司法委員会 第22号
- 発言数
- 29 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1947/08/16
会議録
○松永委員長 會議を開きます。 これより八月四月付託された武藤運十郎君提出の罹災都市借地借家臨時處理法の一部を改正する法律案を議題とし、提案者の説明を求めます。武藤運十郎君。
○武藤運十郎君 それでは罹災都市借地借家臨時處理法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。委員の皆樣は法律の專門家でありまして、私どもの先輩でございますから、釋迦に説法のような感がありますけれども、順序といたしまして、まず改正さるべき現行法の概略を申し上げたいと存じます。なおこの現行法につきましては、ただいま司法省の方に印刷したものがございますので、取寄せて皆樣のお手もとに差上げることになつております。 まず戰災地の借地借家關係を調整いたします法令といたしましては、昭和二十年七月十二日勅令第四百十一號の戰時罹災土地物件令というのがありました。これは戰時緊急措置法第一條に基きましてできた勅令であります。この大體の内容を申し上げますと、この戰時罹災土地物件令の適用されるのは、罹災地の土地と物件に限るのであります。疎開地を含んでおりません。これは第ニ條に規定してあります。 第二にこの勅令によりまして、從來ありました借地權は、その進行を停止されることになつたのであります。いわゆる借地權の冬眠状態といわれるものでありまして、これは第三條に規定がありました。 第三には、この勅令によつて、居住者、借家人は、その燒跡にバラツクを建築して住まう權利が與えられました。四條の第一項でございます。地主または地主が建てない場合には、地主から第三者がこの土地を借りまして、バラックを建てるということも許されております。四條の四項にそのことが規定されてあります。ところが御承知の通り、終戰になりまして戰時緊急措置法が廢止せられましたので、從つてその基礎を失いました戰時罹災土地物件令という勅令もこれを廢止しなければならない運命に立ち至つたのであります。そこで罹災土地、疎開土地の借地借家關係を調整するために、新しく法律を設ける必要が起りまして、去る九十議會に司法省から提案をせられましたものが、ただいま改正をされようとしておりますところの罹災都市借地借家法であります。これは御承知の通り、さきの戰時罹災土地物件令と違いまして、戰災地だけでなく、疎開地の借地借家關係をも含んでおるのであります。そのことは第一條に規定がしてあります。それから第二に、舊令――條文にも舊令という言葉を使つてありますので、廢止になつた戰時罹災土地物件令を舊令という言葉で呼んでおります。舊令第四條によりまして、居住者、借家人の建てたバラック及び地主より借地して第三者の建てましたバラックは、なお向う一年問使用し得る。また菜園その他の土地は六箇月使用し得るということが規定をせられました。これは第二十九條であります。第三にただいま申し上げました舊令に基く土地の使用者、現に使用しておるものだけでなく、そのほかのものでありましても、罹災土地の當時の借主は、土地所有者に對しましてその土地に借地權が存在しない場合には、他のものに優先をして建物所有の目的で、この法律施行の日から一年間に限つて借地の申出をすることができる。言いかえますならば、借地權の設定を求めることができるということが規定せられております。これは第二條であります。またその土地に借地權があります場合には、その借地權者に對して、他のものに優先して借地權の讓渡を求めることができるということが規定をしてあります。やはりこの法律施行の日から一年間、すなわち來る九月の十五日までに申出をしなければならないということになつておるのであります。これは第三條に規定があります。第四には、優先借地權者、また優先してただいま申し上げましたように借地權を讓り受けたものが、六箇月内に正當な事由がなくして建築に着手しなければ、契約を解除されて、その權利を失うという規定があります。これは第七條であります。次に疎開地と罹災地の場合でありますけれども、疎開地の借地權者は――借地權を失つているものは、先ほど申し上げましたように、借家人と同じ立場で優先して借地の申出を地主に對してすることができる。大撃こういう規定になつておるのであります。なお枝葉の點でありますけれども、第十二條によりますと、土地所有者はこの法律施行の日から一箇年以内に、借地權者に對して一箇月以上の期間を定めて、その期間内に借地權を存續させる意思があるかないかを申し出るように催告することができるということになつております。なお借地借家問題についての紛爭につきましては、その土地を管轄する區裁判所の管轄に屬す。またただいま申し上げました催告の相手が不明の場合における公示送達の管轄は、やはりその土地を管轄する區裁判所の管轄になるというふうに規定がしてございます。鑑定委員の選任任については、地方裁判所長がこれを行うということになつておるのであります。大體現行法はこういうふうな組立になつております。なお詳細な條文につきましては、後ほどお手もとに差上げます條文について、十分に御檢討を願いたいと存じます。 さてこれを改正する要點でございますが、第一に第一條中「災害」の下に「又は火災、震災、風水害その他の災害」を加えるというのが改正案であります。御衆知の通り、最近非常に火災や風水答、震災等が多いのでありまして、内務省警保局の消防課に調べてもらいますと、昨年五月から今年の五月までの一箇年間に、四百戸以上燒けたところが八箇所もあるわけであります。こういうふうに、一朝にして四百戸、千戸というような建物が火災で燒けたり、風水害で倒壞、流失いたします場合には、その土地の借地借家關係というものは、非常な混亂をいたすのでありまして、そのことは、戰災の場合と異ならないような實情であります。そこでさような災害のありました各地から、罹災土地借地借家臨時處理法と同じ趣旨の取扱いをしてもらえないかということが、私どものところへもずいぶん參つておる次第でありまして、なるほど實情を聽きますと、これはこの法律の趣旨を適用して整理をいたしました方が都合がいいと考えますので、單行法をつくりますれば一番いいのでありましようけれども、さいわいに、ここにこういうふうな法律がありますから、この第一條中の本法の適用される災害の範圍の中に、戰災、疎開だけでなくして、火災、震災、風水害その他の災害を加えることによつて、簡單にこの問題を解決し得るのではないかというふうに考えまして、第一條の改正を考えた次第でございます。 その次に第二條中「一箇年」を「ニ箇年」に改める。第二條は先ほど申し上げました通り、居住者、借家人が土地の所有者に對して借地權の存在しない場合に、優先的に借地の申出をすることができるという條文でありますが、一年間はこの九月十五日でおしまいになりますので、これを延長をしなければならない。その理由はまず第一に、この法待は司法省方面、あるいは辯護土會方面におきまして、その普及徹底に十分努力を傾けておられるのでありますけれども、それにもかかわらず、本法による優先借地權のあるということを、まだ十分に理解をしておらないものもありまして、從つてその優先借地の申出をする權利を行使しておらないものが非常に多いのでございます。第二に、最近におけるインフレーションの異常な高進、資金、資料、勞務の不足及び建築許可の困難というような事情は、ますますはなはだしくなつてまいりました。また地方に疎開しておるものにつきましては、轉入難、交通難、食糧難、旅館難等のために、疎開地または避難地から燒跡に尿つてくることは、本法制定當時りも一層困誹となつてまいりました。特に東京、大坂、名古屋その他の大都市になりますれば、なりますほど、建築が復舊しておりません。特別の小地域を除きましては、ほとんど大部分が燒跡のまま殘されておるというような實情でございます。かような次第でありまして、居住者、借家人の中には、來る九月十五日までに優先借地の申出をすることの非常に困難なものが多いのでございます。そこでこの權利を十分に保護してやるために、本法制定の趣旨を實現させるために、この申出をする期間をさらに三年ないし五年延ばしてもらいたいというような要望が非常に多いのでございます。しかし三年、五年ということは、非常に長いことでありまして、復興の状況等も考慮いたしまして、とりあえず一年問だけ延長して樣子を見たらどうか、その上でなお延長する必要がありますれば、さらに延長をすることにして、とりあえず一年問だけ延長をしたい。こういうふうに考えましたことが、第二條改正の理由でございます。 その次には第七條であります。ただいま申しました通り、インフレの高進、資金、資材、勞務の不足及び建築許可の制限等によりまして、建築はますます困難であります。せつかく優先借地權によりまして借地權を得ましても、それから六箇月以内に建築に着手をいたしませんと、その權利を失うということになつておりまして、これは非常に苛酷だと考えます。そこでその期間を一箇年に延長しよう、こういうのが第七條改正の理由でございます。 その次には第九條でありますが、先ほど申し上げましたように、現行法におきましては、戰災地と疎開地とを區別いたしております。隣り合つておりましても、戰災地の借地人は冬眠状態から覺めると同時に、當然借地權を自分のものとして行使することができるのでありますけれども、疎開地は借地權が一應消滅したいというふうに考えているところが非常に多いのでありまして、そのために隣同士であつても、疎開者の方は、疎開地の借地權者はそこへ當然尿つてきて家を建てることができない。それを地主がいいことにして、ほかへ高い權利で賣りつける、あるいは元の借地人に貸しつける場合でも權利金を高くとるというようなことでありまして、非常に不公平であります。申すまでもなく強制疎開は、戰災とその意義をまつたく同じうするのであります。すなはち丙者とも誤れる戰爭の犧牲者であり、自己の意に反し、あるいは不可抗力によりまして、借地上の建物を失つたものでございます。ゆえに強制疎開地の借地權者が戰災地の借地權者と同樣に保護されなければならないことは申すまでもございません。しかるに本法はただいま申し上げましたように、戰災地の借地權についてはこれを借地權として保護するにかかわらず、強制疎開地の借地權につきましてはこれを消滅したものとして、ほとんど保護を與えていないという實情でございます。これはまことに公平を失した不合理の處置と申さなければなりません。第九條は、強制疎開地の借地權者に對して、疎開で失つた借地權の目的土地につき借地權設定の請求權は與えてはおりますけれども、これははなはだ不十分でございます。のみならず目的土地の上にすでに建物が建てられている場合には、その權利を行使することができないというわけであります。強制疎開地の借地權と戰災地の借地權とを區別する理由といたしまして、前者は疎開の際借地權の補償を國庫から得ているが、後者はこれを得ていないというように申す沓がございます。なるほどその通りでありますけれども、これは單なる概念的な法律論でありまして、實情に適しないと考えます。もしそういうふうに申しますならば戰災者は建物に對する相當多額の戰爭保險金、これは保險會社を通じてなされた國家補償でございますけれども、これを受取ることによつてある程度借地權の補償を受けたということができるのであります。しかも疎開による借地權の補償は一方的であり、きわめて少額のあてがい扶持でありまして、借地權沓はこれを一種の戰災を觀念し、戰爭後は當然借地權が自分に戻つてくるものと考えない限り、決して默つて收まるはずはなかつたのであります、ゆえに借地權者の大部分は、疎開の間借地權が補償され消滅させられたことを知らないで、強制疎開によつて建物は除却されたけれども、戰災と同じく借地權はいわゆる冬眠状態にあるけれども、存續するものと考えている者が非常に多かつたのであります。しかるに當局は昭和二十年四月ごろに至りまして、御承知の通り、突如として疎開を解除し、借地權者保護のために、何ら法制的措置を講ずることなく土地を無條件で地主に返してしまいました。非常に喜んだのは地主でありまして、地主はただちにこの土地を高い權利金をとつて第三者に貸してしまいました。借りた第三者の中には自己のための建物所有を目的とする者もありましたけれども、中にはこれを奇貸として土地の買占めをしました惡質ブローカーも非常に多いのであります。これがために地主とブローカーが不當な利益を得まして、借地權者は意外にも借地權を失つて路頭に迷うという實情も、非常に多いのであります。また強制疎開地の借地權もただいま申し上げましたように復活をいたしますと、すでに建物が建つている場合には、現状を變更することによつて混亂を生ずるというようなことを申している者があります。しかしその點は戰災地についてもまつたく同樣でありまして、もしその點を理由として反對しますならば、戰災地の借地權もこれを否認しなければならない。これは借地借家人を保護することを目的とする本法そのものを否認することになるのであろうと考えます。本法改正はこの條文改正と同じ趣旨の御意見は去る九十議會におきまして本法審議の際にも強く主張せられました。東京辯護士會からも、本院に對しましてその旨の陳情があつたのであります。私ども委員としてこの陳情を受けたのでございますけれども、法案がすでに何ゆえか貴族院で先議をされまして可決をされておりました。そうしてまた司法省の方はその成立を非常に急ぐというような客觀的な事情もあつたためにその實現をみることができなかつたのであります。われわれは非常にこれを遺憾としましたけれども、しばらく法運用の經過を注視することにいたしまして、原案のまま修正をしないで通過したのでありますけれども、不幸にしてその後の状況は裁判所、裁判外におきまして疎開地に關する借地借家問題が續出して、かつその解決が困難をきわめるという實情でございまして、いかにこれを改正する必要があるかということがおわかりになると思うのでございます。また戰災建物の借家人及び居住者が舊令によつてその居住權を保護されますごとく、疎開建物の借家人及び居住者も同樣にその舊令によつて、その居住權を保護されなければならないことは、借地權の場合と異らないのであります。以上が第九條を改正したいという大體の理由でございます。 その次に第十二條第一項のお手數ですが、印刷してあります原案に印刷の間違いがございますから、のちに御訂正おきを願いたいと思います。「第十二條中「一箇年」を「ニ箇年」に改める。」こう書いてありますが、「十二條第一項中第一項」という字が拔けております。また一箇年をニ箇年に改めるのにニ箇年の箇が筒いう字が書いてありますけれども、一つ棒を引いていただきたいと存じます。これは誤植でございます。「十二條中「一箇年」を「ニ箇年」に改める。」これは第二條、第七條の改正と大體理由を同じくするものでございまして、これによつて借地權を保護すると同時に、地主をも保護しようとするものであります。 第十二條の四項中「區裁判所」を「地方裁判所」に改める。第十八條中「區裁判所」を「地方裁判所」に改める。第十九條第ニ項中「地方裁判所長」を「地方裁判所」に改める。これはいづれも御承知の通り區裁判所法等の制定に伴いまして、この法律中區裁判所の管轄になつておるところを地方裁判所の管轄とし、地方裁判所長となつておるところを地方裁判所とすることになるのでありまして、ただ條文の整理というような意味合のものでございます。第二十九條第一項中「一箇年」を「ニ箇年」に改める。この趣旨はこれまた第二條、第七條、第十二條等の改正理由と同じでございまして、復興状況その他とにらみ合わせまして期限を延長するという趣旨でございます。なお附則といたしまして、その法律施行前に、先ほど申し上げました舊第九條に基いて裁判、調停または裁判上もしくは裁判外の和解により、すでに確定したものは、その效カを妨げられないというふうにいたしまして、たとえ九條を改正して疎開地と罹災地とを同じように扱うといたしましても、すでに解決濟みのものはそのままとして遡及いたしません。これらの問題について、この九條を改正して戰災地と同じように疎開地をも保護しようというのが趣旨でございます。大體ただいま御説明申し上げましたことが、この改正案の提案理由でございます。 これは私の提案にはなつておりますけれども、申すまでもなく、各地からかような改正の要望がございますので、便宜私がこれを集約整理いたしまして、改正案を提出した次第でありまして、決して私個人の意見というわけではないのでございます。特に先ほど來申し上げます通り、この法律は九月十五日で優先借地の申出をする期限が切れるのでありまして、これをこの國會で改正案が通過しませんと、先ほど申し上げましたように、せつかくの優先借地權の申出をする權利を失わせてしまい、この法律の意圖した借地借家人保護の目的の大半が失われてしまうというような實情でありますので、ぜひともこの國會におきまして改正案を通過させたいと考えておる次第でございます。 この改正案を出すにあたりまして、鈴木司法大臣と私は面會をしてこの趣旨を申し上げまして、全幅的な御贊成を得たのであります。司法省からも期間の延長等につきましては、成案をもつておるのでありますから、もしいるようならば、全部資料を提供してもいいというような非常に好意のある御意見がありましたので、私もカを得て改正案の形をつくつたわけでございます。その後司法省の事務關係の御意見を承つてみると、大體趣旨としては御贊成のようでありますけれども、技術的な方面において多少の御意見があるようにも承つております。私が先ほど來申し上げました通り、この法律の改正によりまして罹災都市借地借家人の保護を意圖した居住者保護、借家人保護という趣旨が完全に實現されますならば、それで目的を達するのでありまして、技術的な方面や字句の訂正というようなことにつきましては、私は決して固執するものではございません。特に當委員會はその道の專門家の諸君が非常に多いのでありますから、むしろ私の提案というよりも皆さんの御協力によりまして、この趣旨を實現いたしますように御盡カをいただきたいと存ずる次第であります。殊にこの法案は議員提出の改正案としては第一號でありまして、第一番目のものであります。憲法が改正になりまして議會が自主的な立法府としての權能を回復した次第でありまして、從來は御承知の通り法律案の提出は政府案が壓倒的に多く、またその通過率も政府提出案が非常に多くて、議員提出案というものは數も少いし、通過率も少いというのが從來の例でございましたけれども、舊憲法下におきましてはとにかく、新しい憲法下におきましては、ぜひ議員提出案というのが今後續々と出まして、それが國會自身の立法府の權威によつて成立をいたしますようにいたしたいと考えている次第でございます。 まことに不完全な法律案であるかも知れませんけれども、どうかさような意味におきまして、皆樣の御協力と御審議によつて、この改正案が通過をいたしますようにお願いいたしたいと存ずる次第でございます。まことに簡單でございましたけれども、提案理由の説明に代える次第でございます。
○松永委員長 暫時休憩いたします。 午前十一時二十二分休憩 ――――◇――――― 午前十一時三十一分開議
○松永委員長 休憩前に引續き會議を開きます、民法の一部を改正する法律案に對する質疑を進めます。この際委員外の方の發言申出がございます。これを許します。角田幸吉君。
○角田幸吉君 政府委員にお尋ねを申したいのであります。憲法二十四條によりまして平等相續、分割相續が行われることになりまして、それに基きましての政府からの民法の一部改正法建案が提出されておるのでありますが、分割相續制度、平等相續制度というものを徹底的に行いますと、とかく小企業に至るまで企業が細分化されまして、ときに企業が窒息するというようなこともあり得るのであります。そこで大體外國等におきます分割相續制度、平等相續制度というものを一貫しております文明國の法制によりますと、ある國におきましては、遺留分の減殺請求權を認めない制度によつて、財産の分割化、企業の分割化ということを防止しておる國もあるようであります。また農村だけにつきまして、農村の農業財産について、農業家産法を制定して、實施しておる國もあるようであります。また農村の財産に限りまして、一子相續制度をとつておる國もあるようであります。わが國におきましては、從來家督相續制度、すなわち獨占相續制度が相續法の中心になつてまいつたのでありましたが、これは憲法二十四條の至上命令として改正Lなければならなくなつたのであります。そこで政府におかれましては、農業といわず、商業といわず、工業といわず、相續のたぴごとに相續によつて分割され、ときに企業が窒息するようなことがあり得ると考えるのでありますが、この點につきまして、提出されました民法の一部改正法律案に現われたところを見ますると、何らの考慮を拂つていない感がするのでありますが、政府におかれまして、この點についてどういうお考えでありますか、お尋ね申し上げたいのであります。
○奧野政府委員 その點につきましては、農業資産はわが國の現状から鑑みまして、あまりに農地の細分化ということになりますと、すべての農業者がとも倒れになつて、日本の農業というものが成り立つていかないおそれがあるということで、農業資置については特別法を出すことにいたしておりますが、しからば他の企業等についても同じではないかということであります。この點につきましては、現在までのところは、農業のように痛切に入れるには當らないのではないか。また將來この法律の施行の結果を見て、そのときにいろいろさらに研究をしても遲くはなかろうということで、特別な手當をいたしませんのであります。ただ遺産の分割と申しましても、九百六條、九宙七條にありますように、場合によりましては家事審判所は分劑を禁止することもできます。また遺言で分割を禁止することもできます。それのみならず、分割をする場合でも、必ずしも現物を分割する必要なく、適當な承繼者に企業を承繼せしめて、他の相續人に對しては、借金のような形で、他の共同相續人に公平にいわゆる金錢その他の財産によつて、分配するということもできるのでありまして、これらのやり方によつて、企業の細分化を防ぎ得ると考えますので、農業以外の點につきましては、一應それらの手當をいたせなかつたわけであります。この點はしかし將來賓施の曉において、そういう必要を認めるようになりますれば、その點については、さらに研究いたしたいと考えております。
○角田幸吉君 農業資産について特別の措置をとられる法律案を提出する御豫定であるということを承つたのでありますが、農業の資産について、どういう性格のものをお出しになる御豫定でございましようか。たとえば家産法的な性格をもつておるものでありましようか。それともしからざるものでありましようか。なお相續法に關連いたしまして、相續法の不合理を合理化しめるには、相續法にこれを規定するのが相當であろうと思いますが、この點に對して御説明願いたいのであります。
○奧野政府委員 相續法は一般すべての人に關する規定で、農業資産だけについては、特別法でこの特例を設けるというやり方をいたしたわけであります。しかして農業資産の相續の特例に關する法律案は、すでに皆さんのお手もとに行つておるかと考えますが、要するに農業資産は分割しないことにして、必ず一人に承繼せしむることにいたしたのであります。しかして農業資産は一人に承繼することになりますが、相續法の關係におきまして、その農業資産を承け繼ぐ人の分が、その農家の全部の財産の半分と、それから殘りの半分を他の共同相續人に分割するものといたしまして、半分のほかの半分について、相續人が數人おれば、その數に應じて相續がわかれるわけであります。でありますから、結局農業資産を承繼する者が半分と、その殘りの半分のうちの自分の持ち分とを合わせた額より以上に、かりに農業資産の價額があるものということになれば、その超過の部分だけは他の共同相續人に金踐の形によつて分配する。結局半分だけは遺留分があるわけでありますから、結果において必ず法律で遺言をしたと同じような建前になるわけであります。半分をその農業資産を承繼する者にやつて、その殘りを法定的に分配する。すなわち農業資産を受ける者は半分と、それから殘りの分については百分の持分と、そういうふうにすることは、この民法の建前でもできるわけでありますが、農業資産については、法律で遺言をやつたと同じような結果になるわけであります。それだけの取り分を認めて、農業資産はそのままに一人に承繼せしめる。農業資産がそれだけの取り分より以上であつた場合は、それだけの超過の部分を他の共同相續人に分配せしむる。それは金で分配する。農業資産がそういうふうに超過しておつても、全部これを分割はしないで、一人に承繼せしむるというふうな考えでできております。
○角田幸吉君 農業資産ということで、これに對する措置は大體承つたのでありますが、たとえば農業とは何ぞやという問題が、本案については重大な問題であると思うのであります。御承知のように土地の細分化と土地制度と相續制度につきまして、非常に惱み拔きましたのは、中部ヨーロッパ諸國であつたと思うのであります。中部ヨーロッパのオーストリア、ハンガリーにおきまして、土地を對象とした特殊の相續法を制定いたしますると、牛五頭を持つておつた者にはこれが對象にならぬ。こういうことであの地方において大分混亂したようであります。日本におきましても、さて農業とは何ぞやと申しますと、わからなくなると思うのであります。たとえば妻が百姓をしておつて、夫が村役場の書記でおつたというような場合で、雙方の牧收入で生活を立てておつた場合には、これは農業と見るかどうか。あるいは主たる生計の根據が農業によるということになりますると、從來は農業で生活ができておつたのであるが、最近四、五年間は田舍の商賣の方が主で、その方で生活ができておるというようなことになりますると、これがまたいつの間にか農業が商業に變つていく。こういう次第でありまして、いやしくも相續法のごとき重要な法案に至りますと、私の今日までいろいろ考えてまいりましたことによりますと、農葉とほかの職業との區別というものは、ちようど頭と顏の境がどこであるというあの問答と同じように複雜化してまいるのでありますが、農業とは何ぞやというその法律案につきまして、政府においていかなる定義を與えて爭いをなからしむるように規定しておりますか、承りたいのであります。
○奧野政府委員 この點はいずれ農業資産相續特例法の審議の際に農林省等から説明があると思いますが、特例法案では、農業とは、耕作、養畜または養蠶の業務、これに附隨する業務を含んだものを農業ということにして、全體の規定ができているのであります。
○角田幸吉君 そうするとそれだけでは、一つの判例であるとか、常識であるとかいうものがまとまらぬうちは、農業と農業外のことは明瞭になつてこないと考えられます。たとえば一段歩畑をつくつておりまして、炭燒をしておつたという場合には、これは農業になりましようか、なりませんかというようなことが問題にならうと考えます。また繰返しますが、夫がからだが弱いために村役場の書記をしている。妻は畑をしているという場合には、農業になりましようか、なりませんでしようか。そういう場合の御説明をこの際願いたいと思います。
○奧野政府委員 これはいずれ農業資産相續特例法案が正式にここで審議される際に、農林當局その他とよく打合わせをしてお答え申し上げたいと思います。
○角田幸吉君 わが國の農業の企業だけが細分化されることを憂えるだけでは足らないのでありまして、工業において、商業において、漁業においても企業が分割されて、企業が窒息していくというようなことは、現在において同樣であろうと思うのであります。そういうふうに考えますと、農業だけにこの際こういう特殊の法律をつくりまして、そのほかはしばらく研究の課題にするというようなことをなさらないで、政府はこの際におきまして、相續法全部についてこれらについての對策を考えられることが公平でもあり、法典の體裁もよろしい。またこれが民法の中に規定されますと、民法法典としての體をなすと思うのでありますが、この點につきまして、もう一度政府委員の御説明を願いたいと思います。
○奧野政府委員 商工業等についても、いろいろ考えたのでありますが、商工業者は概して農民よりは法律的な思想に富んでいる。そこでおそらく遺言の制度を農民よりは商工業者の方が多く利用するのではなかろうか。しかして全般的に考えて、今後共同相續になりますので、遺言の制度がいろいろ利用されることになると思いますが、遺言を利用することによつて、細分化の防止ということは、ある程度できるのではないか。ただいま申しましたように、農業資産につきましても、結局は民法の規定によつて遺言をすれば、この農業資産特例と同樣なことをなし得る建前になつておりますが、農民が遺言するということは、概して少かろうということで結局法定的造言のような法律をつくつているわけでありますが、商工業者の方においては、遺言制度の活用によつて目的を大體達し得るのではなかろうかということと、先ほど申しましたように、分割にもいろいろのやり方があつて、場合によつては分割を禁止することができるし、あるいはまた一人のみに承繼せしめて、他の者については金で分配するという方法もありますから、それらを活用して、大體農地以外の場合においては適當に目的を達することができるのではないかという意味で、農地以外の點については、今ただちに特別の手當をいたさなかつた次第であります。
○角田幸吉君 ただいまの御説明によりましても、たとえ商工業、漁業者が遺言をいたしましても、改正案によります千二十八條以下のことは妨げることはできないのであります。すなわち最後の減殺請求權を侵すことはできないのであります。その點は農業も一向變りがない。農業においても遺言すればよいというような結論に到達するように考えられるのであります。殊に商工業者につきますしては、相當法的知識があるといたしましても、漁業という方面に至りますと、私の雜駁な考えをもつて申しましても、この方は農民以下の法律知識しかないのであります。なぜそれならば漁業家について御考慮を拂つておらなかつたか。この點について承りたいのであります。
○奧野政府委員 農地の細分化ということが非常に叫ばれて、農地の細分化を何とか防止する手當をいたすことになつたのでありますが、水産業ということになると農地の細分化とは、少しく趣を異にするように思われるのであります。これはおそらくむしろ他の一般の企業と同じようなもので、農地の場合はこれを細分すれば事實細分化できる。そう細分されることによつては、いろいろ農業がやつていけないということが考えられるのでありますが、企業の場合においては、これを細分化することはほとんど技術上できないのではないか。あるいは一人が承繼して、他の者に對してはいろいろな出資の形でやるとか、あるいは金錢の形で他の者に對して債務を負擔するというようなものに自然ならざるを得ないと思ぅ。そういう企業を細分することは事實上ちよつとできない。これに反して、農地はいくらでもこれは細分し得るものでありますから、これについて特に細分を防止する制度をつくつたのでありまして、他の水産その他は一つの企業を細分することがむつかしいのではないか。結局結果において企業が細分されることはないのではないかというような意味もありまして、農地だけについて細分を防止する特別の手當をとつたのであります。
○角田幸吉君 もう少しそこを承りたい。企業と申しましても、水産企業の遠洋漁業であるとか、あるいは養殖であるとかいうことになつてまいるのでありますが、農業企業、水産企業、商工企業の内容には、自分の住宅なども含まれた意味において行われておるのであります。そのために企業の資産はその間分割できない覿念で、企業というものが、今日運用されておるように思うのであります。そういう意味におきまして、農業資産につきましても、畑だけではいけないので、やはりそこにおいて家が必要なのであります。漁師が海藻をとる場合、やはりそこの海邊に家がなければいけないのであります。そういうものも私どもは農業財産というほかに、今日の實際から申しまして、企業の一部をなすものだ、こういうふうに考えなければ企業が成り立たないと思うのであります。そういう點からいろいろ考えますと、どうしてもこれは農業だけにこういう法律をおく。殊に商業といいましても、運送業もあるのであります。農業と商業との區別、そのわかれ目がどこだかわからない程度のものもあり得るのでありますから、そういうものは、農業の細分化だけでは困るのではないかというようなことになるのでありますが、やはり日本の今日の急務は、あらゆる企業を、大企業ではありません――相續法の對象として見て、われわれは商工農の細分化も併せて防せぐということを考えましての企業の細分化の防止というねらいをとらなければならないと思うのであります。この點につきまして、政府におかれまして、もう一應全般的な御研究をくださることをこの際お願いいたします。 もう一つ、これはおそらく政府におかれましても、そこまでお運びになるまでには、關係筋との交渉もありましようし、いろいろ審査中の御苦心もあつたでしようが、私は現在の日本の相續法の大きな缺點と申しますのは、きわめて不公平な構成になつておることだと思う。たとえば養子ですが、養子の相續分と申しますると、養家の相續分も相續いたしまするし、實家の相好分も相續するという不合理があるのであります。また妻は夫の財産、すなわち婚家の財産の相績をいたしますと同時に、實家の相續分も相續する、こういう相續法上の不合理なものが一つ殘つておるのであります。御承知のごとく、明治民法施行前におきまする慣習によりますと、遺産相續權は同居家族以外の者にはなかつたのであります。當時の考えによりますと、相續というものは扶養と表裏をなすものである。戸主は同居の家族に對して扶養しておるのであるから、その對償として相續をするのである。こういう考えでまいつたようであります。明治民法施行前におきましては、他家にある者は遺産相續權がなかつたのであります。明治民法におきまして、遺産相續に限つて、家にあるとないとにかかわらす認めてあつたのでありますが、こういうことについても反省をしなければならない時期に到達したと私は思うのであります。もう一つお考えを願いたいことは、そういうふうにしてまいりますと、今度民法が改正いたされまして、そして實際上は戸籍法におきまして、婚姻をいたしまするとばらばらになるそうでありますけれども、日本の家族生活の實相は、ただちにそうはまいらないで、やはり同じ家で父あるいは母とともに働いていくところの者があると思うのであります。そういうことから考えますと、どうも相續につきまして、むしろ遺留分の減殺請求權を認めない。父がある相續人の一人に對しまして財産を贈與または遺贈をした場合において、他の相續人から不服の申立ができない。これをいわゆる英國流に改めて、ただそれをどこまでも貫徹いたしますと不合理がありますから、ちようど今度政府におかれまして立案されました離婚の場合における財産分與の請求權と同じような形態において、何らかの途を開く、こういうふうにいたしまして、初めて日本の相續法の公平がいたされるのではないか、家族間における財産管理というものは、現行法で規定いたしましたように、あまり白紙に黒い線を引いたようなはつきりした關係ではなく、こういうふうにした方が公平だと考えることに相續の誤りがあろうと思うのでありますが、この際政府は減殺請求權を認めないで、他に便法を認めることについて、ひとつお考えを願いたいと思うのでありますが、これについて御意見をお聽かせくださることができましたならば承りたいと思うのであります。
○奧野政府委員 相續制度全般にわたつて、大體現行の遺産相續の制度を一應そのまま承繼いたしました結果、養子が實家及び養家の兩方の相續をいたす。あるいは配偶者が兩方の相續をするというようなことは不公平ではないかという議論、これは一應現在の遺産相續の規定をそのまま承繼いたした結果、そういうことになつてまいつたのでありますが、この點はさらに研究檢討を重ねていかなければならないと考えております。 なお遺留分の制度をやめ、遺留分の減殺という制度もやめて、自由に一人にでも遺贈ができる、そのかわり他の相續人はその分配を請求することができるということにしてはどうかという御意見を拜聽いたしたのでありますが、もしそういうふうにいたしまして、長男が全部遺産をもらつたと假定しますと、他の相續人は、その長男に對して分配の請求を家事審判所等にいたしまして、非常にそういう紛爭が起る可能性がある。その點が心配になりますので、やはり、ある一定の相續分なり遺留分というものを一應きめて、その間の關係を明確にしておいた方が、爭いが起らないでいいのではないか、なるほど適當に話し合つて分配をしてもらうということも、あるいは實情に適した結果が出る場合もありましようと思いますけれども、そうするとことごとに分配請求の紛爭が起きるのではないか、その點を心配いたしまして、御意見にはただちに御贊成はいたしかねるというふうに考えております。
○角田幸吉君 それでは私の質問はこの程度でやめておきます。
○松永委員長 午後一時まで休憩いたします。 午後零時五分休憩 ――――◇――――― 午後二時十八分開議
○松永委員長 會議を開きます。 これより民法の一部を改正する法律案の公聽會の口述人の選定について御協議いたしたいと思います。參考としてお手許に申出委員の一覽表を差上げてございますから、ごらんを願います。 〔速記中止〕
○佐瀬委員 この際問題の出し方について一言申し上げておきたいと思うのであります。ただいま配付を受けた各希望者の氏名表の中にも記載されてある家督相續廃止に對する贊否という問題の出し方では妥當でなく、しかも不十分のように考えられるのであります。この點について委員長が公聽會を司會される際に、適當な善處を望みたいと思います。
○松永委員長 ただいまの佐瀬昌三君の御意見ごもつともと存じますので、善處いたしたいと思います。
○明禮委員 こういう一つの公聽會というものは、ある問題の中心をとらえることが必要なんでありますから、家督相續廃止といつても、今の憲法から直覺的に何も觸れるものはないのでありますから、かえつて討論する人の考え方すべてが、やはりこういつたようなはつきりした題案が、私はかえつてよろしいと思うのであります。あるいはここへ家督相續制度という言葉を入れれば入れるくらいのものでありまして、そういつたことはいいですけれども、これが全然意味のわからないものにもしなるとするならば、非常に演説する人もやりにくくなるしするから、何も表面に押えられている問題でありませんから、でき得る限りこういう家督相續制度廢止の可否というようなことでやつていただきたいと私は思います。そうでないと、またわき道へそれたりして意味をなさないと思います。
○佐瀬委員 ぜひこの點委員長の御發言の通り、適當な形に御善處願うことを希望しておきます。次にこの候補者の中から公述者として何人を選び出すかということについては、性別とか、職業とか、あるいは地域とか、年齡とか、諸般の事情を斟酌し、かつ最近行われた參議院の成績にも鑑みまして、衆議院としても選擇上相當注意を要する點が多々あると思うのであります。從つてそれらをお含みの上で、具體的な人選については、委員長の方において、適當に按配されんことを希望いたしておきます。
○松永委員長 ただいま佐瀬昌三君の御親切な御注意に對しまして、できるだけ考慮して選定にはいりたいと存ずるのであります。ちよつと速記を止めて……。 〔速記中止〕
○松永委員長 ただいま御協議の結果によりまして、性別、年齡別、職業別、地域別及び文書による意見の内容等を考慮いたしまして、委員長の私案を申上げます。ちよつと速記を止めて……。 〔速記中止〕
○松永委員長 服部 美登 梶原房子 久布白落實 酒井進太郎 八木 孝平 木下 薫 渡邊 美惠 立石 芳枝 小宮濃清子 米山 精一 以上十名は贊成者側です。 小田島禎次郎 松波 治郎 石橋善太郎 清水 猛 杉山 俊夫 禰津 義範 江川 芳光 佐藤 忠夫 小林 喜録 眞本 一雄 以上反對者側の十人、以上贊否各十名づつ計二十名の諸氏を公述人として選定するに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松永委員長 それでは以上の諸氏に決定いたします。本日はこれにて散會いたします。次會は明後十八日午前十時より開會いたします。 午後二時三十七分散會