鉱工業委員会 第18号
- 発言数
- 88 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1947/10/11
会議録
○伊藤委員長 これより會議を開きます。 昨十日内閣提出の配炭公團法の一部を改正する法律案の審査を本委員會に附託せられました。本案の審査につきましては、後刻理事諸君と協議の上、審査の方針等を決定いたします。それでは引續き臨時石炭鑛業管理法を議題とし、質疑を繼續いたします。西田隆男君。
○西田委員 第四十四條の規定の中に「通常生ずべき損失」伝々という字句がありますが、この「通常生ずべき損失」とはいかなる損失を意味するのであるか、平井政府委員の答辯を願います。
○平井(富)政府委員 四十四條の補償すべき損失の範圍でございますが、これは民法の損害賠債の關係等におきましても、いわゆる相當因果關係のある損失ということになつておりまして、これを通常生ずべき損失、こういうふうに解釋しておるわけであります。具體的な處分によりまして生じました損失が、因果關係として相當程度の直接の關連をもつ、その範圍を通常生ずべき損失という言葉で表わした次第であります。
○西田委員 非常に抽象的なお説明ですが、炭鑛企業の實態から考えますと、通常生ずべき損失というのは、經營上の損失であるという意味にも解釋されますし、またこの法案の全體の精神から推測しますと、特別の業務計畫實施上の命令、指示に基いて損失を生じた場合ではないかとも考えられますが、經營上の損失であるか、あるいは特別な監督命令指示というものに基いて起きた損害であるのか、その點をもう一度御答辯願います。
○平井(富)政府委員 この損失の補償をいたします元になります命令、指示ということは、この管理法において掲げられております命令指示というものは、監督上の命令、監督上の指示一切を含むものでありまして、これの命令、指示がございました場合におきまして、その命令、指示を直接原因としていわゆる相當因果關係と稱しておりますが、いわゆる民法の損害賠償の原則によつて規定さるべき損失の範圍をいうのでありまして、この具體的範圍につきましては、命令、または處分が出まして、具體的に損失と考えられるものが出ました際に、その因果關係を檢討いたしまして、損失の範圍を決定していくということになるかと思うのであります。
○西田委員 なかなかむずかしい問題で、相當な因果關係のあるものという言葉の上ではすこぶる簡単に言われるのですが、實際炭鑛の業務運營の面から考えてみて、どういうことを大體相當因果關係のあるものと判斷すべきかということについて、再度平井政府委員の答辯を求めます。
○平井(富)政府委員 この補償の規定の一番具體的に損失が生ずるということが豫想されますのは、いわゆる設備の新設でありますとか、そういうような積極的な命令を出した場合が多數を占めるのではないかというふうに考えておる次第であります。すなわち設備の新設を命ぜられ、それによる將來における價値の變動、その他によりまして、相當の企業として損失を出したというような場合にのみ、國庫がこれを負擔していくというような場合でありまして、通常生産計畫につきまして、指示あるいは監督上の命令を出すという場合につきましても、やはりこの規定の適用はございますが、その際にはむしろ炭價の調整の問題、あるいは政府の補給金として始末をしていくとか、いわゆる經營上の通常の業務遂行という面につきましては、なかなか判定の困難な場合もあるかと思うのであります。從つて生産計畫の指示、あるいは生産數量の命令、指示につきましては、その命令を發令する場合におきまして、現在の炭價においてそれがやり得るかどうかということも具體的に檢討いたしまして、これは現在の炭價政策が先ぎめ主義でいつております場合におきましては、いわゆるその先ぎめ主義の炭價において生産し得る數量というものを命令していくというのが、通常の場合だと思います。ただし非常にコストのかかる炭を特殊の必要性によりまして命令を出す、しかも通常の炭價における調整、あるいは補給金における調整というようなことをやらないような場合には、具體的に損失が出ました場に、やはり問題になり得ると存じますが、ただいまのこの法案の建前におきましては、いわゆる炭價が大體において先ぎめ主義で決定される、先ぎめ主義によつて能率のいい山はもうけるが、能率のわるい山は利潤が少いというような場合におきまして、具體的に命令が出ました場合には、經營者の能力のいかんによつて、損失が出たり出なかつたりする場合も豫想されるわけでありまして、その點において相當具體的に判定がむずかしい問題が起ると思います。從つて今申し上げましたように、生産數量等の指示につきましては、その當時における炭價政策ともからみ合せて、その炭價政策の内容に合うような命令を出していくということで、損失の判定につきまして非常に困難な場合、つまり經營者のやり方、事業の經營のよしあしということを損失との不可分の關係になりますような命令、指示というものにつきましては、炭價政策その他の面で考えていくというような運用をしてまいることと相なると存ずるのであります。
○西田委員 大分長い御説明でありましたが、非常にわかりにくい説明で、私の聴いたところによりますと、炭鑛の業務計畫に基いて業務の運營をするいわゆる經常の場においては、その損失の補償はしないのだ。しかし擴充計畫に基いて政府から命令をされた場合において、新設をした設備その他については、價格操作の面において、非常な食い違いでも起きた場合には、それを損失補償として補償してやるのであるというふうに、大體結論は私了承したのであります。この四十四條の規定は、非常に重要な規定でありまして、今平井政府委員がるる御説明になつたように、非常に困難な、非常に複雑な、そしてまた非常に重要な規定なのでありますが、私がさつき申し上げたように了解して差支えありませんか。
○平井(富)政府委員 ただいま西田さんがおつしやいましたことと大體同様でございます。繰返し申し上げますが一番問題になりますのは、生産計畫に關する命令、指示、これが經勞上のよしあしということによつて起る損失と、その命令によつて生ずる損失と、この具體的區分ということは、なかなかむずかしい問題が出てくるのであります。從いまして、生産數量の指示、命令等につきましては、そのときの炭價政策というものを前提といたしまして、その炭價によつて引合う、いわゆる炭價政策に沿うような指示、命令を出しまして、それによる損失補償ということは、なるべく起らないようい運用してまいるつもりであります。從いましてこの規定が主として適用される場合、豫想されますのは、設備の新設でありますとか、坑道の掘進を命ずるとかいういわゆる積極的な命令につきまして、この規定の適用が具體的に多く起るのではないか。こういうふうに考えておる次第であります。
○西田委員 炭鑛の現場の實際の運營は、今平井政府委員が言われたようにはいかないものでありまして、炭價はかりに前ぎめになつておりましても、その炭價の前ぎめになつておるだけで炭鑛の生産數量を決定するというような生産數量の決定の仕方は、現在の炭鑛でもやつておりません。すなわち炭鑛の設備と、坑内の状態と、その炭鑛の勞働條件によつて、その炭鑛の出炭計畫を山では現在でも立てておるのでありまして、炭價が前ぎめになつたから、その損失のわく内で立てなければいかぬというふうなものでは、この法律などを施行する目的はまつたくなくなつてしまう。私はかように考えるのでありまして、この損失を補償するという考えであるならば、炭鑛として管理を受けておる炭鑛の損失に對しては、通常であろうとなかろうと、そのいかんにかかわらず、國が補償をしてやる。炭鑛の現場管理者は、この法案によれば、政府と直結して現場の運營にあたつておるのである。こういう建前からしても、そういうふうな補償法をとられるのが妥當な方法ではないか。かように考えますが、これに對しては商工大臣の御答辯を求めます。
○水谷國務大臣 ただいま西田さんと平井政府委員との問答を通しても明らかであるように、その具體的決定というものは、なかなかむずかしてものでありますがゆえに、われわれは、この損失補償の金額の具體的決定というものは、商工大臣と大藏大臣と協議をいたしました上で、特にその適正を期するために、「石炭鑛業損失補償審査會の議を經てこれを定める。」というぐあいに規定し、きわめて大事をとつておるような次第でありまして、大體その理窟の上におきましては、あるいは平井君にように分析ができますけれども、大事な點はその金額の具體的決定ということになるのでありまして、その場合におきましては、こういうような二段構えの議を經て、十分適正にそれをきめていくというぐあいの大事をとつておる方法であります。
○西田委員 私がこの四十四條を非常に重大な規定であると申し述べておりますのは、具體的にその金額を決定する場合のことを申し上げておるのではありません。具體的に損失補償として申請する方法が、——どういう方法に基いて申請さるべきであるかということの方が、よりもつと重大である。かような意味に解釋して御質問しておるのでありますから、その意味で御答辯を願います。
○水谷國務大臣 私の言葉が足りなかつたのでありますが、損失を補償すべきかどうかという具體的の決定も、これはそれに先行して行わなければならぬことはあなたのおつしやる通りなのですから、さよう御了承を願いたいと思います。
○西田委員 この問題はこのぐらいにしておきましよう、ここで論じたつて、これはしかたがありませんから。 第二として、第六十八條についてお尋ねいたします。「この法律施行の期日は、各規定について、政令でこれを定める。」かようにあります。定める順序、またはどの規定から實施する豫定であるか。これを商工大臣から承りたい。
○平井(富)政府委員 この法律の規定につきまして、最初施行されますのは總則、それから石炭局、管理委員會、これらの規定がまず最初に決定されまして、その次に第二章の管理、さらに第三章の指定炭鑛の管理、こういうような順に相なるかと思つております。
○西田委員 第二の質問はその程度にしまして、第三に第六十九條に移りまた。「この法律の有効期間は、この法律の規定の全部が施行された日から、三年とする。」かように規定されておりますが、今のような順序で、今のような方法でこの法律が實施されました場合—この法案の全部を實施する場合は、いつごろの時日になるのでございますか。これを伺いいたします。
○平井(富)政府委員 現在豫定されておりまするのは、この規定が全部實施をされるのは、大體明年の二月一日程度になりはせぬか。これは議會の方の審議、決定の時期にもよりますが、大體におきまして石炭局、管理委員會の構成等が整備されまして、全規定が圓滑に運用できますように、ただいまの豫定といたしましては、明年の二月の初めに施行してまいりたい。かように考えておる次第であります。
○西田委員 大體はただいまの御説明でわかりました。議會の關係等もありましようが、明年の二月から全部の法律案が實施されるということであれば、この法律の全部の規定が實施された日から云々ということでなくて、この法律の公布の日からと、そういうふうにされても差支えないと思うのですが、こ點は私の意見を述べるだけでに止めておきます。 その次は、この法案で見ますと、事業主及び炭鑛管理者に對しては、その報告違反あるいは命令違反等については非常に嚴罰をもつて臨んでおります。しかしながら、石炭廳長官あるいは石炭局長の命令者に對しては、わずかに不服の申立ができる旨の規定をしておるだけであります。なお從業員は、この法案の規定によりますと、現在よりも百歩も千歩も前進して、經營に對する發言權をもつことになつておりますが、これまた發言權だけを規定して、經營の責任の分擔に關しては、何らの規定も罰則もないのであります。これははなはだ不公平であると私は考えますが、商工大臣の御意見を承りたい。
○水谷國務大臣 その點に關しましては、これまでたびたび申し上げましたように、この法律によつて企業の形態は原則として變更されないことになつております。從つて企業の責件者が事業主にあります以上は、そういうような規定の運びになつたことを御了承願いたいと思います。
○西田委員 どうも商工大臣は、第一囘の私の質問のときから、企業形態は變更されてない。だから最終の責任は事業主にあるのだから、どこまでもそれ一本で臨んでおるのだ。かような御發言がたびたびありましたが、私がこの法律案の全部にわたつて質問をしてきたところによりますと、私は決してさように考えません。そこで私は長官及び局長に對する彈劾規定、及び勞働責任に關する規定を、當然この法案の中に設けるべきである。かように考えております。これに對する商工大臣の見解は承つても、もう前の御答辯と同じであろうと考えますから、私は商工大臣の答辯は要求いたしません。 次にこれはこの法案の審議にあつて、最初において私が商工大臣にお尋ねしたことでありますが、その際商工大臣は、やはり今御答辯になつてと同じように、資本と經營の分離をするのじやない。私企業の長所の公企業の長所を結びつけることが、この法案の最も妙味のあるところであるというような御答辯をいただいておりますが、この法案をよく讀んで見ますと、万一では國家が經營を管理し、他方では從業員が經營に對する發言權をもつということに規定をされておる。しかもただいまの第四十四條の私の質問に對する御答辯のように、最終の責任はやはり事業主、いわゆる資本がこれを負うということになつております。これは理屈を言えばたくさん理屈はありますが、簡単に申しますと、これは商工大臣のいわゆる資本と經營の分離をするのじやないという、そんなところでなくて、まつたく資本の否定である。私はかように考えますから、商工大臣が資本と經營の分離に對する理論をお持合わせであれば、その理論的な御説明、私の今の質問に對するこれは資本の否定ではないという理論的な根據というものを承りたいと思います。
○水谷國務大臣 資本と經營との分離という言葉は、萬州事變後に盛んに日本でも言われた言葉でありますが、人によりその定義は明確でないと思います。私のささやかなる經濟學の知識をもつていたしますならば、資本と經營との分離というものは、資本というものの持主は、單にいわゆる利子の所得者というようなものになりまして、ほとんど經營にタツチしないということ、これは、これは私の資本と經營との分離であると思います。とろがこの法安におきましては御案内のように、そういうようなことはみぢんも規定しておりません。從つて資本と經營との分離ではあくまでないのでございます。從つてこういう點に關しまして、資本と經營との分離でないことはいうまでもなく、さらにまた西田さんが今質問されましたように、資本の否定というような考え、またそういうような條文というものは、この法文のどこを探してもないと私は確信して疑わない者であります。
○伊藤委員長 西田君に御相談しますが、他の委員會等にも出席を求められておりますから、その邊をお含みの上で、なるべくひとつ……。
○西田委員 もう商工大臣の質問は少しで終りますから、終つて總理大臣に願いたいと思います。もう直ぐ濟みます。 ただいま商工大臣は非常に強氣におつつぱりになりましたが、私はこの條分の中に資本の否定をしたような條文があると申し上げたのではありません。この法案全部を通じてさように感じた、かように申し上げたのであります。しかも資本と經營の分離は絶對にない。かように仰せでありますが、この法案の中で、事業主というものが事業にタツチできるという面は、ただ炭鑛管理者が生産協議會にかけた業務計畫の案をいくらか修正し得るという權限が少し残されているのと、あとは全部いわゆる責任を負わねばならない責任規定が規定してあるだけで、そのいずこを見ましても、事業主がこの經營に對して十二分な權限をもつている、發言權をもつているというような條文こそ、この法案の中には私は見出しかねるのであります。あえて私は商工大臣と資本と經營の分離について、理論闘爭するつもではありませんが、商工大臣はこの法案の第一條の質疑の開始のときから、ただいま御答辯になつている點を、非常に強硬に主張されておりますが、ただそれは自分たちでつくつた法案であるというようなことに執着をもたれずに、もう少し公平にお考えになつて御判斷を願いたい、かように考えております。 この方案の重要な點につきまして、私は四日間にわたつて質疑を續けてまいりましたが、政府の答辯では、第十四條ほか二、三項についてはつきりした答辯を承つたのであります。あとは思想の違いであるのか、または私の理解力がにぶいのか、私の納得できるような答辯を聽き得なかつたことは、はなはだ遺憾に感ずるのであります。私がこの法案の質疑を通じて、最も強く感じましたことは、再三申し上げたのでありますが、私企業の長所を抹殺して、本社と現場の密接不可分な有機的なつながりを寸斷し、實情を無視した畫一的な管理を行うのおそれが非常に多いのであります。かつ嚴罰をもつて官僚の獨善行為を彌縫せんとして、事業主は手かせ足かせをかけられて、半身不隨の状態に置かれております。しかも最も石炭生産の隘路となつている資材の適材適所適種の入手配分については、炭業公團に代るべき石炭増産對策要綱の中に二項を設けまして、政府は直接これにあたるということになつて、石炭廰がただ切府を切つてお世話をするということだけで十分足りるのであるというような、二つの規定があるだけであつて、まことに寒心にたえないのであります。この法律案は、商工大臣が再三言われますように、管理をせんがための管理案ではなくて、石炭増産のための臨時措置としての管理案であるのに鑑みまして、その目的達成のために、私はこの法案をこのままうのみにすることは絶對にできません。大なる修正を加える必要があると私は考えます。かくのごとき觀點から、いずれ私は修正案を求めまして、本委員會に提出をして審議を願わんとするのであります。これをもつて商工大臣に對する私の質疑は一應打切りといたします。 續いて片山總理大臣にお尋ねいたします。本條文の第三十八條、第十八條、第十九條の質疑にあたりまして、特に第三十八條におきまして、生産協議會の性格をはつきりする必要がある。かように私考えましてので、この三十八條の「議を經てこれを定めなければならない。」またその後段の規定の「議を經てこれを定めることができる。」というふうな規定がありますのを、平井政府委員竝びに商工大臣にお尋ねしたわけでありますが、どうもその内容がはつきりいたしません。そこでこの法律案は三黨首の會議によつて原則はつくられ、その原則を條文として表わしたのである。かような政府委員の答辯もありましたので、總理大臣の御出席を求めたわけでありますが、總理大臣から第十八條、第十九條竝びに第三十八條の關連と生産協議會の性格についてはつきりした御答辯をお願いしたい。かように考えます。
○片山國務大臣 この問題はきわめて重要なる問題でありまするのに鑑みまして、ただいま西田君からお話の通り、三黨首が會議をいたしまして、その大綱、骨子となる問題を相談をいたしまして、その大綱を定めました。その大綱に基きまして、さらに閣議におきまして、その要綱を決定し、續いて法案を制定する、こういうような順序に運んだのであります。從つて一番の土臺は三黨首會談のときに定めた骨子を逸脱せずに進んでいると、私は考えておるのであります。ただいま御指摘の生産協議會の性格でありますが、そのときの話といたしまして、生産協議會を決議機關にするか、あるいは協議機關にするか、諮問機關にするか、いろいろの議論が出ました。そこでそのときの話といたしましては、決議機關であるとか、協議機關であるとか、あるいは諮問機關であるとかいうようなことは、この決議機關を法的に解剖いたしまして、その定義をつけたり、その性格を定めたりすることは、法學者の議論に任しておいたがよかろう。そうして實際の取扱いは、眞に増産のできるような建前でやるべきであつて、結局においては、性格性質はどうあつても、その機關の議を經てことを定めるというふうに表わさなければならないという意味で、三黨首會談の話がきまつたと考えておるのであります。從いまして、法學者の定義あるいは解剖いたしました理論としては、今までのいわゆる觀念法學と申しますか、何でも形をはつきりときめていかなければならないという建前の法學時代におきましては、これは決議機關であり、協議機關であつて、その分界、その差はきわめて嚴重にしなければならないというようなことに非常に囚われて、その問題に頭をつつこんで議論を長い間戰わすというようなことがあつたと思いますが、今日におきましては、そういう議論倒れのことを考えるよりも、實際的に運用の妙を得られるように、効果を十分に發揮せられるようにするがよかろうというふうに考えておるのであります。從つてここできめた「議を經て」ということによつて、大體の性格は決議機關と協議機關の中間をいく性格である。こういうことで、法學の議論を戰わしたり、あるいは解剖いたしまして、法文の中にこれを明らかにする必要はない。これはよろしく法學者に讓つてよかろうというように考えておるのであります。「議を經て」という言葉で十分表わされるし、またそれによつて何らの支障は來さないものであるというふうに考えておるのであります。 なお中間をいくということで、いろいろな御意見があるかもしれませんが、それは私の考えを言つただけであつて、一に學者の議論にまつことが、しかるべきであろうと思つております。
○西田委員 片山總理大臣の非常にお利口な御答辯をいただきまして、わかつたようなわからぬような形でありますが、片山總理大臣の言われるようであれば、これを議を經なければならないというように規定すれば十分であると考えます。總理は今條文の書き方は法學者に任したのだとおつしやいました。平井政府委員かたれが書いたかわかりませんが、特に「議を經て」ということと「きめなければならない。」ということの二様に書きわけてある點が私にはわかりにくいのであります。 なおまた三十八條の最後の項において「議を經てこれを定めることができる。」というような規定がありますが、「議を經てこれを定めることができる。」というのでは、議を經ないまま、生産協議會にかけないでも、炭鑛管理者は、炭鑛の業務に關する重要な業務を實行に移し得るというような、字句の上からは解釋できるのでありますが、實際の生産協議會の運營の面から考えますと、そういうことはほとんど不可能であろうと私は考えるのであります。であるならば、この最後の「議を經てこれを定めることができる。」とあるのも、結局最初の「議を經て定めなければならない。」というのと同じ結果になる。どういうわけで、こういうふうに二つの書きわけをされたのであるか。また炭鑛管理者が、この條文のままに解釋いたしまして、この五つのほかに、これに匹敵するような重要な業務計畫の實施に關して、議を經てとある事項を、議を經ないままかりに實施をしたと假定いたしました場合、炭鑛の業務の實施の状態は、政府がお考えになつておるように、はたしてスムースにいくものであるかどうかという點において、私はこの規定は非常に重要な規定であると考えております。それと第十九條の規定でございますが、これは片山總理御承知のように、原案を執行することが閣議において認められ、三黨首會談においてもきめられておつたと解釋しておりますが、これは本社原案を執行するということになつておりますならば、おのずから第三十八條の御説明も、あるいは片山總理の言われたように、決議機關と協議機關とのあいのこであるというような御説明も通るかと私は考えます。しかるに本第十九條は、本社原案を執行するという表現をやめて、前期の計畫とかなんとかいう、まつたく意味のわからないような表現をとつておりますが、十八條、三十八條の關運は、この法案の目的達成のために非常に重要な點である。かように私は考えるのであります。もい再度總理大蔵の御答辯が願えましたら、お述べ願いたいと考えます。
○片山國務大臣 西田君にお答えいたします。さきに決議機關と協議機關と諮問機關の三つをお話しいたしたいと思いますが、それをはつきりいたしておきます。決議機關と諮問機關の中間をいくものである。それは今後における商法の解釋で、こういう機關の性質を明らかにする上においても許さるべきことであろうと思います。今までは甲にあらずんば乙というふうに、どつちかにきめてしまうということで、概念的にすべてを取扱つてまいつたのでありますが、今後においては、實際と對照いたしまして、効果を十分にあげしめるような方法を用いて、その機關の性格を明らかにする。こういうことが當然考えられてくることであろうと思います。何もこれは昔の考えに囚われる必要は少しもないと思つております。 それからただいま西田君御指摘の原案執行という問題でありますが、この點はなるほど三黨會談におきましても問題になりまして、いろいろ議論が出ました。またその後の各黨代表の會合におきましても問題が出まして、なかなか取扱いがむずかしかつたのであります。結局議論沸騰いたしまして收拾が非常に困難になりました末、三黨首會談の大綱を行う上において、その實績をあげることがよかろう、三黨首できめましたその大綱の實績をあげる方法を考え出しますならば、いくらか細目に關する問題は改訂させて、三黨の意見を取入れていこうということになりまして、原案、つまり水谷商工大臣の意見によりまして、原豫算をそのまま使うという考え方を取入れてこようじやないか。こういう意味で、本年度豫算が成立しない場合においては、前年度豫算を踏變するという意味において、今までやつて來た案をそのまま使つて、しばらくの間は、それでいこう。こういうことが、差障りなくいけるということになるし、三黨首會談で大綱をきめた意味も、大體その邊を考慮の中に入れておつたのであるから、こういうことで、本文に表わしておるような文句を考え出して、そこで皆それはよい案であるということで一致したような次第であります。その點御了承を仰ぎたいと思います。
○西田委員 ただいまの御答辯を聽いて、はなはだ意外に感ずるのでありますが、私は八月十六日の最後の政府と與黨三派の會談に出席したのであります。そこで今片山總理の言われた、本社原案の執行ということについて、社會黨との間に、相當の論議を交しました。しかしながら、この十六日の決定は、水谷商工大臣も、和田安本長官も、また民主黨も、國民協同黨も、本社原案の執行に贊成をして、ただ社會黨の岡田君が、強力に現場原案の執行を主張しただけで、大體多數できめるという意味ではありませんけれども、三黨首會談の折にきめられた通りにきまつたと、私は記憶しております。それが今のような條文にかえられているのでありまして、片山總理の言われるような意見が、再び最後の閣議において出たかどうかは私は存じませんが、しかしいきさつはそういういきさつであります。 それともう一つの方でありますが、本社原案を執行する、せぬという問題に關連して、この法案の關連條文が大分かえられねばならないというような事態が發生してくるのであります。そこで片山總理は、法理論は法理學者に任しておけという話もさつきの御答辯中にありましたが、これからさきこの法案に盛られております精神に基いて、各山々の出炭計畫をきめます場合には、毎期々々に増産を目標とした出炭計畫ができ上るのが、私は當然であると考えております。しかもそれが第十九條によりますと、前期の計畫に基いてやる。かようでありますけれども、前期の計畫よりも、より以上に擴充しなければならない、坑内作業というものは、縮小されたあるいは増産計畫を立てていない以前の計畫で坑内作業を實施しましたならば、石炭廳長官の裁定があらました場合において、すぐ今度はその計畫に基く増産の見地からの作業では困難であります。こういう意味もありまして、どうしてもこれだけは炭鑛管理者と事業主との間で愼重研究された、いわゆる本社原案を執行するというふうに御訂正にならないと、この法案運用に妙味が非常に抹殺されてしまう。かように私は考えておるのであります。この點に對しまして、片山總理の御答辯は必要といたしません。次の質問にはいります。 マツカーサー元帥より片山總理あての書簡を受領されてから、元帥の指示された書簡中の六項目の線に副つて政府は研究の結果、増炭非常對策要項というものを発表されました。この要項の實施につきましては、私も双手をあげて贊意を表するものであります。そこで片山總理大臣にお伺いしたいのは、片山總理はマツカーサー元帥からの書簡によつて、初めて増炭非常對策の實施の必要性を認められたのであるかどうか。この點についてお尋ねいたします。
○片山國務大臣 それによつて初めて非常時對策を立案したというのではありません。この案は増産對策であります。私どもが諸君に御審議を願つております石炭對策は、わが国再建のために、經濟復興のために、どうしても石炭の増産をはかつていかなければならないという趣旨において、御審議を願つておるのでありまして、その石炭増産計畫を實際的に現わしていく上におきましては、最も重要なる案といたしまして、増産の具體策を立てなければならないと考えておつたのであります。たまたまマツカーサー元帥から書簡をもらいましたので、その考えと一致する點等を組合せまして、ここに書面にこしらえる意味において、緊急非常時對策を立てておるような次第でありまして、意見の一致を見た點が、多多あるというふうに考え、さらに増産に向つて邁進いたしたいと考えておるような次第であります。 なお答辯の必要がないと先ほど申されました原案執行の問題でありますが、私どもの考えでは、あの原案執行というものは、ほんの暫定的のものであつて、あとの案がまとまるまでの間に合せとして、それを使うという意味でありますから、そう長期にわたるものではないのは言うまでもない。ほんの暫定的のものであるということを、御了解願いたいと存じます。一言それだけ附け加えておきます。
○西田委員 次にもう一つお伺いします。片山總理はこの増産非常對策を強力に實施することによつて、マツカーサー元帥の御好意にもこたえ、かつわが國の必要とする石炭生産を確保することができるという確信をおもちになつているかどうか、この點をお尋ねいたします。
○片山國務大臣 もちろん私どもは、祖國を再建するために、石炭の國家性、石炭の重要性を心から考えまして、國民全體の協力を仰がなければならないと考えているのあります。事業家の諸君も、今まで苦心をせられ事業を經營せられたその勞苦を、十分に生かしていただきたいと思います。また石炭産業に從事せられておる勞働大衆諸君も、眞に増産意欲を十分にせられ、國民もこれに對して深い理解をもち、また政府も十分努力を拂いまして、そしてこの石炭の増産に一路邁進しなければならないということに對しましては、諸君と同様であるということを、明らかにいたしておきます。
○西田委員 私が總理にお尋ねしたことは、この増産非常對策を強力に實施されるもとによつて、わが國の現在必要とする石炭を確保することができるというお見透しであるかどうか、ということをお伺いしたのでありますが、これに對する御答辯を願いたいのであります。
○片山國務大臣 十分見透しを立てまして現わしましたる政策を、具體的に實地に行いたいと考えております。
○西田委員 ただいまの御答辯では、私滿足ができないのでありますが、まあ總理大臣をそう追究しましても、御專門のことではないので、あるいは今の程度の御答辯しかできぬのかとも考えます。しかしながら、私はこの増産非常對策を、忠實にかつ強力に、政府と業者、勞働者、三位一體となつて實行したならば、石炭の増産は期してまつべきものがある、かように私は考えております。もし片山總理大臣は、この増産非常對策を實施することによつて、わが國の必要とする石炭の増産を達成し得るという見透しがついた場合においても、なお現在政府で提出になつておりますこの管理法案を行わねばならぬと、かようにお考えになつておるのか。あるいは増産達成の見透しがついたならば、もうこの管理法案はここに規定してあることは行われぬでもよろしいと、かようにお考えになつておるのか、この點をお伺いいたします。 〔「重要ポイトンだよ」と呼ぶ者あり〕
○片山國務大臣 實はその石炭増産計畫に、今西田君の言われました三位一體の案で進んでいかなければならないという線に沿うためには、國家管理案がいいと、私どもは考えているのであります。それを二年、三年の間、國民全體の協力と深き理解によりまして、十分成果をあげ得るであろう、あげることを私どもは心から望んで、また大きな期待をかけているのであります。その時に至りまして、成績があがらないとか、あるいはどうであるとかいう問題は、その時において諸君とまた御協議いたして、決して遲くはないと思います。今から先の先まで考えて、先はだめだからこの案はよろしくないというような杞憂をする必要はない、われわれはこれを信ずるから、これを行う。そして實際的にこれを効果あらしめたいという努力を拂う必要があると思つております。
○西田委員 私が今總理にお尋ねいたしましたのは、總理が今御答辯なすつたようなことをお尋ねしたわけではありません。私はこの増産非常對策を實施することによつて、政府、業者、勞働者が一體となつてやつたならば、日本の石炭の増産は期して見るべきものがあると、かように私は考えておるが總理大臣はこの對策を實施されることによつて、石炭生産の見透しがついても、なお管理を實施せられる御意向であるかどうかという點をお尋ねしたのでありますから、私の質問した點だけをお答え願いたいと思います。
○片山國務大臣 石炭増産と國家管理案は、一體となつて、つまり三位一體を現わすものであると考えております。從つて生産が後に至つてあがつた場合においては、効果をあげました方法をさらに強化していくということは、必要なことであろうと思つております。
○西田委員 どうも私は總理の御答辯がわかりかねるのでありますが、片山總理は施政演説の中においても、炭鑛は管理するのだというふうに御演説になりました。しかし今囘政府が提出しました石炭鑛業管理法案なるものは、いわゆる管理をせんがための管理案ではなくて、石炭を増産せんがための管理案である、かように私は商工大臣の御説明でも承つており、また了解しておるのでありますがゆえに、こういう管理の段階までももつていかないでも、こういう施策を完全實施したならば、石炭の増産は多分安心した状態になるであろうと思われるような、非常によい石炭増産非常對策というものが、せつかく政府によつて現在企圖され、實施に移されんとしておるのでありますがゆえに、この案を實施することによつて、日本の必要とする石炭の生受の確保が、もし見透しができたならば、管理などはやらなくてもよろしい、かように私は考えておりますが、この點について、總理はどうお考えになつておるかという點を、お尋ねしておるのであります。ごめんでうでありましようが、もう一度はつきり伺いたいと思います。
○片山國務大臣 私は増産のために管理は必要であろうと思つております。それはほんとうに國家のために、國民のために、産業發展のために管理をするのでありますから、そういう意味の管理政策は、さらに成果をあげた場合において、なお續けていく必要があろうと思います。
○西田委員 總理大臣の答辯では、私利常に不滿足でありますが、これ以上追究いたしましても、結局御答辯は同じことだろうと思いますから、私の質問はこれで打切ります。
○伊藤委員長 次に淵上房太郎君の質疑を許します。淵上君に質疑に入る前にちよつと御相談いたしますが、總理に關する質疑がありますれば、總理は他の委員會等に呼ばれておりますから、さきに質疑をしていただきたいと思います。
○淵上委員 總理大臣に一、二お伺いしたいのであります。この臨時石炭鑛業管理法案というものが提出されたのが、去る九月二十五日でありまして、去る七月一日片山總理は施政方針演説の中に、近くこの法案を提出すると言われましてから、まさに八十七日目である。私どもは爾來夜に日をついで法案の勉強をいたしておるのであります。この三箇月の間、まことに不可解な無意義な有害なる時を經過したのであります。新聞によりますと、いろいろ閣内あるいは與黨間において御相談があつたということでありますが、この波瀾萬丈の足取りをして、辛うじて三月日に提出されたのであります。この間最も遺憾に存じますことは、この國家管理法案が出るということのために、各石炭採掘の現場におきましては、非常な不混迷に陥れられたのであります。それがゆえに、出炭に非常な影響を來しつつあるということ、竝びに、いろいろその筋の指導あるいは手配等もあつたかと存じますが、勞資間におきまして、非常に大きい溝ができつつある。これはいずれは石炭鑛業から各重要産業にも波及する問題でありますが、まことに憂慮すべき事態が今や生じつつあるのであります。この間三箇月も提案をお延ばしになつて、これがためにそういう憂慮すべき事態を生じたことにつきまして總理大臣はいかなる責任をおとりになりますか。これをお伺いいたします。
○片山國務大臣 相當長い時日を要したということは申しわけないと思いますが、重要なる問題であり、各方面の深き理解を求めて、よき成案をもつて諸君に臨まなくてはならぬ、こういう建前から、愼重審議いたしまして、相當長い時間を要したのであります。その間の出炭成積でありますが、事務當局の報告によりますれば、相當の成積をあげておりまして、決してただいまおつしやつたような、非常な不成積であるとかいうようなことはないと考えております。その點は、私どもも十分に努力いたしまして、この間ぜひとも成積をあげてもらわなくちやならないという意味で、商工大臣も各方面に出張いたしまして、勞働意欲の高進から、また事業家の御協力を仰いで、大いに努力いたした結果が、統計にやはり現われておつたと喜んでおる次第であります。
○淵上委員 商工大臣の御出張の問題もお觸れになりましたが、それはあとで商工大臣にお伺いいたします。 第二にお伺いいたします。社會主義政策といたしまして、その先輩政黨である英國の勞働黨が、三十年前に總選學にあたりまして。社會主義政策である旗幟をはつきりいたしまして、そのときに、イングランド銀行、炭鑛、交通、電信、鐵鋼の五部門にわたりまして、即時國有方策をやるのだということを聲明いたしました。爾來毎年年次大會におきまして、これを再確認してきておるのであります。また社會主義國家の本山と言われておりますソヴイエト社會主義共和國連邦におきましても、ごらんのように、土地、銀行、炭鑛、その他著々と國有國營にいたしまして、順次社會主義政策を斷行しつつあるのであります。わが國におきましては、これが公然と論議され始めましたのは、昨年の九月だと、私は存じております。昭和十三年の電力國營案、あれは社會主義政黨の問題ではなかつたのであります。昨年マツカーサー元帥の對日理事會に對するメツセージが、當時の炭鑛がまことにひどかつたので、何とかしなければならない、國營にしたならばどうであろうかというメツセージがあつたのであります。そのときに發表されたところによりますれば、日本社會黨におかれましては、常任委員會におきまして、炭鑛は國有を前提とする國家管理をやるのだという方策をお立てになつたのであります。本年一月に至りまして、さらに國有を前提とする炭鑛の國家管理方策というものを發表されたのであります。しかして去る四月の總選舉にあたりましては、日本社會黨におかれましては、日本銀行の國營、石炭竝びに鐵鋼の國有を前提とする國家管理方策というものを政綱政策として提げられて、國民に公約されたのでありますが、私は、社會主義政黨であるベきものが重要基礎産業に著々と國有國營、あるいは國家管理を施行していかれるという方針であられることは、當然だと考えております。しかしてこのたび、この炭鑛國家管理法案の提出されるにあたりまして、たまたま今こういうふうな三派連立の内閣でありますからでもありましようが、去る九月十八日に最後の閣議決定があつたやに新聞に出ておつたのであります。そのときに總理大臣の談話が出ておりまして、經済安定の應急措置であるということが書いてあるのでありますが、最後にこういうことが書いてある。なお政府は、國家管理の制度は石炭増産の緊急對策として立案したものであつて、これをただちに他の産業に及ぼす考えはない。かように申されておるのであります。社會主義政黨としての立場上、著々と各基礎産業の重要部門にわたつて、國家管理、國營等を實施になりますことは、あるいは當然の問題でありましようが、それでは國内が收まらないので、特にただちに他の産業に及ぼす考えはない、こういう約束をされる必要があつたかと思うのであります。私はこの總理大臣の御方針につきましてはお尋ねいたしたいのであります。ただちに他の産業に及ぼす考えはないということは、言葉をかえて申しますれば、そのうちにはまた著々と第二、第三の重要基礎産業各部門にわたる國有國營を實施するのだというお考えであると思うのでありますが、ただちにはほかのものには及ぼさない。しからばいつごろからまた第二の計畫をなさるのでありますか。もししかりといたしますならば、今度は日本銀行であるか、石油であるか、鐵鋼であるか、電力であるか、交通であるか、どういうことをお考えになつておりますかを、この機會に總理大臣から御方針を伺つておきたいと思うのであります。
○片山國務大臣 今お讀みの、發表いたしました談話通りにおとり願いたいと思います。その裏の裏とかいうようなところまでお考えにならないでも、現在の問題に處しまして、大體そういう方針で進んでおるのであります。なるほど私どもは社會主義を實施いたしたいと考えておりますが、しかし戰後の疲弊せる今日の經濟、産業、財政を考えてみますと、いろいろその間に處すべきこともあり、またいろいろと對策を立てていかなければならない點があると思います。その意味において、この石炭問題は、イデオロギーにとらわれないものであるし、また管理案をほかの産業に及ぼして、全體の産業にいろいろの影響を與えるという點なども考慮いたしまして、愼重なる態度をとつて進んでいくのである。こういう意味を表わしておるのであります。よつて今のところにおいては、銀行國有問題でありますとが、あるいは鐵鋼、石炭の國有問題でありますとか、そういうものを實施するというところまでは、進んでおりません。
○淵上委員 ただいまお話のように、今のところは考えておらぬ、さように私は伺つておきます。第三にもう一つお伺いいたします。先ほど西田委員から質問が出たのでありますが、この石炭非常増産對策要綱を先般御發表になりましたが、これによりますと、「出炭能力を最高度に發揮せしめる為坑内設備及勞働力充實の、勞働規律の確立竝びに二十四時間制の完全實施を強力に推進する。」まことに結構なことで、さようなければならぬと思うのであります。強力に推進する、しこうしてこの要領の方には、第一に二十四時間制の推進につきましても、もちろん同様のことが言つてあり、あるいは「勞働時間に關し、左の作業方式のいずれかを勞働協約により實施するよう要望する。」と言われてあります。あるいは職場規律の確立の問題につきましても、經營者以下各人の業務と責任とを明らかにせる就業規則を勞働協約によつて規定せしめる。」など、方針が關明されておるのでありますが、ここにお尋ねいたしたいことは、どういうお考えでおられるか、こういう問題は、坑内の事情に應じまして、それぞれ經營協議會においてきめることでありましようが、炭鑛自身が自發的に問題を取上げるのを、ただ待つておられるような形であるが、非常對策が政府の方針として決定せられました以上、これが經營協議會に取上げられるのを漫然と待つておつてよいものであるかどうか、ただ經營協議會に任せて安んじているというわけにはいくまいと私は思うのでありますが、いつまで炭鑛々々にこの實施方針の確立するのをお待ちになる御方針でありますか、それを伺いたい。そうして最後には、必要がある場合には法的措置を講する決意である、かように言つておられるのでありますが、その法的措置は、必要に應じて、あるいま今會期中におとりになるのであるか、あるいは本會期中に間に合わなければ、四、五箇月後の來年の二月ごろにでもなつて、通常國會になつて、そういう方法をおとりになる御方針であるか、それを伺いたいのであります。
○片山國務大臣 できるだけ質績のあがる方法、増産の現われる方法をとりたいと思つております。この非常増産對策につきましては、一括いたしまして、あとで商工大臣から詳細に御説明すると思いるすから、その具體的問題は、商工大臣からお答えるすことにいたします。
○淵上委員 もう一つ伺います。ただいま最後に西田委員から質問がありました問題でありますが、きわめて注意深く總理大臣の御答辯を聽いたのでありますが、なお私も理解ができないのであります。この非常對策によりまして増産の效果が現われるならば、國家管理をおやりにならなくてもいいじやないかという質問でありますが、私も理解ができないので、重ねて效果があがつても管理法を實施するかしないか、この問題をお聽きたいのであります。實施はおそらく來年三月とかになるでありましよう。その間空白期間が數箇月あるのであります。その間、この對策によりまして、實際の效果があがつてくれば、これはもう實施する必要はないじやないかと思われるのでありますが、この點先ほどの總理大臣の御答辯ははつきりいたしませんので、もう一度重ねて御答辯を願つておきたいと思います。
○片山國務大臣 はつきり申し上げたつもりでありますが、國家管理案と非常増産對策と竝んで實績があがつた場合においては、國家管理策をやめてしまつて、そうして非常對策だけを一人ぼつちで進ましめるという必要はないと思います。いわゆる表裏一體となつて、三位一體の構成で進む。増産對策の一方であります國家管理案は、當然増産の大きな役割を演じた對策でありますから、それを續けてやることが結果的において最も必要なことであると思います。その内容等については、十分審議いたしますけれども、大綱といたしましては、増産のためい役立つた管理案でありますから、それを續けてやることは、増産の上において、最も必要なことと考えております。
○淵上委員 水谷商工大臣に引續いてお尋ねいたします。私はかねてお伺いいたしたいと考えております本論に入る前に、時間の關係もありますので、二、三本日お伺いいたしたいと思います。いやしくも政黨が政策政綱をもちまして、これが實現に努力するのは當然のことであると思うのであります。日本社會黨としまして、かねがねの政綱政策を世間に發表して、一人でもよけい同感者を得るということは、當然だと思います。從いまして、日本社會黨の領袖であられる水谷商工大臣が、各地におかれまして、かねがね抱懷せられておるところの信念、政策を吐露されることは、當然のことだと私は思うのであります。どこで何を言つたとか、それは言わなかつたとか、そういうことを氣にかけずに、よろいの上に衣を着せず、はつきり信念を堂々と披瀝されることが、當然のいき方だと思うのでありますが、ただいま總理大臣にも聽きましたように、社會主義政黨としての本來の性質上、重要基礎産業につきまして、いろいろ國有國營あるいは國家管理をやるという御方針が、當然あられるべきであり、また先輩各國の社會主義政黨におきましても、これを發表し著々實施に努力しつつあるのであります。先般も西田委員からの質問のとき、宇部における大阪城の外濠談義があつたのであります。私はおそらくその前日だと思うのであります。先般九州御主張の際に、鞍手郡の三菱新入炭鑛におきまして、やはり外濠談義があつたことを聞いておるのであります。こういう新聞を私は九州で見たのであります。「「三年の臨時國管を國有國營を前提とした決定的國管にもつていくか否かは、勞組諸君の協力いかんにある、今面の措置は、大阪城の外濠を埋めたようなものさ」と骨抜案に不滿を抱く勞組側に了解を求めた」云々という記事があるのであります。一面におかれましては、諸君の協力いかんにあると激勵されて、一面においては骨抜案になつて不滿を感ずる從業員諸君に、これはまず橋頭堡を打ちこんだという意味の外濠談義を、宇部の前日だと思いますが、なされたように、新聞にははつきり書いてありますが、事實はいかがでありましたか、商工大臣から御説明を願いたい。
○片山國務大臣 私の言動に關します御質問に對しては、さきに西田委員にお答えした通りであります。さらにまた新聞の記事を讀まれましたが、新聞の記事に對しましては、遺憾ながら一一責任を負いかねます。
○淵上委員 私は先ほど申しましたように、堂々お話になることが、公人及び政黨として當然のことだと思うのであります。ただいま御答辯によりまして、事實に違うというような御答辯でありましたので、さよう了承いたしました。しかるに去る四日に西田委員から、宇部における外濠談義の質問のとき、證人を呼んでもよいという御發言があつたのであります。私はこの際委員長にお聽きいたします。その證人をこの委員會にお呼びになつて、事實をはつきり聽きたいと思いますので、その手續をおとりいただきたい。理由はこの重要法案を審議するにあたりまして、毎日熱心に質問し、あるいは御答辯をいただいておるのであります。もしもこれがうそであつたりしますと、この審議が全然無效になるのであります。私はそういう心配のないようにするために、安んじてこの審議にあたり得るようにするために、どうかひとつ委員長におきまして、證人を喚問して、事實を正していただきたい。その手續をとつていただくようお願いいたします。いかがでございますか。
○伊藤委員長 委員長はその點は考慮の上考えることにいたします。(笑聲)
○淵上委員 重ねてもう一つお尋ねいたします。先般西田委員から法案第四十八條の「局長は、石炭の生産に關し學識經驗ある一級の商工事務官又は商工技官を以て、これに充てる。」という條文に關連して質問があつたのでありますが、政府の豫算説明によれば、民間のエキスパートを採用してやるのだという御説明があつたのであります。これにつきまして、またひとつごめんどうですが、商工大臣のお答えを願いたいと思うのであります。九日か八日か知りませんが、三井田川においでになりまして、その時に集まつた勞組職員の人たちとの懇談の席上におきまして、三菱職組の代表某に對して、商工大臣はこういうことを言われた。君らを一級事務官の石炭局長にするのだ、石炭局長を勞組職組からとるのだよと言われたそうですが、聽いた方では一級事務官とは何ですかと反問したところが、これは役人でも一番偉い人である、次官相當の地位だというようなことを言われたということを聞いておるのであります。私はたまたま三井田川の炭鑛にも七月十四日に何人かと一緒にまいりまして、職組竝びに勞組の諸君といろいろと懇談をしたことがあるのであります。その當時は、勞組の大部分は國家管理の内容が全然わからない人が多く職組の中には、今國家管理をやることは、かえつて減産になりはしないかというような意見が相當あつたのであります。その後の模様を傳え聞きますに、指導啓發よろしきを得てか、だんだん國家管理贊成者が殖えたということを聞いておるのでありますが、ただいま申しますように、石炭局長は、本案によりますと、四局長ができるようですが、これを職組なり勞組からとるという構圖をもつてお話しになつたかどうか、まさかそういうことはあるまいと思いますが、事實はいかがでございますか、これをお伺いいたします。
○水谷國務大臣 私は中學時代に物理學を習いまして、大體全部忘れましたが、ただ一つ覺えておることがあります。それは無から有を引出すことができないという原則です。ただいまの淵上さんの御質問は、無から有を引出したような御質問でございまして、それにはお答えするわけにはいきません。ただこの石炭局長の選任方法は、この委員會におきまして、西田委員、岡田委員その他のときもお答えしたように、たとえば九州の石炭局長なら石炭局長というものを、勞資双方の納得のいける人を選ぶということを言つておるような次第であります。その點は御了承願いたいと思います。
○淵上委員 この問題につきましても、先般西田委員の質問の中で聞いたと言われておつたのでありますが、併せて證人をお呼び出しになつて、事實を聽いていただきたいと思います。その手續を要求するものであります。 なおもう一ついやな質問ですが伺いたい。四日の西田委員の質問のときに、九州に大臣がおいでになりまして、業者側と懇談をする機會をおつくりにならなかつたのはどういうわけでありますかという質問に對して、自分の行動は商工省で日程をつくるのだから、その通りに動くのだ、自分でその懇談の機會を避けたのではないというふうの御答辯があつたやに聞いております。しかるに、十日のあちらの新聞を見ますると、こういうことが出ておる、「九州石炭鑛業會小西副會長が「あなたの言動は一國の大臣のとるべきものでない、われわれ業者と懇談の機會をつくらないのはなぜか」と手きびしい抗議文を讀みあげる、じつと聽いた水谷さんが「あたしはイヤラシイいうた覺えはあらへん、エゲツナイとはいうたんやけど…考えてもみ給え、゛國管即亡國、即赤化゛なで漫畫入りのポスターを街じゆうに張り出されたらあんまりええ氣はせん、ついそうん言葉が出たんや、今度の九州視察でも業者の人とは初めから會う氣で來たんやけど九州の業者の鼻息が荒うて水長相手にせず、なんでもすごい抗議文を出すという話やさかい御遠慮申し上げたまでや」」こういうことを商工大臣の談話として書いております。これによりますれば、大臣は初めから九州の業者に會う氣で來たんだけれども、鼻見が強そうだから遠慮したんだ。この間の御答辯では、商工省でつくつた日程通り動くのだと言われておるのでありますが、その日程に業者に會う日程があつたのかないのか。お話を新聞で見ますれば、初めから豫定をしておつたけれども逃げたんだ。どつちがほんとうかきわめて重大な問題であります。重大なる理由は、從來聞き及ぶところによりますれば、勞組の人たちにはよくお會になつている。現に九州でもそうでありますが、東京におかれましては、今日はどうかしりませんが、今日まで經營者側の尊い今までの意見を聽いて、そうして石炭増産のためによい國家管理案をつくろうという御努力のあとがなかつたんじやないかと、私はかように思うのでありまして、提案の説明にも作案の經過におきまして各方面から受けました御意見と御批評とを廣く吸収包攝したものであるというように書いておりますが、業者側の多年にわたる心身を打ちこんだ尊い石炭生産に關する意見を、この法案作成にあたつて御聽取にならなかつたんじやないかと思うのであります。その意味におきまして、大臣として出張された、一社會黨所屬代議士ではありません。いやしくも日本の商工大臣として、九州に御出張になる機會に、なぜ業者側に會つて、今日までの苦勞をねぎらい、かつこの後ともしつかりやつてくれと御奬勵なさつて、そうしていちいち意見を聽かれるという機會をおつくりにならなかつたかと、私も遺憾に思つているのであります。行動の豫定にあつたかないか知りませんが、この間も西田委員から聽かれた通り、私はなぜ九州で業者側にお會にならなかつたか、その理由を私からも重ねてお伺いいたしたいと思います。
○水谷國務大臣 前申しましたように、私が現地へ出張いたしました際には、大體現地の黨と商工局というようなものが相談をして、日程をつくることは事實です。ただいま商工省で日程をつくるというのは、あなたのお聽き違いであろうと思います。それから現地の經營者が、水谷を相手にせないというような申合わせか何かをされて、私と會見を忌避されたことも、これは事實のように聞いております。私の方から別にことさらに會見を忌避したというようなことはありません。さらにこの法案を作成するにあたりましては、業者の代表の方を數囘官邸、あるいは商工省にお招きいたしまして、勞働階級の代表者と同じ囘數會うていることは事實であります。しかしながら、それが十分か不十分かということは、これは見る人によつて違いましようけれども、公式にこの法案を作成するにあたりまして、會つた囘數は、兩者同數になつております。
○淵上委員 本會議が始まつておりますが、いかがいたしますか。
○伊藤委員長 それは今日本會議のあることを豫定の中に入れまして、理事會で今日會議を開くことを承認を得たのであります。績行を願います。
○淵上委員 比常増産對策要綱の要領第一の二十四時間制の推進の問題であります。二方採炭及び三方掘進によつて、増員の必要があるんじやないかと思われるのでありますが、あるいは一部には坑外夫十萬、坑外夫三萬増員の必要があるんじやないかという説がありますが、商工大臣はいかがなお考えでありましようか。
○吉田政府委員 仰せの通りに、ここにあります二方採炭及び三方掘進を完全に實施いたしますれば、相當の人員の増加が必要であると存じます。しかしながら御承知の通りに、ただいまの炭鑛住宅の状況は、きわめて逼迫しております。現在の勞働者、職員等を収容いたしますにも、不十分な程度でございます。從しまして、完全なる増員は、今のところやり得ないと考えております。まず當初といたしましては、なるべく現在おります坑外勞働者を坑丙に配置轉換をするという點に重點をおいて實施をいたしまして、その後住宅の許す限度において、住宅計畫を若干増加することによりまして、勞働者を漸次増加することにもつていきたいと考えております。從いましてそういう住宅の方の手當等がそろうに從いまして、理想に向つて制度を改善していく。こういうふうに考えております。
○淵上委員 ただいま配置轉換のお話がありましたが、一應増員はしないというように伺つたのであります。この第一の「重點炭鑛に對する優先集中配當を嚴に實施する」ということがありますが、この重點炭鑛というのは、一體どういう炭鑛を言うのか、御説明を願いたい。
○吉田政府委員 要するに今囘の増産對策というものを忠實に實行してまいりますような炭鑛を、重點炭鑛というふうに考えております。要するに増産に非常な貢獻をなしていく炭鑛、從いまして、これらの増産の對策を忠實に實行していくであろう炭鑛、そういうものを重點炭鑛と考えております。
○淵上委員 成績のいい炭鑛をとりあえず國家管理にして指定して、そうして指定炭鑛はこういう成績があがるんだということを誇示される意味でもないでありましようが、去る七月二日の本會議での水谷商工大臣の説明によりますと、國家管理の對象になる山とならない山と云々という説明がありますが、今度の法案を見ますと、全部一應管理の對象にする、こう變更されました理由を、大臣からお伺いいたしたいと思います。
○水谷國務大臣 ちよつと御質問の要旨がわかりかねるのですが、國家管理の對象は、全部の山をする。そしてそのあとに言われましたことが、指定炭鑛と一般炭鑛の區別はどうするかという意味でしようか、その點がちよつとわかりにくいのですが…。
○淵上委員 先般の本會議で申されたことは、國家管理の對象になる山とならない山と二つわけてありますが、今度の提出の法案によりますと、成績のいい炭鑛を國家管理にして指定炭鑛とするということになつておりますが、どういうわけで、かねがね御聲明なさつてきたところと變つて來たのか、その理由を伺いたい。
○水谷國務大臣 かねがね言つておりましたことは、廣義の管理と狹義の管理ということは區別して言つておりましたが、廣い意味の管理は、全部の山にあるということは、ずつと言つてきたつもりでございます。
○淵上委員 ただいま申しましたように「必要な資材資金の配當は、—能率を向上する重點炭鑛に對する優先集中配當を嚴に實施する」と書いてありますが、しからば、それ以外の炭鑛に對する資材資金の割當は、全然なくなつて放つておくというふうになるのであるかどうか、お伺いいたしたい。
○吉田政府委員 石炭の増産は、すべての炭鑛が御協力を願わなければいかぬのでございます。從つてすべての炭鑛に對しまして、資材資金はおわけするわけでありますが、今囘特別な増産措置をとるわけでございまして、從つてそういう方針に則つて能率をあげていただく炭鑛に對しては、その中でも特に資材資金を十分に見ていこう、こういうわけでございます。これは炭鑛に對するわくをなるべく擴げていただいて、現在のものは現在のもとして、さらにそれ以上にわけたいという意味でございますが、これらの點は、物資の計畫、資金の計畫全般とも關係がございますので、この新しい方針によりまして、能率を向上する炭鑛に對しては、その内容をよく明らかにいたしまして、特にその資材資金を見ていこうという趣旨でございます。
○淵上委員 わかりました。次にお伺いいたします。官業鑛山の點について提案説明でも政府は従來、このような事業を營む政府機關といたしまして炭業公團というもとを考えていたのでありますが、諸段の事情よりその管理が困難となりました」と書い、てあります。「諸般」というのはいろいろな事情があるということでしようが、どういう事情であるかお伺いしたい。
○平井(富)政府委員 最初炭業公團を設立いたしまして、資材あるいは新坑の開發について、私企業では行えない事業を擔當せしむる建前で立案を進めてまいつたのでありますが、公團制度自體に關しまして、政府部内におきましても、この體團を擴張していくかどうか、あるいは他の制度によつた方が全般的に良好であるかどうかというような點に檢討を要するような状況に立ち至つて、さしあたり政府として、當時豫想しておりました數個の公團は、これを提案しないというふうにきまりましたので、この件についても、新しい公團を設置するという方針は、一應とりやめまして、現在産業復興公團がございますので、これを活用していくということの方が、公團をよけいにつくらぬ、なるべく公團制度を擴充していかないという建前から見て適當ではないか。また産業復興公團で足らない部面は、政府が直接これを斡旋あるいは擔當していくという方向に切換えた次第であります。
○淵上委員 この公團に代るべき増産對策要綱の中の第三に、「資材の調達供給の圓滑化に關する對策」の(イ)に「生産業者と連繋を圖り」ということが書いてあるが、從來は鐵鋼とかセメントとかいうものが、生産業者と何ら連繋なく計畫されておつたのですが、今度はどういうになさるのです、その御説明を願いたい。
○吉田政府委員 今日までは御承知のように、最近協同組合になつておりますが、資材施設組合で、鋼材等の共同購入をいたしておつたわけでありまして、もちろん生産業者との連繋は、そこで保たれておつたのでございますが、これらの機關が近い將來におきまして閉鎖されるようなことになるかと存じまするので、これに對する對策として、先ほど申しまして炭業公團を一應計畫いたしましたが、前述のような事情で、公團の設立が困難になりましたので、これに代る方法として、政府がみずから石炭廰にその關係の職員をおいて、生産工場と注文を出す炭鑛の側との連繋を從來の組合等に代つていたすということをいたしたいと考えておるのでございます。
○淵上委員 それから「發註に調整を加えると」ありますが、從來は各炭鑛が獨立でいろいろな資材を間に合わせておつたのであります。今度は統制會でもおつくりになるつもりでありますか。發註の調整というのは、どういう御方針でありますか。
○吉田政府委員 これも從來の組合で行つておりましたことと變りありませんので、從來も組合で一元的に鋼材等の發駐をいたしておつわたけございます。今度その組合が解散をいたすようになりますと、これに代る方法といたしまして、一括して發注することが困難になりましたので、石炭廰におきまして、それらの注文を全部まとめて、製鐵會社等に發注の御斡旋をする。要するにこの製鐵會社には、これくらいの品物をこれだけ發注させるということを御連絡するということで、今日までの共同購入の組織に代る斡旋をいたしたいかように考えておるのでございます。
○淵上委員 次に坑内夫の所得税の問題であります。この間どなたかから質問があつた類進課率の問題でありますが、たとえば三五%以上の課税は免除するという方針ですが、どうおきまりになつたか。かりにきまつたとすれば、どういう方針であるかお伺いいたしたい。たとえで三五%を超過した年收六萬圓以上のものに對する課税は、その税額は業者に轉嫁していく。業者に轉嫁するということは、結局消費價格を引上げるということになるだろうし、そうなりますると、この基本方針の二の單價の引上げと矛盾するという問題になつてくるのでありまするが、あるいは政府から何らかの保障とか、谷らかの方法を講じられるか。すでに大分日も經つたのでありますが、大藏省との交渉の結果、どういうふうにおきまりになつたかをお伺いしたいと思います。
○水谷國務大臣 ただいま淵上さんの御質問でございます浩、坑内の直接夫または坑内の係員に對しまして、所得税についた特別の處置を講ずるということはきまつておりますが、その内容の具體的な問題に關しましては、まだただいま確定しておりません。
○淵上委員 先ほどの職場轉換の問題に關連しまして、坑内夫と坑外夫の比率の問題ですが、傳え聞くところによりますれば、六對四の比率できめたいという御方針のように聞いております。過去のたとえば昭和六年以降の坑内外夫の比率を見ますると、以前七〇%以上七五%にも、坑内夫が大部分を占めておつた時代があるのでありますが、これは六〇%と限定せずに、さらにぐんとそのパーセンテージを上げられる方針をなぜおとりにならないかという點をお尋ねいたします。
○水谷國務大臣 當面の目標といたしましたら、ただいま御指摘のように六〇%、四〇%ということに考えております。と申しますのは、山も非常に荒れて、機械の設備なども非常に傷んでおりまして、從來のような整頓した山における坑外夫よりも、相當多數の坑外夫を必要とする現状でございますので、大體當局の目標としては六〇%、四〇%という比率でいきまするが、山の事情が整備するにつれまして、できるだけその差をつけたい。このように考えております。
○淵上委員 先般五日の日に、西田委員から要求があつたのでありますし、われわれもそれを要求したいつもりでおりましたが、先般御發表の増産計畫、五箇年計畫に關連する資材、資金、勞務に關するお調べは、大體一週間くらいで提出するというお約束になつておつたのであります。それが手にはいらないので、實は今自分がかねがね聽きたいと思つておつた點を保留してのでありますが、この資料はもう大體一週間過ぎておりますが、いつ御提出くださいますか、委員長にお尋ねいたします。
○伊藤委員長 次囘の開會のときに提出をいたせます。
○淵上委員 私はこの機會に水谷商工大臣の生産という問題に對する根本の理念を、お伺いしたいと思うのであります。今日申し上げるまでもなく、石炭の増産が非常に焦眉の急に迫つておるというこの時勢におきまして、社會主議方式というものが、はたして焦眉の急を唱える生産という問題に對して、いかなる觀念をもつておるかということをまず考え、大臣の根本理念をお伺いたしいと思うのであります。本來人間が幸福でありまするならば、騒ぎは起らぬのであります。幸福にならないから、いろいろな騒ぎが起きてくる。幸福とは一體何であるか、これはすなわち欲望が滿足されておる状態のことかと思うのでありますが、この欲望というものは、日々日とともにだんだん大きくなつていく。これに報ゆるためには、いろいろな強大なる生産力をもつていかなければ、結局人類の欲望は滿されぬと思うのであります。人間の衣食住各面を初めといたしまして、あるいは交通、通信機關だとか、文化設備とか、いろいろの施設、こういうものはすべて、資本主義の生産の結果であり、資本主義によつて、人類は初めて生活を樂しみ、かつ向上せしめつつあるのであります。資本主義こそ、私は生産の根本の體形でなければならぬ、それは過去の歴史を今繰返して申し上げるまでもないことでありますが、かように思うのであります。この資本主義の強大なる生産力の本質をなすものが、私有財産制であります。私有財産制の上に、個人に企業の自由と營利の自由を許す、これによつて強大な生産力が發揮される、かように思うのであります。私はこの問題につきまして、まずイギリスが炭鑛國營をしたそのいきさつを、一應御一緒に顧みていただいて、そうしてただいま上程されておりまするこの國管法案審議の資料にする必要がある、かように思うのでありますが、一九二三年にフイリツプ・スノーデンが社會主義實行決議案なるものを出したことは、御承知の通りであります。將來の立法方針は、漸次私有制度を制壓して、これに代るに生産及ご分配の手段を公有にしなければならぬという有名な社會主義實行決議の提案があつたのであります。當時議場では非常に盛んな論戦が交され、結局その間一應討論終了後國會は四箇月の休會を議決してこれに對する檢討準備の期間をつくつて研究にあたつたのであります。しかして四箇月後の七月に再開會せられまして、そのときは結局三百六十八對百二十一の少數をもつて否決されたのでありますが、爾來イギリスの勞働黨は、これを毎年の年次大會で確認しておるのであります。しかして一昨年七月の總選擧の結果、勞働黨が多數を得て、現在のアトリー内閣になつたのでありますが、かねがね三十年來檢討したこの方針によつて、昨年三月からイングランド銀行の國營を實施し、今年一月から炭鑛國營を實施したのでありますが、しかしながら、多年英國勞働黨が主張しておつたこの炭鑛國營については、あまり成績が芳しくない。これはいろいろ理由もありましようけれども、シユーエル燃料大臣は、今年は珍しい五十年來の寒波の襲來があつたために石炭が出なかつたが、これさえなかつたならば、石炭が出るのだということを述べて、世界の失笑を招いたという状態であるのでありますが、ここに注意しなければならぬ問題は、イギリスの石炭廳の性格であります。すなわちイギリスの石炭廳ナシヨナル、コール、ポールドというのは、決して政府の行政官廳制はない、私法上の法人である。業務を執行する場合の一切の行為及び取引をなす能力をいかにして收支相償うようにするかと考え、これを根本要件にいたしておるのであります。國家から一定の監督は受けますけれども、一切の國税、地方税の税金を拂つておる、この石炭廳を營利法人としておるというのは、これは非常に玩味すべきイギリスの國營方策の特色であるのであります。現在の勞働黨の政府は、あくまでも資本主義の形態を存續して、ひの資本主義の長所を維持しつつ、國營を敢行しておるというこの方針をとつておるのであります。まずこの點について、商工大臣はいかなるお考えをもつておられるか、伺いたいと思うのであります。
○水谷國務大臣 生産に對する商工大臣の根本的理念はいかんという御質問のようでございますが、答えはきわめて簡單であります。生産第一主義でございます。さらにまた資本主義か、社會主義かという御議論でありましたが、この法案は、そういうような資本主義か、社會主義かという角度から作成されておる法案ではないのでありまして、それは繰返し申し上げますように、企業形態はあくまで原則として變更しないという立場に立つて立案された法案でありまするがゆえに、この法案の審議にあたりまして、資本主義か社會主義かというような議論をする必要はないと思います。
○淵上委員 私はまだその問題は續けてお伺いするのでありますが、現在のわが国の内閣が日本社會黨首班内閣でありまするために、現内閣で今日とられ、あるいは今日以後においてとられんとする諸政策が、おそらく社會主義を實行されるに相違ないという意味におきまして、われわれ國民は重大なる關心をもつておるのでおります。その意味におきまして、まず商工大臣の根本理念を今尋ねつつあるのであります。ただいまお伺いした英國石炭廳の特色ともいうべきその性格につきまして、お答えがなかつたのでありますが、私はそういえ意味で今伺いつつあるのであります。今日のイギリスの經濟危機が、イギリスの國際的重要性、あるいは戰後の特殊なできごととして、世界注視の的になつておることは、御承知ま通りであります。この危機が勞働黨内閣二箇年の間に成熟したものであるという意味におきまして、イギリスのことながら、われわれ日本國民としても、看過しがたい問題であるのであります。三十七億五千萬ドルの米貨借款を活用して、復興の基礎をつくりあげようとする企畫が、豫定通りに運んでいない。すでに行き詰つて内閣は改造中であります。反對黨の黨首チヤーチルは、春以來たびたび勞働黨が退陣しなければ、英國の復興はできないと叫んで、政府を攻撃しておりますし、去る八月三十日APロンドン電報によりますれば、イーデン前外相もまた、戰後イギリス保守黨大會において、經濟危機に對するアトリー政府の失政をあげまして、退陣せよ、速やかに退陣しなければ、英國は復興できないという聲を放つておるのであります。戰後イギリスが勞働黨内閣の社會主義政策のために失敗しておるかどうかは、十分の資料を集めなければ、にわかに斷定しがたいのでありますが、社會主義方策が有する經濟的能力、もしくは社會主義の主張する計畫經濟や統制經濟が、今日日本の現状にあるがごとき復興再建の非常に急を要する經濟過程にもつ役割は、きわめて愼重に考えなければならぬと思つておるのであります。ただここに特に注意しなければならぬ問題は、イギリスの國營問題は、詳しく申し上げるのを省略いたしますが、これはイギリスの國内の特殊の事情によると思います。あそこの炭鑛の獨特の構成關係がある。かつては二億二、三千萬トンを出しておつたイギリスの石炭が、だんだん減つてきた。これにつきまして、今詳しい話は申し上げませんが、いろいろ獨特の事情がある。イギリスの經濟界としては、炭鑛を國有國營にしなければ、とうてい業者も勞働者もやつていけない實情にあつたのであります。しかして一九二七年にマイニング・インダストリ・アクト、鑛工業法、あるいは一九三〇年に炭鑛法が出ましたのも、いずれも業者の保護であり、あるいは企業の生産遞減を防止するためにできたのであります。日本と大分違つておる。殊に一九三八年コール・アクトができて、地下の埋藏物は、今まで御承知のように地主のものであつたけれども、全部國有にしたのでありまして、このときですら地主は何らの反對をしなかつた。今日日本におきましては、ごらんの通り、多年石炭の生産に身命をなげうつて、一生懸命に働いて、石炭の生産につき造詣の深い各業者の人々、あるいは石炭に關係のない一般國民の中でも、國家管理にするということは、必ず石炭の減産を來すのではないかという心配をして、國内ごらんのように、非常な反對論があるのであります。これはイギリスの場合とまつたく事情を異にしておるのであります。私はここに特に商工大臣にお伺いいたしたいのは、イギリスの勞働黨が、三十年前から研究に研究を積んできている炭鑛國營問題を、日本の現在における社會黨の御方針と比べますと、社會黨では、もちろんいろいろ御研究になつたと思いますけれども、昨年九月の常任委員會で決定發表されて以來、われわれは知つておるのでありますが、少し研究が足らぬのではないか、もう少し愼重にこの石炭の國家管理という問題につきまして、眞劍なる重研究が必要であるのではないかと思うのであります。ただ組閣後一年經つか經たぬうちに提案されて、その間どれだけの研究があつたか知りませんが、いわゆる商工省案なるものが世間には傳わつておるのであります。しかも商工省案というものは、われわれは新聞だけで知つたのでありますが、いろいろな機關ができておる。その案がいつの間にやら棚上げされてしまつた。そしてしきりに猫の眼のよいに變つてきた。そういうぐらぐらした、しつかりした研究のできていない炭鑛國家管理を、どうしてそんなに急いでおやりになりますか。私はさらに續いてあとで申し上げますが、この生産を非常に急ぐ場合におきましては、あくまで資本主義方式でやらなければ、生産ができないと思つておるのであります。そういう觀念に關連して、日本社會黨の炭鑛の國家管理に對する御研究が、少し足りないのではないかということを感じますが、商工大臣はいかにお考えになりますか。
○水谷國務大臣 資本主義か社會主義かということは、ベルンシユタインでしたか、社會主義の定義を百八十なんぼ言つておるのでありまして、見る人によりまして、その定義も違うだろうと思うのであります。淵上さんは、生産は社會主義ではだめで、資本主義でなければいかぬということだけは言われておりますが、社會主義的生産方法とはどういうことであり、資本主義的生産方法とはどういうことであるのいう御説明も聽いておりませんので、それに對して私は的確に御答辯するわけにはまいらぬと思うのであります。從いまして、われわれはイギリスがどうであろうと、イギリスの炭鑛國有國營がどうであらうと、われわれ日本國民といたしましては、日本がおかれたこの實情に即しまして、いかにすれば石炭の生産が恆久對策と竝んで緊急増産ができるかどうかというところを現實に握りまして、この結論を得たような次第であるのでありまするがゆえに、イギリスのことなんかを例に引かれることなく、日本の場合は現状に對應してこの法案がどこがどう食い違つておるか、あるにはどういう點が間違つているかということを、具體的に教えていただくなら、またそれに對して、私の方も用意した御答辯をさしていただきたいと考えております。
○淵上委員 私は社會主義政黨のとるべき途だろうということにつきまして、先ほどから申しておるのでありますが、イギリスの勞働黨が今日までやつてきた行き方は、やがては日本社會黨が將來に向つて行かれる途ではないかと思いまして、この機會に商工大臣に根本理念を伺つておるのであります。生産の非常に急を要する場合におきましては、あくまでも資本主義方式でいかなければならぬ。かようにわれわれは考えるのでありますが、これにつきましても、御承知のソヴィエト社會主義共和國連邦の例につきましても、現實に過去の歴史がこれを物語つておるのであります。御承知のごとくに、ケレンスキー政府を倒しました當時の社會民主黨レーニン一派がだんだん國有國營に行つた。しこうしてそのあとで工場生産、農業生産が非常に落ちまして、御承知のように戰時共産主義時代と稱せられる數年があつたのであります。このときに、このことに著眼して、一九二一年の春レーニンは、現在の状況下においては、もはや營利主義の部分町復活によつて生産力の増強をはかり、しかる後再び社會主義の建設に向つて新たに前進を關始するよりほかにないというので、五箇年計畫を立てた。これは有名なネツプと稱せられる新經濟政策であるのであります。資本主義自由經濟への後退、これがすなわち生産の増強のやむを得ない當時とられたレーニンの方策であつたのであります。その生産の増強は、すなわち私有私營を認め、資本主義的な方式によるほかないというレーニンの心持であつたのであります。すなわち農民の創意と營利心とに訴えて生産力を増すよりほか、當時手はなかつたのであります。かくのごとく、ロシアにおきましても、社會主義計畫經濟政策のために生産が非常に落ちてきた。結局やむを得ず、部分的に資本主義經濟、自由經濟に轉換せざるを得なかつたのであります。これは要するに、今日のごとく生産の急を要する日本におきましては、あくまでもやむを得ず社會主義政黨といえども、やはり資本主義方式によらなければ、生産の増強はできないのではないか、私はかように思つておるのであります。私有私營を認めるところの資本主義の方式、これによりまして物ができることは、決して國民民衆の負擔ではない。社會主義の計畫經濟のソヴイエトと、資本主義自由經濟のアメリカとをかりに比べてみましても、その社會主義國よりも資本主義國の方が、はるかに能率的であり、國民も仕合せしておりことは、これは事實であります。勞働者から申しましても、多くの分配にあずかり、多くの幸福な目に遭つておる。これは否定できない事實だと思うのでありまして、私はかくのごとき時代に、何も個人の營利心を抑えるような、あるいは創意くふうを鈍らしたりするような國家管理方式をやるということ自體が間違つておるのではないか、かように思つておるのであります。もちろん資本主におきましても、いろいろ弊害があることは、これを認めなければならぬのでありますが、ただ社會主義は、どうも國家權力によつて拘束と抑制とを加える。これが社會主義の根本の行き方ではないか、かように思うのであります。從いまして、社會主義の行き方は、本質においては分配方式であり、抑制方式だ、増産の方式では断じてない、かように私は考えております。國家の力をもつて抑制し拘束を加えていく、これはすなわわち權力が生産をなし得るかという問題になるのでありまして、これは非常な疑問だろうと思うのであります。本來權力は一トンの石炭をも増産はできないのでありまして、ただ權力のなし得るところは抑制であり、束縛であり、處罰であるにすぎない、かように思いのであります。ロシアのごとく、人民にはまつたく自由を認めず、徹底して強力なる權力を發揮し得るところにおきましては、あるいは權力は生産を増強し得るかもしれませんけれども、しからざる國におきましては、權力の機能は決して生産を増強し得るものでない、かように私は思つております。社會主義の方式は、計畫經濟、統制經濟、この背景にはいわゆる權力がある。これは決して生産の増強にならぬ。もしも資本主義がたくしまく伸びまして、過度に成熟しておるときにおきましては、そこに初めて抑制と束縛とが必要になつてきて、ここに社會主義的方式による政策をもつて、社會的の公平と安定とをはからなければならないと思うのでありますが、今日は生産の設備は荒廢しておる、資材は枯渇拂底しておる、勞働者の生産意欲は低下しておる。しかも生産復興が焦眉の急であるという今日の日本の現状におきましては、社會主義方式が、はたして生産の増強、復興再建の役割を果し得るかどうか、これはイギリスの現在の状況竝びに日本の現在の状況とを思い合わしまして、ほんとうに眞劍に、この方式を研究すべきときではないかと思うのであります。今日の急務は、分配よりも生産である。生産體系の擴充強化であります。分配の方式になずむよりも、分配すべき物をまずつくるときである、かように私は思つておるのであります。今や一トンの石炭でも増産しなければならぬ焦眉の急に迫られておるときであります。民主主義日本の建設にあたつては、企業の民主化にはもちろん務めなければならぬのでありますが、生産の増強ということは、あくまでも至上命令であるのであります。私は社會主義、社會黨首班内閣がとられる經濟政策という問題につきまして、過去のソヴイエトの例から見ましても、今日日本の現状としては、あくまでも國家管理とか、あるいは國營とかいう觀念を打ち捨てて、資本主義方式でおやりにならなければいけないのではないか、再建復興はできないのではないか、かように思つておるのでありまして、これに關する商工大臣の御意見を伺いたいと思うのであります。
○水谷國務大臣 重ねての御質問でございますが、大體この法案は、社會主義か資本主義かという物さしできめる法案でなしに、もし學者の言葉をまねして言うならば、資本主義的計畫經濟の立場からながめなくてはならない法案であろうと、私は思うのであります。この法案のどこをしていはゆる社會主義生産方式と言われるのか具體的にお教えをいただいておらないからわかりませんのですが、私はこの法案を虚心坦懷にお讀にになりますならば、これには社會主義というもののいわゆる特長と申しまするか、生産方式というものは、これは一つもありません。すなわち資本主義のよさと計畫經濟の妙味とを併せこねたところの資本主義的計畫經濟、民主黨と立場から言えば修正資本主義という立場から出でたところの法案であるのでありまして、決して資本主義か社會主義かというその建前から得た法案でないと思います。從つて今淵上さんが申されましたように、社會主義的生産方式ではだめであるというような御意見もよくわかります。ただわれわれといたしましては、學問の上から申しますならば、資本主義か社會主義か理論的にはつきりわかりますが、現實の完全敗北のそのどん底に突き落されました、しかも占領下の日本の經濟のもとにおきましては、純粹に資本主義の原則も行われず、また純粹に社會主義の原則も絶對に行われないということは、これ多くの例をまつまでもありません。現に自由黨が内閣を組織された場合におきましても、やはり土地私有權の制限であるか、場合によれば禁止と言われる土地制度の改革も、やはりやらなくてくならなかつたような状態である。さらにまた軍需補償の全面的打切り、普通のいわゆる資本主義經濟の物さしから言えば、とうていできないようなことでも、やはりやらなくてはならないような、これが日本の現實のいわゆる經濟の姿であるのであります。從つてわれわれはこのいわゆる現實の日本の經濟の姿、その置かれたる特殊事情というものに考えて、この法案を審議していただきたいのでありまして、日本の現實な特殊事情から遊離いたしました理論の世界において、資本主義が、社會主義かというようなことで議論されると、結局は齒車の空まわりになるのであろうと、私は思う次第であります。その點は十分ひとつこの法案の現實に即して、審議を進めていただき、またわれわれもそういうようなイズムであるとか、イデオロギーにとらわれず、いかにしてこの法案を中心にして石炭の生産増強ができるかという點に、議論を集中していただきたい、このように考えております。
○淵上委員 私は、社會主義政黨といたしましては、先ほどから申しますような行き方を當然とらるべきであろうと思いますが、日本社會黨におかれましても、まず炭鑛を國家管理いたしまして、そうしてこれに橋頭堡を打ちこんで、次々にいろいろな國家管理方式をおやりになるだろうと考えますので、まず商工大臣の根本理念をお伺いしたのでありまして、この法案が通ることがすなわち第一歩を踏み出されることである、かように思うゆえに、これを聽いたのであります。今大臣の御説明はわかりましたが、どうですか委員長、きようはこれで打切つていただいて……。
○伊藤委員長 それではみなさん非常に御贊成のようでありますから、本日はこの程度に止めます。 次會は公報をもつて御通知いたします。本日はこれにて散會いたします。 午後三時五十二分散會