司法委員会 第30号
- 発言数
- 53 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1947/08/30
会議録
○松永委員長 會議を開きます。經濟査察官の臨檢檢査等に關する法律案について質疑を継續いたします。佐瀬昌三君。
○佐瀬委員 安本の田中政府委員にお尋ねしておきたいのでありますが、司法警察官の資格をもつところの經濟査察官は、現在定員何名ぐらいになつておるかという點をお答え願いたいと思います。
○田中(己)政府委員 經濟査察官の定員は八百人ということになつておるのでありますが、當面三百三十人という豫定で、目下人集めをしておるわけであります。現在のところ、大體全國で百五十人ぐらい充足しております。九月までには何とか當面の三百三十人を充實したいと思つて、今せつかく盡力中であります。
○佐瀬委員 それは本部と地方經濟安定局とに對して、どういう配置關係になるか、御説明願いたいと思います。
○田中(己)政府委員 本部の査察官は、大體二百十八人という豫定になつております。それから東京安定局が二級十四人、三級二十九人、大阪が同じく二級十四人、三級二十九人、それから名古屋が二級が十一人、三級二十三人、福岡が二級が十人に三級が二十二人廣島が二級が五人、三級が十一人、高松も同様であります。それから仙臺が二級が八人に、三級が十七人、札幌が二級が五人に、三級が十一人、合計で地方經濟安定局の職員實行定員といたしましては、二級が七十二人、三級が百五十三人と相なつております。
○佐瀬委員 安本の組織權能という方面について、昨日若干御説明願つたのでありますが、ただいま田中政府委員のお答えによる經濟査察官の人員數をもつて、この安本の大きな職能をいかに達成し得るかということについて、多少疑問をもつものであります。その行政監査、公團監査というようなことにだけ限つても、監査の目的を達するには相當な人員を要するのではないかと思うのであります。しかもそれにかてて加えて隱退藏物質の敵發とかいうような方面に經濟査察官の職能を發揮せしめる、なおまた統制經濟違反の檢擧に資するというような、司法警察官的行動をなすことは、かえつて安本本來の仕事をないがしろにするというような懸念さえ出るのではないかとおもうのでありますが、司法警察官の職務を、その査察官にあくまで遂行させるという必要性というものが、現在のこの組織機構の上において、はたして認められるものであるかどうかということは、慎重に考える理由があるのではないかと思うのであります。しかも他方において、司法警察官の所属と申しましようか、今後の運營形態等において、相當顧慮すべき問題が昨日の司法大臣の御説明の中にもうかがえているのであります。經濟査察官をして司法警察官としての職務を兼ねしめるということは、現在の安本としては絶對に必要であるということについて、事務的立場から觀察されている田中政府委員の説明を、いま一應この點について伺つておきたいと考えるのであります。
○田中(己)政府委員 安定本部で監査をいたす場合、もしくは隱退藏物質の調査をいたす場合におきましては、監査に關しましては、各關係部局長と十分に連絡いたしまして、それぞれの監査を遂行することにいたしております。また隱退藏物質の摘發と申しますか、調査の推進をはかりますためには、やはりいろいろ妨害を受けたり、その他の危險もあります關係から、警察當局、殊に一般司法警察官との連絡を十分とりまして、事務を遂行することになつているのであります。この査察官に司法警察官の職務を行うものという權限を與えますことは、監査の結果といたしまして、經濟行政に關する犯罪が發見されることがございます。そういう場合に、やはり司法警察官として、これを一應處理する權能が必要であると考えているのであります。もつともこの場合におきましても、一應の打合せをいたしまして、一般の警察官にこれを引継ぐということは、普通の司法警察官の職務執行の場合と同様にいたすことになつております。大體さような次第でありまして、査察官の立場といたしましても、一應司法警察官の職務を行うものといたしておく方が、職務執行上非常に都合がよい、かように考えているのであります。
○佐瀬委員 本年八月一日發行の「經濟安定」という雑誌に、安本の山本官房長が、經濟安定本部の新機構とその動き、という標題のもとに、簡單な論文體のものを掲載されておりますが、その一節に査察官の問題に觸れて、査察をやると必ず統制違反というものが明るみに出てくるので、こういう統制違反について、往々にして世間でいう大やみが見つかる、そこでこれを調べ上げて、ただちに司直の手にまわすことが必要になつてくる、そのためにこの經濟査察官は司法警察官の職務を行うものということにして、必要な權能を與えられている。こう書いております。大體田中政府委員の今の御説明の趣旨とこの文章とを總合してみますると、經濟査察官に對して司法警察官としての職能を大いに期待しているということは明白でございます。そこで私は司法大臣にお伺いしておきたいのでありますが、新憲法は人權保障を最大な特色といたしまして、るる規定しております。その第三十五條においては、「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収をうけることのない權利」が保障されております。強いて捜索等をなす場合には、權限を有する司法官憲、すなわち裁判所の令状によることを要する。かようにきわめて個人の居所、あるいは所持品等に對する司法的調査を嚴重に制限しておるのであります。あえてそれを行わんとするときには、必ず判事の令状よらなければならぬという手續を嚴格に規定しまして、これを戒めておるのであります。これは從來人權蹂躙の幾多の忌まわしい先例があり、おそらく司法大臣も在野法曹時代は、大いにそのために民權擁護の立場において健闘されたことと存ずるのでありますが、新憲法下において、經濟査察官がかような憲法を避けて、令状によらずして、立ち入り臨檢、檢査することは、その實態においては憲法が人權保障のために禁止しておる侵入なり捜索なりと何ら異なりがないのであります。しかも、司法警察官をして經濟査察官の職務を兼ねさせておるのでありますがゆえに、なおさらその點が重要な意味をもつわけでありますが、かような經濟査察官に臨檢、檢査の權能を與えることは、その面から見まして、憲法三十五條に眞正面から反するところの、いわば憲法違反を犯すものではないか、もしこの法案が通過するならば、憲法違反の法律をこの國會において通過せしめるという憲法の運用において最も重大な問題を惹起するのではないかと思うのであります。はたしてこの臨檢、檢査の權能を附與することが、新憲法三十五條に違反しないものであるかどうかという點について、司法大臣の責任ある御見解の御表明を願いたいと存ずる次第であります。
○鈴木國務大臣 その點は政府といたしましては憲法違反ではないと解しておるのでありまして、もとより犯罪捜査のために令状をもたずして家宅に臨檢し、あるいは押収をなすというようなことが、憲法違反であることはもちろんでありますが、これは經濟上の行政のためにいたすことでありまして、決して犯罪捜査ということを目的にしておるのではない。從つてきわめて合法的平和的方法においてだけ臨檢をし檢査をするわけでありまして、はからずもその途中、ついでにと言つては語弊がありまするが、犯罪事實を發見した場合には、憲法の命ずるところによつて、正當な手續によつてやる。こういうことになることは當然でありまして、その點は決して矛盾はしないと考えておるのであります。これを初めから司法警察であるからといつて、檢察當局の手に委ねることにいたしますれば、いかにも首尾一貫ありますが、實際の便宜はこれを許さないと思うのでありまして、經濟安定本部が諸種の生産と輸送と配給との監督に當る過程においていたしますることが、より能率的であると考えまして、愼重審議の結果、この案に落ち着いたのであります。さよう御承知を願います。
○佐瀬委員 私と見解がまつたく違うので、今度は具體的な事實の點から勘考してみたいと思うのであります。この法案の臨檢、檢査ということと、憲法三十五條の侵入、捜査ということでは、内容に違いがあるものでありましようか、この點についての御意見を承りたいと思います。
○鈴木國務大臣 外形的な形態には違いはないと思うのでありますが、目的を異にしております。侵入、捜索ということは、本人の許諾を得ずして犯罪の捜査のためにいたすところの行為であり、臨檢、檢査は、まつたく經濟安定の目的のためになされる行為でありまして、外形的な仕事は同じことをやりましても、まつたくそのカテゴリーを異にすると存ずるのであります。
○佐瀬委員 目的、動機ということは、この場合法律とまつたく關係のない事柄であるのであります。個人の自由、人權が侵害されるという客觀的事實を保護しようというのが、憲法第三十五條の精神であります。また規定そのものになつているのであります。そこに立入りあるいはものを調べる官吏が、いかなる目的、動機であろうとも、その對象となつた個人の自由や權利が客觀的に侵害されるということを、憲法は保全せんとするものであります。本法にいう臨檢、檢査も、そういう意味において、憲法第三十五條の侵入であり捜索であつて、動機、目的のいかんを問わず、客觀的にはこれによつて個人の權益が侵害され、憲法の保障する目的が達成されない結果になるのではないかと思うのであります。從つてただいまの御説明の動機、目的が、初めから捜査にあつたかどうかということによつて、何ら差異はないのであります。しかも同時にこの經濟査察官に司法警察官の職務を與えている。司法警察官の職務を與えるというのは、臨檢、檢査をして犯罪の捜査をなし得る必要があればこそ、かような職務を與えているのであります。從つて私はこの經濟査察官が令状をもたずして臨檢、檢査、即憲法にいう犯罪捜査のための侵入、捜素をするということは、明らかに脱法行為以上に、直接憲法に反した人權蹂躙になるのではないかということを恐れるのであります。もう一遍この點について司法大臣の御意見を承つてみたいと思います。
○鈴木國務大臣 その點ではどういう穏當なる臨檢をし檢査をいたしましても、若干人の自由を侵害する、制限するということは否定できないのであります。それがことごとく侵入であり捜索であると仰せられればそれまででありますが、私の考えでは、少くとも若干の自由というものが、公共の福祉に鑑みますときに制限をされるということはやむを得ないことであり、憲法も豫定いたしておるのであります。やはり先ほどから申し上げます通り、犯罪捜査という段階に〇したときに、初めて三十五條は意義をなしてくるのであります。その前にはいろいろな行政目的のために、平穏のうちに國民の權利を若干制限し、自由を制限するということは、憲法も豫定しているところであると解しているのであります。
○佐瀬委員 ただいまの御説明の中から、二點について問題があると思うからお尋ねしてみたいと思います。第一點は、臨檢檢査をして、その後に犯罪と考えれば、犯罪捜査にかかり、その後は憲法三十五條の支配下に屬するのだという御説明のようでありましたが、すべて犯罪は捜査の端緒が大事であります。問題は捜査の端緒によつて刑事事件は決定するのであります。これは司法大臣も多年の在野法曹としての刑事事件をお扱いになつたことからして、よくおわかりのことと思うのでありますが、つまり臨檢檢査して犯罪があるかどうかということがそこでわかるのであります。もう捜査は臨檢檢査によつて客觀的には始まつておるのであります。私どもはそれが令状によらずして、實體的に臨檢檢査として犯罪捜査が行われるというのは、憲法三十五條に反するのだ、これは一つの物理的觀念としても、當然そうなると思うのであります。どうもその點に對する司法大臣の御認識が、いささか違うように考えますので、この點をなお確かめる次第でございます。次に公共の福祉のためには、個人の自由、人權が制限されるということは、憲法も豫定している、だからかりにこれが犯罪捜査として人權蹂躙になるような疑いがあつても、この公共の福祉という建前から制約を受けるから、それは憲法違反にならないというような御見解のように拝聽したのでありますが、私はその點についても、憲法論として相當問題があると思うのであります。なるほど十二條以下におきまして、個人の基本的自由、人權をこの憲法が附與しているけれども、それは公共の福祉のために利用する責任を負うのだということを規定しております。今日はこの憲法の解釋において基本的人權は絶對性をもつている。從つて何ら制約を受けないではないかという解釋すらございます。そうしてただその權利の義務制を個人の道義に任して、その個人が權利を公共の福祉のために自分から良心的に行使する義務を負うのである。權利すなわち義務であるというような法理論がそこに成り立つておるのであります。しかし私は天賦人權論式な、フランス革命流な基本的人權絶對主義を、わが憲法が採用しているとは思いません。公共の福祉のためという場合には、そこにやはり基本的人權の自由は、ある程度の制約を受けると考えるのであります。しかしながら、憲法が個人的自由、人權を特に新たに認めた趣旨から申し上げますと、その制約の方式は、やはり立法主義、議會が法律によつて規定することによつて、初めて、制限ができる。國民の總意によつて、これが公共の福祉に合致するかどうか、個人の自由、人權がこれから先は制限を受けるかどうかということを判定する。この國會の意思によつて成り立つところの法律によつて、初めてそれを制約し得るというのが、新憲法全體の精神から結論し得るところである。こう私は考えるのであります。從つて單に行政上の箇箇の處分をもつて、いわんや經濟査察の官の臨檢檢査というような行政的な行為において、勝手に公共の福祉のためになるからという名目のもとに個人の自由、人權を侵害してかなりというようなことを主張されるならば、これは官僚跋巵の温床をなすわけであつて、人權蹂躙は今後陸續として危險性があるのであります。斷じてさような理論は憲法論としては許すべきではないと私は考えております。從いまして、さよう理論的根據に基いて、この査察官の臨檢檢査が憲法三十五條に反しないというような御見解は、きわめて危險な見解ではないかと私は考えるのであります。これを第二點といたしまして、司法大臣の御答辯を煩わしたいと思います。
○鈴木國務大臣 第一の點につきましては、臨檢檢査と侵入捜査とどう違うかといえば、物理的外形事實としては、別に違うものではないというのは仰せの通りであります。ゆえに私はその動機目的を問題といたしたのでありまして、結局外形的事實にその差別を求めるわけにいかぬのでありまして、私の考えでは犯罪を初めから捜査するためにはいる場合は侵入でありますし、行政目的のためにはいります場合には、そうして法律で許されます場合、そのためにこの法律の制定をお願いいたしているわけでありますが、それは臨檢であり檢査である、こう解釋するよりほかないと思います。それから公共の福祉のために制限ができるという考え方は危險ではないか、これは憲法改正の際にやかましく論ぜられた點でありますが、結局公共の福祉に反しない限り、生命、自由及び幸福追求の權利というものが最大の尊重を受けるというふうに、十三條においても書いている次第でありまして、國民として共同生活を營んでおります以上、そして行政の目的がその公共の福祉を最大限に増進するにあります以上、社會生活の原則として、若干の自由を制限せられる、權利を制限せられることは、否定すべからざることであると思うのでありまして、私はやはり公共の福祉に合する限りは、若干の制限はやむを得ないものであると解釋しております。立法主義という意味も、そういう意味において私どもは、包括的でありますが、この法律が制定せられますれば、その範圍内において、經濟査察官はその自由のある程度の制限をなし得ることになる。もしその限界を越えて權利を侵害し、あるいは國民に損害を與えるということがありますならば、過日ご協贊を得ました例の國家賠償法というようなものがあつて、それを償うことができる。さらにそれがはなはだしく職權濫用でありますならば、刑事上の制裁をも公務員が受ける。こういうことで救われていく。絶對にやつていかぬということでありますならば、ほとんど行政の目的を達することができないと考えるのであります。
○佐瀬委員 今度は第二點の方からもう一遍お伺いしてみたいのでありますが、公共の福祉のためには、行政權においても、個人の自由、人權を制限しても可なりという御見解のようであります。これはひとり司法大臣の問題としてでなく、もし現内閣のもし現内閣が新憲法下において立憲内閣の使命を自覺されておるならば、閣僚全體がさような考えをもつて進むということは、重大な問題であろうと信ずるのであります。憲法擁護のために、私どもは政治問題としても、これはかなり重大なことになるのではないかと思うのであります。ただいまの御見解は、司法大臣一個の御見解として承つてよろしいが、あるいは現内閣全體の御意見として承つてよろしいか、この點をまず確かめておきたいと思います。
○鈴木國務大臣 お答えをする前に、ただいまの御質問は非常な誤解があると思うのでありまして、私は決して行政權で國民の權利、自由を侵害してよろしい、あるいは制限してよろしいというようなことを申したつもりはないのであります。つまりこの法律をつくつていただきたいということを求めるのは、それが立法主義である。それで行政官がそういうことをやつてはいけないというようなお言葉に聞こえましたから、それでは行政の目的は達せられない、法律に許される限りは臨檢もでき、檢査もできなければ、行政の目的を達せられないから、そこでそういうことができるという根據を得まするために、この法律をつくらなければならない。法律がないのに、行政官が勝手に自由を制限し、權利を侵害するということは、何人といえども認めないと思います。誤解に基く御質問に對してお答えすることはどうかと思いますから、そういう意味であるということを、まず釋明いたしまして、重ねて御質問があればお答えいたします。
○佐瀬委員 第一點の問題に立返りまして、査察官が臨檢、檢査をして、それが客觀的な犯罪捜査になる。侵入捜査という、憲法第三十五條その他刑事訴訟法の規定しておる犯罪捜査の過程に客觀的にはなるという事實はお認めになると思うのでありますが、その點はどうでありますか。
○鈴木國務大臣 これは客觀的には、評價のしかたでありますが、そうなることはあるだろうと思います。
○佐瀬委員 私はその客觀的事實が、先にも申しましたように、憲法の保障するような個人の自由、人權を侵害することになる。從つてそれを憲法は守ろうとして、そういう場合には、すべて令状によらなければならぬということを、三十五條において規定しておるのだと思います。經濟査察官が司法警察官を兼ねておるというこの制度の上に立つて考えれば、その客觀的な犯罪捜査がおこなわれるということを、經濟査察官の任務においてやつたからよろしいというわけにはまいらぬのであります。いわんや動機、目的というのは、まつたくこれは主觀的な問題であります。經濟査察官にその主觀的な目的がきめられており、從つてその目的がなかつたら犯罪捜査にはならぬというようなことは、これはまつたく事實に反する結果になつてしまう。いやしくも客觀的に個人の自由、人權を侵害するような犯罪捜査は、嚴に戒めるのが憲法第三十五條の精神でありますから、私は依然として、そこに憲法違反の問題は殘るということをここに確信するのであります。しかしこれに對して司法大臣がなおしかるものでないという御見解ならば、これは司法大臣の御見解としてただ承つておくに止めたいと思うのでありますけれども、私のさような考え方は、こうも誤りでないというふうに私は自信をもつのであります。
○北浦委員 私は司法大臣に質問はなかつたのでありまするが、ただいまの應答を聽いておりますると、どうもおかしい。それでお伺いするのでありますが、なるほど從來は、司法と行政罰、これは區別されて盛んに行政上の罰もあつたのでありますが、この新憲法下では、政令でも特に法律の委任がある場合を除いては罰則を設けることができない。範圍が非常に狭まつてきた。これは佐瀬君のお説の通りに、自由、人權、基本權、これを擁護するために狭くなつた。司法大臣の御答辯を聽いておりますると、憲法三十五條は司法に關する犯罪嫌疑あるいは犯罪ある場合に適用する憲法である。行政の方では、これは支配されない。はたしてその通りであるといたしてみますると、刑事被告人すら丁重なるいわゆる權限がある司法官ーーこれは刑事訴訟法によりますと裁判官、判事となつておりまするが、判事の令状を、しかも個々別々に必要としておる。侵入の場合は侵入の場合の令状、捜索の場合は捜索の令状、刑事被告人に對する侵入でも、この手續を必要といたしまするのに、何ら犯罪の嫌疑のない、ただ物をたくさんもつておるのだということで、簡單に人の家に踏みこんだり、あるいは持物を捜索したりすることは、これは司法大臣に合わぬ御答辯だろうと私は考える。この矛盾をあなたはどうして説明されますか、お伺いします。
○鈴木國務大臣 それは申し上げるまでもなく、この法律の第一條は、目的も、それから事項も制限されておるのでありまして、決して一般の個人の私生活を臨檢したり、檢査したりするものではない。御承知の通り、物資も制限されておる。また臨檢する場所も制限されておる。事務所、營業所、工場、事業場、倉庫ーー元來憲法三十五條の人權の章は、各自の私的生活を乱さない、私的生活の安全というものを保障いたしますために、歴史的に發達をしてきた基本的人權であることは、御承知の通りであると思うのであります。經濟上のこれらの活動を營みまするものは、これらの場所が、決して私的生活の場所でないとは申し上げませんが、少なくとも行政目的のために必要であれば、調査を受けるという義務を公共福祉の建前からもつておると考えられるのでありまして、それをなすことができないということでありますれば、統制の目的というものは、ほとんど達することができない。統制を絶對に否定する思想をもてば別でありますが、にせ査察官というようなものによつて濫用されないために、身分を示す證票というものを用いておるわけでありまして、突如として私的生活を脅かす犯罪捜査のためにする侵入捜査と、これを同一に論ずることは、いかがなものであろうかと存ずるのであります。
○北浦委員 あなたは先ほどから、またただいまもその通りでありますが、調査をなし得ないものとすると行政上困るという趣旨の御發言と思いますが、われわれは行政の目的を達するためにはなし得る方法があるが、この方法ではいけないということを論じておる。そこで私の質問に對するあなたの御答辯は、物資や場所が制限されておるから差支えないのだと言う。これはどうも昨年來大いに敬意を表しておる鈴木司法大臣の御答辯としては、感心できない。物資が制限されておるとか、場所が制限されておるとかいうことは問題ではない。換言いしますと、まず範圍が狭いから差支えない。さようなことは問いに對する問であつて、答辯とは思わない。それよりもお伺いしておりますように、法に制限されたる物資につき、制限されたる場所につき刑事被告事件があつて、そこへはいつていくのでも、權限のある犯罪令状も別々に必要とするのに、あなたが言われる制限されたる物資、制限されたる場所については、何にも要らないで、その行為をなし得るというこの矛盾を、どうして説明するか。ほとんど犯罪の嫌疑のない者に對して、簡單に檢査するという。これがわれわれにわからぬのであります。今あなたは場所も物資も制限されておるから差支えないという趣旨でありましたが、しからば制限されておる場所であり、物資であつてしかも刑事被告人の場合においては、親切丁寧なる手續も必要とすると規定している憲法の規定を蹂躙するものであると言われても、私は過言ではないと思うが、もう一應明快なる御答辯を願いたい。
○鈴木國務大臣 先ほど來申し上げる通り、犯罪捜査のために臨檢と言わずに、私は侵入と申したのでありますが、侵入する場合ならば令状をもつていくべきであり、また令状をもつていくのが當然でありますが、目的が犯罪捜査でないのでありますから、證票を表示して臨檢する。そうしてもし犯罪に該當するという疑いを持つような事實に當面したときに、初めてそこで令状の問題が起つてくる。それで決して遅くないというのが、私の答えでありまして、どうもそれ以上あらかじめ皆令状をもつて出かけていくということを規定することは、過ぎたるものであると考えます。
○佐瀬委員 その程度のことを經濟査察官に期待するならば、經濟査察官を司法警察官とせずに、臨檢捜査によつて犯罪ありという端緒を握つたならば、それを司法官憲に告發をする、そうして司法官憲の發動を促すというふうにすることをもつて、十分憲法違反のそしりを受けずに目的を達すると考えるのであります。そういう意味において、殊に安本令第十五條にも他の官廳に對して必要なる事項を命ずることができるということにもなつておるのでありますから、ただいま司法大臣の御説明のような程度のことを期待するならば、むしろ司法警察官たることをやめさせる、そうして私が冒頭に田中政府委員にも申し上げましたように、經濟査察官は安本本來の仕事に局限するということが正しいのではないかと思いますが、この點念のためにお伺いします。
○鈴木國務大臣 そこに問題がまいりますと、きわめて適切な御質問になつたのでありまして、その點ならば私どもも立案に際して十分問題にしたのであります。ただ行政は御承知のごとく、できるだけ能率主義、便宜主義に從うことが目的であります。そこで權限ある者が、かりに臨檢をした、そして犯罪を疑うべき事實に當面した。それから先は司法警察官に告發をする、検事に委ねる、これは理論的に確かに正しいのでありますが、それはあまりにも實際の便宜を無視したもので、同じ人が歸つていつて令状をもらつてきて、今度は犯罪の捜査をしてまいりますならば、一層能率をあげることができる。そういう見地からそこに人をかえることは、司法手續の場合であるならば、人權擁護の見地からは望ましいことである。私はできるだけそういうことを主張しておる一人でありますが、この際特に人をかえなければならないほどの必要を感じませんので、人權蹂躙が行われない限り、また行われないことを信じますがゆえに、その段階に達した後に、令状の問題を云々してもよろしいし、その人をかえなければならないというほどの人の權利自由に危險を感ぜしめるものではないと思うのであります。
○北浦委員 あなたは初めからの主張をおかえにならぬようでありますが、あなたが何とおつしやつても、憲法でせつかく鄭重な規定をおいて、あなたの司法畑でやれということの規定をおいてあるのを、われわれはたれが聽いても得心がいかないと思う。罪科もない、何ら問責さるべき事實のないにかかわらず、またあつても刑事被告事件ではない。それを憲法に禁じてあることを行政行為でやろうということは、どうしても間違いである。あなたは法律で認められさえすればとおつしやるが、さような法律を認むべきか否かが今問題である。憲法に反するか否か。反すればかりに法律をつくつてもそれは無効なんだ。御承知の通り憲法最高法規の條章に反するものは、法律であろうが、詔勅であろうが、何であろうが、それは無效と書いてある。それを今お尋ねしておる。法律が許されるならば憲法に觸れないという論法は、われわれは感心しない。しかしどこまでいつても二條のレールを進んでいくのでありますから、この點は鈴木さんとしてよくお考えくださらんことを待望いたします。次にこれも法律問題でありますから、もう一點お伺いいたしておきますが、昨日同僚の方から、大正十二年勅令第五百二十八號、すなわち司法警察官吏及びその職務を行うべき者の指定等に關する勅令でありますが、この一部を改正した。いつしたかというと、五月一日にした。勅令の改正ということは、私が論ずるまでもなく、あなたもよく御承知の通り、舊憲法下における勅令は、議會の承認を經なければならぬ。ところがこの重大なる改正をやつた。これを嚴格に論じますと、特に私の信念から申しますと、舊憲法下においては、天皇は緊急勅令であろうが、特別命令であろうが、あるいは省令、閣令、さようなものは天皇の御意思に從つて出すことができましたが、今日はできない。できない今日において、わずか二日前にこういう大改正を施した。今日これでは議會の承認を得ることもできますまい。そうすると、御答辯としては、一旦議會の承認を經た以上は、どんなに改正しても構わないのだ、これよりほかはないだろうが、それはいけない。このような重大な改正を行うことは、これは明らかに新憲法を蹂躙したやり方である。この點についてあなたの法律家として、司法大臣としての明快なる御答辯をお願いいたします。
○鈴木國務大臣 御質問の大正十二年勅令第五百二十八號の問題は、私の就任前のことでありまして、それは立法手續としたは仰せの通りあるべきであろうと思いますが、實際問題としては、非常に多數の法律が憲法の施行とともににわかに改正することが困難であつた事情があると思うのでありまして、そのために便宜政令あるいは勅令によつて、さらにその效力を在續させたということは、やむを得ない事情であつたと了解できると思います。もし議會の多數の意思が必要であるとお認めになります場合には、仰せのごとき方法によつて改正せられるものと考えております。一應有效に存在するのであるが、これを有效としてこの種の立法をいたしますことは、批判の餘地はありますけれども、やむを得ないことと考えます。
○北浦委員 これは法律でなく勅令でありますが、その勅令の大改正をやつている。どうも司法大臣は詳細なことを御存知ないように見受けますので、私のこの經濟安定本部令というものについて、司法大臣にお伺いするのは、多少御無理であろうと思いますので、これで私の質問は打切ります。
○松永委員長 中村君、司法大臣に對する質問は簡單ですか。
○中村(俊)委員 簡單です。
○松永委員長 それでは中村俊夫君。
○中村(俊)委員 私のお尋ねしたいことは、憲法第三十五條と本案第二條の關係をお伺いしようと思つたのですが、ただいま佐瀬委員から御質問があつて、政府の御答辯もあつたので、私のこれに關する質問を省きたいと思いますが、ただお尋ねいたしたいのは、經濟安定本部監査委員會規程の第二條の第一號の經濟違反取締の基本方針についてですが、とにかく提案理由はいろいろとあるけれども、本案の目的は主眼を經濟違反の取締りにおいておられることは間違いないと思うのであります。從つてどういう方法で經濟違反の取締りをなさるのか。言いかえますと、今日本全國の業者で、おそらくやみの取引をしていない業者はなかろうと思います。もちろんそれはよくないことであります。あるいは工員の給料がだんだんと上つてくる。そしてどうしても金錢支拂ができないから現物で支給してやるということもほとんどやつております。またいわゆる價格等統政令で禁止されております物交なども盛んに行われているのでありまして、ある會社のごときは、その業者の集まりにおいて、物交はやむを得ないのだということを言つて、それがためにこの物交が問題になつたときに、起訴猶豫になつた事件もあるくらいでありまして、おそらく臨檢をされれば、古疂をたたくごとく必ずそういう經濟違反の問題が起るだろうと思われるのであります。そのときに、よほどこの運用を誤らないようにされなければ、今やかましく言われている生産増強ということは萎縮してしまつて、逆効果を來すことが多々あろうと思われるのであります。しかもそれに伴つて必ず涜職事件が頻繁に起りはしないか。現在の官吏全體のことを言うのではないが、おそらく頻々として日常の新聞に掲載されていることが、いわゆる官吏の涜職事件ということが、この本件第一條の運用を誤ることによつて頻發してくると思います。私はこの一條の運用を誤つたならば、一面においては生産を阻害し、一面においてはその業者と臨檢經濟査察官との間に忌わしき職事件が頻々として起ることを心配するのでございます。從つて當局としては、この臨檢をなさる、あるいは業務の状況を視察なさるのか、またいま私の申し上げるような心配を、どういうような方法をもつてこれを防ごうとされるのか、この點についてお尋ねしたいと思います。
○鈴木國務大臣 ただいま御質問の二點は、まことに適切な御質問でありまして、私どもその點におきましては、憂いをひとしゆうするわけでございます。しかしできるだけ運用の際において十分注意をいたしまして、ただいたずらに犯罪をつくる、あるいは涜職事件等も頻發いたしまして、けが人を殖やすことに相なるようなことのないように、十分の注意をいたす、そういうことを申し上げておきたいと思うのであります。
○中村(俊)委員 私のお尋ねいたしたいのは、具體的な、あるいは今からそういうことは豫測されないという御答辯になるかもしれませんが、たとえば臨檢をされる、あるいは書類の檢査をするということは、定期的になさるのか、あるいは抜打的にこれをなさろうとするか、あるいは司法警察官と連絡してこれをなさろうとなさるか、つまり第一條を惡用すれば、業者をいじめることにもなりまして、生産を萎縮させることになるし、また行き過ぎては涜職の事件も起りますが、どういうふうな具體的方法をもつてなさろうとなされておるかという點を、私はお伺い申し上げたいと思います。
○鈴木國務大臣 その點は、お答え申し上げるのに非常に困難でありますが、定期的にやる。豫告をしておいてやる。いろいろな場合を考慮はいたしておりますが、ただいまここでどういう方法にきめたということは申し上げかねますが、御趣旨はよくわかつておりまするから、いわゆる強いて過ちをつくり、あるいはけがを出すというようなことのないように、愼重な運用を期するつもりである。こうお答えをいたしておきます。
○佐瀬委員 最後に一點確かめておきたいのですが、司法警察官たる經濟査察官に對する監督と、その責任關係はどういうふうになるのですか。
○鈴木國務大臣 御承知のように、これは經濟安定本部長官、それから内閣總理大臣が監督の責任をもつております。司法警察官たる職務は行わせますけれども、身分は經濟安定本部に所屬しております。
○鈴木國務大臣 その點は刑事訴訟法の規定によりまして、檢察官の指揮命令を受ける立場になるわけであります。と同時に、安定本部の長官以下の指揮命令を受けておることはもちろんであります。特に犯罪捜査ということに連關いたします場合には、檢察官の指揮命令を受けるわけであります。
○明禮委員 私は資料がないから、お尋ねをする前に第一條第一項の第一號に「臨時物資需給調整法第一條の規定に基く命令により指定された物資」というのは何でありますか。それを伺つてみたいのであります。
○鈴木國務大臣 指定生産資材というふうになるわけであります。それから指定配給物資であります。
○明禮委員 第一條の規定はどうでありましようか。大分問題のようでありますが、第一條の後段が問題になります。前段は「生産、輸送、割當、配給又は使用について、關係者に報告をさせ、」その他調査をなすことができるとでもなれば、あまり問題がないのだと思うのでありますが、「又は」から後の問題が違憲の問題、その他行政官廳とのいろいろな紛争ができると思うのでありますが、これはそういうふうになすつたのでは目的を達成しないのでありましようか、それを承つておきたいのであります。
○鈴木國務大臣 最初の御質問をちよつと聽き漏らしたのですがーー。
○明禮委員 第一條の「左に掲げる物資の生産、輸送、割當、配給又は使用について、關係者に報告をさせ、」というところまでは、あまり問題はないと思います。それから後が問題でありますから、そのあとにその他必要なる調査をすることができるとすれば、問題はないと思いますが、そういうわけにはいかないのですか。
○鈴木國務大臣 そういう言葉で規定いたしますれば、やはり必要なる調査ということは、檢査を含むことになつてきまして、似たことに相なります。報告だけというならば話は別でありますが、報告だけでは調査を徹底することができません。
○明禮委員 しかし必要な調査と言いましても、今の問題になつております憲法第三十五條の規定によつて、住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることがないという點は、どうしても除かなければいけないということは、今まで論議がありました通りです。憲法の第三十三條の場合の「除いては」、つまりこれは犯罪がある時ですら、犯罪になる時以外はこういうことをしてはならぬと憲法が言つておるのでありますが、犯罪がある時を除いてはできないと言つておることによつて、この憲法はできないということを、「又は」から後に附加えてある。だからこの問題はいろいろありましたけれども、どうしても違憲問題に引掛かると私は考えまするので、必要な調査ということは、そういうことを除いた必要な調査をするということに止めて、そういうふうにすることに御同意を得られれば、非常にさいわいだと思います。
○鈴木國務大臣 御趣旨はよくわかりまするが、それではあまり抽象化されて、範圍が大きくなり過ぎて、かえつて原因を殖やすというふうに考えられまするから、遺憾ながら贊成であるということは申し上げかねるのであります。
○明禮委員 これは司法警察官、あるいは安本のこの經濟査察官の臨檢檢査等に關する本法律案との警察官同士において、いろいろな問題が起ると思うのであります。今までにも官廳方面と、あるいは内務省の經濟警察方面との争いが起つて、非常に困つておる事例がたくさんあるのであります。經濟警察方面の關係者とこの本案とで、やはりいろいろな問題が起る。この點についてはさようなことがないと考えられますか。
○鈴木國務大臣 それは起ることがあろうと思われまするが、できるだけそういう摩擦を生ずるようなことのないように、政府としては適當な措置をとりたいと存ずるのであります。
○明禮委員 これはいろいろ議論されたことでありますから、あえて言いませんが、先ほど中村君が言われたように、こういうことをやりますれば、増産の妨げをするのみならず、かえつて逆效果を來すものであります。私は第一條のこの規定は、今まで社會黨あたりでお考えになつておる國管というか、國營というものの思想の温床が、ここに發露しておるものだと思います。こういう一つの取締りと言いますか、家宅に侵入するところにまで手を伸ばすことは、一つの國家管理という點にまで、一つのイデオロギーが進んでおるからこうなつておる。しかもやがて國營にまですべての生産を伸ばしていくという一つの大きな理念が含まれておるように私は考えますが、この點いかがでありますか。
○鈴木國務大臣 その點は別に關連性はないと、私は考えております。御承知のように、この法律は、經濟安定の緊急施策の實施のために必要な限りというので、この危機を突破して安定いたしますれば、一日も早くかくのごとき不愉快なる法律はなくしたいと考えております。私どもといえども、たとえ統制經濟を主張し、あるいは國家管理を主張いたしましても、決して臨檢捜査というようなことを本體にして、經濟の運用をすべてやつていくべしという考えはもつておらないのであります。これはわが國のある意味において、非常事態に鑑みて、やむを得ずとるところの緊急措置であるということを、御了承願いたいのであります。
○明禮委員 私は今申し上げました後段についての規定は、何とかなさらなければ、私ども同意することのできない遺憾の意を表するものであります。
○松永委員長 午後一時半まで休憩いたします。 午前零時四十三分休憩 ————◇————— 〔休憩の後は會議を開くに至らなかつた〕