司法委員会 第39号
- 発言数
- 19 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1947/09/26
会議録
○松永委員長 會議を開きます。最高裁判所裁判官國民審査法案起草にに關し、前會本案起草についての御協議の際の御意見もありましたので、小委員長の報告を敷衍するとともに、委員會の訂正意見における法文整理の結果を説明いたさせます。福原説明員。
○福原説明員 最高裁判所裁判官國民審査法案について具體的の説明を申し上げます。 この法律案の訂正の趣旨につきましては、先に小委員會委員長の報告にありますので、それに委ねまして、私といたしましては、各個の條文についての簡略なる説明を逐次加えていつて御審議の資料にいたしたいと考えます。 まずこの法律の第一章總則は全般的の規定をおいたものでありまして、その第一條はこの法律の趣旨を闡明したものであります。すなわちこの法律は、憲法第七十九條四項に照合する規定でありまして、同項においては最高裁判所裁判官の「審査に關する事項は、法律でこれを定める。」と規定してありますので、この法律は憲法がその制定を義務づけている法律なのであります。それゆえ本國會におきまして、ぜひとも御審議をねがわなければならない、また早急に制定をしなければならないという關係にあるような法律の一つなのであります。 第二條はこの最高裁判所裁判官の審査について、これを衆議院總選挙の期日にこれを行うと闡明したものであります。これもまた憲法第七十九條第二項の規定を敷衍したものでありまして、意法のその項においては、「最高裁判所の裁判官の任命はその任命後初めて行はれる衆議院議員總選擧の際國民の審査に付し、」とございますので、この憲法の趣旨をくみまして、總選擧の期日に同時施行するという原則を、第二條で闡明したものであります。なお衆議院議員總選擧と同時に施行します關係から、この後に述べます第四條、第七條、第八條あるいは十二條、十三條、十九條、二十條というような關係において、總選擧と審査との結びつきをいろいろ考えております。これらの規定は、いずれもこの審査が行われるについて、國民側の立場を考え、煩瑣にわたらざるよう手續の簡易化をはかり、すなわち總選擧の際に衆議院議員の選擧をいたすときに、その場において容易に實行できるという點を考えたのであります。これまた憲法の規定をそのままもつてきたものであります。 第三條は、この審査は總選擧と同時に行いますが、選擧區というようなものを照合するものではなくて、全都道府縣が一區域としてこれを行うものであるということを示したものであります。 第四條は、この審査權が衆議院議員の選擧權を有する者にあるということと、すなわち審査權と選擧權は、同時に各國民の有するところであるということを闡明したものであります。 第五條は、この審査の期日及び裁判官の氏各の告示についての規定でありまして、一般の總選擧の際のごとく、議員候補者を國民に徹底させることについては、選擧運動その他の規定をおきませず、またそのような必要もないと考えるのでありますが、さすれば一般國民といたしましては、必ずしも最高裁判所裁判官は、平素から熟知しておるという關係でなく、いわば縁遠い存在でありますので、この裁判官の各個の氏名というものをはつきりと國民の腦裡に反映させなければならないと思うのでありあす、そのようなことからいたしまして、審査の期日前遲くとも二十五日前までに、裁判官であまねく知らせるということを規定したものであります。ここで問題になりますのは、裁判官が任命されまして、その次の總選擧で國民の審査を受けるわけでありますが、その審査を受ける前に二十五日という期日を置いた關係から、その二十五日間には新たに最高裁判所の裁判官を任命することはどうであろうかといいう問題が出てくるのであります。この點につきましては、かような裁判官の氏名を周知徹底させるというせいしんから、この第五條を置いた意味合におきまして、この期間に最高裁判所裁判官を新たに任命するということは、その新たに任命された裁判官をその次の總選擧の期日において審査することが法律的に不可能になりますので、かような任命をすることは、少なくとも第五條の精神にそぐわないものであるということが言えると思います。 第六條は審査の方法を掲げたものでありますが、これは一人一票の投票によるということをはつきりしております。 さらに第七條、第八條、これおもさつき申し上げました第二條の總選擧と同時施行という原則から、さらにまた第四條の選擧權を有する者が審査權を有するというような關係から、その手續の簡便化をはかつて、それぞれ投票區あるいは開票區、審査人名簿は、衆議院議員の選挙區または開票區あるいは選挙人名簿によるということを明らかにしたものであります。 第九條は、かような審査に關する事務を管理させるために、特に最高裁判所裁判官國民審査管理委員會を設置することを規定したものであります。先ほど來申し上げました通り、審査を選擧と同時に施行するということにいたしたのでありますが、これはあくまで手續上の問題であり、手續の簡略化をはかつたということでありますが、その本質においては、區別せらるべきものでありますし、また内閣が任命した裁判官の審査をいたすのでありますから、これを内閣とは別個獨立に行うことが理念上正しいと思われますので、特にこの審査に關する事務」の管理、監督機關としてこれを設置することが正しいという考えのもとに置いたものであります。なおこの國民審査管理委員は、衆議院においてその議員の中からこれを選擧するということにいたしたのでありますが、總選擧の際に行います關係から、この審査の際には衆議院議員は現任されていない、未定の状態にありますので、これを参議院議員に全部的に委ねた次第であります。さらにまたこの委員の任期を三年といたしましたのは、かような重要な委員でございまするし、從來の例もかような委員を長期にわたつて存在させるということがあまりありませんし、また裁判官彈劾法等の委員の任期等も考慮いたしまして、三年とすることが妥當かと考え、一應三年とすることが妥當かと考え、一應三年といたしました。なおこの審査管理委員會に關しましては、参議院議員の全国選出議員選挙管理委員會の規定の一部を準用することにいたしました。 第十條は、國民審査管理委員會が審査に關する事務の全般的な施行及び監督の機關でありまするが、全國的に行いまする關係から、都道府縣の選擧管理委員會を指揮監督するということに、明文を置いた次第であります。さらにまた都道府縣の選擧管理委員會は、やはり審査に關する事務について、市町村の選擧管理委員會を指揮監督する。かような形で審査に關しまして事務の最高峰たる國民審査委員會以下、段階的な機構をもつているということを闡明いたしました。 第十一條は、審査を受ける裁判官が退官した場合、ありいは死亡した場合には、もちろん審査の必要はないということを考えましたので、その點を明記したものであります。もちろん制度としては、そのような一度内閣の任命があつたというその内閣の任命の是非を審査するという考え方もありまするので、そのような場合には、退任あるいは死亡の場合これを審査するということも考えられるのでありますが、すでにそのような場合には、これを審査するということの實益もないかと考えますので、かような制度にいたした次第であります。 第二章は、審査の方法は投票によるという第六條を受けまして、現實の投票と開票についての規定を置いたものであります。ここにおきましても、やはり總選擧の事務を審査の事務との同時施行とうい原則からの手續の簡略化をはかりまして、十二條、十三條のごとく、投票管理者あるいは投票立會人、投票所というようなものを、それぞれ總選擧のそれと同一にしたものであります。 第十四條は投票用紙についての規定でございますが、これは次の第十五條と竝んで、この國民審査法において制度的には新たにした形式であります。それというのは、從業のわが國の選擧におきましては、いわゆる自書式と申しますか、それぞれみずからの好む候補者を自書するという形をとつていたのでありますが、ここではさつきも申し上げました通り、裁判官の氏名全部を國民が熟知しているという關係は考えられませんので、特に裁判官の氏名を投票用紙に印刷しておくすなわち記號式の投票用紙を用いることにいたしたのであります。そしてその裁判官に對しての罷免を可とするか、あるいは可としないかということを、單なる)(の記號をその氏名の上部に記載するという形で、投票させることにいたしたわけであります。ここで第十四條の末項に、投票用紙は別票の様式ということに言つてあつたと思いますが、これは別記用式とするのが用例がよいと思いますから、それを訂正させていただきます。そうして本法の最後に折込みになつておりますが、別記投票用式というものがはいつております。これがその審査の際の投票用紙の形であります。 第十六條は點字投票を認めている規定であります。一般の選擧法の規定によりますると、いろいろと必要な條文がいるのでありまするが、本法は必ずしも條文の數が多いものではありませんので、その點も考慮し、また實際の運用にあたつては、一般の記號式投票用式に準ずるということもいかがかと思われるので、その點の必要な事項を政令で定めることができると言うことに、特に認めていただいている次第であります。 第十七條は、投票管理者の義務であるまして、投票録をつくるということであります。投票の公正維持をはかつた規定であります。 さらに第十八條は投票の秘密を規定し、何人もこの審査の内容を他人に陳述することの義務を負わないということを、明確にいたした次第であります。 第十九條、第二十條は、これまた十二條、十三条と同様に、總選擧の際の手續と平行させる意味合いの規定でございます。 第二十一條は投票の點檢と、その結果の報告をただちにするという注意規定をいたしたものであります。 第二十二條は投票の効力についての規定でありますが、このたびの投票用紙が新たる形式のものでありますので、特にその點については從來の効力規定とは違う形式をとつた。すなわち「成規の用紙を用いないもの」これはもちろん從前からと少しも異らないのでありますが、第二號の「)(の記號以外の事項を記載したもの」これは他の事項を記載してはならないという一般規定と同様でありまするが、この場合は、かりにもその投票用紙の一部にそのような)(の記號以外の記號を記載しておれば、その投票用紙の全般が無効となるということを規定している次第であります。三號に至つては、「)(の記號を自ら記載したものでないもの」となつておるのであります。他人が)(の記號を記載したというような場合も無効としておるのであります。それについては、もし十五人の裁判官を審査する場合に、そのうちの一部についてそのような記載を他人がしたというような場合には、その第二項においてその部分のみ無効にするということにいたしたのであります。これは連記的な記號式投票においての、一つの新しい行き方だと考えるのであります。さらにまた何行かにわたつて、裁判官の氏名が書いてあるのでありますが、そのいずれの裁判官に)(の記號を附したかわからない。すなわち兩者の間にまたがるような)(の記號があつたという場合には、これまたその部分のみ無効とするという規定をおいたのであります。 第二十三條は投票録と同様に開票録もございまして、開票の公正を擔保する規定でございます。 さらに第二十四條は開票録あるいは投票録、さらに審査の投票自體を十年間保存しなければならないというのでありますが、これまた審査に關しての問題が後に起こることを豫想しておりますので、この點の證據書類として重要なものでありまするので、保存の義務を規定したのであります。 第二十五條は、從來申し上げました通り、この審査を衆議院議員の總選擧と同時に行うという、同時施行の原則によつて規定したのでありまするが、第二十五條にも記載してございます通り、衆議院議員選擧法第七十一條の規定すなわち無投票選擧區の場合には、總選擧の投票を行わない場合でございますので、そのときにはどうするかということを特に規定し、もちろんそのような場合にも、審査はこれを行うのであるということを、はつきりと述べているものでございます。その場合には、從前述べました同時施行による手續の簡略化ということが、望まれないものでございますので、それについての必要な補充的規定を、第二項、第三項において規定してる次第でございます、 なお投票についてのいろいろな問題もございますので、それも本質的には、衆議院議員の選擧の投票及び開票と、取扱いを異にしなければならないものがございませんので、もしこの規定上缺けておるところについては、それぞれの衆議院議員の選擧の規定にまつということにした次第であります。 第三章は審査分會及び審査會に關します規定でございまして、審査が行われた際、これをいかような手續をもつてその結果を現すかということを規定した次第であります。 第二十七條は審査會の規定であり、これは都道府縣廳ごとに置くものでございます。これは衆議院議員の選擧の場合の選擧會の相當するものと、御了承願えれば結構かと考えます。 ここでお手もとにお配りしてありまする法案と、少しずつ條文がずれてくるのでございますが、さきにお認め願いました通りこの第二十七條の末項とさらに一項を加えまして、第二十八條、審査分會録の規定を置きました。この審査分會録は、やはり審査分會においての審査の公正を擔保するための規定であり、またその記録をつくり、そうしてその保存規定を掲げた次第であります。これから後は條文が一つずつずれてまいりますから、その點豫め御了承願います。 第二十九條、審査分會の結果の報告、これは審査分會のあつた場合、ただちに報告するという規定でございます。 第三十條は審査會の規定であり、これは全國に、中央に一個置く。そして審査の結果を最終的に決定する機關でございます。 そして三十一條においては、審査會についての手續の公正をはかり、さらにまたその記録の保存を必要といたしますので、その旨の規定をおいた次第であります。 次に第三十二條につきましては、小委員會においてもきわめて愼重に審議したところの條文の一つでございまして、この但書につきましたは、特に憲法の第七十九條第三項の表現と相違うことのないよう愼重な表現をとつた次第であります。その但書は前囘の委員會において、委員各位の御意見を十分に研究いたしました結果、ただいま申します通り、かような表現にした次第でございます。但し衆議院議員選擧人名簿確定の日において、これに記載された者の總數が百分の一に達しないときには、その限りでない。かようにいたしたのであります。これは衆議院議員の選擧と審査とが同時に施行されましたときには、ほとんど問題にならない規定だと考えられるのであります。しかしながら、さつき申し上げましたように、第二十五條に規定しておりますがごとく、無投票區域の場合、あるいは審査が無効になりまして再審査ということも考えられるのでありますが、そのような場合には、一般國民の投票場に出向きます出足と申しますか、さようなものが必ずしも議員選擧のごとく多いということが期待できないような事情もありますので、萬一の場合にはきわめて少数の投票によつて裁判官の審査が行われ、その結果罷免するというようなことになるおそれもございますので、もし投票者の總數が一般の有權者の百分の一に足りない場合には、その審査自體を審査の結果、その罷免を可とする投票數が多數であつたといたしましても、その罷免の効果が發生しないということにいたした次第でございます。 第三十三場は手續的の規定でございます。そうして一般にこの審査の結果を告示して國民に周知せしめるということでございます。 第三十四條においては、これまた審査分會あるいは審査會が、そのことの性質上衆議院議員の選擧の選擧會の性質に類似しておりますので、その面の規定を準用することを掲げたのでございます。 第四章はかような審査の結果についての効力規定を設けたものでございます。すなわち審査の投票の結果、罷免を可とされる投票の數が第三十二條の規定によりまして多數であつたと認められ、すなわち罷免を可とされた場合には、その裁判官の後は述べます審査無効の訴訟ないしは罷免無効の訴訟の提起期間を經過した場合、またもしその訴訟が提起されました場合においては、その訴訟が裁判所に係屬しなかつた——すなわち取下げがあつたというような場合、またその訴訟について裁判の確定した日、その訴訟について確定裁判が下された日に、その裁判官が罷免される、そういう効力を發生する規定になつております。さらにまた審査の結果罷免された裁判官は、かような國民の總意に基きまして、これを罷免するのを可とするということの結果が明らかになつたものでございますから、これを一定期間さらに再任するということは、政治的にもまた國民の常識から言いましても望ましいものではございませんので、少なくとも五年間は再任はされないということをはつきりと規定しておる次第でございます。第三項はかような罷免を可とされた裁判官が罷免になるまでの間に多少の日がございますが、その日の間に、たとえば他に轉換するとかいうようなことで、かような罷免の効果を免れるというようなことも考えられますので、さような場合に、退官したとかあるいは轉換したとかいうような場合にも、その罷免の効果が及ぶ、すなわち罷免されたものとして、少くとも五年間は再任されないということを確保し、審査の効力の實績を確率した次第でございます。 第五章は訴訟に關する規定でございます。すなわちかようにして行われました審査について、審査を受けた裁判官からのこの審査目體を無効であるというような訴訟を起し、そのような意義を申し立てられる機會を與えた次第ございます。この審査無効の訴訟は、選擧におきましての選擧無効の訴訟と同じ性質のものでございまして、審査全般が無効であるということを主張するものでございます。審査無効の場合というものは、いかなる場合かと考えますならば、その審査手續が本法に規定しておりまする條文の規定の違反であるという場合が考えられるのであります。たてえば選擧手續の管理執行の規定に反しておる場合、全般の集合行為としての審査の全體が無數と見られるような手續違反、これを審査無効といたす次第であります。 第三十七條はかような審査無効の訴訟がございましたときに、これに對して規定違反によつて審査の結果に明らかに異動を及ぼすおそれがあるという場合に、この審査の全部または一部の無効の判決をするということを規定したものでございます。もちろんここにおいての全部というのは、全都道府縣を一區域といたしております關係からいう全部についての無効であり、一部というのは、一區域においての手續の違反の場合の無効の意味でございます。 第三十八條は罷免無効の訴訟でございますが、これは選擧法の訴訟でございますが、これは選擧法における當選無効の訴訟に該當するものであり、これは集合行為としての審査自體は有効であることを前提とし、その審査を受け罷免を可とされた裁判官が、その個個人についての罷免を無効とすることを訴えるものでございます。たとえば審査決定機關の構成が、法律上の有効用件を缺くとか、票數の計算に誤りがあるとか、場合によれば、審査を受ける裁判官がその時期でなかつたとかいうような場合の問題が取扱われるのだと考えられます。これらの訴訟は、東京高等裁判所の専屬管轄といたしました。從來かような訴訟は大審院でいたしたのでありますが、大審院がこのたびの最高裁判所となり、その管轄事項についても、從前の大審院のそれとは違うものがございますので、東京高等裁判所の管轄とする事が妥當と考えて、かような規定をした次第でございます。もちろんその高等裁判所の判決について、一定の事由がございますならば、最高裁判所に上告してこれを爭うことができるものでございます。第三十九條は、かような審査無効ないしは罷免無効の訴訟は、事柄の性質上、一般の選擧訴訟と同様に、他の訴訟よりも優先的にこれを裁判いたさなければならないということを規定した次第でございます。 第四十條は、通知規定でございますが、これは事務的な取扱いを明示したものでございます。 第四十一條は、訴訟手續について特段の規定がない限り、民事訴訟の例による旨を明らかにしたものであります。もちろん事の性質から、再審というものが考えられないので、その點を除いた次第でございます。また四十二條は、審査無効ないしは罷免無効の判決が確定しましたならば、その旨を一般國民に周知せしめるという手續を規定したものでございます。 第六章は、かような審査が行われました場合に、審査無効ないしは罷免無効の訴訟の結果、審査の全部または一部が無効であつた場合には、そのためさらに一般の國民の投票にまたなければならない場合も考えられますので、その點の再審査を行う旨を規定したのでございます。これも大體においてはその手續その他は、これまで申し上げました宿査の場合と同様でございます。しかし同時施行という點については、事柄の性質上あり得ないものですから、第二十五條の無投票區域における審査の場合を準用した規定をここに一項設けているのであります。もちろん審査無効ないしは罷免無効の訴訟が確定いたしましても、その審査自體が手續上の問題であつて、再審査の必要がない場合には、審査會を開いてその結果を新たにすればよろしいのでありますので、その旨の規定を末項におうてある次第であります。 第七章は罰則規定でございます。これも原則的には一般選擧法の罰則と揆を一にしているものでございます。もつともそのうち第四十四條第一項第一號のうちに、特にその後段において號のうちに、特にその後段において「職務上の地位若しくは職務上の地位に関する特殊の關係を利用して特殊の利益の供與、その供與の申込み若しくは約束をし、」という事項を挿入しておりますが、これは一般選擧法の罰則より擴張した規定でありますが、審査を受ける對象たる裁判官の特殊的なる地位その他を考慮して、特に本法においてその必要を認め、加えることにいたしたところでございます。罰則にちきましては、今申し上げました通り、一般選擧法の罰則と大差ないのものでございますので、特に御説明申し上げることもいかがかと思いますので、省略させていただきますが、第四十九條において、衆議院議員選擧法の罰則を準用する場合の表現の問題が多少ややこしく規定されてありますが、これはできる限り本法の簡明化をはかつた趣旨から、その罰則準用を可及的に擴めたので、かようなものになつたのでございます。 第八章は補則で、これまでの規定において足らざるところを補つたものでございますが、たとえば國民審査管理委員、その他關係委員、その他審査長等の職は、その人たちが審査權を有しなくなつたときはこれを失わなければならないという旨を規定し、あるいは審査の費用は事の性質上、國庫負擔であるということを規定し、また第五十二條、五十三條等では、審査を行うについての周知徹底を特に考える意味で規定を設けたのでございます。第五十四條、五十五條、五十六條等は、一般の選擧その他に關しましても、特別の規定を必要とするようなものがございますので、それを設けたのでございます。そして五十七條は、これらの法律の各條文の施行に關し、必要限度の實施に必要な規定は、これを政令で定められることを特に示したものでございます。 附則は、この法律が前も申し上げましたとおり、ただちに憲法に要求せられた法律であり、その發動は早急に行われる場合も考えられますので、交付の日からこれを施行するということにいたしたいのでございます。 たいへん言葉をはしおつて御説明申し上げ、ご理解に困難であられたかと思いますが、私の説明はこれで終わります。もし御質問等がありましたならば、できるだけの御説明を申し上げたいと思います。
○松永委員長 御質問はございませんか。
○安田委員 それでは三十一條の但書の修正案についてお尋ねいたします。この修正案によりますと、投票の總數が、選擧人名簿に記載された者の總數の百分の一に達しないときは、この限りにあらずとなつております。この結果、百分の一に達しない場合には、たとえ罷免を可とする者が多数であつても、裁判官は罷免をされないという結果になるのでありまして、投票者が小數であつて、その中の多數の者が罷免を可とするという結果が出ます以上、何らの手續を要せずして、ただちに反對の結果を認めるということは、不穏當ではなかろうかと思うのでありますが、この點について立案の際に何かの御意見はなかつたのでございましようか。
○福原説明員 私から御説明申し上げます。御質問の問題は、まことにごもつともでございますが、從來小委員會において論ぜられた點は、かようなことでございました。一般の選擧の投票の場合には、これは積極的に候補者たる人を議員に選出するという意欲のもとになされるのであります。ところがこの審査の投票は、これは特に裁判官を罷免させる意欲のもとに投票がなされなければならないのであります。もし現任のままでよいならば、何らの投票をしないでも効果が發生するわけなのであります。すなわち三十一條に「罷免を可とする投票の數が罷免を可としない投票の數より多い裁判官は、罷免をかとされたものとする。」とございますが、罷免を可とする投票というのは、先申し上げました通り、)(のマークをつける投票であり、)(マークをつけないでそのまま投票するならば、罷免を可としない投票となるわけでございます。積極的に)(のマークをつけて投票することによつて、初めて罷免を要求する意思が表示される。それ以外には積極的には今度は罷免を可としないという投票は必要としない規定になつておるのでございます。そういうような手續になつておるのでございます。それゆえ、さきも申し上げました通り、一般の有權者といたしましては、いわゆる棄權をしたいといたしましても、その棄權は積極的な効果を發生して、裁判官をそのまま存在させることになるのであります。さような筋合からただいま申し上げましたきわめて少ない投票者という場合にも、その投票者は少なくとも罷免を目的として投票したというものに該當するわけであります。それゆえそのような數がきわめて少いということは、全般的に罷免を可とするという意思が全國民の間にきわめて小數であるということが推定できるのではないかと考えられるのであります。それゆえかのような場合には、そのまま審査の効力がないものとし、また再審の必要もないものとかんがえたのであります。さらにまた審査に要しまする費用その他も考慮いたしますれば、今の推測が當らずといえども遠からずであるならば、再審査まですることはいかんがなものかと考えて、かような立案にもなつた次第であります。
○安田委員 御説明の趣旨は了承されるのでございますが、投票をなさない、すなわち棄權者は全部罷免を可としないという推定は、いかがかと考えられるのであります。私は裁判官の罷免について關心をもたない人が投票を棄權した者だと考えるのであります。いやしくも關心をもつた人は、可とするか否かの投票を行うものである。かように考えるのが、穏當であろうと思うのであります。そこでもしかりに百分の一に達しない投票がありまして、そのとうひようのほとんど大部分が罷免を可とするという投票を行うような場合が出てこないとも限らないと思うのであります。その場合に投票を棄權した人は全部罷免を不可とするというふうに考えまして、投票者の大多數が罷免を可とするという投票をしたにもかかわらず、その意思を無視することはいかがかと考えられるのであります。かような點は考えられなかつたかということを重ねてお尋ねしたいのであります。總數の百分の一に達しない場合におきましては、過半数でなくて、ある程度以上の多數が罷免を可としなければ罷免の効果を生じない。たとえば三分の二あるいは四分の3というような數が罷免を可とする場合には罷免を可とするのだというようなことをお考えにならなかつたか。さような議論は出なかつたかということを、重ねてお伺いいたしたいのであります。
○福原説明員 ただいまの點は、小委員會の席上でくきりと出たことは私の記憶にもないのでございますが、よりよりの御意見はあつたようにも承つております。しかしながら、この點はかような實例を想定することによつて、一應解消したものと考えるのであります。すなわちある具體的な事件につきまして、その裁判の結果がある團體にきわめて不利であつた、あるいはある團體がの容れるところならなかつたということを想定いたしました場合に、その團體員全体がその裁判官を目して罷免に値する、罷免を可とするものであるという積極的な意欲をもつて投票することが考えられるのであります。そうすると國民の全般において、特にある裁判官が不適當である、不適任である、罷免を可とするというほどの意欲なく、結局は在任を認容するというような關係にあります場合、ある一部の團體の者のみが、ある裁判官をねらい打ちするというような場合を考えますと、たとえばその團體員數が十萬、二十萬、三十萬というようなことを考え、その三十萬がことごとく罷免を可とするという投票をいたしました場合に、これに對應する罷免を可としない方の投票者が、いわばさつきお話のございましたような、見方によれば、かようなことに關心がないというようなことを想像されるのでありますが、投票しないことによつて、在任をそのまま容認するという効果があります關係上、投票に出向かないということを考えますと、あながり投票者の總數の何分の一ということをもつてこれを罷免することは、稀有の場合ではありますが、結果のきわめて妥當を缺くような場合も想定されるというところから、概括的にかような全體の投票の數が一%以内ならば、その効果を認めないということがいいのではないかということになつた次第でございます。
○安田委員 御答辯の趣旨は、私もよく理解ができるのでありますが、ただ投票者のほとんど全員が罷免を可とする場合において、その効果を否定するということが形の上においておかしいのではないかという點をお考えにならないか、かような趣旨であります。さような實例があるいはでてくるのではないかということが豫想されるのであります。百分の一にたりない投票のうちで、9〇%が罷免を可とするという場合が起こるのではないか。その場合は、形の上においていかにもおかしいのではないか。これが私の心配であります。もしこの點につきまして御意見がございましたならば承りたいし、特に御意見がございませんならば、意見の問題でありますから、承らないでも結構であります。
○福原説明員 その點はただちに憲法の條文の解釋にも影響することと思うのであります。それゆえ立案に際しても、非常に注意を拂つた點なのでございます。しかしながら、さきにも申し上げました通り、憲法の精神というものを考えますると、あまりに小數の投票者の意向というものをただちに反映させることはどうかということ。それからその場合に再審査ということについては、諸般の關係もございますので、それを考慮して、かような結論になつた次第なのであります。
○安田委員 それでわかりました。
○中村(俊)委員 この法案の末尾につけてある別表の文句についてでありますが、これは法律案ではりませんから、修正という形で出す必要もないと思いますので、私の意見を申し述べて、御意見になるならば、この文句を適當に直していただけないかと思うのであります。それは投票用紙はほとんど無知識な大勢のの有權者に讀まれるということを、まず前提として考えなければならぬと思うのですが、そのうちの「罷免を可とする」という言葉は、大衆にはその意味がほとんど分からぬのだろうと思うのです。「罷免を可とする」という言葉は、非常にむずかしい言葉だと私には思われるのであります。しかも次に來るべき衆議院議員の總選擧にこの投票が行われるといたしますると、この)(の記號は、罷免を可とする裁判官の氏名の上に記載するのですが、この意味がわからないで、ただ記號をつけなければならぬと誤解する有權者が非常に多いのではないかと思われるのであります。これはたいへんな結果を招來するわけでありますので、このような投票者一人々々に意味をわからせるような注意書からいえば、こういうむずかしい言葉をつかうことは、絶對に避けられて、私の今の思いつきでございまするけれでも、免職させる方がよいと考えるというような言葉、あるいはやめさせた方がよいと考える裁判官というように、讀んですぐに納得のいくような文句をお使いにならなければ、私は有權者の意思が、意味がわからないために、ただ何でもいい。しるしをつければいいのだろうと言つて)(しるしがつけられるおそれがたぶんにあるだろうと思います。したがいまして、私はこの投票用紙に書かれる罷免を可とする裁判官、罷免を可としない裁判官というこの罷免を可としない裁判官というこの罷免を可とする、罷免を可としないというこの文句を、もう少し一番低い人にもわかるような口語體で書かなければならぬのではないか。これは法律案でありませんから、どういうように申し上げてもよいのですかわかりませんが、私の希望を申し上げて、大方の贊成が得られれば、この文句はかえていただきたいと思います。
○福原説明員 御質問の趣旨はまことにごもつともな點もございますので、この點十分に研究いたしたいと考えます。
○松永委員長 ほかに御質問はありませんか。 それでは午後一時半まで休憩いたします。 午後零時十五分休憩 ————◇————— 午後三時十一分開議
○松永委員長 休憩前に引續き會議を開きます。休憩前の御意見の結果の訂正を簡單に御報告いたさせます。福原法制部六一部長。
○福原説明員 午前中の委員會で中村委員から、まことに適切な御注意がございましたので、その點につきまして研究いたしました結果、かように訂正してみてはいかがかという案ができましたから、御披露申し上げます。その訂正部分は、十四條第三項の規定によりまして、別記としてあげられておりまする投票用紙様式中に記載されてある注意事項についてでございます。お手もとにお配りいたしてありまする原案によりますれば、その注意についてきわめて法律的な用語をそのまま表現しております。これは一般審査の投票にあたる國民については、必ずしもただちに理解のできる表現ではございません。それゆえこれを最もわかりやすく表現するのが適當だと考えるのであります。「〇注意」この注意にも平がらを附したいと思います。そうして「一、やめさせた方がよいと思う裁判官については、その名の上の欄に×を書くこと。」それから「二、やめさせなくてもよいと思う裁判官については、何も書かないこと。」かような二項目を注意として掲げたいと思います。そうして原案の三は、これをやさしく表現いたしましても、何か今申し上げました一と重複する點がありまするが、「×の記號を記載する欄」といたしましたところを、「×を書く欄」といたします。そしてその下の「裁判官の氏名」とありますのを、「裁判官の名」といたします。その他はまつたく原案通りの様式をとりたいと思います。御審査を願います。
○岡井委員 私は修正になるかどうかはしりませんが、簡單に意見を申し上げたいと思います。まず本法案は手續のみを五十六箇所の長きにわたつて規定されておりますが、これを大いに縮小する。これは國民自身、國民一般に關係のある法令でございまするから、煩瑣なる手續を第一番に省略し、第二番目には整理した概念を簡潔なる條文でもつて表すように、これを短くする。これが新時代の趨勢でないかと思います。 次に裁判官につきましては、憲法七十六條におきまして「良心に從ひ獨立してその職權を行ひ。この憲法及び法律にのみ拘束される。」次に八十一條におきまして、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかを決定する權限を有する終審裁判所である。」こうなつております。まず裁判官には神のごとき良心を要求しております。次に法令審査權におきましては、これは識見の高邁なることを要求しておると思います。憲法違反か否かは、形式だけで判斷するのはしやすいですけれども、實質においては、憲法に違反しておるかどうかということを判斷するのは識見の高邁なることを要求するのでございます。これは認識の途は無限なることを考えてみましても、容易ならわざではないと思います。憲法にはこの裁判官のみについて、かように職務の基準を示しておるのでございます。ほかの國會、内閣については、かような條文は一つもないのでございますが、裁判官についてのみこれがあるのであります。そこでこれを掲げるということが、この國民審査法については最も肝要なことではないかと思います。衆議院議員選擧法につきましても、かような大眼目を掲げておりましたならば、あるいは今までの選擧は違つてきておるたかもしれません。ただいまのごとき亡國の悲惨事を招いていなかつたかもしれないと思います。大眼目を掲げると、自然々々にかくのごとき人物をえらばなければならぬ。かくのごとき人物を排斥しなければならぬということが、國民の間の常識になつてきますならば、選擧界の革新もできておつたはずではないかと思います。裁判官國民審査法というものを、政治家の集まりである議會の方から提出するのでありますから、私は政治家らしき法律をつくる。これは一厘一毛も費用を要しないのであつて、政治家たる見識を示しさえすれば、その實があるのでございますから、私はこれが一番大事なことではないかと思います。申し述べる機會を逸しましたことは、重々申しわけないのでございますが、今後議會から提出いたします法案も多々あるだろうと思いますから、そのときの参考にもなつたら、あるいは遲きを嘆ずる必要もないものと思いまして、この意見を申し上げます。時期遲れではございますけれども、きわめて強き強き意味において、大げさに申しますれば、かような大眼目に著目する精神があるのとないのとでは、國家の興亡も關係するのでないかという私は意氣込みをもつて申し上げるでございます。
○松永委員長 それではこれで法文は整備したわけでございますが、他に御發言もなく、御協議の結果大體この趣意でよろしということですから、お諮りいたします。最高裁判所裁判官國民審査法案起草に關する件について、この草案を本委員會の成案とし、本委員會提出とすることに御異議ございませんか、 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松永委員長 御異議がなければそのように決します。 なほ本案起草に關する報告書作成については委員長に御一任願いたいとぞんじますが、御異議がざいませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松永委員長 それではそのようにいたします。 日本はこれにて散會いたします。どうもありがとうございました。 午後二時二十一分散會