議院運営委員会司法委員会連合審査会 第1号
- 発言数
- 40 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1947/08/08
会議録
○淺沼委員長 それではこれより議院運營委員會、司法委員會の連合審査會を開きます。 連合審査會は議案を所管する委員會の委員長が審査會の委員長となる建前になつておりますので、不肖私が委員長を勤めさせていただきます。 それでは裁判官彈劾法案を議題として連合審査に入ります。本案は議院運營委員會がその所管である彈劾裁判所に關して調査の結果、小委員會を設けて起草したものであります關係から、便宜私よりその立案の趣旨ならびに本案の要旨について説明申し上げます。本席から説明することをお許し願います。 本案は議院運營委員會の裁判官彈劾法案起草小委員會において研究の結果、各方面の意見をも參酌して立案したものを、さらに關係方面と交渉の結果、再檢討を加えて出ました一應の成案であります。印刷が間に合いませんので、お手もとに配布しておりまする印刷の原案に、別紙の修正を加えましたものを、一應の成案と御了解を願いたいと思います。 まず本案起草の趣旨について申し上げます。由來、裁判官の地位は、司法權獨立の原則に基いて、憲法によつて保障されており、明治憲法も第五十八條において「裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ處分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラル、コトナシ」と規定しておりました。日本國憲法も第七十八條において「裁判により心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の彈劾によらなければ罷免されない。」と規定し、同じく第六十四條において「國會は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、兩議院の議員で組織する彈劾裁判所を設ける」と規定して、裁判官の罷免が、原則として國會に設けられる彈劾裁判所の裁判によつてのみ行われるべきことを定めております。その彈劾の制度は、日本國憲法により新たに認められた制度でありますが、國會に設けられる彈劾裁判所にその權限を屬させている點において、きわめて注目すべきものがあります。すなわち從來の判事懲戒法によれば、免官の處分は判事みずから組織する懲戒裁判所によつて行う同僚裁判でありましたが、本法制定の曉においては、裁判官といえども廣く國民監視のもとにおかれることとなり、國民の代表たる國會議員の中から選ばれた彈劾裁判所の裁判員によつて罷免せられることとなるため、司法權の正しい運營が期待され、いわゆる主權在民の大原則と、公務員の罷免を國民固有の權利であるとする精神に基く、新しい民主主議的制度が確立されるものと考えられるのであります。この憲法の規定に基き、裁判官に對する彈劾の制度を、憲法附屬法の重要な一つとして定めようとするのが、本案起草の趣旨であります。 次の本案の要旨を御説明申し上げます。 第一に、彈劾により裁判官を罷免する事由としては、一、職務上の義務に著しく違反しまたは職務をはなはだしく怠つたとき、二、その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信をはなはだしく失うべき非行があつたとき、の二を擧げております。 第二に、彈劾裁判所及び訴追委員會は、いずれも國會に設けられるものでありますが、國會とは別箇に獨立して職務を行うものである點から、國會の會期と關係なく、閉會中もその職務を行うことができるものとしております。 第三に、訴追委員會の組織は、國會法に定められているので、その員數を二十人、その豫備員の員數を十人とし、その選擧の時期、補缺、任期、辭職等及び委員長その他委員會の職員についての規定を置いております。 第四に、訴追委員會は、獨立してその職權を行うものとし、訴追委員會は、十五人をもつて定足數とし、罷免の訴追の議決には、出席訴追委員の三分の二以上の多數の意見によるべきものとしております。 第五に、訴追の手續については、訴追委員會は彈劾による罷免の事由をみずから調査し、または官公署にその調査を囑託することができるものとし、また事情により訴追の猶豫を認めておるのであります。 第六に、何人でも訴追委員會に對して罷免の訴追をすべきことを求めることができることとして、彈劾が眞に國民のために認められた制度であるということを明らかにしております。 第七に、彈劾裁判所の裁判員の員數は、衆議院議員及び參議院議員たる裁判員各七人、合計十四人とし、審理及び裁判を行うには、各議院の議員たる裁判員それぞれ五人以上の出席を要するものとしております。 第八に、裁判員は獨立して職權を行うものとするとともに、彈劾裁判所の對審及び裁判の宣告は、原則として公開の法廷でこれも行うものとしておるのであります。 第九に、裁判員に對する除斥、忌避及び囘避、法廷における審理、證人等については刑事訴訟法の規定を準用することとし、別に審理及び裁判の手續については、この法律の特に定めのない場合には、彈劾裁判所がみずから必要な規則を定め得ることとしております。 第十に、罷免の裁判をするには、特に、審理に關與した裁判員の三分の二以上の多數の意見によるべきものとしておるのであります。 第十一に、罷免によつて、裁判官又は檢察官となる資格を失つた者は、特別の場合以外は資格囘復の請求をなし得ないものとし、併せて恩給權の剥奪、他の文官の任用に對する制限についても、それぞれ恩給法の改正及び今後制定さるべき公務員法の制定にこれを委ねたいと考えております。 第十二、虚僞の申告者に對する罰則及び證人として召喚に應じない者等に對する過料の制裁を置いております。 以上簡單でありますが大體本案起草の趣旨と、その内容の要旨について御説明申し上げました。なお説明の足りませんでした點につきましては、審議に入りましてからお答え申い上げたいと存じますし、また詳細な點につきましては、條文の整理に當りました法制部第一部長をして説明いたさせます。 これはいかがでございましようか、詳細の説明をしていただいてからやることにいたしましようか、お諮りいたします。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○淺沼委員長 それでは第一部長。
○三浦説明員 ただいま委員長から、要旨につきましては、御説明のありました通りでありますが、なお要點につきまして、私から二、三附け加えて申し上げます。先ほど話がありましたように、活版に刷つてありますもののほかに、謄寫版に刷りました裁判官彈劾法案修正というものを併せましたものを一應原案といたしましてごらんを願いたいと思います。 第二條についてでありますが、第二條は運營委員會におきましても非常な問題になりまして、いろいろ論議を盡されたのであります。最初活版に刷つてありますように、罷免の事由を四號にわけて一應認定いたしたのでありますが、その後關係方面との折衝等によりまして、これを修正案の通り二號にまとめることにいたしたのであります。趣旨におきましてはもう最初の案と變りはないのでありますが、多少の點において相違いたしておるのであります。 涜職の行爲等がありました場合につきましては、いやしくも裁判官が涜職行爲があればその罪、あるいは程度のいかんを問わず、訴追事由たるものといたしまして特筆いたしたのでありますが、これは廣く職務上の義務違反ということの中に包括され得る事項でもありますので、それらの意見も參酌いたしまして、これを一、二、三號を修正案に書いてありまする一號にまとめ上げました次第であります。 なお四號につきましては、その他包括いたしまして、裁判官として罷免に値するような事由がありました場合を規定いたしたのでありますが、この場合に、特に裁判官といたしまして非行がありました場合に、それが司法の尊嚴に影響を及ぼすような行爲であつた場合を特にあげまする方が、事由といたしまして明瞭であるというような意見がありましたものですから、お手もとに修正案としてあげてあります二號の「その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき。」ということにいたしたのであります。 次に第三條でありますが、これは新しく三條の所に訴追委員會、それから彈劾裁判所をどこに置くかということを規定いたしたのでありますが、これは國會が東京に置かれておりますことからいたしまして、また裁判所竝びに委員會の構成員が國會の方々であるということからいたしまして、當然東京に置くことを前提といたしておつたのでありますが、この點なお明かにした方がいいと考えまして、さような意見も斟酌いたしまして、第三條の修正案の通りにいたしたいと考えておるのであります。 次に第四條でありまするが、四條につきましては、訴追委員の員數、豫備員の員數等を規定いたしてありまして、その選擧の方法を書いてあります。なおこれに關連いたしまして、訴追委員といたしまして手當を受けます點に關しまして、いろいろの意見もありまして、この仕事を國會の議員としての本來の職務以上に特に加重せられるものであるし、また閉會中もこの職務を行うという事柄に鑑みまして、手當を出す規定をおいてあつたのでありますけれども、この點も閉會中に限るというように、その點を限定することにいたしたのであります。 第五條は委員長の職務でありますが、第六條は書記長、書記でありまして、これは員數を示してありませんが、できるだけ最少の人員をもつて運營していくつもりに考えておるのであります。 第七條の職權の獨立でありますが、これは特にこの委員會の性質に鑑みまして、この規定をおいてあるのでありますが、なお括弧書の中に書いてありますことは、これは第四條によりまして、すでに訴追委員の職務を行う權限が規定してありまして、當然豫備員が訴追委員に代つて仕事を行う場合におきましては、本委員と同樣の職權を行うことになりますので、この規定は不要であると考えまして削除してあるのであります。 それから八條は招集の方法、第九條は議事でありまして、この點は二十人の訴追委員の員數のうちから十五人以上の出席ということに定足數をいたしてあるのであります。さらに二項の但書におきまして、訴追委員の罷免をいたします場合におきましては、事、重要に鑑みまして、過半數でなくして出席訴追委員の三分の二以上、つまり十人以上ということに規定いたしたのであります。 第十條は調査に關する事柄でありますが、これは訴追委員會がいろいろ訴追をいたすといたしましても、實際いろいろ具體的事情を調査いたします等につきましては、官公署等にいろいろ調査の囑託をすることも必要でありますし、また證人の出頭を要求することも必要であろうと考えまして、特にこの規定をおいてある次第であります。さらに十條の第三項の、議院の要求により證人が出頭した場合の例により、旅費日當を支給するということに、出頭した證人に對して、そういう規定がおいてありますが、これは彈劾裁判所の場合におきましては、刑事訴訟法を準用いたしまして、その規定に準じまして旅費日當等も支給することにいたしてありますので、修正案の所に第十條第三項と書いてありますように、その點は直しておきたいと考えておるのであります。 十一條は訴追期間についてでありまして、これも長くそのままにしておくこともどうかと考えられますので、一定期間を經過した後においては、すでに訴追せられないという、いわめる時效に當るべき規定をおいてある次第でございます。 それから第十二條でありまするが、この十二條の規定は二條の規定と關連いたしまして、いろいろの意味をもつているのでありまするが、實は檢事の起訴猶豫というようなことに當る事項でありまして、第二條に該當する事項で一旦これを訴追いたしました爾後におきまして、いろいろの事情によりまして、たとえば收賄の事件が起つた場合におきまして、それが爾後の調べによりまして情状によつて宥恕してもしかるべきである、あるいはまだ訴追委員會の方で訴追いたしましたけれども、判事懲戒等の懲戒處分によりまして、罷免、免職はできませんが、減俸なり何なりの處分を受けましたような場合におきまして、そこに斟酌の餘裕を殘しておくという、從來の日本的な氣持に合いました檢事の起訴猶豫と、それからまた訴追委員會の機能が十分に發揮できないで、最初はいいと考えたが、その後においていろいろ調査した結果、その必要もないというような場合をも含めまして、この規定を置いておる次第であります。しかしながらこの規定に關しましては、關係方面におきまして強い反對の意見がありまして、二條に「著しく」あるいは「甚だしく」というような規定があるのでありまして、すでに著しい事項であり、はなはだしく職務を怠つたような事項に該當する場合においては、當然罷免の訴追をなすべきであつて、それを猶豫する猶豫しないということは起らないではないか。初めから猶豫するというようなことが起るならば、それは初めから「著しい」にはいらないのであつて、いずれが第二條に該當する事項として認定された以上は、十二條の問題は起きないのではないか、こういうような意見もあるわけであります。この點に關しましては運營委員會におきましてもいろいろな意見がありまして、一應十二條を原案として存置することにいたしてあるのでありますが、この點はなお研究を要する問題だと考えております。 次に十三條に訴追状の提出の問題、それから十四條は訴追の取消しの問題であります。これも檢事の控訴の取消しに當る事項でありまするが、この點に關しましては、最初檢事の控訴取消しに當る意味におきまして、やはりこの規定の意義を認めておくことにいたしておつたのでありまするけれども、十四條を削除することにいたしたのであります。その理由といたしましては、すでに訴追委員會が罷免を訴追いたしました以後において、それを取消すということは、もうできないのであつて、その權限は彈劾裁判所において行うべきである。ただ訴追委員會がなし得る權能としては、彈劾裁判所に對して訴追取消しの希望の要求を申し述べるにすぎないというような、これはまた一つの法律的な見方だと考えるのでありまするが、さような意味合におきまして十四條を削除することにいたしたのであります。 次は十五條の規定であります。これはこの裁判官彈劾法が廣く裁判官に對しまして國民彈劾の精神に立脚いたしまする點に鑑みまして、何人でも裁判官に彈劾事由ありと考える場合においては、訴追委員會に訴追の請求を求めることができるという規定でありまして、これは憲法に新しく認められましたところの公務員を罷免するのは國民の基本的權利であるという條項に即應して置きました規定であります。 次に第十六條でありまするが、これは訴追委員及びその豫備員について申し上げたと同樣であります。ただ裁判員及びその豫備員に關しましては、衆議院からだけでなくして、參議院からも七名選任することになつているのでありまして、合せて十四名ということになるのであります。 次に十六條の末項の「相當額の手當を受ける。」という規定でありますが、この點は、先ほど申し上げたと同樣の趣旨によりまして、閉會中ということに修正案の方に改めおいたのであります。 次に十七條は裁判長の職務であります。 十八條は、書記長及び書記の規定であります。 十九條は、裁判員の職權の獨立でありまして、これは特に重要な規定であります。訴追委員會についても置いてあるのでありますが、裁判員について、なおこの點は重要な意味をもつと考えております。但し、先ほど申しましたような意味合におきまして、括孤書の中を削除することにいたしたのであります。これは修正案に書いてあります。 次に第二十條でありまして、これは裁判所の合議制を明らかにしたのでありまして、七名ずつ十四名の裁判員が選出されるのでありますが、各五人以上の出席、結局十人以上出席しなければ、審理及び裁判をすることができないということにいたしてあるのであります。大體三分の二ということになるわけであります。 それから二十一條は訴追状の送達であります。 二十二條は辯護人の選任であります。 二十三條は口頭辯論であります。 二十四條は訴追委員の立會でありますが、これは現在行われております裁判と同樣に、彈劾裁判所におきましても、刑事訴訟の規定の準用によりまして、裁判が行われることになるのでありまして、訴追委員會の委員長あるいはその指定する訴追委員というものは、いわゆる檢事の職務を行うような立場になるのであります。いわゆる國家公益を代表して彈劾裁判所に立會いまして、そうして訴追事由等を述べ、これを論告をする、こういうことになるわけであります。 次に二十五條でありますが、これは、法廷は彈劾裁判所でこれを開くということでありまして、さきほど東京都に置くと申しましたが、これは法廷とは別問題で、特に別個に規定をおいたのであります。 二十六條の規定でありますが、この點が非常に問題でありまして、二十六條の規定は憲法違反ではないかという意見があつたのであります、と申しますのは、但書の方におきまして、公序良俗を害するおそれがある場合におきましては、彈劾裁判所の裁判を公開しないで行うことができるということになつておるのでありますが、この點が憲法七十八條、八十二條に照らしてどうかという意見なのであります。一應運營委員會においても、この點いろいろ審議をいたされて、この原案のままに但書をつけてあるのでありますが、その問題の點を申し上げますと、七十八條においては、「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の彈劾によらなければ罷免されない。」こういう規定があるのであります。この公の彈劾という意味の中に、公開という問題も含まれるかどうかということになるのであります。私どもといたしましては、この規定の解釋は、かように考えておるのであります。第一の意味におきましては、「公の彈劾」とは、廣く一般の人の代表の名において、つまり言葉をかえて申し上げまするならば、國民の名において彈劾する。さらにこれを詳しく申し上げますれば、國會議員であられる方々は、國民の代表として選ばれておられる方々なのでありますので、その方々が彈劾裁判所の裁判員を構成することによりまして、國民の名において公の彈劾を行うことになるのであるということが一つと、次には、「公の彈劾」という意味は、公の機關による彈劾である。つまり彈劾裁判所等を設けまして、その機關によつて裁判を行うという意味であるのであつて、この規定からだだちに常に彈劾裁判はこれを公開しなければならないという意味は含んではおらないのではないか、かように解しておる次第であります。なお、七十八條の問題と關連いたしましては、八十二條におきましては、第二項に「裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、對審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に關する犯罪又はこの憲法第三章で保障する國民の權利が問題となつてゐる事件の對審は、常にこれを公開しなければならない。」という規定がありまして、憲法第三章で保證する國民の權利というのがあるのでありまして、これは憲法第十五條に「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、國民固有の權利である。」という條文もあるのであります。これらの點に鑑みまして、少くとも彈劾については常に公開しなければならないのではないか、こういう例外的に規定を置くことは違法ではないかという問題なのであります。これに對しましては、私どもといたしましては、第八十二條の規定は司法權の公開の原則に關する規定であつて、彈劾裁判所に關する事項は、憲法中特筆されているのでありまして、その原則を八十二條によつて規案するものではない。八十二條は司法權の公開原則のみの規定である。かように解しておるのであります。しかしながら、ただその趣旨をくんでどう取扱うかということは、おのおのその立案の趣旨に鑑みまして、適當に考慮を加えればいいことであろうかと考えておりますが、八十二條の解釋といたしましては、さように考えておるのであります。さような意味から、二十六條の規定は八十二條にも違反するものではないと考えておるのであります。しかしながらこの點につきましては、なお皆樣方の御意見を承りたいと考えておる次第であります。 第二十七條は法廷の秩序維持であります。 第二十八條は訊問に關する規定でありまして、この場合におきましても、訊問をいたしますけれども、裁判官自體が自分に不利益な供述を強要されないという、憲法上に規定されておりまする原則は、當然ここにも適用されるのでありまして、この點は明らかなことでありますので、特に規定を置かなかつたのであります。 第二十九條は證據に關する規定であります。この證據に關しましては、一、二、三號にあげてありますように、證據調べが十分でありませんと、はたして訴追事由が妥當であるかどうかということの正確な判斷が決定できないのであります。從いまして特にこの證據の規定を、今申し上げましたように三號にあげまして、これが證據物の提出を命じたり、あるいは必要場所に行つて檢査を行つたり、あるいは官公署に對して報告資料の提出を求めるというようなことにするような規定をおいたのであります。 第三十條に關しましては、これは、裁判員、書記長及び書記の除斥、忌避及び囘避、法廷における審理、調書の作成竝びに手續の費用については、刑事訴訟に關する法令の規定を準用するという規定があるのでありまして、この規定によりまして大體彈劾裁判所におけるところの審理、手續等に關しましては、刑事訴訟法によつてこれを運營していく、かように考えておるのであります。 三十一條は裁判の評議でありまして、これは特に罷免の裁判におきましては、第二項但書におきまして、審理に關與した裁判員の三分の二以上ということにしてあるのでありまして、少くとも十名以上ということになるわけであります。 それから第三十二條は、一般刑事訴訟の原則一事不再理の規定を置いたのであります。 第三十三條は裁判の理由、これもまた一般裁判と同樣であります。 三十四條の裁判書につきましても、大體同樣であります。三十五條の裁判書の送達、三十六條の裁判の公示——三十五條については同樣であります。三十六條は特にこの點を官報に掲載して、その裁判の終局裁判を明らかにすることにしたのであります。 それから三十七條は、罷免の裁判の宣告によつて裁判官は罷免されることになるのでありまして、この罷免の效果に伴いまして、裁判官が從來もつておつたところの恩給の問題をどうするか。なおまた他の公務員等に就職することができるかどうかという問題があるのであります。この點に關しましては、まず第一に恩給の問題に關しましては、從來は判事懲戒法の中に懲戒免職になります場合におきましては恩給權を喪失するという規定があつたのでありまするが、その規定はすでになくなつたのでありますけれども、その趣旨はやはりこの彈劾されましたところの裁判官に對しても、同樣に取扱いたいと考えておるのでありまして、これは恩給法の改正にまつことにいたしたいと存ずるのであります。次に他の公務員等への就職の問題でありますが、裁判官への就職はすでに裁判所法に規定してあつて、これは明らかなものでありまするけれども、他の公務員についてはどうするかという問題は、今後の問題であります。現在文官懲戒令によりますると、文官が懲戒免官になりました場合におきましては、他の官職に二年間つけないというような規定があるのでありますが、やはりこの趣旨をくみまして、裁判官につきましても裁判官以外の官職に同樣の制限を設けることが適當であろうと考えておるのであります。しかし、これは公務員法が近く制定せらるる見込みのようでもありまするので、その規定にまちたいと考えておるのであります。以上の恩給の問題、他の文官等への就職の問題に對しましては、さような意味合におきまして、法制局に一應連絡いたしてあるのであります。 第三十八條は資格囘復の裁判の問題であります。一旦彈劾によつて罷免されました者は、永久に裁判官につき得ないということも、一つの考え方であろうかと思いまするけれども、一定の年限を經過しました場合におきましては、本人が資格囘復の請求をした場合において、その事情を參酌して、さらに裁判によつてこれを認めるという途を開くことが、實際の實情に即するゆえんであると考えまして、かような規定を三十八條第一項第一號に置いてあるのであります。さらにまた第二號におきましては、一旦罷免の事由ありとして訴追されましたけれども、その後それらの證據がなく、もうそれらの罷免されるに値しないという明らかな別の證據が新しく發見せられた場合におきまして、その裁判官に資格囘復の請求を認めることにいたしたのでありまして、これも先ほどの實情に即す意味におきまして、特にかような規定を置いた次第であります。 次に三十九條の規定でありまするが、これは罷免の訴追を受けました場合におきまして、罷免される者が、十分職務を行うことができないと考える場合においての、停止の規定であります。これもまた實情に即した規定であろうと考えております。 第四十條は、刑事訴訟法との關係でありまして、大體彈劾裁判と一般刑事訴訟との關係は、並行主義でいくという建前をとつておるのでありまして、刑事訴訟は刑事訴訟として、かりに犯罪に當る事實がありました場合におきましては、一方において刑事訴訟の進行があり、一方においてまた彈劾裁判の進行がある、かように考えておるのであります。しかしながら、もしそれが刑事訴訟の問題になつております場合におきましては、彈劾裁判の方を一時手續を中止することも必要な場合もあり得ると考えまして、かような規定を置いた次第であります。 四十一條は以上に申し述べた以外に、必要な審理裁判の手續規則を定めたものであります。 第四十二條、四十三條の罰則でありまするが、まず四十二條の罰則は、現在刑法におきまして誣告罪の規定があるのでありますが、その誣告罪の規定によりますると、他人に裁判を受けさせる目的で虚僞の申告をしたというような場合、この誣告罪の規定があるのであります。その規定は刑事の裁判を受けさせる目的でやつた場合、また懲戒の處分を受けさせる目的でやつた場合ということに限られておるのであります。彈劾裁判を受けさせる目的でやつた規定はないのであります。從いまして特に四十二條にさような彈劾裁判を受けさせる目的で虚僞の申告をした者の罰則を置くことにいたしたのであります。一方において何人も自由に、彈劾の事由があるとすれば、罷免の訴追の請求をすることができるということを認めますとともに、またこれが濫用を警戒いたしまして、適正なる罷免訴追の請求ができるということにいたしますために、この規定を置いたのであります。この規定は刑法の改正の中に置きましてもよいのでありますけれども、特に彈劾裁判に關する件でありますので、この彈劾裁判所法に置いた次第であります。 次に第四十三條でありまするが、これはいろいろ證人を召喚いたしましても、出てこなかつたりすることがありますと、實際の裁判というものが十分に行われません關係上、特にこの規定を置いたのでありまして、一、二、三號に書いてありまするような事由の場合におきましては三千圓の過料、それから訴追委員會の場合におきましては多少その限度を低めまして千圓以下の過料、かようなことにいたしたのであります。以上が裁判官彈劾法の要旨でございます。
○淺沼委員長 以上で説明は終りました。これより審議をお願いいたします。安田幹太郎君より質問の通告がございます。安田君。
○安田委員 こまかい點につきまして規定の欲しいところがありますが、これはこれからの立法の建前として、大體大まかなことをきめて、こまかい點は解釋に任せるという新しい方針から來たものと私は考えますので、昔のような考え方に基いて、規定の足らない點は原案を尊重する意味におきまして私は申し上げないことにいたします。 最小限度不可缺と考えられます點が、私として三點ございます、三つの點につきまして、立案者がいかにお考えになつたかということを聽かしていただきまして、もしその點につきまして、十分な考慮が拂われておられないのであつたならば、御再考を願つて、原案をねり直していただいたらと思つて、三點だけ御質問申し上げます。 まず第一に、本法の規定で、衆議院の解散及び改選の場合について、彈劾裁判所にどういう影響があるかということについて、どの程度まで御考慮になつておられるかということをお伺いいたしたいのであります。衆議院の解散によりまして、解散前の彈劾裁判所はどうなるかということが第一の疑問であります。總選擧の後に衆議院から新しく裁判員が選ばれまして、これが從前の參議院選出の裁判員に加わつて、新たに彈劾裁判所を構成するものと、かように考えるのでありますが、この場合に、從前の彈劾裁判所と、新して彈劾裁判所とは、性質上どういうふうなものと考えるか。その場合におきまして、前の裁判所が行つた處分、あるいは手續の效力をどういうふうにするかということを、一應規定に入れておかなければならぬのではないかと考えられるのであります。しかし、これは解釋の問題に任せることができるかと思うのであります。 次に、衆議院の解散によりまして、從前の訴追委員會は、全面的になくなるのであります。そこで召集されました國會で、新しく訴追委員が選ばれました場合におきまして、同じくこの訴追委員会會は、從前の訴追委員會とどういう關係にあるか。つまり從前の訴追委員會がやつた處分、手續が、そのまま效果が殘るかという問題があるのであります。これも前の場合と同じように、特に規定を設けなくても、あるいは理論によつて解決できるかと思うのであります。 もう一つの問題、これはどうしても規定に書いておかなければならない、規定しておかないとぐあいが惡いのではないかという點があるのであります。それは第十一條に關係をいたすのであります。第十一條には「罷免の訴追は、彈劾による罷免の事由があつた後三年を經過したときは、これをすることができない。」と書いてあります。但書も同樣であります。そこで訴追委員會の手續というものは、直接に檢察官がやるようになつて、他の機關を通してやることが多いのでありまして、殊に重大な議案でありますから相當手間どるのではないかと思う。だんだん手間どつておるうちに、控訴の時效の三年間が經過することも相當考えられるのであります。その場合に解散が起り、あるいは議會の改選があるというようなことになると、次の訴追委員會ができないうちに時效が完成するというようなことが考えられるのであります。また次の訴追委員會ができましても、訴追委員會が從前の記録を調べ、訴追するか否かを考慮するためには、相當の時間がかかるのであつて、その間に時效が完成することも考えられるのであります。これをこのままにいたしておきますと、時效の完成を防ぐために、解散の機運があるときは、あわてて訴追をする、あるいは總選擧後の新しい訴追委員會は時效完成を妨げるために、よく調査もせずに訴追をしなければならない、こういう不都合が起つてくると思うのであります。それではこれから地位の非常に重んぜられる裁判官が、さような輕卒な訴追をするということは、訴追を受ける人によつても氣の毒であると同時に、國家のためにもよくないと考える。そこで私は初めの二點を規定せられる必要があると思うのですが、それは別として、この最後の點、すなわち衆議院の解散と改選の場合につきましては、この時效は一定期間停止するという規定がぜひ必要であると思うのであります。この點が第一點であります。一應この點につきまして簡單な御説明、御意見を承りたいと思います。
○三浦説明員 御もつともな御質問と存じます。第一の疑義に關しましては、さような點もいろいろ考慮いたしたのでありますが、この原案の三十一條の第二項でありますが、「裁判は、審理に關與した裁判員の過半數の意見による。但し、罷免の裁判をするには、審理に關與した裁判員の三分の二以上の多數の意見による。」ということで、審理の一貫制ということをとつております。從つてお話のようた解散あるいは改選がありましたような場合におきまして、その構成員が途中において變りました場合におきましては、これらの規定の趣旨から考えまして、當然その效力を失うのであります。そして解散あるいは改選後新しく選擧せられた裁判員によつて裁判される、かように考えておるのであります。訴追委員會につきましては、特にその規定をおいてありませんが、これは九條に「訴追委員會の議事は、出席訴追委員の」ということになつておるのでありまして、これはやはり今のような解散または改選がありました場合におきまして、その構成が變ることになるのでありまして、ここにいう嚴密な意味におきましても「同一出席訴追委員の」ということにならないと考えておるのでありまして、またさような場合におきましては、審理をやり直す、こういうことになつておる次第であります。 それから第三の點でありますが、これは實はこの彈劾裁判というものが、實際將來どういうふうに起つて來るかということは、豫測がつかないのであります。非常にたくさん起る、あるいはまたほとんどないといつたような見方もあるのでありまして、むしろ起らないことを欲するのではありますが、その將來の見透しははつきりいたしません。しかし三年間という期間においてあるのでありまして、憲法によりますれば、訴訟というものはできるだけ速やかにこれを審理しなければならないという憲法の原則にも照らし、かつはまた、これはだんだん上の方に控訴、上告というようなことの必要もないのでありまして、この訴追委員會彈劾裁判所によつて、裁判が決定されることになるのでありますので、三年間という期間の間には必ず解決し得るものだと、かように考えて、特にこれらの點についての規定を置かなかつた次第であります。
○安田委員 第一點につきましての、ただいまの御説明につきまして、ちよつと誤解があると思いますが、多くを申上げません。第一、第二について申しましたのは、裁判ができるかどうかという趣旨でなくて、各個にやりました處分その他の手續、證據調べの手續というものが、どうなるかということを申し上げたのであります。しかし、この點につきまして、特に私が規定を設ける必要を強調するものではありませんから、これは申し上げません。ただ時效の點につきましては、事件の發覺が相當遲い場合があるのであります。二年經つて事件の搜査に著手するというような場合があるのでありますから、ただいまの御説明で樂觀はできないと思うのであります。この點重ねて御考慮をめぐらしていただきたいと思うのであります。 第二點は、國民審査法案につきまして、審査を受ける裁判官が死亡した場合について、實は規定を設けておりますが、私はそれは要らないのではないかという意見をもつておるのであります。彈劾裁判につきましては、この點については原案に規定がないのでありますが、彈劾裁判の場合には、これが要るのではないかという私は考えがあるのであります。裁判官が死亡した場合、あるいは停年により退職した場合、あるいは辭任した場合、あるいは任期滿了によつて退職した場合、こういうような場合に、すでに著手しました審理手續を、いかにして終結するかということについて考えなければならぬと思います。彈劾裁判が單に罷免を目的とするものでありまするならば、すでにやめておりますれば、それで全部手續を停止して、いかなる判決をやるかわかりませんが、あるいは訴追棄却というような裁判をやつてもよいかと思います。しかしながら、彈劾裁判を、罷免するだけでなく、ただいま申しました三十七條に關連して言われたような、いろいろな公權停止の效果が附隨するのだということになりますと、死亡、停年の場合は要らないが、辭任あるいは任期滿了の場合には、なお手續を進めて裁判をやらなければならぬのではないかということも考えられる。この點につきまして彈劾裁判の本質をよく檢討いたしまして、この四つの場合にどういうようにするかといふことを考えておく必要があるのではなかろうかと私は考えます。これと同時にこれに附隨して、實質的には、もつと重要なことと思いますが、審理の結果罷免するには當らないが、懲戒には値するということに彈劾裁判所が考えた場合に、これをどうするかということであります。彈劾裁判所は、單に罷免をする裁判所であるというように考えますならば、この場合には、その懲戒について何ら觸れる必要がない、こういう規定をなすべきだと思います。しかし彈劾裁判所が單に罷免だけをやるものであるかどうかという點につきましても、一應彈劾裁判所の本質を檢討してみる必要があろうと思います。もし彈劾裁判所は單なる罷免のみをやるのであつて、懲戒は他の懲戒裁判所によつてやるのだというような見解に到達いたしましても、彈劾裁判所が調査の結果懲戒に値すると判斷したものを、そのままにしておくということは、彈劾裁判所としていけないのではないか。少くとも懲戒裁判所に事件を移送するというようなことが考えられなければならぬのではないか。もしこれが移送せられた場合におきまして、國家の最高機關である國會をもつて構成する彈劾裁判所が、ある意見をつけて移送した場合に、懲戒裁判所がまつたくこれと反するような意見で懲戒をやらないというようなことがあつてはぐあいが惡いのではないか。そこで移送するということになれば、最高裁判所の判斷に何らかの覊束力をもたして移送するということが必要ではないか、こういう點が考えられます。そこで私はこれらの各點をまとめまして、死亡、停年退職、辭任、任期滿了、あるいは罷免に値しないが懲戒に値するというような理由を發見した場合に、彈劾裁判所がどういう裁判をもつてやるかということを一條、ちようど刑事訴訟法にありますような規定を設けることが必要ではなかろうかと考える次第であります。簡單に御説明願います。
○三浦説明員 裁判官が死亡、停年退職、辭任、任期滿了の場合でありますが、かような場合におきましては、御承知の通り當然目的が消滅することになりますので、訴訟の對象が失われる結果、自然にその彈劾裁判というものはそこでなくなる、かようなことになると考えております。その場合におきまして、さらにこれを裁判をするとか何とかいうことは、必要がなかろうと考えておるのであります。從いまして、今の原則によりまして、對象の消滅による裁判の自然停止というように考えている次第であります。それから辭職の場合につきましては、これは本人の辭職をその所屬廳が押えるということによつて、彈劾裁判が進行することになりますので、さような場合におきましては、それらの連絡が必要だと考えております。 なお懲戒処分と彈劾との問題であります。これは實はいろいろ考えたのでありますが、先ほど申しましたように懲戒処分と彈劾裁判というものは竝行しておる。またその權限をもつておるものもおのずから違う、また見方もおのずから違う。かような意味におきまして、彈劾裁判としていろいろ審議しておりましたが、これは罷免するほどのことには當らない、懲戒處分による、あるいは減俸その他の處分による懲戒ということが實際問題としてあり得ると思うのであります。しかしながら、これはおのずからその裁判所なり、あるいは懲戒處分權をもつておりますところの官廳の性格上の相違があるのでありまして、從いまして、さような場合におきましては、こちらから特に懲戒をやつてくれということを、彈劾裁判所から言うことはどうかと考えておるのであります。いやしくも彈劾裁判にかかる場合におきましては、問題が問題でありまして、世間の視聽も集めることになりますので、當然その監督官廳においては、たれが彈劾裁判にかかつておるかということは、司法省あるいは最高裁判所等において明らかなことでありますので、それはその機關の獨自の權限によつて發動していくべきであると考えております。
○安田委員 ただいまの御答辯につきまして、すでに職を去れば對象がなくなるのであるから、手續は當然それでなくなる。こういうお理論ですが、私もさようになると思うのであります。しかしさようにしていいか惡いかということにつきましては、一應の檢討が加えられなければならないと考えて、申し上げたのであります。特にただいま申しました辭任の場合であります。彈劾裁判が起れば、關係當局と連絡して、辭任を押えるとおつしやられたのでありますが、逆の場合が豫想せられる。彈劾の訴追を受けたがゆえに辭任させる、特にかわいそうだから辭任させるということが行われる事件があると考えて、特にこれを申し上げたことを。一言附加して、重ねてお考慮願いたいと思います。 それから第三點であります。それは三十八條、資格囘復の裁判の第二號、罷免の事由がないことの明確な證據を新たに發見した場合には、資格囘復ができる、こういうふうになつておりますが、この資格囘復と、第一號の、罷免の裁判の宣告の日から五年を經過したときによる資格囘復とは、私が申し上げるまでもなく、まつたく性質が異なるのであります。初めは裁判は理由がありましたが、五年經つたから許してやるということと、第二番目の二號の前段の理由は、これは裁判が間違つておつたのである、理論上から申しますと、罷免の事由がないとの明確な證據を新たに發見した場合には、裁判が過つておつたのでありますから、再審の訴えを許してやるべき場合だと思います。これを、規定を簡單にする意味で、資格囘復と一遍におまとめになつたものと、私は考えるのでありますが、それはこちらの都合だけ考えまして、罷免を受ける人の利害を全然考えておらないと思うのであります。罷免を受ける人にとりましては彈劾裁判によつて、罷免されたということは、致命的なことであります。もしそれが事實無根であるとの證據が新たに出ました場合は、單なる資格囘復だけでなく、前の裁判が過つておつたということを明らかにしてやり、再審を認めなければいけないじやないかと思うのであります。もちろん再審の結果罷免の效力を遡及さして、元に返すというようなことはできませんが、少くとも罷免に伴うところのどういう規定がこれからできるかわかりませんが、これに附隨するところのいろいろな不利益、あるいは他の公職につけない、こういう點を消滅させてやるということが必要であると思います。そこで規定ははなはだ煩雜になりますが、私はこの第二號の最初の場合は、資格囘復とは別個な裁判としておくことが、罷免を受けた人にとつて深切である。さようにしておかなければ、罷免を受ける裁判官に不利益であると、かように考えるのであります。
○三浦説明員 三十八條の點に關しましては、最初さような意味合におきまして、再審の規定を一應置いておつたのでありまするが、いろいろ考えました結果、三十八條の原案のようにまとめた次第であります。實際問題といたしましては、三十八條の第二號の、新しい證據を發見した場合におきまして資格を囘復する、その場合に前に罷免の裁判をされた效果というものは、三十八條の第二號に書いてありまするように、失つた資格をすべて囘復する、かようなことにいたしまして、そこに救濟の規定を置いてある次第なのであります。結果におきましては、資格囘復の裁判といたしましてやることによつて、本人に及ぼしまするところの法律上の效果というのは、別にただいまの再審の場合と變りはないと考えておるのであります。ただ裁判の形式上、一應裁判をいたしました形式が殘るということだけは確かに認めていいと考えます。これは資格囘復の裁判の意味において、前にやつた裁判は殘りまするけれども、新しい裁判によつて本人が無罪であつた、資格囘復の裁判によつて、本人は何ら訴追事實がなかつたという法律上の效果を受くることによつて救濟をしよう。かように考えておるわけであります。
○安田委員 私の質問はそれで終ります。御答辯に私、十分は承服しかねるのでありますが、なお私は御答辯の趣旨を、もう少しよく考えていきたいと思います。
○鍛冶委員 二、三お伺いしたいのでありますが、條文に準じてお尋ねいたします。第二條に關してですが、修正案に基いてお尋ねしますると、先ほども御説明はありましたが、第一項に「職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠つたとき」とあり、第二項に「威信を著しく失うべき非行があつたとき」とあるが、このように「著しく」とかまたは「甚しく」ということを特に入れなければならなかつた理由をまず伺いたいのであります。
○三浦説明員 これは、現在文官懲戒令あるいは從來の判事懲戒裁判等によりますると、こういう「著しく」とか、「甚しく」というような言葉はないのでありまして、これは戒告から始まりまして、減俸あるいは免職というように、懲戒の場合におきましてはそれぞれの段階がありまする關係上、特にさような規定を置いてないと解しておるのでありまするが、この彈刻裁判におきましては、常に罷免——いわゆる懲戒裁判によりますところの免官または免職ということが常に結果としてくるのでありますので、特に「著しく」または「甚しく」という規定を置いた次第であります。
○鍛冶委員 先ほど御説明にもあつたように、十二條との關係でありますが、「著しく」と「甚しく」というものがあれば、十二條がなくてもよいということになるのでありますが、これはむしろ十二條を設けるのが適當だということになれば、二條の「著しく」とか「甚しく」という言葉をなくして、この十二條を置くことが正當ではなかろうか、兩方置くことは相容れないのではないかと思います。 それから先ほど安田君の質問にもありましたが、およそ調べる上においては、犯罪でないかしらぬが、職務の懈怠その他を問われる段階があります。強弱の差があります。それをやさしいものであるから本彈刻裁判所においては放してやる、そして強い罷免にする者だけを調べるということになると、どうも取調べの上において一貫せぬものがあると考えます。この彈刻裁判所を設けまする以上は、裁判官において職務上おもしろくないということがあれば、すべてここで調べさせるということが、ほんとうじやないか。從いまして調べた結果、罷免に及ばぬ、これはむしろ減俸にするとか、その他懲戒にするとかいうようなことがあれば、その調べた結果においてやるということが順序であり、またそうでなかつたらほんとうの調べはできぬのじやないかと考えます。その意味において懲戒に付することも、當裁判所においてやることが至當だと私は考えまするが、いかにお考えに、なりますか。 いま一つは憲法七十八條に「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合」云々とありますが、心身の故障があつて職務をとれないという裁判は、どこでするお考えでありましようか。私はこの點も、この彈刻裁判所ができましたる以上は、まとめてやるべきものである、かように考えております。それらの點をまず第二條についてお答えを願います。
○三浦説明員 二條と十三條との關係でありますが、これは御意見ごもつともだと、實は私も思つておるのであります。二條の方におきまして「著しく」とか、「甚しく」という規定を置きませんと、十二條の情状による酌量の範圍が非常に意義をもつてくるのでありまするけれども、二條においてさように「著しく」「甚しく」という規定を置いておりまする關係上、十二條が實際問題として働く餘地は、私はないのではないだろうかと考えておるのでありまして、私の意見といたしましては、二條を修正案のようにいたしますれば、十二條は削除したいと考えております。これはまた皆さん方の御意見をいろいろお伺いして研究いたしたいと思いますが、一應申し上げておきます。 それからさらに懲戒と彈刻裁判との關係の問題でありまするが、この彈劾裁判所は、憲法あるいは國會法で彈劾裁判ということに規定してありまするように、裁判官を罷免するということのために、特に憲法上新しく置かれた規定でありまするので、その彈劾裁判所が懲戒裁判まで行いはいたしませんが、それに關係いたしますることは、やや憲法上竝びに國會法において彈劾裁判を置きました趣旨と、少しそれるきらいがありはしないか、かように考えておるのであります。從いましてこれは先ほども申しましたように、懲戒の問題は別の監督權の發動によつて、そうして裁判所は常に公開されまする關係上、當然これは裁判所に知れるわけでありますから、裁判所關係の監督者がこれを承知いたしますことは當然なのでありますから、別個のものにいたしたいと考えておる次第であります。 七十八條の心身の故障の問題でありますが、これは裁判所法にも、心身の故障の場合においてはどうであるということが規定してあるように記憶いたしております。從いまして、この問題は、公の彈刻裁判の問題ではない、かように考えております。たしか裁判所法に規定があつたと記憶しております。
○鍛冶委員 先ほどの御説明では、二條の「著しく」または「甚しく」というのがあれば、十二條がない方がよいという御意見ですが、私の意見は、むしろ十二條は置いて、二條の「著しく」「甚しく」をとつた方がよいのではないか、こういうのですが、それは私と同じ考えではないのですか、それとも違うのですか。
○三浦説明員 その點でありますが、この二條の點に關しましては、關係方面といろいろ打合わせまして、二條を相當限定的な規定にした方がよい、かようなある程度強い意見もありましたので、むしろ二條の方に、「著しく」、「甚しく」ということに規定することを前提といたしまして、十二條の規定をどうするかということを考えることがよくはないか、かように考えております。しかしながら法律上の問題といたしましては、御意見ごもつともだと思います。
○淺沼委員長 この第二條の審議の經過について申し上げれば、初め小委員會で原案を作成する場合において考えた部面は、第二條は、彈劾により裁判官を罷免するものは、職務に關する罪を犯し、その他裁判官としての信用を失うべき重大な非行があつた場合とするということを考えたのであります。しかし、それはもつと具體的にした方がよいということで、具體的にした場合はどういうことになるかということを研究した結果、第二條を、彈劾により裁判官を罷免するのは、左の場合とする。一、涜職の行爲があつたとき。二、職務上重大な過失があつたとき。三、職務を著しく怠つたとき。四、その他裁判官として著しく品位をはずかしめ、または信用を失うような行爲があつたとき。こういうぐあいに大體修正案をまとめて皆さんの手もとに配るようなことになつたわけでありますが、そのうち第一項の涜職の行爲があつたときということは、自然職務上重大なる過失があつたときというところに包含されはしないか。この第二と三というものは大體において二が積極的なら、三は消極的で、これは一つになり得るものだ、そういうふうな解釋のもとに、二と三を一つにして、今皆さんの間に修正案として配つているようなことにしたわけであります。それから第四が第二になつたというようなことになつておりまして、さらにこれをいろいろ協議をいたしました結果、今、第一部長が答辯されたようにまとまつたのであります。しかしまだ原案としては、私どもは削除せずに出しておるわけでありますが、削除的な意見が非常に強いので、これからの折衝にしたいということになつておるのが、審議の經過であります。
○鍛冶委員 ただいまの委員長の御説明で、大變私も滿足いたします。殊にこれを讀んでみると、「著しく」などというのは、あとでくつつけた言葉であることがわかるので、前後の文章の體裁等から、はなはだおもしろくないことがあるので、ぜひ修正せられんことを望んで、その點は質疑を打切ります。 次にもう一つ承りたいのはこの訴追の理由は、職務上の義務に違反したとき、または職務を怠つたとき。要するに現われておる仕事を積極的にやるべきことをやらなかつたときを書いてあるのですが、むしろ私はこれ以上に、消極的に職務の怠慢であるとか、または研究すべきものを研究を怠つて、裁判官としての資格のない場合をも入れるべきものじやないか。たとえば、毎日酒を飲んで、一つも調べてこないでふらふらと法廷に立つてやるような者があれば、これは積極的の職務の違反ではありませんが、消極的に職務を盡さないので、これはぜひ入れなければいけない。今までの官僚の弊害をよく私は言うのですが、よく官僚が轉任その他のときの挨拶に書いてある紋切り型の文句には、大過なくその職を過しとある。大過がなかつたということが出世の理由になつておる。積極的にこういう仕事をしたとかいうことでなく、大過なかつたということだけで出世の理由になつた。それではいかぬ。こういう者を第一に罷免もしくは懲戒するということが必要だと思うのであります。これには、はいつていないと思いますが、私の意見に對していかがですか、はいつているかいないかを伺いたいと思います。
○三浦説明員 ただいまの點は、一號の「職務を甚しく怠つたとき」ということの中に入れてあるのであります。この一號の規定によりまして、積極的な理由と、それから消極的な理由とある、かように考えております。御意見の點は十分ここに織りこみ得ると考えております。なおこれに關連いたしまして、先ほどお話のありました裁判官が心身の故障の場合の問題でありますが、これは裁判所法の四十八條に、別にこれは法律に定めるところによつて裁判するということになつておるのであります。この點に關しましては、司法當局においても別途に考えておるように承知しております。
○鍛冶委員 次に第四條の訴追委員であります。これは衆議院議員の中から選擧されることになつておりますが、この訴追委員は特別の知識を要するものではなかろうか。彈劾裁判所については、特に議員の中から知識のある人を選ばれるかしらぬが、訴追委員だけは特別の知識のある者を要すると思われますが、それらについて、何か特別に考えられる必要はないか。
○三浦説明員 その點はごもつともでありまして、實はこれは普通の委員會と違いまして、まつたく裁判的な仕事をいたします關係上、できるだけこういう方面に練達の方にお願いしたいという希望をもつておりますが、これは一に議員から選ばれることになりますので、その選出の際には、議員各位の御意見によつてきまることだらうと思います。
○鍛冶委員 第二十九條について、「彈劾裁判所は、申立により又は職權で、必要な證據を取り調べ、」その次に、「又は地方裁判所にその取調を囑託することがてきる。」これを地方裁判所に限定せられたのはどういうわけでしようか。他に適當なるものがあれば、どこへ囑託してもいいのではないかと考えるが、その點いかがでありますか。
○三浦説明員 この點は、裁判所に關しましては、簡易裁判所等も考え得るのでありますけれども、こういう問題に關しましては、地方裁判所が一般的であるし、また實際いろいろな取調べ等に關しましては、地方裁判所の從來の機能等に鑑みまして、これが適當であらうと考えましたので、一應地方裁判所ということにいたしたのであります。官廳等に對しましてまた調査をいたしますことは、別の規定があります。
○鍛冶委員 簡易裁判所だけではありません、高等裁判所でやつた方が、かえつて適當であるという場合も考えられると思います。それらの點からして、特に地方裁判所に限らず、適當なる裁判所と定めた方がいいのではないかと思うが、いかがでしようか。
○三浦説明員 その點ごもつともな御意見だと思いますが、これは司法省の方ともいろいろ打合わせました結果、地方裁判所がすべての審理の大體第一審の役割をいたしておりますので、さような役割上から、殊にこれは證據の問題ではありません、これに關しましては上訴審その他よりも、實際的な第一審に當つておる地方裁判所が適當であろうとかようなことに結論がなつたわけであります。特にほかの方が不適當だという強い意味もありませんけれども、こちらの方が適當であろうというような觀點から、そういたしたのであります。
○鍛冶委員 先ほど安田君からの質問もありましたが、死亡のときはよろしいのです。それから辭職のときについても、先ほどいろいろ御意見を述べられましたが、停年等において退職になつた場合、その他でやめた場合、みんな免訴になるということになりますると、罷免もしくは懲戒の理由があるにもかかわらず、それで逃げていくことになる。殊に先ほどの御説明にあつたように、恩給法の問題がどうなるとか、轉職の問題がどうなるとかいうことになると、やめてもなお不都合があつた者に對しては裁判する必要があるように思います。そういうことの規定は、ぜひ入れなければならぬと思いますがいかがでありますか。
○三浦説明員 その點に關しましては、現在でも懲戒裁判等におきまして、本人がやめました場合においては、懲戒裁判はすでにできないのでありまして、これは官吏たる身分を前提といたしておるのであるから、さようなことになつておると思うのでありますが、本彈劾裁判におきましても、やはり裁判官の身分ということを前提といたしておりまする關係上——その人を刑事上どこまでも犯罪にして處罰して懲らしめるという趣旨であれば、やめて後までもさかのぼりましてこれを追及するというのが適當であろうかと考えるのでありますけれども、彈劾裁判はただ裁判官から排除して裁判の神聖を維持する、司法の神聖を維持するということに主眼點があるのでありますから、從つてそこまで追及するのはどうかと考えております。しかしながら、御意見のような點は、たとえば本人が刑事問題を起しておりまする場合におきましては、これは裁判官をやめましても、刑事裁判を受けることになるのでありまして、その方面において、それらの懲戒的な意味は達せられるものと考えておるわけであります。
○鍛冶委員 次は三十七條でありますが、これは先ほどの恩給の點と轉職の點とについて、それぞれの規定にまつということでありましたが、辯護士になることはどうでしよう。罷免せられて、そうして他の官公職につかれぬということは、先ほどの説明でできるかしらぬが、それでは辯護士にしてくれと言つたときには、いかがでしようか。かくのごとき場合も明示しておかぬと、辯護士會としてははなはだ迷惑千萬だと思います。
○三浦説明員 實は、辯護士の點に關しましては、結論を得ていないのでありまして、一應恩給と文官についてだけ、先ほど申しましたようなことを考えておるのであります。辯護士の問題につきましては、あるいは辯護士法の改正の問題、あるいは文官の問題に關しましては公務員法の規定によるわけでありまするから、その際にひとつ十分御意見を反映さしていただいて、御檢討を願うと、たいへんありがたいと考える次第でありまして、私といたしましては、辯護士については現在はどうするという結論をもつておりません點を、正直にお答え申し上げます。
○鍛冶委員 次いで三十八條の一と二ですが、二については先ほど安田君から質問がありましたので省きますが、一です。これは罷免の裁判の宣告の日から五年を經過すれば、當然囘復するように思えるのですが、そういう意味でしようか。
○三浦説明員 それは三十八條の第一項の中に「彈劾裁判所は、左の場合においては、罷免の裁判を受けた者の請求により」というのがございますので、本人の請求を必要とするのでございます。
○鍛冶委員 そういう意味ではないのです。「ことができる」とは書いてあるけれども、罷免の裁判の宣告の日から五年を經過した、五年を經過しさえすれば資格の上に當然囘復するのか、こういう意味です。
○三浦説明員 それは本人の事情いかんによることでありますので、この規定から當然だとは考えておりません。
○鍛冶委員 私の質問はこの程度にしておきます。
○吉田(安)委員 ちよつと關連して……。今の鍛冶君の、罷免の裁判から五年を經過したときは、當然囘復するかどうかという質問に對して、第一部長の答辯は、少しく明瞭を缺くようですが、もう一遍はつきりしたところを伺いたいと思います。
○三浦説明員 少し言葉が足りなかつたかもしれませんが、一號に書いておりますところの、五年を經過したという事實が發生いたしました場合におきましては、一應資格囘復の請求權をもつことになると考えるのであります。しかしながら、その資格囘復の請求をするかどうかということは、その罷免を受けた裁判官自身の問題になるのであります。それから次に、罷免の裁判を受けた者が資格囘復の請求をして、それを認めるかどうかということは、一に彈劾裁判所の判決による、かように考えております。
○吉田(安)委員 それではこの五年というのは、結局資格囘復請求權の發生ということに考えていいのでしようか。
○三浦説明員 さようでございます。
○淺沼委員長 それではこれにて散會いたします。次會は公報をもつてお知らせすることにいたします。 午後零時二十分散會