運輸及び交通委員会 第12号
- 発言数
- 59 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1947/08/20
会議録
○正木委員長 會議を開きます。 これより海難審判法案を議題として質疑にはいります。本日をもつて本案に對する質疑を終了いたしたいと思いますので、質疑者はあらかじめお申出を願います。質疑はこれを許します。館俊三君。
○館委員 海難審判法そのものには大體贊成いたしますが、この要綱の中に「海難の原因を明らかにし、以てその發生の防止に寄與する」ということがある。それに一番目のところにある審判の客體を海技免状、受有者のみにおかずに、廣く、海難一般を審理の對象とするということは、これは從來から求められておつたのでありまして、海運というのは船の状況とか、その他に關係なく、海難事故が起れば、海員そのものがいつでも鎗玉にあがつておるという状態であつたのであります。これは陸上交通事故においても、同じことで、陸上交通事故についても、陸上交通特別審判法というものが欲しいということを全陸上交通勞働者の會合で、この間決議された。そういう傾向をたどるものとして、海難審判法が新たに提出されたということの意圖については、全面的に贊成するものであります。しかし廣く海難一般を審理の對象とすることにしたといいながらも、今もつて海員あるいは船員の審判に主力を置いておる傾向が多分にあるというふうに考えられるのであります。それでいろいろの罰則その他についても、船の所有者、管理者というものに對して、單に勸告するのみに止まつておる點が非常に物足りない氣持がするのですが、その點についての御意見をまず承りたいと思います。
○有田政府委員 今囘の海難審判法は、從來の海員懲戒法と趣を異にいたしまして、單に海員の懲戒のみならず海難の原因を明らかにしまして、その發生の防止に寄與することを目的とするいわゆる海難防止主義という方針をとつたのであります。そこで館委員がその方針には贊成であるが、なぜ海員のみを審理受審人として、そのほかのものを受審人としないのかというお尋ねであろうと思いますが、實は海員には一つの海技免状といういわゆる警察許可的な特權を與えられておるのです。そこで海員が海難を起しまして、海員の責に歸すべき事由が明らかになれば、免状の剥奪とかあるいは停止、あるいは戒告というような措置をとるのでありますが、他のたとえばその原因が船の構造にあるとか、あるいは設備にあるとかいうような問題に關連しまして、その造船所を責めるという場合には、實は造船所に對してはさような國からの特別の特權と言うか、供與がないのでありまして、それを剥奪するということは今日の法律の建前より非常に困難なことだと思うのであります。しかしながらわれわれはその原因がさような海員以外の原因より發する場合には、ここに勸告という制度を設けまして、他の原因と關係あるものに對しまして大いに反省を促す機會をつくつたのであります。勸告はあるいは法律的の處罰効力はないかもしれません。しかしながらそれは徳義的と申しましようか、勸告する場合には一般にこれを公告いたすのであります。從いまして某造船所の船舶の構造が惡いということが一般に周知されれば、その造船所としましては、營業上致命傷を受けることに相なるのでありまして、おのずからここに反省を促すことができると思うのです。かような趣旨により、われわれは今日の法律段階としては、海員以外のものに對しては勸告制度をとつており、しかもそれが徳義的あるいは實質的には相當の効果をもたらす、かような見解のもとにこういう法律の建前をとつたような次第であります。
○館委員 法律的なことはとにかくといたしまして、海運總局には船が建造されたときの檢査、あるいはまたその船が營業につく、仕事につく場合の檢査、ときどきの檢査というものがあるはずでありますが、その檢査が粗漏なためにということが審判の結果はつきりした場合には、非常に困つた事態が生じやしないかということを考えるのであります。大體船乗りは免状を取上げられたり、あるいは極端に言うと體刑をくつたりする場合もありましようが、船主の方においてはただ勸告にのみ止まつておるのでありまして、「勸告を受けた者は、その勸告を尊重し、努めてその趣旨に從い必要な措置を執らなければならない」ということがありますが、これは重大な項目であります。この必要な措置をとらなければならないということに對して、この法律の補助として政令か何かで特殊なものをきめられる意思があるかどうか。ただとらなければならない、とらなかつたときにはどうなるかというような政令か何かが出る、このほかにこしらえる意思があるかどうかということをちよつとお聽きしたい。
○有田政府委員 六十三條に基きまして勸告を尊重してつとめてその趣旨に副つて必要な措置をとらなければならないということにつきまして、他段政令とかその他のことは考えていないのであります。ただ先ほども申しますように、勸告によりましてそれが一般世間に周知され、輿論の喚起によりまして、たとえば造船所にその責があるときには反省を促し、また從つて自省いたさずにその勸告の趣旨の尊重しないというような場合がありましたときには、おのずから船主もその造船所に船の注文をしぶる、あるいは注文をしないというような結果を招來いたしまして、徳義的と申しましようか、一般の世間の輿論によつた責を造船所が受ける。かように考えておるのであります。また檢査官の問題がありましたが、檢査官がその檢査の粗漏のために、海難の原因を起したようなことがありますれば、檢査官も同じくこの審判の結果によつて勸告を受けるのであります。また檢査官には、それに相應した處置がとられる。かような結果になるのであります。
○館委員 この法案は大體においては贊成でありますが、それについては私非常に遺憾に思う點があるのであります。一つの海難が起きた場合に、その海難が、海員の責と船主の責と兩方に歸する場合、海員の方は、きめられた法規によつて處罰される。船主の方は勸告に止めておくというようなことになりますと。そこに非常に隔りが多いのであります。勸告という言葉は、向うの意思、人格を非常に尊重して、今後こういうことをしてはいけない、この點を改めろといつて、非常に向うの自由な立場を尊重した立場を與えておるのでありますが、海員の場合には、決定された事項のまま服從しなければならないというような違いがあるのであります。この點お考えおきを願いたいのであります。それができたならば、この法規はほとんどこれでよいのではないかと考えられるのであります。それからこの適用範圍はどういうふうになつておるか。たとえば船員法ならば、五トン以上あるいは三十トン未滿は適用しないということがありますが、海難審判法の適用範圍はどういうふうになつておりますか。
○有田政府委員 海難審判法の適用範圍は全般的に對して及んでおるのであります。船舶のトン數などによつて別段の制限はやつておりません。ただ小さな海難に對しては簡易審判という制度をもつて、繁瑣の手續を省略してやつていくという制度をとつておるのであります。
○館委員 その點におきましても、船員法及び船員保險法とかいう法のらつ外にある五トン以上あるいは三十トン未滿の漁船の乗組員は、そういう保護を受けずして、さらに海難審判法の適用を受ける。こういうところに少し氣の毒な點があるのではないかという氣がするのでありますが、審判法のらつ外かもしれませんが、關係事項として、どういうふうなお考えか、伺いたい。
○有田政府委員 その點につきましては、現行法と大體同じであります。ただ小さな船舶には免状をもたない海員が大部分であります。實質的にも影響はないと考えております。
○館委員 そうすると海難審判法というものは全的に包括しておるのであるが、しかし免状をもたないという漁船の船員あるいは五トン以下というたくさんの沿岸海員諸君に對して、この法案ばかりでなく全體的に見て非常に辻つまが合わなくなつておるという氣がいたします。その點を注意する必要があるのではないかと考えるのであります。それから今度外國貿易が始まつてくると、船のもつ使命が非常に大きいのでありますが、その際に日本の海員であつて外國の船に乗る者に對する見透しを、この審判法あるいは船員法、そういうものに關連してちよつとお聽きしておきたいと思います。
○大久保政府委員 外國の船舶を傭船いたしました場合におきましても、日本人の船員が乗つておりますので、属人的にこの法律で審判を受ける、こういうことになつております。
○館委員 それからもう一つお尋ねしておきたいことは、審判と裁判という言葉の使いわけ、これが海難審判所という審判所の組立についての一つの急所であろうと思いますが、この審判と裁判との區別及び何がゆえにそうなつておるかということについての判然としたところをお聽きいたしたいと思います。
○有田政府委員 小さな點は係官から答えさせますが、大體の問題といたしまして、この海難審判というものは、いわゆる行政處分であります。裁判というものはこれは司法制度の問題でありましてそこに根本的に行政と司法という相違があるのであります。
○館委員 その點から推しての審判所の構成について説明を願いたい。
○大久保政府委員 審判の手續、構成はおおむね司法裁判所の例にならつております。公開審判によりまして對審によつて處理をしていくということを原則といたしております。また審判官は裁判官の、理事官は檢事の職責に從つてその職務を行うというような規定に相なつております。その他一般の手續に關しましても、舊法は刑事訴訟法を基準いたしておりましたが、本法におきましては審判は刑事問題ではございませんので、この刑事訴訟法を準用するということを廢止いたしまして、努めてこの審判に必要なる手續を規定いたしております。しかし審判手續の内容は大體刑事訴訟法に準じた扱いをいたしておる次第であります。以上簡單でありまするが手續の概要を申し上げます。
○館委員 この審判の行政裁判というような建前をとつておるようでありますが、從來の行政裁判というものは、とかくそのわくに納められてしまつて、それ以上の裁判を求めるということがいつも制約されておつたのであります。その點について非常に不滿があつたのでありますが、それの改正方法ができておるかどうかということをお聽きしておきたいと思います。
○大久保政府委員 憲法におきまして、「行政機關は、終審として裁判を行ふことができない」という規定に相なつておりますが、この海難審判もやはりこれは一種の裁判と見るべきであると思います。そこでまた日本の國民は、いかなる者も裁判を求める權利も奪われることはないことになつておりますので、この終審として從來行われておりました高等審判所の裁決に對しましても、これは一種の行政處分でありますから、これに對する裁判を求めるという權利を奪われない措置を講ずる必要がある。よつて本法におきましては五十三條において、「高等海難審判所の裁決に對する訴は、東京高等裁判所の管轄に専属すると。」いうことにいたしまして、東京高等裁判所に繋属することにいたしたのであります。ただ一般の行政處分に對する訴えは、地方裁判所から訴えを提起するのが原則と相なつておりますけれども、海難審判に關しましては、すでに地方審判所及び高等審判所と専門の審判所の二審を經ておりますから、また再び地方海難審判所から始めるということは、海員にとりまして、また關係者にとりまして、非常に問題を遷延いたしますから、東京高等裁判所に繋属させることに相なつたのであります。また東京高等裁判所の判決に對しましては、さらに最高裁判所に上告する途も開かれておりますが、それはおのずから根本的な法律問題の解決の場合のみに限定されると思います。
○高橋(英)委員 海難審判法に直接關係はないのですが、ちよつとこれに關連して政府にお聽きしたいのであります。まず海運界の現状の大體、それから海運界の將來、すなわち貿易再開後の日本の海運界の情勢、たとえば船の保有量の問題とか、一隻のトン數の制限の問題、それから將來の國内航路の問題で、省營航路と民營航路の關係、これについては私も今直接關係しているものもあつて非常におもしろい問題だと思いますが、こういう點について大體の御方針なり、現在の状況をお聽きしたいと思います。 それから沈没船の問題もあるわけですが、沈没船の利用價値というものは、新造船に比して低いということはわかつておりますけれども、日本の現状としていずれに重きをおくか、新造船本位で、沈没船のごときは利用價値がほとんどないものであるかどうか、そういう點についても御説明を願いたいと思います。
○有田政府委員 御承知の通り、わが國海運界の現状は船腹の面から申しましても、わずか百三十數萬トンというきわめて貧弱な状態であります。戰前の六百數十萬トンに比しまして、わずか二割程度にすぎない、かように量的にも貧弱であります。しかもこの船舶の七割というものがいわゆる戰時標準船で、戰爭中に急いでつくつた粗惡なる船舶であります。あと殘りの三割はいわゆる在來船でございまするが、これまたその大部分がいわゆる老齢船、お婆さん船でありまして、質的にも實にわが国の保有しておる船舶は貧弱きわまるものであります。まず一口に申すならば、わが國の海運は壊滅に等しい状況であります。しかも船主經濟の立場から申しますると、今囘の戰時補償打切りの問題に關連いたしまして、戰爭中沈没した船に對する保險金をもらつておりましたが、これを全部とられてしまう。かような有様でありまして、船主經濟の上からいきましても非常な打撃を受けておるのであります。しかも船舶は開戰當時よりただちに損害を受けておるのであります。沈んだ船の保險金はもらうが、その保險金でまた代船をつくる。またその船が沈む。いわゆる「おどる」と申しますが、一隻の船でも二倍三倍の損害を受けるという結果になつておるのでありますので、陸上のそれに比しまして船主經濟は極端なる打撃を受けておるのであります。一方海員でありますが、日本の海運の強みは海員であつたのであります。ところが海員の戰時中における犠牲は陸海軍人の比ではないのであります。非常に優秀なる中堅船員を失つたのであります。かように船腹の面から申しましても、乗組員の點から申しましても、また船主經濟の面よりいたしましても、非常な打撃を受けておる。これが海運界の現状であります。しからば將來いかになるだろうということであります。もちろん今日はマツカーサー司令部の管理下におかれておりまして、百トン以上の船舶は、つくることも動かすことも、わが方のみの自由にはならないのであります。全部關係筋の管理のもとにあるのであります。さような關係上、將來どうなるかということを私はここに輕々には申しかねる次第でありまするが、しかし私は日本はいわゆる海運國である。四面海をめぐらしておる。しかも八千萬の人口を擁して、僅か四つの小さな島に閉じこめられておる。しかもその小さな島の天然資源というものは實に貧弱きわまるものである。どうしても、またどんな開懇をやつて、どんなに國内資源の開發をやりましても、大局から見て日本は自給自足はできないと思うのであります。從いまして今後の日本は海に出ずるよりほかに途はない。日本が獨立國として生存が許される以上は、今後は海である。かように考えるのであります。從いまして貿易が再開されましても、この貿易の荷物を運ぶもの、これはどうしてもわが國の船でやらないと、いわゆる貿易尻が合わない。從來わが國の海運でいわゆる貿易外収入と申しまして、外貨獲得の面に寄與したところが非常に多かつたのであります。わが國のような貧弱なる國で、しかも諸外國より物を入れなければ自給自足ができない、かような國柄におきましてはどうしても、海に伸びて、貿易品も可及的にわが國の船舶で賄つていつて、いわゆる足代をかせがないと、せつかく入れた貿易品に對する見返りのものがない、貿易尻が合わない、かようになるのであります。從いまして私は日本の海運というものは、これは日本が生存するための絶對の必需品と考えるのであります。アメリカの海運というものは必要であるかもしれないが、私から申せばこれは一つの贅澤品じやないかと思う。日本の海運はどうしても必需品である、從つて日本が生きんがためにはどうしても海へ海へと伸びる、これが必然であると思うのであります。從いまして將來のことは私は斷言はできませんが、日本の獨立ということが容認される以上は、日本の海運はやはり伸ばさなくちやならぬ、また伸ぶべきである。おそらくこれは關係筋におかれましても了解していただけるものとかように確信しているのであります。 さてしからばいかなる船腹の保有量をもつて貿易再開を迎えるかということでありますが、これまた非常にむずかしい問題でありまして、今ただちに私は何萬トンの船腹をもつべきだということはここに發表することを差控えたいと思いますけれども、少くとも一九三五年から三十九年、いわゆる平時の生活水準に立脚し、その後の人口増加ということを加味して、日本の國の生存上必要なるもの、たとえば石炭が何萬トン、鐵鋼が何萬トン、あるいは綿花がいくらというように、それぞれの必要量から考えまして、その大部分を日本の船で運ぶ、こういう建前で日本の必要なる船腹保有量を確保したい。かように考えている次第であります。もちろんその前提としまして、戰前だけの船腹をもつということは、あるいは不可能であるかもしれませんが、私は少くとも三分の二程度は、日本としていわゆる經濟安定期に備えてその程度の船は必要でないか、かように考えている次第であります。 次に國内航路として省營航路とするか民營航路とするか、こういうお尋ねでありますが、私は日本の海運のあり方としまして、國内といわず、海外と言はず、大體その基調は海運の特質から見まして、民營ということを前提とすべきものと考えております。殊に國際海運としての性格をもつて日本の海運は伸びていくべきものであると考えておりますので、企業形態の前提としては民營を考えております。しかしながら今日の段階におきまして、ただちに民營できるかと申しましと、そう簡單にはまいらない。將來民營ということを腹にもちながら、一つの國家管理をやつていくというのが、現段階における海運の企業形態の進み方であろうと思うであります。從いまして國内航路につきまして民營にするか、省營にするかということは、できるならば民營を前提としていきたい。海運を培養する意味において、また海運を育てる意味において、民營ということを前提としていきたい。しかしながら民營では重要な航路の確保ができない。われわれは極力民營を前提として監督力を及ぼして、いわゆる完全なサービスの提供ということに努めたいのでありますが、いくらわれわれが監督をやかましく言つても、どうしてもその要望に副いがたいというときには、これは好むと好まざるにかかわらず省營ということに相なつていくと思うのであります。しかしできるだけ民營主義をとつて、監督力でいきたいというのが今日の考え方であります。 最後に沈没船は利用價値があるかどうか。こういうお尋ねでありますが、沈没船の中には相當優秀な船があります。全部の沈没船が多額の引揚げ費用をかけて、また修繕を行つていいものばかりとは申せませんが、わが國の今日の沈没船の中には、引揚げてそれを利用する價値のあるものが相當あるように考えております。從いまして、日本の今日の資材の不足、殊に船の不足という立場から、なかなか新造船もむずかしい、極力つくりますがそうたくさんの船ができがたい状況にありますので、利用價値のあると認められる沈没船は、極力これを引揚げまして、この活用をはかりたいと考えておる次第であります。
○高橋(英)委員 大體御説明によつて納得がいきましたが、貿易再開の場合における見透しについて、ややわれわれ安堵できるような御説明であつたように思います。ただ客船の問題がなかつたようでありますが、客船に對する見透しはどうでありますか。 それから現在トン數制限があるように聞知しておりますが、將來このトン數に對する制限、大きさに對する制限は何とか緩和してもらえるような見透しであるかどうか、御説明を願いたいと思います。
○有田政府委員 客船の問題について私は觸れませんでしたが、まず日本の船腹保有量として第一に要望すべきものは、私はやはり貨物船だと考えております。客船はその次に位するものと考えております。 なおトン數制限とか、あるいは航路制限、あるいは速力の制限という問題が、いわゆる賠償問題とからみましてあるのじやないかというお尋ねでございますが、實はポーレーが一昨年でありましたか、昨年でありましたか、わが國に參りましていろいろな調査をやりまして、アメリカで報告したいわゆるポーレー報告なるものによりますと、日本としては船腹は百五十萬トン保有すればいい。五千トン以上のものはこれを賠償に取上げる。速力も十二ノツト以上のものをもつてはいかぬ。また航路につきましては、その百五十萬トンの船は、日本の沿岸航路として百二十五萬トン、殘りの二十五萬トンの半分、十二萬五千トンは朝鮮あるいは樺太方面、殘りの十二萬五千トンは中國方面、大體かやうな報告をポーレーがやつております。しかしこれは單なるポーレーの私案であるのでありまして、決してこれが公の取上げられておるのではない。極東委員會もこれに對して別にどうのこうのという意見は述べておりません。またアメリカ本國におきましても、ポーレー報告は單なる報告にすぎないといつてあまり重視しておらないように感ぜられるのであります。從いましてわれわれとしまして今日公には船の航路の制限であるとか、あるいはトン數の制限であるとか、あるいは速力の制限ということは受けておらないのであります。ただしかしながら先ほど言いますように、百トン以上のものをつくりますときは——關係筋の許可を得なければならぬのでありまして、今後いくらもつか、またいくらのトン數の大きなものをもてるかということは、具體的に一々當らなければならぬことでありますから、ポーレーの報告がいかにも最後の決定的であるかのやうに世間には流布され、あるいはさように考えられる方もあるようでありますが、あれは單なる報告にすぎないのであります。公のものではないということを御了承願いたいと思います。
○高橋(英)委員 それから審判法の海難防止について、これは説明を求むるだけやぼなんですが、沈没船のごときは第二條の第一號にあたる「船舶に損傷を生じたとき、」という損傷の中にはいるのでしようか。これを確かにしておきたいと思います。それから審判法の審判官や事務官、それから參審員の員數については政令で定めるということになつておりますが、これはここにはつきりしてもらつた方がいいと思いますけれども、政令でもいたしかたないとして、大體どの程度の復案でありますか、これもお聽きしたい。
○大久保政府委員 最初お尋ねの沈没船の海難の發生原因はやはり第二條の一號によつて審判にはいるということに相なつております。それから參審員、審判官等の資格その他に關するものを政令に讓つておりますが、これはたとえば參審員等におきましては、あるいは審判官におきましては、その經歴が船長、機關長の經歴を有する者、あるいは海事に關する教官の職におつた者、あるいは海事に關する一級官、二級官の職にあつた者、そういうふうないろいろな任用上の資格とにつきまして規定をいたしたいと考えております。また參審員に關しましてもその任用上の諸般の資格その他につきましても政令できめる。かようなことになつております。
○高橋(英)委員 第十九條の管轄の問題ですが、原則として今度は海難の發生した地點ということになつておる。例外的に船籍港ということになつておるのでありますが、これは現實に即して便宜の所で管轄權を行使するということにして、海難の發生した地點または船籍港というふうに並行的にやつてもらつた方がいいと思いますがどうでしようか。 それから第二十三條の補佐人の問題です。補佐人は刑事訴訟法における辯護人と同様の立場におかれるものと思いますが、これは受審人が選定する、選任するということになつております。これは本人——被告の立場におるところの審判を受ける者に選任さすという辯護人の原則、關係者の利益を完全に擁護するというふうな原則から、そういうふうにせられるものではないかと思いますが、この點についてお伺いいたします。
○大久保政府委員 審判すべき事件の管轄權でありますが、從來は船籍港主義をとつておつたのであります。そういたしますと、たとえば一例を申し上げますると、青函連絡船等は横濱の審判所に今籍があるのです。非常に遠隔の地の海難事件につきまして、遠隔の地において審判にかかるということに相なつております。いろいろ審判上の手續等に支障を來すので、今囘は海難の發生した地點によつて審判所をきめるということにいたしております。それで地點をきめます際におきましては、大體緯度經度によりまして審判所の管轄區域を定めるつもりであります。但し後段にありますように海難の發生した地點の明らかでない場合には、海難に係る船舶の船籍港を管轄する審判所に属するというふうにいたしまして、二段構えにいたしておるわけであります。 それから補佐人に關しましては、ただいまのお話のありましたように辯護人の趣旨を採用いたしております。受審人の利益のために補佐人を選任するという建前になつております。
○高橋(英)委員 受審人というのは被告に當るのですか。
○大久保政府委員 そうであります。
○高橋(英)委員 それでは私の誤解でした。今十九條の管轄について説明になつたのでありますが、私の言うのは、船籍港本位の從來の法律が不完全だつたがために、海難の發生地點を管轄するところの審判所に事件が取扱われることになつたということは承知しておるのでありますが、それのみでも不都合を生ずる場合があるのではないかと思うのであります。船籍港の場合は單にその海難の發生地點が明らかでないという、ごく限られた場合にのみ管轄されるということになつておりますが、これを海難の發生した地點または船籍港として、非常に融通のあるような、どちらでも現實に即して便宜な所、受審人なり審判官なり、すべての點について、便宜な所で審判ができるということにしてもよいのではないかと思うのでありますがその點をお尋ねしたのであります。この點についていま一應御説明を願いたい。
○有田政府委員 審判管轄をあるいは海難の發生した地點あるいは船籍港による、この選擇主義によつたらどうかというお尋ねでありますが、實はその選擇主義にあまり偏りますと裁判管轄の手續の問題で非常にまちまちになりまして、明瞭にならない。從いまして原則といたしましては、やはり實際の海難の發生した地點を管轄する審判所においていたしたい。これが改正の要點であります。ただ當事者でやはり他の管轄にしてほしいという要望があれば、この二十一條によりまして、この管轄の移籍を請求することができる。實際はお話のような順序に副い得る裁判管轄ができる建前になつております。
○高橋(英)委員 ただいまの御説明で大體納得できました。しかし刑事訴訟でも民事訴訟でも、管轄の點についてはそれぞれ融通をきかしておる。刑事訴訟は被告の現在おる場所、住所地または犯罪の發生地などが、選擇的に、並行的に、同資格をもつて管轄の對象となつておりますから、この十九條についてはいま少しく御研究願いたいのであります。それから二十五條の補佐人の資格でありますが、この補佐人の資格は、この法律によつて限定的に規定してありますけれども、たとえば辯護士のときにはこれを改めて無制限にして、この資格を得なくても補佐人になり得るという制度にする。私ども辯護士は——我田引水論ではないのでありますが、人事百般、事務百般に精通しておる者が辯護士に採用されておるのでありまして、何といつても代理人になれるということが辯護士の資格を得ておる者は全條件に補佐人になれるという規定にお改めを願いたいのでありますが、當局のお考えはいかがでありますか。
○有田政府委員 補佐人の資格については命令できめたいと思つておりますが、今考えております命令内容としては、第一が辯護士たる資格を有する者、第二が甲種船長または機關長の免状をもつておる者、第三は二年以上審判官または理事官の職にあつた者、第四は二年以上海員に關する學校で一級または二級教官として船舶の運航、機關または通信に關する講座を擔當した者、かような案をもつておる次第であります。お尋ねの辯護士たる資格をもつておられる方は當然補佐人の資格がある。かように考えております。
○館委員 今高橋委員が質問しておりました前の箇條、二十四條でありますが、讀みこなせないのであります。「補佐人は、この法律に定めるものの外、命令の定ある行為に限り、獨立してこれをすることができる」これはどういうことを命令で定めるということですか。
○大久保政府委員 これは補佐人のこまかな手續上の規定でありまして、申立の手續、證據調べの手續、そういうことを命令をもつて定めております。
○田村委員 受審人という言葉がよく使つてあるのでありますが、私は受審人の範圍が不明確だと思います。三十三條、三十四條などによりますると、海難の事實があつて、海技免状を有する者に對しての故意、過失の疑いがあつたときには、理事官はこれを受審人として請求しなければならんということでありますが、そうすると、この審判請求は、司法裁判所では檢事の一種の起訴のようなものであります。裁判所は起訴がなければ有罪の判決ができないわけになつておりますけれども、本件の海難審判の方は、海技免状をもつておる人そのものを對象とするのではなく、審判は海難そのものを對象としておるのだから、審判する場合には、受審人として表示された者だけに對して審判し得る範圍が及ぶものであるか、あるいは海難自體が請求されておるのであれば、その海難に關係ある者に對しては、免状を有するところのあらゆる人々に對して審判をする權利が審判所にあるものであるか。この點をお尋ねしたいものであります。
○大久保政府委員 お尋ねの受審人は免状の受有者のみであります。そこで三十四條におきまして「海難が海技免状又は水先免状を受有する者の職務上の故意又は過去に因つて發生」いたしました場合におきましては、受審人として示すということに相なつておるのでありまして、受審人として指定されます者は海技免状または水先免状の受有者であるということになつております。
○田村委員 私がお尋ねしたのはそういうことではなくて、受審人たるものは海技免状または水先案内人の免状を所有する者である。しかし海技免状であるとか、あるいは水先案内人の免状を有する者であつても、理事官が海難について受審人として表示しなかつた場合には、その審判の對象にならないのかということであります。
○大久保政府委員 理事官はやはり檢事のようなもので、いろいろな證據を調べまして、理事官が審判として取上げるべき者じやないと判斷いたしました場合におきましては、もちろん受審人とは指定しないで、審判の事件としては上つてこないということに相なります。
○田村委員 そうするとこの四條の二項に、「海難審判所は、海難が海技免状又は水先免状を受有する者の職務上の故意又は過失に因つて發生したものであるときは、裁決を以てこれを懲戒しなければならない」と規定してあるのでありますが、かりに審判中に理事官の請求に受審人として載つていなければ、この免状を有する技術者に對して、故意、過失の責があるということを認定しておつても、やはり懲戒はできないということになるのかどうか。
○大久保政府委員 第四條の第二項は一般的な場合を規定したのでございまして、これは審判に事件が取上げられた場合において、裁決をもつて懲戒するということであります。もちろん海難の性質もしくは状況、またはその受審人の閲歴その他情状に徴しまして、懲戒の必要がないという場合は免除されますし、また理事官の判斷によりましてこれが事件にならないと思う場合におきましては、この申立てもございませんから、裁決も行われない。こういうことになります。
○田村委員 そうすると理事官と審判官はいわゆる檢事對裁判官の立場であつて、審判に對して控訴できる。高等審判所に對してさらに審判の請求もできる制度になつている。いわゆる意見の相違というものが双方にあることを前提にしたものでありますが、たとえばそのときの理事官において、甲の船に對して船長もしくは機關長にして故意、過失の責があるという起訴状を出して、いわゆる請求書を出した場合に、審判の結果、裁判官は乙の船の方の免状所有者に對しての故意、過失を認めたという場合にはどうするか。請求そのものは甲船の船長もしくは機關長に對するところの請求であります。審判の結果現われたところの證據材料その他の判斷によつて、乙船の方にかえつて故意、過失の責任があるのだと審定された場合においては、結局いわゆる受審人ではない、審判請求が指定されていないところの人であるから、それに對しては懲戒はできないということになると思います。この點をお伺いいたします。
○大久保政府委員 説明員からお答えいたします。
○長屋説明員 お答えいたします。從來も衡突事件におきましては、理事官がその關係した免状受有者に對しましては、必ずこれを受審人——ただいまは被審人と申しておりますが、被審人としてあらかじめ申し立てます。衡突事件において一方だけ調べるということは片手落ちになりますし、ただいま委員のおつしやつたように調べた結果、これはそつちに責があるのではないかということが起ることを豫想いたしまして、衡突のときには兩船の關係者は免状受有者を被審人として申し立てております。本法におきましてもやはりそういう取扱いをいたしていくつもりでありますから、ただいまおつしやつたような不都合は起らぬかと思つているのであります。 それから理事官が受審人として申立てなかつた場合に、審判をしていく間にその者に對して免状受有者が責があるということがわかつたときにどうするのか、こういう御質問でございましたが、その場合には理事官は審判に立會つておりますから、責があるということがだんだん明らかになつてきますれば、自分の取調べが不十分であるということになりますし、明らかになつた場合にあらためて受審人として申し立てる。審判の途中において受審人として申し立てなければならぬわけでございます。現行法におきましても、審判の中途において新たに受信人を申し立てるということが行われておりますので、實行上差支えないように思つております。
○田村委員 そういうことはむろんでき得ることであると私は思います。これは司法の上におきましても追起訴もできれば、さらに追請求ということもできると私は思いますけれども、私が危惧するのは、故意の場合ということはほとんどないのであつて、いわゆる過失、少くとも重過失ではない輕過失によつて海上における危險は生ずべき場合が多いので、そうした場合にどちらに一體責任があるか、だれに責任があるか、あるいは機關方面にあるのか、運轉方面にあるのか、船長自體にあるのか、水先案内にあるのか、こういつたことの微妙な點が多いと思うのでありますが、その際に審判官自體におきましては、三名もしくは五名の中でもつて多數決によつて審判をする。自分はこれではない。いや自分はこれだと思うと言つて、その意見がわかれる。また理事官と審判官との間におきまして意見がわかれる。あるいは觀察點が違うということは、もちろんあり得ることです。そうした場合に一方から請求がなければ、裁判官自體、審判所自體、もしくは多數決によつてその過失を認めても、懲戒處分ができない。こういうことになつてそこに適用上非常に間違つたことを生ずることがないとは私は言えないと思うのであります。だから私はむしろこの解釋を、請求された者のみが受審人ではなくして、もう一歩進んでどちらの解釋かということを私は最初に申し上げましたけれども、海難自體が審判の對象なのです。海難自體がもうすでに審判の對象になつておるのだから、その海難に關係のあるところの海技免状を有する人は、請求の有無にかかわらず、この審判において懲戒その他の裁決をなし得る範圍だ。こう解釋されれば、こうした疑いの餘地がなくなつてくるわけだ。人そのものを對象にするのではなくして、海難自體が審判の對象になるのだから、その海難自體に直接間接に關係のあるところの海技免状を有する人に對しては、すべて懲戒の權を有するのだ、審判の權を有するのだということにするという解釋になれば、そうした錯覺というか、そうした缺陷が補われるわけです。そこで私はこの受審人の範圍いかんというその點を聽いた。請求しなければ受審人にならないのか。海難自體を請求すれば、その海難に關係あるところの海技免状を有する者は、すべていわゆる審判所において受審人としてこれに對して審判し得るのかどうか。この點私は最初に聽いたわけであります。もしただいま政府委員の御答辯のような説でありますならば、私は少くともこの點については非常な缺陷があると思います。 次にお尋ね申し上げたいのは、このただいまの解釋から言えば、もちろん第三者に對しても勸告を發することができるということになつておりますが、第三者が海技免状をもつておらぬ關係上、これを受審人でないということは法文の上で明らかであります。そうすると地方海難審判所の裁決に對しては、高等海員審判所の裁決を求めることができる。いわゆる二審が求められることになつておりますが、そうした場合に第二審を求め得るものは、條文の根據によれば、理事官または受審人となつております。そうすると先ほど海運總局長官からお話のありました、この機關は不備である、お前のところ會社で製造するところのエンジンは不備だ、お前のところの會社で製造するところの船體は不備であるということを公表されることは、少くともその會社に對するところの大きな生命線を侵すことになるわけであります。そうした場合に第三者は一體こういう勸告を受けた立場の人、いわゆる受審人以外の者でありますけれども、その人がもし上級裁判所いわゆる二審の高等審判所の審判を受けようとする場合、もしくは二審の裁決に對してさらに東京の高等裁判所の裁判を受けようとする際には、どの法文を根據としてこれに對して不服の申立をするのであるか、法文の根據をひとつ示していただきたい。
○長屋説明員 勸告を受ける者は、先ほど有田政府委員から説明いたしましたように、法的には特權を受けておりませんのと、これに對する處分をいたしますには法的根據がございませんので、これに對して處分ということはできませんから、やむを得ず勸告ということでその効力をあげることをねらつて、海難の防止に寄與するということを本法で定めてあるのであります。これは最初の立法の過程といたしましては、免状受有者も勸告を受ける者も、審判當事者という新しい名前をつくりまして、いわゆる刑事事件における被告のような取扱いをいたしまして、そうしてこれを喚び出して審判する。一方には懲戒をし、一方には勸告をするという行き方を立案いたしました。ところが司法關係におきまして、その根據のない者に對してこれを被告扱いをしてひつぱつてくるということは行過ぎである、憲法の精神からもそういうことは許されない。それでどうしても受審人、つまり刑事事件における被告としては免状受有者のみに限らなければいかぬ。こういうことになつて、やむを得ず受審人は免状受有者である。それから免状を受有していない者に對しては、證人の立場でいくらでも喚び出して調べられてるじやないか。そうして本人の海難の原因に關する説明はいくらでも聽けるじやないか。そしてその結果また一方には懲戒し、また一方には勸告するのであるから、勸告ということは本人の權利義務に對して法的の制限を加えるわけでないので、これに對しては抗告とか、つまり第二審の請求とかいうようなことは認めない。そういう行き方にしよう。そういう考えで組み立てましたものでございます。
○田村委員 そうすると第三者でもつて勸告を受けた人は、お前の會社でつくるエンジンは不備であつた。お前のつくる船舶は不備である。しかし會社もしくは製造人の目から見れば、それはこうした特殊の事情がある。あるいはこれを運營する人の方に過失があつて、自分の方にそうした不備がないのだといつたような場合があつても、勸告を受けて新聞などで公告をされては、會社として非常な名譽の失墜でありますけれども、それに對しては救濟方法はないということになるわけでありますか。
○長屋説明員 今のところそれに對して第二審の請求とかそういうことは考えておりません。
○有田政府委員 二點についてお尋ねのようでございます。第一點の三十四條關係で、關係ある者を廣く受審人としたらどうかというお尋ねでございます。實はさようなことも立案者としては一應考えてみたのでありますが、あまり範圍を廣くいたしますと、一方海員側の立場から申しますと、その審判をされる間、乗船ということが不可能になりまして、非常に海員の方としましても迷惑がかかるのみならず、船舶の運航という點からいいましても、あまり大勢の者を下船せしめまして審判の對象といたしますと、運航方面におきまして非常に支障を來します。從いましてこの判斷は理事官に任せまして、理事官が職務上の故意または過失によつて發生したものであるということを認めたものに限つて受審人にする。かような建前をとつたのであります。理事官はもとより公の機關でありまして、この理事官自身を信頼するという建前でいきたいと思うのであります。但し人間のやることでありますから、審判官が途中で見透したというような事實ができますならば、理事官は再び第三十四條に基きまして、その次の關係者を受審人として示すということになつております。これは運用でやりたい。あまり受信人の範圍を廣くいたしますと、先ほど申しましたいろいろな點によつて支障を來しますので、そういうような趣旨からこれをかえたような次第であります。それから第二の、勸告を受けた者に對して中央審判所へ抗告するような餘地を殘したらどうかというお尋ねでございます。實はこの點ごもつともと一應考えますが、しかし何と申しましても判決の結果は勸告であります。いわゆる免状の發行停止というようなひどいものではないのであります。またその間において證人として自分の意見はいくらでも言えるのみならず、さような方面にいろいろな關係があるときには、いわゆる參審員を活用して、參審員の意見も十分聽きまして、審判の公平を期したいと考えております。まずこの審判を信頼していただいて、あまり不都合がないじやないかと思います。但し萬一その審判の結果が不適當であつて、勸告を受けた者が輿論の制裁によつて非常に困るというようなことがありましたならば、これまた勸告を受けたものが新聞その他輿論の喚起ができるのでありまして、結局審判がよかつたか、あるいは勸告を受けたものの主張が正しいかということは、輿論の判決というような結果に相なると思います。その點は非常にむずかしい問題ですが、私は一應司法省の主張をもつともと考え、結局輿論の批判の結果にまちたい。かような考えをもつております。
○田村委員 大體御趣旨はわかりましたが、私どもは海技免状所有者が一箇月及至三箇月の免状の停止を受けるよりか、事業主や工場が勸告を受ける方がむしろ痛いところだと思います。從つてそれに對して不服を申し立て、公正な權利主張の機會を與えるということは、どこまでも必要だと思います。その點御考慮願いたいと思います。
○高橋(英)委員 私も田村委員と同様の見解をもつておるのでありまして、なるほど田村委員のお話を聽くと、勸告制度というものは、これは大問題にもなると思う。普通の刑事訴訟法なんかでしたらたいへんな問題になるような、そういう重大な問題を内包しておると思うのであります。これは今有田政府委員の御説明で、新聞その他の方法によつて信用囘復、名譽囘復ができるのではないかと言われますけれども、そういう方法はなかなかとりにくいのでありまして、審判が權威があればあるほど、審判の効力というものは甚大なものなのであります。從つて訴訟法の原則にあります利害關係があるもの、利害關係がその裁判なり審判なりによつて生じてくる立場にありまするものの審判に對して參加し得る制度がなければ、十分その勸告を受ける立場にあるものの權利の主張ができないと思います。民事訴訟法に從參加入、主參加入などありますが、要するにそういうような審判參加の規定を設けておつて、勸告をせられるおそれのあるもの、勸告をせられたもの、そういうようなものにその主張を完全に表現し得る機會を考えてやるべきものではないかと思います。その點について私どもも考慮いたしますけれども、當局においてもいま一應この點について慎重御考慮願いたいと思います。
○有田政府委員 その點につきましては私の方も十分考慮しておりましてさような勸告を受けるような、いわゆる關係者はその審判の際にもちろん出席せしめまして、十分意見を吐かすように考えておるのであります。さような手續はいわゆる四十五條の「地方海難審判所の審判の手續に關し必要な事項は、命令でこれを定める、」この法律以外のことは全部命令に讓つておるが、省令によりまして十分關係人の意見が述べられるようにしたい、かように考えております。
○館委員 私が最初に問題にしました勸告のことがまた問題になつたのでありますが、この第三條で見ますところの一、二、三、四、五の項目は、海難審判法ができない以前の海難審判の場合においても當然考慮される項目であつたと私は思います。海難審判法ができたから、初めてこの一、二、三、四、五の考慮があらためて拂われなければならないという状態ではなかつたろうと私は考えております。この海難審判法のいわゆるやまといいますか、みそといいますか、それは今まで海難審判というような片手落ちの審判で、とにかくその船に乗つている免状の所得者、いわゆる船員のみが審判の狙上に乗つておつた。それ以外の項目については、一應は關係事項として審査はされておつても、船主側、あるいは水路の標示の仕方、あるいは港灣の水路の状況、そういうものに對する裁斷が下されておらないで、ただ單に働く者だけに對する審判をもつて海難審判が終つておつたという缺陷を補いたいために、あらためてこの海難審判法というものができた、そこにみそがあり、法案の目的があるということを考えて、そういう意味において私はお尋ねしたのであります。しかしその場合に前にもありました通り船の責任者、あるいはまた港灣の責任者、あるいはこの五項目の中にあげられているところの責任者に對する勸告にのみとどまつておるという點が非常に不滿に思うのでありますが政府の出したところの海難審判法についてという説明の中に「海難が審理の結果海技免状受有者以外の者の責の歸するべきものである場合には、必要に應じその者に勸告をし得る如くした。勸告とは、拘束力を持たぬものであるが、英國に於ける勸告制度の實續に照らし、社會的壓力を喚起し」、そしてこの効力を與えるという説明があるのでありますが、そこでこの社會的壓力ということは何を指しているのかということについて政府は公示するというように條文に書いてある、この公示というのはどういうことであるかということをお聽きしたいということと、もう一つはこの海難審判法をこしらえる場合に、いよいよでき上つたときに公聽會を開いた。その公聽會において今論議になつておる勸告という點について、どういう論議があつたかということをお尋ねしたいと思います。
○大久保政府委員 お尋ねの公示の方法は、あるいは官報とか、あるいは新聞紙に掲載する。こういう手續をとりたい、かように考えております。 それから本法に對しましては、東京、神戸におきまして公聽會を開催いたしたのであります。その際意見といたしましては、ただいま館委員のお話のように、從來の懲戒制度を海難豫防主義に改正すべしということが、海員の多年の要望でありまして、それが實現しますことにつきましては、贊意を表しております。ただこの法律におきまして、必ずしも未だ完全に海員の要望が達成せられておりません點は、從來の刑法における義務上の過失の改正の問題、それから刑事裁判に對して、この審判法が必ず先行するという點に關する保證の點があります。しかしこの審判法が必ず先行するという法律上の保證はありませんが、これは司法省との申合せによりまして、この審判を刑事事件に先行することに、實際上運用をいたしたい。かように考えておる次第であります。 勸告の問題に關しましては、これはやはり當初公聽會の際は、原案といたしましては先ほど説明員が申しましたように、當事者というふうにいたしております。すなわち審判當事者は被審人及び勸告を受ける者を含めまして、當事者というふうにいたして立案せられております。その關係上ここにおける第三者も、被審人と同じ權利と義務があつたのであります。さような關係で、先ほどから御質問の點については、別に公聽會においては御意見の發表はなかつたように記憶しております。
○館委員 この海員を懲戒するとかその他の場合には、官報をもつて發表するということを書いておるのですが、この勸告を受ける者に對する勸告の仕方というものは、公示という言葉を使つておる。これはどういうふうにするのであるか。今のお話では官報その他というお話があつたのですが、その點いかがですか。
○大久保政府委員 勸告は一種の何と申しまするか、觀念の表示行為とでも申しますか、強制力のない一つの行為であります。かような關係で勸告をいたしますためには、どうしても社會にこれを公表するということのみが、勸告を實効あらしめる本體とも申すべき點だろうと思います。勸告につきましては、法律によつて公示するということを明文に出しておる次第であります。
○館委員 それから公聽會の時分に、當事者という言葉を使つておつたのであります。そこで公聽會が受取つた氣持というものは、今田村君が言つたように、これは海難を對象としておるがゆえに、それに關係あるもの全部を當事者とお考えになつておつたかどうか。もしそうであるなら、今度それを除いて、海技免状をもつておる者だけというふうに、變更になつたその理由についてお話を願いたい。
○大久保政府委員 その後いろいろ政府部内におきまして協議をいたしました結果、先ほど説明員からも申し上げましたように、免状受有者のように國家の特別な權力關係をもつております者以外の、一般の第三者に對しまして、權利義務關係の拘束ある裁決を行うことは不適當である。こういうことに相なりまして、この點は修正いたしたような次第であります。
○正木委員長 他に御質疑はありませんか。
○飯田委員 大體終るようでありますが、ちよつと私は委員長にお願いしておきたい點があるのであります。本日の主題と違つておりますが、ここに國有鐵道の現状と國有鐵道の實相の報告書をいただいたのであります。ちよつと見てみますと、鐵道の車輛あるいは客車、貨車というような點につきましては、明細にあげられております。しかしながら先日來の委員會におきましても、省營の自動車、バス、トラツクにつきましては相當論議を重ねておるのでありますが、この點について少しもここにはふれておりません。國民といたしましては、省營の自動車と、民營でやつておる業者に對しましてのいろいろな觀點が、違つておるようにも聞き及ぶのでありますが、それにつきましては陸運の方には、省營の自動車、バス、トラツクに對しますところのかくのごとき實相を報告できる書類がむろんあると思いますから、委員長もお調べの上に、収支の損益とか、または運輸省としてこの省營自動車に對する將來の御方針等をしたためたものがありますれば、それを御提出願いたい。私參考にしたいと思いますから、その點お願いいたします。
○正木委員長 ただいま飯田君からの御發言ですが、本委員會散會後、鐵道實相報告書に對する當委員會の態度決定のための懇談會を開こうと考えております。從つて本委員會散會後、委員各位はお殘りを願いたいと思います。 他に質疑もございませんので、これをもつて海難審判法案に對する質疑は終了いたしました。次會の日程は公報をもつてお知らせいたします。 本日はこれをもつて散會いたします。 午後零時二十八分散會