろこれは勞働組合が今日自由な勞働組合としてある以上は、そこに任して初めてやれる。必ずしも國家が國費によつてやる、あるいは官營事業の經費の一部を割いてやる必要がないものであるという點があると思うのであります。ただし國務大臣の御所見が、現在はしばらくおいても、そういうものではない、從つて將來は私どもの考えておるようにおやりにるというお話のように伺いますので、この點は私了承いたします。 次に現在のままで勞働行政の機構が分散をしておりますと、たとえばわれわれ民間において勞働組合運動をやり、あるいはまた民間の經營者から見ますと、中央においても地方においても、いろいろと煩瑣な手續その他の問題が起つてくる。たとえば今日まで、かりに鑛山の面から見ますと、厚生省に鑛山課がある。おそらく今まで民間において厚生省に鑛山課があつて、そこで鑛山の勞務行政をやつておるということを認識しておる者はあまりなかつたろうと思います。ほとんどわれわれ初め、すべての者は、炭鑛の場合でありますれば、石炭廳の生産局の勞務課にあると考おておる。こうした形であつたのであります。その場合にはよかれ悪しかれ、窓口は一本と考えておつたのであります。今度は勞働省の鑛山課が相當に擴充をされて仕事をされる。そうした場合に石炭廳の生産局勞務課というものとどういう關係があるか。たとえば簡單なことでありますけれども、今後いろいろな調査などをなさると思いますが、そういう場合に同じような事項についての調査を二度も三度も重ねてとらえるとか、あるいはそれも同じものをつくるならば結構でありますが、その調査の現在が一月でも變れば、また別の調査をやらなければならない。こういうことが一事から萬事相當出てくると思います。かえつて勞働行政が多岐にわたり煩瑣にわたるというようなことがありはしないかと思うのであります。こういう場合におけるところの實情に即した運營の御方針をお伺いしたいのであります。同じことは特に地方の勞働行政にはますますあろうと思うのであります。たとえばあえて官廳のセクシヨナリズムとまでは申しませんけれども、地方においては從來とも多くの事柄について、勞働行政についてはその所属が不明で迷うておる點が多いのであります。一つの例として今後考えられますことは、從來大きな縣においては、勞働部あるいは勞務課といつたようなものがありました。それが地方の勞働行姓の全般をやつておるのであります。殊に勞働委員會などは、勞働部のもとにおいて平素から、相當の勞働實態の把握のために調査活動しております。ところが今度地方基準局ができますと、これは中央の勞働省の直轄としておやりになると思いますが、おのずからそこに似たり寄つたりの仕事をする二つのものが地方において起つてくる。こういうことがあると思うのであります。おそらくこういう形がほかにもたくさん出てくるのではないかと思うのであります。何分にも上の方がいくつにもわかれておる上に、さらに地方が從來ともそのままになつておるところに、また新しくこういうものがはいるのでありますから、これは複雑多岐、おそらくわれわれとしては簡素化の代りに、かえつて煩雑化といつたような結果を生むことを恐れるのであります。こういう點につきまして中央ならびに地方において、いかなる方法で勞働省設置に伴うところの勞働行政の簡素化、あるいは能率化の實をおあげになるのか、その點をお伺いいたしたいと思います。
○米窪國務大臣 お尋ねの點は、大分事務に關係のある專門的な問題になつてきましたから、その點については勞政局長及び勞働基準局長からお答えいたさせます。
○吉武政府委員 菊川さんの御質問はごもつともの點があると思いますが、實は御承知のように鑛山勞働につきましては、昔社會局ができました當時、本省における權限はすでに社會局長官の方に移讓されましてそれがずつと厚生省に、今度勞働省ができましても依然として續くのであります。それから地方における出先の鑛山勞働につきましては、御承知のように地方に昔鑛山局というものがありまして、その後商工局というようなものができまして、いわゆる商工省の出先機關がこれを行つていた。そこに若干混淆がございまして、出先は商工省の出先機關がやり、中央はいわゆる厚生省の方がやるというところに若干手違いができておつたのであります。この問題は多年懸案になつておりましたが、先般基準法が通過いたしました際に、これをすべて一元化いたしまして、中央も厚生省になり、地方も府縣行政機關ということに相なりまして、勞働省ができますれば、もちろん中央では勞働省がこれを行い、地方は地方の基準局がこれを行うということに一元化されておるのであります。ただ御指摘のように、現代地方商工省の石炭廳にも勞務課というものがございます。そこに御指摘のような問題が若干殘るのでありますが、これは勞働行政をやつておるのではないのでありまして、いわゆる商工省の企業的な立場から、いろんな勞働に關する調査等をやられておるのであろうと思います。これをつぶしたらいいかどうかということについては意見のあるところだと思いますが、勞働行政部面につきましては一元化されておるので、御了承願いたいと思います。 次に地方の行政機構につきまして御指摘の點は、その通りでございます。これはちよつと御説明申し上げまするが、地方の勞働行政機構といたしましては、從前大府縣には勞働部というものがございました。中府縣以下は勞政課というものがございまして、そこで勞働行政を一元的にやつておつたのでありますが、基準法ができました際に、工場監督、勞働監督はやはり府縣が獨立いたしますると、府縣區々にその取扱いが行われましては非常に困る問題がございますので、やはり勞働監督は國家の一元的な管轄下におかるべきであり、これは御承知のように國際勞働會議におきましても、勞働監督機構は政府直轄の機構によつてこれをやることが望ましいという勧告案も採擇されておるような事情もございまして、關係方面の意向をも容れまして、出先機關として府縣から獨立した基準監督局、勞働基準局、そうしてその下になお勞働監督署というものを設けまして、政府の責任において政府の一元的な監督機構にしたわけであります。しからば勞働の一切の權限をもそこに入れたらどうかという意見も、これは十分成り立つ意見ではありまするが、しかし府縣に殘しております勞働行政としては、これは勞働組合なり勞働關係の調整の仕事でございます。言いかえてみれば、勞働爭議をいかに豫防し、またいかに解決するかという仕事であるのであります。この仕事は全國的、すなわち各府縣にまたがる仕事につきましては、これは國家の直接責任に屬しまするけれども、一府縣内の勞資の爭い、勞働爭議はやはりこれは府縣知事の責任であり、府縣の問題であります。これを政府の直轄の機關でやるということは、やはりそこに趣旨からみますとあまり面白くないというところから、これは府縣に殘したのであります。そこで問題は、理論的に言えばそういうことになりますが、實際の問題になりますと、わかれて非常に不便だという御意見、これはごもつともでございます。これはいろいろ議論のあるところでありますが、なお今後の行政の運用の推移を見まして、もつと研究をしてみたいと考えます。
○菊川委員 いろいろと現状においてはやりにくいが、しかし將來勞働行政の一元化という方向を目指して運營をなすということに御方針があるように了解をいたします。そこで今日この運營において、勞働行政をなるべく一元的に簡素化するという方法として、私はひとつお考えを願つて、御所見を伺いたいと思います。それは改めて述べるまでもなく、たとえば諸外國の勞働行政の機構を見ましても、米英のごとき勞働省、または勞働奉仕省と申しますか、そういう獨立の省が事實勞働行政の統一、一元化をほぼ完成しておるような行き方もありますが、一方においてはソヴイエト、ロシヤのごとく、實は勞働省というものはもたないで、それぞれの農林、工業その他の各事業の中に勞働行政を、それぞれ表裏一體をなしておるものを織込んでやつておるような行政機構もあるわけであります。ただこの場合には、たとえばロシヤであれば、自主的な勞働者の組織があるところの全連邦の勞働組合協議會が事實は國家の勞働事務を引受けて、そうして事實勞働者の役割を勤めておる。こういうことで民間の組織によつて十分に能率をあげ得るという行き方もあるのであります。私はそういう點から考えまして、今日のごとき形においては、勞働省というものが一應頭を出したが、實質においては勞働行政が分散状態にあるというふうな場合においては、相當にこういう行き方についても参考にすべきじやないかと思うのであります。そこで今後勞働行政を、そういうふうな一元化する方針で運用されるといたしますならば、各關係官廳との連合機關も結構であります。たとえば船員勞働の連絡機關といつたようなものをおつくりになることも結構であり、必要と思います。しかしそれと同時に、現在各産業にはすでに單一的な産業別の勞働組合が畫然とできておるのであります。そうしてそれが相當の經験も積み、訓練も積んでまいつておるのでありますから、そういう勞働者の代表を同時に加えて、そうして勞働行政の簡素化と一元化の效率をあげると一元化の效率をあげるという方針はいかがなものであるか、こういう點についてお伺いいたしたい。あるいはまたさらに進めて、たとえば米國において一九三五年に制定されましたところのワグナー法によりできておるところのナシヨナル・レーバー・リレーシヨン・ボード、すなわち全國勞働關係局というような獨立の機關をおつくりになつて、勞働者の代表を選擧によつて擧げて、こういう勞働行政の一元化のような仕事をここでおやりになる、こういつたことも必要でないか。もちろん米國の場合においては仕事の内容は違いますが、こういう仕組もやつたらどうかと考えます。この點について御所見を伺いたいと思います。
○米窪國務大臣 菊川さん御指摘のごとく、勞働行政の運營については、各國がそれぞれの国情によつて違つておることは言葉の通り、ソヴイエト・ロシヤが全人口はいわゆる勞働者である、こういう建前から特に勞働省を設けず、勞働關係の仕事は工業、農業、文化等の各部門において、それぞれ適當に處理しておるという實情にあることもお言葉の通りであります。そこで新しく生れるわが國の勞働省としては、一應アメリカ及び英國の現在やつておるように、遅まきながら勞働省という専門省をつくつてやつていくつもりであるのでございますが、先ほどから御指摘のごとくまだまだ各省において若干の勞働行政を擔當しておる部門もあり、また將來それが一元化する傾向に進むことが望ましい實情にあることも、われわれは認めておるのでございまして、從つてそういう意味合からもまた勞働省がいわゆるサービス省でなければならないという觀點からも、なるべく廣く民間側から、具體的に言うと顧問あるいは参與、専門委員等を簡抜して、民間の意見を聽くと同時に、勞働對策委員會とでもいうような委員會、また勞働者の教育に關する委員會、その他婦人問題に關する委員會、そういつた各種の委員會をつくつて、單にそれが委員會倒れにならず、實質的にその委員會と協力して、すなわち言いかえると、民間側と協力して、勞働省が獨立省としてやつていくことの足らざるところを民間側の協力によつてやつていきたい、こういうように考えております。
○菊川委員 運營上の問題はその程度にいたしまして、これは各局の關係の方にお尋ねをしたいと思いますが、一つは勞働統計の調査局であります。今日の勞働問題は、もはや感情でもなく、理論でもなく、事實上數字によつて、的確な統計に基いて、そうして合理的に解決するという以外にないと思うのであります。そういう點からして統計調査が特に重要であり、しかもこれは常に問題に先行して、あらかじめいつも用意されておらなければならぬと思うのであります。しかるに從來ややもすれば、官廳の調査統計などは月遅れに出るものが多いのでありまして、早いものでも二、三箇月後に出る。問題が過ぎた後に、颱風一過の後に數学的に説明する資料になるだけであります。問題を見透したり、問題を豫見したり、こういつたような調査統計というものはほとんどなかつたと思うのであります。もちろんこれは非常に困難なことではありましようけれども、どうしてもこれはやらなければ、他の統計とは違いまして、勞働問題の生きた統計とはならぬと思う。こういうために、どういうふうな御方針でおやりになるかということをお伺いいたしたのであります。特に今日の場合におきましては物價、生計費、それから生産指數、各業種におけるところの勞働雇傭に關するある程度の長期にわたる見透し、そういうものと相應じたところの勞働實禮の把握というふうなことが中心にならなければならぬと思います。こういう點についてどういうふうな御計畫があるか、こういう點をお尋ねいたしたいと思います。 それからもう一つは、職業安定局の關係になりますが、この事業項目を見ますと、その第一の中には、職業の紹介指導及び補導というようなことが書いてあります。しかしながらこれは一般的、抽象的なことで、もちろん異議はございませんが、今日の日本の情勢におきましては、むしろもつと具體的に、そうして必要な問題が一つあるのではないかと思います。今日の職業紹介の對象となるところの人々は復員者、あるいは海外引揚者、戰災による失職者、あるいは戰爭前あるいは戰爭中の企業整備による失職者、こういう特殊な事情からくる失業、失職者が多いのであります。從つて從來勞働の經驗をもたないところの人々、こういう人々が現在職業安定所では自分の適正の職業が得られないために、實は潜在的な失業者として、ややもすればいわゆるやみ屋商賣になつているといつたような點が多い。こういう人々に對して、いかに職業安定所が窓口を擴げておりましようとも、なかなか適正な職業紹介ということは不可能であろうと思うのであります。でありますからむしろ今日必要なことは、職業安定所でそういう人々に對しての再訓練、さらに再雇傭ということを、施設をもつてやるということが今日の急務であろうと思うのであります。また將來企業整備その他の問題を考えます場合には、どうしてもこれが必要性を増すのであります。こういう點について今日の職業安定所の仕事というものは、單なる抽象的な職業紹介、指導及び補導といつたようなことでは、はなはだもつて今日の時宜に適しないこういう感がするのであります。こういう面についての御方針があるか、この點のお尋ねを申し上げます。それからいま一つは、これは勞働基準局關係のことになると思いますが、働勞基準局の職務の第一には、賃金、勞働時間及び休息に關する事項を取扱うということになつております。ところがこの場合の賃金というのは、近く實施されるところの勞働基準法におけるところの基準賃金のこと。を指すのであるか。あるいは基準法によるところの問題のみを扱うのでなくて、基準局はさらに進んで賃金、勞働時間、その他の勞働條件一般についても扱うというのであるか。その點を一つお尋ねいたしたいのであります。もし後の一般的な賃金問題を扱うのであるという場合であるとしまするならば、基準局は今後日本の勞働賃金に關してはいかなる方針で臨まれるのか。ただ單に一般的な賃金を取扱うというのでは意味がないと思うのであります。いかなる方針でもつて賃金に對して臨まれるのか。この方針を一應お尋ねいたしたいのであります。以上の點を關係當局の方々からお答え願いたいと思います。
○米窪國務大臣 職業安定に關する點、それから勞働基準局に關係のある點は、それぞれの局長から御説明申し上げるとして、勞働統計について申し上げたいと思います。從來の統計は菊川さん御承知の通り、一般の勞働情勢については勞政局、それから賃金その他勞働時間等については基準局、職業の統計に付いては職業安定局と、各局にそれぞれの統計を取扱う局があつてやつておつたので、それの横との連絡が多少違憾の點があつたのでありますが、今回勞働省内に勞働統計調査局という一局を新たに設けまして、そこにおいて、各局における統計の集計、整備、調製、そういつたことを一元的にまとめて。今後の勞働運動に資する材料を一括して公表したい。こういう點にあるのであります。問題は御指摘のように、統計の発表が非常に遅れるということでありますが、これは統計という性質が相當の時日を要するので、勢い從來の統計がそういうことになつて、しかも勞働統計に關する仕事をする局が今までなかつた。これは内閣の統計局において、人口その他各種の一般の統計とも併せてやつておつた關係で、そういう御批判が出てくる餘地があつたと思うのでありまするが、今度は勞働省内に特別な統計に關する局が設けられて、そうして特に今申し上げた各局の統計をなるべく早く整備、調製、集計をしよう。こういう目的で立てられたので、菊川さんの御希望の御趣旨に副うようにしてまいりたい、こういうぐあいに考えておるのであります。その他の點は各關係當局からお答えさせることにいたします。
○上山政府委員 職業安定局關係の事柄でございますが、安定所におきますところの職業紹介、指導等が、單なるお座なりと申しますか、數字を合わすようなことでございますので、各人の適性に應じた紹介をしなければならぬということは、御指摘になりました意見と私たち全然同感であります。近く提出の運びになります職業安定法案等におきましても、そういう考え方を示しておるようなわけであります。ただこれには相當専門の人が要る。またある程度の指導等が要りまして、日本の現状からいたしまして、一足飛びに理想的な方向には向かないかと思いますが私たちとしては、一歩々々そういう方向に向けたいと存じております。それから職業の再訓練につきましても、御意見の點まつたく同感でありまして、ただいまも全國に四百箇所餘りの補導所があるのでありますが、それをなお數的にも擴充いたしますとともに、内容的には、ただいまの補導所に足りない點が非常に多いのでございまして、私どもといたしましては將來の日本の産業の発展をはかり、勞働事情の要請等を考えて、適當な職業種目について今までよりも、もつともつと適切な指導をしたい、かように考えております。
○江口政府委員 お答えいたします。勞働基準局で行いまする賃金に關する事項の内容はどういうものかというお話が出たのでありますが、主として勞働基準局におきましては、基準法に基きます賃金の問題、たとえば平均賃金とか、最低賃金とか、あるいは物給制の換算方法とか、あるいは日傭勞働者の賃金をどういうように換算するかという點を主としてやることになつております。從いましてこれらに關連いたしまして、賃金制度はどういうようになるか、あるいは諸外國の賃金制度はどうなつておるかという點まで觸れて研究、調査することになつております。具體的賃金になりますと、勞資双方の取きめにまつ。あるいは賃金問題はそれだけで片がつきませんので、いろいろの勞働の國策との關係などになつてまいりますと、これはもう經濟安定本部の問題であるということになるのでありまして、簡単に申しますと、勞働基準局における賃金に關する事項はきわめて事務的な、技術的な仕事である、かように考えております。
○菊川委員 賃金の問題についてさらにお尋ねいたしたいのでありますが、基準局では、今後一般的な賃金について許可あるいは統制といつたような意味のことはおやりにならないということは了承いたしました。しかしながら今日までのところにおいて賃金問題というものは、やはり國家の指導または監督なしには解決をみないというのは事實であります。そういうことは當然勞働省としておやりになる仕事だろうと私は考えるのであります。そういう場合において、今までは勞働賃金は大體において勞資双方の自主的な交渉によつて運びますけれども、しかし同時に國家においても、給與審議會を通じて基準をおきめになるというやり方をおやりになつたのであります。ところが遺憾ながらこの給與審議會の決定というものは非常に遅れております。むしろ事態は、インフレの進行と賃金の再是正というふうなところが重なりまして、そうして給與審議會が何らこれに對して策を施すことができない。こういつたことで、一般には期待をかけ得ないといつたような氣持も多いと思うのであります。そういうふうな状態において今後給與審議會をやはり使つて、今後の賃金というものをおきめになる御方針であるかどうか、この點をお尋ねするのであります。それから從來の御方針では、給與審議會で基準がきまれば、大體年二囘物價、生計費に應じて賃金の是正をするというふうな御方針であるかのごとくわれわれは解釋しておつたのでありますが、しかし最近に至りましては、こういう點についてもはなはだ曖昧なような状態にあるのであります。たとえば私の關係しておりますところの炭鑛の勞働方面におきましても、一應基本給は本年四月にきめました。しかしその後物價と生計費に應じて賃金を是正する、こういつたことが勞働双方の組織がはかどらないために延びて、これが多少石炭増産に影響をもつた點もあろうかと思われます。よすやく最近九月までは一種の是正方法をもつて解決をいたしましたけれども、しかしまたこのままで進めば、再び九月以後においては再是正を必要とするというふうな事態が起つてくるだろうと思うのであります。殊に今新物價が九百五十六錢八錢というふうなことで發表されておりますが、これも暫定的な新單價が十月にまた改訂されるという前に、當然この單價の基礎たるべきものの賃金をいかようにするかという問題が起つてくるのであります。こういうなことをそのままおきますれば、これはやはり賃金の安定を見るわけにいかない。こういう點から給與審議會の今後の運營の御方針、さらにこれに加えて物價と生計費に應ずるところの賃金の是正の御方針、こういう點につきましてお伺いをいたしたいと思います。
○米窪國務大臣 その點は經済がノーマルな時代においては、勞働基準法の規定に基いて、中央賃金委員會というものを設定して、そこで賃金をきめられるのでございますが、今日のようないわゆる經済状態が崩壊の一歩手前にあるという最大の困難なときに逢着しておる際においては、單に勞働基準局を中心として賃金をきめるというのには、問題があまりにも大きいのであります。そこで經済安定本部と協議の結果、いわゆる審議會によつて物價とにらみ合わせてきめていきたいというので、正式の給與審議會ではないのであるが、臨時の給與審議會にこれをかけたところが、御承知の通り勞働者側は責任を負えないということで、政府の一方的ないわゆる標準賃金をきめたというのが實情であるのであります。そこで今後はどうするかというお尋ねでございまするが、やはりこれは臨時の給與審議會を正式なものにしまして、總理大臣が委員長になり、經済安定本部の長官と私とが副會長になつて、今後正式の委員を任命してそこできめていきたいと思つておるのでございますが、この賃金を決定するのは、御承知の通り新しい價格を決定する各種のフアクターのうち、賃金が非常に重大なる分野を占めておる。大體賃金がコストの五割以下であれば、賃金と物價との關係が比較的樂にきまるのでありまするが、今日のように各業種別において五割以上、六割ないし七割という分野が生じておるときには、給與審議會で標準賃金をきめることは、勞働者側が滿足し得るようなものがなかなかきまらない現状にある。そこで急速にこの給與審議會の委員を正式に決定して、一應そこへかけてみまして、大體緊急經済對策のねらいは、やみの撲滅ということが前提であつて、このやみの撲滅が片づいて流通秩序が確保され、そうして物價が安定するならば、大體六箇月ぐらいはいじらないというのが方針でありますが、もしその計畫がいかない場合においては、當然物價の再改訂等も必要とされるであろうし、從つて標準賃金もまた動く可能性がある。こういうぐあいに考えておりまするが、一にそれは經済緊急對策がここ一箇月、あるいは二箇月ないし三箇月の間に效を奏するか否かというところにあると私は考えております。今日のように非常に經済が動揺して、インフレーシヨンの速度を止め得るか否かという重大問題にあるときには、これは單に勞働者だけの問題でなく、日本の各省の間に共通な、しかも重大な問題になつておるという點において、これは標準賃金なり、あるいは實質賃金の間隙をどうやつて止めるかということは、單に勞働者だけの問題ではないということを、ひとつ御了察を願いたいと思います。
○菊川委員 私この問題をお尋ねいたしますのは、實は今囘の政府におけるところの新物價體系と賃金との問題が、さしせまつていろいろと憂慮されるからであります。大體平均千八百圓というところの賃金の基準でありますが、もちろんこれは新物價體系におけるところの原價計算の要素としての賃金を、腰だめ的におきめになつたとわれわれは了解しておるのであります。しかしながらその基準において生活を維持していくためには、やはり配給生活の確保ということが前提條件になつておるわけであります。そこに當然今日見るがごとき物價高と、やみ買いによる生計費の膨張という赤字の部分が殖えておるのであります。これは相當期間にわたつてその時間的なずれが續くと思うのであります。われわれがそういうことを考えます場合に、現實に生産再開のために働く勞働者にとつては、赤字の生活であつては、いかに耐乏生活にたえてこの新物價體系を維持し、さらに流通秩序確立のために協力しようといつても、そこにはおのずから限度があると思うのであります。でありますから當然これが續きますれば、少くともそのずれに對する赤字の部分においての生活費の補填ということが、問題になると思うのであります。こういうことに對して今日は、事實上賃金はその物價體系を維持するためには、あの標準において一種の釘ずけ状態においてこれをやらなければならぬような事情にあることは了承いたします。けれどもその間における政策上の齟齬からくる犠牲を、勞働階級にそのまま負わしておるというわけにはまいらぬだろうと思います。これにはおのずから耐え得る限度があります。そこでこれに對して政府はどういうふうな對策をおもちになるか。今のお話ですと、場合によればまた物價の是正、從つてそれによる賃金の是正ということも考えられるというようなお言葉でありますけれども、私どもの見解をもつてすれば、さような將來また物價竝びに賃金の是正を行うというふうなお考えでもつて、あの新物價體系をお出しになつておるであろうとは私は考えないのであります。おそらくこれは、最初にして最後の危機突破の對策としておもちになつておるのであります。これが崩れる場合においては、おそらく二度目、三度目における是正においては、もはや防止し切れないところのインフレーシヨンの悪化ということを考えなければならぬと思うのであります。だから今のお言葉でありますが、われわれはあの物價體系をぜひとも官民協力して守らなければならぬ最後の一線である。そうすればこれを守るために起る政策のずれからくるところの犠牲というものについては、國家がおのずからこれに對して對處するところの方針なくしては、勞働階級の協力を求めることは不可能であるということは、ここに私は問題があると思うのであります。この點について、もちろんこれは一勞働省の所管の問題ではありませんけれども、當然勞働省が當面の省としてこれにあたらなければならぬものであるから、米窪國務大臣の御所見を伺つておきたいと思います。
○米窪國務大臣 先ほどの私の説明が、あるいは言葉が足らなかつたかもしれませんが、一應あの緊急經濟對策について、物價と賃金の悪循環を斷ち切るというところの方策は、六箇月間は新物價體系は堅持する。こういうことになつて、この六箇月と限つたというところに相當の政治的な含みがある。そういう意味で先ほど御説明を申し上げたわけであります。そこでその六箇月以内において、昭和九年、十年の物價水準を基礎として、これの六十五倍というセーフティー、バンドを嵌めたというあのいわゆる新物價體系が、もしもそれで所期のごとくに物價が安定しないという場合においては、ここで額を申し上げられませんが、相當の國家補償するという最後の覺悟を、これはいわゆる物價體系で、賃金の意味じやないのですが、物價の六箇月間釘付というその期間内において、もしも豫定のごとく物價の安定ができないならば、政府はこれに對して若干の補償金を出す。ただしそれはそれによつてたとえば借金を返えすとか、資材を買入れるとかいうことにのみそういうものを使つては、賃金の角度からいうとはなはだ困るということも相當政治的に考えて、そうしてそういう考慮に到達したということをお答えしたい。
○菊川委員 今のお話でありますが、そういうふうな補償を將來しなければならぬという場合において、それはたとえば金によつてなさる御方針であるか、それとも物質によつてなさるつもりであるか。私はその点がきわめて重要であると思いますから、重ねてお尋ね申し上げておきます。
○米窪國務大臣 國家補償の意味は、大體において補給金でやりたい、こういうふうに一應考えております。
○菊川委員 最後にいま一つ、勞働者の災害補償の問題でありますが、災害補償が勞働省所管になりましたことはまことにわれわれ結構なことと思います。ところがこの災害補償の場合を見ると、たとえばきわめて安全率の高い地上勞働における場合と、炭鑛あるいは鑛山などにおけるところの地下、しかも坑内勞働における場合と、これが一律の傷害事故として扱われておるのであります。私が改めて言うまでもなく、地上勞働と地下勞働では災害の率の違うことはひどいのでありまして、たとえばここに昭和十七年度の統計を見ましても、地上勞働の場合においては死亡率は千人について〇・二二となつておりますけれども、炭鑛業の場合においては千人について三・八というふうな大きな開きがあるのであります。これを傷害全體から見ますならば、地上においては千人について三八・七六人であります。炭鑛においては千人について二二一人というふうに二割以上が傷害をする。こういうふうな状態となつておるのであります。もちろん炭鑛の場合においては坑内、坑外通じての話で、主として災害の起るところの坑内のみをとつて見れば、おそらくこれの五、六割増の率になるだろうと思う。これは地上勞働でいえば、ちようど八幡製鐵所の熔鑛爐などの作業における一番危險な伸鐵作業に匹敵するところの災害でございます。こういうふうな作業を一律に災害の對象として見るということで、はたして勞働者災害補償の目的か達せられるかどうか、これは疑問なきを得ないのであります。極端なことを申しますれば、商店の業務に從事するところの人と坑内における作業、これが同一の危険に曝されておるという前提のもとに考えたところの災害補償ではないかというふうな氣がするのであります。こういう點から考えますと、現にわれわれが當面しますところの三千萬トン達成ということだけを考えましても、たとえば最近は終戰後統計が明瞭でないようでありますが、大體標準と思われるところの昭和十八年度をとつてみましても、一年について千人あたりの災害は、炭鑛においては死亡が四・八という数字になつておるのであります。また死傷全體から申しますれば二四九、こういう数字が出ておるのであります。でありますからこれを百とんあたりの災害率に直してみると、百萬トンを出すためには死亡が四十人、災害全體は二八四一人、こういう数字が出るのでありますから、三千萬トン出すといたしますれば、大體千人近くの坑夫が生命を失うことが前提になるのであります。また災害死傷というもの全般から見ますれば、約十萬人の人間が死傷をするということになるのであります。四十萬近くの坑夫の中で十萬人、これだけのものを一年間に死傷させなければ三千萬トンが達成できない。これが今日の炭鑛における事實であります。われわれがこういうことをこのままおいて考えます場合に、はたして今日の勞働者災害災償でもつて間に合うかどうか、これは私が多くを言うまでもないと思う。たとえば死亡の場合において千日分の遺族に對するところの扶助料であります。それも實収賃金の千日分ではないのでありまして、これを報酬日額として計算いたしますならば僅かなものであります。今日の物價高においては家族がはたして何年食えるか、疑問なきを得ないのであります。かようなことではたして三千萬トン達成ができるかどうか、また三千萬トンの問題はしばらくおきましても、人道上の問題として、こういう一律の扱いが許されるかどうか。私はその點に思いをいたしまして、炭鑛、鑛山その他の特に危險なる作業に從するところの勞働者に對しては、當然特殊な災害補償の方法をきめる必要があるのではないか、こう考えるのでありまして、そういう點につきましていかなる御見解か、これを最後にお尋ねいたします。
○米窪國務大臣 地下勞働というか、鑛山勞働が非常な危險な状態である。落磐その他の事故から……。殊に最近のごとく施設の補修ができないという状態において相當の災害事故が起るだろうということについては、菊川さんが詳しく統計で御質問された通りであると私も信じております。しからばそれに對してどうすかるということですがこれは勞働基準法の命ずるところによつて、すなわち勞働基準法の第七十五條から八十何條まで、それから勞働基準法の別表によるところの、別表第一身體障害等級及び災害補償表というようなものがスタンダードになると思うのですが、現在まで名前は變つておりませんが、現在の名前で言うと勞働者災害扶助責任保險法、勞働者災害補償保險法と名前が變るのですが、この關係においてどうなるかと言うと、結局は二重にカバーされるのでなしに、大體實際問題としては保險法によつて、いわゆる勞災保險によつてこれがカバーされるだらうと思う。そこで問題は事業主がこれを負擔することになるのでありますが、保險法の運營の建前上、地下勞働だけを特にその率をよくするという改正を今ただちにするということは種々の關係上なかなか困難であると思う。しかも地下勞働に從事している人は報酬が特に多い。從つてこの標準報酬がやはりそれに準じて高くなるのであるから、災害が起つたときに受ける各種の手當もいきおい他の業態、業種に關係している人よりもよけいもらえることになるのであります。しかし當局としては、それをもつて滿足するものでなくして、特に三千萬トンという石炭の政治的な重要性ともにらみ合わせまして、至急これは經營者側と協議をして――これは私の今の思いつきですが、あるいは保險法の命ずる手當等のほかに、特別な事故手當というようなもの經營者側から出してもらうように、急速に協議したい。こういうぐあいに考えております。
○菊川委員 ただいまの國務大臣のお話の中に、炭鑛勞働者は比較的他産業よりも給與が多いということであります。從來幾分はさような傾向がありましたが、しかし今日においてはほとんど他の地上における重要産業とさしたる開きがないのであります。さらにもう一つ併わせてお調ベて願いたいのは、炭鑛における、あるいは鑛山における賃金制度というものはきわめて複雑なもので、實際そういう場合の手當計算の基礎となるべきところの賃金標準、すなわち實収賃金でなくて標準日額ということになりますと、非常に少いことになつてしまうのであります。でありますから、かりに月三千圓とつておる者でありましても、これはいろいろな手當、家族手當その他を入れての話であります。當人の名目賃金が標準になつて報酬日額がきめられる場合になりますと、これはその六掛にも足りない現状であります。おそらく場合によりますと六掛を割つているところが多いのであります。こういう點につきましては、どうか錯覺をおもちにならないように愼重にお考えをお願いします。これをもつて私の質問を終ります。
○米窪國務大臣 これは錯覺をしておるわけではないので、基準法を施行すると同時に、從來のいわゆる標準賃金を實質賃金に切りかえるように法を適用したい、こういうぐあいになつておるので、やはりこれは意見の相違でありますが、地下勞働は他の勞働よりも標準日額が高くつく、こういうどあいに考えております。
○加藤委員長 小林運美君
○小林委員 非常に時間が少いので簡單に御質問申し上げますが、私は主として婦人の勞働問題について米窪國務大臣の御意見を伺いたいと思います。過去におきまして社會黨は、勞働問題につきまして非常な熱意をもちまして、勞働運動その他をやつてまいりました。今囘社會黨を主班とする内閣ができまして、勞働省が設置されることになりましたのは、われわれ勞働問題に關心をもつ者といたしまして、非常に結構なことだと思いますが、過去におきますそういう問題につきまして、社會黨において勞働運動の指導その他におきまして、われわれがちよつと異とするところは、これはあるいは言い過ぎかもしれませんが、勞働者がいろいろ政治的に關心をもつておるような、またそういう方面に使われやすい方面に非常に力がはいつておつたのではないか、こういうふうにわれわれは考えます。なぜかと申しますと、われわれは婦人の勞働に關しましてよく考えてみますと、勞働組合等の發達の經過を見ましても、現在の婦人の勞働組合のあり方を見ましても、そういつた方面について案外無關心でおるのでございまして、こういう點につきましては私は一つの事例をもつておるのであります。すなわち私が關係しております蠶絲の勞働組合を見て痛感いたしますことは、非常な低調にあるのであります。蠶絲の勞働者と申しますと、約七萬人ほど製絲工場を中心として勞務者がおりますが、これらは大部分未成年のか弱い婦女子でございまして、こういつたか弱い女の子たちがいろいろ勞働條件の改善等を心にもちながらも、これを發表する機會もなく、またこれを取上げていろいろ考えてくれる指導者も少ない。こういつた情勢にあるのでございます。こういう面におきまして詳細にここで具體的に例を申し上げる時間の餘裕もございませんが、この程度で御了解が得られることと思いますので、こういつた方面について今囘勞働省ができまして、米窪國務大臣におかれましては。多年勞働運動に携られまして經驗の深い方でありますが、われわれはしばしば國務大臣から御説を拜聽いたしますと、勞働省はサービスの省であるということを強調しておられます。か弱い女たちが黙々として働いている、しかもそういつた要求等もあまりやつていない。こういう人々にこそ、國務大臣が言われるサービスの重點をおいて政策を實行されるのが當然ではないかと思うのでありますが、この勞働省設置の法案を見ますと、婦人勞働局をつくりまして種々の項目が掲げられておりますけれども、こういつた局ができまして、そこにいろいろの政策が行われますが、そういつた根本の問題について、大臣がほんとうに腹をもつてやつていかれるかどうか。ここに書いた文字だけの上では、われわれ納得ができないのであります。そういう點につきまして國務大臣のお考えを一應お伺いしたいと思うのであります。
○米窪國務大臣 憲法において、男女の待遇に高低があつてはいけない、また社會的權利は同等である、こういつた基本的人權が認められて、しかも民主主義を確立する上において、婦人問題の解決がきわめて重要であるという客觀的の事實に考えましても、勞働省が新たに生れる上において、婦人に關する問題を取扱う局を新たに設けることは當然すぎるほどの問題でございます。ただこれについては、なぜ婦人局というものにしなかつたか、婦人というものをなぜ少年と併合したかということですが、將來においてはあるいは婦人局というものにする必要が起るかもしれませんが、現在においてはやはり弱い者と言うと語弊があるが、今までの觀念において弱い者とされておつた、それからその地位が低かつたと言うのも語弊があるのですが、そういう認識の不足であつたというものは、やはり婦人と少年というふうに勞働關係から見て思われるのです。ここにおいてそういう人たちを一括した局を置いて、將來は、あるいは場合によつては婦人局というものを特に獨立の局として、これで一般の問題も處理していきたい。これを要するに、勞働に關係のある婦人問題及び年少の人たちの問題はもちろんこの局で扱うばかりでなく、今日文部省あるいは厚生省等において取扱つておる婦人問題については、これと密接なる連絡協議をすると同時に、これらの省に屬せざるのは一切勞働省の婦人局が窓口になつて、そこでイニシアをとつてすべて處理していきたい、こういう抱負でありまして、私としてもこの婦人問題については特別な關心をもつておるということを御了承願いたいと思います。
○小林(運)委員 私お伺いした點は、最後の婦人少年局というようなことでもございますが、もつと國務大臣として、先ほど申し上げたように、か弱い婦女子の今後の勞働問題に對する大臣の積極的な御意見を承りたかつたのでございます。ただ大臣といたしまして大いに關心をもつておる、この程度でなしに、もつと具體的にこういつた問題につきましての――とにかく先ほど申し上げたように、ものを言わない、言いたくてもなかなか言い切れない、こういうような人たちに對する大臣の、もつと積極的な御意思をぜひ伺いたいと思うのであります。これは私がいくら言いましても、關心をもつておる、これだけではどうも承服しかねるのであります。これを押し問答を申し上げてもしかたないのでございますが、もう一遍大臣のなんらかのお心持を承りたいと思います。
○米窪國務大臣 關心をもつておるから、私どもとしてしは、たとえばイコール・レーバー・イコール・ペイ、こういうぐあいで、そういつた男女の間の差別があつてはいけないとい憲法の精神を、勞働省の勞働行政の運用の面を通じて、これを實現していく覺悟をもつておりもす。この點ははなはだ大言荘語のようにお聞きになるかもしれませんが、勞働省の活躍を通じて、この婦人問題については各省に範を示すつもりでおります、どうぞ御了解願いたいと思います。
○小林(運)委員 大臣が、憲法の男女の同權を身をもつて、またこの勞働省が率先して範を垂れると言われる重大な御發言に對しては、敬意を表するものであります。 次にこまかい問題につきまして二、三お尋ねをしたいと思うのであります。最近その筋からのお話があるかどうかわかりませんが、工場の寄宿舎を廢止しろというような聲を聞いておるのでありますが、いろいろお話を聽いてみますと、食糧事情その他待遇の問題等からしまして、成ベく寄宿舎によらず通勤制によつてやれ、こういうような方針になられたそうでありますが、しかしこの問題につきましては、特に先ほども申し上げましたように、私は製絲工場に働いたことがありまして、婦女子の勞働問題につきまいてはよく引合に出されます女工哀史のごときことは、現在においてははなはだ少くなつておると思いますが、この女子の寄宿舎につきましては、われわれが知つている範圍におきましても、まだまだ非常に低い水準にあるのではないかと思うのであります。しかしまた一面いろいろ工場等の經営の關係からいきまして、どうしても心を揃えて仕事をするには、そういつた寄宿舎の制度によつてやつた方が、能率の關係からも、またやり方によつては從業員の素質の向上にもなる、こういつた立場にもありますので、こういうことを勘案いたしますと、必ずしも寄宿舎の制度が悪いのではないとわれわれは考えるのであります。勞働基準法にも寄宿舎のいろいろこまかいことがございますが、今後勞働省といたしまして、この寄宿舎の問題についてどんなふうなお考えであるか、まずそれから伺いたいと思います。
○米窪國務大臣 日本がソシアル・ダンピングであると言つて非當に非難された時代に、國際會議において攻撃された焦點は、寄宿舎制がいわゆる勞働問題としても、人道問題としてもけしからぬ、こういふことがあつて非常に各國の批判の的になつたのですが、最近は寄宿舎の施設も非常に改善されたことは、關係筋もこれを認めております。關係筋から寄宿舎を廢止しろということは、それは何かの誤傳でありまして、寄宿舎に入れるいわゆる婦人勞働については、なるべく同じ通勤區域から募集しろといふことで、必ずしも寄宿舎を全廢しろという意味ではないのであります。この點はこの機會に、そういつた流説と行われているならば是正したいと思つております。また寄宿舎制度の改正については、勞働基準法に新たに一章設けて、それに關する規定を設けたいと考えております。
○小林(運)委員 次に工場の加配米につきましてですが、これは勞働省が直接いろいろ御心配になることではないかもしれませんが、しかしこれらは貧糧監理局等において優先的な取扱いとかいろいろこまかい規定もございまして、特に最近食糧事情におきましては、この加配米が思うようにまわらないと思うのでありますが、こういつた加配米の問題であるとか、あるいは工場に配給するその他の物資の問題、たとえば紡績の方においては自分のところでできる衣料を特別に配給するとか、そういつたような加配米とかいろいろの物資の配給等について、ほかの省との關係ができてくるのでありますが、これについて勞働省といたしましてはどういう態度で臨まれるのか、われわれはこういうことについて過去にいろいろの矛盾をみておるのであります。すなはちその關係の當局との關連の多いところには非常にうまくいく、ところが案外關連の少いところは非常に不利をしてゐる、こういうような點については將來ともこの勞働省が中心になりまして、ほんとうに公平な配給を行わなければならないと思うのでありますが、この勞働省の法安にはそういつたことを最も公正に行うべき機關が見當らないのでございますが、こういうことについては今後どういうふうにされるかお伺いいたしたいと思います。
○米窪國務大臣 これは相當重要な問題でございますが、現在は御承知の通り經濟安定本部でこの勞働加配米の配給の率、それから業種等の一應の基礎的な計畫を立てて、そのうち基礎産業は食糧管理局その他から直配をしまして、その他の産業については各府縣廳から配給する、こういうことになつております。今日は食糧の絶對量が非常に窮屈であるための、勞務加配米も特殊の産業を除いて全面的に遲配になつておる現状にあることは、はなはだ遺憾であるのでございまきが、これはまだ省もできませんし、事務當局とも打合せをしておりませんが、ほんとうの私の意見としてお聽取り願いたいのは、今後はやはり經濟安定本部とも協議をして、この勞務加配米の基礎的な配給のプランについては勞働省においてこれをきめれていきたい、こういうぐあいに考えております。これは勞務の加配に關することであるから、最も勞働者に接觸の多い、また勞働の實情に即しておる勞働者が、從來安定本部のやつておつたことをきめていくのが當然じやないか、こういうふうに考えております。また、これもほんとうの私の意見で、まだ事務當局の意見も聽いておりませんが、繊維類、その他、いわゆる米を得るための報奬物資とも認められるような繊維類その他のものについては、ある程度のバーターが認められれば、そういつたものをつくつておる人たちは食糧問題がそこで解決できるのじやないかと考えておりますが、これも農林省その他との關係もあるので、これは單に米窪の一つの案としており聽取りを願いたいと思います。
○小林(運)委員 ただいまのお答えによつて、大體今後の方面を承知いたした次第でございますが、この問題につきましては、ただいま最後にお話がありましたように、非常に不合理がある。というのは、たとえば紡績の關係におきまして、そこで自家用の衣料を特配する、またその工場においても、そういうものをバーターといたしまして食糧をある方面から入れる、こういうようなことがありまして、現在のような食糧事情の逼迫いたしたいときにおきましては、そういつた特殊の事業に携つておる者だけがバーターによつて樂をしておる。そうしてその他の最も國家に重要な産業でありながら、そはいうバーターの對象にならないような仕事をしておるところは非常に不利をしておる。こういう不合理は、今後どうしてもなくさなければならないと思うのでありますが、ただいま國務大臣のお話では、バーターをやるとも肯定されておるように思いますが、そのバーターをやるとかえつて不公平が生ずるのではないか。バーターそのものはあるいは結構でありますが、そこに不公平が起るのじやないか、こういうことに對してはどういお答えをもつておられますか。
○米窪國務大臣 一つの對策は必ずそれに對する副作用が起つてくるのは當然でありまして、私もだから、これはあくまでも米窪個人の意見としてお聽きを願いたいと言つたので、今後これについては農林省及び經濟安定本部ともよく協議をしまして、バーターをやることはよつて、バーターをやり得る資料をもつておらないものがますます困るじやないかというこの副作用については、どちらがプラスの面が多いか、マイナスの面が多いかということも考慮して決定したいと思つております。
○小林(運)委員 時間がありませんのでこの問題はこの程度に打切りまして、最後に勞働賃金の問題につきましてちよつと申し上げます。この問題につきましては先ほど同僚菊川氏からいろいろ御質問がありましたので、簡單に御質問を申し上げたいと思うのであります。 ただいまの質問と同じように、勞働賃金の平均賃金というものが給與審議會その他等でいろいろ決定されておるのでありますが、この賃金の問題につきましてはいろいろ見方があるのでありまして、最近の傾向を見ますと、物價のきめ方にしても賃金の決め方にしても、すべて過去の實績を基準としてやる。いわゆるアメリカの人たちがよく言われる過去の實績、すなわちパリテイーの計算によつてそういつたものをきめていくというような傾向にあるのでありますが、これについては、物價の方は別としまして、賃金の方は、こういつた過去の實績というものを基礎として決定するというのにつきましては、いろいろ經濟状況その他生活上の面から考えましても、非常に不合理があるのではないかと考えるのでありますが、こういう點についてどういうお考えでございましようか、お尋ねしたいと思います。
○吉武政府委員 先般給與審議會できめました平均賃金についてのお尋ねでございますが、詳しく述べますと大分時間をとりますので、ごく大筋を申し上げますが、必ずしも過去の實績というわけではございませんで、大體政府が最初千六百圓案を出し、後千八百圓となつたのですが、その千六百圓は、あの給與審議會できめます直前に、いわゆる全官廳と政府との間できめました平均賃金が一箇月千六百圓だつたのです。ですから、そのごく最近にいわゆるネゴシエーシヨンできめた給與というものが一つの参考になるであらうということが一つ。それから、賃金の總平均が當時やはり工業的な總平均が千五百圓足らずであつたのでありますから、それを多少見込みまして千六百圓というところできめたわけであります。さらに公定價格の改訂に伴つて多少のはね返りがきますから、それを、いろいろな方面でできるだけ吸収しますが、やはり相當はね返りを見なければならぬというので、二百圓を見て千八百圓にしたのでありまして、必ずしも過去の實績というわけではありません。
○小林(運)委員 私がお尋ね申し上げたいほんとうの氣持は、そういつた賃金のきめ方が、業種別によつて非常にそういうような差がある。 特にわれわれ関係のあります製絲工場の平均賃金が非常に低位にあることを承知しておるのでありますが、こういつた問題については、現在の製絲業が非常に重要な立場にあるというやうなことは別問題といたしましても、製糸工場が非常に低位にあるということは、その都度業者その他からもお話があつたことと思いますが、そういつた特殊なものを非常に特別扱ひをやつておるのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、そういつたことが、先ほど申し上げましたように、過去の實績とかその他いろいろ御勘案になつておられると思いますが、そん間の事情をはつきりさせていただきたいと思います。
○吉武政府委員 その點は私どももしばしば陳情も聴いておるのでありまけれども、決して繊維工業なり製絲工業の現状をもとにしたわけじやありませんで、いわゆる工業的な總平均を千八百圓ととつて、そうしてそれについて地域的の大體差を見る。もう一つは年齢層を見る。やはり繊維工業等は女あるいは若い人が多いのでありますから重工業の年齢の高い、そうして扶養家族の多い所と同様に取扱うわけにいきませんから、そういう年齢構造あるいは勞務構成というものを科學的に出しまして、そうして計算しておるわけであります。ですから繊維工業等は實を申しますると、從來の實績から比べれば、やや他よりは有利になつておると私どもは思つております。さよう御了承を願います。
○小林(運)委員 もう結構です。
○加藤委員長 三浦寅之助君。時間もありませんから簡單に……。
○三浦委員 簡單に要點だけ言います。理由は言いません。最近争議が方方に起りつつあるようであります。私は日本の現在の危機にひんした經濟状態から見まして、日本を再建するということを考えました際におきまして、從來の勞働團體が階級闘争を主眼としてきて、あるいは勞働争議をやることがその主眼であるというような考えをもたれたようにも感ずるのでありますが、今後の行き方につきましては、その認識を改めなければならぬようにも考えられまするし、また今後の日本の經濟状態を見た場合におきまして、殊にインフレややみが横行しておる場合には、勞働者の生活が非常なる窮境に陥ることを考え、また經營者の立場においても非常なる困難な場合を豫想いたしますと、争議が一層多くなり、勞働攻勢も非常に強くなると思うのでありますが、かような争議を未然に防止するために政府はいかなる對策をおもちになるか、具體的な御意見を承りたいと思います。
○米窪國務大臣 争議が起るいろいろな原因もたくさんあるのですが、これを總括して政府としては、大體健全なる勞働組合主義が實現できるような團體協約の範圍で折衝しておる間は、大體において私どもは、法制がきめてあるなしにかかわらず、工場主は工場を、企業者は企業をノツクアウトしない、また勞働者は争議をしないという方向へわれわれは導いていきたいと思つております。なおかつそれでも争議が起つたときには勞働委員會において十分に審議してもらう。大體勞働委員會において勞働者の言分を聴いて、それを争議に至らずして解決し得る方向へいきたい、こういうぐあいに存じております。
○三浦委員 ただいま米窪國務大臣の御意見はまことに結構でありますが、今日の日本の經濟状態は、なかなかただそれだけの問題では解決し得ないと考えるのであります。最近だんだんこの争議の勃發する傾向は、それを雄辯に物語つておると思うのであります。もう一つ、これは先ほど他の方の質問にちよつと觸れられたのでありますが、私は今後の勞働運動の考え方、かつまた強力なる勞働行政を行う意味におきましても、また勞働行政が世界勞連の影響を受け、まだ勞働組合が實勢に基くためにいろいろな強いところの運動も行い、あるいは二・一ゼネストのごとき政治闘争を目的にするようなことも考えられるのであります。こういうような場合におきまして、政府が健全なる勞働組合運動を指導するというような行政面だけでは、今後の複雑なる勞働運動に對しましては非常に心細いと思うのであります。私はこの意味におきまして、先ほど國務大臣がちよつと觸れられた勞働對策委員會というようなものを、至急設置せられるように要望しておきたいと思うのであります。ただこの委員會の設置に對しましては、單なる民間の聲ばかりでなくして、少くともこの國會の機關であり、また最も重要な地位にあるところのこの勞働委員會との密接なる關係をもつ強力なる組織を結成されることによつて、今後の複雑なる勞働行政に對處し、またこの強力なる勞働行政を推進することによつて、日本の民主國家建設のために對處していただきたい、こういうようなことを考えておるのでありますが、その點に對する國務大臣の御意見を承ります。
○米窪國務大臣 なるべく御趣旨に副うような政策をとつていきたいと思います。
○三浦委員 ほかは他の機會に讓ります。
○加藤委員長 本日はこれで散會いたします。次會は五日午前十時から開會します。 午後零時二十二分散會