司法委員会 第66号
- 発言数
- 54 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1947/12/01
会議録
○松永委員長 會議を開きます。 請願の審査に入ります。關町に簡易裁判所及び區檢察廳設置の請願、文書表第一一九六號を議題といたします。紹介議員の説明を求めます。石川金次郎君。
○石川委員 當關町は、岐阜縣中南地方における最大の都市でありまして、かつ縣下において岐阜大垣に次ぐ一大工業都市でもありまして、近く市制實施のため、目下著々内外の充實をはかり、準備を進めつつある次第であります。かくのごとくして、當町は一般に政治、經濟、産業、交通、通信、文化等、各分野を通じて、岐阜縣中南部地方における中枢的要地であります。從つて警察署、司法事務局出張所、司法保護委員、税務署、公共職業安定所、專売局出張所、岐阜縣關國民保健所、岐阜縣金属試験所、郵便局四局、縣立高等女学校、工業学校、汽車、電車、バス各驛、岐阜縣利器工業組合、岐阜縣工業施設組合その他の地方的各種連合組合事務所、各種銀行、會社等、數多官公私の施設が當町に集中設置せられているのは、まことにゆえなしとしないのであります。試みに關警察署について申し上げますれば、その管轄區域は、武儀郡二十七箇町村中の二町十五村、すなわち關町、美濃町、小金田、下有知、中有知、藍見、大矢田、洲原、下牧、上牧、洞戸、板取、富野、下之保、中之保、富之保、上之保の諸村、それに加茂郡ニ村、田原、富岡、人口約十萬でありまして、金山、山縣郡、高富等の諸警察署のごときも、元來關署の分署でありましたものが昇格分離せられたのにほかならないのであります。なお警察の事務状況につきましては、犯罪檢挙送致件數人員調べ、昭和二十二年六月三日關警察署調べによりますと、昭和二十年度の檢挙件數七百九十七、二十一年度は八百二十二、二十二年度は五月末現在で四百八十三でありまして、送致件數及び人員においては、昭和二十年度が二百三十二件三百四十二人、二十一年度が三百七十六件、四百九十六人、二十二年度は五月末現在で二百二件、三百十五名であります。さらに當町は、現に簡易裁判所竝びに區檢察廳としてかつこうな建物を有し、かつ必要に應じて、ただちに提供し得る状態にあります。かかる町勢の發展的現状に鑑み、治安維持の問題につきましては、特別の關心をもつております。當町全住民の熱望をおくみとりくださいまして、司法制度の改革を御實施のこの際、ぜひとも右簡易裁判所竝びに區檢察廳を設置せられますよう特別の御詮議をお願い申し上げる次第であります。
○松永委員長 政府の御意見があればお伺いします。
○岡咲政府委員 ただいまお申述べになりました關町に簡易裁判所及び區檢察廳を設置してもらいたいという御請願のご趣旨は、ごもつともに存じます。元來簡易裁判所の設置につきましては、當初一警察署に對して一つの簡易裁判所を設ける方針でありましたが、豫算の關係上、大体二つの警察署に對して一つの簡易裁判所が設けられたわけでありまして、具体的な設置の場所は、それぞれ地方關係町の申出によつて決定いたしたのでありますが、關町の場合は、警察署がおかれておるのみならず、地方の有力な都市でありながら、遂に簡易裁判所の設置がなかつたのでありまして、この點はまことに關町地方の方々に不便をおかけいたしておることとお察し申しておる次第であります。つきましては、政府としては最高裁判所ともよく協議いたしまして、財政その他の事情の許す限り、なるべく御希望に副うよう努力いたしたいと存じます。なお區檢察廳の設置につきましては、簡易裁判所が設置されるということになれば、當然考慮されるはずでありますから、そのように御了承の上、何分の御協力をお願い申上げたいと存じます。
○松永委員長 御質疑はありませんかLうなしと認めます。本件について一應審査は終了いたしました。なお畫しません點は適當の機會に譲ることにいたします。暫時休憩いたします。 午後二時七分休憩 ————◇————— 午後二時三十分開議
○松永委員長 休憩前に引続き會議を開きます。 國の利害に關係のある訴訟についての最高法務總裁の権限等に關する法律案について審議を進めます。石川君。
○石川委員 第四條についてお伺いしたいのでありますが、第四條中に「國の利害又は公共の福祉に重大な關係のある訴訟」と言つておりますが、その點の疑義を明らかにしていただきたいのであります。多くの訴訟が、全部國の利害または公共の福祉に關係のない事件というのはないかと思います。そこで重大なる關係ということで、一線を畫しておるのでありますが、たとえば國の利害と申しますことは、國の會計財政に影響あるというような意味でありますか。公共の福祉に重大なる關係、こういうことが行政行為上、どのような點まで關係ありますときに關係あると言いますか。これはことごとくそのときの見聞常識に任せるという意味でありますのか。御立案いたされましたときのお考えを承りたいのであります。
○奧野政府委員 御説のように、すべて國の利害に關係がないとは言えないと思いますが、要するに最高法務總裁というのは、國の公益の代表者、檢事は結局國の公益の代表者でありますが、法律的に見て、それと同じような意味で、要するに國の財政的、あるいは政策的見地から見まして、非常に重大な問題がある事件という場合におきましては、要するに國の法律的最高顧問たる職責から、そういうものに對して意見を述ぶることができるということにいたすことが適當であろうということであります。しかしてどういうものが一体そういうことに該當するかという點につきましては、これは将來の運用によりまして、そういう事件が具体的にきまつてまいると思いますが、強いて例を申しますならば、たとえば農地改革に關するいろいろな法律が、もし憲法違反なりや否というような問題で、憲法違反というようなことになつて、それが農業政策というようなものに對して重大な影響を及ぼすといつたような場合において、そういう法律に關する違憲性というようなことに對して、法務總裁が最高の國律的な擁護者というような意味で、いろいろな意見を述べさす機會を与えておくのが適當ではないかというふうに考えまして、この規定をおいたのでありますが、御質問と關連いたしますので、この際申し上げておきたいと思いますことは、たとえば人事訴訟手續法、あるいは非訟事件手續法等におきまして、從來檢事が弁論に立ち曾つて意見を述ぶるという制度が、たとえば人事訴訟手續法の五條でありますとか、あるいは非訟事件手續法におきましては、十五條といつたような、自分が當事者でない事件についても、公益のために立ち曾つて弁論をし、あるいはそういつたような證據調べの提出を求めるといつたようなことができることになつておりますし、また從來の行政裁判所法におきましては、三十五條におきまして、主務大臣が必要と認める場合には公益を弁護するため委員を命じ審廷に差出すことができるといつたような、そういうふうな思想と一連の關係をもちまして、ここに公益を擁護するという立場から、こういう機會を与えておくことが必要であろうと考えるのであります。もちろんこれは裁判所が特に許可した場合でありまして、裁判所の意思にかかわらず、自分が出廷して意見を陳述するということはできないので、裁判所の許可があつてできるのであります。從いまして、裁判所がそういう必要がないと思うときには、これを許可しなければいいことになるわけでありまして、最高法務總裁というものが、行政部における法律的な最高の顧問ということになつた關係から、こういう規定を置くことが適當であるというふうに考えたわけであります。
○石川委員 第五條の行政廳には、地方行政廳、たとえば県がはいるというふうに先ほど鍛冶委員の質問に考えられましたが、そういたしますと、第六條へまいりまして、地方行政廳ば訴訟をするときには最高法務總裁の指揮を受けるものとするとありますが、一切の訴訟が最高法務總裁の指揮を受けるといたしますならば、指揮を受けながら、進んだ訴訟の結果について、最高法務總裁は、どういう責任になりますか。たとえば最高法務總裁の責任で人事訴訟を運営していく、こういう場合における費用の負担であるとか、あるいは損害金額の負担であるとか、こういう責任はどこにあるのでありましようか。指示をいたしましたものは、全然責任がないということになるのでしようか。
○奧野政府委員 この前鍛冶委員にお答えいたしたのでありますが、それは地方自治体が、それ自体の事柄について當事者になつておる場合はもちろん含まないので、たとえば府県知事が行政廳として、國家の行政事務を担當する面において當事者となる場合、これが行政廳として當事者となつておる場合がありまして、府県自体、あるいは市町村自体の本來の仕事としてやる場合は、これを含まないので、それが一面において行政事務を担當する意味においての行政廳としての當事者である場合であります。そういう場合が行政事務でありまして、これは、広い意味の究極するところ、國家の事務にほかならないので、その國家事務の担當の面において訴訟になつておる場合としては、最高法務總裁の指揮を受けるというようにいたしたのであります。しかしてこの場合は五條で大体において行政廳のその所部の職員で、それぞれの行政廳の部下の職員を指定して訴訟を行つていくということになろうと思います。ただ広い意味において法務總裁が國の訴訟という意味で指揮をいたします結果、場合によつては法務總裁は、直接自分の所部の職員を指定して訴訟を行わせる。その場合には行政廳の職員と法務廳の職員とが共同訴訟人になることになる場合もありましよう。まな場合によつては、指揮権の發動によりまして、行政廳の方で指定したものを解任して、法務廳の所部の職員だけで訴訟を行わしめることもできる、こういうことになるわけであります。そういう意味で、一般的に行政廳が被告になつておる行政訴訟についても、法務總裁が指揮権をもつておる。しかしてその指揮権によつて、直接自分の法務廳の職員、もしくは、行政廳の職員を指揮いたします場合における責任は、どういうことになるかということになりますと、これは一般の行政事務としての責任を有するわけでありまして、訴訟としては裁判所の訴訟の實行によつてあるいは負ける、あるいは勝つということになりますが、もし負けた場合に法務總裁がどういう監督上の責任を負うかというと、これは一般の行政事務上の責任を負うことになると思うのであります。この變については、特に負けたから、ただちに法務總裁が指揮上の責任を負わなければならないとは考えませんが、その間に職務の懈怠あるいはその他責に帰すべき事由があつた場合においては、法務總裁といえどもその點について行政上の責任を負うことになると考えております。
○鍛冶委員 ただいまの御答弁でますます疑問を深くしたのですが、現在人事訴訟法、非訟事件手續法にある檢事の同一の思想というお言葉がありましたが、これは人事訴訟法、非訟事件手續法を改正して、檢事がやらずに、最高法務總裁がやるという、そういうお考えなんでしようか、いかがでしようか。
○奧野政府委員 そういう點についても、いろいろ考えたのであります。たとえば最高法務廳というものができ、法務總裁というものが同一に檢事に對する行政的の監督権をもつておるということになりますから、もし法務總裁が國の人事訴訟法、行政訴訟法等についての、一手販売で訴訟を遂行するというのであれば、やはり自分の指揮下にある檢察官をして、その遂行に當らしめるということも一つの考えであろうというふうに考えておるのであまりすが、今度の最高法務廳の設置法案によりますと、特にこの場合には法務廳の中に訟務局等ができることになつて、その人事訴訟あるいは行政訴訟については、そういう職員にこれを遂行せしめるというふうになつておりますので、そうなると從來の檢察官のそういう立場というようなものも、いつそそつちの方に入つてしまう、場合によつては逆に檢察官を法務總裁が遂行する、訴訟の代弁人にするという、兩方の考え方があるのであります。從來もあることでありますし、この際特に人事訴訟における檢察官の立合弁論というものをこれに代えてしまうということについても、なお研究する余地があろうと考えて、とりあえずは非訟事件、人事訴訟等における檢察官の立合弁論という方はそのままにして、從來通りという考えで進んでおります。
○鍛冶委員 私もそうだろうと思います。これは檢察官が變つて訟務局のものがやつても私は一向構わないと思うが、それと最高法務總裁という名前でやるということとは大變に考え方に違いがあるように思います。われわれもあの特別の訴訟において、檢察官という立場で、もしくは訟務局のものとしてやられるということならば、一向疑問をもちませんが、それがあるにもかかわらず、なおその一番上の最高法務總裁が直接みずから意見を述べるということになりますと、たいへん影響あるものと思われるのであります。この點に變りはないとお思いでしようか。
○奧野政府委員 裁判所は独立してすべて非訟事件の實行をいたすのでありますから、法務總裁みずから、もしくはその所部の職員をしていろいろ意見を陳述せしめるというのは、裁判所の方で許可をして、特に必要と思えば許可をして参考の意味を聴くので、これがために司法権の独立、あるいは裁判所の判断に影響を及ぼすということは法律上ないので、これがために最高法務總裁という名前で法律上の意見を述べるということのために、裁判所の判断に不適當な影響を及ぼすということは、どうしても考えられないというふうに思つております。
○鍛冶委員 裁判所が必要あると思えば聴くというならば、何もこんな條文がなくとも、聴こうと思えばだれに聴いたところが どんな著書をもつてだれの説を引いてこようが、それは裁判所の任意なのです。それならばかようなものがなくても構わぬのですが、そうでなくて、進んで述べられるという思想からきておるに違いないと思う。私は裁判所に對して、理屈の上は裁判官は独立だからということになろうが、この名前をもつてみずから意見を述べるということは、何としてもわれわれは了解がいきません。今おつしやつたように、裁判所が必要あると思えば聴く。それはよろしゆうございます。一向に構わぬと思うが、それがなかつたらそういうことはできませんでしようか。
○奧野政府委員 これがなければそういうことはできないと思います。証人というわけにもいきませんし、鑑定人というわけにもいきませんし、これはなければできないと思います。ただいま申し上げましたように、檢事等については、檢事の方から必ず事件について意見を述べて云々というので、裁判所の許可とかそういうものはなく、檢事の方で進んで述べる。あるいはまた行政裁判所の前の規定によりますと、主務大臣の方が必要と認める場合においては、派遣をして意見を陳述することができる。行政裁判所は判決をなす前に必ずその意見を陳述せしむべしというふうになつておりますが、今度の案におきましては、非常にその點は控え目になつておりまして、裁判所の許可を得て初めて陳述ができるということになつておるのでありますから、裁判所がそういう必要はないと認めれば許可をしなければよいことになつておるのでありまして、檢事の例あるいは行政裁判所の例よりも、非常にその點は遠慮がちになつておるわけであります。
○鍛冶委員 なかつたらできぬとおつしやるが、聴きたければ非公式に聴く。これはだれから聴いても一向に構わない。裁判官たる以上は、人の意見を聴いていかぬということはない。こういうめんどうな問題が起つておるが、あなたはどう思つておりますか、御参考に聴くというのは、一向構わない。非公式に聴くので、公式に聴くのではない。それでもいけないのですか。
○奧野政府委員 非公式に聴くのは、むろん自由だと思います。
○鍛冶委員 その意味から言えば、公式ということになると、どうもそこに疑義があると思ひます。それから先ほど憲法の問題をおつしやつたが、これは私らも一昨日すぐみんなで議論してみたのですが、今のおつしやつた例から言うと、農地改革法は憲法違反なりという訴訟がかりに起つたとすれば、一体當事者はだれになるのでしよう。もし、國が當事者であるならば、こういうものはなくともできるのですか。今の例から言うと、當事者、被告はだれになさるとお思いでしよううか
○奧野政府委員 それはややむずかしい問題でありますが、現在農地改革に關して、たとえば土地の買上げ、買収と言いますか、それに關しての不服であるとか、あるいはたとえば価格がいけないとか、あるいはそういう買収の手續がいかぬとか、あるいはさらに進んで農地調整法であるとか、自作農創設の法律というようなものが憲法違反であるということを出しておる場合、現在かかつております訴訟におきましては、原告は買収される者であり、市町村農地委員會等を被告にしてあるのが多いようであります。でありますから、その場合においては、國が當事者になつていないわけであります。
○鍛冶委員 どうもそれは私にはつきりわかりませんが、農地調整法が憲法違反なりという場合と、具体的に買収の方法が憲法違反であるという場合と、これは違いましよう。先ほどからの御議論を聴くと、買収の方法が憲法違反であるということになれば、固有の町村だけの仕事でなくて、國家全体の買収方法に對する問題が現われてくると思われる。そうしてみれば、これはやはり六條によつて最高法務總裁が指揮監督してやらせることになる。もう一つ大きな、調整法そのものが憲法違反である、制定そのものが憲法違反なり、こういうことになると、やはりこれは國家じやないでしようか。それとも立法府たる議會でしようか。これらのことから考えてみて、およそ一切のものに法務總裁が關係があるように思うのですが、どういうものでしようか。
○奧野政府委員 たとえば農地委員會の處分が違法である、あるいは憲法違反であるというふうな場合に、農地委員會を被告として訴え得るかどうかということも相當問題でありましよう。もし訴えられるとすれば、農地委員會が一種の行政事務を行うのでありますから、その意味でこの場合には農地委員會は行政廳だというふうに解釈もできるのではないか。そういうふうになつてまいりますと、ここにいう行政廳は被告として五條にはいつていくわけであります。そこは解釈によつてわかれてくると思います。そこでそれ以外でも、たとえば前の地主と、今度農地を譲り受けた者との間において、農地調整法は憲法違反であるから、從つてその農地調整法によつて買収をし、さらに譲り受けた場合でも、お前には所有権は移轉しないのだ、依然としてその農地は自分の所有であるということを理由として、甲から乙という、個人對個人の所有権確認の訴訟が起きた場合に、その前提として農地調整法なるものが憲法違反で、無効であるかどうかということを、まず判断していかなければならないことになりますので、そういう場合が起きて、もし裁判所が農地調整法は憲法違反だというふうに判断されることになれば、それは影響するところは國全体の利害に關係することになりますので、そういう場合の訴訟の當事者として、國あるいは行政廳は、全然はいつてはおりませんけれども、その判断されることにつきましては、重要な利害關係をもつということになりますから、そういう場合には四條が働き得る余地があると考えます。
○鍛冶委員 どうも私は了解できません。買収方法が憲法違反なりということであれば、農地委員會が被告になりましよう。そうしてそういう方法がいかぬということになれば、それはその一つで終らぬで、國全体に影響があるのだから、これはやはり先ほど御説明のように、五條ないし六條によつて、最高法務總裁の指揮監督を受けるのだ。その次は法律そのものが憲法違反だ、こういうときです。そうなりますと、これは地方廳じやないでしよう。それは委員會じやないでしよう。この法律を制定したことが憲法違反だという訴訟なのです。そういう場合は、また別のことで考えなければならぬと思う。
○奧野政府委員 初めから法律自体が憲法違反だということで訴訟を起すということは、許されない問題として考えないのであります。要するに裁判所が、法律が憲法違反なりや否やということは、具体的な事件の中に、そういう判断をしなければならないときに、初めて判断をするので、抽象的にただ農地調整法が憲法違反なりや否やというだけの訴訟はあり得ないというふうに考えておりまして、たとえば今御指摘になりましたように、農地委員會の處分自体が憲法違反である、無効であるという場合に、その處分の違法あるいは取消、變更ということを求める訴訟を起すことができると思うのであります。その場合は農地委員會というものが被告になる。おそらく行政廳として考えてよろしいと思います。そうなると、五條、六條によつて法務總裁の指揮を受けるということになりますが、そうではなく、買収されて、さらにそれが小作人なら小作人に譲渡されるということになりますと、今度は前の買収された地主であつたものを、譲りうけた小作人との間において、土地の所有権の確認の訴訟ということが考えられるのであります。その場合に地主の主張としては、農地調整法というものが憲法違反であるから無効である、從つて無効な法律に基いて買収手續を進めて、それを自分から買収してお前が農地委員から譲り受けても、それは所有権取得の効力がないのだということを主張した場合に、しからば農地調整法が憲法違反なりや否やということを判断しなければならないことになりますので、そういう場合が四條に該當するわけであります。
○鍛冶委員 よくわかりましたが、私はそういう場合は、憲法違反なんということは普通の裁判所ではできないのではないか。それだけを別にして、最高裁判所にもつていかなければできないのではありませんか。私はそう思いておりますが、それはどうでしよう。
○奧野政府委員 それは裁判所法をつくるときに、非常に問題になりまして、法律が憲法違反なりという議論の出た場合には、その點だけについて、自分で判断しないで、最高裁判所に移送するという點にしてはどうかという議論が非常にあつたのであります。いろいろないきさつから、それは抽象的にその點について中間的に移送の判決ということをやらないで、やはり一審から順次そのことについても判断をしていく。結局最後に最高裁判所が判断をするということになりますが、下級裁判所においても憲法違反なりや否やという問題についても判断をするという建前で進めていつております。
○明禮委員 この法案については大分質問を伺いましたから、蛇足を避けまして、第四條の「最高法務總裁は、國の別害又は公共の福祉に重大な關係のある訴訟において、裁判所の許可を得て、裁判所に對し、自ら意見を述べ、」というのは、實際は裁判所へ許可の申出をすれば、これは許可といいますけれども、實際われわれやつてきたところによると、形式だけでありまして、許可をされないということはほとんどないと思いますが、そういう意味で、意見述をべるということは、當事者として意見を述べるということに解釈するのでありますが、そういう意味でちよつと疑問が起るのは、どうも裁判にある程度干渉するというように聞えるのでありますが、どうでありますか。
○奧野政府委員 これは當事者の場合は、原告なり被告なりの主張としていろいろ述べるがいいと思いますが、そうでない場合に、しかも國の利害に非常に重大な關係があるという場合に、行政官廳の最高の法律顧問としての意見を述べるという機會を与えるのでありまして、これは必ずしも、裁判所は必ず許可するだろうとは限らないと思うのでありまして、むしろこう書いておりましても、前の行政裁判法でありますとか、あるいは人事訴訟、非訟事件のように、裁判所自身かかわらず、いろいろ陳述することができるのと違いまして、裁判所の許可を得て初めてこういうことがなし得るということになりますれば、おそらく法務總裁としても、甲と乙という私人間においてどういう訴訟が一々起つておるということもわからないわけでありますから、裁判所の方から行政的な意味における國の意見はどうかというようなことの通知とか問合せというようなことで、事實出ていつて意見を述べるということになるのではないか。もちろんそういうことが問題になつているということを法務廳で聞き知つた場合には、進んで許可を求めにいくことがあると思いますが、多くは裁判所の方から意見を求められるようなことがあるのじやないかというふうに思うのであります。これは法務總裁の法律的な顧問的職務上の単なる意見の開陳でありまして、もちろんこれは裁判所をどうこう拘束するということはあり得ない。裁判所の方で単に参考に供するだけでありまして、これがために裁判所の独立、判決の独立を亂すようなことはあり得ないことだというふうに考えておるのであります。
○明禮委員 ますますおかしいように思いますが、當事者でない者が、初めて裁判所の許可を受けて意見を述べる。これは法律顧問として述べるということでありますが、裁判所には最高の権威をもたせて、今まで三権分立の形で日本の裁判所は最も厳正なるものであるということは、法治國としても日本の誇りであると私は考えておる。その誇りである裁判所に、法律顧問として意見を法務總裁に述べさせる。今御答弁にありました通り、裁判所みずから何か聴きたいことがあつて、参考その他に聴くというのなら別でありますが、いろいろな法務總裁の立場上、特に今日は官吏の気持が、自分のやつたことを隠すためとか、あるいはおおうために、立場を悪くしないようにやるような仕事をすることが特にある。私は今日もそういう問題にぶつかつてきたのでありますが、面子を立てるためにやるべきことをやらない。こういうようなことでは、私どもは非常な失敗だと思います。これだけはぜひ何とかお考え願いたい。要するに裁判所の独立性を汚辱しているものである。法務總裁は裁判所の上に立つ法律顧問になるということは、またもつてけしからぬ話である。しかもこれは裁判に大いに影響を及ぼすべき意見が述べられるものであると思う。そうすると、裁判官はせつかくそういう法文ができているのだから、その法文に從つてその意見をわれわれも尊重しなければならぬかということになるのであります。これは實におかしい條文だと思います。いかがでしよう。ほかのところはそんなにいろいろなことを言う必要はないと思いますが、これだけは今の御答弁によつては、なおさら贊意を表することができない。これはいろいろな法制上の問題として、日本の裁判官の権威を高める上においても、一層しかりであります。かような條文は、何とか修正せられることが必要だと思いますが、この點について、もう一遍御意見を承りたいと思います。
○奧野政府委員 最高法務總裁は、裁判所の法律顧問ではもちろんないのであつて、行政廳としての國の最高法律顧問という意味でありますから、裁判所がこれを尊重しなければならぬとかいつたようなことは、もちろんあり得ないのであります。要するに裁判所の方で、國としての法律的な意向、意見をお聴きたいと思えば、聴き得る途を開いたというにすぎないのであります。これは、アメリカの司法大臣といいますか、司法長官といいますものも同様、アメリカの國の利害に關係をもつあらゆる訴訟について、意見の陳述ができるということになつておりますが、日本としてはそこまでやることは少しく行き過ぎではないか。しかして從來の日本の法制におきましても、主務大臣が行政の訴訟事件におきましては、意見を陳述せしめることができるという規定もあるし、また民事訴訟、非訟事件等におきましては、檢事が公益の代表者として、いらいらの意見を述べ得るという制度もあるわけでありまして、結局刑事事件等については、檢事が公益を代表して、法律の秩序を維持するように努めるし、民事事件につきましても、公益に重大なる利害關係のある場合においては、法務總裁が自分の所部の官吏をして法務總裁としての意見を述べさせるそういう民事、刑事における法律的な公益代表をやるということが、最高法務總裁というものを設置する當然な職能にふさわしいものではないかというふうな考えからみて、アメリカ及び從來の日本の制度とも相矛盾しない程度において、裁判所の許可を得て意見を陳述することができる。これがために裁判所の独立を非常に害するとかいうような考えはもうとうないわけであります。
○明禮委員 なるほど裁判所の許可を得るというのであるから、そういうふうなことも言われますが、私は裁判所の仕事を見ておつて、こういう法律があつて、しかも申し出があれば、必ず許可することは形式であります。實際においては、かような問題はただちに許可になるのでありますから、裁判官の権威のため、あるいは裁判官が最も中正を維持する意味におきまして、こういうような制度は、必ずしもアメリカにあるから日本に取入れなければならぬというものではなく、むしろこういうことに關係しないことが、訴訟の公平を維持し、かつまた行政廳の意見を尊重する。その意見は總裁みずからがやらないで、他の者をしてやらせるということ、あるいは場合によつてはその事理を明瞭ならしめるためにやらせることがあり得るかもしれない。どうも裁判所を抑えるような立場の人が、裁判所にかよろよろであると意見を述べることは、ややもすると、國民の疑惑を招くもとであると固く信じます。その點について御意見を伺います。
○奧野政府委員 これはもちろん自分の所部の職員に意見を述べさせるということに、大体においてならうと思います。ただ場合によつては、法務總裁みずから——たとえば最高裁判所等において法務總裁みずからが、裁判所の許可を得て述べることも禁ずる必要はないのじやないかということで、こういうみずからというようなこともありますけれども、實際の運用としては、おそらく自分みずから述べるのではなく、所部の職員に自分の意見を陳述せしめるということになると思います。
○鍛冶委員 行政訴訟の例を引かれましたが、行政訴訟においてその行政をやつておる主務官廳が意見を述べるということであれば、しかもそれは行政訴訟に限るというなら、まだ聞えます。しかし一切の、公共の利害または福祉に關することは何でもできる。そしてしかもそういうことに特別の任務のない最高法務總裁が全般にわたつて意見を述べる。これはたいへんな違いがあると思いますが、どうでしよう。これはそんなにこだわらぬで、われわれはこんなもので争つて言つておるわけてもないですから、殊に民事局長のごときは生粹の裁判官ですが、どこまでもそうだとお思いですか。私は實際は違うと思うのですが、御意見をお話いただきたいと思います。
○奧野政府委員 やはりこういう公益的な立場で、一種の民事について公益を代表するというようなことも必要があると思います。國が被告になつておる場合や、行政訴訟の場合はないといたしましても——それ以外の、國が當事者にならない場合に限ることといたしましても、やはり一種の法律的な公益の代表者という意味で、刑事訴訟については檢事が公益を代表する、民事訴訟についても、それが全然私人同士の關係で、私人間だけでいいものならば、もちろん問題はありませんが、その前提等について、いろいろ大きな國の利害に關係のある場合には、民事事件につきましても、非常に利害關係があるわけでありますから、こういつたような意見を述べるだけくらいの制度を設けておいても、こういうふうな最高法務廳に總裁を置く以上はふさわしいではないかと思いますが、どうでしよう。
○安田委員 もう大抵政府委員の意見はわかつたので、その程度で質問を打切つたらどうですか。議論をしきりにやつてみたところで、修正案については、政府委員の同意は要しませんから、打切つていただきたい。私は一生懸命がまんして聴いておつたが、これ以上押問答してみてもしようがないではありませんか。
○松永委員長 鍛冶君短かい時間でお願いします。
○鍛冶委員 先ほどからの例から言つても、かりに農地調整法とすれば、ほとんど國に利害があるのだから、おそらくそうなれば農林省の役人が出てくるに違いないのでありますが、それを通じて最高法務廳の總裁の意見も當然出てくるわけであつて、ことさら民事からやらなければならぬということも認められぬのであります。 それから先刻ちよつと議論に枝を添えたようでありますが、民事訴訟の中で、お前に所有権があるということは憲法違反である。こう言つたからといつて、相手方たる被告をして、憲法違反なりやどうだということがやれるということは、これは今はじめて聴いたのですが、今後民事訴訟法また最高裁判所法等できまることでしようか、これはよほど重大だと思います。われわれは今までそういうことを聴いたことはない、憲法八十一條を見ましても、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。とあつて、最終審ではない。終審裁判所の裁判だということになつておる。このことが憲法違反なりや否やということは、最高裁判所以外ではできないと思つているが、これはあなた方今後訴訟法を改正になるのに重大なことだから、ついでに承りたいと思います。
○奧野政府委員 単に土地の所有権の争いでありましても、その前提としてある法律に基いて所有権を取得したような場合に、その法律がもし憲法違反であつて無効なものであれば、所有権を取得しないというようなことになつてまいりますと、その法律が憲法違反なりや否やということを判断しなければならないことになりまして、この判断はやはり第一審から判断しなければならない。ただ憲法八十一條によつて終審的には最高裁判所がやるが、前審としては、やはり下級裁判所もなし得るのだというふうに解釈いたしております。ただそういうものと離れて、農地調整法案は違憲なりや否やということだけを最高裁判所に抽象的に判断を求めるということは、これは憲法の認めないところであるというふうに考えております。もしそうでないとするならば、國會が法律をつくつたその法律を、一々抽象的にただちに最高裁判所に違憲なりや否やということを申立てて判断を求めるということになれば、司法権がむしろ立法権の上にあるというようなことになつておもしろくないのであります。憲法八十一條によつても、それが何らかの具体的な事件とからまつて判断することを要する場合に判断するという趣旨と、われわれは考えております。 —————————————
○松永委員長 次に副檢事の任命資格の特例に關する法律案について審査を進めます。
○鍛冶委員 十八條の二項の規定にかかわらずということになつておりますが、どこまで改正せられるつもりなんでしようか、この第二項に基いて御説明願いたいと思います。
○國宗政府委員 十八條第二項の規定にかかわらずという點でありますが、第十八條、第一項は、ごらんの通りに「二級の檢察官の任命及び叙級は、左の資格の一を有する者に就いてこれを行う。」、こうあつて、一號、二號、三號という定めがありますが、ただこの檢察官の中に副檢事というのがあります。その副檢事は二項によつて、元來この檢察官は十八條の一項の一號、二號、三號によつて任命するものでありますけれども、副檢事に限つては、この規定にかかわらず、「副檢事選考委員會の選考を經たものの中からこれを任命することができる。」として、それが高等試驗に合格した者、三年以上政令で定める、二級官吏その他の公務員の職に在つた者、こういう副檢事の任用資格を特別に檢察官の中に定めてあります。今度の勅令に關するものは、この副檢事の任用資格の十八條の二項の規定にかかわらず、特別にこの任用資格を定める、こういう趣旨で立案したような次第であります。
○鍛冶委員 そうすると、高等試驗に及第しておらぬでもよろしいし、三年以上こういう官吏でなくても、どういうものからでも選考委員會で選考さへすればよい、こういうふうに承つてよろしゆうございますか。
○國宗政府委員 大体その通りでございます。ただ、ここにあげましたように、副檢事の職務に必要な学識經驗がある者、こういう一つの抽象的な制限だけをおきまして、ただいま御質問の通り、試驗に合格しない者でも、あるいは三年以上政令で定める二級官その他の公務員の職になかつた者でも自由に任用できる、こういう趣旨でございます。
○鍛冶委員 そうすると、この三項は副檢事に適用はありますか。
○國宗政府委員 三項は副檢事に適用がございます。
○鍛冶委員 これはずいぶん問題であつたので、刑事局長は東京においでだつたからおわかりだろうし、次官はもちろん當時刑事局長であられたので、よくおわかりと思いますが、この檢察廳法のできますときにでも、特別の任用規定をもつてやつたものを檢事に任命する、さらに檢事になつた者は弁護士になり得るということになりますと、現在弁護士というものは、高等試驗に合格し、二年の弁護士試補修習を了えた者でなかつたらできないものでありますのに、弁護士になるのとこれとに、たいへんな差が生じてきてまことに論理一貫でないし、弁護士になる者は實にばかをみるという結果になるのでありますが、この點に對してお考えになりましたのでしようか。それとも差支えないというお考えからお出しになつたのでしようか。
○佐藤(藤)政府委員 ただいま鍛冶委員からお述べになりましたように、副檢事の制度を新たに設けるにつきましては、副知事が将來やがて檢事に任命されることもある、また場合によつては弁護士に採用されることもあるということを考えまして、副檢事の任命にあたつては、まず二級官三年以上の經驗を經た者で、しかも選考委員會の選考を經た者ののうちから任命する、そうしてその副檢事として三年以上の經驗を經た者をさらに考試をして、その中から檢事に任命するというような、非常に慎重な手續をとつたのでありまして、かような厳重なる關門を經て、初めて副檢事に任命され、さらに檢事に任命し得る制度にいたしたのでありまするが、副檢事の制度を設けましてから、まだ日は浅いのでありますが、新しい檢察廳法に基きまして、檢察の陣容を整えるにあたりまして、副檢事の今申し上げたような資格者が非常に少いのでありまして、選考委員會の選考を經る資格者として、たとえば三年以上二級官の職にあつた者という制限を設けましたために、副檢事の採用に應募する者の資格が非常に制限されましたために、副檢事に人を得るのに非常に困難を來しておるのであります。もしこの三年以上の二級官在職というものを緩和いたしますと、たとえば、警察官の警部の經驗を經た者、あるいはまた、三年には滿たないが、一年あるいは二年の經驗を經た警視というものが選考に應ずることができることになりますので、選考委員會の選考を厳重にやりますれば、實質においては副檢事になる人を得るのに非常に便利を感じまするので、それも、この非常に欠員の多い現在の危機を突破するために、将來一年間という期間を設けて、その間資格の制限を緩和していただきたいというつもりで、本案を提出いたしたのであります。ただ、こういたしますと、ただいま鍛冶委員もおつしやいましたように、将來この副檢事が、やがて檢事となり、あるいは弁護士となるのに資格の上において欠陥があるのではないかという御心配はごもつともでありますが、制度の上において副檢事に採用いたしましても、副檢事として三年以上の經驗を經て、さらに高等試驗を經てはじめて檢事に任命されるのでありますから、從來の高等試驗を經て一年半あるいは二年間の實務修習を經た者が檢事あるいは弁護士となるというものと、決して遜色のない檢察官が得られることと信じておるのであります。かように副檢事の在職について資格の制限を緩和いたしましても、副檢事として三年以上の事務經驗を經なければなりませんし、さらに政令で定むる高等試驗を經なければならぬのでありますから、初めに高等試驗を經て實務修習を了えたものと、最初に實務修習を經て、そうして高等試驗を經たものと、その間の差違、前後の差違はありますけれども、實習においては、副檢事から檢事となり、あるいは弁護士となるものと、從來の制度による檢察官または弁護士との間に實質において何ら遜色ないものと考えて、かような案を提出いたしたのであります。
○鍛冶委員 現在緊急の場合として副檢事を要するという議論もよくわかります。この點について、理論上からいえば、われわれもただちに贊成しがたいのでありますが、理屈よりも實際上要ると言われるならば、便法としてそれをやられることも、私はあえて反對はいたしません。何かほかに方法があるならば、そういうことでないことと思いますが、しかし、とりあえず方法がないからとおつしやるならば、この點は考えられぬでもありませんが、その特別に任用したる者を、今までの副檢事と同じように檢事に採用し、さらにそれから弁護士に採用すると言われる點が、われわれの例としても了解のいかぬところであります。なるほどここには三年以上副檢事をやつて高試を經たものということはありますが、それほど高試というものが重大であるならば、高等試驗に合格したものとなさるならば私はきこえる。ここで高等試驗を受けないで、あとで考試ということになると、高等試驗と考試というものとは——あるいはむずかしいものをやるとおつしやるかもしれんが、何らかの差異があることは間違いない。考試を經ればよいとおつしやるが、高等試驗も受けておらぬ者を、特別の任用試驗をやられるということは、他の一般の裁判官になつたり、弁護士になつたりするものとは、何としてもこれは権衡がとれません。 それから實務に堪能である警部もしくは司法主任等をやつておつた者は、その點で堪能だとおつしやるかもしれぬが、それは堪能であるかはしれぬが、俗に言う医者の言葉で言うならば、臨床に堪能であらうけれども、学問上堪能であるとは認められぬ。世の中には、お医者さんより上手に注射をやつたり、切開したりする助手がたくさんおりますが、いくらおつても、助手を何年やつても医者の免状は与えられておりません。しかるにこの法律に對して、實地に堪能であるからというので、特別の採用をせられるということになると、これはどうも理論の上から言つても、また判事、檢事、弁護士というものの特別の地位から考えましても、合點のいかぬところだと思います。この點については、長年の間弁護士會において議論をしておつたところでありまするし、この檢察廳の法案ができまするときですら、實際われわれの意図と相反した者がおつたのであります。しかるに今度は一朝にして高等試驗もやらない、三年以上特別の法律に携わつている者もおらない、ただ副檢事をして三年經てば特別の試驗をして檢事にもする、弁護士にもする、これは何とも合點のいかぬところでありますが、特別の任用というならば、その點に對しては、特別の任用をなさつたらいかがですか。この點十分お考えの上で御答弁願いたいと思います。
○佐藤(藤)政府委員 從來の判檢事、弁護士は、高等試驗を經てから一年半の修習を經て、判檢事または弁護士となる資格を得たのでありまするが、副檢事のこの特別なる制度におきましては、まず選考によつて副檢事を任命し、副檢事として三年間の修習を經て、そうして高等試驗を經て、さらに檢察官に任命し、あるいは弁護士となる資格を得るということになるのでありまして、まず高等試驗を受けて實務修習をするか、あるいは實務修習を經たあとで高等試驗を經るかという前後はございますけれども、その實質においては、私は何らの徑庭のないものと考えられるのであります。 特別なる考試とおつしやいますけれども、お手もとに差上げました檢察官特別考試令という政令をごらんになればおわかりになりまするように、現在ありまする高等試驗、司法科試驗の制度とほとんど變りのない特別なる考試を要することになりますし、また修習の上においても、三年以上の副檢事としての實務修習を經なければ、この考試を經ることもできませんので、さような制限を厳重に施行することになりますれば、實質においては何ら劣らない檢察官ができることと期待いたしております。從つてさような特別なる道を歩んでこられた檢察官、あるいは弁護士に對して、從來と同じ資格を附与することは、決して新しい制度の精神に背馳するものではないと考えまして、かような特別なる制度を開いたのであります。
○鍛冶委員 これ以上は議論になりますが、われわれは今のお言葉では實際の今の弁護士の資格を得る者との均衡上了解はできません。ただ私の意見としてこういうことにせられたらどうかと思いますが、もしそうであつたら、この第三項を三年以上副檢事の職にあつて高等試驗に合格した者と改められたらどうでしよう。これなら大分世間でもきこえると思いますが、いかがでしようか。そうしますと、高等試驗は、あなたの今おつしやつた通り、あとではあるけれども高等試驗、それで實務修習は三年以上やつておるからということで、實際弁護士は先にいろいろなことをやつておつても、やはり高等試驗を受けてなお一年半の修習をやつておるのでありますが、これは私だけではただちにきめかねます。今ここに参考としてそういうことぐらいお考えになつたらどうですかと言うのですが、私一個としてはただちに意見はきめません。これは弁護士會として重大な問題でありますから……。
○佐藤(藤)政府委員 仰せのような御意見は、檢察廳法を起案する際にも、一部の方からそういう御意見があつたのでありまして、その點も十分考慮した上で、かような特別なる考試という制度を設けたのであります。それは從來の高等試驗というのは、まず学校を出て社會に出る前に試驗を受けて、それから實務に携わるという順序になるのでありますが、この副檢事の制度におきましては、まず實務に携わる、その實務に携わるのも三年以上という長い期間實務を修習して、そうして特別なる考試を經るのでありますから、同じ試驗であつても、学校を出てすぐ經なければならぬ試驗と、實務の修習を經た上で受ける試驗とは、その試驗の内容において、いくらかそこに特色がなければならぬというふうに考えられるのであります。つまり学校を出て實務をとる前に受ける試驗ならば、まず学理一點ばり、学理の方に重きをおいた試驗ということも考えられましようし、また實務を經た上での試驗ならば、学理も試驗するが、實務の方面も試驗するということになるだろうと思うのであります。さような考えから、從來の高等試驗とは、程度は同じであつても、内容において、いくらか特色を現わそうという意味で、檢察官特別考試令という政令を設けたような次第であります。
○鍛冶委員 それではあまり議論をしてもいかがかと思いますが、先ほどの次官のお言葉から言えば、實務堪能なんだと言いますから、實務は臨床的には十分なんだ、せぬでよろしゆうございます。ただ問題は学術と、檢事竝びに弁護士としての人格が備わつておるや否や、その點に重きをおかれるのであつて、何も實務を特別にやるから試驗が違うなどという、それでは私は納得がいきません。しかしこれ以上は議論になりますから、この程度にしておきましよう。 —————————————
○松永委員長 この際お諮りいたしますが、議院運営委員會において立案中の、議院における証人の宣誓及び証言に關する法律案について、議院運営委員會より當委員會と連合審査會を開きたいという申し入れがございましたが、この申し入れを承諾し、連合審査委員會を開くに御異議ありませんか。 [「異議なし」と呼ぶ者あり]
○松永委員長 それでは連合審査委員會を開くことにいたします。つきましては來る四日午前十時より開會いたしますからご了承を願います。 本日はこの程度で散會いたします。明日は午後一時より開會いたします。 午後三時四十三分散會